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2014年11月17日 第120回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成26年11月17日(月)16:00〜18:00


○場所

専用第23会議室


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、権丈委員、田島委員、野崎委員、村中委員

【労働者代表委員】

神田委員、新谷委員、高松委員、冨田委員、八野委員、春木委員

【使用者代表委員】

秋田委員、池田委員、小林委員、鈴木委員、田中委員、平岡委員、宮地委員

【事務局】

岡崎労働基準局長、大西審議官、鈴木総務課長、秋山監督課長、村山労働条件政策課長、古瀬調査官

○議題

1 報告事項
2 今後の労働時間法制の在り方について
3 その他

○議事

○岩村分科会長 定刻より少し早いのですが、冒頭から御出席予定の委員の方は全てそろっていらっしゃいますので、ただいまから、「第120回労働政策審議会労働条件分科会」を開催することにいたします。

 本日御欠席の委員は、公益代表は守島基博委員、山川隆一委員、労働者代表は宮本礼一委員と承っております。また、田島委員は少し遅れて来られるということでございます。

 まず、事務局から定足数の報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それでは、議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。最初の議題は「報告事項」となっております。これにつきましては、事務局から1113日に報道発表されました「平成26年『就労条件総合調査』」について報告いただくということでございます。

 それでは、まず、事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 それでは、資料の1に基づき御説明いたします。

 表紙の次のページの「ア 年次有給休暇の取得状況」です。第5表の一番上の段について、労働者1人平均付与日数は18.5日、労働者1人平均取得日数は9.0日、取得率は48.8%と、前年に比べてやや改善しております。

 次に右側のページは、変形労働時間制の採用企業割合です。第7表の一番上ですが、いずれかの変形労働時間制を採用している企業割合は55.6%、1年単位の変形労働時間制は35.4%、1か月単位の変形労働時間制は17.9%、フレックスタイム制は5.3%となっております。

 さらに次のページは、変形労働時間制の適用を受ける労働者の割合です。いずれかの変形労働時間制の適用を受ける労働者は48.6%、1年単位の変形労働時間制は23.3%、1か月単位の変形労働時間制は16.9%、フレックスタイム制は8.3%となっております。

 その右側のページは、みなし労働時間制の採用企業割合です。いずれかのみなし労働時間制を採用している全体は13.3%、事業場外労働のみなし労働時間制は11.3%、専門業務型裁量労働制は3.1%、企画業務型裁量労働制は0.8%となっております。

 最後のページは、みなし労働時間制の適用を受ける労働者の割合です。いずれかのみなし労働時間制の適用を受ける労働者は8.1%、事業場外労働のみなし労働時間制は6.9%、専門業務型裁量労働制は1.0%、企画業務型裁量労働制は0.2%となっております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいま説明をいただきました資料1に関して御意見あるいは御質問がありましたらいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

 特段ないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、議題の2番目は「今後の労働時間法制の在り方について」となっております。

 資料2が「労働時間法制の今後の検討について」ということで、この分科会での検討課題を列記していただいております。前回の分科会で御議論をいただきましたけれども、時間の都合もありまして、積み残しになってしまった論点がございます。本日はまずそれについて御議論をいただき、その後、本日資料が提出されております弾力的な労働時間制度について議論をお願いしたいと思っております。

 前回積み残しになりました論点が、「代替休暇について」、「確実に年次有給休暇の取得が進む仕組みについて」、「労働時間等の設定の改善に向けた労使による話し合いの促進について」、最後、「労働時間の把握について」となっております。これらにつきまして議論を進めていきたいと思います。

 お手元には既に前回事務局から説明をいただきました「長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策等について」の資料を改めて配付させていただいております。その資料の31ページから議論を始めてまいりたいと思います。

31ページは「代替休暇について」でございます。さらにその後、34ページ「6 確実に年次有給休暇の取得が進む仕組みについて」というところがございますので、この2つの項目につきまして、まず議論をお願いしたいと思っております。御意見・御質問がございましたらお願いをしたいと思います。

 では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。代替休暇と年次有給休暇について意見を申し上げたいと思います。

 以前、労働側委員から代替休暇につきましては、その分年次有給休暇がとれなくなるのではないかという御指摘をいただいたところでございます。この点に関しましては、完全にそれを否定するつもりはございません。ただ、申し上げたいのは、第1に、年次有給休暇は取得時期を労働者の方に委ねております。2カ月以内に年次有給休暇をとってもらえるかどうかが不確実であり、しっかりと休みをとってもらう代替休暇には、年次有給休暇にはない独自のメリットがあるのではないかと思っております。

 第2に、休みをとってもらうことに重きを置くということであれば、年次有給休暇なのか、失効年休なのか、あるいは特別休暇なのか、はたまた代替休暇なのかというのは、本来は関係がないのではないかとも思っております。めり張りをつけた働き方の実現に取り組む企業を後押しするという観点から、代替休暇制度についてより一層使い勝手のよいものとしていくことが大切ではないかと考えております。

 次に、確実に年次有給休暇の取得が進む仕組みについて申し上げたいと思います。

 年次有給休暇の底上げ、また、過重労働対策の防止の一環としてこうした制度を創設することについて、条件付きで賛成の立場を明確にしたいと思います。

 第1に、日数についてでございますが、前回資料の41ページの調査によりますと、取得日数が3日以下の正社員の方の割合が約3割あるということ。また、最新のデータでは、平均的な年次有給休暇取得日数が6日しかない産業が5産業もあるということから、3日が年次有給休暇取得の底上げにふさわしい日数だと考えております。

 第2に、労働者の希望に関しましては、労務管理上、年次有給休暇の取得時期を聞くことはあろうかと思っておりますし、労働者の希望をとることを推奨すべきとも考えておりますけれども、小規模事業場などにおきましては取得時期の調整が難しく、社員一人一人の意見を聞くことが難しい職場もあると考えております。

 もとよりこの仕組みは会社主導で年次有給休暇をとってもらうことが目的であります。労働者の意見を聞かないというだけで、3日以上年次有給休暇を取得していたとしても法違反に問われれば、せっかくの企業の年次有給休暇底上げの取り組みに水を差しかねなず、法律要件化することには反対であります。

 第3に、年次有給休暇の底上げが目的でありますので、3日以上の年次有給休暇を取得ないし指定した方に対して、この仕組みを適用する必要はなく、計画的付与が3日以上を対象とする場合も同様だと考えます。

 最後に比例付与対象者につきましては、前回資料の41ページのデータを見ますと、パート、アルバイトで年次有給休暇取得率が7割と高い実態にございます。仮にフルタイムであればパートやアルバイトでありましても、この仕組みの対象となります。制度目的が過重労働の防止にありますので、労働時間の少ない比例付与対象者には適用しないことが自然ではないかと思っております。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでございましょうか。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 まず、代替休暇についてであります。前回資料の32ページに、この代替休暇の構造について書かれていますが、御承知のように、代替休暇とは、月60時間超の時間外労働が行われた場合に、労働者に休息の機会を与え、その疲労回復を図り、健康の確保に役立てる観点から、労使協定により、月60時間を超えた部分について、平成20年法改正による引き上げ分(25%)の割増賃金の支払いに代えて有給の休暇を付与できることとする制度であります。

 これは前回も申し上げたように、時間外労働を月76時間行った場合を例にとりますと、月60時間を超える16時間分について割増賃金25%(50%−25%)の支払いに代えて有給の休暇付与が可能となる制度であり、実際には16時間に0.25の割増率をかけると4時間となることから、16時間働いて初めて法定労働時間の半日分にあたる4時間の休暇がとれるということであります。しかも、それは時間外労働が月60時間を超えてからの労働時間をカウントするということになりますので、こうした代替休暇制度はやはり長時間労働を誘発するのではないかという懸念を拭い切れないわけであります。

その懸念は一つには、代替休暇制度があることで、例えば「時間外労働が月60時間から既に10時間を超えているから、あと6時間働けば半日分の代替休暇がとれる」といった計算ができてしまうので、使用者側が、賃金の支払いにかえて代替休暇をとらせる目的で、その差分の時間まで労働させる方向に引っ張ってしまう懸念がなくもないのではないかと思います。

 もう一つは、前回資料37ページにいい資料が出ていまして「年次有給休暇と労働時間の関係について」という正社員の年休取得率と週当たりの労働時間をクロス集計した結果が掲載されています。当たり前といえば当たり前なのでしょうけれども、「長時間労働をするような忙しい人は、年次有給休暇の取得率も下がってくる」というのは推測されるわけで、それはこのデータを見ても明らかです。例えば、年次有給休暇取得率の平均は、週時間外労働が月60時間以上の方ですと39.5%しかありません。年休取得率の全体平均が51.6%であることからすると、やはり長時間労働をする労働者は忙しくて休暇もとれないという状況にあることが見て取れるのではないかと思います。

 代替休暇が今回の論点として挙がっておりますけれども、さらにこの代替休暇制度の使い勝手をよくするというのは、構造的な制度の設計上の問題もありますし、労働者が置かれている実態から言っても大いに疑問があるのではないかということです。先ほど、使用者側委員は使い勝手のよい制度にするべく制度の見直しを行ってはどうかということをおっしゃっておりましたけれども、私どもとしては、この代替休暇制度の見直しについては極めて慎重に議論を行うべきと考えておりますので、重ねて申し上げておきたいと思います。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 春木委員、どうぞ。

○春木委員 ありがとうございます。

 「確実に年次有給休暇の取得が進む仕組み」に関し、「一定日数の年休を労働者に確実に取得させる義務を使用者に課す」ということについては、労働側としても前向きに考えていきたいと思っています。ただ、今ほど鈴木委員から「3日が年次有給休暇取得の底上げにふさわしい日数だと考えている」旨のご発言がありましたけれども、3日がふさわしいと言えるのかといえば、労働側とすれば、その日数ではまだまだ全体の底上げには足らないと考えるところです。

 その上で、事務局に一点質問をさせていただきたいと思います。資料にある「使用者に時季指定義務を課す」という点についてですが、「年次有給休暇の取得の権利は労働者に生じている権利であって、休暇の時季の“指定”も労働者が行う」とされている現在の法的な構成がある中で、使用者に“時季指定の義務を課す”ということをどう理解すればいいのか、私としてはうまく理解できていません。

 仮に、使用者に時季指定の義務を課して労働者に年休を義務的にとらせるとしたとしても、あくまで「労働者の権利である年次有給休暇の取得を確実に進める」という目的のためにこういった仕組みが特別に講じられるべきであって、この仕組みが逆に労働者の権利を侵害するようなものになってはならないと思っております。それゆえに、鈴木委員も「使用者は付与すべき時季について労働者の希望を聴くことは当然だ」とおっしゃいましたけれども、やはり労働者の意向に基づいて年休を取得させる義務を負うこととなるような制度設計がなされるべきだと思っていますし、使用者に時季指定義務を課すという法的構成をとることによって労働者の意向と関係なく会社都合に基づいて年次有給休暇を取得すべき時季が決定されるということが起きないようにしなければならないと思っております。事務局として提示されている「使用者に時季指定義務を課す」ということについて、既に何らかの整理、見解があるならばお伺いをしたいと思います。

○岩村分科会長 では、事務局でお願いします。

○村山労働条件政策課長 春木委員からの御質問にお答えします。

 前回資料2の35ページに、年次有給休暇の法的構成についての整理として、関係の条文等を載せております。その中の、昭和48年の最高裁判決の下線部分に、年次有給休暇の権利は、要件が充足されることによって法律上当然に労働者に生ずる権利であると判示されております。こうした年次有給休暇の根本的性格が、今回の提案によって変わるものではありません。

 その上で、長時間労働の方ほど年次有給休暇がとれていないことや、4割台後半で推移している年次有給休暇の取得状況を踏まえ、今回の労働時間制度の見直しに当たって心身の健康確保がたいへん重要であるという労使の共通認識の下、確実に年次有給休暇の取得が進む仕組みをつくっていくための考え方の一つとして、使用者へ時季指定義務を課すことについて、これまで建設的に御議論を進めていただいてきたと考えております。

 その時季指定の具体的な方法において、労働者の希望をどのように反映させるかという点に関しては、今後の議論の論点ということは、御指摘のとおりであると考えております。

 この点については、今後の議論ではありますが、39ページにある諸外国の年次有給休暇の取得の仕組みや年次有給休暇に関する法制度なども参考にしながら、どのように具体化していくのかが論点と考えます。

 昭和62年の労働基準法の改正において、事業場単位の労使協定によって時季指定権と時季変更権の両方から距離を置いたものとして計画的付与制度が導入された経緯があることも参酌していただきながら、労働者の希望の反映等のあり方について、どのように具体化していくのか、御議論いただければと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 春木委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 では新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 9月10日に労働条件分科会が再開されてから、本日が6回目の審議会ではないかと思いますけれども、個別論点について労使の意見が隔たる中で、唯一と言っていいほど考え方が一致しているのは、この「確実に年次有給休暇の取得が進む仕組みについて」の論点です。本論点は労使の考え方が大枠については一致している数少ない点でありますので、私どもも大事に議論を進めていきたいと思っております。

 先ほど、春木委員も申し上げたように、資料35ページにありますように、我が国の労働基準法をベースにした年休権の考え方は、「1労基法第39条第1項の要件が充足されることによって法律上当然に労働者に生ずる(労働者の請求も使用者の承諾も不要である)、また、2労基法第39条第4項の指定により年次有給休暇が成立し、就労義務が消滅する。」という考えです。そのときに使用者としては適法な時季変更権を行使できるに過ぎません。このように現行法の仕組みでは、使用者には時季の指定権という考え方はないわけでして、時季変更権として「その日に取得されると事業の正常な運営を阻害するため、違う日にしてくれ」ということだけが、使用者が対抗措置として行使できるという法的構成になっているわけであります。

 それを今回、私どもより、「確実に年次有給休暇の取得が進むことを目的にして一定日数の年休を労働者に確実に取得させる義務を使用者に課すという構成にしてはどうか」という提起をさせていただいたわけであります。見方によっては、我々労働者が現在当然に持っている権利を後退させる懸念もあるわけですが、やはり我々としては保護すべき法益は一体何なのか、そして1日でも2日でも多く年次有給休暇の取得が進むためにはどうすればいいかということを考えた上で、大きな決断をしてこの提起をしているわけです。

 そういった意味では、日数の問題はさて置き、使用者側から「事前に労働者の意向を聴くということについては、法律要件にするべきではない」という御発言がございましたけれども、私どもとしては労働者の意見をきちんと聴いていただく仕組みでないと、現在の法的構成からいっても、今回提起された「確実に年休の取得が進む仕組み」を承諾するのはなかなかに難しいと考えております。例えば年次有給休暇の計画的付与の場合には、労使協定という集団的な合意の中で年休日の特定について決着しますけれども、今回の仕組みを講じた場合には労働者個人と使用者の関係において年休日の指定がなされるわけでありますから、使用者の義務違反には罰則を科すなど、実効性を担保する仕組みが合わせて導入されない限り私どもとしてはなかなか受け入れにくいということは、改めて申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 労側、年次有給休暇の取得についてのほかの点についてはいかがでしょうか。例えば比例付与の対象者の扱いをどうするかなど、幾つかのポイントがあるのですが、その点については、労側いかがでしょうか。

○新谷委員 資料34ページの論点に挙げられております「仮に使用者に時季指定義務を課す場合、計画的付与が行われている場合の取扱いをどうするか」であるとか、「労働者が既に自ら十分な年休を取得している場合の取扱いをどうするのか、まさしく時季指定権を行使している場合にどうするのか」ということは、確かに今回の使用者に義務づけをするということとの関係において、整合を図らなければいけない論点だと思っております。

 先ほど冒頭に春木委員が申し上げたように、法的構成として、使用者がその時季を指定する義務を負うとする構成と、今回事務局から提示いただいた論点との調整をどう図るかというのは、私どもも本当に頭を悩ましているところであり、重要な論点であるということは十分に認識しておりますけれども、今この場で答えは持ち合わせていないということをお伝えします。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 そのほか、いかがでしょうか。

 池田委員、どうぞ。

○池田委員 この件に関しては、前回も申し上げましたが、一定の日数に限定するとはいえ、使用者側に時季指定を義務づけることになれば、これまでの仕組みを大きく転換することを意味します。これまで自分の意思で自由に年次有給休暇を取っていた労働者にとっても合理性がないのではないかと思います。

 いずれにしましても慎重な検討が必要と考えておりますが、一律に義務づけるのでなく、少なくとも労働者が既に十分な年次有給休暇を取得している場合や、ここにありますような計画的付与が行われている場合については、適用しないことが適当であると思います。また同じような意見になりますが、申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 そのほか、この2つの論点についてはいかがでしょうか。

 1点、私から。先ほど代替休暇について、新谷委員から御発言がありまして、これについては慎重に考えるべきだということでした。特に代替休暇というのは、現行制度の場合だと、むしろ長時間労働を誘発するのではないかという御発言でありました。ただ、代替休暇を導入しないままでも、割増賃金が欲しいという人にとっては、結局のところ長時間労働を誘発するはずですから、その点はあまり変わらないのではないかという気がいたします。

 賃金というものと休暇というものと、どちらがより労働者にとっていいのかという問題で、もし労働者が休暇をあまり望まないということであれば、代替休暇を導入すれば、むしろ労働時間が減る方向に行くのではないかと思います。

 割増賃金にかえて有給休暇を与えるのだという仕組みを導入していると、むしろ労働時間は減る方向に行くのではないかという気がするのですが、その点について労側の御意見はいかがでしょうか。

○新谷委員 よろしいですか。

○岩村分科会長 どうぞ。

○新谷委員 鈴木委員もおっしゃったように、年次有給休暇のメリットというのは当然あるわけでして、「労働から解放されて休息をとる」ということは当然大事なことであります。我々もそれを全く否定するものではございません。むしろ年次有給休暇の取得を進めるべきであると考えております。

 しかし、その一方で、労働から解放される休暇の取得を促進するにあたっては、代替休暇といった制度で行われるべきではなく、年次有給休暇をきっちりと取得することができるような制度にすべきであります。いかに長時間労働を行ったとしても、きっちりと年次有給休暇が取得されるような、要員計画であるとか、マネジメントであるとかの対処を行い、そういった世界の中で実現されるべきであります。代替休暇は、先ほども述べたように、月60時間を超える時間外労働を行った場合に付与される仕組みであり、しかも割増賃金25%分の支払いに代えてということですので、代替休暇に変換されると、60時間を超えた時間外労働1時間分の価値はたった4分の1にしか評価されないわけですね。つまり、16時間の時間外労働を行ってやっと4時間分の休みが貰えるということです。そうするとひと月に時間外労働を92時間行って、やっと1日の代替休暇がとれるに過ぎません。このような制度的に長時間労働を誘発するような仕組みである代替休暇をさらに緩和するような見直しをする必要はないというのが私どもの意見です。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 この2つのポイントについては以上でよろしいでしょうか。

 では、42ページの「7 労働時間等の設定の改善に向けた労使による話合いの促進について」と、48ページの「8 労働時間の把握について」に移りたいと思います。これについても、既に資料については前回のこの分科会で事務局から説明をいただいているところでございますので、直ちに御意見あるいは御質問があれば伺うことにしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

 それでは、八野委員、どうぞ。

○八野委員 私からは「労働時間等の設定の改善に向けた労使による話合いの促進について」という論点について意見を述べたいと思います。

 資料42ページに課題提起がされているように、長時間労働の削減に向けて労使間で十分にコミュニケーションを図っていくことは重要です。この点についての認識は労働側も変わりません。ただし「全部の事業場を通じて一の委員会」に対して労使協議の代替決議機能を付与するということについては賛同できない、と表明しておきたいと思います。

 現行の労働基準法の中では、就業規則の作成や36協定の締結、企画業務型裁量労働制における労使委員会の設置など、労使による自主的なルールの策定は現場実態に即したものであることが必要であることから、事業場単位で行うこととされています。このことがまず基本になっていると思います。

 このような中で、この「全部の事業場を通じて一の委員会」だけに企業単位での労使協議の代替決議機能を与えるという仕組みにすることは、これまでの法体系に照らして整合性を欠くとともに、事業場ごとの実態に即した話し合いを阻害して却って労働者の保護を後退させる結果になりかねないと考えています。

 それゆえ「全部の事業場を通じて一の委員会」に労使協定の代替機能を与えるということには、労働者にとっての特段のメリットが想定し得ない以上、賛同できないということを改めて申し上げたいと思います。必要に応じて、これまで同様に現場の中で、すなわち事業行単位で労使協議を行えば足りるはずであると考えます。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進を進めるためには、ただいま八野委員がおっしゃったように、現場の実態をよく知る労使が話し合って対策を練るということが、大変重要なことだと思っています。

 一方で、私も少ない企業ではございますけれども、労働時間の短縮に取り組む企業のお話をお伺いする中で、企業トップの意思なり、トップダウンでの取組ということも合わせてやっていくことが重要だという思いを、最近強くしているところでございます。そういう意味で、経営トップに近いところで、全事業場を束ねるような形で労使の話し合いの場を推奨する方向で議論をしていくということについては、私は賛成の立場でございます。

 法制上の措置ということを考えた場合には、委員の構成ですとか選出方法などについては、柔軟なものにしていくことが必要ではないかと思っております。

 この代替決議事項ということについての論点が出されているところでございますが、これについては既存の制度と変える理由はないと思っております。

 代替決議機能そのものは、恐らく活用のインセンティブということで入っていると思いますが、このインセンティブが十分なものかどうかというのは、まだ検討の余地があるのではないかと思っております。

 衛生委員会の労働時間等設定改善委員会みなしについてでございますが、これは労働時間等設定改善委員会をつくることで対応は可能だと思っておりますので、廃止することについては、特段異論はございません。

 労働時間の把握についても申し上げてよろしいでしょうか。

 今から申し上げる点は、前回からも申し上げているところで恐縮でございますけれども、労働時間とは異なる時間概念による把握に関しましては、例えば自己研鑽の時間ですとか、外出、出張がございます。したがって客観的な記録と自己申告とを併用として運用している実態が多いと思っております。

 会社によっては家を出た時刻から家に帰ってきた時刻を、健康確保時間として自己申告をしているような企業もあると聞いておりますし、最近では自分の机を持たずに好きな机あるいは食堂で仕事をするというフリーアドレス制を導入している企業がございます。そうした企業では、労働時間の適正な把握のために、使用者が講ずべき措置に関する基準、いわゆる四六通達の原則であります現認がそもそもできません。安全配慮義務の履行の観点から、健康確保を目的とした時間把握をするということが、使用者の責務になっております。それとは別に時間把握の具体的な方法を定めるということが、多様化している実態を前提としたものになるのかどうか、この点は慎重な議論が必要ではないかと考えております。

 いわゆる四六通達の労働基準法への格上げにつきましては、例えば賃金未払いの法違反がないようなケースで、時間把握方法が適切ではなかったというだけで、罰則を背景に規制対象とすることには違和感を覚えます。

 私からは以上でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでございましょうか。

 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今、鈴木委員から2つの論点についての御発言がございました。最初の「労働時間等の設定の改善に向けた労使による話合いの促進について」という論点に対する労側の意見は先ほど八野委員が申し上げたとおりでありますけれども、鈴木委員がおっしゃったように、「労使の話し合いの仕組みが非常に重要である」ということは私も否定しませんし、それが日本の競争力の源泉の一つであるという認識も持っております。

 また、鈴木委員がおっしゃる「企業トップの意思なり、トップダウンでの取組ということも合わせてやっていくことが重要」という指摘についても、まさしく役員会、ボードの意思が企業の労働時間管理のあり方を決めると考えておりまして、私の承知している企業でも、やはり企業トップが率先して年次有給休暇取得率100%を目指して取組を進められたりしています。それは「年休をとらせられない管理者は管理職としての能力が不足しているんだ」という形で、マネジメントの世界で労働時間管理に取り組んでおられるわけです。ただ、それはそれで大事なのですけれども、現実には決してそのような企業ばかりではないのですね。御承知のようにトップに立つ経営者が非常にブラックな企業ですと、企業全体がブラックになってしまうという実態もあるわけでありまして、やはり法律による枠組みの中でしっかりと規制していく必要があるんだと思います。このことは何回か前にも申し上げておりますが、命と健康を守る仕組みについては法律によって規制を行い、その外縁に労使の話し合いがあるといった構造にしないといけないと私どもは考えております。

 その上で資料42ページに書いてあります「労働安全衛生法上の衛生委員会が一定の要件を満たした場合に労働時間等設定改善委員会とみなされる」という制度につきましては、今、鈴木委員からも廃止することについてはやぶさかでないという話がありましたけれども、私どももこの衛生委員会のみなしの規定はぜひ廃止をするべきであると考えております。なぜ、このような規定が労働時間等設定改善法に規定されているのか、本当にわからないところです。資料に労働安全衛生法の条文の記載がございますが、衛生委員会は御承知のとおり、委員の構成が、労使同数プラス議長が使用者側ということで、事業者側に立つ委員が必ず1名多くなるようになっていることから、労使の委員の数が合っていないのですね。もちろん労働組合がないところについては、労側の委員は過半数代表の指名によるということになるのですが、本日の資料にもありますように過半数代表の選出において4割の企業で不適切な選出方法が取られている実態があることから、不適切な過半数代表者によって労側委員が決められてしまうことにもなりかねません。このような現状の中で労働時間等設定委員会のみなしの代替規定を置くということについては、私どもとしては反対であり、これはぜひ廃止をするべきであるということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 高松委員、どうぞ。

○高松委員 ありがとうございます。

 私からは資料48ページの「労働時間の把握」の論点について少し御意見を申し上げたいと思います。

 以前のこの分科会でも、労働者の健康確保等のために労働時間につき実効性ある規制を行うという観点から、「使用者による労働時間の適切な把握」が必要不可欠であり、これがまさに使用者が安全配慮義務を適切に果たすためのスタートラインではないかということで御意見を申し上げたと思っています。

 その上で今、労働時間の把握については、資料にも概要の記載がありますとおり、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」という行政通達が出されています。しかし、現在の行政通達はあくまで通達にとどまっておりますから、法的効果という点では強制力に欠けていると言わざるを得ないと思っています。

 したがって、労働側としては、この「基準」において使用者に求めている措置について一定の強制力を持ち得る労働基準法の義務として、法文化をお願いしたいということをまず申し上げたいと思っています。

 その上で、現在適用除外とされている管理監督者や裁量労働制の適用労働者につきましては、資料に記載があるように「その働き方の態様や制度趣旨を踏まえれば、厳密な労働時間の把握はなじまない」という特性があることには、労働側としても理解はしておりますし、その点を一定程度考慮する必要はあるのだろうと思っていますが、やはり当該労働者の心身の健康を確保するという観点からすれば、一定の労働時間の把握義務というものはおのずと生じてくるのだろう、このように考えています。したがって、「健康管理時間」という位置づけで、一定の実労働時間の把握義務を使用者に課すことについてもなにがしかの形で明記していくべきではないかと思います。

 加えて「自己申告制による労働時間の把握」に対する問題点ということでございますが、自己申告制の実態を見ますと、語弊があるかもわかりませんが、やはり曖昧な労働時間管理につながりやすい側面を持っているのではないかと思っています。労働側としては、自己申告制がサービス残業の温床にもなっているのではないかという思いをしております。

 ちなみに201310月の規制改革会議雇用ワーキンググループで早稲田大学の黒田教授が示された資料では、労働力調査と毎月勤労統計調査のデータを用いて両者の差を示され、それによってサービス残業の時間数を推計されているのですが、そこでは週当たりでみて趨勢的に5、6時間の乖離があるとされています。したがって、年間ベースで考えたときには必ずしもイコールにはならないと思っていますが、例えば52週として推測しますと、年間では250300時間の乖離が生じているということでございます。現在の労働時間の把握の甘さがこうしたサービス残業につながっているのではないかという危惧を持ってございます。

 そうしたことから、自己申告制のあり方についても、同様の見方で適切な見直しを行う必要があるのではないかと考えておりますので、御意見として申し上げたいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 この2つの論点につきまして、ほかにはいかがでしょうか。

 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今、高松委員が指摘をさせていただいた点で、もし、厚生労働省でデータをお持ちであればぜひ教えていただきたいのですけれども、この労働時間法制を論議するに当たって、われわれは厳格な労働時間の管理が必要だという前提で話をしているわけでありますが、残念ながら現実にはサービス残業があるということが指摘されているわけです。先ほど高松委員が指摘しましたように、労働力調査は労働者個人に何時間働いたかと調査するものでありますので、まさしく労働者の回答として出てきた数字です。これに対して、毎月勤労統計調査は事業所にお聞きするものであることから、労働者の認識と事業所の認識との間にギャップが出てきているというわけです。そしてその両者のギャップは年々広がってきているという指摘がなされているわけですね。

 もう一つ、労働基準監督官が事業場に立ち入ったときに、時間外労働について毎年何億円だったかの規模で、ものすごく多額な金額の未払いがあるということが毎年発表されているわけです。われわれとしては、労働時間の把握の方法として自己申告という方法が残されていることがまさしくこうしたサービス残業につながっているのではないか、その温床になっているのではないかという認識を持っているところです。そこで、こういった賃金不払残業に対する認識なり、今ほどデータを申し上げた点について厚生労働省として実態をつかんでおられるのだったら、ぜひ示していただければと思っています。

 以上です。

○岩村分科会長 事務局に御質問ですので、お願いいたします。

○村山労働条件政策課長 お答えいたします。賃金不払残業自体はあってはならない法令違反ですので、厳正に監督指導をしております。また、新谷委員からもお話がありましたが、賃金不払残業の状況等について取りまとめて公表しており、そのような実態があること自体は事実です。

この点について、使用者団体においても、賃金不払残業などの是正に向けて労働時間の適正管理を呼びかけるなど自主的な取組をしていただいております。

いずれにしても、基本的な行政の姿勢として、賃金不払残業に対して厳正に対処していくことは何ら変わるものではありません。

 その上で、労働力調査と毎月勤労統計調査の労働時間の乖離に関しては、夙に労働経済の先生方をはじめとする有識者に指摘されてきている経緯があります。一方で留意が必要なのは、例えば、毎月勤労統計調査は、事業所に対して当該事業所での1つの仕事に関する労働時間を調査するものですが、それに対して2つ以上の雇用先がある方の場合、労働力調査の結果との関係をどう整理するのか。また、労働力調査は、世帯を通じた個人調査であり、賃金の支払いとリンクした厳密な算定に基づいて記入されているのかといった点も、指摘されております。

 その上で、最近の動向等については、精査して、必要があれば御報告したいと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 新谷委員、よろしいでしょうか。

 では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 私どもも賃金未払い残業は徹底してなくしていくべきというスタンスであります。そうした前提でお聞きいただきたいと思いますが、確かに一部企業で、例えば外回りの営業をしている方が、一旦必ず会社に戻ってきて、フラッパーゲートなり、パソコンのログオフ、ログアウトで記録をして出てくるというケースもございますが、直行直帰があるようなケースにおきまして、一々会社に戻ってきてログオフ、ログインをするということは、結果として労働者の拘束時間を長くし、労働者のためにもならないということは、御理解を賜れればと思っております。これだけではないのですけれども、そういう実態もあるということを御理解いただきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 使側委員の皆さんも、サービス残業はあってはならないということで取組をされていると思いますし、我々も同じ思いで取り組んでいるのですけれども、今の鈴木委員のご発言ですと、資料49ページにあります四六通達の3で規定されている「自己申告制による始業・終業時刻の確認および記録を行う場合の措置」については、外回りの労働者についてのみ当該措置を適用するという趣旨と理解してよろしいのでしょうか。

○岩村分科会長 では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 精査はしておりませんけれども、外回りや社内研修のように、自己申告と客観的な記録を併用せざるを得ないようなケースというのはそれ以外にもあると思いますので、必要性に応じてそういったものも認めてもらいたいという趣旨で申し上げたところであります。

○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 やはり人件費というコストとしての制限があって、毎月これ以上時間外労働がつけられないという中で、実際の労働時間数と賃金を支払われる労働時間数がずれてしまっているケースは多く見られます。このような状況になるのは外回りの営業の場合だけではないと思うのですね。それが自己申告という曖昧な労働時間の把握方法と相まって、サービス残業を生んでしまっているのではないかと思っているわけです。

 「現在の四六通達は厳しい」と使用者側はおっしゃると思いますけれども、実際には自己申告という穴が完全にあけられてしまっていて、これが適切な労働時間の把握を妨げてしまっているのではないかという認識を持っております。

 以上です。

○岩村分科会長 八野委員、どうぞ。

○八野委員 厚労省が今月11日に発表されました過重労働解消相談ダイヤルや労働条件相談ホットラインの中でもそうですが、「賃金不払労働」のことを「サービス残業」とはあまり言っていただきたくないなと思います。サービス残業といいますが、労働はただではないですから、やはり「不払労働」とはっきり言っていただきたいなと思っております。さて、過重労働解消相談ダイヤルと労働条件相談ホットラインの相談件数の集計において、不払残業が588件ということで、特に相談が多かったと聞いております。これは外回りの営業の方からの相談だけではなく、内勤の方などからも相談があったというと伺っておりますので、もしトピックス的に相談内容が資料として出るのであれば、可能な限り相談の具体的事例を明らかにしていただければと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 それでは監督課長、お願いします。

○秋山監督課長 ただいまの御質問の件ですが、1111日に厚生労働省で発表したものは2つあります。一つは9月1日から平日の夜間、土日に委託事業で実施している「労働条件相談ほっとライン」の約2カ月間の実績です。もう一つは、過労死等防止対策推進法の施行に合わせて、都道府県労働局の職員が11月1日に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の結果です。

 この9月1日から実施している「労働条件相談ほっとライン」と、11月1日に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の全体の相談件数3,422件のうち、一番多かったのが賃金不払残業に関する相談で、588件となっております。

 具体的な事例については、1111日の発表に、「相談事例」として、「長時間労働・過重労働」と「賃金不払残業」の類型別に、代表的な事例を幾つか紹介しております。

 また、お断わりしておきますが、これらの事例は監督指導を実施した内容ではなく、電話で相談を受けたものですので、正確性が担保されたものではありません。しかしながら、賃金不払残業についても、さまざまな業種において10以上の事例があり、ホームページにも載せておりますし、必要に応じて分科会に提出をする等させていただきたいと考えております。

○岩村分科会長 八野委員、よろしいでしょうか。

○八野委員 はい。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 そのほかよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、前回の積み残し分でありましたところにつきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。

 次に弾力的労働時間制度が、もう一つの残っている課題でございます。資料2を見ていただきますと、今日黒線で囲んでいただいている2、3、4というのがそれに該当することになります。これについても事務局で資料を用意していただいておりますので、まず、それについての説明をお願いしたいと思います。

○古瀬調査官 それでは、資料2〜4について御説明いたします。

 資料2は、本日の3つの議題です。

 次に、資料3です。

 1ページは改訂成長戦略の労働時間関係の抜粋ですので、説明は省略いたします。

 2ページ目、1つ目の議題の「新たな労働時間制度」についてです。当分科会で前回御議論いただいた際の御意見をまとめたものです。「閣議決定内容やこうした意見を踏まえ、さらに議論を深めていくこととしてはどうか」としております。

 その下の表です。まず、「制度導入の意義」について、労働者代表からは「長時間労働を助長する制度であり、到底容認できない」、「我が国の労働時間は国際的にみて長い以上、労働時間を国際標準レベルにまで短縮するのが先決」、「今でも企業は労働時間だけで評価している訳ではなく、成果も評価している。新たな制度を導入しなければ成果を評価できないという論理は理解できない」という御意見がありました。

 一方、使用者代表からは「個々の意欲と能力を発揮して生産性を高め、国際競争力をつけるためには、新たな制度を選択肢として示すことが必要」、「いつ働くかによって賃金が変わるとマネジメントをゆがめる。成果を出していることに対してダイレクトに評価する選択肢があって良い」という御意見がありました。

 次の「対象業務・対象労働者」について、労働者代表からは「年収を要件に労働時間規制の適用を外すことについて合理的理由を見出せず、また、1,000万円という年収要件は今後引き下げられる懸念が大きい」、「専門職という切り口で労働時間規制を適用除外しているのは、世界中でアメリカだけではないか」との御意見がありました。

 一方、使用者代表からは「ごく一部の業務に限定されることなく、研究職、技術職、市場調査担当者、さらには、付加価値の高いビジネスモデルを創造するソリューション型ビジネスの担当者も含めて幅広いスキームとすべき」との御意見がありました。

 次の「法的効果」について、労働者代表からは「労働時間と成果のリンクを切ることは、労働時間制度を通じてではなく、各社の人事処遇制度やマネジメントを通じて実現可能」との御意見があり、使用者代表からは「時間外、深夜、休日の原則を適用しないことが適当」、「現行では、評価査定と別に、労働時間に応じて賃金が上乗せされる。短時間でも出した成果を評価されたいという声もあり、本人が選択した場合に適用されることとすべき」との御意見がありました。

 また、「健康確保」について、労働者代表からは「すべての労働者を対象とする上限時間規制がない中で成果のみ求められ、長時間労働を助長する」、「過重労働につながることに対して何の手当もなされていない」との御意見がありました。

 一方、使用者代表からは「対象者に対する十分な健康確保措置を手当てすべき」、「企業にとって社員は貴重な財産。現在でも、健康確保に労使で知恵を出し取り組んでおり、実態に沿った措置を労使で選択できるようにすべき」との御意見がありました。

 「労働時間の把握」について、労働者代表からは「使用者にはすべての労働者に対する安全配慮義務がある以上、在場時間なり在社時間なり、労働時間が何時間あるのかの把握義務を負うべき」との御意見があり、使用者代表からは「安全配慮義務を履行するために、適切に把握している。ただし、客観的記録と自己申告を併用する企業が多く、各社が工夫を凝らしている実態を尊重すべき」との御意見がありました。

 続いて、3ページは、まず、対象範囲についての資料です。

 まず、論点について、「閣議決定内容を踏まえ、『一定の年収用件(例えば少なくとも年収1,000万円以上)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者』に関する企業ヒアリング結果も参考に、『新たな労働時間制度』の対象業務・対象労働者について、どのように考えるか」としております。

 4ページが、その企業ヒアリング結果です。この資料は、「高度な職業能力を有する者(管理監督者除く。年収1,000万円以上)の業務内容、年収水準、職務の明確性等について、企業にヒアリング調査したものの一部」です。

 また「事務局として、『新たな労働時間制度』の対象業務等になり得ると考えている範囲を示すものではない」という旨を注記しております。

 その上で、4つの企業についてのヒアリング結果を記載しております。

 1つ目の証券について、業務内容は「ファイナンス・M&Aに関するアドバイザリー業務」、「有価証券の売買業務」、「金融商品の開発業務」、「企業・市場等の分析業務」、「対法人向けの金融商品の営業」となっております。

 年収の内容は「2〜3年目になると、期末査定によるボーナス込みで1,000万円以上となり得る」となっており、職務の範囲は「職務記述書により仕事を明確化。職務記述書は契約時のオファーレターにも添付」、「目標管理制度あり」ということです。

 その他の欄について、「平均勤続年数は5年弱。3年経たずに競合他社からのオファーで転職する人もいる」、「労働市場の中でおおよその賃金相場がある」ということです。

 次の銀行について、業務内容は「有価証券の売買業務」となっております。

 年収の内容は、「500万円(試用期間)〜3,000万円」、「外部労働市場におけるプライスを前提に賃金を設定」、「退職金はなし」ということです。

 職務の範囲は「契約時のオファーレターにより職務の内容・範囲は明確にされる」、「年初に目標を立てるときに、それぞれのチームにおける役割を明確化」ということです。また、「1年契約。基本的に中途採用」ということです。

 次の情報通信について、業務内容は「システムエンジニアの業務」、「コンサルタントの業務」、「営業」となっております。

 年収の内容は、「ボーナス(インセンティブ給)込みで1,000万円以上の者がいる」ということです。

 職務の範囲は、「世界共通の職務定義書により職種、職務内容を明確化」、「世界共通の目標管理制度により定量的な業績(売上、稼働率)をメインに評価」ということです。

 最後の製薬について、業務内容は、「研究開発業務」、「管理部門(財務、人事、法務)」、「営業(MR)」、「製品の生産技術の開発業務」となっております。

 年収の内容は、「職能資格制度の上位に、ボーナス込みで1,000万円以上の者がいる」、「1,000万円以上層の平均は1,200万円」となっております。

 職務の範囲は、「職務記述書はない」、「目標管理制度により個人の職務内容を明確化」ということです。

 5ページは、「新たな労働時間制度」の法的効果についてで、「『労働時間の長さと賃金のリンクを全面的に切り離す』(労働時間規制の原則を適用除外とする)ことについて、具体的にどのように考えるか」としております

 その下の表は、原則、裁量労働制、管理監督者、自己管理型労働制の適用関係の対比表です。内容の説明は省略いたします。

 6ページは、手続についてで、「現行の企画業務型裁量労働制との均衡や、その法的効果の強さを踏まえ、労使委員会による決議を要することとすること、『希望しない人には、適用しない』ための要件を設定すること、について、それぞれどのように考えるか」としております。その下は、対比表です。

 7ページは、健康確保等についてで、「労働時間規制の原則を適用除外とする場合、それに見合う健康確保のための仕組みを設ける必要があることから、以下の点について、どのように考えるか」としております。

 その「以下の点」として、「『新たな労働時間制度』の対象労働者については、割増賃金支払いの基礎としての労働時間管理の必要はないが、その健康確保のために労働している時間の管理は必要であることから、事業主が、在社時間など、労働時間とは異なる概念の時間(健康管理時間(仮称))を把握した上で、1対象労働者の健康管理時間(仮称)の状況に応じた健康・福祉確保措置の実施を決議することを、制度導入の要件とすること、2『労働時間規制の原則の適用除外』に見合う、対象労働者の健康管理に必要な医師による面接指導を行うこととすること、3『勤務間のインターバル規制措置』『健康管理時間の絶対上限規制措置』『一定日数の絶対休日取得措置』なども含めて制度導入に当たり講ずるべき措置を検討し、そのうちのいずれかを講じることなどを、制度導入の要件とすること」としております。

 8ページは、労働時間の把握と健康確保等のための措置についての、各制度の対比表です。

 9ページから、「裁量労働制の新たな枠組みについて」の資料です。以前は、現行の専門業務型裁量労働制及び企画業務型裁量労働制に対置する形で、「新たな枠組み」を考えることも含め御議論いただきましたが、基本的に現行の企画業務型裁量労働制の対象のあり方についての御関心が高かったことから、それを踏まえて論点を整理しております。

 具体的には、「前回(10/8)、公益委員から、閣議決定内容を踏まえ、『裁量労働制の対象範囲と手続を見直すこと』と、『労働者が真に裁量を持って働くことができるよう、見直しを行うこと』の2つの見直しをセットで議論してはどうか」という提案がありました。

 この提案を受けて、「新たに企画業務型裁量労働制の対象とするにふさわしい業務」、「労使委員会の決議届と本社一括化」、「6か月ごとに求めている定期報告の廃止、又は、その頻度の緩和」、「『出勤時間に基づく勤怠管理を行う』等の制度趣旨を没却するような不適切な運用への対応」の4つの論点について、さらに御議論を深めていくこととしてはどうか、としております。

 また、これに加えて、「対象労働者の健康確保を図るため、現行の指針に列挙されている健康・福祉確保措置のうち、いずれかを講じる旨を決議することを、制度導入の要件とすること」、「対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況を把握する方法として、自己申告を用いることは原則として認めないこと」、「『所定労働時間をみなし時間として決議する一方、所定労働時間内で処理できない分量の業務を与えながら処遇の担保策を講じない』といった制度趣旨を没却するような不適切な運用への対応」の3つの論点についても、どのように考えるか、としております。

10ページは、現行の企画業務型裁量労働制の対象業務の例について、労働基準法及び指針の抜粋を記載しております。

11ページは、企画業務型裁量労働制の対象業務について、使用者側から示された具体的な御意見をまとめたものです。これまで企画業務型裁量労働制の対象業務については、労側委員から拡大に慎重な御意見がある一方、使側委員からは、具体的な業務についての御意見が示されております。

ついては、こうしたものも参考に、適用対象業務のあり方について御議論を深めていただいたいと考えております。

 具体的には、まず、「単に既存の自社商品の販売をするのではなく、顧客のニーズを聴き取り、社内で新商品開発の調整を行う等した上で、当該ニーズに応じたオーダーメード型の商品をセットで販売する」といったソリューション型営業の業務についても対象に含めるべきとの御意見がありました。

 次に、その下ですが、「全社レベルの製品の品質管理の業務」と「サービス技術向上の業務」のような「企画立案と当該立案内容の推進業務を一体として行う業務など、裁量的にPDCAを回すような業務」についても、対象に含めるべきとの御意見がありました。

 さらにその下ですが、「対象業務の範囲については、職場の実情を知る労使に委ねるべき」や、「年間を通して見れば、仕事の大半、裁量を持って働く場合についても対象とするという考え方も必要」といった御意見がありました。

12ページと13ページは、労使委員会の決議届の本社一括化の論点に関する資料で、12ページが現行の「企画業務型裁量労働制に関する決議届」の記入例です。

13ページは、既に本社一括届出が認められている三六協定と就業規則について、その一括化を認める要件等を整理した表です。

 左側の三六協定ですが、「要件」について、「事業の種類」、「事業の名称」、「事業の所在地」、「労働者数」を除いた協定の内容が本社と本社以外の事業場で同一であること等が要件となっております。

14ページは、企画業務型裁量労働制の定期報告関係の論点の資料として、現行の報告の記入例です。

15ページは、現行の裁量労働制に係る労働時間等の把握と、健康・福祉確保措置について記載をした資料です。企画業務型裁量労働制に指針において列挙されている健康確保措置については、赤枠のとおりです。

16ページは、みなし労働時間別にみた裁量労働制適用者だけに支払われる手当額のデータです。

 グラフの一番下ですが、みなし労働時間が9時間以上の場合は手当額10万円以上が77.6%という結果になっております。

17ページは、実労働時間別にみた裁量労働制適用者だけに支払われる手当額のデータです。

 実労働時間が1日平均8時間未満や8時間以上9時間未満では、手当額5万円未満や5万円以上6万円未満という回答が、ほかに比べて多くなっております。

 最後、18ページは、「3 フレックスタイム制の清算期間の延長について」で、「前回(10/8)の議論において、『アンケート結果でも、清算期間の延長を求める声は少ない』との御意見が示される一方、『育児や介護への対応をはじめ労使双方の様々なニーズがある』との御意見もあったことから、数か月程度まで清算期間を延長することについて、どのように考えるか」、「このとき、月をまたいだ弾力的な労働時間の配分が可能となることから、過重労働につながりかねないことについて、どう考えるか」としております。

 その下は参考として、労働時間の制限を定めた労使協定を監督署へ届け出ることとされている1年単位の変形労働時間制の概要です。

 続いて、資料4は、これまで各委員からの御質問事項やお求めのあった資料です。

 1ページと2ページは、過半数代表者に関するデータについて、企業規模別のデータの御要望がありましたので、1ページが過半数代表者の選出方法、2ページが過半数代表者の職位を載せております。

 3ページは、労働条件の電子的明示の御議論の際に、労働条件の明示に係る労働基準法第15条第1項違反の状況について御質問があった関係の資料です。

平成25年に定期監督等において、労働基準法第15条第1項違反について是正勧告した件数が約1万7,000件で、そのうち各都道府県の3件ずつを任意に選択して、141件を集計した結果です。

 内訳は、「労働条件を明示していないもの」が9件。「労働条件を口頭では伝えているが、書面の交付を行っていないもの」が74件。さらに、「一部の事項について明示していないもの」が58件となっております。割合については、その右側のとおりです。

 4ページは、「企画業務型裁量労働制に関する決議届の届出状況」と「企画業務型裁量労働制に係る健康・福祉確保措置等の報告の状況」についての資料です。こちらは東京、愛知、大阪の3局の主要な監督署における件数をまとめたものです。

 決議届については、平成22年に合計で214件の届出があり、そのうち決議届の有効期間として望ましい期間とされている3年以内に新たな決議届の届出があったものが147件で、割合は67.8 (正しくは68.7% となっております。

 表の下の※1のとおり、企画業務型裁量労働制を採用していた事業場が、その後同制度の採用を取りやめた場合、新たな決議の届出を行う必要はないため、67.8 (正しくは68.7% の残りの32.2 (正しくは31.3% には、そうしたケースも含まれ得ることを注記しております。

 次に、健康・福祉確保措置の定期報告についてです。

平成25年に届出のあった決議届は、279件となっております。決議届を届け出た事業場は、6か月以内ごとに1回、定期報告を行わなければならないこととなっておりますので、最初の決議届が出された時期により、定期報告を提出すべき時期が、平成2610月時点で3回到来している場合、2回到来している場合、1回の場合がありますが、この提出すべき定期報告が全て提出されている事業場の件数を右の欄に記載しております。

 件数としては236件で、割合としては84.6%となっております。

 説明は以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 ただいま事務局から資料の説明をいただきましたけれども、これから先の議論につきましては、それぞれの論点に区切って進めることにさせていただきたいと思います。

 まず初めに資料3の中の最初が「1 『新たな労働時間制度』について」ということでございますので、ここから始めてまいりたいと思います。これにつきまして御意見あるいは御質問がありましたお願いをしたいと思います。

 では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 まず、資料の2ページにあります「新たな労働時間制度」についてでございますが、その対象者につきましては、時間でなく、アイデア勝負の成果で評価されたいと思い、かつ、使用者との関係で交渉力を持つことを前提に、制度導入に同意した社員とすることが適当ではないかと考えております。

 また、対象業務については、高い職業能力を駆使して成果を生み出す業務とすることが適当ではないかと考えております。

 資料の4ページにるるお調べいただいたところを掲載していただいておりますけれども、ここに書いてある各種業務にとどまらず、その他専門職も、今、申し上げたところをメルクマールにして対象となり得ると考えております。

 例えば工場の生産ラインの更新ですとか改善、新たな製造技術の確立などを企画して実施をする技術職というのは、生産が停止している深夜あるいは休日にラインに出向いてアイデアを練るような場合もあると聞いております。製造技術の出来、不出来によってリードタイムの短縮や歩どまりが高まるといったことで、成果のあるなしも明らかだと思っております。

 市場調査担当者は、魅力ある商品とするには明確なコンセプトが必要で、アンケートの分析あるいはモニターの調査などの定量的なデータもさることながら、時に休日に販売現場に行って、消費者がどういった点に注目をしているのか、どういった点に関心を持っているかといったことをウォッチしたり、あるいは未来の市場、ニーズを考えたりします。まさにアイデア勝負で、どこまでが就労時間か正確に画することも難しく、労働時間にかかわらず最適な商品戦略を提案し、商品がヒットすれば成果が明確にあらわれる業務だと思っております。

 成果を出すために、時間帯や場所に捉われず自由に働きたいけれども、健康確保に気を使っている企業ほど、例えば残業ですとか、休日労働の事前申告などのルール化をしており、社員としては申請をためらうような状況もあると聞いております。

 なお、対象業務を決める際には、例えばホワイトハッカーですとかデータサイエンティストというように、10年前にはなかったような専門職もどんどん出てきておりますので、詳細に列挙するということではなしに、大きな枠組みを決めた上で、個別企業労使で対象業務をある程度決められる仕組みとすることが大切ではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、勤務する時間帯、場所に捉われず、また、時間でなく成果で評価されたいと考える者に対する選択肢を設けるということが重要ではないかと考えております。

 続いて、手続について申し上げたいと思います。

 制度趣旨は、今、申し上げたように、時間でなく、発想力や企画力などアイデアに基づいて生み出される成果で評価されることを希望する社員、そうした方々に対する選択肢を増やすという点にあると思っております。したがいまして、本人同意要件と不同意に対する不利益取り扱いの禁止は、ともに必須の要件だと考えております。

 また、労使委員会による決議につきましては、当該企業で実効性のある健康確保措置や適切な処遇に関する十分な話し合いを行う手続を担保するものとして必要だと考えております。

 健康確保措置について申し上げたいと思います。

 先ほども出ておりました健康把握のための時間把握につきましては、新たな労働時間制度を導入する企業に対して、今でも責務であるということを明確にするために、何らかの措置があってもよいと思っております。ただし、繰り返しですが、自己申告を含めた実態に即した方法ということを改めて申し上げたいと思います。

 実効性のある健康、福祉確保措置を企業が選択する仕組みとするその方向性については、賛成をいたします。上限規制、インターバル規制、絶対休日規制が選択肢として入ることも適当と考えます。

 ただし、例えば産業医のメディカルチェック、すなわち産業医の面接指導は、本人の疲労の蓄積度合いですとか勤務実態をチェックし、必要に応じて人事部への意見具申をすることで、就労抑制ですとか深夜業務の禁止、配置転換など事後措置につながるという意味で、健康確保に直接かかわる措置だと理解をしております。したがいまして、法定を上回る産業医のメディカルチェック、面接指導というのは、上限規制ですとかインターバル規制、絶対休日確保と並び得る措置と考えております。

 そのほかにも実効性のある措置はあろうかと思いますので、ここに例示をされている3つの措置に限定されることなく、これらに準ずる選択肢を認める必要があると考えております。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それでは平岡委員、どうぞ。

○平岡委員 ありがとうございます。

 ただいまの鈴木委員の御発言と重なる部分もあるかと思いますが、企業としての実態に即して少し御説明をしたいと思います。

 新たな労働時間制度についてでありますが、本日御説明をいただいた資料で若干気になっておりますのは、対象者のところを職種で限定していくような考え方になっていくと、やはり実態とは合っていないのではないかと、そのように思います。

 現実問題といたしまして、同じ職種の中でも職務の範囲ですとか進め方あるいはその対応能力というのは個人によって異なっておりまして、また、いろいろな職種というのは日々新たに生まれていくということもございますので、限定列挙的に職種を限っていくというのは対応が難しいのではないかと思います。

 逆に個人ごとに、その個人がどういう業務を与えられているのか、あるいは自分で提案しているのか、その業務に対する評価の基準は何なのか、その評価によってどのように処遇されるのか、そういったルールを明確に確認して、それを前提に個人がこの働き方を選ぶと、そういったやり方が現実的ではないかと考えております。

 健康確保措置についてですが、こちらについても労働時間ではなく、勤務の実態を把握する。それに基づいて健康確保の措置を行っていくということは必要だと思っておりますが、例えば私ども今、裁量労働ですとか、あるいは管理監督者についても、パソコンによる時間の把握というのを行っております。在宅勤務等も認められておりますので、そういった形になってくるわけですが、例えば今日、私がここにいるこの時間というのは、自己申告でしか把握ができないわけでございまして、そういった機械的なものですとか、あるいは現認ですとか、自己申告ですとか、組み合わせながら現実的に把握をしていくということしかないのではないかと思っています。

 そういうやり方も含めて本人にきちんと提示をして、本人が選択をしていくと、そういうやり方が望ましいと思っております。

 以上でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 分科会長の御指示で、まず「新たな労働時間制度」について論ぜよということでございますが、先ほど一気通貫で資料の御説明をいただきながらずっと資料拝見しておりましたが、やはりよくわからないな、というのが実感でございます。

 本日の資料の1ページに閣議決定された内容が記載されており、その中の2のところが、今回の論点に挙がっているところでありまして、「労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した『新たな労働時間制度』を創設する」ということで書かれてございます。

 ここでわからないのは、「2時間ではなく成果で評価される制度への改革」と「3裁量労働制の新たな枠組みの構築」との関係なのです。裁量労働制もみなし時間制をとっておりますので、もう既に労働時間の長さと賃金とのリンクが切れている制度と言えます。また今回の資料の中で、事務局がJILPTに要請し、JILPTが企業にヒアリング調査した結果が4ページに出ております。企業が「高度な職業能力を有する者」と考えている業種として、有価証券の売買業務や、対法人向けの金融商品の営業、MR、製薬会社の営業というのが挙げられているところですが、同じように資料11ページを見ると、これは次の論点のことにかぶってくるのですけれども、「企画業務型裁量労働制の対象業務に関する使用者側委員からの意見等」として様々な業務を対象とするようにとの主張が挙げられています。内容的には、オーダーメード型の商品の販売業務などが、使用者の側で裁量労働制の新たな枠組みの創設に向けてはこういう業務が対象となるといいのではないか、ということで出されているわけです。

これらを見比べたときに、「新たな労働時間制度の創設」の対象労働者と、この「裁量労働制の新たな枠組み」の対象労働者とは、かなり重複しているのではないかという気がしております。この点は事務局に教えてほしいのですけれども、この対象層の違いを区別しているのか否か、またそれぞれの対象労働者をどのように考えたらいいのか。これがわからないと各論の議論に入りにくいなという気がしています。今回のヒアリングや使用者側委員の意見で挙げられた職種を見ていても、両者の想定する対象業務は完全に重複していると思います。

 もう一点わからないのは、資料4ページにヒアリング結果が出ていまして、年収の内容として「1,000万円以上」という回答が出ていますね。では、「年収1,000万円」という年収要件はどこから出てきたかというと、まさしく閣議決定された改訂成長戦略の中に「2時間ではなく成果で評価される制度への改革」として「一定の年収要件(例えば少なくとも年収1,000万円以上)」と書かれていますので、そこから引っ張ってこられたのだと思います。しかし、以前から私どもは「なぜ1,000万円なのか」と質問をしておりますけれども、なぜ1,000万円だったら労働時間の規制が緩和されるのか、その合理的な答えはいまだに持ち合わせていないというか、聞かせてもらっていないわけです。そして今回事務局より提示された論点の中にも、合理的な説明が入っていないのです。なぜ、1,000万円だったら労働者の健康と命を守る規制が外されるのかという合理的な理由をぜひ教えていただきたい。そのように思っております。

 例えば、裁判例の中にもモルガン・スタンレー・ジャパン事件のように、たしか基本給として月額約184万円で、12カ月で約2,200万円というような事例は確かにあったと思うのですが、このような事例は珍しいケースであり、年収1,000万円であれば労働時間の規制が緩和されてよいのかという点についての合理的な理由はいまだどこにもないのではないかと思っております。立法事実、こういった労働時間の規制の緩和をしなければいけない立法事実は一体どこにあるのか、その点をお聞きしたいと思います。以前一度お聞きしたら、「それは閣議決定されたのだから」という事務局の御答弁だったと思うのですけれども、前からお聞きしているようにまずこの点を明らかにしていただきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 今日の資料でも出ておりますけれども、誤解のないようにお断りする必要があると思うのは、例えば4ページのところで企業のヒアリング結果が挙がっておりますが、そこの2番目の黒ポツでありますように、事務局としては、「『新たな労働時間制度』の対象業務等になり得ると考えている範囲を示すものではない」と考えているということです。これが対象業務となり得ると考えている範囲を示すものではないということであり、11ページに挙がっているものも同じ趣旨だと理解しておりますので、そこは誤解のないようということだけを申し上げます。新谷委員が誤解しているということではなくて、よくおわかりだと理解しておりますが、誤解のないようにということだけ申し上げておきます。

 今、事務局にお尋ねでしたので、お願いいたします。

○村山労働条件政策課長 2点の御質問がありました。まず1点目は、労働時間と賃金のリンクを切り離した新たな労働時間制度について、現行の裁量労働制も労働時間とのリンクは、みなし時間の設定によって、相当程度相対化されているのではないかという旨の御質問でした。

 この点に関して、資料3の5ページに、原則的な労働時間のルールと比較して、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制のみなし労働時間について説明した資料があります。

 例えば時間外労働について、裁量労働制のみなし労働時間が7時間45分や8時間であれば、法定時間外の割増賃金とは、ある意味切断されるということになろうかと思います。

 一方で、労使の話し合いの結果、みなし労働時間の設定はさまざまです。例えば1日の法定労働時間を超えて、標準的にこれぐらいの労働時間だという考え方のもとにみなし労働時間を設定されている労使もあります。その場合には、労働基準法第36条に基づく36協定の締結及び届出が必要になります。同時に、法定労働時間を超えるみなし労働時間までの割増賃金の支払い義務もかかってきます。

 また、裁量労働制については、休日労働や深夜労働に関しては、原則的な労働時間制度と同様のルールになっております。こうした現行の裁量労働制のあり方を前提として、先ほど御説明したような論点も含めて、様々な角度から議論を深めていただければと考えております。

一方で、前回の労働基準法の改正の際に、最終的には結実いたしませんでしたが、当分科会で御議論が相当程度深められたように、時間外や休日、深夜の割増賃金について、労働時間の長さや位置とのリンクを切り離すという考え方が、どの程度実現できるか否かということについて、産業競争力会議等での議論も踏まえて、閣議決定で一定の問題提起がなされたと考えております。

 その際、念のため申し上げますが、心身の健康を確保するための全ての規制を適用除外するとか、何もない世界をつくるということを申し上げている訳ではありません。閣議決定でも、健康確保のための措置、あるいは仕事と生活の調和を図りつつという要素も明記されております。労働時間の長さや位置に直接由来する割増賃金とのリンクは見直しつつ、一方で健康確保のためのルールは別途しっかりと講じながら、新しい労働時間のルールができないかという問題提起について、前回法改正の際も御議論いただきましたが、今回改めて閣議決定されているものと理解しております。

 2点目は、少なくとも1,000万円以上という閣議決定内容について、立法事実はどこにあるのかという御質問でした。産業競争力会議等での議論や関係閣僚間での折衝も踏まえて、最終的に政権として決められた数字ですが、高い年収が確保されていれば、ほかの要素は一切勘案しないということではないものと考えております。

 既に本分科会でも御指摘のあったように、職務遂行の方法や労働時間の配分に関しての裁量性、あるいは職務の範囲の明確性というのは、換言すれば、労側から御指摘のあった業務量をボリュームコントロールできることと裏表の関係だろうと思います。

 それらのさまざまな要素を考えるときに、労働基準法の契約関係の下位法令にも、交渉力という観点から、ある程度年収ということも総合的に考慮する要件設定もありますが、そういう複数の要件の一つとして、年収要件があり得るのではないかと考えております。

 先ほど個別の裁判例のお話もございましたが、その裁判例も、給与が労働時間数ではなく、営業利益、あるいは役割で決定されるとか、職務遂行方法が委ねられているとか、業務量を自己決定できるかとか、そういったさまざまな考慮要素のチェックポイントがあって、その上で高額の報酬を得ているということが、一つの考慮要素として入っていたものと考えております。

 具体的な数字についてどの程度という論点は、確かにあると思います。一方で閣議決定も、少なくとも年収1,000万円以上とされており、1,000万円ということが所与の事実で決まっているものではないと考えています。

 一方で、平岡委員から、対象業務のあり方があまりにもリジットな限定の仕方だと、現在の情勢に合っていないのではないかという御提起もありましたが、そういうことも含めて、具体的な要件の議論、考え方の基本的な整理の議論を労使で深めていただければと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 新谷委員、よろしいでしょうか。

 ほかにはいかがでございましょう。

 それでは使側で秋田委員、それから池田委員という順番でお願いをいたします。

○秋田委員 ありがとうございます。

 今、いろいろな御意見がありましたけれども、鈴木委員あるいは平岡委員からありましたように、いずれにしましてもこの制度につきましては、成果を出したことに対してダイレクトに評価をするという一つの選択肢として、本人同意も含めて導入をするということでございます。ということは経営者及び労働者もこれを希望するというニーズに合った場合に導入をするということでございますので、そういった意味で、ぜひ導入のほうに前向きに進んでいただきたいと思います。

 今、労働者側委員の方から、裁量労働制でも同様の効果は得られるというお話がございました。確かに裁量労働制とこの新しい労働時間制度の対象者が全く相反するということではなくて、恐らく重なる部分も多少なりともあるのだろうと思います。では裁量労働制でできるのだからということであれば、逆に言いますと、この労働時間と成果のリンクを切るということについては、その事象自体は労働側委員も反対されていないということであれば、もっとわかりやすい制度として、使いやすい制度として新たに導入をすべきだろうと考えております。

 以前の委員会でも、現行の人事処遇制度あるいはマネジメントの中でそういった制度はできるのだというお話がございましたが、やはり現行の制度の中では非常にわかりづらい、あるいは手間のかかる制度しか現実は入れられないというのが、我々実務家としての気持ちでございますので、そういった面をぜひ考慮していただきたい。

 あと、いずれにしても労使で協議をして、労使協定の中で本人同意も含めて入れていくということであれば、先ほど出ました業種等につきましても、個々の企業実態に合わせたより柔軟に企業労使間の意思決定に委ねるような仕組み、これをできるだけ取り入れるべきだと思います。

 以上でございます。

○岩村分科会長 それでは池田委員、どうぞ。

○池田委員 私も同じような意見でありますが、この裁量労働制の対象の業務に関しては、実情を分かっている個々の労使で決定するというのが望ましいということと、その場合に、対象とするにふさわしくない業務について、国が一定の目安を示すことが適切と考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 神田委員、どうぞ。

○神田委員 先ほどの新谷委員の発言と少し重複する点があるかもしれませんが、改めて「新たな労働時間制度」について少し見解、思いを述べたいと思います。今回の労働時間法制の議論とも関連しますが、一時期、「労働規制は岩盤規制である」という言葉が飛び交いました。この「岩盤規制」という表現に対しては、私どもの産別の内部でも非常に憤慨する方もいらっしゃいました。しかし、しっかりした労使関係がある職場ばかりではないわけですから、「全ての働く者の命と健康を守るというスタンスに立てば、この労働時間法制は「岩盤規制」であってしかるべきでなかろうか」、こんな話を私はしたことがあります。本題に入る前に、そんなことを思い出した次第です。

 また、先ほど事務局からご説明いただいた「委員からの質問事項について」という資料の3ページに「労働基準法第15条第1項違反の状況」が記されています。これは、平成25年に実施した定期監督のうち、労基法第15条第1項違反について是正勧告した141件(都道府県ごとに3件ずつ)を任意にピックアップして集計したものということであります。当然、労働条件明示にもルールがあるわけですから、ちゃんとその労働条件を明示しているかどうかという点は大きな問題です。これについては、私自身も労働審判員をやっていたことがありますが、個別あっせん等を含めますと、労働条件明示等が問題になってあっせん申請をしてくるケースは多々あります。しかも、そうした場合、あっせん案を双方が理解して最終的に和解に至り、そしてあっせん申請をした方がもとの職場に戻れる、あるいはそのまま企業にとどまれるようなことはなかなかありません。このように、働く方が本当に数多くつらい思いをしている中で我々はこのルールに基づいて個別労働紛争の処理を行うことになるわけですから、先ほどお話しした岩盤規制という捉え方との関連で言えば、労働条件明示についてもしっかりとした規定とされなければならない、そうしたことが現実の経験に照らして言えるだろう、と思っております。

 さて、本題に戻りますけれども、裁量労働制や変形労働時間制など、既に弾力的な労働時間制度が存在している中で、なぜそれらに追加して「新たな労働時間制度の創設」を議論する必要があるのかということが、いまだ理解ができないところであります。

 使用者側の皆さんは生産性の高い働き方を行うようにホワイトカラーにお求めですが、そうであれば既存のそれらの制度を活用するようになればいいのではないでしょうか。

 また、先ほど年収要件に関して1,000万円以上というお話もいただきましたけれども、この点についても、なかなかすっと理解できる状況にはありません。

 我々としては決してそのようには思っておりませんが、仮に生産性向上や創造性発揮の観点から現在の「弾力的な労働時間制度」に足らざるところがあるということならば、その是非等についてまずは議論すべきではなかろうか、と思ってございます。

 いずれにしましても、「裁量労働制の新たな枠組み」と「新たな労働時間制度」の関係なども整理することなく、「新たな労働時間制度」を真っ先に議論するということは、順序として納得のいくところではないな、こういった思いであります。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今の神田委員の発言とも重複するところがありますけれども、先ほどの事務局の答弁によれば、1,000万円以上であることの根拠は閣議決定によって示された数字であるということでございました。しかし、その説明で納得せよと言われましてもなかなか納得できるものではなく、今後新たな閣議決定がなされれば、この「1,000万円」という数字も翌年になると「800万円」になってしまうという懸念が拭いされません。さらにその翌年に、また「600万円」に下がっていくことすら考えられます。まさしく年収要件の根拠が閣議決定にあると言われてしまえば、一旦決められた年収要件は簡単にどんどん下げられてしまう懸念がございます。

 年収要件を定めてもそれが後日下がってしまったという例は、過去の労働行政の中にも既にあるわけです。例えば、2002年職業安定法の見直しを行った際に、有料職業紹介の求職者からの手数料徴収の要件については、制度創設の際は1,200万円であったものが、翌年には500万円下げられて700万円になったという例が実際にあるわけです。

 この資料3ページのところには「閣議決定内容を踏まえ、『一定の年収要件(例えば年収1,000万円以上)を満たし』…」と書いてあるのですけれども、それは制度を創設した時点における年収要件であって、来年以降その年収要件がどうなるかというのは全く保証がありません。その辺はどのように考えるのでしょうか。例えば年収要件について「1,000万円」という具体的な金額を法律に規定することで、金額を簡単には変更できないような形で対応されるつもりでしょうか。もちろん、我々は大前提として「1,000万円」という年収要件自体に全くもって納得していないわけですけれども、仮にこの数字が書き込まれたときに、その制度の安定性をどのように担保するのかということについて事務局に考え方があるのであれば、教えていただきたいと思います。

○岩村分科会長 では事務局、お願いします。

○村山労働条件政策課長 新谷委員の御質問にお答えいたします。

 この点については、また経緯の話で恐縮ですが、改訂成長戦略が閣議決定される直前に、新谷委員からも御指摘のあった先例なども踏まえながら、国会で議論になったことがありました。6月16日の衆議院決算行政監視委員会における総理入りの質疑で、この点について突っ込んだやりとりがなされました。この制度を導入して何年か経ったら、800万円、600万円と要件が下がっていくことが、過去の例に照らしてもあるのではないかということについて、既にこうした案がある程度固まって、世の中にも出ている段階で質問がありました。

 それに対して、総理大臣と当時の厚生労働大臣が答弁しております。総理から、今後、経済情勢の大きな変化等があれば年収要件自体についてどのように見直していくかということは、一つの論点としてはあると答弁されつつ、しかし、賃金水準や物価水準が大きく変動しない現段階においては、800万円とか600万円と引き下げることを政府としては考えていないという趣旨の答弁がなされ、当時の厚生労働大臣から補足答弁で、要すればそういったことは考えていないということですという答弁がなされました。

 閣議決定の数字に関しては、政権としてそのように国会で答弁をしている経緯があるということです。

 その上で、御質問の後段は、今後の議論につなげていく上での貴重な考え方の提起と考えております。年収要件をどのレベルで担保するのかは、さまざまな法令の規定の仕方があると考えております。

 先ほどの総理の答弁ではないですが、急激な経済状況等の変化の中で機動的に対応しなければならない場合に、具体的な数字が法律で規定されていることがいいのかどうかということについては、さまざまな御議論があると思います。

 一方で、その制度を固定化させるために、なるべく高い法令レベルで規定するという考え方もあるのかもしれません。例えば労働基準法で言えば、第37条を見た場合に、時間外又は休日の割増賃金率は原則として2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定めることとなっております。一方、政治的経緯があり、月60時間超の時間外労働の部分については、ダイレクトに5割以上ということが、法律で規定されております。

一つの条文を見ても、そのように立法者の意思、あるいはさまざまな調整状況を反映して規定振りは様々になっております。政府としては、本件について、閣議決定で、労働政策審議会で検討し、結論を得た上で所要の法的措置を講ずるとしておりますので、新谷委員から御提起のあった点も含めて、この場で御議論を深めていただければと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 考え方はわかりました。その上で論議をするということでありますが、先ほど来、使用者側の委員から、「労使で話合いをして対象職種を決めたらいいではないか」という意見があったわけであります。例えば資料4ページに「企業が『高度な職業能力を有する者』と考えている例(年収1000万円以上、管理監督者を除く)」という企業ヒアリング結果が掲載されております。これはおそらく使用者側委員が所属しておられる団体の加盟企業ではないと思いますし、また、なお書きでは「事務局として、『新たな労働時間制度』の対象業務等になり得ると考えている範囲を示すものではない」との注釈もついておりますけれども、それでも記載内容を見てみますと、対象業務として想定されているのは、年収に占める変動給の割合、いわゆるボーナスの割合が非常に高い層だと思います。つまりは、この層は成果給で、まさに労働時間の長さと賃金が分断されていて成果によって対価を払っていくウエートがかなり高い労働者であるように思われるのです。

 そのように見たとき、先ほど来事務局が言われた年収要件というものにしても、一体どの時点の年収を基準に判断することになるのでしょうか。業績には、会社の業績もあれば当人の業績も当然あるわけでして、そのような業績評価の結果によって変動する金額のどの部分を把握するのかという点について、事務局としてはどのように考えておられるのでしょうか。もし、今の時点でわかれば教えてほしい、というのが一つです。

 もう一つは、このヒアリング結果で出てきたような業務に従事する方々というのは、おそらく「管理監督者」として労働基準法第41条第2号によって適用除外としているのではなく、労働基準法第32条、第36条、第37条を適用し、適切な労働時間管理をした上で賃金を支払うべき層だと整理されていると思うのですけれども、現実的にはどうやってこのような層の人たちの労働時間の管理を行い、労働基準法第37条の問題をクリアしているのかでしょうか。この点についても、もし、おわかりになれば教えていただきたいと思います。

○岩村分科会長 1点目は、事務局に対する基本的な考え方の方向性の問題だと思います。2点目は、むしろ使側に対する御質問だと思いますので、先に事務局からお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 第1点目について、これもまたさまざまな選択肢があると思っております。そもそも年収が労働基準法の体系になじまないのかということに対して、必ずしも排除されるわけではないと考えております。一つの例として、労働基準法第14条について、一般に有期労働契約の上限は3年ですが、高度な専門職の方については5年という特例が設けられております。その特例の対象者の一部の方について、1,075万円という一定の年収水準を大臣告示で定めております。この場合には、確実に支払われることが見込まれる額として、金額を定めております。これは定め方がさまざまある中での一つの例ですが、例えばそういったものがあるということは言えるのではないかと思います。

 2点目に関しては、分科会長の御差配で使用者側にということですが、調査結果があれば、後ほど補足でお答えいたします。

○岩村分科会長 では、鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員 こちらの資料4は、具体的に承知をしておりませんので答えづらいところですが、一般論として申し上げれば、労働基準法第37条の対象になるわけですので、当然所定労働時間を超えれば時間外労働の対象になると考えます。ある一定の時間については手当として支給をするというケースもあるかもしれません。それは各社によって実態は違うと思います。あくまでも一般論ということで御理解ください。

○岩村分科会長 では、秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 これはまた事務局からも御説明をいただければいいのですが、一般的にこういった形で、歩合、成果給といいますか、時間給だけでない手当を払う場合は、月給であれば、その月の歩合の手当全体を総労働時間で除して、歩合の部分の時間外割増を別途計算をして支給し、固定部分については、通常の基本給どおりに計算をして支給するということだと思います。ですから、現状やられている企業さんはものすごく手間がかかる、あるいは複雑なシステムを介して支給せざるを得ない状況だろうと推測します。

○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 使用者側からの御発言をお聞きしますと、おそらく一定時間分の固定残業代を支払って、その時間数を超えればさらに清算をするということで労働基準法第37条違反を回避しているのだと思いますけれども、そのような形で行えているのであれば、現行制度でも十分に運用できているではないですか。なぜ「新たな労働時間制度」を創設することまでやらなければいけないのでしょうか。このことは何回も申し上げているように、現状でうまく機能しているのに、なぜ「新たな労働時間制度」を創設しなくてはいけないのか、その理由がまったく分かりません。

 先ほど、秋田委員から「非常に手間がかかっている」とのご意見がありました。たしかに、それはそのとおりだろうと思います。しかし、使用者は安全配慮義務の問題として、労働者の労働時間の把握を行わなければこうした義務を果たせないわけですし、当然のことながら、そのための労働時間把握については労働者に丸投げしているわけではないと思います。そうなると、やはり現行の制度でも運用できているのに、なぜ新たな労働時間の創設をしなければいけないのか、一向に理解できません。

 以前も申し上げたように、上級経営管理者を適用除外とするのは世界各国共通のルールだと思いますけれども、そうではない専門職についてまで適用除外としているのは世界中で見てもアメリカしかないと理解しております。また、この点については事務局からもお聞きしたように思っております。こうした状況なのに、なぜアメリカと同じような制度を導入しなければいけないのか。そうすべき立法事実があるのかという点さえ理解できないというところです。これは、毎回申し上げているとおりです。

 以上です。

○岩村分科会長 秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、今でも複雑なわかりづらい制度でできるということなのですが、今でもできるからいいではないかということは、現実にやろうとしている状況についてはやってよろしいということでしょうから、逆に言うと、それをわかりやすい制度として選択肢として入れることをなぜ御反対されるのか、こちらとしても理解できないところです。

○岩村分科会長 それでは、新谷委員にお願いします。

○新谷委員 「わかりやすい制度だから入れるべきだ」というのと、「労働基準法第32条、第36条、第37条からなる労働時間の規制を外す」ということは、全くの別問題です。「わかりやすい制度だから」というのは労働時間規制を外す理由にはならないのではないですか。労働時間規制は労働者の健康と命を守るルールなのですよ。それを「わかりやすいから」というだけで適用を外せというのは、私は使用者の御発言としていかがなものかなと感じているところです。なぜ外すのかという、もう少し合理的な理由を示していただきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 平岡委員、どうぞ。

○平岡委員 労働時間の規制といいますか、労働基準法ですか、こちらについては2つの意味がありまして、一つは賃金との関連、もう一つは新谷委員のおっしゃっている健康確保という問題だと思っています。今回の新たな労働時間制度については、1つ目の賃金のところを労働時間と切り離すと。その一方で、健康確保のところについてはきちんとした措置を講ずるということでありますので、最初の労働時間と賃金を切り離すということについて言えば、わかりやすさの問題ですとか、あるいは働いている者自体の意識の問題、自分は一体何でペイされるのかと、そこのところを明確にしていきたいというのが企業側の思いです。

○岩村分科会長 八野委員、どうぞ。

○八野委員 今、聞いていますと、「新たな労働時間制度」の対象にすべきと言われる職務・職種、あるいは業務といったものは不明確なものでした。不明確であるということは、条文として明確に規定できないということです。仮に労働基準法に記載できないものを、労使の話し合いの中で決定して「新たな労働時間制度」の対象とするということについては、これはいかがなものなのかと大いに疑問を覚えます。また、年収要件としてあげられている「例えば年収1,000万円以上」についても、先ほどありましたように根拠がありません。根拠がないにもかかわらず、不明確なままに「新たな労働時間制度」を労働時間法制の中に入れた場合、現行も起きている過労死などの問題が起きないと言い切れるのでしょうか。労働者の健康のための労働時間管理が本当にできるものなのでしょうか。もし時間ではなく成果で評価したいのであれば、それは企業労使の中できちんと話し合いを行い、公正・公平な評価ができる制度を入れて運用していけばいいだけではないかと思います。なぜ労働時間と賃金のリンクを切り離さなくてはいけないのでしょうか。もしそのような働き方を希望する人がいたり、企業がそのような制度を求めるのであれば、しっかりと今の枠組みの中で最大限使えるもの利用したり、人事制度の評価の中できちんと見たりしていけばいいではないか、と考えております。

 それと、先ほどの年収要件についても、それだけ高い成果を求められるということであれば、成果が出なかったときにはダウンしたり、反対にアップしたりと、大きなアップダウンがあるという考え方に基づいているのではないか。そうすると、年収1,000万円を維持するということは、それ以上の年収を設定しなければ維持できない制度であると考えます。

 もう一つ、そういう成果型の制度を入れるときにはポジションバリューというものが考慮されると思うのですが、企業の方針だとか中期計画などによってはポジションバリューそのものが変わる場合があるわけです。そうしたときに労働時間管理についてもいちいち変化を求めるとすれば、そのような職種で働いている人たちは非常に不安定な労働になってしまうのではないかという懸念も感じます。

 そういう点からも、「新しい労働時間制度」は、なかなか労働基準法になじむものではないと思われるということを意見として述べたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 ただいま、法律を変える必要はないのではないかという御指摘をいただきました。これは繰り返しになるかもしれませんけれども、現行労働基準法のもとで成果主義を運用した場合、先ほど秋田委員からも御指摘のとおり、ダイレクトに成果に反映することは難しいと考えます。すなわち、あまり時間外労働を行わずに成果を上げられた社員と、時間外労働を行い、成果を上げられなかった社員との間で処遇の不公平感が生まれやすいという問題意識を持っております。

 成果主義ということについては、以前に労側委員から、賃金だけでなくて人事上の処遇ということでも報いる場合があるのではないかと御示唆をいただいたところでございます。一般にはそうでございますけれども、例えば金融業界ですとかホワイトハッカーなどの特定分野のプロフェッショナルの場合には、転職をしてキャリアを積まれるというケースもございますので、時間軸をもって人事で処遇をすることは難しい場面もあるということは、御理解をいただきたいと思います。

 年収要件に関してでございますけれども、もとより労働基準法というのは、労使の力関係のリバランスを図る目的があるということは、十分理解しております。しかしながら、一定の年収があり、少なくとも年収1,000万円以上であり、かつ、高い職業能力を有する方で、なおかつ、先ほど平岡委員もおっしゃられた役割がどういったポジションなのか、あるいは裁量性がどの程度あるのかといったことを総合的に勘案して対象になるわけでございますので、私どもからすると、労使との関係の中で相当交渉力が高い、そういう方々が対象になると考えており、労働者保護に欠けないものと思っております。そして、時間でなく、成果で評価されたいという労働者の意向、これはニーズとしてあると承知をしております。

 もちろん、その対象者の範囲をそういった方に限定をするという議論だけでなく、当然、十分な健康確保措置についても引き続き議論をさせていただきたいと思っております。

 交渉力が高いということは、当然、健康確保措置なり処遇の制度なりについて、不十分である、あるいは不満と御本人が感じた場合には拒否できるという意味があります。そうした交渉力を持った方を対象にしているということは御理解を賜りたいと思っております。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 大変議論が活発に行われまして、さまざまな御意見をいただきました。残念ながら時間がまいりましたので、今日のところはこの辺にさせていただきたいと思います。

 なお、今日議論をしました新たな労働時間制度をこれから議論するに当たって、やはり一つのポイントは、年収要件のお話もありましたけれども、他方で閣議決定では、職務の内容が明確で、高度な職業能力を有する労働者ということが掲げられているということでございますので、そこをどう理解するかということでして、これが、第一に大きな論点の一つだろうと思います。

 今日、そこの点については使側からも御意見があり、他方、労側からも御意見があったところでありますけれども、今後その点についてもう少し議論が詰められればと思っております。もう一つは、労働者の安全と健康をどう確保するかということについて、やはり新たな労働時間制度においてもそこは重要だというのは、その限りにおいては労使の認識は一致していると思っております。

 この点についても、健康確保等のための措置ということは、労働時間のあり方とはまた別途にきちんと手当をしましょうという形で、事務局でもペーパーを用意していただいております。

 もう一つの大きな論点は、ここのところをどう設計するかということもあろうと思いますし、そこの点について、また労使の議論を具体的に詰めていければと期待しております。

 今日、その他、実は裁量労働制の新たな枠組みについては、一部新たな労働時間制との関係で触れられたところもありますけれども、ここは積み残しということになりましたし、また、フレックスタイム制の見直しについても、申しわけございませんが、次回に回すということにさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局から次回の日程について説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 次回の労働条件分科会の日程、場所につきましては、追って御連絡させていただきます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それでは、本日の分科会はここまでとさせていただきたいと思います。

 最後に議事録の署名でございますけれども、労働者代表につきましては春木委員に、使用者代表につきましては宮地委員に、それぞれお願いをいたします。

 それでは、これで閉会といたします。本日は、お忙しい中、どうもありがとうございました。

 


(了)

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