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2017年8月30日 第138回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成29年8月30日(水)10:00~11:30


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

【公益代表委員】

荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、守島委員、両角委員

【労働者代表委員】

川野委員、神田委員、柴田委員、冨田委員、八野委員、村上委員、世永委員

【使用者代表委員】

秋田委員、小林委員、早乙女委員、杉山委員、三輪委員、輪島委員

【事務局】

山越労働基準局長、土屋審議官、村山総務課長、藤枝労働条件政策課長、増田監督課長、久知良計画課長、中嶋調査官

○議題

労働政策審議会建議を踏まえた対応について

○議事

○荒木分科会長 それでは定刻になりましたので、ただいまから「第 138 回労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員としまして公益代表の平野光俊委員、水島郁子委員、労働者代表の福田明子委員、使用者代表の齋藤貴久委員、佐藤晴子委員と承っております。本日の議題に入る前に、前回当分科会を開催してから事務局に異動がありましたので、定足数の報告と併せて事務局から説明をお願いいたします。

○中嶋調査官 承知しました。事務局の異動の紹介を申し上げます。監督課長の増田です。

○増田監督課長 増田です。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 計画課長の久知良です。

○久知良計画課長 久知良です。よろしくお願いいたします。 

○中嶋調査官 次に、定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第 9 条により、委員全体の 3 分の 2 以上の出席、又は公労使各側委員の 3 分の 1 以上の出席が必要とされておりますが、定足数が満たされておりますことを御報告申し上げます。

○荒木分科会長 カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。

 それでは、本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。本日の議題「労働政策審議会建議を踏まえた対応」についてです。まず、事務局から、これまでの労働政策審議会の建議を踏まえた対応方針について説明してもらいます。よろしくお願いします。

○山越局長 時間外労働の上限規制につきましては、先般、この分科会におきまして平成 29 6 5 日ですが、建議をまとめていただきました。改めて感謝を申し上げます。現在、頂きました建議に沿った法律案を策定すべく、作業を進めているところです。

 また、これとは別に、この当分科会で御審議を頂き、まとめていただきました建議に基づき、平成 27 年の国会に提出しました労働基準法等の改正案があります。これにつきましては、現在継続審議となっているところです。この継続審議になっている法案に盛り込まれている事項、そして今般、 6 月に建議としてまとめていただきました上限規制等に関する改正事項、これらはいずれも、労働時間制度を定める労働基準法第 4 章を改正するものです。これらの改正事項の間の整合性をとるためには、 1 つの法律案の形にまとめ直すことが当然必要であると考えているところです。また、これらにつきましては、どちらも働く方の健康を確保し、その能力を発揮しながら働くことができ、そして、その仕事と生活の調和を図る観点から、これまでこの労働政策審議会において、労働時間法制という形で一体的議論がされてきたものでもあります。平成 27 年当時は、このうち、時間外労働上限規制につきましては、結論を得るには至らなかったとされたところですが、今般、これにつきましても、労働政策審議会の建議として取りまとめいただいたところです。

 このように、これらはこれまで、この労働政策審議会でも一体的に議論されてきたもので、こうした経緯から申し上げましても、 1 つの法律案にまとめることが適当だと考えているところです。このため、この両者を一括した法律案要綱を諮問したいと考えており、現在準備を進めておりますので、追って御審議をお願いしたいと存じます。

 また、働き方改革についてですが、この働き方改革は、ワーク・ライフ・バランスの改善や、正規・非正規間の不合理な待遇差の解消などを通じて、働く方がそれぞれの事情に応じて多様な働き方を選択できるようにしていくことを目指していく改革です。

 こうした改革を一体的・整合的に進めていくためには、全体を、この継続審議中の労働基準法案も含めて、 1 つの法律案に成立することが適当だと考えております。労働基準法以外の具体論につきましては、所管の分科会・部会で御議論を頂くものですが、追って諮問する法律案要綱につきましては、全体を 1 つの法律案に整理した形にしたいと考えております。諮問を申し上げた際には、御審議をお願い申し上げます。

○荒木分科会長 資料について、事務局から説明をお願いします。

○中嶋調査官 資料 No.1 は、働き方改革実行計画から、当分科会に関係する部分について抜粋したものです。 1 ページから 3 ページにかけて、実行計画の中で、働き方改革の意義であるとか、基本的な考え方に当たる部分が整理されておりますので、そこの部分を掲載しております。 4 ページ以降では、時間外労働の上限規制などについての基本的な考え方、法改正の方向性、各般にわたる具体的な措置の内容について御覧いただけるものとなっておりますので、御参照いただけますと幸いです。

 資料 No.2 は、現在国会で継続審議中の労働基準法等の一部を改正する法律案について、内容の概要等をまとめた資料です。ポイントを絞って御説明いたします。 2 ページが、この法律案全体を 1 枚に整理した資料です。このうちの主要な改正事項について、事項ごとに 1 枚に整理をした資料を 3 ページ以降に付しておりますので、そちらを御覧ください。

3 ページが、中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引上げについてです。ページの左側にある表で、現行制度を御覧いただけます。 1 か月の時間外労働が 60 時間を超える場合における法定の割増賃金率。大企業においては 50 %ですが、中小企業においてはその適用が当分の間猶予されており、現在は 25 %となっております。この猶予措置を廃止し、大企業と同様に 50 %の割増賃金率とするというのが改正案です。

4 ページは、年次有給休暇の確実な取得についてです。左側の囲みが現行制度です。労働者から時季指定を行うことで、年次有給休暇が成立するという仕組みです。いわゆる「ためらい」から、この時季指定を行いにくいことがあり、我が国の年休取得率は、平成 27 年で 48.7 %にとどまっているなどの現状です。このため、改正案においては、年休が 10 日以上付与されている労働者について、年 5 日の年休については、使用者側から労働者に、年休取得時季の希望を聞き、その希望を踏まえて、時季指定することで年休が成立する仕組みとするものです。

5 ページは、フレックスタイム制の見直しについてです。フレックスタイム制は、「清算期間」における所定労働時間に達するように、労働者が始業・終業時刻を選べる制度です。現在、この「清算期間」は最長が 1 か月間であるため、労働者としては 1 か月の中での生活上のニーズに対応することはできるものの、それを超えるニーズへの対応に課題があります。この点について、改正案においては、「清算期間」を最長 3 か月に延長するものです。これにより、例えば保育中の方が、夏の 3 か月の中で労働時間を調整して、月の労働時間を短くすることにより、子供と過ごす時間を確保するといった対応もやりやすくなるものです。

6 ページは、企画業務型裁量労働制の見直しについてです。上の箱の現行制度では、裁量労働制には、企画型と専門型の 2 種類があります。また、賃金計算には、労使で決めた「みなし労働時間」が用いられることを、図とともに整理しております。

 下の箱が改正案の内容です。現行の対象業務である「企画・立案・調査・分析」の業務をベースにした、 2 類型を対象業務に追加するものです。 1 つは、課題解決型提案営業です。例としては、取引先企業のニーズを聴取し、社内で新商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた商品やサービスを開発の上、販売する業務です。もう 1 つは、裁量的に PDCA を回す業務であり、例としては全社レベルの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その過程で示された意見等を見て、更なる改善の取組計画を企画立案する業務です。

 また、裁量労働制で働く方の健康確保措置として、現在、指針に例示されている内容を省令で規定すること。裁量労働制が、「始業・終業時刻が労働者に委ねられる制度」であることを法律上も明確化することです。

7 ページは、「高度プロフェッショナル制度」の創設についてです。 1 が対象業務についてです。「高度の専門的知識等を必要とする」とともに、「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる」という性質の範囲内で、具体的には省令で規定すること。金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務、研究開発業務等を想定することです。

2 は、対象労働者です。書面等による合意に基づき職務の範囲が明確に定められていること。「 1 年間に支払われると見込まれる賃金の額が、『平均給与額』の 3 倍を相当程度上回る」水準として、省令で規定される額 (1,075 万円を参考に検討 ) 以上であることです。「本制度の対象となることによって賃金が減らないこととする」旨を、法定指針に明記することです。

3 は、健康確保措置等についてです。使用者は、客観的な方法等により在社時間等の時間である「健康管理時間」を把握する。健康管理時間に基づき、 1 インターバル措置、 2 1 月又は 3 月の健康管理時間の上限措置、 3 年間 104 日の休日確保措置のいずれかを講ずるとともに、省令で定める事項のうちから、労使で定めた措置を実施することです。併せて、健康管理時間が一定時間を超えた者に対して、医師による面接指導を実施することです。

4 は、制度導入手続です。職務記述書等に署名等をする形で、職務の内容及び制度適用についての本人の同意を得ること。導入する事業場の委員会で、対象業務・対象労働者をはじめとした、各事項等を決議することです。

5 は、法的効果です。以上申し上げました仕組みの下で、時間外・休日労働協定の締結や、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の規定を適用除外とすることです。

 次のページからは「参考」と付したとおり、今申し上げた各事項に係る関係の条文、現行制度の概要等ですので、適宜御参照いただきたいと存じます。資料 No.2 については以上です。

 このほかに参考資料として 2 点付しております。参考資料 No.1 が、本年 6 月に当分科会においておまとめいただきました建議、時間外労働の上限規制等について。参考資料 No.2 が、 2 年前の法案提出時の建議、今後の労働時間法制等の在り方についてです。こちらも適宜御参照いただけますと幸いです。私からは以上です。

○荒木分科会長 ただいまの説明について、御意見、御質問等があればお願いいたします。村上委員どうぞ。

○村上委員 冒頭に、労働基準局長より 2 つの提案を頂きました。その 1 点目について申し上げます。 1 点目は、諮問する法案要綱の労働基準法部分を一本化したいという提案だったかと思います。労働時間というのは、働く者にとって最も基本的な労働条件であります。その中で過労死・過労自殺はもとより、全ての働く人が健康とワーク・ライフ・バランスを確保しながら、健やかに働き続けられるようにするという労働時間制度を実現しなければならないと、私たちとしては考えております。

 このような中で、今年の 6 月に建議をまとめた時間外労働の上限規制については、長時間労働を是正していくために、法案要綱を取りまとめて、早期に実現するべきだと思っております。命と健康に関わる問題ですので、これはできるだけ早期に施行されることが必要ではないかと考えております。

 一方、 2015 年に建議・答申をまとめ、労働者側委員としては反対意見を付けて出されていった 2015 年の法案については、時間外労働の上限規制とはその趣旨が異なると考えておりますので、一本化することは反対です。先ほど局長から説明がありましたけれども、なぜ一本化する必要があるのかということについては、私どもとしてなかなか理解ができないところです。特に高度プロフェッショナル制度の創設、また企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大については反対です。もともとこの審議会で議論していた際もそうですが、この間、私どもとしてその必要性はないということを主張してきました。また、長時間労働を助長しかねないと考えており、この点については反対です。

 一方、長時間労働の是正という中では、中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の廃止や、年次有給休暇の取得促進のための措置の 2 点は早期に実現すべき課題だと思っております。これら 2 点については、時間外労働の上限規制の法案に盛り込んでいくということはあるかと思いますが、それ以外のものについては一本化すべきではないという考え方です。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。八野委員どうぞ。

○八野委員 村上委員が発言した「一本化すべきでない」という点に関して発言をしていきます。まず、労働基準法第 1 条第 1 項は、憲法第 25 条第 2 項の生存権の保護を受けて、労働者に人たるに値する生活を営む必要を満たすべき労働条件を保障するという、労働基準法の基本理念が明確に出ていると思います。

 その中でも労働時間、休日、休暇については、労働基準法が 1 章を当てて詳細に規定をしており、その趣旨は労働者の生命、健康を保護することと、仕事と生活の調和を保障することにあると思います。今私たちがやらなくてはいけないのは、労働のプラットフォームを確実に構築することであり、そのことが求められていると思います。しかし、実際には法と現実は著しく乖離しているのが現状ではないかと思います。依然としてフルタイムの一般労働者の年間総実労働時間の平均はいまだに 2,000 時間を超えています。また、平成 28 年度の過労死等の労災補償状況が平成 29 6 30 日に発表されました。それを見ると、脳・心臓疾患及び精神障害に関する事案の請求件数、支給件数がともに増加傾向にあり、 200 名近くの方が仕事の関係で亡くなられているということだと思います。

 過労死等防止対策推進法が施行されたものの、こういう状況を見ると一向に命と健康の被害はなくなっていないというのが現状です。これをいかに受け止めるか、しっかりと重く我々は受け止めるべきだと思います。過労死等防止対策白書が公表されたこと自体、社会問題化した過労死・過労自殺が、今日の日本の社会において、残念ながらいまだに重要な課題であることを示していると思います。今求められるのは、日本の雇用社会から、過労死・過労自殺を撲滅するとともに、労働者にゆとりのある生活時間を取り戻すこと、そして、厳格かつ実効性のある労働時間法制を構築することだと思います。これは過労死等防止対策推進法にも書かれている、国の責務であると認識しております。

 労働基準法の基本理念に基づいて、過重労働、メンタルヘルスの悪化、過労死・過労自殺を防ぎ、全ての人がワーク・ライフ・バランスの下で働くことができる環境整備をすることが不可欠であり、そのためには時間外労働の上限規制等を早期に実現することが強く求められていると思います。これは先ほどから何度か申し上げているところですが、日本の雇用社会に内在する大きな課題を解決することが重要であります。この流れに逆行する企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大及び高度プロフェッショナル制度の創設については反対であり、法案の一本化は認められないという主張をここでさせていただきます。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。神田委員どうぞ。

○神田委員 少し重複するかもしれませんけれども、本日の議題を見ると、 2015 年にかけて議論を行った高度プロフェッショナル制度等々を含め、建議を踏まえた対応についてということです。建議の中身そのものは、参考資料の中に入っていますけれども、我々としては村上さんや八野さんがおっしゃったとおり、そもそも 2015 年建議に関しては、高度プロフェッショナル制度の創設などは反対だ、という意見を付けて労働側の見解を出したわけです。

 先ほど説明がありましたけれども、今回の議題は法案の一本化に向けてということです。この間の経緯を踏まえて、言葉を選ばずに言うとそうした経過があるということからいけば、我々のスタンスは今ほど発言があったとおり何も変わりません。一方、「働き方改革」の中で、いきいきと働いて健康に、あるいは安全に働いて、企業の発展、産業の発展に努めるかという観点からは、平成 29 6 月に取りまとめた建議の部分については、我々としても非常に良い議論ができたと思っております。

 繰り返しになりますけれども、建議を踏まえて法案要綱の審議を行うにしても、我々として 2015 年の議論経過があった中で一本化していくということについては、どうしても納得がいかない、これは正直なところです。少し乱暴な言い方かもしれませんけれども、発言させていただきました。

○荒木分科会長 川野委員どうぞ。

○川野委員 先ほど来主張があるように、私も同じく、一括しての法案とすることについては反対の立場です。これまであったように企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大であったり、高度プロフェッショナル制度の創設が盛り込まれていることを踏まえると、これまで労働者側が主張してきたことからは反対という主張をさせていただかなければいけないと思います。

 とりわけ私からは、中小企業の月 60 時間超えの割増賃金率 5 割の適用猶予についてです。この点については、これまでの議論の中でも主張させていただいたとおりですけれども、今現在、 7 年に及んでその適用猶予がされている状態であるということ、また、 2015 年度の法案が未だに審議に入っていないということです。一本化するに当たっては、こうした時間的な経過を踏まえた中で、一刻も早く適用猶予を廃止すべきだという主張をさせていただきます。

36 協定は、事業場単位で結ぶわけです。雇用労働者の 6 割強を占める労働者が適用を受けること、又は企業の 99.7 %を占める中小企業に大きな影響を及ぼすということも含め、私はこの適用猶予は即時廃止すべきだと思います。

 労働基準法は御存じのとおり、最低限の法律ということで位置付けられています。その中でダブルスタンダードという、法の下の平等を欠くような状況がこのまま継続されることについては、先ほど主張したとおりですので、一刻も早く廃止していただきたいということです。

2015 年度法案の中にある、年次有給休暇の取得推進については、これはある意味日本の中において、労働者に年休取得の権利があるにしても、その行使ができない、取得ができない環境が背景にあったということはこれまでも議論があったところかと思います。時季指定については、これまで労働基準法の歴史を遡って考えると、事業主が請求時季を聴く義務があったという歴史もあることですから、時季指定を使用者から求めることについては、早く施行していただければと思います。この権利が行使できないような状況、取得できないような環境の改善に向けては、こうした取組が一刻も早く実施に移されることが必要です。取得率が向上するということは健康確保の点から見ても、非常に有効な手段と思っておりますので、その早期施行に向けて進めていただければと思います。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。冨田委員どうぞ。

○冨田委員 これまでに 4 人の委員の方々が、一本化には反対という趣旨で御発言させていただいておりますけれども、改めて私からも、先ほど御提案いただいた一本化には反対の趣旨で、その理由を述べさせていただきます。資料 No.2 です。既に国会に提出されている法案について、 2 枚目に法律案の概要が示されており、そのことについても御説明いただきました。この概要を見ても、 2015 年に出された法案は大きく 2 つの方向性が示されていたと理解しております。

 こちらにあるとおり、 1 つ目が「長時間労働抑制策と年次有給休暇の取得促進策」です。 2 つ目は「多様で柔軟な働き方の実現」というものが示されています。今回建議いたしました時間外労働の上限規制の法制化は、正に長時間労働の抑制策そのものであって、 2015 年に出された法案と、仮に一本化するのであれば、長時間労働の抑制策として 1 つにするべきであり、多様な働き方の実現については、我々労働側としては企画業務型裁量労働制の対象業務拡大、それから高度プロフェッショナル制度の創設については一貫して反対と申し上げてきましたので、そこまで含めた形での一本化というのは、やはり理解ができません。長時間労働抑制を早期に実現するためにも、仮にこれを 1 つにするのであれば、月 60 時間超の中小企業における割増賃金率の見直しと、年次有給休暇の取得促進に向けた早期の実現をしっかりと織り込んでいくべきだということを意見として申し上げさせていただきます。

○荒木分科会長 柴田委員どうぞ。

○柴田委員 一本化並びに高度プロフェッショナル制度の創設、それから企画業務型裁量労働制の範囲業務拡大については反対、という意思を述べさせていただきます。その上で、これまでもこの分科会で資料も提出されておりますが、 36 協定を締結しない事業場があるということです。その理由が、労使協定の存在を知らないとか、届出を失念したとか、そういった数値がかなり高い割合であるということです。過半数代表者の選出方法についても、民主的手続によることなく不適切に選出されているといった結果が約 4 割ある中で、労働時間の緩和をしていくというのは、非常に危険だと認識しております。

 まず労使間で、労働時間に関わる管理をしっかりやっていくということをしていかなければいけないと思います。実行計画の中でも、長時間労働を是正すればワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなるということも書いてあります。現状の裁量労働制の中でも、労働時間が多くなる傾向があるとも調査結果で示されていることなどを含めると、冒頭に申し上げたように、この一本化並びに高度プロフェッショナル制度の創設、企画業務型裁量労働制の範囲業務拡大については反対と言わざるを得ないことを申し上げておきます。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。世永委員どうぞ。

○世永委員 先ほど来、川野委員なり冨田委員からも御発言がありましたけれども、中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の廃止について発言させていただきます。その発言の前に冒頭、労働側委員から全員が発言しているとおり、 2015 年法案と、今回の建議の一本化については、目的と対象とする労働者の立場が全く違うという意味で、私からも反対ということを発言させていただきます。

 適用猶予の廃止については、資料 No.2 3 ページに、中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の廃止の説明がされています。実施時期については、「関係省庁・業界団体等との連携の下、長時間労働の抑制に向けた環境整備を進めることとする。その間施行は猶予することとし、施行日は他の項目より 3 年遅らせる」となっております。御存じのとおり、既に 2015 年法案が国会に提出されてから 2 年以上が経過しております。この間、長時間労働の抑制に向けた環境整備をするため、例えばトラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会や、あるいは地方協議会が検討を進めていることを踏まえれば、他の項目と施行日を遅らせることなく、早期に実施していただきたいということです。併せて中小企業で働く労働者を、これ以上置き去りにしてはいけないということについて、強く申し上げさせていただきます。

○荒木分科会長 労側委員から意見が出ておりますが、使用者側はいかがでしょうか。輪島委員どうぞ。

○輪島委員 まず、基本的な私どもの考え方ということで述べさせていただきたいと思っております。使用者側委員としては、労働基準法改正法案、つまり継続法案ですが、それと今年 6 月に本分科会で取りまとめた時間外労働の上限規制の導入、これらに関する改正については、いずれも審議に当たって長時間労働、過重労働の抑制、労働者の健康を確保すること、そして何よりも過労死を起こしてはいけないというような重要な問題意識から、真摯にこの議論に参加してきたと考えているところです。労働者が健康で、やりがいを持って働くことができる環境を整えることは、本分科会に参画する労側、使用者側、両方の全ての委員の思いだとも思っているところです。この思いについては、継続法案、そして今年 6 月に建議をした内容も共通のものではないかと考えているところです。

 他方で、我が国は御案内のとおり人口減少社会を迎えているわけですので、こうした中で我が国の経済を再生させて、成長と分配の好循環を力強いものにしていくことについては、イノベーション、そして投資の促進、生産性の向上を図っていくことが非常に大事だと思っているところです。こうした中、我が国の企業を取り巻く環境は、かつてなく厳しさを増しているという中で、我が国企業の競争力を維持・向上させることも、一方で念頭に置く必要があるのではないかと考えているところです。

 こうした観点から、労働者の健康確保を大前提としながらも、労働時間制度の柔軟化を図るための高度プロフェッショナル制度の創設、そして企画業務型裁量労働制の対象の範囲を拡大することも不可欠ではないかと考えております。今般取りまとめられた働き方改革は、私どもとしては労使双方に意識改革を求めるものだと認識しております。企業労使が一体となって、従来の慣行、そして仕事の進め方の見直しをして、より生産性の高い働き方を構築していかなければならないと考えております。そのような基本的な考え方に立って、使用者側としては本分科会として今後の労働時間法制全体を考えていく議論をしていくことが重要なのではないかと考えております。

 そこで、労働基準法を一本化するという点ですが、私どもとしては一本化して、臨時国会に法案を提出するべきなのではないかと考えております。本日お配りいただいた資料 No.1 8 ページですが、 2 つ目の「意欲と能力のある労働者の自己実現の支援」というところが働き方実行計画に書かれているところです。この働き方改革実行計画は、労使の代表が参画して取りまとめたものと理解しております。 8 ページですが、「創造性の高い仕事で自律的に働く個人が、意欲と能力を最大限に発揮し、自己実現をすることを支援する労働法制が必要である。現在国会に提出中の労働基準法改正法案にも盛り込まれている改正事項は、長時間労働を是正し、働く方の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものである」とされているところです。私どもとしては、この内容について、こういったことが非常に大事ではないかと考えており、この考え方を支持するものです。

 労働時間法制の見直しに関して、先ほど来申し上げているとおり、労働者の健康確保と生産性の向上のバランスに十分配慮することが必要だろうと考えております。こうした観点から、使用者側としては、実行計画を踏まえた改正内容について、継続法案と整合性を勘案しながら、これまでも検討に参画してきたつもりです。継続法案に盛り込まれた改正事項と実行計画を踏まえた今般の改正事項とをワンパッケージにすることによって、労働者の健康確保と生産性向上の双方が実現できるものではないかと考えているところです。

 また、法案が労働基準法という 2 つの法律を別々に国会に提出することについては、今後の労働法制全体像について、企業労使にとって分かりにくいものになるのではないかと考えておりますので、そういった観点からも一本化して法案を提出していただきたいと考えているところです。私は以上です。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。秋田委員どうぞ。

○秋田委員 輪島委員の意見と重複する部分がありますが、改めて意見を述べさせていただきます。労働基準法改正を一括法案とすることについては、恒常的な長時間労働を削減して、労働者の健康を確保するとともに、全ての労働者が働きがいを実感できる環境を整えることで、個々人の能力を十二分に発揮し、生産性の向上を図っていくといったことが重要な課題ですので、平成 27 年の建議を基に提出された継続法案と、今回の働き方改革実行計画を踏まえた、検討してきた労基法改正内容は、いずれも同様の課題認識を持って働き方改革を実現すべく検討を重ねてきたものだと考えているところです。したがって、一括法案ということに対して賛成です。

 また、高度プロフェッショナル制度の創設や企画業務型裁量労働制の対象業務の見直しについても、いろいろ御意見が出ておりましたが、これは内容を見ていただければ、いずれも労働者の同意の下で行われる形で、それによって働き方の選択肢を増やし、個々の職務や業務内容に合った環境を整備するものです。労働者の多様で柔軟な働き方の実現の一助になるものと考えているところです。これまでの議論の中でも申し上げてきたことですが、従来の主張と同様、使用者側委員として導入に賛成です。

 また、現下のグローバルな人材獲得競争の中にあっても、こういったものが選択肢の 1 つとしてないと、グローバルレベルでは競争に勝てないという実態もあるところです。よって、改正法案を一本化することで、長時間労働の削減と生産性の向上をより一層の推進力をもって進めていくことができると、重ねて申し上げたいと思います。また、施行時期について、これまでも述べてまいりましたが、企業の実務対応に合わせて相応の設定をしていただきたいということを改めてお願い申し上げるところです。以上です。

○荒木分科会長 他にはいかがですか。杉山委員どうぞ。

○杉山委員 輪島委員、秋田委員と同様の意見ですが、商工会議所の基本的な考え方を説明します。目下、中小企業の最大の経営課題は人手不足になっています。人手不足がかつてないほど深刻化している中で、事業活動の維持が困難な企業も出始めています。我が国が今後の経済規模の縮小を防ぐためには、多様な人材の活躍推進と生産向上の両方に同時に取り組むほかありません。そのためには、我が国において働く方々の健康を確保しつつ、多様な就労ニーズに応じた柔軟な働き方が実現するような環境整備が必要です。

 高度プロフェッショナル制度の創設、企画業務型裁量労働制の対象拡大を盛り込んだ労働基準法改正案は、 2015 4 月の国会提出以降、審議が進まず、商工会議所は様々な場面で早期成立をお願いしてまいりました。そのような中、 2017 3 月の働き方改革実行計画の決定を受け、この分科会において時間外労働の上限規制など、長時間労働是正に向けた議論が進みました。労働時間に関する規制強化と柔軟な働き方の推進は、長時間労働を是正するためだけではなく、働く方々の健康を確保しつつ、その意欲を高め、生産性向上を実現するための両輪です。したがって、現在、継続審議となっている労働基準法改正案と、今回議論された時間外労働の上限規制案は一本化した上で議論し、早期成立を図るべきと考えます。なお、施行時期については、今回の法改正が中小企業実務に与える影響は極めて大きいため、商工会議所は従前から十分な準備期間を確保するよう求めてきました。今回の法改正を実効性あるものとするためにも、改めて大企業と中小企業の同時施行を前提に、十分な準備期間の確保をお願いしたいと思います。

 最後になりますが、中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用について申し上げます。足下の人件費高騰などもあり、中小企業の収益関係は依然として厳しい状況にあります。これまでの議論でも、長時間労働は自社の努力だけではコントロールができない顧客ニーズ、あるいは商慣行などの要因によるところが大きく、このような中で単に割増賃金率を引き上げても残業抑制効果は高くなく、かえって仕事を断れない、立場の弱い中小企業の収益を圧迫する要因となりかねません。

 加えて、今回議論になっている時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金制度導入への対応も考えますと、マンパワーが限られております中小企業では、なかなか全てに対応できない部分があります。法改正の内容を周知徹底するだけでも、相当な期間が必要だと考えます。働き方改革に向けた議論の高まりを受け、多くの中小企業が不要な長時間労働を削減しようと努力しています。まずは、国全体で長時間労働是正に向けた意識改革や周知、 PR など環境整備を進めていただき、ある程度の期間の中で、結果として中小企業の長時間労働が是正されるといった進め方が、実態に即しているものと考えます。したがって、商工会議所としては、中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引上げまでには、ある程度の猶予期間を認めていただきたいということを、改めて申し上げます。私からは以上です。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。柴田委員どうぞ。

○柴田委員 もう一度、発言させていただきます。今、使用者側の方々から、それぞれ御意見を頂戴したわけですが、人材の獲得競争、グローバル化を目指して、これらの柔軟な制度を入れなければいけないというのは、どうしてもリンクしないので、申し上げたいと思います。 3 年前の分科会の議論でもあったと思うのですが、日本は異常に労働時間が長いという問題は決してグローバルスタンダードではありませんので、まずこうしたところの運用をどうするかを考えることが先なのではないかということです。また、人手不足感は当然あるのですが、そこは現状の制度の中、また賃金をどうするかということによって改善が図られるのではないかと考えており、それらの問題と裁量と高プロの話は連動しないのではないかと考えております。また、輪島委員からもありましたように、労使が一体となってこれらの問題に対応していかなければいけないというのは当然だと思っておりますが、先ほど最初に発言させていただいた 36 協定の未届とか過半数代表の問題といったことが、正に労使が一体となっていないということの証左であると思っておりますので、まずこうしたことを是正することが大事であり、そのことがない中で一体化する法案を出すのはどうなのかということを、改めて申し上げておきたいと思います。

○荒木分科会長 公益の方から何かありますか。守島委員どうぞ。

○守島委員 今の一連の発言でも明らかになったように、連合、労側は従来から企画業務型裁量労働制の拡大、及び高プロには反対というスタンスは変わらないことはよく理解しているのですが、一部のマスコミ報道によると、先般、総理に修正要請をされて、連合会長がそれについて御発言なさっているのですが、「要請して一定の答えを受けていることは事実、撤回するつもりはない」と答えていらっしゃるのです。政府に最低限の修正を要請して、政府からの回答を受諾したというように読めるのですが、それは事実と理解してよろしいのでしょうか。

○荒木分科会長 今の点いかがでしょうか。村上委員どうぞ。

○村上委員 今、守島委員から御指摘されたこと、そのこと自体は事実ですが、私どもとしては企画業務型裁量労働制の対象業務を拡大すべきでないと思っておりますし、高度プロフェッショナル制度についても創設するべきではないと考えております。それは 2015 年の法案を議論してきた分科会でも、ずっと申し上げてきておりますし、そのことは今も変わりません。企画業務型裁量労働制だけでなく、裁量労働制そのものの運用実態を見ると、とても裁量がないといったような運用や、制度を導入したことでかえって労働時間が長くなっている実態、あるいは過重労働になって、メンタルヘルスの発生もあるといった実態も、私どもとして報告を受けており、そういう中で企画業務型裁量労働制の対象業務を拡大するべきではないと思っております。

 また、高度プロフェッショナル制度についても、残業代ゼロとも言われており、それ自体は間違っておりませんが、そのことだけではなくて、そもそも労働時間の規制を全部適用除外してしまうという制度を創設することはいかがなものかということから、反対と申しており、その考え方は変わるものではありません。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。川野委員どうぞ。

○川野委員 先ほど使用者側委員からも発言がありました部分ですが、中小企業の人材確保が困難な状況にあるというのは我々労働側も同様の見解を持っております。なぜ中小企業で人が採れないかという人手不足感の高まりは、労働諸条件を含めて、中小企業で働くということ、ある意味、大きな概念で言うと労働の価値の話に触れるような部分だと思います。加えて言うと、それは先ほどの議論でも出ましたが、規模によって労働基準法のダブルスタンダードになっており、労働の価値が、大手、大企業では月 60 時間超えの時間外労働では 5 割の割増率が適用されて、賃金に反映される部分が支給されるのに対して、片や中小企業で月 60 時間超えの労働をしても、 25 %しか賃金割増率が払われないということです。日本全体にある規模間格差の問題も含めてそうですが、中小企業の人材確保については、賃金をはじめ、労働諸条件の違いが明確にあるということを踏まえれば、労働の価値、働く価値を同じようにしていくこと、これは正に労働基準法の 1 丁目 1 番地の話であって、それをダブルスタンダードの状況で放置することは、私は認められないと思っております。

 先ほどの発言に重ねるような形になりますが、加えて言いますと、命と健康を守るという長時間労働の是正については、労使ともに一致しているのですが、その一方で、片や中小企業は月 60 時間超の割増賃金率の適用は厳しいとの意見がありました。先ほど委員からも発言があったように、短納期で小ロットの製品の受注がいくということは、中小企業にとっては生産性の低い仕事が回ってきて、加えて安い賃金で働くような環境となることであり、日本の経済の活性化については決してプラスにならない、むしろマイナスのほうが強いと思っておりますので、先ほど来の発言に重ねて主張させていただいたということで、御理解いただければと思います。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。神田委員どうぞ。

○神田委員 繰り返しになるかもしれませんが、先ほど御質問があった点です。我々は一産業別の労働組合の役員として、この場におります。連合が政府に要請し、一部容認だといったマスコミ報道があったように我々も聞き及んでおりますが、報道内容は全く違います。今日も申し上げたとおり、我々はそもそも論として、高度プロフェッショナル制度の創設、あるいは企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大については、本当に健康を守りながら生き生きと働くという観点から大丈夫なのかと疑問をもっており、反対のスタンスであることは間違いないということです。

 その上で、働き方改革の中で、労働者がその健康を確保しつつ、創造的な能力を発揮しながら向上的に働くこと、そして、正にその結果が産業、企業の発展につながるということについては、全く異論はありません。ただ、そうした中で、働く側にとって、例えば高度プロフェッショナル制度にしても、先ほどの御意見もあったように、対象となる御本人が認めて、あるいは企業労使が認めてということなのですが、先ほど柴田委員のほうからもありましたが、 36 協定そのものも知らないような使用者がいるという事実もあります。したがって、労基法は、あくまでも働く側にとって最低限のルールであるとするならば、そうしたところをどのように改善していくかということとは、労働組合そのものも考えなければなりません。我々自身の反省としなければいけない労働組合の組織率にもつながってまいりますが、働く側といわゆる使用者側が、健全な労使関係の下で、どうやって今ほど触れた健康を確保しつつ、創造的な働き方を通じて発展につなげるかという、そもそも論のところをまずしっかり押さえていくということが必要です。少なくとも柔軟性のある働き方は、この日本の労働時間のルールの中ではあるわけですから、我々は 2015 年の議論のときにおいても、高度プロフェッショナル制度、企画業務型裁量労働制の対象業務拡大には反対というスタンスを述べてきました。先ほども反対ということで発言しましたが、もともとの実態を取り巻く環境やあるいは土台を固めて、今後どうやっていくのかという課題について一切解決していない中では、改めて反対だということを申し上げておきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 八野委員どうぞ。

○八野委員 一本化には反対ということで、連合も先日開催された中執の中で反対の意向を確認しております。それと同時に、先ほども出ておりましたが、労働基準法というのは命と健康を守る最低限の法律です。私たちがこの審議会の中で考えていかなくてはいけないのは、労働組合がない職場でも、労働者が意思を表明できる、又は労使委員会の中で、きちんと話ができる、そういうことを明確に定めていかなくてはいけないと考えます。そういうものが今ないから、先ほど使用者側の委員も言われたように、長時間労働の抑制が非常に重要になってきているということだと思います。自分では業務量のコントロールができないうえ、仕事に対する目標が非常に高いものが提示され、それに向けてやっていくためには、どうしてもそれが長時間労働になってしまいます。また、要員構成上、十分な要員の中でやるわけではなく、限られた人員の中でやっていくということが、長時間労働に結び付いています。それがメンタルヘルスの問題や、過労死、過労自殺につながっていきます。今、私たちが、生産性があるものを目指していかなければいけないということを考えたときに、人を軸とする生産性向上というものを、しっかりと考えていく必要があると思います。その中において、労働時間は非常に重要な要素であると捉えております。

 我々はそういったことを考えていくといったときに、例えば企画裁量型裁量労働制の対象労働者のケースでも、過労死が発生しています。こういう事態を置いておいて、更に柔軟な働き方を求めていくことにノーだということを言っているわけです。今の枠組みでも柔軟な働き方ができるわけですし、そこの中でも先ほどから述べたとおりいろいろな柔軟な働き方の中でも、長時間時間の抑制ができる、そういうものを作っていく必要があります。ただし、現状の中でも、既にできていない実態があるのであれば、そこのところをきちんと見直しをしていくべきだろうと考えます。ですから、新たに高度プロフェッショナル制度の創設や企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大は必要ありません。だから、一本化は必要ないのだということを言わせていただいているということを改めて述べておきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 高度プロフェッショナル制度とか裁量労働制についての問題点の指摘もありますが、一般的な問題点の指摘は伺っておりますが、具体的にここは非常に問題だとかいう懸念点を、より具体的に提示していただけると、更に議論が深まるかと思いますが、そこはいかがでしょうか。

○安藤委員 裁量労働制と高度プロフェッショナル制度について、いろいろな意見を聞いておりますが、労働者の視点から、これは全て不要であるかというと、必ずしもそうではないと、個人的には思っております。例えば私を含めて、大学教員、これは大学に雇われて働いている労働者であるわけですが、選んでよいと言われたら、時間をきっちり管理して残業代が払われる働き方と、自主的に研究課題を設定し、自分である程度の判断ができる形で働く。これを選べるとしたら裁量労働であったりを進んで自主的に選択する人も多いと考えております。その意味では、こういう働き方は必要だとは感じております。

 ただし、皆様が感じているような懸念事項もよく分かります。そういう働き方がふさわしくない人であったり、職業、また希望しない人にも適用されてしまう。このようなことをいかに防ぐのか。又は、仮に本人が望んだとしても、それはやってはいけないよというような長時間労働であったり、健康を害するような働き方、これをいかに規制するのか、これを問題視する意見はよく分かります。その観点から、新しい仕組みであったり、適用範囲を広げる、これについてこれをうまく機能させるために、懸念をいかに払拭していくのか、これが鍵だと思っております。そこで、荒木先生からもあったように、懸念を払拭するため、今、提案されているものに、具体的にどこをどうすれば、より問題が起こりづらくなるのか、こういうことを具体的に検討できたらいいのかなと感じております。以上です。

○輪島委員 ありがとうございます。まず、事務局にお伺いしたいのですが、今いわゆる防止措置だとか、様々なものがビルトインされていると思うので、安藤先生の御指摘は大変重要な御指摘だと思いますが、現在どのようになっているのかということも整理していただいた上で、何が問題なのかということについて議論するほうが建設的ではないかなとは思っております。以上です。

○荒木分科会長 先ほど 36 協定等の問題がありましたが、 36 協定が問題ということがあって、労使委員会による決議というものに限っているということがあるのかもしれませんが、そういった点について、事務局から補足的な議論の整理等ができればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○藤枝労働条件政策課長 繰り返しになるところもあると思いますが、まずお配りした資料 No.2 6 ページの「企画業務型裁量労働制の見直しについて」です。まず、企画業務型裁量労働制に今回追加するのが、課題解決型提案営業、裁量的に PDCA を回す業務です。基本的な視点として、あくまでも企画立案、調査分析という業務がベースで、当時の議論でも、これが主体的にあって、かつ一体的にそういった提案営業も行うような、例えば課題解決型提案営業であれば、一体的に営業も行うような業務が対象になっているということで、まず対象の限定があります。

 それから、その対象限定については参考資料 No.2 の建議の中にもありますが、否定的要素をしっかりと定めるべしということになっています。参考資料 2 7 ページ、 (1) 企画業務型裁量労働制の新たな枠組の中の 2 つ目のポツに「なお」ということで、対象業務範囲の詳細は法定の指針で具体的に示すことが適当と。否定的要素としては、例えば、「店頭販売やルートセールス等、単純な営業の業務である場合や、そうした業務と組み合わせる場合は、対象業務とはなり得ない」とか、「個別の製造業務や備品等の物品購入業務等である場合は対象業務とはなり得ない」といったものが考えられると。法律による限定と、指針による更なる詳細で対象範囲をまず限定すべきだという内容になっています。

 健康・福祉確保措置は繰り返しになりますが、下の 3 つ目のポツにあるように、健康・福祉確保措置については、現在法定指針に、代償休日とか健康診断の実施等が例示にとどまっておりますが、これをしっかりと省令に規定して、必ずやっていただく仕組みにするということです。

8 ページです。先ほど、「裁量を超えるような業務量とか、高い目標を掲げられてしまえば、長時間にわたってしまう恐れがある」という御指摘もありました。そのような問題意識はこの当時もあって、 (3) で裁量労働制の本旨の徹底ということです。まず 1 つ目のポツが、裁量労働制を導入しながら、出勤時間に基づく厳しい勤怠管理を行う等の実態があることに対応するためとして、始業・終業の時刻その他時間配分の決定を労働者に委ねられる制度であることを法定し、明確化することが適当と。条文を見ていただければ、そこは改正案で書き込んでいます。

 また、「併せて」として、指針において、「当該事業場における所定労働時間をみなし時間として決議する一方、所定労働時間相当働いたとしても明らかに処理できない分量の業務を与えながら、相応の処遇の担保策を講じないといったことは、制度の趣旨を没却するものであり、不適当であることに留意することが必要」というような措置を指針に書き込むことも建議されており、こういったことも含めて、健康確保措置もしっかりと講ずるという方向性になっています。

 また、資料 No.2 7 ページで高度プロフェッショナル制度についてです。ここも対象業務は、「高度の専門的知識を必要とする」、かつ「従事した時間と従事して得た成果の関連性が通常高くないと認められる」という業務を法定し、具体的には省令で、改めてこの場で議論していただくことになっています。

 また、健康確保については、 3 にあるように、「健康管理時間」を使用者は把握していただく、それから健康管理時間に基づいてインターバル措置、健康管理時間の上限、あるいは年間 104 日の休日確保のいずれかを講じる。それから省令で定める事項のうち、労使で定めた健康・福祉確保措置を更に実施するということになっています。この健康管理時間の把握、健康管理時間に基づく選択肢の実施を講じない場合については、そもそもこの高度プロフェッショナル制度の効力がなくなって、通常の労働時間規制に戻るという条文上の仕組みになっていますので、仮に本人の意に反するような事態になれば、そもそも効力が生じないという仕組みになっているということを御説明させていただきます。以上です。

○荒木分科会長 現状で提案されている制度の内容について整理していただきましたが、このようなものを踏まえていろいろな懸念事項も提示されているということだと思いますので、更に御指摘があれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。

○八野委員 今の説明の中で「裁量労働制の本旨の徹底」というものがありました。これはこの間の議論の中で、現状の裁量労働制の中でも、出退勤の時間又はみなし時間と実労働時間の違いといったものが明らかになってきた上で、現状の制度の中においても、課題がこれだけ上がってきているということを労働者側委員として主張してきました。このような実態の中で、まずは本旨の徹底をしていく必要があるということなのだと思います。

 これは、実は企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大があるからやることではありません。今、選択肢として裁量労働制というものが既に 1 つあるわけです。その現状の法制度の中でも問題があります。なぜ対象業務が不明確なものまで広げなくてはいけないのでしょうか。先ほども申し上げましたが、現状の中においても問題があります。衆議院予算委員会の中では、当時の大臣が企画業務型裁量労働制には過労死はないという発言をされておりましたが、今回厚労省に、裁量労働制の対象者に係る支給決定件数というものを出してもらいました。

 発症時に裁量労働制の対象者であった者を集計したデータの欄外に、注釈があって、「上記の件数の外に、発症時には裁量労働制の対象者ではなかったが、評価期間 ( 発症前 6 か月間 ) 中に裁量労働制の対象者であったものが、企画業務型裁量労働制の対象者に係る脳・心臓疾患事案で、平成 24 年度に 1 件ある。」これは、発症当時課長か何かに昇格されており、裁量労働制を外れていたということです。

 私が言いたいのは、こういう事案があって、こういう不幸なことが起きている事態に関して、裁量労働制の本旨の徹底を今行い、それで現状の企画裁量型裁量労働制などがきちんと運用されるようにしていくことこそが重要だということです。そこには選択肢の 1 つとしてあるわけです。本旨の徹底がまだできていない中で、先ほど発言したように対象業務が非常に幅広い範囲で捉えられるようなものを、入れる必要があるのかということを言っているわけです。

 ですから、労働者側委員は、企画業務型裁量労働制の対象業務を拡大することに、一貫してノーと言っているのは、こうした理由によるものですので、裁量労働制の本旨の徹底などについても問題があるのだということを、理解をしていただければと思います。以上です。

○荒木分科会長 他にはいかがですか。村上委員どうぞ。

○村上委員 企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大についても、高度プロフェッショナル制度の創設についても反対ではありますし、そもそも 1 度国会に出していた法案ですので、その後の議論というのは、本来であれば立法府である国会の中で議論されるべきものであると理解しております。さはさりながら、今回一本化したいという提案があり、議論の機会があるということですので、私どもとして、なぜ反対なのかということ、またどこが問題なのかということについて、幾つか述べていきたいと思います。細かな点についてもほかの委員からもいろいろと意見があると思いますが、企画業務型裁量労働制と高度プロフェッショナル制度とそれぞれについて幾つか指摘したいと思います。

 まず、先ほど秋田委員から「この両制度は本人同意が要件になっているので、意に沿わない人はこの対象にならないのではないか」というご発言がありましたが、本人同意を要件として入れるべきなのはもちろんですが、本人が同意すればどういう働き方をしても構わないということではないということがあります。高度プロフェッショナル制度の創設の議論がされていた当時、年収 1,000 万円というような話がありましたので、働く皆さんに自分のこととして捉えてもらえていなかったというような状況がありました。もう一度これを改めて振り返ってみると、先ほども申し上げましたように、高度プロフェッショナル制度は、労基法の第 37 条の適用除外ということだけではなくて、労基法の労働時間、休日・休憩に関する規定の適用を全部外してしまうという制度です。安藤先生からも発言があったように、医師の働き方改革に関する検討会においても、医師会の皆さんや大学病院で働いている医師の先生からは、自分たちは自由に働きたいという御意見も出されたところではありますが、問題はそういう働き方をしたいという人がいるから適用を除外してよいのかということが問われているのだと思います。

 今回、対象となることが想定されるのは、いろいろな説明を伺うと企業や職場の基幹業務で第一線の仕事をされている方、また専門的で本当に高度な業務に携わっている方々だと言われますが、職場においても企業においても、こうした方々は、正にエースの人材であり、ただでさえ目標達成に向けてストイックに働きすぎるような方々であるのに、それに拍車を掛けて歯止めをなくすように労働時間規制を外してよいのかということこそが問題ではないかと考えているところです。

 その上で、健康・福祉確保措置について申し上げますと、 2015 年の法案では高度プロフェッショナル制度について、健康管理時間に基づいて健康・福祉確保措置を講じるということで、 3 つの選択肢から 1 つを選ぶことになっております。まず、この健康管理時間について申し上げると、 1 点は、建議においては事業場内にいた時間と事業場外で業務に従事した場合における労働時間との合計であるとしていましたが、 2015 年の法案要綱の中では、その際にも議論はありましたが、文言が追加されております。具体的には、「事業場内にいた時間」の中で、厚生労働省で定める労働時間以外の時間を除くことを労使委員会が決議したときは、その時間を健康管理時間から除外することができるということになっています。

 この点については、 2015 年の労働条件分科会においても、「把握方法にある程度の幅があるとすれば、例えば完全に仕事から開放されている食事をしている時間やレクリエーションをされている時間を除くことは否定されるものではない」という御答弁がありましたが、そもそも健康管理時間というのは先ほども御説明があったように、高度プロフェッショナル制度の適用労働者について、割増賃金支払いの基礎としての労働時間を把握する必要はないとしつつも、健康確保の観点から把握するということです。そうした趣旨であるにもかかわらず、なぜ食事をしている時間といったことまで、細かく除外していくことが必要なのかということについては全く理解できないところで、制度の立て付けやイメージと、健康管理時間について労使委員会の決議で除外できるとする仕組みとは矛盾があるのではないかと考えているところです。

 また、先ほどの 3 つの措置から選択的に措置を講ずるという問題については、 3 つの措置から 1 つを選択すれば健康が確保されるのかということについては、甚だ心許ないと考えています。こうした働き方を導入すべきではないということが前提ではありますが、万一この制度がそのまま創設された場合に、このような健康確保措置で、対象となる労働者が健康で安全に働き続けられるのかということについては、大変問題意識を持っており、健康・福祉確保措置の選択制については強化しなければならないと考えております。以上です。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。神田委員どうぞ。

○神田委員 労働組合ならではの浪花節的な言い方をさせていただきます。私は組合に専従して 30 年近くです。先ほど委員から発言がありましたが、労働組合、働く側の立場でということで発言しますと、働く者というのはやはり弱いのです。ここで偉そうにお話をさせてもらっていますが、それは労働組合の代表者だから言える話です。したがって、個人が希望すればといったときも、真面目な人は、それはなかなか嫌だとは言えません。だからこそ、本当に優秀な人をカバーしてやっていくのであれば、今でも企業によってはアサイン、コミットをやりながら、しっかりと目標を立てさせて、どのようにその業務をやっていくかということを労働時間、あるいは働き方全般を含めてやっていくという手法があります。サラリーマンである、我々労働者であるということからいけば、そうしたことをしっかりと見極めながらその方の能力を伸ばし、企業の発展のために努めていくという制度が、まずあるべきではないでしょうか。

 だから先ほど少し乱暴な言い方をしたのですが、働く者を守るために最低限の基準として労基法があるとするならば、そのことを改めて考えなければならないということです。また、これは前回もずっと労働者側委員から発言してきましたが、過半数代表者の問題や、先ほど労働組合として恥としなければいけない組織率の問題にも触れましたが、そうした多くの課題がある中で、個人に求める、労使で決めるということは、それはそれでいいと思うのですが、そもそも論として、法で定める最低限というルールを議論する中で、我々は、高度プロフェッショナル制度の創設も企画業務型裁量労働制の対象業務拡大にも反対だということです。

 それから働き方の中には、これも先ほど触れたのですが、今でも柔軟性のある働き方ができるわけです。いかにしてその能力を伸ばし、企業の発展や産業の発展につなげていくかということになると、正にアサイン、コミットを含め、あるいはマネジメントを含め、もっとやるべきことがあるのではないでしょうか。働く側の立場からすれば、働く者を守って、正に生活も含めた幸せを求めていくのだというスタンスから、この間、反対だということを発言しているということを改めて申し上げておきます。以上です。

○荒木分科会長 他にはいかがでしょうか。冨田委員どうぞ。

○冨田委員 この機会に問題点をという御提起も頂きましたので、改めて使用者側の委員にお伺いさせていただきます。先ほど来からの御意見の中で、人手不足とか、グローバリゼーションの中で生産性を高めていく必要があるといった点で、今の制度に加えて、更に柔軟な制度の導入が必要なのだという趣旨の御発言を頂いたと思っています。

 その点について、とりわけ高度プロフェッショナル制度の創設についてですが、我々が 2015 年の法案の審議のときから、そもそも日本の労働時間の制度は十分に柔軟性があって、制度を導入する必要はないということを一貫して主張させていただいたのですが、使用者側委員からは、先ほど言ったような状況の中で、やはり高度プロフェッショナル制度の創設が必要だというような御発言があったと思っています。改めて、なぜこの制度が導入されなければ、先ほど言ったような生産性の向上や柔軟性が確保できないとお考えなのか、その点をもう一度この場で御発言を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いいたします。

○荒木分科会長 使用者側への御質問ですが、いかがでしょうか。輪島委員どうぞ。

○輪島委員 まず、基本的に労働時間法制は労働基準法ですが、 1947 年に施行され、労働時間法制についても様々な課題に直面し、幾度かの法律改正をしてきたと認識しています。しかしながら、現在の状況を鑑みると、先ほど申し上げた基本的な考え方を踏まえると、労働時間法制についてはある一定の限界がきているということも感じているところです。

 ですから、先ほど来から申し上げているように、健康確保のための制度を一方で担保しつつ、現在の経済のサービス化、ネットワーク化、産業構造の高度化、ソフト化、技術革新への対応といった意味では、それに適した働き方というようなことで、高度プロフェッショナル制度を創設するということは非常に大切なのではないかと考えています。

 それから、先ほどから、高度プロフェッショナル制度に関して村上委員からあった「エース」というお話について、エースで働く人というのは、正にプロ的な自覚、技能、スキルもあるという人だと私どもとしては思っているのです。神田委員がおっしゃったように弱い立場の労働者の方というよりは、どちらかというと労働市場の中では競争力のある働き方をする人が、高度プロフェッショナル制度だったり、エースとしての高度技能者だと思っておりまして、そういう方であれば、ワーク・ライフ・バランスについての認識というのも、それなりに理解をしているということからすれば、仕事が終われば一刻も早く帰るというようなことが現実なのではないか。長時間労働になると御指摘なわけですが、私どもとしてはそうにはならないのではないかというような意味合いも含めて、高度プロフェッショナル制度の導入というのは大変重要な仕組みではないかと考えているところです。以上です。

○冨田委員 輪島委員、どうもありがとうございました。今、お話いただいた点も含めて労働者側が問題点と感じている点は、この高度プロフェッショナル制度はいろいろな書かれ方や報道等もされていますが、労働時間規制を全て適用除外するということの制度設計になっているということなのです。

 例えばですが、今は管理監督者であっても深夜の割増賃金が適用されている中で、なぜそこまでも含めて労働時間の規制を適用除外する制度を入れなければ、先ほど来からおっしゃっていたような今後の日本の柔軟な働き方ができないとおっしゃっているのかが、今の御発言を頂戴しましても、労働者側としては理解することが難しいと思いました。

○荒木分科会長 はい。三輪委員どうぞ。

○三輪委員 高度プロフェッショナル制度は、文字どおり高度にプロフェッショナルな方が、年収要件等を見てもかなり限られた方々が対象になって、先ほど輪島委員からもありましたが、そういう広い裁量の中で働く能力のある方、働く意思のある方が対象になるのだと思っています。併せて、労働時間の規制が全て撤廃されるということなのですが、その代わりに健康管理の措置がいろいろな形で検討されているわけで、不十分だという御意見も先ほどありましたが、そこは更に議論させていただいて、不十分なところは補っていくということで、前向きな議論をさせていただきたいと思っています。

 我々が事業を日本でやっている中で、どんどん世界とのつながりが出てきておりまして、特に研究職などについては、本当に高度にプロフェッショナルな方々について言いますと、常に世界とのやり取りもあるし、もっと柔軟に働くことを許してほしいというような意見もあります。もちろん、意見があればそれを全て認めるというつもりはありませんし、適正な範囲があると思っていますし、労使できちんと合意をしてというのが大前提だと思いますし、更に言えば、健康管理措置で命と健康を守るというのは大前提だと思っていますが、自由な発想、自由な働き方の中でイノベーションを起こしていくというのが非常に大切な中では、そうした働き方ができる高度にプロフェッショナルな方がいるというのは、非常に大事なことだと考えています。以上です。

○神田委員 先ほど「エース」という話がありました。先ほどの発言では、弱い労働者ではない方々であり、もとよりそういう人は優秀な方々でしょうと。しかし、ここで言う「エース」とは、業務におけるエキスパートということからいけば、先ほど発言のあった本当に自らの健康を担保しながらやっていけるかという観点からは、労働時間管理を含めて、しっかりとそれを指導するという経営の皆さんの目、上司の目というのは要るのではないかということにも併せて触れておきたいと思います。

○村山総務課長 先ほど御議論の中で、衆議院予算委員会での大臣御答弁を引用しての御指摘がありました。今日は傍聴の方もたくさんいらしゃっておりますし、当該発言された政治家の方にも関わる話ですので、事実関係だけ補足させていただきます。

 まず、先ほどの御答弁のようなやり取りがあったのは事実です。先ほど丁寧におっしゃっていただいたように、一般にどういう労働時間制度が適用されているのかは、労災認定の対象となる発症時点に適用されている制度で見ており、御指摘の方はその時点では管理監督者でした。ただ、その前の何箇月間かよく言われる 2 か月、 3 か月、 4 か月、 5 か月、 6 か月のいずれかの時間外・休日労働の平均が 80 時間を上回っているかどうかを検討する期間の中には、管理監督者になる前裁量労働制の対象でありました。こういう事案が過去 5 年間の中にあったということです。

 これは、厚労省の事務方として反省すべき話でありましたが、当時お仕えしていた大臣に、そうした遡って検証する、認定対象期間がどうなっていたかは十分に御説明しておらず、最終的な発症時点の適評制度化についてのみ答弁いただくことになりました。その後、重ねて「こういう事案です」ということを御説明して、正に当該大臣から御指示を頂いて、過去に適用されていた労働時間制度についてもきちんと調べ、今後は先ほどもお話がありましたように、脳・心臓疾患、精神障害の労災の補償状況に合わせて、必ず裁量労働制の事案について、その内数がどうなっているのかを調べて公表するようにという御指示を頂いて、今年から公表するようになったということです。これは国会の議論を契機にして大変前に進んだことで、これからも続けていきたいと思います。

 その際に、この事案に関してはそういう事案であったということをきちんと注記をした上で公表しています。これは当該大臣との関係もある話ですので、この場で議事録に残す形でのコメントとして説明申し上げました。大変貴重な御指摘をありがとうございました。

○荒木分科会長 それでは時間がきましたので、本日は以上といたしますが、本日は政府の方針について様々な御意見を頂きました。まだまだこの点については議論が尽きたということではありませんので、次回も引き続き議論を続けていきたいと考えています。では、最後に次回の日程について事務局からお願いいたします。

○中嶋調査官 次回の労働条件分科会の日程は、 9 4 ( ) 13 時から 14 30 分、場所は中央労働委員会講堂を予定しております。

○荒木会長 これをもちまして、「第 138 回の労働条件分科会」を終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表は神田委員に、使用者代表は小林委員にお願いいたします。以上といたします。本日はありがとうございました。


(了)

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