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2018年2月16日 (平成30年2月16日) 平成29年度 第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成30年2月16日(金)
13:30~16:30


○場所

ティーオージー貸会議室 17階1号室


○議事

○司会者 (浅井) それでは、定刻となりましたので、只今より「平成29年度第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション」を開催いたします。
  このコミュニケーションは、働く方の健康障害を防止するために、厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者の方、又、事業者の団体の方との情報共有、意見交換会を行うために実施しているものです。
  厚生労働省からの委託を受けまして、私ども、テクノヒルが昨年度に引き続き、運営を担当しております。
  私は、本日の司会を務めさせていただきます、テクノヒルの浅井と申します。どうぞ宜しくお願いいたします。
  初めに、お手元の資料の御確認をお願いいたします。
  議事次第1枚、ステープル留めの基調講演資料、資料1、資料2の2部、A4のピンクと水色のアンケート用紙が1枚ずつです。
  こちらのピンクのアンケート用紙は、休憩時間に、水色のアンケート用紙は、意見交換会終了後に、回収いたします。
  あと、はがき大の赤と青のカードが1枚ずつ、お手元にございますでしょうか。こちらは、後ほど御説明させていただきます。
  資料の不足などがありましたら、挙手にてお申し出ください。宜しいでしょうか。
  それでは、本日のスケジュールについて、簡単に御説明いたします。
  「ラベル、SDS・リスクアセスメント制度について」というタイトルで、厚生労働省の検討会である、化学物質のリスク評価検討会で行われました、検討内容につきまして、検討会委員でいらっしゃいます、帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科教授の宮川宗之先生に、30分ほど御講演いただきます。
  次に「平成29年度のリスク評価の結果について」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室室長補佐の平川秀樹様に、20分ほど御講演いただきます。
  最後に「酸化チタンの健康障害防止措置について」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室室長の穴井達也様に、20分ほど御講演いただきます。
  以上の基調講演が終わりましたら、一旦、20分の休憩といたします。
  なお、休憩時間にピンクのアンケート用紙を回収いたします。ピンクのアンケート用紙に、基調講演をお聞きになった御感想、疑問点、御質問などを御記入いただき、会場内の事務局員へお渡しください。
  後半の意見交換会は、会場からいただいた意見を踏まえた形で進めてまいります。
  後半の意見交換会では、コーディネーターを長崎大学広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いし、パネリストとして、基調講演の宮川先生、穴井様、平川様他、日本酸化チタン工業会から2名の方にお入りいただいて、疑問点にお答えしていきます。
  意見交換会は、開始から1時間ほど、ピンクのアンケート用紙に御記入いただいた御質問について、御回答します。その後、30分ほど会場からの御質問を直接お受けいたします。
  なお、この講演会につきましては、後半の意見交換会を含めて、議事録作成のために録音させていただきます。録音の関係上、最後の質疑応答の際は、マイクをお渡ししますので、マイクを通して、御質問をお願いいたします。
  全体の終了は、16時30分を予定しております。
  それでは、最初の基調講演「ラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」を帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科教授の宮川先生、どうぞ宜しくお願いいたします。

基調講演1
「ラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」

○宮川 どうも、こんにちは。宮川でございます。宜しくお願いいたします。
  只今、御紹介いただきましたけれども、例年ですと、私は、化学物質のリスク評価検討会のメンバーということで、その年の厚生労働省が実施するリスク評価結果について、御報告をしております。今日のタイトルは、化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度についてでございます。

(スライド1)
  国が実施するリスクアセスメントではなく、事業者の方々に実施していただく、リスクアセスメントに関わるものです。
  制度について、講習会のような形で細かいところを説明しても、皆さん既に御存じの方が多いと思いますので、今回は、パワーポイント自体は、厚生労働省の方がつくったもので、一部私の希望を入れていただいて強調するところの色を変えたりしているのですけれども、その中から私が重要だと思うところを、今回は例年よりも多少多目に私の個人的な意見を入れて、御紹介をしたいと思います。
  リスクコミュニケーションですので、それを題材に、活発な御議論をいただければと思います。

(スライド2)
  初めに、事業者が行うリスクアセスメントですけれども、28年から規制がかかり、現在663物質でリスクアセスメントが義務になっています。従来通知対象物質と言われSDSの交付が必要なもので、それと同じものについて、リスクアセスメントの義務がかかっております。
  忘れてはならないのは、この図で重要なのは、この部分です。特別規則と書いてありますけれども、特別規則のあるものについては、リスクアセスメントをわざわざ追加でやるのかということでありますが、実際は、特別規則の対象のほとんどの物質に管理濃度が決まっていて作業環境測定が義務になっていて、その結果で管理区分を決めてリスクのマネジメントまでする。実は、きちんとしたリスクアセスメントそのものなのです。それがもともと求められているので、さらに特別なことというか、簡易なリスクアセスメント方法で、わざわざやる必要はないものと理解をしております。
  逆に言うと、どうしても守らなければいけない規則があるということを、事業者の方々にはよく認識をしていただかなければいけないことだと思います。

(スライド3)
  次に、ラベルとSDSの話ですけれども、ラベルやSDSは、これも義務として、663物質で、こういうものをつくらなければいけません。本日、お集まりの皆さんは、提供する側の企業の方が多いと思うのですが、もとは、GHSという国連が決めた、国連勧告に基づいて、それに対応したJISができています。JISに対応して、こういうものをつくっていただければ、それが法令による要求項目を満たすようになってきているのです。
  こういう絵表示とか、注意喚起語、有害性情報の記述など、それから、SDSでは、1番から16番までのこういう項目をきちんと記載をしてくださいということが決まっております。

(スライド4)
  そのもとになったGHSですけれども、GHSの中の健康有害性と環境有害性、毒性と環境毒性で、これに係る規則は国連がいきなりつくったのではなくて、そのもとになるのはOECDがつくりました。そのOECDが原案をつくる会議は、10年近く、毎年のように開かれていたのです。
  その当時は、私は、厚生労働省、当時は労働省の附属研究機関に所属しておりましたので、年に1~2回ほど会議に参加をして、GHSの基礎となる毒性の分類の基準を決める会議に参加させていただいておりました。
  そのGHSの中で、毒性の分類方法、基準だけではなくて、ラベルやSDSに何を書くかということも、決まっていることになります。

(スライド5)
  こちらは、SDSやラベルに記載するGHSに規定された危険有害性の種類にどういうものがあるか、危険有害性が16種類、健康有害性が10種類、環境有害性が2種類決まっています。
  GHSの基準に従って、国内ではそれを採用したJISによって毒性の判断をし、分類基準に該当しているものについては、いわゆる区分がつくと書いてありますけれども、発がん性区分1とかの区分が決まるわけです。
  注意していただきたいのは、参考情報ということで、分類できない、分類対象外、区分外と書いてあります。これは、GHSの分類区分ではございません。GHSができたときに、それに従ってSDSをつくる。そのためには、モデルが必要だろうということで、政府分類が行われたわけです。
  そのときに関係者が集まりまして、情報を整理するときに、分類のための情報がなくて分類できないとか、明らかに毒性は低いから急性毒性の区分には該当しないということを表す言葉を、そのときの関係者で決めて、政府向けガイダンス文書で情報整理をしました。それらの言葉がひとり歩きをして、区分外という区分があるかのごとく、使われている場合もありますけれども、GHSにこういう規定はありません。
  GHSは、あくまでもこういう基準を満たせば当該区分に分類をしてください、区分がついたときには、それに従って、文言を使ったり、絵表示を使って、表示をしてくださいということで、区分がつかないことについて、どうのこうのということは、記載はされていないのがGHSです。JISもそれに対応しております。

(スライド6)
  実際によく出てくるのが、こういう絵表示ですけれども、絵表示だけ、労働者の方に安全教育をするときには、必要なことになるのですけれども、これだけ見たのでは、具体的な毒性はわからないです。
  例えば人型マークは、こんなにいっぱい、いろんな毒性に対応しているということで、これだけを教えるというのは難しいのです。いわゆるこのマークだけ見たのでは、内容はわからないというのが実態だと思います。

(スライド7)
  次に、役所のこのスライドをつくった方に言われたので、忘れずに述べておきたいのですけれども、SDSの交付状況ですが、50%ぐらいが法定外のものでも全て交付しているという答えが出ております。
  これは結構なことかもしれませんけれども、問題はこちらです。法定物質の663物質については、SDSを交付しなくてはいけないことになっていますが、全て交付しているというのは、6割にしかなっていないです。
  残りの33.4%は、譲渡・提供先から依頼があれば、求めがあれば、交付することになっていますけれども、これは、義務を満たしたことにならないようです。依頼がなくても、交付をして、譲渡・提供するというのが、本来の法の趣旨だそうです。
  これは、60%ということでは非常に少ない、8割ぐらいまで上げたいということを、今厚労省がお考えになっていることのようですので、御紹介をしておきます。

(スライド8)
  細かいところは、読めないと思いますので、先に進みます。

(スライド9)
  今日、私が強調したいのは、リスクアセスメントのところです。広い意味では、厚生労働省の指針にあるリスクアセスメントというのは、SDSによる有害性の同定から最後の対策まで含めたリスクアセスメントという言い方をしているようですけれども、もうちょっと狭い意味では、リスクアセスメントは、厚労省の指針でいうリスクの特定と見積もりの部分。これを狭い意味で、リスクアセスメントといいます。
  その部分が非常に重要だと思いますので、そこの部分について、今日は、力点を置いて、説明をさせていただきたいと思います。

(スライド10)
  労働者の健康障害予防のためにとタイトルがあります。今日は安全のことは横に置いておきまして、衛生について、つまり健康障害防止のためのリスクアセスメントについて、お話させていただきたいと思います。
  確実な実施のための仕組みの構築と書いてありますけれども、基本的には、リスクアセスメントは、まずこの物質には、どういう危険性、有害性があるのかという情報を把握し、それをきちんとSDS等に記載をして、関係業者へ伝達をすることが重要になります。
  伝達された事業者は、そこで、取り扱う事業場における健康障害予防のために、リスクアセスメントを実施することになります。
  ここで重要なのは、既知の情報はきちんとSDSに書いていないといけない。それを使って、化学物質を取り扱う事業者はリスクアセスメントをするわけです。既知の情報が載っていないと、予見可能なリスク、危害の発生を防止することができません。
  予見可能な危害の発生の防止というのは、非常に重要で、まさに事業者の安全配慮義務は、そこでもって、初めて担保されるわけです。予見可能なリスクをきちんと把握するためには、ある程度有害性が知られていれば、そういうことが言われているのだということをきちんとSDSに書くことが重要だと思います。
  もちろんそういうことで、リスクがあるのかというときには、結果を踏まえて、低減措置を実施することになります。

(スライド11)
  リスクアセスメントの流れは、細かくて申しわけないのですけれども、お手元の資料だと見えると思いますが、厚労省の指針によると、こういう形で行われるわけです。
  危険性、有害性の特定をし、このままではリスクがあるのかどうか、リスクの程度はどの程度なのか、リスクというのはゼロにはならないので受容可能な程度まで抑えられているのか、あるいは放っておいたらまずい状態にあるかということを見積もることになります。
  見積もりに基づいて、検討をして、対策をするという全体の流れを書いてありますけれども、ポイントは、こことここです。有害性の特定とリスクの見積もりです。ここが世の中には、どうも十分伝わっていません。
  産業医の方にお聞きするとリスクの見積もりがわかっていない方が多いようです。この辺に誤解があるようなので、今日は、その点を理解していただくためのお話をしていきたいと思います。
  ポイントは、リスクとは何かと書いてあります。リスクは何か、それをどうやって見積もるのかというところになります。

(スライド12)
  次のスライドですけれども、リスクの有害性の特定は、SDSがもとになるので、ここには知られている有害性は、きちんと書いておく。これが安全配慮義務を果たしていただくために、重要な情報になります。安全性データシートという名前がいけないと思っていますが、危険有害性データシートということです。そこで有害性を漏らしたときには書き漏らした方が責任を問われる可能性もあることを考えておくことが重要ではないでしょうか。安全な製品だと宣伝するためのシートではなく、予見可能な危害の発生を防ぐための情報源だというところが、ポイントになると思います。

(スライド13)
  リスクアセスメントの方法です。
  これだけで話すとなると、多分1時間ぐらい話ができてしまうと思うのですけれども、リスクは何でしょうか、よくリスクとハザードという言葉があります。
  化学品の管理、特にGHSの中では、ハザードというのは、その物質固有の性質です。燃えやすい、爆発しやすい、あるいは一定の毒性がある、それがハザードです。
  リスクというのは、有害な事象が起きる可能性と起きたときの重篤度の組み合わせです。言い方が悪いかもしれませんけれども、悪いことが起きる期待値というのですか、確率掛ける起きたときの重篤度、これらを掛けて、全部の場合について合計すると、悪いことの期待値になるかもしれません。
  いろいろ調べてみますと、食品安全委員会の用語集とか、厚生労働省のリスクアセスメント指針では、リスクというのは、悪いことの発生の可能性と起きた場合の重篤度の組み合わせという言い方で説明されております。これが一般的な考え方で、安全面でも、衛生面でも、どちらでも通用する考え方だと思います。
  一方、衛生では、リスクというのは、よく有害性掛けるばく露で、ハザード掛けるエクスポージャーという式が出てくることがあります。それがリスクの定義だと頭に入っている方もいるのですけれども、リスクの定義としては上の方が普通です。
  ただ、有害性、健康影響については、有害性、ハザードの程度とばく露の程度でもって見積もれる、評価できるのです。例えばばく露がゼロであれば、健康障害が起きません、それから、毒性がなければ、健康障害は起きません。実際は、その組み合わせによって、リスクの見積もりができるということで、下の式は、考えていただくと宜しいと思います。
  但し安全の方は、上のやり方で、実際に見積もることが多いわけです。例えば危険な業務はどういうものがあるか。高いところに登るとか、機械の中に手を突っ込んで何か操作をする、熱源のそばに近づくとか、そういう作業をどの程度の頻度でやるか、それぞれの作業ではどの程度の確率で事故が起きているか、起きたときにはどの程度の損害になるのか、ポンという音がする程度なのか、部屋がぶっ飛ぶのか、建物ごと飛んでしまうのか、あるいは指先をちょっとやけどするのか、指を挟むのか、腕がなくなってしまうのか、転落して生死に関わるのか、そういうことでもって、リスクを見積もるというのが、安全ではよくやられているようです。
  健康影響は、今日、ここを言いたいので私は来たようなものですけれども、ポイントはばく露の程度が許容濃度を超えると健康リスクがあるかもしれない、そう判断しないとまずい、ということなのです。ここが最も重要なことだと思います。
  指標例えば許容濃度が決まっているときに、ばく露の程度がそれを超えるとリスクが発生します。そこが最も重要な考え方だと思います。ここまでを産業医の方々に理解をしていただくことが1つのポイントとなると思います。
  事業所でリスクアセスメントをやってくださいというときに、産業医の人に聞くと、リスクアセスメントですね、マトリクス法ですかというのが、一番よく答えに出てくるわけです。なぜかというと、安衛則とか、厚労省のリスクアセスメント指針でいろいろな方法を列挙しているところの一番上に、これが出てくるのです。
  もう一つよく出てくるのは、コントロール・バンディングという言葉です。これも難しいことをやらなくていいです、コントロール・バンディングがありますから、それだけをやってくださいと受け取っている方が多いわけです。そのマトリクス、コントロール・バンディングという片仮名言葉が頭に残っている
  ただ、よく読んでいただくと、厚労省のリスクアセスメント指針も、安衛則も、最も望ましい方法は、ばく露限界、つまり許容濃度やTLVと実際のばく露を比較して、リスクがあるかどうかを判断してくださいと書いてあります。そこがわかるように、細かいところを、これからもう一度、説明させていただきます。
  安衛則から引用してありますけれども、ア、イ、ウの3つにリスクの見積もり方法がわけられています。
  ア、危険を及ぼし、又は、健康障害を生ずるおそれの程度(発生の可能性)と、発生した場合の危険、又は、健康障害の程度(重篤度)を考慮する方法と書いてあります。発生可能性と重篤度です。まさにこの式です。これは、安全では、伝統的に使われている常識的な方法です。
  イです。労働者がさらされる程度(ばく露の濃度など)と有害性の程度(許容濃度等)を考慮する方法、これがまさに健康障害のリスクアセスメントの根本原理で、ばく露と許容濃度を比較する方法は、イに入っているわけです。
  ウ、その他、ア、イに準ずる方法と書いてあります。
  これが安衛則にも、リスクアセスメント指針にも書いてあることです。
  危険性に係るもの、つまり安全に関しては、ア、又は、ウに掲げる方法に限ると丁寧に書いてくれているのです。
  ここで、私が言いたいのは、健康に関しては、イ、又は、ウに限ると、こういうように、規則、あるいは指針を作っていただきたいと強く思います。それがないために、産業医の人が見ると、安全は、アとウだけれども、健康はア、イ、ウなのだ、アの一番先に何が書いてあるか、マトリクス法だということになってしまうというのが、現状だと思います。

(スライド14)
  リスクの見積もり方法を少し細かく言いますけれども、危険性についてはアとウに限ると言われている、そのアには何があるかというと、マトリクス法、数値化法、枝分かれ法、1つ飛ばしますが、シナリオによるものと書いてあります。
  困ったことに、ここにコントロール・バンディングとありますが、健康だけで使われている簡易な方法がアの中に入っているのです。したがって、健康についてはイとウに限るという言い方ができなくなっています。本来は、イの中にある方法と実は同じものです。

(スライド15)
  イには何が書いてあるか。ばく露濃度などと有害性の程度を考慮する方法、つまり許容濃度とばく露濃度を比較してくださいと書いてあるのです。
  よく読めば、ちゃんとここに、以下にこういう方法があって、実際の指針などでは、イの (ア) (イ) (ウ)となっているのですけれども、このうち実測値による方法が望ましいとはっきり書いてあります。
  つまり実測値による方法で、気中濃度などとばく露限界、すなわち、日本産業衛生学会の許容濃度やTLVを比較してください、これが最も望ましいと書いてあります。これは、安衛則にも、指針にも書いてあると思うのです。
  その次です。実測が無理なら、数理モデルを用いる方法があります。気中濃度の推定値とばく露限界を比較する。でも、数理モデルというのは難しい、そんなことはできないと思われてしまうのです。これを簡単に言えば、使っている化学物質の量を全部ぶちまけたときに、作業場の気積にはどれぐらいであるから最大どれぐらいの濃度になるかという計算をすればよいということです。大学入試で化学を受けるぐらいの人だったら、計算ができると思うのですけれども、数理モデルという言い方をするから、わかりにくくなっていると思います。
  3番目は、あらかじめ尺度化した表を用いる方法、この中身は、コントロール・バンディングです。有害性のレベルとばく露の可能性を大ざっぱに推定するということで、これは、コントロール・バンディングの中身そのものになります。
  忘れてはいけないのは、ウの方法です。衛生健康障害を防止するための具体的な措置が法令で定められている場合、つまり管理濃度があるものについては、厳しい規則どおりに作業環境測定をやって管理区分を決めて対応してください、これがリスクアセスメントになります。
  特別規則、つまり特化物などの対策については、ここの法令どおり、作業環境測定をやって、その評価をきちんとして、第一管理区分、第二管理区分、第三管理区分で評価をするのが、まさにリスクアセスメントそのものになります。その対象でないものに関しては、望ましいのは、実測による方法、あるいは気中濃度を推定して、判断をするものが望ましいことになると思います。

(スライド16)
  以下、個別のものが説明されていますけれども、省略をしますが、検知管で簡単にはかって、許容濃度と比べましょうということが書いてあります。

(スライド17)
  ポイントは、コントロール・バンディングをどうするかということです。着手のし易さということでは易しいので、他の方法がどうしても困難だというときには、これをやってください。そういうものを用意しておかないと、法律で強制するのは困難だということで、こういう簡便法も用意されているということになると思います。

(スライド18)
  今のまとめをしますと、リスクアセスメント手法の選択です。健康影響の場合です。

(スライド19)
  一番最初はスタート、特化則か、有機則の対象かどうか、この判断が重要です。この対象になったときには、管理濃度ときちんと比較をして、実測をしてやることになります。
  そうではないものについては、いろんな方法があり、望ましいのは、実際の測定、検知管を使った簡易な方法もありますし、作業環境測定をやってとなっています。
  どうしてもそういうことができませんという場合には、コントロール・バンディングを使ってみてくださいとなるわけです。ただ、コントロール・バンディングのようなプログラムも、ECETOCのTRAのように、実際にばく露レベルを推定するのがプログラムの中に入っていて、それと許容濃度などと比べることができるようなものもあります。私としては、できれば、そのような方法がもうちょっと普及するのが宜しいと思っているところでございます。

(スライド20)
  最後に、コントロール・バンディングの問題点だけ、申し上げておきます。ここですが、コントロール・バンディングは、揮発性とか取り扱いの作業の回数などでもってばく露を大ざっぱに推定し、一方で有害性のレベルをGHSの分類区分によって、A~E、特別なものはSに分けて、評価をするのです。

(スライド23)
  問題はこれです。ここからは私の個人的な意見と思って聞いていただきたいのですけれども、発がん性の区分2と発がん性の区分1についてみると、区分2よりも区分1のほうが強い発がん物質という意味ではありません。証拠が確かだということだけです。発がん性区分1に該当するものでも、エタノールのようにTLVの1,000ppm以下にコントロールすれば通常は問題ない、安全に使えるようなものもあります。エタノールは発がん性区分1、生殖毒性区分1になってしまうわけですが、それをわざわざ排除するのは、いかがなものでしょうか。
  つまりTLVとか、許容濃度があるものというのは、それ以下の濃度にうまくコントロールをして使えればよい、疾病に関しては管理ができる基準が示されているものなのです。それがないようなものについては、かえってどういう基準でコントロールをしていいのか、判断が難しいということになります。わけのわからないものを使うよりは、TLVや許容濃度があって、それ以下でコントロールできるような物質を使うことを考えるのが宜しいのではないかと、私は考えています。
  しつこくなりますけれども、例えばここでいうと、発がん性の区分2と急性毒性の区分3、どちらの毒性が強いか、比較はできないです。それなのに、こういうものを一律に有害性のレベルに使うところが、コントロール・バンディングの問題なのかと思っております。
  細かいことは申し上げませんが、そういうことで、リスクアセスメントについては、どのようなリスクアセスメントを選ぶのか、基本的には、許容濃度、あるいはTLVなど、ばく露限界と比べて、判断をしていただくことが本来のやり方で、そのときには、実測もあれば、推定もある、そこがもう少し普及するのが望ましいです。
  特別規則の対象となるものについては、コントロール・バンディングとかを考えてはいけない、法定どおりやることが求められていることを認識していただくことが重要だと思います。
  時間がないので、今日はここまでということにいたします。(拍手)

○司会者 (浅井) 宮川先生、どうもありがとうございました。

基調講演2
「平成29年度のリスク評価の結果について」

○司会者 (浅井) 続きまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室室長補佐の平川様に、平成29年度のリスク評価の結果について、御講演いただきます。
  準備が終わるまで、少々お待ちください。
  それでは、平川様、宜しくお願いいたします。

○平川 皆様、こんにちは。
  厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室の室長補佐の平川と申します。本日は、宜しくお願いいたします。
  皆様方におかれましては、日ごろより、労働者の健康障害防止対策に対する御尽力等をいただき、誠に感謝を申し上げるところでございます。

(スライド1)
  それでは、私からは、平成29年度のリスク評価の結果について説明をさせていただきます。

  昨年度は、酸化チタン(IV)の措置検討を行うとする内容が盛り込まれておりましたが、そういう案件はありませんので、私から報告をするものでございます。

(スライド2)
  労働現場で取り扱われている化学物質の種類は、約7万種類あります。毎年約1,000物質が新規に届け出られるということで増えているということでございます。
  少量新規化学物質の申請は、年間約1万7,000物質としておりますが、昨年の1月~12月においては、1万8,000物質を超えている状況です。

(スライド3)
  新規化学物質届出件数は、最近では、コンスタントに1,000件を超えており、グラフでは名称公表件数を示しておりますが、重複等を除き、年間1,000に近い物質が公表されているということでございます。

(スライド4)
  ここでは、労働安全衛生関係法令における化学物質管理の体系をお示ししております。
  現在のリスク評価でございますけれども、簡単に申し上げますと、「産衛学会・ACGIHで許容濃度の勧告がある等労働者に危険又は健康障害が生ずるおそれ」とある白い台形のところから、リスクが高いものは、上から2段目の「重篤な健康障害が生ずるおそれ、特にリスクの高い業務あり」の灰色のところに必要なものは移していくという対応でございます。
  直近の例でいいますと、三酸化二アンチモンが2番目の灰色のところに移って、合計121物質が特別規則の対象となっております。
  右側のラベル表示義務・SDS交付義務のところで、663物質ということになっていますけれども、「化学物質のリスク評価に係る企画検討会」で検討を行いまして、既に改正に関する政令等が公布されて、ことしの7月施行で、663が672になることになっております。

(スライド5)
  リスク評価を行うことになりました経緯ですが、これまでは、健康障害が現に出た物質を規制しておりましたが、それでは手遅れということで、リスク評価制度を導入しているところでございます。
  このリスク評価制度の前提として、SDSがあるものについては、リスクアセスメントを行い、自主的な管理措置を実施していただきたいと考えております。

(スライド6)
  リスク評価制度ということでございますけれども、有害性情報の収集とばく露実態調査をそれぞれの結果によりリスク評価を行います。
  リスク評価の結果、リスクが高いとされたものにつきましては、健康障害防止対策の決定に進みます。

(スライド7)
  有害性情報の収集と、ばく露実態調査の詳細は、このように行っております。

(スライド8)
  ばく露評価のスキームでございますけれども、これまでは経気道のばく露を対象として行っておりました。経気道でのばく露濃度を推定し、有害性評価で示された評価値との比較をもって、評価を行っておりました。

(スライド9)
  ここはのちほど資料を御覧ください。

(スライド10)
  ところが、平成27年に膀胱がん事案が発生いたしました。発生した現場ではオルト—トルイジンが使用されていることが明らかとなりました。オルト—トルイジンは、平成19年度にリスク評価が行われた結果、リスクは低いという結果が出て、そういった結果であったにもかかわらず、実際に現場では、膀胱がんが発生したということで、課題が突きつけられました。現場においては、経皮ばく露をしていた蓋然性が高いということで、経皮吸収による健康障害防止のためのリスク評価について、やらなければいけないのではないかということで、1月22日に行われましたリスク評価検討会で、リスク評価の考え方について、お示ししたところです。
  これまでは、経気道ばく露の実態調査のみをしておりましたけれども、今年度から、経皮吸収のばく露実態調査についても着手しており、今後は、皆様方の事業場に、お伺いさせていただくかもしれませんが、その際には、御協力をお願いいたします。
それではスライドに戻りまして、基本的な経皮吸収に係るリスク評価と措置の関係図でございます。
  経皮吸収の勧告ありというのは、ACGIHの「skin」や日本産業衛生学会の「皮」の表示があるものが含まれます。
  それらの物質については、たとえ経気道ばく露が低くても、ここでいうと、青色のゾーンになりますけれども、これについては、経皮ばく露実態調査を行って、判定していくことになります。
  あと、経気道のリスクが高いものについて、さらに経皮吸収の勧告ありの化学物質については、今後、措置検討に入っていったときには、特化則の対象とし、保護具の使用、汚染時の洗浄等を行っていく方向とする内容でございます。

(スライド11)
  現時点では経皮吸収については、定量評価ができないということでございますので、定性的評価を行うための評価方法について、これからリスク評価検討会において、検討をし、実際に経皮ばく露実態調査を実施していくということでございます。


(スライド12)
  次に、平成29年度の初期リスク評価の結果の説明をいたします。
  先程申し上げましたように、各事業場で実施するリスクアセスメントの参考としていただければと思います。

(スライド13)
  リスク評価結果の概要につきましては、厚生労働省で、1月31日にプレスリリースを行っておりまして、「平成29年度化学物質のリスク評価検討会報告書」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192704.html)として出しております。
  今回公表いたしましたのは、5物質の初期リスク評価の結果でございます。テトラエチルチウラムジスルフィド、二塩化酸化ジルコニウム、金属ニッケル、ピリジン、メタクリル酸について、リスク評価の結果を公表しています。この中で、順番に見てまいります。

(スライド14)
  テトラエチルチウラムジスルフィドの初期リスク評価の結果でございます。
  結果は、リスクは低いとなっています。

  最大ばく露濃度が二次評価値の2 mg/m3の数字を下回りました。さらに経皮吸収に関する勧告もないということで、リスク評価は終了となります。

(スライド15)
  基本情報は、ここに書かれているとおりでございますので、後ほどご覧ください。
(スライド16)
  有害性評価結果の概要も、後でごらんいただければと思います。

(スライド17)
  有害性評価の結果は、ACGIHのTLV-TWAがあり、日本産業衛生学会は設定がないので、ACGIHのTLV-TWAを二次評価値としました。

(スライド18)
  ばく露実態調査の結果、一つ一つのデータをとっての最大値は、1.1 mg/m3でございましたが、定量下限未満を除く全データを統計処理いたしましたところ、区間推定上側限界値の数値が1.5 mg/m3ということで、1.5 mg/m3をとりましたけれども、二次評価値を下回ったということで、リスクは低いということになりました。

(スライド19)
  グラフは、このようになっています。

(スライド20)
  リスクの判定及び今後の対応ですが、リスクが低いということでありますが、当該物質は、ヒトに対する皮膚感作性等がある物質であり、事業者は、リスクアセスメントを行い、その製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要になります。
  今回の5物質については、全てリスクアセスメントの対象物質になっておりますので、自主的なリスク管理については、リスクが低いとされた物質について、共通にお願いするものでございます。

(スライド21)
  次に、二塩化酸化ジルコニウムの初期リスク評価の結果でございます。
  これも、ばく露評価の結果が0.067 mg/m3の最大ばく露濃度に対しまして、二次評価値が5 mg/m3ということで、リスクは低いということです。さらに経皮吸収に関する勧告もないということで、リスク評価は終了となります。

(スライド22)
  基本情報は、後ほどご覧ください。

(スライド24)
  有害性調査の結果について、
  二次評価値でございますが、ACGIHのTLV-TWAが5 mg/m3、日本産衛学会が設定なしということですので、ACGIHのTLV-TWA の5 mg/m3を採用したということでございます。

(スライド25)
  ばく露実態調査の結果ということで、個人ばく露のデータの最大値は0.022 mg/m3でございましたが、定量下限未満を除く全データの統計処理を行いますと、区間推定上側限界値の数値が0.067 mg/m3となります。

(スライド26)
  グラフは、次のとおりでございます。

(スライド27)
  リスクの判定及び対応でございます。
  リスクは低いということでございますが、当該物質は、動物実験により、急性毒性、反復投与毒性、遺伝毒性が報告されている物質であり、事業者は、リスクアセスメントを行い、その製造・取り扱い作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要であるとしております。

(スライド28)
  次に、金属ニッケルの初期リスク評価でございますが、有害性評価結果につきましては、二次評価値が1.5 mg/m3に対しまして、ばく露評価結果が0.68 mg/m3ということで、二次評価値より下回っているということでございます。
  経皮吸収の勧告なしということなのですが、リスク評価全体の調査の内容を見ますと、溶接作業におけるデータの不足があるということで、これにつきましては、改めて溶接作業におけるデータを集めた上で、再度、リスク評価を行って、初期リスク評価の結果を得ることにしております。

(スライド29)
  基本情報につきましては、後ほどご覧ください。

(スライド31)
  有害性評価の結果でございますが、ACGIHのTLV-TWAが1.5 mg/m3、日本産業衛生学会の許容濃度は1 mg/m3ということで、数字だけ見ると、日本産業衛生学会の許容濃度がより厳しい数字となるのですが、ACGIHのTLV-TWAのほうが直近の勧告ですので、二次評価値は1.5 mg/m3としております。

(スライド32)
  ばく露実態調査の結果につきましては、今後溶接作業の調査が実施されてからまとめることになります。
  溶接作業におけるばく露実態調査がない中でのばく露調査結果で、今のところ、全てのデータが1.5 mg/m3を下回っています。

(スライド34)
  リスクの判定及び今後の対応でございます。
  明らかにヒューム等が発生することが見込まれる溶接作業に関しては、データが不足しており、広くばく露実態調査を実施した上で、ニッケルのリスク評価をまとめる必要があります。
  引き続き、リスクアセスメントを行い、自主的なリスク管理を行うことが必要であるとまとめております。

(スライド35)
  次に、ピリジンでございます。
  ピリジンにつきましては、二次評価値1 ppmに対しまして、最大ばく露濃度に関し、定量下限未満を除く全データの統計処理を行いますと、区間推定上側限界値の数値が2.9 ppmとなります。よって、リスクが高いということで、今後、詳細リスク評価に移っていくことになります。

(スライド36)
  基本情報につきましては、後ほどご覧ください。

(スライド38)
  有害性評価結果の二次評価値につきましては、ACGIHのTLV-TWAが1 mg/m3で、日本産業衛生学会の許容濃度がありませんので、ACGIHのTLV-TWAを二次評価値としております。

(スライド39)
  ばく露実態調査の結果につきましては、個人ばく露測定における最大値は0.94 ppm、定量下限未満を除く全データの区間推定上側限界値が2.9 ppmということで、この2.9 ppmを最大ばく露濃度としております。

(スライド41)
  リスクの判定及び今後の対応でございます。
  ピリジンにつきましては、最新のデータで見ますと、IARCでグループ2Bという勧告が出ておりまして、当該物質は、ヒトに対して、発がんが疑われる物質としております。事業者は、その製造・取り扱い作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要だとしております。

(スライド42)
  次に、リスク評価の最後、メタクリル酸でございます。
  これも、有害性評価で示された二次評価値の2 ppmに対しまして、最大ばく露濃度が0.37 ppm、経皮吸収勧告なしということで、リスクが低いということで、これをもって、リスク評価は終了になります。

(スライド43)
  基本情報は、後ほどご覧ください。

(スライド45)
  有害性評価の二次評価値につきましては、ACGIHのTLV-TWAと日本産業衛生学会の許容濃度が出ており、二次評価値を日本産業衛生学会の許容濃度から、2 ppmとしておりますが、結果として、個人ばく露測定の結果は、2 ppmを全て下回っていて、定量下限未満を除く全データの区間推定上側限界値も2 ppmを下回っているということで、リスクが低いとしておりますが、リスクアセスメントを行い、製造・取り扱い作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要だとしております。

(スライド49)
  最後になりますが、有害物ばく露作業報告の新たな対象物質について、紹介いたします。
  平成29年度における選定物質は、3物質で、IARCの発がん性分類で2Bの、テトラヒドロフラン、フルフリルアルコールと、再告示物質である、2,4,6-トリクロロフェノールです。これらは、昨年の12月に告示いたしまして、今年1年間で、年間500kg以上、製造・取扱いした事業場につきましては、来年の1月~3月の間に報告をお願いいたしたいと思います。
  以上、私からの説明とさせていただきます。 (拍手)

○司会者 (浅井) 平川様、御講演をありがとうございました。

基調講演3
「酸化チタン (IV)の健康障害防止措置について」

○司会者 (浅井) 続きまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室室長の穴井様に「酸化チタンの健康障害防止措置について」を御講演いただきます。
  それでは、穴井様、宜しくお願いいたします。

○穴井 改めまして、こんにちは。
  厚生労働省の化学物質評価室長の穴井です。

(スライド1)
  私からは、酸化チタンの健康障害防止措置について、お話します。
  防止措置についてといっても、まだ措置が決まっているわけではなくて、28年度にリスク評価の結果、リスクが高いとされた酸化チタンについて、今後、健康障害防止措置をとるべきなのか、そうではないのか、とるとしたら、どういうことをするべきなのかということを、今、専門家の皆さんに、検討していただいているところで、その前に、酸化チタンを作っていらっしゃる、あるいは取り扱っている団体の方から、今、ヒアリングをやっている最中という状況であります。その途中経過みたいなことで、今日は、お話したいと思います。

(スライド2)
  検討の経緯です。
  今、仕組みは話したとおりなのですが、ここの枠で囲まれた部分がリスク評価の部分で、ここで高いとなったので、健康障害防止措置検討会にいきました。ここは、リスク評価ではなくて、いわゆるリスクマネジメントをどうするかという話になると思います。
  平成21年度の有害物ばく露作業報告から始まって、検討してきた結果、28年度でリスクが高いとされたので、昨年度末から措置検討が始まったという状況になっています。結構時間がかかっていますけれども、途中で、二次評価値をどのように設定したらいいかデータが少なく、結構悩ましい物質だったことがわかります。

(スライド3)
  まずはリスク評価の部分です。

(スライド4)
  酸化チタンについては、皆さんのほうが御存じだと思いますけれども、いろんな分野で使われていて、利害関係者が多いということで、我々も承知しています。

(スライド5)
  これは、酸化チタン工業会さんからいただいた資料です。
  我々のリスク評価では、基準値を決めていくのに、ナノとナノ以外という分類で行っていますけれども、その他に、表面処理ある、なしがあるということが、ヒアリングの過程でわかってきまして、表面処理がある、なしということを、どういうふうに判断するかというのは、今、課題となっています。

(スライド6)
  有害性情報ですが、IARCでは、2B、ヒトに対する発がんの可能性があるという判断をされています。
  他の毒性を見てみますと、経口毒性など、ほとんど毒性がない物質で、他のものも余りなく、毒性としては、そんなに高い物質ではないことが、この情報からわかります。

(スライド7)
  ナノ粒子のリスク評価の基準値として、許容濃度は、日本産業衛生学会の濃度をとりました。これはなぜかというと、我々のルールでは、ACGIH、又は、日本産業衛生学会の許容濃度を、二次評価値として、原則として採用することにしていますけれども、ACGIHは、酸化チタン全体としての基準値しかないのに対し、産業衛生学会の酸化チタンのナノを対象としたものを、基準値としてとっています。

(スライド8)
  ばく露実態調査で、実際に測定した結果、15事業場で46の作業員の方を測定した結果で、最大値が1.644で、先程の0.3よりかなり大きい数字であるということです。

(スライド9)
  それを棒グラフで、上から並べたものですけれども、このラインが0.3という二次評価値の基準で、それを上回るものが出ているということです。

(スライド10)
  まとめですけれども、二次評価値の0.3に対して、個人ばく露最大値は1.6となって、二次評価値を上回っています。
  その作業の様態を見ますと、充填、又は、袋詰めの作業で、こういう作業のリスクが高く、全体としてリスクが高いことになりました。

(スライド11)
  続いて、ナノ以外の酸化チタンです。
  許容濃度は、先程も申しましたとおり、ACGIHは酸化チタン全体で10mg/m3ということですが、産業衛生学会では、粉じんとしての濃度で、第2種粉じんで、吸入性粉じんですけれども、こういう許容濃度があります。
  いずれもすごく古いデータで、先生方も、どの基準をとるかということを、非常に悩まれた経緯があります。結局のところ、ACGIHのほうが全体なので、産業衛生学会の第2種粉じんを基準として、採用したという経緯があります。この他のデータがほとんどないということなので、これをとっています。

(スライド12)
  実際に個人ばく露測定をやっています。
  17事業場で、59名の方がやった結果、最大が3.1ということで、先程の日本産業衛生学会の1より上回っている結果が出ています。

(スライド13)
  それを棒グラフで並べていくと、これぐらいの数のところで、1を超えているところが出ているということです。

(スライド14)
  これがまとめですけれども、個人ばく露測定の最大値は3.1となり、二次評価値の1を上回っています。
  その中身を見ていくと、粉体塗装を行っている事業場でしたが、リスクが高いとの評価で、酸化チタンのナノ粒子以外全体についても、高いという評価になりました。

(スライド15)
  今後の対応ですが、高いリスクが作業工程に共通して確認されたことから、健康障害防止措置の検討が必要だという結論になったので、現在、検討しているということです。
  留意点もあって、リスクが高かったところは、ナノ粒子については、充填、袋詰め、ナノ以外については、粉体塗装作業において、出ております。
  測定については、ナノ粒子とそれ以外の区分は、今のところつけられていないという課題はありますということが書かれております。

(スライド16)
  これは参考情報ですが、現在、バイオアッセイ研究センターという、長期発がん試験ができる我が国唯一の機関ですけれども、そこで、現在、酸化チタンのナノ粒子・アナターゼ型について、長期発がん試験をやっています。
  現在、実施中で、結果が出るのは、平成32年、再来年以降となりますけれども、その結果も、近い将来、出てくるということです。

(スライド17)
  措置の検討状況にいきます。

(スライド18)
  措置の検討とは一体何なのでしょうかということを、最初に書いてありますけれども、リスク評価に基づいて、リスクの高い作業については、リスクの程度に応じて、特別規則等による規制を行い、リスク管理を講じることを検討します。
  リスク評価は、科学的・中立的に行う必要がありますけれども、措置の検討というのは、特別規則等による規制を考えるわけなので、その対策の実現性を考慮して、導入する。
  つまり守れないような規則を導入しても、何の意味もないので、その辺の実現可能性も考慮して、検討していきます。こういうことを検討するのが、措置検討で、そういう規則自体が必要かどうかということも含めて、内容を検討していくことになります。

(スライド19)
  現在の検討状況ですけれども、昨年の年度末から始まりまして、関係団体のアンケート調査、それから、今、ヒアリングを行っています。そのアンケート調査とか、ヒアリングから、いろんな課題、あるいは調べなければいけないことが出ていますので、今後、それに基づいて、論点整理をして、先生方に議論していただくということになります。来月には、酸化チタン工業会に、2回目のヒアリングを行う予定になっております。

(スライド20)
  これまでヒアリングを行ってきた概要を御紹介したいと思います。
  規制については、リスクの高い工程・作業に限定する。これはもっともの話で、そういうことがあります。
  2番目は、風評被害の話です。仮に規制されることになれば、特化則に酸化チタンが入るということで、風評被害によって、商売に影響が大きいので、情報の発信については、細心の配慮をお願いしたいという御意見が出ています。
  これは、正しい情報は皆さんわかっているけれども、お客さんは、特化則に入ったというだけで、拒否反応を示すので、情報の発信に注意してくださいということを承っております。
  個別業界の関係ですけれども、印刷インキの関係は、酸化チタンについては、表面処理ありであり、樹脂等に分散した状態であるので、拡散することはないので、これについては、対象外にしてくださいという意見が出ています。

(スライド21)
  IARCで評価された酸化チタンは、未処理のチタンで、実際、IARCが採用している2Bという基準のもとになっている動物実験は、未処理のチタンを使っていますけれども、実際問題として、ほとんど産業界で使われているものは、表面処理したものなので、塗料については、表面処理をしていて、異なるので、評価も変わってくるのではないかという意見です。
  粉体塗装について、コーティングされているので、特有のリスクは小さいのではないか。発じんしないので、大丈夫ではないかということがあります。
  粉体塗装の関係は、細かい粒子はほとんどないので、肺の中に入っていかないのではないかということがあります、

(スライド22)
  化粧品業界からの意見で、実際、業界として、作業環境測定をやったところ、二次評価値が超えるようなところはなかったという話と、50年以上の製造業において、労働者が酸化チタンのばく露によって、病気が出たという話はないというお話で、プラスして、国際的にも規制されていないのだから、日本だけ規制して、影響を及ぼすことはないのではないかということで、適用除外としてほしいという御意見です。
  次に、溶接関係で、溶接業務の中に酸化チタン単体としては存在していませんし、又、実際問題、粉じん則によって、呼吸用保護具を使用しているので、ばく露する可能性がないので、溶接作業は適用除外にしてほしいということがあります。
  最後、コピー機のトナーの関係も、業界からいただいたのですけれども、この業界もトナーからの酸化チタンが発じんするかどうかの試験を、しっかりやっていらっしゃるそうで、その結果から、ほとんどばく露する可能性がないので、印刷、コピーを使用する作業で、オフィスなどコピーする場については、適用除外にしてほしいということです。

(スライド23)
  一方、検討されている専門家の方々の関心事項ですけれども、表面処理品がいろいろあって、ひとくくりはないのではないかという業界からのヒアリングで、こういう意見が出ました。
  それに対して、実際のところ、各類型で、表面処理をやっている部分の毒性についてのデータがあるかどうか、コーティングといっていても、全部酸化チタンを覆っているのかどうか、ヒトの体の中に入った場合に、コーティングが外れてしまうのではないか、こういったことのデータを示していただきたいということです。
  先程除外してほしいものがたくさんありましたけれども、本当にライフサイクルを通じて、発散する場面がないのかということを、教えてほしいということがありました。

(スライド24)
  あとは、先程粉体塗料の関係で、大きい粒子しかないと言うけれども、実際にはかると、細かい粒子が出てくるので、実際のところ、どうなっているのかということで、そういうデータがあったら、教えてほしいということで、専門家から意見が出されております。

(スライド25)
  これは、酸化チタン以前に、我々で特化則に入れた物質を4つほど書かせていただいていますけれども、各物質で、1年以上かかったものもあれば、数カ月で出たものもあります。
  各物質で適用除外、この部分については、外に発散することはないので、除外しましょうという部分があります。当然、酸化チタン自体が規制するかどうかも、まだ決まっていませんが、仮に規制することになったとしても、前例から見れば、適用除外は出てくるだろうと考えています。

(スライド26)
  これは、参考までに載せていますけれども、措置検討会で、仮にこれは措置をやりましょうという結論になった場合、手続の流れで、パブリックコメントを求めて、労政審議会にかけて、公布・施行という段取りになると思います。これは参考にしていただければと思います。
  まだ検討途中ということで、これからも意見がある場合には、我々に意見を述べていただく機会はありますので、そういう機会を利用して、意見を述べていただければと思っています。
  簡単ではございますけれども、現在の状況です。ありがとうございました。(拍手)

○司会者 (浅井) 穴井様、ありがとうございました。
  それでは、ここで20分間の休憩時間とさせていただきます。
  後半の意見交換会は、15時から開始する予定でございます。
  なお、お手元のピンクのアンケート用紙に、御質問などを御記入いただき、2時40分ごろまでに、仕上げていただきますと、会場におります事務局員が回収にまいりますので、宜しくお願いいたします。

(  休 憩  )

意見交換

 それではお時間となりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。
 コーディネーターは先程御紹介いたしました、長崎大学広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いしております。
  又、パネリストに基調講演を行っていただきました、帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科教授の宮川宗之先生と、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室室長の穴井達也様、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室室長補佐の平川秀樹様、日本酸化チタン工業会より、奥田雅朗様、岡田瑞穂様に御出席をいただいております。
  予定では、16時ごろまで、あらかじめ会場からいただきました御質問について、先生方から御回答をいただきたいと思います。
  それでは、堀口先生、宜しくお願いいたします。

○堀口 皆さん、こんにちは。宜しくお願いいたします。
  酸化チタンに関して、意見交換会、第3回目になりますが、皆様のお手元に赤と青の紙があると思いますけれども、御質問させていただきたいと思います。
  今回、大阪は初めてなのですけれども、酸化チタンに関する意見交換会に今年度御参加の経験がある方は赤を、初めての方は青を挙げていただいても宜しいでしょうか。わかりました。ありがとうございます。
  それから、措置の検討会とか、リスク評価の検討会が厚生労働省で毎年開かれておりますけれども、それらの傍聴の御経験がある方は赤、傍聴の経験がない方は青を挙げていただけますでしょうか。わかりました。ありがとうございます。
  それでは、皆様からたくさんの御質問をいただきましたので、それに沿って進めさせていただきたいと思います。
  読み上げる形で進めますが、回答者に意味がなかなか通じない場合もありますので、そのときには、普通に挙手をしていただいて、補足説明していただければと思います。宜しくお願いいたします。
  それでは、早速なのですけれども、講演の順番になるべくやっていこうと思っているのですが、宮川先生の資料のスライドでお尋ねがありました。資料のスライド7、8について、お尋ねしますということです。全て交付している50~60%、求めがあれば交付している33~36%、これを全て交付している80%に持っていきたいとの説明がありました。混合物でのリスク評価の難しさに主な障壁があると思っています。皆さんを集めた説明会をすれば、解決できる課題だと思っていますが、80%に持っていくための有効な打開策はありますでしょうか。どのようなことをお考えか、もし御意見等がありましたら、宜しくお願いします。

○宮川 宮川からお答えさせていただきます。
  これはスライドの42、後ろのほうに、第13次労働災害防止計画(案)がありまして、厚労省の方から、こういうことになっていますので、このあたりをよろしくと言われたので、先程言ったのですけれども、ここで法で求められるSDSを交付する化学物質の譲渡・提供者の割合を80%以上とするというのが、目標の中に入っています。これはあくまでもSDSなので、SDSはリスク評価とは直接にはかかわりがありません。今、世の中に流布している文献等から有害性をチェックして、それを適切に記載する。自力でつくるのが困難な場合には、規制がかかっている物質については、既にモデルSDSという形でもって、厚労省のウエブサイトにも載っているところでありますし、その数は既に3,000物質を超えていると思います。それを参考につくっていただければ、SDSをつくるのが非常に困難であるということには、基本的にはならないという気がしております。

○堀口 それでは、次の質問にいきたいと思いますが、宮川先生は、把握した情報をSDSで伝達しないと、安全配慮義務を果たしたとは言えないとおっしゃいましたが、違った結果 (判定)の情報が複数あるとき、どうするのがよいか、アドバイス願いたい。両論併記なのか、どちらかに絞るのか、根拠づけはどうするのかという御質問です。

○宮川 非常に難しい質問だと思うのですけれども、私がいつも考えるのは、最終的なサイエンスの判断を待たずに、ある程度のリスク対策はしないと、結果的にそれでもって健康障害が起きたら困る。判断としては、例えば権威のある国際何とか機関と言われているようなところでもって、発がん性ありと書いてある、あるいは疑いがあると書いてあるものを、まだ疑いがある程度であれば、この際、両方の判断だから書かなくてもいいということをしているうちに、実際にそれが原因で、そういうことが起きてしまったときには、それは予見可能なリスクだったのかどうかということが問題になります。
  最終的な判断は非常に難しいところかもしれませんけれども、予防的な措置を考えるのであれば、これは会社のリスク管理ということもあると思いますが、書いておいたほうが、うちの会社としては、世の中に流布している情報として、それを採用して、書いておきましたということで、その段階では、ある程度責任を果たせる。さらにそれを見た、実際にそれを使用している事業者は、そういうふうに書いてあるから、それを使って、もしかすると、過剰なことかもしれないけれども、安全な取り扱いを心がけたということで、実際の危害の発生が回避できれば、こしたことはないと思っています。
  はっきりしていないから書かなかったと言われて、もし健康障害が発生したときに、責任を問われるかどうかは、そのときに予見可能だったかどうかということが、裁判になって問題になるかもしれませんけれども、個人的には、そういうことをうまく回避するためには、一定のところに載っているものは、書いておいたほうが、あるいは疑問つきで載っているということであれば、そういうことで書いておくことが、本来の姿だという気がしています。最終的なサイエンティフィックな判定をきちっと書かなければいけないところではなくて、情報としては、こういうことがありますという、情報伝達の手段として使っていただくことが重要だと思います。

○堀口 ありがとうございます。
  ラベル・SDS・リスクアセスメント制度のテーマの中で、GHS分類、クラスと区分の説明の中で、区分説明で、分類できない、分類対象外、区分外とされていますが、この3つの言葉の定義が不明です。実際の作業でどうやって区分してよいか、迷っています。その言葉の定義を教えてください。

○宮川 きちんとした定義というのは、公的機関が決めたものとは違って、GHSの中でもって、これが決まっているわけではないのです。GHSの用語としてきちんと定義されているものではありません。比較的公的な機関というと、政府がモデル分類事業をやっているわけです。経産省が中心になって、厚労省もかかわって、政府向け分類ガイダンスをつくっています。その最初のほうに、この3つの言葉の説明が載っていて、毒性情報が全くなくて、あるいは判断するには不十分な情報しかなくて、区分を判定できない場合が分類できない、固体に対して適用するような区分であるにもかかわらず、物性が気体であるとか液体のものは対象にならないので、分類対象外です。区分外は、非常に微妙なところなのですけれども、例えばLD50の値が3,000 mgだとすると、国連のGHSでは区分5になるのです。ところが、日本のJISでは区分4までしか採用していませんから、日本のJISで判断するときには、明らかに区分5というデータがあるものには、日本のJISでは、区分1から4までに該当しないという意味では、区分外と言えると思います。このように作用の強さでもって判定できるものについては、データがとってあれば、区分に入るのか、入らないのか、白黒がつくので、区分外という判断をする。
  困るのは、発がん性とか、標的臓器毒性です。これは全く逆の考え方があって、化学物質は、毒であるものと、毒でないものがあるのではなく、全て量によるという基本的な毒性学の考え方があります。そうすると、大量に摂取していれば、毒が出てくるでしょう。GHSの基準でいうと、ヒトのデータがある場合は、標的臓器毒性は量的な基準がありませんから、ヒトで例があれば採用する、区分1にするということになっています。例えば、肝臓あるいはどの臓器にも影響が出ないというようなことは非常に言いにくいことです。それから、生殖毒性とか、発がん性でも、本当に白だというのは、非常に言いにくい。例えばIARCで、発がん性なしに該当するのは1物質しかなかったと思います。そうすると、非常に言いにくいので、余り使わないほうがよいのではないかというのが、私の個人的な考え方ですけれども、相当程度白(陰性)らしいという証拠があれば、区分外と書いてもいいのではないかという考えもあります。
  いずれにせよ、SDSの項目11に、毒性情報としてはこういうものがあります、試験結果はネガティブでした、大丈夫でしたというものがあれば、それを書けばいい話で、あるいは疑わしいということであれば、そう書けばいいということです。困るのは、これをごとく項目2の有害性情報の要約欄、ラベル要素と同じものを書くまとめのところに区分外と書きたいのですけれども、このぐらいのデータでどうでしょうかということを個別に聞かれると非常に困ります。私としては、本来、GHSの区分に該当しているところは、きちんと区分を書く。項目2の有害性情報の要約のところに、です。細かいことは、項目11のところに書いていただくことが、本来の姿ではないかと思います。

○堀口 ありがとうございます。
  リスクアセスメントの実施に際して、ヒト健康リスクというより、作業工程のリスクを評価する側面が強いように思い、何か違和感を抱いています。産衛学会、ACGIHのばく露許容値も甘い印象があり、これを下回ったとして、本当にリスクが低いと言えるのか、少し疑問に感じていますということです。
  宮川先生、お願いします。

○宮川 高低を評価しているように思われるというのは、安全のほうのやり方は、まさにそういうことがあるという気がしております。衛生に関しては、そういうやり方でやるべきではない。
  スライド14にありますような、マトリクス、数値化、枝分かれ、あるいはシナリオ、これは基本的に工程とか、過去のデータをもとに、どのぐらいの確率で、頻度で事故が起きるのか、起きたときにどういったことになるのかということでもって、悪いことが起こる期待値が計算できるような場合に、適用できることになっているので、私は、そうでないほうがいいということを強調して話したつもりです。
  私がお勧めした方法は、許容濃度と比べる、あるいはTLVと比べるということです。そもそもTLVや許容濃度というのは、設定のときに、ある程度マージンを設定しているわけです。閾値ぎりぎりのところでもって許容濃度を設定するということではなく、私は許容濃度の委員会のメンバーになって、10年以上たちますけれども、一定のマージン、安全値を見込んで設定をしているので、通常の労働者が普通の労働強度でという許容濃度の定義に従った解釈をすると、通常、そこを下回るようにしていれば、一定の配慮をしたと判断できるような数値になっているのではないかという思いがいたします。
  ただ、もちろんヒトによって感受性が違う場合がありますし、特に感作性物質などについては、感受性の高いヒトがいる場合もありますし、生殖毒性に関しては、許容濃度が適用できないような場合も多々あるわけです。そういたしますと、100%大丈夫というものではなくて、個別の判断も必要です。基本的にゼロリスクはないので、どの程度のリスクを受容するかという、社会のコンセンサスに基づいて、適否が最終的には決まるものだと思っております。

○堀口 ありがとうございます。
  リスク評価する際には、ばく露量と低用量部位を比較するよう活動を進めていますが、実際に評価を行おうとすると、TLVのないもののリスク判断や対象物質の測定可否の判断に非常に悩んでおり、又、調査の時間が非常にかかっています。国で対象データの整理や測定方法などをまとめたデータベースなどを作成してもらえないでしょうか。リスクアセスメントの導入に伴い、簡易測定器が普及してきていますが、原理がわからず、とりあえずはかってみて、数字が小さければよいという、安易な考えで使われているように思われます。教育やガイドラインがあるといいのですがという話なのですが、宮川先生、御意見ありますか。

○宮川 必ずしも正確ではないかもしれないという簡易測定装置と、コントロール・バンディングと、どちらが正確な答えが出るかを考えると、私としては、とりあえず測定をしていただくほうがいいような気がしておりますし、これは逆に言うと、検知管とか測定器のメーカーにとっては商売のチャンスだと思って、なるべく性能のいいものを出していただくあるいは適用できないところをはっきりさせて、製品に説明としてつけていただくしかないと思います。
  あと、国としてデータをそろえるかどうかということは、私からはお答えできません。

○堀口 穴井さん、お願いします。

○穴井 国でデータをそろえろという話が出ました。できるものはやれるのですが、先程も出ましたけれども、世の中に7万種類も化学物質があって、それを全て国の責任で出せと言われたら、それは国でもできません。企業の責任で、自分たちが出す化学物質については、自分たちで責任を持つということで、自分たちで情報をとり、そういうことをやっていただくというのが基本だと、我々は考えています。

○堀口 SDSについて、使用時に10倍希釈をするので、10分の1濃度でSDSをつくって宜しいとの要望などが、売る側、使い側の両者からありました。要望しても、作成してもいけないようなルールがあってもよいのではないかと思いましたという御意見なのですが、宮川先生、いかがでしょうか。

○宮川 SDSをどう書くかというのは、政府に従うと、薄めてあるものも混合物と考えれば、混合物としての評価結果を書けばいいということになります。だから、毒性の区分などは、薄めたものに対応して記載されていることになるので、それはルールどおりになると思います。ただ、実際、許容濃度と比較する場合には、それぞれの成分で考えなければいけないということがあると思います。

○堀口 それでは、講演の2に関する御質問に入っていきたいと思いますが、少量新規物質の製造又は輸入は、年間100 kg以下との説明でしたが、以前は、1,000 kg以下だったと記憶していました。いつから1,000 kgから100 kgに変わったのでしょうか。今日現在、100 kgなのでしょうか。

○平川 1,000 kgという数字なのですけれども、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)の少量新規の制度から出てきたものと理解しております。それと並行して、安衛法にも少量新規の制度がございます。それぞれの法令に基づいて、それぞれ出していただく必要がございますので、今回の説明で、安衛法の制度がわかったということであれば、今後、安衛法の法令に基づいて、少量新規の申請の御提出をお願いできればと思います。宜しくお願いいたします。

○堀口 それから、ばく露実態評価の対象とした事業者、作業者は、どうやって選ばれたのですか。そのときの測定法、対象作業、事業者の管理実態は、法規制をかける根拠として妥当なのか、それをどう評価したのか知らないので、教えていただきたいとのことです。

○平川 どのような形で事業場を選んだかということなのですけれども、先程最後に有害物ばく露作業報告の話をさせていただきました。有害物ばく露作業報告に関しては、該当の事業場から、帳票で製造、取扱いに関する情報を提出していただきます。その情報に基づきまして、ここはリスクが高そうだと思える事業場を選んで、実際に現場に赴きまして、作業環境測定とか、個人でどれぐらい気体とか粉じんをばく露しているのかを把握するためのサンプリングを行っているということでございます。その結果が、先程の説明の中で申し上げました、ばく露評価ということでまとめられまして、ばく露評価と有害性評価を比較して、リスクが高いか、低いかということの判定をしております。
  あと、測定方法につきましては、リスク評価の結果のところで申し上げました、5物質につきましては、平成29年度リスク評価検討会報告書に測定方法を示しております。逆に言えば、その測定方法を国として測定に用いていますので、同じような方法をやっていただければ、環境濃度の測定もできることになっておりますので、各企業におけるリスクアセスメントに御活用いただければと思います。宜しくお願いいたします。

○堀口 初期リスク評価についてなのですが、詳細リスク評価の結果を受けて、リスクが高い化学物質については、特化則の対象物質に指定されるのがおおよその流れであるが、評価結果が判明してから、おおよそ何年で特化則の対象物質に指定されるのですか。

○平川 措置検討会で検討を開始してから、2ヵ月で結論が出ているものもあれば、1年ぐらいかかっているものもあります。もう少し時間がかかることも可能性としてはあります。

○堀口 リスク評価の状況をタイムリーにつかむためには、どのようにしたらよいでしょうか。審議会の情報は確認しているのですけれども、一覧化されたものなどがなくて、常時、リアルタイムで公開されていないため、把握が大変ですと言われています。

○平川 化学物質のリスク評価結果については、職場のあんぜんサイトのリスク評価実施物質 (http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc09.htm)のところで御覧いただくことができます。
  アップデートにつきましては、可能な限り、対応してまいります。

○堀口 それでは、酸化チタンはたくさん質問が来ていますので、宜しくお願いいたします。
  酸化チタンは、取り扱いの歴史が長い物質でありますが、ヒトでの症例は、どんなものがあるのか、教えてほしいということです。

○穴井 肺がんです。IARCで疫学のデータも若干検討されたりしているのですけれども、その場合は、肺がんです。但し、原因が酸化チタンであるとの因果関係は認められていません。

○堀口 肺がんということです。
  それから、酸化チタンが悪いのか、ナノ粉体だから悪いのかがわかりにくいです。他のナノ物質にも波及していくのでしょうか。

○穴井 今、リスク評価をしたのは、あくまでも酸化チタンに着目してやっているので、他のナノ物質についてまで、言及するということで、我々はやっているわけではないです。

○堀口 どうぞ。

○奥田 日本酸化チタン工業会から参りました、普段、大変お世話になっております。
  今、ナノの酸化チタンの話がございましたけれども、ナノの酸化チタンを評価したら、他のナノ物質まで波及するのか、これは今後の議論になると思います。
  1つ、2回目のリスクコミュニケーションのときにも、情報提供させていただいたのですけれども、欧州では、酸化チタンがIARC2Bであることを基準にして、CLH分類で2という途中報告が出ておりますが、最終決定ではありません。そのオピニオンのコンクルージョンに書かれていますのが、酸化チタンだから発がんに至ったのではない。PSLT、poor soluble low toxicity、難溶解性低毒性として対処する必要があるというまとめになっております。ですから、そこのポイントといいますのは、酸化チタンを規制の対象にするのか、難溶性の物質を全体で規制するのか、酸化チタンだけ指定したとしても他の難溶性物質にも波及するのではないか、ここはこれからの1つの大きな論点として、私どもも主張していこうと思っております。
  又、日本でも、酸化チタンは、二次評価値、許容濃度、管理濃度がございます。それらは、いずれも粉じんとしての管理濃度、許容濃度ですから、日本も欧州と同様の環境になってきていると思っております。今後の議論に期待したいところであります。

○堀口 酸化チタンは、結晶型、ナノとナノの表面処理の有無がありますが、使用する側の立場からすると、全て異なる性質を示すと認識されるケースが多い。これらを1つの物質として検討していってもいいのでしょうか。特に毒性のデータが同じものになるのか疑問ですということです。

○穴井 まさに、今、おっしゃったところが、措置検討会の中で、委員の先生方で議論になっていますし、今後も御議論になると思われていることで、今まで我々が検討してきた物質で、コーティングされているものを対象にしたことがないのです。これが多分初めてになると思いますので、そこをどう取り扱うのか。コーティングしていないものと同等に扱うのか、あるいはコーティングしているものの毒性を見ていくのか、そこら辺については、データがないので、次のヒアリングのときに、酸化チタン工業会さんに、ある程度のデータを出していただけるものと期待しているのですが、そういうデータをもとに、今後、議論していくものだと思っています。

○堀口 どうぞ。

○奥田 次の3月12日のヒアリングのときに、集められるだけのデータは、集めております。未処理とコーティングしたもので、肺がんをエンドポイントにしたデータがあれば一番いいのですけれども、なかなかそういうデータはありません。ですから、肺での炎症などある程度のところをエンドポイントに置いたデータ、論文を幾つか集めておりますので、それを紹介していくつもりです。
  表面処理の有無をどう扱うかというのが、大きな論点です。今、御説明がございましたけれども、ちょうど去年の秋に、厚生労働省からシリカのQ&Aが出ております。表示・通知義務対象物質を結晶質シリカだけにする。あとの非晶質は義務ではない。Q&Aのところで、結晶質シリカは、表示・通知の義務なのです。だけども、表面処理したものはどうなるのかという質問に対して、厚労省の考え方というところで、表面処理されたものは、表示・通知の義務ではないという考え方が示されておりますから、ある意味、表面処理をすると、必ずしも未処理と同等には扱えないということを示唆しておると認識しております。

○堀口 似たような御意見が多いのですけれども、酸化チタンの分類が幾つかあって、どの産業で、どのような工程が除外なのかなどが決まってくるのだろうか。これから問題になってくるのではないでしょうかという御意見です。
  製品名で判断できるとよいと思うけれども、なかなか難しくて、対応を悩むと思いますという、現場からのお話です。
  それから、酸化チタンは普通に身近にあり、私たちの産業でも、特別に意識せず使っています。先程の資料の説明でありました、酸化チタンは、多くの種類があります。どの酸化チタンは有害性が高いとか、わかっていますかという御質問です。

○穴井 IARCで2Bとなった根拠というのは、表面処理をしていないものです。

○奥田 基本的には、宮川先生が御説明になりましたように、健康影響の場合のリスクというのは、有害性の程度とばく露の程度です。前提として、酸化チタンがどうしてリスク評価検討会に取り上げられたかというと、IARC2Bだから発がんが疑われる。IARC2Bの根拠といいますのは、酸化チタンでも、ルチル型の未処理の酸化チタン、ルチルアナターゼの混晶、1つの結晶の中でルチル形とアナタース形がミックスになっているもの、ドライブレンドではありません、が2Bの根拠になっています。ですから、今後有害性が高かった、IARCが高いとしたもののばく露の程度はどうなのかというところを、考察していく必要があるのだろうと思っております。

○堀口 酸化チタンの安全性評価については、バイオアッセイ研究センターの試験結果を加味するなど、十分な相互理解の上で、透明性を持った議論の中で、時間をかけて進めていただきたいという御意見です。
  ナノ粒子なり、表面改質の有無なり、毒性機序を明確にして、必要な制度を設定していただきたい。作業者の安全は、当面、粉じん則を徹底することでよいと思うが、いかがでしょうかということです。
  作業現場で酸化チタンを扱う場合、管理濃度は鉱物の粉じんとして、又、許容濃度は第2種粉じんの許容濃度を遵守しています。酸化チタンは粉じんという理解でよいでしょうかという御質問があるのですが、いかがでしょうか。

○穴井 使っているものは、粉状のものですから、粉じんといえば、粉じんになると思います。現在かかっている規制は、袋詰め等の場所での粉じん則がかかっているということですので、それは必ず守っていただきたいと思います。
  それプラス、IARCで2Bということも出ていますので、その辺も加味して、リスクアセスメントもちゃんとやっていただいて、現場で使っていただくというのが、現在のところはいいのではないかと思います。

○奥田 今の粉じんというのは、私ども工業会としても、大変注目しているところでございます。粉じんといいましたら、鉱石とか、岩石などがございます。ですから、酸化チタンもそれらに含まれます。他に何があるのかというと、正しいかどうかは別にしまして、カーボンブラックなり、炭酸カルシウムなり、酸化亜鉛なり、いろいろある。どこまで広がるのか。酸化チタンは粉じんだ、酸化チタンを指定しますということは、そのバックには、それらの粉じんも隠れているというところは、今後、私どもも主張していきたいと思っているところです。

○堀口 バイオアッセイ研究センターは、数あるチタンの分類の中で、なぜナノ粒子のアナターゼ型タイプだけ、試験をするのでしょうかという御質問です。

○穴井 アナターゼ型のほうが、活性が高いと言われていますので、結果がわかりやすいということで、選んでいると承知しています。結果が曖昧にならずに、明白になるということで、選んでいます。

○堀口 酸化チタンの毒性データに関して、EUからの情報があれば、聞かせていただきたい。産業界では、使用継続していることから、手おくれにならないようにお願いしたいということです。
  プラス、酸化チタンにリスクがあるのではと日本では言っているが、世界での動きは実際にどうなのか。全く議題や意見すら出ていないのではないでしょうかということです。

○穴井 先程奥田さんからもお話がありましたとおり、EUのリスクアセスメント委員会で、IARCで2B相当の発がん性があるという提案がされていて、今後、欧州委員会でそれを採択するかどうかという状況になると聞いています。
  それとともに、先程お話があった、酸化チタンの発がん性というのは、そのものの毒性ではなくて、難溶性の粒子として、それが肺に蓄積することによって起こっているのではないかという結論を、リスクアセスメント委員会が出していると承知しています。その情報が出ているので、今後、措置検討会の中で、そういう情報も含めて検討して、今までのリスク評価をそのまま受け取って措置に持っていくのか、その情報を加味した上で、もう一回、検討し直すのかということも含めて、検討していくのだろうと思っています。

○奥田 若干補足させていただきます。世界の中では、ヨーロッパが、規制に関しては一番進んでおります。ヨーロッパは、今、室長から御説明がありましたように、酸化チタンの発がん分類をどうするのかというところの議論が、昨年から進んでおります。昨年10月に欧州の化学品庁が、リスク評価委員会からレポートを出しております。そのレポートのオピニオンを参考にして、酸化チタンをどう扱っていくかということを、今年以降、本格的な議論をしていきます。
  アメリカは、全くそういう動きがございません。かえって、EUに対して、酸化チタンに発がん区分をつけることに関しては、懸念を表明しております。
  世界を見渡すと、規制が一番進んでいるのは欧州なので、ここを注目しておけばいいと思っております。
  又、日本においても、酸化チタンに関する考え方のところ、サイエンティフィックなところは、欧州の進捗を横で見ながら進めていただきたいと思っております。
  今、欧州でも議論になっている酸化チタンの発がんに関しては、欧州の産業界は、吸入だけではなくて、経口、経皮暴露で、酸化チタンの使用に関してどうなのかというデータをこれからとっていくと聞いております。

○堀口 論文を提出していただいた方がおられまして、酸化チタンについて、ばく露と肺がんリスクに関する研究が少なく、又、肺がんリスクを検証するには、喫煙の影響を取り除くことが必要であると聞きました。多分第2回目のときです。そこで、過去の研究を調査し、添付いただきました。別紙に整理をしました5つの論文を見つけ、それらのほとんどがばく露と肺がんリスクの関係を否定しています。そのうち2つは、喫煙の影響を取り除いており、信頼性が高いと思います。酸化チタンのばく露と肺がんリスクには、明確な関係がないという研究の結果を考慮した場合、酸化チタンを厳しく措置する必要はないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。措置を厳しくする前に、日本でも酸化チタンのばく露とリスクに関する疫学調査を実施の上、御判断いただければと思いますということで、後ろに資料がついています。
  もし御意見があれば、お願いします。

○穴井 どうもありがとうございます。
  我々は、専門委員の先生方に検討していただいているのですが、酸化チタンは50年以上にわたって歴史があると言いながら、疫学的なデータは余りにも少ない、あるいは動物実験のデータが余りにも少ないということで、非常に苦労して検討してきた経緯があります。
  2回目をお聞きになった方は、大前先生がデュポンの例をお示ししたのを聞いた方もいらっしゃると思うのですが、デュポンみたいに、自社のものをさらけ出して、論文にして出している例が、日本では余りにも少なくて、データが非常に少ないという状況にあります。2回目でも話を聞かれた方がいると思いますが、各企業でデータをお持ちであれば、論文にして、出していただくことを切に希望します。

○岡田 酸化チタン工業会から参りました。
  論文の提供、ありがとうございます。
  酸化チタンで、本当にがんが出るのかという議論はあるかと思いますが、発がん性がないことを証明することは、はっきり言ってできないと思います。私どもの業界が、他の業界に比べて、肺がんになる人がどうも多そうだとか、そういう直感的な認識がない。もちろんがんは、すぐに発症するわけではないですが、酸化チタンの歴史は、人間の平均寿命を超えるぐらいの製造の歴史があるわけですから、そういう中での実感です。
  それを説得するためには、科学的なデータが必要になるということで、余りにもそういう意識がなかったために、結果的に、今まで疫学調査とか、そういうことがおろそかになっていたのではないかということで、酸化チタン工業会といたしましても、そういったところをこれから考えていかなければいけないと思いますし、又、酸化チタンを御使用していただいているところでも、そういった知見などがあれば、大いに寄せていただきたいと思っております。

○奥田 若干補足させていただきます。確かにヒトのデータがあれば一番です。ヒトの疫学データがないから、動物のデータからヒトの発がんのポテンシャルを類推しています。ベースになっている動物のデータといいますのが、ばく露濃度が250 mg/m3の粉じん濃度を2年間にわたってラットに吸入させたものです。論文では、ラットの肺の写真も出ていますが、それによると肺の重量もふえて、ボリュームも大きくなって、本当にそれが適切なのか。今、根拠はそれだけです。そのデータと、写真が載っているのは、未処理の酸化チタンを詰め込んだ肺だけですから、よくその写真を出すのですけれども、明らかにオーバーロードになっています。ヒトの疫学データがないですから、その結果からヒトを類推するしかないのが現状です。
  今、論文の御提供がございました件も含めて、私ども業界として、次の検討会、ヒアリングのときには、IARCでも未評価のものに関しては、どんどん取り入れて、意見発信していきたいとは思っておりますし、又、今、岡田からコメントがございましたように、最後、どうしてもやらなければならないのだったら、酸化チタン工業会として疫学調査の必要性、有害性の解明に協力していくことは、どこかでしないといけないと思っております。まだ決定事項ではございません。

○堀口 ヒトの疫学調査はなかなか難しい、データがないというお話が、今、ありましたが、御質問の中に、ばく露実態調査を再度もしくは追加で実施する、ばく露評価を仕切り直すことはあり得ますか。あり得る場合、どういった場で、どういう方法、どう判断すれば、実現しますかという御質問があります。

○穴井 なかなか答えにくい質問なのですが、今、措置検討をやっています。この中で、先程いろいろ意見が出ていますけれども、新しい科学的な知見がわかってきて、もう一度、リスク評価を新しい知見でもってやったほうがいいですということが合意されれば、リスク評価を改めてやるという可能性は、なくはないと思います。これは個人的にですけれども、そう思います。その場合に、改めてそういったもので仕切り直すことも、可能性としてはあると思います。

○堀口 バイオアッセイ研究センターによる酸化チタン長期発がん性試験において、試験物質はナノ粒子のアナターゼ型を選んでいますが、その結果は、ナノ以外のルチル型、表面処理ありにも展開するものでしょうか。

○穴井 展開できれば一番宜しいのですが、残念ながら、バイオアッセイセンターでできるラインは、毎年1物質しかできないのです。酸化チタンだけが発がん物質ではないので、他の物質も優先順位をつけてやらなければいけないので、現在のところ、やっているものにかわって、もう一回、酸化チタンをやる可能性は低いのではないかと思っております。

○奥田 今日の発言は全て議事録に残って公開されますので、今、酸化チタンは発がん物質という発言がございましたけれども、まだそうなったわけでもございませんので、コメントいたします。

○穴井 失礼しました。

○堀口 IARCの判断が発がん性のよりどころだが、今、本格的な高信頼性の吸入発がん性試験が進んでいるので、その結論をもって、特化物にするか決めてはいかがか。本試験の結果、法規制を取りやめる可能性も残っています。動物実験では、極めて高吸入濃度のばく露で発がんが起きており、そのときに慢性肺疾患が発生しています。まずは粉じん則で慢性肺疾患を防ぐのが先決ではないか。宮川先生の御意見をぜひお聞きしたいということです。

○宮川 このものについては、得意ではないので、非常に言いにくいところですけれども、アナターゼのナノでもって結果が出て、どこまでそれを持っていくかというのは、1つ難しいところがあると思います。
  それから、粉じん則のほうですけれども、ナノサイズの粒子まで考えて、粉じん則ができているわけではないので、そこをどういうふうにするのか。粉物一般を一定の許容濃度でということでもないし、又、粉じん則も素人から見ると細かい条件がついていて、これが適用になるのかならないのか、すごくわかりにくいところなのです。
  もう一つ、逆のことを言わせてもらうと、溶けない粉物について、毒性があるからいろいろな指定なりリスク評価の対象にしたらどうですかというと、それは特別な毒性があるわけではなくて粉だから当然でしょう、いわゆるNOS相当するものなので、わざわざ規制の必要はないという意見を聞く場合もありますが、粉としての毒性があるのだったら、粉じん則でうまく適用してやってくださいというのが、本来なのだと思います。そうすると、粉じん則がさらに複雑なものになって、一般の方に理解してもらうのは難しいことになります。粉物については、リスク評価の企画検討会のほうでも、幾つか話題に上りましたけれども、対応がなかなか難しいということになっています。
  済みません、答えになっていないかもしれません。

○堀口 酸化チタン (ナノ粒子を除く)の詳細リスク評価で、ばく露評価の結果、リスクが高いとされた粉体塗装については、ばく露物質が酸化チタンそのものではない(樹脂に包まれている状態で塗装している)にもかかわらず、粉体塗装のリスク評価結果は、リスクが高かったので、酸化チタンを措置の対象とすることが理解できません。仮に粉体塗装のばく露評価を除いて考えても、酸化チタンが措置の対象になるのでしょうかという御質問です。

○穴井 粉体塗装の関係なのですけれども、酸化チタンの測定に当たっては、酸化チタンをはかるということで、コーティングを剝すような酸などを入れまして、コーティングを剝した上で、焼いて、酸化チタンをはかっているという測定法をやっていると承知しております。したがいまして、御指摘のとおり、コーティングされている現場での酸化チタンであれば、コーティングの酸化チタンをはかるに当たって、そういったものをはかっていたということになろうかと思います。そうしたところの状況については、3月12日の措置検討会に向けて、情報収集を行っております。公開できるかどうか、その辺はあれなのですけれども、どういったものを測定したかということについては、こちらでも改めて情報の確認を行っているところでございます。

○堀口 どうぞ。

○奥田 今の御質問の趣旨が間違っていたら、ごめんなさいですけれども、酸化チタン自体が発じんするところをはかったらいいのではないか、樹脂に包まれた粉体塗装をはかるのは、ちょっとおかしいのではないかという御質問だと思って聞いていました。もしそういう理解でよろしければ、結論から考えていただいたほうがいいと思うのですが、三酸化二アンチモンの措置検討会の報告書、最終報告が出ております。一部、スライドの25ページにもありますけれども、そこのまとめでは、管理第2類物質、特別管理物質に指定する。あと、書かれていますのは、三酸化二アンチモンを1%以上含む中間体とか、製剤にも適用されるのです。ですから、粉体塗料の中に酸化チタンが1%以上入っていますかというと、入っていますから、酸化チタンを製造しているところから、次のお客様まで1%以上酸化チタンが入っているところ全てが対象になります。どこを測定対象として選ぶかというのが、ばく露作業報告の中から委託しているところがコントロール・バンディング手法を用いて選んで、測定をしていった。ですから、測定したりする場所としては、今の厚労省のリスク評価のスキームでは、特に間違えていないところです。
  ただ、私どもがこれから問題提起をしていきますのは、日本塗料工業会さんがヒアリングのときに、塗料に使う酸化チタンは、全て表面処理品だということをおっしゃっていました。そうなってくると、酸化チタンは、いろいろなバリエーションがあって、未処理品も表面処理品もある。本来、はかるべき未処理品が1%以上含まれていたらいいのですけれども、それが表面処理品だと本当に対象物をはかっているのですかというところは、これからの議論の大きなポイントだと思っております。

○堀口 どうぞ。

○A氏 今の質問は私なのですけれども、質問の趣旨が伝わっていなかったみたいです。

○堀口 マイクがいくので、待っていてください。

○A氏 風邪を引いているので、マスク越しで、聞こえにくいかもしれませんけれども、御容赦ください。
  詳細リスク評価に移行して、その中で、改めてばく露調査をやっていただいて、その中で、粉体塗装の現場は、非常にばく露量が多かったということで、順番に手続を踏んで、リスクが高いので、措置検討会に移行という流れだったと思うのです。仮に粉体塗装の現場をばく露調査の対象にしていなくて、粉体塗装以外のばく露調査結果だけをもって、措置検討会に移行したのでしょうかという質問です。

○堀口 粉体塗装が対象になっていなかったら、措置検討会に上がるようになったかどうかという話ですね。

○A氏 はい。

○穴井 先程平川から言いましたとおり、実態調査をやるときは、ばく露作業報告の中から、ばく露の多そうなところに行くわけです。多そうなところがあって、あるかどうかを調べにいくのです。それはなぜかというと、そういう高いところがあるということは、その物質で危害を受ける労働者がいるかもしれないからです。そういうところを選んだ結果、粉体塗装のところが当たったということなので、今の質問というのは、成り立たないと思います。多いところに行った結果、粉体塗装に当たったということです。

○A氏 私の認識が間違っていたら、それは間違えですと言っていただきたいのですけれども、検討会のヒアリング等の中でも、粉体塗装の関係の方がおっしゃっていたように、粉体塗装に使っている酸化チタンは、酸化チタンそのものを使っているわけではない。前処理をして、完全に樹脂にコーティングして、それを使って粉体塗装をやっている。実際にそれを吸入しても、酸化チタンを吸入しているわけではないのです。樹脂を吸入しているのです。それでも、それは酸化チタンのばく露という判断をなされるのかどうか。そこら辺が疑問です。
  そういう認識でおられるのだったら、完全に樹脂に溶かしたアンチモンなどは対象にならない、除外になっているというのも、成り立たないようになるし、そこの辺の展開をお伺いしたい。そこはどう考えても、自分の頭の中で整理ができないのです。アンチモンの場合は除外して、酸化チタンの場合は除外できないというところが、どう考えても理解できない。

○堀口 どうぞ。

○穴井 似たものだから、そういうふうに考えられていらっしゃるのは、理解できるのですけれども、最初の我々の考え方としては、別物だと考えて、奥田さんもおっしゃっていたとおり、少なくとも酸化チタンが含まれる、常識的に言うと1%以上含まれるようなものは、全て酸化チタンとみなして、現場にはかりに行っているわけです。そこではかって、ばく露濃度が高かったという結果が出たということなのです。その結果と全く酸化チタンが出てこないという話は、次の段階の話です。意味わかりますか。
  酸化チタンというものは、粉体塗装の事業場では、ばく露濃度が高かったと、我々は判断します。今度、リスクが高いという結果をもって、措置検討会にいったときに、ばく露濃度が高かった粉体塗装の事業場は、樹脂に包まれているのだから、実際問題として、酸化チタンは外に出てこないという判断がなされれば、除外されるというロジックで、我々は進んでいくということです。

○A氏 今、頭の中で整理できてきたのですけれども、ばく露評価をやったときに、一番多かった粉体塗装については、最終的によく検討した結果、これは除外という結果になったとして、それだったら、残りのばく露評価の低かったところばかりを措置対象としてやるということになったら、前提が崩れてしまうような気がします。仮に最初から粉体塗装は措置の除外だということでスタートしていたら、ばく露評価というのは、低いところばかりのデータをもとに、果たして措置検討に移行していたかどうか。

○堀口 ちょっと待ってください。今、論点がずれた気がするのですが、措置検討会というのは、リスク評価をしてから、詳細リスク評価になった物質について、どうするかと検討するところなので、最初から除外するとか、そういうものはまずないです。

○A氏 それはわかっています。

○堀口 作業は、ばく露量と関係していると思うのですけれども、作業だけではなくて、先程工業会の方が言われていたのは、酸化チタンの物質そのもののコーティングがされているとか、ナノとか、ナノではないというところで、非常に複雑に分類されていて、そういう物質は、今回、初めてリスク評価をし、又、どうしていこうかと、今、悩んでいる最中でして、ここに何月何日とか、御質問をいただいた方もいるのですけれども、今、悩み最中なので、悩んでいる論点は、資料3に先生方の御意見として書かれておりますし、そこは、おっしゃっている話も含まれておりますし、それを明らかにしていくには、根拠のデータが欲しいので、一生懸命根拠のデータを出してくださいと、今、厚生労働省はお願いをし、工業会は必死に集めていらっしゃるので、加えて、皆様のほうで、資料が少ないので、お持ちだったら出してくださいという流れになっています。
  外れるか、外れないかというのは、皆さん現場なので、一番気になるところですけれども、その直前の種類というか、分類がたくさんあるのをどうしましょうかということで、今、悩んでいる人たちが、こちら側にいる人です。それに関して、私は悩んでいないのですが、IARCの2Bという物質を評価しなければいけないのではないでしょうかという、物質を上げるほうの検討会にいて、こんなに皆さんが大変になるとは思わず、ごめんなさいという感じではありますが、今、まだ決まっていないことですので、そういう御意見をたくさん出していただければと思います。
  ナノとナノ以外、SDSにも関連していて、御質問があったのですけれども、酸化チタンのリスク評価で、ナノとナノ以外に分けられているのですが、現行のSDSでは、ナノかどうかわからないようになっています。
  あと、CAS番号が、酸化チタンは13463-67-7で、ルチル型は1317-80-2で、アナターゼ型は1317-70-0なので、モデルSDSなどの内容は異なってくると思いますが、SDSラベル作成などでの参照方法はありますでしょうかという御質問が来ています。

○宮川 ナノとナノ以外ということで、リスクアセスメントの対象となるようなものが、モデルSDSをつくってくださいというほうにもいっていると思うのですけれども、先程の質問にも関係すると思うのですが、結晶タイプ、粒径、表面処理のあり、なしでもって、あらかじめ毒性の違いがわかっていれば、そこを考慮した上で、こういうものについてのみ、リスクアセスメントの対象にしましょうとか、異なったSDSとか、GHSの分類も違いますということがわかるわけですが、それがないところで、データをとってくださいと言われると、大ざっぱにくくったものでしかつくれない。そういうことになる可能性があるので、広く対象として、実際はごく一部のタイプのもののみ、毒性がある場合でも、そこをきちんと分けて、毒性を見ないと、つくれなくなるわけです。そうすると、ある程度まとめて、こういう可能性があるということでもって、情報提供しないといけないということで、SDSはつくれてくるのだと思います。
  実際に業者の方がつくる場合、どこまでそこを含めるかということは、難しいのかもしれませんけれども、私がつくるのであれば、見落としがないようにということからいくと、いろいろなタイプについてまとめて、こういうものがありますということでもって、つくらざるを得ないという気がします。

○堀口 SDSの質問で、忘れていました。調達原料のSDSの中に、成分表示に関して、非開示の成分表示があります。理由は、原料メーカーのノウハウです。成分表示について、非開示とすることが可能な範囲のルールについて、教示いただきたい。法に基づく表示・通知義務がある物質について、非開示にできないことはわかるが、努力義務の範囲にある物質については、メーカーの都合で非開示にすることは可能なのか。ユーザーの問い合わせについても、答える義務はないのか。危険有害性について、SDSに記載すれば、オーケーなのでしょうかという御質問です。

○穴井 現時点でわかる者がいないので、調べて、後日、お答えします。議事録か何かに載せます。
【回答:SDSの成分表示について、政令で通知が義務づけられている物質については、最低限、政令上の物質名、例えば「アクリロニトリル」などと表記する必要があります。それ以外の努力義務となる物質については、譲渡提供者の判断になりますが、SDSの目的を考えれば、危険有害性を判断した物質単位で情報提供するよう記載することが望ましいです。】

○堀口 所属とお名前が書いてあるので、厚労省に伝えておきます。
  それから、リスクアセスメントの手法について、許容濃度は、吸入ばく露に係る数値が設定されていますが、経皮ばく露に関しては、ほとんど数値が設定されていません。事業者が例えばECETOC TRAツールで、リスクアセスメントを実施する場合、吸入ばく露の許容濃度を使用できるが、経皮ばく露に関する許容濃度が設定できず、不正確なリスクアセスメントになってしまう。経皮ばく露の許容濃度に係る情報は、国に整理を期待しているが、予定などはありますか。

○宮川 国の対応は、後でお答えいただきますけれども、私の講演で言い残したことは、経皮吸収があるもの、そもそも皮膚に対する腐食性があるもの、目に対する重篤な損傷性があるもの、急性毒性で致死作用があるもの、場合によっては、感作性で、ぜんそくの発作で命に係るようなもの、このように、直ちにばく露すると問題が起きるようなものに関しては、一般的なTLV-TWA、8時間ばく露の許容濃度は使えません。なので、まずさわってはいけないとか、目に入れてはいけないものは、その場でそれに触れないようにする。安全と同じような対応が必要で、リスク対策をすることが必要です。逆に保護具を使っていないような危ないところがあったときにはリスクがあると判断するのが本来だと思います。
  経皮吸収があるものについては、生物学的ばく露基指標があって、これを基準として扱えるものというと非常に少ないのです。なので、そういうものについては、どのような方法で定量的なリスク評価をするのがいいのか、今問題になっているところで、国の検討会でも、検討の対象になっているということです。

○堀口 どうぞ。

○穴井 国のほうで、整理してほしいという御要望ですけれども、今、宮川先生がおっしゃったとおり、我々も、経気道であっても、二次評価値をとるときは、ACGIH、産衛学会の許容濃度をとっているわけで、生物学的な許容値についても、産衛学会などに頑張っていただくのが、道筋だと思います。
  ただ、そうはいっても、来年度から経皮吸収について、実態調査をやるという方向で動いていますので、検討会などで、生物学的許容値のない物質は、どういうふうにはかったらいいのだろうかということについても、検討していただくことにしています。そういう情報が成果になったら、又皆さんにフィードバックしていきたいと思います。

○堀口 時間が残り20分ぐらいなので、フロアから追加でいただきたいと思っているのですけれども、第2回が東京であったのですが、そこから大きな進展はありますかという御質問が1つあります。

○穴井 酸化チタンについてということですね。

○堀口 はい。

○穴井 3月12日にヒアリングをやりますが、そこまでは、検討会も開いていませんので、進展はありません。

○堀口 いつ、何が行われるのでしょうかという質問などは、わからないようなので、読み上げておりません。
  私が読み忘れていたり、今、ぜひ聞いておかなければいけないとか、回答によって、又新たな質問が湧いている方もいらっしゃると思いますので、もしよければ、挙手をしていただきたいと思います。所属やお名前は特に必要ありませんので、御質問のある方は、手を挙げていただけませんでしょうか。
  今、マイクがいきますので、お待ちください。
  宜しくお願いします。

○B氏 本日は、貴重な御講演ありがとうございます。
  これまでの流れからですけれども、初期リスク評価、詳細リスク評価、それをやった後の各種ヒアリングを通して、特化則に指定する健康障害防止措置に義務を追加する流れだと思うのですけれども、一般的に詳細リスク評価がわかってから、実際に法律が施行されるまで、おおよそどのぐらいの期間があると考えたら宜しいでしょうか。わかる範囲で教えていただけると助かります。

○穴井 直近で規制したのは、三酸化二アンチモンですが、詳細リスク評価が出たのが27年8月で、措置検討が最終的に終わったのが28年3月ですから、半年以上たっています。そこから省令改正のための手続が始まって、平成29年3月に公布して、6月から施行という形になっています。なので、詳細リスク評価の報告書が出てから、実際に省令が発効するまで、約2年かかっているということです。

○B氏 三酸化二アンチモンの場合は、2年かかっているということで、それ以上、もしくはそれ以下でかかることも十分にあるということですね。

○穴井 そうですね。物によって変わってくると思います。酸化チタンみたいに、議論が錯綜している中では、なかなか進まないかもしれないので、もっと時間がかかる可能性があります。

○B氏 どうもありがとうございます。

○堀口 他に御質問はありませんか。どうぞ。

○C氏 同じく酸化チタンについてなのですけれども、11ページ目と12ページ目の酸化チタン(ナノ粒子を除く)の詳細リスク評価のばく露実態調査の結果のところで、真ん中の「対象物質を含有する製剤その他の物の製造を目的とした原料としての使用」というところは、二次評価値よりも全て低くなっていると思うのですが、万一、酸化チタンが措置されるとなったときに、ここの部分の取り扱いはどうなるのか。具体的には、どのような工程を調査されたのか、教えていただきたいと思います。

○穴井 今までの例ですと、三酸化二アンチモンのときもそうだったのですけれども、三酸化二アンチモンそのものプラス、それを1%以上含む製剤その他のものを対象にするのが、オーソドックスなパターンです。その中で、どこを除外するかということを、後で決めます。そういったものが普通なので、ここに書かれている「対象物質を含有する製剤その他の物の製造を目的とした原料としての使用」という部分は、原理的には入ってくると思います。

○C氏 ばく露が低いところも、入ってしまうということですか。

○穴井 そうですね。そこの部分は、ばく露しないというデータがあって、明らかにしないというとこがわかっていれば、除外される可能性はありますけれども、原則をいえば、入ってくると思います。

○C氏 今回、ここに載っている部分についても、明らかに少ないとは言えないということなのですか。

○穴井 そうですね。

○堀口 宜しいですか。

○C氏 はい。

○堀口 追加で、お願いします。

○奥田 お聞きしたいのですけれども、今、御質問された方の業種は、どんな業種かわかりませんが、業界の中の企業が何社かここに入っていて、特定の業種のデータが二次評価値を下回っていますということをお示しすれば、それは又除外するかどうかの検討の対象になるという理解で宜しいですか。

○穴井 そうですね。いずれにしろ、データがないところを除外するわけにはいかないので、データを示していただいて、除外するかどうかの検討を委員の皆さんにしてもらって、この業態とか、作業工程は、明らかに酸化チタンが出てこないので、除外すべきだということになれば、除外されるという道筋をたどるのだろうと思っています。

○堀口 追加でどうぞ。

○C氏 業界として、そういうデータを出せば、除外される可能性があるということですね。

○穴井 はい。

○C氏 仮に措置が決まった後から出しても、それは認められる可能性はあるのでしょうか。

○穴井 措置が決まる前に、要するに、今、検討中です。ヒアリングを行っていますので、一番いいのは、データを示して、ヒアリングを受けていただくというのが、一番オーソドックスな対応だと思いますけれども、もしそれがかなわないのであれば、今、データを集めているところですということであれば、後で出していただいて、措置検討の場に提出していただくというのが、いいと思います。

○平川 昨年の10月から、書面調査でヒアリングを希望した団体からヒアリングを行い、これまで7団体のヒアリングを実施しました。今、御質問いただいている方が所属している団体に書面調査を受けたかどうか、又ヒアリングを希望したかどうかを照会するといった対応が必要だと思います。

○C氏 ありがとうございました。

○堀口 手続としては、第1回目のときに、団体の方は、もっとヒアリングを受けてくださいと、厚労省から呼びかけはしているのです。そのときに、意見を言うことは、誰でもできるのですけれども、論文になっていなかったとしても、自分たちの団体で集めたデータがその場にお示しできるのであれば、資料がない状況ですので、それは少しでも資料があるほうが、検討もやりやすいですので、ぜひ出していただければと思います。宜しくお願いします。

○C氏 ありがとうございました。

○堀口 隣の方、どうぞ。

○D氏 先程の質疑の中での御回答に対する質問なのですけれども、疫学データの件なのですが、ヒトでの症例が何かあるかという質問に対して、肺がんであるとお答えになったと思います。11番目の質問なので、議事録のときに確認していただきたいのですけれども、肺がんというのは、疑いがあるという話であって、ヒトでの明確な根拠があって、肺がんと言われているわけではないのです。IARCは動物実験の結果をもとに、ヒトでの疑いがあると言っているのであって、ヒトでの明確な症例というのは、今のところないと、私は理解しているのですけれども、それは正しいですか。

○穴井 IARCが根拠としているのは、ヒトでは確からしい証拠はないけれども、動物実験によってというのは、それはそのとおりです。
  ただ、それとは別に、第2回のときに、デュポンの例が出たのですけれども、デュポンの例では、酸化チタンに従事している労働者と、会社内で酸化チタンに従事していない労働者を比較した場合、肺がんになる確率が、従事している労働者のほうが高いというデータが出ているということがあって、それはたばこなどの補正がされていないので、どこまで信頼できるかという話がありましたが、科学的に見て、酸化チタンが肺がんに全く関係していないということは言えないという、そういう例として出されたということです。

○D氏 わかりました。

○堀口 宜しいですか。

○D氏 はい。

○堀口 他に御質問はございますか。どうぞ。

○E氏 1つ前の質問に戻って申しわけないのですけれども、業界団体ごとにヒアリングを受けていただいて、データをお示しすればというお話だったのですけれども、例えば作業形態ということであれば、例えば酸化チタンの入った粉袋から仕込みをしますといったような作業で見た場合には、業界によらず、いろんなところに又がって、同じ作業があると思うのですけれども、こういった場合でも、業界団体ごとにというのは、優先されるというお考えなのでしょうか。

○平川 業界団体という形で申し上げましたのは、個別の企業ごとに、一つ一つ聞くという話になりますと、各企業の技術情報がベースとならざるを得ないため、公開のヒアリングという形が成り立ちません。したがって、団体会員の共通の問題点等をまとめていただいた上で、ヒアリングを受けていただいております。
  但し、どうしても機密情報がないと、説明できないという場合であれば、非公開でやることはありますが、その場合でも基本的には団体からの説明を求める形になります。。
  こちらとしては、個々の事業場に対して個別にルールを定めるわけではなくて、特別規制で、共通のルールを定めようとしておりますので、これまでも団体から聞いているところです。

○E氏 団体から御意見を申し上げた場合、ある共通の作業であれば、作業として、措置を考えるということであれば、それは業界を又がって、作業で措置が加わってくるといった理解をしておけば宜しいでしょうか。

○平川 適用除外の規定ぶりは業務単位になっています。よって、業界を又がって業務に共通の問題がないかどうかを確認するためにも、団体単位で意見を聞いているということでございます。

○E氏 わかりました。ありがとうございます。

○堀口 先程の疫学調査の御質問のところで、つけ加えがあったと思います。

○奥田 疫学の御質問をなさったのですけれども、私ども工業会は、IARC2Bを支持しておりません。欧州ももともとノークラシフィケーションでしたから、それと同様です。
  疫学に関しては、第2回目のときに、大前先生がデュポンを例にとられて、デュポンの工場の従業員のばく露されるばく露群と非ばく露群を比較したら、有意に差がある。だけれども、ばく露群とアメリカの国民を比較したら、差がないという論文なのです。論文は、差がないということで、レビューされて、アクセプトされているという事実がございます。そこは、見る人によって評価が違っても困りますから、2回目のときに申し上げたのは、それはそれとして、もう一度ヒアリングのときに、こちらから提出させていただきましたという話をさせていただきました。

○堀口 宜しいですか。どうぞ。

○E氏 新たに論文の提供があったと、先程おっしゃったと思うのですが、あれは工業会のサイトなどに公表されているのですか。読んでみたいと思います。

○奥田 私どもも、今、見たばかりで、どんな論文かというのは、十分に把握しておりません。

○E氏 わかりました。

○奥田 論文を提供いただいた方に、了解を得ることができましたら、ホームページで公開していきたいと思います。
  酸化チタン工業会のホームページですが、興味を持って見てください。私どもの安全性に関する考え方や、発がんに関しての考え方なり、そういったものを公開しております。又、お考えの論点などもいただけたらと思っております。

○E氏 わかりました。

○堀口 IARCはリスクの程度を示しているのではなくて、確からしさ、証拠の重みづけをやっている組織なのです。よく誤解されるのは、ランクが上がるとリスクが高いと認識されてしまうのですけれども、そうではなくて、証拠の重みづけをやっている。だから、先程言われたように、この作業とか、この物質によって発がん性があるとか、症例があるものだと、多分一番上のランクになっているはずです。証拠の重みづけのランキングなので、そこを加味していただくと、今、工業会の方が2Bを支持しているわけではないと言っておられるのは、証拠がまだ出そろっていない段階で、なぜ2Bにしたのかということだと思います。
  労働衛生の分野でなくても、私は食品安全もやっているのですが、2Bと言われたら、うそでしょうという感じで、誤解しないように、皆さん、2Bというのは、証拠の重みづけですという情報発信をしています。
  今回、風評被害について、室長も触れておられましたし、御意見の中にも、化粧品などを使われているのでとありましたが、皆さん自身が2Bを発がん性のランクだと間違えしまうと、それこそ誤解を皆さんが振りまいてしまいますので、証拠の重みづけだということ、発がん性がある、なしの証明ではない、論文とか、証拠がどれぐらい出そろってきたかというところの重みづけだということを、まず携わっている方に御理解いただき、2Bだから、2Aだからというところで、多分メディアの人は誤解しやすい点なので、御説明されるときに、注意をしていただければと思います。
  どうぞ。

○岡田 今、堀口先生におっしゃっていただいたことは、まさにそのとおりなのです。1といいますと、お酒も、たばこも、太陽光も、ハム、ソーセージも全部1です。たばこは、吸ったから、明日、肺がんになるわけではありませんけれども、たばこを吸う人と吸わない人で、肺がんの発生率を比べたら、明らかにそれが高い。それが科学的に信頼されるデータである。だから、1ということなのです。
  そうはいうものの、今、SNSが非常に定着しているので、IARCの区分をもって、これは発がん物質だと決めつけてしまうことがある。実際に使っていただいている方にも協力していただいて、そうではないということは、啓発していきたいと思っております。

○堀口 宜しくお願いします。
  時間が迫ってきましたが、もう一問ぐらい、もしよければ、お願いします。

○F氏 今、話になっているのは、酸化チタンで、しかも、粉体が議論になっていると思うのですけれども、これが成形品になったり、塗料になって製品になっていった場合には、粉体ではないから、万が一、特化則になっても、対象はないですという形にはなると思うのですが、ただ、そのときに、過去からの例で、粉体と限定されていても、加工時には粉体が出るので、それは特化則の対象ですと言っているのです。SDSの情報というのは、日本の場合、成形品にはついていないのです。情報が末端にいかない状態で、特化物の入ったものを加工して、粉じんが発生するということが起きるのですけれども、その辺はどのようにしていこうと考えられているのか、教えてほしいです。

○穴井 粉体ではないように加工したものを、販売されてということですか。

○F氏 買った先で加工されます。そのときに、当然加工するから、粉体となって散ります。それを吸って、健康障害が起きましたとなった場合、何で情報を出していなかったのですかという話になります。制度がないし、どこまでそれを出しなさいという基準もないので、どうしたらいいのかということがあります。

○宮川 規制は別として、情報提供SDSということについていうと、成形品は、加工しないのが前提で提供されているものなので、鋼材とか、加工するのが前提の場合には、少なくともGHSに基づくSDSでは、成形品にはなりません。

○F氏 プラスチックの板は、つけないといけないという形になるのですか。

○宮川 成形品にはならないので、SDSは対象になると思います。

○F氏 でも、現実には出ていないのですね。

○宮川 法定でつけなければいけないものになっているかどうかということは、私はわかりませんけれども、本来でいえば、それは対象になるものだと思います。

○F氏 もし現実に問題になるのであれば、SDSをつけるべきものになる、そういうふうに規制は動くのでしょうか。

○穴井 そういうことです。

○堀口 時間になりましたので、別途、御質問がある方は、終了してから、聞いていただければと思います。
  これにて、意見交換を終了させていただきます。皆さん、御協力どうもありがとうございました。(拍手)

○司会者 (浅井) 先生方、どうもありがとうございました。
  以上で「平成29年度第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション」を終了いたします。皆様、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省労働基準局安全衛生部
化学物質対策課化学物質評価室
電話03(5253)1111(内線5511)

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