2022年12月26日 第94回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局総務課首席年金数理官室

日時

令和4年12月26日 10時00分~12時00分

場所

全国都市会館 大ホール

出席者

(委員)
野呂部会長代理、小野委員、駒村委員、佐藤委員、庄子委員、寺井委員、枇杷委員、山口委員

議題

(1)令和3年度財政状況について-厚生年金保険(第1号)-
(2)令和3年度財政状況について-国民年金・基礎年金制度-
(3)その他

議事

議事内容
○村田首席年金数理官 では、全員おそろいですので、定刻より少し早いですけれども、ただいまより第94回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、
資料1「令和3年度財政状況-厚生年金保険(第1号)-」
資料2「令和3年度財政状況-国民年金・基礎年金制度-」
でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、翁部会長から御都合により欠席される旨の連絡を受けております。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立していることを御報告申し上げます。
 なお、駒村委員、山口委員につきましては、オンラインでの御参加でございます。
 それでは、以降の進行につきましては野呂部会長代理にお願いいたします。

○野呂部会長代理 本日は、委員の皆様には年末の御多忙の中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 部会長代理の野呂でございます。御指名ですので、やや荷が重いと感じつつ、進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 さて、社会保障審議会年金数理部会では、年金制度の安定性の確保に関して、毎年度報告を受けております。本日は、令和3年度財政状況について、厚生年金保険(第1号)、国民年金・基 礎年金制度の報告を聴取いたします。
 カメラの方がいらっしゃれば、ここで退室をお願いしたいと思います。
 本日は、年金局数理課の佐藤課長と年金局事業企画課調査室の楠田室長に御出席いただいております。
 それでは、議題(1)に入りますが、まず、令和3年度の厚生年金保険(第1号)の財政状況について説明をお願いいたします。

○佐藤数理課長 数理課長であります。
 資料1の「令和3年度厚生年金保険の財政状況」について御説明いたします。例年と同様でありますけれども、年金財政の関係につきましては私から、受給者、被保険者の実績統計については隣の事業企画課調査室長の楠田から御説明いたします。また、本日は厚生年金保険の第1号被保険者に係る分ということですので、共済組合を除きます、いわゆる旧厚生年金保険の範囲での御報告となります。
 まず1ページをご覧ください。収支状況となります。平成29年度から令和3年度まで時系列に並んでおりますが、右のほうの令和3年度の欄をご覧ください。最初に収入総額でございますが、積立金の運用に関しましては時価ベースで整理しておりますので、括弧つきの時価ベースの数字をご覧ください。58兆3,015億円となっておりまして、前年度と比較して29.7%の減となっております。大きく減少となっておりますのは、前年度の令和2年度の時価ベースの運用利回りが23.96%と大きくプラスであったことから、運用収入が前年度と比較すると減少したことが主な要因となります。
 続いて、主な収入の内訳となりますが、まず保険料が33兆3,535億円ということで、前年度と比べまして1兆2,923億円、4.0%の増加となっております。この要因といたしましては、被保険者の増加や賃金上昇によりまして、年度累計の標準報酬総額が1.7%増加したということがあります。それに加えまして、新型コロナウイルス感染症の対策としまして、保険料の納付が困難な事業所において納付猶予特例制度が活用されまして、令和2年度に納付猶予が行われて、その保険料が令和3年度に納付されたということがあります。これが影響して増加しております。
 次いで国庫負担ですが、10兆1,906億円ということで、571億円の増となっております。
 運用収入については括弧のついた時価ベースで見ていただきますと、今年度は時価ベースの運用利回りが一番下の欄にあります5.16%という収益となっておりまして、収益額では9兆5,174億円のプラスとなっております。前年度のプラスが大きいため、前年度と比べると大きなマイナスということになっております。
 なお、丸い括弧づきの再掲ということで、年金積立金管理運用独立行政法人納付金が2,500億円となっております。この納付金につきましては、毎年度歳入歳出の状況を勘案しまして、歳入に不足が生じると見込まれる場合に前年度末までの運用収益額の中から納付することとされております。
 そして、基礎年金交付金が2,637億円となっております。
 その下の厚生年金拠出金収入が4兆7,316億円となっております。これは平成27年10月の被用者年金一元化に伴いまして、年金財政を一元化するために導入されたものでありまして、各実施機関が積立金や標準報酬などの負担能力に応じて厚生年金勘定に拠出するというものであります。
 なお、その下の積立金からの受入れですが、これは令和3年度もゼロとなっております。これは先ほどの運用収入からの納付金を受け入れてもなお歳入に不足が生じると見込まれる場合に積立金の元本から受け入れるというものになります。現状においては元本の受入れを必要としていないというものであります。
 続いて支出の項目になります。支出総額は48兆4,537億円ということでして、前年度と比較して3,170億円、0.7%の増加となっております。このうち給付費は23兆6,888億円でして、対前年度2,160億円の減少となっております。一方、基礎年金拠出金は19兆6,518億円でして、対前年度で2,260億円の増となっているというものであります。
 基礎年金拠出金につきましては、被用者年金の一元化で、基礎年金制度導入時に3号被保険者となった者が国民年金時代、昭和60年以前に任意加入したときに積み立てられた積立金、いわゆる妻積みと呼ばれるものでありますけれども、それを充当していくということになっておりまして、その充当額が厚生年金保険の第1号では約1,300億円となっておりまして、この1,300億円を控除した後の数字となっております。
 さらに、被用者年金一元化による各実施機関が厚生年金の保険給付に要する費用のために厚生年金交付金が交付されておりまして、これが4兆9,014億円ということで、対前年度で2,983億円の増となっております。
 以上、収支をトータルしての収支残ということになります。時価ベースで見ますと9兆8,478億円となっております。その結果、年度末の積立金は時価ベースで194兆615億円となっておりまして、前年度に比べて9兆8,688億円の増となっております。この増加額は、先ほどの時価ベースの収支差引残をベースに、収支差引残のすぐ下にあります業務勘定から積立金への繰入れ210億円を足したものでありまして、これが実質的な収支残となりまして、積立金の変化を表すということになります。
 収支状況は以上です。

○楠田調査室長 事業企画課調査室長の楠田でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは、受給権者及び被保険者の実績統計に関してご説明申し上げます。
 まず、2ページをご覧ください。こちらは給付状況に関する資料になっております。平成27年10月より被用者年金制度が一元化されておりますけれども、この給付状況の資料では、厚生年金保険の第1号に係る数値を計上しておりまして、一元化により新たに厚生年金保険に含まれることになりました国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、日本私立学校振興・共済事業団の情報は含んでいないことにご留意いただければと思います。
 また、特記事項の4に記載しておりますが、新法老齢厚生年金のうち、旧法の老齢年金に相当するものは「老齢相当」に、それ以外のものは「通老相当・25年未満」に計上しております。平成29年8月施行の受給資格期間の短縮により、被保険者期間が10年以上25年未満の方も新たに年金の受給権が発生しましたが、このような方々は「通老相当・25年未満」に計上されております。
 厚生年金保険の受給権者数でございますが、令和4年3月末の欄、こちらが令和3年度末の数値になりますけれども、この一番上の段をご覧いただきますと、受給権者数は全体で3,768万5,000人となっており、前年度と同水準となってございます。このうち「老齢相当」が1,618万人で前年度と比べまして0.5%の増加、「通老相当・25年未満」が1,474万人で1.1%の減少という状況でございます。
 年金総額につきましては、1つ下の2段目になりますけれども、こちらは厚生年金の年金総額ですので、基礎年金部分は含んでおりません。令和3年度末の年金総額は、受給権者全体で26兆4,180億円であり、これは前年度と比べて0.3%の減少となっております。このうち「老齢相当」が17兆5,942億円で0.5%の減少、また、「通老相当・25年未満」については0.8%の減少となっております。
 「老齢相当」の年金総額が減少した要因ですが、1階部分込みで支給される旧法の受給権者が抜ける一方で、報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金受給権者が加入したこと等により、令和3年度の年金総額が減少したと考えられます。
 続きまして、3ページでございます。こちらは繰上げ支給及び繰下げ支給の状況でございます。数字を見ていきますと、令和4年3月末の繰上げ支給の老齢厚生年金受給権者数は15万6,000人となってございます。一方、繰下げ支給の老齢厚生年金受給権者数は令和4年3月末で32万2,000人となっております。近年の状況を見ますと、繰上げ支給・繰下げ支給ともに増加傾向になっております。
 なお、老齢厚生年金の繰上げ制度は、報酬比例部分の支給開始年齢引上げに伴い導入されておりますが、平成30年度に女性の報酬比例部分の支給開始年齢が61歳に引き上げられたため、女性の繰上げ支給については、平成31年3月末から数値が計上され始めております。
 また、特記事項をご覧いただきますと、受給開始時期の選択が終了した、令和3年度末時点で70歳の方の繰下げ率は2.0%となっております。なお、令和3年度末において70歳の方は昭和26年度生まれの方で、報酬比例部分は60歳から支給されているため、報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられた方が対象となる繰上げ制度の対象とはなっておりません。
 次に4ページをご覧ください。こちらは老齢年金受給権者の平均年金月額等についてでございます。男女合計の「老齢相当」の老齢年金の平均年金月額は、一番上段にありますように令和4年3月末で9万615円となっておりまして、前年度に比べて1.0%の減少となっております。これは厚生年金分の平均年金月額に係る動きになりますので、2ページでもご説明したとおり、1階込みで支給される旧法の受給権者が抜ける一方で、2階のみの新法の受給権者が入ってくることで、構造的に減少しているものになります。
 この額に老齢基礎年金月額を加算した平均年金月額をご覧いただきますと、3段下の欄になりますけれども、14万3,965円となっております。こちらが基礎年金分まで含めた平均年金月額でございまして、前年度に比べて0.3%の減少となってございます。
 続きまして、5ページは、新規裁定者に関する資料でございます。新規裁定者の年金は、基本的には特別支給の老齢厚生年金ということになりますので、定額部分のない報酬比例部分のみの年金となってございます。
 令和3年度の加入期間が20年以上の新規裁定者の平均年金月額は9万4,711円となってございます。前年度に比べて14.0%の増加となっておりますが、これは令和3年度に女性の支給開始年齢が62歳に引き上げられたため、この年度に61歳を迎える女性が新規裁定の対象とならず、女性の新規裁定者が減少し、相対的に平均年金月額の水準が高い男性の割合が高まったことによるものと考えられます。
 前回、委員からもご指摘がございましたが、このように男女構成の変化による平均年金月額の動きを見てとれるよう、今回から受給権者数を併せてお示ししております。
 次に、6ページから8ページは、「老齢相当」の老齢年金につきまして、給付状況を詳細に見たものでございます。特に60代前半につきましては各歳別のデータとなっておりまして、支給開始年齢の引上げの状況が見てとれる形でお示ししております。
 厚生年金の支給開始年齢の引上げに関しては、報酬比例部分の引上げの影響と定額部分の引上げの影響の2種類がございます。支給開始年齢の引上げは、先に定額部分が引き上げられた後に報酬比例部分が引き上げられることから、報酬比例部分が引き上げられますと、それより下の年齢では、繰上げをしている場合または男性の坑内員・船員を除き、受給権者はいなくなります。
 6ページは男女計の数字ですが、男性と女性で引上げスケジュールがずれておりますので、7ページから8ページの男女別の数値をご覧ください。まずは報酬比例部分の支給開始年齢引上げの影響についてご説明いたします。7ページ、男性の62歳の平成31年3月末と令和2年3月末の欄、そして、8ページ、女性の61歳の令和3年3月末と令和4年3月末の欄をご覧ください。これらの箇所では、いずれも受給権者数が大幅に減少し、平均年金月額が大幅に増加しております。7ページの男性の場合で申し上げますと、令和元年度に報酬比例部分の支給開始年齢が63歳に引き上げられたことで、62歳について受給権者数が減少しており、基礎年金も含めて繰上げしている方及び年金額が比較的高い坑内員や船員の受給権者のみとなっていることから、平均年金月額が上昇しております。
 なお、老齢厚生年金を繰り上げる場合には、繰上げにより減額される一方で、制度上、老齢基礎年金も同時に繰り上げることとなるため、その分、平均年金月額が大きくなることにご留意ください。
 続きまして、8ページの女性についても、令和3年度に報酬比例部分の支給開始年齢が62歳に引き上げられたために、61歳の受給権者が減少し、61歳は基礎年金も含めて繰上げをしている方のみとなり、平均年金月額は上昇しているものと考えられます。
 次に、定額部分の支給開始年齢の引上げについてですが、8ページの女性について、64歳の平成30年3月末と平成31年3月末の欄をご覧ください。この箇所で平均年金月額が大幅に減ってございますが、こちらは定額部分の支給開始年齢の引上げにより、報酬比例部分のみの年金となったため、平均年金月額が低下しています。
 続きまして、9ページでございます。「老齢相当」の老齢年金受給権者の年齢構成でございますが、令和3年度末は、いわゆる団塊の世代、昭和22年から24年に生まれた方々が72歳から74歳になっていることもあり、70歳から75歳のところの構成割合を見ていただきますと、26.6%と他の年齢階級と比べて大きくなっている状況でございます。
 次に10ページでございます。老齢年金受給権者の年金月額の分布を示したものでございます。この年金月額は基礎年金月額を含んだ金額となっております。左側の「老齢相当」を見ますと、男女計の平均年金月額は14.4万円で、10万円前後の階級が最も多いことが見てとれます。一方、右側の「通老相当・25年未満」の分布を見ていただきますと、平均年金月額は6.3万円であり、「老齢相当」と比較して低い金額水準に分布していることが見てとれます。
 次に、11ページからは被保険者の状況でございます。被保険者の統計につきましては、被用者年金一元化後は、第1号厚生年金被保険者、つまり、一元化前から厚生年金であった部分に係る数値を計上しております。まず、被保険者数ですが、令和4年3月末、令和3年度末は4,064万5,000人となっておりまして、前年度に比べて17万3,000人、0.4%の増加となっております。このうち男性は0.2%の減少、女性は1.4%の増加となってございます。被保険者の平均年齢は、男性が45.1歳、女性が43.3歳、男女計で44.4歳となっております。男女計では、前年度に比べて0.3歳上昇したという状況でございます。
 次に、下の囲みの中段ぐらいのところにありますが、標準報酬総額<総報酬ベース>(年度累計)の数値を見ていただきますと、こちらにつきましては183兆599億円となっておりまして、前年度に比べて1.7%の増加ということでございます。
 1人当たりの標準報酬額の総報酬ベースの月額ですけれども、こちらは一番下の段でございますが、男性が42万7,563円、女性が28万8,501円、男女計で37万3,308円となっておりまして、男女計では前年度に比べ1.3%の増加となってございます。
 また、平成28年10月から厚生年金保険の適用拡大が行われ、一定の要件を満たす短時間労働者も加入対象となっておりますが、こちらについては再掲としております。
 令和4年3月末において短時間労働者の被保険者数は56万9,000人となっておりまして、前年度に比べて3万9,000人、7.4%の増加となっております。
 なお、平成29年4月から、従業員数が500人以下の会社で働く方も、労使で合意がなされれば社会保険に加入できるようになりましたが、そのような任意加入の被保険者数は、特記事項に記載しておりますように、令和4年3月末現在で1万1,000人となっております。短時間労働者の被保険者の平均年齢については50.4歳となっておりまして、前年度に比べて0.2歳上昇したという状況でございます。また、特記事項に「70歳以上で老齢厚生年金、老齢基礎年金等の老齢給付や退職給付の受給権がなく、任意で厚生年金保険に加入している高齢任意加入の被保険者数」を示しておりまして、令和4年3月末現在で590人となっております。
 次に、12ページをご覧ください。こちらは被保険者の分布でございます。上段が被保険者全体の分布、下段が短時間労働者の分布になっております。
 こちらも男性、女性別にご覧いただきたいのですが、まず13ページの男性について、上段の分布を見ていただきますと、45歳以上50歳未満の人数が最も高くなっておりまして、14.3%でございます。ここをピークとした山の形になっております。
 一方、下段の短時間労働者の再掲を見ていただきますと、60歳以上65歳未満、65歳以上の人数が多くなっており、高齢層にピークがあることが分かります。
 続いて、女性の分布でございますが、こちらは14ページでございます。まず上段の分布を見ていただくと、女性の場合はピークになる場所が2か所ございまして、1つは25歳以上30歳未満のところの11.9%、もう1つは45歳以上50歳未満のところの13.8%となっておりまして、いわゆるM字カーブの形、山が2つある形となっております。こちらの分布の傾向につきましては、従来と変わりないということでございます。
 一方、短時間労働者の再掲を見ていただくと、50歳以上55歳未満のところが15.3%と最も大きくなっており、ここをピークとした山の形になっております。
 次に15ページでございます。こちらは標準報酬月額等級別の被保険者の分布でございます。左側が被保険者全体の分布、右側が短時間労働者の再掲になっております。
 まず、男性につきましては、一番多いのが65万円の等級でございまして、こちらが全体の8.8%を占めております。次に多いのが26万円、28万円、30万円の辺りのところでございまして、それぞれ6.6%、6.3%、6.7%と6%台になってございます。
 女性につきましては、その右隣の列でございますけれども、22万円のところが最も多く10.2%、その前後のところが8%から9%ということで多くなってございます。
 右側の短時間労働者の標準報酬月額の分布を見ていただくと、男女ともにピークが11.8万円と、等級の低いところに山ができていることが見てとれます。
 以上です。

○佐藤数理課長 続きまして、16ページの積立金の運用状況についてでございます。1号厚生年金の資産の状況となりますが、まず上の表の右側、令和3年度末の積立金194兆615億円の資産構成割合です。預託金が3.9%、市場運用分が96.1%となっております。
 次いで下の表、資産区分別の内訳になりますが、国内債券が23.3%、国内株式が24.2%、外国債券が23.8%、外国株式が24.8%、預託金が3.9%となっております。
 次のページ、17ページは収支について、財政検証における将来見通しと実績を比較したものとなります。この比較につきましては、令和2年度の財政状況を報告した昨年より基礎年金拠出金等につきましては特別会計の決算値ではなく確定値を用いること、また、年度末積立金については時価評価額に加えて、平滑化後の評価額についても括弧書きで記載するといった見直しを行っております。
 また、財政検証と比較するために収支の範囲等を財政検証にそろえて実績を作成しているところであります。具体的には今御説明したとおり、基礎年金拠出金等は特別会計の決算値ではなく確定値を用いることとしております。また、特別会計の実績に厚生年金基金の代行部分や国庫負担の繰り延べ分を加えまして、収入、支出、積立金を作成しているところであります。さらに、基礎年金交付金につきましては、収入、支出の両面から控除して、基礎年金勘定との会計上のやり取りを相殺しているところであります。こういった方法によりまして、財政検証ベースの実績を作成しております。詳しくは特記事項に記載しているところであります。
 将来見通しは令和元年財政検証結果ということになりますが、1号厚生年金の実績と比較するということで、将来見通しにつきましても、共済分を除いた数値を掲載しているところであります。
 また、令和元年財政検証は幅広い経済前提を設定しておりまして、複数の財政見通しを作成しておりますが、ここではケースⅠ、ケースⅢ、ケースⅤ、この3つの数値を掲載しております。いずれも数値としてはおおむね同水準の値となっております。将来見通しにつきましては、以降、真ん中のケースⅢで数値を申し上げます。
 まず保険料収入ですが、令和元年財政検証では32.9兆円と見込んでおりましたが、実績は33.4兆円ということで、0.5兆円ほど実績のほうが多くなっております。この差の要因としては、被保険者数が見通しより多かったことに加えまして、先ほど収支状況のところでも説明いたしましたが、納付猶予特例によって令和2年度に猶予された保険料が令和3年度に納付されたといった影響もあるものであります。
 続いて、国庫負担は将来見通し9.9兆円に対して実績が9.8兆円となっております。
 被用者年金一元化に伴って導入された厚生年金拠出金収入については、将来見通しが4.7兆円に対して実績が4.5兆円。
 運用収入につきましては、将来見通しが2.9兆円に対して実績は時価ベースで10.0兆円となっております。要因の欄に書いてありますけれども、名目運用利回りが見通しの1.7%に対して実績は5.16%と高かったことによるものであります。
 続いて支出になります。給付費が将来見通し24.8兆円に対して実績が24.0兆円。基礎年金拠出金が将来見通し19.2兆円に対して実績が18.9兆円。また、被用者年金一元化に伴い導入された厚生年金交付金が将来見通し4.9兆円に対して実績が4.8兆円となっております。いずれも実績のほうが若干少なくなっているということですが、これは年金改定率が累積で実績のほうが0.8%程度低くなっていることに加えまして、受給資格期間を考慮せずに全ての被保険者期間を年金に反映させるという保守的な推計を将来見通しで行っていることによる影響と考えております。
 年度末積立金は将来見通しで174.7兆円と見込んでいたものが、実績では時価評価額で207.7兆円、平滑後の評価額で197.5兆円と、いずれも実績のほうが将来見通しを上回っているというものであります。
 続いて、18ページ、被保険者数及び受給者数の比較ということになります。将来見通しにつきまして、労働参加が進むケースで数字を申し上げますと、左の欄の被保険者数につきまして、将来見通し3,992万2千人に対して実績が4,086万4千人となっておりまして、実績のほうが大きくなっています。受給者数の総数で見ますと、将来見通し3,699万8千人に対して実績が3,589万人となっておりまして、逆に実績のほうが小さくなっています。内訳を見ますと、老齢相当については実績のほうが大きくなっておりますが、通老相当、障害年金、遺族年金は実績のほうが小さくなっているというものであります。
 続いて、19ページから財政指標の比較となります。19ページが年金扶養比率、何人の被保険者で1人の受給者を支えるかという比率になります。財政検証の見通しを下の表で見ていただきますと、左側の欄になりますが、労働参加が進むケースで令和3年度は2.62に対して実績についても2.62ということで、同じ値になっているところであります。
 最後となりますが、20ページ、積立比率の比較となっております。積立比率は前年度末の積立金が当年度の国庫負担を除きました実質的な支出の何年分に相当するかを表したものになります。下の表の将来見通しで見ていただきますと、ケースⅠ、Ⅲ、Ⅴ、いずれも令和3年度は5.1となっております。一方、上の表の実績を見ていただきますと、積立金を時価評価したもので6.0、括弧内の平滑化した場合でも5.5となっておりまして、実績のほうが高くなっております。これは令和2年度末の積立金と比較しているということで、令和2年度の運用が非常に好成績だった結果ということであります。
 あと、このページで賃金上昇率等の実績についても御確認いただきたいと思います。上の表の右から3つ目の欄の賃金上昇率、こちらは名目の賃金上昇率となりますが、この実績を見ていただきますと、令和2年度はマイナス0.51%ということだったわけですが、令和3年度は1.26%のプラスとなっているところであります。それで、同年の物価がマイナス0.2%ですので、実質賃金上昇率で見ますと1.46%ということになっております。
 下の表の財政検証の見通しで見ていただきますと、名目の賃金上昇率がケースⅢで申しますと1.4%に対して、物価上昇率が1.0%ですので、実質賃金上昇率はプラス0.4%となっていまして、実績のほうが上回っているということになります。
 令和2年度にコロナウイルス感染症の流行が発生いたしまして、年金財政の影響も懸念されたところでありますが、令和3年度時点で見ますと、厚生年金被保険者数、実質賃金上昇率、運用利回りといった年金財政に大きな影響を与えます要素につきまして、悪影響を大きく与えるようなものは観測されていないというところではないかと存じます。
 一方、今回の資料にはないのですけれども、合計特殊出生率の令和3年の実績が1.30というふうに低下してきておりまして、こちらは将来推計人口の中位推計の見通しを下回っておりまして、長期的に年金財政に大きな影響を与える可能性があるものと考えております。
 いずれにいたしましても、年金財政というのは一時的な変動ではなくて長期的な動向が重要と考えておりますので、コロナの影響につきましても一時的なものなのか、それとも長期的に影響を与え続けるものなのかと、そういった視点を持って引き続き動向を注視していきたいと考えているところでございます。
 私からは以上であります。

○野呂部会長代理 ありがとうございました。
 ただいまの御説明に関しまして、何か御意見、御質問がありましたら、よろしくお願いします。
 どうぞ、寺井委員。

○寺井委員 寺井でございます。御説明をいただきまして、どうもありがとうございました。私のほうからは2点質問をさせていただければと思います。
 1点は1ページ目の保険料収入でございます。令和2年度から令和3年度にかけて4%伸びている、この理由も丁寧に御説明くださいました。私のほうからは、コロナの影響について、できましたらこの機会にもう少し詳しく伺ってみたいと思います。それが1点です。
 それからもう一点は18ページでございます。ここで被保険者数と受給者数が令和元年財政検証時の将来見通しと少し違ってきているというお話でした。被保険者数が将来見通しに比べて実績値が多く、それから、特に受給者数の中でも通老相当が将来見通しよりも実績値のほうが小さいというふうに拝見します。この理由についてお伺いしたいのと、次の財政検証に何がしかの影響があるのかということについてお伺いできればと思います。
 以上です。

○野呂部会長代理 よろしいでしょうか。

○佐藤数理課長 お答えいたします。まず、1ページの保険料が4%ほど伸びているということですが、これはコロナの影響はどうかということですけれども、コロナの影響につきましては、説明でも申しましたが、納付猶予特例があって、それによって2年度の保険料が減って、3年度の保険料が増加しているという影響があります。
 それを除くと、保険料というのは保険料率が18.3%で固定されておりますので、そのベースになっている標準報酬総額がどれだけ伸びているかが重要ということです。そちらはこの資料で言いますと11ページの下のほうの表の標準報酬総額(総報酬ベース)(年度累計)という欄がありますけれども、こちらが令和2年度から令和3年度に比較して1.7%ぐらい伸びているということです。つまり、保険料の賦課ベースになっている賃金が1.7%、総額で増えていると。この要因といたしましては、同じページの一番上で見ていただきますと、被保険者数が0.4%程度増えている影響と、あと、1人当たりの賃金もさらに増えているということで、その両方とも2年から3年に比べて増えているということで、保険料については被保険者数も増えて賃金も伸びている。その影響で1.7%増えているといったことで、コロナがあったにもかかわらず、ベースになっている人も賃金も増えているというところだと思います。
 続いて、もう一つ御質問にあった18ページ、被保険者数と受給者数の比較で、被保険者数がそもそもどうして伸びているかということですけれども、これは特に高齢者の労働参加が進んでいます。あと、女性についても労働参加が進んでいるのですけれども、細かく就業率の実績と将来見通しで比較してみますと、特に高齢者のほうが大きく労働参加が見通しより進んでおりまして、その影響で厚生年金の被保険者数が増えていると考えております。一方、受給者数は実績のほうが下回っているということで、特に通老が下回っているということです。
 昨年もこの点はちょっと御説明したのですけれども、老齢相当が増えていて通老相当が少なくなっているという現象が起きているのですが、これは実はちょっと技術的な問題があります。まず実績のほうは、老齢か通老かの判定で被保険者期間がどれだけあるかというのを見るのですけれども、その実績のほうは共済期間も含めて判定しています。一元化以降ですけれども、平成27年10月以降に裁定された人については、共済期間も含めて老齢相当かどうかを見ているのですけれども、将来見通しは共済と厚生年金を分けて計算しているということで、厚生年金だけでしか判定できていなくて、その結果、老齢が減って通老が増えているという影響があります。この点は何か改善できるかどうか、次の財政検証に向けて検討していきたいと思います。
 あと、財政検証のほうは受給資格期間10年と、こちらも考慮することなく全ての期間を年金に反映させると。これもちょっと技術的に難しいために、そういう計算をしているということです。
 ですから、特に通老の人、期間の短い人が増えるという推計になっていますが、その点で通老相当が増えているという影響があるものと考えております。この点は次の財政検証までに何か改善できるかどうか難しいところもあるのですけれども、検討はしていきたいと思います。
 以上です。

○野呂部会長代理 よろしいですか。初めの御質問についてざっくり整理すると、標準報酬総額の伸びで1.7%、コロナによる納付猶予の年度間でこぼこで2.3%、そういう分解だということでよろしいでしょうか。

○佐藤数理課長 ざっくりと言えばそういうことだと考えております。

○野呂部会長代理 ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。
 庄子委員。

○庄子委員 御説明ありがとうございました。私は、数字の中身の御質問ではないのですが、今日拝見している令和3年度の財政状況の資料は、データシートという感じがします。説明時に口頭で補足いただいているのですが、まず、令和3年度の財政状況について、概観や総括を冒頭に追記頂けないか、というのがまず1点目でございます。年金数理部会でフォームを統一して依頼していると思いますので、今後この資料の数字を見る前に、令和3年度の財政状況を概括すると、ここがポイントです等と記載いただくと、どこに着目して資料を見ればよいのかある程度分かるので、そのような形にならないかと思います。
 また、2点目ですが、項目ごとにも、数値の動きの理由を口頭で御説明があったと思いますけれども、その説明内を例えば表の右側に備考欄をつくって、特記事項や動きが著しく変動しているものがあれば、御記入いただいたほうが、見る側としても、また数理部会で最終的にまとめて検討する際にもとても有意義な情報になるのではないかなと思いました。依頼資料の形式を御検討いただけないかと思います。
 それから3点目です。財政検証との比較が17ページ以降にありますが、財政検証との比較は決算内容と同様非常に重要だと思っていまして、いろいろなシナリオのどの辺りに現状は来てるのか、出生率等は前提と違って大分下がっているとか、その辺りはすごく大事だと思いますので、特徴的なところは、ヘッダーとか右脇とかに、御解説を記載いただくようなフォームになっているといいと思います。個人的な感想ですが、私は決算よりもこちらの財政検証との比較のほうが重要ではないかなと感じます。前回の財政検証に対して、今はどのような状況となっているのかがより見るべきところではないかなと思いましたので、ここを厚めに記載いただけるとありがたいと感じました。
 分かっていない中でいろいろ申し上げて大変恐縮ですが、以上でございます。

○野呂部会長代理 それでは、まず、事務局にそういう資料を求めるフォーマットに変更してはどうかという点をお願いしたいと思います。

○村田首席年金数理官 貴重な御意見をどうもありがとうございます。様式につきましては、今後ちょっと委員の皆様と一緒に検討させていただきまして、来年度の令和4年度の決算ヒアリングに向けて何ができるかということを考えさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○野呂部会長代理 それから、説明者の方にはいきなりになりますけれども、もし今年、令和3年度につきまして、総括をお話しいただけるとすると、どんな感じか、今もしお話しいただけるようでしたら、よろしくお願いしたいと思います。

○佐藤数理課長 すみません。最後に総括のつもりで御説明したこともあって、ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども、年金財政はやはり重要な要素といたしまして人口と経済と労働力というものがありまして、人口につきましては出生率が低下しているということで、それは非常に大きな懸念な点ということ。あと、労働力という点で厚生年金の被保険者数がどうなっているかというのは非常に重要でありまして、そこについては令和3年度も増えているということで、悪い影響はないのかなということ。それから、経済ということで、運用利回りはよかったですし、あと、先ほど申し上げた実質賃金上昇率も令和3年については見通しを上回っているということで、その点も決して悪影響を与えるものではないということで、総括しますと、出生率については懸念ではありますが、それ以外の点については、コロナがあったにもかかわらず、そんなに大きな悪い影響はないのかなと考えているところであります。
 以上であります。

○野呂部会長代理 来年度からの課題ということでよろしいでしょうか。

○庄子委員 ありがとうございます。今お話しいただいたような内容は、事務局として文字に落とすのは手間がかかり難しいと思われるのかもしれませんが、我々の理解のためにはぜひ御記載いただけるとすごく助かると思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○野呂部会長代理 ほかに御意見、御質問がありましたら、よろしくお願いします。
 枇杷委員、どうぞ。

○枇杷委員 ありがとうございます。1点だけなのですけれども、1ページの給付費と2ページの受給権者の年金総額の関係をちょっと確認ということでお伺いしたいのですが、構造的には旧法から新法に切り替わっていくということで、年金総額は構造的に減っていくというお話をいただきました。実際、2ページのほうはそういう動きをおおむねしているかなということなのですけれども、実際の給付費は30年度、令和元年、令和2年でちょっとずつ実は増加していて、今年初めて減っているというような状況になっています。この辺のメカニズムを理解したいので、御説明をいただければと思います。
 以上です。

○野呂部会長代理 お願いします。

○佐藤数理課長 すみません。直ちに適当なお答えは難しいのですが、決算のほうについても同じように旧法の給付費プラス新法の給付費ということで、旧法のほうは定額部分が入っているということですので、傾向としては減っていく要素があると考えています。動きが若干違うとこについては、よく調べていきたいと思います。

○野呂部会長代理 よろしいですか。お願いします。

○楠田調査室長 あと、数字の性質の違いなのですけれども、2ページの年金総額のところにつきましては、年度末時点の受給権者について年金額を全部足したものということで、停止されているものについても全部含まれていることに御留意いただければと思います。給付費というのは1年間トータルのフローだと思うのですけれども、年金総額はあくまでもワンショットのところの額であるという違いがあることにもご留意いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○枇杷委員 ありがとうございます。その点は理解しておるつもりなのですけれども、そうすると、例えば支給停止の影響が大きく出ているとか、その状況が変わったみたいなことなのかもしれないのですが、いずれにしてもその辺のメカニズムを腹落ちして理解したいなということでしたので、よろしくお願いします。次回で結構です。

○野呂部会長代理 それでは、駒村委員、よろしくお願いします。

○駒村委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。質問というか、追加資料というか、今年間に合わなければ、また来年以降検討願いたい部分が2つあります。
 1つは3ページ目です。注のところで繰下げ受給について言及があって、2%という数字が出ています。これは男女別に今後は集計をしていただけないかなと思っております。国民年金も同じコメントをしますので、ここでまとめてしてしまってもいいと思うのですけれども、厚生年金のほうは60から75歳にこれから受給できる年齢が広がっていくわけですので、特に繰下げのほうは動向をモニターしたほうがいいのではないかと思っております。
 本当は繰下げ、繰上げ両方の選択状況を男女別で見ていくと。厚生年金の場合、繰上げはハードルが高いということで先ほど御説明がありましたけれども、少し繰上げ、繰下げについての情報を、男女別とか失権率なども見られるようなデータを提供していただければいいのではないかなと思います。
 それから、状況報告のもう一つの目的は、最近変化がどうなっているかというのを見るところだと思いますが、2つ目の質問になりますが、現在の受給者の分布は10ページで出ているわけですけれども、新規裁定者については平均額のみになっていると。男女やいろいろ支給開始年齢等の動きもあって、新規裁定者の年金動向を見るのはなかなか難しいわけですけれども、新規裁定についても10ページ同様の分布表みたいなものはつくれないのかどうなのか、これは質問になります。よろしくお願いいたします。

○野呂部会長代理 いかがでしょうか。

○楠田調査室長 繰上げ、繰下げ率について男女別にということだったのですけれども、国民年金のときにまとめてお話しすればいいというふうにおっしゃっていただいたのですけれども、まず、厚生年金の部分について申し上げますと、現時点では令和2年度末まで男女別が出ておりまして、令和2年度の数字で新法老齢厚生年金の受給権者の繰下げ率は男女計で1.6%ですけれども、うち男性は2.0%、女性は1.3%となっております。令和3年度の男女別のデータは今精査中ですけれども、速報値で見ますと、大体同じような傾向になっているということでございます。
 続きまして、10ページの年金額の分布について、新規裁定者の分について検討できないかということで頂戴いたしましたけれども、こちらにつきましては、データがあるかどうかというところも含めて検討させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○野呂部会長代理 駒村委員、よろしいでしょうか。

○駒村委員 ありがとうございます。新規裁定者の分布を見ると、若い世代でどう分布が変化しているのか、速報値というか今後の予測が見える。受給者だとやはりストックデータになって、過去の状況を反映したもののウエートが大きいので、やはり変化を見るためには新規の受給者分布も見ておく必要があるのではないかなと思いまして、お願いしました。ありがとうございます。検討いただければと思います。

○野呂部会長代理 それでは、よろしくお願いします。
 佐藤委員。

○佐藤委員 詳細かつ丁寧な御説明をありがとうございました。私も初めての説明でしたので、庄子委員と全く同感で、全体の総括感があるとすごくよいなと思いまして、先ほどの補足の御説明もありがとうございました。
 私も17ページが非常に重要だと思っているのですけれども、財政検証、今回よかった要因は運用収入、運用利回り。これは一昨年ですとより大きかったと思うのですけれども、運用というのは毎年うまくいくわけではないので、先ほど財政検証は長期で見ることが大切という御説明もあったのですけれども、それを確認するのが20ページ目。運用のインパクトというのは、この20ページにある積立金の金額にも表れてきますので、5年が長いのか短いのかというところはありますけれども、そこが長期で確認するページという理解でよいのでしょうか。

○野呂部会長代理 お願いします。

○佐藤数理課長 おっしゃったとおり、運用というのは長期で見る必要があるということで、といっても今出ている実績までしか確認できませんので、その意味でいうと、おっしゃられた20ページの積立て比率というのが結局、これまでの運用の結果が積立金に表れてくるということで、今時点の積立金がどうなっているかというのは非常に重要な指標ではないかなと理解しております。

○佐藤委員 ありがとうございます。運用実績ですと、例えばGPIFは過去20年ぐらいの非常に長期にわたる実績をお示しされていて、財政検証の場合にはデータも細かいので限度があるかとは思うのですけれども、できるだけ長期で見ると安心なのだということが分かるような資料があるといいなと思います。ありがとうございます。

○野呂部会長代理 よろしいですか。ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
 私からもお願いが1点ありまして、今の駒村委員のお話の続きのようなことですけれども、3ページにあります繰下げの状況で、現在、70歳時点での繰下げの状況を、去年が1.6%、今年が2.0%とお示しいただいており、これは繰下げが利用されている状況がよく分かるいいデータであると思います。
 申し上げたいのは、繰下げの最高年齢が今度75歳になるのですけれども、データ的には時系列で見ていきたいと思いますので、75歳まで繰下げができるようになった場合でも、当面の間はやはり70歳で定点観測するという方向で、来年度以降もお願いしたいというのが希望でございます。お願いします。

○楠田調査室長 75歳まで引き上げられるということで、それにもかかわらず、70歳のところで見ていくというのは必要だと考えておりまして、それにプラスアルファでどういう見方をすればいいのかという点については今後検討させていただきたいと思っております。

○野呂部会長代理 よろしくお願いします。
 こちらについては、厚生年金保険につきましてはよろしいでしょうか。
それでは、以上で厚生年金保険(第1号)についての報告の聴取を終わりたいと思います。
続いて、議題(2)に入りますが、令和3年度の国民年金・基礎年金制度の財政状況について御説明をお願いします。

○佐藤数理課長 それでは、資料2の国民年金・基礎年金の財政状況について御説明いたします。
 まず1ページをご覧ください。こちらは基礎年金勘定の収支状況ということになります。基礎年金というのは毎年毎年、厚生年金及び国民年金、実施機関を含む厚生年金ですが、それぞれ拠出金を出していただいて、それで基礎年金の給付に要する費用を賄うという仕組みになっております。
 まずこの収入総額のほうから見ていただきますと、収入総額は令和3年度で26兆9,690億円ということで、前年に比べて6,060億円の増であります。一方、支出総額は24兆6,363億円で前年度に比べて1,256億円の増加となっております。その結果、収支差引残が2兆3,327億円ということで、前年に比べて4,804億円の増となっております。
 収入の大部分は先ほど言いましたように基礎年金拠出金となっております。また、積立金より受入れの中には、先ほど厚生年金のところでも御説明いたしました被用者年金一元化に伴って拠出金の軽減に活用するということになった、いわゆる妻積み部分が含まれているところです。ここで妻積み部分を受け入れた分、基礎年金拠出金が軽減されて各制度から拠出されるということになっております。
 支出につきましては基礎年金給付費。ここで言う基礎年金給付費というのはいわゆる新法、昭和60年改正以降に裁定された給付ということになりますが、こちらが24兆926億円となっておりまして、前年度に比べて2,873億円、1.2%の伸びになっております。一方、旧法の基礎年金に相当する給付は基礎年金交付金ということになりますが、これが5,432億円となっていまして、前年度に比べて1,618億円の減少となっております。
 下から3段目の基礎年金拠出金算定対象者数をご覧いただきますと5,445万7千人ということで、前年度に比べて4万3千人、0.1%の減少となっているところであります。
 一番下の段、1人当たりの基礎年金拠出金、これは拠出金を先ほど申した拠出金算定対象者数で割った1人当たりの単価ということになりますが、これのうちの国庫負担を除く保険料相当額をご覧いただきたいと思います。一番下の欄になります。こちらは月額1万8,543円ということになりまして、前年度に比べて132円上昇しております。この金額は令和3年度の国民年金の保険料月額1万6,610円より高くなっているということであります。これの意味するところでありますが、基礎年金拠出金を国民年金保険料だけでは賄うことができないということでありまして、積立金等を活用している状況を示しているものであります。
 続きまして、2ページですが、こちらは令和3年度の基礎年金拠出金や拠出金算定対象者数などの制度別の内訳ということになります。基礎年金の拠出金とか交付金につきましては、予算で設定する概算値と実績により確定する確定値とがあります。そして、概算値と確定値の差は翌々年度に精算するという仕組みになっております。したがって、決算の収支に出てくる基礎年金拠出金とか交付金というのは、概算値と前々年度の精算値を合計したものとなっておりますが、2ページの表につきましては実績による確定値で整理させていただいております。
 また、注2に書いておりますが、基礎年金拠出金軽減のための受入額、いわゆる妻積みの部分については控除する前の数値となっていまして、控除額を括弧書きにして再掲しているところであります。
 上の表ですけれども、基礎年金給付費の本来部分、これは新法の部分になりますが、これが24兆857億円と。それに旧法分の基礎年金相当給付費、その隣になりますが、5481億円ということで、両者を合計したものが一番右の欄の24兆6,338億円となっています。これから下の表の右側にあります特別国庫負担額3,985億円を差し引いたものが基礎年金拠出金の合計になりまして、24兆2,353億円ということで、これを各制度が拠出金算定対象者数に応じて分担するということなります。その分担額はご覧のとおりということであります。
 続きまして、3ページをご覧ください。国民年金勘定の収支状況となります。こちらはいわゆる第1号被保険者の収支状況を見たということになります。
 まず収入につきまして、こちらも時価ベースの括弧書きの中で見ていただきますと、収入総額が3兆9,729億円となっております。
 主な項目をそれぞれ見ていきますと、保険料が1兆3,496億円で、前年度に比べまして131億円、1.0%の増加となっております。
 保険料収入につきまして、第1号被保険者数は減少しておりまして、あと免除者数も増加しているということがありますが、納付率が上昇していることに加えまして、納付率に表れてこない追納保険料についても増加しているということでして、これらの影響により増加しているところであります。
 国庫負担は1兆8,915億円、前年度に比べて607億円、3.3%の増になっております。これにつきましては下の支出の欄の基礎年金拠出金が、令和3年度は3兆3,291億円と前年度に比べて1,363億円、4.3%増となっておりますので、これに対応して国庫負担も増えているところであります。
 収入のほうに戻っていただきますと、運用収入は時価ベースで5,319億円、運用利回りが一番下にあります5.23%となっておりまして、その結果となります。前年度の運用利回りがこちらも高かったため、前年度と比較すると大幅な減少となっているところであります。
 なお、丸い括弧つきの再掲ですけれども、年金積立金管理運用独立行政法人納付金が5,000億円となっております。こちらは厚生年金でも説明しましたが、歳入に不足が見込まれる場合に前年度末までの運用収益の中から納付されるものであります。
 また、積立金より受入れはゼロとなっていますが、こちらはGPIFからの先ほどの納付金を受け入れてもなお歳入に不足が見込まれる場合に積立金の元本から受け入れるものとなっています。令和3年度は納付金を受け入れれば不足が見込まれなかったため元本からの受入れは要しなかったということになります。
 支出について見ていただきますと、支出総額は3兆7,426億円ということで、前年度に比べて822億円の増加となっております。その大部分が基礎年金拠出金となっているものであります。
 その結果、収支残を見ていただきますと、時価ベースで2,303億円となっております。これにその下の業務勘定から積立金の繰入れ、79億円を足したものが時価ベースで見た積立金の増加額、実質的な収支残ということになりまして、前年度の比較の欄にある2,382億円、積立金の増加分ということになります。これが実質的な収支残で、この結果、年度末の積立金は時価ベースで10兆5,642億円となっているものであります。
 続いて、4ページは参考ということになりますが、3ページの保険料収入の内訳になります。現年度保険料と過年度保険料別に見たものであります。
 先ほど保険料の増加要因で申しました追納保険料が再掲で確認できますのでご覧いただきますと、令和3年度は452億円ということで、前年度と比べて76億円、20.1%の増と大きく増加しているところであります。

○楠田調査室長 続きまして、5ページをご覧ください。こちらは給付状況についての資料でございます。掲載しております数値は、新法の基礎年金と旧法の国民年金を合計したものとなっております。被用者年金のいわゆる「みなし基礎年金」に係る部分は含まれておりません。
 まず、受給権者数でございますが、令和4年3月末は合計で3,679万1,000人となっておりまして、前年度に比べて18万7,000人、0.5%の増加となってございます。このうち「老齢年金・25年以上」は3,342万9,000人となっており、0.4%の増加になってございます。「通算老齢年金・25年未満」につきましては、令和4年3月末で93万4,000人、前年度に比べて0.4%の減少になってございます。
 年金総額につきましては、1つ下の段のところになりますが、令和4年3月末で24兆8,936億円となっておりまして、前年度に比べて1,799億円、0.7%の増加となっております。この大部分を占めております「老齢年金・25年以上」について見ますと、令和4年3月末で22兆6,120億円、前年度に比べて0.7%の増加となってございます。
 続きまして、6ページでございます。こちらは繰上げ支給・繰下げ支給の状況についての資料でございます。まず、繰上げ支給の男女合計の受給権者数ですが、令和4年3月末で384万4,000人となっておりまして、前年度に比べ16万人、4.0%の減少となってございます。近年の状況を見ますと、減少傾向で推移してございます。
 一方、繰下げ支給の受給権者数は令和4年3月末で61万2,000人となっており、前年度に比べて5万9,000人、10.6%の増加になってございます。繰下げ支給の受給権者数については近年増加傾向で推移している状況でございます。
 また、特記事項をご参照ください。受給開始時期の選択が終了した令和3年度末時点で70歳の基礎のみの老齢基礎年金受給権者の繰上げ率は15.9%、繰下げ率は3.1%となっております。
 ここで、先ほど駒村委員からご質問がありました70歳時点の繰上げ・繰下げ率の男女別でございますけれども、先ほども申し上げましたが、令和3年度はまだ出ておりませんので、令和2年度で申し上げますと、繰上げ率は男女計で16.8%になっておりまして、うち男性は19.2%、女性は15.2%となっております。また、繰下げ率は男女計で2.6%となっておりますが、うち男性は3.1%、女性は2.2%と、いずれも男性のほうが高くなっているという状況でございます。令和3年度につきましても、この状況はほとんど変わらないと考えております。
 続きまして、7ページでございます。こちらは上段と下段がございますけれども、上段につきましては、老齢年金受給権者の平均年金月額及び平均加入期間についての資料でございます。男女合計の「老齢年金・25年以上」の平均年金月額は、令和4年3月末で5万6,368円と、前年度に比べ116円、0.2%の増加となってございます。また、平均加入期間についても397月と、前年度に比べて3月の増加となってございます。
 下段につきましては、新規裁定者についての資料でございます。男女計の「老齢年金・25年以上」に係る新規裁定者の老齢年金平均年金月額は、令和4年3月末で5万4,050円と、前年度に比べ371円、0.7%の減少となっております。また、平均加入期間につきましても419月と、前年度に比べて1月の減少となってございます。
 続きまして、8ページは老齢年金受給権者の年齢構成についてでございます。男女合計で見ますと、割合が最も大きいのが70歳以上75歳未満の26.8%、次いで65歳以上70歳未満の19.4%となってございます。平均年齢は男性が76.2歳、女性が77.8歳、男女計で77.1歳となっております。前年度末は男女計で76.8歳でしたので、0.3歳の上昇と、若干ではございますが、年齢構成は高いほうにシフトしている状況でございます。
 続きまして、9ページは老齢年金受給権者の年金月額の分布でございます。上段は受給権者全体に関する分布、下段はいわゆる基礎のみの受給権者に関する分布になっております。さらにそれぞれについて、左側が「老齢年金・25年以上」、右側が「通算老齢年金・25年未満」の分布を示しております。上段の受給権者全体について、左側の「老齢年金・25年以上」の分布を見ると、年金月額が6万円から7万円の階級が44.9%と最も多くなっていますが、右側の「通算老齢年金・25年未満」の分布を見ていただきますと、比較的低い水準の金額階級の割合が高くなってございます。
 続きまして、10ページでございます。こちらは被保険者の状況でございますが、まず被保険者数については、第1号被保険者数は引き続き減少傾向が続いておりまして、令和4年3月末で1,431万2,000人となっており、前年度に比べて18万3,000人、1.3%の減少になっております。第3号被保険者数については、令和4年3月末で762万7,000人となっておりまして、前年度に比べて30万3,000人、3.8%の減少となってございます。
 被保険者の平均年齢は、令和4年3月末で第1号被保険者が39.4歳、第3号被保険者が45.4歳となっております。
 免除等の状況につきまして、一番下の欄にお示しをしておりますが、令和4年3月末の免除者数につきましては、前年度に比べまして、申請4分の3免除者、産前産後免除者、学生納付特例者は人数が減少しており、その他については増加しているという状況でございます。
 11ページは第1号被保険者の分布でございます。一番右の割合の欄をご覧いただきますと、最も多いのが20歳以上25歳未満のところの23.6%となっております。国民年金の第1号被保険者には、自営業の方、無職の方などいろいろな方がいらっしゃいますけれども、この年齢層は学生の方が多いことから、そのウェイトが大きくなっているということでございます。
 12ページと13ページは、今見た第1号被保険者の分布を男女別に見たものでございますので、説明は割愛させていただきます。
 続きまして、14ページをご覧ください。こちらは第3号被保険者の分布でございます。第3号被保険者につきましては、最も多いのは45歳以上50歳未満のところで20.0%となってございます。ここをピークとして山のような形となっております。
 15ページ、16ページは同じく男女別でございますので、説明は割愛させていただきます。
 続きまして、17ページをご覧ください。こちらは国民年金保険料の納付状況を年齢階級別に見たものでございます。特記事項にも記載しておりますが、納付状況の途中経過を示すものとして現年度納付率、過年度1年目納付率がありますが、最終的な納付状況を見るための指標としては、最終納付率が適切と考えております。直近の結果では、一番上の段を見ていただきますと、令和元年度分保険料の最終納付率は78.0%であり、これは9年連続で上昇しておりまして、統計を取り始めた平成14年度以降で最高の水準となってございます。
 下段に年齢階級別の最終納付率をお示ししておりますが、括弧内は年齢階級別の現年度納付率となっております。概ね年齢階級が高くなるにつれて納付率が上昇する傾向が見てとれます。なお、20歳以上25歳未満の納付率が25歳以上30歳未満の納付率よりも高くなっていますが、20代前半は学生納付特例により保険料納付猶予を受けていたり、本人に代わり親が保険料を負担していたりするケースが多いことなどが影響していると考えております。

○佐藤数理課長 続きまして、18ページをご覧ください。国民年金の資産構成割合となります。上の表の右側が令和3年度の年度末積立金、10兆5,642億円の資産構成割合となります。預託金が4.4%で市場運用分が95.6%となっており、運用利回りが5.23%となっております。
また、下の表の右側、資産区分別の内訳について見ていきますと、国内債券が23.2%、国内株式が24.1%、外国債券が23.7%、外国株式が24.7%、預託金が4.4%となっております。
 続いて19ページ、財政検証における将来見通しとの比較をご覧ください。厚生年金と同様、国民年金に関しても将来見通しとベースをそろえる必要があるということでありまして、基礎年金拠出金などは確定値ベースで比較すること。また、国庫負担の繰り延べ2.4兆円を積立金に加えるということ。あと、基礎年金交付金を収支両面から控除して、実質的な収支を見ているということで、財政検証ベースの実績を作成して比較しているというものであります。詳しくは下の欄の特記事項に記載しております。
 この実績と将来見通しを比べますと、将来見通しについてはケースⅢで数値を申し上げます。保険料収入は将来見通しで1.29兆円と見込んでいたものに対して、実績は1.30兆円となっております。国庫負担の将来見通しで1.90兆円と見込んでいたものが、実績では1.89兆円となっている。運用収入につきましては、将来見通しでは0.19兆円と見込んでいたものが、実績では0.54兆円となっております。こちらは名目運用利回りの実績が高かったということであります。給付につきましては、将来見通し、実績ともに0.09兆円となっているところであります。基礎年金拠出金は、将来見通しで3.34兆円と見込んでいたものが、実績では3.35兆円となっています。その結果、収支残は、将来見通しではマイナス0.10兆円と見込んでいたものが、実績では運用収入が大きかったことから0.24兆円のプラスとなっております。
 年度末積立金は、将来見通しでは11.25兆円と見込んでいたものが、実績では時価評価額で12.70兆円、平滑化後の評価で12.12兆円となっておりまして、いずれも実績が将来見通しを上回っているところであります。
 続いて20ページ、国民年金の被保険者数と基礎年金の受給者数の比較となります。実績と将来見通しを比べますと、被保険者数の合計は将来見通しが6,653万5千人に対して、実績は6,744万6千人と実績のほうが大きくなっております。
 内訳を見ていただきますと、2号被保険者数等は実績のほうが多くなっておりますが、1号被保険者数及び3号被保険者数は実績のほうが少なくなっております。
 国民年金の被保険者については、20から60歳までは全国民が加入することになっておりますので、増加する要因としては、60歳以上の高齢者の労働参加が進んだことによって厚生年金の被保険者になって、2号等が増加したということだと考えております。
 受給者数を見ていただきますと、合計は将来見通し3,634万1千人に対して、実績は3,639万9千人と、実績のほうが若干大きくなっております。その内訳を見ますと、老齢と遺族は実績のほうが小さい。一方、障害については実績のほうが大きくなっているところであります。
 続いて、21ページからは財政指標の比較ということになります。21ページは国民年金・基礎年金全体の年金扶養比率ということになります。受給者1人に対する被保険者の人数を示したものです。
 令和3年度の数値を下の表で御確認いただきますと、労働参加が一定程度進むケースの1.94に対して、上の表の実績は1.97となっておりまして、実績のほうが大きい値になっているところであります。
 22ページは国民年金勘定の保険料比率です。こちらは国庫負担を除きます実質的な支出に対して保険料収入がどの程度を占めているかというものでありまして、100を下回りますと運用収入などの積立金を活用している状況となります。
 令和3年度の将来見通しについて下の表で見ていただきますと、ケースⅠ、Ⅲで84.1となっておりますが、上の表の実績を見ていただきますと84.7と、実績のほうが少し高くなっているところであります。実績のほうが若干収支状況がよいことなりますが、100を下回っておりますので、積立金を活用する状況になっていることには変わらないということであります。
 続いて、23ページは国民年金勘定の収支比率となります。こちらは保険料収入と運用収入を合算した収入に対して実質的な支出の割合を示すものでありまして、運用収入が分母に入っておりますため、時価の変動の影響を受けまして、大きく実績値が変動しているところであります。令和3年度の数値は下の表の将来見通しではケースⅠ、Ⅲで103.5に対して、上の表の実績は83.6となっておりまして、実績のほうが小さくなっています。
 最後となりますが、24ページが国民年金勘定の積立比率となっております。令和3年度は、下の表の将来見通しはケースⅠ、Ⅲで7.4に対して、上の表の実績は時価評価で8.1、平滑化後の評価で7.6となっておりまして、実績のほうが高くなっているということです。こちらも令和2年度の運用の好成績が影響しているものとなります。
 私のほうからは以上であります。

○野呂部会長代理 ありがとうございました。
 何か総括のようなものはございますでしょうか。

○佐藤数理課長 全体的な動きといたしましては、厚生年金で申したものと同じでありまして、被保険者数は労働参加が進んでいるので増えているということ。それから、国民年金ですから賃金は関係ありませんけれども、運用の利回りも良いということ。そういった点では特に悪影響はないわけですが、やはり年金全体に大きな影響を与えるものとして出生率が下がってきて、将来の人口の影響が懸念されるというところではないかと考えております。

○野呂部会長代理 ありがとうございました。
 ただいまの御説明に関して何か御意見、御質問がありましたらお願いしたいと思いますが、まず最初に、本日御欠席の翁部会長より事前に御質問をいただいております。事務局から御紹介をお願いします。

○村田首席年金数理官 では、翁部会長からの御質問につきまして、御紹介させていただきます。
資料の10ページになりますけれども、第1号被保険者数は減少してきているが、その就業状況別の内訳、自営業者、無職、学生等はどのようになっていて、どのように推移してきたのか。特に自営業者の数は増加しているのかという御質問でございます。よろしくお願いいたします。

○野呂部会長代理 お願いします。

○楠田調査室長 こちらは就業状況別の内訳ということで、業務統計としては把握をしていないのですけれども、年金局で3年に1回行っております国民年金被保険者実態調査で就業状況を調査しております。本調査では、法定免除や転出等による住所不明者が調査対象に含まれていないことと、抽出調査のため標本誤差があること、また就業状況不詳の者がいるということにご留意いただきまして申し上げますと、直近の令和2年調査では、自営業者が238万5,000人で19.4%、家族従業者が91万9,000人で7.5%、常用雇用、いわゆるフルタイムの方が77万人で6.3%、パート・アルバイトが401万7,000人で32.6%、無職が384万3,000人で31.2%となってございます。
 就業状況別割合の推移を見ますと、近年はパート・アルバイトの割合が増加しており、一方、自営業者は、以前は減少傾向にありましたが、近年は横ばいとなっておりまして、令和2年調査では19.4%と、3年前の平成29年調査より2.9ポイント増加しているということで、被保険者数で見て約21万人増加をしております。

○野呂部会長代理 ありがとうございました。
 それでは、質疑に入りたいと思いますが、御意見、御質問などがありましたら、よろしくお願いします。いかがでしょうか。
 お願いします。

○寺井委員 ありがとうございます。2つ質問をさせてください。まず、20ページの被保険者数の内訳の部分なのですけれども、私がしっかり聞いていなくて、労働参加が進むケースという、この労働参加というのはどのカテゴリーの労働者の参加を指しているのかというところと、それから、第3号被保険者数は将来見通しよりも実績値のほうが小さいのですけれども、これは結婚している主に女性だと思うのですが、労働参加が財政検証時に予想した以上に進んだということなのでしょうか。この理由をお伺いしたいということです。
 それから、もう一つですが、これはちょっとテクニカルな、私が財政検証の仕組みを知らないということに起因していると思いますが、22ページと23ページの両方とも令和元年度の財政検証結果と決算結果が違っているのですけれども、これはどういう理由によるものなのかなというところです。特に22ページは令和元年度は決算結果と財政検証結果が違っているのですが、令和2年度、3年度を見るとそうでもないので、これはどういうことが起因しているのかなということをお伺いしたいと思います。
 以上です。

○野呂部会長代理 お願いします。

○佐藤数理課長 まず、労働参加が進むというのはどういったカテゴリーで進んでいるのかというと、これはいわゆる女性と高齢者が進んでいるものです。どちらも大きく進む前提で将来見通しを作成しておりますし、実際の実績のほうも女性も高齢者も進んできているということだと考えております。
 あと、3号被保険者が減少している理由ですけれども、これは将来見通しも女性の労働参加が進んで、それで働く女性が増えるので3号被保険者が減ると見込んでいるのですけれども、それ以上に減っているというのが、それ以上に女性の労働参加の実績が進んできたのかどうかということですけれども、そういった影響もあるかもしれませんが、ただ、女性の就業率を見ているとM字カーブの底の部分の上がり方は、実績は見通しほど進んでいないということになっています。
 他方、3号被保険者ということになりますと、これは結婚している女性だけですので、結婚が減ると3号被保険者が減るという要因もあります。そういった要因も含めて3号被保険者が減ってきているのではないかと考えております。
 あと、22ページのところで、元年度の数字が実績と将来見通しを比べてちょっと動きが特異ではないかという話だと思うのですけれども、これは御説明していなくて申し訳ありませんが、令和2年度から基礎年金拠出金等については、特別会計の決算そのものを使うのではなくて確定値を使うと整理しております。特別会計の決算は概算値に2年前の精算という値になっていまして、その結果、精算の影響で結構いろいろぶれることがあります。ですから、例えば22ページの実績、上の表の基礎年金拠出金を見ていただきますと、令和元年だけがちょっと少ないということになっています。これは精算の影響が出てきているものでありまして、その結果、令和元年の保険料比率が高くなっているという影響があります。そういった技術的な影響でありまして、どうも申し訳ありません。
 以上であります。

○野呂部会長代理 寺井委員、よろしいですか。

○寺井委員 はい。理解できました。

○野呂部会長代理 ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
 山口委員、お願いします。

○山口委員 山口です。よろしくお願いします。
 1点、保険料収入の内訳についての質問で4ページになります。追納保険料が令和3年度に大幅に増えており、平成29年度からの5年度間で確かに増えているのですけれども、増え方が大きくなっています。これはコロナの影響なのか、それともここ何年かの経年的な影響が背景にあるのか、その辺りの理由がもし分かりましたら教えてください。
 以上です。

○野呂部会長代理 お願いします。

○佐藤数理課長 追納保険料については、令和2年以降、コロナの影響で特例免除が行われたということで、免除が大きく増えているというのはあるわけですけれども、コロナの影響は手元に数字がなくて正確には分からないのですけれども、ただ、内訳を見てみますと、令和3年の増加のうち、大体6割ぐらいは学生納付特例の追納が増えているということです。学生納付特例は、コロナの影響ではないと思われますので、追納の勧奨を積極的に行っていることで増えてきているという要因が多いのかなと考えているところであります。
 以上です。

○野呂部会長代理 山口委員、よろしいでしょうか。

○山口委員 はい。ありがとうございます。

○野呂部会長代理 ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
 庄子委員。

○庄子委員 今の御質問を伺っていて、ちょっと数字の流れが気になったところがございます。4ページの保険料収入の内訳ですけれども、追納保険料に再掲と書いてあるのは、過年度保険料の内数という意味で書かれているという理解でよろしいのでしょうか。
 合わせて、過年度保険料の過去からの推移と追納保険料の過去からの推移の矢印の向きが違っているので、何か分かることがあれば教えていただければと思います。理解が間違っていればご指摘ください。よろしくお願いします。

○野呂部会長代理 お願いします。

○佐藤数理課長 追納保険料について再掲というか、全体の再掲であることは間違いないのですけれども、過年度保険料だけの再掲なのか、現年度保険料も入っている再掲なのか、そこはちょっと調べさせてください。
 追納保険料というのは、いわゆる免除とか、学特とか若年者の納付猶予といったものが後から追納されたというものになりまして、現年度保険料というのはその年に払うべき保険料、そして、過年度保険料は2年間は納付できますので翌年度以降に払われたものということで、おそらく両方の再掲になっているのではないかなという気がしますが、そこは今正確に分からないので、きちんと調べてお答えしたいと思います。失礼いたします。

○庄子委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

○野呂部会長代理 ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
 小野委員、よろしいですか。

○小野委員 特にないのですけれども、御指名ですので、7ページですけれども、これは受給権者と新規裁定者ということで表が載っていますが、男女別に見た場合、特に女性は受給権者に比べて新規裁定者の平均加入期間が長いということなのですけれども、これは受給権者のほうが新規裁定者にだんだん近づいていくという理解でよろしいのかということと、あと、新規裁定者を男女別に比較すると、ところどころ女性の方が短い加入期間なのに男性よりも金額が若干高いということがありますけれども、その辺りのメカニズムを教えていただきたいと思います。
 以上です。

○野呂部会長代理 お願いします。

○楠田調査室長 平均加入期間が新規裁定者のほうが高くて、受給権者のほうが低いというところなのですけれども、小野委員がおっしゃるように、新たに入ってくる人というのは期間が長い人が多く、その割合が高くなるにつれて、受給権者全体の平均加入期間がだんだん高くなるというか、新規裁定者の平均加入期間の方に近づいていくということでございます。
 2点目でございますけれども、女性のほうで男性よりも平均年金月額が高いところがちらほら見られるということなのですけれども、こちらは女性のほうに振替加算がついている場合がございまして、その影響で高くなっているということでございます。

○小野委員 ありがとうございました。

○野呂部会長代理 駒村委員、よろしくお願いします。

○駒村委員 御説明を詳しくいただきましてありがとうございます。9ページに受給者全体の分布額が出ているのですけれども、先ほどの厚生年金と同じように、新規裁定者の受給額の分布をお出しいただけないかということで、さっきと同じお願いになります。
 それから、2つ目は質問になるのですけれども、3ページに収入の動き、支出の動きが出ているのですけれども、昨年は積立金本体から1,700億円取り崩したというか投入して、本体から使う状態になったかという心配をしたのですけれども、今年はそれが解消されているということで安心したのですが、積立金の収益率が国民年金のほうは18ページに5.23%と書いてあると。先ほどの厚生年金のほうは16ページに5.16%と書いてあるのですね。すみません、今さらこんな質問をして恐縮なのですけれども、GPIFは一体的に運用していたという理解をしていたので、この運用利回りに差が出てくるのは一体何なのかなという点を教えていただきたいなと。
 ポートフォリオを見ると、若干このポートフォリオの構成も違うというところなので、わずか0.07%ですけれども、それがこの差になっているのか、手数料が原因なのか、それとも分母、残高の計算方法が違うのか、ちょっとこの辺の解説をいただければなと思います。
 以上です。

○野呂部会長代理 お願いします。

○佐藤数理課長 資産構成割合見ていただきますと、預託の割合が厚生年金と国民年金で違っているということもありまして、そういったことで利回りが変わってくるということもあるかと思います。あと、おそらく寄託した時期、いつGPIFに寄託したかによって資産構成割合が変わってくることで運用利回りも変わってくる、そういった影響ではないかなと考えております。

○野呂部会長代理 駒村委員、よろしいでしょうか。

○駒村委員 分かりました。どういうふうにGPIFが割り当てているのか、GPIFの報告書だけだと分かったような分からないような感じだったのですけれども、今の時期の問題とかがいろいろあると。預託は全資産構成に占める割合が確かに違うのですけれども、そんなにウエートはないので、何で違うのかな、近い数字かほとんど同じ数字が出るのかなと思っていたので、ちょっと気になったものですからお伺いしました。その辺の説明がどこか、GPIFでどう切り分けているかみたいな説明文書とかが出ていたら、また教えていただきたいと思います。ありがとうございます。

○野呂部会長代理 よろしいでしょうか。ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
 私から2点ほど御質問あるいはお願いがあります。1つは10ページ目のところの免除等の状況で、これを法定免除者から一番下の納付猶予者まで全部足しますと648万人ということで、1号被保険者1,431万人の実に45%になっているということで、これは去年も非常に多くてびっくりしたのですけれども、さらに免除等の人が増えているわけです。一部にはコロナによる影響もあろうかと思いまして、これは一時的なものかもしれませんけれども、一方で日本の貧困層の増加などもあり、将来の低年金者のある意味で予備軍のようなところもあり、非常に大きな問題かと思います。今後の免除などの動向について、もし何か見通しなどがあればお聞きしたいというのが1点です。
 それから、2つ目は17ページ目のところですけれども、納付率が上がっているということで、これは非常にいいことかと思うのですが、納付率の上昇の要因には、実際に保険料を納付してくれる人が増えるということのほかに、先ほどの話と同じですけれども、免除等が増えると分母分子の関係で納付率が上がるということがありまして、その辺がちょっと疑問で、去年も御質問したところ、免除等によって納付率が上昇している部分ももちろんあるのですけれども、加入者が実際に払ってくれる納付率の上昇貢献も1.7%程度あるということで、ほっとししました。こうした納付率の上昇要因の因数分解みたいなところを示していただければもう少し分かりやすいかなと思うので、この2点についていかがでしょうか。

○楠田調査室長 まず1点目、免除等の動向についてということで申し上げますと、国民年金の保険料免除制度というのは、所得が低いために保険料を納付することが困難な方の年金受給権確保のために創設されているということで、国民皆年金の実現のために必要なものであるということでございます。近年、全額免除・猶予割合が増加してきているのは、雇用の拡大とか厚生年金の適用拡大等によって、国民年金第1号被保険者から厚生年金被保険者へ移動して、全額免除や猶予割合の分母となる第1号被保険者数自体が減少しているということも要因になっております。
その上で委員のご質問ですけれども、免除・猶予者の割合については新型コロナウイルス感染症による影響を含む社会経済情勢によって変動し得るものであるということで、大変申し訳ないのですけれども、現時点で確たる見解をお示しすることは困難であると考えております。
 続きまして、2点目のご質問でございますけれども、納付率の因数分解というところでございますが、こちらは現年度納付率の増減につきましては属性別の寄与を分析しておりまして、前回もお答えさせていただいているかと思いますが、令和3年度の現年度納付率は73.9%と前年度から2.4ポイント上昇しております。このうち令和2年度、3年度ともに納付対象月がある者の影響というのが1.50ポイント、また、免除・猶予の影響が1.58ポイントとなってございます。
 なお、令和2年度、3年度ともに納付対象月のある者の納付率を見ますと、令和2年度は74.1%、ここから令和3年度は75.9%と約1.7ポイント上昇しております。また、第1号被保険者が減少している中で、令和3年度の納付月数は令和2年度と比べて増加をしております。こういったことから、納付義務者の納付率の向上が納付率の改善につながっているものと考えてございます。

○野呂部会長代理 どうぞ。

○佐藤数理課長 すみません。ちょっと追加で補足させていただければと思います。1点目の免除のお話ですけれども、楠田が説明したように、分子が増えているというよりも、分母の1号被保険者が減ってきているというのが免除率上昇の大きな要因と考えていまして、この1号が減るというのは、労働参加が進んで1号が2号に移っていっているということです。これ自体はむしろ年金を充実させることでありまして、1号被保険者が減って免除率が上昇することについてはあまり懸念する必要がないのかなと思っています。
 むしろ重要なのは、免除率の分子の免除者数が増加しているかどうかだと考えておりまして、その点で言いますと、10ページの表の法定免除者数というのをまず見ていただきます。こちらは増えてきているのですけれども、ただ、法定免除者というのは障害基礎年金の受給者と生活保護受給者ということでありますけれども、障害基礎年金の受給者数が増えてきて法定免除が増えているということがありまして、そういった要因でありますと、障害基礎年金の受給者は満額の基礎年金を受給しているということで、こちらも低年金が増えるという話ではありません。一方の生活保護受給者のほうは高齢者を除くとむしろ減少傾向にあるということあります。
 あと、その下の申請全額免除は令和3年に大きく増えているところですけれども、これはまさにコロナの影響で特例免除というのが実施された影響でありまして、こちらはどうなっていくか注視していかなければいけないなと思っています。
 一方、追納が増えているというものもありますので、追納勧奨とかできちんと追納できる人についてはしていただくということも重要かと考えております。
以上であります。

○野呂部会長代理 どうもありがとうございます。確かに分母分子の関係がありますので、率だけでは何とも言えない面がありますけれども、法定免除者、それから申請全額免除者も徐々に増えている、実数で増えているわけでして、確かに追納でカバーリングしているかもしれませんが、今後の課題として、将来の低年金者の分析ができるような、例えば将来の年金受取り予想分布みたいなものも分析できればということを、また検討いただけたらなと思っております。ありがとうございました。
 さて、初めの厚生年金保険も含めて、全体を通じて何か御意見、御質問等はありますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、以上で国民年金・基礎年金制度についての報告の聴取を終わります。
 本日の審議はこれまでといたしますけれども、今後、審議の過程で疑義が生じましたら、また事務局を通じて照会させていただきますので、御協力をいただきますようお願いしたいと思います。また、今日の質疑の中で追加の御回答あるいは情報提供いただけるようなお話がありましたら、併せてよろしくお願いしたいと思います。
 最後に、事務局から連絡があればお願いします。

○村田首席年金数理官 次回の第95回「年金数理部会」でございますが、1月11日水曜日の14時から、本日と同じく全国都市会館大ホールにて開催いたします。議題は、国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済それぞれの令和3年度財政状況について、その他を予定しております。
 以上でございます。

○野呂部会長代理 それでは、第94回「年金数理部会」はこれにて終了します。どうもありがとうございました。