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自然毒のリスクプロファイル:魚類:パリトキシン様毒

魚類:パリトキシン様毒

1 有毒種

日本で中毒原因となる有毒種は、ブダイ科アオブダイ属のアオブダイScarus ovifrons(図1)[1,2]、ハコフグ科ハコフグ属のハコフグOstracion immaculatus(図2)[3]である。その他、ブダイ科ブダイ属のブダイCalototomus japonicus(図3)[4]、ハコフグ科コンゴウフグ属のウミスズメLactoria diaphana(図4)[3]、ハタ科マハタ属の魚類(Epinephelus sp. )[5]も中毒原因魚の疑いがある。

アオブダイ ハコフグ
図1 アオブダイ 図2 ハコフグ
ブダイ ウミスズメ
図3 ブダイ[4] 図4 ウミスズメ
2 中毒発生状況

1953年から2015年にかけて、少なくとも42件の中毒の記録があり、患者総数は126名で、そのうち8名が死亡している(表1)。

表1 日本におけるバリトキシン様毒中毒事例

事例No. 発生年月 発生場所 原因魚種 喫食部位 患者数 死亡者数
1 1953年5月 長崎県 アオブダイ 不明 10 1
2 1962年5月 長崎県 アオブダイ 不明 3 1
3 1963年5月 長崎県 アオブダイ 不明 7 0
4 1963年5月 長崎県 アオブダイ 不明 2 0
5 1963年5月 長崎県 アオブダイ 不明 1 1
6 1972年10月 兵庫県 アオブダイ 肝臓 5 0
7 1972年11月 兵庫県 アオブダイ 筋肉・肝臓 5 0
8 1981年2月 兵庫県 アオブダイ 筋肉・肝臓 8 0
9 1983年2月 三重県 アオブダイ 肝臓 2 1
10 1983年4月 高知県 アオブダイ 肝臓 8 0
11 1986年11月 愛知県 アオブダイ 筋肉・肝臓 2 1
12 1987年12月 高知県 アオブダイ 肝臓 3 0
13 1988年12月 高知県 アオブダイ 不明 1 0
14 1989年12月 宮崎県 アオブダイ 肝臓 3 0
15 1989年12月 高知県 アオブダイ 不明 2 0
16 1990年10月 鹿児島県 ハコフグ(推定) 不明 1 0
17 1993年3月 長崎県 ハコフグ(推定) 不明 1 0
18 1993年4月 高知県 アオブダイ 筋肉・肝臓 1 0
19 1993年10月 長崎県 アオブダイ 筋肉・肝臓 2 0
20 1995年9月 三重県 アオブダイ 筋肉・肝臓 1 0
21 1997年9月 大阪府 アオブダイ 筋肉・肝臓 11 0
22 1999年4月 鹿児島県 アオブダイ 筋肉・肝臓 2 0
23 1999年12月 宮崎県 ハコフグ(推定) 筋肉・肝臓 1 0
24 2000年10月 高知県 ハタ類 筋肉・肝臓 11 0
25 2001年1月 三重県 ブダイ 消化管を除く全て 1 0
26 2001年11月 三重県 ハコフグ類 内蔵 1 0
27 2003年2月 宮崎県 ウミスズメ(推定) 筋肉・肝臓 1 0
28 2003年10月 宮崎県 ハコフグ 筋肉・肝臓 2 0
29 2004年4月 宮崎県 アオブダイ 筋肉・肝臓 2 0
30 2004年10月 長崎県 ハコフグ(推定) 筋肉・肝臓 3 0
31 2007年4月 長崎県 アオブダイ 筋肉・肝臓 2 0
32 2007年8月 長崎県 ウミスズメ(推定) 筋肉・肝臓 2 1
33 2008年10月 長崎県 ハコフグ 筋肉・肝臓 1 0
34 2009年3月 宮崎県 アオブダイ 肝臓 2 0
35 2009年3月 鹿児島県 アオブダイ 不明 5 0
36 2009年12月 宮崎県 アオブダイ 肝臓 1 0
37 2011年12月 福岡県 ハコフグ 肝臓 1 0
38 2011年3月 宮崎県 アオブダイ 筋肉・肝臓 1 0
39 2012年4月 長崎県 アオブダイ 筋肉・肝臓 3 1
40 2013年11月 徳島県 ハコフグ(推定) 不明 2 0
41 2013年11月 熊本県 クエ(推定) 筋肉・胃 2 0
42 2015年2月 宮崎県 アオブダイ 不明 1 1

 

3 中毒症状 潜伏時間はおおむね12時間〜24時間と比較的長く、横紋筋の融解に由来する激しい筋肉痛(横紋筋融解症)が主症状で、しばしば黒褐色の排尿(ミオグロビン尿症)を伴う[6]。また、患者は呼吸困難、歩行困難、胸部の圧迫、麻痺、痙攣などを呈することもあり、初期症状の発症から数日で血清クレアチンホスホキナーゼ値の急激な上昇がみられ、重篤な場合には死に至ることもある[6]。回復には数日から数週間かかり、また致死時間は十数時間から数日間と広範囲である[6]。
4 毒成分
(1)名称および化学構造 毒の本体は、生化学的性状がパリトキシン(図5)によく似た物質(パリトキシン様毒)と考えられているが[1-5]、化学構造等の解明には至っていない。

図5 パリトキシンの構造

(2)化学的性状 中毒検体の毒の性状[1-5]から、水溶性で加熱調理しても毒性は失われず、加熱調理により毒成分は煮汁等に移行するものと考えられる。
(3)毒性 不明
(4)中毒量 0.5 MU/g程度でヒトに中毒症状を発症させるものと考えられている[6]。
(5)作用機構 作用機構は不明であるが、横紋筋の融解を引き起こし、骨格筋のクレアチンホスホキナーゼ(CPK)が血液中に流出し、血清CPK値が急激、かつ顕著に上昇する[4]。
(6)分析方法
  • マウス試験: マウスに腹腔内投与して48時間後の生死から毒性を判定する方法が報告されているが[1,2]、感度や特異性の点で難がある。
  • 溶血活性試験: マウスならびにヒト赤血球に対する溶血活性を指標とする方法が報告されている [2,4,5]。
  • 機器分析法: 毒本体が特定されていないため、LC/MS等の機器分析法は確立されていない。
5 中毒対策 有毒種の喫食を避ける以外、明確な対策はない。
6 参考事項

熱帯地域でイワシ類を原因として発生するパリトキシン中毒(クルペオトキシズム)[7, 8]とは中毒症状が若干異なる。クルペオトキシズムは不快な金属味を感じるのが特徴で、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、悪寒、筋肉痛、血圧低下などの症状を呈し、重篤の場合は顔面蒼白となり、早いと15分程度で虚脱死する[7]。ヒトの中毒事例はないが、カワハギ科ウスバハギ属のソウシハギ(図6)も消化管や内臓にパリトキシンをもち、これによる家畜の死亡例がある[9]。

ソウシハギ

図6 ソウシハギ

7 文献
  1. Noguchi T, Hwang D F, Arakawa O, Daigo K, Sato S, Ozaki H, Kawai N, Ito M, Hashimoto K: Palytoxin as the causative agent in the parrotfish poisoning. Progress in Venom and Toxin Research. Gopalakrishnakone, P., Tan, C. K. eds., National University of Singapore, Kent Ridge, Singapore, 1987, pp. 325-335.
  2. Taniyama S, Arakawa O, Terada M, Nishio S, Takatani T, Mahmud Y, Noguchi T: Ostreopsis sp., a possible origin of palytoxin (PTX) in parrotfish Scarus ovifrons. Toxicon, 42, 29-33 (2003).
  3. 谷山茂人, 相良剛史, 西尾幸郎, 黒木亮一, 浅川 学, 野口玉雄, 山崎脩平, 高谷智裕, 荒川 修: ハコフグ類の喫食による食中毒の実態と同魚類の毒性調査. 食衛誌, 50, 270-277 (2009).
  4. 谷山茂人, 荒川 修, 高谷智裕, 野口玉雄: アオブダイ中毒様食中毒. ニューフードインダストリー, 45, 55-61 (2003).
  5. Taniyama S, Mahmud Y, Terada M, Takatani T, Arakawa O, Noguchi T: Occurrence of a food poisoning incident by palytoxin from a serranid Epinephelus sp. in Japan. J. Natural Toxins, 11, 277-282 (2002).
  6. 谷山茂人, 高谷智裕: 魚類の毒 (2): パリトキシン様毒. 食品衛生研究, 60 (1), 45-51 (2010).
  7. Halstead B W: "Poisonous and Venomous Marine Animals of the World", Vol. 2., U.S. Government Printing Office, Washington, D. C., 1976.
  8. Onuma Y, Satake M, Ukena T, Roux J, Chanteau S, Rasolofonirina N, Ratsimaloto M, Naoki H, Yasumoto T: Identification of putative palytoxin as the cause of clupeotoxism. Toxicon, 37, 55-65 (1999).
  9. Hashimoto Y, Fusetani N, Kimura S: Aluterin: a toxin of filefish, Aluteria scripta, probably originated from a zoantharian, Palythoa tuberculosa. Bull. Japan. Soc. Sci. Fish., 35, 1086-1093.

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