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2016年4月18日 第129回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成28年4月18日(月)17:00~19:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、荒木委員、権丈委員、田島委員、村中委員、守島委員

【労働者代表委員】

川野委員、神田委員、柴田委員、八野委員、村上委員

【使用者代表委員】

秋田委員、小林委員、早乙女委員、鈴木委員、田中委員、三輪委員代理

【事務局】

山越労働基準局長、大西審議官、土屋審議官、美濃総務課長、村山労働条件政策課長、荒木監督課長、増田参事官、六本調査官、千谷企画官

○議題

1 報告事項
2 その他

○議事

○六本調査官 定刻になりましたので、ただいまから第129回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。私、労働条件政策課の六本と申します。

 今回は、昨年4月27日付の委員改選後初めての分科会となりますが、労働条件分科会長については、労働政策審議会令第6条第6号により、労働政策審議会の本審に所属する公益委員の中から選出されることになっており、岩村委員が選出されております。

 また、分科会長代理については、労働政策審議会令第6条第8号により、公益委員または臨時委員から分科会長が指名することとされており、荒木委員が指名されております。

 以降の議事進行は、岩村分科会長にお願いいたします。

○岩村分科会長 引き続き分科会長を務めることになりました岩村でございます。委員の皆様方の御協力を得ながら議事を進行してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、本日の委員の出欠状況でございますけれども、御欠席の委員としまして、公益代表の両角道代委員、労働者代表の冨田珠代委員、世永正伸委員、使用者代表の加藤雄一委員、平岡真一委員と承っております。また、使用者代表の平岡委員の代理といたしまして、三輪高嶺様に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。なお、使用者代表の秋田委員におかれましては、所用のため30分ほど遅れて御出席されると伺っております。

 今日の議題に入る前に、前回当分科会を開催しまして以来、委員、そして事務局に異動がございました。そこで定足数についての御報告とあわせて、事務局のほうから説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○六本調査官 ありがとうございます。

 前回、分科会以降、新しく委員に就任された方を御紹介させていただきます。なお、参考資料として委員名簿をお配りしておりますので、御参照願います。

 公益代表の委員が新たに2名就任されました。

 東京大学大学院法学政治学研究科教授の荒木尚志委員。

○荒木委員 荒木でございます。

○六本調査官 本日は御欠席ですが、慶應義塾大学法科大学院法務研究科教授の両角道代委員。

 労働者代表の委員が新たに4名就任されました。

JAM副書記長の川野英樹委員。

○川野委員 川野です。よろしくお願いいたします。

○六本調査官 情報産業労働組合連合会書記長の柴田謙司委員。

○柴田委員 柴田です。お願いします。

○六本調査官 日本労働組合総連合会総合労働局長の村上陽子委員。

○村上委員 村上です。よろしくお願いいたします。

○六本調査官 本日は御欠席ですが、全日本運輸産業労働組合連合会中央副執行委員長の世永正伸委員。

 使用者代表の委員が新たに2名就任されました。

 本日は御欠席ですが、株式会社アドバネクス代表取締役会長の加藤雄一委員。

 株式会社小田急百貨店人事部労務担当統括マネジャーの早乙女浩美委員。

○早乙女委員 早乙女です。どうぞよろしくお願いいたします。

○六本調査官 次に、定足数について御報告いたします。

 労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

 次に、事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。

 労働基準局長の山越です。

○山越労働基準局長 山越でございます。

○六本調査官 大臣官房審議官(労災・賃金担当)の土屋です。

○土屋審議官(労災・賃金担当) 土屋でございます。よろしくお願いいたします。

○六本調査官 総務課長の美濃です。

○美濃総務課長 美濃です。よろしくお願いいたします。

○六本調査官 監督課長の荒木です。

○荒木監督課長 よろしくお願いいたします。

○六本調査官 大臣官房参事官(賃金担当)の増田です。

○増田参事官 増田です。よろしくお願いいたします。

○六本調査官 労働条件政策課賃金時間室企画官の千谷です。

○千谷企画官 千谷です。よろしくお願いいたします。

○六本調査官 私、労働条件政策課調査官の六本でございます。よろしくお願いいたします。

 ここで、労働基準局長の山越より一言御挨拶申し上げます。

○山越労働基準局長 委員の改選後、初めての会議でございますので、一言だけ御挨拶をさせていただきたいと思います。

 まず、委員の先生方には大変お忙しいところ、この労働条件分科会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございました。

 本日は、久しぶりの労働条件分科会ということになりますので、幾つかの報告事項、労働条件に関することにつきまして報告をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、これから労働条件分科会の所掌に関することにつきまして、報告あるいはお諮りすることも出てくると考えております。その際には御審議をよろしくお願いしたいと思います。

 簡単でございますけれども、御挨拶とさせていただきます。

○岩村分科会長 それでは、議事に入りたいと存じます。お手元の議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。

 本日の議題としては「(1)報告事項」ということになっております。

 まず、事務局から資料1についての報告をいただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

○村山労働条件政策課長 それでは、本日の報告事項の第1、資料1でございます。第5回一億総活躍国民会議及び第6回一億総活躍国民会議における議論の概要、そして、労働条件分科会関係の事項への対応状況等について、20分程度で御説明します。

 まず、この資料の3ページから何枚かは、一億総活躍国民会議についての概要資料です。

 4ページの上のほうの四角に「1.趣旨」で、我が国の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑んで、「新三本の矢」の実現を目的とする「一億総活躍社会」に向けたプランの策定等に係る審議に資するための国民会議であり、2のとおり各界の有識者の方及び閣僚から成っている構成です。

 5ページにありますように、既に6回の会議が開かれており、とりわけ下線を2カ所に付しておりますけれども、2月23日の回で非正規雇用労働者の待遇改善の関係、そして、3月25日に長時間労働是正の関係についての審議がなされております。これらが本分科会関係の議題です。今後、5月中には一億総活躍プランを策定していく方針であると繰り返し総理から意向が表明されており、現在、このような国民会議の議論を踏まえながら政府としても対応を検討中という段階です。

 それぞれの回の概況について、御報告を申し上げます。

 7ページです。

 2月23日に開かれました第5回一億総活躍国民会議に先立ち、1月22日の安倍内閣総理大臣の施政方針演説において、下線が引いてありますように、「本年取りまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」では、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えであります」と方針が示され、その上で、2月23日の国民会議での議題ということに相なったわけです。

 この際の国民会議におきましては、まず、同一労働同一賃金において、欧州諸国の状況など基礎的な情報を共有するという観点から水町東大教授からのプレゼンがなされ、その上で、民間議員や閣僚の意見交換がなされたという運びでした。その際の水町教授のプレゼン資料が8ページ以降です。

 まず、同一労働同一賃金というものが、「職務内容が同一または同等の労働者に対し同一の賃金を支払うべきという考え方」であることが紹介された上で、欧州諸国では「正規・非正規労働者間の処遇格差問題に当たっては、非正規労働者に対し、『合理的な理由のない不利益な取扱いをしてはならない」と定式化されることが多い』ということや、「職務内容が同一であるにもかかわらず賃金を低いものとすることは、合理的な理由がない限り許されない、と解釈される」旨の御説明がありました。

 続いて、9ページ、10ページです。欧州の法制度が具体的にどうなっているのか、EU指令がどうなっていて、EUを代表するフランス、ドイツの法制がどうなっているかということにつき、この資料に基づいて説明がありました。例えば本分科会ととりわけ関係の深い有期契約労働者についてご覧いただきます。

 9ページの左下にありますように、EUの「有期労働契約指令」で「有期契約労働者は、雇用条件について、客観的な理由によって正当化されない限り、有期労働契約または関係であることを理由に、比較可能な常用労働者より不利益に取り扱われてはならない」という共通ルールの上に、例えばドイツにおいては右側にありますように、この指令を受けて2000年に制定された「パートタイム労働・有期労働契約法」において、下線部にございますような内容を含む法律が制定されている等の紹介がなされました。

 そして、10ページの一番下にありますように、パートや派遣についても見た上で、パート、有期、派遣について同じ考え方に立ち、基本的には客観的な理由がない限り、非正規労働者に対し不利益な取扱いをしてはならない。客観的な理由があれば、賃金に差を設けるなどの取扱いも認められているということについて御紹介があったということです。

 では、非正規労働者の賃金等の待遇に差異を設ける場合の客観的な理由が何かということですが、11ページ以降の資料にございますように、当然それらについては個別具体的な事案ごとに客観的な理由の有無ということが判定されているということであり、具体的な裁判例の紹介となっております。

 例えば、11ページの3番ですと、これは基本給の差額請求が認められなかった裁判例ですけれども、同一の職務の労働者の方同士を比較した場合に、キャリアコースの違いによって賃金格差が生じていることについて、同一の条件にあるとは言えないので、同一労働同一賃金原則に違反しないと判断されたという例などが参酌されたということでございます。

13ページ目です。日本での導入実現可能性についてどのような議論があり、それについてどのように考えるかというお話があったということです。

 具体的には、ヨーロッパは職務給、一方で日本は将来に向けたキャリア展開を加味した職能給が一般的なので、日本への同一労働同一賃金原則の導入は難しいという議論はあるということを指摘した上で、しかしながら、欧州でも、労働の質や勤続年数、キャリアコースなどの違いが同原則の例外として考慮に入れられているということを踏まえて、同一労働に対し、常に同一の賃金を支払うことが義務づけられているわけではない旨の御紹介があり、そして、これらの点を考慮に入れれば、日本でも同一労働同一賃金原則の導入は可能と考えられる等の主張がなされたものです。

 一方で「客観的な理由(合理的な理由)」の中身については、最終的には裁判所で判断され、社会的に蓄積・定着していくことが考えられるが、その蓄積・定着には時間がかかるので、一番下にあるように、法律の整備を行うとともに欧州の例などを参考にしつつ、「合理的な理由」の中身について、政府として指針(ガイドライン)を示し、交通整理を行うことが有用ではないかというお話があったということです。

14ページで「4.同一労働同一賃金原則を導入する意義」として、まず、第一の意義のところで、同一または同等の職務内容であれば同一賃金を支払うこと、あるいは合理的理由のない待遇格差を禁止することが原則であることを法律上明確にしてはどうかという御提言があったということで、この中で唯一赤線を私ども事務局で付しておりますが、労働契約法を含め、パートタイム労働法、労働者派遣法等ということで、労働契約法についても言及があったということでございます。

 次の「○」で、この原則と異なる賃金制度等をとる場合、どうして異なる制度をとるのか、その合理的理由について、会社(使用者側)に説明させるということの御提言があったということです。「(=裁判における立証責任の明確化)」ということで、原告、被告が主張、立証を尽くした上で、心証が形成できない場合には、立証責任を使用者側に負わせるという趣旨だと思いますが、そうしたことによって、賃金制度等の納得性・透明性を高めるということの御提言があったと承っております。

 その上で、15ページにありますように、日本の若者、高齢者、女性等の現状に照らせば、この同一労働同一賃金原則による非正規で働かれる方々の処遇の改善ないし、公正な処遇を促していくということが、一億総活躍社会の実現に向けた不可欠な取組の一つであるという御意見の表明があったということです。

 これにつき、既に議事録が公表されておりますが、多くの民間議員の方々から、若者、女性活躍推進を推進する立場、あるいは経済の好循環が必要であるという立場など、様々な立場から支持や賛同ないし理解を示される御意見もあったということです。同時に我が国の雇用慣行への配慮でございますとか、同一労働同一賃金というときの同一労働の定義の明確化、あるいはまた中小企業の負担への配慮等の課題や論点を指摘する御意見もあったと承っております。

 その上で、ページが戻って恐縮ですが、そのような御議論を踏まえた上で、7ページの下の四角ですけれども、会議の最後に総理から発言があり、下線を付している部分のとおり、「我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ、同時に躊躇なく法改正の準備を進めます。あわせて、どのような賃金差が正当でないと認められるかについては、政府としても、早期にガイドラインを制定し、事例を示してまいります。このため、法律家などからなる専門的検討の場を立ち上げ、欧州での法律の運用実態の把握等を進めてまいります。厚生労働省と内閣官房で協力して準備を進めていただきたいと思います」という指示がなされたということです。

 この指示を受け、ページが再々飛んで恐縮ですが、16ページです。

 同一労働同一賃金の実現に向けました、先ほど申し上げた議論と総理指示を踏まえ、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 開催要綱」の「1.開催趣旨」にあるとおり、その実現に向けた具体的方策について検討するため、学識経験者による検討会が立ち上げられたということでございます。

 そして、「2.検討事項」のところで「(1)EU諸国における制度の現状と運用状況(裁判例等)」を初めとして、そこの(1)~(4)にあるような課題についての検討に現在厚生労働省と内閣官房が連携しながら着手しているということでございます。

 なお、関係の庶務は、厚生労働省の中では職業安定局の派遣・有期労働対策部の企画課が取り仕切っておりますけれども、私ども労働基準局といたしましても必要な連携に努めて、一体となって対応しているということです。

 参集されているメンバーの先生方は17ページの名簿のとおりであり、一番下にありますように第1回の検討会を3月23日に開催し、日本の現行法に関する認識の共有化、そして、第2回の検討会を4月13日に開催して、ヨーロッパの現行法や賃金決定の実情等について、事実関係の認識の共有化を現在図っているということですが、今後、論点をよく整理しつつ、所期の検討を進めていくことになるのではないかと考えております。

 以上が、第5回一億総活躍国民会議の関係です。

 続きまして、「3.第6回一億総活躍国民会議の議論の概要とその後の対応について」ということで、長時間労働対策の関係です。

 この国民会議の議論の御紹介に入ります前に、既に本分科会には逐次、状況を御報告しながら進めてきたところですが、長時間労働削減対策に関しましては、塩崎大臣を本部長とする長時間労働削減推進本部のもとで逐次対応を強化してきているところです。

19ページにもありますように、月100時間を超える残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底ですとか、次の「2.監督指導・捜査体制の強化」として、東京及び大阪の労働局に「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)を設置して、複数の支店において労働者に健康被害のおそれがあるような事案への企業全体への対応等についての集中的な対応等に努めてきているところです。

 その上で、20ページですが、第6回一億総活躍国民会議において長時間労働の是正について、大きな議題として取り上げられたところです。この会はまだ公式な議事録がアップされておりませんので、私どもで責任をもって紹介できるのは政府側の発言ということになります。

 まず、塩崎厚生労働大臣から、長時間労働是正については、本分科会において慎重審議の上、建議をお取りまとめいただき、その後、諮問、答申を経て、現在国会に提出しております労働基準法改正法案を成立させて、割増賃金の引上げや労働時間の客観的な把握、あるいは企業の自主的な取組の促進に取り組んでまいりたい旨、説明した後に、執行面でもやれることはやるという視点で、先ほど見ていただいた、現在の「月100時間超」の残業がある全ての事業場としている重点監督の対象のさらなる拡大、あるいは現在の東京・大阪の2カ所のかとくの監督・捜査体制について、さらに強化するなどの執行強化策を検討していく方針が示されたところです。

 本件に関しましては、多くの民間議員の皆様から様々な御発言があったと承っており、一億総活躍担当大臣の終了後の記者会見で紹介された御意見の中でも、女性活躍推進や生産性向上などの観点から36協定に延長時間の上限を設けるべきであるという御意見ですとか、あるいは厚労大臣からあった執行強化策や労働基準法改正法案の早期成立とともに、時間外労働規制の在り方について検討すべきであるという御意見でありますとか、むしろ、経営者の意識改革、積極的に長時間労働削減に取り組む企業へのインセンティブの付与等によって進めるべきであるという御意見など、さまざまな御意見が出たと承っております。

 その上で、会議の最後に総理から取りまとめ及び指示がなされました。それが20ページの下の四角でして、赤い線を引いておりますように、「まず、法規制の執行を早急に強化します」という方針が示されたということです。具体的にはいわゆる36協定において、健康確保に望ましくない長い労働時間を設定した事業者に対しては指導強化を図る。それから、関係省庁が連携して下請などの取引条件にも踏み込んで、長時間労働を是正する仕組みをつくる。これらの執行強化策について、厚生労働大臣においては経産大臣、加藤大臣の協力のもと、具体策を早急に取りまとめ、直ちに実行に移すように指示が出たということです。

 また、時間外労働規制の在り方については、先ほど御紹介申し上げましたが、多様な議論があったということです。これにつきましては、「現在提出中の労働基準法改正法案に加えて、36協定における時間外労働規制の在り方について再検討を行うこととします」という方針が示されたということです。

 これらのうち、まず、厚生労働大臣においては具体策を早急に取りまとめ、直ちに実行に移す旨の総理指示に対して、対応した状況が21ページ以降でございます。

 具体的には、4月1日に大臣をトップとする「長時間労働削減推進本部」を開催して、21ページの総括的なペーパーにございますような法規制の執行強化策を打ち出したということです。

 具体的に(1)のところですが、最初の「○」にございますように、月残業100時間超が疑われる全ての事業場を対象にしている現在の重点監督対象を月80時間超の事業場も対象にする。推計でおよそ年間約2万事業場を対象にするという方針です。

 2点目ですが、「監督指導・捜査体制の強化・全国展開」ということで、現状は先ほど申し上げたとおりですが、対応として、本省に対策班を設け、広域捜査の指導調整に当たりますとともに、さらに47全ての労働局に長時間労働を指導するための担当官を配置いたしまして、問題業種に係る重点監督の総括ですとか、あるいは先ほど申し上げた月80時間超の残業のある事業場に対する全数監督の総括ですとか、また、困難な司法処理事案の管理等につきまして、しっかりとした体制をとっていくということです。

 「(2)取引の在り方や業界慣行に踏み込んだ取組等」についても、関係省庁とも連携を深めながら対応していくという方針などが示されたところです。

22ページ、23ページは先ほど申し上げた(1)の部分のそれぞれの個票ということでございます。

24ページが先ほど申し上げた「業界団体や関係者、関係省庁と連携した取組の推進1」でして、そのうちトラック業界に関しましては、既に昨年度から中央及び全都道府県に労使団体の皆様、あるいは関係する有識者の皆さんでありますとか、個別の荷主企業の皆様方の御協力のもとに協議会を設置して、特に長時間労働が著しい、また、過重労働問題等が指摘されているトラックドライバーの方々の長時間労働の実態を調査の上で、改善の好事例を共有する等の取組を進めているところです。今年度は、全都道府県で荷主と事業者が一体となったパイロット事業を実施して、好事例を一層効果的に地域の実情も鑑みながら横展開してまいりたいと考えております。

 さらに、2番のところです。

 これは、今年度新規に打ち出す施策ですが、重層下請構造のもとで、急な仕様の変更や、労働コスト削減のための丸投げ等が長時間労働の背景にあるIT業界のシステムエンジニア等の労働者の方々について、業界団体や業所管省等の関係者が参画する検討の場を設置して、長時間労働の改善方策を集中的に検討してまいりたいということです。

 さらに3番のところで、平成26年改正医療法に基づいて取り組んでおります医療分野の勤務環境改善についても、引き続きしっかり取り組んでまいりたいということです。

 最後に25ページでございますが、「業界団体や関係者、関係省庁と連携した取組の推進2」です。

 現在、賃金不払いでありますとか、最低賃金法違反の背景に下請代金支払遅延防止法の違反行為が疑われる場合、厚生労働省、端緒をつかむのは当然個々の労働基準監督官ということになりますが、厚生労働省から中小企業庁、公正取引委員会に通報する仕組みが運用されております。この仕組みを拡充することにより、長時間労働対策の強化にも活用する旨の方針をあわせて打ち出したということです。

 具体的な拡充の内容は下の四角ですが、まず「拡充1:通報契機となる労働基準関係法令の違反行為の追加」ということです。そこにありますように、例えば緊急に協議なく納期を大幅に繰り上げることによって、下請の事業者で、労使で協定した時間を超えて長時間労働を余儀なくされるでありますとか、あるいは慣行的には、これまで週1回配送することが定着していたものを、協議なく、突然毎日配送するように通告するといった、いわゆる親事業者の買いたたき行為の存在が疑われる場合、当然、労働基準関係法令違反については労働基準監督機関において、しっかりと是正勧告、指導等を行って対応していくとともに、その背景にある下請法4条の違反行為が疑われるような行為について、下請事業者の意向を確認した上で通報するという拡充を行う、というのが1の内容です。

 それから、2のところです。「通報対象となる違反行為自体の追加」ということです。現在は、先ほど来申し上げていますように、下請代金支払遅延防止法の違反行為に限って運用しているわけですけれども、例えば荷主が物品の運送、または保管を事業者に委託する際の不公正な取引方法でとして、物流特殊指定という行為類型が独占禁止法の中にあります。そうした違反行為の存在が疑われる場合についても通報対象に加えることによって、荷主と運送事業者間の取引の公正化の推進とあわせて、運送事業者における労働条件の確保ということにしっかり取り組んでまいりたい。このように考えているところです。

 雑駁な説明でございますが、資料1は以上です。

○岩村分科会長 大変ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御報告につきまして、御意見、御質問をいただきたいと思いますが、内容が大きく同一労働同一賃金についてのものと長時間労働規制に関するものとに分かれていたと思いますので、議事を整理させていただきたいと思います。したがって、最初に同一労働同一賃金についての今の報告について、御意見あるいは御質問がありましたらお出しをいただきたいと思います。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 まず、同一労働同一賃金を実現する真の目的は、非正規労働者の処遇改善をするという点にあることを関係者の皆様と共有できればと思っております。経団連といたしましても、以前から非正規労働者の正規化、無期化、時給単価の引上げ、賞与の増額、さらには教育訓練ですとか福利厚生の拡充といったことの呼びかけを広く行っているところでございます。

 約2,000万人いると言われています非正規労働者の中でも、特に問題があると思いますのが不本意非正規労働者の方が300万人いらっしゃるということです。官民、労使が協力して、この層を減らしていくということが重要ではないかと思っております。同一労働同一賃金の導入につきましては、日本の雇用慣行に十分留意した形でしっかり議論をしていくことが何より重要だと考えております。

 欧州の場合、職種別にこのレベルの仕事であれば、幾ら以上というような企業横断的に適用される職務給が普及している点が日本と大きな違いではないかと思っております。また、採用に関しましても、ポストがあいたときにその職種に見合った有資格者、あるいは経験者を採用するというのが欧州では一般的だと聞いています。

 他方、我が国の雇用慣行としては新卒者が一括採用されて、これが長期雇用慣行と相まって、少なくとも一人前になるまではジョブローテーションによる能力開発を行い、多くの若い方がキャリアアップをする機会がかなり広いと考えます。また、未経験者を採用するという仕組みが我が国の低い若年失業率にもつながっております。そこで、我が国企業の競争力といった良さを損なわないような形で、単に欧州の模倣ではない日本型の同一労働同一賃金の在り方を、時間をかけて、しっかり議論していくことが必要ではないかと思っている次第でございます。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

 村上委員。

○村上委員 ありがとうございます。

 今、鈴木委員がおっしゃったように、同一労働同一賃金ということを安倍総理が指示をされ、法改正の準備を躊躇なく進めるというお話があったということでありますが、私どもとしても、その目的というのは非正規労働者の処遇の改善にあると考えております。私どももかねてより、雇用形態にかかわらない均等待遇原則の法制化を強く求め続けておりますので、それについてはぜひ実現していきたいとは考えております。

 ただ、「同一労働同一賃金」という言葉が少し一人歩きをしている感がございまして、ある瞬間に同じ仕事をしていれば同じ賃金なのかというイメージが強いかと思うのですが、必ずしもそういうことではなくて、同じような仕事をしていれば同じような処遇で、賃金に限らず福利厚生だとか休暇の問題、安全衛生など様々な処遇についての均等、均衡を図っていくのは、日本型の同一労働同一賃金の在り方なのではないかと私どもとしては捉えております。

 きょうはその中身を議論する場ではないと思っておりますが、今後、非正規労働者の処遇を改善していくという公労使で一致した考え方があれば、ぜひ労働政策審議会での議論を早期にスタートさせていただき、現場で適応できるような形での法制化を進めていくべきだと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。

 荒木委員、どうぞ。

○荒木委員 ただいま使用者側、労働者側から同一労働同一賃金についてお話がございました。この10年ほどで、非正規雇用問題は大きな労働政策の課題となりまして、とりわけ正規、非正規の処遇格差を是正すべきだということのために、2007年にパート法改正があり、2012年に労基法改正があり、2014年に再度のパート法の改正があったわけでありまして、非正規の方の処遇改善に向けた政策は、ある意味ではかなり進展をしてきたと思います。

 今回の非正規雇用問題、とりわけ処遇改善に向けて、さらにこの政策を進めようという方向性が示せたこと自体は非常に評価すべきだと考えております。ただ、同一労働同一賃金として意味するものが何なのかということについては、論者によって多様な含意があり、イメージがあるように思っております。この言葉の意味するところによっては、単に非正規労働者の処遇改善にはとどまらない、労働と賃金について法がどういう介入をするのか、賃金決定についての労使自治とか団体交渉制度、さらには内部労働市場と外部労働市場をどう接合するのかという契約自治の問題、労使関係システム、雇用システム、これらの問題全体にかかわる大きな課題も含んでいるように思えるわけでありまして、これらについてよく考えていく必要があるのではないかと感じました。

 既に指摘もありましたけれども、二極化した正規、非正規の格差問題については、非正規の状態のまま処遇を改善するということも非常に重要な施策でありますけれども、同時に不本意なまま非正規の職についた方については、正規化を促すということも同様に重要な施策であろうと感じます。

 現在、これまでの雇用政策は多様な正社員の活用とか有期契約の無期化など、雇用モデルを多様化させる、多様化を促進するということで正規、非正規の壁をなくして、二極化を解消しようという施策を展開している最中でございます。確かにパートタイムの場合はパートの選好が強いですから、パートタイマーの正規化、すなわちフルタイム化というものは限界があるでしょうけれども、有期とか派遣の場合には無期化、直用化というものが処遇改善にはより実効的だということも考えられるわけであります。非正規といいましても、このように多様な労働者がいるわけでありますから、その処遇改善の施策というものにも恐らく多様なアプローチがあると考えられます。

 そうしたことも視野に入れながら、いたずらに紛争を惹起させるということを回避しながら、実効的な政策を展開するということが求められていると感じるところでありますので、こういった問題については労使当事者の御意見をよく聞きながら、かつ、労働市場に対してどういう影響があるのかということも勘案しながら検討していくべきではないかという印象を抱いた次第でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 ただいま公労使それぞれから御意見があったところでございますけれども、ほかにございますでしょうか。この点についてはよろしいでしょうか。

 それでは、次にもう一つ、先ほど事務局からの報告にありました長時間労働の対策に関して、御意見あるいは御質問がありましたらお願いしたいと思います。

 神田委員、どうぞ。

○神田委員 ありがとうございます。

 今ほど、21ページの中に「法規制の執行強化」ということで御説明をいただきました。労働基準監督署によります監督指導の強化、さらには関係省庁と連携した取組の推進ということについてはぜひ積極的に取り組んでいただきたい。重点監督対象を拡大するということで、月残業時間の80時間超への見直しの関係、それから「かとく」の設置については、非常に期待をしておりますので、この点を改めてお願いしておきたいと思います。

 私どもの組織の中に建設業がおりますところ、特に2020年のオリンピックの関係で、建設現場での長時間労働の関係はいろいろなところで声を聞くものでありますから、長時間労働の是正という点、その上での安全衛生といったところの取扱いを含め、取組の指導強化をお願いしたいと思っています。

 また、今般、非常に大変な震災が起こりましたけれども、こうした震災時の対応、さらにはインフラの老朽化によります建設関係の課題というのは以前もお話ししたと思います。さらに、仕事においては人の数と仕事の量、時間といった要因がありますが、特に長時間労働抑制に関してはそれらの要因に加え、いかに人材を育成するかという点と、優秀な人材を確保するかという点では労働市場圏の整備も必要かと思います。ぜひ政府のそうしたところに対しますサポートもあわせてお願いをしておきたいということで、御意見を申し上げたいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでございましょうか。

 八野委員、どうぞ。

○八野委員 ありがとうございます。

20ページに、第6回一億総活躍国民会議での安倍総理大臣の発言ということで、最後の2行のところに、「現在提出中の労働基準法改正法案に加えて、36協定における時間外労働規制の在り方について再検討を行うこととします」と記載されております。なぜこういう発言があったのかということについては、労働側としては違和感を禁じ得ないところでございます。それはこの労働条件分科会にいらっしゃるメンバーの方たちの中で、多くの方たちが約1年半にわたって労働基準法改正法案を議論してまいりました。労働側としても反対意見を付しましたとおり、我々が考えている、今、必要とされる実効的な長時間労働抑制策というものの法規制が十分盛り込まれていない反面、長時間労働を生み出すと考えられる規制緩和が盛り込まれたという認識をしております。過重労働の実態であるとか、または過労死の現状であるとか、そういう長時間労働の問題、または今後考えていかなくてはいけない女性の活躍推進ということを考えていきますと、時間外労働に係る上限の規制や勤務間インターバル休息時間の導入というものを検討していくべきではないかと考えております。

 現在、国会に提出されている法案も一から議論すべきではないかという声も労働側の中では多くあるという認識のもとで、長時間労働、過重労働のない日本の労働社会をつくるという観点から、再検討をしっかりと行っていくべきだということを意見として述べさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。ほかはいかがでございましょう。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 ただいま八野委員からも引用されました、安倍総理の御発言の内容について確認をさせていただきます。「現在提出中の労働基準法改正法案に加えて」という言葉の意味について、事務局にお尋ねしたいと思います。

○岩村分科会長 村山政策課長、お願いします。

○村山労働条件政策課長 御質問の「労働基準法改正法案に加えて」の意味は、「別なものであるから『加える』」という趣旨だと考えております。これは会議終了後の一億総活躍担当大臣の記者会見等におきましても、現在提出している法案を政府としてどうするのかということについては、政府として閣議決定して、立法府に審議をお願いしているものなので、その早期成立をお願いしていきたいという姿勢で、一貫して答弁されているということです。

 一方で、先ほど八野委員からも御指摘がありましたように、例えば長時間労働規制の中でも、絶対上限規制のようなものをどういうふうにするのかということは、多くの公労使の委員にまだ記憶にとどめていただいていると思いますが、建議の中でも引き続きの検討課題ということになって、結論が出ていない問題としてこの場で共有されている課題です。これまでのところでは結論が出ていない問題について、既に結論が出ている問題に加えて再検討を行うこととしますという発言が総理からなされ、その具体の方策については、これから一億総活躍のプランの中でいろいろ検討されていくものと思いますが、現在はそうした状況になっているという理解である、ということで御回答を申し上げたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございました。

 御案内のとおり、昨年2月に22回にわたる議論の末に上限規制ということについては結論に至りませんでした。その過程において、私どもは何度も主張させていただきましたけれども、人手不足ですとか商慣行、業界の慣行などから、自社の取組みだけでは長時間労働の是正がなかなか難しいという実態もあり、今後、中小企業への支援もしていくということの中で、使用者側としては割増率の中小企業の適用ですとか、年休の取得を年5日以上は使用者の責任でとってもらうということを義務化するような形で織り込んだり、あるいは労側の意見、意向も踏まえながら、管理監督者を含む全ての労働者に対する健康確保のための時間管理も義務化するという是正策をぎりぎり判断させていただいたところであります。

 現在、先ほども事務局から御紹介をいただきましたトラック運転手ほかの分野で、生産性向上とセットで長時間労働の是正の取り組みをされている最中であります。取組はこれからだという段階だと私は認識をしております。36協定における時間外労働規制のあり方の再検討ということについては、実態を踏まえて慎重な議論が必要ではないかと思っております。現在、国会に提出をしております労働基準法改正案については早期に成立をお願いしたいと思っております。

 私からは以上でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでございましょうか。

 柴田委員、どうぞ。

○柴田委員 ありがとうございます。

 これは、要望ということで申し上げておきたいと思っておりますが、24ページの「業界団体や関係者、関係省庁と連携した取組の推進」のIT業界のところでございます。ここに記載のとおり、IT業界では重層下請構造というのが根づいておりまして、この根づいたものをどう取っ払うかというのは根本的な問題だと思っております。また、こういうソフトウエア関係のものに対して、発注する側の考え方の問題、当然、企業なり、官公庁、自治体、様々ございますけれども、特にこういうソフトウエアというのは見えないものでございますので、なかなかそういったような時間外の多さというのはあまり認識がされず、解消されていない実態があります。

 情報労連としても、毎年こういった調査をしておりまして、例えば下請のほうが元請を上回るような残業があるという実態も報告をされております。これからは IoT なども より 進展していきます一方で、ソフトウエア人材が足りないということもございますので、ぜひこの取り組みを推進していただきたいということと、労働側からの意見を何がしかの形で反映させていただければと思っておりますのでよろしくお願いします。

 以上です。

○岩村 分科 会長 ありがとうございました。

 小林委員、どうぞ。

○小林委員 私も要望を言いたいのですけれども、今の関係でいけばトラック業界で、先ほど鈴木委員からも御説明がありましたけれども、これは改善に向けた中央の協議会、地方の協議会で今検討を行っている最中でございます。それから、IT業界についても平成28年に取り組む。ほかに挙げればサービス業の関係でも、中小企業のサービス業を中心に生産性の向上に向けた取組を行っています。さらに言うのであれば、医療の関係も24ページの下に書いてありますけれども、それぞれの取組を行っていくというのが今後の取組の状況でございます。

 これらの過重労働、長時間労働になっている根源というのは、一言で言えば人手不足というのがどの業界にも共通する問題だと思うのです。ですから、監督行政を強化するのも大切なことだと思いますけれども、人手不足対策という部分で今4つの大きな業界を取り上げられましたけれども、それぞれでの人手不足対策へのいろいろな支援を厚労省に今後お考えいただければというお願いでございます。

 去年、100時間超の事務所に監督指導を行っていただきました。今後は80時間超の事業所に監督指導ということですけれども、監督官庁も同じ人手不足の状況にあるのではないかと思います。監督官は数少ない方々です。三千数百名だと記憶していますけれども、監督指導を強化するのも非常に大切なことです。監督行政の立場からも多分人手不足という側面があると思いますので、その充実、強化というのもお願いしたいと思います。

 以上です。

○岩村 分科 会長 貴重な御意見、ありがとうございます。

 そのほか、いかがでございましょうか。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員 ありがとうございます。

 労働基準法改正法案の議論の経過というのは、今、皆様方がおっしゃったとおりだと思います。鈴木委員がおっしゃったように、私どもも22回の議論を重ねてきたという経過自体は同じ認識をしておりますし、その議論過程も尊重していかなくてはならないということもそのとおりだと思います。ただ、国民や働く人たちのなかには、多分それだけではとどまらない問題もあるのではないかということも考えています。

 所定外労働の話ばかりをしているのですが、所定外の労働の話だけではなくて、「労働時間を短くしていくため、過重労働をなくしていくためには、所定内労働の中でいかに仕事を終わらせていくのか」ということもあわせて考えていかなくてはならないのではないでしょうか。1日は誰に対しても24時間しかありませんので、1日8時間労働という規制があるわけで、国のレベルでも、また、個別の労使のレベルでも、その原点に戻ったような議論というものもどんどんもっと進めていく必要があると思っております。そういった意味で36協定における時間外労働規制のあり方の再検討というのも、その中のメニューの一つとして掲げられたものなのかと認識しております。今後、どのような議論になっていくのかということで定かではない部分がありますけれども、私どもとしては所定外労働規制だけではなくて、所定内労働の働き方、働かせ方の問題についても、議論をしていきたいと思っております。

 以上です。

○岩村 分科 会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。

 この問題についてはこのあたりでよろしいでしょうか、ありがとうございます。

 それでは、資料1についての議論はここまでということにしまして、次に報告事項の2番目としまして資料2がございます。これについてもまず、事務局から御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○増田参事官 それでは、報告事項の2つ目でございますけれども、「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」報告書につきまして、御報告をさせていただきます。

 資料は3つ、資料No.2-1から2-3まで用意させていただいておりますが、まず、資料No.2-1をご覧いただければと思います。こちらは報告書の概要になります。

 めくっていただきまして、「検討会設置の背景」でございますが、昨年6月に閣議決定されました「日本再興戦略」改訂2015におきまして、女性の活躍の更なる促進に向けまして、税制、社会保障制度の検討に加えまして、配偶者手当について、「官の見直しの検討とあわせて、労使に対しその在り方の検討を促す」とされたことを受けまして、今般、労働基準局長のもと、学識経験者によります「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」を昨年12月に設置いたしまして、検討いただいてきたところでございます。

 この検討会の目的については大きく2つございまして、就業調整につながる配偶者手当のあり方についての考え方を明らかにすること、配偶者手当の見直しを実施した企業事例、円滑な見直しに当たっての留意点(労働契約法、判例等のポイント、円滑な見直しのためのノウハウ)を示すことでございます。

 下に参集者の御紹介がございますけれども、座長の中央大学の阿部先生を初めといたしまして、経済、労働法などの7人の有識者の皆様に御検討をいただきました。分科会委員でもいらっしゃいます守島先生からは、特に人事管理上の観点からいろいろ御意見を賜りましたし、山川先生、神吉先生におかれましては、労働条件の変更に係る労働法令、判例の点から御検討をいただきました。こういう形で4月11日に報告書が取りまとめられております。

 その報告書のポイントは、次のページでございますが、大きく3点ございます。1つ目は<配偶者手当の在り方>でございます。

  配偶者手当は、家事・育児に専念する妻と仕事に専念する夫といった夫婦間の性別役割分業が一般的であった高度経済成長期に日本的雇用慣行と相まって定着してきた制度であるが、女性の就業が進むなど社会の実情が大きく変化している中、税制・社会保障制度とともに、就業調整の要因となっている。

  今後労働力人口が減少していくことが予想され、働く意欲のあるすべての人がその能力を十分に発揮できる社会の形成が必要となっている中、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる配偶者手当(配偶者の収入要件がある配偶者手当)については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれる。

2つ目といたしまして、<労使による企業の実情を踏まえた検討>ということです。

  労使においては、「経済の好循環の継続に向けた政労使の取組(平成261216日合意)」に基づき、個々の企業の実情(共働き、単身者の増加や生涯未婚率の上昇等企業内の従業員構成の変化や企業を取り巻く環境の変化等)も踏まえて、真摯な話合いを進めることが期待される。

3つ目といたしまして、<配偶者手当の見直しに当たっての留意点>でございます。

  配偶者手当を含めた賃金制度の円滑な見直しに当たっては、労働契約法、判例等に加え、企業事例等を踏まえ、以下に留意する必要がある。

  1 ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組 2 労使の丁寧な話合い・合意

  3 賃金原資総額の維持 4 必要な経過措置 5 決定後の新制度についての丁寧な説明

となっております。

 次に、資料No.2-2が報告書本体になります。主な内容を御説明申し上げたいと思います。2枚ほどめくっていただきまして、1ページの「はじめに」のところをご覧いただければと思います。

 こちらにつきましては、先ほど申し上げました検討の背景などを記載しておりますけれども、3つ目の段落をご覧いただきますと、ここで言う配偶者手当ということで、配偶者手当の解説をさせていただいております。「民間企業において配偶者がいる従業員に対して支給される手当のことを言う。実際の手当の名称は、企業によって「家族手当」、「扶養手当」等様々である」という形で定義をさせていただいております。

 もう一つ「就業調整」という言葉につきましても、「はじめに」の最後の「なお」書きでございますけれども、「「就業調整」とは、税制、社会保障制度、配偶者の勤務先で支給される「配偶者手当」等を意識し、その年収を一定額以下に抑えるために就労時間を調整することをいうものとする」という形で定義をさせていただいております。

 以下、「1.女性の雇用をめぐる状況」について内容を簡単に御紹介させていただきます。2ページをご覧いただきまして、「図1 女性の年齢階級別就業率の推移」ということで、改善はされておりますけれども、やはりM字カーブが残っている状況でございます。

 3ページに参りますと、就業率と潜在的労働力率の差ということで、女性の就業希望者数が301万人ぐらい想定されているということ、その下の「共働き世帯の推移」では専業主婦世帯を逆転いたしまして、共働き世帯がこのような形でふえているということを記載させていただいております。

 4ページをご覧いただきまして、こちらは短時間労働者数の推移のグラフになっておりますけれども、緑色の棒グラフが女性の短時間労働者数になりますが、昭和50年には198万人でございましたけれども、現在は1,100万人ほどということで非常に増加をしているということでございます。

 さらに、5ページ目をご覧いただければと思います。

 こちらは、2002年から2015年までの年収別の非正規の女性の労働者の推移になりますけれども、上から2つ目の棒グラフでございますが、年収が100万円台前半で就業されている方が非常に大きく伸びているということの紹介をさせていただいております。

 6ページ目でございますが、こちらも女性の就業にかかわりの深い「図7 男女別家事関連時間の推移」ということで御紹介をさせていただいております。男性の関連時間は伸びておりますが、やはり非常に女性の方に負担がかかっているという状況の紹介もさせていただいているところでございます。

 8ページをご覧いただければと思います。

 先ほど、御紹介申し上げました「(2)「就業調整」の状況」という項目でございますが、一番下の表2をご覧いただきたいと思います。「平成23年パートタイム労働者総合実態調査」によりますと、表の真ん中にございますが、有配偶女性パートのうち就業調整をしている方が21.0%ということになっております。

 その理由を紹介したのが9ページの表3になりますので、そちらをご覧いただければと思います。こちらで下から2番目の欄をご覧いただければと思いますけれども、就業調整をする理由の1位は一番左にございます「自分の所得税の非課税限度額(103万円)を超えると税金を支払わなければならないから」という方が63.0%、2位は左から4番目でございますけれども、「一定額(130万円)を超えると配偶者の健康保険、厚生年金等の被扶養者からはずれ、自分で加入しなければならなくなるから」という方が49.3%、それに加えましてその左側でございますが、「一定額を超えると配偶者の会社の配偶者手当がもらえなくなるから」ということを理由として挙げる方も20.6%になっているところでございます。

 その下の丸2でございますが、こちらはパートタイム労働者を多く雇用されている業界に対するヒアリングということで、日本チェーンストア協会、日本百貨店協会の皆さんにお話を聞いた内容をまとめているところでございます。

 これらを踏まえまして、就業調整の影響ということでまとめさせていただいていますので、10ページの丸3のほうをご覧いただければと思います。

 こちらについて紹介させていただきますと、「就業調整」が主に年末に行われることから、パートを多く雇用する企業では、繁忙期である年末の人材確保に苦慮されていること、「就業調整」が行われる結果、正社員など他の労働者の負担が増すなどの影響があること、「就業調整」が行われることを防ぐために時間当たり賃金が調整され、パート全体の賃金相場の上昇に抑制的に機能する可能性が指摘されていること、さらに、マクロ経済的に見ますと「就業調整」が行われるということは、パート労働者の人的資源を十分に活用できていないということでありまして、労働力人口が減少することが見込まれる日本社会においては看過できない問題ではないかということ。以上を踏まえますと、「就業調整」を生じさせる要因となっている制度については、女性がその持てる能力を十分に発揮できるようにする方向での見直しが求められるということでございます。

 その下にございますけれども、調査結果から見ますと「就業調整」の主たる要因は、税制、社会保障制度となっておりますけれども、「配偶者手当」も一定の影響を与えているということから、税制、社会保障制度とあわせて見直しを進めることが求められるとされているところでございます。

 「2.「配偶者手当」の背景・現状」についてまとめられております。

 「(1)「配偶者手当」について」でございますけれども、「配偶者手当」は賃金として支給されておりまして、賃金などの労働条件については労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものとされているということ、「配偶者手当」を含めた家族手当は、家族構成等に応じて支給することによりまして、従業員の生活費への配慮を効果的に行うための手当として支給されてきたこと、そして、「日本型雇用システム」のもとで「男性世帯主が配偶者を含めた家族を扶養する」という社会状況に対応した形で普及してきたものであることなどがここで記載をされております。

11ページをご覧いただけますでしょうか。今のようなことにつきまして、日本で「配偶者手当」が定着した歴史的経緯について(2)で記載をされております

 簡単に御紹介いたしますと、家族手当が多くの企業において採用されたきっかけといたしましては、昭和14年の賃金臨時措置令というものがあったということ。戦後のインフレ期を経まして、高度経済成長期にはいわゆる「日本的雇用システム」が構築されまして、正規雇用者として長期雇用される男性世帯主を中心に支給される家族手当が定着することとなったということ。このように日本において家族手当が普及・定着したことについては労使双方のニーズに合致した結果であり、日本の経済成長や労働者の生活の安定に貢献してきたものと考えられること。しかしながら、平成に入りまして、バブル経済崩壊、経済のグローバル化の進展等を受けまして、いわゆる成果主義賃金が広がったこととあわせまして、家族手当の普及率が平成11年の90.3%から平成27年には76.5%まで低下しているということを紹介させていただいております。

12ページをご覧いただければと思います。「(3)家族手当の支給状況」についてでございますが、真ん中の表をご覧いただきたいと思います。

 人事院の調査でございますけれども、家族手当制度がある事業所は一番左にございますように76.5%となっておりまして、そのうち配偶者に手当を支給する事業所は、その右の90.3%ということで、全体の7割ぐらいということになっております。

 配偶者に手当を支給する事業所のうち、配偶者の収入制限がある事業所については84.9%となっておりまして、その内訳を見ますと103万円が68.8%と一番多く、その次が130万円で25.8%という数字になっております。一方、その右にございますが、収入制限がないという事業所も15.1%ございまして、その下の<参考>の表を見ていただきますと、一番右で50人以上100人未満というところについては29.0%で収入制限がないということで、事業所規模が小さいほど収入制限がない割合が高いということになっております。配偶者の就業調整の要因となるのは、このような収入制限がある制度ではないかということで検討をされております。

13ページをご覧いただけますでしょうか。「(4)従業員構成・家族構成の変化」ということでございまして、配偶者手当が定着した当時からの変化について記載をしております。

14ページからグラフなどを紹介させていただいておりますので、そちらの御紹介をさせていただきます。

 まず、上の「図11 年齢別未婚率の推移(男性)」のグラフでございます。上のグラフが20代後半で、下のグラフが30代後半でございますが、30代後半で2010年に35.6%が未婚ということでございます。また、下は生涯未婚率の推移でございますけれども、今、男性は20.1%、女性が10.6%という状況となっております。

15ページをご覧いただけますでしょうか。

 こちらは、主な支給対象と想定されておりました、男性正規雇用者の割合についての変化でございます。昭和50年を見ていただきますと、男性正規雇用者は64.2%ということで3人に2人という割合でございますけれども、平成22年には42.3%ということで4割強の割合となっております。この中で既婚の方を見たのが下の円グラフでございますが、既婚の方は、平成22年で30.3%が男性労働者ということとなっております。

 その下の図14でございますが、こちらは世帯の変化でございますが、単独世帯、夫婦のみ世帯、一番右側のひとり親と未婚の子の世帯が増加しておりますけれども、その間の夫婦と未婚の子世帯については減少している状況がございます。

 そういうことを踏まえまして、16ページに配偶者手当のあり方についての検討結果が述べられておりますが、「(1)配偶者の働き方に中立的な制度への見直し」ということがございまして、ここを見ていただきますと女性の就業率が上昇するなど社会の実情が大きく変化している中で、「配偶者手当」は税制、社会保障制度とともに女性パート労働者の「就業調整」を生じさせる要因となり、女性がその持てる能力を十分発揮できない状況を生じさせていると考えられる。また、他の労働者の負担の影響などが指摘されている。

 日本では、今後、生産年齢人口が減少し、出生数の減少による若年労働力の減少や、高齢者の引退の増加によって、労働力人口は高齢化しながら減少していくことが予想されている。このため、若者、女性、高齢者、障害者など働く意欲のある全ての人がその能力を十分に発揮できる社会を形成することが重要となっており、働くことに対して中立的ではない制度については中立的にするなど、誰もが働きやすい制度となる方向へ見直すことが求められるということでございます。こういう観点から、配偶者の収入要件があります「配偶者手当」につきましては、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれるとされております。

 また、その下でございますが、日本商工会議所が出された「女性の働きたい意志を尊重した税・社会保険制度に関する提言」の内容もこちらで紹介をさせていただいているところでございます。

 「(2)従業員ニーズや企業を取り巻く環境の変化等企業の実情を踏まえた検討」といたしまして、当然のことではございますが、賃金制度は企業において労使協議の上、決定されるものでありまして、従業員ニーズや企業を取り巻く環境の変化に応じて、見直しが行われるものであるということを記載させていただいております。

17ページに参りまして、先ほど御紹介させていただいたように、従業員構成や家族構成が変化していることからすると、従業員ニーズも変わっている可能性が高いのではないかということと、また、企業を取り巻く環境につきましても、先ほどの女性の就業率の上昇のほか、グローバル経済化、ICTの発展、少子高齢化、雇用就労形態の多様化など大きく変化している中でございまして、そのような中では多様な人材の能力を最大限発揮することを可能とし、従業員のモチベーションを高めるような賃金制度にしていくことが求められる状況にあるのではないかという指摘がされております。

 これを踏まえまして、(3)といたしまして労使においては、このような従業員ニーズや環境変化などの個々の企業の実情を踏まえつつ、政労使合意に基づき、配偶者の収入要件がある「配偶者手当」について配偶者の働き方に中立的な制度となるよう、真摯な話し合いを進めることが期待されるという形で結ばれているものでございます。

 4番につきましては企業事例の紹介でございますが、見直しのためには既に見直しを実施した企業の事例を参考にすることが有益ではないかということで、2000年以降、賃金制度の見直しの中で配偶者手当の見直しが行われた事例でございますとか、また、中小企業の賃金制度相談を担当されております東京商工会議所の専門相談員の方からヒアリングを実施いたしまして、円滑な賃金制度の特徴がまとめられています。

 「(1)制度見直しの背景」でございますけれども、グローバル経済の進展等を踏まえて、人事処遇制度全体の中で見直されている例もございますし、また、仕事と家庭の両立支援といった観点から手当の対象とか配分を見直したような事例もあるということで、具体的には別添のほうについておりますので、こちらでは紹介を割愛させていただきます。

 以下、18ページに参りまして、「(2)従業員ニーズの把握等」から19ページの「(6)決定後の新制度についての丁寧な説明等」まで共通して見られる特徴をこちらにまとめさせていただいています。

 この中で、「(5)「配偶者手当」の具体的な見直しの内容」について簡単に御紹介をさせていただきます。こちらは企業の状況、方針、労使の話し合いの結果で内容はさまざまでございますけれども、丸のi)をご覧いただきますと、こちらは手当を廃止され、基本給のほうに組み入れたりしたというものでございますし、ii)では配偶者の手当を廃止して、子供とか障害を持つ御家族の方に対する手当を増額した事例、iii)といたしましては、基礎能力に応じて支給する手当を創設して振りかえる。多様な事例がございますので、このようなものも踏まえて御検討いただければということで、こちらで紹介をさせていただいているところでございます。

19ページの「5.「配偶者手当」の見直しを行う場合の留意点」ということで、御検討に当たっての留意点をまとめさせていただいているものでございます。関係法令や判例、円滑な見直しのための実務上の留意事項という形になっております。

 「(1)労働条件を決定する方法について」ということでございますが、労働条件の決定については、労働契約、就業規則、労働協約の3つがある。それぞれの内容も含めて、基本的な内容を(1)の中で紹介をさせていただいております。

20ページをご覧いただければと思いますが、「(2)就業規則による労働契約の内容の変更について」ということでございまして、労働契約法第9条、第10条の内容を御紹介いたしまして、どのような場合に労働条件の変更が認められるのか等について記載をさせていただいております。

 さらに、21ページをご覧いただければと思いますが、「(3)「配偶者手当」の円滑な見直しに向けて」ということでございまして、企業事例等からのエッセンスをまとめさせていただいているところでございます。紹介させていただきますと、労使による十分な話し合いや労使が合意をしていることが求められるということ、話し合いに当たりましては、「配偶者手当」が支給されてきた事情や従業員ニーズなど、個々の企業の実情を踏まえることが重要だということ、賃金原資総額の維持、不利益を受ける労働者を対象とした経過措置も重要な考慮事項であるということ、そのような従業員の多数ないし代表としての労働組合との合意、賃金原資の総額の維持、必要な経過措置につきましては、いずれも労働契約法第10条本文に基づく就業規則の変更に係る合理性判断に際しての重要な要素となるということにも留意が必要であるということです。

 それから、一番下の行でございますが、「制度変更に伴い、従業員のモチベーションが低下し、企業の生産性を低下させてしまうことがないよう」ということで、22ページに続きますけれども、人事管理的な観点から制度設計・検討の段階より従業員ニーズの把握、従業員の参画、また、新制度についての丁寧な説明など、従業員間の納得性を高めるような取組が重要ではないかということを示させていただいているところでございます。

 最後は(4)でございますけれども、特に中小企業の皆さんが必要に応じて、賃金制度についての専門的な相談を受けることができるようにということで、地方別経済団体、地域の商工会議所、中小企業団体中央会など、経営相談窓口等の相談先を情報提供することも大事ではないかということで結ばれているところでございます。

 以上が本文でございますが、あとは簡単に別添のほうの御紹介をさせていただければと思います。

 別添1は28ページでございますが、タイトルが「就業調整の状況」ということでございまして、こちらは先ほど御説明させていただきました日本チェーンストア協会、日本百貨店協会からのヒアリング結果をまとめたものでございます。苦慮されている点、いろいろ工夫されている点などをまとめさせていただいております。

34ページの別添2でございますが、こちらは企業事例をまとめたものでございます。

38ページをご覧いただければと思います。

 企業事例について、業種、企業規模、見直しの内容を一覧でまとめたものでございましして、こういうものを見ながら、後ろに個別の企業の見直し事例について1枚ずつシートを用意させていただいておりますので、検討に際してご覧いただければということで、添付をさせていただいているものでございます。

 同じ別添2の60ページをご覧いただけますでしょうか。

 こちらは、先ほど御紹介いたしました中小企業の賃金制度の見直し状況につきまして、東商の専門相談員の方からヒアリングさせていただいた内容をまとめておりますので、特に中小企業での見直しについて御活用いただけるのではないかと考えているところでございます。

 最後の別添3でございますが、62ページという数字が出ておりますが、「配偶者手当の見直しを行う場合の留意点」でございまして、先ほどの労働条件の決定方法の解説、労働契約法の解説、また、判例・裁判例、関係条文という形で必要な資料を網羅的にまとめさせていただいております。

90ページをご覧いただけますでしょうか。

 判例・裁判例の目次ということで、このような判例・裁判例をつけさせていただいておりますが、まず「就業規則の変更に係る基本判例」として第四銀行事件を初め、4つの判例を掲載させていただいております。さらに、「賃金制度の変更に係る裁判例」ということで就業規則変更の合理性が認められた事例、または認められなかった事例、就業規則変更におきまして個別の同意の成否が争われた事例など、最後に<労働協約の一般拘束力に係る事例>という形で、見直しに合わせてご覧いただけるような判例・裁判例を紹介させていただいております。

 以上が別添2の説明になりますが、最後に資料2-3を御説明申し上げたいと思います。

 こちらは検討会報告書を踏まえまして、厚生労働省の今後の取扱いに関する資料ということになっております。

 1枚おめくりいただきまして、資料2-3-1で「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」となっておりますが、厚生労働省では検討会の報告書を踏まえまして、局長通知によりまして配偶者手当のあり方の検討に関し、考慮すべき事項を取りまとめる予定としております。この内容につきましては、先ほど御説明させていただきました報告書のポイントと同じ内容となっております。これらを踏まえまして、都道府県労働局も活用しながら労使による配偶者手当のあり方の検討をいただくために周知を図っていく予定でございます。

 実際の周知に当たりましては、報告書が非常に膨大な量になっておりますので、次のページのカラーのリーフレットがございますけれども、このような資料を作成いたしまして、全体概要について周知を図っていきたいと考えております。

 最後のページに「「配偶者手当」の在り方の検討のために」ということで案がついてございますけれども、こちらは現時点で目次の案をお示ししているところでございますが、配偶者手当のあり方の検討に関し考慮すべき事項の解説、配偶者手当の円滑な見直しに向けた留意点や企業事例等について、添付資料を含めました報告書全体の内容の中から必要な部分を抜粋して、労使の方にとって見やすいような形でわかりやすくまとめたものを策定する予定としております。

 報告事項の2番目についての説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○岩村 分科 会長 ありがとうございました。大変貴重な報告内容だったと思います。

 それでは、これにつきまして、御意見あるいは御質問がありましたらお願いをいたします。

 川野委員。

○川野委員 今ほど報告書の説明がございましたけれども、「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」報告書の中身は、なぜこうして労働条件分科会に報告されるのか、いささか疑問がございます。本来は、税、社会保障に関する議論であって、先ほどの報告書の中にも書かれてありましたけれども、配偶者手当そのものは労使が決めてきた手当のあり方です。配偶者手当を含むあらゆる手当は、時代背景、経済状況等を踏まえ、憲法25条、労基法1条による労働の対価に関する労使の協議を重ねて決定してきたものであります。

 したがって、その手当等の必要性の可否も労使で協議をするものであると思っておりますし、名称いかんにかかわらず、賃金の一部であることを踏まえた対応が不可欠であると思っているところでございます。労使主体的な取組を前提として、「配偶者手当等の廃止が望ましい」とするニュアンスは避けるべきであり、労使で議論を重ねた結果、構築されてきたこうした賃金、人事制度に対して、軽々に政府が介入すべきことではないと思っているところでございます。各企業の従業員構成や働き方、従業員満足など、労使がそうしたさまざまな要素を勘案し、真摯な協議の上で組み立ててきた賃金制度の中から、配偶者手当のみを取り出して見直しすること、または見直しありきの議論の方向性に大きな違和感を覚えるところでございます。

 御案内のとおり、この報告書の中にも中小企業にとっては制限なくして、手当をそのまま制度として確立しているところも多いということ、また、中小企業は日本の企業構成の中で99.7%を占め、雇用労働者の7割を占めているところ等々が実態としてあらわれているわけでございますし、労使が決めてきたこうしたさまざまな手当の一部を取り出して議論するということは、先ほども言いましたが違和感を覚えるところでございますので、改めて申し述べさせていただきました。

○岩村 分科 会長 ありがとうございます。

 事務局のほうで何かコメントはございますか。

 お願いいたします。

○増田参事官 御意見、ありがとうございます。

 賃金については、労使自治の中で決められるということはおっしゃるとおりでございます。私どもが、ここの検討会の報告書という形で報告を今回させていただくのは、趣旨といたしましては労使自治の問題ではございますけれども、就業調整というものにつながっている現状については、先ほど御紹介も申し上げましたが、政労使合意の中でも労使はそのあり方の検討を進めるということがございます。先ほどのお話にございましたように、配偶者手当は就業調整につながるものもそうでないものもございますし、また、どのような影響が出ているのかということについても検討をいただく上では必要な情報かと思っておりますので、そのあり方について明らかにさせていただいたということです。

 先ほどもお話がございましたように、労使自治の中で決まっているためその見直しは労働条件の変更に当たることでございますので、見直しに当たって踏まえるべき点が大変重要であるということでございます。そういう意味からも、労働条件分科会のほうに労働条件変更に係る話の一つであるということで、御報告をさせていただくことが必要ではないいかということで御報告をさせていただいたところでございます。基本的には、賃金制度は労使自治の問題であるということは十分認識した上で、さらに、女性の活躍促進の中では税制、社会保障制度についても政府としてしっかり認識し、それは別途検討させていただいているということを踏まえた上で、労使の皆さんにおかれましても、このような資料を踏まえて、話し合いをしていただけると大変ありがたいというのが私どものスタンスでございます。

 以上です。

○岩村 分科 会長 ありがとうございました。

 川野委員、いかがでしょうか、よろしいでしょうか。

○川野委員 今ほど説明いただいたように、労使自治のもとで丁寧な、慎重な議論が必要であるという認識は一致しており、そうした議論が重ねられるべきだと思っておりますので了解しました。

○岩村 分科 会長 秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 就業調整の問題ですけれども、先ほどの資料でもありましたが、配偶者手当が原因という回答は2割ということで、圧倒的に多くは税制、社会保障制度の理由ということになるのです。ただ、配偶者手当に関して言えば、それは労使で決めているということでございますが、「女性を活用したい、配偶者を活用したい」という企業は労使でその賃金を決めていないのです。その賃金を決めているのは配偶者を扶養している男性の勤めている企業の労使であります。そうすると、女性を活用したいという企業からは全く手の届かないところの労使自治ということでございますので、それについての社会全体のいろいろな論議は一定程度必要かと思います。

○岩村 分科 会長 ありがとうございます。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 この報告書の中には、配偶者手当を見直すに当たって、労使でよくよく話し合うということや、就業規則の不利益変更にも留意してくださいといったポイントが記されていると思います。人事処遇制度を見直す個別企業において、配偶者手当のあり方を考える際の参考資料として広く周知されることを期待しております。

 以上です。

○岩村 分科 会長 ありがとうございました。

 柴田委員、どうぞ。

○柴田委員 先ほどの御議論に少し絡むのですけれども、配偶者手当に関しては配偶者の収入の制限を設けている企業が多いということからも、税、社会保障の議論というのが先行されるべきと思っています。その上でこれは質問ですけれども、このリーフレットもそうなのですが、配偶者手当の議論だけが先に進んでいる感にどうしても見えるのです。103万、130万問題といった税、社会保障の議論はどういうテンポで進めているのか、むしろセットで論議すべきですし、そちらのほうが先行されるべきなのではないかと思っているのですが、その点についてお伺いしたいと思います。

○岩村 分科 会長 事務局、お願いします。

○増田参事官 お答え申し上げます。

 委員、御指摘のとおりでございまして、先ほども日本再興戦略のほうを御説明させていただきましたけれども、税制、社会保障制度もあわせて、女性が働きやすい制度となるよう具体化、検討を進めるとされておりまして、そちらについては、そちらにおいて責任を持って進めるべき事項ということで理解をしているところでございます。

 簡単に検討状況を御説明申し上げますと、税制につきましては御案内のとおり、配偶者特別控除というものが設けられまして、配偶者の給与収入が103万円を超えても、世帯の手取り収入が減少しないようにという仕組みが導入されているところでございます。しかしながら、配偶者の就労を抑制する心理的な壁としては存在しているのではないか。そういう指摘がございまして、政府の税制調査会において議論が進められ、中間的な論点整理ということで5つの選択肢が掲げられております。これを踏まえまして国民的議論を進めることとされておりますので、こちらについてはそういう形で進められているという認識でおります。

 それから、社会保障制度につきましては、本年10月から御案内のとおり501人以上の企業を対象として適用拡大が実施されるとなっておりますし、500人以下の中小企業につきましても、労使合意で適用拡大ができるようにということで法律案が今国会に提出されていたところでございます。また、3年後見直し規定というものもございまして、それぞれについて検討がされているということでございます。

 リーフレットの内容等につきましては、先ほども御指摘がございましたように、そういうものがわかるようにということで就業調整の理由として、そういうものがパーセンテージとしては大きいということも踏まえて、紹介するような形でそれぞれに進めていただく。配偶者手当の見直しの検討につきましても、時間がかかるという形で考えておりますので、そういう形で労使についても、お話し合いいただければありがたいと考えているところでございます。

 以上です。

○岩村 分科 会長 柴田委員、よろしいでしょうか。

○柴田委員 はい。

○岩村 分科 会長 ほかにはいかがでございましょうか。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員 今も柴田委員、鈴木委員から質問がありましたけれども、今回の報告書が配偶者手当のあり方を見直すに当たって注意すべき事項をまとめたということであれば、資料2-3の1ページにある2-3-2のリーフレットのイメージの中で、サブタイトルで「~「配偶者手当」の在り方の検討が求められています!~」と記載しているのは少し言い過ぎなのではないかと思っておりまして、その部分の表現ぶりは少し留意をしていただけないかと考えております。

 また、女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関しては、もちろん103万、130万の問題もありますけれども、報告書の中にもあるように、女性労働者が限られた時間しか働かない、働けないという理由の中には家事、育児負担の時間が女性に偏っているところがあるかと思います。先ほど秋田委員からは夫側の配偶者手当の見直しが必要だということもありましたけれども、このような家事育児の男女バランスを変えていくということも必要であり、夫側の長時間労働の問題もあわせて指摘すべきではないかと思っております。

 ですから、配偶者手当が何とかなれば女性が働けるのかといえばそうではなく、家事、育児負担の男女バランスをそのままにして、労働時間だけをふやすということはおそらく困難ではないかと思っておりますので、そのような全体的な見直しをあわせて進めていくことが必要ではないかと思っております。

 以上です。

○岩村 分科 会長 ありがとうございます。

 ただ、報告書のスタンスは配偶者手当さえいじれば、全てが解決するというスタンスでは全然ないので、また、家事、育児の問題も、労働の問題も報告書の中でもきちんと指摘されていると私は理解して伺っていたところでございます。

 また、賃金については、労使が話し合って決めるべきものであることは確かですが、他方で、きょうデータでいろいろ説明があったように、いろいろな外的条件というのが変わっている中で、従来の賃金制度を余り固定的に考えるのはいかがかということかと私は理解しています。きょう報告があった報告書の中身なども御検討いただいた上で、どういうものがそれぞれの企業にとって、一番いい賃金システムであるのかということを御検討くださいという趣旨かと理解しておりますので、こういう報告書が出ているということを受けて、労使でこの問題について御議論いただければと私としては思うところでございます。

 八野委員、どうぞ。

○八野委員 ありがとうございます。

 ただ今の分科会長からの発言は、報告書の説明を聞いているから大変よくわかります。ただし、このリーフレットだけを見たときに「「配偶者手当」の在り方の検討に向けて(案)」というものがタイトルになって、それだけが世に出ていけば、それは手当のことしか指していないと理解されかねないタイトルになっているわけです。報告書では「女性の活躍推進」ということがテーマになっていて、そこで税、社会保障と配偶者手当のことについても触れているので、リーフレットでも、本当は「女性の活躍推進」がきちんとタイトルになっていて、税、社会保障の見直しや配偶者手当の見直しをしていかなくてはいけないということがきちんと明記され、配偶者手当を見直しするに当たっての留意事項が記載される流れになってくるのではないかと思います。配偶者手当は先ほどからも言っているように労使で決める賃金です。ですから、そこに政府が安易に介入ということではいけないと思っています。

 配偶者手当の問題については、それぞれの企業が問題意識を持っていますし、特にパートタイマーの多いサービス産業のところについては、さまざまな検討を今重ねているところがあります。そういう意味で、資料2-2の1ページに書かれている「はじめに」のところで、なぜこういうことに取り組むことになったのかということについて明確になるようにしていただきたいということを意見として述べさせていただきたいと思います。

 最後に、労働条件分科会で本件の議論をすることについては少し疑問を持ちます。報告ということでありますけれども、そういう問題提起だけをさせていただきたいと思います。

 以上です。

○岩村 分科 会長 ありがとうございました。

 事務局、お願いします。

○増田参事官 周知用の資料につきましては、案という形で出させていただいておりますので、本日の議論を踏まえて見直しを考えさせていただければと思います。

○岩村 分科 会長 そのほかはいかがでございましょうか、よろしゅうございましょうか。ありがとうございます。

 それでは、次の報告事項としまして資料3がございます。これについても、事務局のほうから報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○美濃総務課長 資料3の関係であります。

 平成28年4月1日付の都道府県労働局におきます組織の見直しについて、御説明を申し上げます。

 資料の1ページをご覧いただければと思います。都道府県労働局におきましては平成28年4月に組織の見直しを行って、新たに雇用環境・均等部(室)を設置いたしました。これは男女ともに働きやすい雇用環境を実現するため、「女性の活躍推進」や「働き方改革」等の施策をワンパッケージで効果的に推進するものであります。さらに、労働相談の利便性をアップするためにパワハラや解雇等に関する相談と、マタハラやセクハラ等に関する相談の対応を一体的に進める、また、個別の労働紛争を未然に防止する取組と解決への取組を同一の組織で一体的に進めていくというものであります。

 この新組織につきましては、雇用均等室を主な母体としまして、企画室の業務、労働基準部及び職業安定部の業務の一部を移管し、新たな行政ニーズに効果的に対応していくことを可能にすると考えている次第でございます。

 具体的なポイントとしましては3つございまして、1つは総合的な行政事務の展開ということであります。先ほど申し上げた「女性の活躍推進」、「働き方改革」等は相互に密接に関係している課題でありますけれども、これまではそれぞれの課題ごとに担当部署が企業、あるいは経済団体への働きかけを実施してきたということであります。4月からは雇用環境・均等部(室)がワンパッケージで効果的に実施していくというものであります。

 2点目は、労働相談の対応の一体的実施、個別の労働紛争の未然防止と解決の一体的実施ということであります。これまでは総務部企画室において、パワハラ・解雇に係る相談・紛争解決、労働基準部におきまして、パワハラ等に係る企業への啓発指導、さらに、雇用均等室におきまして、男女雇用機会均等法等に係る相談、企業への指導、紛争の解決援助を実施してきたところでありますが、4月からは雇用環境・均等部(室)におきまして、労働相談の対応を一体的に実施していくということであります。個別の労働紛争を未然に防止する取組と解決への取組を一体的に実施します。

 3つ目は、業務実施体制の整備・強化ということであり、新しい部ないし室に専門官職を配置するというものでございます。

 2ページ目でありますけれども、雇用環境・均等部(室)では、労働基準部の所掌事務のうち働き方改革、長時間労働の削減や年休の取得促進、ワーク・ライフ・バランス、労働契約法で申し上げますと無期転換ルールの周知等、パワハラに関する業務など法律の履行確保を上回るものを移管しております総務部の個別労働紛争に関する相談業務や企画調整業務なども移管されているものであります。

 この組織見直しを通じまして、男女ともに働きやすい職場環境の実現に向けた総合的な行政を展開するとともに、企業や相談者に対する一体的なサービスに努めていきたいと考えている次第です。

 以上でございます。

○岩村 分科 会長 ありがとうございました。

 それでは、今の御説明につきまして、御意見あるいは御質問がございましたらお出しいただければと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。

 それでは、用意した議題は以上でございますが、最後に事務局から何かございましたらお願いしたいと思います。

○六本調査官 次回の労働条件分科会につきましては、日程調整の上、委員の皆様にお知らせしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○岩村 分科 会長 ありがとうございます。

 それでは、本日の分科会はここまでとさせていただきたいと思います。

 いつものお願いでございますけれども、議事録の署名委員でございます。きょうは労働者代表につきましては柴田委員、使用者代表については小林委員にそれぞれお願いをいたします。

 本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。これで閉会とさせていただきます。


(了)

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