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2011年6月17日 第88回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成23年6月17日(金)
14時00分~16時00分


○場所

労働委員会会館7階講堂
(東京都港区芝公園1-5-32)


○議題

平成23年6月17日 第88回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

・日時
平成23年6月17日(金)14時00分~16時00分

・場所
 労働委員会会館7階講堂

・出席者
【公益代表委員】
 荒木委員、岩村委員、権丈委員、田島委員、山川委員

【労働者代表委員】
 工藤委員、新谷委員、?松委員、中島委員、宮本委員、安永委員

【使用者代表委員】
 池田委員、伊丹委員、伊藤委員、田中委員、三浦委員、宮地委員、輪島委員

【事務局】
 金子労働基準局長、渡延審議官、前田総務課長、田中労働条件政策課長、
達谷窟監督課長、青山労働条件政策課調査官

・議題
 1 有期労働契約について
 2 2011年度目標について
 3 その他

○岩村分科会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第88回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の出欠状況ですが、公益代表の守島委員、村中委員、労働者代表の島田委員が御欠席でございます。
 議事に入る前に、定足数につきまして事務局の方から御報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○田中労働条件政策課長 定足数について御報告します。労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要ですが、本日はいずれの数も上回っております。定足数は満たされております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 それでは、早速議事に入りたいと存じます。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
 まず議題の1番目は、前回に引き続きまして「有期労働契約について」ということでございます。前回は各論の最初の論点であります「有期労働契約の締結及び終了に関する論点」を終えたところであります。その上で次の論点であります「契約期間中の処遇や雇用管理等に関する論点」につきまして事務局の方で用意していただいた資料について、説明だけ行って終了したということになっております。
 本日は、この前回御説明をいただきました「契約期間中の処遇や雇用管理等に関する論点」について議論をしていただくことになります。なお、追加で若干事務局の方から資料を配付していただいておりますので、まず事務局の方からこれについて説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田中労働条件政策課長 それでは、資料の説明をします。
 資料のNo.1は前回資料と変わりございません。各論の検討項目でございます。
 資料のNo.2も前回の資料と変更ございません。「契約期間中の処遇や雇用管理等関係」についての事務局として用意させていただいた論点と考えられる項目でございます。
 その別紙1別紙2についても変更がございません。
 資料3についても変更がございません。フルタイム労働者・短時間労働者という労働時間の軸と、それから有期契約労働者・無期契約労働者という雇用期間の軸とで4種類の労働者が存在し、そのうち今回御議論いただくのは左の時計文字の?と?の有期契約労働者の部分、有期のフルタイム労働者と有期の短時間労働者についての均等・均衡待遇等についてでございます。
 資料4が、今回追加をさせていただいた資料でございます。これは既に昨年の11月29日の83回分科会資料で、総論的な御説明のための資料として出させていただいていたものです。これを再度提出させていただきます。
 1つ目は労働契約法の労働契約の原則に関する第3条の中に「労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」という原則が規定をされているということでございます。
 2番目の○は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」いわゆるパートタイム労働法でございます。その中から幾つか条文を抜き出しておりますけれども、第6条は「労働条件に関する文書の交付等」ということでございます。労働条件に関する明示については、原則が労働基準法に規定されておりますけれども、それに加えパートタイム労働者に関しては上乗せして明示すべき事項がございまして、その内容について規定しているものでございます。
 第8条は通常の労働者と同視すべき短時間労働者について差別的取扱いの禁止を規定した条文でございます。
 次の2ページ目の第9条については、通常の労働者と同視すべき短時間労働者以外について、賃金の均衡ある取扱いについて規定した条文でございます。
 10条・11条については、通常の労働者と同視すべき労働者以外の短時間労働者について教育訓練、福利厚生施設の利用の機会等について、均衡ある取扱いを規定したものでございます。
 12条については、短時間労働者から通常の労働者への転換の推進を図るための、事業主が講ずべき措置について規定した条文でございます。
 次のページの13条は、短時間労働者の待遇の決定に当たって考慮した事項を、当該短時間労働者に説明しなければならないという義務を、事業主にかけた条文でございます。
 次の○が、パート法の施行規則、省令でございます。第6条第1項で労働基準法に追加して明示すべき事項として、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無というものが具体的に規定されております。
 第2項及び第3項についてはその明示の手続きについて規定されたものでございます。
 次の14ページについては、先ほど8条、9条、10条、11条ということで、パートに関する均等・均衡に関する規定を御紹介いたしましたが、それを1表に整理したものでございます。左側には「通常の労働者と同視すべきパート労働者」という区分があると思います。これがいわゆる8条で規定されている労働者でございまして、その労働者については右の欄にあります「賃金」「教育訓練」「福利厚生」いずれについても◎、下に凡例がございますが、パート労働者であることによる差別的取扱いの禁止が規定されております。
 ?以降は、9条、10条、11条の取扱いでございます。パートタイム労働者と通常の労働者を対比して、左上の欄に3つの要素が書かれております。「職務の内容」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」この3つの要素のどれが通常の労働者と同じか異なるかによって、取扱いが異なっております。この3つの要素がすべて通常の労働者と同じであると見られる場合に、8条の?が適用されるわけですけれども、すべて同じではないけれども、例えば?については「職務の内容」と「人材活用の仕組みや運用など」が一定期間については同じではあるが、契約期間は有期であるというような場合については、?の区分が適用されるということでございます。そのほか、?、?とパート労働者の雇用管理の態様等に応じて、規定の内容が異なっているということでございます。議論の御参考にしていただきたいと思います。
 資料No.5は、前回の議論の中で、有期労働契約の更新時に労働条件の引き下げが提示された場合に関する裁判例があるのではないかということで御指摘がございました。前回のテーマに関することですけれども、御参考いただくように裁判例を追加させていただいております。3つの事件がございます。これらの裁判例は労働条件の引き下げの合理性を判断したものでございまして、その結論に基づいて、引き下げの拒否を理由とする雇止めの合理性があるかどうかという点を判断しているものでございます。
 1つ目の「日本ヒルトンホテル事件」につきましては、いわゆる日々雇用の配膳人が労働条件の引き下げの提示に対し、これを争う意思を示し、それに対して事業主から雇止めをされたという事例であります。日々雇用を長期間にわたり繰り返しておりましたので、いわゆる雇止め法理、解雇に関する濫用法理が類推適用されるかと判断されておりますけれども、具体的な労働条件の変更自体は合理的な理由があると、その合理的な理由をちゃんと説明していることなどによりまして、この雇止めは有効であると判断されております。
 次の「ドコモ・サービス事件」については、有期契約労働者が社員の区分の変更を提示されたと、そのときに一定種類の給与の支払い、ここでは能率給でございますけれども、能率給を廃止するという提示をされたということでございます。この事件については、賃金減額に実質的につながるという重大な不利益については、その必要性が認められない、合理性が認められないということで、この労働条件の変更に同意しないことを理由とする雇止めについては、無効だという判断がなされております。
 「河合塾事件」につきましては、塾の1年契約の講師の雇止めの事例でございます。これは下級審において、雇止めについて不法行為を一部認容する判決が出ておりましたが、その上訴審であります最高裁において、この更新時の労働条件の変更、具体的には持っているコマ数を削減するという変更の提示に対して労働者が承認しなかったという事例でございますけれども、この労働条件の変更はやむを得ない合理的なものであるということで、不法行為を認めた原審を覆して、不法行為に当たるとはいえないと判示した事例でございます。
 議論の御参考にしていただければと存じます。
 以上で資料の説明を終わります。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 それでは、今日の論点でございます「契約期間中の処遇や雇用管理等に関する論点」につきまして、御質問あるいは御意見等をいただきたいと思います。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 前回、今回と資料を中心に、契約期間中の処遇や雇用管理関係について説明をいただいております。これから各論の論議に入る前に、均等・均衡処遇に向けて、どのような法規制であるべきかということについて、労働側の主張をまず申し上げたいと思っております。
 有期労働契約に関する均等・均衡処遇については、しばしばパートタイム労働法が参照されます。このパートタイム労働法は、実効性を上げるための方策として行政指導を中心においた法律になっていると思いますが、今後この分科会において有期労働契約の均等・均衡待遇を考えるに際しては、やはり私法上の効果、民事効をはっきりと労働契約法の中に規定をするという方向で考えるべきではないかと労働側は考えているわけでございます。
 例えば行政指導を中心とした法律ですと、2013年問題を目の前にして、今後、論議となる高年齢者雇用安定法がございます。この第9条は、雇用確保措置として、3つの措置を講じなければならないということを定めています。ただ、これは行政指導を中心とした規定になっておりますので、この高年齢者雇用安定法の9条に基づいて私法上の救済を求めても、なかなか裁判で認めていただけないという現状があるわけでございます。
 やはり今後、有期労働契約の均等・均衡待遇を考えるに際しては、例えば合理的な理由がない場合には差別的取扱いを禁止する、あるいは不利益な取扱いを禁止するといった強行規定を入れるべきであるということを、まず冒頭に総論的に申し上げておきたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 ありがとうございます。
 資料3の表のところの話になるんですが、有期労働契約に関する均等・均衡の処遇を考える場合、法律の適用範囲の競合ということが問題になる可能性があると思います。
 パートタイム労働法との関係をどのように考えるかというのも、整理が必要ではなかろうかと思います。例えば、有期で短時間、要は右下の?という分類ですが、パートタイム労働法と有期契約の法制がオーバーラップする部分だと思っております。
 労働側といたしましては、有期労働契約に関するこの均等・均衡の処遇については、権利義務関係を明確にして、労働契約法の中において規定することが必要ではないかと考えております。
 また、今後、検討をいろいろと進めていくことになると思いますが、この法の競合というところも重要であるというところを指摘させていただきたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 輪島委員、お願いいたします。その後、宮本委員ということで。
○輪島委員 ありがとうございます。
 入り口のところで労働側のお考えを開陳されたと理解をしていますけれども、もう少し具体的な話を、どことどこがどういうふうな均衡をするのかというようなことを、どういうふうに労働側としてお考えなのかということを、聞かせていただければと思っております。そこがどうも、今まで余り具体的に議論をされているように、私自身も記憶がないので、できればこの審議会で、労使、そういうような議論ができればと思っています。
 さはさりながら、基本的なお考えが示されたので、その点についてだけ申し上げておくと、何をもって正社員と比較するのか、正社員というのはどういう人たちなのか、新入社員の人もいるし、課長級の人もいるし、部長級の人もいますけれども、そういう意味でだれと比較するのかというのがよくわからないということがあります。
 もう一つ、おっしゃった合理的理由のない不利益取扱いということを禁止と御主張されたわけですけれども、何をもって合理的理由のない不利益取扱いなのかということを、むしろいろいろ明らかにしていかなくてはならないということになると、その方がえらく大変な話ではないかと思います。裁判においても判決がそういう意味ではまちまちではないかと思いますので、その点また判決について少し整理をしていただければと思いますけれども、そういう点があるのではないか。
 なので結論としては、判断が非常に難しい問題を惹起するのではないかと私どもとしては考えています。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 宮本委員、どうぞ。
○宮本委員 この有期契約労働者の均等・均衡待遇に関する議論をする場合、今も出ておりましたけれども、パートタイム労働法の規定を引き合いに出すということがあります。しかし、そもそもパートタイム労働法第8条に定められている差別的取扱いの禁止というのは、どれぐらい実際、今、効果が出ているのか、効果があるのか、そこがよくわからないところがあります。
パートタイム労働法第8条では、パートタイム労働者であるということだけを理由に、賃金の決定だとか、教育訓練の実施だとか、福利厚生施設の利用ということについて、差別的取扱いをしてはならないということになっているわけであります。そこでそのような規定にあってパートタイム労働者が使用者から差別的取扱いを受けたとして、賃金差額分の支払いを求めるような訴訟を起こした場合、一体だれに立証責任がこの場合あるのか、また何について立証をしなければならないのかというところを、できれば教えていただければと思っています。
 ちなみにパートタイム労働法のコンメンタールを読んでみますと、職務内容が同じであること、人材活用の仕組みが同じであること、3つ目に契約期間が実質的に無期契約であること、というようなことを立証しなければならないのは労働者側だと書かれています。また、以前この分科会でも事務局より資料を提示いただきましたけれども、パートタイム労働法第8条に基づいて都道府県労働局長による指導・助言の件数というのは、平成20年では7件、21年度も7件、そして22年度では3件にとどまっていると認識をしております。調停の申請受理件数については、平成20年から22年の3年間で3件しかないとうかがっております。
 パートタイム労働法第8条を適用して差別的取扱いを違法とした裁判例も余り見られない状況の中で、この規定が本当に広く活用されているのか、是非、厚生労働省の方でもどのように認識をしておられるのか、一度、お聞きしたいと思います。また厚労省の「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」においても、いろいろな観点から議論されていると思うのですけれども、この第8条の活用状況について、研究会の委員をされている山川先生にも、是非一度教えていただければと思っております。
 また、差別的取扱い禁止を規定する規定を設けるのであれば、やはりその立証責任というのは使用者側が負うものだと、負うべきだと思っておりまして、是非その点も一度お聞きをしたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 議論を整理しますと、どうしましょう。先ほど輪島委員から労側に対する投げかけがありましたので、まずそれにお答えいただき、それから今、宮本委員からパート研究会についての御質問がありましたので、それについては事務局の方からお答えいただくという順番で整理させていただきたいと思います。
 新谷委員、お願いします。
 済みません、お手が挙がりましたが、その後でということでお願いします。
 安永委員からお答えいただくということでお願いいたします。
○安永委員 輪島委員から御発言ありました中身に関連して発言をしたいと思います。
 私は資料2の(1)ウにありますように、合理的理由のない差別的取扱いを法令により禁止するということにして、その上で、何が合理的理由なのかということについては、司法判断によるべきだと考えております。
 他の項目では今日まであれもこれも法令で定めるべきだという、私自身も発言をしておきながら、なぜこの合理的な理由を司法判断にすべきかということを申し上げますと、今も宮本委員からもありましたように、パートタイム労働法8条のように精緻に設計された要件を設けますと、現場レベル・実務レベルでは、特に中小企業においては、要件適合についての検証の負担が大きいということもあります。また、企業側もその要件に該当しないような行動をとって、結果として実効性のない規定となることをおそれるからでございます。
 そうなりますと、今度は予測可能性の問題を指摘されそうでございますが、それは裁判例の蓄積によって対応できると思っております。例えば今日までも、下級審の判断ではございますが、丸子警報器事件の判決は、労働関係の実務者には少なからず影響を与えていると思っておりますし、こうした判例の蓄積が一定の法規範を形成していくことになると考えます。
 また、職場の賃金制度でありますとか、特に私ども情報通信のところの賃金制度、会社によって大きく違っておりますし、福利厚生、教育訓練制度などさまざまでございます。合理的理由のない差別的取扱いを解消していく取組みは、その個々の職場の労使でなければ、判断したり構築したりすることは難しいのではないかと考えておりますので、原則的な考え方を示す規定とすべきだと考えております。
 併せて、まだまだ裁判例の積み重ねが少ないという現状の中で、指針とかガイドラインによって、何が合理的な理由となり得るのか、何が差別的取扱いになるのかなどについて示すということも考えられると思っております。指針やガイドラインといいましても、法的な位置づけとか、その成り立ち、経緯等によって、いろいろ種類があると思っております。
 例えば法律に根拠のあるなし、裁判規範となるかどうか、行為規範なのかどうか、みたいなところで、それぞれ指針やガイドラインの位置づけも変わってこようかと思っておりますが、例えば労働契約継承法の指針でありますとか、投資ファンド等による企業買収の際の指針などのようなものが、よいのではないかと思っております。
 いずれにしましても、それらの策定に向けて、労使が参加した上で策定をすべきだと考えております。
 以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 続いてパート法の研究会の状況について、事務局の方からお願いいたします。
○青山調査官 パート法について事務局の方で把握しておりますことを御説明いたします。
 先にお話のありました都道府県労働局におけるパート法に関する指導等の状況でございまして、今、委員の方からも件数等についての御紹介をいただきました。おっしゃるとおりパートタイム労働法の8条の関係について、都道府県労働局、具体的には雇用均等室というところですが、指導している件数で見ますと22年度が3件となっております。これにつきましては、もう一つデータがございまして、それは都道府県労働局の雇用均等室に、労働者か使用者から寄せられた相談件数でございまして、その相談件数で見ますとパート法8条についての相談は、22年度は406件となっております。
 相談が406件もありながら実際の指導が3件かということもあるかもしれませんけれども、相談といいますのは、そもそも法律上の要件の紹介にとどまったり、相談の結果、8条でいう差別的取扱いの禁止の対象にならない短時間労働者であったことが判明したという場合もありますので、少なくなったことはいたし方ない部分があるという分析をしていると聞いております。
 ちなみに9条の賃金についての均衡待遇の努力義務の指導につきましては、都道府県労働局雇用均等室に寄せられた相談が、先ほどの8条と同じレベルの404件で、雇用均等室から事業主に指導した是正指導の件数は1,323件というデータが上っております。
 パートタイム労働法研究会につきましては、パート法の19年の改正のときに定められた改正法附則にある、3年経過したときの見直しという時期が来ておりますことから、今年2月から、今後のパートタイム労働対策に関する研究会が立ち上がり、学識経験者による検討が行われております。今日の午前中、直近の会合があったということなんですが、それも含めて7回行われているようでございまして、論点としましては、通常の労働者との間の待遇、納得性の問題とか、教育訓練とか、通常の労働者への転換などにつき順次、議論が行われると聞いており、その通常の労働者との間の待遇という論点の中では、先ほどから議論になっています差別的取扱いの禁止、8条の在り方についても含めて議論されていると聞いており、今後更に議論が深まっていくと聞いております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 私の方では、山川委員、権丈委員がこの研究会に出ておられると伺っていますので、もし今の事務局の説明以上に何か付け加えることがあれば、コメントがもしありましたら。
 山川委員でよろしいですか。お願いします。
○山川委員 今、お話にありましたように、権丈委員と私で研究会に参加しておりまして、進捗状況は青山さんからお話のありましたとおりで、今のところ、いろんなテーマについて諸外国の状況を調べたり、ヒアリングをしたり、フリートーキング的にいろんな議論を交わしている状況でありまして、まだ研究会としての方向性は定まっておりません。次回辺りから恐らく報告書案の検討に入っていくのではないかと思われます。
 議論の状況で法律案的なことについて、若干追加して御説明しますと、これまで労使の方がお話になっていた、現在の8条のような規制方式をどうするかということも、当然、通常の労働者との待遇というテーマで議論がなされております。
 お話にありました、パート労働者であることを理由とした合理的な理由のない差別を禁止するという提案もあります。その中で、これは私なりの整理になるんですけれども、現状のパートタイム労働法8条というのは、言わば正社員と同視される場合について、労働条件の差別を禁止して、そのよく出てくる要件が3つそろった場合には、差別を禁止するという形になって、かつ、それには条文上、例外がないという形になっている。
 他方で、合理的な理由のない差別の禁止という場合には、逆に立証責任は、先ほどお話のありましたように転嫁をして、合理的な理由がある場合には例外として差異があっても適用になるということで。逆に、御指摘にありましたように、何が合理的理由かというのは、そこを詰めていかないとオープン・エンドのようなことになる。これは予測性がないということもありますし、逆にいうとその今のパート労働法8条に比べて、例外の範囲が広がる可能性もなくはないということになります。今の8条は例外規定がないということですので、要件が厳格な代わりに例外もないと。
 私の整理では、その両者の間にいろいろ幅があり得ると、その合理的な理由というものを何を設けるかというのを、いろいろ考えることによって、二者択一でもいろんな幅のある発想になり得るのかなと思っております。
 合理的理由について、これも研究会の中の議論ですけれども、やはりガイドラインとか指針で明確化していくと、そのことの意味は、新谷委員が最初におっしゃられた、裁判規範とみるか、行政指導の規範とみるかによっても変わってきて、裁判規範ですと厚生労働省で裁判所を拘束するようなものは、なかなかつくりにくくて、事実上、尊重されるかどうかという問題になるということですが。逆に、行政指導のやりやすさといいますか、現場で指導を行っていくためには、それなりの明確な基準が必要であろうと、その辺りで議論をしているところですけれども、一体何が合理的な理由になるのかという、先ほどもおっしゃられた、正社員とは何かというところに最終的には帰着するんですが、そこまでは私の理解ではまだ詰められていないのかなという状況ですけれども、今の御質問・御議論の範囲ではこのくらいの追加になります。
○岩村分科会長 権丈委員、何かありましたら、よろしゅうございましょうか。
○権丈委員 特に。
○岩村分科会長 宮本委員、今のよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 今の点で重ねて伺いたいのですけれども、今日の資料2の2ページ(1)のウの最後のポツですが、その議論と有期との議論との整理です。有期研の報告書にもパートタイム労働法の枠組みを参考にと、今のところにも、枠組みを参考にとなってるのですけれども、今度はパート研の委員ではなくて労働条件分科会の委員として、ここの整理をどういうふうに考えたらいいのかということを教えていただけますでしょうか。
○岩村分科会長 今、どうしたらいいのかというのは、なかなかわからないところではありますけれども、やはりここでの趣旨というのは、また有期研の趣旨というのは、既にパート法で一つの言わば考え方のモデルというのがあると、そうだとすると、それが一つの言わば検討の出発点になるのではないかと思っています。
 ただ、問題は、先ほど工藤委員もおっしゃっていましたが、有期契約とパートというのが、実はかなり重なるので、そこのところをどう整理するのかという問題は避けて通ることはできないだろうと思っています。具体的にも、例えば今日お出しいただいた資料で、先ほど工藤委員が引用された資料3のところで、時計数字の?のところは完全に重なるわけで、そうするとパート法の方の規制をそのままにし、他方で有期契約について別の規制をするというのは、ちょっと考えられないかなと個人的には思います。
 企業としても、一体どちらに従ったらいいのかわからないし、パート法に従ってやっていたところ、有期契約の方は別の規制になっていて、そちらには反している形になったりとかいうことになると、非常に複雑になるだろうし、企業もどう行動していいかわからないということになると思いますので、ここのところはやはり、パート法と有期契約で何らかの整合性をとる必要はどうしても出てくるのではないか、と個人的には思っていますが、それはこれから、この有期研での検討と、今やっていただいてるパート法の検討との中で、うまく連携をとりつつ考えていくことかなとは思っています。
 勿論、先ほど労側がおっしゃったように、そもそも有期契約についてはパートとは別の規制をとるべきだということもあり得るかもしれませんし、そうではなくてむしろ、やはりパートの方と肩をそろえてという型もあり得るかもしれません。いずれにしろ、そこは整合性をとらないと、規制が余りにもわかりにくいものになってしまうだろうと思っています。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今、岩村分科会長からまとめていただいた、そのとおりだと私どもも思っておりまして、やはりこの2つの法律が競合してできていくのは、非常に現場サイドにとっても煩雑なことになりそうだなと思っております。
 そうしたときに、このパートタイム労働法の政策的な効果をどう見るかということに関わってくると思います。これは、私どももこのパートタイム労働法の成立なり改正については、労働側として参画してきて、パートタイム労働者の権利保護について重要な役割を果たしているというのは十分、認識をしているのですが、ただその8条の禁止の規定を見ても、果たして本当に狙ったとおりの政策的な効果を出してるのかというところについて、これをどういうふうに評価するかというところも十分、論議をしないといけないのではないかと思っております。
 先ほど輪島委員の御質問にもありましたように、パート法8条は非常に精緻な要件を科して、賃金と教育と福利厚生について、考慮するべきところを決めています。ところが精緻過ぎて裏をかかれてしまっている可能性はないのか、要するに法の潜脱がここで起こっていないのかという懸念も、非常にあるわけでございます。
 履行確保も行政指導中心ということでございますので、この辺を考えたときにどちらに寄せるんだと考えたときには、やはりパートタイム労働法の性格は今後どうするのかということも当然、今後、関わってきます。
 私どもとしては、やはりここは先ほども言いましたように、私法上の効果を労働契約法の中にきちんと書き込んでいただいて、パートタイム労働法については、また違った役割を担う法律として再整理をするべきではないかと考えております。
 以上です。
○岩村分科会長 ちょっと待ってください。済みません、今の新谷委員の御発言の趣旨としては、重なる部分については有期の方に寄せるべきだと。勿論、組合、労働側がおっしゃってる規制というのを前提にしつつ、有期の方に寄せるべきだというお考えだとうかがってよろしいでしょうか。
 済みません、まず山川委員が補足的にコメントがあって、輪島委員がお手を挙げてらっしゃるので、輪島委員という順番にさせていただきたいと思います。
○山川委員 座長の先ほどおっしゃられたことと整合性については同感なんですが、その前の輪島委員の御質問について、これは労働条件分科会委員というよりも、有期労働契約の研究会の委員、一体どういう立場で何を発言したらいいかというのが、いろいろ競合していて難しいのですけれど、どういう立場であろうと言うことは変わらないんですが。
 報告書の中で、先ほどの御質問との関係で言いますと、有期労働契約研究会報告書の机上に資料がありますが、23ページの最後の部分ですが、パートタイム労働法の枠組みや平成19年の同法改正法附則第7条に基づく検討の動向に留意しつつということで、現在のパートタイム労働法の枠組みもありますし、更に検討の動向にも留意するという形で報告書では整理しているので、現在、行われている検討も考慮の対象には当然含まれている報告書になっていると、私としては理解しておりました。
 以上です。
○岩村分科会長 私のいたらないところを補っていただきまして、ありがとうございました。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 お願いですが、分科会長にその整理、パートタイム労働法と、この場での労働条件分科会としての議論、どこが重なってどこが重ならないのかというところが、新谷委員がおっしゃったのは、パートタイム労働法をどうにかするということも含むので、そこはなかなかここまで、ここの場で私どもとしては言えないなという感じがするので、そこの整理だけは意識して、我々にわかりやすいように議事進行をしていただければ、ただお願いです。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 おっしゃるとおりだと思いますが、何せ私はパート研の方には何の権限もないので、そこは事務局を介しつつ、うまく整合性がとれる形で議論の整理を図っていきたいと思います。
 そのほか、いかがでございましょうか。
 私の方から、組合側、労働側が先ほどおっしゃっていたことについて御質問させていただきたいのですが、不利益取扱いないし差別的取扱いについて、それを禁止する規定を労契法に書き込むと、仮にそういうことを考えるとして、有期契約の問題というのは、別の側面でいうと、結局、正社員、非正規社員という、正規・非正規の問題であり、更にもう一つやっかいなのは、先ほど来、議論になっているパート法の8条のように、まさに均等が問題になるケースと、それから、均衡が問題になるというのとがあって、先ほどおっしゃっていた趣旨というのは、同じものを同じに扱えというのはわかるんですが、不利益な取扱い、あるいは差別的取扱いといったときに、均等なものは均等に取り扱えというものまで含むご趣旨なのかどうかというのを、うかがわせていただければと思うんですが。
○新谷委員 ありがとうございます。私どもも、この合理的な理由は一体何なのかということについては、法律は法律としての考え方を申し上げましたけれども、現場では一体何が均等・均衡を実現する項目なのかということは、私ども論議をしております。例えば、合理的な理由になるもの、ならないもの、均等にしなければいけない処遇は何かなど、運動としては議論してきております。
 そのすべてを今日申し上げることはできませんけれども、例えば契約期間の有無のみで賃金の取扱いに区別を付けることは、合理的ではないとしても、職務の違いや勤続期間をどのように評価するのか、などいくつかの切り口で実は考えております。
 このようなことを具体的に法律の中に書き込みができるのかどうかという点ですが、そういったものを精緻につくればつくるほど、パートタイム労働法のように潜脱の問題がやはり出てきます。やはり判例の積み重ね、蓄積にゆだねるべきではないかと考えております。
 その一方で、処遇制度は職場によって随分違いがあろうと思います。賃金とか福利厚生とか教育などについて、職場ごとにさまざまな違いがあろうかと思っています。それをすべて法律で規定をするのではなく、以前、伊丹委員もおっしゃっていたように、集団的労使関係の中で現実的な対応も併せて考えていってはどうかなと思います。やはり職場を一番よく知っているのは労使ですから、労使の中で均等・均衡についてどうあるべきかというのを考えていったらどうかと思っています。
○岩村分科会長 ありがとうございます。若干、余り座長がしゃべるとよくないので、コメントだけさせていただきますと、お話はよくわかるんですが、他方で、さっき安永委員の御発言でもあったのですが、今の新谷委員の御発言にもあったように、現場のことは多分現場の労使が一番よくわかってて、その中で均等あるいは均衡の待遇を積み上げていくのが重要だというのはよくわかるんですが、他方で、司法に持っていくと、逆に裁判官は現場のことを何もわからないので、いきなり司法の場に結局持っていかれるという話になってしまう、そこのところはどうなのかなというのが、私としては気になるところです。
 あともう1点は、確かに労働法のいろんな領域では概括的規定が多いので、労契法でもそうですが、そういう意味では裁判所の判例というのは重要な役割を持っている、そこはおっしゃるとおりなんですが、他方で、判例が積み重なると、それは一つの言わばルールとしての役割を果たすので、逆にそれができてしまえば、それをかいくぐる形でまた制度が組み上がるということになるので、そうすると単にそれは、入り口というと混乱するのですが、つくるときにある程度、決めておくのか、それとももう少し時間の経過とともに結局でき上がっていくという、早いか遅いかだけの問題ではないかという気がするので、そこのところをどうするのかなというのが、お話をうかがっていて気になった点です。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 私どもは、非常に概括的な枠組みを、法律に規定すればよいのではないかと提起申し上げております。具体的な判断を分科会長がおっしゃったように全部、司法にゆだねて大丈夫なのかという懸念も理解できます。
 それをうまく誘導していくのが、ガイドラインなり指針であって、現場の運営の目安になり得るのではないかと思います。ガイドラインをつくる際は、労使が関与してつくっていってはどうかと考えます。訴訟が起こったときにも参照されつつ、一定の判例の蓄積がされていって、一定の規範が形成されていくというプロセスを考えております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 今日の論点としては、もう一つ、雇用管理の問題というか、正社員への転換といったものも入っておるはずですが、それについて何か、中島委員、どうぞ。
○中島委員 正社員への転換する制度については、是非、積極的に推進すべきと思っています。なぜなら、やはり有期契約という不安定な雇用形態に固定化されてしまうことを防ぎますし、更には働いている労働者の方にとっても、新たな仕事にも挑戦していこうと、モチベーションにつながるということもありますので、労使にとっていいことなのではないかと思っています。
 ただし、転換制度は設けているけれども、実際そこで何人の方が転換されたかという数字や実績については、どのように見ていくのかというところが、少し論点になるのではないかと思っています。
 前回、配付されました資料の中にも、厚生労働省の「雇用動向調査」で、臨時日雇名義から常用名義に切り換えられた人の人数が、過去5年間でおおむね6万から7万人台というような数字があったかと思いますけれども、有期契約労働者の全体の数から見れば、やはり少ないのではないかなと我々としては思っております。
 厚生労働省では、非正規労働者の方を正社員に転換させることを奨励することを目的とした助成金があるかと思います。例えば23年3月31日までのものではありますが、短時間労働者均等待遇推進等助成金とか、中小企業雇用安定化奨励金とか、均等待遇正社員化推進奨励金等々あるのですけれども、事務局の方におうかがいしたいんですけれども、このようなさまざまな助成金が、実際、正社員に転換する際にどれぐらい役に立ったのか、もし数字があればその実績について教えていただきたいと思います。
 もう一点、是非、使用者側の方におうかがいしたいんですけれども、この正社員転換がなかなか進まない、余り数字が出ないということがある場合、何かこの阻害要因、なかなかやりにくい、せっかくこのような助成金制度があるけれど、なかなか使いづらいとか、経営上の状況で何か阻害要因があるのだったら教えていただきたいと思います。逆にどのような施策があれば、もう少し正社員への転換が進むとお考えなのか、もしあれば是非教えていただきたいと思いますのでお願いいたします。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 事務局の方から御質問のありました助成金関係について、わかるところでお願いをいたします。
○青山調査官 今、御質問がありました中小企業雇用安定化奨励金等の件でございます。お話いただきましたとおり、フルタイムの有期契約労働者が正社員に転換することを推奨したり、パートタイム労働者が正社員に転換することを促進するために、事業主に対して助成金・奨励金というものを出しております。
 今年度からはパートタイムの部分と有期の部分が、同じ一つの助成金に統合されていますけれども、22年度までは有期と短時間が別の助成金でしたが、実績としては、両者合わせた実績として手元に記録があります。つまり中小企業雇用安定化奨励金と短時間労働者均衡待遇推進等助成金の2つを合わせた形で実績を御紹介したいと思います。
 今、正社員転換というお話でございましたので、正社員転換制度を導入する事業主への奨励金のメニュー、具体的には、正社員転換制度を導入して、実際に1人以転換させた事業主に対する助成メニューにつきましては、22年度の実績は1,457件となっております。これに関連するメニューとして、更に2人以上を転換させた事業主に10人目まで支給するというメニューもあるのですが、そちらのメニューは22年度は1,950件、支給しておりまして、このように雇用政策として各企業における正社員転換をサポートしていることとなっております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 中島委員、よろしいでしょうか。
 もう一点は、使側に対する御質問でありましたけれども、もしできましたらどなたかお答えいただけるところがあればお願いします。
 伊藤委員、お願いをいたします。
○伊藤委員 ありがとうございます。これまでの論議の中で、均衡につきましても、先ほどありましたように、それぞれの雇用毎に就業規則を持っておりまして、それぞれの就業規則の中で、評価し処遇していくことが、それぞれのグループの中での納得性であり、グループ間の納得性になります。そのことをきちんと会社の中で確立をしていかないと、事業運営できません。パート法というものを私どもの場合は、きちんと押さえながら対応をしているつもりでございます。
 弊社の場合は、正社員とパート法の適用される従業員、2つの区分でございます。正社員の就業規則の適用には、フルタイムで異動ができてというようなことが、当然前提になりますので、結構パートさんの側からするとハードルが高いことも事実でございます。
 実際に、私どもの場合、正社員の採用計画がございますので、採用計画の中で定期と中途、定期に合わせて、実際にパートさんの資格等、あるいは大学を卒業されて就職をせずにパートで働いている方もいらっしゃいますので、定期採用と同じような面接をして正社員雇用に変えていくということを過去にやっております。
 残念ながら今、正社員の採用をストップしております。実際に拡大期、採用期にはそういう対応をしているのが実情でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 中島委員、いかがでしょうか。
○中島委員 ありがとうございました。
 実際やはり有期の方を募集するときに、求人広告などに正社員への登用があると書かれていて、採用されてしばらく頑張ってらっしゃったんですけれど、いつまで経っても声がかからないし、どうしたらいいのかわからないうちに期間が来て雇用期間が終わってしまったことも多々あると聞きます。有期で働きたくないという方もいらっしゃる中で、そういう方が一人でも多く、モチベーションを高めて働けるということは必要だと思っておりますし、一人でも多く有期契約で固定化されないという取り組みは必要だと思います。引き続き、経営の努力もおありかと思いますが、是非お願いしたいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございました。そのほかいかがでございましょうか。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 先ほど、岩村先生の方から労側に御質問いただいた中で、均等と均衡の取扱いの違いで、合理的理由のない取扱いについて禁止をすると、これは均等ということでいけるでしょうけど、均衡はどうするんだと御質問いただいたと思っております。先ほどすべてお答えしきれておりませんでしたので、その点についても若干触れておきたいと思います。
 私どもの概括的な考え方、合理的な理由のない差別の禁止なり不利益取扱い禁止、これは確かに均等という面では適合性があると思いますが、均衡についてどのように処理をしていくのかという部分が、確かに残ろうかと思っております。それを解決するのが、今後、先生方のお知恵も借りながら、考えていかなければいけないと考えております。
 1つは、合理的な理由のない不利益取扱い禁止というものの解釈として、これを運用できないのかということがあると思います。職務などが異なる場合であっても著しい不利益取扱いがなされた場合は、均衡を失するものとして、解釈の中でこれを判断できるのではないかというのが一つでございます。
 もう一つは、不利益取扱いの禁止という概括的なものとは別に、規定を設けることでこれを乗り越えられるかどうか、ということもあると思います。公益の先生方の方が御専門でございますので、是非お知恵もお借りしながら検討を進めさせていただきたいと思っております。
 補足は以上であります。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでございましょうか。
 権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 少し問題提起というか、御意見をうかがいたいんですけれども、今朝もパート労働の研究会の方で、通常の労働者への転換の話が出まして、実際、御存じのとおり、パートタイムから通常の労働者、正社員への転換というのはなかなか厳しいし、本人も余り望んでないことが多いと。その理由としては、やはり柔軟な働き方とか、労働時間に制約のある形の人が多いためかと思うんですけれども、その場合、有期労働契約の更新の問題と関係するんですが、更新回数をある程度決めまして、ある程度働いた方には無期化すると、長期雇用を保障するような形にしていくと、正社員とはまた別のタイプになるかもしれないんですが、あるいは一緒になるかもしれないんですが、正社員転換が、正社員というか無期雇用の人たちが事実上できるんですが、そのことはやはり難しいとお考えですかと。
 労側の方で言えば、そういう正社員という形かどうかわからないんですが、雇用保障のある無期化をしていく動きをした方がいいと考えられているか。また、使用者側の方からすると、それはやはり難しい話なのか。特に有期雇用の契約でパート労働等も活用しながら、ずっと使われているようなところでは、やはり無期にすること自体も大変なのかどうかというところを、少し教えていただければと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 労側・使側それぞれへの御質問だと思いますので、お互いに遠慮なさらず、新谷委員から、どうぞ。
○新谷委員 ありがとうございます。
 非常に重要な指摘だと思っております。これは、労働条件分科会における論議が始まったときに、有期労働契約の現状をどう評価するかというときにも申し上げましたが、確かに、今の働き方の柔軟性を選択される方というのが、一定の割合でおられるというのは事実だと思います。ただそれは、働き方の柔軟性を選択してるだけであって、必ずしも雇用契約期間を有期であることを選択したものではないと考えております。仮にそれの契約期間が無期であっても柔軟な働き方が可能であれば、その労働者はそちらの方を選ぶわけでありまして、雇用契約期間が短いこと、反復更新すること、雇止めがあることに対して、労働側としてはメリットはほとんどないと考えております。柔軟性を選んでいるだけであるということで申し上げたいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 使側はいかがでしょうか、輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 この議論は、今日はお休みですけれども島田委員からも前に御提起をいただいていると思いますけれども、その点をいわゆる出口規制の関係の更新回数と利用可能期間との関係でどういうふうに見るのかだろうと思っております。その関係で言うと、いわゆる出口規制ということについての考え方は、既にこれまでも何回か申し上げているとおりなので、その点はかなり難しいだろうなと思っております。
 ただ、有期研の報告についても、先ほど御指摘があった次のところに正社員への転換という項目があって、それから昨年の2010年の7月には、雇用政策研究会の中では、いわゆる多様な正社員について、有期研でも雇用政策研究会でも議論があったと理解をしています。
 そのところで言うと、いわゆる多様な正社員というものを、どういうふうにイメージをしてどういうふうにつくるのかについては、非常に労使議論をしていくことが重要ではないかなと思っているところです。
 以上です。
○岩村分科会長 もし使側でパートタイマーをたくさんお使いのところで、何か今の権丈委員の御質問についてお話いただくことがありましたら、お願いできればと思います。
 どうぞ。
○伊藤委員 ありがとうございます。
 先般の会議でも申し上げましたが、年齢的には2万5,000人程度のパートの方々のうちの8割を40歳以上の方々が占められています。例えば1年間に私どもに入社される方が、昨年で3,600人ぐらいいらっしゃいますが、その中で1年以内に退職される方は、仕事のミスマッチか雇用保険の6か月が過ぎたからかわかりませんが、1,000人はお辞めになっています。非常に早くお辞めになられる方と、ある程度、仕事が安定して長く勤められる方、そこの人の不安定さというか、選びやすさみたいなものもすごくあるなと感じております。その中で無期化をすること自体が何の効果があるのだろうかと思います。
 我々の労働集約型産業ですと、それだけの人間を抱えていないと常に営業ができません。先ほどありました雇止めという観点よりは、どちらかというと御自身がお辞めになっていかれるというのが実情です。御本人の責に帰すべきということが若干あるにせよ、あえて無期化することに、反対に違うものをもたらすようなことを思います。
 無期化をしたときにパートとは違う部分を会社として求めるとしたら、それに応えられるのかどうかも当然あるでしょうし、御本人たちにとって難しい問題も出てくるかもしれません。
 労働契約として60歳までという契約を結んでいる正社員と、単年度で契約をしているパートタイマーにおける、途中での退職のしかたというものが、余計にシビアになってくるような気がいたします。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 先ほど輪島委員の御発言の中で、いわゆる多様な正社員について、労使で話し合いをしていったらどうかという御提起もいただいたんですけれども、これについては、今、研究会もやられているようですけれども、その概念がよくわからないというところがあります。
 なぜそういう新しい中間的な労働者区分をつくらないといけないのかという必要性もよくわかりません。また、今、いわゆる非正規の方々、有期の方々をどうするのかという論議の途中でありますので、そこであえて第三のカテゴリーという、今、伊藤委員もおっしゃったように、第三のカテゴリーをなぜ論じるのかというところが、まだ理解できません。そのため、労使で、と言われても、まだ私どもとしては論議には乗りにくいと考えております。
○岩村分科会長 では、輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
 雇用政策研究会の記述では、今後どのような取り組みが可能か、労使も含めた検討が求められると書いてあるんで、どうかなと思っただけです。
 ただ、今、正規・非正規の二者択一論で、どっちがいい、どっちが悪い、それで、非正規から正規への転換についても、一つのベクトルで、正社員がいいですよと言って、みんな正社員になりましょうという話ばかりであると、それの中であれば、いわゆる第三のカテゴリーなのかどうかわかりませんが、勤務地限定だとか、いろんなところで言われているようですけれども、そういうようなことも検討してみると、労使で話をしてみるというのは有意義ではないかなと思っています。
 特に、有期の議論をしているこの分科会以外に、多分そういうことを議論できる場がないのではないかと思っているところですが、労側がそれほど御熱心ではないというのは残念なんですけれども、もう少しアプローチはしたいなと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 新谷委員。
○新谷委員 正規と非正規、有期と無期という、今、二立論で話をされているんですけれども、有期労働契約の在り方を、まさしくこの分科会は論議しているわけであります。処遇についても、先ほど論議しましたように均等なのか均衡なのか、これをどう実現するべきか、またその雇用の保障についてもどうあるべきかという論議をしつつある中で、その区別や、差を固定化して、第三のカテゴリーを論じることは、私どもとしては乗れないと先ほど申し上げたわけです。契約期間に定めがあるかないか、ということの問題が、まさしくこの分科会の大きなテーマだと思っておりますので、そういう前提で、これからも論議をさせていただきたいと思っております。
○岩村分科会長 私の感じでは、今のお二人のお話をうかがっていて思うのは、結局のところ、この有期の議論をすると、どうしても正規・非正規の議論と切っても切れないということになり、したがって、この分科会で有期の議論をどこまで詰めるかという話は、正規・非正規の話を労使双方で、どこまで詰めて議論ができるのでしょうかということに帰着するかと思っております。
 これは大変、日本の雇用市場、労働市場の在り方そのものをどうするかという、非常に大きな議論でありまして、なかなかそう簡単に結論が出る問題ではないかなと思います。
 ただ、それでも、何らかの形でアプローチをすることは、この分科会では求められているので、そういう中で、正規・非正規の問題に触れつつ、それ以外の何か中間的なものも含めて考えていくことも、分科会としては、どこかでは、やはりやらざるを得ないのかなと思っております。
 いずれにしろ、そこはまた、多分第2ラウンドの話になるのかなとは思いますけれども、そこを労使双方ともお含みおきいただければと、分科会長としては思っております。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 単純に、先ほどの、従来、島田委員が御提案になった、従来の有期の人が単純に無期になるということでいいんですよという御発言があった点の、そういう転換というか、そういう雇用形態は正規雇用なのですか、非正規雇用なのですか。労側のお考えはどちらになるのですか。
○岩村分科会長 新谷委員、お願いします。
○新谷委員 前々から申し上げておりますように、世の中に、正規雇用なり正社員の定義というのは、まだ定かでないわけです。正社員とは、一般的に言われていますのは、期間の定めのない雇用で長期勤続を前提とした処遇を受ける者といわれてるんですけれども、果たしてどうなのかと。
 これも本当に十分論議をしないといけないと思っています。分科会長が先ほど整理をしていただきましたが、正社員なり正規雇用というのはどういうもので、非正規というのはどういう方々なのかも十分論議が必要と思っております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 山川委員、どうぞ。
○山川委員 今、御議論になっている点、私、雇用政策研究会にも入っていたものですから、その点で申しますと、やはり検討を労使でしていただきたいという希望はあります。多分、固定したものとして考えるというよりも、一種のプロセスといいますか、動きの中で考えられるのではないかと。例えばパートタイム労働法ですと、短時間正社員というものをどう考えるかということとも関係していますし、いろいろ、最終的なゴールが、今でいう正社員かどうかという問題があるかもしれません。そうだとしても、その達成の中のプロセスで考えていくことがあり得るかと思います。
 おそらく無期化するというのは、どういうニーズをそれぞれが持っているかによって、単に無期化するということですと、雇用の安定、どの程度、安定するかという、一方のベクトルがあるわけです。
 本当の、いわゆる狭い意味での正社員化するということは、キャリアアップという観点があって、そこはキャリアアップといっても、場合によっては拘束度が強まるとか、そのことをどう考えるかというのもあるんですけれども、あるいは、それに向けてのトレーニングをどうするか、正社員としての処遇を受けるだけのトレーニングなり資質が要るんではないかと、言わば雇用安定のニーズとキャリアアップのニーズを、どう調和させるかと、また雇用安定といっても程度の問題になるかもしれませんし。
 その辺り正社員とは何かという問題に、最終的にやはり新谷委員のおっしゃる、あるいは最初に輪島委員もおっしゃられたように、正社員とは何かというのが、先ほどの待遇との関係でも問題になるので、その辺り、結局、私ども研究者としてよくわからないものですから、むしろ、それぞれ労使で検討していただくとか、あるいはそれはもしかしたら、各職場によって違うものであるのかもしれないんですが、考える価値は少なくともあるかなと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 いかがでございましょうか。
 どうぞ、高松委員。
○高松委員 今日の論点ではないんですが、前回、私の方から御質問差し上げた中身で、今日も資料5として裁判例についての資料を提出をいただきました。ありがとうございます。
 3つの裁判例を資料として提出いただいていますが、いずれにしてもそういった裁判が起きるということは、前回も私どもが少し申し上げましたとおり、やはり労働相談等々においても、現実問題として契約更新時の労働条件引き下げという事例が実際に起こっていることがやはり問題なんだろうと思っています。
 労働条件の変更については、だれもが一般的にやむを得ないと理解できるようなものもあるかもしれませんが、私どもが問題だと思っているのは、労働者と使用者側の力関係が不均衡で、雇用期間が限られている労働者にとって、いかに雇用を継続できるかということが大変重要なものですから、更新拒絶を避けるために労働条件の引き下げを飲まざるを得ないということが実例として起きていることが問題なのだろうと思っています。
 したがって、大変弱い立場にいる労働者が、問題視をすると裁判所に持ち込まなければならないというのが今の仕組みですし、それ以外に労働者の救済方法が、今のところ率直に言ってないんだろうと思っています。この辺のところを、どう真の合意に近づけるか、どういったシステムをつくり上げられるのかということが大きな検討課題だろうと思っています。
 加えてこの問題は、やはり雇止めというところから発生していると思っていますから、そういう意味では、まさに今、議論している有期労働契約に特有の問題ではないのかなと考えています。
 したがって、これも今後の取扱いについての要望なんですが、中間論点整理等々の中で、引き続きの検討課題として整理をしていただければありがたいのかなと思っていますので、改めて御要望しておきたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 若干コメントしますと、正規、無期契約で雇われる人の場合は、それでも労働条件の不利益変更というのは起こるので、その場合は、組合があれば協約で交渉して、ということになりますし、組合がなければ就業規則の変更で、ということになり、そこでは結局、最終的にそれが不服であれば、やはり裁判所に行くしかないんです。
 多数組合があれば別ですが、そうでなければ、結局、就業規則で変更されたときに、それが不満であればやはり裁判所に行くしかない。それはもう今、労働契約法上、そういう規定になっていますし、就業規則の変更で合理的な範囲であればできるということになっている。
 そうすると、あとは有期契約の場合、契約の更新の切れ目というのがあるので、ある意味ではプロ野球の選手とかはみんなそうなわけですが、そこのところで結局、新しい状況に合わせて契約内容をどうするかを考える。それが場合によっては、不利益変更という形で出てくるかもしれないし、利益変更という形で出てくるかもしれない。そういうことで、やはり不利益の場合は、最終的には裁判所に行かなくてはならないということになる。
 勿論、不利益変更をしやすいかどうかという問題はありますけれども、いずれにしろ、どうにもならなくなれば、最後は裁判所に行かなければいけないというところは、無期契約の場合でも、そこは変わらないかなと思います。
 ほかにございますでしょうか。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今日の資料5で紹介いただいている裁判例について、今、分科会長からも御説明いただきましたが、私どもに寄せられる労働相談というのは、やはりひどいケースが多くて、雇止めと労働条件の引き下げがセットで示されます。労働条件の引き下げが嫌だったらもう更新しませんということに対して、どう対抗できるのかをどこかで考えないといけないのではないかと思います。
 確かに、紛争になれば、最終的には裁判所による司法判断を仰ぐということになるんでしょうけれども、どのような救済があるのかが悩ましいところです。私どももいい知恵は実は余りないんですけれども、例えば、真の同意なり合意を形成することを担保するために、使用者から申し出があったときに、例えば労働組合の役員が同席をするとか、組合がない場合には、職場の同僚に同席をしてもらうということも考えられるのではないかとも思います。
 また、留保付きの承諾権のように、更新については同意するけれども、労働条件の引き下げについては留保を付けるといったことが、法的な構成として適切なのかといったところもあります。是非、この問題についてどのように対処できるのかについても、論点として引き続き残していただきたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 大体今日の論点については、御意見は出尽くしたということでよろしゅうございましょうか。
 事務局の方、何かありますか。今日の論点について。
○田中労働条件政策課長 資料2において、幾つか論点を示させてていただいております。
 例えば(1)のウの点については、少し御意見あったかと思いますが、アとかイ辺りの点で何かもし御議論があればと考えております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
 均等待遇の推進に係るもの、あるいはイの場合だと、先ほど議論になりましたけれども、どういう労働者を想定するのかということだと思いますが。
 伊丹委員、どうぞ。
○伊丹委員 均等・均衡待遇の一つの要素として、また最終的なトラブルを減らすための知見として、賃金や訓練、福利厚生施設の利用とあわせて情報の共有のようなものがあると思います。企業の置かれている状況や有期労働契約で働いている方の立場性に関わる情報はいわゆる正規社員の場合ですと、労働組合だったりいろいろな仕組みの中で与えられるわけですけれども、有期契約労働者の場合には、一般論として、ないがしろにされていることで、いろいろな紛争が引き起こされているのではないか。
 多くの人たちは合理的に考えるので、ある種の情報があれば、あるいは順を追って聞かされれば、感情的にならずに受け止めて、次の手を考えるということも多いのではないかと思います。
 したがって、労働条件面だけで、何を持って均等・均衡とすべきなのかという合理的な判断をするのは、実感からすると狭過ぎるという感じがします。ではそれを広げて4つ目、5つ目というのをつくるべきかというと、それは非常に難しいとは思いますが、常識的に考えてこの3つだけで納得させるというのは無理だと思います。
 そういう意味で、もう少し包括的で実体的な均等・均衡への努力のあり方について、労使が共有する必要があるのではないかと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございました。大変貴重な御指摘だと思います。
 荒木委員、どうぞ。
○荒木委員 均等・均衡という問題、それから、正社員化の話が出ましたので、2点、申し上げたいと思います。
 1つは、先ほど山川委員がおっしゃったように、正規・非正規というものをプロセスとして考えるという視点が大事ではないかという御指摘がありました。非常に大事な視点だと思います。固定的に非正規の雇用をとらえて、これをどうするということではなく、もっと動的にとらえるという視点は大事だろうと思います。
 更に付け加えて言いますと、今日は、非正規と正規だけの話ですが、労働市場全体として見ると、無業・失業状態で雇用を探しておられる方が、一方におられます。そして非正規雇用があって正規雇用がある。この全体を、無業・失業状態から非正規、そして安定的な雇用へと誘導するという視点も、私は重要ではないかと考えております。
 実は、均等とか均衡の問題も、そことの絡みでどう位置づけるかということも、考える価値があるのではないかと考えております。これが1点です。
 それからもう1点、今日は均等・均衡の話が出ましたけれども、ここで均等というのに何を考えてるいかによるのですけれども、非正規雇用については不利益取扱い禁止という考え方の方がむしろ適切かなと考えております。普通、均等という場合は、等しきものに等しきものをという考え方なんですけれども、非正規社員については、有利な扱いも認めるという場面があってもいいだろうと考えております。
 例えば有期契約労働者の場合には、非常に不安定な雇用ですから、その不安定な雇用についての補償という意味では、むしろ無期契約労働者よりも有利な扱いがあってもよい。これは均等という考え方ではなくて、不利益取扱いの禁止という考え方の方が適合的なように思います。従いまして、不利益取扱いの禁止と均等と均衡、そういう3つの視点から考えるのも有益ではないかと思っております。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 特段、更に御発言がなければ、この議題についてはこの辺にさせていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、次に議事次第の議題の2にあります「2011年度目標について(報告)」でございます。
 まず事務局の方から説明をいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
○田中労働条件政策課長 資料No.6でございます。
 雇用戦略に関わる目標につきましては、昨年、この分科会、4月でございましたけれども、御報告を申し上げました。その後、労働政策審議会の下に置かれました点検評価部会でも、労働政策全体の数値目標についてPDCAによる管理を行うということで、この労働条件政策部分についての目標についても報告し御審議をいただいているところでございます。
 従いまして、労働政策関係の目標につきましては、昨年から数値目標を明確にしてPDCAサイクルで検証しながら進めることになったわけですけれども、各担当の分科会と、全体をとりまとめて評価していく点検評価部会という二本の柱で、現在、進めているところでございます。
 今年度は、中期目標を設定して2年度目となりまして、PDCAの中間的な年に当たるわけでございます。昨年は、中期目標値と2010年の目標を定めましたが、今年度につきましては、既に年度が始まってしまっておりますけれども、当年度の目標を定め分科会に報告し御審議をいただくという手続が必要となっております。
 本来、震災がなければ、できれば昨年度内に御報告するべき話でございましたけれども、そうした事情によりまして、御報告が本日になってしまったということでございまして、何とぞ御了解いただきたいと思います。
 雇用戦略の各種の数値目標の中で、当分科会に関係のある目標値については、2種類ございます。この資料6-1にありますように、雇用の質の向上;ディーセント・ワークの実現、ワーク・バランスの推進という項目の中の、1つ目が年次有給休暇取得率の目標、2つ目が週労働時間60時間以上の雇用者の割合についての目標でございます。
 これについて昨年度、中期目標値を定めました。目標年は2020年でございます。一番右端の欄をごらんいただきますと、年次有給休暇取得率につきましては、70%を達成する目標値でございます。それから、週労働時間60時間以上の雇用者の割合、この週60時間以上というのは、若干、説明が必要だと思いますけれども、週40時間制を前提にいたしますと、1週間に20時間の超過勤務があるという方でございます。月に直しますと80時間の超過勤務ということになりまして、こうした月80時間以上の超過勤務を2か月以上続けますと、過労死の危険が高まるといわれているような水準の労働時間でございます。
 こうした労働時間で働かれている方々の割合が、一番右端にあります※印ですが2008年には10%という数字になっております。このため2020年については、その10%を5割減にもっていくということで、具体的には5%が目標になっております。
 そこで昨年、併せて2010年度の目標を定めました。2010年度の目標は、真ん中の欄でございますが、50.4%、9.2%という数字でございます。これに対して直近の値がどうなっているかということですが、実は年次有給休暇の取得率については2010年の値が、この秋に出るものですから、対応する数字がまだございませんが、その直近の2009年では47.1%になっております。
 週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、既に2010年の数字が出ております。9.4%ということでございます。2010年度の目標に0.2ポイント到達していない状況でございます。
 こうした現状を踏まえ2011年度の目標を、ごらんのような数字、51.3%と9.0%に定めました。ちなみに、こうした目標値の趣旨をここで御説明をしておきますけれども、これにつきましては、政府の新成長戦略の方でも考え方が示されておりますけれども、個々の企業ごとにこの数字をということではなくて、社会全体としてこの数字を達成するよう目指していくという趣旨の目標となっております。
 具体的にこの太枠で示しました2011年度の目標の設定の考え方を、次のページでお示ししております。次の6-2をごらんください。
 まず、年次有給休暇取得率の過去の推移と将来、2020年度の目標値の関連を示しております。年次有給休暇については残念ながら、このところ47%前後で取得率がほぼ横ばいで推移をしております。この横ばいの中から2020年度の70%までもっていくというのが、現在の目標の考え方でございます。
 2010年度の目標は、ここにありますように50.4%でしたけれども、直近の47.1%という数字を踏まえ、それを直線のトレンドで伸ばして2011年度の数字を当てはめますと、51.3ということになります。そういう考え方から2011年度の目標を51.3%と定めたというものでございます。
 それから、週労働時間60時間以上の雇用者の割合については、下のグラフでございます。この数値については、やや上下はありますけれども、トレンドとしては低下傾向でございます。これにつきましても2010年の目標を0.2ポイント上回るということでございますが、この0.2ポイント上回る実績値から2020年度の5.0というところまで、直線でトレンドを伸ばして、2011年度については9.0という数字を定めさせていただいているところでございます。
 次に、こうした中期目標を達成していくために、具体的に取り組んでいる内容について御説明をいたします。資料No.7でございます。
 23年度の取組みを御紹介をいたします。長時間労働の抑制と年次有給休暇の取得促進に向けた対応として、助言・指導のための体制整備と、それを補完する助成制度をメインに取り組んでおります。
 1つ目の助言・指導の体制整備については、現在、各労働局に、労働時間設定改善コンサルタントを配置しております。このコンサルタントについては、下の方にありますように22年度の95人から本年度154人に増員をさせていただいております。主として社会保険労務士や企業の人事労務担当OBの方に委嘱をしておりまして、各都道府県労働局で、局の規模に応じて2人から10人で活動いただいております。
 今年度については、より効果的な助言・指導が行えるように、新たな業務処理マニュアルを策定して配付をしております。
 その中で、特にこれまでは個別企業をピックアップして指導・助言、勿論個別企業の要請があった場合、承認があった場合に限りますけれども、個別企業に対する指導を中心としてやってきましたけれども、指導方法の多様化、より効果的な助言・指導の方法に取り組むということで、今年度については、3つ目の黒ポツにありますように、長時間労働の抑制等に取り組む経営者の意見交換、経験交流の機会をつくっていこうということで、長時間労働の抑制に関心の高い事業主の方々、また必ずしもそうでもない方々にも声をかけて、さまざまな意見交換、経験交流をしていただくコーディネーター役を、このコンサルタントに担っていただく取り組みも始めていこうと考えております。
 それから、特定の分野、今後の成長分野ということで、医療分野が政府の方針として定められておりますけれども、その中でかなり労働時間の設定において問題がある部分もございます。今年度は特に看護師さんの働き方を中心に、病院の方にもコンサルティングをさせていただく体制を組んでいきたいと思っております。
 助成制度につきましては、既に相当程度、御利用いただいておるわけですけれども、中小企業に対する個別の支援、それから、2番目は中小企業団体の取組みに対する支援を、予算を確保して引き続きやっていきたいと思います。
 さまざまな労働時間設定の取組みがありますので、その取組み内容とか成果とかといったものを総合的に評価して、ポイント方式で、助成するかどうか、あるいは助成内容を決めさせていただいている部分もございますけれども、個別企業の方については、その内容については、この助成金による取組みが進んでいるということを踏まえまして、取組み内容の中でより成果にウェートを置いたポイントづけをしながら、成果をよりしっかり出していただいた企業に助成をするという方向性で、改善を図っているところでございます。
 そのほか、本分科会でも御議論いただきながらお決めいただきました、労働時間等見直しガイドラインについては、パンフレットを作成してしっかりと周知を続けておりますし、また震災等でも活躍が期待されますボランティア活動に対する配慮など、具体的には企業のボランティア休暇など、そういった休暇の促進にも努めているところでございます。
 資料8は、先ほど御紹介しました点検評価部会での項目に対する評価でございます。先月、発表されておりますけれども、この中間評価の最後から2ページ目に下線を引いている部分がございます。
 読み上げますと「週労働時間60時間以上の雇用者の割合について、2010年10月までの実績では前年同期から0.2ポイント増加している。このため、助成金制度の活用促進や労働時間等見直しガイドラインの周知啓発を行うとともに、特に労働時間が長い業種を念頭に置きつつ、その要因も分析しながら、労働時間設定改善コンサルタントの診断指導を更にすすめるなど、各企業における具体的な取組強化のための一層の取組が必要である。」ということでございます。
 先ほどの労働時間設定改善コンサルタントの取組みにおきましても、今年度、こうした指摘があるということを踏まえまして、特に労働時間が長い業種を選定して、重点的なコンサルティングを行うように指示をさせていただいているところでございます。
 以下は、具体的に評価シート、これは点検評価部会に提出をさせていただいている評価シートでございますけれども、最後のページでは、点検評価部会における指摘が書かれております。「週労働時間60時間以上の雇用者の割合について、景気回復により労働時間が増えるという説明であれば、行政の説明として弱いのではないか。もう少し精緻な分析を行うべきではないか。」といった御指摘もいただいております。
 労働時間、特に残業時間の部分につきましては、景気変動による上下というものがございます。今回、先ほどグラフで若干見ていただきましたけれども、週労働時間60時間以上の雇用者の割合が増えている部分もそういう影響もあるんではないかと思っておりますが、これも先ほど申し上げましたように、この時間数というのは非常に過労死の危険を高める労働時間でございますので、そういう趣旨をしっかり周知していきたいと思っております。そういう周知がまだまだ不十分だという評価もあり得るかと思いますので、その点についても踏まえて、御審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 ただいま御説明いただきました点につきまして、御意見あるいは御質問があればお願いをいたします。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 ただいま御説明をいただきました資料7について、発言を申し上げたいと思います。
 長時間労働の抑制のために、行政として取組みをされるということは非常に結構なことなんですが、その取組みの中身でこの7の上のところに労働時間設定改善コンサルタントの配置をすると、それを増員されるということが書かれております。この資料を拝見しますと、コンサルタントというのは主として社労士や企業の人事労務担当者のOBを委嘱すると書かれているわけであります。
 私自身もいっとき社労士の登録をしていたことがあるんですけれども、よく振り返って見ると社労士の勉強項目の中には、確かに労働保険とか社会保険とか就業規則等といったことは勉強する対象になっているんですけれども、例えばそれが労使協定であるとか集団的労使関係法の枠組みというのは、実は試験科目の中にはほとんど入っておりませんので、社労士という方がこのコンサルタントとして、行政のお手伝いをされるというのが、本当に適任なのかどうかという面で疑問がございます。
 また、人事労務の担当者のOBということで、労働組合の関係者がどこにも出て来ないということで、これを行政の方でコンサルタントとして活用されるということについて、この辺もなぜこういうことになっているのかについて、お考えがあったら聞かせていただきたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 事務局の方でお願いします。
○田中労働条件政策課長 こういう指導につきましては、特に、企業の側の取組みをうながすという考え方で、助成金もセットで、これまでやってきております。コンサルタントは平成18年からやってきておりますけれども、かなり企業には好評を受けておりますし、結果としては、労使を含めて御好評いただいてるのではないかと思っておりまして、そういう取組みを広げるために、今回、増員という形で対応させていただいております。
 まだまだこの存在について、周知が必要な段階でございますし、また今回新たに業務マニュアルをつくっておりますが、このマニュアルについても、今後の、その労働条件の見直しに関する問題の状況の変化に応じて、しっかりと見直しをしていかなければならないと思っております。そういった意味で人を確保して、取組みを始める段階からもう少し体系的に指導していく段階に来ているのかなと思っております。
 結局は、指導内容の中身によると思いますが、先ほど新谷委員がおっしゃったような、いろんな要素があり得ますし、それがすべてこのコンサルタントで対応できるわけではないので、いろんな制度とか人材を活用しながら、労使が最終的にしっかり合意して、労働条件について改善をしていただくということが必要と考えています。コンサルタントは企業側に指導するという意味での政策ツールの一つだと考えていただいたらよろしいかと思いますけれども、内容的に足りない部分がもしあるとすれば、十分考えていかないといけないと思っています。
○岩村分科会長 よろしいでしょうか。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。資料6-1のつくりかたのお願いをさせていただきたいと思います。
 昨年、新成長戦略がまとめられたのが6月18日で閣議決定をされているわけですけれども、その新成長戦略においては、こういう文言が入っていて「2020年度までの年平均で、名目3%、実質2%上回る成長を目指す」「2%を上回る実質成長率を実現するためには、それを上回る労働生産性の伸びが必要である」こういうことを踏まえたものであると書いてあります。
 そういう文言は、最近のものになると抜けてしまうんです。なので資料6-1の現在値のデータの出所等の下のところにも、いつも忘れないように、そういうことは前提だというようなことを明記していただきたいと思っております。
 先ほど、課長から御説明があったとおり、この数値目標は社会全体として達成することを目指す目標であり、個々人や企業に課されたものではない。各企業は、それなりに数字はかなり意識はしていますけれども、ただ一つひとつの数字が個別の企業を縛るものではないということも、口頭では御説明がありましたけれども、できれば同じように、そういう前提の上につくられている。
 何でそんなことを言うかというと、実はここの場ではないのですけれども、内閣府とかで議論を聞いていますと、例えば年休の取得率が上がったりなんかすると、その結果として経済成長するんだという議論になってびっくりすることがあるので、そういう関係にはないだろうと思いますので、その点をしっかり、2020年度までの長い目標でありますので一つひとつの数字は一喜一憂いたしませんけれども、そういう前提でつくられているということは、忘れないようにしていただきたいと思っているところでございます。
 2つ目ですけれども、資料6-1の現在、直近の数字で例えば年休であれば47.1%という数字が出ています。先ほど御説明にあったとおり、厚生労働省のホームページで確認をいたしましたら、この数字は昨年の10月14日にプレス発表されています。そうすると半年ずれがあって2011年度の目標を、例えば震災がなくて3月末にやっているとすると、半年しかないところで直近の数字がわからない。であれば、今年の10月に新しい数字が出て、それを踏まえて新しい目標をつくるとかいうようなのが、普通なのではないかと思いますので、統計を早く出すのか、統計に合わせて目標をつくるのかを、整合性をとっていただかないと、常に1年半あいた数字を追いかけるのも少し変なのではないかと思っているところです。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 御要望2点ということで、事務局の方で御検討いただきながらお願いしたいと思いますが。
○田中労働条件政策課長 資料のつくりかたについては、今後、工夫をさせていただきますし、これは分科会の御審議のために用いるということでつくらせていただきましたけれども、周知や各所への説明に当たっては留意をしたいと思います。
 それから、年次有給休暇取得率については、確かに年に1回10月に出てくるので、期間的なずれがございます。ただ全体の目標を一覧で整備するという一方での趣旨もございまして、現在は、年度ごとの目標を3月の時点でわかっている直近の数字を踏まえてやっていますので、この点はやむを得ない部分もあるのかなとは考えておりますが、更に何か工夫があればということで、引き続き念頭に置いて改善できるところはしていきたいと思っております。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 そのほかいかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、2011年度の年度目標については、事務局から御説明いただいたとおり年度目標を設定するという方針を了承するということで、よろしゅうございましょうか。
(「はい」と声あり)
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 それでは、そのように取り扱わせていただきたいと思います。
 では時間となりましたので、本日はこの辺で終了させていただきたいと思います。
 次回は「有期労働契約の1回の契約期間の上限、その他」という論点について御議論をいただきたいと考えておりますので、御承知置きいただきたいと思います。
 最後に事務局の方から、何か連絡事項等ありますでしょうか。
○田中労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程につきましては、調整の上、お知らせしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 それでは、本日の分科会は、これで終了いたします。
 なお、議事録の署名についてでございますが、労働者代表につきましては新谷委員に、使用者代表につきましては池田委員に、それぞれお願いをしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、お忙しいところ、大変長い時間にわたり、ありがとうございました。
 これで終了いたします。

(了)

労働条件政策課
企画係(内線5353)

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