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2016年3月3日 (平成28年3月3日) 第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成28年3月3日(木)13:30~16:30


○場所

大阪科学技術センター401(大阪府大阪市西区靭本町1-8-4)


○議事

○司会者(森田) それでは、定刻となりましたので、ただいまより「平成27年度第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション」を開催させていただきます。
  私、本日の司会を務めさせていただきますテクノヒルの森田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  まず最初に、お手元の資料の御確認をお願いいたします。
  ステープルどめの基調講演資料が1部、カラーのナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバーについてのパンフレットが1部、A4のピンクと水色のアンケート用紙が1部ずつ、こちらのピンクは休憩時間に回収いたします。あと、はがき大の赤と青の厚紙が1枚ずつございます。以上ですが、お手元におありでしょうか。大丈夫でしょうか。はがき大の赤と青の厚紙につきましては、後ほど説明させていただきます。
  さて、このリスクコミュニケーションでございますが、働く方の健康障害を防止するために、厚労省が行っております化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者の方、また、事業者の団体の方との情報共有、意見交換を行うために実施しているものです。厚生労働省からの委託を受けまして、私どもテクノヒルが、昨年来、引き続き運営させていただいております。
  それでは、本日のスケジュールについて簡単に御説明いたします。
  まず「リスク評価の結果について」というタイトルで、厚生労働省の検討会である化学物質のリスク評価検討会で行われました検討内容につきまして、化学物質のリスク評価検討会委員でいらっしゃいます帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科教授の宮川宗之先生に御講演を25分いただきます。
  次に「昨年度のリスク評価を踏まえた特化則等の改正について—ナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバー—」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質評価室長の角田伸二様に御講演を40分いただきます。
  以上の基調講演が終わりましたら、一旦20分の休憩をいただきます。その間に1回目のピンクのアンケート用紙を事務局で回収させていただきます。こちらのピンクのアンケート用紙に基調講演をお聞きになっての御感想、疑問点、御質問されたい点につきましてお書きいただきまして、会場内におります事務局の者にお渡しくださいませ。いただいた御意見を踏まえた形で、後半の意見交換会を進めさせていただきます。
  意見交換会では、コーディネーターを長崎大学広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いし、パネリストとして基調講演をいただきました宮川先生、角田室長、厚生労働省の方に1名にお入りいただき、疑問的にお答えいただくことになっております。
  意見交換は、1時間ほどはアンケートにお書きいただいた御質問について御回答する形で行い、その後、30分ほどは会場から直接御質問をお受けする形で行います。
  なお、この講演会につきましては、後半の意見交換を含めて議事録作成のために録音をしております。あらかじめ御了承いただけますよう、お願いいたします。
  録音の関係上、30分ほどの質疑応答のときには、マイクを持ってお席までお伺いいたしますので、マイクを通して御質問をお願いいたします。
  全体の終了は4時半を予定しております。
  それでは、1つ目の基調講演「リスク評価の結果について」を宮川先生、どうぞよろしくお願いいたします。


基調講演 
「リスク評価の結果について」

○宮川 どうも皆さんこんにちは。帝京大学の宮川でございます。
  本日は、リスク評価の一連の作業に委員としてかかわってきた立場からの説明をさせていただきます。
  初めに一応、この用いますパワーポイントスライドは、厚生労働省さんのほうでつくっていただいたものでございますけれども、説明の中で、もしかすると私の個人的な考えが少し入るかもしれませんので、あらかじめ御承知おきください。
  それでは、リスク評価の結果について、御説明をいたします。

(スライド1)
  大まかな話の内容ですけれども、一般的に職場における化学物質の安全性確保について全般的な話をさせていただいて、今回行っておりますリスク評価制度についてのお話をした後に、個別の化学物質のリスク評価結果、酸化チタン(ナノ粒子)と三酸化二アンチモンの話をさせていただきたいと思います。

(スライド2)
  初めに、全体的な話でございます。
  労働現場で取り扱われている化学物質は6万種類と書いてあります。ごまんとあると言いますけれども6万種類、場合によっては7万とかいうような数が出てくることもあるようです。これも毎年お話ししていることですけれども、その中で毎年1,000物質を超える新規届け出があるということで、どんどんふえているということになります。

(スライド3)
  こちらにありますのは「業務上疾病発生状況(休業4日以上)」、これも毎年のように御紹介させていただいておりますけれども、かつては平成の初めのころ、300件近く、それが何となくふえるような傾向にあったのが、300の大台を少し超えるようなところで動いておりますけれども、リスク評価の制度だとか、あるいはSDSによる表示制度などが始まっているこのあたりから、何となく減ってきたのかな。
  ただ、残念ながらこの200ぐらいのラインで少しとどまっているという傾向があるかと思います。できればこれがもう少し下がっていくことが望ましいという状況になっております。

(スライド4)
  こちらの図は、これも毎年のように出てくる図でございますけれども「労働安全衛生関係法令における化学物質関係の規則等の体系」ということでありまして、先ほどの約6万種類、たくさんの化学物質が使われているわけですけれども、厳しく規制されているというのが上のほうに書いてあるもので、製造禁止物質が8物質、それから製造許可物質、これも発がん性があるような物質で7物質。
  ここまでが一番厳しいもので、次に、特別規則に基づく取り扱い等が求められるものということで119物質あるということになります。
  この辺に関してはきちんとした規制があるのですけれども、その次に問題になるのが、この部分です。SDS制度に基づく自主管理が求められるということで、SDSの対象となっているのは今、この辺も含めて640物質を書いてありますけれども、どういうものかと申しますと、ここに少し書いてありますように、労働者に危険もしくは健康障害が生ずるおそれのあるものということで、SDSによってどういう有害性があるのか、どのくらいばく露するとそういうものが出るのか、あるいは管理の基準になる許容濃度というのはどのぐらいの値が決まっているのか。適切な管理をするための情報があるものについて、SDSということでそれを通知することが求められているものが640物質あるということになります。
  逆に言うと、SDS、法令で求められているかどうかは別としまして、そういうものがないものは、どういう有害性があるかよくわからないものという可能性もあります。それ以外のものについても、努力義務として、なるべくこのSDSを交付するようにしましょうということになっているわけで、相当な物質について、SDSが実際には出回っているものと思いますけれども、義務となっているのはこの640というのが現状です。
  その中で、国がみずからリスク評価をするという対象はどこから選ばれていくかというと、特別規則の対象になっているものよりも下のこの部分です。SDSが求められているものの中で、こういう特別規則等の対象になっていないものの中から選んできて、リスク評価を行っていくということになります。

(スライド5)
  基本的な方向としては、これも毎年のようにお話しさせていただいておりますけれども、過去の対策としてはハザードベース。ハザードというのは、専門の方が多いと思いますので言うまでもないかもしれませんけれども、その物質に固有の危険性、有害性、つまり、毒性だとか物理化学的な危険性がハザードですね。そういうハザードを持つものについて、しかも、実際に健康障害を発生させてしまったような物質について後追いで対策をしてきた、規制をしてきたのですけれども、平成18年以降、リスクベースの規制。つまり、化学物質はどういう使い方をすれば安全に使えるのか、どういう使い方をすると危険なのかということがありますので、実際の使い方とその物質固有のハザードを比べて、リスクがあるかどうか。
  リスクというのは、いろいろな障害が起きる、健康面で言えば、健康障害が起きる可能性のことですから、そういう可能性があるような使い方をされているのかどうか、そこをチェックし、そこでもって使い方が不適切な場合には、適切なレベルで管理をするように変更しましょうということが求められているということになります。そこで使われているのが、このSDSという危険有害性の情報を記した書類ということになります。

(スライド6)
  その中で、このリスク評価制度ですけれども、リスク評価は実際にどうするか。この部分が一番重要だと思いますけれども、最近、話をすると、リスク評価、コントロールバンディングのようなものですねと思われることが多いのですが、もとに立ち返っていただきますと、この図に示されたものが、リスク評価の基本中の基本です。
  何をやらなければいけないか。リスク評価をするときには、SDSに書いているような有害性情報を収集し、それから、この評価というのは、どの程度までなら安全なのか、どの程度のばく露レベルを超えると健康障害の可能性があるのかというところを評価した上で、では実際のばく露はどうなのかというところを調べた上で、ばく露状況と適切な取り扱いの基準になる有害性評価の結果の数値とを比較して、最終的に健康障害の可能性があるかどうかを確認する、チェックするというのがリスク評価です。
  つまり、有害性の情報を集めて、量-影響関係を確認して、基準となるような濃度を決めて、実際のばく露の状況がどうかというところを求めて、その両者を比較することによって健康障害の可能性、リスクがあるかを評価するというのがリスク評価でございます。
  こういうことをきちんとやりましょうということに、全ての物質について努力義務ということで、できればやってください。それから、今後、特定の物質については義務がかかるようですけれども、国としても同じようなやり方で、言ってみれば見本になるようなやり方でリスク評価をしていくということでございます。

(スライド7)
  そこで、SDSの対象の物質の中から特別規則の対象になっていないものを除いて、リスク評価の対象の物質を選んでいるということでございます。どうやって選ぶのでしょうかというのを説明するのがこの図でございます。
  化学物質のリスク評価に係る企画検討会という会がありまして、その中で実際の候補を選ぶことになります。この検討会のメンバーから、この物質が重要ではないでしょうかという意見が出る場合もありますし、実際にこれはパブリックコメントを募集していて、この物質についてやってもらいたいという意見があれば、この検討会に諮っていきますし、また、その検討会では、それぞれの物質についてどの程度輸入されているのか、製造されているのか、使用されているか、あるいはどういう有害性がありそうかということを考慮した上で、リスク評価にかける物質を決めているということになります。
  実際にリスク評価の作業は、先ほど申しましたように、有害性を調べるというものと、それから、実際のばく露を調べるという2つの作業が必要ですから、有害性評価小検討会とばく露評価小検討会というのがございまして、合同でリスク評価検討会というものもやっております。実際にリスクがあるかどうか、ばく露レベルと基準値、評価値と申しますけれども、それを比べてリスクの判断をして、ある程度リスクがあるのではないか、リスクに関して懸念が示された場合には、改めて、化学物質の健康障害防止措置に係る検討会というところで対策を考える枠組みになっております。

(スライド8)
  今のをもう少し細かくお示ししましたのがこの図で、対象物質の選定の手順です。毎年6月ごろに選定が開始されて、パブコメ等も含めてということで対象を選んでいくことになります。

(スライド9)
  しつこいですけれども、もう一度この図を頭に入れていただけるとありがたいと思います。これは「国のリスク評価の手順」と書いてありますけれども、そもそも化学物質の健康リスクの評価はこういうやり方でやるのだよというのが非常にきれいに出ています。
  ハザードアイデンティフィケーションと申しますけれども、どういう種類の有害性があるかという情報をつかむ。それから、どの程度のばく露量からそういう有害性が出るかという評価の基準になる値ですね。逆に言えば、管理の基準になる値がこちらになります。もうちょっと簡単に言いますと、産業衛生学会などが示している許容濃度のような値がこれになります。そういうところよりも低いレベルでのばく露であれば、健康には問題がないのだと。そこを超えたときには少し考えなくてはいけないという基準値を決めることになります。
  ちなみに、今、SDSが義務でついてくるものには、TLV、アメリカの許容濃度のようなものです。それから、国内の産業衛生学会が決めている許容濃度。そういうものが決まっているものがほとんどですから、それがSDSには書いてあります。ということは、この部分をもし自主的にやろうと思ったときには、SDSを見ると、もうここまで既に評価値として使えるような値が、少なくとも640の物質のほとんどについては、SDSに書いてあるということになります。
  では、あとは何をするか。今度はその次です。ばく露評価ということで、実際のばく露がどの程度になるかということを見て、それと基準値を比べるのがリスクアセスメント、リスク評価だということを、ぜひ、基本中の基本として頭に入れていただければと思います。

(スライド10)
  実際の結果はどうだったか。厚労省のリスク評価は2段構えでやっていて、最初は初期リスク評価です。いろいろ集めた有害性情報から独自の基準で、1次評価値と言っていますけれども、基準値を求めて、それと実際のばく露を比べる。もちろん、もう一つ、2次評価値と言っておりますけれども、これは実際は産業衛生学会の許容濃度、あるいはACGIHのTLVです。そういう2段階の基準値を使って、大体この2次評価値のほうが高いということになっていますけれども、実際のばく露レベルがどうだったかということを調べます。1次評価値は相当マージンをとって、安全域をとっておりますので、そこより低ければリスクは低いということになりますし、2次評価値よりも高い場合があったということは、少し詳しく調べる必要があるのかなということで、初期リスク評価の後、さらに詳細リスク評価というプロセスに入ります。
  基本、詳細リスク評価のほうでは、2次評価値、産衛学会の許容濃度やTLVを使って実態をもう少し詳しく調べることになります。そこでそれを超えるものがあった場合には対策をしなければいけないということで、こちらの方向に向かうわけですし、そこは超えていないということであれば、国の評価はそこまで、自主的な対策の実施等を指導するということで、適切な管理を求めていくことになるというスキームでございます。

(スライド11)
  最後に、リスクの判定をするときに少し難しいのは、これはばく露の測定をすると、一つで決まらないわけですね。実際に作業をしている人は大勢の人がいる。ばらつきがあります。日によって違うかもしれないということで、平均値と許容濃度あるいはTLVを比べればいいということではなくて、安全を見越すためには、ほとんどの人が安全なところにいなければいけないということから、個人ばく露濃度測定結果の中の最大値を一応求める。あるいは統計学的な方法で区間推定をして上側5%を求める。そういう2つをやって、その中のいずれか高いほうと、有害性評価で求めた1次評価値や2次評価値と比較をするということをやっております。

(スライド12)
  少し時間がなくなってきましたので、個別物質のほうに入りたいと思います。
  最近リスク評価した物質にはこういうものがありまして、酸化チタン(ナノ粒子)と三酸化二アンチモンが詳細リスクのほうに回っていました。本日は、この部分のお話を、あと十数分ですけれども、引き続きお話ししたいと思います。

(スライド13)
  まず、酸化チタン(ナノ粒子)です。
  酸化チタン(ナノ粒子)に関しましては、有害性評価をした結果としまして、2次評価値0.3mg/㎥という値が求まりました。これは日本産業衛生学会の許容濃度に相当したものだと思います。1次評価値はどうだったかというと、1次評価値はなかなか計算が難しかった。また、これは詳細リスク評価ですので、基本的には2次評価値でやるということになっております。
  個人ばく露の最大値は1.644mg/㎥という値が得られております。今回のリスク評価では、実際のばく露評価を行ったところ、個人ばく露の最大値が1.644mg/㎥です。許容濃度からとってきた2次評価値が0.3です。5倍以上大きい値が得られました。
  どういうところで、この2次評価値を上回る結果が得られたかというと、酸化チタン(ナノ粒子)の持つ物性や作業の様態から、酸化チタンを製造している事業場における充填または袋詰め作業はリスクが高いと認められた。つまり、製造事業場で充填や袋詰めの作業をしているときに高いばく露が得られて、2次評価値を超えている。つまり、リスクが懸念されることでございます。

(スライド14)
  酸化チタンの詳細リスク評価の結果の中には、文書としてどういう種類の、どういう性質の物質であるかということも書いてあります。詳しくはお話ししませんけれども、触媒作用のあるアナターゼ型と、そうではないルチル型、これは用途が多少違います。化粧品などに使われているルチル型と、触媒として使われているアナターゼ型があります。これを同列に扱ってよいかというところは議論があるところですけれども、とにかくトータルとして、この辺は少し飛ばさせていただきます。

(スライド16)
  1次評価書としては0.023という値が、肺に対する作用から、相当安全係数を見込んで計算した結果ですけれども、今回は基本的には詳細リスク評価ですので、2次評価値のほうが問題になります。0.3mg/㎥というのが、日本産業衛生学会が勧告している許容濃度です。これも肺に対する影響から炎症を起こすような濃度です。慢性ばく露で肺に炎症を起こすような濃度から計算した基準値が0.3、それを上回っているところが見つかったということです。

(スライド17)
  どのぐらいのところで調べたかというと、15事業場で46人の個人ばく露測定を行い、延べ数からいうと相当の数になりますね。5万7,637人が従事している、相当大勢の方がこの作業にかかわっている中ですけれども、今回調査対象としたのはこの46人ということで、実際に問題になった状況がどうだったかというと、こちらになります。

(スライド18)
  先ほども申しました個人ばく露測定の最大値が1.644mg/㎥ですね。この作業で多くなっておりますし、スポット測定のところも最大値が0.7なので、0.3を超えております。

(スライド19)
  グラフのほうがわかりやすいと思いますので、こちらを見ていただきたいと思いますけれども、いろいろな事業場、データ番号で示されておりますが、この0.3というのが2次評価値です。ちなみに、1次評価値はこの10分の1ぐらい低いところでありますけれども、今回は詳細リスク評価ということなので、2次評価値が中心になります。
  これが0.33、0.432、0.50、0.823、1.644、調べた中で、かなりの事業場で、この0.3という産衛学会の許容濃度から持ってきた2次評価値を超えているところが見つかったということになります。

(スライド20)
  ということで、リスクが懸念されるということなので、今後の対応としては、酸化チタン(ナノ粒子)に係るリスク評価結果と、酸化チタン(ナノ粒子)以外の評価結果をあわせて、両者の整合性を図りながら、健康障害リスクの関係を踏まえた対応を検討することになってなります。

(スライド21)
  余り時間がありませんので、次に、三酸化二アンチモンの評価結果のお話をしたいと思います。
  まず、基本となる値について、こちらも詳細リスク評価なので、基本は2次評価値です。アンチモンとして0.1mg/㎥という2次評価値がございます。
  ばく露評価結果はどうだったか。こちらは40人について調べられていて、個人ばく露測定の最大値は0.40mg/㎥、また、測定値から区間推定した上側5%の限界値は0.59mg/㎥ということになります。両方とも、2次評価値0.1を4~6倍近く上回っているという結果が得られております。
  どういう作業だったかというと、やはりこちらも粉体の取り扱いで、投入、袋詰め等、あるいは揮発炉作業等でリスクが高い。つまり、こういう作業で高い個人ばく露測定結果などが得られております。
  もう一度申しますと、区間推定した上側限界値及び個人ばく露最大値が2次評価値を上回っております。粉体を取り扱う作業ですね。こういうことで、健康障害防止措置の検討が必要という結果になっております。
  もう少し細かく見たいと思いますけれども、細かい毒性とか物性の話は、時間がありませんので飛ばさせていただきます。

(スライド23)
  三酸化二アンチモンにつきましては、毒性ですけれども、がんについては、動物では発がん性が認められているデータがありますし、刺激性/腐食性がある。これは皮膚に対する作用ですね。それから、眼に対しても重篤な損傷性または刺激性があるということになっております。
  あとは、反復ばく露で肺機能に影響があるということになっておりますし、産業衛生学会の許容濃度の提案理由書などを見ますと、少し古いデータかもしれませんけれども、心臓に対する影響があったというようなものも考慮して、許容濃度が決まっているという説明になっております。

(スライド24)
  有害性評価の結果、許容濃度が、産業衛生学会は0.1mg/㎥です。アメリカのACGIHのTLVのほうは0.5で少し高い値になっております。
  一方、今回のリスク評価作業の初期リスク評価では、1次評価値を計算しますけれども、こちらは発がん性に関する閾値の判断ができなかったため、どちらのモデルを使っていいのか、NOAELから求めるのか、10-4の過剰発がんリスクから求めるのかという判断ができないため、1次評価値はなしです。ということは、基本的にこちらも2次評価値、すなわち学会の許容濃度等で評価することになりまして、低いほうの日本産業衛生学会の許容濃度、アンチモンとして0.1mg/㎥という数値が基準値になりました。

(スライド25)
  ばく露評価の結果です。こちらはどのくらいの方が従事しているかというと、報告があったのは全部で延べ9,863人です。多くのところでは、局所排気装置だとか防じんマスクの使用はされているようでございますけれども、今回の調査、12事業場で39人を対象に個人ばく露測定をやっております。
  どういう作業かといいますと、1つは、触媒や添加剤として使用している。それから、他の製剤の原料として使用している。顔料、染料、塗料、インキとしての使用をしているなどの事業場の用途でございまして、実際の作業としては、計量、配合、注入、投入、小分け、濾過、混合、撹拌、混練、加熱の作業、または成形、加工という作業でございました。

(スライド26)
  こちらがその結果で、個人ばく露の最大値が製造作業で0.343、基準値は0.1です。
  それから、その対象物、この物質を含有する製剤その他の製造を目的とした原料としての使用では0.4という数値が出ております。これが個人ばく露の最大値です。
  それから、作業環境測定(A)測定でも0.2とか0.5ということで、こちらも、いずれにせよ評価値0.1を相当超える値が得られているということになります。
  個人ばく露の最大値が0.4、上側5%の推定計算値は0.59ということなので、こちらも結論といたしましては、2次評価値を4~6倍程度上回っているということで、リスクが懸念されるという結果になります。

(スライド27)
  これは下側がデータ番号で、個別の事業場で、こういう事業場で基準値、2次評価値である0.1よりも相当高いばく露が見られたということで、高いほうから、粉体計量・投入、揮発炉投入、酸化炉発生粉体回収、粉体調合・清掃あるいは袋詰めといった作業で高いばく露が見られたということになります。

(スライド28)
  リスクが懸念されるということで、最終的な判定と今後の対応ですけれども、三酸化二アンチモンは、その物性等から、飛散しやすいと考えられ、その製造・取り扱い作業において、吸入によるおそれがあるものと考えられる。高いリスクが作業工程に共通して確認されたことから、健康障害防止措置の検討が必要ということになりました。

(スライド29)
  このようなリスク評価検討会の結果を踏まえて、健康障害防止措置が検討されているということでございます。

(スライド30)
  大急ぎで三酸化二アンチモンと酸化チタン(ナノ粒子)のリスク評価結果をお話ししましたけれども、今後の予定です。
  詳細リスク評価としては、塩化アリルと酸化チタン(粉体塗装)のリスクについて、27年度にばく露実態調査が行われる予定になっておりますし、また、初期リスク評価としましては、ここに書いてあるような物質が対象になるということで、今後、結果が出次第、公表されるということになっております。

(スライド31)
  細かいことですけれども、これまでの経緯と今後の予定がまとめられております。

(スライド32)
  また、今回お話ししました酸化チタン(ナノ粒子)と三酸化二アンチモン等のリスク評価に関しましては、リスク評価報告書、検討会の検討内容について、相当程度詳しく厚労省のホームページで掲載されることになっておりますので、御興味のある方は、細かいところをこれによって見ることができるようになったということでございます。
  以前から載っていたと思うのですけれども、非常に整理されて、見やすくなったという話を先ほどお聞きしました。ぜひ、御確認のときには御活用ください。

(スライド33)
  ということで、ちょっと時間が短くて申しわけありませんけれども、本日、私の話はおしまいにします。(拍手)

○司会者(森田) 宮川先生、御講演ありがとうございました。
  次に、厚生労働省安全衛生部化学物質評価室の角田室長に「昨年度のリスク評価結果を踏まえた特化則等の改正について—ナフタレン・リフラクトリーセラミックファイバー—」について御講演をいただきます。よろしくお願いいたします。

基調講演
「昨年度のリスク評価結果を踏まえた特化則等の改正について~ナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバー~」

○角田 ただいま御紹介いただきました厚生労働省化学物質評価室の角田と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
  本日は、リスクコミュニケーションということで皆さんに御参加いただいておりますけれども、このリスクコミュニケーション、冒頭お話がございましたとおり、関係者の皆様、広く一般の皆様と、私どもの双方向の意見交換の場ということで開催しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。その趣旨で、資料、議事録などは公開させていただいております。質疑なども仮名、Aさんとかというような形にして厚労省のホームページに掲載したいと思いますので、御了承のほどをお願いしたいと思います。
  化学物質のリスク評価の対策につきましては、皆様から日ごろ私どもの施策の推進にいろいろ御協力いただいていることに、この場をかりまして厚く御礼申し上げます。私どもの評価室では毎年、先ほど宮川先生のお話にもありましたとおり、国でリスク評価を化学物質について実施しておりまして、その結果、リスクが高いとされたものについては、所要の法令を改正して、規制を導入しているということを毎年実施しているところでございます。

(スライド35)
    説明の内容は、リスク評価の仕組み、これまでの経過、法令改正の概要ということで御説明したいと思います。

(スライド36)
  これは、先ほど御説明がありましたものと同じ体系図でございますので、詳細は省略はいたしますが、三角のところで、上が一番規制が厳しいという御説明が先ほどございました。
  2番目のところが、健康障害が多発して特にリスクが高い業務があるというもの、特化則なり有機則といった法令で規制をしている部分でございます。
  その下は、そこまでいかないのですけれども、一定の危険・有害な物質ということで、例えば、先ほど御説明がありましたとおり、産衛学会やACGIHで許容濃度等の勧告があるものでございまして、上から3番目のものについて、左上に書いてありますが、順次、国のリスク評価を行いまして、高ければ、1つ上の上から2段目の段に上がるという形で対応しているところでございます。

(スライド37)
  これは先ほど御説明がありましたので省略いたしますが、ばく露実態を踏まえたばく露評価と、有害性情報を踏まえた有害性評価と、両方で実施しているところでございます。どちらか一方だけでリスクを評価、判定するということはございませんで、例えば発がんなどで有害性があるとされたものでも、現場で実際にばく露の測定を実施してみた結果、ばく露水準が低いということになれば、リスクは低いという判断になるわけでございます。
  リスクが高いとされたものは、一番下にありますとおり、健康障害防止対策の検討会のほうに移ります。

(スライド38)
  今回、ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーを2つ御説明いたしたいと思うのですが、今までどういう流れで来たかということを簡単な表にしております。
  一番最初は、ナフタレンですと平成20年8月、リフラクトリーセラミックファイバーは平成21年9月にリスク評価の対象に選定したところでございます。
  選定しますと、ばく露作業報告を上げてくださいということを年間500kg以上取り扱っておられる事業者の方にお願いしまして、報告が上がってきた。それを踏まえて、ばく露の実態調査ということで、現場でばく露の測定をしました。
  その結果、リスク評価をし、報告書を取りまとめたのが、ごらんのとおりでございます。平成25年と26年で初期評価を実施し、さらに詳しく詳細評価をやりました。
  措置検討会で、どういう健康障害防止措置が必要かという検討をしまして、その報告がまとまったのが平成27年2月です。
  それを踏まえて、政省令改正をごらんのとおり昨年行ったということで、最初のスタートの時点から見ますと、かなり時間をかけて、手順を踏んで対応しているところでございます。

(スライド39)
  これは、26年度にリスク評価書を公表した物質のリストでございまして、右の詳細リスク評価のところに、ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーが出ています。リスクが高く措置検討を要するという結論が出ましたので、措置検討をしたところでございます。

(スライド40)
  ちょっと細かくて恐縮ですが「ナフタレンのリスク評価と措置検討結果」ということで1枚にまとめているものでございます。
  ナフタレンは、常温で白色の固体でございまして、御存知のとおり防虫剤にも使われておりますけれども、染料の中間体や合成樹脂など多くの用途で用いられているものでございますが、IARC(国際がん研究機関)の評価で2Bということで、ヒトに対する発がんの可能性があるということになりましたので、先ほどの表のリスク評価の対象物質に選定をしたところでございます。
  リスク評価の結果、リスクが高かったわけですが、その意味は、先ほどの御説明にもありましたとおり、評価値を超えるばく露が確認されたということでございます。
  評価値は先ほどの2次評価値でございますけれども、ナフタレンについては、実際の現場の測定値の最大値は評価値を超えていなかったのですが、リスク評価のルールによりまして、個人ばく露のデータを踏まえた区間推定値が評価値を超えたということで、高いばく露と判断をしているところでございます。
  それを受けて措置検討を行った結果でございますが、一番下に書いてありますけれども、特定第2類物質と同様に、作業環境測定の実施や、発生抑制措置を講じる必要があるとなったということです。特定第2類物質といいますのは、がんなどの慢性障害だけでなくて、急性中毒を防止する措置が必要なグループと御理解いただければと思います。
  それから、特別管理物質という発がんを踏まえた特別な管理が必要なグループがありますけれども、ナフタレンも同様の措置が必要となった次第でございます。

(スライド41)
  これはリフラクトリーセラミックファイバーでございます。リフラクトリーセラミックファイバーは、アルミナとシリカを主成分とした非晶質の人造鉱物繊維でございまして、耐熱・耐火性がありますので、工業炉などのライニング材として広く使われているものでございます。これも先ほどのものと同じですが、IARCで2Bという判定を踏まえて、リスク評価の対象としております。これについても、ばく露実態調査の結果、評価値を超えるばく露が確認されたということで、必要な措置の検討を行ったところです。
  その検討結果でございますけれども、この下のところに、RCFを管理第2類物質と同様の措置が必要であるということと、ナフタレンと同様ですけれども、特別管理物質として規制する必要があるということが結論としてなされたものでございます。
  さらに、RCFを断熱材等として用いた設備等の施工・補修・解体等の作業については、発じんのおそれが高いということがありますので、これについては特別な管理が必要であるという結論が出たところでございます。

(スライド42)
  改正の概要ですが、政令と省令が改正になりまして、あと関係する告示なども改正になっております。これはごらんのとおりでございます。

(スライド43)
  これは、政令と省令、特定化学物質障害予防規則(特化則)でございますが、政令と省令でそれぞれどういう条文に分けて規定されているかということがわかるように整理したものでございますので、後でごらんになっていただければと思います。

(スライド44)
  これは、リフラクトリーセラミックファイバーでございます。

(スライド45)
  改正の概要ですが、これも概要なのですけれども、該当する法令の条文を括弧書きで青字でまとめております。また、今回改正しました部分はアンダーラインを引いておりますので、御参考にしていただければと思います。
  例えば、最初のポツの「容器・包装への表示」というのがありますが、これは労働安全衛生法の第57条で、労働者の健康障害を生じるおそれのあるものを譲渡・提供する場合は、容器・包装に名称や成分など所定の事項を表示しなければなりませんということが書かれております。それ自体は改正にはなりませんでしたけれども、その対象物を安衛令の第18条で列挙しておりますので、その中にナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーを追加する政令改正が行われたところでございます。
  関連情報はごらんのとおりなのですけれども、施行日は平成27年11月1日ということになっておりますが、下に【経過措置】とございまして、一部の規定については猶予期間がそれぞれ設けられているところでございます。

(スライド46)
  次は、ナフタレンの規制ということで、具体的な内容でございます。
  まず「容器・包装への表示」ということで、これは先ほど申し上げましたとおり、容器・包装に次の事項の表示が必要ですということで、平成27年11月1日から適用になっております。
  表示事項につきましては、ここに丸数字1~丸数字8の項目が書かれております。
  注書きとして、一般消費者の生活の用に供するためのものは除外するなどの規定。それから、去年の11月1日時点で既に存在するものについては、猶予期間を設けています。
  ※の3つ目のところは、労働安全衛生法の改正によりまして、成分表示の義務が今年の6月1日からなくなるのですけれども、それまでの間は表示が必要という意味を記載しているところでございます。
  それから「文書の交付等(SDS)」の関係でございます。これは、やはり同様に、次の事項の通知が必要だということで、安全データシートを交付するということで対応していただいている規定でございますけれども、こちらについては従来からSDSの交付対象物質でございましたので、特段改正事項はございません。

(スライド47)
  次が、対象物でございます。対象物は、ナフタレンと、これを重量の1%を超えて含有する製剤その他のものが対象ということ。
  それから、対象業務でございますが、ナフタレン等を製造し、または取り扱う作業(以下「ナフタレン製造・取り扱い作業」という)が規制の対象となります。
  ただし、その次に、適用除外業務というのを1~3に書いておりますが、それらについては、ナフタレン等の労働者へのばく露の程度が低くて、労働者の健康障害のおそれが低いと判断されたため、リスク評価の結果、措置検討でもそのように判断されたために、作業主任者の選任等の規定及び特化則の規定の適用を除外したということでございます。
  1につきましては、液体状のナフタレン等を製造し、または取り扱う設備ということで、これは密閉式の構造のものに限りますけれども、ナフタレン等を製造し、または取り扱う設備からの試料の採取の業務、サンプリングの業務です。それは適用から除外するということです。
  2の液体状のナフタレン等を製造し、または取り扱う設備から液体状のナフタレン等をタンクローリー等に注入する業務、これは直結できる構造のホースを用いて相互に接続する場合に限るということで、これも除外をされております。
  それから、液体状のナフタレン等を常温を超えない温度で取り扱う業務ということで、これも適用除外になったところでございます。具体的に常温というものがどういうものかというのは、下の※のところで書いております。これは法令の施行通達に書かれているものでございますけれども、大体35℃を超えない程度ということで御理解していただければと思います。

(スライド48)
  次の「ナフタレン等の製造、取扱いに係る発散抑制措置」ということでございます。「(パンフp4)」と書いてありますが、パンフレットの該当ページを示しております。
  この発散抑制措置でございますけれども、先ほど特定第2類物質という位置づけになりました。したがって、RCFなどと違って製造工程を密閉化するという1の規定が入っております。対象物の製造工程で、丸数字1製造設備を密閉式の構造とすること。丸数字2製造する対象物を労働者に取り扱わせるときは、隔離室の遠隔操作によることなどの規定でございます。
  2として「製造工程以外の対象物のガス、蒸気が発散する屋内作業場」では、発散源を密閉する設備、局所排気装置またはブッシュプル型換気装置を設けること。ただし、それが著しく困難なとき、または臨時の作業を行うときは、全体換気装置を設ける等、健康障害を予防するための必要な措置を講じることとなっております。
  それから、局所排気装置等について、要件、点検、届け出等の規定がございます。
  それから、除じん装置の設置の規定もあるということでございます。

(スライド49)
  作業主任者でございますけれども、選任される作業主任者の資格と、職務を規定しています。
  まず、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者を選任するということでございます。
  作業主任者の職務でございますが、作業に従事する労働者が対象物に汚染され、吸入しないように、作業の方法を決定して、労働者を指揮するということ。それから、局所排気装置などを1カ月を超えない期間ごとに点検すること。それから、保護具の使用状況を監視するということでございます。これは29年11月1日より適用ということで、2年間の猶予期間が設定されてございます。

(スライド50)
  次に「ナフタレン等の製造、取扱いに係る漏えい防止のための措置等」ということで、これは漏えい防止に係る措置をいろいろとまとめておりますが、例えば1の「漏えいの防止措置等」ということで、腐食の防止措置を設けるとか、接合部の漏えい防止措置を設けるとか、バルブは開閉方向を表示するとか、こういった漏えい防止措置が必要になってまいります。
  漏えい時の対応としまして、2以上の出入り口を設けるとか、計測装置の設置とか、警報設備等の設置とか、そういったことが必要になってきます。
  点検、労働基準監督署への届け出等に係る規定も適用されるところでございます。

(スライド51)
  特別管理物質としての措置でございますが、一番下に、特別管理物質とは何かということを書いてございますけれども、人体に対する発がん性が疫学調査の結果明らかとなったもの、動物実験の結果、発がんの認められたことが学会等で報告されたもの等人体に遅発性効果の健康障害を与える、または治癒が著しく困難であるという有害性に着目し、特別の管理を必要とするものと規定されているものです。
  ナフタレンがこれになりましたので、この赤字で書いてありますような、発がん性に関する掲示を作業場に行うとか、作業の記録を行うとか、記録の30年保存をするということが必要になってきているところでございます。

(スライド52)
  これは作業環境測定でございますが、製造・取り扱いを行う国内作業場では、作業環境測定とその評価、結果に応じた適切な改善を行うことが必要となったところです。これは6カ月以内ごとに1回、定期に、国家資格でございますが、作業環境測定士による作業環境測定を実施するということでございます。
  結果は、一定の方法で評価を行って、評価結果に応じた適切な改善が必要となります。測定の記録、評価の記録を保存するということで、管理濃度は10ppm、試料採取方法は固体補修方法で、ガスクロマトグラフ分析方法ということで分析方法を規定しています。平成28年11月1日から適用ということになっております。

(スライド53)
  特殊健康診断の規定も適用されます。ナフタレン製造・取り扱い作業に常時従事する労働者に対して、健康診断を行うことが必要となっております。
  2番目のポツにありますけれども、過去にナフタレン製造・取り扱い作業に常時従事させたことがあり、配置転換して現在も雇用している労働者【配置転換後労働者】についても同様に健康診断が必要だということでございます。
  健康診断の項目につきましては、1次健診として下の四角の中にございます項目、2次健診として右下にあるような項目が設定されているところでございます。

(スライド54)
  次は、リフラクトリーセラミックファイバーでございます。
  これも「容器・包装への表示」と「文書の交付等」というのは、ナフタレンと基本的に同じ仕組みになっております。
  ただ、リフラクトリーセラミックファイバーの場合は、これまでは人造鉱物繊維として重量の1%以上含有する製剤その他のものが文書交付の対象と書かれ、裾切り値が1%以上になっておりまして、リフラクトリーセラミックファイバーをRCFと申し上げますけれども、今般、RCFを人造鉱物繊維の中から取り出して、そのRCFを単独で規定することにいたしまして、対象となる裾切り水準が0.1%となったところでございます。
  裾切り水準につきましては、有害性を踏まえて設定しておりますので、それに倣って0.1%に設定したところでございます。

(スライド55)
  次は、対象物と対象業務でございます。
  RCFと、これを重量の1%を超えて含有する製剤その他のものが対象になります。
  対象業務につきましては、RCF等を製造し、または取り扱う作業(以下「RCF製造・取り扱い作業」という)が規制の対象ということで、リフラクトリーセラミックファイバーの定義は、下に青字で書いてあるとおりでございます。
  適用除外の業務でございますけれども、リスク評価の結果、以下の作業については、RCF等の労働者へのばく露の程度が低く、労働者の健康障害のおそれが低いと判断されたため、作業主任者の選任等の規定及び特化則の規定の適用除外をしたところでございます。
  ただし、RCF以外の特定化学物質が含まれていれば適用除外になる、これは当たり前でございますけれども、そういったことを書いております。
  適用除外業務でございますが、RCFを製造してまた取り扱う業務のうち、バインダーその他のRCF等の粉じんの発散を防止する処理が講じられたものです。それを取り扱う業務は適用除外となりまして、ただし、当該物の切断、穿孔、研磨等でRCF等の粉じんが発散するおそれのある業務については除くとされているところでございます。
  御存知かもしれませんが、RCFは非常にいろいろな形態のものがございますので、どういうものが対象かということは、いろいろと御質問等も今まで多いところでございます。固形化されていない、例えばブランケットのようなものもありますけれども、そういうものは発じんの可能性もありますので、このような形では除外していないところでございます。
  あと、クロスに封入しているものはどういう扱いになるのだとか、いろいろな御質問もあったのですけれども、例えば、密封されていなくて、クロスのすき間とか、それを通して発じんするような場合は、適用除外にはならないと考えております。
  ただ、製品の形態とか取り扱い方というのは多様で、その実態を踏まえて判断する必要もございますので、個別の御質問があれば、最寄りの労働基準監督署にお聞きしていただければと考えております。

(スライド56)
  それから「リフラクトリーセラミックファイバー等の製造、取扱いに係る発散抑制措置」でございますが、これは先ほどのナフタレンにもございましたけれども、対象物の粉じんが発散する屋内作業場で、発散源を密閉する設備、局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設けること等の規定、それから、その要件、点検、届け出等に係る規定、除じん装置の設置ということが規定されているところでございます。

(スライド57)
  それから、作業主任者につきましては、先ほどのナフタレンと同様でございます。やはり同様の講習を受けた方から選任し、職務についても同様でございます。

(スライド59)
  それから、保護具と作業衣または保護衣の規定がございますが、この御説明をする前に、1つ飛ばしまして、これを御説明したいと思います。
  特化則は、基本的に化学物質の製造または取り扱いの業務を規制対象にしているのですけれども、ただし、RCFにつきましては、一部の業務について発じんのおそれが高いということで、そういう業務に特別な規制を設けているところでございます。
  それがここの規定でございます。条文で第38条の20でございますけれども、丸数字1は、わかりにくいかもしれませんが、要は工業炉等で使うときの施工の業務です。丸数字2はそれの補修の業務、丸数字3はそれを解体したりする業務ということでございまして、丸数字1~丸数字3の業務につきましては、特に発じんのおそれが高いとされましたので、特別の管理をするということで、第3項第1号というのがここに書いてありますが、作業場所をそれ以外の作業場所から隔離するということ。それから、第3項第2号に、労働者に有効な呼吸用保護具及び作業衣または保護衣を使用させることという規定が入ったところでございます。
  ただ、隔離することが著しく困難である場合、いろいろと工業炉には配管などがついたりしておりますので、隔離、ビニールシートで覆ったりすることでございますけれども、それが難しいということであれば、下に書いてあります丸数字1、丸数字2で対応できるということでございます。要するに、その周囲で別の作業場所において作業に従事している労働者の方に呼吸保護具を使っていただくとか、あるいは湿潤化措置を講ずるということでございます。隔離が難しければ、こういう対応でも構いませんということでございます。丸数字1、丸数字2は通達で書いております。
  それから、呼吸保護具を使うということでございます。
  丸数字3は解体の規定でございますけれども、その業務につきましては、さらに特に注意をしなければいけないということで、湿潤化をするとか、あるいは切りくず等をふたのある容器に入れるとか、こういったこともさらに加わっております。
  それから、第1項として、作業場の床等は、水洗等によって容易に掃除できる構造のものとするというのは、丸数字1~丸数字3だけでなくて、それ以外の製造・取り扱い作業についても適用されますし、掃除をするという規定も同様に丸数字1~丸数字4に適用されるところでございます。
  このように、通常の管理第2類物質への措置に加えて、38条の20という規定で、さらに必要な管理措置が設けられているところでございます。

(スライド58)
  丸数字1~丸数字3の作業を行うときの規定でございますけれども、この規定で書いてありますとおり、100以上の防護係数が確保できる呼吸用保護具ということで、粒子補修効率が99.97%以上の全面形の面体を有する電動ファンつき呼吸保護具。それから、粒子補修効率が99.97%以上の半面形の面体を有する電動ファンつき呼吸保護具のうち、漏れ率が1%以下であって、労働者ごとに防護係数が100以上でであることが確認されたものを規定しております。
  それから、作業衣は、粉じんの付着しにくいものとすることと、保護衣は、日本工業規格に定める規格に適合する浮遊固体粉じん防護用密閉服が含まれるということでございます。支持金物等に接触して作業衣等が破れるおそれがある場合には、支持金物等に保護キャップやテープを巻くなどの対策を行うことということで、こうしたことを施行通達で規定しているところでございます。

(スライド60)
  これは特別管理物質ということで、先ほどのナフタレンと同様の規定でございます。

(スライド61)
  作業環境測定でございますが、これもナフタレンと同様、規定されております。
  ただ、工業炉の補修とか施工や解体の作業につきましては、作業環境測定が必要となる6カ月という測定間隔を超えて業務が続くということは通常余りないのではないかと考えております。

(スライド62)
  特殊健康診断、これも先ほどと同じでございます。後ほど御参考にしていただければと思います。

(スライド63)
  作業記録でございますが、これは先ほど、特別管理物質で作業記録が必要ですということが書いてありましたが、それの具体例でございます。ここに「労働者の氏名」とありますが、人ごとにまとめて書くとしたら、例えばこんなものができるのではないかという御参考でございます。

(スライド64)
  粉じん則の規定でございますが、特化則とは別に、粉じん則等では、特定粉じん作業、粉じん作業を規定しまして、必要な措置を求めているところでございます。RCFの製造・取り扱い業務は、これらの業務に該当する場合がございますので、その場合は、特化則の措置に加えて、粉じん則等の措置が必要となる場合もあります。その関係を整理したものでございますので、これも御参考にしていただければと思います。

(スライド65)
  以下、経過措置につきましては、少し細かく条項ごとに書いているのですけれども、時間の関係もありますので、また後ほど御参考にしていただければと思います。

(スライド70)
  これが全体のまとめでございますが、特定化学物質の分類と措置内容ということで、今回、特定第2類物質と管理第2類物質の中に、ナフタレンとRCFが入ったところでございます。

(スライド71)
  ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーの製造・取り扱いに当たりましては、今回の法令改正に基づく措置が必要ですが、法令に基づく必要な措置を講ずれば製造・取り扱いはできますので、禁止されているわけではございません。
  代替物質への切りかえを検討する場合には、当該物質について、十分なリスクアセスメントを行う必要があると書いてございます。新たに規制されたということになりますと、代替物を探すという選択をとられる方ももちろんあるかと思うのですけれども、その場合は、きちんとその代替物は大丈夫なのかということを十分御検討していただく必要があるという趣旨でございます。

(スライド72)
  それから、厚労省ホームページの掲載情報ということで、ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーの関係の法令改正については、ここのところにまとめてございますので、また御参考にしていただければと思います。
  ここの中には書けなかったのですけれども、厚労省も「職場における化学物質対策について」の「職場における化学物質のリスク評価」という項目を新たに設けましたので、そこをクリックしていただきますとリスク評価の関係が全部ごらんになれるような形でホームページを少し修正しましたので、それはまた御参考にしていただければと思います。その中には、選定ルールでありますとか、今までリスク評価を実施した物質の報告書とか、今、どういう物質を評価しているのかという細かい表とか、あとはリスク評価のルールですね。ここにも書いてありますが、ガイドラインとか、リスク評価の手法とか、そういったルールもあわせて全部載せています。
  また、関係の行政検討会や毎年3回やっていますこのリスクコミュニケーションの資料、議事録等も全部載っております。
  あと、リスク評価や措置検討の結果を公表したときの記者発表資料とか、そういうものもリンクできるようにいたしましたので、「職場における化学物質対策について」というところをごらんいただければと思います。

(スライド73)
 以上でございます。どうも御静聴ありがとうございました。(拍手)

○司会者(森田) 角田室長、御講演ありがとうございました。
  それでは、ここで15分の休憩時間とさせていただきます。後半の意見交換会は14時55分から開催する予定にさせていただきます。基調講演について、御質問、御意見がおありの方はお手元のピンク色のアンケート用紙に御質問をお書きいただきまして、できましたら、10分後ぐらいまでに会場におります事務局のほうにお渡しいただければと思います。
  お書き終わりになりましたら、挙手で私どもにお知らせくださいませ。どうぞよろしくお願いいたします。


                             (  休 憩  )


○司会者(森田) それでは、お時間になりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。
  コーディネーターは、先ほど御紹介させていただきました長崎大学広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いしております。
  また、パネリストに基調講演を行っていただきました宮川先生、角田室長、厚生労働省から平川室長補佐に御出席をいただいております。
  予定では、16時ごろまで、あらかじめ会場からいただきました御質問について、先生方から御回答いただきたいと思います。
  それでは、堀口先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○堀口 時間ももったいないので、始めたいと思いますが、この意見交換会をこれまで何度かやってきているのですけれども、皆さんのお手元に赤と青の紙があると思うのですが、質問を読ませていただいて、東京会場とは内容が違ったりして、質問の方向性が東京会場とちょっと違う感じがしているので、皆さんにお尋ねしたいのですけれども、この意見交換会にこれまで御参加された御経験のある方は赤、そうでない方は青を上げてもらってよろしいでしょうか。

(傍聴者 札表示)

○堀口 わかりました。ありがとうございます。
  リスク評価のお尋ねが結構多いので、リスク評価の話からいきたいと思います。
  リスク評価についての流れが確認できましたという記述が結構ありました。酸化チタン(ナノ粒子)についての御質問が結構ありまして、酸化チタン(ナノ粒子)について詳細リスク評価を行うとのことですが、今後、特化則に指定する予定はありますか。酸化チタン(ナノ粒子)以外のリスク評価の状況はどうなっていますかという御質問です。

○角田 先ほどの11ページのスライド20にあるのですけれども、今回、酸化チタン(ナノ粒子)ということで評価をいたしましたので、ナノ粒子以外のものとあわせて全体を評価して、その中で必要な健康障害防止措置があるのかどうかを検討したいと思っています。
  ナノ粒子以外のものにつきましては、今年度も一部、補足的にばく露の実態調査を行っておりますので、それをあわせて検討するということと、あと、先ほどナノについては評価値が設定されておりまして、それで評価をしたわけですが、それ以外のものについても評価値を再度検討する必要がございますので、その検討を28年度に行って、リスク評価をナノも含めて酸化チタン全体の取りまとめをしたいと考えております。

○堀口 「酸化チタン(ナノ粒子)以外のリスク評価のスケジュールを教えてください」と書いてあるのですが、決まっていますか。

○角田 先ほどと同じなのですが、年度が改まりましたら、いろいろと評価値を検討する有害性の検討会もございますので、そういった中で評価値を決めて、リスク評価のほうにつなげていきたいと考えております。28年度のなるべく早くとは思っているのですけれども、具体的にいつまでということは、まだ申し上げられない状態です。

○堀口 一応、読みはします。同じような御質問が来ているので、「酸化チタンのリスクについては、ナノ粒子、それ以外の別について、別々に評価されているのでしょうか」というのも、先ほどのお答えにあったかと思いますが、「今後の規制スケジュール等、具体的なものは公表されますか」というところで、先ほどスケジュールについても室長からお答えをいただいたと思います。
  「規制は、酸化チタン製造所のみとなるのか、取り扱いを行う作業事業所全てとなるのかお教えください」というのも、これも今後の検討でよろしいですか。

○角田 そうですね。それもリスク評価の中で特定の業務で特にリスクが高いというところがあれば、当然それが対象にもなるかと思いますし、そこは今後の検討次第ということでございます。

○堀口 それから、御意見として、「酸化チタン(ナノ粒子)のリスク評価結果では、対象物質を製造している事業場でのリスクが高い結果となっています。原料として使用している場合のリスクが高くない場合の規則、除外作業について検討してほしい」という御意見がありました。
  それから、顔料として使用する酸化チタンについて、今後、特化則が適用されるのでしょうか。その際、ルチル型とアナターゼ型は区別されるのでしょうか。また、液体に分散された酸化チタンも規制されるのでしょうかという御質問がありました。

○角田 そこのところは今、明確に申し上げられないのですけれども、今後のリスク評価の検討会での御議論次第でございます。毎年度、リスク評価を加速するために前半と後半に分けてやっていまして、大体通常のスケジュールですと、5月ぐらいからばく露の検討会と有害性の検討会をやりまして、7月ぐらいには、それを合体させた検討会、リスク評価検討会を開催して、そこで大体結論が出るというのが前半のスケジュールでございます。
  ですから、酸化チタンもそういったところで検討ができれば、7月ぐらいには報告がまとめられる可能性があります。年度後半のスケジュールにつきましては、例年大体、12月ぐらいに有害性の検討会、1月ぐらいにばく露の検討会をやり、2月ぐらいにリスク評価の検討会をやって、年度末にリスク評価書を取りまとめて公表するというスケジュールになっていますので、後半になれば、そういうスケジュールにはなるかと思いますけれども、今の段階で酸化チタンがどちらでというのは、はっきりとは申し上げられない状況です。
  なお、年度後半のほうは、先ほどの宮川先生の御説明の資料の中にもありましたけれども、3物質に下線が引いてあって、報告書を取りまとめる予定となっていましたので、それは近々に公表できるようにしたいと今、準備しています。
  ちょっと話がずれましたが、以上です。

○堀口 それから、これは宮川先生ですかね。「ナノ粒子全般としてのリスク評価等の考え方を知りたい」という御質問です。

○宮川 ナノ粒子全般に同じ毒性があるわけではないので、物質ごとによって違うと思いますし、ナノのものに多少関与して一番難しいと思ったのは、ナノ粒子だけが集まったような製品と、ナノ粒子も大きいサイズもまざったような製品と、そこまで小さいナノのサイズのものが入っていない製品。そういうものがあるのかどうか、物によって、もし小さくなることによって毒性、有害性が違ってくるのだとすると、実際にあるものはどうなのかというのと、実験のときにきちんとナノだけを集めてやったときの結果はこうだった。実際はどの程度ナノ粒子が含まれているのか。しかも、製品として含まれていても、実際にばく露するときに本当にそこで体内に取り込まれるのはナノ粒子の割合がどのぐらいになるかということで毒性の発現が違ってきてしまいますので、有害性評価をするときだけではなくて、ばく露の実態でどういうサイズのものを実際に労働者は吸う可能性があるのかということを両方きちんと考慮しないと、なかなかきちんとしたリスク評価をするのは難しいのかなというのが、今、思っているところです。お答えになっているかどうかわかりません。

○堀口 まだ追加の御質問があるときは、読み終わった後にお願いしたいと思います。
  それから、「三酸化二アンチモンは特化則の対象として規制されますか。また、時期はいつごろですか」という御質問です。

○角田 三酸化二アンチモンは、先ほど、今、措置検討会で検討していると申し上げましたが、まだその検討が終了しておりません。措置検討会は、前回は去年の12月に開催しましたが、その際に、現場でいろいろと設備の実態等を調査して、必要な措置の検討に資するためということで現地調査も行うことになっておりますので、そういったことを踏まえて、新年度以降、また引き続き検討をしていくことになるかと思います。
  いつごろ結論がというのは、今、はっきりとは申し上げられないのですが、これもやはり来年度、検討を進めていきたいとは思っております。

○堀口 それから、「今回、塩素化合物の一つである塩化アリルが詳細リスク評価対象となっています。スライド30にあります。これまでの特化則対象物質中にも、塩素を含む化学物質が結構な割合を占めていることからも、塩素を含む化学物質は、化学物質群である塩化物として規制すべきと考えます。
  理由は、印刷会社の胆管がんを持ち出さずとも、特化則対象物質中に多数の塩素化合物、例として、塩素、四塩化炭素、ニトロクロロフェノール、塩化コバルト、塩化ニッケルなどが含まれていることからもわかるとおり、塩素を含む化合物は、その性質として発がん性などを有するものが多いことが予想されるからです。これまでも、ニッケル化合物、コバルト及びその無機化合物、インジウム化合物などといったものが、幾つかの化学物質の有害性のみを理由として、化学物質群として特化則に指定された実績があります。例えばニッケル化合物は、検討会において、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルのたった4物質の有害性を検討しただけで、特化則に化学物質群として加えることが判断されていますので、既に多数の特化則対象物質となっている塩素を含む化学物質もまた、化学物質群として選定されるだけの理由が十分あると考えます。」
  リスク評価の対象の話のような気がするのですけれども、宮川先生から、個人的でも結構なので、コメントを頂戴できますか。

○宮川 金属も塩になるので、可溶性の金属の塩類などで体に入れば、当然その金属としての毒性が想定できるというようなものは割とくくりやすいような気がするのですけれども、ハロゲン化炭化水素の類いで、同じように体の中で代謝されて、同じような毒性が出るかというと、いま一つ自信がないと思う方が多いのだと思います。一くくりにするのはなかなか難しいのかなと個人的には思っています。

○堀口 何か厚労省のほうからありますか。

○角田 化合物との形で規制しているものは当然、御指摘のとおりございまして、その場合、要は有害性次第だと思うのですけれども、その示す有害性が、例えば金属に由来するようなものであるとかいうことがはっきりすれば、そういうくくり方も当然あると思いますし、そこは有害性評価を行う中で、その有害性のもとになっている部分を的確に判断してやらなければならないと考えています。その結果として、化合物としてくくって評価できるものもあるでしょうし、そうでなくて、やはり個別に判断しなければならないものもあると思いますので、そこは個別に専門家の意見を聞いて判断していきたいと考えています。

○堀口 御意見を書いていただいているので、読み上げさせていただきます。
  「また、正しい有害性情報を労働者に提供するためには、塩化物として政令別表9に加えるべきと考えます。理由は、検討会において数種のヨウ化物の有害性をもとに、ヨウ化物に対し一定の有害性が推定されることを理由として、ヨウ化物を政令別表9に加えると判断された実績から、複数の確実な有害性情報が知られ、検討会においても、その有害性が既に確認されている塩素を含む化学物質についても、一定の有害性が推定されることを理由として、政令別表9に加えることができるのではと考えるからです。なお、ACGIHには、塩化物といった化学物質群の項目はありませんので、化学物質群として追加の検討はなされないと思いますが、労働者の安全衛生のためにも、塩化物として追加して、数多い塩素を含む化学物質の情報が行き渡るように、別表9への追加を考えてみてはいかがでしょうか」という御意見でした。
  宮川先生、何か追加でありますか。

○宮川 幅広く問題にしたいものがあるときは、ぜひ、私としては、特別規則に追加してもらいたいということよりも、それぞれの物質について、それを使う各事業者、あるいはそういう化学物質に関係する団体のほうで自主的なリスク評価をしていただいて、それに基づいて、それぞれの物質に応じた安全な取り扱いをしていただくというのがまずは基本なのかなと。もっと言うと、そういうことを自主的にしなくてはいけないなと思っていただけるように行政サイドが促していくのが本来の趣旨かと思います。

○堀口 それでは、先に進めたいと思いますが、「日本産業衛生学会の許容濃度の見直し状況を教えてください。」
  宮川先生。

○宮川 許容濃度については、それぞれ、こういう物質が問題になりそうだというのが許容濃度委員会で話題になると、どなたかこれを担当したい先生はといって、まず誰かが担当して、では私がやりましょうという形で原案をつくり、相当修正されますけれども、何回も許容濃度委員会の中で話し合って、許容濃度ができるということなので、いつまでに、どの物質について、どれだけつくろうという具体的な目標を初めに立てることはなかなか難しい状況でございます。
  それから、発がん性に関しましては、今、発がん性のグループ分けでリストがありますけれども、これは全体的に最近見直しをして、こういうところで修正が必要だなという議論は行われておりますので、少しずつではありますけれども、必要なところは修正がされていると思います。
  生殖毒性のリストについては、当初、女性則などを踏まえて、新しく一昨年ぐらいから生殖毒性物質の群分けのリストを出すことになったわけですけれども、この後は、個々の物質の許容濃度の提案をするときに、これは生殖毒性がある物質だからそのリストに追加しようとか、これは必要ないという個々の判断をするという形で継続することになっています。
  感作性のほうについても同じような状況になるということで、具体的に、初めに計画を決めていつまでということではやっておりません。

○堀口 ありがとうございました。
  「ナフタレンに関して御質問がありました。まず、6月1日以降は、ナフタレンのラベル成分表示は不要でしょうか。特化則第25条2項、当該物質の容器の名称表示の取り扱いはどうなりますか。」

○角田 6月1日以降は、成分表示は義務ではございません。ただ、今のラベルなりの関係のパンフ等にも書かれていたかと思いますが、主要なものについては書いていくことが望ましいと考えています。

○堀口 あと、「過去にナフタレンを取り扱った作業者に対する健康診断は、いつまでさかのぼる必要があるのか教えてほしい。」

○角田 それは、雇用されている間はずっとということで御理解いただければと思います。

○堀口 それから、「セラミックファイバーは、主に特化則を主体に、後に上乗せ的に粉じん則で防護措置などを含めるといった考え方で対処すればよいのでしょうか。」

○角田 どちらが主ということは基本的にございませんので、それぞれの規定の中で的確に対応していただくというふうに理解をしております。要するに、適用される部分があれば、それはそれで対応していただくということでございます。

○堀口 それから、「炉の補修はどこまでを含むでしょうか。例として、炉の中のロール交換、RCFを含まない炉のシール材の交換、RCFを含まないシーズ、炉の中の不良箇所の点検(炉体のはつりなどを含まない)は含まれますでしょうかと、補修はどこまでを含みますか」という御質問です。

○角田 今、いろいろと例示をしていただいたのですけれども、要するに、条文としては、先ほどの資料の30ページ、スライド59になるのですが、規定上は、例えば補修ですと、「丸数字2RCF等を用いて断熱または耐火の措置をした窯、炉等の補修の作業」ということでございますので、これに該当するものは適用になると理解しております。RCFが含まれていないものを取り扱うということは該当にはなりませんし、完全に密閉されていてばく露が全くないようなものについては、対象にはならないとは思いますけれども、要するにここに該当するものであって、ばく露のおそれがあるようなものについては、適切に対応していただく必要があると思います。
  ただ、この場ですと、現場の状況とかもわかりませんので、御疑問があれば、最寄りの労働基準監督署に御照会いただくのが一番いいかと思います。

○堀口 ありがとうございます。
  それから、SDSのお話ですが、「法57条の2に基づくSDS自主管理及び法28条の2の努力規定の部分については、実施状況の調査はされていますか。また、SDS交付義務が遵守されていない場合の指導などはされているのでしょうか」という御質問です。法律が守られているかどうかを調べていますかという御質問のような気がするのですが。

○平川 リスクアセスメントの実施義務化は6月から施行されますので、各労働基準監督署の安全衛生指導の中で、各事業場においてリスクアセスメントに取り組むよう、現在、周知啓発を行っているところです。現在、皆様方にお示しできるような全体での集計結果とか、そうしたものは今、手持ちにはございません。もしそういった集計結果があれば、ホームページ等で掲載されますので、御確認いただければと思います。(会議後追加;実施状況の調査結果については、以下参照)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h25-46-50_05.pdf(リスクアセスメントの実施状況)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h26-46-50_14.pdf(SDSの交付状況))

○堀口 ありがとうございます。
  それから、初歩的な質問で申しわけありませんと書いてあるのですが、「SDSに記載のある防護衣や防護眼鏡を着用せずに使用することは法律違反となるのでしょうか。」
  作業場が多分、食事提供の厨房で使用をされているみたいで、次亜塩素酸ナトリウムやアルコールとかアルカリ製剤などを使われているみたいなのです。

○角田 SDSに防護衣等の規定が入っているものもあるかと思うのですけれども、その部分は、特化則等の法令に基づいて御判断していただければと考えております。

○堀口 「PAPRの規格(平成26年厚生労働省告示第455号)で定める漏れ率がS級またはA級のものについて、防護係数の確認は必要でしょうか。電動ファン付き呼吸用保護具は半面形が多く流通していると聞いています」ということです。

○平川 今の御質問の件なのですけれども、本日の説明に関し、リフラクトリーセラミックファイバーに係る特殊な作業等の管理で使用する呼吸用保護具及び作業衣または保護衣と理解いたしました。
「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」で呼吸用保護具の関係についての検討を進めておりまして、さらなる情報収集を現在、行っております。
  また、その集計結果等につきましても、後日の措置検討会で御説明等をさせていただいた上で、呼吸用保護具の対応を引き続き検討させていただきたいと思います。内容につきましてはホームページ等に掲載されますので、そちらのほうで御確認いただければと思います。

○堀口 評価の質問を忘れていました。
  「今後、IARCでの2B以上の有害性物質については評価対象とするのでしょうか。IARC以外にどのような機関の情報を優先するのでしょうか」という御質問です。

○角田 その前に、先ほどのPAPRの関係は、去年の12月14日に措置検討会が行われたときに、そこでも議論になっておりまして、それを踏まえて、今、御説明しましたような検討を引き続きやっているということで、また12月14日の議事録なり資料が掲載されましたら、そこは御確認いただければと思います。
  今、御質問がありましたIARCの2B以上のものをリスク評価の対象にするのかということですが、それはそのとおりでございます。2B以上は、発がんの可能性があるという区分以上のものでございますので、新たに2Bとなりましたものは、リスク評価の企画検討会で候補物質として提示をして、専門家の御判断を踏まえて必要があるということになれば、リスク評価の対象として、ばく露作業報告をお願いするように進めております。
  ただ、2B以上でも、国内で余り生産なり流通の実績がないようなものについては、そういうものは除いているということはございます。
  それから、ほかの機関での評価はどう反映しているのかという御質問もあったかと思いますけれども、今のところは、IARCの2B以上ということを基本に考えてはおりますが、リスク評価の対象としましては、別にIARCだけの判断では行っていません。私どものほうで発がんのワーキンググループというのが有害性の評価検討会の下にあるのですけれども、そういうところで、国際機関等の評価はないけれども、例えばいろいろと発がんの実験データが集まっていて、そういうところでは発がん性が確認されているような動物実験、ラットとマウスで確認されているとか、そういったことをいろいろ検討しまして、これはIARCの2B相当だという判断になれば、そういうものもリスク評価の対象にしたりしております。

○堀口 御意見として、「今回のお話と関係ないかもしれませんが、日本の法律と国際基準が統一されれば、よりわかりやすく化学物質管理ができるようになるのではないかと思います」というお話も書いてありました。
  それから、「労働安全衛生法第3条で、この法律の定める最低基準を守るだけでなく云々かんぬん、安全と健康を確保するようにしなければならないとありますが、最低基準を守っていて災害が発生すれば、違反となり、処罰されるのでしょうか。」

○角田 処罰については、基本的に、安衛法の罰則ということで書かれている部分に該当すれば、当然罰則の適用になるかと思いますけれども、先ほどおっしゃっていた3条の部分をダイレクトに踏まえて罰則が適用されるということについては、なかったと思います。

○堀口 「安全衛生法第24条で労働災害を防止するための必要な措置を講じなければならないとありますが、3条の「最低基準」と24条の「必要」は、どのように整合するのか」という御質問です。

○平川 33条と24条の関係の話でございますけれども、まず、労働安全衛生法第20条とか第22条には、これにぶら下がるような形で安衛則、有機則、特化則などの条文がございまして、例えば特化則、有機則に書かれている条文に違反ということになりますと、根拠法令である法第第22条には罰則がついていますので、場合によっては何かしらの罰則が適用される可能性があります。
  今、私の知る限り、特化則に係る条文の根拠法令に24条が入っているとは承知しておりませんが、特化則の条文の根拠法令に法第24条が入っていなければ、24条を根拠とする罰則は適用されないことになるのではないかと考えます。
  法第3条も同じように、罰則の条文の中に「3条」というのが入っていなければ、当然、その3条に違反したからといって罰則が適用されるわけがないということでございますので、労働安全衛生法の罰則が規定されている条文に、御指摘の条文が入っているかどうかということで、罰則の適用について、あるかどうかを判断いただくことになろうかと存じます。

○堀口 それから、「リスクアセスメントの実施について、労働安全衛生法の通知対象物質以外の物質による災害が発生した場合も法第24条違反となるのでしょうか。」

○平川 労働安全衛生法の24条は「事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない」という条文で、確かに事業者に対する義務づけの条文という規定となっております。このほか、法第22条に原材料、ガス、蒸気等による健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない旨の規定があります。今、御指摘のありましたリスクアセスメントの実施そのものでは、今回の労働安全衛生法の改正ということで57条の3が関係条文になりますので、直接この24条を引いて適用になるかということで言えば、必ずしもそういうことではないものと考えます。

○堀口 ありがとうございます。
  「作業環境測定対象となった物質について、その測定方法が公表されるタイミングを御教示ください。測定部門から、測定方法がわからないとコメントされたことがあります。」
  「測定方法が定まっていない場合があれば、環境評価はどう対応すればよいでしょうか。測定が始まる前に現状把握のための測定を求める企業もあるようです」というお話です

○平川 今回のナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーにつきましては、本日の配付資料の中にもございますので、そちらを引きながら説明させていただきます。
  本日の角田室長からの説明資料の中で作業環境測定の関係を書いているところがございまして、22ページ、スライド42、こちらの中にございます※のところに「その他、関係する告示(作業環境測定基準、作業環境評価基準、特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能、作業環境測定士規程)」が作業環境測定の方法について書いている内容でございます。
  それについては、平成27年9月30日に改正の告示が出ており、あわせて関係通達も出ており、これらはホームページに掲載されております。よろしくお願いいたします。


○堀口 それから、残りを読んでいきたいと思いますが、「リスク評価について、大学では具体的にどのように評価をしていけばよいのでしょうか。工場などに比べて使用する絶対量が少ないので」という御質問です。
  宮川先生、何か。大学におられるので。

○宮川 義務がかかっている物質については、絶対量が少なくても、常時使用しているという状態にあれば、リスク評価をしていただく。特別規則にあるものは、決められた方法による測定と管理区分の決定などをしなければいけないと思いますし、特別規則がなくて義務になるものについては、方法については独自に判断されればよろしいかと思いますけれども、常時使用している状態にあれば、一定の方法でリスク評価をしていただくことになるのだろうと思います。なかなかなれないところもあると思うのですが。

○堀口 お願いします。

○角田 今、リスク評価とおっしゃいましたけれども、今年の6月1日からのリスクアセスメントの義務化ということで申し上げますと、そのリスクアセスメントの実施方法としましては、特にリスクを見積もる段階ではいろいろな手法があるかと思うのですが、考え方としては、まず、危険性、有害性はどういうものがあるかということを特定した後、そのリスクを見積もるということがあるかと思います。リスクの見積もりをどうするかというのは、コントロールバンディングという厚労省のホームページ「職場のあんぜんサイト」で公開しているようなツールを使ってやっていただく方法もあるかと思いますし、実測していただく方法もあるかと思いますし、いろいろな方法があるかと思いますので、そういうものでリスクを見積もっていただいて、必要な措置をとっていただくという流れになるかと思います。
  そこは、特に大学だからとか、企業さんだからと分けることはございませんで、そこはそういった一連のリスクアセスメントの流れに沿って対応していただければと考えております。
  リスクアセスメントについては、施行を迎えて、これは私ども化学物質対策課のほうでいろいろとPRなり周知をやっておりますし、講習会等も開催していますし、ホームページにはいろいろと、今、申し上げましたような手順なども掲載されているパンフレットなども公表していますので、そういったところをごらんになっていただければと思います。リスク評価というのは、リスクアセスメントという前提でお話ししました。

○堀口 それで、その厚労省が運営する「「職場のあんぜんサイト」にモデルSDS情報があり、640物質を中心にモデルSDS情報が掲載されていますが、昨年改正されたナフタレンについて、関係法令のところに特化則対象であることがまだ織り込まれていないので反映をお願いします」ということです。

○角田 なるべく早く対応したいと思います。

○堀口 それから、「コントロールバンディングを利用して化学物質のリスクアセスメントを行おうとしていますが、アウトプットされる結果にほとんど差異がなく、製造現場での指導での運用に効果があるか疑問を感じています」という御意見です。
  宮川先生。

○宮川 100%個人的な意見ですが、私も全く同感です。できれば、ばく露の程度をきちんと把握して、許容濃度なりTLVと比べるというの基本中の基本だと思いますので、測定する方法がわかれば、多少お金はかかるかもしれませんが、そのほうがはるかによい方法だと私は個人的には考えております。
  ただ、扱っている物質が何千とかいう事業者もあると思いますと、なかなか大変かなと思いました。

○堀口 どうぞ。

○角田 今、コントロールバンディングのお話がありましたけれども、先ほど申し上げましたパンフなどでは、5種類ぐらいリスクの見積もり方法を例示しておりますので、またそういうものも含めて御検討いただければと思います。

○宮川 ちなみに、コントロールバンディングがなかなか結果を見ても、う~ん?と思うものが多いというのは、幾つか試しにやってみた結果としての実感なのですが、もう一つ、根本的に困ると思うのは、有害性のレベルをGHS区分に従ってつけていますけれども、GHS区分は少なくとも急性毒性試験とか眼に対する重篤な損傷性/刺激性、それから皮膚に対する腐食性/刺激性は、作用の強さに応じた区分になっていますけれども、発がん性とか生殖毒性、生殖細胞変異原性とかいうのは、作用の強さに応じた区分になっていなくて、証拠の確からしさですね。
  そうすると、証拠はいっぱいそろっているのだけれども、相当たくさんばく露しないと有害事象は出ないというものが、証拠がそろっているということで区分1になってしまうと、高い有害性レベルということで評価されてしまいますので、実態と違うものになる可能性があります。
  さらに言うと、標的臓器毒性に関しては、動物実験のデータに基づいて区分をした場合にはどのぐらいのレベルでばく露したら症状が出たかということで、区分2を決めることになっていますので、これはある程度、作用の強さを動物実験のデータの場合反映するのですが、一方、ヒトで症例があるとか、疫学調査があるとき、これはもうヒトではっきりした証拠があるというときには、それだけで区分1にしてしまいますので、同じ標的臓器毒性といっても、動物のときにはある程度作用の強さを反映したものですけれども、ヒトのときにはそうなっていないので、証拠の確からしさでもって、確かだったら区分1にしてしまうので、こちらも有害性のレベルを判断するときになかなか使いにくいはずのものを、コントロールバンディングでは使うことになっているという問題があるということは、いつも私は疑問に思っています。

○堀口 ありがとうございます。
  御意見などですが、「リスクアセスメントに対する指針が出てから、規制までの期間が短い気がします。小規模の事業者が多く、問い合わせが最近多くなっていますが、ユーザーが対応できるか不安です」という御意見がありました。
  御要望として、「一般化学物質のリスク評価事例に関するセミナーを開催してほしいです」という御要望がありました。
  御意見ですが、「地域の労基署において、担当者によって、法令への対応が異なります。作業記録の義務化の日付よりも前にさかのぼり、作業記録の作成を強制されました。法令の改正の教育、周知を適切に行って、担当者によって対応が変わらないようにしてほしい」という御意見です。
  それから、少し前に戻るかもしれないのですけれども、幾つかの御質問とかがありまして、「リスクのない化学物質は存在するのですか。」
  宮川先生、お願いします。

○宮川 なくてはならない水も、肺に大量に入れば死亡に直結しますので、基本的には化学物質の健康影響というのは、経路によって違いますけれども、ばく露する量によるものだというのが基本なので、危ない物質と危なくない物質というのが本質的にあるというよりは、全ての化学物質について、量によって健康障害が出たり出なかったりすると思いますので、うちの製品に危ない物質というマークをつけないでくださいという御希望を時々伺うことがあるのですけれども、全てはばく露のレベルとの関係で決まってくるので、安全なレベルにばく露を管理できるような化学物質があれば、それは安全に使える化学物質だということでありますし、そのレベルにうまく制御できないような使い方、管理できないような場合には、いろいろな物質が危ない可能性がある、リスクがあるということになるのが基本でございます。

○堀口 それで、「有害性評価とばく露評価からリスク評価を行うと、有害性評価の結果が大きく影響し、対策によりリスクが下がっている。定量化が難しい」と書いてあるのです。有害性評価の結果が大きく影響する。

○宮川 もしかすると、これは、コントロールバンディングをそのまま使ったときにはそういうことが起きるような気もします。有害性評価のレベルが上のほうのものだと、最後にリスクが多いという判定が出てしまう可能性はあると思うのですけれども、環境測定をやって、基準値と比べるということをやっている限りは、有害性評価の結果が直接響くということはないと思います。
  というよりも、むしろ基準値、許容濃度というのは、個々の有害性の量-反応関係を勘案した結果決まっているのが許容濃度だと思いますので、一般的にはそういうことは私はないような気がいたしますが、いかがでしょうか。

○堀口 それから、「酸化チタン(ナノ粒子)ですが、リスクがあるものを生体に直接する化粧品に使用を許可しているのは、どのような理由からか。皮膚刺激性、感作性などが判断できないのに合理的な説明はできるのですか」と、労働衛生とは違うのですけれども、お答えできますか。

○角田 化粧品としての使用になりますと、私どものところでは労働者の健康影響ということで、労働環境でのばく露を中心にしていますので、ちょっとお答えしにくいところがございます。

○堀口 もし御質問されるとしたら、消費者庁に聞いていただくといいか、厚生労働省の厚生のほうですかね。薬機とか医薬品のほうに聞いていただくのがよいかと思います。
  「ナフタレンも、労働者への規制は理解できるということで、一般消費者向けのものが除外となっているが、ほかの法律で規制があるのでしょうか。事業者側から見て、化学物質の規制について、厚生労働省の取り組みは理解できるが、一般消費者の立場から、その化学物質を使った製品が安全か否かわかりがたく、ダブルスタンダードではないですよね」と書いてあるのですが。

○角田 例えば、家庭での使用ということになりますと、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律は別途ございます。それは有害物とか家庭用品を指定して、含有量とか発散量の基準をたしか決めていたと思うのですけれども、そちらのほうではナフタレンは対象物にはなっていなかったと思います。

○堀口 宮川先生。

○宮川 多分、そちらのほうでは、通常の使い方のときのばく露レベルを想定した上でいろいろ考えて、私は詳しくないですけれども、消費者製品については、消費者が通常どういう方法で使うか、そのときに問題ないレベルであれば問題ないという判断をするし、誤った使い方をすると危ないものについては、そういう注意書きをするような場合もあるということですかね。答えになっているかどうかわかりませんが。
  ちなみに、GHSによるラベル表示が広く行われておりますけれども、それは一般消費者については、表示の仕方を変えてもよいということで、リスクベースです。ハザードに基づいたらこのマークがつくはずだということであっても、一般消費者向けの製品については、リスクを考えて、通常の使い方でリスクがないのであれば、表示なしにしてもいいよというようなことで、国内でも運用されています。

○堀口 個人的な話としては、ダブルスタンダードというのは、やはりわかりづらいというのがありまして、消費者庁の事故調の委員をしているので、消費者庁のほうにも私個人としては、やはりそろそろ消費者向け製品のラベルについては考えていかなければいけないのではないでしょうかねという話を今年度、消費者庁とは話し合いの中でやっておりますが、変わるには時間がかかるかと思います。ただ、何もしていないわけではないということが1点。
  それから、リスク評価ですが、厚生労働省は、労働衛生に関してはリスク評価とリスク管理を同じ機関でやっています。海外では、国によっては、消費者に対するリスク評価、環境に対するリスク評価、労働衛生に関するリスク評価を1つのリスク評価機関、省庁としてやって、リスク管理は別の機関がやるというような国の体制をとっているところもあります。日本においては、食品以外は、リスク評価とリスク管理は同じ省庁がやるようになっているので、そこも正直言えばダブルスタンダードに。食品以外は管理と評価が一体化しているので、そのようになっているのが現状かと思います。
  それから、経営リスクを回避するために、GHS分類で危険有害とされる物質のリスクアセスメントなどは最低限実施することが必要でしょうか。
  宮川先生からアドバイスを。

○宮川 安全配慮義務ということからいうと、しかも、全ての化学物質について安衛法では努力義務がかかっていますし、労働契約法では事業者の労働者に対する安全配慮義務というのが明記されています。
  それから、安衛法の最初のほうの条文にも安全配慮義務と同じようなことが書いてあって、安全配慮義務というのは、労働契約法ができる前は判例による法理だと言われていたこともありますけれども、一方、労働安全衛生法を最初につくったときの担当の畠中先生という方の講演を聞いたときには、事実上、それは、安全配慮義務というような考え方でつくったのだというお話を聞いたこともあります。いずれにせよ、一般的に安衛法の範囲内でも、労働契約法のほうでも、安全配慮義務というようなものを考えるのが、やはり経営者としてのリスク対応にはなるのかなという気が個人的にはしております。

○堀口 それから、「化学物質の管理に関して、製造事業者より下流の小売業などで必要な対策はありますか。また、国として、それらの事業者に対する取り組みは何か行われていますか」という質問です。

○角田 特に下流とかという形で規定があるわけではございません。特化則ですと、製造・取扱いの事業者に規制がかかってくるということになりますので、下流であっても取り扱いをしているようなところには、当然、規制がかかってくる可能性はございます。特に段階で仕分けをして対応しているということではございません。

○堀口 ありがとうございます。
  これで、いただきました質問と御意見を全て読み上げたのですけれども、漏れがあったりとか、また、今の質疑の中から新たに御質問したいことなどがありましたら、今から御質問を受けようと思います。特に所属やお名前をおっしゃる必要はありませんので、もし御質問がある方は、手を挙げていただけませんでしょうか。

○A氏 このたびのリスクアセスメントの義務化に関して、たくさんの物質が、特にラベルなどにも影響しますし、例えば試薬だとか塗料会社等で、それを扱っている人は物すごく大変で、いかに職場とか、特に扱っている人に対してまとめるというか、グルーピングしないと、先ほど宮川先生がおっしゃったように、全部なべてというわけにはいきませんね。
  例えば取扱量でいくとか、製品群とか、そのように思ったりするのですが、要するに優先順位をつけるということも指針には書いてございますので、そういうのはどんどんやっていって、あとはそれに準ずるやり方で製品名等をそこに含めて、把握になる部分というふうに思うのですが、何かいい方法といいますか、まとめていく上での、こんなふうにしたらとかいう御提案がございましたら。

○堀口 宮川先生、どうですか。

○宮川 すごくたくさんの種類のものを使っていて、全部実際に測定をして許容濃度と比べるとかは不可能なことがあるのです。でも、すごくたくさんのものを使っているときの個々の成分の量を考えると、常識的に考えて、わざわざ測らなくても、ばく露が許容濃度を超えるようなレベルにならないということを計算することも、現場のことを知らずに申し上げて申しわけないですけれども、可能なような気もするのです。そうすると、そういうものについてははなから問題になるレベルのばく露が起こらないのだったら、これは机の上で評価をし、リスク評価をしてもらうということでもよろしいのかなと。
  ここは別に、こういうことをしなさいと全部細かく行政のほうが言っているわけではないので、常識的に、こういう計算をすれば、この物質は微量成分だし、この物質も微量成分で、そもそもこのぐらいの広さのところで使っている従業員が、そんなたくさんのレベルでばく露するはずがないと、微量なものについて机上の計算で済むのかなという気がします。
  逆に言うと、そのためには、この製品、原料として使っているものには微量だけれども何が入っているのかなということが本当はわからなくては困るのです。ところが、規則としては、成分の表示が緩いほうに動いてきているので、そうすると少し必要な情報が得られなくなる可能性もあるのかなと、個人的には思っています。

○A氏 そうしたら一応、そういうことを絞るというか、そのこと自身がリスクアセスメントにもなっているということで、そういうことをいつ、こんな考え方でやりましたということを記録に残して、危ないものは、だけれども、そのうちの一番トップのものはとかみたいな考え方でいいのではないかという感じでしょうか。

○宮川 基本的には、予見可能なリスクはちゃんと回避できるようなことを考えてやりましたということをやるのが本来かなと。予見可能なものを放置しておいて事故が起きたら、それは責任が問われるということで、一応いろいろと考えてみると、これは常識的には予見可能なリスクはないという判断をしましたというところが一番だと思います。
  逆に言うと、何だかわからないものを使うのは危ないということで、640の物質でSDSがついてくるものは、ある程度予見ができて、しかも、このレベル以下だったら大丈夫ですよということが許容濃度として示されているというものなのかなと思います。そうすると、その中から、そういうレベルで管理できるものをうまく使うというのが、予見可能なリスクを回避することになると、私は個人的には考えております。

○堀口 よろしいですか。
  ほかにありませんか。
  後ろのほうの方、お願いします。

○B氏 よろしくお願いします。
  塩化物について、別表9に入れたらどうかと提案した者なのですけれども、宮川先生のほうから、塩化物とかを一緒くたにして入れるのではなくて、最終的には事業者のほうの自主的なところにやっていったらどうかというお話があったのです。それと比較して、ヨウ化物については実際に来年から別表第9に入れられるわけなのですけれども、では、塩化物とヨウ化物、一体何が違って入れる、入れないの判断がされたのでしょうか。

○平川 今回の説明の中でもお話があったかと思いますけれども、平成12年からSDSの制度が施行されましたが、当時はMSDSと言っておりましたけれども、物質の選定につきましては、ACGIHとか、日本産業衛生学会といったところの許容濃度とか勧告されている物質などをSDSに入れるという整理をしておりました。
  その関係で、まさにお話のとおり、いろいろな種類、数十種類の塩化物が入っておりまして、まとめて塩化物という形で処理するのではなく、一個一個、当然、許容濃度等もみんなそれぞれ違います。あと、物理的な挙動とかもみんなそれぞれ違うということで、塩化物については逆に、ヨウ化物に比べて、その一物質一物質が大量に使われていたということも恐らくあったのでしょう。そうしたことで、塩化物は特に今までまとめることなく個別の物質についての評価がされてきた。国際的にもそういった形でされてきたという現状があろうかと思います。そういったことで、塩化物については、これまでまさに一本化という形ではなくて、それぞれの物質の評価という形でされてきたということでございます。
  ヨウ化物は今回一本化されますけれども、塩化物については、そのような形で整理されてきました。それ以外の物質について塩化物にまとめるかということですけれども、今のところ、塩化物ということで、ヨウ化物のような形でまとめられるかというところを検討しているかといいますと、今の要望にはございましたが、今のところは特にまだそういう対応を進めていないという形でございます。御理解をお願いいたしたいと思います。


○B氏 ということは、ACGIHにはヨウ化物の項目がありますけれども、ACGIHには塩化物の項目がないことを理由として、塩化物としてまとめることはないということでよろしいのですか。

○平川 これまでの経緯で言いますと、そういうことになります。

○角田 今、申し上げていますのは、今までの経緯ということで申し上げているのですけれども、今後、もちろん塩化物でも、今、規制されているもの以外のものもありますので、そういったものをどう扱うか。お話しのように、全体をくくってという御意見ですけれども、それ以外のものについても含めて、必要があるものは、随時そういう海外の有害性情報を踏まえながら規制していきたいと考えていますので、その過程で物質を個別に検討していくことがいいのか、御指摘のようなことも、くくるみたいな考え方もあり得るのかというのは、今後こういう専門家なりでの検討の中で考えていくことと思っています。
  ですから、この場でそこは何とも答えられない部分はあるのですけれども、要するに、有害性が確認されて、国内でもそれなりの使用量があるものというのはきちんと対応していかないといけないと考えておりますので、海外の機関とかで有害性情報が出てくれば、随時そこは対応していきたいと思っています。

○宮川 今の点についてもう一つ、塩化物でくくると、国内で物すごく大量に使用されていて一般消費者もばく露する可能性のある塩化ナトリウムについて、何か表示をかけなければいけないとなります。それで健康障害があるかというと、確かに塩分をとり過ぎれば健康障害が起きます。そういう問題が起きてくるということで塩化物について全部くくるのは非常に難しい。

○B氏 では、逆に、今回、ヨウ化物が別表9に加えられたわけですけれども、リスク評価書とかを見たにしても、実際にリスク評価をされた物質は4物質、5物質というところで、それが一気に一般化されてヨウ化物全体へと規制が広がるということになっているのですが、そこに対する理由というのは、はっきりしたものはあるのでしょうか。
  その理由というのは、ACGIHでヨウ化物が指定されているから、日本でもヨウ化物として指定するのだということだけですか。

○角田 ACGIH等で許容濃度等規定されているということを前提に、幾つかの物質をリストアップしまして、それを企画検討会というリスク評価の専門家の検討会がありますので、そこで一個一個審議した結果という形でございます。そのときの議論を今、つぶさにこの場では紹介できないのですけれども、それは、先ほども申し上げました議事録等が全部ありますので、そこの部分で御確認していただければと思います。

○B氏 では、1点だけ。幾つか検討された物質を一気に全体へと広げられた理由だけを教えてください。そこの理由があるから法制化されたと考えているのですけれども、それは違うのでしょうか。

○平川 今、室長からも申し上げましたが、ヨウ素3種類をもって全体のヨウ化物という形で規制することになった経緯というのは、ここで紹介できるものはございません。企画検討会というのは、まさに事業者の代表の方とか、労働者の代表の方とか、あと、化学物質に関する知識とか、そうした知見の深い方たちが入っている中で総合的に評価をして決めています。
  今回、ヨウ化物を包括的に入れていますけれども、逆に、包括的になっているけれども、一個一個規制したほうがいいのではないかと言われているものもございます。いろいろな経緯で包括的にしているものもあれば、個別にしているものもある。それはまさに、企画検討会の議論の中でやっていますので、そちらを御確認いただくことで御了承をお願いいたします。

○堀口 よろしいですかね。
  ほかに御質問ありますか。
  はい。

○C氏 自社及び自社の所属する業界団体に偏った質問で大変恐縮なのですけれども、我々のところで、コバルト及びその無機化合物を使用しているのですが、それは顔料として使用しているのです。それが労働者にばく露する危険のある工程は、その顔料を仕込むところなのです。仕込むとき、それがウエッティングされた以降は、ばく露したり作業環境を悪くする要因はほとんどないと業界団体みんな思っているのです。
  それで、自社の所轄の労働基準監督署に問い合わせして、私はそう思っていますと。ですから、そこのところの作業環境の測定はやります。けれども、それ以降、ウエッティングされた状態で作業環境測定をやっても第1管理区分しか出ないので、そこはやりたくないですということを言って、そこの労基の監督官につきましては、その考え方でよろしいと思いますと言っていただけたのですが、後日、厚生労働省に確認しましたら、ミストでも何でも体内に、要は吸入されるようなリスクはゼロと言えますかということを言われて、それで業界団体も悩んでいる。
  要は、企業ですから、法令にのっとったことはやりたいとは思うのですが、ただ、やっても出てこないようなところにお金をかけるというところは非常に無駄なのではないかという意向で、そのようなところの例外とか見直しができるのかとか、それとも、ここで公式でそういう見解はできないよというのであれば、所轄の労働基準監督署に現場を見てもらって、労基と調整してそれぞれやっていただければ結構ですよとか、そのような見解は何かございませんでしょうかという御質問です。

○宮川 役所の立場と全然別ですよ。個人的な考え方で、ばく露がないと担保できるのであれば、本当はそこまで規制はかからないようなことが工夫できればいいと思うのですけれども、あとは役所のほうが、どういうところはやらなくていい、こういうところはやらなければいけないというのを決められるかどうか、そこはどの程度困難なことなのかにかかわってくるのではないかと。これは私、役所と全然別の立場からのコメントになります。

○C氏 確かに、現場も見ないで回答してくださいというのは、多分できないと思うのです。現場を見て、ここにはリスクがありそうだなと。そういうところで、ちょっと難しいと思うのですけれども、先ほども意見が出ていたのですが、グレー領域の質問というのは、やはり聞く方によって意見がばらつくのですね。なので、我々も、どうやって対応していいのかなというところで非常に困っていたというのが現状です。

○角田 例えば、先ほども申し上げました製造・取り扱いの発散抑制とか、部分については、気中濃度がその状態として有害でないような場合は、労働基準監督署長の認定が要るのですけれども、そういう場合は措置は要らないという規定もあるのです。
  ただ、今の話は測定の関係ですね。

○C氏 測定です。

○角田 測定の部分は、今、厚労省のほうにも御確認されたという経緯がよくわからないので、この場で即答は難しいと思います。そこは私ども、本省の化学物質対策課のほうに御確認されたということであれば、そこは確認したいと思います。
  あと、私どもは組織でございますので、労基署と本省のほうでも一致した見解で御説明しないといけないというのは当たり前のことですので、どちらに行けばいいということにはならないと思っております。

○C氏 ありがとうございます。

○堀口 よろしいですか。
 お隣。

○D氏 1点だけ。この6月1日から成分を表示しなくていいということになって、非常にこちらのほうとしては助かる。私どものほうは成分が非常に多い、種類が多いものですから、全てを書けと言われてもちょっと困るのです。ただ、1つ気になるのが、海外へ輸出とか、今、海外のほうも非常に厳しくなってきて、日本に近いような状態で管理をしていくような形で、あるいはラベルを実施しろということでやったのですが、そのところではほとんど成分を書きなさい、あるいは最低5個ぐらいは書いておきなさいというような条件があるのですけれども、日本以外でこういった表示をしなくてよい、あるいはこれから先、こういうことになりましたけれども、また法律がすぐに変わって、やはり書かなければならないというようなことにはならないのかというのが懸念であるのですが、いかがでしょうか。

○角田 海外の状況については、今、手元にないのでわからないのですけれども、この成分の欄を削除したというのは、既にいろいろ法改正等のQ&Aがホームページに載っていますので、ごらんになっているかと思うのですが、表示義務対象物質の拡大ということとあわせて、成分欄の記載する物質の数が非常に多くなって、見にくくなるようなことも考慮してそのようにしましたので、それがまた必要になるということはないと理解しております。
  ただ、要するに義務づけられる事項ではなくなるのですけれども、主要な成分については当然記載していただくことが望ましいと思いますし、また、先ほどのお話のように、海外では要求されるということがもしあれば、そういうことも踏まえて、事業者さんのほうで御判断することなのかなと考えています。

○D氏 その中で、例えば、私どものほうで一部、従来の労安表示の100余りの物質のほうを基準にして書くようなことにすれば、多少混乱が避けられるという形はあるのですけれども、今後、法律のほうが変わっていますので、当然それは過去の時点でのとまった状態のものが、そういったところである程度表記すべき内容のものをきちんと自己の会社の中で御判断くださいと言われても、そこにどういうものを基準にして書いていいのかというのは非常に不安なところがあります。
  私どもは塗料業界ですので、先ほどありました特化則等につきましては、お客様のほうでわざわざ商品に有害物の特化則に該当するような物質を書き直していただくようなことをする必要性はないと思うので、特化則とかそういったものについては表記をしましょうということは考えているのですけれども、それ以外に基準とすべき点で御指導いただけるようなものがあれば、教えていただきたいと思います。何を書けばいいのか。入っているものの半分以上が入っていればというような指導、指針というのはあるのでしょうか。あれば教えていただきたい。自己の会社の御判断でお願いしますと言われると、何を基準にしていいのかわかりにくい部分があるので、お尋ねをしているのです。

○角田 そういう御意見があったということはお伝えしておきます。記載義務はなくなるけれども、先ほどのパンフレットにもあるのですが、主要な成分とか適切と考えられる成分の表示を行うことが望まれるということ以上のことは、今、お示ししていないと思います。
  もし違えば、またそこは確認をしたいと思います。


○D氏 あともう一点、それに準じてなのですが、今まで自社は、労安通知表示物質という形で題名を書いておりました。ここは、そうすると、例えば主要成分であれば主要成分と書けますが、自分のところで書けと言われたものに対しては、どういうコメントを書けばいいのか。単に有害成分と書くのか。それでわかるのであればいいのですが、どういうコメントを最初の表題として出しておけばいいのか。そういうことも教えていただければ。

○角田 そこはちょっと、大変申しわけないのですけれども、今、直接ここでお答えできませんので、労基署なり表示の関係のところに直接確認していただくことが可能であれば、そのほうが早いと思います。

○宮川 今の観点で、細かいことは行政の話だと思うのですけれども、リスク評価のかかわりということからいうと、成分を書かなくていいといったものが出てくると、それこそ、それをまた使って下流に行くほど、もとが何だかわからない。とすると、リスク評価ができなくなってしまうわけですね。
  JISのGHSの基準で書こうと思うと、例えば1%も入っていれば区分1になる。また、それを薄めて100分の1にして、下流のメーカーで1万分の1しか入っていないときでも1になってしまいますね。幾ら薄めていっても消えないのですね。そうすると、これは危ないものかなと思われる。もとに返って全部、もとに何の成分が何%入っていると書いてあれば、計算していけば、これはこれしか入っていないから当てはまらないのだとわかる。これはもうリスクがないという判断ができると思うのです。どういうものがどのぐらい入っているかという情報がきちんと下流にまで伝わっていかないと、リスク評価も難しくなるし、過剰な表示が出てくる可能性もあるというのは、私は、個人的には、困るところがあるのではないかなと思います。

○堀口 よろしいですか。
  多分、御意見は役所の中で伝えていただけると思います。
  ほかに。
  そちらの方。

○E氏 有機則とかでは、例えば少量の場合の適用除外ですね。少量の場合は、例えば先ほど環境測定しなくていいとか、そういった適用除外があるのですが、今まで有機則の第2種有機溶剤だったクロロホルムであるとかMIBK、あるいは有機則になっていなかったキシレンとして分類されていたエチルベンゼンとか、そういったものが特化則に変わったということから、例えば分析等で毎日1日1mLとか2mL、そのような量で使っていたとしても、一応特化則、下限がないという形で適用除外にならない。リスクの考え方から見ると、少量なので適用除外されるような状況ではないかと考えるのですけれども、そういったものについての適用除外の検討とか、そういった御予定はあるのでしょうかということが質問であります。

○堀口 一生懸命探して悩んでおられるようなので、終了してから名刺交換していただいて、よろしいですかね。(会議後回答;事業者が特別有機溶剤業務に労働者を従事させる場合には、特定化学物質障害予防規則第38条の8に基づき、有機則第1章から第3章ほかの規定を準用することとなっている。よって、有機則第2条及び第3条及びその関連規定の適用を受け、局所排気装置等の設置を要しないこととすることができるものであり、これまで同様、労働基準監督署長の認定を受けることもできる。)

○E氏 わかりました。

○堀口 時間も押し迫ってきたのですけれども、もうお一方ぐらい、もしあればですが、ないですか。大丈夫ですか。
  では、4時半までなので、本日はこれにて意見交換を終了いたします。バトンタッチいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  皆さん、お疲れさまでした。ありがとうございました。
                                 (拍手)

○司会者(森田) 先生方、本当にありがとうございました。
  以上で「第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション」を終了いたします。皆様、御参加いただきまして、まことにありがとうございました。
  今後の参考といたしますので、できましたら、水色のアンケート用紙に御記入いただきまして、会場の出口の係の者にお渡しいただきますよう、お願いいたします。また、お配りいたしました赤と青のはがき大のカードですけれども、こちらも同じように出口の者にお渡しいただければと思いますどうぞよろしくお願いいたします。
  ありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室
(電話)03(5253)1111(内線5511)

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