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2013年9月10日 第1回「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会 (議事録)

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成25年9月10日(火)10:00~11:30


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

委員

今野委員 神林委員
黒田委員 櫻庭委員
佐藤委員 竹内(奥野)委員
野田委員 水町委員
山川委員

事務局

中野労働基準局長 大西大臣官房審議官
村山労働条件政策課長 岡労働条件確保改善対策室長
鈴木職業安定局派遣・有期労働対策部企画課長 伊藤職業能力開発局能力評価課長
田中雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課長

○議題

(1)今後の懇談会の進め方について
(2)その他

○議事

○村山労働条件政策課長 定刻となりました。ただいまから、第1回「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」を開催いたします。

 委員の先生方には、御多用のところ御参集いただき、まことにありがとうございます。

 私は、厚生労働省労働条件政策課長の村山と申します。本懇談会の進行については、座長が選出されるまでの間、私が議事進行を務めさせていただきます。

 まず、本懇談会の開催に当たり、労働基準局長の中野より御挨拶を申し上げます。

○中野労働基準局長 労働基準局長の中野でございます。

 皆様方には、このたび大変お忙しい中、「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」の委員をお引き受けくださいまして、まことにありがとうございます。

 我が国における働き方の現状を見ますと、雇用は安定し処遇も高いが働き方の拘束性が高く長時間労働等の課題があるいわゆる正社員と、有期契約を繰り返すなど雇用が不安定で処遇が低く能力開発の機会が少ない非正規雇用の労働者に二極化しているといわれておりまして、働く人たちの意欲や能力の発揮が十分になされていない状況が見られるわけでございます。

 こうした働き方の二極化を解消し、雇用形態にかかわらず安心して生活できる多様な働き方が提供される環境を整備することが重要となっております。

 このような課題に対処するためには、職務や労働時間、勤務地が限られた多様な正社員を普及させることによりまして、働く人たちが希望に応じて働き方を選べる環境が整備され、不本意に非正規労働者となっている方々がキャリアアップしやすくなるとともに、仕事と生活の調和を実現しやすくなるのではないかと考えているところでございます。

 また、企業にとりましても、労働者の意識や生活面のニーズが多様化する中、このようなニーズに対応した働き方を整備することによりまして、多様な人材の確保や有効活用を図ることが可能になるものと考えているところでございます。

 しかしながら、いわゆる正社員、非正規労働者という働き方の類型が定着しているといわれる我が国におきまして、多様な正社員を普及・拡大させていくためには、労使を初めとした関係者にわかりやすい形で雇用管理上の留意点を取りまとめ、このような働き方のモデルの周知を図っていくことが必要であると考えております。

 このような方針につきましては、安倍内閣の成長戦略として取りまとめられました「日本再興戦略」等におきましても、職務等に着目した多様な正社員モデルの普及・促進を図るため、成功事例の収集、周知啓発を行うとともに有識者懇談会を今年度中に立ち上げ、雇用管理上の留意点について平成26年度中に取りまとめ、周知を図ることとされているところでございます。

 これを受けて開催することといたしました本懇談会には、人事労務管理、労働法、労働経済など幅広い分野の先生方に御参集いただいたところでございます。

 各委員の皆様には、それぞれ専門的な見地からの御意見をいただきまして、議論を深めていただければと思っております。

 簡単ではございますが、以上、お願いを申し上げまして、冒頭の挨拶とさせていただきます。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

○村山労働条件政策課長 続きまして、御出席いただいております委員の皆様を御紹介させていただきます。

 五十音順で御紹介申し上げますので、御紹介申し上げた際には、皆様方には一言御挨拶をいただければ幸甚です。

 学習院大学経済学部教授 今野浩一郎委員です。

○今野委員 今野です。よろしくお願いします。

○村山労働条件政策課長 一橋大学経済研究所准教授 神林龍委員です。

○神林委員 神林と申します。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 早稲田大学教育・総合科学学術院准教授 黒田祥子委員です。

○黒田委員 黒田と申します。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 東京大学大学院情報学環教授 佐藤博樹委員です。

○佐藤委員 佐藤です。よろしくお願いします。

○村山労働条件政策課長 神戸大学大学院法学研究科准教授 櫻庭涼子委員です。

○櫻庭委員 櫻庭です。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 早稲田大学法学学術院准教授 竹内(奥野)寿委員です。

○竹内(奥野)委員 竹内でございます。名前が紛らわしくて恐縮ですけれども、普通に竹内とお呼びくださって結構でございます。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 大阪府立大学経済学部教授 野田知彦委員です。

○野田委員 野田でございます。よろしくお願いします。

○村山労働条件政策課長 東京大学社会科学研究所教授 水町勇一郎委員です。

○水町委員 水町です。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 東京大学大学院法学政治学研究科教授 山川隆一委員です。

○山川委員 山川です。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 このほか、政策研究大学院大学教授 黒澤昌子委員にも御参集いただいておりますが、本日所用のため御欠席されております。

 なお、厚生労働省側の出席者につきましては、座席表に記載しているとおりでございます。

 恐縮ですが、カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただければと存じます。

続きまして、お配りを申し上げております資料の確認をお願いいたします。

 表紙が「第1回『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」という形で、左上でホチキスとじしてあるものがメインの資料でございまして議事次第と資料項目を載せているほか、座席表を置いております。

 そのとじてあるものをめくっていただきますと、資料1で開催要綱、御参集者の名簿、資料2で会議の公開の取り扱い、資料3及び4がこの関係の閣議決定等、資料5が「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」の概要、資料6は「多様な正社員」の導入状況、そのほか参考資料として、別とじで「望ましい働き方ビジョン」「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」でございます。

 また、とじてあるものの資料の最後7番が「今後の懇談会スケジュール(案)」ということになってございます。

 続きまして、先ほど申しました、一点とじになっております本資料の束のうち、資料1本懇談会の開催要綱について御説明をいたします。

 開催要綱の趣旨・目的は、先ほど局長の中野から申し上げたとおりでございます。

 「2 検討事項」は、そこに書いておりますように多様な正社員に関するさまざまな雇用管理上の留意点等についての調査・御検討をお願いできればということを考えております。

 「4 スケジュール」は、本年9月、本日より検討を開始し、先ほど申しましたように閣議決定もございますので、26年中を目途に取りまとめということでございます。

 「5 運営」のところでございますが、その4点目におきまして「本懇談会の座長は、参加者の互選により選出する」とされております。この要綱にしたがいまして、座長の選出を行いたいと思いますが、これにつきましては、事前に事務局のほうで各委員の先生方に御相談申し上げましたところ、多数の先生方から御推挙のあった今野委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○村山労働条件政策課長 御異論ないようでございますので、本懇談会の座長は今野委員にお願いしたいと思います。

 今後の議事進行につきましては、今野座長にお願い申し上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○今野座長 それでは、よろしくお願いします。

 まず、議事に入る前に、本懇談会の開催に当たり、会議の公開等について事務局からの説明があります。お願いします。

○村山労働条件政策課長 ただいま、座長が御指示になられました「会議の公開の取扱いについて」でございますが、一点とじになっている資料の束の右上「資料2」でございます。右下3ページでございます。

 「会議の公開の取扱いについて」ということで、こうした厚生労働省で開かれる懇談会は原則公開ということでございます。ただし、以下にありますように、個人あるいは特定の企業等に関する情報を保護する必要がある等の場合でございまして、座長が非公開が妥当と御判断された場合には非公開とすることもあるということで、下の※に書いてありますように「審議会等会合の公開に関する指針」にのっとりまして対応したいというふうに考えているところでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○今野座長 御質問ございますか。よろしいですか。

 それでは、会議の公開については事務局からの説明にあったように取り扱うということにいたします。

 次に、本日の議題に入ります。

 本日は、本懇談会の今後の進め方について御議論をいただくということにしております。

 まず「多様な正社員」に関する現状や、これまでの議論の経緯、今後のスケジュール等について事務局から資料の説明をしていただきまして、それで議論をしたいと思います。

 それでは、よろしくお願いします。

○岡労働条件確保改善対策室長 労働条件確保改善対策室長の岡と申します。よろしくお願いいたします。

 資料の右下にページ番号がございますけれども、通しページの4ページをお開きいただきたいと思います。

 先ほど、局長の挨拶あるいは要綱にもございましたが、本年6月14日に閣議決定されました「日本再興戦略」の抜粋でございます。

 この中で「『多様な正社員』モデルの普及・促進を図るため、成功事例の収集、周知・啓発を行うとともに、有識者懇談会を今年度中に立ち上げ、労働条件の明示等、雇用管理上の留意点について来年度中のできるだけ早期に取りまとめ、速やかに周知を図る。」とされております。

 次に、5ページでございますが、同じく6月14日に閣議決定されました「規制改革実施計画(抜粋)」でございます。

 「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備」ということで、同じく「『多様な正社員』モデルの普及・促進を図るために、労働条件の明示等、雇用管理上の留意点について取りまとめ、周知を図る」こととされております。こちらにつきましても、今年度25年度に検討を開始し、平成26年度に措置をするということとされております。

 また、次のページ以降に、これの基になりました「規制改革会議」の「雇用ワーキング・グループ報告書」を載せております。

 こちらにつきましては、水町先生も御参画されておりまして、先ほどの実施計画の前に取りまとめられたものでございます。ちょっと長いので説明は割愛させていただきますけれども、通し番号でいきますと10ページからでございますが、「労働条件の明示」あるいは「均衡処遇・相互転換の要請」それから「人事処遇の在り方の検討」といったことが提言されてございます。

 直近のそういった経緯でこの懇談会につながっておるわけですが、ただ、この「多様な正社員」に関する取り組みというものは厚生労働省で以前から行っております。

 資料の通しページ29ページ、ちょっと飛んで恐縮ですが、お開きいただきたいと思います。

 これは、佐藤先生が座長をなさって取りまとめられました「『多様な形態による正社員』に関する研究会」の報告書の概要でございます。

 簡単に御説明させていただきますと、まず上のほうに書いてありますのは、先ほど局長の挨拶にもありましたが、多様な正社員というのは非正規の社員にとっても正社員への転換の機会を拡大する可能性を与えるものでございますし、また、いわゆる正社員にとってもワーク・ライフ・バランスの実現の一つの手段となり得るという提言がなされております。

 その下に「多様な形態による正社員の活用状況」ということで、報告書の中から主要な部分を抜粋してございます。

 まず、この「多様な形態による正社員」、新しい話に思われがちですが、約5割の企業で既に制度が導入されているということでございます。

 ちなみに、資料にはなくて恐縮なのですが、JILPTのほうでも同様にこの「多様な形態による正社員」の活用状況について調べておりまして、そちらの報告書でも47.9%の企業で導入がされているということで、やはり5割ぐらいの企業で既に導入がなされているということでございます。

 その導入されている企業の中で、では、どういう多様な正社員の形態が多いかということでございますが、職種が限られた形態というのが約9割。それから勤務地が限られた形態が約4割。労働時間が限られた形態が大体1~2割。労働時間については、所定外が無い、あるいは所定労働時間がほかの正社員よりも短いかといった2種類がありますけれども、あわせますと1~2割ということでございます。

 なお、これらは重複もございますので、足すと当然十割超えてしまいますが、一番多いのは職種限定というものが一番多いということでございます。

 それから、導入の目的でございますが、優秀な人材の確保、それから定着の必要性、ワーク・ライフ・バランスを支援するためという目的で導入されているところが多いということでございます。

 多様な正社員の属性でございますが、男性のほうが多いとする企業が約5割、女性のほうが多いとする企業が約4割ということで、ほぼ同程度ということでございます。

 なお、いわゆる正社員の場合は男性と女性のどちらが多いかということを同じく聞いておりますが、男性のほうが多いという企業が8割と多くなっていますので、この多様な正社員の働き方というのは、女性の方にも多く活用されていることがうかがわれます。

 それから処遇でございますが、賃金については、いわゆる正社員の8~9割程度で、昇進・昇格は上限があり、事業所閉鎖時の人事上の取り扱いについては、いわゆる正社員と同様とするという企業が多いという結果でございます。賃金はこの8割から9割ということですが、後で出てきますように満足度というのはそれなりにありますので、労働者にとってもいい働き方なのではないかと思われます。

 いわゆる正社員と同様の水準を求める者というところでございますけれども、これは転勤がある、いわゆる正社員と同様の処遇を求める多様な正社員がどれだけいるかということでございますが、賃金については4割程度ということで、転勤がない分、あるいは職種が限られている分、賃金がいわゆる正社員よりも低いというのには満足している多様な正社員というのが比較的多いのに対しまして、雇用保障については8割程度ということで、雇用保障については、いわゆる正社員と同様の保障がされるべきだと考えている多様な正社員が多いということでございます。

 次に、そういった多様な正社員のメリットなどについてでございます。

 企業側のメリットといたしましては、先ほどの目的とかぶりますが、人材の確保ができる、あるいは多様な人材が活用できる、それから人材が定着する、業務の効率化が図れる、そういった回答が多くなっております。

 一方、従業員のほうのメリットでございますが、雇用が安定していることが約6割で非常に多いということで、先ほどの雇用保障では8割の人がいわゆる正社員と同等の水準を求めているというものとは符号しているのかなと思います。

 また、これは勤務地限定ということですが、遠方への転勤の心配がないことというのもメリットとして多く挙げられております。

 それから、今の働き方、多様な正社員という働き方に満足している人でございますけれども、半数以上の人は、今の働き方に満足しているということで、括弧で書いてございますが、非正規の人は約4割ぐらいの人しか満足していないのと比べますと、満足度というのは多様な正社員のほうが高いということがいえるかと思います。

 非正規の人が正社員にキャリアアップするという話が先ほどありましたが、非正規の人の約5割が、こうした多様な正社員への転換を希望しているという結果がございます。

 また、いわゆる正社員の方のワーク・ライフ・バランスにも役立つということでございますが、特に勤務地限定の多様な正社員への転換を希望する、いわゆる正社員の方も6割いるということで、正社員にとっても働きやすい働き方ではないかなと思われます。

 以上のような活用状況やメリットなどを通じまして、この報告書では以下のような留意事項あるいは提言がなされております。

 まず、非正社員から正社員へのステップのために活用できる働き方ではないかということでございます。

 また、相互転換しやすい柔軟な仕組みにすることが重要ということが提言されております。

 実質的な男女差別を生じさせないような仕組みというのも必要だということが提言されています。

 また、労使の協議を踏まえて働き方に応じてでございますが、いわゆる正社員との均等・均衡を考慮していくことが重要だと述べられております。

 それから、事業所閉鎖時の対応でございますが、先ほど8割の人がいわゆる正社員と同様の水準を求めているということでございますが、いわゆる正社員に関する取り組みと均衡が図れるよう、最大限努力することが必要だという提言がなされております。

 それから、従業員尊重のアプローチということで、労使の話し合いや従業員への十分な説明というのが重要だということも提言されております。

 以上が多様な正社員に関する研究会報告書の概要でございます。

 次に、通しページの30ページ、資料6でございますが、JILPTで行いました「多様な就業形態に関する実態調査」の一部を抜粋した概要をお付けしております。

 先ほど、約5割の企業で、多様な正社員制度が導入されているということでございました。企業ではそういう割合ということなのですが、では、正社員の中でどれくらいの割合を占めているかということでは、先ほどの多様な正社員の研究会報告書の調査の中では、正社員の約3割が多様な正社員であるということになっております。

 ただ、先ほどの多様な正社員の研究会の報告書につきましては、勤務地、職種それから労働時間のいずれかが限定された人が多様な正社員ということで定義されておったのですけれども、こちらのJILPTのほうでは、下のほうに破線で囲ってありますが、このアンケートに答える企業が次の4つのうちどれか1つだけを選ぶということで、重複のない形で、かつ、一般職社員というものを別に選ぶ、分けて選ぶということになっております。

 一般職社員というのは主に事務を担当する職員で、おおむね非管理職層として勤務することを前提としたキャリア・コースが設定された社員のことで、金融業などに多く見られる形態なのですが、そういったものと先ほどもありました職種限定、勤務地限定、それから労働時間の限定というもののどれかを選ぶということで本当は重複があるのですが、いずれか一方を選ぶという形になっております。

 このJILPTの調査によりますと、従業員総数に占める限定正社員の割合は18.5%。その内訳ですが、職種が限られた社員が約5割。それから先ほどの事務職の一般職が約3割。それから勤務地限定が約2割となっております。

 このうち、職種限定については資格を必要とする業務に従事する者が多い運輸業、郵便業あるいは医療福祉で多くなっているということで、ドライバーの方ですとか、医師、あるいはコメディカルのような資格を要する者というのが職種限定ということで多く挙げられているのではないかと推察されます。

 また、一般職社員については、金融・保険業で多く存在しておりまして、こういった業種では多様な正社員の多くは一般職社員となってございます。

 それから勤務地限定については、この調査では、素材関連製造業それから金融・保険業などで多くなっているという状況がございます。

 2つの調査でも多様な正社員の定義というのは違っておりますし、ここで挙げています一般職社員といったものを、職域を拡大して特に女性の活躍促進に役立っている、そういった形態もございます。

 また、非正規の方のキャリアアップや、いわゆる正社員の方が一時的に育児等のために多様な正社員になるという一時的なものを中心に先ほど御説明申し上げましたが、それ以外にも最初から自分は生活等の調和をしたいということで、そういった形態を選ぶ方も多いということで、一口に多様な正社員といいましても、いろいろな形態があると思いますので、ぜひ、この懇談会でもいろいろな形態について、どういったところに焦点を当てて議論していくかということも踏まえて御意見いただけるとありがたいと思っております。

 最後に、通しページの31ページでございます。

 「今後のスケジュール(案)」ということで、今後の進め方は委員の皆様方にお決めいただくことでございますので、あくまでたたき台ということでございます。

 第2回以降でございますが、先ほど申し上げましたように、多様な正社員といってもいろいろな形態もございますし、いろいろな活用の仕方もございます。また、課題もあるかと思いますので、まずは実際に制度を導入している企業などからヒアリングをして、実態把握というものをしてから議論をすると、より効果的ではないかなということで、年内にそういったその実態把握することをしてはどうかということでございます。

 それを踏まえまして、年が明けてからテーマ別に議論していただくということで、ここには例示として5つ載せておりますけれども、制度導入から、先ほど雇用ワーキングの提言にもございましたが「労働条件の明示の在り方、いわゆる正社員との均衡の在り方」それから「相互転換制度を含むキャリアパス」「その他雇用管理に関する事項」について、論点ごとに深めていったらどうかということでございます。

 そして、その議論いただいた後で、来年の夏以降、報告書案について議論いたしまして、取りまとめをしていただければ幸いと思います。

 ちょっと長くなりましたけれども、私からは以上でございます。

○今野座長 ありがとうございました。

 それでは、まず資料の説明をしていただきましたので、この点について御質問があれば質問していただいて、そこから始めたいと思います。

 いかがでしょうか。よろしいですか。私が質問したいのですけれども。いいですか。

 佐藤さんがやられた「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」で、ちょうど佐藤さんがいるのでお聞きをしたいなと思っていたのですが、まず、これ多様な正社員を調査上定義するときに、いわゆる企業ってこれまでも社員区分とか雇用区分というのを持っていたわけですが会社の定義を聞いたのですか。それとは別の定義で聞いたのか。

 ついでに質問もう少しします。

 もう一つは、特に勤務地限定なのですが、これはここにありますように多様な正社員を導入している企業の約4割が勤務地限定、とこうありますが、中小企業なんかはもともと勤務地限定しかないので、それも含めた数字というふうに考えればいいかどうか。とりあえず2点。

○佐藤委員 まず調査するときには、企業に正社員について雇用期間に限定のない、いわゆる無期雇用の中で複数の雇用区分、この雇用区分はキャリアが違うとか処遇の決め方が違うとか幾つか例示して、そういうものが異なる雇用区分というような、例えば賃金の決め方が違うとかキャリアが違う、ただ、一般職から総合職につながっているようなのは分けないで1つの雇用区分にしてくださいというふうにしています。

 ですから、一般職から管理職に変わると処遇の仕組みなんかが変わりますよね。でも、これはつながっているということで1つの雇用区分というふうに答えていただきました。まず、幾つの雇用区分があるのかと聞いた上で、たしか人数が多いほうの雇用区分から上3つ取り上げて、それぞれについてルールと実態両方聞いています。

 基本的には、例えばAという雇用区分がありますといったときに、その雇用区分について、例えば労働時間について言うと、残業を命じることがあるというふうに書かれているかどうかですね。それと実際残業があるかないかというふうに聞いていて、原則はルールのほうでこういう区分をつくっています。

 ですから実態とルール、これは後での議論も大事になってくると思いますが、残業を命じることがあるという就業規則になっていても、その雇用区分のもとで残業のない人もたくさんいるわけですね。あるいは転勤を命じることがあるといっても実際上は転勤がない人もいるし、あるいは客観的に1社1事業所もある。あるいは複数でも通勤圏内というのがあるので、一応ルールを原則にしています。

 これは後で見るときに、ルールよりも実態のほうが、今度個人におりてくると、実際上1社1事業所の転勤がないだけではなく、複数事業所だけれどもこれまで入社以来転勤がないという人もいるので、ルールの話と実態を少し分けて議論をするほうがいいかなということで、我々のほうはルールで基本的には考えていました。逆に言うと、1社1事業所でも転勤を命じることがあるという就業規則もあるわけです。実際上その事業所が増えたときどうなるということもありますので、それは1社1事業所だからルール上は転勤がないというふうに規定されているわけでもない場合もある。ですから、そこは結構大事な論点かなと思います。

○今野座長 ついでにもう一ついいですか。

 そうすると、ルールで例えば多様化が程度3だとして、実態は2だということもあり得るということですよね。例えば転勤命令なんかで。今度、逆にルールを決めているけれども、実態を見るとそれ以上に多様化しているというケースもあり得ますよね。例えばホワイトカラーでいうと専門職とか専任職みたいな雇用区分は、制度上、ルール上は明示していないけれども、実態上はあるとかというようなことがあると思うのです。その辺については、これではわからないということ。

○佐藤委員 一応、わかるような調査にはなっているということです。ですから、実態のほうで雇用区分つくるということもできるので。両方わかるのでもう一度データからつくり直すということは可能です。

○今野座長 ということは、このデータは制度上、ルール上のものということ。

○佐藤委員 今、集計しているのは、参考資料2の59ページにどういうふうに定義しているかというのが書かれていますので。職種の範囲だけは実際範囲も限定されていないというのをとったのですけれども、基本的にはそこに書いてある労働時間でいうと、基本的にはフルタイム、あるいは相対的に長いということと所定外労働を命じることがあるとか、勤務地を限定していないとか、こういうルールでつくっているということです。

 ですから、確かにその話と今度個人ベースにおいたときに実態として入社以来転勤がありましただとか、今、通常残業はありますかというような個人ベースで調査すると、また別の像が描ける、ルールよりもどっちになるかわかりませんけれども、業務が限定されないけれども限定されている人もいれば、逆に言えば残業あるとなっているのに残業ない人がいるとか、多少実態のほうが、どうなるかこれわかりませんが、実態とルールというのはそういう意味では少しずれているということはあると思います。

○今野座長 私だけ質問するとあれですけれども、いかがですか。 

野田委員、どうぞ。

○野田委員 この資料5のカラーの激しいやつ。私ちょっとよくわかっていないので、とんちんかんなこと聞くかもしれませんけれども、これの下から2番目なのですが「事業所閉鎖時の対応」のところで「正社員に関する取組と均衡が図られるよう最大限努力」と、これわかるようでわからないのですけれども、これどういうこと。何が取り組みで何が均衡で何が最大限努力やねんというのは、これから考えるということですかね。

○佐藤委員 まず一つは、例えば事業所限定の場合です。勤務地限定もいろいろなタイプがあるので、事業所を限定したりとか、あるいは複数の事業所で通勤圏内というような形でというような、つまり事業所間異動はあるけれども居住地変更はないような異動とかいろいろな規定があるわけですが、一番わかりやすいのは事業所を限定しているようなケースで、そのときに事業所が経済的な事情で閉鎖せざるを得ないというようなときにどういうルールでやるかということを一応聞いてはいるのです。さらに一番多いのは、きちっと定めていないところが多いです。ほかのところに比べて。実態として事業所限定で運用していても、あるいは就業規則にそこの限定が書かれていたとしても、今度は事業所閉鎖のほうのルールをどうしているかということについては定めていないことが多い。ですから、そういう意味では、たしか報告書のほうでは、そのルールをきちっと労使で話し合いしてつくっていくということが必要じゃないかというようなことを書かせていただいたので、この辺については報告書もどう書いてあったかですけれども。

○野田委員 15ページ。

○佐藤委員 15ページ~16ページの上のところで、まず一つはアンケートのところ、多少ここについては委員の中で温度差もあって、まあ、こういうまとめ方になったということで、ですからここは少しきちっと議論していくということは必要です。

 水町先生たちが入ってまとめられたところによると、基本的には限定の程度に応じた雇用、つまり全く同じなのか、正社員との均衡といったときに、これは限定があるわけですから、ある人とない人、例えば事業所閉鎖についての経済上合理性はきちっとあるかどうかとか、だけれども勤務地限定がない人については、ある程度そこに配置したのは企業側の人事権ですから異動させる努力をするとか、あるいはもともと本人がいやなのにそこにいる場合はそういう努力をしなくていいとかということについて、それを均衡がとれているというかそうじゃないかというようなことについては、労使で考えてください。あるいはルールをきちっとつくってくださいというようなまとめ方になっているということで、それは一つの大きな論点だろうと。現実で言えば、余りきちっとそこは議論されていない。企業内で議論されていないからルールはきちっとできていないのが実態かなというふうに思います。

 ですから、逆にこれまで例えば、ちょっと長くなりますが、大手製造業でいうと現場の生産固定従事者の方は例えば高卒でいうと事業所採用で、実際上、通常は事業所間異動ないですね。ただ、就業規則上は、多くの場合、事業所限定と書かれていない。ただ、そういう意味で、逆に言えば高度成長期は別の事業所をつくるときに向こうに行ってくださいということをやれたわけでそれでずっとこれまでやってきたという現状があるということだと思います。

○今野座長 ほかにいかがでしょうか。

 ついでに私、もう一つ質問していいですか。

JILPTの調査なのですが、これJILPTの人がいないから余り責めてもしようがないのだけれども。資料6ですが、これは1個選択するのでしょう。例えば一般職社員で勤務地限定の場合もあるし、広い意味では職種限定なのだけれども、これで回答者はどういうことで何を選んでいるのだろうと思うのだけれども、どうですか。これ例示ですよね。みんな重複しているから、そのときに無理やり1個選べと言われたときに、選ぶ人はどういうふうにして選んだのだろうとすごく思ったんですよ。もし、そこの選び方が一定でないとすると、ここのデータは少し留保して見なければいけないなということになってしまうのですが、その辺は何か。事務局は報告書をちゃんと読んだでしょう。その点からもしコメントがあれば。

○岡労働条件確保改善対策室長 報告書上は、ちょっとそこの細かいところまでは書かれておりませんで、ただ、一般職社員については、よくイメージされる総合職、一般職ということで、そういう人がいればおそらくそちらを選んだと思われます。もちろん、そういう方は勤務地限定あるいは職種限定されているのが通常だと思いますけれども、会社内でそういう一般職、総合職という分け方があれば、そちらを選んでいるのではないかと。

 あと、職種と勤務地については、これはどういうふうに選んだかというのはちょっとうかがい知ることはできないのですが、その企業でどちらを重視しているかということで選んだのではないかなと思います。これはあくまで推測でございます。

○今野座長 もう、では質問はやめようかな。資料についてはよろしいですか。そうしたら、きょうはもう本当に自由に議論していただくということで、まだたっぷり時間がありますので、この問題について日ごろ考えてらっしゃることとかありましたら、自由にお話しいただきたいのですが、といっても最初はちょっと指名しようかなというふうに思っているのですが、水町さんの資料があるので水町さんからお話を聞こうかなと思っているのですが、どうですか。

○水町委員 ありがとうございます。規制改革会議の雇用ワーキングでこの議論をして、それも今回参照いただいていますが、これまで議論してきたことを踏まえて私自身がどういうふうな考え方で今いるかというのを簡単にお話しさせていただくと、一番大切なのは、多様な正社員というのは、それ自体が目的ではなくて手段だということ。多様な正社員をふやしてこういう形を各企業導入してくださいねということでは全くなくて、その目的自体が例えばワーク・ライフ・バランスであったり、キャリアの発展的な展開であったり、雇用の安定であったり、いろいろな目的があるので、それぞれ例えばワーク・ライフ・バランスの観点からどういう施策が今、推進されていて、それが多様な正社員というツールとか手段を使った場合にどうなるかという視点を常に意識してやることが必要だと。

 それとの関係でいろいろな施策があるけれども、共通してインフラとして整えておくことが必要かなというのが幾つかあって、1つは労働条件の明示というので規則に書いてあることと実態がずれているという場合には、なるべく透明性が高くて本人が認識できるような形で労働条件を明示するということと、これはいろいろな報告書に書かれていますが、2番目は働き方に見合った公正な処遇、どういう選択をしても自分でちゃんと処遇をされているんだねということで、みんなが選択できるような処遇にするということ。

 もう一つは、いろいろな働き方の人をちゃんとカバーできる労使関係というのをつくるということが何よりも大切で、基本的にはどのルールをつくるにも労使の納得を得てつくらないと実態上根づかないので、そこがJILPTのほかの研究会報告書で「多様な労働者を包摂した労使関係とはどうあるべきか」というのがこの7月に出ましたが、そういうのを参考にしながらどういう労使関係を、その基盤をつくるために政策的にどういう手段があり得るのかというのも幅広に議論できればいいと思いますが、もう一つだけつけ加えると、これ手段なので、こういう手段を推進していこうというときによく起こりがちなのが、この形式を利用して濫用をしようと、悪用をしようということが出てくるので、その悪用とか濫用を防ぐためにどういうブレーキをきちんとかけておかなければいけないのかということも、これ法律的に重要なポイントになってくるので、そこら辺を議論しながら、1年ぐらい時間があるということですので、一つずつきちんと丁寧に議論していければいいかなというのが、私の現時点での意見です。

○今野座長 佐藤さん、どうですか。先ほど私の質問に言ったのは、佐藤さんのデータも出ているので。

○佐藤委員 一つやはり、実態としてはこれまでも多様化していたということで、例えば少しさかのぼると、製造業の地方の事業所なんかでいうと、高卒ホワイトカラーで、例えば経理の専門家とか人事の専門家がいて、それで職種も限定されて転勤がないという人がたくさんいたわけね。だけれども就業規則上は勤務地限定とか職種限定と書いてない。それでやれてきたわけですけれども、今、働く人たちの積極的希望で勤務地限定なんて入れたときに、ただルールのほうが、実態としてはそうだけど就業規則上そう書かれていなかったりするときに、事業所閉鎖のときにどうするという問題が出てくるので、これまでは実態とルールがある程度乖離していても企業側も働く人もそれほど問題なくやれてきた時代があったわけです。これからは、従来の正社員についても少し両方のニーズに合ってすり合わせてルールをつくっていかないと、いろいろ問題が起きてくるかなと、それが一つです。

 あと、もう一つの面でルール整備が必要なのは、皆さん御存じのように、労働契約法のいわゆる5年超えたら無期転換というのがありますので、そうすると有期契約の人たちというのは、多くの場合、雇用期間が限定ですけれども、それ以外についても、普通は一般的に勤務先、事業所内に職場が限定されていたりとか職種が限定されていたりとか、短時間のパートであれば6時間勤務とか、あるいは残業がないとかですね。そういう意味で勤務地なり職場なり職種なり労働時間いずれかが限定されていることで、これがそのまま無期になると、無期雇用で事業所なり職種なり労働時間限定される人が出てきますから、そういう意味では、この人たちと従来の無期の人の処遇の均衡のあり方をどうするとか、雇用保障のあり方とか出てきますので、そういう面で、僕はやはりどういうルールをつくっていくかということは早めに、5年後では間に合わないので、今後数年のうちに考えられるようなことに役立つものをつくるということも、やはり他方で考えていく必要があるかなと思っています。

○今野座長 ほかにいかがですか。お二人に私が質問していいですか。1つだけ。労働条件の明示と、佐藤さんが言われたルール化とは同じようなことだと思うのですけれども、言われたことはよくわかったのですが、曖昧にしているよさというのはないのかということ。つまり、2つの可能性が考えられて、1つは曖昧にしているよさがあって曖昧にしている。もう一つは、サボっていたから実態とルールが合わなくなったから明確化する、この2つの可能性があるわけですけれども、何か曖昧にしているよさというのは、我々気にしなくていいかどうかですよね。そこをちょっと、いろいろデータを集められたり議論されたでしょうから、その点について。

○水町委員 実態は私よくわかりませんが、ルールとしては、曖昧にする選択肢をいっぱい将来において残しておくか、それとも曖昧にしないで狭くして選択肢を1つにするかというのはルールの明確化とは直接関係しなくて、曖昧な制度で選択肢を幅広に設けていますよというルールをとっていればそれをきちんと明示して、労働者も会社も認識しながら進めていく。狭くして1個にしろということを申し上げたいわけではない。

○今野座長 佐藤さんは狭くしろと言っているのですけれども。

○佐藤委員 いや、僕は一番問題なのは、例えば勤務地とか職種とかを限定してないルールのもとで、実態として例えば就業規則をつくらず、きちっとしたことを明示しないで、実際上は勤務地限定で運用しているようなときに、先ほどお話ししたような事業所を閉鎖しないといけないというときにもめる可能性がありますよね。ですけど、実態としてやっていることが、会社の都合だけで本人の希望もあってやっているとすれば、僕はルール化したほうがいいだろうというふうに思っていて、今までは転勤したくないです、でもそのときだけ転勤させてくださいみたいな問題が起きてくるので、やはりそういうようなところはルール化していくほうがいいかなと。

 もちろん、今までのように会社が人事権を持って勤務地も職種も労働時間も、それはそういう中でも当然、今でいえばワーク・ライフ・バランスということを考えないといけないわけですし、育児・介護休業法なんかでそのときは短時間勤務という選択があるわけですから、全く無限定なんてことはないわけで、法律の縛りであるわけですけれども、やはりそうではないところが実態として出てきていますので、そこはきちっとルール化したほうがいいかななんていうふうにも思っているということです。

○今野座長 現実は多様なので、今後事業所閉鎖の例をとっても、その周辺の条件というか状況って非常に多様なので、ルールなんか決めないで、やはりその都度ちゃんと話せばいいじゃないかと、それをトラブルというならトラブルでもいいけれども、そういう意味ではトラブルがあったっていいじゃないかという考え方もあり得るので、ちょっと聞いてみました。

 ほかの方、いかがでしょうか。自由で結構ですので、今との関係でなくても。

竹内委員、どうぞ。

○竹内(奥野)委員 後のほうの議論が何か空中戦になってしまいそうなので初めにお話しさせていただきます。今、雇用の終了の場面の話が少し出てきましたけれども、雇用終了のうち解雇については、解雇権濫用法理があるわけですが、私が解雇権濫用法理について知っている範囲では、解雇権濫用法理というのは、解雇をがちがちに縛るというルールではなく、究極のところは、抽象的ではありますけれども、恣意的な解雇、使用者の恣意による解雇を制限するというものです。このことがいろいろな具体的な基準ないしはその判断事例として出てきているということではないかなと理解をしています。

 そういう意味では、解雇については、最近ルールの明確化ということがいわれることがよくありますが、勤務地等が限定されているから一律にその雇用保障が限られるとかいうふうな、完全に機械的、一律的な判断あるいはルールというものは、法理の構造上も示せるものではないと思いますし、示す必要があるものでも実際上ないと、これまでの解雇権濫用法理の私なりの理解からは思っておるところでございます。

 そのこととの関係で申しますと、私もやはり、先ほど曖昧な形でのルールという話も出ましたが、問題になったときに現場の労使で話し合いをすることが一つ重要な点であると思っております。特にこういうふうないろいろな雇用区分の人が出ると、仮に一定数の人を解雇せざるを得ないという状況になったとして、では誰を解雇するかというところになってくると、それはもちろん使用者と労働者の利害対立もありますし、それとともに、労働者間でも利害の対立というのがあるわけですので、労使での話し合いを促すこともかなり重要になってくるのではないかなと思います。

 もともと現在の解雇権濫用法理、特に整理解雇の法理の中でもそういうふうな労使の話し合いとか、あるいはもう少し広くいえば手続ですね、手続を尽くして解雇に至るということを促していくというルールとしての側面というのを読み取ることができます。そういう意味では、話し合いを促進していくという意味でのルール、たとえば具体的に誰をどんな順番でとか、どういう形でということは、現場の労使が話し合ったうえでの判断に任せていくという方向性が、解雇についてはあり得るのかなと現時点では考えております。

○今野座長 ありがとうございます。

 今の点についても議論したいのですが、その前に黒田さん、早く帰られるというお話を聞いたので、どうですか。

○黒田委員 済みません、この委員をお引き受けしたときに既に本日12時から別の予定が入っていまして、ちょっと早くに失礼させていただきます。

 私自身、まだ余り考えがまとまっていないのですけれども、今お話をお聞きしていて、水町さんが多様な正社員をつくるのは目的ではなくて、あくまでも手段であってというところ、私も本当にそのとおりだと思います。

 その最終的な目的は何かというと、幾つもあるのだと思うのですが、大きく分けると3つぐらいあるのかなと今お聞きして思ったのですけれども、1つは非正規の方が正規に転換するにはどうすればいいかというパスを考えなくてはいけない。

 もう一つは、正規の長時間労働一辺倒の働き方をもう少し多様なものにすべきなのではないか、正社員の中でのダイバーシティをもうちょっと膨らませたほうがいいのではないかという目的。

 あとは今、竹内先生がおっしゃったように、最終的に何かが起こったときに、雇用調整のルール化をしておく、つまり、何らかの明確な条件を今のうちにつくっておいたほうが混乱が少ないのではないかということに関する議論の整理かと思います。目的によって手段は異なってくる可能性もありますから、今後議論を重ねていくうえでは何が目的なのかを明確にする必要があると思います。

 3つ目については、ちょっと私自身まだ考えがまとまっていないのですが、まず1つ目の非正規から正規へのパスとしては、現状としてなぜそれが難しいのかということをきちんと議論していく必要があろうかと思います。

 2つ目の、正規の中でいろいろ多様な働き方をつくっていく必要があるのではないかということについては、既にもうここで幾つもお話が出ていたように、事実上は結構あるという中で、これ以上政策として何か民間に働きかけてもっとつくっていくということが果たして必要なのかどうかということも議論する必要があるかと思います。

 例えば先ほど今野先生がおっしゃっていた、中小企業は基本的に1事業所じゃないかということなのですが、経済センサスで見ますと、民間の法人格の企業180万社のうち、単一の事業所しかないというところは87%、つまり複数事業所があるのは13%しかないわけで、そうするとその13%の中で勤務地限定をつくってない会社というのがいったいどれくらいあって、それはなぜなのかということが明らかにならない限りは、机上の空論になるのかなという気がいたします。

 それから、先ほど佐藤先生がおっしゃっていた、そのルールと実態の違いなのですが、もし、ルールではこう区分けできて実態ではこういう区分けができるというふうに、調査設計上分類をつくり直すことができるのであれば、ルールと実態の乖離がどれくらい起こっているのかということを数値で見ることができるわけですから、これは貴重なデータなのではないかなと思いました。

 以上、とりあえず思ったことですが、失礼いたします。

○今野座長 ありがとうございました。

 佐藤さん、今、宿題が出ましたけれども、できますか。

○佐藤委員 いや、見てみます。すごく複雑なデータセットなので。

○今野座長 では、次回か次々回ぐらいで。

山川委員、どうぞ。

○山川委員 まず、話の方向性を示すようなことは、初回ですからよろしいかと思いますけれども、この研究会では多様な正社員という言葉が使われておりまして、開催要綱によりますと、正社員と非正社員の二極化現象への対応、つまり非正社員は大変だという人たちの選択肢をふやすということで、ここでは正社員は拘束性が強いということが挙げられているわけです。よく使われるのは限定正社員という用語で、あと不正確かもしれませんが、規制改革会議ではジョブ型正社員という用語で、今野先生はたしか制約という用語を使われていたかなと思います。

 いろいろな用語があるのですが、この開催要綱では、拘束度ということにもし着目するとなると、そうでない方向を目指すとすると、低拘束度正社員となります。舌をかみそうになるのでこんなネーミングとして使うべしということではないですが、要するに安定と低拘束性を両立させるようなことができないかという趣旨なのかなと思います。

 ただ、その拘束度といってもいろいろな指標があって、第1の指標はこれまでお話に出てきた労働時間であると思いますけれども、ここは時間限定正社員ということになりますと、短時間正社員につきましては、既にパート法との関係で一定の政策的な取り組みがなされていますので、このあたりも検討対象にするのかどうか。少なくともそこでの取り組みとの整合性も考慮する必要があるかと思います。

 他方で、職種限定正社員ということがありますが、これは拘束度の問題がそれほど大きいのかという感じもするわけです。つまり、限定という観点からすると、職種変更の命令ができないということになるのでしょうけれども、イメージとしては拘束度が高いというよりも、専門性が高いという感じがするので、そこでも限定の中身によって違ってくるという感じがします。

 また、双方向的なというお話もありますが、いわゆる正社員から限定正社員というように、いろいろな意味での限定が課せられた社員になった場合と、それから、先ほどお話が出ました有期従業員などの非正社員から限定正社員になった場合とで取り扱いが同じになるのかということもありまして、多様な正社員といっても、契約上何かが制約されているとか、限定されているということだけでひとくくりにすることは難しいのではないかという気もします。ただ、そこは実態を見るのがまず先行するような感じがします。

 他方で、これも古典的な正社員、つまり強拘束度正社員というのでしょうか、これも名前がおかしいかもしれませんが、その場合も、正社員という概念自体がもともと法的にははっきりしなくて、期間の定めがないという点では多分共通していると思いますが、法律のほうはともかくとして、これまでもやはりお話が出ていますように、実体面ではやはりいろいろな差がある。ワーク・ライフ・バランスとか、今野先生のお話にも出ていたかもしれませんが、既にいろいろな制約を現状でも受けているというパターンがあって、それが法的には必ずしも反映されていないということもあろうかと思います。JILPTの研究報告書の中では、一般職が限定正社員のような扱いになっているのですが、法的には一般職は勤務地や職種が限定されていないという場合もかなりあるのではないか。そこはあえて曖昧にされているといいますか、普通は遠距離転勤はしないとか、余り残業は命じないというレベルの話だとすると、それは法的にはどういうことになるのだろうかという感じがするわけです。

 ということで、純粋な、あるいは古典的な正社員でも、その中身は幅があるような感じがしまして、そうすると、いわゆる限定正社員について一律的な法的ルールを考えるというのもなかなか難しい面もあり、限定性という契約上の面だけを取り出して、それだけを自己完結的にルール化するというのは、竹内さんも言われましたけれども、いろいろな点で難しいといいますか、少なくとも慎重に検討する必要があろうかと思います。労働契約のルール自体が必ずしも明確でないことになっている部分はほかにもあるわけですので、余り突出してアンバランスな形のルールをつくるというのは美しくない。美しさの問題ではないのかもしれませんけれども。

 しかし、それはそれとして、共通の特色、それが難しくとも類型的な特色が何かあるとしたら、そういうものは考慮すべきだとか、そういうことはいえるかと思いますので、その点はやはりしっかり見て検討していければと思います。

○今野座長 今おっしゃられた、私も前からこの職種面の限定というので、いつもこれはどうなるのだろうかと思うことがありまして、普通大企業の場合だと社員区分で生産系、技術系、事務系でいわゆる総合職の人となっているけれども、これ職種限定ですかね。

 つまり、職種限定といったときに、職種はくくり方などは物すごく多様で広くとっている。でも、それも考えてみれば職種限定で、それが就業規則に書いてあるかどうかはわかりませんが、一応社員区分上は事務系、技術系、生産系と区分しているとすると、既に職種限定でやっているぞということにもなるような。そうすると、職種限定正社員とかジョブ型正社員というときのジョブとか職種って何考えているのだろうかというので、みんな理解が違うのではないかというふうにちょっと思ったものですから。余計なことを。

 神林委員、どうぞ。

○神林委員 済みません、横から口を挟むようで恐縮なのですけれども、今の話は非常に重要なのではないかと私自身は考えています。

 個人的には2つ、この研究会では話し合っていただきたいと思っていることがありまして、1つは、多様な正社員というのは、先ほど来、何回か話に出てきておりますが、事実上存在するということは広く認められていると思います。これは、現在だけの問題ではなくて、昔から事実上存在してきて、現在ですとそれを表現する言葉で正規と非正規という2種類の言葉を使っているから二極化という話になっているだけであって、実態は物すごく多様化しているということは事実だと思います。なので、なぜ今こういうお話をしなければいけないのかと、昔からずっとあることを今なぜこういう話をしなければいけないのかということはきちんと明確にしたほうがいいのではないかと考えています。

 それと関連して、ルールと実態との乖離という意味で、先ほど来、話に出ているのは、就業規則にこう書いてありますと。しかし、現状ではこうですという話とともに、恐らく重要なのは、期待がどういうふうになっているかということだと思います。就業規則には転勤なしと書いてありますと。実態としても自分は今まで転勤はしてきませんでした。けれど、周り見ていると実は転勤している人もいるので、ひょっとしたら転勤あるのかもなというような状態というのはどう考えるのか。日本の企業は、私の理解ですと、この期待というのは非常にうまく使って人事管理をしています。なので、このいわゆる職種限定とか、こういう限定契約をするときというのは、その期待に対しても限定をかけるということが理論的には恐らくロジカルには必要になってくるわけなのですが、それをimplementする、つまり実際に実行する制度というのが事実上可能なのかということが2番目の論点かと思います。

○今野座長 ありがとうございました。

佐藤委員 どうぞ。

○佐藤委員 ルールといったときに、例えば法律やルールの整備の話と、企業内での労使の就業規則なり人事管理上のルールがある。先ほど雇用保障の面も含めて法律上の整備というのは、ほとんど要らないのではないかと思って、大事なのは、労使間でのルール整備なり人事管理上の、うちはこういうふうに運用しますというところの整備というのはすごく大事かと。ですから、ルールといったって、僕が今まで言っていたルールというのは、あくまで労使関係上あるいは人事管理上のルールだということを少し確認させていただきたいということ。

 もう一つ、先ほどの職種の話ですけれども今野先生が言われたように、大企業のホワイトカラーでいえば、例えば経理畑とか人事畑とかという畑があって、事実上そういう運用をするので、大きな職務系列でいえば職種はあるわけですね。研究部門であれば修士で採る人は、おたくは技術系職員ですねという形で採るわけで、ただ、御存じのように、技術者で仕事が変わったりすると、セールスエンジニアの販売に移る、そういうことはできるわけですね。それは今までそんなに問題なかったと思うのですが、多分そこについても、やはり自分は技術系でいきたいというところが多く出てくると、先ほど期待の話ですけれども限定したほうがいいのかもしれないです。

 もう一つは非正規の人、有期の方が無期に転換すると、これをどうするかですね。やはり職種限定したほうが有期の方は正社員に転換したときに、多分そっちのほうがニーズが合う可能性がある。私は販売職として仕事をしたいと。それがいわゆる無期に転換すると、ほかに異動があるとか、ほかの職種ですね、それは抵抗があると言っていたけれども、神林さんの期待の関係だと思うのですが、私はそういう人が多いかなと。

 ですから、当然有期から無期に転換するときに、そういう限定がない無期の転換があってもいいと思うのですが、自分はある程度販売の仕事をやりたいです、それであれば有期から無期へ転換がいいという方も多分多いとすれば、そちら側からもジョブ限定型。

 他方で現状の例えば量販店の店舗の販売をやっている方でいうと、どういうジョブの限定かというとすごく狭いです。なぜかというと、例えば1年ごとに契約更新していくときに、今までは全く婦人服の販売で6時間勤務です。でも婦人服ちょっと減らすので、次期は子ども服売り場でどうですかと。ここちょっと忙しいので7時間勤務で、調整していいと言えば更新するわけですね。つまり、その都度その都度契約更新ごとにどの職種につくかを話し合うということができたわけです。

 これが無期になってしまうと、これがやれるかどうかということで、私は幾つか聞いている限りでは、無期にする場合は、逆に言うと職務の範囲を広げると。つまり、婦人服売り場とか子ども服売り場という契約ではなくて、販売員契約ですね。そういう意味で広がるわけですが、ただ管理部門まで異動するわけではなくて、その店舗の中でいろいろな販売の仕事をやっていただきますと、あるいは通勤圏の事業所に異動するというふうな、そういう意味では職務は広がっていって無期に転換。ただ、従来の正社員の仕事の範囲の実態と現状と違うということがあると思うので、大事なのは、やはり神林さんが言われたように、正社員の中でも非正規のどういう働き方をしたいかで相当変わってきていて、そういう中で、例えば今までは業務を限定しなくてよかったのが、業務についてはある程度限定するほうが働く人にとってプラスの部分が出てきているという事情があるのかなというふうには思っています。

○今野座長 まぜ返すようですけれども、いいですよね。佐藤さんがおっしゃるとおりなのですが、でも、その非正社員の人が正社員になった場合、正社員の人もいいですけれども、この職種でやっていきますよといったときに、だんだんキャリアを積んでいったときに、職種限定をするとキャリアを広げるための仕事の配分のというか、チャンスは減りますよね。その辺は、それを曖昧にしておいたほうが仕事を出すほうも適当にというか、広げられる。そのときに、限定したときにそれを実現しようとすると、転換制度みたいなので行かざるを得ないということですね。

 ですから、限定してルール化すると転換制度を充実してルールとルールでつなぐか、それを曖昧にしておいて、よければ大体動かすぞというようなふわっとしたやり方のほうがいいのか、そこは何かいろいろありそうかなと。

○佐藤委員 やはり、ジョブ型といったらすごく狭いイメージがあるので、例えば先ほど販売職というような店舗を限定するけど販売員というような限定ですれば、実際上はかなり広がる。ですから、そこは先ほど人事管理上とお話ししたように、一律にこの範囲というのはなくて、それは企業としてどういうふうに育成していくかという、職種限定でもジョブラダーは当然あるわけですから、先ほど婦人服販売員と限定する場合と、販売員という限定とで違うので、婦人服と限定してしまうとほかの職場の応援なんかできなくなってしまうわけですから、実際上応援が必要なら職場でも広目にするということです。そこは企業がどういうような人材活用をするかで柔軟に、もちろん話し合って職務の範囲を決めればいいかなというふうには思っています。

○今野座長 ずっと皆さんの意見お聞きしたのですけれども、櫻庭さん、どうですか。

○櫻庭委員 私はこれまでこのような多様な正社員に関する検討にかかわったことがなかったものですから、余計にこの多様な正社員というのをなぜ推進しなくてはいけないのかなという、その目的が何なのかということが、まず気になりました。

 文献等を読んでいきますと、1つは、いろいろ分類の仕方とか整理の仕方があるとは思うのですが、ワーク・ライフ・バランスの達成、女性の活用のためというのが1つと、2つ目として非正社員から正社員への転換を進めるということ、その他が挙がっていたと思います。

 それとの関係で、どういう課題があるのかということをこれから検討していくのかもしれないのですが、そもそもそれらの目的との関係で、多様な正社員というのを推進していくことがどの程度有効なのかということは、常に念頭に置かなくてはいけないのではないかなと感じました。

 例えば、1つ目の女性の活用のためという点に関して言いますと、女性には限られないかもしれないのですけれども、とにかくワーク・ライフ・バランスの達成という観点からしますと、先ほど黒田先生が似たような観点でおっしゃったかと思うのですが、どの程度現状で自分の勤務地が無限定であるがゆえに、それがネックで活躍できていないという人がいて、多様な正社員を推進することでどれぐらいそういう人たちが、これまで活躍できていなかった人が活躍できることになるのだろうと、まず思いました。

 というのは、例えば出産して退職する女性というのは結構な割合で日本は存在するのですが、その理由を見たときに、自分の勤務地が限定されていないから、配転の可能性があるからということでやめてしまうという人はほとんどいなくて、むしろ保育所が整備されていないとか、夫が転勤してしまうのでそれについていかざるを得ないということが理由で退職しているという人のほうがずっと大きな割合で存在するかと思います。

 ですので、ワーク・ライフ・バランスの達成という観点から見ると、今回のこのテーマというのは、手段の1つとして可能性があるということにすぎないといえばすぎないのかなと思います。

 あと、今回、先ほど今野先生から御指摘あったJILPTの研究を見ますと、多様な正社員といわれているものの中には、相当程度一般職として今まで位置づけられていたような人もいるようです。それは定義の仕方とかにもよるので、ここでどの程度存在してということを私が申し上げる立場ではないのですが、もしも今回、多様な正社員というのを推進するということが一般職、これまでいわゆる一般職といわれてきたような層の、特に女性をふやすということであるとすると、それはワーク・ライフ・バランスの達成とか、特に女性の活用のためという観点からして有効かどうかというのは慎重に考えないといけないのではないかなと思いました。

 むしろ、一般職は女性の働き方とか職域分離につながっていったというような側面もあると思いますので、労働契約上、職種とか勤務地を限定するとしても、それが一生涯続くというようなイメージよりは、むしろ自分が、男性女性にかかわらずワーク・ライフ・バランスの観点から限定する必要が生じたときに、その都度限定することができる、もしそのような状況が終わった後には、もとに戻れるような柔軟性があるのが理想形としては望ましいのかなと思いました。

 ワーク・ライフ・バランスの達成や女性の活用のためというその目的があるとして、その目的との関係でどういうことが有効なのかということを常に念頭に置きながら議論していければいいのではないかということです。

 以上です。

○今野座長 ありがとうございます。

 ほかに野田さんいかがですか。

○野田委員 労使の話し合いを促すという話がいっぱい出てきたのですけれども、組合のほうはどうするのですか。

○今野座長 聞いてみたら。

○野田委員 その辺はどうなる、組合があるところでも、話できないところはしようがない、そういうものだからしようがないのでしょうけれども、話し合いといって話し合えるところもあるけれども、組合がないところは、それなりに従業員組織があって、それが正しければいいのですが、そうじゃないところはどうして話し合うのか、ちょっと私もよくわかっていないですけれども、一つ問題があるのかなと。話し合えるところは、ほっておいたらいいんですよ。話し合えないようなところのほうが、圧倒的に多いだろうと思っていて、じゃあおまえどう考えるのかというと、すぐ答え出るわけではないのですが、そこはどうなるのかなというような、ちょっと考えていきたいなということなのですけれども。

○今野座長 その点、どうですか。

 山川さん、何か意見ありますか。水町さんでもいいですけれども。

○山川委員 先ほど発言された水町先生に。

○今野座長 ということですので。

○水町委員 きちんと政策的に望ましいテーマについて、政策的に望ましい方向性を踏まえて実態に合った話し合いができているところは、余り法的にああやれこうやれということはないと思いますが、日本の労使関係の実態を見ると、中小企業を含めてきちんと話し合いができていないところのほうが圧倒的に多いので、それを放置しておいていいのかというと、やはり放置しておくのは問題だし、逆に、旧来的な正社員を中心とした労使関係ではないところの利益をどう吸収して話し合うかというときに、どうすればいいのかというのを政策的に、こういう施策との関係でこういう話し合いをしておけばインセンティブになりますよという政策の組み込み方をするとか、いろいろなやり方があり得て、例えば今、労基法上の過半数代表になっているけれども、これをもうちょっときちんとしたものにしていろいろな意見を吸収できるようにしようとか、それはJILPTの報告書の中で比較を含めてやられていますので、そういうのも今回少し視野に入れながら検討できればいいかなと思います。

○今野座長 では、具体的な内容については今後のお楽しみということで。

 ほかにはいかがでしょうか。

 佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員 先ほど人事管理上、労使関係上の課題で雇用保障の話が前面に出てきたのですが、現実にはそれよりも多分すごく企業の人事として課題になっているのは、処遇の話と、もう一つは労働時間のところなのですが、どういうことかというと、1つは労働時間でいうと今の正社員の多元化というのは、職種とか勤務地なのですけれども、残業なしとか短時間の正社員というのは、育介法上の一時的短時間はあるものの、恒常的な短時間はほとんどいないのですね。ところが、有期の人を見ると短時間の人は相当いるわけで、この人たちが無期になったときに、短時間の無期というのは今まで日本の企業は余り活用したことないのですね。これがやれるかどうかというのが1つの課題で、今の有期の人全部無期にするという、フルタイムですというふうには多分なかなか難しいと思うので、ですから短時間の、つまり恒常的な、いわゆる正社員というのが、有期のほうから入ってきたときにどうマネジメントできるのかというのが1つ課題かなと。

 もう一つは、やはりパート労働法上の処遇の均衡・均等がありますけれども、もっとそれは課題があって、無期の中に同じ仕事あるいは近い仕事をしていて、短時間が出たときの処遇の均衡の課題はより明確になってくるので、ここがすごく今以上に有期の人と無期の比較ではなくて、無期の中に仕事の同じ人が時間だけ違うとかが出てきたときの処遇の均衡、これやはり大きな課題になってくるかなと。

 あと、勤務地限定の人とそうではない人の昇進の天井をどうするかで、現状でいうと、例えば大手の量販店だと全国転勤する人と、九州や四国のブロック内で異動がある人と、いわゆる通勤圏内異動で、例えば昇進の天井を分けているのが結構あるのです。私はかなり今回の提言では、昇進の天井を外したほうがいいと考えます。

 つまり、確かにいろいろ異動することによって、例えばマーケットを経験することで店長に必要な能力を育成しやすいということがあるかもわかりませんが、異動しなくてもそういうことをやれる人が育つ可能性もあるわけなので、昇進の天井なんかは異動の範囲とは切り離したほうがいいというようなことがあるかなと思っているのですが、ですからその辺どうするかというのも企業の人はかなり悩んでいると思うので、多分そっちの処遇の均衡をどうするかとか、短時間勤務の人を本当に活用できるのかとか、限定があるなしで昇進をどうしたらいいかというのは、そっちのほうの情報を欲しいというのはあるかなと思っています。

○今野座長 これの実態を教えていただきたいのですが、先ほどからその労働契約法との関係で、5年たってパートの人が例えば無期になる。そのときに、その受け皿として1つのタイプ、正社員タイプをつくるという話が出ているのですが、5年もたったら、もうそのままでいいじゃないですか。5年もたっているのですから、活用上ももうどうせ無期と同じようなものなのだから、極端なことを言うと、そのままの労働条件で無期にしておけばいいじゃないかというぐらいの問題でしかないのではないかと思って。

 もし、そうだとすると、実は私が知りたいのは、たとえばパートで5年たった人というのは、どんな人でどの程度なのだろうかというのが重要になるだろうと思いますね。5年たったときにその間で実質上のセレクションがずっと行われていて、もう本当にコアに近い人しか5年目に残っていないという実態であれば、それはそのまま無期にして労働条件も極端に言えば変えないでそのままいけば、制度なんて簡単に設定できるということになってしまうので、それの実態はどうなっているのですか。

○佐藤委員 労働契約は、私の後に山川さんにお願いするとして。

 一つは、業種とか職種によると思いますが、小売業なんかで量販店の店舗でいうと、現状でも勤続年数は5年を超えている人が相当います。ほかのデータでもわかると思うのですが。ただ、それが実態としては契約更新されている人、継続就業している人がいるわけですが、それは無期になったときの課題というと、例えば先ほどもお話ししたように1年ごと契約更新のときでいえば、どういう仕事をやってもらうというのをその都度話し合ったり、労働時間とか話し合っているわけですが、これが無期になったときにやれるかどうかというと、それをうまく仕組めるかどうかだと思いますね。

 そうすると、先ほどお話したように少し広目の職種にするとか、あるいは今までであれば事業所閉鎖のときは契約更新しないという形であり得たかと思いますが、やはりもう少し通勤圏内の範囲での店舗契約にするとか、やはり今まで有期だから有期の更新でやれてきたことが無期にしたときになかなかそのままでやれるかというと、私は幾つか課題があるかなと思っていて、一つは1年ごとに例えば職種とか労働時間を見直していたというようなことが、例えばできなくなったときどうするかとか、そういった場合職種の範囲を少し広くするとか、あるいは今までであれば店舗を閉鎖するときには契約更新しない、でも無期にしたときそれができるかどうかですね。やはり少し広目にして通勤圏間を異動するというような形に、本人も納得してもらってしておいたほういい。もちろんそれを超えた場合は、契約更新しないことがあり得るかもしれませんけれども、ですからそういう課題は出てくるかなと思っています。

○山川委員 実態をそんなに知っているわけではないのですが、労働契約法の改正に当たっても、いろいろその辺は議論になったと思います。おっしゃるように、小売とか外食産業では雇用の実績が長い人が結構いるわけで、そういう人たちの場合、ある意味で非正規のままでコアといえばコアになっているということがありますが、製造業の場合は今、座長がおっしゃられたように、セレクションプロセスを5年もかけなくても大体わかるというような実態じゃないかと思いますので、業種によって違うと思います。

 ただ、契約法改正との関係で言うと、ある意味では無期への転換が一般化する可能性があるということで、そうすると人事管理上、新たなカテゴリーをつくるのかというような意見が出たと記憶しています。そこはもう既に一般職ということもありますし、短時間勤務正社員など、既に正社員の中での多様化はある程度これまでもあったのではないかというような話もあったのですが、それにしても、佐藤先生が言われるように、カテゴリーとして新たな枠組みみたいなものが人事管理上必要になると、そのあたりがなかなか業種によってはイメージがつかめないということはあります。それが法的にどういう意味かはよくわかりませんが、そもそも、以前、総合職、一般職というものは契約内容になっているのかと聞いたところ、余りよくわかりませんというようなお答えもありましたので、そのあたりはファジーなのかもしれませんが、ファジーはファジーとしても人事管理上の制度としてどういうふうに整備するかは、これは先ほどの野田先生の話ともかかわりますけれども、組合があるところでも、ひょっとしたらなかなかイメージがつかみにくいというところがあるかもしれませんので、そういう観点から、こういう枠組みもありますよということをいろいろ探求していくのは意味があるかなと思います。

 以上です。

○今野座長 ほかにいかがでしょうか。

 もう大分しゃべったからいいですかね、きょうは。すごく早いのですけど。

 皆さんの意見、まだ言い足りないということがありましたら。

○神林委員 今野さんの意見聞いてないですよ。

○今野座長 いや、私の気になっていることが1つ。

 アイデアがあるわけではないのですが、多様な正社員で多様化、多様化、多様化とやると、Aタイプにはこの人事管理、Bタイプにはこの人事管理、Cタイプにはこの人事管理ということになり、もうやめてくれと。そんなことやったら人事管理の効率が悪くてしようがないと。多様化する、だから一本の人事管理にする、何かいいアイデアないですかね。

 一般論で言うと、人事管理とか経営で言うと多様化すればインテグレーションしないといけないわけですから、そのインテグレーションの力を強くしないといけないのですけれども、そのときに人事管理の制度上でいくと、多様化したから実は制度が一本になったということにならないかなというふうに、全然アイデアはないのですが何となくそんなふうに思っていて、多様化すればいいというものでもないというのはありますね。

 ということで、では、きょうはこの辺で終わりにさせていただいて、今後の進め方なのですが、既に事務局からスケジュール案が出ておりますので、それでどうでしょうか。

 きょうもありましたが、結局、多様な正社員制度そのものは目的ではなく手段でしかないので、そうすると、目的を実現するための多様な正社員制度にかかわる雇用管理というのはどうしたらいいのだろうかということを議論しましょうと、そこで留意点を整理しましょうということだと思いますので、そのためにまず実態をヒアリングかなんかさせていただいて、もう少し我々の中で情報の共有化を進めていってから、ここの論点について留意点を考えましょうというのが事務局案です。

○水町委員 ヒアリングの中身についてちょっと。

○今野座長 どうぞ。

○水町委員 例えば、これまで伝統的にあった女性一般職とか非正規を無期に変えるというようなのもいろいろ例があると思いますが、育児休業中の短時間勤務についてどう処遇をしているのかとか、高年齢者の雇用継続の中で、これまでの無期正社員型をどう変えようとしているかというので少し例があればそういうところがまたきっかけになるかもしれないので、そこも合わせてノウハウがあるようなところに教えていただければと思います。

○今野座長 神林委員、どうぞ。

○神林委員 ヒアリングのときに、今まで多様な正社員を導入したのだけれどもやめてしまったというところもあると思いますので、そういうところで何がきっかけで元に戻したのかということを聞いておくというのは必要だと思います。

○今野座長 ほかに希望をお聞きした後から事務局と相談して、どういうところをヒアリングしようかというのを考えさせていただきますので、御希望があったらどんどん言っておいていただいたほうがいいのですが。

 佐藤さんはよく知っているけれども、ここのほかのメンバーともっと情報共有をするために、このケースは聞いておいたほうがいいぞみたいなのはありますか。あったら、一番やっているから。

○佐藤委員 いや、なかなかそれ難しいので、また事務局には。

○今野座長 山川委員、どうぞ。

○山川委員 これは企業ヒアリングということでしょうか。組合がどう対応しているかというのも、ヒアリングでなくても何らかの形で・・・。

○今野座長 もしかしたら委員ヒアリングというのがあるかもしれませんね。その辺はまだ広目に考えてください。ですから、御希望を言っていただければ。よろしいでしょうか。

 それでは、きょうはお約束より大分早いのですけれども、この辺で終わりにさせていただければと思います。

 今後の日程について、事務局から説明をしていただきます。

○村山労働条件政策課長 日程でございますが、今、さまざま先生方からの御示唆もいただきましたヒアリング等のヒアリング先の企業との調整等もありますので、またよく御調整した上で、また御希望があれば事務局にお寄せいただければと思います。また改めて御案内申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

○今野座長 それでは、終わります。ありがとうございました。


(了)

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