2011年5月24日 第5回労災保険財政検討会 議事録

日時

平成23年5月24日(火)10:00~12:00

場所

厚生労働省共用第9会議室(中央合同庁舎5号館19階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者(五十音順、敬称略)
 岩村正彦(座長)、岡村国和、鈴木博司、長舟貴洋、山田篤裕

厚生労働省(事務局)
 尾澤労災補償部長、木暮労災管理課長、瀧原調査官、園田労災管理課長補佐、野地労災保険財政数理室長、白尾労災保険財政数理室長補佐

議題

(1)これまでの業種区分の経緯等
(2)今後の業種区分のあり方
(3)その他

議事録

○数理室長補佐 ただいまから第5回「労災保険財政検討会」を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中のところ、また足元の悪い中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
審議に入りますが、報道機関の方々、傍聴人の方々におかれましては、録音等は差し控えるようお願いいたします。
 最初に、事務局より、中間報告のとりまとめについてご報告させていただきます。
○数理室長 中間報告のとりまとめについては、日程的に厳しい中、皆様のご尽力を賜りましたことに感謝申し上げます。
 中間報告は、その後、3月4日の労災保険部会に報告させていただきました。中間報告を踏まえ、3月31日に労災保険部会において、メリット制の見直しの方向性について、さらに議論を深める予定でした。しかしながら、3月11日に発生いたしました地震の影響により、3月31日は持ち回りでの開催となり、お手元にお配りいたしました内容で、部会の委員の皆様方のご了承をいただいたところです。
 メリット制の見直しについては、今後開催されます労災保険部会において議論される予定となっております。以上です。
○数理室長補佐 それでは、以降の議事進行は座長にお願いいたします。
○岩村座長 本日の議題は、「労災保険の業種区分について」です。前半では、「これまでの業種区分の経緯等」について事務局から説明をしていただき、その後、それに基づいて質疑応答、そして検討を行おうと考えております。引き続いて後半は、「今後の業種区分のあり方」について検討をさせていただきたいと考えております。こういう形で本日の議事は進行させていただきます。
 まず、前半の「これまでの業種区分の経緯等」について、事務局から説明をお願いいたします。
○数理室長 ただいま座長からご説明がありましたように、本日は前半と後半に分けてご議論いただきたいと考えております。前半はお手元の資料に基づき、「適用状況」と「業種区分の検討課題」を中心にご説明させていただきます。
 資料1-1です。平成21年度末時点において、労災保険の適用事業場数は260万事業場、適用労働者数は5,280万人となっております。
 労災保険の業種は、現在、55に区分されております。その中には、「金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業」、あるいは「原油又は天然ガス鉱業」のように、適用労働者数が約1,000人にまでなってしまっている業種もあります。こうした小さな業種をどのように取り扱うかというのが、現在の1つの課題となっています。
 他方、「その他の各種事業」については、事業内容が異なる事業場が寄せ集めになっております。全体で適用労働者数が約1,800万人と非常に大きな規模となっています。
 次に、「業種区分の検討課題」についてご説明させていただきます。業種区分については、労災保険料率の設定方法やメリット制も併せ、平成16年度に約1年をかけて、「労災保険料率の設定に関する検討会」を開催いたしました。順番は逆になりますが、資料2-2がその検討会の報告書から、業種区分に関する部分を抜粋したものです。この検討会での検討や報告書を基に、私どもが策定いたしました基本方針が資料2-1にございます。これらを基にして、平成18年度の料率改定に合わせ、業種区分の見直しを行いました。
 資料2-1、3頁の中ほどにある「1 業種別の設定」のところです。これは、保険料率の設定について述べている箇所になりますが、本文の2行目から業種区分について述べています。この部分をそのまま読み上げますと、「労災保険の業種区分は、労働災害防止インセンティブを有効に機能させるという観点から、作業態様や災害の種類の類似性のある業種グループ等に着目して、当該グループごとの災害率を勘案して分類することとする。その際には、費用負担の連帯性の下に労働災害防止活動を効果的に浸透させていくことのできる業界団体等の組織状況等について斟酌しつつ、保険技術上の観点から、保険集団としての規模及び日本標準産業分類に基づく分類等をも勘案する」となっています。
 資料2-2、8頁の「4.今後の状況変化等への対応」です。この後段の中に、今後の課題が述べられています。この部分についてもそのまま読み上げます。「業種区分に関しては、(1)産業構造や技術変化等を踏まえて、業種に関する情報を収集するとともに、業種区分に係るルールに基づき業種区分の見直しを行うこと、(2)保険集団が小規模であることに起因する料率改定での激変緩和措置がないような最低規模のあり方について検討すること、等が望まれる」となっております。
 資料2-3については、昨年10月に行政刷新会議の事業仕分けにおいて労災保険制度が取り上げられ、その際に、労災保険率の設定、業種区分について議論がなされておりますので、資料としてお付けしています。
 次に検討の課題についてご説明させていただきます。
 1つ目の課題は、「保険集団の適正な規模」についてです。資料1-1で少しご説明いたしましたが、55ある業種のうち、適用労働者数が約1,000人になっている業種が2つあります。かつては多くの労働者が働いていた業種であっても、このように規模が縮小してしまうことがあります。これぐらいの小さな規模になると、適切に保険料率を設定することが難しくなってきます。その一方で、業種により保険料率に差があるため、業種の統合はなかなか難しい面があるのが実情です。これらの業種について見直しを行う必要があるのか、という課題です。
 こうした規模の小さい業種が現実に存在していることを踏まえ、業種区分の設定を行う上で、保険として成立するために最低限必要な規模に関する考え方の指針とすべきものはあるのか、という課題もあります。
 2つ目の課題は、「その他の各種事業」の分割基準についてです。資料2-2、7頁で下線を引いた部分ですが、「作業態様の面に着目して、事務従事者割合の比較的高い業種を取り出し、災害率、保険集団としての規模等を考慮した上で、日本標準産業分類に対応して、『新聞業又は出版業』及び『通信業』、『卸売業又は小売業』及び『旅館その他の宿泊所の事業』、『金融、保険又は不動産の事業』を分割し、新たな業種区分として設定することが適当である」とされています。
 つまり、前回の検討会において、作業態様を見る指標として、事務従事者の割合を使っています。また、災害率や保険集団としての規模等を考慮しています。さらには、日本標準産業分類に対応することを、「その他の各種事業」を見直すときの基準としたところです。「労災保険料率の設定に関する検討会」において検討に用いたこれらの基準を見直す必要があるかということを2つ目の検討課題の第1の論点としていただきたいと考えています。
 2つ目の検討課題のもう1つの論点は、「平成18年度に分離・独立させた業種についての検証」です。資料3-9から資料3-11により説明いたします。平成18年度に、「その他の各種事業」から3つの業種を分離・独立させました。「通信業、放送業、新聞業又は出版業」、「卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業」、「金融業、保険業又は不動産業」の3つの業種です。
 これら3業種は、事業場数や単純収支率の推移等から、今回見直しを考えなくていいかどうか。言い換えれば、「その他の各種事業」に改めてまた統合してしまうであるとか、あるいは別の業種区分と統合する必要がないかということです。
さらに、これら3つの事業のうち、「通信業、放送業、新聞業又は出版業」と、「金融業、保険業又は不動産業」の現行の料率を見てみますと、分離する前の「その他の各種事業」と労災保険率が全く同じ3/1000となっています。これでは、これらの業種の分離・独立というのは、労災保険制度を複雑にしただけとも言えるのかもしれないという考え方もあるかと思います。以上のことについて、皆様のお考えを聞かせていただければと思います。
 事務局からの説明は以上です。
○岩村座長 いま、検討課題をいくつかお示しいただきましたので、それらについて議論を進めてまいります。
 検討課題1については、資料1-1の中で、保険集団の規模はどうかということでした。具体的には、資料1-1、1頁の表を見ますと「金属・非金属鉱業又は石炭鉱業」、「原油又は天然ガス鉱業」の適用労働者数が少なくなっていますので、これをどのように取り扱うべきかということです。具体的には、他の業種に統合するのかということですが、ここについてご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。
○長舟委員 確率的といいますか、統計的にどの程度の規模があればデータが安定するかということについて、1つの考え方といいますか、損害保険業界で使われている考え方で、「信頼性理論」というものがあります。真の事故の発生率というのは誰にもわかり得なくて、一方、実際に発生する事故を統計としてデータを取って、そちらから出した数字が、真の平均値と比べてどのぐらい信頼度があるかというものです。
 確率分布などの前提は置くのですが、「信頼性理論」と言われているものの結論的なところだけ申し上げます。実際に発生する事故の件数が、真の値から±5%の範囲に収まっている確率が90%となるには、事故の件数が1,000件程度は必要ですという考え方です。「±5%」の部分と、そこに入る確率「90%」の部分の数字の組合せはいくつかあるわけですが、もっと絞って±5%に入る確率が、先ほどは90%と言いましたけれども、99%まで信頼度を高めるとすると、事故の発生件数が2,600件程度必要となります。逆に、もうちょっと緩めて、±20%と幅を広げて、その範囲で90%が収まるためには、事故の件数で70件程度、±20%の範囲で99%が収まるとすると160件程度必要となります。
 確率によって母集団の必要な規模が違ってくるわけですが、例えば、事故の件数が100件必要だとして、発生確率が例えば5%ぐらいだとすると、その20倍ということで2,000人ぐらいだというような計算をする考え方があります。これは1つの目安ですので、これがすべてということではありませんが、ご紹介させていただきました。
○岩村座長 今の観点からすると、この2つの業種はどうなのですか。先ほどの資料で見て、この2つの業種の労災保険率はどれくらいですか。
○数理室長 「金属・非金属鉱業又は石炭鉱業」はかなり高くて87/1000です。「原油又は天然ガス鉱業」は6.5/1000と非常に優良です。統計的に言うと、かなり変動が出てしまいます。今のお話だと、当然変動が大きいということであると思います。
 ただ、料率改定においては、激変緩和ということで、計算上の料率があまり大きく上昇する場合、その上昇幅を一定程度に抑えることはやっております。実際の面から言えば、上昇の幅がそれほど大きくならないようにコントロールしているので、今のところ大きな問題とはなっていませんが、確かに規模としては小さいという感じだと思います。
○長舟委員 信頼性理論には続きがありまして、今申し上げたのは、出てきた数字をそのまま信用するには最低限どれだけ必要ですかという話であって、実際にはこれより小さい集団がたくさんあります。その時には、もともと設定している何らかの理論値、あるいは昔から定める期待値と、今回統計上出てきたものの加重平均値を取るというのが信頼性理論の全体像なのです。今説明がありましたように、それより小さい所は、出てきた実績をそのまま使うのではなくて、いわば激変緩和みたいなことだと思うのですけれども、そうすることによってより安定的なというか、公平な制度運営ができるでしょうという話です。
○岩村座長 逆に言うと、1つはリスクをあまりうまく反映できないような集団の大きさになってしまうと、場合によっては事業運営が非常に難しくなる危険性がある。もう1つは、今のような信頼性理論で考えると、他にその分が転嫁されてしまうことがあると考えればよろしいのでしょうか。
○長舟委員 小さな区分でも、仮にそこで完結されているとすれば、他への影響はないと思うのです。
○岩村座長 閉ざされていれば影響はないですよね。
○長舟委員 その区分の保険料率水準が真の値に当たっているかどうかということと、集団の規模が小さいと、本来の確率を仮に当てたとしても、実績はブレてしまうわけです。結果的にその収支が年度ごとに大きくブレてしまって、なかなか安定的な運営ができないということ、その両面があると思います。
○岩村座長 労災の場合は閉じていないのですよね。
○数理室長 はい。
○長舟委員 なるほど。
○岩村座長 石炭なら石炭だけで閉じているかというと、閉じていないので、他への影響が出てくるという問題があるということです。
 もう1つは、仮に統合するとなると、特に石炭鉱業のところは歴史的な経緯もあって非常に料率が高いので、そういうものを他のところに統合すると、そこにリスクを負担してもらわなければいけないという話になってしまい、別の問題が出てきてしまうということがあります。
 検討課題1のところは、今、長舟委員にお話していただいたことで大体全容はわかるかと思いますので、このぐらいのところでよろしいでしょうか。
 次に、検討課題2に進みます。検討課題2は、検討課題1とは対極にあるような話で、「その他の各種事業」という分類についてです。これについても、いくつかの検討課題が事務局から示されています。検討課題2-1としては、現在の「その他の各種事業」の分割基準を見直す必要があるかということです。資料1-1、1頁の表の下から10番目の太字で書いてある「その他の各種事業」です。「その他の各種事業」というのは、具体的にはどのようなのが入ってくるのですか。
○数理室長 資料3-1、10頁に、「その他の各種事業」の細目があります。私どもは「その他の各種事業」を現在、さらに12に分けて把握しているところです。
○岩村座長 「その他の各種事業」の中には、細目で見ると12に分かれていて、細目の規模に関する資料はあるのですか。
○数理室長 事業場数は、資料3-12、22頁に、労働者数ではないのですが、適用事業場数を表示しております。事業場数でみても、労働者数でみても、この中で最大なのは「医療保健業」です。例外として、「前各項に該当しない事業」という一番下のところが、その他のその他のような感じになっているところで、ここが大きくなっています。
○岩村座長 ここで議論するのは、分割の基準を見直すかという話です。これは先ほど紹介のあった2005年の検討会で、分割の基準を打ち出しているので、それを維持して考えるのかということなのですが、これはいかがでしょうか。具体的には、資料2-2、6頁の3の2.の「(1)基本的な考え方」の第2段落で書いてあるところが、その基準で良かったでしょうか。
○数理室長 もっと具体的にかみ砕いて考えると、資料3-2、12頁に産業分類、災害発生率、事務職の割合と規模です。この表の中には入っていませんが、規模を基準として考えてご議論いただいたということです。
○山田委員 今、座長がご指摘になった基準としては、業界団体等の組織状況があります。これについては、平成18年度に分割した時には、特段、基準として検討された記録は残っているのでしょうか。
○数理室長 議事の中では、業種団体の活動についてご紹介し、議論はされていたと記憶しています。
○岩村座長 業界団体があるかどうかというのは、労働安全衛生の政策を進める上では結構重要で、そこをポイントにしながら、いろいろな行政措置を講じることがあるので、そういう意味では業界団体があるかどうかというのは、1つの業種区分を考える上でのポイントだとは言えます。
○山田委員 日本標準産業分類以外に、発生状況による分類と、作業態様による分類がありましたけれども、それ以外にも業界団体の有無が勘案されていると理解しました。
○岩村座長 おそらく、それは災害発生率そのものということよりも、行政の立場から見た時にどのようにして安全衛生施策を進めるか、そのことが労災の発生率と結び付くという考え方です。
○山田委員 いかに業界として取り組むかということですね。
○岩村座長 そのとおりです。前回検討会をやってから、それほど年月も経っていないこともあり、その後、この基準そのものを見直すような状況が発生したかというと、私の知っている限りでは、そのようなことはないように思いますので、これは維持するということでよろしいのかと思います。
 次は検討課題2-2です。前回の検討会の報告を受けて、平成18年度に、「その他の各種事業」から3つの事業を分離・独立させております。1つが「通信業、放送業、新聞業又は出版業」、2番目が「卸売業・小売業、飲食店又は旅館業」で、3番目が「金融業、保険業又は不動産業」で、この3つを分離・独立させたということです。これについて、2つほど検討項目が示されております。この3業種について適用事業者数、単純収支率の推移等を見て、現状維持でよいのかということです。適用事業者数と単純収支率について資料の説明をしていただけますか。
○数理室長 適用事業場数と適用労働者数については、資料1-1、1頁の下から4つ目に「通信業、放送業、新聞業又は出版業」とありますが、ここから下の3つです。
○岩村座長 収支率はありますか。
○数理室長 資料3、19頁から21頁までに「○」で括っておりますが、いま収支率がどのぐらいかということについてお示ししております。
○岩村座長 保険料率の推移というのは、19頁から21頁のところですね。
○数理室長 そうです。もう1つまとまっているのが13頁の下の方に、平成18年度の料率も合わせて出ています。下から3つが該当する3つの独立した業種になります。
○岩村座長 以上のような状況ですが、現状維持でよいのかどうか、逆に言うと「通信業、放送業、新聞業又は出版業」と、「金融業、保険業又は不動産業」というのは、労災保険率は「その他の各種事業」と同じ3/1000になっています。そうすると、分けている意味があまりないのではないか、単に事務コストを上げているだけではないか、という議論もあり得るというのがもう1つの課題となっているのですが、両者を併せていかがでしょうか。
○鈴木委員 業界団体等の組織状況ということから考えれば、取り出すことになると思うのです。同じ料率であるときに、それを取り出すかどうかという判断のポイントというのは、産業分類なのか、業界団体なのか、たぶんそれしかないですよね。
○岩村座長 おっしゃるとおりです。
○鈴木委員 私は保険業なのですけれども、保険業界で労災防止のことを組織的にやっているという話はあまり聞いたことがないです。生命保険業界ですと、いわゆる外勤の営業職員がいますから、そうしたセクションで、もしかしたら業界団体としてやっているかもしれないです。一方で、分かりにくくなっただけではないかとか、事務コストがかかるだけではないかというのは、どの程度のものなのでしょうか。つまり、同じ料率の区分がたくさんあると分かりにくいのですか。
○数理室長 例えば、ある会社が労災保険に適用になった場合に、どこの業種に適用するかというときに、なかなか分かりにくいことがあります。どちらに適用すべきか分かりにくいところがあったり、あるいは事業主が、うちはこうだという主張をされて、なかなかうまく適用できなかったりします。あるいは、ある会社では複数の事業を行っていて、そのどれがメインであるかとか、現場では適用していく場合に難しいことは出てきます。
○岩村座長 事業場単位でみて、2つの事業をやっていても事業場が別で、事業場Aではある事業をやっていて、事業場Bでは別の事業をやっているというのであれば、あまり問題はないのだけれども、同一の事業場Aの中で甲と乙をやっているということになると、どちらが主かということで、適用する業種を決めることになっています。どちらも3/1000であればあまり問題はないのですが、一方が4/1000で、一方が3/1000ということになると、事業主の側からすれば3/1000がいいけれども、主たるものがどうかというのを決めるに当たって、場合によっては4/1000になるかもしれない。その辺が現場の窓口からすると、場合によってはややこしい話になるということです。
○鈴木委員 ちょっと的外れの話になるかもしれないのですが、今、座長がおっしゃったように、料率が同じであればそういう問題は起こらないわけです。一方で料率が違うものを括ってしまうと平均的な料率になる。その時に何が違うかというと、先ほどから出ている話で、違う料率を括り、平均的な料率を適用すると、業種の産業構造が変わってしまった場合、収支が相当しなくなるわけです。ですから、性質の違うものは、分けておいた方が財政的には安定するということは言えると思うのです。
 ただ、災害発生率の同じものを括るか、分けるかというのは、繰り返しになりますけれども、そういう業界団体があるとか、産業分類上、分離した方が分かりやすいとか、そういうことではないかと思うのです。
○岩村座長 今の観点からすると、本日用意していただいている資料の19頁と21頁を比較すると、平成21年度で見た時には、金融、保険では収支率が若干違います。新聞業のところは、災害発生状況による分類を見ると「○」の付け方が違うので、料率は一緒だけれども、ちょっと構造が違うということは言えるかもしれません。
○数理室長 そうですね。ただ、新聞業、出版業ともに、印刷工場のような所ではなくて、新聞業なら記事を書く所ですし、出版業も同じように記事を編集したりする所なので、言ってみればこの3つともかなり事務的な仕事で、少し差が出てしまっていますが、比較的業務内容は類似しているものと考えております。
○長舟委員 料率区分をどこまで細分化するかというのは、保険をやっていると悩ましい問題ではあるのですけれども、1番目はリスクというか、危険の実態に応じて区分を作ることになってくるので、基本的に同じものはまとめていいのではないかと考えます。19頁から21頁までに出ているところで、災害発生状況による収支率に多少差はあるのですが、これは、あくまでも3/1000とか4/1000という極めて低い料率の中での小さなズレの話なのです。もともとすごく料率格差のある中での小さな範囲での差なので、私などから言うと、ここはほとんど差はないのかなという感覚でおります。
 リスクが同じでも、それをさらに業種区分を分けるのかということについては、先ほど岩村座長もおっしゃっていたとおり、その業界としてまとまって労働安全衛生の政策をやるために必要かどうかという観点が出てくると思うのです。金融業、保険業、不動産業という区分で見た時に、保険会社間ではもしかして何らかやっているのかもしれませんけれども、不動産業と一緒にやっているとか、そういうことはないと思います。そういう観点でみていった時に、金融業、保険業、不動産業というのが何らかの意味があるのかどうかというのがよく分からないという気がするのです。金融業と保険業は似ているかもしれませんけれども。
○山田委員 そうしますと、分離したり統合したりという、その背後にある考え方としては、業界団体等が実質的な意味で労働災害防止に取り組んでいるか、それを外形的に判断するのは難しいとは思いますが、こうしてデータでお示しいただいたように、すぐ数値として分かるもの以外は、実態的な基準に則してやっていくほかないのではないかという気がするのです。今のお話ですと、業界ごとに特色のある取組みを特に行っているわけではないということであれば、それを別々に見ていく必要があるのかどうかというのはちょっと疑問符が付くかもしれません。
○岩村座長 金融業、保険業の場合だと、いわゆる昔のタイプの労働災害とか職業病ということではなくて、ある意味では生活習慣病対策の方が大きくて、急性脳・心臓疾患とか精神障害のほうがむしろウエイトが高くなってしまうということなのです。そういう意味でのタイプの違いがあることは確かなのです。保険業などでは外勤があるので、その問題はまた別途あることは確かだと思います。不動産業も、そういうところは少し似ているかもしれません。
○長舟委員 細分化すると、おっしゃったとおり、実際の運営上の手間暇は相当かかってくると思いますので、分離しなければいけない特別な理由、もちろんリスク量が違えば分離しなければいけないということでしょうけれども、それが同じときに、この業界だけはどうしても集中的に何か注目してやっていくとか、そういう特別な理由がないのであれば、あまり細分化することの意味合いはないのではないかと思います。
○岩村座長 この問題について、事務局の方で何か議論しておきたいことはありますか。
○数理室長 特にございません。
○岩村座長 前半は以上だと思いますので、後半に移らせていただきます。後半は「今後の業種区分のあり方」です。これについて事務局から説明をお願いいたします。
○数理室長 資料3-1から資料3-13を使ってご説明させていただきます。資料3-1は先ほどもご紹介いたしましたが、労災保険においては全体の業種を55に分けている中で、最大となっている「その他の各種事業」に関しては12に細分しておりますが、その12区分についてどのような事業が該当するのか説明したものです。この中で規模が大きいのは、先ほども少し申し上げましたが、11頁の「医療保健業」です。11頁の一番下にある、「前各項に該当しない事業」は、「その他の各種事業」の中でさらに括りにくいその他の事業のところを集めたために大きな区分となっています。この12の業種について、我々はデータを収集しているところです。
 資料3-2も先ほどの話の中に出てまいりましたが、以前、「労災保険料率の設定に関する検討会」を開催し、そのときに業種について分離・独立させることを検討した資料です。このうち「新聞業又は出版業」を、2つ飛んだところの「通信業」と合わせて独立させたのが1つの業種です。同時に、その次の「卸売業又は小売業」と「金融、保険又は不動産の事業」も独立させました。ここでは4つの分類になっていますが、独立させた業種としては3つになります。
 資料3-3も先ほどの説明で使わせていただきましたが、「その他の各種事業」というのは現在でも最大ですが、以前から大きな業種区分であり、その中から労災の起こり方などの問題で特色のあるものを括り出して、分離・独立させていった歴史があります。その経緯について、昭和55年から、「その他の各種事業」から独立した業種の料率の変遷についてまとめた表です。この表の一番上が、「その他の各種事業」として残ったものですが、それと比べてやや料率が高めの所を分離・独立させていったという歴史があります。ただ、先ほどご議論いただきましたように、平成18年度に分離・独立した業種が3つありますが、そのうちの2つは、いまのところ「その他の各種事業」と同じ料率となっております。
 資料3-3は保険料率についてまとめた表でしたが、資料3-4は同じように「その他の各種事業」から分離・独立した業種について、適用事業場数がどのように推移していったかをまとめた表です。「その他の各種事業」に含まれる事業の中では、やや大きい業種を括り出していったということです。分離した中の上から3つ目の「倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業」は、昭和58年から平成元年にかけて大幅に事業場数が減っております。これについては、この業種の中で再編を行いました。その説明を次の頁に付けております。
 最初は、旅館業と娯楽業なども含めて、倉庫業などと一緒にして独立させたのですが、旅館業、娯楽業と比べて、倉庫、警備業などいくつかの業種は収支があまり良くなかったということで、収支の良い旅館業と娯楽業などを元の「その他の各種事業」に戻しました。これが昭和61年度のことです。この関係で事業場数が減った経緯があります。このように、1つの産業の中で、再編等も必要であれば行っているということです。
 資料3-6は、「その他の各種事業」を細分した12業種が日本標準産業分類のいずれに該当しているかをまとめた表です。日本標準産業分類というのは、統計のために、総務省がまとめているものです。労災保険の業種区分との関係では、必ずしも1対1の対応ではなくて、例えば一番上の「広告、興信、紹介又は案内の事業」は、4つの産業分類に対応しています。
 資料3-7は、日本標準産業分類が、どのような分類になっているのかを、大分類だけ簡単にご紹介しているものです。
 資料3-8は、「労災保険料率の設定に関する検討会」で、「その他の各種事業」から分離・独立する業種を考える際の視点として、先ほどから話に出ていますが、「日本標準産業分類」、「災害発生状況」、「作業態様」を採用しております。今回、そのリバイスをしたときに、前回とはどの様な違いがあるかということを簡単にまとめた表です。1番目の「産業分類」については、前回と同じ区分にいたしました。「災害発生状況」については、前回は業種全体、「その他の各種事業」の全体の平均を基に区分を考えております。前回とは区分を変えていますが、今回も同じ考え方に従い、資料を作成しました。「作業態様」を表す指標として、事務系職員の割合を前回も使いましたが、「その他の各種事業」の事務系職員の割合の平均よりも多いか少ないかで分けていたのを、今回も同じように平均と比べて多いか少ないかで分けて資料を作成しました。なお、事務系職員が多い業種を前回分離・独立させた関係で、事務系職員の割合が減ってしまっておりますので、それに合わせて、現在の事務系職員の割合が16%より多いか少ないかという基準で今回資料を作成しました。
 資料3-9、資料3-10、資料3-11については、先ほど説明いたしましたので、ここでは説明を割愛させていただきます。
 資料3-12は、ただ今申し上げました基準に従って分類した表です。一番左側にある適用事業場数は、業種としての規模を表す指標ですので、今の説明には入っていませんでしたが、ここでは入れさせていただいています。
 この表では「洗たく、洗張又は染物の事業」の収支率が100を超えています。
 参考までにですが、労働基準法において、クリーニング業は全体として製造業として取り扱っています。資料3-13の労働基準法の業種分類では、クリーニング業は、「1.物の製造、改造、加工、修理」に入ります。説明は以上です。
○岩村座長 以上が、後半の議論のための資料です。後半の部分についても事務局の方でいくつか検討課題を考えているようですので、検討課題の視点を事務局から示していただき、その上で皆様のご意見を順次伺っていきます。事務局から検討課題をお示しいただけますか。
○数理室長 資料の7頁の真ん中より下のところに、「そして」で始まる段落がありますが、この部分を読み上げさせていただきます。「そして、今後必要に応じて業種を適時適切に分割することを可能とするため、同一の業種区分の中で災害率が異なる業種を適切に把握することができるよう、日本標準産業分類を参考として、適用事業細目を適切に設定した上で、それぞれの適用事業細目ごとの収支状況等のデータの収集・整備を行うことが適当である。例えば、『その他の各種事業』の中に含まれる多様な業種について、『医療保健』、『教育』などに細分化して設定することが考えられる」。
 これについて、事務局から検討項目をお示しさせていただきます。これらについてご議論いただければと思います。本日は業種区分についていろいろご議論いただいているところですが、保険料率を設定する業種を変更する場合については、私どもシステムによる管理を行っているため、システム改修が必要となり、費用や時間がかなりかかってしまうこともありますので、すぐに対応することがなかなか難しい面があります。今後の検討や作業を進める視点から、方向性についていろいろご意見を頂戴できればと考えています。
 1番目の検討項目は、先ほどからご紹介しておりますが、「医療保健業」が「その他の各種事業」の中で、その規模が非常に大きくなっています。「医療保健業」の中には、福祉、介護も入っているのですが、やや独特な働き方になっているということもあります。こういう観点から分離・独立させた方がいいのではなかろうかということについてご議論いただきたいと思います。医療保健業に関しては、医療分野と介護分野が現時点では一緒になってしまっていて、データとしては分離されておりません。これを分離して把握できるようにして、今後の検討材料となる基礎的なデータを取得する必要性があるのかないのかということについて、1つの検討項目としてご議論いただければと思います。
 2番目の検討項目は、「洗たく、洗張又は染物の事業」について、災害率が相対的に高いという事実があります。この中では異質になりますが、クリーニング工場という、本当は製造業に近い工場部門があるということで、「その他の各種事業」の中では作業態様がやや違うのではないかと考えています。この業種についてはどのように考えていくべきかということです。
 3番目の検討課題は、「その他の各種事業」全体として見ると、事業場数が80万事業場、労働者数が1,786万人となっています。1つの業種として保険規模が大きくないか。中にいろいろな業種が入っていますが、規模の問題として大きすぎるということがあるかどうかということについて、ご議論いただきたいと思います。
 4番目の検討課題は、「前各項に該当しない事業」の中にはいろいろな業種が入っておりますが、その中には情報処理サービスであるとか、法律事務所のような専門サービスなどが含まれています。こうした「前各項に該当しない事業」の中から取り出して、収支状況等基礎的データを収集すべきものがないかどうかについてもご議論いただきたいと思います。例えば情報処理サービスについては、成長産業ですが、労働条件が厳しいとかいろいろ話題になる業界でもあります。こういう所については、分離してデータを収集する必要性があるかどうか。他にも「前各項に該当しない事業」はたくさんありますが、この中から分離して見ていく必要のあるものがあるかどうかについて、具体的にお考えをお聞かせいただければと思います。
 5番目の検討課題は、「映画の製作、演劇等の事業」と「劇場、遊戯場その他の娯楽業」については、その性質が非常に似ているのではないかと思われますので、統合してみてもいいのではないか、あるいは、その先に「その他の各種事業」から分離・独立させるというのも1つの考え方かと思います。こうしたことについてもご意見を頂戴できればと思います。
 6番目の検討課題は、「教育業」と「研究又は調査の事業」についても、その性質が類似したところが多いのではないかということで、これについても統合してもいいのかどうか、あるいは独立させてもいいのかどうか、ということについてもご意見を頂戴できればと考えております。以上です。
○岩村座長 ありがとうございました。今お示しいただきました検討項目につきまして、順を追いながらご意見ご質問などをいただいてまいりたいと思います。
 1つ目の検討項目としては、「医療保健業」についてということでございまして、2つの項目がございます。1つは「医療保健業」は、分離・独立させた方が良いかということであり、もう1つが「医療保健業」については、「医療」と「福祉」で別々にデータの収集・整備をした方が良いかということです。資料にもありましたが、「医療保健業」というのは規模が結構大きくて、事業場数で13万事業場、労働者数で約407万人ということにも注意する必要がありますが、他に何かこの点について統計資料がございますでしょうか。
○数理室長 総務省で行っている調査で、「事業所・企業統計調査」というものがございまして、最新の調査結果が平成18年度になっています。この統計調査によりますと、医療と福祉の労働者数は概ね3対2の割合となっているようでして、特に最近、福祉分野に労働者が増えている状況にあるところです。以上でございます。
○岩村座長 この「医療保健業」につきまして2つ、今申し上げた検討項目が上がっているのですが、いかがでしょうか。「その他の各種事業」の中で比べると、若干リスク構造が違うのですね。
○数理室長 「その他の各種事業」は、事務的な仕事が多いかと思いますが、医療保健業のうち、特に福祉分野ですと、腰痛などの特有の労災の発生状況があるのではなかろうかと推測しております。
○岩村座長 ただ、その割には、この22頁を見ると、収支率はそんなには悪くない。
○数理室長 ほぼ平均的なレベルと考えていただいていいと思います。
○長舟委員 先ほども、リスク量がそれほど変わらないときに、それでも分ける必要があるかというのは、あとはもう政策的な判断だと思うのですが、今後この事業について労働政策上、また、労災保険上も区分してやっていくべきだというような、何か特別な事情があるのでしょうか。もしそういうものがあるのであれば、分離するという考え方もあると思うのですが。
○岩村座長 これは推測ですが、たぶんあるとすると、特に福祉分野への新規参入が増えていて、労働安全衛生面での立ち遅れというのが、あるかもしれない。非常に腰痛とかが多い職場ですので。逆に病院では、看護師さんなどが昔からいますから、そういう意味ではきちんとできているのかもしれません。
○労災補償部長 災害のデータを見れば、やはりそういうのが出てくるのです。個別の災害の状況、あるいは疾病の状況に応じて、業界団体などに対する指導や周知は行っているのですが、業種区分を細分化し、災害防止のインセンティブを与えなければならないほどの必要性はあるのかというところは、またご議論いただくところかなと思っています。
○岩村座長 あとは、分けてデータをとるかという観点からすると、医療分野と福祉分野だと、業界としては別という感じではあると思います。だから、そこのところは今、長舟委員と部長がおっしゃったように、結局分離・独立させて、あとは政策的に災害防止の施策と保険料率と結びつける形で実施すると考えるかどうかが大きいのかなという気がいたします。
○岡村委員 今のお話は、保険の仕組みの問題ではないですね。
○岩村座長 そうです。政策の話です。だから、むしろ保険との関係で言うと、実は医療保健業では非常に災害率が高くて、フリーライドの状態が生じているというと別の話になるのですが、どうもそこまででもなさそうですので、あとは行政側の事務コストがかかるということと、労働安全衛生政策とのリンクという観点から分離した方がいいのかということの兼ね合いなのかなという感じがします。
○山田委員 介護分野を取り出してみたときに、災害発生状況が高いという前提でのお話ですが、現時点でデータがないとのことですので、検討の余地はあるのかもしれませんが、データがないことにはなかなか判断は難しいです。医療の分野でも最近、病院の勤務医の過重労働がよく言われていますが、それでも災害発生状況が低いというのであれば、それはむしろ労災保険で何かするというよりは、労働基準監督の問題だと言えるので、どの様に政策を考えるかによって、かなり異なってくる話だと思います。
○岩村座長 データは取っておいた方がいいように思います。ただ、本当に分けられるのかという話も若干あって、境界領域が存在する施設もあるので、そこがきれいに切り分けられるのか。介護保険の在宅サービスなどは切り分けられると思うのですが、施設になってくるとちょっと切り分けられないところがあるかもしれません。特別養護老人ホームとか有料老人ホームになると、これは福祉の方でもいいのですが、老健はどちらなのだろうとか、そういう問題もあります。例えば、在宅介護は医療なのか介護なのか、分類の仕方でいろいろ難しいものがあるように思います。 
○山田委員 今後労働者数が、特に介護に関しては増えていくことが予想されますので、システム改修に時間がかかるとおっしゃっていましたが、もしデータが取れるのであれば、是非データを取っていただければと思います。
○岩村座長 在宅介護では車を使うので、そのリスク構造の違いも存在するのです。よろしいでしょうか。
 他になければ、次に「洗たく」などですが、これは22頁の資料も見ていただくと分かるように、災害率が非常に高いということ、それから大きなクリーニング工場ということになると、作業態様としては製造業に似てくるということでして、ここをどう考えるかということだと思います。追加的に何かこの点に関して情報はございますか。
○数理室長 関連する情報といたしまして、「衛生行政報告例」という統計があります。これによりますと、事業場数の全体は13万3,000ということですが、その中で、クリーニングを行う「クリーニング所」というのは、全体では3万7,000あり、単に取り次ぎを行う「取次店」が9万6,000ということです。特に、工場を含めて、前者のところで若干事故が多いのであろうと考えられると思います。
○岩村座長 クリーニングの工場は災害率も高いということになると、他とはリスク構造が違っているということだと、分離した方がいいのかなという感じもするところではありますが、いかがでしょうか。
○鈴木委員 今のお話は、分離したとしたときに、取次ぎだけをしている所も一緒にするしかないということなのですか。
○岩村座長 考え方としては両方あり得ます。工場の方は工場ということで1つの業種区分として取り出すとすると、仮の数字としては、「衛生行政報告例」だと3万7,000事業場ぐらいはあるということです。あとの残りの取次店という、よく町の中にあるようなものだと、これは9万6,000事業場なので、これを別途分離・独立させるのか、あるいは、「その他の各種事業」の中の「前各項に該当しない事業」に分類してしまうという形で整理してしまうかということなのでしょう。感覚としては取次ぎだけしている事業場を工場から分離せずに一緒に独立させるというのは、ちょっとどうかという気がします。取次店は本当に取次ぎなのだから、どこかに「取次ぎ」という分類がありませんでしたか。
○数理室長 現状では、クリーニング業の中に取次店も入れるということになっています。 
○岩村座長 現状はそうですが、例えば分離・独立させたときに、そういうサービスの取次ぎしかやっていないようなものは、結局、「前各項に該当しない事業」に分類されてしまうのですか。
○数理室長 特に決めないかぎりは、「前各項に該当しない事業」に分類されると思います。取り扱いを変えるのであれば、例えば「小売業」に分類するという取り扱いもできないことははありません。
○労災管理課長 そこは労災保険制度ですので、作業実態をみつつ、その取り扱いについて決定すれば、日本標準産業分類に必ずしもとらわれることはないと思います。
○岩村座長 業界団体という点ではどうですか。
○数理室長 業界団体という観点からいうと、工場と取次店は分かれているわけではありませんので、その点では1つの固まりということになると思います。
○労災管理課長 クリーニング業界そのものが、業界団体が複数あるようです。
○数理室長補佐 取次店を含む大きな会社が集まっている団体もありますし、中堅どころが集まっている団体もございます。それ以外にもリネンサプライの団体など様々な団体がございます。
○岩村座長 そうすると、その観点からは取次ぎとそうでないのを分けるというのは、何となく技巧的すぎる気がしますね。ここはリスク構造が違うので、分離・独立させるいう方向で考えていただいて、ただ、取次店の扱いをどうするかという点が残るのですが、今お話を伺うと、取次店だけを切り離すというのは、業界団体の構造などを考えても難しいかなという気がします。
○山田委員 事業場単位でみるので、事業場にそういった施設が有るか無いかで、比較的きれいに切り分けられると考えてよろしいですか。例えば、取次店と工場をもつ事業場を別々の産業として捉えた場合、その仕分け自体は現場ではそれほど難しくないと考えてよろしいのでしょうか。
○数理室長 技術的にはおそらく問題はないと思います。ただ、現状では、工場も取次店も1つの業種区分に分類されているので、現在、まとめてひとつの事業として加入している事業主の方々が、適切に分類していかなければならなくなります。
○岡村委員 理想としては、取次店と工場が分離できるとすれば分離して、工場だけを独立させる方向で考えた方がいいという話なのでしょうか。そうすると、特に取り出した工場の保険率と、残った取次店の保険率との間に格段に差がつくことになります。けれども、現実問題としては分離が困難だということで、一緒に分離・独立させる形になるとすれば、そこで不公平が生じるということも十分考えられますが、その辺はいかがなものでしょうか。
○数理室長 工場で事故が多いのではないかと考えられますが、それはたぶん間違いないところかと思います。ただ、現時点では、どの程度差が生じるのかという点につきましては、明確にはお答えができません。
○岡村委員 22頁の表を見ると、かなり保険料率が上がるということは想定されませんか。そうすると、中には取次ぎだけやっているにもかかわらず、引きずられて料率が上がってしまう事業場が生じるということになると思うのですが。
○岩村座長 そこのところは微妙で、業種という観点で捉えると、「洗たく」ということで1つになってしまうので、それをさらに細分化するかという別の論点が出てきてしまいます。また、ある程度大きなクリーニング業者であれば、取次店と工場を技巧的に分ける必要はないのではないかと思います。そういうことを言い出すと、他の製造業でもそういうことが出てくるので、そういう事業運営を行っているのであれば、やむを得ないというのが、1つの割り切りだと思うのです。そうしないと、製造業などでも、工場だけを切り離して事務所は別で適用するという話になると、非常に煩雑で、コストのかかる話になります。そういう意味では、1つの業態というか事業という単位で見ざるを得ない、というところがあるのかと思います。
 いずれにしても、分離させるかを検討するための前提としてデータを集めていただくことが必要だと思います。よろしければ次にいきたいと思います。
 3番目は先ほどご紹介ありましたように、「その他の各種事業」が、業種の保険規模として大き過ぎないかということです。事業場数で約80万事業場、労働者数で1,786万人です。具体的には、その中にいろいろなものが入っているけれども、もう少し細目ごとの収支状況などのデータの収集といったものを考えるべきかということ、さらに、もしやるのならどういう業種を取り上げるのかということだと思います。例えば、情報処理サービスの場合どのぐらい労働者が従事しているか、事務局では把握されていらっしゃいますか。
○数理室長 先ほどの「事業所・企業統計調査」によりますと、情報サービス業に従事する労働者数は、平成18年度で約96万人です。この5年前の調査から比べますと12万人ほど増加しています。
○岩村座長 情報処理サービス業については、労働者数が比較的高い水準で増えてきているということかと思います。何かご意見、ご質問等がありましたらお願いしたいと思います。
○長舟委員 統計調査の結果で、何か特別高いというのがないと、なかなか分かりにくいです。
○岩村座長 情報処理サービス業の場合は、少なくとも裁判になった事例などを見ると、非常に特徴があって、オーバーワークによる過労の問題がいちばん大きいのです。
○山田委員 私も情報処理サービス業の過重労働については、いろいろと聞くことが多いので、データを収集するということについては、賛成でございます。
○岩村座長 現時点では、労災保険ではデータは把握していませんか。
○数理室長 現状では労災保険としては把握しておりませんが、労働者死傷病報告などで把握できる部分はあります。
○岩村座長 そういう形でデータを取っていなければ、そもそも業務上外認定のところでも出てこないからわからないですか。メリット制に反映するものとしてデータを取っていないからわからないのでしょうか。デフォルトの保険料率は「前各項に該当しない事業」として設定されているから、それ以上細かくは分からない。今のお話ですと、情報処理サービス業については、労働者数も増えているし、特有のリスク構造があるかどうかについてのデータの収集を行っていただくということかなと思います。その他はどうなのでしょうか。例えば、先ほど出てきた法律事務所とか会計事務所の労災保険の適用はどのようになっているのでしょうか。
○数理室長 法律事務所や会計事務所を経営する弁護士や会計士は自営業ですので、労災保険の適用はありません。そこで雇われている事務の方については労災保険の適用があります。
○岩村座長 事務の方ですよね。そうすると、一般事務職以上のものが何かあるのかという気はするのですが、結局、受付業務、スケジュール管理、書類作成という業務で、普通の事務とそれほど変わらないので、何か括って取り上げる必要があるのかなという気はします。特有のリスク構造があるという気はあまりしない。よろしいでしょうか。
 5つ目に移りますと、これは「映画の製作、演劇等の事業」、それから「劇場、遊戯場その他の娯楽業」ということです。これについては、先ほどご検討いただきました業種区分を見直すか見直さないかという基準に照らすと、似たような性格のものということもあるので、これを両者合体して、「その他の各種事業」から独立させるかが議論になり得るということだと思います。しかし、22頁の資料を見ていただきますと、数はそれほど多くないのですね。1万2,000事業場ということなので、わざわざ取り上げる必要があるのかどうかということが出てくるでしょうし、先ほどから議論になっているように、リスク構造その他で別途区分する必要があるかということかと思います。不思議に思ったのは、「映画の製作、演劇等の事業」のところは、事務労働者の割合が高いのですが、逆に「劇場、遊戯場その他の娯楽」は事務労働者の割合が低い。映画の製作というのは、要するに製作会社が分類されているということになって、現場で働いている人は、ここにはあまり入ってこないということなのですか。
○数理室長 セットの製作などを行う所も、この分類に含まれていますので、幅広く入っているものとは思います。また、「等」で括られている中には競馬や曲芸などもこれに分類されています。
○岩村座長 22頁を見ると、収支率は少し悪いですね。
○数理室長 収支率は少し悪い状況ですが、それほど悪いというものではありません。
○岩村座長 これも分離するだけの意味があるのかよくわからないのですが、料率が動かないのだったら、分離する意味があまりないような気がします。よろしいでしょうか。
 最後が6番目、「教育業」、「研究又は調査の事業」で、これも先ほどの業種区分のルールと照らし合わせますと似たような性格があるので、これも合体して分離・独立するかということかと思います。これは22頁の資料3-12を見ますと、事業場の数で言うと4万弱です。収支は良好です。あまり事故発生率は高くない。あと、事務の従事者の割合も高い。それはそうなのだと思います。3/1000というので見たときにはどうなのですか。料率が動くほどの何かがあるのでしょうか。
○数理室長 現在10/1000未満の料率に関しましては、0.5の刻みで設定しており、動くとすれば0.5刻みとなります。どの程度になるかについては、詳しく計算してみないと分かりません。
○鈴木委員 現在、2.5/1000という料率はあるのですか。
○数理室長 現在は、3/1000が最低です。
○岩村座長 教育、研究、調査のところも、裁判例などで見ていると、ストレスが原因の精神障害と自殺です。ただ、これは公立学校が入っていないのですね。
○数理室長 公立学校の職員は、地方公務員ということですので、非常勤職員など一部を除きほとんど入っていません。
○岩村座長 そもそも私立の学校は労災保険に入っていますか。
○数理室長補佐 入っています。
○山田委員 教育、調査をみると、分離・独立させた場合の料率の変動幅は現行の3/1000から0.5変動するかどうかというものですが、資料の13頁を見ますと、これまでの分離・独立した事業の労災保険料率の推移は、概ね「その他の各種事業」の料率よりも高めに設定されてきたという経緯があるのならば、収支率が良く、「その他の各種事業」より少し低めの料率が設定されそうな業種を独立させるということにどれぐらいの意味があるのかというのは、私としてはやや疑問を感じるところです。
○岩村座長 調査、研究だと業務内容が若干違います。理科系だと事故はあるのですが、それでもやはり災害発生率は低いですね。
○岡村委員 全体的に見て大きな変動はないということですよね。
○長舟委員 あと、ここはどういうふうに細かく分けても、結局、その中に傾斜は必ずつくと思います。その傾斜を個別の事業場ごとにはメリット制度で調整している要素もあるので、あまり細かく分離してというのはどうなのかなという感じはします。
○岩村座長 それもありますね。よろしいでしょうか。
 その他、今日の議論全体をもう一度振り返ってみて、ご意見、あるいは、この点も考えるべきではないかということがございましたら頂戴したいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。事務局として何かありますか。
○数理室長 特にはございません。
○岩村座長 よろしいでしょうか。特にご意見がないということですので、今日の議事はここまでということにさせていただきたいと思います。それでは、今後のこの検討会の予定などにつきまして、事務局からご説明をいただきたいと思います。
○数理室長 様々な論点をご検討いただき、また、貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。今後の予定につきましては、皆様のご議論の結果を踏まえまして、報告書をとりまとめる予定としています。その際に、報告書(案)を事務局で作成して、皆様のご意見を伺ってまとめたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○岩村座長 要するに、会合というものは開催せず、あとは、皆様に報告書案をお回しして、ご意見があれば伺った上で最終的にとりまとめるということで進行させたいということですが、それでよろしいでしょうか。
○全委員 (異議なし)
○岩村座長 ありがとうございます。他に特段なければ、本日はここまでとさせていただきたいと思います。長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。

照会先

労働基準局労災補償部労災管理課労災保険財政数理室

(担当)室長補佐 白尾:03(5253)1111(内線5453)