第111回ILO総会結果(概要)

1.概要

  • 会期:令和5年6月5日(月)~6月16日(金)
  • 場所:スイス国ジュネーブ
  • 出席者等:
    政府側:羽生田厚生労働副大臣、富田大臣官房総括審議官(国際担当) 他
    労働者側:清水日本労働連合総連合会事務局長、郷野日本労働組合総連合会参与 他
    使用者側:市村日本経済団体連合会労働法規委員会国際労働部会長、松井日本経済団体連合会労働法制本部参事 他
  • 本総会では、日本政府からは羽生田厚生労働副大臣が代表演説を行い、また「社会正義の実現」をテーマとした「社会正義サミット」に出席。その他、条約及び勧告の適用状況、アプレンティスシップ(徒弟制度)、社会的保護に関する周期的討議、公正な移行に関する一般討議等について議論が行われ、アプレンティスシップに関する勧告や今後の対応策等をまとめた各議題の結論文書等が採択された。

2.本会議

 ウングボ事務局長報告の「社会正義の前進(Advancing social justice)」をテーマとして、各国政労使代表による演説が行われた。
 日本政府からは羽生田厚生労働副大臣が代表演説を行い、以下の内容等を発言した。

  • 本年4月に開催されたG7倉敷労働雇用大臣会合の成果として「人への投資」が「経費」ではなく「投資」であるという認識を新たにしたことを発信するとともに、ウングボ事務局長の報告を踏まえつつ「社会正義」の実現にも資すると考えられるディーセント・ワークのための取組として、障害者の多様な就労ニーズに対する支援などを盛り込んだ改正法が昨年12月に成立したことや、女性の活躍に関する各企業の行動計画策定義務の対象拡大などの取組強化を紹介。
  • ILO/日本マルチバイプログラム等を通じた支援が今年で50年目になったことに触れつつ、同プログラムの中で行われてきた様々な技術協力を通じグローバル・サプライチェーン上の課題解決にも貢献していること。
  • 今後も社会的パートナーとの対話を大切にし、ウングボ事務局長の新体制と一層の協力を進め、仕事の世界における永続的な課題に取り組むためのあらゆる努力を行うこと。


 また、ウングボ事務局長が主導する「社会正義連合」の設立に向けた機運を高めるイベントとして催された「社会正義サミット」では「社会正義の実現」をテーマとして複数国の大統領・首脳級の演説及びパネルディスカッションが実施され、日本政府からは羽生田厚生労働副大臣が出席した。

別添1 政府代表演説(日本語)[88KB]
別添2 政府代表演説(英語)[63KB]

3.主要議題

  • 総務委員会:第347回理事会で決議されたILO憲章33条に基づくベラルーシ政府に対する措置や、安全で健康的な作業環境(労働安全衛生)がILO基本原則に追加されたことに伴う国際労働基準の部分的改定に関する条約及び勧告の提案、時勢に合わない条約・勧告の廃止・撤回などが議論され、決議案等が総会本会議で採択された。
  • 財政委員会:第 347 回理事会で採択された2024-25年ILO計画予算案について審議が行われた。同理事会にて論点となっていた性自認、性的指向に係る記載が本委員会においても引き続き議論され、ILO事務局案とアフリカが提示した修正案のいずれも投票で否決された。その後も議論が行われた結果、決議案は変更せず、報告書及び説明書に多様な見解が表明されたことを明確に記載する妥協案がまとめられた。当該案は本会議に付託され、投票により賛成多数で採択された。
  • 準適用委員会:各国における既批准条約の適用状況に関する個別案件(全24件。日本案件はなし)等について審議を行い、審議結果をまとめた報告文書が総会本会議において採択された。
  • アプレンティスシップ(徒弟制度)に関する委員会(基準設定):前年のILO総会における議論を踏まえ提示された勧告案について条文ごとに議論が行われ、最終的に委員会でまとめられた勧告案が総会本会議において採択された。
  • 社会的保護に関する委員会(周期的討議(※):審議の結果、前回の周期的討議から新たに生まれた、労働形態を含めた全ての労働者への保護にかかる重要性等が盛り込まれた結論文書案が総会本会議において採択された。
 ※ILO総会では、①雇用、②社会的保護、③社会対話、④労働における基本的原則及び権利の4つの目標に関してILOや加盟国の取組について周期的に議論を行っているところ、今回は上記②について議論が行われた。
  • 持続可能な経済・社会に向けた公正な移行に関する委員会(一般討議):気候・環境変動による労働の世界における課題に対応し、包摂的で環境的に持続可能な経済・社会への公正な移行を進める取組についてILOが定めた「公正な移行ガイドライン」に則って議論が行われた。審議の結果、技能訓練や移行の影響を受ける労働者への保護など、公正な移行に向けて重要となってくる要素を盛り込んだ結論文書案がとりまとめられ、総会本会議において採択された。

4.二国間会談(羽生田俊厚生労働副大臣)

  • ウングボ事務局長との会談:労働安全衛生、グローバル・サプライチェーン上におけるディーセント・ワークの実現に対する支援の重要性について認識の共有等を行うとともに、日本とILOとの間での人的交流を一層深めていくことを確認した。

  • 各国代表との会談:インド・ヤーダブ労働・雇用大臣との会談では、今年のG7倉敷労働雇用大臣会合のテーマである「人への投資」の重要性について意見交換を行うとともに、インドが議長国を務める今年のG20労働雇用大臣会合に向けての協力体制を確認した。また、オーストラリア・オコーナー技能訓練担当大臣との会談では、オーストラリアとの協力関係の強化や公正な移行等について意見交換を行った。


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