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2010年7月27日 第6回労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成22年7月27日(火)14:00~18:00


○場所

経済産業省別館821号会議室


○議事

○森中央じん肺診査医 本日は、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。ただ
いまから第6回「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」を開催させていただきます。
前回の検討会から事務局に異動がありました。職業性疾病分析官と課長補佐が新たに就任しておりま
すので、それぞれ挨拶をさせていただきます。
○古田職業性疾病分析官 労働衛生課職業性疾病分析官にこの4月より参っております古田です。先生
方には大変お世話になりますが、よろしくお願いいたします。
○田原労働衛生課長補佐 労働衛生課課長補佐としてこの7月より参りました田原です。よろしくお願
いいたします。
○森中央じん肺診査医 労働衛生課長は公務のため遅れておりますので、大変申し訳ありませんが先
に議事を進めさせていただきます。以降の議事進行は櫻井座長にお願いいたします。
○櫻井座長 議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○森中央じん肺診査医 資料の確認をさせていただきます。議事次第があります。資料1「今回のリス
ク評価結果をふまえた特殊健康診断等について(案)」、資料2「健康管理手帳の交付対象業務の追加
に関する論点整理(案)」です。
 参考資料1「化学物質に係るリスク評価の結果、措置がなされるまで」、参考資料2「平成21年度化
学物質のリスク評価検討会報告書概要」、参考資料3「44物質の健康影響等について」、参考資料4
「労働安全衛生法に基づく健康管理手帳について」、参考資料5「ニッケル化合物・砒素及びその化合
物にかかる健康障害等について」です。なお、参考資料5の中の47頁に参考1があり、その次が49頁
に続きます。48頁に参考2とありますが、これは1枚差し込まれてしまったもので、参考2の続きは
58頁に続きます。参考2が1頁だけ差し込まれてしまいましたので、委員の先生方には参考資料5の
後ろに3参考2の3枚を添付させていただいております。参考資料6「健康管理手帳交付対象業務等検
討結果報告」、参考資料7「労働安全衛生法等の参照条文」です。参考として、検討会の開催要綱、参
集者名簿を付けております。
○櫻井座長 議事に入ります。議事1「労働安全衛生法における特殊健康診断等の健診項目について」
を事務局から説明をお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 私は、化学物質対策課化学物質評価室でリスク評価を担当しておりま
す長山です。化学物質に係るリスク評価の結果、措置がなされるまでの一連の流れを参考資料1と参考
資料2の2つで説明させていただきます。まず参考資料1です。化学物質対策は、化学物質対策課とし
ても安全衛生法の中に特化則なり有機則を作ったり、あとはさまざまな事業場への支援という形でい
ろいろ対策をとっています。その一環として、リスク評価制度を運用しております。この制度は、化
学物質の有害性とばく露両面の可能性を考慮し、化学物質を管理していこうということで、平成18年
からこの制度をスタートしております。
 毎年、その年その年で一定数の化学物質についてリスクが高い、低いというものを評価して報告書
を出しております。平成21年度1年間かけて行った分については、今月20日に報告書をプレスリリー
スしました。それが参考資料2です。こういう形でその年度分の報告書を毎年出させていただいており
ます。今回その報告書の中で、今後具体的な措置を検討すべきであるとされた4物質が挙げられており
ますが、そういうものが選ばれていった経緯についてご説明させていただきます。
 リスク評価の流れですが、11頁の上段に括弧書きで【化学物質の取り扱い状況の把握】とあります。
左側書いてあります、「企画検討会」という、リスク評価に係る委員会において、どういう物質をリ
スク評価の土俵に乗せていくかを検討していきます。平成21年度までに対象としてきた物質はここに
書いてありますように、発がん性の観点に基づいて選定してきました。IARCでGroup1とかGroup2、EU
の評価結果において発がん性が指摘されているものの中から選んできていました。
 今回、措置の必要性が挙げられた4物質については、平成19年に44物質を告示で定めており、平成
19年の冬にはこういうものをリスク評価していきますということを示させていただきました。このよ
うに示させていただいたものについては、事業場に周知し、1年間で500?s以上使うと、矢印の上にあ
るとおり「有害物ばく露作業報告」を事業場から提出していただきます。次は、そういう情報を基に
「リスク評価検討会」で、有害性と実際のばく露の両面はどうなっているかを検討していく流れにな
ります。
 リスク評価は、いままでやり方が変わってきているのですが、いまの段階としては大きく2段階の評
価を行っております。左側に「初期リスク評価」、右側に「詳細リスク評価」とあります。1年目に初
期リスク評価を行っています。2年目には、その中から詳細リスク評価ということでさらに細かく見て
いく2段階になっております。今回の4物質でいうと、平成20年度には44物質のうち20物質につい
て初期リスク評価を行いました。その物質の有害性を調査し、実際にばく露作業報告で挙がってきた
情報や、その中で一部は実際に事業場へ行って測定を行い、そういう結果に基づいてリスクが高いか、
そうでないかを判断していきます。これを、1年目に20物質について行います。
 そのうち7物質については、健康障害に係るリスクが高いと判断されるということです。そのリスク
の高い作業を明らかにすることが必要ということで、次年度に詳細リスク評価を行うことということ
で評価をされます。それで、右側の詳細リスク評価を2年度目の平成21年度は7物質について評価を
行ってきました。この2年度目には追加調査を行い、ばく露の状況などを調べた結果、今回平成21年
度の報告書が取りまとめられましたが、そのうち4物質については措置の必要性があるということで報
告をいただいております。
 この4物質については、こちらの絵にあるとおり矢印で下の段のほうに行き、【措置の検討】という
ことで作業環境管理・作業管理、労働者に対する健康管理というものの措置について検討していく段
階になります。
 上の作業環境管理・作業管理については、右側にあるとおり1番の「化学物質の健康障害防止措置に
係る検討会」のほうで、例えば作業主任者が要るのか要らないのか、局所排気装置や作業記録が要る
のかというものも検討していきます。もう1つは、「管理濃度等検討会」で、その作業環境測定が必要
となったものについて、管理濃度を設定していく流れになりますので、そういうものを検討していた
だきます。そして、労働者に対する健康管理の部分がこちらの検討会となります。
 制度を説明させていただきます。12頁でリスク評価の制度ですが、経緯としては労働者がさらされ
ている有害な化学物質の有害性とばく露の可能性を考慮し、化学物質を管理していこうということで
行っております。そういう評価結果に基づいて、リスクが高いと評価されたものについては、真ん中
の目的にあるとおり、そういう製造・取扱いに対し、法令による規制とか行政指導を行っていき、リ
スクに応じた取扱いをしていただくことにつなげていくということでやっております。
 リスク評価のいままでの実績ですが、平成18年から始めていて、平成21年までにおよそ80物質を
対象としてきております。そのうちリスク評価に着手し、終了していったものが49物質あるというこ
とで、さまざまな評価をずっと行ってきました。
 13頁ですが、いままでリスク評価を行ってきた中で、リスクが高いとされたもののうち、以前に評
価されたものについて、例えば平成19年度ではホルムアルデヒド、ブタジエンといったものの特化則
への改正ということで強化されています。平成20年にはニッケル、砒素については特化則で追加する
などといった措置の強化を行ってきました。
 14頁で、2番目としてリスク評価の検討の体制ということで、化学物質評価室で検討会を行っており
ますが、大きく3つの検討会に分かれています。いちばん上の企画検討会、真ん中のリスク評価検討会、
いちばん下の防止措置に関する検討会ということで、この上から下へという流れになっております。
企画検討会で、どういう物質を対象にしていこうかと、土俵に上げていこうかと。それで集まった有
害性情報、ばく露情報を真ん中のリスク評価検討会へと。その中に設けられている有害性とばく露の
小検討会で、リスクが高いのか低いのかを判断していくことになっております。それで報告書を取り
まとめた後に、いちばん下の措置に係る検討会で、実際どういう対策が有効なのかを検討するという
流れになっています。健康管理の検討会と同じタイミングで、措置に係る検討会でも6月、7月にかけ
て検討を行っている最中です。
 15頁の概要として、有害物ばく露作業報告制度で事業場から出てきたデータ、実際に測定していっ
たデータを踏まえ、いちばん下にあるとおり、左側から右側への評価をしていって、実際に規制を導
入していく場合の項目について検討していく流れになっております。これが、参考資料1の大きな流れ
です。
 参考資料2は、今月発表した「リスク評価報告書」です。タイトルがあり、下のほうに四角で囲んで
ある上から4行目辺りで、平成21年度は14物質を評価対象にしました。下線の引いてある?@酸化プロ
ピレン、?A1,4-ジクロロ-2-ブテン、?Bジメチルヒドラジン、?C1,3-プロパンスルトンの4物質につい
ては高いリスクが認められた。初期でも認められ、詳細でも再び認められたということで、措置を検
討すべきという報告書が取りまとまりました。
 報告書全体は分厚いのですけれども、こちらには概要を付けております。平成21年度には14物質、
そのうち詳細リスク評価に回った7物質があります。そちらについて評価していった結果については、
19頁の中段以降、3「リスク評価の結果及び今後の対応」の項目の表のところに記載しております。こ
の4物質については、表の上から2行に記載されております。いちばん上の、酸化プロピレンと1,4-
ジクロロ-2-ブテン、ジメチルヒドラジンの3つの評価結果の概要と書いてありますが、こういう製造
・取扱いを行う一部の事業場で二次評価値、この二次評価値というのは、労働者が勤労生涯を通じて
毎日ばく露した場合でも、健康に悪影響を受けることはないであろうと推測される濃度です。産衛学
会の許容濃度や、ACGIHのTWAなどが設定されることが多いです。そういうものと比較して、超えるか
超えないかをリスク評価で行い、実際に評価をしたところ二次評価値を超えるばく露が見受けられま
した。
 こちらについては、作業工程共通のリスクと考えられるということで、実際に測りに行った事業場
のみならず、ほかの事業場においても高いばく露が推測されるということで、健康障害防止措置等の
検討を行うべきであるという結果となっております。今後の対応としてそういう措置を検討する、行
政指導も併せて行うという対応を掲げております。
 2段目の1,3-プロパンスルトンについては評価結果が異なっています。平成20年度に初期リスク評
価を行ったときも、測定結果としては二次評価値を下回っていました。二次評価値としては、許容濃
度等の設定がされておらず、そのときは定量下限値をまず見て、それ未満であるかどうかを初期リス
ク1年目に評価いたしました。そのときも下回っていたのですけれども、ここにも書かれているとおり、
動物への単回の皮膚投与試験において極めて強い発がん性が報告されているということで、初期リス
ク評価を行い、ばく露の発生量は少なかったのですけれども、詳細に見ていくべきではないかという
ことで詳細のほうに回ってきました。
 改めて、そういう作業の実態などを見ていったところ、飛沫等の皮膚への付着や、また飛散した当
該物質に汚染された機器等を取り扱うことによるばく露リスクを回避するための健康障害防止措置等
の検討を行うべきであるということです。濃度としてはそれほど多くなく、蒸気圧も比較的低めのほ
うではあるのですが、ただ飛沫と固体、又は少し温めると液体になりますのでそういう飛沫等の皮膚
への付着、そういうものが付いた物へさらに触ってしまうことに対してのリスクを回避する措置を検
討していくべきではないかということで評価結果をいただいております。今後の対応としても、同じ
ように措置を検討するとともに、行政指導を行っていくという形で報告がありました。
 以上のように、リスク評価の流れとしては、平成19年にいろいろ物質を選定していって、その中で
2段階評価を行い、実態を見ながらリスクの高い低いを見たところ、この4物質について何らか防止の
ための措置が必要なのではないかということで、今回4物質が挙げられてきたというのが私からの説明
の部分です。
○櫻井座長 ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
(特に発言なし)
○櫻井座長 特にないようですので、引き続き事務局から説明をお願いいたします。
○桐生主任中央じん肺診査医 資料1の1頁です。先ほど説明がありました、詳細リスク評価によって
何らかの措置が必要とされた4物質についてまとめたものです。個別の化学物質について説明させてい
ただく前に、資料の構成や経緯を簡単に説明させていただきます。
 1頁の上にある経緯ですが、先ほどの説明と重複がありますけれども、再度確認のために説明させて
いただきます。「化学物質のリスク評価検討会」において、初期リスク評価で7物質が選ばれ、その7
物質について詳細リスク評価が平成21年度に行われました。それと並行して、「化学物質の健康診断
に関する専門委員会」を開催し、その中で7物質に関する特殊健康診断の必要性等について検討が行わ
れました。詳細リスク評価の結果、4物質が健康障害防止措置等の対策の検討を行うべきとされました。
そういうことで、この4物質が選ばれました。
 19頁に飛びまして参考資料2ですが、7物質のうち、ほかの物質で1点、2-クロロ-1,3-ブタジエン
については事業者の自主的な管理ということで、行政としては指導を行うとされています。この物質
について、本日欠席されております大前委員からコメントがありましたので紹介させていただきます。
2-クロロ-1,3-ブタジエンについては、米国でがんの死亡率に関する論文で、明確に発がん性がないと
は言いきれないところがあって、今後もフォローが必要ではないかというコメントをいただいており
ます。以上、本日の4物質とは関係ありませんけれども、参考までに大前委員のご意見を紹介させてい
ただきました。
 1頁に戻りまして、4物質のうち?@酸化プロピレンについて、一次健診、二次健診の項目があります。
2頁で?A1,4-ジクロロ-2-ブテンについても一次健診項目、二次健診項目の案を提示させていただいて
おります。?Bジメチルヒドラジンについても、一次健診、二次健診の項目を提示させていただいてお
ります。?C1,3-プロパンスルトンについては、健康診断の対象としないという案を提示させていただ
いております。
 これの根拠になったデータは21頁の参考資料3です。いまの健診の案の根拠となったものですが、
これも若干経緯がありますので簡単に説明させていただきます。詳細リスク評価の結果から、健康障
害防止措置等の対策の検討を行うべきとされた4物質について、同検討会で示された有害性評価書なら
びに有害性総合評価表より、各物質毎の健康影響等を抜き出しております。それに併せて、先ほどご
説明いたしました化学物質の健康診断に関する専門委員会で検討された健康診断項目の案について、
それと合わせたものがこの資料です。
 22頁以降は個別の物質について、それぞれ物理化学的な性質、用途、吸収・代謝・排泄、健康影響
がされています。5番目として、健康項目に関する提案、6番目として引用文献という順番で、個別の
4物質についての資料となっております。以上資料1と参考資料3はそのような構成になっております。
ここまでで何かご質問がありますでしょうか。
○櫻井座長 ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。
○山田委員 いちばん最後のプロパンスルトンですが、長山さんの説明では、単回皮膚投与で極めて
強い発がん性があるということでした。今日の資料の35頁で発がん性を見てみて、どれに当たるのか
と思うのです。ここには載っていないのでしょうか。
○桐生主任中央じん肺診査医 個別の内容については、各物質のところでご説明させていただくとい
うことでもよろしいでしょうか。
○山田委員 はい、それでいいです。
○桐生主任中央じん肺診査医 これから、4物質を順に説明させていただきます。
○櫻井座長 それでは、その物質の説明のときにということでお願いいたします。ほかにはいかがで
しょうか。
(特に発言なし)
○櫻井座長 ほかにはないようですので、個別の物質に入りましょう。
○桐生主任中央じん肺診査医 個別の物質について説明させていただきます。資料1の1頁の物質1の
酸化プロピレンです。健診項目としては、一次健診として、業務経歴や作業条件の簡易な調査に加え、
眼や上気道、皮膚等の刺激症状の把握、自・他覚症状の把握が一次健診となっております。二次健診
項目として、作業条件の調査に加え、必要に応じて上気道等耳鼻科学的な検査を健診項目として提案
させていただいております。
 その基となるデータは参考資料3の22頁です。基本的には書いてあるとおりですが、簡単に説明と
補足をさせていただきます。1の性質は省かせていただきます。2の用途としては、プロピレングリコ
ールや、プロピレンカーボネート等の化成物や、医薬品等の原料として使われます。生産量は年間約
40トン、輸入量は約300トンです。ここの資料にはありませんが、国内では有害ばく露作業報告の平
成20年のデータでは37事業場で、作業従事者としては652人というデータがあります。3の代謝等は
省略させていただきます。
 4の健康影響について、まず発がん性です。ヒトを対象にした疫学調査で、白血病等の血液のがんに
ついての報告がされています。発がん性の定量的リスク評価については、ユニットリスクの値として
3.7×10-6perμg/m3とされております。発がん性の分類としては、ACGIHのA3や、日本産業衛生学会
の2B、IARCの2Bという発がん性の分類がされております。生殖細胞の変異原性としては、おそらくな
しということです。生殖毒性については、ネガティブなデータになっております。
 4.5その他の影響としては、皮膚、眼、上気道等の粘膜に対する刺激性があります。麻酔作用も認め
られているとのことです。4.6ばく露限界値は、ACGIHのTLV-TWAとしては2ppmを勧告しております。
 以上のような知見がありますが、それを基にして提案されたものがこの健診項目です。先ほど紹介
させていただきました「化学物質の健康診断に関する専門委員会」で、その健診の必要性等について
はこの資料にないので口頭で説明させていただきます。このような調査を基にして、短期影響として
眼や上気道等の粘膜や、皮膚等に刺激症状があること。また長期影響としては、上気道の細胞変性や
発がんが考えられる。そういうことから短期影響の症状の有無を確認することにより、ばく露状況の
把握や、長期影響に係る健康障害の早期発見が期待でき、健康診断の実施が有用であると考えられる。
 そういう検討が行われ、具体的にはこういう健診項目が挙げられるのではないかとされているとこ
ろです。以上です。
○櫻井座長 ただいまの酸化プロピレンの毒性その他及び健診項目の案についてご質問、ご意見があ
りましたらお願いいたします。
○和田委員 、二次健診の上気道上皮変化の耳鼻科学的検査というのは当然耳鼻科医がやるというこ
とでいいですね。ただ、どうして上気道上皮変化の耳鼻科学的な検査をやらなければいけないかとい
う理由が初めはよくわからなかったのです。この資料だけでは、どこからそれが出てきたのかよくわ
かりませんでした。
 そして、元になった櫻井先生の委員会の報告書を見ると、吸入ばく露の発がん実験のところで
400ppmで鼻腔の血管肉腫が出るという記載があります。ですから、この資料の発がん性のところには
動物実験のデータを入れておいてくれないと、なぜ耳鼻科の検査をやるのだといったら、発がん性が
あるからだと言われても、これを見ても出ていないのです。それで元のを見たら出ているので、是非
それも入れておいていただければと思います。
○櫻井座長 ご指摘ありがとうございました。
○桐生主任中央じん肺診査医 言い訳ですけれども、複数の資料に基づいて作ったものですから、若
干バックデータに欠けているところがあったようです。
○和田委員 ほかの物質では、上気道の刺激はあるけれども、耳鼻科的検査などとは書いていないの
で、何があるのかなと思ったのです。それで聞いたら発がん性があるということなのですが、ここに
は出ていないのですが、それは非常に重要なあれだと思います。
○櫻井座長 そこのところを追加することをお願いしておきます。
○桐生主任中央じん肺診査医 はい。
○清水委員 ヒトでの疫学調査では、IARCは2Bにしていますのでたぶんないのでしょう。造血系ので
いろいろなのが報告されています。ホジキン、非ホジキン、多発性骨髄腫などは、それぞれのペーパ
ーでは特に有意性はなかったということなのですか。
○田原労働衛生課長補佐 報告としては挙げられているのですが、専門委員会ではIARCのところを見
て、最終的にヒトの発がん性に関して結論は出ていないということです。
○清水委員 それぞれの論文でも、有意性なしという評価だったと思っていいわけですね。
○田原労働衛生課長補佐 そうですね。
○清水委員 IARCは2Bだということですから、疫学的には問題ないということなのでしょうね。ただ、
ちょっと数が多いので。
○櫻井座長 この記載だけだとわからないです。「遡久的疫学調査」と書いてありますが、単なる症
例報告でないとすると、症例対照研究になっているのかどうなのか、ちょっと疑問に感じるところで
す。この部分の記載も明確にしたほうがいいですね。
○清水委員 IARCで2Bとあるのだったら、ACGIHはA3で、ヒトの発がんとの関連は未知であるという
評価になっています。
○櫻井座長 根拠としては十分でないという判断は、3つの機関が全部一致しているということだと思
います。十分ではないけれども、日本産業衛生学会の表現では、おそらく発がん性があると考えられ
るけれども、証拠は比較的十分でない。
○桐生主任中央じん肺診査医 これも言い訳で申し訳ないのですが、この資料自体が、前の別の報告
書の有害評価書などから取ってきたもので、事務局で手を加えるのも問題があると思い、そのまま持
ってきたものです。そういう性格をご理解いただきたいと思います。
 その上で、いまご指摘のありました各種の血液の疾患の発生の報告については、こちらも事務局で
まだ把握ができていないのですけれども、引用文献が既存化学物質等安全性評価シートというサマリ
ー的なものだと思うので、どこまで追えるかはわからないのですが、後で確認してから座長にご確認
いただくということで対応したいと思います。
○和田委員 この報告の発がん性というのは、どこの発がんを指標に取っているのですか。動物実験
で認められた上気道の発がんなのか、血液の発がんなのか。
○櫻井座長 産衛では個別の物質についてすべて調査しているわけではなくて、基本的にIARCの分類
を妥当であると考えて、表現が違うだけなのです。
○和田委員 発がん性があるというのは、疫学調査の何かを基にしていますよね。
○櫻井座長 ですから、IARCで2Bにしている根拠を参照すれば。
○和田委員 だから、その基になる文献が何の疫学によって、どこの発がんのデータかということで
す。それで、もし血液の発がん性を見ているということになったら、これはヒトの血液学的検査を重
要視しなければいけないと思います。
○櫻井座長 そうですね。
○和田委員 動物実験で見られた上気道のあれであれば、耳鼻科的な検査という方向に持っていって
いいのではないかと思うのです。
○櫻井座長 ただいまのは妥当なご指摘だと思います。IARCのほうを調査した上で。
○和田委員 産衛もそれを引用しているのですか。
○櫻井座長 産衛はそのまま引用しています。
○和田委員 産衛の場合、その根拠が書いてありますよね、疫学とか何か。
○櫻井座長 個別の物質について、発がん性については書いていないです。
○和田委員 そうですか。
○櫻井座長 発がんのリストは、一つひとつの物質については書いていないです。
○和田委員 あるかもしれないと言っている以上は、何かの疫学調査か何かがあるはずです。
○櫻井座長 疫学のデータはあるけれども、根拠が十分でなくて、動物実験では発がん性が認められ
るものが大体2Bなのです。
○和田委員 動物実験は、先生の元の報告書を見ると上気道の血管肉腫なのですね。
○櫻井座長 そうです。
○和田委員 ヒトで、ここに書いてある疫学の調査の結果は、血液の悪性腫瘍ですよね。
○櫻井座長 そうです。
○和田委員 もし、根拠となったのが上気道の悪性腫瘍で取っているということであれば問題ないと
思うのですが、血液のがんで取っているのだったら、これはその血液のがんの検査を重視しなければ
いけなくなってしまうと思うのです。
○櫻井座長 この原案を作るときに、その辺りまで議論したかしなかったか明確にいまの段階では判
断できないわけですが、これらの非ホジキンリンパ腫52例、多発性骨髄腫20例といった報告の評価が
たぶん低かったのではないかと思います。
○和田委員 かなりの数ですよね。これは何年に経って調べているのか知らないですけれども、50例
とか白血病39例、2万何千人について、これだとかなりの頻度ですよね。ほかに何か発がん性の物質
が共存していたのかな。
○櫻井座長 たぶん共存していたのでなければ、これを否定することにはならないです。
○和田委員 これは、プロスペクティブな調査と書いてありますが、何年にわたってやったのか。ほ
かの一般住民との比較はされているのかどうかとか、そういうのはどうなのでしょうか。
○土屋委員 この報告についての評価というのは、この文献には述べていないですね。
○桐生主任中央じん肺診査医 どこの文献でしょうか。
○土屋委員 22頁のいまの問題の中から、研究所で働いている2万9,139名の集団の中で、疫学調査
で非ホジキンリンパ腫とか書いてあります。これは、これが起こったという事実なのでしょうけれど
も、その事実の評価は、いま先生方がおっしゃったように、約3万人×年ですよね。その母数がいくつ
かで、これが多いのか少ないのかの判断をしなければならないと思うのです。それが、通常の発生率
だとすれば、これは全く意味がないです。少なくともこの3つ、116人、20人、約3万人と、それぞれ
が全く有意な変化がないとか、発がん性は認められていないのか、それによって随分違ってしまうと
思うのです。
○桐生主任中央じん肺診査医 ご指摘ありがとうございます。
○土屋委員 多い少ないの評価が、この文章だけだとできないです。
○桐生主任中央じん肺診査医 頭を下げてばかりで申し訳ないのですけれども、いまの報告の評価は
ここにあるだけです。
○土屋委員 これだけで判断するのは危険かという気がするのです。先ほど口頭で、35事業場で655
人ですか、これは今現在だと思うのですけれども、過去のそういうものの追跡は我が国でデータベー
ス化して追跡ができる状況なのですか。
○長山化学物質評価室長補佐 ここは、特に。報告も単年度限りでいただいているので。
○土屋委員 これからほかのもやるのでしょうけれども、せっかく健康診断の項目を決めてやったと
しても、それが経年的に蓄積されて評価されないと、ただ税金を使っているだけで、こういうデータ
になっていかないのではないかと思うのです。私は、大臣官房の社会保障審議会の統計分科会に入っ
ているのですけれども、そういう所で経年的なデータというのはほとんど上がってこないのです。も
しこれを続けるのだとすると、10年間続けるだけでも随分違うのです。発がんからいくと20年、30年
経たないと出ないのでしょうけれども、それをいまから準備しておかないと、せっかく細かく検討し
ても、データとして蓄積されないのではないかという気がするのです。
 この検討会ではそこまで決められないのでしょうけれども、それをどこかへ持ち出さないと、せっ
かく時間をかけてもこの場で消えてしまう気がします。むしろ、その過去のデータがあるとすると、
ここのレポートの報告よりも、判断材料としてはるかに我が国の実績として大事ではないかと思うの
です。
○桐生主任中央じん肺診査医 ご指摘をありがとうございます。かなり重いご指摘をいただいて、こ
こでお答えできることではないのですけれども、いまのご指摘は対策課のほうに持ち帰っての課題と
させていただきます。
○櫻井座長 この血液、あるいは造血器関連の記載については、オリジナルまできちんと見た上で判
断する以外にないので、ご指摘がありましたのでそれを進めることにいたします。
○和田委員 本当に増えているのだったら、そのデータのほうがどの文献よりも重要です。
○櫻井座長 IARCがこれについて言及しているとは思いますけれども、それも確認する必要があると
思います。
○和田委員 そうですね、それも確認して。
○桐生主任中央じん肺診査医 ご指摘のところは宿題とさせていただきます。また座長とご相談させ
ていただきます。
○櫻井座長 はい。状況に応じて、現在の原案の二次健診項目に追加すべきであるかどうかというこ
とについて、私の判断で可能であると考えた場合はそうさせていただきますし、場合によっては委員
の皆さん方にご相談させていただきます。
○和田委員 そうですね。
○圓藤委員 23頁の生殖細胞変異原性のところの3行目で、「この論文の出典が分からないので」と
いう書き方はあまりよくないです。もう一度調べ直すのか、最初から削ってしまうのか。原点がどこ
かで見つかるかの作業をもう一度したほうがいいように思います。
 その数行下の7行目の「優性致死」という言葉はどういう意味なのか私には理解できなかったのです。
○桐生主任中央じん肺診査医 ご指摘ありがとうございます。前者のご指摘の趣旨は理解いたしまし
た。これも先ほどの繰り返しになるのですが、オリジナルの文献がそうなっているので、その文献に
こういうコメントがあったとお伝えしたいと思います。後者についてはお待ちください。
○田原労働衛生課長補佐 これも、そのまま写してしまいましたので、意味としては確認が取れてい
ません。
○櫻井座長 優性致死試験とか、もうちょっと正確な名称があったような気がするのです。
○桐生主任中央じん肺診査医 テクニカルタームの問題なので、また調べて後で委員の先生方にご報
告したいと思います。
○櫻井座長 ほかにはございませんか。
(特に発言なし)
○櫻井座長 ないようですので、次に進ませていただきます。2番目の1,4-ジクロロ-2-ブテンについ
て説明をお願いいたします。
○桐生主任中央じん肺診査医 参考資料を中心に説明させていただきます。26頁の1,4-ジクロロ-2-ブ
テンについてです。2番目の用途については、ヘキサメチレンジアミンや、クロロプレンの製造の中間
体です。生産量や輸入量については情報がないということです。先ほどのばく露報告で、平成20年の
データでは1事業場で延べ66人です。
 4番の健康影響ですが、4.1発がん性です。後向きコホートの研究で、悪性腫瘍による死亡が7例見
られたという報告があります。悪性腫瘍の部位について、報告の中では確認できておりません。発が
んの定量的リスク評価について、ユニットリスクについては、WHOでは情報なしです。ただし、鼻腔腫
瘍の発生をもとにして、生涯過剰発がんリスクを計算した結果として0.025ppmのばく露の生涯リスク
で4×10-2というデータが示されております。発がん性の分類としては、ACGIHは2Aとされております
が、IARCや産衛学会では未分類とされております。
 27頁の遺伝子障害性変異原性ですが、遺伝毒性について、動物実験ではありという結果の報告が示
されております。
 4.3生殖発生毒性について、動物実験では体重増加率の減少が認められる報告がありますが、それ以
外に影響は認められなかったという報告がいくつかあります。
 下のほうでその他の影響として、この物質についても皮膚や眼粘膜の刺激性を有するという報告が
あります。
 健診項目の提案の理由として、眼、上気道及び皮膚の刺激症状の有無を確認することにより、低濃
度レベルでのばく露管理に結び付けることができることから、業務経歴や簡易な作業条件の調査に加
え、眼、上気道、皮膚の刺激症状等について自・他覚症状の検査が一次検査として挙げられています。
二次健診項目として、作業条件の調査が挙げられています。以上です。
○櫻井座長 ご質問、あるいは指摘事項がありましたらお願いいたします。
○清水委員 26頁の発がん性の2つ目のポツの真ん中辺りですけれども、これは吸入ばく露で、鼻腔
腫瘍(腺腫および腺がん)の発生をもとにリスクが計算されているとあるのですが、もしそのような
リスクがあるとすれば、健康診断項目の中に「耳鼻科的な」という言葉を入れたほうがいいのではな
いかと思うのです。眼科、咳、咽頭痛、上気道というのは耳鼻科という印象が薄いのではないかと思
うのです。上気道というのは、一応鼻も入っているということですか。耳鼻咽喉科的という、鼻です
か、耳よりも。
○桐生主任中央じん肺診査医 バラバラとしたお答えになってしまうかもしれませんが、鼻腔腫瘍の
報告について、どういった評価をされたかについては、事務局としてははっきりわからなくて、発が
ん性の分類ではIARCや産衛学会では未分類とされているようなところがありますので、どうされてい
るのかわからないのが現状というのが1点です。あと鼻腔腫瘍については、上気道の自・他覚症状のと
ころに含まれるとも考え得るのではないかと思われます。
 もう1つは健診の提案の理由で、必ずしも疾病の発見が目的ではなくて、眼、上気道、皮膚の刺激症
状の有無を確認することによって、低濃度レベルでのばく露管理に結び付けることができるといった
間接的な目的を期待してというのがありますので、そういったことから書かれていると考えていると
ころです。櫻井先生、この専門委員会で何か議論がありましたら、ご紹介いただければと思います。
○櫻井座長 ただいまの事務局からのお答えが当たっていると思います。ただ整合性の点からいきま
すと、先ほどの酸化プロピレンで二次健康診断項目の中で、医師が必要と認める場合、上気道上皮変
化の耳鼻科学的検査というのが入っているのと同じかなと。
○和田委員 ユニットリスクが非常に低いとそれなりの理由があって入れなかったのかなと思ったの
ですが、リスクの程度かと思ったのです。
○田原労働衛生課長補佐 当時の議事録を拝見した限りでは、現時点ではそこまでやらなくてもよい
だろうという経緯があったと存じます。
○和田委員 非常にリスクが少ないということなのか。上気道の刺激症状と発がんのリスクは非常に
差があって、上気道の刺激症状を抑えておけば大丈夫だという意味なのか。
○櫻井座長 現段階でその必要はないだろうという総合的判断だったという気はするのですが、果た
してそれで良かったかどうかというのは、この場で検討すべきことだと思います。つまり、酸化プロ
ピレンとどこが違うかということで、医師が必要と認めた場合と言って、ばく露の状況によっては、
時には上気道の検査をするのもいいような気がしますけれども。
○和田委員 酸化プロピレンの場合は、動物実験はかなりたくさんあって、全部陽性で出ているので
す。これを見ると、400ppmぐらいで、かなりの確率だということで、そちらを採ったのかもしれませ
ん。
○櫻井座長 要するに、根拠のウェイトオブエビデンスですか。
○和田委員 発がんの根拠のウェイトと思います。根拠とか、あるいは扱う量とか、そういうのと、
皮膚刺激とのウェイト、どれだけ差があるかとか。
○櫻井座長 酸化プロピレンよりも刺激性が強いですよね。
○田原労働衛生課長補佐 刺激臭があるので早い段階でわかるということもあって、そこまでしなく
てもよいだろうということです。
○櫻井座長 要するに、ばく露の管理ができるからということですね。
○和田委員 ばく露の管理さえできれば、発がんを抑えられるということであれば、それでいいと思
います。
○山田委員 作業条件の簡易な調査のところに、ここだけ括弧付きで保護具の着用状況を確認するこ
とが求められています。作業条件の簡易な調査というのは、保護具の着用条件を確認することは、簡
易調査の中に入っていたと思います。だから、わざわざここで、なぜ加えてあるのかなと思いますね。
○櫻井座長 これは要らないですね。どうですか。
○山田委員 私は要らないと思います。
○櫻井座長 あえてこれだけ書くのはピントがずれていますね。
○山田委員 そうですね、ここでなぜ書いてあるのか。
○櫻井座長 では、これは取ることにいたしましょう。いま議論していて、酸化プロピレンとの違い
は納得がいったような気がしておりまして。どうでしょう、私はそう思うのですが。
ほかに何か指摘事項はありますか。
○圓藤委員 28頁の5の(ア)に書いてありますし、動物の場合は非常に高濃度を与えているので、
それで起こった腫瘍ですので、それを人間にそのまま当てはめるのはいかがかという議論で省かれた
のではないかという気がします。
○櫻井座長 そういう点もあったということです。では、1,4-ジクロロ-2-ブテンについては、ここに
出されている提案でご了承いただけますでしょうか。
○山田委員 上気道という場合は鼻腔に上気道に入りますね。
○櫻井座長 入ります。ただし、括弧内のは削除ということで結論とさせていただきます。どうもあ
りがとうございました。
 次に3つ目のジメチルヒドラジンについてお願いします。
○桐生主任中央じん肺診査医 30頁を基に簡単にコメントいたします。ジメチルヒドラジンですが、2
の用途としては、各種の原材料に用いられるということです。生産量は、年間200トン。先ほどのばく
露報告では平成20年で3事業場で延べ52人というデータです。
 4の健康影響は、生殖細胞の変異原性や発がん性、また遺伝毒性については、各種の実験室実験で変
異原性や発がん性等が認められるような報告があります。
 31頁の4.1の発がん性の分類ですが、IARCでは2B、ACGIHではAの3、産衛学会では2Bという分類
がされています。吸入ばく露の動物実験において、いくつかのデータでは、肝細胞がんの発生率が増
加した等の報告があります。そのようなことから、発がん性を示す可能性があるという評価がされて
おります。32頁ですが、それ以外にも盲腸の腫瘍等の発生も動物実験では認められています。また、
末梢神経鞘腫瘍の発生の報告もあります。
 4.2の生殖細胞変異原性については、動物実験から、やや疑われるという評価です。生殖毒性につい
ては、経口投与のデータはないということ。また腹腔内投与で胚毒性がみられたという報告がありま
した。4.4の感作性では皮膚感作性のおそれがあるという評価もあります。
 33頁の4.5のその他の影響については、皮膚、眼等の粘膜の刺激性があるということです。また臓
器毒性については、単回のばく露では神経学的な作用や肝臓、呼吸不全等がみられるという報告があ
ります。また反復ばく露においては、同じように神経学的な作用や呼吸作用、肝臓や血液に影響を与
えることがあるという報告があります。4.6の職場のばく露限界値としては、ACGIHの0.01ppmという
勧告が出ています。
 それらを基に、5の健診項目に関する提案ですが、提案の理由は、短期影響及び長期影響発生予防の
ために、上気道の自覚症状を主とした項目が必要ではないかということです。具体的には、34頁の一
次健診の経歴や作業条件の簡易な調査に加えて、眼や上気道の刺激に関する自・他覚症状の検査が、
一次検査として挙げられています。二次健診項目として、作業条件の調査に加えて、肝機能検査と神
経学的な検査があります。以上です。
○櫻井座長 ただいまの説明の内容について、ご質問、ご指摘事項等、ご発言をお願いします。
○和田委員 神経学的作用というのは何なのですか。ボーッとしてしまうとか、めまいが起こるとか、
そんなことなのですかね。
○櫻井座長 神経学的な影響についての記載は、どこにありましたかね。単回ばく露。
○和田委員 その他の影響のところの。
○櫻井座長 中枢神経系とここには書いてある。
○和田委員 影響を与えとか、その下のほうには神経学的作用と。
○櫻井座長 特定の反復ばく露のほうでも神経学的作用と書いてありますね。
○和田委員 そうそう。
○山田委員 痙攣と書いてありますね。なぜ神経学的なのでしょうか。
○櫻井座長 痙攣ですか。
○山田委員 その前に嘔吐、痙攣、その他の神経学的作用と書いてあって、そして中枢神経系に影響
を与えると。
○桐生主任中央じん肺診査医 神経学的作用について、昨年度の専門委員会の報告書の中では、嘔吐
や痙攣等の神経学的な作用が認められるということがあります。あと呼吸作用が神経系によると。
○田原労働衛生課長補佐 神経のところは、呼吸不全という記載しかありませんでした。中枢神経の
障害で呼吸不全と読み取れる書き方をしています。
○和田委員 神経がやられて呼吸不全が来るというのですか。
○田原労働衛生課長補佐 中枢神経系、肝臓に影響を与え、呼吸不全、
肝障害に。
○和田委員 刺激性の問題でしょう。
○山田委員 中枢神経系というのは、呼吸中枢に影響を与えるというのですか。
○田原労働衛生課長補佐 そういうメカニズムの話まではなくて、ばく露の委員会のほうでも情報が
少なくてということでした。具体的な神経に関するところも。
○山田委員 この物質というのは中枢神経系が肝臓に影響を与え、呼吸不全、肝障害を生ずる。中枢
神経系は呼吸不全で、肝臓は肝障害という読み方なのですかね。
○櫻井座長 麻酔作用なのではないかな。
○桐生主任中央じん肺診査医 呼吸機能に与える影響がどういった機序でとか、その辺は明確になっ
ていないところがあります。
○櫻井座長 二次健診の項目に神経学的検査を加える必要があるかどうかという問題なのです。非常
に高濃度の麻酔だったら、現実的には神経学的検査を。
○山田委員 神経学的検査は、具体的に何をすればいいのですか。
○和田委員 どんな神経的な影響が出るかということです。
○田原労働衛生課長補佐 専門委員会のほうでも、神経に関しては、具体的にこれをやるというとこ
ろまでは言及がありませんでした。あとはばく露濃度等からすると、相当高濃度の事態を想定してい
るだろう。ただ、具体的にどういう影響が出るかということに関しては、情報がないということにな
っています。
○山田委員 33頁の長期の反復投与では、神経系、肝臓、血液への影響を与えるとあって、いわゆる
細網内皮系の組織の血鉄症がみられたと書いてあります。溶血性貧血及び血液性の変化というのは、
二次検査ではないですよね。これも頻度は低いのでしょうか。
○櫻井座長 濃度との関連ですね。5ppmぐらいでそれが起こっている。ばく露限界値が0.01ですか。
○桐生主任中央じん肺診査医 経皮吸収性で0.01ppmです。
○櫻井座長 0.01ppmで判断しておりますので、5ppm程度で起こることよりも。しかし、二次健診の場
合は、高濃度ばく露を受けてしまった場合にはこういうものというようなニュアンスがあるわけです
から、溶血性貧血に関する、必要ならばそれを調べてみるべきだと考えてもいいわけですよね。自分
が産業医だったらどうするだろうかと。
○和田委員 これらの異常はむしろ、救急の対象になるものですね。
○山田委員 健康診断というのではなくて、アクシデントのほうですね。
○和田委員 そうです。定期的な健康診断の対象ではないと思いますが。後遺症みたいなものが出て
いるというのだったらやってもいいのですが。
○土屋委員 4.5に出されている検討が、毒性の試験が健診の考える資料となるデータではないと思い
ます。
○山田委員 ものすごい高濃度ですね。
○土屋委員 急性毒性の試験で。
○櫻井座長 そういう点から考えると、二次健診に神経学的検査を入れることはちょっと。ここでの
議論からいくと、これは外すという方向になるかなと思うのですが、圓藤先生はどう思われますか。
○圓藤委員 そうですね、おっしゃるとおりだと思いますね。どの程度のばく露量を想定してやるの
かという、管理濃度を先に決めるという作業をすれば、それに合わせて使用状況が考えられるのです
が、管理濃度の考え方をまだしていないので、順序が逆になっているような気がしています。
○和田委員 濃度のいかんに関わらず、神経の症状が出るから、検査しなさいなどというのは、ちょ
っとかわいそうですよね。
○圓藤委員 この濃度でばく露された人は急性毒性ですね。
○和田委員 かなりの急性毒性で、これはもう救急の対象で。
○山田委員 医師の対象ではないですね。
○和田委員 健診の対象でもないし。
○山田委員 もう1つお聞きしたいのですが、30頁にラット、ウサギ、イヌ、ネコで注射された。ど
こに注射したかわかりませんが、ジメチルヒドラジンが急速に血液に吸収されて、主に尿中に排泄さ
れる。これは生物学的モリタリングになるのですか。どういう形で排泄されるのですか。
○櫻井座長 この記載だと、そのまま排泄されるいうことです。
○山田委員 だったらそれを二次で計ってもいいわけですよね。
○櫻井座長 そうですね、尿中のね。
○山田委員 尿中のジメチルヒドラジンを生物学的モニタリングとして採用するすることは。
○櫻井座長 どうでしょうか、それのほうがわかるのではありませんか。
○山田委員 これ、皮下ですか、どこへ注射したのですか。
○桐生主任中央じん肺診査医 それの記載がないのです。あとはヒトに関するその辺の記載は見つけ
られませんでした。
○山田委員 だけど、動物では尿中に排泄されることを確認しているわけですね。
○櫻井座長 生物学的モニタリングとして、これを採用するというか、推奨するだけの根拠になり得
るかどうか疑問ですね。
○山田委員 もしいけるのだったら考えてもいいかなと。2行がちょっと気になったものですから。
○和田委員 たぶん環境濃度で管理すれば、それは尿でやらなくても別にいいのではないかという気
がしますけれどもね。
○櫻井座長 比較的低濃度を問題にしていますのでね。
○和田委員 肝臓のほうはGOTが上がると書いてあるし、5ppmはかなり高濃度ですが、肝臓は調べて
もいいかもしれませんね。
○清水委員 溶血性貧血が5ppmぐらいでイヌでは出ていますね。これは血液検査というのは特には必
要ないのですか。
○櫻井座長 それについても若干の議論をしましたが、0.01ppmという濃度のレベルが全く違いますの
で、二次健診の項目にそこまで入れるのは適切ではないのではないかという意見が多かったのです。
○山田委員 作業条件調査のデータは、いくつぐらいだったのですか。3事業場の52人ですが。
○長山化学物質評価室長補佐 実際に測った結果を見ますと、最大値としては、個人ばく露測定で
0.577ppmというのが出てきております。それが反応槽への仕込作業でいちばん高くて、あとはドラム
缶への充填作業で0.17ppmですので、0.01の二次評価値に比べれば高いのですが、0.いくつというオ
ーダーです。測定データはそんなに多くないので、多少ばらつきも考えた上でということになると思
います。
○櫻井座長 やはり、血液を入れたほうがいいとお考えですか。
○圓藤委員 もう一度元のを見ないと。
○櫻井座長 神経学的検査、それから末梢血の検査でいいわけですね。あるいは尿潜血で、それを入
れるかどうかということについては、文献を調べ直して評価し直す。基本的には神経学的検査のほう
は、たぶん削除という方向に行くと思いますが、一応チェックして、それから血液のほうは5ppmぐら
いで、動物実験で6週間とかばく露していますから、ばく露レベルが非常に違いますのでね。
○和田委員 13週間25ppmなんてべらぼうな値でばく露して溶血が起きているわけですから、それは
ヒトの場合はあり得ないような数値ですね。たまに少しオーバーしても、そんなにまでは行かないと
思いますから、環境のほうできちんとしておけば、血液検査は要らないと思います。
○櫻井座長 では、それでよろしいですか。では、神経学的検査は削除の方向ですが、一度文献の部
分をチェックして確認したいと思います。それでよろしいですか。
○桐生主任中央じん肺診査医 文献を再確認した上でということで、神経学的検査はそれで適切であ
れば削除する方向でということですが、血液の検査と生物学的なモニタリングについても併せて検討
する、そちらはいいということでよろしいですか。
○櫻井座長 ここでもう結論とさせていただきます。これは不要です。
 次は4番目の1,3-プロパンスルトンについてお願いします。
○桐生主任中央じん肺診査医 資料の35頁に基づいてご説明します。2の用途ですが、合成樹脂等の
合成中間体として利用されます。生産量は年間1~10トン程度。ばく露報告では、平成20年度で2事
業で、延べ85人という報告です。
 4の健康影響は、4.1の発がん性については、ドイツでのデータで大脳の膠芽胞細腫や、部位として
は腸、十二指腸疾患、造血器/リンパ系の悪性腫瘍が見られたことや、1例ですが、腎細胞がんが見ら
れたという報告があります。動物実験での発がん部位とよく一致していたという報告もあります。発
がんの定量的リスク評価では、CaliforniaEPAでユニットリスクを6.90×10-4と掲載されています。発
がん性の分類としては、IARCは2B、ACGIHはA3という分類をしています。
 4.2の遺伝毒性変異原性は、実験室の実験で陽性を示すような報告がいくつかあります。4.5のその
他の影響は、皮膚への刺激性があるということです。4.6のばく露限界値については、ACGIH等は特に
設定なく、NIOSHでできるだけ低濃度にという勧告になっています。
 次の頁の健診項目に関する提案は、昨年度の専門委員会では健診項目に関する提案はなしです。な
しと提案した理由は、発がん性については、がんの発生の前に、それより低濃度のばく露で発生する
症状が不明であり、また標的臓器も不明である。そういったことから特殊健診による発がんリスクや、
がん死亡リスク低減の可能性は乏しいと考えられることから、特殊健診の対象と考えないで、特定化
学物質の第?V類物質と同様の大量ばく露時における緊急診断の対応でよいと考えられるのではないか
といった考えです。そういったことから現状においては、特定化学物質の?T類、?U類相当に準じた特
殊健診の必要性は低いのではないかということです。
 なお、動物実験において強い発がん性が認められていること、また長期経過後の多様な標的臓器を
対象とする発がん性及び皮膚への障害性が疑われることから、作業環境管理、作業換気管理によるば
く露防止措置を講じることによって適切な管理ができるのではないか、といったコメントもいただい
ております。加えて、一般健康診断で、自・他覚症状の中でも把握できるのではないかということも、
コメントとしていただいております。以上です。
○櫻井座長 この物質に関して一般健康診断で何が捕まるのですか。主に発がんがメインですよね。
○桐生主任中央じん肺診査医 私の理解としては、一般健康診断で皮膚刺激症状の診察をしますので、
自・他覚症状、そういった急性症状等の把握が可能と理解しているところです。
○山田委員 特定業務健診で年に2回、一般健康診断をやっている。それだったら多少なりとも有害性
があるのだということは言えるわけです。だから、特定業務健診の中に入れたほうがいいと思います。
○櫻井座長 そういった意味合いだったような気もしています。
○桐生主任中央じん肺診査医 両方の意見があると思います。どこでどう位置づけるかについては、
行政的な判断もありますので、また別途検討させていただきたいと思います。
○圓藤委員 36頁の4.5で接触皮膚炎がみられることがあるとなっていて、皮膚をみることができる
のではないかという意味ではないかと思います。皮膚症状の他覚的所見ということです。
○桐生主任中央じん肺診査医 急性症状の把握というのがあると思います。どこに位置づけるかにつ
いては別途検討したいと思っています。特定健診と位置づけた場合、産業医の専属要件とか、そうい
ったこととの兼ね合いも出てくるので、慎重な検討が必要ではないかと思っているところです。
○櫻井座長 現実にいま観察されているばく露は、非常に低いのですよね。ばく露限界値未満ですね。
○長山化学物質評価室長補佐 濃度としては0.005?r/m3で、それが定量下限値ですがそれ未満です。
○櫻井座長 それとのバランスから考えて、どこまで義務として要求するかということからいくと、
この報告書のような結論になったのだと理解しています。
○和田委員 がんを全部捕えることなどは不可能ですね。いま大量ばく露の緊急検査としてなどと言
うのですが、がんがそんなに緊急で出てくるはずはないわけですから、そこはちょっとまずいと思い
ます。いずれしても環境管理をきちんとして防ぐよりしょうがないのですね。
○櫻井座長 何らかの健診をやることが望ましいようなニュアンスで書いてあって、やるとするなら
ば、ばく露の状況を聞くということですよね。
○山田委員 作業条件の簡易な調査をするということは、定健ではできないですが、特定業務の健診
だったらできるわけです。定健では作業条件の簡易な調査という項目は入っていませんから、定健で
は調査できないのです。特定業務健診は定健を年に二回行いますが、作業条件の簡易調査というのは
やるべきです。
○櫻井座長 行政のほうでどこへ置くかというのは、その他にいろいろ考えることがあると思います。
○和田委員 20人のうち、12人もがんになって、しかも1950~1970年代になっているというのは、か
なり発がん性が強いという感じがするのです。ただ、1950~1970年代の労働環境が、いまと比べてど
うだったのか。雲泥の差だったのかという気がします。
○櫻井座長 そうだろうなとは思いますけれどもね。
○山田委員 先ほど長山さんのほうでお話しがありました19頁で、定量下限値未満であったが、動物
に単回投与したもので極めて強い発がん性があると言われているのですが、こちらのデータを見てみ
るとそれがないのです。それはこちらでは全然合わないので、また新しいものかなと思ってお聞きし
たのです。
○櫻井座長 ここに書いてないというご指摘ですね。
○田原労働衛生課長補佐 専門委員会で言及があったのは、プロパンスルトンの発がん性で、ラット
への経口大量ばく露実験というのがあります。
○山田委員 経口ですね。長山さんの話では皮膚投与と書いてあります。
○田原労働衛生課長補佐 あとはラット皮膚への高濃度塗布及び皮下投与実験及びマウスへの皮膚投
与実験では、局所に皮膚腫瘍が高率に認められる。高濃度を皮膚に塗る。
○山田委員 19頁は定量下限値未満と書いてありますから、非常に薄いでしょうね。測定濃度以下で
しょう。19頁の真ん中の評価結果の概要の2段目に1,3-プロパンスルトンの所で、測定結果は定量下
限値未満であったが、いくらとは書いてないですね。
○櫻井座長 その点はいいですね。定量下限値というのは測定結果においてね。単回皮膚投与実験は、
決して少なくはない。
○山田委員 大量と書いてありますね。
○桐生主任中央じん肺診査医 いまの単回皮膚投与実験については、詳細リスク評価のほうでされて
いるようです。パーセントですが、2.5%群で、46匹中26匹に腫瘍発生が見られたという報告になっ
ているようです。
○櫻井座長 この報告書に書いてあるのに越したことはないですね。必ずしも直結して一緒に報告を
出すわけではないのかもしれませんが。この検討会での使用した資料として、これが公表されること
もありますよね。やはり今日ご指摘のあった件は対応すべきだろうと思いますので、よろしくお願い
します。
 1,3-プロパンスルトンについては、一応原案どおり健康診断の項目については提案しないというこ
とでよろしいですね。以上、4つの物質について、若干確認するべきことが残っておりますが、基本的
に原案のとおり、ご了承いただけたといたしまして、なお、その詳細な検討のあとで、私の判断で結
論が出せる場合にはそうさせていただくということで、ご了解をよろしくお願いいたします。その他、
全体にわたって追加のご質問はありますか。
○山田委員 先ほどから桐生さんがお話されるときに自・他覚症状、自・他覚症状と言われていたの
ですが、提案されている特殊健診項目には他覚的所見が先に書いてあって、他覚的所見及び自覚的所
見と書いてあります。特化則だけが他覚的所見及び自覚的所見と書いてあって、ほかの定期健康診断
は、すべて自覚症状・他覚所見と書いてあります。これは統一してもらったほうがありがたいけれど
も、あるいはなぜ特化則だけ他覚所見が先にきているのか理由があったら教えてください。もしなけ
れば、自覚的所見、他覚的所見に順序を変えていただく方向でお願いできたらと思います。
○櫻井座長 調べるのが難しいかもしれません。
○桐生主任中央じん肺診査医 歴史的な経緯で、こうなったことについてはわからないところです。
変えることについては事務的には文言としてはシンプルなのですが、出てくる箇所が何十箇所にもな
る変更なので、事務的には緊急性がないと変えにくいので、間違いで人の命に影響を及ぼすというも
のではなさそうなので、なかなか変えにくいのが現状です。
○山田委員 ただ、他覚所見・自覚所見は馴染みがなくて、自覚所見・他覚所見というのは馴染んで
いますよね。
○櫻井座長 将来機会があったらということで、記録に残しておいてください。
○和田委員 自覚症状は、これこれこういう症状だと詳しく書いてあるところと、ただ他自覚症状と
書いてある所があったり、作るときに統一すべきとも思いますが。
○山田委員 ほかは全部自覚所見・他覚所見です。特化物だけが他覚所見が先に来ているのです。調
べると非常に不思議でした。
○櫻井座長 ちゃんと調べてくださった上でのご意見なので。
○和田委員 特化物のときは一次健診、二次健診ですが、有機溶剤などは二次健診と書かれていなく
て、医師が必要と認める検査と書いてある。二次検査というのは、もともと医師が必要と認めるとき
の検査と定義されているわけですから、同じものでも表現が違うので、どうなっているのかと。
○櫻井座長 それでは、前半の特殊健康診断の健診項目については、これで終了とさせていただきま
す。どうもありがとうございました。ここで休憩を入れて、2番目の議題に入りたいと思います。
                 (休憩)
○櫻井座長 それでは、お揃いですので、議事を再開します。議事2「健康管理手帳の交付対象業務の
追加について」を事務局から説明をお願いします。
○森中央じん肺診査医 資料2に基づいてご説明します。第5回検討会において一度説明したものにな
りますが、健康管理手帳の交付対象業務とすべきか否かなど、基本的な考え方については、参考資料6
に添付している平成7年度における健康管理手帳の交付に関する報告書で一度ご議論いただいたところ
です。改めて概要をご説明します。
 「はじめに」です。有害な業務に従事する労働者及び有害な業務に過去に従事し、現に事業者に使
用されている労働者については、特殊健康診断を実施しております。また、労働安全衛生法第67条の
規定に基づき、その他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務に従事している者のうち、労働安
全衛生法第53条第1項に規定する一定の要件を満たすものについては、離職の際又は離職後に、国が
健康管理手帳を交付して健康診断を実施しております。現時点、平成21年末での健康管理手帳の交付
対象業務は12業務、累計交付数の合計は約5万7,000件となっております。
 平成20年の労働安全衛生法施行令、特定化学物質障害予防規則の改正により、ニッケル化合物並び
に砒素及びその化合物については、ばく露防止対策等が義務づけられました。それとともに、特殊健
康診断についても実施を義務づけたことに伴い、これらについて健康管理手帳の交付対象とすべきか
どうか等について、検討する必要があるということが背景となっております。
 「健康管理手帳交付の基本的考えについて」ですが、健康管理手帳の交付対象業務については、平
成7年12月に労働省の検討会が取りまとめた「健康管理手帳交付対象業務等検討結果報告」(参考資
料6)において、以下の?@~?Bのいずれの要件を満たす物質の取扱い業務等を健康管理手帳の交付対象
として検討しております。
 4頁ですが、点線で囲まれたものが報告書の抜粋になります。?@「当該物質等について重度の健康障
害を引き起こすおそれがあるとして安全衛生の立場から法令上の規制が加えられていること」。?A
「当該物質等の取扱い等による疾病(がんその他の重度の健康障害)が業務に起因する疾病として認
められていること」。こちらには労働基準法の施行規則別表第1の2第7号「がん原性物質若しくはが
ん原性因子又はがん原性工程における疾病」等、中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する
疾病として、告示により指定された疾病として挙げられております。こちらのイとロについては参照
条文110頁に抜粋を記載しております。?B「当該物質等の取扱い等による疾病(がんその他の重度の健
康障害)の発生リスクが高く、今後も当該疾病の発生が予想されること」。この?@~?Bが挙げられて
おります。なお、上記の要件の?@ハに該当する物質については、従前の健康管理手帳の交付対象の規
制物質等としてはクロム酸及び重クロム酸並びにこれらの塩、三酸化砒素、コークス又は製鉄用発生
炉ガス、塩化ビニル又はポリ塩化ビニル及び粉じん作業が挙げられております。
 健康管理手帳の交付対象業務については、参考資料4の39頁に業務とその要件を載せておりますの
で、適宜ご参照ください。申し上げた業務については、特化則によるばく露防止対策等とともに、健
康診断については特殊健診の対象業務とされております。また、上記要件?B「発生リスクが高く、今
後も当該疾病の発生が予想されること」については、報告書の中では主として近年の労災認定の事例
の有無等を勘案してきたところです。これらの考えに加え、近年取扱い等が行われるようになった有
害物質で法令上の規制が加えられた?@に該当するものについては、労働者のばく露期間等から労災認
定の事例が発生する可能性が低いと考えられるため、別途国内外の疫学データ、症例データ、作業環
境等を踏まえた検討が必要ではないかと考えております。
 次に、交付要件等の基本的考え方です。個々の交付対象業務に係る交付要件は規則で定められてお
りますが、特定の所見(胸膜肥厚等)や業務従事経験年数等を定めており、症例データ等のほか、従
前の交付対象業務と類似の業務や同様の疾病を引き起こす業務を参考にして定めているが、引き続き
同様の考え方でよいか。また、健康診断の実施頻度や健康診断項目についても、従前の交付対象業務
における健診や特殊健診を参考にして定めておりますが、引き続き同様の考え方でよいか。前回ご議
論いただきましたが、以上の説明について、再度ご質問やご意見等を伺いたいと考えております。
○櫻井座長 いままでのご説明の内容やそれに関することで、何かご質問、ご意見はございますか。
○山田委員 ?@で、いま管理手帳をお持ちの方はどのぐらいおられるのですか。?@のイ、ロ、ハでそ
れぞれのケースがあれば一番いいのですが、製造禁止物質で何件ぐらいあるのですか。
○森中央じん肺診査医 ?@は製造等禁止物質、製造許可物質、その他に分けられますが、39頁に挙げ
ている12業務で製造禁止物質になっているものが、ベンジジン及びその塩、石綿、ビス(クロロメチ
ル)エーテル、ベーターナフチルアミン及びその塩です。製造許可物質は、ジアニシジン及びその塩、
ベリリウム及びその化合物、ベンゾトリクロリドです。その他は、粉じんを除いて第?U類物質として
位置づけられております。
○山田委員 それぞれ何件ぐらい健康管理手帳が出ているのですか。
○森中央じん肺診査医 平成21年の交付状況は、順番はいまのものと異なりますが、ベンジジン等業
務については現在1,448件、ベーターナフチルアミン等業務については981件、石綿等業務については
2万1,080件、粉じん作業については管理2が1万842件、管理3が1万4,258件、併せて約2万4,000
件です。クロム酸等業務が730件、三酸化砒素業務が43件、コールタール業務が5,229件、ビス(ク
ロロメチル)エーテル業務が91件、ベリリウム業務が2件、ベンゾトリクロリド業務が17件、塩化ビ
ニル業務が1,889件、ジアニシジン等業務が155件で、合計5万6,765件という状況になっております。
○桐生主任中央じん肺診査医 以上でよろしいでしょうか。3つに分類し直したものを、あとで。
○山田委員 分類して、イでは何件、ロでは何件、ハでは何件と言ってもらったほうがありがたいで
す。
○櫻井座長 イ、ロ、ハを全部満たしたものですか。
○山田委員 イで製造禁止物質は何件とかありますね。そういうものは、これからは増えてこないわ
けですね。だけど、粉じんなどはこれから増えますね。
○桐生主任中央じん肺診査医 そこは微妙なところがありまして、製造禁止だけれど、石綿のように
解体作業などもありますので。
○山田委員 それは石綿が特殊だから、禁止物質だけれどこれからも増えるだろうという話はありま
すね。そういう分類をしていったら、これからどうなるかという話へとつながってくると思うので。
○桐生主任中央じん肺診査医 集計する作業が必要なので、またあとで情報提供させていただきます。
ご指摘ありがとうございます。
○和田委員 いままでこの要件?@~?Bで、合わなくなったので除去されたものはあるのですか。いま
までは全然ないですか。
○森中央じん肺診査医 一度位置づけられて、除去されたものですか。
○和田委員 そうです。特に?Bが多いかもしれませんが、そういうものはいまのところないですか。
○森中央じん肺診査医 いまのところはないです。
○山田委員 衛生のしおりで見ると特殊健診実施状況のデータの一覧があって、製造禁止物質で有所
見者がゼロというのがあったように思うのですが、。○土屋委員 今日は、それらについてもディス
カッションするのですか。ニッケルと砒素、それを入れるか入れないかというのが今日の論点ですね。
○桐生主任中央じん肺診査医 メインの議論ではないのですが、ただ、こういう機会ですので、ご意
見はいただければと思います。あまり時間がかかるようであれば、別途、後で検討させていただきま
すが、コメントとしていただければと思います。
○山田委員 平成20年度のものを見ると、ベーターナフチルアミンは100人の方が受けていますが、
有所見者はゼロですね。管理手帳は何件出ていたのですかね。このことを考えますと、これからは健
康管理手帳交付者はあまり出てこないかなと思います。
○森中央じん肺診査医 手帳を交付している方で有所見者などの詳細は把握していません。
○山田委員 だけど、管理手帳の人も健診数に入れているのでしょう。
○古田職業性疾病分析官 それは入っていません。あれ(労働衛生のしおり)は事業主が実施した健
康診断の数です。じん肺の部分だけは少し違います。
○山田委員 そうしたら、管理手帳の健診結果は統計でほとんどどこにも出てこないと。
○古田職業性疾病分析官 そうですね。
○山田委員 それだとわからないですよね。
○桐生主任中央じん肺診査医 ご指摘のところは、健康管理手帳の交付状況ということで、いまのと
ころ積極的には公開していないので、しおり等にも掲載されていないのですが、今後の公表について
は検討しているところです。
○櫻井座長 ほかにはよろしいですか。それでは、先に進みます。
○森中央じん肺診査医 続きまして、5頁の3からご説明します。今回新たに特殊健診の対象となった
物質(ニッケル化合物、砒素及びその化合物)の健康管理手帳における取扱いについてご意見をいた
だきたいと考えております。
 現状としては、ニッケルに関しては健康管理手帳の交付対象の業務とはなっておりません。砒素に
関しては、「三酸化砒素を製造する工程において焙焼若しくは精製を行い、又は砒素をその重量の3%
を超えて含有する鉱石をポツト法若しくはグリナワルド法により製錬する業務」が交付対象となって
おります。参考までに、平成21年末の交付数が43件となっております。
 ニッケル化合物に係る業務については、2の(1)の各要件に照らして記載しております。ニッケル化
合物については、国際的にもIARCの評価において、「?T:人に対して発がん性がある」物質等と分類
され、特化則によるばく露防止対策等とともに、労働安全衛生法第66条第2項に基づく、有害な業務
に過去に従事し、現に事業者に使用されている労働者を対象に事業者が行う特殊健診の対象業務でも
あり、?@のハに該当すること。
 次に、「ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務による肺がん又は上気道のがん」です。
こちらについては、労働基準法施行規則別表第1の2第7号における業務に起因する疾病であり、?Aの
イに該当すること。
 次に、近年取扱い等が行われるようになった物質等ではなく、過去30年間の労災認定事例がないこ
となどを勘案すると、?Bに該当しないと考えられること。以上から、現状においては健康管理手帳の
交付対象に係る要件を満たしていないと考えられ、交付対象業務としないことが適当であると考えら
れるのではないか。こちらについてご意見をいただきたいと考えております。
○櫻井座長 ニッケル化合物について、事務局から原案が提示されたわけです。これは前回の検討の
内容を含めての提案ですが、いかがでしょうか。これについてご意見がありましたら、ご発言をお願
いします。
○和田委員 ニッケル作業者は、いまどんな状況なのですか。どんどん増えているのか、それとも減
ってきているのか、退職者はどんな状況なのか。交付件数はどんどん増えているのか、それが1つです。
 もう1つ、最近ニッケルを扱う工程が非常に変わったとか、そういったことはないのでしょうか。
○森中央じん肺診査医 特殊健診の検討を行った事前のリスク評価の情報については、抜粋したもの
が参考資料の41頁になります。平成19年度単年度の報告で、推移がわからないのですが、その時点で
作業従事労働者数が1万9,354人、取扱い量の合計が77万トン。
○長山化学物質評価室長補佐 その当時、報告として単年度で取りますので、そこから経年となると、
ニッケルについては特化則の?U類に入って、特化健診で事業場から今後報告が来ますので、まだ始ま
ったばかりなので、それを何年か見ると増えたか減ったかが見えてくるのかなと思います。
○山田委員 電池の製造業務については、これから飛躍的に増えます。ニッケルはものすごく使うと
思います。
○桐生主任中央じん肺診査医 用途から考えると、それはまだまだ使われるものかなとは思います。
○山田委員 メッキ作業での使用は少なくなっていくと思いますが、電池はこれからすごいと思いま
す。
○和田委員 何か工程が変わったとか、そういうときに健康障害が増えるのですね。そういったこと
はないのでしょうね。いままでの発ガンゼロというのは、何か工程が変われば出るかもしれませんが、
そういうことはないということで。
○森中央じん肺診査医 補足になりますが、前回の検討会からニッケルに関していろいろな情報を集
めていたのですが、参考に特殊健診のときの資料として、47頁から付けておりますように、海外のヒ
トの疫学データはこちらにまとめられております。国内の発がん性に係る疫学データも探してみまし
たが、現在のところ国内でのデータはまだ把握できておりません。
○和田委員 ニッケルによる発がんとか、そういうものの統計は、業務上疾病ということでずっと取
られているわけですね。
○森中央じん肺診査医 業務上疾病の労災データは記録されていますが、いまのところニッケルによ
る労災認定の報告はありません。
○和田委員 取っていますよね。その結果だけは見ておかないと。急に何か増えてきたとか、つかま
えないと、何かあったときに。
○山田委員 ニッケルの場合、精錬とかそういう形でばく露量がものすごく多い。電池の場合は多い
ことは多いのですが、精錬から比べたら全然レベルが違うのです。ただ、業種差についてはまだほと
んど研究されていないのですよね。
○清水委員 精錬業務は、粉じんばく露がいちばんリスクが高いわけですね。それは、いつごろまで
日本ではやられていたのですかね。
○森中央じん肺診査医 我が国において精錬業務は、戦後から本格的に国内で始まったと聞いている
のですが、いつまでというのは把握しておりません。
○清水委員 いまは、ほとんどそういう粉じんばく露はないのですか。いつごろから変わったのかで
すね。
○山田委員 第1次の製錬をおこなったあとのものを輸入しているのでしょう。
○清水委員 原産地で。
○和田委員 データを正しく評価できたということで、今回はこれでいいと思います。
○櫻井座長 提案されているとおり、現段階で要件を満たしているとは考えられないので、交付対象
業務とはしないという考えでよろしいですか。ありがとうございました。
 次に、砒素及びその化合物についてお願いします。
○森中央じん肺診査医 続きまして、6頁の2)の砒素及びその化合物についてご説明します。砒素及び
その化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く)に係る業務については、2(1)の各要件に照らしてま
とめると、砒素及びその化合物については、国際的にもIARCの評価において、「?T:ヒトに対して発
がん性がある」物質等と分類され、特化則によるばく露防止対策等とともに特殊健診の対象業務でも
あり、?@のハに該当すること。「砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しくは精錬を行う工
程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務による肺がん又は皮膚がん」は、労働基準法施行
規則別表第1の2第7号における業務に起因する疾病であり、?Aのイに該当すること。労災認定事例が
昭和55年度以降約30件、近年約10年間(平成10~20年度)においては3件、現在こちらの事例につ
いては下のほうに書いておりますが、こういった3件あることなどを勘案すると、?Bに該当すると考え
られること。以上のことから、健康管理手帳の交付対象に係る要件を満たしていると考えられ、労働
基準法施行規則別表第1の2第7号における業務(砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しく
は精錬を行う工程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務による肺がん又は皮膚がん)のう
ちで、労災認定事例となった無機砒素化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く)を製造し、これら
を粉砕し粉状にする業務について、新たに健康管理手帳の交付対象業務とすることが適当であると考
えられるのではないか。
 ここで労災認定事例の簡単な紹介をします。2例とも同じような作業業務をやっております。疾患名
は原発性肺がん。従事歴が14年6カ月。農薬工場において、亜砒酸を硝酸で酸化(砒酸反応)させて
砒酸液を作る作業や、砒酸鉛・砒酸石灰を製造し、乾燥後に粉砕混合して包装する作業に従事してお
り、無機砒素化合物を製造する工程における業務上の疾病と認められた。同様に、もう1例も原発性肺
がんで、従事歴が15年、作業内容については同じものになっております。
 3例あったのですが、上記2例以外のもう1例については、資料を確認することができず詳細は不明
であり、こちらには載せておりません。このような事例について報告が挙がっている状況で、今回の
健康管理手帳の交付対象業務についてご意見をいただければと考えております。
○櫻井座長 新たな健康管理手帳の交付対象業務とすることが適当であるということですが、この点
はいかがでしょうか。
○和田委員 これは交付要件として問題ないと思いますが、「発生リスクが高く」と書いてあります。
問題ですが1つは、ゼロ以外は高いと読むのかどうかですね。
 もう1つは、一般の人口における肺がんの発生率と比較して高いのかということですね。それがいち
ばん問題になるのではないかと思うのですが、そこまでやって砒素を削るのも問題があるかもしれな
いから、しょうがないですかね。10年間で3例ですよ。
○圓藤委員 管理濃度は3μg/m3としていただいておりますが、その数字は、およそその濃度で40年
ほどばく露したとして、肺がんなどの過剰発がんが1,000人に対して1人起こる量として定められてい
ると思うのです。だから、管理手帳交付対象者は、大体そのレベルより高濃度ばく露した人を対象と
するのが妥当ではないかと私は思っております。
○和田委員 現在のばく露濃度は昔のように高濃度なのですか。
○圓藤委員 3μgというのは、製造業では守りにくいところですね。砒素化合物を製造する作業では、
3μgというのはかなりしんどいところがあると思います。
○和田委員 それが要件?@で、そのために入れてあるわけです。だから、頻度が高いとかリスクが高
いというピタッとしたものの数字を出したとして、それをどう読むかですね。30年で、いままでばく
露者は何人ぐらいいて3例なのか。一般の肺がんの発生率とはかなり違う数ですか。一応考えておかな
ければいけないかもしれませんが、それは別として、問題ないと思いますが、いまは少しずつ減って
いるような感じもしますね。これは人が少なくなったのか、あるいはばく露濃度が少なくなってきた
のか。
○圓藤委員 ただ、管理濃度の3μg/m3と定められたのは最近ですので、あまりどういう推移をして
きたかという業界での報告はないのです。以前に比べればもちろん減っておりますが、その基準が製
造業全体で守られているというレベルではない。もちろん、半導体メーカー等で砒素化合物を使用す
る側、取り扱う側ではもっと低いレベルでやっていると思いますので、砒素取扱い業務全般に網を広
げるのは、広げすぎであろうと思っております。
○和田委員 1,000人対1というのは、ヒトのデータで出しているわけですね。
○圓藤委員 作業環境濃度で。
○和田委員 作業環境濃度で、しかも安全率も掛けないで、大体そういうことになるということです
か。
○圓藤委員 安全率は掛けていません。ユニットリスクですので、掛けていないと思います。3μg/m
3ぐらいでしたら、いわゆる自覚症状・他覚症状ではほとんど見つからない。だから、がんの起こるリ
スクは上がるということですので、長期観察しないことには引っかかってこないと思います。
○和田委員 オーバーしているところで1,000人に1人としたら、10年間で3人というのは少ない数
になってしまうのではないですか。
○圓藤委員 大半は作業を辞めたあと追跡不能で、がんになっていてもわからないという状況であろ
うと思います。潜伏期間が30年や40年ですので。
○和田委員 それを言い出すと、ニッケルだってゼロというのは本当かなということになってしまう
から。
○山田委員 農薬工場で使う砒素の量はものすごく多いのですか。
○圓藤委員 それは昔の話です。農薬はもうどこも作っておりませんので。昭和40年代の初めで終わ
っていますので、ばく露量が高かったのは昭和20年代です。
○山田委員 そのころ何人ぐらいいたのですか。
○圓藤委員 たくさんおられたと思います。
○櫻井座長 何百人とか何千人ですか。
○圓藤委員 たぶんいたでしょうけれど、それだけの追跡はできていません。
○櫻井座長 いま考える対象は、そういう方々ですね。
○圓藤委員 それは過去ですので、将来的にその人たちには新しいばく露はありませんので、むしろ
管理手帳の対象とするのは、いま取り扱っている人たちを退職後管理手帳を交付する対象にするので
すかということだと思うのです。昭和20年代にばく露した人たちを救済するかどうかの話ではないと
思います。
○山田委員 労災認定で昭和45年から昭和62年で13、昭和63年から平成9年で14という数字があり
ます。これは、業種としてはほとんどが精錬なのですか。27例ありますが、どんな業種なのですか。
それと平成10年から平成20年の3例とは、業種として違っているのですか。この10年は、農薬工場
が2例ですね。
○森中央じん肺診査医 平成9年より前のものは資料が残っていない状況で、この疾病名では認定され
ているのですが、何の業務かまではわからない状況です。
○山田委員 主に肺がんなのですか。
○森中央じん肺診査医 それも、そこまでの内訳がない状況です。
○山田委員 皮膚がんというのは、どこにも皮膚がんらしきものがないので、どこにあるのかなと思
うのですが。
○桐生主任中央じん肺診査医 山田委員のご指摘は、国内の認定という意味ですか。
○山田委員 労災認定が27例ありますね。その労災認定はどんな認定なのか。主に肺がんと皮膚がん
と書いてありますから、肺がんと皮膚がんの割合はどれぐらいなのですか。
○森中央じん肺診査医 詳細については、内訳がわからない状況です。
○山田委員 肺がんについては原発性肺がんで出ています。皮膚がんと書いてあるけれど、どこにも
皮膚がんの数字がないですね。
○森中央じん肺診査医 そうですね。労災における疾病ついては、国内と国外の疫学データを勘案し
て定められていると聞いています。
○山田委員 国外のというのは、どういうことですか。
○森中央じん肺診査医 参考で付けているのですが、61頁以降で、こちらは環境部会の健康リスク専
門委員会の資料で参考にさせていただいております。
○山田委員 私が言いたいのは、7頁の労災認定件数で、国外の労災ということがあるのですか。
○森中央じん肺診査医 認定することはありません。ただ、疾病を規定する際に、いつ国内で発生し
てもよいように、海外のデータも勘案しながら、窓口としては広く設定していると。ただ、実際に皮
膚がんを認定しているかどうか、そこまでは内訳はわかりません。
○山田委員 昭和55年から昭和62年で13例というのは、認定された件数でしょう。
○森中央じん肺診査医 認定されている件数です。
○山田委員 それは国内であった事例ですか。
○森中央じん肺診査医 労災の認定自体は国内の事例です。
○山田委員 そのうちの肺がんはいくつで、皮膚がんはいくつだったのですかということです。
○桐生主任中央じん肺診査医 そこはデータはありません。
○和田委員 健康管理手帳を渡すことによって、健診をやることによって、この数値を減らすことが
できると考えていらっしゃるわけですか。
○櫻井座長 過去に大量ばく露を受けた方々に渡せればいいわけですが。過去に大量ばく露して、と
っくの昔に辞めて、もう連絡がつかない人にもし渡せたとしたら。
○和田委員 健康診断で早く発見されて助かった方の例があるかどうか。
○山田委員 助かった方の頻度はどれぐらいなのかということはありますね。
○桐生主任中央じん肺診査医 健康管理手帳は、基本的には離職後の手帳制度なので、交付して管理
することによって発生を減らすというよりは、発生した場合に早く発見する効果が期待できる制度と
考えております。
○櫻井座長 一応公示しますね。公表して、アスベストでも同じように過去にばく露した人は、申し
出ればその人にお渡しするわけだから。
○和田委員 1年間間隔で、早期発見がどれぐらいできるかということですね。健診は年に2回やって
いるのですか。
○山田委員 年に2回です。
○櫻井座長 特定健診と同じです。
○和田委員 いずれにしても、肺がんが出た場合、本人が前に砒素工場で働いていたとなれば、別に
健康診断で発見されなくても、申請すれば補償はもらえるわけでしょう。まあ、早期発見できると。
○土屋委員 健診を促す意味では、動かしてあげたほうがいいと思いと思います。というのは、アス
ベストのときにわかったのですが、新聞で騒いだら、我々の所に入院した患者の職業歴を、臨床家が
年寄りから若い医者まで入れ替わり立ち替わりしつこく聞いていたのです。怒り出す方もいたのです
が、新聞で見たときに、亡くなった方の奥様2人から電話がかかってきて、なぜあんなにしつこく聞い
たのかやっと理解できたと。当時も説明して聞いたはずなのですが、アスベストでさえ、意外と労働
者自体が自覚していないのです。
 その前にも、1970年代に1回騒ぎがあったのですが、それでも自覚されていない。おそらく、砒素
になると、ほとんどの方は肺がんとか皮膚がんという認識はないと思うのです。そういう方に注意を
促す意味では、条件に合っているのであれば、お配りしたほうがいいのではないかと思います。説明
するほうもしやすくなるので。
○櫻井座長 現在、3μgでコントロールしているわけで、その方々の場合には、やはり少し負担にな
るのですかね。1,000人に1人の過剰リスクといっても、リスクはそんなに高くないですよね。どう思
いますか。
○和田委員 それは置いておいて、当然やってあげるのが建前でしょうから、検査はちゃんとやって
あげましょうと。それが有効であるかどうかなどは考えないで政策を取るわけですから、それはしょ
うがないと思います。ただ、先ほど言ったように、これは本当にリスクが高いと読むかどうか、それ
だけの問題です。
○櫻井座長 そのリスクの高さは、毎年2回、例えば胸部X線で、放射線ばく露の影響等のバランスも
考えていくのでしょうね。
○和田委員 この前胸部レントゲン写真の委員会でいろいろ議論されて、結論が出たのだろうと思う
のです。はっきりしない結論だけれど、3μgをリスクが高いと読むかどうかに対して、それだけの金
をかける必要があるかどうか、早期発見が有効であるか。むしろ、発見されたときにはちゃんと補償
してあげるわけですから、そちらにたくさんお金をかけたほうがいいのではないかという感じがする
だけのことであって。
○山田委員 平成21年度の特殊健康診断の報告書は、まだ上がっていないのですか。砒素は何件ぐら
いあったのですか。
○桐生主任中央じん肺診査医 つい1カ月ほど前に公表したところですが、砒素は受診労働者数として
1,600人になります。
○和田委員 1,600人でがんが見つかったという報告はあるのですか。
○桐生主任中央じん肺診査医 その結果については明確ではなくて、有所見者数としては32名で2%
というのはあるのですが、最終的にがんがどのぐらいというデータは、行政的には持ち合わせており
ません。
○山田委員 基本的には、1,600人の人たちがこれからもらうわけですね。もっといるのですか。
○桐生主任中央じん肺診査医 いいえ、そんなには。
○圓藤委員 それは砒素取扱者でしょう。取扱者と製造する人とは違うと思うのです。
○山田委員 その中の、まだ。
○圓藤委員 ごく一部だということですね。わからない。そんなもので。
○山田委員 製造する人なんて100人ぐらいでしょう。おそらく、ほかは取り扱う人が多いと思います
ね。ほかに100人といったら、管理手帳が本当に要るのだという人が、和田委員が言われたように出て
きたら補償してあげたらというのはありますね。
○和田委員 しかし、それは全般的に見直さなければいけない、考えなければいけない事項で、これ
だけここで議論をしてもしょうがないわけですから。
○山田委員 ニッケルはもっと増えると思いますよ。
○和田委員 今日はこの要件に合っているかどうかを判断するということでしょう。そしてリスクが
高いか。
○櫻井座長 要するに、交付要件ですね。それについてはまだありますので、説明してください。
○森中央じん肺診査医 先にご説明して、併せてご意見をいただきたいと思います。無機砒素化合物
(アルシン及び砒化ガリウムを除く)を製造し、これらを粉砕する業務を健康管理手帳の交付業務と
する場合の話ですが、その際の交付要件並びに健康診断の実施頻度及び健康診断項目について、下の
ようにまとめております。
 交付要件については、近年の労災認定事例はわかっているものでも2例と数は限られているのですが、
いずれも5年以上の従事期間であること。無機砒素化合物による慢性的な健康障害においては、石綿や
ベリリウムのような胸の陰影等の特異的な臨床所見がないことなどから、従前の三酸化砒素と同様、
従事期間をもって交付要件とすることが適当であると考えられること。現行の三酸化砒素等の交付要
件と特段の差を設けることが必要であると考えられないことから、「5年以上従事した経験を有するこ
と」とすることが適当とすることが考えられるのではないか。
 また、健康診断の実施頻度及び健康診断項目については、現行の三酸化砒素等に係る健康診断の実
施頻度とすることが適当であるが、健康診断項目については、離職後に実施する健康診断において、
生物学的モニタリングを目的とした代謝物の測定は不要であることから、別添の案としてはどうかと
いうことです。
 9頁に、今回交付対象とした場合の健診項目の案を付けております。参考に、現行の三酸化砒素の健
康管理手帳及び特殊健診の健診項目は、参考資料の45~46頁に付けております。先ほどモニタリング
の項目と言いましたが、「尿中の砒素化合物(砒酸、亜砒酸及びメチルアルソン酸に限る)の量の測
定」は、現行の三酸化砒素及び特殊健診のほうには入っていますが、離職後の健診においては削除し
ていいのではないかという案になっております。
○櫻井座長 そういう原案となっております。無機砒素化合物を製造し、これらを粉砕する業務を健
康管理手帳の交付対象業務とする。交付要件として、5年以上の従事期間であること。つまり、「無機
砒素化合物を製造し、これらを粉砕する業務」と限定しているわけです。高濃度ばく露を考えている
のだと思います。
○和田委員 この数値が正しく、みんな5年以上業務に従事していたということがきちんと説明されて
いるのであれば、別に問題ないと思います。
○櫻井座長 特にこれでご異存はありませんか。
○桐生主任中央じん肺診査医 いまの交付対象業務の案については、今日の会議の前に圓藤委員とも
いろいろ打合せをして、圓藤委員も何とかうなずいてくださったのですが、いま櫻井座長がご指摘さ
れたように、高濃度でばく露された方をどう限定するかという非常に難しい課題があります。もちろ
ん濃度が測定されていればいいのでしょうが、そういったものもありませんし、取扱量でやったらど
うかというご提案も圓藤委員からあったのですが、ほかの健康管理手帳でそういった要件を定めてい
るものがなかったり、そんなことで、ここで提案したのは粉砕して粉状にする業務が濃度が高いだろ
うということで設定したということです。圓藤委員も、いまのところはうなずいていただけるという
ところです。
○圓藤委員 ハイリスクの人たちは、高濃度ばく露を長期にわたって、そのばく露量で判断すべきだ
と思いますが、それをこういう文言の中にどう盛り込むかは、かなり難しい議論だろうと思うのです。
どれだけばく露したかは、なかなかわかりにくいと。1つは、管理濃度で考えられないかという考え方、
もう1つは取扱量で考えられないかということ。
 あるいは、石綿等では症状で判断するということがあります。皮膚がんに関しては、色素沈着、色
素脱出、角質肥厚があったあとに悪性化が起こりますので、皮膚所見があるという限定の仕方で限定
していくことは可能だと思うのです。ただ、肺がんの場合は皮膚所見なしに起こる人がおられるので、
皮膚所見だけで線引きするのは良いのか悪いのかという議論が出てくるところです。
 もう1つ、資料に環境省の報告書を出したのですが、過剰発がんと言った場合にはっきりしているの
は、SMRなどのように死亡で判断するということで、肺がんはそれでやっているわけです。皮膚がんの
場合は、早期に見つかれば大抵は治癒しており、死亡統計のようなデータがあまり報告されていない
ので、評価しづらい。実際は、肺がんよりも多数発生しております。同じ人が何回も発生しています
ので、多発ボーエン病として現れるので、そういう人たちを救済してあげればと思っております。い
ろいろ考えていただいた結果、これがいちばんいいとは言えませんが、ほかの案よりベターであると
いう案を出していただいたように思っております。
○和田委員 昔のばく露は、いまよりはもっと高かったでしょうから、高濃度ばく露を受けて、それ
で5年間接しているということであれば、それでいいのではないですか。
○櫻井座長 「無機砒素化合物を製造し、これらを粉砕する業務」というのは、製造と粉砕と両方満
たしている場合ということになりますね。又はではなくて、製造し、かつこれらを粉砕する業務とい
うことですね。この言葉からそう取れますね。
○圓藤委員 粉体になっているほうが取り扱いしにくいにくく、作業環境濃度を高めるということで、
粉状になっているものという意味合いでこういった文言にしていただいていると思います。
○櫻井座長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。この案で、当委員会の結論とさせていただき
ます。
○森中央じん肺診査医 確認ですが、健診の頻度と項目についても、特にご意見はございませんか。
○櫻井座長 頻度は6カ月に1回、項目は生物学的モニタリングだけ除くということですね。その議論
は、私はわかりますが、ご説明いただけますか。
○圓藤委員 生物学的モニタリング不要というのは、ばく露して第?T相、第?U相、第?V相といくつか
の相がありますが、1週間程度でほぼ全量出ていきますので、ばく露後半年後や1年後にあるとは思え
ないということで、除いていただいたと思います。
 また、症状の中に急性症状的なものもありますが、それが遷延する場合もありますので、少し含め
て見ていただいているということです。焦点は、皮膚症状を詳しく見ることと、呼吸器、肺がんを早
期に発見できるというところにあろうと思います。
○櫻井座長 これについて、何かご意見はございますか。ないようですので、健診の実施頻度と健診
項目についても、この案を了承するということで結論とさせていただきます。
 以上で、今日の2番目の議題については終了しました。ほかに、何か全体としてご意見等ありました
ら、ご発言いただきたいと思います。よろしいでしょうか。事務局から何かございますか。
○桐生主任中央じん肺診査医 いま、特殊健診の4物質と健康管理手帳の2物質についてご議論いただ
きましたが、初めに議論いただいた4物質の健康管理手帳に関して、議題としては用意していないので
すが、4頁の要件の?@の規制を検討するということで、?@には該当するのですが、?Aの要件に該当して
いないのと、?Bの発生の予測について、これは詳細な検討が必要なのかもしれませんが、労災の発生
事例のデータについては、いまのところ4物質のいずれも報告はないということです。?Aに該当してい
なくて、?Bにも少ない検討ですが労災では発生していないということで、少なくとも緊急に入れる、
入れないの検討が必要な状況ではないのではないかと考えております。
○櫻井座長 それについては、何かコメントはございますか。特にないようですので、ありがとうご
ざいました。
 今日は、特殊健康診断に係る説明及び健康管理手帳の交付対象業務等に関して検討を進めてきまし
たが、本検討会の報告書の健康管理手帳関係で、今日の資料と検討結果に基づいて事務局で報告書
(案)を作成して、後日各委員に報告書(案)をご確認いただきたいと思います。特殊健診について
も、報告書は同様なことになりますね。
○桐生主任中央じん肺診査医 特殊健診については、基本的には既存の資料ベースになりますが、今
日の会議でご指摘いただいた事実関係のデータの確認等は、報告書の形になるかはわかりませんが、
整理して、先生方のご意見を確認させていただきたいと思います。
○櫻井座長 報告書(案)については、特段問題がないようでしたら、さらに細かい修正や表現ぶり
等を私と事務局とで詰めますので、座長にご一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
 次回の検討会は、特殊健診の項目について検討、ご確認という予定になっておりますが、必要があ
りますか。別の物質ですね。
○桐生主任中央じん肺診査医 そうです。今回については、もし継続の審議になった場合にはこうい
うことになるかと思いますが、今回は一応お答えをいただいたので、また1年後に新しい物質が出てく
るときの検討と、中長期的に特殊健診をどうしていくかについて、専門委員会で一度検討したところ
もありますので、それが大きな課題で時間がかかりますが、ある程度意見がまとまればお諮りすると
いうことで考えております。
○櫻井座長 そういうことだそうですので、よろしくお願いいたします。今日はお忙しいところお集
まりいただきまして、ありがとうございました。これで終わります。




(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部労働衛生課

電話: 03(5253)1111(内線5495)

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