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2014年10月28日 第118回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成26年10月28日(火)10:00~12:00


○場所

専用第12会議室


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、田島委員、野崎委員、山川委員

【労働者代表委員】

新谷委員、高松委員、冨田委員、宮本委員

【使用者代表委員】

秋田委員、池田委員、小林委員、鈴木委員、田中委員、平岡委員、宮地委員

【事務局】

大西審議官、鈴木総務課長、秋山監督課長、村山労働条件政策課長、古瀬調査官

○議題

1 2013年度の評価及び2014年度の目標設定について
2 報告事項
3 今後の労働時間法制の在り方について
4 その他

○議事

○岩村分科会長 定刻より若干早いですが、予定の委員の皆様が全ておそろいになっておりますので、ただいまから「第118回労働政策審議会労働条件分科会」を開催することといたします。

 本日、御欠席と承っている委員は、公益代表の権丈英子委員、村中孝史委員、守島基博委員、労働者代表の神田健一委員、八野正一委員、春木幸裕委員でございます。

 それでは、事務局から定足数の報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 定足数について御報告いたします。

 労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、また、公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

 あわせて、一言、お詫び方々申し上げます。

 本日、参議院厚生労働委員会において「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」の審議が行われており、事務局に欠席等がございます点、各側の皆様には御理解いただければと存じます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それでは、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。

(カメラ退室)

○岩村分科会長 では、本日最初の議題でございます「2013年度の評価及び2014年度の目標設定」につきまして、事務局から報告があるということでございますので、その説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 それでは、お手元の資料No.1について御説明いたします。

 まず、1ページの一番上です。2020年までの目標として、年次有給休暇取得率70%と、週労働時間60時間以上の雇用者の割合5%の2つを立てております。

その下に現時点の最新の実績値を載せております。年次有給休暇取得率は47.1%、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は8.8%となっております。

以下は、本分科会でこれまでも御説明しております助成金等の施策の実施状況等ですので、説明は省略いたします。3ページの下から4ページにかけて、評価と今後の方針として、「労使の自主的な取組の重要性についての理解が未だ十分に深められていない状況と考えられることから、引き続き、働き方・休み方の見直しの促進が重要」としております。

また、4ページの後半です。分科会委員の意見として、「週労働時間60時間以上の雇用者割合が減少したことは評価できるが、年次有給休暇の取得率が減少するなど、年度目標が達成できていないことを重く受けとめ、引き続き努力すべき」、また、「産業、業種、職場ごとに有効な対応策も異なるため、きめ細かい政策的支援の加速が大切」、さらに、「労働条件分科会において長時間労働の抑制、年次有給休暇取得促進等の観点から議論を深めるべき」等とまとめております。

また、5ページでは、2014年度の目標値として、年次有給休暇取得率は52.8%、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は8.3%としております。

以上の内容については、既に各委員の御了承をいただいておりますので、現在、事務局においてパブリックコメントを募集する手続を進めております。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、あるいは御質問がありましたら、お願いいたします。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

2013年度の評価についてでございますが、資料1の4ページに、使用者側委員から申し上げた内容を簡潔・明瞭に盛り込んでいただきありがとうございます。以前から申し上げさせていただいておりますけれども、恒常的な長時間労働の抑制や、年次有給休取得促進に向けた取組の実態につきましては、産業・業種・職場ごとによって異なることから、企業、労使の自主的な活動を介するということが必須だと思っております。厚生労働省におかれまして、引き続き、きめの細かい政策支援をお願いしたいと思います。

1点、確認でございますけれども、情報通信産業及び宿泊業を対象に作成をされた「働き方・休み方改善ハンドブック」について、その活用状況、あるいはその政策効果を厚生労働省としてどのように評価されていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 では、お尋ねですので、事務局からお答えをお願いします。

○村山労働条件政策課長 お答えします。

 ただいま鈴木委員から御質問のありました「働き方・休み方改善ハンドブック」については、平成25年度に専門的な団体に委託して、情報通信産業や宿泊業の業界団体の参画の下、共同で開発したもので、さまざまな労働時間制度の活用や労使コミュニケーションの図り方、自主的な数値目標を労使で定めて改善する取組を進める事例などにつき、業態の実情に即した内容を盛り込んだものです。現在、それぞれの業界団体のネットワークの中で、ハンドブックを活用しながら、好事例の提供やノウハウの共有を進めていただいておりますが、平成25年度に開発して、平成26年度は、ハンドブックの普及や連携した取組が緒についたところですので、今後、具体的な成果が集まれば、本分科会にも御報告していきたいと考えております。また、ほかの業界からも、御関心をお示しいただいておりますので、こうした取組の輪を各業界団体の皆さんと広げていきたいと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 まだ定量的な評価には至っていないということかと思いますけれども、大変重要な取組だと思っているところでございます。宿泊業、飲食サービス業における平成24年の労働者1人平均の年次有給休暇の取得率というのは、以前にこの分科会でも資料を御提示していただいたように、4.9日ということで、なかなか休みがとりにくい状況もあると想像しております。

この宿泊業のハンドブックの策定に参画をされました三菱UFJリサーチ&コンサルタントの矢島主任研究員のお話では、長時間労働の抑制に向けた取り組みについては、難しい面もあるけれども、宿泊業を担う若い世代に来てもらうためにも必要ということで、その重要性を経営者に訴えられたそうであります。宿泊業の経営者も、その点は大変強い危機意識を持っておられ、取り組む意欲を持っておられたと聞いているところでございます。このハンドブックの作成というのは、情報の共有を図るということにとどまらず、その策定プロセスにおいて、経営者の意識改革を図りながら、その取組のドライブをかける効果が期待できるのではないかと思っているところでございます。長時間労働の産業を中心に、同様の取組を続けることが重要と思っておりますが、この点についての厚生労働省の御意向を改めてお伺いをしたいと思います。

○岩村分科会長 では、事務局、お願いします。

○村山労働条件政策課長 これまでの取組を通じて、私どもも、鈴木委員と同じように考えているところです。最初の年は、長時間労働問題について、労働力確保の観点から危機意識をお持ちだった情報通信業界と、交替制勤務の下で、休みが取りづらく勤務環境が厳しいといった問題の改善を図りたいという意識をお持ちだった宿泊業の2業種に御協力をいただき進めてまいりました。今後、ほかの業界団体にもお声がけする中で、同様の問題や関心をお持ちのところは少なからずあろうかと思いますので、引き続き、こうした好事例を共有し、業界のネットワークを活かして、自主的な改善の取組を広げていくことについて、今後とも努力していきたいと考えております。

○岩村分科会長 鈴木委員、よろしいでしょうか。

○鈴木委員 ありがとうございました。

○岩村分科会長 ほかにはいかがでございましょうか。では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今後本分科会において労働時間法制の論議を深めていくわけでありますが、そうした中、ただいま事務局から「2013年度の評価及び2014年度の目標設定」について御報告をいただきました。これらについては、資料4ページの「分科会委員の意見」の欄にも記載をさせていただきましたけれども、昨年度に引き続き2013年度も「年次有給休暇取得率 70%」と「週労働時間60時間以上の雇用者の割合 5%(2008年の実績(10%)の5割減)」という2つの目標がともに未達に終わった点を政府は重く受けとめるべきだと思っております。最終的な目標年度とされている2020年度に目標を必ず達成するべく、最大限の努力を払うべきと考えております。

そうした取り組みを行う際、使用者側委員がおっしゃるように「恒常的な長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進に向けた取組の実態は産業・業種・職場ごとに異なることから、労使の自主的な活動を介することが重要である」という点は、私ども労働者側としても否定はいたしません。しかし、長時間労働抑制および年次有給休暇の取得促進を確実なものとするためには、こうした「労使の自主的な取組の強化」や「社会風土づくりの促進」といったソフトロー的なアプローチに頼るだけではもう限界だろうと考えております。やはり現状を踏まえれば法規制を強化することが不可欠であると思います。労使の自主的な取組に大きな期待を置くばかりでは、最終年度の2020年度に目標達成するためには力不足であり、限界があるといわざるを得ません。

労働者側としては、一点目として、長時間労働の抑制のために「長時間労働にかかる上限時間規制の導入」をはじめとする時間外規制の強化を行うべきこと、また、二点目として、年次有給休暇の取得促進のために「一定日数について労働者が確実に取得するよう使用者に義務付ける」といった手法についてこの審議会の中で前向きに検討を深めていくべきこと、を重ねて申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、次に、議題の2番目としまして「報告事項」となっております。事務局から過労死等防止対策推進法の施行について報告があるということでございますので、説明をお願いいたします。

○鈴木総務課長 総務課です。

 資料のNo.2の1ページ目をご覧ください。7月7日の分科会において、先の通常国会において議員立法で成立した過労死等防止対策推進法について、このペーパーで御報告いたしました。

あらためて内容を簡単に御説明します。3番目の「基本理念」として、過労死等に関する調査研究を行うことにより、過労死等の実態を明らかにし、それを踏まえ過労死等の効果的な防止の取組に生かすとともに、さらに過労死の防止についての重要性について国民の自覚を促し、理解を深めることとなっております。具体的な内容は、11月に過労死等防止啓発月間、年次報告、そして、過労死等の防止のための対策に関する大綱を作成して事業を行う、そのために推進協議会をつくる、というものです。

本日御報告したいのは2ページ目です。この過労死等防止対策推進法の施行に向け、政令を2つ制定しております。

まず1つ目は、過労死等防止対策推進法の施行期日を定める政令で、施行期日は、11月1日とする内容です。施行日については、法律上は「公布の日から6カ月を超えない範囲内で政令で定める日」となっておりますが、法律の中で過労死等防止啓発月間が11月に設定されており、本年度からこの月間を行うことができるよう11月1日と定めております。

もう一つは、過労死等防止対策推進協議会令です。この協議会については、閣議決定を行い、大綱に対して意見を伺うために設けられるもので、法律では既に過労死等の当事者、労働者代表、使用者代表、過労死等に関する専門的知識を有する者の4者構成で、合計20名以内という内容が定まっております。

これに対して、その細目を政令で定めるもので、内容は、委員の任期を2年とすること、労使同数で、協議会の会長については、審議会の公益委員に当たる専門的知識を有する委員から選挙すること、議決に関しては、委員の3分の2以上、または各側3分の1以上という規定を設けております。

これに基づき、今週の土曜日の11月1日からこの法律を施行することとしております。まずは11月が過労死等防止啓発月間ですので、月間行事として、1114日に厚生労働省の講堂において中央の「過労死等防止対策推進シンポジウム」を行うとともに、今年度は議員立法ですので予算は取っておりませんが、既存の予算で、例えば、過重労働対策を今回は11月に行う等々の対応を考えております。

また、協議会については、法律施行後、直ちに委員を任命して、大綱の作成に向けた議論を開始したいと考えております。

報告は以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 ただいまの過労死等防止対策推進法関係の御説明につきまして、御意見、あるいは御質問はございますでしょうか。

 では、冨田委員、どうぞ。

○冨田委員 ありがとうございます。

 今ほど御説明をいただきました過労死等防止対策推進法でございますが、御説明にもありましたとおり、それが立法府の総意として制定をされたこと、また、防止対策の推進が国の責務である旨が明確に規定をされたこと、この2点の持つ意味は極めて重いと考えてございます。政府としてもその重みを真摯に受けとめていただいて、過労死等の具体的な防止策としての法改正に前向きに取り組んでいただきたいと考えてございます。

 なお、先ほど2ページ目で御説明をいただいた各種政令の制定によりまして、過労死防止等対策推進法の施行日が11月1日に決められるとともに、協議会の設置のための準備も整えられたと思います。つきましては、過労死等の防止対策の推進には一刻の猶予も許されない状況にあると認識してございますので、この協議会において大綱策定に向けた議論を早期にスタートさせるべきだということを申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 事務局で何かございますか。

○鈴木総務課長 大変貴重な御意見ありがとうございます。

 まず、協議会については、早急に委員を任命し、大綱に向けた議論を早急に開始したいと思います。よろしくお願いいたします。

○岩村分科会長 冨田委員、よろしいでしょうか。

○冨田委員 はい。

○岩村分科会長 ほかにはいかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。ありがとうございます。

 それでは、お手元の議事次第の議題の3番目といたしまして「今後の労働時間法制の在り方について」となります。本日は、前回の分科会の最後に申し上げましたとおり、資料No.3の「5.その他」ということで、まだ御議論いただいていない事項がある旨申し上げました。1つ目は「労働時間の特例措置対象事業場」、2つ目が「労働条件明示」、3番目が「管理監督者」、4番目が「過半数代表者」ということでございます。今日は、この4点につきまして、具体的な議題としたいと考えております。

 また、これまでの御議論で委員からいただいた御質問への回答や御要望をいただいた資料につきましても、事務局で今般、資料が整ったということでございますので、その説明もあわせていただきたいと考えております。

 それでは、資料のNo.3からNo.5までを一括して、まず事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 それでは、まず、資料No.3です。本日は、この議題の一覧のうち、枠で囲っている「5.その他」の論点について御議論をお願いしたいと存じます。 資料No.4の1ページ、1つ目の議題の「労働時間の特例措置対象事業場について」です。「法定労働時間に関する特例措置、週44時間については、特殊の必要性から設けられているものであるが、『およそ8割の事業場で所定労働時間が40時間以内であったことから、一律に原則である週40時間労働制にすべき』との指摘があった一方で、『週44時間に設定している特例措置対象事業場の割合は、平成17年度と平成25年度とではほぼ変化がない。求人等に不利であっても変えることができない現実を考えるべき。まだ特例措置の存続と政策的支援が必要』との指摘があったが、これらの指摘を踏まえ、特例措置の解消を図ることについて、どう考えるか。また、業種によって状況が違うことについて、どう考えるか。」としております。

 2ページと3ページは、特例事業場に関する現行の規定です。まず、労働基準法第40条において、「厚生労働省令で別段の定めをすることができる」とされており、3ページの下線部のとおり、一定の事業のうち「常時10人未満の労働者を使用するものについては、法第32条の規定にかかわらず、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができる」とされております。

 4ページは、週48時間制から週40時間制への移行の経緯についての表です。一番右側が現在の状況ですが、黄色が週44時間の特例措置の対象です。

 次に、5ページ目は、業種別の特例措置対象事業場の週所定労働時間の設定状況です。黄色の欄の一番上が特例事業場全体での週40時間以下の事業場割合で、79.7%となっております。その下が業種別の割合です。ほとんどの業種で70%台から90%台となっておりますが、上から5番目の理美容業については45.0%となっております。

 6ページは、「若年正社員の転職希望理由」に関するデータです。現在の会社から定年前に転職したいと思っている1534歳の若年正社員について、その理由は、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」が40.6%と2番目に多く、前回、平成21年の調査と比べて増加しており、一番多い「賃金の条件がよい会社にかわりたい」との差が前回よりも縮まっております。

 次に、7ページは2つ目の論点、「労働条件明示について」です。「現在、労働条件の明示の方法としては、書面の交付のみが認められているが、労使の利便性の観点から労働者の保護に配慮しつつ、電子的な手法による労働条件の明示を可能とすることについて、どう考えるか」としております。

 8ページです。電子的な手法による労働条件明示については、これまで国民の声や、IT関係の政府決定で検討を求められております。一番下の記載のとおり、「労働政策審議会における労働時間法制を初めとする検討の一環として、労働者の保護・利便性に配慮しつつ検討を行い、結論を得る」とされております。

 9ページは、労働条件明示の関連の現行規定の抜粋です。労働基準法第15条において、労働条件の明示については、「厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」とされている上で、労働基準法施行規則により「書面の交付とする」とされております。

10ページは、関連として、既に労働条件等の電子的明示が認められている他の法令の規定です。短時間労働者の労働条件に関する事項のうち、労働基準法で定められた事項以外の事項や、派遣労働者の就業条件等については、ファクシミリ又は電子メールの送信の方法が認められております。

11ページは、今、御説明した他の法令の施行状況です。平成23年度に就業条件等の明示を定めた労働者派遣法第34条違反で是正指導を行った2,475件のうち、電子メールによる労働条件明示について是正指導を行った事例として3件が確認されました。内容は、下の表のとおり、派遣労働者に対し、「あらかじめ電子メールによる明示の希望の有無について確認を行っていなかった」や、「就業条件等の明示を電子メールで行う際に項目が不足していた」となっております。また、短時間労働者については、同じ期間に是正指導を行った事例は確認されておりません。

 次に、12ページは、3つ目の論点、「管理監督者について」です。管理監督者については、「これまでの審議でも『その範囲が不適切に拡大され運用されている実態がある』、『不適切な運用に対する防止策を検討すべき』等の指摘がなされている。こうした指摘への対応について、どう考えるか」としております。

13ページは、現行の管理監督者の範囲についての通達の抜粋です。具体的な判断に当たっての考え方について、総論として、「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきもの」としております。

 さらに、「(3)実態に基づく判断」として、「管理監督者の範囲を決めるに当たっては、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること」、「(4)待遇に対する留意」として、「賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること」等とされております。

14ページは、多店舗展開事業に係る「管理監督者をめぐる裁判例」の主な事案です。説明は省略いたします。

15ページは、管理監督者に関する指導事例です。昨年度の若者使い捨てが疑われる企業等への重点監督において、正社員の7割に及ぶ係長職以上の者を管理監督者として取り扱い、割増賃金を支払っていなかったため、指導を行った事例です。

16ページは、4つ目の論点、「過半数代表者について」です。「これまでの審議でも「過半数代表者の選出方法や運営については、さまざまな問題があり、本当に機能しているのか疑わしい事例もある」等の指摘がなされている。こうした指摘への対応について、どう考えるか」としております。

17ページは、過半数代表者に関する現行の規定です。中ほどにあるとおり、過半数代表者については、労働基準法施行規則において、「監督又は管理の地位にある者でないこと」及び「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること」のいずれにも該当する者とするとされております。また、過半数代表者等に対し、「不利益な取扱いをしないようにしなければならない」とされております。

18ページは、関連する2つの通達の抜粋です。平成11年1月29日基発第45号は、労働基準法施行規則の内容を敷衍したものですので、省略しますが、平成11年3月31日基発第169号の解釈例規では、「投票、挙手等」の「等」に何が含まれるかということの回答として、「労働者の話し合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する」とされております。

19ページは、関連するデータとして、従業員規模1,000人未満の企業における、過半数代表者の選出方法と職種の調査結果です。まず選出方法は、左から順に、「選挙」、「信任」、「全従業員が集まって話し合いにより選出」、「一定の従業員が集まって話し合いにより選出」、「社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になった」、「会社側が指名した」となっております。

 また、過半数代表者の職種は、左から「一般従業員クラス」、「係長等クラス」、「課長クラス」、「部長・次長クラス以上」となっております。

 最後に、20ページは、過半数代表者に関する裁判例です。内容は、下線部のとおり、「選出される者が労働者の過半数を代表して三六協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていることが必要」とされております。

 続いて、資料No.5は、これまでの分科会で委員から御質問や資料のお求めがあったもののうち、今回、間に合ったものをまとめたものです。

 まず、1ページは、専門職や高度な職業能力を持っている労働者に対して、労働時間の規制の適用を外している国がアメリカ以外にあるのかどうかという御質問があり、ドイツの管理的職員やフランスの例について御回答しましたが、その他の制度も含め、改めて精査した資料です。

 まず、2ページは、各国の制度概要ですが、これまでもお示ししている表ですので、説明は省略いたします。

 3ページは、フランスの労働時間制度についてで、基本的な制度については説明を省略いたしますが、例外的な制度について、まず、適用除外は、「労働時間編成上大きな独立性を持つような重要な責任を委ねられる等の経営幹部職員について、年次有給休暇を除く労働時間規制が適用されないとされております。

 また、「年間労働日数制」という、労働協約の締結により、事前に年間労働日数と、それに対する報酬を定めておく制度があり、法定労働時間や絶対上限の規定が適用除外となっております。対象者は、経営幹部職員には当たらない、いわゆる中間的カードルを含む管理職及び労働時間の配分の裁量を委ねられた労働者とされております。

 さらに、「包括労働時間制」という、法定時間外労働も含めて所定内労働時間を定め、その総労働時間に対する賃金をあらかじめ設定する制度があります。週、月、年単位での労働時間の設定が可能となっており、所定内労働時間が法定労働時間を超える場合には割増賃金が加算、また、実際の労働時間が所定内労働時間を超えた場合には割増賃金が必要とされております。年単位の場合には、対象者は年間労働日数制と同じ範囲に限られ、労働協約等の締結が必要となっております。

 4ページは、今説明した例外的な制度の適用関係を表にまとめたものです。説明は省略いたします。

 5ページは、ドイツの労働時間制度です。例外的な制度について、管理的職員は労働時間制度の適用除外とされております。また、割増賃金については、法定されておらず、協約によることとされておりますので、協約外職員についても記載しております。協約外職員は管理的職員ではなく、また、労働協約の人的適用範囲に含まれないため、協約上の労働時間の規制を受けない者とされており、その業務は専門性、必要不可欠性等が特徴とされております。

 6ページは、アメリカのホワイトカラーエグゼンプションについての資料です。概要は上の四角のとおりで、類型としては、「管理職エグゼンプト」、「運営職エグゼンプト」等と並んで「専門職エグゼンプト」があります。

 次に、7ページは、特別休暇について、「諸外国の年休と比較する際に、日本の企業は夏期休暇等の休暇を年次有給休暇と別に設定しているところも多いのではないか」という趣旨の御質問があり、事務局より、我が国における有給の夏期休暇の状況等について御回答いたしましたが、ほかの制度も含め、改めて精査し、可能な範囲でまとめたものです。

 8ページは、我が国の特別休暇の導入状況です。例えば、夏季休暇の導入企業割合は44.7%で、うち約8割が全額有給となっております。

 9ページは、諸外国の法定祝日日数と法定休暇についてですが、例えば、フランスには、病気休暇、職業教育を受けるための休暇、個人的便宜のための休暇、市民的任務を遂行し義務を果たすための休暇といった各種法定休暇があります。

10ページは、諸外国の年次有給休暇制度の比較表に韓国のデータも追加していただきたいという御意見がありましたので、11ページの右端に韓国のデータを追加しております。

 法定付与日数は最長で25日、付与方法は我が国と同様、労働者が時季指定をすることとなっております。

 次に、12ページは、監督指導について、諸外国の監督官の状況比較や、労働基準法の違反に関するデータの御質問がありましたので、資料をまとめております。

13ページは、諸外国における労働監督官の人数です。雇用者1万人当たりの労働監督官の数は、多い順に、ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデン、その次に日本、アメリカとなっております。

14ページは、業種別の定期監督等実施状況・法違反状況です。3年分のデータをお示ししております。左の欄から、業種、定期監督等実施事業場数、違反事業場数、違反率、一般労働条件に関する主な違反状況で、1、2、3が、違反率の高い順位となっております。

16ページは、事業場規模別の定期監督実施状況・法違反状況です。網かけの1049人規模で違反率が高いという傾向となっております。

 資料の説明は以上ですが、引き続き、事務局から報告があります。これまでの分科会で使用者側委員から、「中小企業に係る月60時間超時間外労働の割増賃金率50%以上の取扱い、特例事業場の法定労働時間週44時間の取扱いという2つの課題に関しては、中小企業や関係業界の実情に即した議論が不可欠であり、事務局で関係業界団体等の意見を十分聞いた上で対応を考えるべきである」との御意見をいただいてまいりました。このため、9月以来、事務局で関係業界団体や業所管官庁に対して、労働条件分科会における審議状況を説明しつつ、中小企業、中小事業場をめぐる2つの課題について、お考えを伺ってまいりました。

個別の団体名は差し控えさせていただきますが、運輸業、商業・サービス業、情報・通信業等の分野の全国レベルの業界団体の幹部の方々、また、地域レベルの関係者の方々、その他の分野も含めた業所管官庁の担当部局と意見交換をしてまいりました。

全体を通じての傾向としては、各団体の皆様とも、我が国の労働者の健康確保やワーク・ライフ・バランス実現の観点から、長時間労働の抑制が重要な課題になる中、審議会において、こうした課題への対応も含め、労働時間法制の見直し論議を進めている現状については理解を示されております。その上で、まず、月60時間超時間外労働の割増賃金率に関連する業界団体の皆様から示された御意見を御紹介いたします。

まず、運輸業団体の御意見です。「事業への参入規制等の緩和により、中小・零細事業者が急増することにより、発注する顧客企業に対する交渉力が低下し、コストに見合った適正な運賃が十分収受できていない中、ジャスト・イン・タイムなど、顧客企業の要請が厳しさを増している。あわせて事業者の急増により、業界団体に加入しない事業者が増加し、業界団体として労働時間管理の啓発指導の徹底が困難になることを懸念している。また、顧客企業の都合による長時間にわたる荷待ちが生じている問題もある。その結果、個々の労働者が長時間労働を余儀なくされている実情がある。労働時間を議論する際には、顧客企業との取引関係のあり方も含め見直すことが不可欠である。労働者の健康確保等のため、業界で顕著な長時間労働は、根本的な業務の見直しによる作業時間短縮や、相応の対価報酬の支払い等を最優先として実現する方向性をもって、これを見直さなければならないという認識は当然あるが、見直しを進めるには顧客企業の理解が不可欠であり、それが進むまで、いましばらく、月60時間超時間外労働の割増賃金の見直しは猶予してほしい。また、本当に議論を進めることを考えるなら、実効ある顧客企業への対応策が先にあるべき。事業者が急増し、消費税も上がっている今というのは厳しい」というものです。

次に、情報・通信業関係の御意見です。「東京に所在する企業は大規模だが、地方では中小企業が多く、昨今は売上額が半減している企業も複数あり、経営が厳しい。小規模人員体制でコンテンツ制作等の業務を行っているため、どうしても時間外労働が発生してしまう」というものです。

次に、週44時間特例事業場に関連して、業界団体の皆様から示された御意見を紹介します。

まず、生活衛生サービス業関係の御意見です。「数人の労働者しかいない零細事業場が業界の相当数を占め、来客数の変動が激しいため、交替制等をとりづらい。また、近年、新たな業態のチェーン店等が広域に展開し、競争が激化している現在、法定労働時間を短縮するのは難しい。」、「小規模事業場では、要員を増やす業況にない中、長年の業界慣行により確立した4週6休に対応した週44時間から、週40時間制に切りかえるのは容易ではない。」また、「製造業等と異なり、大規模な設備投資で生産性を向上するといった手法が通用しない対人サービスの世界であり、行政の省力化投資支援策のような施策も活用しにくい」というものです。また、「従業員がある程度いれば、シフトを組んで週5日制に対応できるかもしれないが、2~3人の零細な事業者は、週40時間制に移行すると、その分、営業時間を減らさざるを得なくなり、売上も減って経営が厳しくなる。一方で客待ち時間も多く、労働の密度は高くないが、だからといって営業時間を短縮することは、収入の減少につながる」というものです。

次に、他のサービス業関係の団体の御意見です。「過疎地の零細事業場では、従業員を正社員として雇用し、週44時間を前提としたローテーションとしているケースが多いが、週40時間制となると、人件費コスト負担を避けるため、正社員をパートタイム労働者に置きかえる事業場が出ることが予想される」というものです。

同時に、多くの業界団体から、「人手不足の中で長時間労働を前提にした労務管理を続けていては業界の発展は期しがたい。業界として労働力確保の観点も含め、労働時間の短縮に取り組む重要性は認識しており、今すぐの見直しは厳しいが、改善に向けて努力したい」との御意見がありました。

事務局としては、こうした関係団体等の御意見も踏まえつつ、本分科会において引き続き御議論いただければと考えております。

長くなりましたが、以上で事務局からの説明を終わります。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それから、ただいま事務局から、その他の論点と委員からの御質問事項等につきまして説明をいただいたところでございます。これから、これらにつきまして御議論を頂戴したいと思いますけれども、議論を整理するために、少し区切らせていただいて、進めてまいりたいと思います。

 まず、資料No.4のその他の論点の前半の部分、つまり、「労働時間の特例措置対象事業場について」と、もう一つ、「労働条件明示について」を最初に取り上げたいと思います。これにつきまして、御意見、御質問がありましたら、お願いしたいと思います。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 まず、「労働時間の特例措置対象事業場について」意見を申し上げたいと思います。資料4の4ページに、カラーでわかりやすく、週48時間制から週40時間制への移行に関する資料を御提示いただきました。御承知のように、戦後長らく労働時間法制が改正されてこなかった中で昭和62年の労基法改正はエポックメイキングな改正でありまして、これを起点に労働時間の短縮に向けたさまざまな法改正が進められたわけです。昭和62年の法改正において、労働基準法第32項第1項中の「48時間」を「40時間」に改めました。この週48時間制から週40時間制への移行にあたって、「原則を48時間から段階的に40時間に短縮し、かつ、各段階において業種・規模による時間短縮の困難性を考慮して猶予事業を設定する」という方法を取ったのは、労使の先人たちの知恵ではなかったかと思います。

ただ、先ほども事務局から、「業界として労働力確保の観点も含め、労働時間の短縮に取り組む重要性は認識しており、今すぐの見直しは厳しいが、改善に向けて努力したい」という業界の声を聞いたわけでありますけれども、申し上げたいのは、これまでにどれだけの時間が経過しているのかということです。労基法改正は昭和62年、1987年ですから、既に27年も経っているわけですね。現時点で特例措置対象事業場となっている業種というのは、資料の一番右の列に記載された黄色く色づけされた業種だけとなっています。27年という時間の経過から言えば、特例措置である週44時間制については早急に労基法の基本原則であります週40時間制に向けて見直しをするべきであると考えております。これは、労働条件の最低基準を定める労働基準法のダブルスタンダードを放置したまま今日に来ているということを意味してもいるわけです。

また、事業場のヒアリングの中でも「労働者の健康確保等のため、業界で顕著な長時間労働は、根本的な業務の見直しによる作業時間短縮や、相応の対価報酬の支払い等を最優先として実現する方向性をもって、これを見直さなければならないという認識は当然ある」との御意見が出されていましたように、長時間労働の抑制は実現しなければなりません。そのことから言えば、週40時間制に向けて、全ての業種について、そろそろ決着をつけるべきだと考えるところであります。

 資料4の5ページには、「週所定労働時間別の事業場割合(特例措置対象事業場)」として各事業場の規模別の週40時間制の導入状況に関する資料が載っているわけでありますけれども、理美容業を除けば、約8割の割合の特例事業場で既に週40時間という所定労働時間を達成しているということです。今、週40時間制を進めることについても大きな障害はないのではないかと考えているところであります。

 また、この資料の6ページに「若年正社員の転職希望理由」のデータがあり、その中で、転職しようとする理由の2番目に「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」ということが書かれているわけでありまして、ここに労働時間に対する意識の変化というものが表れてきているのではないかと思います。中小・零細企業においては特に若手の人材が採用しにくいという声をしばしば耳にするわけでありますけれども、そうした中小・零細企業の労働条件を魅力あるものとしていくためにも、週40時間制への移行を推進することは必要不可欠ではないかと考えているところです。

 その上で、事務局にお伺いをしたいのは、5ページにあります理美容業のデータを見ますと週40時間という所定労働時間を達成している事業場の割合が5割を切っており、他の業界に比べて極めて低位なわけですけれども、この業界だけがなぜこんなに週40時間を達成する割合が低いのか。このような現状にある理美容業の中小・零細企業に対して行政としてどのような指導をされているのか。この2点について教えていただきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 それでは、事務局にお尋ねですので、事務局でお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 新谷委員から御質問の理容業・美容業の関係について、お答えいたします。まず、理容業については、そもそも業界全体の中で労働者性のある方がいる店舗が多くないという点が特徴的です。例えば、御夫婦だけで経営しているなど、労働者性のある方がいない店舗が7割を超えている業界ということです。

また、先ほど古瀬調査官から御説明した内容にもありましたが、零細な体制で営業しており、基本的に働いている時間と営業している時間がほぼ一致している実情があります。

さらに、特例措置対象事業場の長い歴史の中でも、資料の4ページにあるとおり、事業規模1~4人と5~9人で事情が違っており、理容業は、労働者性がある方がいる場合でも、事業規模1~4人の事業場が多くなっております。

例えば、A理容店とB理容店に、それぞれ跡継ぎの御子息があり、理容師の資格を取得した場合に、親御さんのお店で腕を上げていくのも1つの選択肢ですが、ほかの親方の下で腕を上げて、親御さんのお店の跡を継がれるまでの糧とする慣行もあります。事業規模1~4人の中でも、特に、労働者は1人か2人というケースが多く、とても零細のため、営業時間と労働時間が非常に密着しており、交替制をとりにくいという実態があります。

そして、最近の業態の変化の中で、たくさん集客する同業種の別な業態の店舗が、例えばターミナルのそばにたくさん開店して競争が激化している状況などもあります。そうした中、長年にわたり4週6休の業界慣行がありますが、労働時間の短縮、労働条件の改善が人材確保につながることは意識しつつも、なかなか踏み出せない零細の店舗がたくさんあるという実態です。

事業規模1~4人の事業場と5~9人の事業場で事情が異なるというのは、中央団体の方や実際に地域で活動している業界の取りまとめ役の方々との意見交換で感じるところです。ある程度の規模になると交替制を組むことや、お客さんの変動を見込んで人員配置を考えることができますが、労働者が1人、2人の零細な体制の場合、お客さんの波も見えない中で、交替制等もとりづらく、非常に苦慮している実態があることであります。

 次に、美容業の関係です。美容業も、労働者が2人、3人、4人という規模が多くなっております。また、流行等々も非常にいろいろある業界で競争が激しく、客待ち時間が多く、労働の密度が必ずしも高くない中で、営業時間を短くすることが、収入の減少、ひいては経営に直結するため、週44時間の枠から一歩踏み出すのは厳しい状況にあるという御意見も承っております。

 そして、理容業と美容業に共通していることは、有資格者の対人サービス業界ですので、昭和62年以来の労働時間短縮の大きな流れの中、例えば、製造業においては省力化投資を進めながら、労働時間の短縮を図りつつ生産性を上げることができた訳ですが、対人サービスで、技能で勝負する業界の場合には、機械設備投資などが一気に労働時間の短縮につながっていくわけではないという御事情もあると伺っております。

理容業、美容業の実情に関しては、以上のように受けとめております。

 行政としては、ある程度の規模の事業場や企業がお集まりの業界の場合であれば、その団体をとらえて、団体の皆様と連携しながら、労働時間の短縮等に向けていろいろな取組も行ってきておりますが、零細な事業場が非常に多い業界の場合、どういうようなアプローチや連携しての取組が可能なのかということについて、今後考えていかなくてはいけない課題があると考えております。もとより、最低労働条件の確保等の観点については、業界の理解も得ながら、しっかりと取り組んできておりますが、それは現時点では週44時間を前提としての話ということで御理解いただければと思います。

現状の報告は以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 ありがとうございました。

 今の説明をお聞きしてよくわからなかったのは、週44時間制から週40時間制に移行したときに、「営業時間を短縮しなければならない」とか「シフトが組めない」とかいうのが、業界の皆さんの声としてあったという点なのですけれども、週44時間制から週40時間制になったときの4時間分の差額の扱いが現行の労働基準法第32条、第36条、第37条ではどういう扱いになるのか、教えていただけませんか。

○村山労働条件政策課長 週44時間の特例事業場においては、労働基準法上は、週44時間が割増賃金のスタートラインとなります。この点が、労働基準法第32条の週40時間に対する特例となっております。また、三六協定等についても同様です。しかしながら、割増賃金の支払実態等の詳細については、つまびらかに把握していないということを申し上げておきます。

○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 つまり、現在、特例措置によって労働時間が週44時間制になっている事業場が原則の週40時間制になったとき、労働基準法第36条の協定を締結していれば、この4時間分についての時間外割増賃金を支払うことで労働させること自体は可能なわけであります。これはヨーロッパの法制と大きく違うところでありまして、わが国は週40時間制といっても上限としてそれ以上労働させられないという絶対的な上限規制ではないわけであります。

この点自体、私どもとしては問題だと考えておりますけれども、この4時間分が時間外割増の対象になったときにコストとして増加するのは、この4時間が法定休日のものでなければ25%の割増賃金分だけであり、1カ月、すなわち4週間に引き直しても16時間分の時間外割増賃金分だけということになります。そのコストを計算すると、正味で4時間分の賃金に相当する金額に過ぎません。これを支払いさえすれば、週44時間制から週40時間制になったとしても、別に営業時間を短縮することなく、シフトを変更することもなく、対応することが可能であるということを申し上げたいのです。

つまり、1日8時間労働で1月20日間勤務した場合の総労働時間は160時間になりますので、それに占める4時間分の賃金支払いといえば2%ちょっとの賃上げに相当するわけでありますけれども、それさえ実現すれば、先ほど事業主の方がおっしゃっていたような問題は全部クリアするわけです。そうしたことの指導もせずに、「シフトが組めない」とか「営業時間を短縮しなければならない」とかいうのは、行政のコメントとしては、当たり前ですけれども、今の法制を理解されている上でおっしゃっているのだったら、意図的な誘導があるのではないかと私は懸念するところであります。コメントがあればおっしゃっていただきたいと思います。

○岩村分科会長 では、事務局でお願いします。

○村山労働条件政策課長 特段、そのような意図的な誘導という意図で申し上げたわけではなく、率直な事業者の声として承った内容をまずは御報告したものです。その上で、先ほど申し上げた法制面の理解は、新谷委員とも特に異なるものではないことは、新谷委員もお認めいただいていると理解しております。この点については、使用者側からも御意見があるのではないかと思っています。

○岩村分科会長 それでは、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 ただいま新谷委員から、実質賃上げで対応可能ではないかという御発言がございましたが、とりわけ零細企業の経営環境が厳しい中で、なかなか実質賃上げは難しいところも多いのではないか。そういったところにも十分意を配して考えないといけないと思っております。若い方の間で労働条件のうち、労働時間についての関心が高まっているという調査結果が出ておりますが、、週40時間にしたくても週44時間を続けざるを得ないような企業も多いのではないかと思っております。

 先ほど事務局より、関係団体の詳細なヒアリング結果を御紹介いただきました。ありがとうございます。事業を行う以上、顧客との関係で何らか、自社の社員の働き方について制約を受けるということは当然あるかと思っております。ただし、とりわけ運輸業では、経営環境の厳しさや、荷待ち問題などから、長時間労働の見直しに向けた取組も一筋縄ではいかないという印象を改めて持ったところでございます。

さらに、対顧客サービスの産業では、代替要員の確保が難しい事業場も少なくないと思っております。そうしたところでは労働時間の短縮が難しいだけでなく、先ほど事務局からも御指摘のございましたように生産性の向上とセットで取り組まなくてはいけない中で、その決め手がないという点でも悩みを持たれている実態が確認できたのではないかと思っております。

したがいまして、中小企業に係る月60時間超の時間外労働の割増率の取扱でありますとか、週44時間制の取扱に関しましては、業種、規模ごとに事業への影響も最大限勘案しながら議論を進めていくことが必要ではないかと思っております。

 また、週44時間制特例対象事業場でありますけれども、生産性向上が難しいということも長時間労働抑制に向けた取組の障害の1つになっていると思いますので、特例措置の扱いのいかんにかかわらず、労使の話し合いの場の設定ですとか、あるいは取組に対する政策的支援について、厚生労働省には引き続き御尽力賜りたいと思っております。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 それでは、小林委員はいかがでしょうか。

○小林委員 ありがとうございます。

 いろいろな業界団体、また、所管する行政庁までいろいろ調査していただきました。また、ヒアリングに御協力いただきまして、ありがとうございます。

 その中で、先ほど新谷委員から27年の長きにわたりというお話がありましたけれども、長い時間がかかっているのは確かなところであっても、業界団体、まだ厳しいという声もあるというのも1つ御承知おきいただきたいことと、それぞれの業界団体から、労働者の健康確保、ワーク・ライフ・バランスの観点から、長時間労働の抑制が必要だということにも理解を示していたという御発言がありましたけれども、業界はそれぞれ考えているのだなというのも改めて認識したところです。とはいえ、人手不足の中で、先ほど新谷委員もおっしゃっていましたけれども、若手の方々が来ない中、大変厳しい状況にあるというのも、1つ、この業界のヒアリングからあり、もうちょっと時間をいただきたいというのも御承知おきいただければと思っております。

そもそも労働時間の週44時間の問題については、資料でいけば、労働時間の特例措置対象事業場における現行規定では、公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊の必要があるものという規定もございます。先ほど来の業界で言えば、理・美容業とか、保健衛生業とか、消費者というか、生活者の、公衆の利便性に役立っている業界だと思いますので、その辺の業界の特殊性というのももう一度思い直していただければと思います。27年という時間はかかっているものの、労働時間法制の中では段階的に短くしていくことが大切であり、今、週40時間、週44時間というのがあるわけですけれども、何年後かには週40時間にするべきだと私も思っています。ただ、ここで時間的な猶予を言っているわけですから、それぞれの業界の問題解決のための、先ほどハンドブックをつくったりというような行政支援もしていますけれども、さらなる支援をしていただいて、週40時間になるようにいろいろ取り組むことも必要なのかなと思いますので、十分御配慮いただければと思います。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 先ほど紹介された業界ヒアリングの「週44時間制から週40時間制になったら、4週6休に対応したシフトが組めない」とか「営業時間を短くせざるを得ない」という意見はこの分科会で紹介するべき内容ではない、と私は思うのです。中小・零細企業の皆さんは苦しい経営の中でやり繰りされているというのは十分に分かりますけれども、先ほど紹介された意見は若干の割増賃金の支払いによって乗り越えられるものであるわけです。現在は労働条件の最低基準を定めた労基法がダブルスタンダードになっているしわ寄せが全部零細の労働者の方に行っているという状況です。

さらに「生産性の向上が難しい」という意見もありましたが、特例措置が始まったのは昨日、今日の話ではなくて、27年前から始まっている話ですし、最後の改正は11年前の改正です。最後の改正からもう既に11年も経過しているわけであります。この間一体何をやってきたのかと思わざるを得ません。厚生労働省としても、先ほどのような意見が出ないような行政指導なりに取り組むべきだったのに、まだ今でもそのようなことを言っているのかという感が否めないわけです。労働者のしわ寄せをいつまで放っておくのでしょうか。ダブルスタンダードの解消に向けて、今こそ決断すべきであるということを改めて申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 私の理解するところでは、今日の各業種のヒアリング結果については、厚生労働省として、もちろん、法律に基づく、あるいは政策に基づく、いろいろな思いはあるのだろうと思いますが、むしろ実態として、聞いた結果をそのままこの審議会の場で御報告するという趣旨だったと理解しております。それを前提として、今度はこちらの側で、今、新谷委員が御指摘になった点、あるいは小林委員、鈴木委員が御指摘になった点も考慮しつつ、では、どうするのかということを考えていくということかと思います。

 あと、もう一点、労働条件の明示というのがございますけれども、これについてはいかがでございましょうか。

 では、池田委員、どうぞ。

○池田委員 前の問題でよろしいですか。

○岩村分科会長 どうぞ。

○池田委員 資料4の6ページをみると、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」という回答が増えているわけですけれども、この点については総合的に考えなければいけない。このデータにありますように、日本は祭日が多い現実もありますし、有給休暇もきちんと消化しようという流れの中で、さらに労働時間を減らすということになりますと、現実的に中小業者にとっては、社員がどれだけ働いて生産性を上げるかということが重要でありますから、総合的に考えていかなければならないと思っております。休日とか賃金の問題もありますが、「自分の技能・能力が活かせる会社にかわりたい」、「自分に合った会社にかわりたい」という回答をも多くあるわけですから、こうした考えがある以上、日本の若者は大丈夫かなと思っております。自分の能力を活かし、自分に合った仕事に就けば、労働時間の問題ではなくて、どれだけ自分自身が仕事に貢献できるかという視点になってくると思いますので、単に労働時間、賃金だけで割り切れない考え方も若い人たちの中にあるのではないかということを感じております。

先ほど委員の方がおっしゃっているように、データをみれば厳しい業種があるわけですから、週44時間を週40時間にすれば、単純に言って1割の人員を増やさなければいけないということになります。そうするとパートに代替する企業もあるでしょうし、サービス残業も増えるのかもしれません。現実的な対応をもう少し時間をかけて考えていただいたほうがよろしいのではないでしょうか。要は企業の体力が重要ですから。

同時に、最近、トヨタ自動車などの大手企業が、下請けの企業に対して、来年は仕入れ価格の引き下げは求めないという報道がありましたけれども、これはあくまで引き下げを求めないわけであって、現状維持ですから、値上げを認めているわけではないのです。裾野の広い業界でも、まだまだ現状維持を出られないという現実があるわけです。ただ、御存じのように、コストというのは人件費だけではないので、最近は、電気料金にしても、石油価格にしても、全てのものがコストアップしているわけです。国内事業の生産性を向上しないと、日本企業はどんどん海外にシフトすることになるわけですから、総合的な観点から考えるべきだと思っております。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 1点だけ、サービス残業が増えるというのはあってはならないと私は考えております。

 ほかにはいかがでございましょうか。では、秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 ありがとうございます。

 今、いろいろな御意見が出ていましたけれども、業界団体等の意見にもありますように、各企業とも人材、雇用については意を尽くしたいと思うけれども、経営環境が非常に厳しいので、その狭間でどちらを選択するのかというところでの意見が多かったと思います。全体的にはそうだと思うのですけれども、関連で出ている6ページの資料ですが、転職しようと思う理由として賃金の条件、あるいは労働時間の条件が出ています。しかし、これは若年正社員に限らず、労働者は常によりよい賃金、あるいはよりよい労働時間の会社に転職したいと、すべからず潜在的な意識としては持っているのだろうと思います。ただ、問題は、日本の現状の社会では転職が容易ではない、雇用の流動性が低いということで、転職したくてもできないというところに1つの要因があるのだろうと思っています。その問題は今回のテーマとは関係ないのですが、いずれにしても、そういうものを含んだ資料ではないかと私は考えておりますので、意見として申し上げたいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 それでは、労働条件明示についてお願いできればと思うのですが、冨田委員、どうぞ。

○冨田委員 ありがとうございます。

 先ほど資料4の7ページに「労働条件の明示の手法」についての御提案があったわけなのですが、それとあわせて、資料5の16ページのところで「定期監督の実施における法令違反の状況」についても御説明をいただきました。主な違反状況の中で「労働条件の明示」の箇所を見ていますと、この3年間で10%余りの違反率であるという数字とともに、それが年々増加の傾向にあるということが読み取れるのではないかと思います。こうした現状にあることを踏まえれば、手法について、「電子的な手法による明示を可能にすべきか否か」ということを論議するよりも前に、「今ある現行の規制を遵守させるためには、どういった方策が必要なのか」という論議をまずは先行させるべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

 その上で、この電子的な手法による明示の是非でございますけれども、全ての人が電子的手法に対応できる状況にないことは総務省の調査等によるパソコンの保有率から見てもわかりますし、また、電子的手法ではデータの改変や削除が容易であるなどのことから、労働者保護の観点から見れば、大変慎重に議論すべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

 その上で、1点、事務局にお尋ねをしたいと思います。この電子的手法で労働条件の明示を行うことにどの程度潜在的なニーズが存在しているのかどうかということにつきまして、何らか調査結果などがあるのか、もしあるようであればお示しをいただきたいこと、それから、あわせて、派遣法では既に電子メールによる労働条件の明示が認められているということではありますが、明示されている労働条件のうちどの程度の割合で電子メールにて行われているか、という2点につきまして、情報がありましたら御教示いただければと思います。

 以上でございます。

○岩村分科会長 それでは、事務局でお答えできますでしょうか。お願いします。

○村山労働条件政策課長 冨田委員から、電子的手法による労働条件明示に関する統計やニーズ調査の把握の有無と、派遣制度において、どの程度電子的手法による労働条件明示が行われているかの2点の御質問をいただきました。いずれも現在精査中です。一方で、先ほど御説明した中にもありましたが、国民の声等では、こうした要望が複数寄せられている実態があります。

現時点の状況は、以上です。

○岩村分科会長 冨田委員、どうぞ。

○冨田委員 ありがとうございます。

 では、精査できたときには情報開示をしていただきまして、それに基づく論議ができるようにお願いをしたいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 ただいま労側の冨田委員から、電子的方法では改変や削除が容易になることもあって、書面明示が必要ではないかという御指摘がございました。確かにそういったご指摘は一理あると思っております。ただ、労働条件明示のルールの本質はどこにあるかということを改めて考えてみますと、私は、労働者に労働条件が確実に明示されること、また、何かあったときに、提示された労働条件を確認できる点にあるのではないかと思っております。このように考えた場合、偽造しようと思えば紙の媒体でも可能でありますし、紙よりも電子データの形態で送ってもらったほうがなくさないという保存の面ですとか、検索ができるという面で優れている面もあると思っております。

過去に電子メールによる条件明示が議論された経緯があったと承知をしております。その際にデータ容量の面で保存能力に難点があるという意見もあったかと思いますが、現在では携帯電話等のデータのキャパシティーは相当飛躍的に高まっているという面もございます。また、電子メールによる方法が広く活用できるようになれば、人事担当者の負担も大分軽減されるという副次的な効果も期待できますので、携帯電話等への条件明示を全面的に認めることは労使双方にとってプラスの効果があると思っております。

また、先ほど冨田委員からも御指摘がございました通り、労働条件明示義務についての現行ルールを徹底することは当然だと思っております。ただ、一方で、電子メールになると違反が増えるかどうか、その因果関係についてはないのではないかと思っているところでございます。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 先ほどの鈴木委員の御発言にはそのとおりと思う部分もたくさんあります。しかし、労働条件の明示には、言った、言わないというような、労働条件をめぐる個別労働紛争が起こったときの証拠書面としての役割があると思うのです。電子的な手法による明示であれば、確かに生産性の向上という面で使用者側の手間がかなり軽減されるということもよくわかります。しかし、もし使用者側が主張されるように、電子的な手法による明示を導入するのであれば、資料5の14ページにあるように、労働基準法第15条の明示義務の違反が11%もあるという現状を改善し、違反率を限りなくゼロに近づけた後に、その上で電子的な手法によるということをされたらどうかと思うのです。まず、労働基準法第15条の明示義務の違反をゼロにするという取組を強化されたらいかがかと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 事務局にお尋ねですけれども、わからなければまた調べていただければと思いますが、労働基準法第15条違反の事例というものは、具体的に、多いものとしてはどういうものなのか、もしわかればですが、今日、わからないようであれば、また後日、調べていただければと思います。

○村山労働条件政策課長 定量的なお答えでなくて恐縮ですが、直近の労働基準法施行規則の改正の際、有期労働契約の明示事項の追加を皆様に御審議いただき、従来、告示であったものを、この労働基準法施行規則に引き上げた経緯がありました。その際調査した違反の事例では、いわゆる非正規雇用の有期契約労働者やパートタイム労働者に対する基本的な法定明示事項が欠如、又は明示されていないというものが一部に見られたところです。

他方で、ルールを省令に引き上げても大丈夫か検証した際、全国調査で、9割を超える事業場では既に更新基準の明示等の告示の明示事項はきちんと実施されているので、これを刑罰法規に移しても、履行確保はできるだろうという結論に至ったところです。確かに新谷委員の御指摘のように、定期監督等の実施状況を見ると、まだまだ課題が多いことは事実ですが、一方で、労使の皆様の取組、行政の履行確保のための指導もあり、一定の範囲の中にはおさまっているものと考えております。

その上で、違反事例の全体像については、後日改めて回答したいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 では、高松委員、どうぞ。

○高松委員 ありがとうございます。

 1点、確認したいのですが、電子的手法で明示を行う際の媒体としてはパソコンに主眼に置いて話を進めていいものなのか、それとも、現在ではスマートフォン等々の機器が発達していますから、そういったものまで広く念頭に入れるのか、その辺について、少しお聞きしたいと考えております。ガラケーのように画面が小さな携帯電話もございます。そういう場合には情報は送れますけれども、文字だけのものになりますと、極めて読み取りづらいという面がありますから、その辺のところも含めて、少しお聞きしたいと思っています。

○岩村分科会長 では、事務局でお願いします。

○村山労働条件政策課長 必ずしも十分なデータや客観的な前提も整っていないのではないかとの御意見もいただいておりますが、高松委員から論点を深める御質問をいただきました。まさに先ほど鈴木委員と新谷委員の御議論にもあったように、さまざまな角度からの切り口があると考えております。具体的には、きちんと記憶できることと、最終的に確実に労働者が手にするため、プリントアウトできること、機器につないでプリントアウトする環境が安定しているといった観点で見た場合、ガラケー、スマートフォン、パソコンのそれぞれについて、短所、長所、その他いろいろな課題等があると考えております。

 例えば、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律におけるパートタイム労働者に対する特定事項の明示に関しては、電子メールの送信の方法によって行う場合には、当該短時間労働者が当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができるものに限ると省令上規定し、さらに運用の中で、判断の基準などもいろいろ示しており、そのような点も含めて、前提を精査し、次の機会に御議論を深めていただければと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 ただいまの高松委員の御発言に関しまして、技術的なことで大変恐縮でございますが、確認したいと思います。パートタイム労働法施行規則第22条第2号による電子メールの送信方法に関してでございますが、平成1910月1日に発出をされましたパートタイム労働法に関する通達によりますと、電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができる場合とは、短時間労働者が望めば、プリンターに接続して書面を作成することが可能である場合を指すが、これは事業主が送信した労働条件の明示に係る事項の全文が見えることが必要であり、その場合には電子メールのソフト等を搭載したパソコンに限らず、電子メール機能を有する携帯電話などでも構わないものであることとされているところでございます。したがって、労働者自身が自宅にプリンターを持っている場合とは必ずしも限定がされていないところでございます。当然、労働者保護の観点から、紙で打ち出せることは検討対象だと思っておりますが、その際、例えば、職場にパソコンとプリンターを用意した上で、本人が打ち出したいときに携帯電話のデータをメールなどを通じて出力したり、最近ではコンビニなどでも出力が可能なコピー機があるようでございますが、そうしたことも含め対応することにより、現行のパートタイム労働法の要件を満たすのではないかと考えておりますが、この点について、事務局にお考えがあればお伺いをしたいと思います。

○岩村分科会長 事務局、いかがでしょうか。

○村山労働条件政策課長 議論の前提は整えたいと思いますが、どのような形であれば労働者保護等の観点からの懸念が払拭でき、一方で情報通信技術を生かした効率的かつ効果的な明示ができるのかについて、今後、議論を深めていただければと考えております。

 なお、パートタイム労働法に関する運用は、鈴木委員の御指摘のとおりと承知しております。

 以上です。

○岩村分科会長 いろいろ御議論はあろうかと思いますし、実際、いろいろ出していただいたので、またこれを踏まえつつ、事務局で私とあわせて検討させていただきたいと思います。

 山川委員、どうぞ。

○山川委員 テクニカルな点で、今後、機会があれば教えていただきたいと思いますが、労働基準法第109条の記録保存義務、雇い入れも含めて、重要な書類を3年間保存しなければいけないことは刑罰規定になっておりますが、労働基準法施行規則第15条の書面を変更する場合に、労働基準法第109条がどのように適用されるのか、あるいは現状がどうなっているのか、今でなくて結構ですけれども、何かの機会に教えていただければと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 教えていただきたいのはやまやまなのですが、時間が大分押しておりますので、申しわけありませんが、そこは次回にお答えいただくことにさせていただければと思います。

今の学生を考えますと、パソコンにメールを送っても返ってこないのですね。ほとんどがスマートフォンで、さらに今はスマートフォンにメールを送っても返ってこない。みんなLINEでやりとりをしているという状況になっていまして、世の中、非常に進歩するので、それにうまく合わせていきながら、実効のある労働条件明示をどう考えるかということなのかなとは思います。

ありがとうございました。時間が大分押しておりまして、しかも、この後、重い議題がございますので、申し訳ございませんが、議事の進行に御協力をいただければと思います。

続きまして、3番目の「管理監督者について」と、4番目の「過半数代表者について」を取り上げたいと思いますが、これにつきまして、御意見、あるいは御質問がありましたら、お願いしたいと思います。

では、宮本委員、どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。

 それでは、管理監督者について、御意見申し上げたいと思います。資料4の14ページに、管理監督者をめぐる裁判例がわかりやすく記載をされておりまして、これらのケースはいずれも管理監督者に当てはまらないとの判決が出された事案だということです。実は、私どもにもアドバイスを求めてくる未組織の労働者の皆さん方が多くいらっしゃいまして、特に「名ばかり管理職」と思われる方々からの相談が非常に多くあります。この管理職と呼ばれる肩書にある労働者の方々が本当に労働基準法第41条の2に該当するのか否かという点が曖昧にされたままに、休憩時間だとか、あるいは休日の規定の適用から外されたり、あるいは時間外手当も支払われなかったり、こういうケースが非常に多いのです。これは、該当するのか疑わしいケースがあったとしても、ここに記載のとおり、裁判にでも訴えない限り管理監督者か否かを判断することが非常に困難な環境に置かれているという労働者が非常に多い、ということを表しているのだと思います。

つまり、誰をどのような肩書や役職に任命するかは使用者の人事権の範囲でありますので、企業によっては不適切に管理監督者を拡大したり、不適切に運用したりする実態が多いのだと思うわけです。また、「名ばかり管理職」と思われる労働者からは、残業代を支払ってもらえないという相談が多いのですけれども、よくよく話を聞いてみますと、管理職と言われる労働者に対する安全配慮義務さえも同時に怠っているケースも非常に多々見られるところです。

労働基準法では、管理監督者の労働時間を把握することが義務づけられてはいませんけれども、労働安全衛生法では、一定の労働時間を超えた労働者への面接指導だとか、こういうことも講ずることになっていますし、管理監督者もこの対象に含まれるということでありますから、管理監督者の問題の本質は、むしろ健康問題でもあるということを認識する必要があると思っております。

労働基準法第41条第2号に該当する管理監督者は、長時間労働や過重労働が日常的になりがちでありまして、脳、心臓疾患による労災支給決定件数も、管理的職業従事者が全体の1割を占めている状況となっています。このように、使用者が一方的に管理監督者を任命したり、その運用も個々の企業に委ねられているところでございますけれども、この問題の最大の課題は、法律にその適用要件が明記されていないことだと思っています。したがって、個々の企業における管理監督者の範囲ですとか、適切な運用に資するべく、現行の行政通達や判例に基づいて管理監督者の定義を法律で明確に定めるなどして、規制を適切に強化していくべきだと考えております。

また、それにあわせて、不利益取扱いの禁止を前提に、労働者本人の意思による離脱権を保障することについても、ぜひこの分科会で議論すべきだと考えております。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでございましょうか。では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 ただいま宮本委員から、法律に管理監督者性の定義を明記すべきではないかという御指摘がございました。まず、現在、管理監督者の範囲につきましては、概略、職務権限、勤務対応、賃金などの処遇の3つを総合して判断するという行政解釈が出ており、裁判例も同様の傾向だと理解しているところでございます。

ただし、第1に、管理監督者性の基準に関する最高裁判例は出ていないと理解をしております。

第2に、3つの要素による総合判断というのは、適用において、業種、業態、あるいは同一業種でも具体的事案ごとに判断が大いに変わり得ると考えております。例えば、職務権限の要素ということに関して申し上げますと、外食産業などの店長では、アルバイト、あるいはパートなどの社員の採用権限があるかないかが大きな判断のファクターになるところでございますけれども、他方で、業種を問わず本社部門の課長のケースでは、有期社員についても最終的な採用権限がないというのが一般的なことだと思っております。単純に3要素の総合判断ということを法律に盛り込むと、現場の困難を招きかねないのではないかと思っております。

もとより、本日、資料でも御提示いただいております多店舗展開する小売業、飲食業などの店舗に特化した行政通達、あるいは、本日の配布資料には書かれていませんけれども、銀行などの金融機関における管理監督者性に特化した行政通達が出ているということは、その基準が産業や業種横断的に定めることができない証左ではないかと思っているところでございます。したがいまして、管理監督者性に関する行政通達について、法律に盛り込むことは極めて慎重な議論が必要ではないかと思っているところでございます。

私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 この管理監督者性の問題というのは、今回の論点になっている新しい労働時間制度の創設、いわゆるホワイトカラーエグゼンプションとも非常に密接不可分の問題と私どもは捉えております。労働基準法第41条第2号該当ということになると、労働時間の規制が外されて、しかも「労働時間適正把握基準」の対象外ともなります。労働時間については自己申告で足りるということです。先ほども宮本委員が申し上げたように、この層での労災の認定件数も決して少ない数ではありません。

その運用がどうなっているのかを考える材料として、厚生労働省の統計はなかなかとりにくいのですけれども、例えば、厚生労働省「賃金構造基本統計踏査(賃金センサス)」のデータから役職ごとの構成比を見てみたとき、部長相当で3.5%、課長相当で8%というのが推計値としてあるようです。もしかすると、この点について、厚生労働省はそれ以上のデータをお持ちではないでしょうか。もしあれば教えていただきたいと考えております。

なお、この点については、私ども労働組合、いろいろな産業の組織を抱えていますけれども、実はこの数をある程度推定することができるのです。なぜかというと、労働協約の締結の際に、賃金の支払方法がいわゆる月額制で、労働基準法第41条2号として時間外割増賃金の条文が適用とならない労働者については、労働協約上は非組合員という扱いをするところが多いのですね。そこで、その非組合員の統計データとして、例えば分子に組合員ではない人を置いてみると、その割合は、一部上場企業においても3割、下手すると4割とされる企業もあり、これだけ多く管理監督者として扱われているというデータが出てくるのです。このようなデータを見る限り、管理監督者については本当に濫用的な運用が行われている可能性がありまして、その懸念が非常に高いわけです。

それはなぜかというと、先ほども御紹介したように、行政通達で3つの基準が示されておりますけれども、これは法律の条文のどこを探しても書かれていないことにあるのではと考えております。労使の当事者がよく調べないとこの基準が出てこないという現状にあるわけです。確かに先ほど最高裁の判例がないと鈴木委員がおっしゃいましたけれども、やはり管理監督者の定義を法律に明記することによって、紛争にならないような防止策を今ここに提起をするべきではないか、濫用的な扱いが行われないようにするべきではないかと我々は考えております。ぜひ踏み込んだ検討をお願いしたいと思っております。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 あと、もう一点、「過半数代表者」というのもございますけれども、そちらについてはいかがでしょうか。

 高松委員、どうぞ。

○高松委員 ありがとうございます。

 それでは、過半数代表者について、少し御意見申し上げたいと思います。資料4の19ページに、それぞれ過半数代表者の実態ということで、2つの表が載せられています。

上の表が「過半数代表者の選出方法」についての表になってございますが、これを見てまいりますと、オレンジのゾーンですが、「会社側が指名した方」が28.2%、その隣の水色が「社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になった」というケースで11.2%となってございます。したがって、両者を合わせますと約4割のケースで、我々が求めている「選挙」という民主的手続によることなく選出をされている。まさに不適切と言わざるを得ない実態にあるのではないかと思っています。

 加えて、下の表でいきますと、これは「過半数代表者の職種」についての分析になっているのですが、「部長、次長クラス以上」が10.6%、「課長クラス」が13.2%ということで、これも両者合わせると約24%のケースで管理監督者層の方が代表者に選出されていることになってございます。したがって、「過半数代表者は管理監督者であってはならない」という労働基準法施行規則に関し、4分の1のケースで違反が見られる状況にあることになってきますから、その辺について、まさに厳格、適正な運用を図るべきだろうと思ってございます。適正な運用に向けて、1つは無記名投票を含めた形の選挙による選出手続等々の対応をすべきではないかと思っています。あわせて、過半数代表者への不利益な取扱、こういったことも往々として起こりがちでございますから、救済制度の整備を含めた対応も必要ではないかと思っています。

 それと、もう一点、この過半数代表者は、三六協定の当事者としてのみならず、労働時間等設定改善法においても一定の役割を担うものとされております。この労働時間等設定改善法については、これまで使用者側からは、「労使の自主的な取扱の重視という点から、積極的な活用をすべき」ということも言われているわけでございますが、そういった積極的な活用をするにあたっても、その前提として、過半数代表者の厳正な選出なり運用なりというものがあって初めて成り立つのではないか、と思っております。過半数代表者の適格性あるいは正統性、これらをしっかりと確保、担保した上で、労働時間等設定改善法に関する議論も行えるよう、まずは現行規制についての厳格化なり、適正化を行うべきではないかと思っております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 では、小林委員、どうぞ。

○小林委員 今、高松委員がおっしゃったことはもっともだと思いますし、過半数代表者、確かに実態としては、この統計データでは、ちょっとかけ離れているなと思っております。何はなくとも民主的な手続をもって選ばれることが重要だというのは確かに承知しているところであり、そのとおりだと思います。とはいえ、この過半数代表の、その場で選挙するために従業員を集めて投票を行うというのは、なかなか難しい職場もあるのだと思います。そのために通達では、18ページの下に書いてありますけれども、持ち回りの決議をとるとかいう形で、選任の方法もいろいろ工夫をして提案もしているわけでございますので、できるだけ民主的な手続でやるような形に、まずもって指導していくことが必要だと思います。そのために、以前申し上げましたけれども、私ども使用者団体としても、過半数代表者の選び方についてはもっと周知していこうと思いますし、連合さんも含めて、労働者側からもぜひ周知していただきたい。それと同様に、厚生労働省でも、現状の制度を守る仕組みづくりをいろいろな形で御周知願いたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今、小林委員から、「過半数代表者については労使で取り組もう」という御発言がありましたが、そのとおりだと思います。私どももこの問題は非常に重要な問題だと思っておりまして、私どもの組織は過半数労働組合が中心になりますけれども、グループ企業も含めて、過半数代表者について適切な運用がなされるように、周知などの取組を当然行っております。ただ、残念ながら、現在の組織率は17.7%という状況であり、8割以上の職場で労働組合がないという現状にあるわけです。それゆえ過半数代表者の運用について周知をするといっても一定の限界があるわけでありまして、かつ、労使協定、特に三六協定のような内容は、免罰協定として、労働者の健康と命にかかわる協定であるという点を考慮すべきだと思います。

このような重大な機能を持つ協定を締結する当事者の選出が民意を反映したものとなっていないのであれば、一体、労働者は誰を頼ればいいのかという問題となるわけです。ですから、私どもとしては、今回の労働時間法制の検討の中では、労働時間の規制の緩和を求められているわけでありますけれども、一方で、現時点での法律に基づく適切な運用すら満足に行われていない現状、すなわち過半数代表者の不適切な選出が4割も占めているという現状を改善しない限り、さらにその先には踏み込めないと考えている次第です。過半数代表者の選出をどういうふうに適正なものに持っていくのかということについて、周知にとどまらない内容に踏み込んだ議論をしない限り、なかなかこの先の検討は難しいと考えているところであります。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 では、秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 ありがとうございます。

 過半数代表者に関しては、一番の問題は、なかなかなり手がいないというところにあるのだろうと思います。そういったところを苦慮しながら、各企業では過半数代表を選んでいる。当然、民主的な手続が必要だというのは言うをまたないわけですけれども、なり手がいないという問題が土台にあるという状況では、手続の厳格化というのはちょっと難しいのではなかろうかと考えます。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今、秋田委員から御発言があったのですけれども、法に基づく労使協定は、別に労働者の側が望んで「そうした協定を結んでほしい」と言っているわけではないのです。御承知のように、例えば、労働基準法第36条に関してみますと、労働基準法第32条という刑罰を伴う労働時間の規制に対して、それを回避するための免罰協定として、この労働基準法第36条の協定は存在しているわけです。労働基準法第24条の賃金の支払原則についても同じです。ですから、「なかなか過半数代表のなり手が出てこないという事情を酌んでほしい」という御主張でありますけれども、そういう状況なのであれば、どうすれば適正な、民意を反映した、コンプライアンスに基づいた形で過半数代表者を選出して協定を結ぶことができるのか、ということをぜひ考えていただきたい。私どもはそういう観点から意見を申し上げているわけであります。別に私たちが望んでこの労働基準法第36条の協定をしてくれと申し上げているわけではないということを改めて申し上げておきたいと思います。

○岩村分科会長 では、田中委員がお手が挙がりましたので、どうぞ。

○田中委員 ありがとうございます。

 事務局にお尋ねしたいのですが、19ページの表、前にも御提示いただいた表ですが、1,000人未満の企業とありますが、細かい、規模別、人員別にお示しいただくことは可能でしょうか。

なぜこのようなお尋ねをするかといいますと、例えば、会社側が指名したとか、あるいは部長クラスが過半数代表になっている、こういう状況がなぜ起きているのかというところをもう少し詳しく分析をしたほうがいいのではないかと思うからです。多分、非常に小さい会社の場合、人が固定してしまたり、なり手がいないという秋田委員の御発言があったのですが、それにもいろいろな理由があると思いますし、規模、あるいは労働時間の状況、こういったものも踏まえながら、なぜこういったことが起きているのかをきちっと分析した上で、それをどういうふうに改善していくのかという議論の進め方をさせていただいたほうが建設的な議論になるのではないかと考える次第です。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

 事務局、いかがでしょうか。

○古瀬調査官 まず、1点目の規模別等のデータの有無ついては、精査した上で、追って御回答いたします。

○岩村分科会長 それでは、鈴木委員のお手が挙がっていました。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 先ほど新谷委員から御発言ございましたように、例えば、三六協定の労働時間というような、労働者の健康にもかかわるような、大変重要なルールの土台となるような仕組みというのは、おっしゃるとおりだと思っておりますし、そういう意味では、民主的な方法で選ばれることが必須であると考えます。

ただ、踏み込んだ議論をというお話に関してでございますが、先ほど事務局からも御紹介がございましたように、その選出方法というのは、投票や選挙などの民主的な方法で選ばれることが既に法令で明確に定められております。また、それに基づいて行政指導も当然対象になると思っておりますので、ここはどのように周知徹底を図っていくかという視点で議論を進めさせていただければと思っているところでございます。

 以上です。

○岩村分科会長 では、簡潔に、新谷委員、お願いします。

○新谷委員 私どもとしましては、現行の労働基準法施行規則第6条の2の規定では民意を反映させる方法として十分ではないと考えております。「今のルールが十分でないためにこのような不適切な現状が生じている」という認識にあり、実態としては、例えば「こういう協定を結びたいのだけれども、どなたか過半数代表になっていただけませんか」といった協定内容の明示すら、多分使用者側からは行われていないと思うのです。また、「私が過半数代表者をやりましょう」といった立候補の機会も与えられていないところだと思います。こうした現状を改めるには、「直接・無記名投票によって当該事業場の中で代表を選ぶ」というのが一番の民意を反映する仕組みですので、そうした形に限りなく近づける方法をとるべきであるというのが私どもの考えであります。今の規定のままではうまく回らないのではないかという問題認識の中で、こういう提起をさせていただいているということです。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 この点については、今、いろいろ御議論も頂戴しまして、かつ、もう少し、今日提示いただいた統計の資料についても分析ができないかという御依頼もあったところでございますので、そうしたものをベースとしながら、この後、続けて議論をしていきたいと思います。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 時間が押している中ですみません。今日、せっかく資料をつくっていただきましたので、資料5に諸外国の労働時間法制についても発言したいと考えております。

○岩村分科会長 今からです。資料No.4が終わりましたので、今度は資料No.5の、これまで委員の皆様から御質問などをいただいた事項について、今日、事務局で資料を用意していただいておりますので、それについての御意見、御質問をいただきたいと思います。時間が大変押しておりますので、御質問などについては、申し訳ございませんが、簡潔にお願いをしたいと思います。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 すみません、先走りしまして。非常にいい資料をつくっていただきまして、ありがとうございました。事務局に御用意いただいた資料によって、諸外国の、特に先進国といわれるフランス、ドイツ、アメリカの状況についてかなり理解が進んだと思います。それで、この資料を拝見して思うことは、フランス、ドイツ、ヨーロッパの労働時間の規制はかなり厳格だなということです。これは労働時間の絶対上限規制でありますので、これ以上労働させることができないということであり、フランスなどは年間ベースでの時間外労働の上限規制などもかかっているということであります。

一方で、私たちは国民1人当たりGDPの大小についての比較をしてみたのですけれども、フランスもドイツも1人当たりのGDPは日本よりも高いという状況となっています。これらの点を考えると、こういった厳格な労働時間の規制をとることと生産性を向上させることとは決して矛盾しないのではないかと考えるわけであります。使用者側からは「生産性の向上のために規制は強化するべきではない、むしろ緩和するべきである」という主張もされているわけでありますけれども、生産性の向上は、こういった労働時間規制という制約要件の中で、それを与件とした上で、マネジメントの高度化等々も同時に行いながら進めていくべきであると考えているところであります。

 そこで、お聞きをしたいのは、諸外国における適用除外の対象者についてです。フランスやドイツにおいても、上級経営者について労働時間の規制を適用除外とするというのは共通に見られるわけですけれども、一定の専門職について、こうした適用除外の仕組みを設けているのはアメリカだけではないか、と考えておりますが、このような理解でいいのかということが、お聞きしたい1点目です。

 それと、もう一つお聞きしたいのは、我が国固有の制度だと私は思っているのですけれども、いわゆる裁量労働のような「みなし労働時間制度」というのがこれらの諸外国においてとられているのかどうか、ということです。この2点について教えていただきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 事務局、お願いします。

○村山労働条件政策課長 御質問の1点目です。専門職を明示して適用除外制度を設けているのは、6ページのアメリカのホワイトカラーエグゼンプションで、公正労働基準法に基づく制度の中にプロフェッショナルエグゼンプションという専門職エグゼンプトの制度類型があります。

他方で、ヨーロッパの国についてどのように考えるか、なかなか難しいところだと考えております。ヨーロッパでは、仕事に就くことが、企業に入るというより、特定の職務に就く社会であることから、その点をどのように日本と比較し、考えるのか難しいところです。

ちなみに、フランスにおいては、グランゼコール等を卒業された方などを含めて、カードルという1つの層があり、それらの方は、労働時間制度においても、年間の労働日数制や包括労働時間制から入り、やがて多くの方が経営幹部等になっていくということです。

フランスの国立の研究機関のデータによると、カードルの内訳としては、事務系や営業系が3割弱で、研究職や専門職がそれぞれ2割程度ずつとなっております。この研究職や専門職が、例えば、日本の労働基準法第38条の3の専門業務と同じか否かは、その企業に入ってからのキャリア形成のあり方が異なるため、比較するのが難しい面があると考えております。大学で学位を取得し、カードルの道で歩まれていくことと、日本の、特に大企業の典型のように大きな組織の中でジェネラリストとして育成される中で、種々の業務に就くキャリア形成のあり方とを、どのように整理するかは、本分科会でも重要なテーマと意識されている訳ですが、そのような観点からも十分御議論をいただければと考えております。

2点目の裁量労働制についてです。諸外国の制度をどのように考えるかという点はありますが、例えば、フランスの中間的カードルについて2つの制度を資料で挙げております。包括労働時間制においては、協約の締結が必要ですが、適用対象者は、事業場における通常の就業時間を適用することが不可能な管理職及び労働時間の配分の裁量を委ねられた労働者で、後者は管理職ではない労働者となっております。そして、1日又は1週の最長労働時間に代わる上限を定めた上で、それが法定超の場合は割増賃金が発生する制度であり、日本の裁量労働制と似た面もあるし、少し違う面もあると思います。また、日本において、管理監督者層と一般の労働時間規制の対象者との間に、裁量労働制というみなし労働時間制度があるのと同様に、諸外国においても経営幹部と一般的な週48時間絶対上限やインターバル規制が例外なく守られている層との間に、一定の層があるということは事実だろうと思います。

さらに、例えば、フランスでは、年間労働日数制のように、休日と労働日で押さえることよって、一定の健康確保やバカンスの確保を図っていく制度もある訳です。さまざまな国情の中のさまざまな制度を参考にしつつ、日本においては日本の国情に照らして御議論を深めていただければと考えております。

以上です。

○岩村分科会長 よろしいでしょうか。では、池田委員、どうぞ。

○池田委員 資料5の1415ページについて、調べていただいてありがとうございました。この中に、違反率と数字があり、平成25年では68%ないし70%になっていますけれども、どういうところから情報が入って定期監督等をすることになったのかという質問と、違反が疑われる企業に定期監督等を実施した結果の違反率ということですので、これが全ての企業の中でこれだけの割合になっているという誤った認識にならないように、その辺を御留意して発信していただきたいというお願いです。質問は、定期監督等をする場合に、どういう情報に基づいて企業を選定していのか、それとも定期的に毎年一定の割合で監督指導をするというルールなのか。もう一つは、企業全体の中で、違反している企業がどれぐらいの割合なのかというところを、今日ではなくても結構ですので、お分かりであれば教えていただきたいと思います。

○岩村分科会長 では、監督課長、お願いします。

○秋山監督課長 ただいまの御質問について、もちろん理想としては日本に展開されている、労働者を雇っている全ての事業場に監督することですが、労働基準監督官の数も限られておりますので、定期監督等では申告事案を除きますが、さまざまな相談やメール等により寄せられた情報をもとに、なるべく違反がありそうな事業場に対して実施しております。

 それに関連して、2点目の質問ですが、御指摘のとおり、日本に数限りなくある事業場全体に対し、どれだけ労働基準法違反があるかはわかりません。14ページから16ページの資料は、あくまでも定期監督等を実施した事業場の中での違反率であり、なるべく違反がありそうな事業場に対して実施しておりますので、違反率はなるべく高いほうが、我々としてはいいということだと考えております。

○岩村分科会長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでございましょうか。それでは、秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 資料ありがとうございます。8ページの特別休暇制度のところで、事務局にお尋ねしますが、例えば、夏季休暇の導入企業割合が出ているのですが、平均付与日数はわかるのでしょうか。

○村山労働条件政策課長 すみません、直ちにデータが出ないものですから、追って御回答いたします。

○岩村分科会長 それでは、また後日御提供いただくということでお願いをしたいと思います。

 そのほか、いかがでございましょう。小林委員、どうぞ。

○小林委員 13ページの諸外国における労働監督官の数の比較を見ていたのですけれども、我が国の雇用者1万人当たりの監督官の数0.53と。諸外国、先進国と比較すると、ちょっと少ないなというのが実感です。今までいろいろな監督行政をしっかりやっていただいて、定期的な監督というのもあると思うのですけれども、先ほど言っていた労働者代表の選び方が不適切ではないかというのは、まさに労働基準監督官の方が現場に入って、いろいろな形で指導していただくのもありがたいことですし、この辺、予算の問題もあるでしょうけれども、労働基準監督官の人数をふやすような形で、今後とも厚生労働省に頑張っていただきたい、監督行政をしっかりやっていただきたいというのがお願いでございます。

 以上です。

○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今、小林委員から御発言がありましたけれども、全く同感でございます。諸外国に比べて我が国の監督行政は非常にリソースが少ないと考えておりますので、ぜひここは十分な増員をお願いしたいということを、労働側としてもお願いしたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 公益側としても全く同じも思いでございますので、ぜひ厚生労働省におかれましては、労働基準監督官の増員、充実ということについて、特段の御尽力をいただければと思うところでございます。

 よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。

本分科会におきましては、9月以降、今日お配りしております資料No.3の議題につきまして、今日までのところで一通り御議論をいただいたところです。伺っておりますと、労使双方が同じ方向に向かっておられるというところもありましたけれども、他方で、それぞれの問題の捉え方、あるいは目指す方向性というところにつきまして、かなり隔たりがある、そういう論点もあったことは事実でございます。

一通り御議論いただいたということもありますので、次回と、次々回の2回につきましては、そうした論点について、なお詰めるための議論をお願いしたいと考えております。

そこで、順序でありますけれども、次回につきましては、第1に長時間労働抑制策、第2に年次有給休暇取得促進策、第3に労使の自主的な取組の促進策、第4に労働時間の把握につきまして御議論をいただきたいと考えております。

その上で、次々回につきましては、新たな労働時間制度を初めとします弾力的な労働時間制度についての御議論をいただきたいと考えているところでございますので、御了承いただければと思います。

それでは、事務局から次回の日程についての説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 日程の前に、先ほど秋田委員から御質問いただきました夏季休暇の平均付与日数の御回答をいたします。4.3日となっております。

 続きまして、次回の労働条件分科会の日程ですが、11月5日水曜日10時から12時です。場所は、厚生労働省19階の共用第8会議室になります。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 それでは、本日の分科会はこれで終了とさせていただきたいと思います。

 なお、議事録の署名でございますけれども、労働者代表につきましては宮本委員に、使用者代表につきましては田中委員に、それぞれお願いいたします。

 本日は、お忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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