ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(結核部会)> 第1回厚生科学審議会結核部会議事録(2014年1月29日)




2014年1月29日 第1回厚生科学審議会結核部会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成26年1月29日(水) 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 共用第8会議室(19階)


○出席者

加藤部会長 遠藤委員 鎌田委員 小森委員 深山委員
磯部委員 南委員 山岸委員 吉山委員 徳永委員
有馬委員 杉本委員 小林参考人

○議題

(1)厚生科学審議会結核部会の設置について
(2)結核に関する特定感染症予防指針に掲げられている施策の
   進捗状況等について
(3)その他

○議事

○難波江補佐 少しお時間より早いですが、皆さんおそろいですので、ただいまより「第1回厚生科学審議会結核部会」を開催させていただきます。

 開催に当たりまして、佐藤健康局長より御挨拶申し上げます。

○佐藤局長 皆さん、おはようございます。改めまして、厚生労働省健康局長の佐藤敏信でございます。どうかよろしくお願いします。

 早いもので、1月ももう下旬になっておりまして、そういうことから考えますと、今年度のこの結核部会が第1回ということなので、ちょっと不思議な感じもいたしますが、私はその間の7月に前任の矢島を引き継ぎまして、この職にございます。ちょっと遅い挨拶になりますけれども、引き続きどうかよろしくお願いいたします。

 結核、申し上げるまでもないですが、私自身も若いころといいますか、青木正和先生がいらっしゃるころにいろいろと御指導賜りましたし、引き続き島尾先生にも御指導賜っているところですけれども、日本の感染症対策の中でも極めて重要な感染症の一つであることは言うまでもございません。そうした中で、予防接種も含めまして感染症全般の体制整備という中で、これまで厚生科学審議会の感染症分科会のもとに置かれておりました部会でございますけれども、厚生科学審議会の直属の部会という形で整理されまして、予防接種ともども引き続きその充実を図ることになりましたので、よろしくお願いいたします。

 いずれにしましても、本日は平成23年に改正いたしました結核に関する特定予防指針に掲げられております施策の進捗状況につきまして、委員の先生方にお諮りし、御審議いただくことにしております。限られた時間ではございますが、専門委員のお立場から大局観に立った御審議、御検討、御意見を頂戴できればと思います。

 簡単でございますが、冒頭の挨拶にかえさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

○難波江補佐 審議に先立ちまして、事務局より本部会について御説明させていただきます。早速ですが、お手元の資料の4枚目にございます資料1をごらんいただけますでしょうか。ただいま局長からも話がございましたが、この結核部会は昨年度までは厚生科学審議会の感染症分科会の下に結核部会として置かれておりましたが、今年度から厚生科学審議会の見直しにより、感染症分科会が廃止されました。それに伴いまして、厚生科学審議会直轄の部会という形で改めて設置いたしたところでございます。

 本部会の部会長につきましては、厚生審議会令により厚生審議会の委員の互選により選出することとなっておりますが、厚生科学審議会の委員の先生に事前にお諮りしましたところ、加藤委員に部会長をお願いすることになりましたので、御報告いたします。

 次に、本部会、第1回ということで、委員の御紹介をさせていただきます。その1枚手前の紙に名簿がございますので、そちらの名簿の順に御紹介させていただきます。

 霞ヶ関総合法律事務所、弁護士の中山ひとみ委員です。本日は御欠席でございます。

 福島県県北保健福祉事務所長の遠藤幸男委員でございます。

○遠藤委員 よろしくお願いします。

○難波江補佐 独立行政法人国立病院機構北海道医療センター呼吸器内科医長の鎌田有珠委員でございます。

○鎌田委員 鎌田でございます。よろしくお願いいたします。

○難波江補佐 結核予防会結核研究所副所長、加藤誠也委員です。

○加藤委員 加藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○難波江補佐 日本医師会常任理事、小森貴委員でございます。

○小森委員 小森でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○難波江補佐 所沢ロイヤル病院院長補佐、深山牧子委員でございます。

○深山委員 よろしくお願いいたします。

○難波江補佐 富山県衛生研究所細菌部副主幹研究員、磯部順子委員でございます。

○磯部委員 磯部と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○難波江補佐 読売新聞東京本社編集局総務、南砂委員でございます。

○南委員 よろしくお願いします。

○難波江補佐 国立病院機構千葉東病院院長、山岸文雄委員でございます。

○山岸委員 山岸でございます。よろしくお願いします。

○難波江補佐 結核予防会複十字病院診療主幹、吉山崇委員でございます。

○吉山委員 よろしくお願いします。

○難波江補佐 国立病院機構南京都病院小児科医長、徳永修委員でございます。

○徳永委員 徳永です。よろしくお願いいたします。

○難波江補佐 大阪市東住吉区保健福祉課保健主幹、有馬和代委員でございます。

○有馬委員 有馬と申します。保健師です。どうぞよろしくお願いいたします。

○難波江補佐 株式会社キリン堂未病医療サポート室室長、杉本幸枝委員でございます。

○杉本委員 杉本です。どうぞよろしくお願いします。

○難波江補佐 続きまして、本日は参考人として千葉県衛生研究所感染症疫学研究室長の小林八重子参考人をお呼びしております。

○小林参考人 小林です。どうぞよろしくお願いいたします。

○難波江補佐 続きまして、事務局を紹介させていただきます。

 結核感染症課長の正林でございます。

○正林課長 正林でございます。よろしくお願いします。

○難波江補佐 結核感染症課課長補佐の梅木でございます。

○梅木補佐 梅木です。よろしくお願いいたします。

○難波江補佐 私、同じく結核感染症課の課長補佐をしております難波江と申します。よろしくお願いします。

 それでは、ここより加藤部会長に進行をお願いしたいと思います。

○加藤部会長 部会長をお引き受けすることになりました結核研究所の加藤でございます。不慣れなところもございますけれども、意義のある御議論になるように進めて参りたいと思いますので、どうぞ御協力、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず資料の確認を事務局からお願いいたします。

○難波江補佐 お手元の資料を確認させていただきます。

 1枚目、議事次第、2枚目、座席図、委員名簿。

 それから、資料1、結核部会の設置について。

 資料2「最近の結核対策」。

 資料3「指針に掲げられている施策の進捗状況等について」。

 資料4、千葉県の解析結果の資料でございます。

 それから、参考資料1として、「退院できる基準について」がセットとなっております。

 あとは、卓上配付の資料でございます。

 不足がございましたらお申しつけください。

○加藤部会長 どうもありがとうございました。

 本日の会議の進行でございますけれども、お手元にございます議事次第に沿って進めてまいりますので、よろしくお願いします。

 まず、議題1「厚生科学審議会結核部会の設置について」につきましては、先ほど事務局から既に御説明があったとおりです。

 続きまして、議題2「結核に関する特定感染症予防指針に掲げられている施策の進捗状況等」でございます。これは、先ほど佐藤局長から御案内がございましたように、平成23年5月に策定された結核に関する特定感染症予防指針の目標が平成27年になりますので、その意味では中間点が過ぎたということも言えるかと思います。本日は、結核の現状、その他、予防指針に掲げられた各自治体の取り組み、進捗状況の報告をもとに、残された期間で具体的な目標に向けてどのように対策を進めていくべきかということで、各委員の御意見をお聞きするということでございます。

 予防指針の項目は多岐にわたって、膨大でございます。次回の本部会が既に予定されてございますけれども、その論点整理に向けて限られた時間で有効な内容になるように御協力をお願いしたいと思います。評価について御報告があるところでございますけれども、最後のほうにまとめということがございますので、特にこれを中心に、追加すること、あるいは修正することがあれば御議論いただきます。また、それ以外のことにつきましても、御説明に関する御質問あるいはその他の項目につきましての改善点、改善方法等がございましたら、各委員の大所高所のお立場から議論いただきたいと思ってございます。

 それでは、議題2につきまして事務局から御説明をお願いいたします。

○梅木補佐 それでは、最初に資料2と題しました「最近の結核対策」というものから御説明いたします。初めて当部会に参加される方もいらっしゃるということで、まとめたものとなっております。

 では、1枚おめくりください。まず、世界における結核対策をお話させていただきます。

 その次のページに参ります。世界の結核対策は、過去十数年の間に大きな進捗がありました。しかしながら、2012年現在、WHOの推計によれば、世界にはいまだ年間約860万人の活動性結核の患者が発生しておりまして、そのうち130万人が死亡しているとされています。また、アフリカを中心にHIV合併結核も猛威を振るっておりまして、年間110万人の結核患者さんがHIVも合併しているという現状です。それから、世界中では年間45万人の多剤耐性結核の患者さんが発病しています。こういった形で、結核というものは再興感染症の一つとして、依然として大きな健康問題となっているという現状です。

 その次のスライドに移ります。この図は、人口当たりの結核罹患率の分布を示しているものです。青色が濃くなるに従って罹患率の数字が上がるというものでありまして、青いものが非常に濃い地域につきましては、人口10万人当たり500以上という非常に高い罹患率を示しています。その多くの国々はアフリカの国々となっておりまして、HIV感染症も多くまん延している地域と重なっております。また、アジアではミャンマー、カンボジアなどが周辺国として比較して高い罹患率を示しているというものになります。

 では、次のスライドに移ります。結核対策の世界の目標を掲げておりまして、2つございます。国連ミレニアム目標として、罹患率を低下に転ずるというもの。それから、ストップ結核パートナーシップ目標として、有病率と死亡率を半減させるというものがありまして、これらは目標達成に向けて順調な進捗を見せているところでございます。WHOによって提唱されました結核の世界戦略、DOTSというものが世界各国で導入され、実行されてきた成果によるとされています。

 その次のスライド、各国の結核罹患率を2011年の時点で比較しているものです。先進諸国と言われるようなアメリカ、カナダ、スウェーデン等と比較しまして、日本はまだ少し高いという状況になっております。

 その次のスライドに移ります。「結核排除に向けて長期的な視点で粘り強い対策が必要」であるというタイトルにしております。日本の結核の推移と他の国を比較しておりまして、日本より先行して結核を減らしてきた英国と、やや後から減少し始めた韓国とを比較しているスライドになります。英国では、この罹患率が100から20に低下するまでに19年かかっているという状況。それから、日本においては31年かかっているところです。その31年かかっているという背景には、日本自体が急速に結核の罹患率を下げてきたということで、特に高齢者において結核の既感染率が高い状態であったり、高齢者の割合が多いということも要因として考えられるところです。

 いずれにしても、感染者の再燃などは徐々にしか減っていかないという状況で、いかに新たな感染者の広がりとか、二次感染を防いでいくかというのが重要になっておりまして、そのためには粘り強く対策を進めていくということが必要になっているところです。また、この粘り強く進めるに当たって、減少の速度を少しでも加速するためには、潜在性結核感染症に対する取り組みとか、将来的には新たな予防とか診断とか治療という各分野で技術革新が必要になってくる状況だと思います。

 次のスライドに移ります。これは、一般論としての疫学段階ごとの結核対策の方向性を示しておりまして、高まん延国において、特に資源が限られた環境においての対策というのは、塗抹検査を中心とした顕微鏡の整備とか届出システムを確立する、あるいは標準化された治療、患者支援、薬剤の確保、これは偽薬の問題があります。それから、予防接種を主な柱としております。

 これに比べますと、中・低まん延国における対策は、高まん延国と比較すると、右のスライドとして整理できるところになります。すなわち、診断設備については、培養とか感受性試験あるいは遺伝子検査へと段階的に高度化していって、質を高めていく必要があります。それから、サーベイランスについては、質自体を向上させるということが必要になります。それから、ハイリスクグループの対策の重要性というのは、一般人口において結核が減少するとともに、その重要性が増してくるということで、患者支援も必要になってくるということです。

 その他、同様に選択的な健診とか接触者健診、あるいは潜在性結核感染症の治療というのも重要性が増しているところです。また、医療体制の再編も必要としているところです。それから、BCGの見直しというのも、国の疫学状況に合わせて行っていくということもあるものです。

 次のスライド、我が国の結核対策に移ります。

 結核罹患率と結核死亡というものをお示ししておりますが、戦後間もない状況の日本では、罹患率は人口10万当たり約700と、非常に高度のまん延状況でした。参考までに先ほどの世界におけるアフリカ等の諸国で見られていた最も高い罹患率の国々が500以上と示されておりました。1980年ごろまでにかけて、非常に速いスピードで結核の罹患率は減少しておりまして、80年以降、徐々に緩やかな減少に移っております。1997年から99年にかけて、前年を上回るような新規患者が発生したことを受け、当時の厚生大臣から結核緊急事態宣言が出されております。その後は下降を続けまして、2012年で16.7という罹患率になっております。

 次のスライドは、結核対策の歩みとして歴史的な経緯を示しています。御参考までにごらんください。

 その次のスライドに移ります。感染症法等に基づく結核対策の概要で、1.健康診断、2.届出、3.就業制限・入院勧告、4.積極的疫学調査、5.公費負担医療、6.患者管理、7.予防接種、8.その他、法令に基づかないものの予算措置として実行しているものが、以下の四角のポツで記載している内容になっております。結核対策特別促進事業等で、地域の実情に応じた重点的に行うべき対策の強化を図っているところです。

 次のスライドに移ります。今回の議論となります予防指針の位置づけを記載しているようなスライドになっておりまして、法律の下にぶら下がっている、結核を特に総合的に予防対策に取り組むべき感染症と位置づけたものとして告示としてお示ししているものです。これらと同様の指針というのは、インフルエンザとか性感染症、後天性免疫不全症候群、麻しんに関しても定められております。

 次のスライドに移ります。この「結核に関する特定感染症予防指針」に係る経緯をざっと記載しておりますが、結核緊急事態宣言がきっかけになっておりまして、平成23年5月にはこの予防指針が改正されております。

 その次のスライドに移ります。この「結核に関する特定感染症予防指針」の主題と主な記載事項を一覧としてお示ししているものになります。前文から第九まであるようなものになっております。主な記載事項は、ごらんのとおりです。

 その次に移ります。平成23年改正時の主なポイントとしては3つございまして、10.医療の確保、20DOTS(直接服薬確認)の推進、それから3に具体的な目標として6項目を記載しているところです。これら3つのポイントを中心に、その次のスライド以降に話をまとめてございます。

 2ページおめくりいただいて、10.医療の確保についてです。改正内容としては、必要な結核病床の確保と患者中心の医療提供体制を再構築するということで、現状としては、高度専門施設が2つ、中核的な病院の確保については、平成24年時点では34都道府県が52病院を位置づけているところです。

 それから、結核病床数とか結核病床を持つ病院数、あるいは結核病床利用率等については、その次のスライドにグラフでお示ししているような経過となっておりまして、新規登録患者数の減少とともに、結核病床を有する医療機関数とか結核病床数は減少しておりまして、結核病床利用率についてはわずかに減少もしくは横ばいという形で推移しております。

 続きまして、13に移りますが、こちらのスライドは結核患者の高齢化率をグリーンでお示ししており、黄色が70歳以上の患者の割合になっております。こういった形で高齢化が進んでいるということを踏まえてモデル事業を平成4年から開始しておりまして、直近までにトータルの数としては、一般病床は74医療機関、366床を指定しておりまして、精神病院については21医療機関、138床を指定してモデル病床事業を進めてきてございます。

 次のスライドに移ります。20DOTS(直接服薬確認)の推進についてということで、改正内容は以下のとおりで、現状としては結核対策特別促進事業等によって各自治体におけるDOTS推進を支援している。それから、入院患者に対する院内DOTS体制を整備している、となります。これについては、平成24年度診療報酬改定によって、院内DOTSを実施していることを要件として入院基本料というものを一般病床並みに引き上げる形で改定がなされております。

 それから、多剤耐性結核の発生については、平成21年と平成23年と比較して、ほぼ変わらないといった数字がございまして、ある側面では治療の支援ができている現状をあらわしている一端ではないかというところです。

21は飛ばします。

22は、結核対策特別促進事業としてDOTSの占める割合が非常に高いということを示しているスライドになっております。

23については、平成24年度診療報酬改定の概要をお示ししておりますが、その改定によって結核病床の入院基本料を一般病床並みに引き上げることについての内容になっております。

 3.具体的目標の達成状況について。これら成果目標、事業目標というものを予防指針に掲げておりますが、以下のような状況になっておりまして、特に事業目標として全結核患者に対する直接服薬確認治療率というものを集計する予定としておりますが、明確な定義が定められていないという現状。それから、潜在性結核感染症治療開始者のうち、治療を完了した者の割合自体も、まだ明確には定めておらないところがありまして、今回議論していただきたいといったところがございます。

 最後、病原体サーベイランスの説明で終わりたいと思いますが、これについては、病原体サーベイランスの構築に努める必要があると指針に書いております。これについては、患者のサーベイランスに加えまして病原体のサーベイランスを整備することで、薬剤に対しての感受性がどうなっているのかという発生動向の把握ができるとか、接触者健診の効果的な実施につながる、従来は把握し得なかった大規模・長期間に渡る患者集積と結核菌の伝播の把握ができる、結核菌、特にMDR結核と言われる多剤耐性結核の発生・輸入・伝播に関わる情報の集積が期待されるということで、今後、日本が低まん延という時代になったときの非常に重要な役割を果たすのではないかと期待されているところです。

 しかしながら、具体的なあり方、実施方法については、国あるいは専門家等も明確なガイダンスは出していないところから、各自治体ごとの取り組みという現状になっているところです。

 以上で資料の説明を終わります。

○加藤部会長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明、世界の対策から日本の対策、さらに予防接種ということで広範にわたってございましたけれども、内容について御質問ありますでしょうか。どうぞ。

○鎌田委員 北海道医療センターの鎌田でございます。今、お示し頂きました20ページの結核患者収容モデル事業実績で、モデル病床がここ数年非常に伸びてきているとのお話でしたが、この実際の稼働率なりはどのような推移で動いているのか把握しておられますでしょうか。

○加藤部会長 事務局、お願いします。

○梅木補佐 把握しておりますが、特に都市部においてはなかなか機能していない現状はあると認識しています。

○鎌田委員 モデル病床をお持ちの施設で結核患者が発生しても結核診療が困難という事情で、結局は結核専門の医療機関に転院せざるを得ない事例が多々あるやに聞いております。モデル病床の数が増えるのは非常に良いことですが、実際にうまく稼働しないと、成果としては余り実りのあるものにならないのかなと危惧しております。

○加藤部会長 貴重な御指摘、ありがとうございました。医療の提供につきましてのまとめは次回になりますので、これにつきましては次回、さらに詳しく御議論いただくということでお願いいたします。

 ほかにございますでしょうか。それでは、御質問がないということであれば、次の資料3をお願いいたします。

○梅木補佐 続きまして、資料3について説明いたします。この資料の構成についてですが、まず予防指針に掲げられている施策の進捗を調査したいということから、昨年11月に140の自治体に対して調査を実施しております。

 調査の概要としましては、主質問票として、1 発生動向調査、2 予防指針に基づく予防計画等の策定状況について、3 医療の提供、4 具体的な目標についてとなっておりまして、1に付随する形になるのですが、病原体サーベイランスに関する調査票も実施しているところで、卓上のみとなっていますが、本アンケートにどういったものを使ったかということを配布しております。回収率100%で結果をまとめているものになります。各々のまとめで一旦説明を終わりますので、その後に議論していただきたいと思います。

 では、進捗状況等主質問調査結果について、1 発生動向調査ですが、「1.1 結核・感染症サーベイランス委員会を定期的に開催しているか」に関しましては、全体として30.7%の自治体が「はい」、「いいえ」が69.3%となっている現状です。

 それから、「1.2 病原体サーベイランスの構築に関する現在の進捗状況について」ですが、「a.必要に応じて分子疫学的手法(VNTR)などを実施できる」、「b.ほぼすべての培養陽性患者についてVNTRを実施している」、「c.VNTR情報を蓄積しデータベース化をしており、複数の保健所管内にまたがるVNTR一致株を検出できる」、「d.菌株を収集・保存する制度、事業を実施している」といったグレードが少し上がるものになっておりまして、各々の結果はごらんのとおりになっております。このcとdのいずれかに「はい」とお答えになった自治体に関しては、病原体サーベイランス調査票で別途アンケートを収集しているものになります。

 これらの結果のまとめですが、1 発生動向調査 まとめ。

 結核・感染症サーベイランス委員会について、数字としては43自治体が定期的に実施しているものの、97自治体は定期的に実施していない。

 病原体サーベイランスの構築については、集団発生時等必要に応じて分子疫学的手法を実施できる自治体が73.6%であり、約1520%の自治体がほぼすべての培養陽性患者についてのVNTR実施やデータベース化、菌バンクの構築をしているとったまとめになるかと思います。

 事務局の説明は以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明について御意見、御質問をいただきたいと思います。ただし、病原体サーベイランスにつきましては、一番最後のほうでまとめて議論いたしますので、そちらのほうでお願いします。

 有馬委員、どうぞ。

○有馬委員 大阪市の有馬と申します。

 このサーベイランスでVNTRの情報というのは、一自治体だけでデータを構築していても、感染源の広がりというものがなかなか見えづらいところがあると思います。ですので、このアンケートの中で、もちろんこうしてデータベースを集積していくというアンケートのとり方も必要だとは思うのですけれども、ほかの自治体とリンクさせている動きをしているのかどうかというアンケートのとり方。そういう動きはどれだけ広がっていくのかということで、このVNTRが効果を発揮してくるのだろうと思いますので、その動きもぜひとも厚労省の方は知っておいていただけたらと思っております。

○加藤部会長 ありがとうございました。事務局、何かコメントございますか。よろしいですか。これは、最後のほうでまた改めて議論させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 ほかにございますでしょうか。それでは、ただいまのまとめの方向で進めさせていただくことになろうかと思います。

 次の予防指針に基づく計画等の策定状況について、御説明をお願いいたします。

○梅木補佐 では、2 予防指針に基づく予防計画等の策定状況についてをまとめた資料になってございますが、※で注として書いておりますが、2.1 c.d2.9 b.についての項目は今回割愛させていただいております。

 では、「2.1 a.予防指針に基づいて予防計画等※を策定しているか?」との問いに関しましては、都道府県において91.5%が「はい」と答え、8.5%が「いいえ」と答えている現状です。予防計画については都道府県が策定することとされておりますので、市および特別区においては、独自に策定している場合に「はい」と集計させていただきまして、都道府県に準じている場合は「いいえ」と集計しておりまして、市および特別区については、参考というか、先進的に取り組んでいるということで記載しております。

 次のページに移りますが、参考として予防指針に基づいて予防計画等を策定している都道府県に色をつけて表示しております。

 その次のページに移ります。参考として、各自治体における予防計画を一覧として載せております。

 続きまして、「2.1 e.具体的な目標設定があるか?」という問いに関しましては、2.1aで「はい」と答えた都道府県では43ございまして、そのうちの81.4%が具体的な目標を設定して実施していると答えております。

 その次のページに移ります。「2.2 予防計画等の施策に高齢者やハイリスクグループへの施策が含まれているか?」との問いに対し、47都道府県からの回答としては、76.6%が「はい」と答えておりまして、23.4%が「いいえ」と答えております。これについては、予防計画も含め、それ以外の施策も含めて、ハイリスクグループへの施策が含まれているのかということで聞いておりますので、47都道府県の回答を載せております。

 その次、「2.3 予防計画等に含まれるリスクグループ」を一覧として載せております。上から高齢者、高まん延国からの入国者(外国人)、簡易宿泊所入居者および住所不定者(ホームレス)、福祉施設入所者・従事者、基礎疾患を有する者(HIV感染者を除く)、職場での健康管理が十分とはいえない労働者、生活保護受給者等社会経済的弱者、日本語学校学生・関係者、学生・生徒、幼児・小児、HIV感染者、医療従事者、その他となっております。その他については、雑多なグループがハイリスクとかデンジャーグループと、幅広い記載であったりとか、遊興施設とか漫画喫茶等の従業員に実施しているといったことが記載されており、その他としております。

 その次のスライドに移りますが、リスクグループ別の施策として、どのようなことを実施しているのかというのをお示ししております。

 上から、高齢者に関しては42の自治体が施策を実施していますとお答えになっておりまして、その42自治体の中で、例えば法53条の2による健診を実施しているのが38、また、特対事業等健診事業を実施しているのが8自治体になっておりまして、緑色のほうは、啓発活動は35自治体がやっております。それから、33の自治体は関連機関との連携・周知をしていますというグラフの表示の仕方をしておりまして、それらが各々ハイリスクグループとして列挙しているものに対しての数字となっておりますので、ごらんいただきたいと思います。

 「2.4 その他、ハイリスクグループへの施策についての好事例」を収集しておりまして、御紹介できるものがあればということで自治体から御提供いただいた内容になっております。

 例えば北海道においては、高齢者施設等の医療従事者や感染症対策担当者も含めて、医療機関向けの結核対策研修をしている。栃木県においては、結核特対事業として、検診車を利用した施設での健康診断を実施している。東京都においては、外国人結核患者に対して、支援員が保健師と同行し、支援内容、治療方針等を通訳している。また、服薬ノート・療養の手引きの外国版を整備している。徳島県においては、「高齢者施設における結核早期発見のためのチェックリスト」を作成しているといった取り組み。

 次のページに移りますが、千葉市においては、市内日本語教育施設就学生(就業期間が1年未満の者に限る)や市内無料定額宿泊所入所者に無料で検診している。神戸市においては、遊興施設、あるいは公園での炊き出しの日に併せて検診を実施している。高槻市においては、定期健康診断を実施していないパチンコ店において、従業員へのエックス線検査あるいは衛生教育等の事業を実施しているということが紹介されております。

 「2.5 予防計画等で接触者健診の強化・充実に関する施策が含まれているか?」という問いに対して、47都道府県のうち83.0%が「はい」と答えておりまして、17.0%は「いいえ」と答えております。

 「2.6 a.接触者健診で分子疫学調査手法を活用するにあたって、制度上の問題点・課題はあるか?」との問いに関しまして、全体140自治体の回答としては、32.9%が「はい」とお答えになっておりまして、67.1%の自治体は「いいえ」という形で回答しております。

 その具体的な課題については、その次のスライドから約3ページにわたりまして一覧として載せておりますが、ざっと見ますと、例えば北海道では、国レベルのデータベース化の体制整備をお願いしたい。栃木県では、感染経路の特定が個人の中傷につながらないよう、対象者には十分な説明をし理解を得る必要がある。群馬県、菌株の確保が難しい。神奈川県の患者の同意に関すること。あるいは、富山県、オーソライズされた実施要領や手引きのようなものが存在せず、国からの通知等の根拠となるものがない。石川県、郵送等に手間と費用がかかる。福井県、どのような場合に分子疫学調査を実施するのか。また、その結果について、どのように活用しているのかというコメントがされております。

 兵庫県においては、多剤耐性結核の場合、菌株の運搬が困難であることなども課題として挙げられておりまして、同様な課題を以下、ずらずらと書いております。

 「2.7 a.予防計画等にBCG接種の目標を定めているか?」という問いに関して、全体として140の自治体のうち45%は「はい」とお答えになっています。

 その接種率の目標とか接種率の実績というのをグラフ化しておりまして、2.7 b.c.に移りますが、薄い色が実績、濃い色が目標のグラフになっております。平均値、中央値、ともにそこに載せておりますが、平均値としては実績95.1%、目標は96.6%。中央値は、実績は95.8%、目標は95.0%といった結果です。

 あとは、参考までに、その次のスライドは、都道府県、あるいは市および特別区別に載せているグラフです。

 「2.8 予防計画等に、施設内(院内)感染の防止についての施策が含まれているか?」という問いに関して、都道府県としては78.7%が「はい」と答え、21.3%が「いいえ」と答えている現状です。

 「2.9 a.予防計画等に、研修等の人材育成についての施策が含まれているか?」という問いに関して、47都道府県のうち87.2%が「はい」と答え、12.8%が「いいえ」と答えているところです。

 これらについてのまとめ1として、予防指針に基づく予防計画については、43都道府県(91.5%)で策定されています。

 また、都道府県の予防計画の約8割には、具体的な目標の設定や高齢者・ハイリスクグループへの施策、接触者健診の強化・充実が含まれています。多くの自治体が施策の対象としているグループというのは、高齢者、住所不定者、外国人であり3大ハイリスクといえる。ハイリスクグループには、多種多様なグループが設定されておりまして、グループや地域の実情に応じた施策内容となっている。

 約2割の市及び特別区においても、独自に予防計画等を策定し、その多くで都道府県と同様にハイリスクグループへの施策を盛り込んでいる。

 それから、まとめ2に続きますが、接触者健診で分子疫学調査を活用するにあたり、約半数の都道府県、あるいは約4分の1の市および特別区が何らかの制度上の課題を認識している。

 それから、45%の自治体がBCG接種目標を設定しており、実績としては平均値・中央値とも95%以上であった。

 約8割の都道府県は施設内(院内)感染の防止についての施策を予防計画等に含めております。

 約9割の都道府県は人材育成についての施策を予防計画等に含めているといったまとめになろうかと思います。

 以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明について御意見、御質問をお願いします。ただし、「2.6 分子疫学調査研究」につきましては、最後のほうに一括で審議するということですので、メモをとっておいて、そのときにお願いしたいと思います。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。有馬委員、どうぞ。

○有馬委員 大阪市の有馬ですけれども、まず一点、BCGの接種率が95%という形で、かなり高い状況でありますが、集団接種から徐々に個別接種にBCGが変わってきているかと思います。大阪市はまだ個別接種になっていないのですけれども、それによってしっかりとBCGがついていっているのか。そのあたりはどうなっているのか。

  昔は、針痕数がどれだけちゃんとついているかという調査を保健師の立場でやっていた経過があるかと思うのですけれども、近年、そのあたりの調査が余りないのではないかと思っております。個別接種がかなり進んでいる自治体もあるかと思うので、そのあたりの接種状況などもぜひとも接種率にあわせて、しっかりと見据えていくというか、見ていくことが小児の結核の防止になっていくのではないかと思いますので、よろしくお願いします。

○加藤部会長 事務局、何かコメントございますか。

○梅木補佐 本年度から接種の時期も変更になっているということがございまして、都道府県7ブロック単位の地区別講習会等では、そういった影響があるかどうかは確認しておりますが、制度がまだ切りかわったばかりであり、影響については不明です。

○加藤部会長 ありがとうございます。

 徳永委員、これについて何かコメントは。

○徳永委員 自治体数に関して言うと、個別接種に移行した自治体はかなり多くなっているのですけれども、自分の知っている限りでは、個別接種に応じた自治体の接種率が低いかというと、必ずしもそういうことはないようです。

 それから、針痕数の調査に関しては、すごく興味を持っておられる自治体あるいは医師会の先生方等は、独自に調査されているところもある。そういうところは個別接種をするに当たって、しっかりとした講習会を実施されているところなので、非常にいいデータを出されていると思います。ただ、そういう関心を持たれておられないところで、しっかりとしたBCG接種が行われているかというのは、確かに課題だろうと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 よろしいですか。では、ほかに御意見、御質問、ございますか。どうぞ。

○有馬委員 済みません。今回の調査の中で、ハイリスクのところのどんな対象に健診を進めてきているのかという調査がありました。それに付随して、啓発しているかどうかという調査、これはとても興味深いと思うのですね。大阪市、ハイリスク、野宿の方に毎日健診しているのですけれども、この方々はとても再発しやすい。そこに啓発というものがしっかり乗っていくことで、生活習慣病を予防することの大切さが結核を防止していくというような、啓発がとても功を奏していくのではないかという動きを進めてきております。

 ぜひとも法的なところにハイリスクには啓発という文言を入れていただくと、高齢者の結核はこれらか多くなってきて、職員に対する危機管理というか、早期発見をさせていくところにもとてもつながってくる施策だと思いますので、そのあたりを明記していただけたら、もっと啓発は広がってくるのではないかと思いますし、罹患率にも反映してくるかと思います。

○加藤部会長 貴重なコメントありがとうございました。

 事務局、何かありますか。今後に向けて貴重な御意見として伺いながら、次に生かしていただきたいと思います。

 ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。

 それでは、よろしければ次に進みたいと思います。事務局のほうで御説明をお願いいたします。

○梅木補佐 それでは、3 医療の提供に移りますが、※印で書いておりますが、3.1として、各都道府県において中核的な病院を指定しているかどうかという形で調査をしておりますが、現在、集計中というところがありまして、本資料には入ってございません。3.2からの結果をお伝えすることになります。

 「3.2 外来DOTSの実施状況」の結果をまとめておりまして、この見方としては、左側n=140と書いておりますが、保健所、診療所、病院、薬局、訪問看護ステーション、各々に外来DOTSを実施していますかといった形で調査をかけております。青色については、「すべての保健所管内で実施」している。紫については、「一部の保健所管内で実施」している。黄緑は、特別な事業として特対費などの事業として実施している。」白色は、「実施していない」といった形で表しており、パーセンテージでお示ししているものです。

 ごらんいただきますと、保健所が外来DOTSをやっています。続いて、病院、薬局、診療所、訪問看護ステーションがやっているという形でして、右側に移りますと、そのほか、この5つの実施主体以外のところで外来DOTSをやっているとお答えしていただいたものについては、一個一個、こちらのほうに書いています。例えば福祉施設、介護系施設、学校、職場、その他でやっているという形であれば、それを各々1つとしてカウントしたグラフになっています。

 「3.2 訪問DOTSの実施状況」に移りますが、これについて保健所は100%。以下、ごらんのとおりになっているところであります。

 続いて、「3.2 連絡確認DOTSの実施状況」もごらんのとおりとなっております。その他の実施主体の「その他」が非常に多いのですが、こころのケアセンターの職員がやるとか、施設を指定していませんが、施設全体として、例えば看護師がやっているといった形で「その他」の記載がされておりました。

 それから、「3.2 その他の地域DOTSの実施方法」のグラフも書いておりますが、これは具体的には、例えば大学の保健室とか、郵送で確認しているとか、職場で確認しているといったことがこの中に含まれております。

 「3.2 その他の実施主体の回答内容」をまとめるとこういったグラフになるのですが、介護系施設等が22.9%ということで、非常に重要な位置を占めていることがわかるかと思います。

 その次のスライドに移りますが、「実施主体ごとのDOTSの実施状況」を概観としてぱっとまとめたグラフを準備しております。例えば、保健所は何をしているのか。外来DOTS、訪問DOTS、連絡DOTS、その他の方法を確認でやっているものをまとめますと、このようなグラフになっておりまして、訪問DOTSとか連絡確認DOTSをかなりの保健所がやっているといったものがわかります。例えば、医療機関(診療所)においては外来DOTSを中心にやっている。病院においても同様ですが、薬局も外来DOTS、訪問看護ステーションは訪問DOTSが、ほかに比べますと高い割合を示しているグラフになります。

 その次、円グラフの資料に移りますが、「3.3 DOTSカンファレンスを実施しているか?」ということで、「すべての保健所管内で実施」が82.9%、「一部で実施」が16.4%、「未実施」が0.7%です。

 「3.4 コホート検討会を実施しているか?」の結果については、「すべての保健所管内で実施」が74.3%、「一部で実施」が17.1%、「未実施」が8.6%となっております。

 「3.5 地域連携パスを導入しているか?」との問いに関しては、「すべての保健所管内で実施」が15.0%、「一部で実施」が12.1%、「未実施」が72.9%となっております。

 3 医療のまとめに入りますが、DOTSの実施主体としては、保健所が主要な実施主体となっておりまして、続いて病院、診療所、薬局、訪問看護ステーションが自治体におけるDOTSの実施に関わっている。

 実施主体ごとにそれぞれの強みを活かした方法で貢献している。(薬局による外来DOTS、訪問看護ステーションによる訪問DOTS、等)。

 保健所によるDOTSについては、訪問DOTS、連絡確認DOTSと比較し、外来DOTSを実施していない自治体がある。

DOTSカンファレンスは99.3%の自治体で実施されており、コホート検討会は91.4%の自治体が実施している。

27.1%の自治体が地域連携パスを導入しているといった結果になります。

 以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの説明に御質問等、お願いいたしたいと思います。DOTSにつきましては、保健所と病院につきましては、感染症法上、きちんと規定されているということで、実施されていると思いますけれども、さらに薬局等、介護関係のほうにも連携をお願いしている現状になっていますけれども、いかがでしょうか。

 よろしければ、薬局の立場から杉本委員、いかがでございますか。

○杉本委員 特に大阪府に関しましては結核の罹患率が非常に高いということで、大分前から取り組んではきているのですけれども、実際のところ、薬局がこのDOTSにかかわるのは非常に難しいところがありまして、件数としても取り組めていないところが現状だと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。このデータが示すように、地域によって随分取り組みが違う。大阪は保健所が猛烈にやっていると言えるのかもしれません。

 ほかに。有馬委員、どうぞ。

○有馬委員 何度も済みません。大阪市の有馬です。

 先ほど薬局DOTSの進みぐあいが足りないとおっしゃっていましたけれども、大阪市の場合、最初は喀痰塗抹陽性患者から100DOTSを導入していくという進み方をして、患者が多いので徐々に菌陰性のケースまで広げてきております。塗抹が陰性のケースにおきましては、仕事をしながら進めてきておりますので、大阪市においても徐々に薬局DOTSのケースがふえてきております。ですので、今後、薬局の薬剤師さんの御理解を賜りながら、このあたりをしっかり充実させていって、菌陰性のケースのDOTSを導入していかなければいけないと思っております。

 塗抹陰性のケースにおきましては、入院というスタイルをとっておりませんので、患者教育が十分できていない。ですので、保健師にしましたらとても同意がとりづらいところなのですね。一方では、脱落・中断しやすい。大阪市の10%ほどが脱落しております。ですので、今回、この対策の中では95%のDOTSを目指しておるということになってきますと、このDOTSの入り方が塗抹陽性はどれぐらいできているのか、塗抹陰性はどうなのかというデータもしっかりととっていきながら、感染しやすい結果を確実にDOTSに直しているところも、対策上、きちんと載せていく必要があるのではないかと思っております。そういう意味では、DOTSの質をよくしていく。

 今回、塗抹陰性と塗抹陽性のDOTSの成績と、Aタイプ、Bタイプ、CタイプというDOTSのタイプもありますので、そのあたりでどういうケースに、どんなタイプで実施しているのかという調査もしっかり厚労省としては持っていただいて、その治療成績もあわせながら、DOTSの成功率も見据えていっていただいたらなと。多分、集計するに当たって、各自治体、今回はいろいろ意見を出していますね。難しいところがあるので、基準をしっかりとお示しして、各自治体がデータを集積しやすいような投げをしないといけない部分があるかと思うのですけれども、そのあたりの進行状態を見据えていきながら、指針というか、対策がどれだけ進んでいっているのかを見ないといけないのではないかと思っていますので、よろしくお願いします。

○加藤部会長 ありがとうございました。事務局、何かコメントはありますか。

○梅木補佐 御指摘いただいたところは、4番のほうでもまた出てきますので、引き続き議論していただければと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかにございますか。遠藤委員、どうぞ。

○遠藤委員 保健所の立場からのお話を追加させていただきたいと思います。このデータにございますとおり、保健所は訪問DOTS、連絡確認DOTSが主でございますが、外来DOTS全てに保健師がかかわることはマンパワー上、非常に難しゅうございますので、医療機関に外来DOTS100%になるようにお願いして、100%の医療機関も現在、当所管ではやるというところですので、そういった周知方法も具体的にやっていますので、事例として挙げさせていただきました。

○加藤部会長 ありがとうございました。事務局から、これについてコメントございますか。

○梅木補佐 外来DOTSというのが保健所ではやっていないと、若干少ない背景としては、私どもの周知の仕方が悪いのか、来所DOTSという書きぶりのものを一応外来と言っているのですが、それはちょっと解釈の勘違いがあるところもありまして、こちらの周知をもう少ししっかりと進めていかなければいけないとは考えました。

○加藤部会長 どうぞ。

○遠藤委員 そうしますと、来所といいますか、通院している病院が確認していれば、それはDOTS

○梅木補佐 保健所に来ていただく来所DOTSを外来DOTSと。保健所における。

○遠藤委員 保健所に来ていただけるということで、病院側に一緒に外来に参加するという意味ではないと。

○梅木補佐 ないです。

○遠藤委員 その辺の解釈の仕方で反映されない部分があるかもしれない。

○梅木補佐 結果として少なくなっているというのは、そういった背景もあるのではないかと思います。

○遠藤委員 ありがとうございます。

○加藤部会長 ありがとうございました。ちょっと言葉がうまく伝わっていなかったところがあるかもしれないということかと思います。あるいは、保健所によっては、そういう対象者がいないところもあるかもしれないなと私は思っております。

○遠藤委員 当所管内は、人口が多いと、数も多くなります。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほか、ございますか。どうぞ。

○杉本委員 先ほどの続きなのですけれども、在宅医療を進めるに当たって、週に一度とか訪問して確認するということは、薬剤師の立場からもできるようになるとは思うのですけれども、あるいは1週間、2週間に1回来てもらって残薬を確認するということはできると思うのですけれども、毎日の確認というのは薬剤師、薬局ではちょっと無理かなと考えます。

○加藤部会長 ありがとうございました。これにつきましてはどうですか。

○梅木補佐 いろいろな立場でいろいろな資源を使って、患者周囲の方々からの援助が必要であるということでありますので、週1回であっても確認していただけるのは非常に重要ではないかと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。DOTSの実施方法は、地域の状況に応じてというのが大変大事だと言われております。したがいまして、それぞれの地域において、それぞれの機関のできる範囲内で保健所とよく相談しながら進めていただくということでよろしいのかなと思われます。

 ほか、本件につきましてありませんか。DOTSはどの機関でもやっていると思っていますけれどもね。

 地域連携パスについては、保健所のほうで、遠藤委員、いかがですか。このデータでは27ということなのですけれども、どのように評価されますか。

○遠藤委員 同じ県でも、保健所によって状況が違っておりますので、その辺は所長会を通して推進できるようにお話を進めていきたいと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかはございますか。では、有馬委員。

○有馬委員 地域連携パスの話は、もうここだけでしかできないのでしょうか。

○加藤部会長 ここです。どうぞ。

○有馬委員 一般医療機関の質がなかなか上がってこないということがどうしてもありますね。そこに地域連携パス、クリティカルパスを、糖尿病とか脳卒中のように保険点数化というか、そういう状況をとっていただきながら、専門医療機関から一般医療機関にきちんとパスを投げ、一般医療機関で副作用が出て、とても困った状況になったときに、また専門医療機関に帰って御相談していただくとか、そういうやりとりをパスを通しながらやっていく。

 広島の重藤先生などは、結核病学会からいろいろ指針も出していらっしゃるかと思うのですけれども、ああいう専門医療機関が一般医療機関を教育していくというスタイルをとりながら、今、本当に高齢者結核も多い状況になってくる中で、医療の質を上げていく地域連携パス、とても期待しているのですけれども、一部の地域の先生方とか保健師の熱意だけで進んできている限度があるかと思うのですね。このあたりは期待しているところなのですけれども、ぜひとも保険点数化を考えていただけたらありがたいなと。

○加藤部会長 貴重な御指摘ありがとうございます。地域連携については、既に脳卒中と大腿骨頚部骨折につきましては診療報酬がついているということで、そういうバックアップがあればもう少し進むのかなということが背景にあろうかと思います。

 事務局、何かコメントございますか。

○難波江補佐 今回、ちょうど改定の時期でありますが、これについては今回はないかと思いますが、地域連携パスについて学会などの要望は上がったりしていないでしょうか。

○加藤部会長 山岸委員、お願いします。

○山岸委員 私、詳しく覚えていないのですけれども、多分上がっているはずです。どの程度か、その辺はちょっとわかりませんけれども、お話のように地域連携は非常に重要なことですので、何とか点数をつけてほしいという要望は出しております。

○加藤部会長 そういうことですので、今後の検討をどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、次に移らせていただきたいと思います。事務局、説明をお願いします。

○梅木補佐 それでは、「4 具体的な目標について」に移りたいと思いますが、この4.1から4.3の項目については、先ほど結核対策の資料でお示ししたような具体的な目標を指針では掲げておりますが、そのうち2つについては明確な定義が定まっていないところもありますので、その定義案を結核研究所より提案していただきまして、それに基づいて自治体が実際集計可能であるのか、あるいはこの定義についてどう思うかというアンケートを実施しておりまして、それをまとめた資料という位置づけのものです。

 では、「4.1 DOTS実施率算定方法(案)」ということで概要をお示ししておりますが、1.DOTSを実施された患者を、入院を要した患者、あるいは入院を要しなかった患者別に記載されております。

 2.DOTS実施の定義もここで定めておりまして、(1)院内DOTSを実施している医療施設:「患者教育」、「服薬支援」、「保健所との連携」を行う。(2)地域DOTSの実施:次の12を満たす。1として、DOTSカンファレンスを開催して個別患者支援計画を策定すること。2支援計画に基づいて少なくとも月1回以上服薬確認を実施し、服薬手帳(またはそれに代わるもの)にその記録をする。(確認方法は外来、訪問、連絡確認のいずれでも構わない)。

 少し飛ばしまして、3に移りますが、対象者を全患者。ただし、登録時に死亡している者を除く。LTBIを除いて、または別途集計するといったことを案として投げております。

 この算定方法についての結果ですが、「4.1 a.c この方法で2009年および2012年のDOTS実施率を算定できるのか」という問いに関しては、ごらんのような形で、「可能」と答えているのは、2012年のほうは若干多くなっているところです。「不可能」と答えているのは、2012年においては21.4%です。

4.1 b.d.に移りますが、「2009年および2012年のDOTS実施率」を実際に算定していただくと、以下のようなグラフになっております。ただ、2009年と2012年を比較するのは、グラフ上、数が80104と大きく違いますので、単純には比較できません。平均値、中央値で見てみますと、2009年は平均値80.4%、2012年は82.9%、中央値は、200983.3%、2012年は85.0%となっています。

 その次のスライドに移りますが、4.1e、この方法に関するコメントを自治体からいただいておりまして、それをまとめているものがざっと載っております。5枚ほどありまして、抜粋します。

 1.DOTSを実施された患者に対して、例えば番号4のコメントとしては、DOTSを実施していない病院に入院し、退院後に地域DOTSを実施しているケースでは、DOTSをしていないこととなるのかといった疑問がある。

 あるいは、その次のスライドですが、2.DOTS実施の定義に対してです。DOTS対象者の区分の12番のコメント、院内DOTSは別の調査にしなければ、複数の医療機関に対する状況は把握できない。どちらかというと医療機関リストの中で把握するのがいいのではないかといったコメント。

13番のDOTSカンファレンスと服薬支援計画に関するものとしては、外来患者の場合、外来スタッフとDOTSカンファレンスを行うことは困難である。DOTSカンファレンスを開催せずに個別患者支援計画を策定した患者へのDOTSは実施ととらえてよいのか。

 あるいは、19番の頻度に関してですが、受診頻度に併せて薬局等でDOTSしている場合、2カ月に1度の受診であれば、DOTSも2カ月に1度となるが、DOTSありとしてよいのか。

 その次のスライドに移りますが、24番、DOTS間隔が1カ月でも不足すると毎月実施とならないため、その場合に「DOTSを実施された患者」にならないのは実態にそぐわない。

DOTS実施率算定方法に関するコメントとして、38番ですが、DOTS実施率について、DOTSを服薬終了まで完遂した者をカウントすべきか、とりあえずDOTSを開始できた者をカウントすべきか定義が曖昧である。

 その次のスライドに移りますが、自動計算できるようにすべきという項目ですが、43番、自動計算にすべき。加えて都道府県の画面上に表示するなり管理図に挿入していただきたいというコメントがございました。

 3.対象者(分母):全患者(ただし、登録時に死亡している者は除く)に対しては、45 登録後の死亡とか、46 治療拒否、重症で治療不可、1カ月未満の治療の扱い、44 寝たきり、47 脱落中断転出死亡についてコメントをいただいているところです。

 その次のスライド、4.その他の意見として、53番にDOTS導入率・確認率。当該(案)では、DOTS“導入率”と“確認率”が混同している定義と思われる。

 あるいは56番として、本来のDOTSの目的ということで、DOTS実施方法については地域の実状もあるので、算定方法にこだわって元々のDOTSを行う目的(脱落や耐性化の防止)よりもDOTSを行うこと自体が目的にならないようにしていく必要があると考えますといったコメント。

 それから、58番、LTBIに関して。DOTSの定義については、考え方をLTBIと分けてもよいのではといったコメントがありました。

 続いて、「4.2 潜在性結核感染症の治療成績判定方法(案)」です。概要としてお示ししておりまして、現行、結核登録者システムというものがありますが、そのシステムの改変をせずに、この潜在性結核感染症の治療成績を算出する方法を結核研究所より御提案いただいております。その内容としては、フロー図を見ていただければと思うのですが、例えば「LTBI登録患者(R)」となっているところから、治療開始するのと開始しない群という形で分かれます。治療開始した群においては、転出を除くと、登録年の次年年末時における状況(A)の、その他を除く治療終了(F)に移ってきまして、F.1 治療完遂の数で、最初の治療開始(T)を割ることによって治療完了が出るのではないかということで御提案いただいております。

 その結果については、「4.2 a2009年および2012年の潜在性結核治療完遂率」として、その次のスライドにお示ししているグラフになります。平均値が2009年は80.4%、2012年は82.9%、中央値としては200983.3%、2012年は85.0%といった結果になっております。

 これらの算定方法に関して、自治体からのコメントと、それに対する結核研究所のコメントもずらっと載せているところでございまして、4枚ほどあります。

 まず、1のスライドから抜粋いたしますと、番号1、治療完了率85%の目標値はどのような算定から出てきているのかという問いに関しては、予防指針で定められている目標値である。予防指針は、WHOが提唱したDOTS実施において治療成功率85%に準じているということ。

 あるいは、7番、結核患者情報登録システムから自動計算できるようにすべき。現状において標準治療以外のケースが多いなど、自動算出では対応の難しい状況が見られる。今後の結核患者登録システム改訂の機会に、自動算出の補助的併用も含めた、より簡便な算出(判定)方法を検討する必要があるというコメントです。

 その次のスライドは飛ばしまして、「4.2 b 自治体からのコメント3」に移りまして、25番のコメント、NESIDへの入力ルールの周知徹底が必要。(治療を必要とするLTBI患者の届出に関する)入力ルールの徹底は必要。(通達等で対応されるのが良いと思います。)というコメントです。

 それから、31番、治療期間の考え方を示してほしいということに関しては、結核病学会LTBI治療指針の該当事項にあわせた治療期間を完遂の条件とすることが適当と考えるといったコメントが記載されております。

 飛ばしまして、「4.3 結核患者治療成績判定(案)(概要)」に移ります。今度は、潜在性結核患者に関するものではなくて、結核患者についての治療成績の判定方法を案としてお示ししているものです。

 現行の結核登録患者情報システムによって治療判定が自動的にできるようになるのですが、問題点があるということで、治療経過が複雑な事例や治療期間の延長を要する症例についての実際的な自動判定アルゴリズム作成は難しい。

 それから、「判定不能」、「12カ月を超える治療」、「死亡」が治療成功率を圧迫している。

 本来「治癒」あるいは「完了」とすべき患者の治療成績も治療期間が1日足りないと「脱落」として判断される。

 自動判定アルゴリズムを機能させるための入力項目が多くなっている。

 結核の治療や対策の質の指標として、より適切なものが必要とされているという問題点があるということから、今後、こういった結核患者治療成績の判定については、各保健所における「治療結果保健所入力」によるものに変更するのが現実的ではないかということで、結核研究所より提案をいただいているものです。

 これについて、自治体からのお答えとしては、「4.3 a.『治療結果保健所入力』を治療判定とすることについて」、円グラフの結果となっておりますが、「望ましい」が36.4%、「どちらともいえない」が55.7%、「望ましいとはいえない」が7.9%といった結果になっております。

 コメントについてもずらっと掲載しておりますが、一部抜粋してお伝えしておきます。

 1の番号1ですが、何のために治療成績をとり、どう還元するかを確認していくことが必要だと思うということです。結核研究所のコメントとしては、目的の明確化と運用方法を確認することは重要である。今回の提案は、現行の自動計算によって生ずる問題の解消を目的とするものである。提起いただいた問題については別途、検討が必要と考えている。

 8番、すべて保健所入力判定にせず、システム判断項目と保健所判断項目との併用で総合判断するようにしてほしい。保健所入力に加えて、システム自動判定を補助的に利用する可能性について検討中。

 次のページに移りまして、2ですが、番号13、保健所で治療判定の参考となるフローチャートを示していただきたい。入力支援教材を作成し、正確なデータ入力を支援していくことが必要であると考えるといった回答がありました。

 それから、3のページに移りますが、21番、各保健所における治療成績判定について、明確な基準がある中での判定であればやぶさかではないが、現時点では各保健所毎に判定基準が異なるため、精度管理がなされず妥当ではないと考える。それに対しては、統一した基準及び精度管理を整備することで対応していきたいといったコメントが出されております。

 4に移りますが、31番、副作用による内服薬の調整や多剤耐性等で、やむをえず12カ月を超える治療を行った場合に医師の指示どおりに内服を完遂していれば治療成功とカウントできるとよいのではないか。これについては、結核病学会による「結核医療の基準」の見直し、2008年に示された薬剤が使われ、期間の服薬が終わっていれば「治療完了」として良いと考えられるといったコメントがありました。

 それから、37番、LTBIや肺外結核で喀痰検査未実施の場合の治療成績が「治癒」にならない。これについては、LTBIや肺外結核患者の治療成績の算定方法については検討中である。現行システムにおける「治癒」は菌陽性結核患者の治療成績の一つであるため、LTBIや肺外結核等で喀痰検査未実施の場合には「治癒」にならず、「治療完了」となる。「治癒」は国際的な基準に基づいて細菌検査結核の陰性化を必要とされているといったコメントがございます。

 これらのコメントを踏まえた結核研究所のコメントがその次のページとなります。

LTBI登録患者、肺結核患者、肺外結核患者、多剤耐性結核患者のそれぞれで、自動治療成績判定のためのアルゴリズム作成とそのための必要な情報収集は困難であると思われる。

 ある時点(例えば、LTBI登録患者・肺結核患者・肺外結核患者では登録年の次年末時点、多剤耐性結核患者は登録年の2年後年末時点等)で、保健所入力判定とすると、患者毎の複雑な途中の治療経過を考慮する必要がなくなり、治療成績判定を比較的容易に実施できると考えられる。さらに、サーベイランスでの収集項目も整理され(少なくなり)、保健所に理解しやすいサーベイランスを目指すことできると考えられる。

 自動成績判定は、標準治療肺結核患者(非耐性結核患者)のみを対象として算出する。また現行のアルゴリズムを改訂し、単純な理解しやすいものとする。この結果を保健所入力判定による標準治療肺結核患者治療成績評価の参考とするのが妥当と考えられる。

 課題としては、各結核の治療成績判定基準の作成、保健所による判定入力についての研修、入力情報に関する精度管理実施の具体的内容について等が考えられるというコメントがありました。

 最後、「4 具体的な目標について」の今後の対応(案)をお示ししております。

DOTS実施率算定方法(案)は、今回の提案とそれに対する自治体のコメントを参考に、算定する目的を明確にした上で、適切な定義を再構築する。

 潜在性結核感染症の治療成績判定方法については、今回の提案とそれに対する自治体のコメントを参考に、今後結核患者登録システムの改変にあわせて自動算出の補助的併用も含めた、より簡便な算出(判定)方法を検討する。

 結核患者治療成績判定については、治療判定について、各保健所における「治療結果保健所入力」とすることについて、望ましい36.4%、どちらともいえない55.7%、望ましいとはいえない7.9%との結果を踏まえ、結核患者登録システムの自動判断を補助的に利用する等の検討をした上、近い将来「治療結果保健所入力」を治療成績とする方向で検討する。

 結核患者治療成績判定を各保健所における「治療結果保健所入力」とするためには、LTBI患者・肺結核患者の各治療成績判定基準を明確化する必要がある(ただし、肺外結核患者・多剤耐性結核患者の治療成績判定基準を明確化することは困難であるが、治療成績の把握は必要であり、その方法は今後の検討課題である)といった形で案を提示しているところです。

 以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明について御意見、コメントを求めたいと思います。DOTSにつきましては、結核研究所から提案させていただいておりますけれども、平成2311月に厚生労働省から出された日本版DOTSについての通知を基本にして作っているということでございます。治療完了については、LTBIについては今のシステムでできるというのが前提になっていますので、できるとなったら、また別の方法もあろうということで作ってございます。

 鎌田委員、お願いします。

○鎌田委員 北海道医療センターの鎌田でございます。

 まず、LTBIと活動性結核の治療のゴールと申しますか、目指すものが全く違うことを何らかの形で明記していただきたいと思います。活動性結核は、確実に服薬すれば治癒致します。これは成功ですね。逆に確実な服薬が出来ない、あるいは行われなければ悪化、即ち治療失敗となります。結果は明快に示されます。一方でLTBIの成功・失敗の判断は神のみぞ知る領域と思います。ある人がLTBIの治療をして一生発病しなかった場合、それは治療が成功したとは言い切れません。感染した人からの発病リスクが2割程度と考えられておりますので、換言すると8割方の人は発病致しません。元々この集団に属していたのか、治療が成功したかの検証は不可能と思います。

LTBIの治療を行っても将来の発病を100%阻止出来るものではないとのエビデンスは過去に多くございますし、実際にLTBIの治療数年後に発病した症例もしばしば経験致します。発病の阻止に至らなかったことは残念な結果ですが、これは治療失敗とはならないと思います。 アンケートの中で、LTBIで喀痰塗抹検査未実施の場合の治療成績が「治癒」にならないといったコメントが出ていることを拝見致しますと、LTBIの治療の考え方についての若干の誤解なり齟齬があるやに思いますので、そのあたりを最初に明記すべきではないかというのが一点目です。

 次に49ページの治療成績判定方法(案)についてコメントさせて頂きます。私の認識が誤っているのかもしれませんけれども、感染症法の結核発生届を提出する際に無症状病原体保有者でLTBIとして治療を要する者について発生届を出すと理解しております。つまり発生届提出の段階で、治療を前提にしていると思うのですね。本日の卓上配付資料の中で最後のほうに、実際、その数字が出ておりますけれども、登録時治療なしというのは63件あったようで、その他の非治療開始というのは、登録はしたけれども、結局服薬しなかったということと推測致しますが、これは個人的には若干違和感があります。これは治療開始すべき群の中に入って、「F2.3 自己中止(治療非協力)」とほぼ同じものではないかと思います。

 つまり、LTBIの治療を前提として発生届を提出して、治療が開始されたものの、結局自己中断あるいは非協力という事例は「治療非開始(N2)」ではなく、「F.2.3 自己中止(治療非協力)」の中に含まれるべきではないかと思います。治療開始前に死亡してしまったN1というのは、どうしても避けては通れないと思いますけれども、卓上配付資料を拝見いたしますと、そのような患者さんは実際にはゼロということですので、登録した段階で治療非開始というのは現状とそぐわないような印象を持ちました。そのあたりはいかがでしょうか。

○加藤部会長 事務局、いかがですか。

○梅木補佐 これについては、結核研究所とも相談して改めて考えていきたいと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。この治療成績の判定というのは、私の考え方では3つぐらい考え方があるのです。日本全国でどのくらい治っているかという視点は、国全体として必要なことが1つです。それから、臨床医の立場で本当に治っているかどうか。今、鎌田委員がおっしゃったとおりの視点というのは、少し違いがある部分がある。もう一つは、保健所として自分たちがやったエフォートに対する評価が欲しい。この3つがあるのです。ですから、各々が満足できるところがどこか。その一つの指標である必要はないかもしれない。そういうことも含めて、目的に沿った形でどうしたらいいかというのは、根本的な議論を少しする必要があるのではないかと思っているところです。

 ありがとうございます。

 ほかにございますか。有馬委員、どうぞ。

○有馬委員 大阪市の有馬ですけれども、大阪市はDOTSを導入したときからコホート検討会をしっかり実施していきながら治療成績を積み上げてきております。サーベイランスのデータでは、判定不能というものがかなり出てきますので、治療成績が見えづらかったので、同時に、ここにもいっぱい出ていますように、保健所でコホート検討会を実施した成績で大阪市のDOTSの成功率を算出してきた経過があります。ですので、ここにも書いておりますように、保健所入力の判定というのはとても必要なのではないかと思っています。

 高齢者が多くなってきて合併症が多くなってきますと、12カ月治療のケースが多くなってきていますし、大阪市は多剤耐性のケースが多いですので、治療期間の長いケースが多いというところは、本当にこの方式でやっていただきたいと思いますし、塗抹陰性・陽性、DOTSのタイプ、そのあたりで治療成績を見ていくことで、対策がどれだけ進んでいっているのかというのが見えてくると思いますので、ぜひともお願いしたいと思います。

○加藤部会長 ありがとうございます。事務局から何かコメントありますか。

 ただいまのことに何か追加の御意見、吉山委員、何かありませんか。いいですか。

 ほかにはございますか。どうぞ。

○有馬委員 済みません、続けて申しわけない。

 先ほどのLTBIのケースのことですけれども、定期健診かなと思うのですけれども、医療関係者からLTBIの発生届が出てきた中で、その段階で治療に乗らないというケースがあります。この場合は、先ほど鎌田委員がおっしゃった部分で、LTBIになったところから治療の必要性があるという判断がなされるはずなのですけれども、接触者健診からLTBIになってくるのは本当に重要なことかと思うのですけれども、定期健診等々でLTBIになって、それが発生届が出されてきて治療に乗らない部分の治療成績というのは、ちょっとしんどいかなと思ったりしております。

○加藤部会長 ありがとうございます。ただいまの意見について、事務局から何かありますか。

○梅木補佐 潜在性結核感染症の届出については、もう少し周知しないといけないのかもしれません。

○加藤部会長 ほかに何かありますか。

○山岸委員 ただいまの有馬委員からの発言に関しまして、医療機関からの医療従事者の潜在性結核感染症の治療の申請が出てくることが多いと思うのです。

 もう一つは、学校等で外国人の留学生の健康診断の申請が多いと思います。それに関しては、もう一度きちんと議論していただいて基準を決めたほうがいいのかなと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。貴重な意見で、学会のほうは意見を出していますけれども、現場とそれぞれ立場で違うところがありますので、そこを全体の中でどう判断するかということも、別途議論が必要かと思います。ありがとうございました。

 ほかにございますか。遠藤委員、どうぞ。

○遠藤委員 保健所の入力ということですので、保健所のほうからお話させていただきます。

 現場では、治療結果といいますか、脱落とかも出やすいので、入力方法といいますか、入力情報項目が非常に多いということでございますので、55ページの4.3にございましたような自動算出に当たりましては、5つを踏まえてより簡素化したような方法で、その前に各保健所のほうに周知しながら、より実際的な、例えばある時点につきましても、年末というのは1231日でございますので、その時期等につきましても再検討していただきたいと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。事務局、何かございますか。

○梅木補佐 ある時期ということについては、疫学情報センターとも整理が必要だと思っております。

○加藤部会長 ただいま御指摘いただきました入力項目については、今、非常に多いと思うのですね。項目数の多さと精度というのは、どうしても相反する要素になっていくことですので、対策を評価するのに何が必要かということで、サーベイランスでも最低限に必要な項目は何かという議論もしていまして、その辺の状況も調査しながら、広い意味でサーベイランスをどうするかということも考えていくということですね。

○遠藤委員 統計的な重みということも非常に重要でございますので、全て同じように一律・並列じゃなくて、ある程度今までのデータを踏まえて、項目に対するトリアージ的なところで簡素化という方法がとれるのではないかと考えます。

○加藤部会長 ありがとうございます。

 ほかにございますか。

 それでは、時間が過ぎておりますので、次に移らせていただきたいと思います。次は、病原体サーベイランス質問調査結果について説明をお願いします。

○梅木補佐 それでは、病原体サーベイランス質問調査結果についてに移ります。この調査自体は、その次のスライドにお示ししておりますように、調査対象となったものは、先ほどの主質問の1.2調査結果のcまたはdの回答で「はい」となった32自治体が該当しております。この「はい」と回答した自治体については、病原体サーベイランスの取り組みが先進的であるという形で判断させていただいたために、集計の対象としております。

 その次のページは、対象となった都道府県、その次のページは対象となった市および特別区を載せております。

 では、結果に移りますが、1 病原体サーベイランスの規定状況で、都道府県、市および特別区、25あるいは7と、非常に数字が少ないので、グラフとともに表も載せておりますが、全体32の中で21.9%が「予防計画中で規定」している。40.6%は、「別に施策を施行している」。それから、21.9%が「ab両方」。16.5%が「特に定めていない」。研究の一環でやっていますという形で実施している。

 次のページに移りますけれども、参考までに各々の施策名を載せています。

 2は、病原体サーベイランスにかかわる主な検査実施機関と役割を一覧で載せています。

 3番は、各種検査の実施状況、全体32のものを記載しておりまして、VNTR法の中でもいろいろとあります。JATA12JATA15と呼ばれるもの、それプラス、さらに自由記載として、他領域をやっている。要は、数がふえるほど精度が増すということが言えるかと思いますが、そういったVNTR方法の種類。それから、RFLPという方法。それから、薬剤感受性試験(固形培地)、あるいは薬剤感受性試験(液体培地)、薬剤感受性遺伝子検査というものを実施しているかどうかを調査した結果になります。青色のものが「実施中」、対象例すべてを実施している。紫については、必要なものを実施している。黄緑については、「実施が可能」である。赤については、「実施不可」という形で、ごらんのような結果になっています。

 その次のページですが、都道府県、市および特別区ごとにも参考までに載せているので、ごらんください。

 次のページに移りますが、4 病原体サーベイランス事業実施にあたり患者の同意を取っているかの結果です。全体を見ますと、説明もなく、同意もないというのが37.5%、「口頭で説明している」9.4%、文書説明と同意を得ているのが40.6%、「その他」が12.5%。

 その「その他」については、その次のページに各々載せている状況です。念のためにつけ加えておきますが、行政検体として、例えば15条の積極的疫学調査等でやる場合については、患者同意は基本的には不要という整理で行っておりますので、そこのところはあらかじめ御承知おきください。

 5 病原体サーベイランス事業実施にあたり、どのように検体を輸送しているか。全体を見ますと、6.3%が「菌株を所持している検査機関が搬送」している。25%が「ゆうパックによる搬送」をしている。12.5%が「保健所職員等が搬送」している。12.5%が検査実施機関、受取先が回収している。「その他」が43.8%となっていて、その次のページにその他自由記載欄としてずらっと載せています。

 6番、このサーベイランス事業において多剤耐性結核菌株についても対象としているかという項目については、全体32の中で62.5%が「対象としている」、37.5%は「対象としていない」という結果です。

 7番、多剤耐性菌株の検査機関、要は病原体が分離されるようなところで保管されているかどうか、それを自治体として把握しているかどうかについては、全体を見ますと12.5%が「把握している」、87.5%は「把握していない」という結果になっています。

 8番、VNTR等の病原体から得られた情報をどのように管理しているか。全体として、9.4%が「紙ベースで保存」、71.9%がエクセル等で表形式で管理している、18.8%が「データベースを構築している」といったことでありました。

 9番、病原体サーベイランスから得られた情報はどこで管理しているかということで、全体32の中で12.5%は「保健所や本庁などの自治体」で管理している、68.8%は「地方衛生研究所」で管理している、「その他」が18.8%でありまして、「その他」については、その次のページに具体的には記載しております。

10 患者情報についてどのように管理しているかに移りますが、全体32の中で12.5%は、患者情報は原則扱っていない、46.9%は「登録患者情報とリンクするための最低限の情報」、40.6%は患者情報に併せてさまざまな情報を管理しているということです。

 その複数回答可能のお答えについてまとめたのが、その次のページでありまして、基本的には依頼状の中身とか登録者情報の中身、あるいは積極的疫学情報に基づいた情報とか、ある程度まとまった形の情報が入力されているという結果になっております。

11番、系統的に菌株の保存を実施しているかとの問いに関しましては、全体32の中で28.1%が「実施していない」、3.1%が一部の株について保存している、68.8%が「原則収集されたすべての菌株を保存している」といった調査結果になっております。

12番に移りますが、構築あるいは運用において問題点があるのか、もしくはサーベイランスを構築したことによって有益だったもの、有用だったものについて御紹介いただきたいと聞いておりますが、例えば岩手県では、菌が廃棄される。

 富山県では、全国統一的な実施要領や結果判定基準等がないことから作業が進捗していない。予算が厳しい。

 大阪府は、人材・予算の問題が大きい。

 兵庫県は、VNTRデータベースの活用方法(他府県との比較や薬剤感受性データとのリンク等)が明白ではない。

 岡山県は、サーベイランス事業を開始した平成16年6月からの菌株が保管されているので、過去に遡って感染源、感染経路が究明できるといった利点です。

 2に移りますが、京都市では、各自治体で集積している解析結果を共有できていないため、菌株そのものの特性(流行株・感染力の強い株等)を判断しにくい。

 神戸市では、結核対策上、より重要なMDRが3種の規定での保存・搬送に多額の費用がかかることが問題であるというコメントが出されているところです。

 以下を踏まえて、その次のページですが、病原体サーベイランス質問調査結果のまとめを記載しております。

 病原体サーベイランスを構築している32自治体のうち、8割以上が施策として実施している。

 主な検査機関は、一部医療機関があるものの、多くは地方衛生研究所となっている。

 集計対象となった自治体の多くの地方衛生研究所では、遺伝子解析を実施している。

VNTR法は広く普及しているけれども、RFLP、薬剤感受性試験は、VNTRに比して実施率、実施可能性ともに低い状況である。

40.6%の自治体が患者の同意を得ている。ただし、行政検査では患者同意は不要です。

 検体輸送については、様々な手段が用いられている。

37.5%の病原体サーベイランス事業では多剤耐性結核菌を対象としていない。

87.5%の自治体は病原体分離を実施している施設での保管状況を把握していない。

 病原体情報は、9.4%の事業では紙ベース、71.9%の事業では表形式で保存されており、データベースを構築できている事業は18.8%である。

 病原体情報は主に地方衛生研究所で管理されている。

87.5%の病原体サーベイランス事業では、少なくとも患者登録者情報とリンクする患者情報を持って管理している。

 菌株の保存は、原則すべての菌株に実施(68.8%)、一部の菌株に実施(3.1%)、実施していない(28.1%)となっているといったまとめになろうかと思います。

 それらのことと、あとは病原体サーベイランス、分子疫学的検査のみの進捗状況を整理した1枚紙を準備しておりまして、進捗段階としては分子疫学検査を接触者検診に活用する段階。それから、分子疫学検査の対象を広げていく段階。その結果をデータベース化して複数保健所管内にまたがるクラスター検出可能といったレベル。それから、それを行政としてやれるレベル。それをさらに広げると国のレベルになろうかと思いますが、進捗については以下のとおり、課題については以下のとおりと考えております。

 以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ここで、本日参考人としてお招きいたしております千葉県衛生研究所感染疫学研究室長の小林さんから、千葉県の取り組みについて御紹介をお願いいたします。

○小林参考人 時間が押していますので、もしよければお手元の資料で御説明させていただきたいと思います。千葉県内の結核菌伝搬状況についてVNTRのデータベース解析結果から御報告をさせていただきます。

○加藤部会長 資料4の準備はできていますか。では、お願いします。

○小林参考人 1ページ目をお開きください。千葉県におきます結核の施策につきましては、平成11年7月に国が行いました「結核緊急事態宣言」を踏まえまして、「結核対策千葉方式」というものを平成13年9月に策定しております。千葉県といたしましても、結核の撲滅という方向に向かって対策を立てるということで、平成13年から取り組んでまいりましたけれども、平成20年に改めて県の事業といたしまして千葉県結核菌検査実施要領というものを、感染症法第15条の規定に基づきまして実施しております。結核の発生を予防し、また結核の発生の状況、動向を把握するために、積極的に結核菌の菌株を収集して実施しております。実施に当たりましては、千葉県衛生研究所で実施させていただいております。

 さらに、この検査の結果で判明した後の疫学的調査ということで、“結核菌VNTR型検査判明後の疫学的調査について”平成22年1月5日に施行されておりますが、結核菌株の遺伝子型が一致した場合に、保健所と衛生研究所の役割を分担して調査に当たっていきましょうということも記載いたしております。

 また、平成13年に立ち上がりました結核対策千葉方式を千葉県結核対策プランということで国の“結核に関する特定感染症予防指針”の後に改定いたしまして、平成24年3月から実施しております。

 あわせて、結核特別促進事業ということで、平成22年から3カ年、菌検査を細菌研究室、患者情報の部分を感染疫学研究室で担当して実施してまいりました。

 次のページをお願いいたします。事業の目的といたしましては、県内の同一菌株に感染した患者さんの発生の状況やクラスター形成状況、そして地域的な感染の集積などを見て、県全体の結核菌の感染伝搬情報と患者さんの情報をリンクさせて、重点的に対策をとるべき集団や地域を明らかにして結核対策に活かしていきたいということを目的として実施いたしました。

 実施期間は3年間です。

 実施の内容といたしましては、菌の結果と患者情報をプラスいたしまして、データベースという形で、基本的にはエクセルベースになりますけれども、情報をつなげた形で管理いたしました。その結果を検討委員会で3年間検討していただきました。また、結果につきましては、県内の保健所、医療機関を対象とした講演会を開きまして情報を還元して共有させていただきました。

 次のページをお願いします。データベースの作成結果といたしましては、この菌株の対象数は1,419です。100%一致した数が446、一致率といたしましては31.4%でした。その446の中でクラスターを形成している数は98、全く不一致であった数が696に上がっております。

 次のページをお願いします。一致・類似・不一致の菌株の内訳を見ています。一致といいますのは、100VNTR型が一致したことを意味します。類似に関しましては、9599%、1領域違いという形での菌株を指します。不一致というのは、全く一致しなかったという形です。一致は31%、類似株につきましては20%、不一致は49%という状況となっております。

 次のページをお願いします。全体の1,419の菌株につきまして、性別で見てみます。全体といたしましては1,016、約72%が男性で占められました。40328%が女性でした。男女別を菌株の一致・類似・不一致という状況で見てみますと、赤枠で囲みましたとおり、一致株の男性が全体の中では高い状況を示しております。実際に男性が多いという状況からは当たり前のことかもしれませんが、一致・類似・不一致と見たときには、一致株のほうが男性の比率が高い状態になっております。

 次のページをお願いします。また、一致株につきまして保健所別・性別に内訳を見てみました。AからPということで、一番左端にある部分が保健所別になっております。千葉県におきましては、県型保健所が13、政令市が1、中核市が2ということで、保健所といたしましては16保健所で結核対策を実施しているところです。それぞれの保健所で男女別でありますように、男性が多く女性が少ない状況となっております。

 次のページをお願いします。一致・類似・不一致株の1,419について年齢別で見てみます。全体で見てみましたときに、青色をゼロ~9歳、赤を1020代という若者の世代、緑を3060代、働き盛りの世代、70歳以上は紫、高齢者世代ということで区分させていただきました。10代・20代につきましては128菌株9%、3060の働き盛りの世代につきましては56%、70代以上の高齢者につきましては35%という内訳になっております。

 一致・類似・不一致株別の年代別の表は、下にありますので、見ていただければと思います。

 次のページをお願いします。一致株につきまして、保健所別・年代別に見てみました。nは446です。一致株につきまして、10代・20代の若者世代は10.8%、30代から60代の働き盛りの世代につきましては73.5%、高齢者世代につきましては15.5%ということで、100%一致したVNTRの菌株の年齢の特徴といたしましては、30代から60代の働き盛りの部分に集中していることがわかります。

 次のページをお願いします。一致株にあわせて、不一致株につきまして年代別を見てみます。nは696です。こちらの部分は、70代以上の高齢者世代が51.3%ということで、先ほどの一致株とは違った集積を示しております。

 次のページをお願いします。クラスター当たりの人数別で、98のクラスターについて見てみました。98個のクラスターを1クラスター当たり2人がブルーで4344%です。3人~9人で占めているクラスターにつきましては45個ありまして、全体の46%でした。また10人~22人で占めているクラスターでは、1つ当たりのクラスターで22人というのが最大のクラスターです。こちらのほうは、全体で10件で10%という内訳になっております。

 次のページをお願いします。この98のクラスターにつきまして、クラスター当たりの人数別で患者の登録保健所数を見てみました。左側がクラスターで、2人、3~9人、10人以上のグループ、この3つのグループについて保健所数を1から8という形で見てみました。そうしますと、保健所5、6、7、8ということで、8つの保健所にまたがっているクラスターが10人~22人のクラスターでは2つありますという形で見ていただければと思います。全体といたしまして、5、6、7、8といった多くの保健所にまたがっているようなクラスターが多いことが見てとれると思います。しかも、それは10人~22人という大きなクラスターになっているグループになります。

 また、左側のクラスター数で登録年数を見てみますと、4年、5年、6年という形で拡大している状況が見てとれると思います。

 次のページをお願いします。クラスターの中でも、特に患者が10人以上という多いクラスターにつきまして、保健所別で見てみました。特に1つ当たりのクラスターが最大で22人のクラスターがあります。また、全てのクラスターが複数の保健所にまたがっている状況です。また、クラスターにつきましては、東京都に隣接している、また近い保健所に多いということで、A、B、C、Nは総武線沿線上という状況もございまして、都内に近い、人の流通の多い保健所となっております。また、一部の保健所に患者が集積しているクラスターがあるということで、クラスターNo.6を見てみますと、F保健所に12と集積しているし、それぞれが8、6、5といった数が集積している状況が見てとれます。

 次のページをお願いいたします。このような中で、結核の集団感染事例ということで、VNTRが一致した事案を県のほうで公表させていただいている事案があります。この事案は、居酒屋の利用客を中心にした集団感染が起きていたという事案になっておりまして、集団感染事案として国に報告したプレスの内容となっております。この事案は、平成24年2月上旬に患者から採取した結核菌の中で発端者と利用客が一致しましたということで、当該自治体から国に報告させていただいております。

 次のページをお願いします。VNTR検査が一致しただけではなくて、大事なのは疫学的な関連が認められるという部分になります。今回の事案につきましても、場所と時間でしっかりと疫学的な裏づけがありまして、特にNo.3のガフキー7というのは、当初のときには感染源ではないかという状況がございましたが、VNTRした結果、3事例が一致で、ガフキー7号の患者は対象外で、それぞれ別に管理するという形で接触者健診対象者を正確に見つけることができた事例です。

 次のページをお願いいたします。こちらは、今、申し上げました集団感染となった事案が、集団感染と国へ報告ということで、矢印になっている事例が3件あります。この3件は一致しましたということで、事案として報告しておるところなのですけれども、この3件は、千葉県の場合、網羅的に菌株を収集しておりますので、その中で実際、どのようになっているのだろうかということで、再度VNTRを実施した結果、このように大きなクラスターとつながったという状況になってございます。このクラスターは、平成19年から24年にかけまして段階的につながっておりまして、大変大きなクラスターになっております。

 右側に色をつけておりまして、PとNということで保健所の名前になっておりますが、8つの保健所にまたがって19年から24年にかけて広がっているということが見てとれる状況です。

 結果といたしましては、患者の情報とVNTRの情報をつなげまして、データを経年的に蓄積したことで、県内の結核菌の伝播状況がわかることがあります。時間的にも地域的にも伝播が広がっているということです。

 そして、何よりもクラスターを形成している情報で、対策をとるべき集団や地域が特定できるということで、それらを活用できる情報であると理解しております。

 ただ、課題がございまして、疫学情報をさらに充実して、関連のある保健所間でネットワークを強化して対策を検討していく、取り組む必要があると理解しております。さらに、管理の2年を超えて拡大している状況も見てとれますので、接触者の正確な対象を特定して徹底していくことで、集団感染事例の評価にも使えるのではないかと考えております。

 以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御発表と事務局からの御説明について質問を受けたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 磯部委員は、富山県のほうでやっていらっしゃるとお聞きしていますけれども、追加等ございましたらお願いします。

○磯部委員 富山県の場合は、富山市さんの占める割合が非常に大きくて、それで行政の管轄が違うので、同じVNTRを行っても個人情報とか疫学情報をどうやって集約して還元していくかというところに1つ大きな壁がありまして、そこには個人情報というところにどうしてもかかわらなくては情報が収集できないということが1つ問題として挙げられることと。

 あとは、医療機関なら結核菌をとりに行くことが可能なのですけれども、民間の検査機関とかにある場合に収集する場合に、うちの安全規定とかにかかわりますと、ジュラルミンケースで搬入するということになりますと非常にお金がかかるし、手間もかかるということがありまして、そこに大きな壁があります。今、県としても事業化するということなのですが、結局、その辺の疫学情報を誰が集約して、どういうふうにするかということと、周りの地域の、例えば石川県さんとかとの情報共有というところまで発展させるにはどうしたらいいかということが問題となっています。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 いろいろ御意見あると思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。

○有馬委員 大阪市の有馬です。

 このVNTR、先ほど言いましたけれども、他府県とのデータのリンクと同時に、先ほど言った患者の個人情報。疫学情報がしっかりと乗っていかないと対策になっていかないというのをすごく感じていて、私も保健師ですけれども、最初の個人の患者さんに出会ったときに、この情報はしっかりととっておこうという全国統一的な項目がないと、JATA12のデータがやっと一致したから情報をとりに行こうかといったら、今回の千葉県さんも時間と、何という居酒屋かというところまできっちり聞けているからこそ、次の対策に乗せていけたのだと思うのですね。

 大阪市もそのあたりがなかなかうまくいかないのですけれども、千葉県さんはデータと個人情報がきちんと1カ所に集中できるようなシステムを持っていましたね。自由集会のときに少し聞いたように思ったのですけれどもね。

○小林参考人 千葉県の場合、私ども衛生研究所になるのですけれども、研究機関ということもございます。個人の氏名・住所は削除して、個人情報につながるようなIDになるようなものは削除した形で、菌株と一緒に基本的な情報をいただいているという状況になっております。

○有馬委員 そこの情報を統一化させて、最初の面談のときに保健師がちゃんと決まった内容を聞けるようにすると集積できていくのではないかと思っています。また統一項目を決めていただけたらありがたいなと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 各地方から来ている御意見の中にも、そういったデータベースをどうするか。また、これまでも調査研究することによって、疫学調査をもう少ししなきゃいけないということが認識されたこともメリットとして出ていると思います。あるいは、菌の保存、同意の問題等々、いただいた意見の中に含まれてございますので、その辺も整理して、次回までにまとめさせていただきたいと思います。

 時間も過ぎていますので、事務局から説明をお願いします。

○梅木補佐 最後、報告事項になると思いますが、参考資料としておつけしている「退院できる基準について」、説明いたします。

 1枚のものですが、左側に関しては結核感染症課発出のもの、右側に関しては保険局医療課が発出したものになりまして、退院できる基準が結核においては定められているのですが、その基準がア、イ、ウと定められておりまして、イの括弧内の記載が若干異なっていると指摘されてございました。そのために、そろえるという形の修正をさせていただきまして、本日発出することになりますので、御報告させていただきます。

 以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明に御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、時間になりましたので、終了させていただきます。事務局から補足はございますでしょうか。

○難波江補佐 本日はありがとうございました。

 次回の開催につきましては、3月1210時からを予定しております。追って開催通知等を送付させていただきますので、よろしくお願いします。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかに特に追加したいということがありましたら、お聞きしますけれども、よろしいでしょうか。

 それでは、本日の部会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

 

※(注)

遠藤委員及び小森委員の任期が、平成251018日に満了していましたが、再任命の手続をとらないまま、同委員出席の上、審議会を開催しました。

議事の定足数については、当該委員を除いても、委員及び臨時委員の過半数が出席していたため議事は成立しています。なお、今回の会議においては、議決を行っておりません。

また、今回の会議においては、当該委員は、参考人として取り扱われます。

詳細については、以下のリンク先を御覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000040328.html


(了)

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