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2011年5月31日 第87回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成23年5月31日(火)
10時00分~12時30分


○場所

中央合同庁舎第5号館
厚生労働省専用第12会議室(12階)


○議題

平成23年5月31日 第87回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

・日時
 平成23年5月31日(火)10時00分~12時30分

・場所
 厚生労働省専用第12会議室(12階)

・出席者
【公益代表委員】
 荒木委員、岩村委員、権丈委員、田島委員、村中委員、山川委員

【労働者代表委員】
 工藤委員、島田委員、新谷委員、?松委員、中島委員、安永委員

【使用者代表委員】
 池田委員、伊丹委員、伊藤委員、田中委員、三浦委員、宮地委員、輪島委員

【事務局】
 金子労働基準局長、渡延審議官、前田総務課長、田中労働条件政策課長、
達谷窟監督課長、青山労働条件政策課調査官

・議題
 1 分科会長の選出及び分科会長代理の指名について
 2 東日本大震災への対応について
 3 有期労働契約について
 4 その他

○労働条件政策課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第87回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 私は、労働条件政策課の田中でございます。今回は、4月27日付にて行われました委員改選後初めての分科会となりますため、分科会長が選出されるまで、議事進行役を務めさせていただきます。
 まず、このたび新しく委員に就任された皆様を御紹介いたします。資料1として委員名簿を配付いたしていますので、御参照方よろしくお願いいたします。
 公益委員として、亜細亜大学大学院経済学研究科教授の権丈委員です。
 同じく公益委員として、慶應義塾大学大学院法務研究科教授の山川委員です。
 労働者代表として、全日本運輸産業労働組合連合会副執行委員長の?松委員です。
 使用者代表として、東運レジャー株式会社代表取締役社長の池田委員です。
 同じく使用者代表として、ユニー株式会社取締役執行役員業務本部人事教育部長の伊藤委員です。
 なお、本日は公益代表の守島委員、労働者代表の宮本委員は欠席されておりますが、定足数は満たしております。
 ここで、金子労働基準局長よりごあいさつ申し上げます。
○局長 労働基準局長の金子でございます。去る4月27日に委員の皆様方の改選がございました。新たに委員をお引き受けいただいた先生方には、今後とも審議のほど、是非よろしくお願いいたします。
 また、これまで有期労働契約について検討をいただいてまいりましたけれども、再任をされた先生方におかれましても、引き続き、御審議のほどよろしくお願いしたいと思います。
 去る3月11日に東日本大震災が発生いたしまして、大変甚大な被害が生じているところでございます。現在も被災された方々は、大変困難な状況に置かれておりますし、地域社会、経済への影響もはかり知れないものがございます。雇用労働にも大変大きな影響が出ておりまして、厚生労働省といたしましては、万般にわたりまして全力を挙げて、今、対策に取り組んでいるところでございます。今日は審議に先立ちまして、特に労働基準関係の、これまでの取り組み状況につきまして、御報告をさせていただきたいと思いますので、よろしくお聞き取りをいただきたいと思います。
 そういう影響もございまして、実は当初予定をしておりました審議会が2回ほどキャンセルということになりました。こういう事情でございますので、よろしく御拝察いただいて、お許しをいただきたいと思います。
 今後につきましては、有期労働契約の検討につきまして、引き続き委員の先生方に十分な御審議をしていただきたく存じますので、事務局の立場からも、重ねてお願いを申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○労働条件政策課長 それでは、議事に入ります。
 分科会長の選出について御説明します。
 分科会長につきましては、労働政策審議会令第6条第6項に規定されているとおり、分科会に所属する公益を代表する本審の委員から選挙されることとなっております。本審の公益委員は岩村委員のみでありますので、岩村委員に分科会長をお願いすることとなります。よろしくお願い申し上げます。
 この後の議事進行につきましては、分科会長にお願いいたします。
○岩村分科会長 引き続き分科会長を務めることになりました岩村でございます。委員の皆様方の御支援、御協力をいただきながら、議事を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 最初に、分科会長代理の指名をしたいと存じます。分科会長代理は、労働政策審議会令第6条第8項の規定によりまして、分科会長に事故があったときにその職務を代理するとされているところでございます。この分科会長代理につきましては、分科会長が指名することになっております。そこで、私の方から指名させていただきたいと存じます。
 分科会長代理ですが、荒木委員にお願いしたいと考えております。いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
(「はい」と声あり)
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 では、荒木委員、一言お願いいたします。
○荒木委員 荒木でございます。御指名でございますので、お引き受けさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 どうぞよろしくお願いいたします。
 早速、次の議題に移りたいと存じます。お手元の議事次第にありますように、次の議題は「東日本大震災への対応について」でございます。これにつきましては、事務局の方で資料を用意していただいておりますので、それに基づき御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○総務課長 労働基準局総務課長の前田でございます。資料No.2「東日本大震災への対応について」をごらんいただきたいと思います。
 1ページは、今回の震災の概要です。既に御案内のとおりかと思いますが、亡くなった方が1万5,000人を超えている、また、行方不明の方がまだ8,000人以上ということであります。今回、震災の発生が14時46分ということで、仕事中に被災された方も多いということで、労災保険の対象になる方も多いということです。
 2ページは、監督署の業務の状況です。
 被災された岩手、宮城、福島の監督署については、震災直後、岩手では釜石署、大船渡署が閉庁したり、ハローワークに間借りして業務を行っていたという状況でありましたが、現時点においては、釜石の監督署については、4月28日に仮庁舎に移転して、そこで業務を行っています。
 宮城については、すべての監督署が開庁しています。
 福島については、富岡署が原発の20km圏内にありますので、開庁できないということで、4月19日にいわき市の方に富岡署の仮事務所を設置して、そこで業務を行っているという状況でございます。
 対応状況につきましては、震災直後から特別相談窓口を設置し、土日なども含めて相談に応じる。更に、避難所などに出張相談、これはハローワークや年金事務所も含めてワンストップサービスを実施してきているところです。
 これまでの相談について、岩手で見ますと2,790件ということで、労災保険の関係が一番多くて、あとは賃金とか解雇です。
 宮城で見ますと6,194件ということで、こちらも労災保険が一番多くて、あとは休業手当、雇調金という形になっています。
 3ページです。
 福島の方は原発の関係もありまして、休業手当とか雇調金の関係が相談としては一番多いという形になっております。
 被災地の労働局に対して、全国の労働局の方から応援職員を派遣しているという状況でありまして、3月末から福島局の方には原発の関係で、電離放射線の健康障害防止に関する専門的な知識・経験を有する職員を他局から応援派遣して対応しております。更に、それ以外の局につきましても、労災保険の関係、あるいは労働相談などの関係で応援職員を派遣しておりまして、先週までで延べ157名を全国の局から被災地の3局に応援で派遣しているという状況です。
 労災保険等の請求件数ですが、岩手、宮城、福島の3局の件数で989件ということです。うち遺族補償給付が全国では757件で、3局で727件ということです。これまで支給決定された件数が全国では922件で、3局では382件です。うち遺族補償給付が全国では225件、3局で221件ということです。
 亡くなった方や行方不明の方から見ますと、件数はまだ少ないところでありまして、これから更に件数が増えていくものと見ております。
 立替払については、これまでのところそれほど大量に来ているという状況ではないという状況です。
 4ページは、これまでの対応です。
 まず、労働相談へ対応していることで、震災等に伴う賃金、休業手当あるいは解雇等についてQ&Aを作成し、随時更新をしまして、現在までに第3版を作成して周知を行っておるところであります。この際には、雇調金の活用と併せて周知をしておるところであります。
 それから、先ほども申し上げました緊急相談窓口を設置して相談に対応しているということです。
 解雇、雇止め等については、できる限り雇用の安定を図り、労働基準行政だけではなくて、職業安定行政等ともの連携をしつつ、啓発指導等を実施するということで、各局に指示しております。
 雇用創出の際の雇用の質への配慮についても要請をしております。
 派遣、有期、パートの雇用維持・確保についても大臣名で要請を行ったところです。
 5ページです。
 労災保険については、震災等の関係で医療機関や事業主の証明がなくても請求を可能とするような弾力的な取扱いを実施しております。
 更に、震災の関係で資料が散逸している場合の調査等について指示し、柔軟な取扱いを実施しているということで、管轄外の監督署でも受け付けるとか、あるいは関係資料を喪失した際に代替資料で賃金などを算定していくということです。
 震災・津波に遭遇した場合の取扱いのQ&Aを作成し、遺族や被災者の方に紹介しております。
 更に、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律ということで、遺族補償給付について、民法では1年経たないと行方不明の方については死亡と扱えないということでありますが、今回の震災において行方不明になった方についての特例ということで、3か月で死亡を推定して、遺族補償給付等を速やかに支給するということにしております。ですので、6月に入りまして、3か月経過ということで、今後更に労災の請求が増加すると見ております。
 6ページです。
 労働保険料について、まず被災地域における労働保険料の納付期限は、一般の場合には7月でありますが、それを自動的に延長しております。
 更に法律によりまして、労働保険料の免除ということで、3月11日に特定被災区域に所在していた事業場について、震災の被害で賃金の支払に著しい支障が生じている等の場合には、最大1年間労働保険料等を免除するという形の措置を講じております。
 中小企業退職金共済制度等でありますが、これについても、行方不明の方については3か月で死亡を推定して、死亡退職の場合に退職金の請求ということになりますので、速やかな退職金の支給等について措置を講じたということです。
 7ページです。
 立替払の関係については、一次補正予算で立替払のための補助金の原資を増額しております。併せて、被災地域の中小企業に雇用されていた方の立替払について、申請書類の簡略化などを行っているところです。
 今後、夏場の節電に向けた取組みが必要になるわけですが、東京電力、東北電力管内の労働局・監督署に、節電の相談窓口を設置しまして、始業・終業時刻の繰上げとか休日変更、あるいは変形労働時間制の導入等の取組みについての相談に対応することにしております。
 併せてパンフレットを今日お配りしておりますが、こういうパンフレットを作成して、周知を行っておるということです。
 更に、夏季の電力需給対策を受けて、事務所の室内温度とか照度、換気の取扱いについて通達を出しているところです。
 8ページです。
 健康確保の関係で、特に被災された方のメンタルヘルス等の相談体制ということで、ポータルサイトとか、メンタルヘルスの支援センターでのメール相談などを新たに実施しているところです。
 9ページです。
 復旧工事における災害防止も非常に重要な問題ということで、復旧工事においての粉じん暴露防止のために防じんマスクを配付したりしております。更に、一次補正予算で防じんマスクを更に確保しまして、アスベスト等も含め、対策を講じるということにしております。
 がれき処理作業を行う事業者、労働者等について、特に不慣れな方もいらっしゃるということで、作業を進めるための注意点をまとめたリーフレットを作成して、周知するとともに、がれき処理の実施に合わせて、安全性パトロールを実施しているところです。
 今後、更に復旧工事が見込まれていることで、専門家による巡回指導とか、相談あるいは技術的な支援等を実施するということで、これは補正予算で措置しております。
 更に、震災復旧・復興工事安全推進本部という形で、国のリーダーシップの下で災害防止対策を実施しているところです。
 10ページ以下で、原子力発電所事故への対応ということで、今回の緊急事態に対応するために、緊急作業時の放射線被爆線量の上限を100mSvから250mSvに引き上げたということであります。
 それとともに、原発作業に従事している方の線量管理や健康管理対策について、これまで逐次、東京電力等に指示をしてきたということであります。
 11ページです。
 今月17日に原子力災害対策本部決定の当面の取組み方針、工程表ですが、そこで特に作業員の健康管理対策を推進するということで、それを受けて厚生労働省においても、そのための健康管理等対策推進室を設置しまして、専任職員の配置を含め、対応しているところです。
 以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 ただいま御説明いただきましたことにつきまして、御意見あるいは御質問などがあればお願いしたいと思います。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今回の震災で多くの方が被災されたことに対しまして、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。私自身も、昨日まで被災地にボランティアで入っておりまして、まだ体が慣れていないんですけれども、連合は今、毎日300人体制で、これまでに1万5,000人がボランティアに行かせていただいております。
 今日御報告いただいた内容で確認とお願いをしたい点がございます。3ページの労災保険の申請状況でございます。今回、御説明にありましたように、就業時間中に地震、津波に襲われてしまったということで、多くの労働者がこの震災で被害を受けています。
 今回、厚生労働省として、労災保険については、過去の地震の取扱いを踏まえて、迅速かつ柔軟な対応をしていただいていることについては感謝申し上げたいと思いますが、御説明にあったように、請求件数が被災事故の割には非常に少ないのではないかと懸念しております。被災地に行きますと、民間の地震保険についても申請が余りないという同じような状況が起こっておりまして、今、損害保険の協会では、かなり大量にパンフレットをつくって、避難所で配布したり、我々がやっているボランティアでも、民間のお宅の泥出しに行きますと、そのパンフレットを置いてきたりもしています。今回の震災に関して、労働者については労災保険の適用対象となり、救済の措置が設けられておりますので、行政としてもこれを是非周知していただくようにお願いしたいと思います。今の申請状況を見ますと、どうも今回の措置がうまく周知されていないのではないかという懸念がございますので、お願いしたいと思います。
 もう一点は、原発の関係であります。資料の最後の方に原発事故への対応ということで記載していただいております。この福島第一原発の事故は、かつて経験したことのない事故で、これを一日も早く収束させなければいけないということでありますが、ただ、作業に当たっておりますのは、労働者でございます。労働者の安全衛生管理の徹底について、原子力事業者あるいは事業者に、是非行政としても指導の徹底をお願いしたいところでございます。新聞報道によりますと、緊急作業での被ばく線量が250mSvを超えたと思われる労働者が出てしまったという報道もあるわけでございます。なぜこのようなことが起こってしまうのかということを改めて行政としても確認をいただきたいと思っております。
 また、昨日も一部新聞で誤報があって、我々も迷惑をしているのですが、緊急作業の250mSvと通常の放射線業務の1年で50mSv、5年で100mSvという規制との関係で、4月28日に通達が出されておりますけれども、この通達の内容がどうもうまく世の中に伝わっていないのではないかと思います。通達は緊急作業と通常業務との関係についてきちんと整理されたものと理解しているので、これについてもきちっとした周知をしていただきたいと思っているところでございます。
 以上であります。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 3月11日に発生いたしました東日本大震災によってお亡くなりになった方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 また、復旧・復興の活動に当たられている方々に対して、心より敬意を表するということで、私ども日本経団連といたしましても、全力を挙げて被災地の支援、復旧・復興に向けて全力で取り組んでいるところで、私どもも力の及ぶ限り、ボランティアも含めて、いろいろな活動をしているということであります。
 私どもも、改めて労働行政、特に基準行政についてお願いを申し上げておきたいと思います。第1点は、労働側委員と同じく労災保険でございます。
 今のところ、申請から支給まで25日前後と伺っておりまして、かなり迅速化が図られているのではないかと思います。先ほどの御説明にもありましたように、3か月を超えた時点で申請等もかなり増えるのではないかと予想されますので、特に申請件数がたくさん増えたところでの事務の処理能力につきまして、人的な支援も含めて、被災地域に必要な支援をしていただきたいなと思っております。また、立替払につきましても、迅速な支給をお願いしたいと思っております。
 第2は、首都圏につきましては、7月から節電の関係がございまして、恐らく6月中には労使のいろいろな関係で議論をすることになろうと思いますけれども、それにつきましても適切な御指導をいただきたいと思っています。
 第3は、中長期的な点でございますけれども、メンタルヘルスの関係が今後非常に重要なのではないかということで、その点につきましても、今後検討を重ねて、適切な処理、対応をしていただきたいと思っているところでございます。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 事務局の方から、何かお願いできますか。
○総務課長 まず、労災保険の関係でございますが、実は5月に入って、大分被災局において請求が増えて、毎週200件ぐらいの請求になっているという状況です。あまり確定なことは申し上げられないんですけれども、四十九日が経った辺りから、徐々に請求は増加傾向にあるかと思います。また、先ほど申し上げたように、3か月で死亡を推定するという措置も講じますので、6月以降更に増えるものとみております。
 周知についても、避難所等も含め、今後社労士なども活用して、周知活動を引き続き行っていきたいと思っております。事務処理の関係につきましても、これまでも他局から応援ということで入っておりますが、今後の請求の状況も見ながら、更に応援を増やすとか、非常勤の相談員なども活用しつつ、迅速な処理に努めてまいりたいと思っております。
また、立替払についても同様でございます。
節電、メンタルヘルスの関係につきましても、いただいた御意見を踏まえ、適切に対応していきたいと思います。
○局長 原子力発電所の対応の関係につきましては、私の方から少しお話をさせていただきたいと思います。
 東電福島第一原子力発電所の事故の収束に向けた対応というのは、大変困難な作業になっておりまして、作業員の方々は放射線被ばくと闘いながら懸命な作業をされているという状況にあると考えております。
 私たちの立場は、労働安全衛生法及び電離放射線障害防止規則に基づきまして、放射線の被ばく限度が法律をもって規定をされ、規制をされているわけでございまして、これをきちんと守っていただくということが私たちの仕事の役割であります。この間、3月11日の震災発生直後の3月14日でございますが、現在、電離放射線障害防止規則での緊急作業の限度は100mSvという被ばく限度が決められておりますが、これを緊急に東電福島第一原発の事故処理に限って250mSvに引上げたということでございます。被ばく線量は少なければ少ないほどいいのは当然でありまして、そういう意味でいえば、ぎりぎりの判断としてさせていただいたということでございます。
 その後、東京電力及び関連会社におきまして懸命の作業が続けられていたわけでございますが、率直に言って、下請の労働者も含めて、被ばく線量の管理がきちんとできていたのかどうか。その線量に基づいて、必要な健康診断でありますとか、健康管理ができているのかどうか。この辺りについて、再三にわたりまして、東京電力に対して指導してまいりました。
5月に入りまして、細川大臣が東電福島第一原発の方に入りまして、私も働く方々の拠点になっておりますJヴィレッジというところに行ってまいりました。そこでどんな状況かというのも見せていただきましたが、大変多くの方々が働いている。東京電力の社員の方々に加えて、いわゆるプラントメーカーと言われているところの方々が、そこに更に下請の方も入っておられる。更に、建設関係の事業者が非常にたくさん入っておりまして、ゼネコンが元請けになっておりまして、そこに重層的な下請け構造でいろいろな作業に従事しているという構造になっておりまして、労働者層の全体を把握することがなかなか困難な状況でもあったわけであります。
 そういうことで、東電福島第一原発の中に入るすべての働く方について、きちんと線量計を保持させて、その結果について毎日記録をして、その記録についてきちんと名寄せをして、線量が限度を超えないように管理をしていくということをずっと指導してきております。
 100mSvを超えた方、あるいは震災直後に必ずしも十分でなかった可能性があるいろんな問題もありますので、その時期に就労させた方については、特に外部被ばくのほかに、吸い込んだ内部被ばく量の測定はすぐにはできませんので、優先的に内部被ばくの測定をやるように指導してまいりました。その上で、健康診断を特に1か月を超えた方については全員やるようにということで、特に血液を取っていただきまして、白血球の減少がないかとか、そういったことも含めてやっていただく。
 更に、これは長期化をいたします。放射線の健康影響は非常に長期に及ぶことになりますので、国の責任におきまして、この東電福島第一原発の緊急作業に従事していた方すべてを対象に、長期間にわたって被ばく状況と健康管理の状況についてデータベースを構築いたしまして、緊急作業に従事した方の健康影響を最小限に食い止めるという対応をしていくということで、既にデータベースの構築も始めております。
ただ、現在一番大事なことは、日々の作業の中で被ばく線量をきちんと把握していただくということと、できるだけ被ばく線量を下げて、そういう状況の中で働いていただくということが大事だということで、取組みを進めてきたわけでございます。
 しかし、残念ながら、昨日東京電力から報告がございまして、外部被ばくはすぐその日にわかるのですけれども、内部被ばくはホールボディカウンターという機械を使って、一定の測定作業をしなければいけないということです。この結果、内部被ばくの線量が予想以上に高い方がおられたということで、この方々については、今後確定することにはまだなっておりませんが、内部被ばくが相当量に及ぶ可能性がある。外部被ばくと合算をいたしますと、緊急作業の上限で開いたところの250mSvを超える可能性があるということで報告がございました。
 昨日、東京電力を呼びまして、改めて、とにかく早く被ばく線量の方の内部被ばくを確定するということと、どういう状況でそれだけの高濃度の内部被ばくが起きたかということについて報告を求めております。それから、昨日、被ばくをいたしました2人の働く方々からも直接事情を聞きました。そういうことで、どうも3月11日直後の働き方に問題があった可能性があるのではないかと思っておりまして、その場にほかの労働者もおられたわけでございますので、その特定と早急な内部被ばく、健康状況の把握について、併せて指導もいたしました。
 その場で働いておられた方々につきましては、すぐに緊急作業から外すように指示をいたしました。今日、こういう状況になっておるわけでございますが、いずれにいたしましても、今後かなり長期間に及ぶことになろうかと思います。健康管理につきましては、徹底してやっていただく必要があるということで、特に250mSvを超える可能性の方が出てきたということでございますので、改めて強く東京電力に対して指導したところでございます。
 新谷委員からお話がありましたけれども、250mSvという緊急時のものを引上げたわけですが、実は電離放射線障害防止規則では、緊急時は100mSv、緊急時以外の平時については年間50mSvないしは5年で100mSvという被ばく限度を定めております。緊急時の100mSvと平時の数量の関係が、法令上必ずしも明確になっていないということでございましたので、私どもは通達におきまして、その関係を明示するようにしまして、先ほど新谷委員からもお話がありましたように、4月28日に通達を発出いたしました。これは別枠でという議論も聞こえてきたわけでございますが、私どもとしては、そういう考え方はあり得ないということで、年間100mSvを超えた方々については、5年間100mSvという規制がございますので、この枠内に収めていただく。つまり、その後、通常作業に戻った場合にも就労を差し控えていただくということで、健康管理がきちんとできるように、通達でその考え方を示したところでございます。
新谷委員からお話がございましたように、誤解されている向きもございまして、私どもの説明が足りない部分もあったかと思いますが、これにつきましては、引き続き適切に事業者に周知されるように努めてまいりたいと考えております。
 状況としては、以上のようなことでございますが、大変困難な状況の中で作業が行われております。私どもとしては、働く方の健康管理をどうしていくかということを肝に銘じながら、今後の対応を図っていきたいと思いますので、委員の先生方にも御理解、御支援を賜りますよう、改めてお願い申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今、基準局長から力強い御答弁をいただきましたので、福島第一原発の点については、是非お願いをしたいと思っております。
 また、現在、警戒区域内の住民で避難されている方の一時帰宅等も行われておりますけれども、そのこととも関連するのですが、社会インフラの復旧作業が原発の近くで行われております。20km圏内では事業は営まれないことになっておりますが、復旧作業は別でありまして、労働者が働いております。
 東電福島第一原発については、今、局長から御説明があったような管理がなされていると思うのですけれども、実は原発から外については、電離放射線障害防止規則の適用対象外となっております。もともと放射線管理区域の指定がない、要するにオープンエアーの野外での作業なものですから、もともと野外に空気線量がそんなにあるということが想定されていない世界でありまして、ここは法律的に1つ穴が開いているということがわかってまいりました。是非、原発のすぐ近くの警戒区域内で復旧作業等をされる労働者に対する何らかの安全対策などを早急に確立して、指導をいただきたいと思っております。
 以上であります。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 局長、お願いします。
○局長 20km圏内で、例えば通信ケーブルのようなものを引く作業ということで、緊急的に従事されておられる方がいるというのは、連合からも御提供いただきまして、今、お話がございましたように、電離放射線障害防止規則の想定の範囲の外の状況でございまして、ただし、こちらの方々につきましても、やはり放射線の影響というのは否定できないわけでございますので、予防的にマスクの着用や防護着、線量計の着用とか、そういった必要な対応につきましては、指導ベースということにはなるかと思いますが、しかるべく対応していきたいと思っております。
○岩村分科会長 よろしくお願いいたします。
 それでは、次に議題の3番目「有期労働契約について」に移りたいと存じます。このテーマにつきましては、昨年の10月から委員の皆様に検討スケジュール、検討項目についておおむね御了承いただいた上で、順次議論を進めてまいりました。
 ただ、先ほど事務局の方からも説明がありましたように、今回の東日本大震災の影響もありまして、前回3月8日に分科会を開いてから、それ以降、本日まで分科会を開催することができませんでした。
そのため、現在、各論の検討スケジュールが当初の予定よりは遅れているという状況にございます。各論の検討時期が若干ずれ込んではおりますけれども、私としましては、議論の中間的整理というものについては、夏ごろまでには一旦済ませたいと考えております。
 そこで、お手元の資料No.3-1のスケジュールに従って、今後議論を進めさせていただければと考えておりますが、この点につきましては、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
(「はい」と声あり)
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 それでは、今後はこの資料No.3-1にありますスケジュールというものを一応の目安としつつ、議論を進めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 そこで、本日は、大分前になってしまいましたが、前回3月8日の分科会に引き続きまして、有期労働契約の締結及び終了に関する論点について御議論をいただきたいと考えております。その後、次の論点になります契約期間中の処遇や雇用管理等に関する論点には入れればと考えております。
 そこで、今日取り扱う有期労働契約の締結及び終了に関する論点につきまして、事務局の方で、前回までの議論で委員の皆様から御要求のありました事柄等につきまして、資料を用意していただいておりますので、まず、これにつきまして事務局の方から説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○労働条件政策課長 それでは、資料No.3-2~3-7が有期労働契約の締結及び終了に関する論点関連の資料でございます。順次御説明いたします。
 資料No.3-2につきましては、既に2月の第85回分科会から使用している論点でございまして、この資料については、変更がございません。
 資料No.3-3について御説明をいたします。
 こちらは「民法第629条(有期労働契約における黙示の更新)について」というものでございますが、裏を見ていただきますと民法第629条の条文がございます。期間の定めのある雇用契約について、雇用期間が満了した後、労働者が引き続き労働に従事し、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更新したものと推定するという、いわゆる黙示の更新を定めた規定が、第629条第1項でございます。
 現在、法務省に置かれております法制審議会の民法(債権関係)部会におきましては、平成21年10月から民法の債権法関係の見直しについて検討が進められております。このことについては、既に2月23日の当分科会において御説明させていただきましたけれども、法制審議会におきまして論点が一巡しまして、本年4月に議論の中間的な論点整理が行われて公表されたところでございます。
 この論点整理は膨大なものですけれども、そのうち黙示の更新に関する部分について抜書きをしたものが、資料No.3-3の真ん中辺りの4でございます。有期雇用契約における黙示の更新として、(1)有期雇用契約における黙示の更新後の期間の定めの有無についての中間整理の内容についてでございます。
 「民法第629条第1項の「同一の条件」に期間の定めが含まれるかという点については、含まれるという学説も有力であるものの、裁判例は分かれており、立法により解決すべきであるとして、「同一の条件」には期間の定めが含まれないことを条文上明記すべきであるとする考え方がある。このような考え方の当否について、労働政策上の課題であり、労働関係法規の法形成のプロセスにおいて検討すべき問題であるという指摘があることに留意しつつ、更に検討してはどうか」とされております。
 ここの論点のまとめの補足として、5月25日に法務省の方から補足説明が公表されております。この黙示の更新の部分の「議事の概況等」という形で公表されておりますが、それが1ページ目の下の段に書かれております。
 「「同一の条件」には期間の定めが含まれないことを明示すべきであるという考え方について、この問題は労働政策上の課題であり、現在有期労働契約に関する問題について検討を行っている労働政策審議会労働条件分科会において検討されるべき問題であるという意見が複数あり、これに対して特段の異論はなかった」などとされております。
 こうした法制審議会における議論の状況を踏まえまして、事務局としては、この黙示の更新の問題については、今後、当分科会において取り扱う必要があるとの前提の下に、本資料を今回提出し、改めて御説明させていただいているものでございます。
 なお、この黙示の更新の問題につきましては、既に先ほどお示ししました資料No.3-2の有期労働契約に係る検討の論点に照らしますと、本問題につきましては、資料No.3-2の(4)のイに「契約締結時点で契約期間についての書面明示がない場合の契約期間の有無の取扱い」に関連するものと考えており、表題の下にも、その旨を表示させていただいております。
 期間の定めに関する当事者の意思が外形的に現れていない場合の契約の取扱いという点では、この両者は共通性があると考えております。そういった観点から御議論をいただければと思っております。
 以上が資料No.3-3でございます。
 資料No.3-4につきましては、前回、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(大臣告示)の内容について、有期労働契約の締結から終了に至るどの場面でどの規定が働くかということをわかりやすい形で示してほしいという御要請がございましたので、作成させていただいた資料でございます。
 資料No.3-5につきましては、有期労働契約の更新につきまして、更新の有無の明示、あるいは更新の判断基準の明示の状況などにつきまして、平成21年に行った事業所調査及び個人調査の中から抜き出したものでございます。既に御報告をさせていただいているものでございますけれども、改めて提出させていただいております。
 3ページは、事業所調査でございますけれども、契約締結時の更新の有無につきましては、一番上の総数で見ますと「明示している」と答えた事業所が8割を超えております。
 4ページの契約締結時の更新の判断基準の明示につきましては、同じく一番上の総数の欄ですが、6割の事業所が更新の判断基準を明示しております。
 5ページは、契約更新の形態であります。これも一番上の総数のところですが、左から5番目「更新の都度、契約期間等について詳しく説明を行った上で、労働者の署名または記名押印を求めている」とする企業が約半数に上っております。
 6ページは、雇止めに先立つ通告の時期でございます。真ん中の左から4番目の欄ですが、契約満了日の30日以上前に通告したとする事業所が9割に上っております。
 9ページ以降は、インターネットの個人調査の状況でございます。数字としては、似たような数字が上がっておりまして、9ページは、更新の有無が契約時に明示されたとする労働者が約9割に上っております。
 10ページは、更新の判断基準の明示をされたという労働者が6割ということで、事業所調査とほぼ同数ということでございます。
 11ページは、更新について受けた説明について、これは事業所調査とは若干問いが違いますが、左から3番目、更新の可否を判断する旨の説明を受けている者が3割。あるいは自動的に更新する旨の説明を受けている者が3割となっております。
 12ページは、雇止めの通告の状況です。書面で伝えられた場合と口頭で伝えられた場合を分けて調査しておりますが、書面の場合は約8割弱の方、口頭の場合は約6割強の方が30日以上前に通告を受けたと回答されております。
 資料No.3-6は、雇止めに関する大臣告示などの周知用のパンフレットを当方で作成、配布しているものです。前回は、このパンフレットの4、5ページを資料としてコピーで提出しました。雇止めに関する裁判例の傾向を説明をいたしましたが、それを含め、このパンフレットにおきましては、2、3ページでは、雇止めに関する大臣告示の内容、6、7ページでは、モデル労働条件通知書。これに従ってやっていただければ、もれなく明示事項等を明示することができるということでございます。
 そのほか、10、11ページに関連する法規の内容を網羅して周知をしているところでございます。
 資料No.3-7は、12年に行われました有期労働契約の反復更新に関する調査研究会でございます。先ほどの大臣告示に至る明示、あるいは雇止め法理の明確化につきまして、その基礎となった調査研究会報告であります。内容の説明は省略いたしますけれども、先ほどの雇止めに関する裁判例の類型化や今後の雇止め等に関する施策の方向性についてとりまとめられております。
 以上、簡単ですけれども、関連資料について御説明をさせていただきました。よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 それでは、今日の論点につきまして、御意見、御質問等があれば、御発言をいただきたいと思います。
なお、ちょっと前のことで、皆さん御記憶が少し怪しいということもあろうかと思いますが、実は前回は、先ほどの資料No.3-2の論点ペーパーの中では、(5)のアまで、大体議論をしていただいてはいるんですが、時間の配分等の関係もあって、(4)の契約締結時の手続に関連する課題という辺りからは、やや駆け足であったかと思います。その点も考えますと、今回は再度(4)から、もう一度御意見をいただければと思います。
 特に(4)につきましては、資料No.3-2の内容に加えて、先ほど事務局の方からも御説明がありましたが、資料No.3-3の黙示の更新に関する課題というものも関連してまいるかと思いますので、これも含めて議論の対象としていただければと考えております。そういうことを念頭に御意見等をいただければと思います。
 では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 ありがとうございます。今、分科会長から御指示がありました(4)のところで、資料No.3-3として追加で配っていただいております黙示の更新の関係でございます。
 この内容については、資料No.3-3にありますように、現在、法制審の民法債権法部会で検討が進められているところであります。山川先生も委員として入られておりますし、私もこの議論には参画させていただいておりまして、その場で申し上げておりますのは、今日配られております資料No.3-3にありますように、これは労働政策上の課題であるから、法制審議会での審議ではなくて、この労働政策審議会において、労使の代表を交えた場で、公益の先生方と一緒に考えるべき課題ではないかということを申し上げております。
 勿論、現在、法制審の中で提起をされております「同一の条件」には期間の定めが含まれないということを条文上明記するべきではないかという考え方には賛成をしておりまして、この方向で是非進めるべきだと考えておりますけれども、ただ、検討の場といいますか、手続面で、やはりこの労働政策上の問題はこの労政審においてやるべきだということを主張してきたところであります。
 ただ、内容的に申し上げておきたいのは、期間の定めのあることを明示せずに、黙示で更新をしてしまっているということについては、もともと使用者として期間の定めをする意思がないということから、これは無期に転化させるべきではないかと考えているところでございます。
 学説においても、労働法の学界でも、この「同一条件」には期間の定めは含まれないという学説を唱える方が多いと認識しているわけでございますけれども、せっかくの機会ですので、公益の先生方の方から、現在の学説の動向を是非お聞かせいただきたいと思います。
 もう一つ教えていただきたいのは、この黙示の更新が労使の紛争になるというケースは、更新の手続において使用者側から、まさしく黙示の更新ですから、何の手続もせずに更新をされていった後、しばらくそういう状態で就労をされた後、使用者側から雇止めなり、解雇されたといったことでトラブルになると思われます。そういったトラブルに対して、解雇権濫用法理そのものを適用して処理に当たるのか、あるいは解雇権濫用法理の類推適用という形でこの事案を処理するのかというところも含めて、学説上の考え方をお示しいただければありがたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 今の質問の点は置いておいて、法制審の議論との関係で、山川先生、何かコメントがあればと思います。
○山川委員 法制審の状況は、今、新谷委員のおっしゃられたとおりの経緯でありまして、労働政策上の課題であって、労働関係法規の法形成のプロセスです。この意味は、下の議事の概況にありますように、労働条件分科会において検討されるべき問題であるという指摘が複数あったということで、言わばこちらの分科会での議論の方にボールが投げられたと理解しております。
 ただ、議事の概況は、法制審の部会で文章の表記等にわたって検討したものではございませんから、あくまでも上に書かれた中間的論点整理が審議会で種々議論したもので、この議事の概況は事務局でとりまとめたという位置づけになっています。
 法制審に関しては、以上です。
○岩村分科会長 学説の状況ということで御質問があったのですが、どなたか少しお答えいただければと思います。
 では、山川さんお願いします。
○山川委員 細部にわたって把握しているわけではありませんけれども、資料No.3-3にありますように、同一の条件に期間の定めが含まれるかという点について、含まれるとする学説は、私の記憶するところでは、例えば菅野先生が含まれるという学説だったと思いますし、含まれないという見解は荒木先生が代表的なものとして挙げられるのではないかと思われます。
 新谷委員がその次に言われたこととの関係で申しますと、もし期間の定めが同一の条件に含まれるという解釈によりますと、有期労働契約として更新されることになりますので、その後の契約の終了については、期間途中でしたら、労働契約法第17条の問題でありますし、期間満了の場合は雇止めの問題になりまして、解雇権濫用の類推適用であるということになるかと思います。
 他方で、期間の定めが含まれないということになりますと、期間の定めのない契約の解約という扱いになりまして、解雇権濫用法理、労働契約法第16条の直接の問題になるということではないかと思います。
 ただ、期間の定めが含まれないという見解でありましても、解雇権濫用法理の中身については契約の実態によって判断されるという指摘がなされているように記憶しております。
 おおむね、以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。恐らく、民法第629条がつくられたときは、何せ解雇が自由の時代ですので、したがって、黙示の更新になって、仮に期間の定めのない契約になるのだとしても、解雇は自由ですので、むしろ逆に有期で更新になるんだというよりは、無期になってしまうんだとした方が、そこで簡単におしまいにできるというのが前提だったと思います。
 ただ、今、山川委員も説明され、新谷委員も先ほどお話があったように、今は無期の場合の解約については、労働契約法が適用になるのであれば、労働契約法による規制が働きますし、仮に有期契約になったとしても反復更新という形になっていれば、そこでは解雇権濫用法理の類推適用ということはあり得るわけです。そうすると、結局問題は、黙示の更新をしてしまった後で、その契約を切断するというときに、どういう法理を適用するのが一番いいのかということを議論するというのが、恐らく一番問題の設定に対する答えとしては適切なものになるだろうと思います。そこのところは、そうなると法制審議会の議論ではなくて、こちらで議論をして、しかるべく答えを見つけるというのが適切だろうと、個人的には私も思います。
 あと、公益委員の先生方で労働法学者はたくさんいるので、もしコメントがほかにあればと思いますが、よろしいですか。荒木委員、どうぞ。
○荒木委員 学説のことについては、山川委員に客観的に御説明いただいたとおりだと思います。
 1点、先ほど新谷委員も御指摘になった点に補足いたしますと、期間の定めがある契約というのは、期間の満了によって自動的に終了するという特殊な効果があるわけです。それに対して、期間の定めがない場合には、雇用関係を切断しようと思えば、使用者の方から解雇をするしかない。そういう重大な効果の違いがあります。
 ここで民法第629条が問題としているのは、もともとは期間の定めのある契約を期間の定めについて明示的な約定なく、そのまま延長したといった場合に、これを期間の定めがある契約として推定するのか、それとも期間の約定については特段合意しなかったのであれば、それは無期契約だろうと推定するかということを問われているということだと思います。そういう状況の中で、今、労働行政としての期間の定めについてはきちんと明示をしなさいと。書面明示自体は、労基法で罰則付きで定めていることではあります。
ただ、ここで1つ注意すべきは、書面の明示の話と、期間の定めの合意の話は同じではないということであります。書面は明示しなかったけれども、期間については合意したということであれば、書面明示違反の罰則があるとしても、それは有期契約として締結されたと解して構わない。第629条の場合には、その書面明示の有無とは別に、期間について合意して更新したのか。それとも、期間について合意しなかったのか。そのことに関しての推定規定ですので、いずれの推定規定がこれからの労働政策上として適切かということも勘案しながら議論するのが適切ではないかと考えております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 この問題について、ほかにいかがでございましょうか。
 では、輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。第629条の扱いということですけれども、私どもは法制審に委員を推薦して、労働政策審議会において審議をすべきであるということで発言をしております。資料No.3-3にありますように、意見が複数あるというのは、まさに労側も、使側も、公益の先生も、労働政策審議会でやるべきだということでありますので、その点については妥当な考え方だと思っているところであります。
 それから、民法は、特に債権法ですけれども、110年前につくられて、一度も改正をされてこなかったという経緯を見ると、改正するに当たって、他の法令とどのような調整があるのか。特に、労働法の関係で調整をするのかということについては、これまでは問題がなかったはずですけれども、特に第623条~第631条の雇用の規定の部分について見直しをするということについては、労働法にも非常に大きな影響があると考えているところです。
 今度の、労働条件分科会において、有期の雇用について議論をしているということは、成長戦略の中には、年末に向けてとりまとめ建議をするとなっていますけれども、法制審での議論についても、今回の有期の見直しの議論の中で決着をするのかしないのかということについては、少し時間的な余裕が必要なのではないかと思っているので、少なくとも、年末に結論を出すという性質のものなのかどうかということについて、疑問を感じているということであります。
 もう一つ、黙示の更新についての従前の雇用と同一の条件で更に雇用したものとみなすということで、今、荒木先生から御説明をいただいた点について、例えばいわゆる有力説と言われているものと、通説と言われている2つのものがあると理解をしておりまして、その両説について、ある意味では決着がついていないという状況もたしかだと思っておりますので、ここでの議論は、今、荒木先生から御説明をいただいた、あくまでも黙示の更新ということでありますけれども、現段階においても慎重な議論が必要ではないかというのが私どもの基本的な考え方であります。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。御意見ということで、承っておきたいと思います。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今、輪島委員から、法制審での論議のタイミングと、この労働政策審議会でのタイミングについて御意見をいただいたわけですけれども、これはまたどなたかから補足いただければと思うのですが、要するに、民法の改正において、民法典の中の雇用の規定といわゆる労働契約法との関係をどのように整理するかということに関わってくると思います。
 ですから、法務省が所管している民法と、厚生労働省が所管している労働契約法との関係をどのように考えていくのかというのは、事務局の方でもし何か考え方があれば聞かせていただければと思います。
その上で、私どもとしても、先ほど公益の先生方にわかりやすく御説明をいただいたわけでございますけれども、有期労働契約の労働者の雇用の不安定さなりを考えたときに、やはりこれは同一条件については、期間の定めのないものとみなすという通説の方向で、是非これは検討いただきたいと考えておりますので、その点を申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 では、後段は御意見ということで承ることにしまして、前段は御質問がありましたので、事務局の方でお願いします。
○調査官 債権法改正と労働契約法などの労働法制との関係ですが、両法制の関係は考えていかなければいけないというのは、法制審でも議論されたかと思います。
 ただ、事務局の立場でいいますと、仮にそういうお話になりますと、労働契約法制そのものの在り方を考えなければいけないということとなり、当然、公労使の御議論が必要でございますので、公労使の御議論ができる状況を整えてからでないと、最終的な整理はできないと思いますので、今の段階でそれをどう整理するのかは見えていないのではないかと客観的に思います。
 また、民法改正は民法改正で進みますので、今の議論の中でも、将来課題は将来課題として、現時点では民法上の雇用の規定は、最小限の整理だけをしておくという意見も出ていたかと思います。どういうふうに両方のタイムスケジュールを考えていくのかということは、今後、法務省とも相談していきたいと思っております。
○岩村分科会長 新谷委員、よろしゅうございましょうか。
○新谷委員 はい。
○岩村分科会長 それでは、そのほか(4)の論点についてはいかがでございましょうか。
 山川委員、どうぞ。
○山川委員 細かなことですけれども、先ほど同一の条件について、期間の定めが含まれる、含まれないという問題について「みなす」という御発言がありましたけれども、条文上は「推定する」ということですので、推定を覆すことは可能であるということになると思われます。
 それから、これは先ほど事務局から御説明のありました(4)のイとの関連ですけれども、理屈の上では契約の更新というのは、改めて契約を締結するということになりますので、そういう観点からは、契約締結時の問題の一環として位置づけられると思います。恐らくそういう観点から整理されたのかと思います。
 ただ、今回、私は初めてですけれども、これまでそういうことも想定して、ここでの労働契約の締結という議論をされてきたかどうかわかりませんが、改めてここで言う契約締結というのは、更新も含めて考えるのかどうかという点が、意識的に検討される必要があるのかなと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。多分、余りそこを深めて議論はしていませんが、前提としては、更新をする場合についても、やはりそれは締結だというのが頭としてはあったのではないかと思いますが、そこは皆さんの共有の理解なのかどうかは、もしかすると、また議論を深める必要があるかもしれません。
 (4)の方でまだ特段のものがあればですが、安永委員、どうぞ。
○安永委員 安永でございます。労働契約締結時の明示義務を強化した方がいいという立場で意見を述べたいと思います。
 労働側委員は、合理的な理由なく有期労働契約を利用すべきでないという立場で今日までも議論に参加をしてまいりましたが、その立場で言いますと、労働契約法などにおいて、契約の締結時の明示義務と、それに違反した場合の効果ということをきちんと定める必要があるだろうと思っております。
 先ほど、実態調査の中で示されておりましたが、私たちが思ったよりも明示しているという答えが多かったわけでございますが、それらが浸透していないところでさまざまなトラブルが発生し、問題が発生しているのだろうと思っています。そうならないための法律であるべきだと思っておりますので、明示義務を強化すべきだということで、意見として述べたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでございましょうか。輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 資料の方に戻って、資料No.3-2のアのイのところという意味で申し上げますけれども、先ほど山川先生がおっしゃった点と、今までの議論との整理ということです。新谷委員がおっしゃった黙示の更新について、それは無期とみなすというところと、それぞれの更新の時点での整理というところは、やはり違いがあるのではないかと思います。
 民法の大原則から言えば、先ほど荒木委員に御説明いただいたように、口頭でも合意があれば契約は有効に成立をするということをそのまま見ると、労働契約が口頭で成立するということであれば、書面の明示と期間の定めについての合意というのは直結はしないわけなので、有期という合意さえあれば、書面がなくても有期契約として認められるべきだという議論をする必要があるのではないかと思います。私どもとしては、民法の大原則からすれば、口頭でも合意があれば契約は成立するんだというところから出発をしているので、そこの点で新谷委員のおっしゃっているところと食い違いが出てしまうのではないかと思っているところです。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員 今、実際の経営といいますか、契約上の立場から言いますと、当然ながら、いろいろな雇用身分が会社の中でもございまして、それぞれに就業規則は本来備えるべきであって、それぞれに制度が備えられているということだと思います。その中で黙示の契約が行われた場合、多数の中の1人が黙示になり、それが無期かというと他の大多数はその制度にのっとって有期契約を反復更新している。無期の方の身分をどうしていくのか、個別の雇用制度毎に見た場合には無期になりえないという問題が出てまいりますので、制度全体、ほかの雇用形態の身分の処遇のことも含めながら整理をしていく必要があるのではないかということを感じました。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 ほかに、この資料No.3-2の(4)のア、イ、それぞれについて何かございますか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 まず、今日いただいているパンフレットといいますか、資料No.3-6の大臣告示の内容でございますけれども、これは労基法の第14条に基づいて発出された大臣告示となっております。この内容自体は、先ほど調査結果も出ておりましたように、ある程度、労働の現場において効果は発揮しているとは思いますが、ただ、これの実効性を担保するということについては、やはり我々としては、この法制化が必要ではないかと考えております。
 契約の締結時に明示するべき事項については、現行法でも、労基法及びパートタイム労働法でも罰則付きで定められているわけでありますけれども、更に法制化をする中で、是非実効性を担保するべきと考えております。
 ただ、その法制化に当たっては、これは労働基準法の中で、取締法規として規律をする部分と、一方で、私法上、労働契約法の中で規律をする部分を分けて考えていくべきではないかと思っているところであります。これは、今後の論議の中でどういうふうな切り分けをしていくのかというのを、皆さんと一緒に論議をしていきたいと思うわけでありますけれども、例えば雇止めの予告であるとか、雇止め予告理由の明示といったものは、現行でも労基法に解雇の予告や解雇理由の明示の規定があるわけでありますから、この辺については、労基法の規定でいいのではないかと思いますし、その一方で、更新の有無、更新の基準等々については、労働契約法の中での規定ということも考えられるのではないかと考えておりますので、これらも含めて、我々としては法制化を求めていきたいということを申し上げておきたいと思っています。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 今の実効性の確保という意味合いで、資料No.3-3の(5)で実態調査の結果が出ていて、実効性の確保という観点からは、先ほど安永委員からも御指摘があったように、それなりに定着をしているのではないか。つまり、実効性は確保されているのではないかというのが私どもの従来の考え方でございますので、その点で、あえてそれが100%にならないとできないのかということでもなかろうと思いますので、行政として、しっかり周知について、今後更に取り組んでいっていただきたいとするのが本当の対応なのではないかと考えているところです。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 では、新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 使用者側の輪島委員からの御指摘でございますけれども、この調査の結果をどう見るかということに関わってくると思います。6割というのが、これでもってよしとするのかというところの評価に関わってくるところだと思いますが、我々としては、これは必ずしも、現在、告示が求めている内容・水準に達しているものではないという理解の下で法制化を求めていきたいということでございます。
○岩村分科会長 ほかに、まだ議論があるかもしれませんけれども、次のものとしては、資料No.3-2の3ページ目の「(5)有期労働契約の終了(雇止め等)に関する課題について」ということも、議論の論点として上がっているところであります。
 これもまた、今、話題になりました告示の中身とも関わるところでございますので、こちらについても議論を進めていただければと思います。勿論、同じ告示が問題になっているものですから、また(4)と絡めてということであっても結構でございますけれども、よろしくお願いいたします。
 では、輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 質問ですけれども、資料No.3-5の最後12ページ、第40表です。「予告手当の支給」という項目があって、規模別のところで、これをどういうふうに見るのかということを御質問したいのですが、支給がされているということと、規模が小さくなるほど、比較的数字が大きくなるように見えるのですが、実態としてどういうふうに把握をしているのかということについて教えていただきたいと思います。
○岩村分科会長 事務局の方、何かわかりますか。お願いいたします。
○調査官 基本的には、この数字だけですので、あとは想像でしかないのですが、この項目は、雇止めのときにどうやって伝えたか、何日前までに伝えたかということと、予告手当を払ったかということなどを聞いているのですが、予告手当は、今の労働基準法や、それに基づく告示にはない制度なので、恐らく自主的にやられているということだと思います。仮の話なんですけれども、労働基準法上の解雇で考えると、解雇の場合には、30日前の予告か、しない場合には手当を払うということになっていますので、あり得るとしたら、何日前に予告したかということと、予告手当というのはある程度関連しているかもしれないです。
推測なので御参考までなのですが、そうしてみると、4人以下の数字が、もともとサンプルが少ないので不正確であるというマークが付いていますが、それを見ると、例えば予告手当は確かに企業の小さめのところは高いように見えますけれども、一方で、30日前の通告などを見ると、逆に規模が小さいと、少しそこが低くなったりしているので、推測ですが、何かバーター関係というのはあり得るのかなと思っております。
○岩村分科会長 よろしいでしょうか。
○輪島委員 はい。
○岩村分科会長 中島委員、どうぞ。
○中島委員 雇止めの予告なんですけれども、やはり労働側の立場としては、しっかり予告をしていただきたいと思っております。実態調査結果を見ましても、既に契約満了30日以上前には、ほぼ予告はされているという結果は出ております。しかし、短期間のアルバイトのような仕事でしたら、仕事の満了期間が来れば契約は終わりだなということは、私たち労働者も意識はしておりますけれども、やはり更新を繰り返している場合、期間の定めのない労働契約と実質的に異ならないような状況になっている場合におきましては、特に一定期間前に予告することが必要ではないかということを、改めて申し上げたいと思います。
 期間の定めのない労働契約に適用されているような解雇のルールと同様に、有期契約の方についても、例えば30日前の予告を法制化し、30日前に予告が行われない場合は、やはり予告の手当というものも必要ではないかと思っております。
 先ほど輪島委員もおっしゃっていましたけれども、私としましても、雇止め予告というのは、基本的には職場の中で経営者が有期契約労働者に対して雇止めをする理由等をきちんと説明したり、理解を得るような努力をするという日ごろのコミュニケーションの強化が勿論必要であり、法制化することが最もいい解決策ではないということは理解しているのですが、やはり一方で、そういうことがしっかりやられずにいる労働者がいらっしゃるということを踏まえますと、もう既に90%ほどが予告ができているということでしたら、逆に法制化しても、現場の混乱はないのではないかと思いますので、しっかり法制化をしていくべきではないかと考えます。
 ただし、1年とか更新3回という場合に限定するというのが妥当かどうかということについては、もう少し議論を深めるべきではないかということも併せて申し上げたいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 中島委員に1つだけ伺いたいのですが、先ほどの御発言の中の、例えば今日は5月31日ですけれども、働いていて、実質的に期間の定めがなく長くなっているというところですが、自分が5月31日に終わるか終わらないかということについては、やはり失念してしまうものなのですか。忘れてしまって、自分が5月31日で期間満了になるということがわからなくなるとおっしゃったと聞こえたんです。
○中島委員 そういうわけではなくて、反復雇用がされていて、今回更新されたので、多分今度も更新されるだろうという雰囲気が職場の中にある場合があるんですね。そういうときに、急に「じゃあ、次は更新しないから。」ということを言われたときに、今まではよかったのに今回はなぜなのかということは、やはり労働者にとっては不安です。何度も労側から申し上げておりますけれども、急に更新しないと言われるのではないか、次回は更新されないのではないか、もしかしたらここで連休を取ったり、育児休暇を取ったりすると、次は無理なのではないのかということをいつも心配して契約をしているという実態がございます。ですから、やはりそこの部分は、本来ならコミュニケーション等で担保できるのかもしれませんが、そうではない部分もありますので、働いている方がそういう思いをしないで働くためにも必要ではないかということです。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 (5)のイのところなんですけれども、契約終了時の経済的支援の必要性について申し上げたいと思います。
 これも実態調査で、企業がなぜ有期労働契約の労働者を雇用するのかという理由の中に、賃金の安さなどのほかに、雇用調整のしやすさというのも大きな理由として挙げられていると思います。企業にとっては、反復更新をするなど、細切れ的に活用しつつ、仕事がなくなったり、ほかの何らかの理由でこれを解約するといった、フリーハンドを持って有期労働契約を活用しているのではないかと思っております。
 そういった意味では、有期契約の労働者側が雇用の不安定さを全部背負っているということから考えますと、負担の均衡を図るという意味では、労働者に対する何らかの経済的な支援が必要ではないか。我々は終了時に手当という形で支給されるべきではないかと思っているわけであります。
 現在でも、有期労働契約の終了時に、退職金的な手当を出している企業もあるわけでございますし、また、労働者の声としても、一時金あるいは退職金への要望が強いという調査結果もございますので、こういった労使慣行をこの際、広げていくような論議をできないかと考えているわけであります。
 また、リスクの分担という意味では、失業のリスクに対しては、公的なセーフティネットとしての雇用保険がその機能を果たしているわけであります。これは労働条件分科会での論議テーマではございませんけれども、我々としては、雇用保険の保険料のリスク分担についても検討するべきだと考えておりまして、これは別の分科会の中で有期労働契約で働く方の雇用保険の在り方についても論議をさせていただきたいと思っております。
 いずれにしましても、契約終了時に何らかの経済的な支援、手当を支払うということについても、今回の検討の全体的な枠組みの中で、是非検討をさせていただきたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 この点については、労働側も非常にアグレッシブな御提案をずっといただいておって、私どもは検討しているところなのですけれども、雇止め法理の救済について、その予測可能性が低いのではないかということについて、資料No.3-2の(3)のところで議論をしているところで、そういう点でいうと、雇止め法理を、先ほど来、労働側の委員も明確にということについては、非常に私どもは躊躇があるわけですが、雇止め法理の救済効果の見直しという観点での今の(5)のイについて考えるということについて、私どももまだ結論を出し得ないのですが、少なくとも、前向きに検討をしているところということで、現在のような雇止めが有効か、無効かという二者択一の解決方法以外の方法ということでの工夫というのは、ひとつとして検討すべきだと考えておりまして、合理的な解決を導くということの道筋になるのであれば、私どもも模索をしていきたいと。まだ結論は申し上げられないのですが、そういうふうには考えているということだけ申し上げておきたいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今、輪島委員から、雇止め法理について言及がありましたので、我々も前回申し上げたかもしれませんけれども、改めて見解を申し上げておきたいと思います。
 資料でいきますと、資料No.3-2の(3)のところに書いてあります。我々としても、雇止め法理については、判例として、職場の労使関係においても定着しているということもありまして、これは法制化について検討する必要があるのではないかと考えております。
 ただ、法制化するにしても、その内容でありますとか、規定の在り方については十分に論議を行っていく必要があると考えております。勿論、それに加えて、我々としては、雇止め法理が法制化されたとしても、その後の契約がどうあるべきなのかというところは、まだ論議がされていないと思っておりまして、雇止め法理が適用された後、その当該雇止めが無効となった後の取扱いについて、我々としては、期間の定めがない雇用に転化するものとすべきだと考えておりますけれども、それらも含めて検討させていただきたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 せっかく雇止めのときの経済的支援という話が今、話題になりましたので、その1つの代表で、外国の例としてはフランスがありますけれども、これについて事務局の方で改めて少し御説明いただけますでしょうか。お願いします。
○調査官 フランスで有期制度の中であります契約終了手当について、簡単に御説明します。
 過去の分科会の資料では、赤い仕切りの1つ目の後ろにある第83回の11月29日の労働条件分科会の75ページに、諸外国の法制の比較表がありますので、それもごらんいただきながらと思います。
 ここにありますように、これは、有期労働契約の期間満了時に、期間の定めのない契約での継続が使用者から提示されなかった場合に支払うもので、額は契約期間中に支払われた税込総報酬の10%とされています。
 この資料はこれだけですけれども、これはもともと有期労働契約研究会におきまして、有期労働者からのヒアリングなどをしながら研究した内容でございますので、そのときの資料なども踏まえて補足で御説明いたしますと、この手当は、契約終了後に労働者が不安定な状況に置かれることを補うことを目的とすると法律にも書かれております。
 契約終了手当と申しますが、労働関係が本当に終了する場合に加えて、有期労働契約として別途継続する場合にも払うということになっております。
 あと、今、10%という額の割合を申し上げましたけれども、これは労働協約により増額が可能とされております。また、例外的な措置となりますが、労働協約により職業教育に関する代償措置が提供される場合には、逆に10%を6%に引上げることが可能ということもされております。この手当は、有期労働契約について適用されるものですが、フランスでは締結事由規制ということで、締結事由が限定されていますけれども、その中で季節的雇用とか、慣行的有期労働契約、雇用政策として有期労働契約が認められている場合などは、この手当の適用除外とされているということでございます。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。御参考までにということでございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 フランスは有名なのですけれども、ほかの国の事例は、制度的または思想的に違うものという事例で諸外国のものはあるのでしょうか。
○岩村分科会長 事務局、お願いします。
○調査官 有期労働契約研究会などを通じて調べた外国の限りでは、似たような制度は見当たっておりません。
○岩村分科会長 フランスの場合は、今は変わったかもしれませんが、かつては例えば高齢者を解雇する場合にも、何歳より上か何かについては割増で手当を払えとか、拠出金を出せということを結構雇用政策の中でやってきたことがあるので、そういう発想があって、今、御説明のあったような手当というところに考えがいっているのかなという想像はできます。
 例えば今、言ったそれも、そういう制度をよかれとして導入すると、かえって年齢の前のところで解雇してしまうとかいうことが起きるので、必ずしも当初考えていた目的とは違うところに行ってしまうという指摘も、フランスの場合はなされていたと記憶しています。
 荒木委員、どうぞ。
○荒木委員 有期労働契約研究会のときの議論を御紹介いたしますと、ヨーロッパはどこでも、いわゆる出口規制といいますか、回数規制とか、利用可能期間規制をやって、有期労働契約から安定雇用の無期契約に誘導するという政策を取っている国が多いわけです。
 ただ、その場合の副作用としまして、何回とか何年、それ以上雇うと無期に転化するので、その前で雇止めをしてしまうという反作用が起こることがあります。その場合にフランスでは、無期に転化してしまえば、この有期労働契約終了手当は要らない。でも、その無期契約になる前に雇止めしてしまった場合には、まさに有期契約の不安定雇用という、ここでの議論で言えばリスクですね。雇用の不安定だというリスクが顕在化したものということで、全雇用期間の賃金の10%を、言わば不安的雇用の補償として払いなさいという形で、出口規制の反作用についての一定の補償を与えている例として、フランスの制度が紹介されて、ほかの国では見当たらなかったんですが、1つの考え方だなということで、注目したということがございました。
○岩村分科会長 ほかにいかがでございましょうか。
 村中委員、どうぞ。
○村中委員 経済的な支援のイの話ですが、あの話に戻ってもいいですか。
○岩村分科会長 戻っていただいて結構です。
○村中委員 先ほどちょっと雇止め法理の法制化の話も出ていましたので、現在の告示の内容について、若干気になる点もないわけではありません。それは、例えば何遍も反復更新をしてきて、最後の最後になって、次は更新しませんと明示しているケースとか、そのときに、そのことを通知書に書いたら、そのことの効果はどうなるんだろうかという問題とか、あるいは通知書の中でいろいろな雇止めをしますという理由を書きますね。それで非常に使用者側としてはいろんな可能性を考えて、こういう場合もある、こういう場合もあると考える。
しかし、実際に反復更新を何度も繰り返していって、いろいろ数字も書いてあったとしても、それが訴訟になって、解雇権濫用法理が類推適用されるということになると、そこに書いてあった事情というのが合理的な理由ではないと解釈されることもある。そうすると、せっかく書いてあったことに一体どんな意味があったのかということになってしまうわけです。
 今度は、その逆の労働者の側から見ると、いろいろ書いてあるから、これで自分としては雇止めをされてしまうんだと思ってしまうんだけれども、実際裁判所に行くと、必ずしもそうでもなかったということにもなるわけです。
 つまり、この辺りの話というのは、最初の通知の内容と判例ルールの間のギャップの更新統一に関する問題なんですね。多分、法制化という話をするときには、そこはしっかりギャップが生じないような形で何かを考えていかないと、その問題点は更に大きくなるのではないかという心配がございます。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 では、島田委員、どうぞ。
○島田委員 (5)というか(6)まで入ってしまうんでしょうけれども、今の村中先生の話を聞いていて思うんですが、労働側がずっと言っていることと同じなんですが、有期契約の労働者の方が増えている理由があるから、今、こういう問題が起こっているわけですね。実際、これが一握りの人であったら、こういう問題はないわけですよ。
実際は、先ほど言われたように、民法がつくられたときは解雇の自由がある時代につくられたから、今、民法のところの見直しもされてきているということですね。それと同じように、労働法だって、実際考えてみれば、有期契約の労働者を使われている理由が、多分解雇の自由があることと、ある部分労働条件を分離できているという部分の2つで使われているんだと思います。そういう意味で言ったら、我々から言えば、本当に有期労働というのは期間の定めがあるのだったら、その業務に対して期間の定めがあるはずなんだから、反復更新なんてないわけですね。
はっきり言えば、有期契約の場合、本来は3年までの契約ができるわけですね。だけれども、実際は6か月なり、1年の契約をされて反復更新しているのが現実なわけですよ。ということは、現実的に言えば、有期ではなくて、使いやすさだけで使っているという話ですね。3年の間にこの事業をするために要るんだったら、3年契約ですねと。開店の作業が忙しいから、4日間だけ契約しましょうということなら、まだわかる。ただし、現実は何の期間も関係なく、反復更新しながら、結局どこかで何かあったときに雇止めできる、あるいは労働条件を違うようにすることができるという話で使われている。だったら、やはり、いろんな部分での不安定雇用に対しては、きちんと法律的に守ってあげない限り、労働者は絶対にしんどいなと思う。
 だから、もしそういうことができないとするならば、ある意味で言ったら、すべて無期契約の雇用にしていただいて、何遍も言いますけれども、労働条件をどうするか考え直してもらった方が正しくて、本当の有期というのは、そういう短期なり、ちゃんと時期がわかっているものだけやれば、反復更新なんてないわけですね。1回か2回計画が狂ったから更新しましたというのだったら、多分ここの議論だってころっと変わってしまうわけですね。そのようなことであれば、特別のルールは要らないね、法律は要らないねと。でも、本当に5回も更新するんだったら罰則だねという話は、厚労省もわかるわけですね。だから、そこの部分がはっきりしない中で、全体をひっくるめて、今、千何百万人といらっしゃる有期契約の労働者のことを想定して話をしていると、やはり労働側から言ったら、全部強化しないと守れないよという話になってしまうのは事実かなと思っています。
 だから、もう一度言いますけれども、労働側からいけば、すべて無期契約の雇用にしていただくことで、あとは中の労働条件とか、それは別の話ですね。みんな同じ制度というのはだれも言わないわけですから、正社員とか有期という形ではなくて、無期の雇用を大前提としながら、有期というのは限られた人しかいないですということを、ここの分科会ではどこかでやらないといけないのではないか。それが決まれば、話はいろんな見方が出るのではないかと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。多分、今日資料No.3-2のペーパーでいうと、(6)その他というか、今までの議論全体ということだと思いますが、そちらにお話を持って行っていただいても結構ですので、何か今までの部分も含めてございましたら、お願いいたします。
 工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 ありがとうございます。今の議論の補足になると思うんですが、先ほどのフランスでの契約終了に対しての経済支援の話でありますとかを見ても、要は入り口規制がしっかりしている、締結事由がしっかりしている中において、それができなかった場合であるとか、原則として、基本的には無期を推進していく中で締結理由がしっかりしている中において雇止めされる場合において、この10%なりが払われていく。
 今回議論しているのは、経済的支援の必要性という観点ではなくて、ある意味、罰則に近いような形での金の支払い方ではないかと見えるんです。要は、こういうことを議論する大前提として、やはり無期を前提として物を考えていって、その中において有期というのはこういう仕事なんだよと。そういうのがきちっと確認された上においては、こういう議論が有益に働くと思うんですが、やはりそこの前提のところがきちっといかないと、なかなか議論にならないなという思いで議論をさせていただいております。
したがって、やはり無期というのを物の前提として考えながら議論をすべきであろうと思っています。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員 先ほどの30日前の予告雇止めも9割あるということで、恐らくこれは類推適用を含めて、御本人さんの事情であったり、会社の事情もあるのでしょうけれども、そういうことも含めた30日前という要素が多分に入っているのではないかという感じが、私の感覚からいうとしております。
 ですので、フリーハンドということではなくて、きちっと法制の手続は踏まれているんだろうということと、実は私どもの会社ですと8割が有期なんですね。当然ながら、短時間の契約の有期の方もいらっしゃれば、パートタイマーですからフルタイムはいません。そうしますと、大体45歳か40歳以降で家庭に入って見える方が勤務を始められるというケースが多分にございまして、40歳以上で大体8割ぐらいの構成要素なんです。
 実質、勤続といいますと、やはり5年。平均すると5年ですけれども、1年間で当然長い方も辞められて、新たに入った方も辞められ、いわゆる応募の自由ということと、採用の自由といったことの中で1万3,000人いる中で2,000ぐらいは退職をされております。我々の場合は営業時間が決まっていますので、当然、時間帯の繁閑、季節の繁閑がありますから、朝の仕事、夕方の仕事という切り分けで、それをすべて正社員がやるというのは非常に効率も悪いし、ロスになりますから、できる仕事、役割分担をしていただいているということです。一時的、臨時的ではなくて、その価値の仕事を担っていただいて、それを希望されて採用しているということでございます。
ですので、そういう実情が業種、業態あるいは個人によってあるんだろうなということを前提に考えていかなくてはいけないと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。資料No.3-10です。
 島田委員がおっしゃるところは、私どもも理解をするところなんです。ただ、それを状況としてどういうふうに切り分けるかという話だと思うんですけれども、2007年のところだけで言うと、統計的には臨時非正規が13.5で、ここの傾向としては余り変わっていないだろうと思います。増えているのは、常用雇用の非正規というところです。だから、ここが問題です。
 ただ、島田委員がおっしゃっているのは、13.5と22を足して35全体も無期という話なのか、それとも常用雇用、非正規のところだけの話なのかという話と、私どもも何回か申し上げているんですが、つまり、統計的には常用雇用になっていて、1年以上の雇用が続いている。そこをどう考えるのかというのが論点だと思います。ただし、もう一方の統計でいうと、7割が事業所としては雇止めをしたことはないということなので、ということは、基本的には常用雇用として雇用が安定しているということで、企業としても長く働いてほしいし、労働者としても事情があって退職をしているケースが、統計的に言うと7割か8割ぐらいあるのではないか。そうなると、22の中の7~8割ぐらいは除いて、それの中の不合理、不適正な理由は何なのかという議論で整理をするというのはよくわかるんですけれども、そうではなくて、そのまま22全部は常用雇用なんだから、期間の定めのないものになる。もしくは何々とみなすということになると、私どもで言っているようなベースのところが違ってきてしまうので、多分議論の結論が違うんだろうなとずっと思っていたんです。
 なので、有期研で言っていた当初、指摘をした不合理、不適正な利用というのはどこなのか。その臨時的・非正規労働者のところは、今度の有期の話からは除いた話なのか、入っている話なのかということも含めて、今後は整理して議論をしてほしいなと思っています。
○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 先ほどの伊藤委員の御発言と、今ほどの輪島委員の御発言について、これは本分科会で議論を始めたときに、この有期契約の現状について随分論議をしてきた内容だと思っております。今、御指摘をいただいた資料No.3-10にしても、これはどういう統計の取り方なのか、今までの統計とは違う統計で出されておりますので、それをどう分析するかというところはあると思います。
 ただ、我々は何度も主張しておりますように、使用者側の委員とかみ合わないのは、結果として反復更新されたから、それをもって有期労働契約は雇用が安定しているんだという論理には、全く賛成できないし、それは大きく実態を見誤っているのではないかという認識は、私どもは持っております。
 有期契約労働者が、何人おられるかという論議は大分させていただいて、1,750万人の非正規の中の一体何人なんだという正確な数字が取れないということでありました。多分1,200万人以上1,750万人以下というところになると思いますが、それを一くくりにくくれないところはあると思います。いろんな類型の方がおられると思いますので、それぞれの類型で一体課題は何で、それを立法的にどういう法政策として対応しないといけないのかということについては、これから論議をさせていただきたいと思っております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 三浦委員、どうぞ。
○三浦委員 改めて言っておきたいんですけれども、どうしてもいろんな部分の中で、有期契約労働者のみが不安定な雇用であるという前提に立っているところがある。本当のそうなのかということは、中小企業の立場から見ると考え付かなければいけないと思います。
 もう一つは、働く人たちの側から見て、無期を前提にして働く。本当に全員が無期を前提にして働いているのか。有期を前提にして働いて、一定の期間働いた後、職場を辞めていくということもあると思うんです。
実際に、確かに有期で反復継続して長く働いている人もいる。そういった人もいるでしょうけれども、そうではなくて、有期で例えば2~3回の契約更新、年数で言うと5年とか6年で辞めていく。そういった働き方を選択する人たちもいるということを考えると、一律に労働契約の人は無期のみだとすることというのは、勿論経営側にとっての問題もあるんですが、労働側にとっても本当にいいのかどうかということも考える必要があるのではないかと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
大体全体を振り返る程度の議論ということを最後にしていただいたように思います。もし特段更に御発言がなければ。そう言ったら皆さんお手を挙げましたね。
 それでは、今は使側が発言されたので、工藤委員からお願いします。
○工藤委員 ありがとうございます。
 まず、有期、無期の話なんですが、やはり不安定というのは、人間として嫌うものだと思います。そういう意味において、資料No.3-10を見てもわかるように、正規労働者の方が圧倒的に多く働いているという現実を考えた場合に、雇用というか、生活を安定させたいという点でいうと、無期の雇用を望む声が多いと我々は認識しております。それがこの国が発展してきた流れというか、形でもあると思うんですが、長期の安定雇用を前提としてさまざまな産業が成り立って、いろんなことを行ってきた。技術革新なり、技術研さんなりが行われてきた。それを基に、諸外国とともに技術的にも戦ってきたという国なのかなと思っております。やはり、そこを前提として物を考えなくてはならないのではなかろうかというのが思いであります。
 あと、全般的なところで、資料の1の2の2.とか、労使の合意によりいろいろとやっていかなくてはならないみたいな議論もありますが、実態として、今の労働組合の組織率とかいうことを考えたときに、本当に可能なのかどうかというところも問題としてあります。有期労働契約の問題で労使の自治が機能する場面というのは、必ずしも多くはないのではないかということも考えておりますので、付け加えさせていただきます。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 先ほどお手が挙がりました、田中委員。
○田中委員 雇止めの予告とか、雇止めの理由の明示ということを何でやらなければいけないのかということを考えると、これは有期、無期に関係なく、働いておられる方たちが安心をして働いていただくためには、こういうときに雇止めがある、あるいはこういうときに解雇という事象が発生するということを事前にはっきりさせておくことが非常に大事だと思うんです。このことは、働いておられる方だけではなくて、働く場を提供させていただく側にとっても、安心して働いていただくためのある仕組み、フレームではないかと私は理解をしております。
先ほど来いろいろ議論になっています資料No.3-5の12ページ等を拝見しておりますと、ある一定の規模、ある一定の割合の方は30日、あるいは1~29というのがどのぐらい前かというのは微妙なところでありますが、事前に書面なり、口頭なりで雇い止めに関する明示を受けておられる。しかし、結果的に、契約当日とか、ぎりぎりになってそういう状況が起きる方たちというのが、少数ですけれども、ある一定の割合おられる。
 もしこれを法制化したとしても、多分最後の契約満了当日とか、ぎりぎりになってというケースが起きる可能性は、ゼロにはなかなかならないと思います。使用者側の方の突発的な経営上の事情によるものもあるかもしれません。であれば、そういったケースが救済される方法をきちんと考えておく方が、働いていただく側にとっても、職場を提供させていただく側にとっても、法制化の議論よりも大事なのではないでしょうか。
 もしそういったケースが使用者側の不合理な理由による雇止めであれば、現在も、裁判で議論がされています。場合によっては経済的な支援という議論も必要かもしれないと思います。
先ほど来の議論をいろいろ私自身も考えさせていただいているんですけれども、基本的には、この法制化あるいは大臣告示をどうするかという議論もさることながら、どうしてもそういう事態に陥らなければならない状況に双方がなったときの救済策というのを具体的に少し検討していった方が、実際働いている人にとっては、安心感を持って働いていただけるのではないかと考えました。
 以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 田中委員から御発言いただいたことと関連いたします。本当に安心して働ける環境をどのように法政策としてつくっていくかというのは、まさしくこの分科会に与えられた使命だと思っています。
 先ほどの民法と労働法の関係もあったように、明治時代にできた民法の解雇自由の世界を戦後、労働法がいろんな規制をして、労働者保護を図ってきた。その中に解雇規制、解雇予告手当というものが定められて、30日前の予告、あるいは手当ということが決められたと思います。それはそれで、労働者を保護するということからできた内容だと思っておりますが、やはりこの有期の方々の雇止めについても、我々としては、そういった労働者保護的な規制を更に強化するべきだと考えているわけであります。
 そういった意味では、先ほど申し忘れたんですけれども、大臣告示の法制化に当たって、今あるのは雇止め予告だけでありますが、予告がない場合の措置についても、例えば雇止め予告手当の30日分の手当を支給するといったような追加を検討するべきではないかと考えております。また、今は大臣告示には入っておりませんが、期間の定めのある契約を締結する場合の理由の明示も、これは前回、3月8日のこの分科会でも主張した点でありますが、これについて規定の在り方について検討するべきだと考えております。仮に理由の明示がない場合の私法上の効果についても、併せて労働契約法の中でどのような取扱いをするのかということについても、是非検討をいただきたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
 2つだけ整理をお願いしたいと思いますが、まず、今、新谷委員がおっしゃったのは、理由の明示と締結事由を入れるということの違いが、私どもにはほとんど同じように聞こえるのですけれども、法的に違いがあるのかどうかということ。
 理由の明示をするということは、いわゆる入り口規制と締結事由規制と同義だと思っておりますので、その点について整理していただきたい。
 2点目は、今、おっしゃった資料No.3-2の(6)のアの(1)~(5)の相互関係というところなんですけれども、今、労働側の委員全体で(1)~(5)までというのは、すべてさまざまなものを導入すべきということなのですが、(1)~(5)の相互関係からすると、すべて入れろという御主張で理解すればよろしいのでしょうか。濃淡とかいうようなものが全くなく、非常にきつい規制を入れると理解をしているのですが、その点、私どもの理解に間違いはないのかどうかを教えていただきたいと思います。
○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今の大臣告示の中には、更新の有無と更新するしないの判断基準ということのみが締結時の明示事項としてあるわけでございます。我々としては、そこにまさしく輪島委員がおっしゃったように、入り口規制との関係で非常に関連性が強くなってくると思いますけれども、なぜ期間の定めのある契約なのかということについて明示をしていただきたいと考えているわけであります。
 それはまさしく、入り口規制が今後論議をされる中で、当然関わってくる内容でありますけれども、我々としては、なぜ有期なのかということの明示を求めていきたいということでございます。
 それと、(6)の相互関係についてどう考えるのかということでありますけれども、我々はずっとこの分科会で申し上げてきておりますように、有期契約労働者の保護のために、あるべき施策というのはこうだということで、多くの内容を申し上げております。今後、中間的な整理がされて、年末に向けてこの分科会の中でどのような報告案を作っていくのかという中で、それぞれ労使が折り合えるところを考えていく必要が出てくると思いますが、現時点では、労働者保護のための施策を盛り込んでいる。
 もっとも、入り口と出口の関係というのは、片方が決まれば、もう片方はまた違う見解になるというように、相関関係があるものでありますから、これらについても、今後この分科会の中で検討させていただきたいと思っております。
 以上です。
○岩村分科会長 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 理由の明示については、初めての御見解だと思います。そうではないですか。私どもは初めてだと思ったので、非常に重要な点だと思います。
 先ほど申し上げましたように、締結事由規制と理由の明示の違いというのがよくわからないので、その点については明確にした上で、脊髄反射としては、どうもいい話ではないなと思っております。
 それから、有期権の議論の中で、この論点としてワードとして漏れてしまっているのは、クーリング期間の設置ということです。ここも更新ではなくて、契約の満了と新しい契約。それが1日違いだと、それを更新と言うのか、違うのかということについても、一応整理をしたいと考えているところです。
 とりあえず、以上です。
○岩村分科会長 ?松委員、安永委員お願いいたします。
○?松委員 研究会報告の中では取り上げておられない事項なんですが、更新時の労働条件の在り方について、少しお教えいただきたいなと思っています。どうしても有期労働者は雇用調整しやすい労働者層という受け止め方が強いわけでして、次期の更新に向けて、労働者自身も大きな不安を抱えているのだろうと思っています。
 ただ、そのようなときに、次期更新に向けて、それまでの状況よりも低い労働条件の提示の中で更新を迫られる。そういった形の労働相談も持ちこまれています。とりわけ、未組織の労働者がこのような場面に遭遇した場合に、どのような形で問題の解決を図るべきなのか。あるいはこれまでの裁判例などで、どのような形で解決が図られてきたのか。そういったことについてお教えいただきたいし、公益委員の皆さん方のお考えがもしあれば、お聞かせいただきたいなと思います。先ほどの実態調査の中身を見ましても、明示等々については記載がありますが、明示の中身まではなかなか触れられていませんので、今後の在り方についてお教えいただければと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 安永委員、どうぞ。
○安永委員 クーリング期間の話がありましたので、その部分に絞って発言をしたいと思います。基本的に、クーリング期間は設けるべきでないという意見を申し上げておきたいと思います。労働者派遣においても、クーリング期間さえクリアーすればいいんだということで、同じ労働者を派遣と請負とを交互に繰り返すといったようなことも相次いでおりましたし、そのようなことを考えると、何のためのものなのかということになりますので、そのように思います。
 使用者側にとっても、クーリング期間を設けた場合に、いろいろなリスクがあるだろうと思っています。労働者に対してさまざまな情報が不足し、それによって技術革新への対応ができないという、スキル管理も困難になっていくということなどもあるのではないかと思いますし、人事管理上もかなり複雑なものになってしまうのではないかと思っております。
 さらに、クーリング期間を仮に設けた場合でも、それを違反した場合の効果というところも考えなければいけないと思っておりますので、それらのことを考え合わせると、クーリング期間は設けるべきではないと考えております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 ?松委員からの御質問の件については、また事務局と私の方で相談させていただいて、対応を考えさせていただきたいと思います。
 伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員 今日初めてなものですから、論議がかみ合わなくて済みません。
 また戻ってしまいますが、やはり雇用の不安定化、あるいは仕事の価値との処遇対応の格差といいますか、どのグループなのかということを本当にはっきりさせて論議をしないといけないだろうなと思います。
 先ほど申し上げましたけれども、私のところは8割が有期ですので、有期の方の安定と不満が多いと、事業経営は成り立ちません。当然ながら、その中で利益を出して、経営をしているという現実もそのものがあるわけですから、有期の契約者のどこが問題なのかということを明確化して、詰めていくことが正しいのではないかという感想を持ちました。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 実は、今日もう一つ議題を用意してございますので、もう時間も来ておりますものですから、そちらに進みたいと思います。
 次の検討項目といたしまして、契約期間中の処遇や雇用管理等に関する論点というのがございます。今日はもう時間が余りございませんので、この論点について、事務局の方で資料を用意していただいているものですから、それについてまず説明をいただきます。今日は、この資料の説明だけをいただくということにさせていただきたいと思います。
 では、事務局の方でお願いをいたします。
○労働条件政策課長 資料No.3-8以下でございます。
 まず、資料No.3-8は、先ほど議論いただいた資料No.3-2と同様、事務局の方で整理をさせていただいた資料でございます。
検討の論点として、契約期間中の処遇や雇用管理等関係の中で「(1)均等・均衡待遇について」、2ページ「(2)正社員への転換の推進について」及び「(3)その他」について御議論をいただくということで御了解をいただいております。
 「(1)均等・均衡待遇について」の論点の考え方について整理させていただいておりますのが1ページ目でございます。ア、イ、ウと分けさせていただいております。
 アは、有期契約労働者と、期間の定めのない契約で雇用される労働者との間でどのように均等・均衡待遇を推進するのか。あるいは推進するに当たっての考え方について、どういう立場に立つかということを分けさせていただいております。
 1つ目のポツは、期間の定めの有無にかかわらず、労働者はすべてにおいて均等に取り扱うべきであるとの考え方。期間の定めの有無を理由として処遇を変えないという考え方でございます。
 2つ目のポツは、それに対応する考え方であります。有期労働者というのは、無期と比べて中長期的な人材活用の見通しが違う。あるいは賃金水準が労働市場の需給関係によって影響を受けやすい。すなわち、賃金の決まり方が違うということで、そういう観点からaとbの視点が出てくるのではないか。
 aは、期間の定めの有無にかかわらず、例外なく均等に取り扱うことは困難なので、勤続期間などの要素による処遇の差異は認めてよいという考え方。
 bは、そもそも賃金水準の決まり方などが違うことから、比較することが適当でないとする考え方。
 3つ目のポツは、上の1ポツ、2ポツの考え方については、待遇の種類によって違うのではないかということでありまして、賃金、教育訓練、福利厚生施設を利用を挙げさせていただいております。2ポツで賃金水準が違うから比べられないという考え方であっても、教育訓練や福利厚生施設の利用などについては、事業所内において有期と無期を均等あるいは均衡に扱うべきではないかという考え方も成り立ち得ますので、そういう視点で3ポツ目を書かせていただいております。
 イにつきましては、有期契約労働者と均等・均衡待遇を考えるときに、どのような労働者を想定するかということでございます。
 1つ目のポツは、同じ事業場内、企業内で期間の定めのない契約で雇用される労働者と比べる。必ずしも正社員と比べるわけでなく、同種の期間の定めのない契約で働いている方と比べるという考え方でございます。
 もう一つは、同一事業場内、企業内のいわゆる正社員、期間の定めがなく、フルタイムで長期雇用を前提に働かれている方という方を想定して、均等・均衡を議論するという考え方。この両者があるのではないかということでございます。
 ウは、アとイについていろいろ結論が出されたとしても、その均等・均衡待遇を推進する場合の具体的な手法はどうかということについての考え方でございます。
 1つ目は、契約期間の定めの有無にかかわらず、処遇について合理的な理由のない差別的取扱いを法令により禁止するという考え方。逆に言いますと、差別的取扱いを禁止するということ以外は、何が合理的な理由に該当するかは司法判断によるとの考え方が1つあると思います。
 次は、均衡のとれた待遇の確保のために講ずべき措置をある程度具体的に法令に書いて推進するということであります。
 3つ目は、具体的な均等・均衡待遇の推進策については、労使自身に委ねるべきとの考え方であります。この場合、行政手法としては、助成金等のソフトな推進策が併せて講じられる場合があろうかと考えます。
 4つ目は、均等・均衡待遇につきましては、パート労働法でさまざまな規定がありますけれども、この枠組みを参考とするという考え方でございます。すなわち、労働者の職務内容等がかなり異なるので、パートタイム労働法の枠組みを参考に、有期労働者が仮に正社員と同視すべきような場合、これがどういう場合かというのは、また議論がございますが、正社員と同視すべきような場合に均等待遇を行う。その他の場合については、正社員との均衡を考慮しながら待遇を決定し、その待遇については説明責任を課すという考え方があるのではないかということでございます。
 「(2)正社員への転換の推進について」です。これについてもア、イ、ウと分けさせていただいております。
 アは、正社員転換の推進についての基本的な考え方でございます。
 1つ目のポツは、意欲と能力に応じて正社員への転換を推進していくというのが重要だという考え方。
 2つ目のポツは、有期契約労働者の職務内容、人事活用の仕組みはさまざまなので、正社員の転換を一律に推進することはなじまないとの考え方でございます。
 イは、転換先の労働者としてどのような労働者を想定するかということでございます。転換先として、いわゆる正社員、これは先ほどの正社員の定義でございますが、正社員への直接転換を推進すべきという考え方が1つあろうかと思います。
 その次に、意欲と能力にある有期労働者が不安定な地位のままで固定されないようにするために、正社員も含めますが、より安定的かつ良質な雇用形態へ段階的に移行していけるような仕組みが必要ではないかという考え方。
 3つ目は、責任や拘束度の面から、必ずしも正社員を望まない有期労働者もいるということを踏まえ、いわゆる正社員に限らず、希望に合った雇用機会を整備していくという考え方が妥当ではないかという3つの考え方があろうかと思います。
 ウは、こうした正社員転換をどのように推進するかということでありまして、一定の措置を法令に掲げて推進する考え方と、一方で、労使に措置を委ねて、これも助成金などで支援するという考え方であります。
 「(3)その他」は、相互関係等についてでございます。
 別紙1については、これも締結終了関係と同じように、問題の局面を図で示させていただいたものでございまして、御参考いただきたいと思います。
 別紙2については、それぞれの論点に係る実体面、手続面、その他の面ということで、議論のテーマを例として掲げさせていただいております。
 資料No.3-9につきましては、均等・均衡待遇の問題が、先ほども申し上げましたように、パートタイム労働者とフルタイム労働者の間で問題になるということと、今回有期契約労働者と無期契約労働者の間の均等・均衡を議論するということの関係について、マトリックスをつくってみました。労働時間と雇用契約によって、4つの種類に分けられます。
 ?の中に正社員あるいは無期のフルタイムが含まれております。今回の場合は、?と?の方々について均等・均衡待遇、あるいは正社員転換についてどのように扱うべきかを議論するものであります。
 一方、パートタイム労働法などで議論されてきておりますのは、主に?、?に属する方々でございます。結果として、?につきましては、対象者が重なるということでございます。従来、この分科会でも議論がありましたように、こういった関連もありますことから、この論点につきましては、他の分科会で議論される均等・均衡待遇の議論とも調整を行う必要があるということでございます。
 それから、特に均等・均衡に限らない資料として、幾つか付けさせていただいています。
 資料No.3-10につきましては、先ほど議論になりましたが、就業雇用構造基本調査での正規と非正規の構成の変化でございます。最近、特に常雇(1年超の雇用契約で雇われている者、又は期間の定めのない雇用契約で雇われている者)が増えてきている状況がわかります。
 資料No.3-11につきましては、これも従来の議論の中で取り上げられた部分がございますが、若干古いのですが、ヨーロッパでの98年~2001年までの間のテンポラリーからパーマネントへの雇用形態の移行の割合。これはOECDの方で調べられたものでございます。テンポラリーからパーマネントに行く割合の方が、テンポラリーからテンポラリーの割合よりも、各国において高くなっているという現状があります。
 さまざまな前提は違うのですけれども、日本の場合の調査、これも就業構造基本調査の19年、14年のものを引っ張り出してきまして、マトリックスにしております。日本の場合、非正規→正規という動きが26.5%。非正規→非正規という動きが73.5%となっております。
 この特徴は、2ページで男女別に見て、かなり傾向が異なっていることがわかります。男の場合、非正規→正規の割合が40.5%と平均よりも増えてまいります。一方で、女性の場合は非正規→正規の割合が20.4%ということでございます。
 参考までに、女性の正規から非正規の状況を見ますと、これも男性の倍近い状況になっておりまして、男女で特徴的な動きが見られます。
 3ページは、雇用動向調査で、同じ事業所内で有期労働契約から無期への転換をされた状況でございます。過去5年間において無期への転換をされた人数が男女別で示されておる数字でございます。
 4ページは、正社員転換制度の導入と転換実績について、非正規の形態別に調べたものでございます。それぞれ正規の形態別に調査が違いますので、単純比較はできませんけれども、正社員転換制度を導入している場合に、実際に正社員転換の実績が出てきているという状況が有期労働者などでは顕著に見られております。
 資料No.3-13につきましては、以前、パート法第8条の均等待遇に関する規定を引用して、それを踏まえて待遇についての採用、不採用について不法行為は成立するかどうかを議論した判例があるということで、京都市女性協会事件の御指摘がありましたので、参考判例として追加させていただいております。
 資料No.3-14につきましては、自治体のサービスとか中小企業についての有期の雇用の実態について調べた資料はないかという御指摘がございました。かなり細かい状況でございますけれども、現場の細かなヒアリングをした調査結果がございましたので、これも参考までに付けさせていただきました。
 資料No.3-15につきましては、2月3日の分科会で、本年度有期労働契約に関する実態調査を行うことで御了解をいただきましたけれども、東日本大震災が発生しました関係で、その内容について一部変更をさせていただきたいということの御説明でございます。
 「1 事業所調査」で説明しますけれども、岩手、宮城、福島の3県については被災地ということで、調査対象から除外させていただきたいということでございます。
 「(3)調査事項」の※ですが、雇止めの経験のある事業所に対して、その理由を質問する場合に「震災の影響のため」という項目を追加し、震災の影響の部分とそうでない雇止めとが区別できるような対応をさせていただきたいと思っております。個人調査についても同様の質問項目を追加したいと思っています。
 こういう形で実施を考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 今、御説明いただきました契約期間中の処遇や雇用管理等に関する論点については、今日は資料の御説明をいただいたということで、これだけにさせていただきたいと思います。
 最後に資料No.3-15ということで、以前この分科会で実体調査を行うということで、今年6月に行うということで御了承をいただいていた調査についても御説明をいただきました。ただ、皆様御承知のとおり、東日本大震災という事態が発生しました。
 ただ、私としましては、震災後の実態も把握した上で、この場における有期労働契約の在り方についての議論を進めていく必要があるのではないかと思っているところでございます。そのためには、若干スケジュールを後ろ倒ししてでも、やはり調査を実施する必要があるのではないかと考えているところでございます。
 そこで、調査時期、調査地域を今、説明がありましたように、一部修正した上で、当初のとおり、この調査については行いたいと考えておるところでございますが、よろしゅうございましょうか。
 工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 ありがとうございます。
 前回実施したこの調査は、リーマン・ショックの直後だったということなどありまして、今回、調査を実施することは必要だと考えております。しかし、東日本大震災の影響を調査対象から外すということが、この被災3県を除くことで得られるのかどうかということに関しては、ちょっと疑問があります。特に(3)調査事項の中で理由を質問する項目に「震災の影響のため」という項目が追加されております。確かに被災3県以外でも、地震や津波で直接事業所が被災したことで雇止めを行わざるを得なかったようなケースもございますが、全体として見まして、サプライチェーンが壊れたりとか、節電対応なり、さまざまな影響がありまして、被災の影響というのは幅広くあり、加えて風評被害とか自粛モードなどもありまして、すべてが震災の影響のためと回答しかねないなという点も懸念されます。調査の実施時期でありますとか、調査の集計、分析の方法に関しては留意が必要だと考えております。
 以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。貴重な御指摘だと思いますので、分析の段階でどうできるかということは検討させていただければと思います。
 そのほかいかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、時間になりましたので、本日はこの辺りで終了とさせていただきたいと思います。今、資料の説明がありました契約期間中の処遇、雇用管理等に関する論点につきましては、次回以降、具体的に議論させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 最後になりましたが、事務局の方から何かございますでしょうか。
○労働条件政策課長 次回の日程につきましては、調整の上、お知らせしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了させていただきます。
 議事録の署名でございますけれども、労働者代表につきましては島田委員に、使用者代表については田中委員にそれぞれお願いしたいと思います。
 本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。これで終了いたします。

(了)

労働条件政策課
企画係(内線5353)

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