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2014年3月14日 第3回厚生科学審議会感染症部会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成26年3月14日(金)16:00〜17:30


○場所

KKRホテル東京11階孔雀の間


○議題

(1)感染症法の見直しについて
(2)その他

○議事

○齋藤結核感染症課長補佐 定刻となりましたので、「第 3 回厚生科学審議会感染症部会」を開催いたします。

 はじめに、委員の出席状況を御報告します。本日は大石委員、廣田委員、蒔田委員より御欠席の連絡を頂いております。また、本日は参考人として、地方衛生研究所全国協議会会長であり、群馬県衛生環境研究所所長の小澤参考人、国立感染症研究所真菌部部長であり、レファレンス委員会委員長の宮崎参考人に御出席いただいております。

 現時点で、定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立することを報告します。

 ここからは渡邉部会長に議事をお願いします。

○渡邉部会長 まず、議事に先立ちまして、事務局から資料等の確認をお願いします。

○齋藤結核感染症課長補佐 議事次第、配布資料一覧のほかに、資料 1 から資料 3 まで、参考資料 1 から 2 まで御用意しております。配布資料一覧と照らして、不足の資料がありましたら事務局にお申し付けください。よろしいですか。

 申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いします。

○渡邉部会長 それでは、本日の議題について、前回に引き続いて、感染症について御議論を頂きたいと思います。円滑な進行のために皆様の御協力をよろしくお願いします。

 まず、「感染症法の見直しについて」、事務局から説明をお願いします。

○齋藤結核感染症課長補佐 資料 1 を御覧ください。「鳥インフルエンザ A(H7N9) の感染症法上の取扱い等について」の御審議を頂きたいと思います。

2 ページ、「現状」の 2 つ目です。鳥インフルエンザというのは、下の※に解説がありますが、インフルエンザのうち、主に鳥の間で感染力を持つインフルエンザウイルスがヒトに感染するものを指しております。この鳥インフルエンザについては、感染症法上、四類感染症に位置付けておりますが、その病原性や感染力、新型インフルエンザへの変異の恐れを考慮し、 H5N1 型に限り二類感染症に位置付けております。

 今般中国で発生している H7N9 についても、鳥インフルエンザ、今申し上げたように、インフルエンザのうち、主に鳥の間で感染力を持つインフルエンザウイルスがヒトに感染するものということで、まず、四類感染症の扱いになっております。しかし、 H5N1 と同様に、その病原性や感染力、新型インフルエンザへの変異の恐れを考慮して、政令で指定感染症としても指定しており、現在、 H5N1 型並の対応が可能となっておりますが、平成 26 5 6 日に当該政令は効力を失うことになります。なお、 1 年以内に限り政令で延長可能となっております。

 本日の提案は、鳥インフルエンザ A(H7N9) について、指定感染症としての指定期限を 1 年間延長し、鳥インフルエンザ A(H5N1) と同等の措置 ( 二類感染症相当 ) の措置を引き続き継続して行うことについて、御議論を頂きたいと思います。

 これについては、前回の 1 月の部会でも、延長の方向で検討を進めることを御了承いただいておりましたが、この度、延長の期限も迫っていることから、その後の発生状況等を考慮し、部会としての結論を頂きたいと考えております。

3 ページから 6 ページに関連する参考資料を付けております。 3 ページには、鳥インフルエンザの現在の発生状況について、 4 ページには、昨年の 4 月に指定感染症に指定した際の状況と、現在の状況を書いております。現在の状況の 1 つ目の○の所ですが、昨年の 5 月以降患者数は大幅に減少したが、同年 10 月には再び散発的に発生し、昨年の 12 月下旬以降、この 3 月まで継続して患者発生が報告されております。 3 10 日時点で患者数は 384 名、死亡者は少なくとも 118 名が報告されております。

5 ページには、指定感染症の定義・指定の要件等についてお示ししております。 6 ページには、感染症ということで、現在準用している規定をお示ししております。資料の説明については以上です。

○渡邉部会長  H7N9 が、今回の中国の旧正月で急激に増えてくるのではないかということで、一時心配された点はあると思いますが、この 3 月の時点では、お手元の図 2 のような状況になっております。現状からすると、このまま落ち着いてくれる可能性もあるかもしれない。ただ、去年の例を見ますと、もう少し後になってからも発生をしておりますので、その点がまだ心配な点はあるというのが現状かなと思います。

 そういう状況も考えて、事務局のほうからは、指定期限を 1 年間延長してはどうかということが問われているわけですが、皆さんのほうから御意見をよろしくお願いいたします。

 特に御意見がないようでしたら、事務局の提案のとおり、二類感染症相当の指定感染症として、 1 年間延長するということでやらせていただきたいと思います。よろしいですか。ありがとうございます。

 なお、 H7N9 の感染症法上の恒久的な位置付けについては、資料 3 に基づいて、後ほど議論していただくことになりますので、そのときにまた御意見をお願いします。

 続きまして、資料 2 の説明を事務局からお願いします。

○齋藤結核感染症課長補佐 資料 2 「侵襲性髄膜炎菌感染症及び麻しん等の感染症法上の取扱いについて」。前回、届出事項、方法の変更について議論いただきましたが、改めて論点を整理しまして、御議論いただきたいと考えております。

2 ページ、侵襲性髄膜炎菌感染症及び麻しん等について、現行制度の概要について御説明します。感染症法第 12 条に基づく医師の届出は、一類〜四類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者等については、直ちに氏名、年齢、性別等を、五類感染症の患者等については、 7 日以内に年齢・性別等を届け出る義務が課されております。

 その理由としては、一類〜四類の感染症、新型インフルエンザ等感染症については、感染症法上の個別の措置の対象となるので、氏名といった個人が特定される情報が届出事項となっております。

 一方、五類感染症については、原則として個別の措置の対象とはならないため、人権尊重の観点から、個人が特定される情報は必要最小限とすべきということで、氏名、住所等は届出事項にはなっておりません。

 なお、当該届出に違反した場合、これは一類〜四類でも、そのほか五類など、類型は問いませんが、違反した医師については、 50 万円以下の罰金が科せられることになっております。

 本日の論点は、人権尊重の観点も考慮する必要はあるものの、侵襲性髄膜炎菌感染症や麻しんの患者については、一例一例に対する迅速な積極的疫学調査が必要であり、感染症法上の個別の措置の対象となることから、個人が特定される情報の迅速な届出を義務付けるべきではないかと考えております。これについて御審議いただきたいと思います。

 なお、前回、委員の先生より、これらの疾病について、現在、通知で、診断後 24 時間以内の届出は求めているが、実際のところどうなっているのかという御質問を頂いたところです。おおむね半分は、その日のうちに届出を頂いており、また 9 割方は、 3 日以内に届出を頂いている状況であることを申し添えます。

 また、この侵襲性髄膜炎菌感染症と麻しん以外に五類感染症の中で、そのほかに医師による届出方法を変更する必要のある疾病がないかということについても、御意見を頂ければと思います。資料 2 の説明は以上です。

○渡邉部会長 前回も議論しましたが、特に侵襲性髄膜炎菌感染症の場合には、予防的内服が必要であるということで、これも 24 時間以内に届出を頂いたほうが、効果的な対応ができるということと、麻しんについては排除にほとんど近付いておりますので、そういう状況を鑑みれば、全数把握をして、やはり 24 時間以内に届けられて、その都度、発生したもののアクティブサーベイランスを行うということでは、今、事務局から提案があったような方法でやるべきであろうというのが、皆さんの御意見だったと思います。そのときに幾つか、いろいろな御意見が出されたと思います。各委員の先生方、そのときの御意見を基にして、また今回、特別に何か御意見があるようでしたら言っていただければと思います。

24 時間以内に届けなくてはいけないとなると、罰則が付くのではないかという御意見があったかと思います。現状においても、事務局からありましたように、半分はその日ですが、 3 日以内に届け出られているということで成り立っている、というコメントがあったと思います。その辺を考慮した形で、今回もやるということだと思うのですが、いかがでしょうか。

○小森委員 前回のときに私から申し上げたのは、五類を四類に移してという対応ではなく、五類は五類のままで、特にはしか等については、非常に疾患が、今回また小規模な流行が起こりましたが、エリミネーションに向けて、相当患者数が限定していること等を踏まえて、 24 時間以内の届出をお願いするとしてはどうかと。幾つかお話をしましたが、現状等を踏まえ、また、様々なことについて柔軟な対応をしていただくことも、条件として賛同したいと思います。

○岡部委員 現在、はしかのエリミネーションを目指しているわけで、かなりいい状況にもなってきていますが、時々外国から入ってくるものに対して、目的をきちんと、はしかのエリミネーションに持っていくためのことであって、個人を特定することが目的ではないということが明確であれば結構だと思います。そのようなことを気持ちとしてしっかり持っていないと、うっかりすると、規則であるから、全部これは公表すべきであるとか、いろいろなことが後で発生する危惧があるので、その点は、なぜこれをやるのだということをきちんと説明と理解をしておいたほうがいいだろうと思います。基本的には賛成です。これをやらないと、実際のはしか発生時のの対応ができないということになりますから。

○渡邉部会長 目的をちゃんとした上で対応していただければ、問題はないということです。ほかに御意見がありましたらどうぞ。

○前田委員 人権の問題というのは、ある程度のことは理解しているのですが、個人の特定というよりは、今回、積極的疫学調査をより迅速にできるというためには、一定程度患者さんの特定を保健所等がしていかないと不可能かと思います。

 東京都でも、既に 45 例発症しております。そのうち渡航歴が本人にあるのは 3 人か 4 人。フィリピン以外の方も含めると 5 人程度です。多くの方が二次感染で、先立って新聞報道もされた大学病院内の発生については、ほとんどの方が三次感染という状態です。やはり、より早期に接触者等を特定して、健康観察をしていかないと、こうしたことが起こってしまうのかという気がします。ただ、その際に運用という形で個人情報を得るというのは、行政としても非常に厳しいところがあります。法にのっとった形で個人情報を収集できる形にならないと。今回の事例でも、一部に詳細な疫学調査を拒否された方もおります。そういう意味でも、個人情報を得るためのは、明確な法的な裏付けをした形でお願いしたいと思います。麻しんの感染性、病原性から見ると、それは大変必要なことだと考えております。

○渡邉部会長 ほかに御意見はありますか。

○磯部委員 今の点に関連して確認ですが、これは別に行政上の運用上、届出事項を増やすというものではなくて、省令などで届出事項を追加するよう、法令上の手当てをしてからやるという理解でよろしいかということを確認させてください。

○齋藤結核感染症課長補佐 現在、その法令上の位置付けという方向で検討しております。

○磯部委員 ここで人権尊重の観点も考慮する必要はあるというのは、恐らく、本人の同意なく届出をするというところなのかなと。本人個人を特定し得る情報が集積され、場合によっては、本人が識別されるかもしれないということにもしつながれば、それはそれでまた人権の問題になるということを、専ら情報のことを考えていらっしゃるのかなと思ったのですが。これもそういう理解でよろしいかどうか、確認させてください。

○西川結核感染症課長補佐 委員の先生がおっしゃったような理解と考えております。

○磯部委員 恐らく、個人情報保護の仕組みというのは、もちろん、本人が自分の情報をコントロールできるようにという趣旨であることはそうですが、本人のそういう請求権的な側面というのは、決して、とても大事というほどではなくて、判例が認めているのは、むしろ自由権的な側面、つまり、みだりに公表されないというところが大事なわけです。ですから、これは個人情報を扱う機関は国、自治体、私立機関、いろいろあろうかと思いますが、それぞれの個人情報保護法制がいろいろな規制を及ぼしているわけで、それに基づく適切な安全管理措置が取られているという大前提があるというベースにおいてであれば、これは個人情報は保護と同時に有効に活用しなければ意味がないということになるはずです。今回のような改正をしないと、はしかのエリミネーションがきちんとできないという要請があるのであれば、これは別に遠慮なくやるべきであろうと思います。

 しかし、条例に基づくような機関であれば、通常、これは法令に基づく措置なので、本人同意なくやれるという類型で整理しているのだろうと思いますので、絶対法令上の手当ては必要であるということで、それさえ確認できていれば、法律上はこれ以上問題はないのではないかと。安全管理措置だけはきちんとしてくださいということを重々お願いして、その上で私は構わないかなと思っております。

○渡邉部会長 当然、みだりに公表したりはしないと思いますので、そういう意味では、個人の情報の保護は十分なされるという前提だと思います。事務局、それでよろしいわけですね。

○齋藤結核感染症課長補佐 はい。

○渡邉部会長 ほかにコメントはありますか。皆さんの御意見は、この侵襲性髄膜炎菌感染症及び麻しんについては、感染症の対策上、個人の情報を得るということにおいて、積極的な疫学調査等を行うことによって、完全な封じ込めを行うということで、問題はないということでよろしいですか。

                                      ( 了承 )

○渡邉部会長 ありがとうございました。今日、必ずしも結論を出すわけではないですが、一応、この委員会の方向性としては、そういう皆さんの意見の流れであるということで、お願いいたします。

 続きまして、ほかに五類感染症のうち、医師による届出方法を変更するものがあるのかどうか、事務局からの問いですが、御提案がありましたらお願いします。特に今のところはないと考えてよろしいですか。もし、こういう疾患については、届出方法を考えたほうがよろしいだろうという御意見がありましたら、事務局のほうにそれをお伝え願ればと思います。また、そういうことの情報がありましたら、次回等で更に議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、資料 3 に基づいての説明を、事務局からお願いいたします。

○齋藤結核感染症課長補佐 資料 3 、「感染症の範囲及び類型について」、御審議いただきたいと思います。

2 ページ、「感染症の範囲及び類型について」は、前回の部会から続きまして、現時点での検討事項として、主な所では、まず鳥インフルエンザ A(H7N9) について、四類感染症かつ指定感染症として、鳥インフルエンザ A(H5N1) と同等の措置 ( 二類感染症相当 ) を平成 27 5 月まで継続するという方向で、先ほど御了承いただいたところです。

 五類感染症の侵襲性髄膜炎菌感染症及び麻しんについても、その届出について、即時届出・個人情報の届出を求める位置付けという方向で検討することを、今、御了承いただいたところです。

 また、前回の部会では、薬剤耐性菌のうち、多剤耐性アシネトバクター感染症を全数報告疾病とし、腸内細菌科カルバペネム耐性菌感染症について五類感染症に位置付けた上で全数報告疾病とする、という方向でお話を頂いたところです。

 今回の論点ですが、既にこのように検討対象となっている事項以外に、対応が必要な類型・疾病等はないかということについて御意見を頂きたいと思います。

 まず、 1 つ目として、類型は今、一類〜五類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症という枠組みがありますが、この枠組み自体の見直しの必要はないかという点が 1 点目です。 2 点目は、現在、感染症法に位置付けられていない疾病・病原体等について、追加の必要はないかという点です。 3 点目は、既に感染症法に位置付けられている疾病・病原体等の類型の変更等の必要はないか。この 3 つについてお伺いしたいと思います。

3 ページ以降に、「感染症の分類と考え方」について、感染症法の対象となる感染症、病原体の規制に関しての参考資料を付けておりますので御参照ください。資料 3 の説明は以上です。

○渡邉部会長 今、事務局から説明がありましたように、論点として 3 つが挙げられているわけです。現在の類型が一類〜五類、新型インフルエンザ、指定感染症、新感染症という分け方で分類されております。これ以外のものが必要なのかどうか。その辺のところを、まず皆さんからの御意見を伺えればと思います。これ以外として、症例で集めている情報もありますよね。例えば、発疹の場合と発熱の場合とか。あれは別にこの感染症の類型の中には入っていないわけですね。症候群サーベイランスですか。あとで今の質問に答えていただければ。

○小野寺委員 薬剤耐性菌の届出のことについて、腸内細菌でカルバペネム耐性菌というのは非常に多いと思うのです。いわゆる感染症を発症したものを届けるのか、あるいは保菌状況にあるものも届けるのか。その鑑別というのは、臨床の現場では非常に難しい場合が少なからずあると思うのです。現場からすれば、これを全部届けるというのは、かなり負担が大きいことだと思うのですが、その点はいかがですか。前回議論があったことも知っているのですが、いかがでしょうか。

○渡邉部会長 確かに CRE というか、 Carbapenem-resistant enterobacteriaceae は、今のところはそんなにでもないとは思うのですが、アメリカ等では 10 %近くある。あと、ベトナムとかインドとかのサーベイの話でも 10 %以上。場合によっては、 50 %ぐらいはいるという報告がされております。日本が今後これに対してどうなるかというのは、医療現場ももちろん注目していることだと思いますが、今先生がおっしゃったように、 1 つは、この数が増えていった場合、今のような全数把握報告ということで、実際にサーベイランスが成り立つのかということと、もう 1 つは、保菌状態のものも報告に入れるのか。これはなかなか難しい点があるかなと思うのですが。その 2 点について、小野寺先生から問いかけがあったわけです。これは皆さんのほうでどうしたらよいか、御意見がありましたらお願いします。臨床の現場から、加来先生どうですか。

○賀来委員 小野寺先生が言われたように、感染症として届け出ていくときには、今、現実にどれぐらい多いのか、日本ではっきり分かっていないので、そういう意味では、全数把握として傾向というか、ヨーロッパ、アメリカで問題になっていますので、そういう意味では、感染症として届けていくというのは、私はもちろんこういう届出をまずすべきだろうと思います。これがもし保菌という形になってきたときには、かなり多くなってくる可能性は確かにあると思います。それは前回も確か出たと思いますので、その辺りを。今回は保菌という形ではなくて、感染症という形での届出なので、それについては特に問題はないと思います。前にバク麻しんのときには、保菌も含めているということが確かあったかと思いますが、そういったことが、今後問題になっていく可能性はあると思います。

○渡邉部会長 これは特にカルバペネムの場合には、耐性の遺伝子がプラスミドですので、人の中で起こるのか、ほかの所で起こっているのか分からない点はありますが、腸内細菌の中にどんどん移ってしまうと、そういう意味だと、発症していない、それが原因とならないような疾患の場合でも、耐性菌として見いだされることは十分に考えられることだと思います。その辺のところをどういうふうに取り扱うのかというのは、カルバペネムを集めるときの集め方というか、どういう基準で集めるかという案がまだ示されていないわけで、その案を示していただくときに、その辺のところを十分に考慮した上で示していただければ、またそこで議論になるのかなと思います。多分、皆さんの御意見だと、保菌まで集めたらたまったものではないという御意見だと思います。その辺を考慮した上で、集める場合の基準を考えていただく必要があるのではないかと思います。

 この全数把握というのは、どこまでの頻度のときに全数把握でやって、そこをどこまで超えると定点にするのか、何かクライテリアはありますか。インフルエンザ H1N1pdm のとき、初め全数ですが、その後、定点把握に変わったと思うのですが、それは何か基準というか、何かあった上で変えるのですか。

○感染症情報管理室長 明確な基準があのときはあったわけではないのですが、やはり、行政対応の不可、それを取る意義というのでしょうか、既に国内のほうに大分入った後に、それを一例一例届け出ていただいて、追っ掛けていくという必要性は、もはやない段階でやるのは意味がないところですので、そのようなことから、全数届出というのは廃止して、定点のほうの、インフルエンザとしての届出でお願いをした次第です。やはり、ほかの感染症についても、不可と意義をわきまえた上での対応になるのではないかと考えております。

○渡邉部会長 インフルエンザの場合には、恐らくクローナルのスプレッディングだったので、多分、 1 つを特徴付ければ、他のものも類似だということで判断できたのだと思うのですが、腸内細菌カルバペネム耐性菌の場合は、多分、多様性が相当出てくるのだと思うのです。今でも多様性が非常にあって、個々のものが、菌にしても、そこにある遺伝子にしても、大分違うというのがデータとして出ていますので、少し考え方は違ってくるのかと思います。ただ、どういう目的で集めるのかということを考えないと、ただ耐性の数だけ集めていればいいということにするのか、それとも本当に感染症の制御という観点から考えた場合にはどういう集め方がいいのかということは、少しこの辺は考えないと、例えば院内感染対策に必要だから集めるという考え方だと、集め方が少し違ってくるかと思うのです。

 その辺のことを考えながら、耐性菌の場合には、情報の集め方気を付けないと、今、小野寺先生や賀来先生が言われたように、何のために集めるのだという話になりかねないかなと思うのです。その辺のことで御意見をお願いします。

○岡部委員 やはり、ある程度柔軟に考えておけるようにしておいたほうがいいと思うのです。はしかのエリミネーションとか、そのほかのときにも議論があったのですが、例えばはしかで定点から全数報告にしようというときに、別に明確な定義はないのですが、通常ある感染症法の中では、例えば腸管出血性大腸菌感染症のようなものだと、年間に 3,000 4,000 例ぐらいが全数です。結核が入ったので 2 万、 3 万という大きい数が出てきているのはあるのですが、後で話も出てくると思うのですが、地方衛生研究所でのチェックというキャパシティも考えると、数千を超えるようなものになってくると、なかなか労力としても難しいし、検体を出すのも大変になってくると思うのです。ですから、目的をはっきりした上で、今のレベルですと数千程度が数として。ただ、そこは余り明確な線をおかないほうがいいと思いますし、あるいは、最初は全数であったけれども、このぐらいになったならば、逆に定点に戻すとか、 JANIS のレポートに切り替えるとか、そういうようなものの応用も視点に置いておくことを条件にしたらいかがかと思います。

○渡邉部会長  VRE VRSA 、この辺は幸い今のところ日本はそんなに数が増えていないというか、アメリカ並にはなっていないということで、全数把握でも成り立つのだと思うのです。アシネトバクターもそんなにまだ多くない。ただ、カルバペネム耐性は、そうはいかないのではないかということを、多分、臨床の先生は予想されているのだと思うのです。そこで心配しているのではないかと思うのです。

○味澤委員 私たちの所でカルバペネム耐性で問題なのは緑膿菌ですから、そんなにすごい数ではありません。確か 3 年ぐらい前はカルバペネムの感受性が大体 70 %を切るぐらいだったので、逆に言うと 3 割ぐらいは耐性でした。今はいろいろ対策を行って、もう少し良くなっています。ですから、本当にカルバペネム耐性菌感染症を全部拾うと、我々の所は緑膿菌ですからそんなに頻度は高くないですが、全国規模でやると、すぐ何千といってしまうような気がしますが。

○渡邉部会長 ほかに御意見はありますか。医師会として、耐性の問題は小森先生いかがですか。

○小森委員 今、議論しておられることに、私は違和感なくお聞きしておりました。各先生が言われたように、余り現場で決め決めにしてしまうと、大変動きづらいということがあるので、そういった現場のことを、もちろん感染症法上、速やかに情報を収集をし、分析をした上で対策を立てるということが極めて重要な視点であることは、もちろん猶予を待たないわけですが、余り頑なな体制をとったために、かえってということもあり得ると思います。その辺りの配慮をしていただければ、私としては問題ないと思います。

○渡邉部会長 ほかに御意見はありますか。

○調委員 薬剤耐性菌による感染症患者数の把握としてのサーベイランスとは違って、薬剤耐性菌の病原体のサーベイランスは余り動いていないと思います。法律による患者の届出があって、それに基づいて、発生動向調査事業による原体サーベイランスが動くと思うので、まず、患者の届出を法律で規定して、そして発生動向調査事業の中で病原体サーベイランスの位置付けが必要だと思います。やはり、問題となるいろいろな耐性菌の感染症については、ある程度届出が必要ではないかと思います。

○渡邉部会長 取りあえずは、全数把握でやっても、日本の中の現状を把握すると。ただ、その後、多分たくさん増えてくる可能性があるので、その時点においてどういうふうに対応していくのかを十分検討の上で、この基準等を決めていただきたいというのが、皆さんの御意見かと思いますが。事務局のほうはよろしいでしょうか。これから基準案が出ることになるわけですね。

 類型についての見直しというのは、今のところこれでよろしいですか。先ほどの症候群サーベイランスみたいなことは、この中に入っていないのですよね。

○齋藤結核感染症課長補佐 類型とは別に症例の所で、疑似症としてこういうものは書いております。類型とは少し違います。

○渡邉部会長 今の一類〜五類と、あと、ここに書いてある「新型インフルエンザ等」として、感染症、新感染症、このぐらいの分け方でよろしいでしょうか。特に今のところ、これを変える必要はないと。よろしいですか。

 それでは 2 番目として、「現在、感染症法に位置付けられていない疾病・病原体等の追加の必要はないか」ということで、何かこれは加えたほうがいいだろうとか。

○岡部委員 ○の 2 3 に関わるのですが、今も少しお話が出た感染症法の中の疾病ではないのですが、例えば疑似症定点医療機関で、現在、発熱、発疹とか、呼吸器感染の届出制度があるのですが、これはどの程度機能しているかどうか。もし、きちんと機能していないのであれば、機能するようにしたほうがいいし、その辺の工夫が必要だろうということです。

 それは、例えば H7N9 、パンデミック、 MERS とか、いずれも不明の急性呼吸器感染症重症という形で見つかっているので、もしそういうものを取るのだとすると、 WHO がやっているのは SARI ですね、 Severe Acute Respiratory Syndrom: 重症呼吸器感染症のサーベイランスになります。これは感染症の法律の話とは少し違ってくるのかもしれませんが、そういう概念を取り入れるということは、更に必要なこととして、現在、すぐに決まらなければ、課題としてきちんと議論しておいたほうがいいと思います。

○渡邉部会長 先ほど私が聞いたのも、その辺で、あそこで今載っているのは発疹、発熱で、そういう症状を示す患者情報を集めるというか、あれはどのぐらい義務となっているのですか。

○齋藤結核感染症課長補佐 こちらは義務として課せられているものです。

○岡部委員 定点医療機関に対してですよね。

○齋藤結核感染症課長補佐 そのとおりです。定点医療機関に対してです。

○渡邉部会長 今、先生が言っているのは、全部に係る疑似症サーベイランス的なものを位置付けているのですか。

○岡部委員 技術的な細かい詰めがあるので、全部まで今は語れないと思うのですが、考え方として、 SARI というのは、新興感染症、特に、重症疾患の発見には非常に重要であるという概念は十分に理解をしながら議論していったほうがいいと思います。

○渡邉部会長 今のお話のようなインフルエンザ類似のものや、 MERS なども、病原体が分からないものが今後見つかってくる可能性もありますので、そういうものを引っかけるためには、症候群サーベイランス的なものは重要だと思います。その辺のことを今後どういうふうにしていくかというのは、今後の課題として、この部会でも議論する必要があるのだと思います。

 ほかに、今の疑似症サーベイランス的なことで御意見がありましたらお願いします。よろしいですか。今後、これについては議論を深めていくということでよろしいですか。できればどこか、例えばアドホックの小委員会でも作って、そこで議論をするとか。全体で議論していても、なかなかはかどらないかなと思うので、その辺は事務局のほうで少し考えていただければと思います。

 先ほど MERS という話が出てきましたが、こういうものの位置付けをどうするかというのは、皆さんはどうですか。御意見があればお願いします。

○岡部委員 重要度からいうと、かなり関心を持っておく必要はあると思うのです。やはり、現状のリスク評価をやっていく中で決めていけばいいことであって、緊急に感染症法の中に入れるということまでは議論しなくてもいいのではないかと思います。決して中東が遠いからというわけではないのですが、発生地が限定されているのと、同じようにヒト - ヒト感染は余り多く見られていないということで。きちんとウォッチングは必要だと思います。ですから、場合によっては緊急に入れるということを視点に置いておいていただければ結構だと思います。

○渡邉部会長 今、感染研でリスクアナリシスをやったものを、定期的とまでは言わないのですが、時期に合わせた形で出してきております。それに基づいても、今、岡部先生が言われたように、ヒト - ヒト感染的なものは見られるが、明らかにそれが拡大している傾向でもないようだということと、中東から帰ってヨーロッパ等で移している例はあるのですが、アジアのほうには、今のところそういう目立った動きはないということで、今後の動向を更に注意して、何かあったときにはすぐに対応できる状況にしておけばよろしいのではないかという御意見だと思います。こんなところでよろしいですか。それでは、そういう方向で考えると。そのほかに何か追加、又は考えるべき疾患はいかがですか。

 先ほど挙がりました鳥インフルエンザ H7N9 については、指定感染症で平成 27 5 月まで継続するということですが、その後どうするかというのは、事務局では考えられているのですか。

○齋藤結核感染症課長補佐 指定感染症としての延長期限というのは、先ほどおっしゃっていただいたとおり、平成 27 5 月までで、それ以上は延長することはできませんので、もし二類感染症相当の措置が引き続き必要ということであれば、それは二類感染症への位置付けが必要になってきます。

○渡邉部会長 それはいつまでにやっておかないといけないという、デッドラインというのは何かあるのですか。

○齋藤結核感染症課長補佐 こちらは法律の改正が必要になってきますので、法改正として国会に提出しなければ変えられませんので、それについては、もしあれば秋の臨時国会、通常国会は来年またありますので、そういった機会に御審議いただく必要が出てきます。

○渡邉部会長 ということで、国会に出さなくてはいけないということで、近々までには議論していかなければならない点であるということです。もし、 H7N9 についてどうしたらいいかという御意見があれば伺っておきたいと思います。

 特にないということでしたら、今後の中国等での発生状況を把握しながら、次の国会に提出するという特日までに、事務局のほうから案を頂いて、それに対して、議論をしていくということでよろしいですか。

 それでは、ほかに何か変更の必要があるものはありますか。特に今のところはなさそうですか。急に言われてもなかなか出てこないと思いますので、もしあるようでしたら、また後で事務局のほうに御意見を頂くということでよろしいですか。それでは、そういうふうにさせていただきたいと思います。

 続きまして、参考資料 1 等を御覧いただいて、前部会において、感染症対策における地方公共団体による検査の実施の確保について御議論いただいたところです。その議論の中で、現在、地方公共団体において実施されている検査実務の現状・課題等について、御指摘を頂いたところです。そこで、本日は地方公共団体、特に地方衛生研究所における病原体等の検査業務の実態等についてお話を頂きたいと思います。参考人として、小澤参考人と宮崎参考人においでいただいております。参考資料 1 に基づいて小澤参考人から、参考資料 2 に基づいて宮崎参考人から説明をお願いいたします。

 それでは、小澤先生、お願いいたします。

○小澤参考人 地方衛生研究所全国協議会の会長をしております、群馬県衛生環境研究所所長の小澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。参考資料 1 を基に説明させていただきます。

 まず「感染症対応における地方衛生研究所の現状と課題」です。これは地方衛生研究所の現状が非常に厳しいということを、皆さんに御理解いただきたいということです。単に印象や風評ということでは、なかなか納得していただけないと思いますので、できるだけ客観データをお示しして、今、地方衛生研究所がどういう状況にあるかを皆さんに御理解いただきたいということです。

 まず 2 ページです。これは地方衛生研究所の業務と機能の概略です。地方衛生研究所というのは、地方衛生行政の科学的・技術的中核機関と位置付けられております。

 赤で囲った部分ですけれども、検査、研究、研修、公衆衛生情報の収集・解析といった業務が、いわゆる『四本柱』と言われる業務です。検査、研究、研修というのは専門技術業務となり、公衆衛生情報の業務は主に地方感染症情報センターが担っております。これは情報機能と位置付けられるのではないかと思います。そのほかに、特に明記はされておりませんが、健康危機管理というのがあります。アウトブレイク対応。シンクタンク機能といって、政策に資するような科学的なエビデンスを提供する意味があります。そういった情報機能が求められていると考えられます。ただし、全ての地方衛生研究所がこの機能全てを満たしているわけではありません。

3 ページに行きますが、地方衛生研究所では実際の業務割合として、先ほどの四本柱をどういう割合でやっているかです。中核市、指定都市、都道府県と、自治体の規模が大きくなるほど試験検査の割合が小さくなります。すなわち、研究や研修、あるいは情報業務の割合が相対的に大きくなることが分かります。つまり、都道府県においては名実ともに「衛生研究所」と言っていいような業務を行っております。政令都市、中核市などでは、検査業務が大半を占めており、いわば衛生試験所、衛生検査所の業務を行っていると言っていいかと思います。

4 ページが、地方衛生研究所の微生物検査についてです。地方衛生研究所の微生物検査は平均して 80 項目あります。細菌、ウイルス、その他ということで、ここに挙げたような代表的な検査や、そのほかの特殊な検査も含めて、大体 1 所当たり平均 80 項目となっております。

5 ページですが、平成 22 2 月に、平成 20 年度の地方衛生研究所のそれぞれの業務内容を、非常に細かくアンケート調査いたしました。同じような調査が平成 15 年にも行われており、その 5 年間の変化を見ますと、職員数においては 13 %減、予算においては 30 %減、研究費に至ってはほぼ半減しているという状況が分かりました。その原因としては、地方財政が悪化していること、団塊世代が退職してしまっていること、それから地方分権の流れがあって、国のいろいろな意味での指示や監督が、なかなか行き届かなくなっていることが挙げられると思います。

6 ページでは、地方衛生研究所における常勤の衛生系の職員の、自治体の人口 10 万人当たりの人数を棒グラフにしております。都道府県の所を見ていただきますと、 1 から 47 まで、全ての都道府県がここに示してあります。その上に数字で書いてある、都道府県平均値、最大値、中央値という表があります。そこを御覧いただくと分かりますように、人員においては都道府県、指定都市、中核市と、平均値が大きくなっています。つまり、都道府県においては人口当たりの衛生系の職員が少ないことが分かります。そして、人口 10 万人当たりで、衛生系の常勤職員が 1 人を切る都道府県の地方衛生研究所が、大体 10 か所程度あることが分かりました。

 ちなみに群馬県は、人口 200 万人の極めて平均的なサイズの県です。それでいきますと衛生系の常勤職員が 20 人いるというのが、 1 人ずつということになります。私の群馬県は実際には 1 人を少し下回るのですが、これにはからくりがあります。理化学系の農薬検査が全く別の組織になっているので、その分がないといったことがあります。

7 ページです。予算がどういうようになっているかを見ますと、予算の算定はそれぞれの自治体でちょっと違いますので、一概には言えないのですが、やはり人件費はそれぞれ含まれていると考えていいと思います。ここにおいても都道府県の下のほうは、極めて貧乏所帯になっていることが分かります。特に都道府県の地研の下の 16 か所ぐらいは、ガクンと予算が少ない。しかも、都道府県においては、非常に格差が大きくなっていることが分かります。

8 ページに行きますと、これが全体的な地方衛生研究所の現状であると考えていただきたいのです。平成 15 年〜 20 年の 5 年間で業務や機能の平均水準が低下していることが明らかです。それは現状でも、恐らく進行中であろうと考えられます。ちなみに来年度早々、 4 月になりますと、 5 年たちましたので同じような全国アンケートをやります。それによって、どの程度担っているかが確認できます。

 もう 1 つ顕著な点は、特に都道府県の地方衛生研究所において、地研間の格差が拡大しているだろうということです。県型地研の一部は、著しい人員や予算の削減に遭っており、一部には許容レベルを下回る機能低下があるのではないか、ということが危惧されます。県型の地研の数箇所においては、もはや地研として最低レベルの機能を維持できなくなっているかもしれない所があるのではないかと考えられます。これはどういうことか。平時の感染症対応、あるいはパンデミック時の対策において、自治体間の格差が出ているということです。つまり、住民の健康リスクに地域差が生じているのです。同じ日本国民であるのに、感染症に対応する自治体の能力が異なるために、健康危機対応能力が格差を生じて、同じ国民としてのリスクが非常に違っているという状況があるだろうと思われます。全国である一定レベルの水準を確保することが必要ですが、これがなかなかできない状況が生まれつつあるだろうということが危惧されるわけです。

9 ページを見ていただきますと、「微生物検査が実施できない理由」と書いてあります。これは微生物検査それぞれの項目について、検査ができないと答えた場合に、その理由を答えていただくということで、その実施不能項目の延べ総数を集計したものです。ですから重複もあるわけです。理由の中のトップは、「検査技術を有する者がいない」ということです。これも平成 16 年度の調査に比べると、平成 21 年度は 27 %増加しています。つまり 27 %の検査項目が、技術者がいないということで減っているということです。次の項目で「検査の必要 ( 需要 ) がない」と書いてあります。これも 73 %の増加と言いますか、機能低下があります。これは何を意味するかというと、地研はそれぞれ工夫をして、需要がないものについてはスクラップ & ビルドを進めて、できるだけやめておこうということが進んでいることを表していると解釈できると思います。

10 ページを御覧ください。本庁の自治体に対する要望を集計しますと、予算と人員と本庁の理解ということになります。まず、予算に関して言いますと、おしなべてどこの研究所も、「もう少し予算が欲しい」と言うわけです。

 次が人員増です。この人員増を要望しているのが、都道府県においては約 8 割ですが、指定都市、中核市においては大体半数です。ということは指定都市、中核市というのは人員増、要するに定数はある程度いいのではないかと考えているけれども、都道府県においては人が欲しいというのが切実な声になっていると解釈していただきたいわけです。

 それから「研究所業務を理解し技術力を活かすような支援」を本庁にと。本庁は、特に財政課や人事課からの削減圧力が非常に強いのです。しかも地方衛生研究所というのは、県民にサポーターがいません。県民に直接サービスを提供しているわけではありませんので、地方衛生研究所の機能が低下しようが、人員が削減されようが、県民からそれに関して全くクレームが出ることがないものですから、本庁の理解がない限り、業務をきちんと維持するだけの人員や予算を確保することができないのです。つまり、予算や人員を削減しようと思った本庁が一番標的にしやすい組織が、地方衛生研究所であると理解できると思います。

12 ページは、病原体検査診断研修の受講生についてです。実は国立保健医療科学院が窓口になって、実際には国立感染症研究所に実施していただいている、病原体検査診断技術の研修というのがあります。これは 3 週間の技術研修で、対象は地方衛生研究所の微生物検査担当職員です。平成 24 年度にウイルス研修を 3 週間行ったのですが、これには 32 名の受講生があって、そのうち 30 名が衛生研究所だったのです。職種はそこに書いてあるとおりですが、経験年数を見ますと、検査の経験が 1 年未満、つまりフレッシュマンがいきなり技術研修に来ているということです。実際に研修を担当した教官に聞きますと、ピペッティングがちゃんとできるかできないかというレベルの人もいるということです。 1 年未満と 1 2 年というのを合わせますと半数になってしまうと。

13 ページです。研修開始時、つまり 3 週間の研修の最初に、受講生に自己評価をしていただき、 2 つの問いを投げかけます。ウイルス検査診断の基本をあなたは理解していますかという問いと、ウイルス検査診断に関連する感染症、つまりウイルス感染症の基本を理解しているかどうかという問いです。最初の問いに「できない」、つまり検査診断の基本を理解していないと、堂々と答える人が 4 人に 1 人はいるということです。ウイルス感染症に関して、この基本を理解しているかという問いに関しては、「できない」というのが 3 人に 1 人以上となるわけです。

 つまり、検査診断あるいはウイルス感染症の基本的なことが、ほとんど分かっていないような受講生が、いきなり飛び入りで来てしまうという状況です。これは何を表しているかというと、地方衛生研究所がそれだけ非常に未熟な職員を抱えていて、これをどうやって研修しようかということです。一部では OJT どころではないわけです。一部署の人数が少ないので、ようやっと回っていて、新チャンをトレーニングする余力もないのだろうと思います。そういう状況がうかがえるということです。

14 ページは都道府県の名前が出てくるので、一応名前は聞かなかったことにしておいていただきたいと思います。最後の 18 ページに表があります。この表を説明いたします。 3 週間の技術研修と 1 週間の技術研修という、 1 年に 2 つの技術研修があります。これが細菌とウイルスで互い違いに行われます。 3 年間で 6 回の技術研修のチャンスがあるということになります。メインは 3 週間の技術研修です。これは平成 21 年から 23 年の 3 年間の、各地研の受講生の数を表しています。これは平成 24 年度の衛生部長会に参考資料として提供しましたので、一応公表されている資料です。

 一番右が微生物検査担当常勤職員数です。これは今年 3 月、先立ってアンケート調査をしたものです。衛生微生物担当職員数をそれぞれの衛生研究所に調査をして、数を書き入れてあります。例えばウイルスで、 BSL3 の操作を必要とするような病原体を検査するとします。ウイルス担当職員が 2 人ですと、 1 人が防護服を着て中へ入る、あるいは 2 人が入ると、もうほかにいない。あるいは 1 人が入って 1 人が外でバックアップをすると、もうそれだけで終わりということになります。ですから仮にウイルス担当者が 2 人しかいないと、かなり危険な状況だと考えていいのです。都道府県の地方衛生研究所でウイルス担当が 2 人しかいないのが岩手県、山形県、山梨県、奈良県、和歌山県、香川県、徳島県、宮崎県、鹿児島県です。都道府県だけでもこれだけあるのです。つまり、県型の地方衛生研究所は、かなり危うい状況があるということがこれでお分かりになると思います。

 それでは 14 ページに戻ってください。微生物技術研修の 3 週間の分に、平成 21 年度から 23 年度までの 3 年間、一度も参加しなかった県の地方衛生研究所は 17 か所あります。名前はその下に書いてあります。この中で下線を引いた衛生研究所は、もともと余力があって非常に人数も多いので、いちいち出さなくても大丈夫、自前で研修というか、 OJT ができるだろうと考えられる所です。下線を引いていないのはクエスチョンマークの所です。その下が 1 週間の研修です。「新興再興感染症技術研修」と言います。 3 週間と 1 週間で、 3 年間に合わせて 6 回のチャンスがあるのですが、その 6 回全てに不参加という地方衛生研究所が、何と 13 か所もあります。この名前の中で下線を引いたのは、やはり実力があって行かなくてもいい所だと思うのですが、線を引いていない所は、やや危ない所です。お気付きになると思いますが、先ほどウイルス担当が 2 人しかいないと読み上げた地方衛生研究所と、この下線を引いていない地方衛生研究所は、結構オーバーラップしています。

 そういうことで、 15 ページは地方衛生研究所の検査における課題です。微生物検査は最近、極めて高度化・多様化が進んでおります。検査技術は遺伝子検査が導入されて、非常に高度な検査が多くなっています。また、 1 つの微生物に関しても、検査項目がいろいろ出てきています。それから現在、次世代シークエンサーを初めとする新技術の導入があって、こういう新技術にもキャッチアップしていかなくてはいけません。

 あるいは、地方衛生研究所における微生物検査というのは、食中毒や感染症の行政対応の科学的根拠になります。つまり行政処分の根拠になる検査ですから、信頼性を確保しなくてはいけないのです。「食中毒の原因菌はこれです」と言って処分をした後で、「いや、実はあれは間違いでした」と言うわけにはいかないわけです。そういう事例も過去に何回かあったので、衛生微生物の検査に関して外部精度管理を導入し、信頼性を確保するのが今後の課題としてもかなり大きなものがあると考えられます。

 もう 1 つは、特に県型の保健所において、検査機能を持っていない保健所が非常に多くなっています。多くの県では保健所の検査機能を地方衛生研究所に集約・中央化して、全部地方衛生研究所で行う自治体が多くなっています。群馬県も 11 か所の保健所があり、中核市 2 市の保健所を除いて 9 か所の県型の保健所には、全く検査機能がありません。群馬県の衛生環境研究所が、ルーチン検査から高度な検査まで、全て請け負っているという状況になっています。

 そこで地方衛生研究所の検査レベルが低下しますと、その地方公共団体においては後がないのです。あとはもう国立感染症研究所にお願いしてやっていただくしかない。つまり、地方できちんと完結できる検査体制を構築できなくなってしまう危険性があるのです。平時のルーチン検査から健康危機管理に必須な特殊な検査まで、ほぼ全ての衛生行政検査、微生物検査が、今や地方衛生研究所に集約されている。鳥インフルエンザとか、 SFTS とか、 MERS コロナウイルスといったものも全て、地方衛生研究所がやるという体制になっています。

16 ページをお願いします。これほど健康に直結する非常に重要な機能を担っている地方衛生研究所ですが、これほど行政でないがしろにされている公的試験研究機関もないのではないかと言えると思います。非常に自虐的にならざるを得ないところです。その中でも我々は極めて努力しているということを、ここに書いておきました。

 例えば、平成 20 年、平成 24 年に H5N1 の鳥インフルエンザの研修会をやっています。平成 21 年にパンデミックが発生した際には、 4 30 日だったのでギリギリ間に合って、すぐに検査マニュアルのキットを全国の地研に配布して、検査体制が整えられました。この体制は世界的にも極めて素晴らしいという賞賛を得ているのです。この体制を整えるに当たっては、国立感染症研究所と地方衛生研究所の非常に良い連携と、地方衛生研究所の職員の、相当涙ぐましい努力があったことを申し上げておきます。今、 MERS SFTS 、鳥インフルの H7N9 といったものは、地方衛生研究所に全て検査キットが配布されており、いつ国内発生例があったとしても、検査ができる体制を整えてあります。そういうことも地方衛生研究所は日夜努力をしながら、体制を構築しているということです。

 最後に、地方衛生研究所の課題です。地方衛生研究所というのは保健所と違い、法的位置付けがありません。したがって、地方公共団体が地方衛生研究所をどういうように運営し、どういう体制で、どれくらいの規模で行うかというのは、全くフリーに近い状況になっています。そこへいって財政や人事の草刈り場になっているわけですから、これを何とかするために、つまり最低限のラインを確保するために、何らかの法律的な位置付けが必要です。

 ただし、地方衛生研究所全国協議会には 79 か所が加盟しておりますけれども、これは地方衛生研究所全国協議会というクラスに、小学生から大学院生までいて、みんなが 1 クラスになっているという状況です。しかもまずいことに、お互いに自分が小学生なのか、中学生なのか、高校生なのかよく分かっていない状況なのです。そういったこともあって、一括して全て地方衛生研究所としてくくって法的に位置付けるというのは、なかなか困難なところがあります。少なくとも都道府県や政令指定都市の地方衛生研究所に関しては、やはり最低限の機能を担保するような何らかの仕組みが必要だろうと思います。

 また、地方衛生研究所の検査機能、特に健康危機管理体制といった、地研がクリアーすべき最低基準を担保して、健康危機発生時の病原体検査の信頼性を確保するために、非常に重要です。このためには、特に県型の地方衛生研究所間の格差を解消すること、そして、できればブロック内での連携・分業をしたいのです。しかしながら、これは言うは易く行うは難しです。自治体間の連携・分業は、一応健康危機発生時にはお互いに連携するという自治体の首長間協定がほぼ出来上がっていますが、これは危機発生時だけです。日常業務を分担するとか連携するという取決めは、まだありません。はっきり言えば、全ての地方衛生研究所が完結的に全ての機能を発揮する必要は全くないのです。これはある意味で、予算や人員の無駄遣いに近いのですが、自治体が合併していないのに、地方衛生研究所だけが連携・合併・分担をするというのは不可能です。

 あと、我々が当面目指しているのは、やはり微生物検査の信頼性を確保するために、外部精度管理を何とか制度化したいと考えています。

 以上が地方衛生研究所の現状です。非常にぼやきばかりになりましたけれども、こういう状況があります。かなり危機的で、皆さんこれを聞かれると、こんなことでいいのかなと思われると思うのですが、これが現状ですので、そういう認識を共有していただきたいと思います。以上です。ありがとうございました。

○渡邉部会長 どうもありがとうございます。現場がしっかりしていないと、その現場から上がってくるデータ等の信頼性が保証されない、という大きな問題があります。それは取りも直さず、国の感染症対策に大きな影響を及ぼしていくことになるわけです。小澤先生は自虐的という発言をされましたけれども、今聞かれた先生方は多分、これで大丈夫かと皆さん思われたのではないかと思います。確かに予算と人員が少ないというのはそのとおりです。それとは多分違う側面になるかと思うのですが、実際に研究職員の能力が低いと言うと怒られますけれども、専門家でないような人がその職に就かなければならない状況にあると。先生、どうしてこういう専門性のない人がそのポジションに就かなくてはいけないのか、というところを説明していただけますか。

○小澤参考人 地方衛生研究所の職員には 2 通りあります。ずっと地方衛生研究所に勤めている職員と、保健所やほかの所を異動しながら、衛生系の技術系職員としてキャリアを積んでいく職員です。特に団塊の世代がたくさんいた頃は、専門的なベテランの職員がそれぞれの部署にいて、そういう人たちがきちんと技術水準を担っていたのです。そういう人たちがパッといなくなってしまいますと、中堅や若手のバランスが崩れてしまいます。当然、人事異動もある程度激しくなって、若手で全く検査などやったこともない人が異動してくる、あるいは保健所に 10 年とか 20 年いて、検査など 20 年前の細菌検査しかやったことがない技術系の職員が、いきなり人事異動で地方衛生研究所の細菌課に異動してくるということが起こるわけです。そういうことがかなりあって、全体として微生物検査のレベルは下がっていると考えられます。

○渡邉部会長 これは多分、今の人事異動の仕組み等々の問題にも関わると思うのです。衛研とか大阪府衛研といった大きな研究所は、専門職として 1 つのポジションに、例えば細菌なら細菌関係に、かなり長くいられる方がいます。もしかすると一旦就職すると、永久に定年までいられる所もあるし、小さい衛生研究所になると、 2 3 年ごとにローテートしてしまって、 2 年間細菌をやっていた人が今度はウイルスに行ったり、又は寄生虫に行ったりということで、専門性を維持できない状況もあると思うのです。その辺は恐らく人員の確保云々ではなくて、人事異動等の問題等にも関わることだと思うのです。各衛生研究所によって違った側面があるのだと思います。今の小澤先生の説明に関して何か御質問等、ここはちょっと分からなかったということがありましたらどうぞ。

○小森委員 お話をお聞きしていると、この先どうしたらいいのだろうかと。確か平成 24 3 7 日に公表されている地域保健対策検討会で、この問題も議論されたのではないかと思います。私は担当ではないので、そこのところは十分深読みしておりませんけれども、その報告会等を踏まえて、国やそれぞれの都道府県については知事会との議論とか、そういうことについてどういう状況なのか。また、ここは感染症部会ですから、できることを提言すること等の限界はあるとしても、我々は一体何をすべきかを議論しないと、それこそグチを聞いて、「そうですね」で終わってしまうのです。地域保健対策検討会の報告書を受けて、その後の国としての動き等について、事務局はいかがでしょうか。

○感染症情報管理室長 大変恐縮ですけれども、この場でお答えするところがありませんので、次回に何か御紹介できればと思います。

○渡邉部会長 では、質問があった事項についてまとめていただいて、次回に事務局から御報告をお願いします。ほかに御質問等がありましたらどうぞ。

○山田委員 すごく説得力のある現状と課題を、我々はものすごく理解できたと思うのですけれども、例えばこれを県の知事や議会へ働きかけても、彼らは法的根拠がないからという形で、門前払いをするということでしょうか。それとも、それぞれの自治体によって対応が違うのか。そういう温度差があっていろいろ違ってくるのか。その辺はいかがでしょうか。

○小澤参考人 地域保健法の指針の見直しがあって、その中に、地方衛生研究所の機能強化をしなければならないという項目が付け加わりました。これは項目として付け加わったので、非常に前進だったのですが、地域保健法は旧保健所ですから、余り強制力がなくて、実際にそれが出てから、地方衛生研究所の扱いが良くなったということは余りないのです。それは今度の 4 月のアンケート調査で、かなり明らかになると思います。

 今の御質問では、やはり法的位置付けなり何らかのあれがないと、国からの指示とか省令がないと、本庁に対して強く出られないのです。

 もう 1 つは、地方衛生研究所の所長たちの顔ぶれが替わっています。 10 年前ぐらいは大体 6 割が、 MD の方が所長をやっていたのです。今は MD の所長は 4 割を切っております。 1 割が事務系の人が所長をやっています。

 もう 1 つ特徴的なのは、地方衛生研究所と郊外研究所が合併して、衛生環境研究所とか衛生郊外研究センターというスタイルになっている所が多いのです。つまり、衛生系と環境系が合併している地方衛生研究所が多いのです。そういう所では、環境系の人が所長になっている所が極めて多いのです。県によっては環境系の常勤の職員の人数のほうが、衛生系の常勤の職員の人数より多い所があります。こういうのは首長とか、いわゆる主管部局の力関係にもよるのかもしれませんが、今の日本で、環境部局のほうが衛生部局よりも人数を多くするという必然性は、地方衛生研究所や地方環境研究所においてはないのです。そういうことからすると、そういう地方自治体というのは極めて的外れな人員配置をしていると言わざるを得ないのです。そういうことも、衛生研究所のほうから本庁に対して訴える法的な根拠がないと、なかなか説得力を持たないということがあり得ると思います。

○澁谷委員 これを見ると、愛知県は比較的恵まれており、保健所でも検査室を持って検査を行っております。先生がおっしゃっていたように、地域保健法の中の地域保健の推進の指針は大臣告示でしたよね。ようやくこういった形で位置付けても、やはりなかなか推進していかないということは、もう 1 つ上のものを考えないと、全国的に展開していくことは難しいのだろうと思います。

 それから現状を考えると、今はほかの職種の研修でもそうですけれども、 3 週間職場を離れて研修に出すという自治体側の状況を考えると、長期のものがなかなか出づらくなっているのではないかと。ですから研修の在り方自身も少し工夫が要るのではないかと思いました。

○小澤参考人 実は、平成 24 年度の衛生部長会にこのリストを出して、 3 年間に 3 週間の研修に一度も参加していない自治体は技術レベルが危ない、という話を私が申し上げました。そうしたら翌年から、ドーッと参加申込が増えたのです。ということは、現場が出せないのではなくて、本庁の理解がなくて、予算や出張旅費が付かないということだと思うのです。

○調委員 感染症とは関係ないのですけれども、地方自治体では今、 PM2.5 の測定に非常に力を入れています。確か 3 年ぐらい前に環境基準が出来たのです。県庁の部長に聞いてみると、環境基準が出来たということは、法律が出来たということなので、自治体に測定の義務が生じるということです。そうすると、予算がすんなり通るわけです。そういう意味では、地方衛生研究所における業務の法的な裏付けがないという状況を、地方衛生研究所という組織を法律の中で規定するのは非常に難しくて、例えば中核市も、一括して法律で組織を何とかするのは非常に難しいと思うのですけれども、自治体が行っている感染症に関する検査業務に関して、法律である程度の位置付けがあれば、予算化はかなり促進するのではないかと思います。

○渡邉部会長 本質的というか、現在解決できる方法が、調委員から提案されたのではないかと思うのです。例えば、機能として感染症に位置付けてもらうと、少しは違ってくるだろうということかと思うのです。本来は地域保健法か何かで、ちゃんと法的に地研の設置を位置付けてもらえればいいのでしょうけれども、地研ができてから、もう 20 年か 30 年ですか。もっとですか。

○小澤参考人 もっとです。

○渡邉部会長 多分その間にいろいろ要求してきたと思うのですけれども、それぐらいたっていても、法的に位置付けられてこなかったという点を考えると、なかなか難しい点があるのかと思います。調委員が言われたように、機能的な位置付けをどこかにしていただく。そういう意味では感染症法が一番やりやすいのではないかと思います。その辺が突破の 1 つの糸口になってくれればいいかと思われます。

○岡部委員 今日は、かなり微生物的なところに集約して説明していただいています。感染症の危機管理対応というと、先ほど麻しんの話も例に出ましたし、 H7N9 でも H1N1 でもそうだったのですが、患者がどういう状況になっているかという疫学調査は非常に重要になっているのですが、現在ではこれをやる専門家が地方にはほとんどいない。そういうことで、感染研が 10 数年掛かって実地疫学の専門家を育て上げているのですけれども、そこの受入れも細々としているといった状態です。今のところ手元にデータがないのであれですが、危機管理を前面に出すのでしたら、やはり疫学調査もきちんとできるような体制が今後の危機管理には必要であるということは、十分強調してもいいのではないかと思います。

 危機管理対応についてもう 1 点。今日は感染症部会ですから、感染症に特化して説明します。しかしバックグラウンドとしては、衛生研究所では一方で理化学部門を抱えております。これは、例えばバイオテロのようなものが起きた場合に、最初から「バイオテロだ」と言っているわけではないので、バイオテロなのかケミカルテロなのかという鑑別は、衛生研究所でやるわけです。また、先生の所でも忙しかったと思うのですが、昨今の農薬の中毒事例とか、ああいった場合も、本当に農薬によるものなのか、それこそ食中毒なのかといったようなことの出動にも、危機管理の非常に幅の広い対応をやる機関であるという理解の上で、感染症は大切だと言っていただければと思うのです。ちょっと補足的な説明を。

○小森委員 それぞれの御専門の方と違う立場ですが、これにはやはり国と地方自治体、地方分権の大きな流れの問題があると思うのです。ただ、ここは感染症部会なので感染症部会として、それぞれの地衛研が行っていらっしゃる様々な検査の精度がちゃんと管理されているのかということが必要であり、それを要求する。そのために、それぞれどれだけの試薬等について、一定の基準のものをどれぐらい使っていらっしゃるのか、種々の検体等についてどの程度というのを。

 例えば登録衛生検査所等については、毎日の血清を取っておかれて、御自身の地域地域でも精度管理のための標準値を設けるのに、な非常に大きなお金を投資しているわけです。そういったことがどの程度できているのかということをしっかり調査して、パンデミック等についてはちゃんと対応できるのかどうかと。そのためにはこれだけのものが必要ですよという切り口で言わないと。

 先ほど検討会の話をしましたけれども、そのときも先生が講演されているのです。感染症部会としては、地衛研はどの程度のものを必要とするかという議論をして、それを担保するためにはどうであるかという提言をすることが、前に向かって大事なことだと思います。是非、そういう議論を事務局にも委員長にもお願いしたいと思います。

○渡邉部会長 それに絡んで、もう 1 人の参考人として宮崎参考人がいらっしゃいますので、参考資料 2 の「病原体検査法の標準化と管理体制」に基づいて、地研と感染研がどういうことをやっているかという概要を、お話していただければと思います。

○宮崎参考人 感染研でレファレンス委員長をしております宮崎と申します。よろしくお願いします。レファレンスという言葉は、取る人それぞれによって違った意味に取ります。本日はレファレンスという言葉を「病原体検査法の標準化と管理体制」ということで御理解いただければと思います。これを感染研と地方衛生研究所の連携を中心に話したいと思います。

2 ページには「感染研における病原体検査法の標準化と管理体制 ( いわゆるレファレンス ) 」ということで書いております。

 主な活動内容ですが、必要とされる病原体検査法の構築・改良、及び、標準化。この標準化の意味は、ここでは地方衛生研究所との統一、同じ検査をして同じ結果を出すといういう意味です。それと、この試薬等の配布であります。

2 番目は感染症の診断検査、疫学調査等に用いる試薬も標準化をする、及び標準品を作成して、また国内の地方衛生研究所や検疫所等に分与するということです。

3 番目が病原体等、これはバクテリア、ウイルス、真菌等に限りませんが、それらの産物や媒介動物等を含んで、これらを陽性コントロールや陰性コントロールの参照品として保管をして、検査のために必要な場合には、これを分与することを行います。

4 番目として、感染症に関する専門技術者の研修を行っております。これは小澤先生からも御説明がありましたが、厚労省と感染研、それと地方衛生研究所全国協議会が連携して、講習会を実際に企画・運営しております。

5 番目に、病原体診断の標準化のための地衛研との連携を、感染研におけるいわゆるレファレンスということで行っております。

3 ページは国内の病原体検査の連携と意義についてまとめております。左の青いサークルが自治体です。この中で自治体の本庁や病院等から届出の義務のある感染症の患者があった場合の検査は、主に地方衛生研究所等に依頼があります。一方、国では同じような状況があった場合には、厚生労働省等からの依頼・指示によって、国立感染症研究所が行うわけですが、パンデミックに限らず、公衆衛生学上非常に問題が大きいと思われるような感染症の病原体検査については、真ん中の緑で点線にしておりますが、「地方衛生研究所との検査体制の共有」ということで、地方衛生研究所と感染研が連携しまして、病原体の検査を実際にはしております。

 ところが、この点線にしております理由は、現実的には感染研と地方衛生研究所は、全く異なる所属でありまして、感染研は国の機関、地方衛生研究所等は地方自治体の機関ですので、この連携については、特に規定もありませんし、何の根拠もありません。そこが、実際に現場でやっている者としては、いつも不都合を感じるところです。

 こういった連携の下で、しかし実際には感染症の危機対応として、小澤会長から今御説明がありましたが、インフルエンザ等のパンデミックがあった場合には、地方と中央の病原体検査法を標準化するということで、地方衛生研究所でやった検査も感染研でやった検査も同じ結果で、同じ感度、特異度であるという意味ですが、標準化をする。そして、逸早く検査や疫学調査能力を国として活用することができるようにするために、この検査能力や疫学調査能力に関して、感染研や地方衛生研が一定水準を維持する必要があるだろうと考えられます。

4 ページの所には、病原体診断の実施と解析の現状のフローをお示ししております。黄色で囲っている所が地方衛生研究所が担っている部分です。地方衛生研究所が病院等の現場に直結しているわけです。そこから送られてきた検体を用いまして、そこから病原体を分離いたします。分離というのは、検体は非常に雑多なものが入っておりますので、そこから疑わしいものを 1 つ病原体として取ってくるということです。その取ってきたものが、「病原体の同定」と書いてありますが、一体何者なのかを、ウイルスであれば、これがインフルエンザのあるタイプのものだとか、 MERS の原因のウイルスであるとかを決めていく過程が同定です。この一連の現場の最前線としての病原体の分離同定を、地方衛生研究所が主に担っております。そこで分離同定されました病原体を感染研に送っていただいて、それを感染研で更に解析をして、病原体の性状や、更に細かな分類を行っていくわけです。そして、それを保管して、来るべき検査法の改良等に用いているという現状です。取りもなおさず、この一連の作業で出てきた情報そのものが病原体情報として、厚労省から発出されるという流れになっています。

 この中で、水色で囲っている所があります。これはレファレンスセンターといいまして、頻度の高い感染症の病原体診断について、これを共同で実施するという連携体制が、バーチヤルではありますが、実際に動いています。 79 の全ての地方衛生研究所が全く同じ検査対応能力を持っているわけではありませんので、東北、関東、中国、四国などブロック別に分けて、連携と分業が必要だという話がありましたが、そういったことを可能にするために、お互いにこういうバーチャルな組織を作って、この流れが止まらないように運営しているという状況があります。これをレファレンスセンターと一応呼んでいます。

5 ページは、レファレンスセンターはどういった病原体を対象としているかということで、 1 から 16 まで、エンテロウイルスから HIV 関連というところまであります。

6 ページは、このレファレンスセンターというバーチャルな組織を用いて、この 3 年間でどういったことをやってきたかを書いております。新たな感染症に対する検査法を構築しています。 SFTS が現在トピックスですが、この検査法も共同で構築しております。

 次に病原体検出のマニュアルのアップデイトです。感染症法で届出が必要なものについては、地方衛生研究所と感染研と共同で、病原体検出のためのプロトコールを作っているということで、順次アップデイトをしていきます。さらに、検査の品質管理が必要ですので、ここに書いているようなことを実施しています。

7 ページに写真が載っていますが、「検査技術の標準化にむけた病原体検出マニュアルアップデイトと web 公開」と書いていまして、一般にもこの感染研と地衛研で作ったものを公開して、広く意見を受け付けて、更にいいものを作ろうとやっております。全ての疾患について、こういった作業をしています。

8 ページは、インフルエンザを担当するレファレンスセンターでどういったことをやってきたかです。この左のグラフはたくさんの線があります。この線は、検査のばらつきを表しております。これを研修を行うことによって、右側のグラフは 1 つの直線にかなり近づいております。このように検査の精度を上げることができたという例です。

9 ページはエンテロウイルス検査について、品質管理がどの程度行われているかのアンケートを行っていますので、そのことについて報告します。1から3の所に書いてありますが、1は検査の材料についての品質管理が行われているか、2は検査法そのものについての品質管理ができているか、こういったものについて、いわゆる標準手順書といわれる、 SOP といいますが、こういったものが整備されているかについて、調査を行いました。

10 ページで、エンテロウイルス検査だけに関しても、特に品質管理は行われていない地方衛生研究所が 63 %、 85 %という結果が出ております。これについては今後の課題であると考えます。

11 ページは、今申し上げてきましたように、地方衛生研究所で分離同定された菌を感染研で解析するといった流れを維持するために、これを国の検査体制と考えると、これを維持するための課題と考えられることとして、ここに挙げています。

1 つは、地方衛生研究所の検査能力の維持・強化です。検査能力維持が困難な理由としては、今小澤会長から言っていただいたことに加えて、病原体の分離同定には非常に知識と技術が必要です。一朝一夕でできることではありませんので、時間がかかります。ところが、地方衛生研究所等では特に人事異動の期間が短くて、その専門技術者の育成が難しいという現状があります。

 現在行っています対策としては、熟練度に応じた実習・講習を企画して、実施しております。ただここでも、自治体では交替が多いので、毎回新人の方が講習を受けてきて、なかなか実習や講習をやっても、力が付いて定着しないということは感じております。

2 つ目の○は、地方衛生研究所と感染研の連携による検査精度の向上が求められております。

 最後の 12 ページですが、連携全般について総括しますと、我が国の病原体疫学情報は、地衛研と感染研の病原体検査の結果が基本データとなっています。信頼性の高い病原体検査成績を得るためには、病原体検出マニュアル作成やレファレンスセンターを運用しておりますが、連携する根拠がないというところで、様々な支障が出てまいります。病原体検査の品質管理は、今後非常に大きなテーマになります。これはまだ構築の途上であって、更なる検討と整備が必要であろうと考えています。特に、感染症の危機管理の観点から、国

と地方自治体が連携するための明確な法的根拠が望まれていると考えております。以上です。

○渡邉部会長 ありがとうございます。時間が 50 分までと決められています。ここの会場がそういう予約になっているということで、延長ができません。

 今日は地方衛生研究所及び感染研側から、検査体制の重要性、特に危機管理という観点から考えたときには、体制の維持と確保は考えていかなければいけないということは、皆さん合意していただけることだと思うのです。ただ、実際、この感染症部会として、何を具体的に要望していくのかに関しては、今後やはり事務局等にも案を作っていただくと同時に、それに基づいて皆さんからの意見を入れていくことを、今後進めていかないといけないと思います。今日は時間もありませんので、その宿題を残した形で、今日はここで納めさせていただきたいと思います。事務局から何か連絡がありましたら。

○齊藤結核感染症課長補佐 本日は様々な御意見を頂き、ありがとうございました。次回の開催については、日程調整の上、御連絡差し上げます。

○渡邉部会長 どうもありがとうございました。限られた時間でいろいろ貴重な意見を頂きまして、ありがとうございました。


(了)

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