2023年6月2日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和5年6月2日(金)18:00~

出席者

出席委員(16名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 
他参考人3名出席
 
欠席委員(5名)五十音順

 
行政機関出席者
  •  八神敦雄(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻になりましたので薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。
 本日は、お忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日のWeb会議における委員の出席状況でございますけれども、石川委員、代田委員、高橋委員、田﨑委員、根岸委員より御欠席との御連絡をいただいております。したがいまして、本日は、現在のところ当部会員数21名のうち16名の委員に、このWeb会議に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。また、本日は、審議事項議題1に関連して、医療法人社団慶洋会ケイアイクリニック理事長・院長の黒瀬巌先生、国立大学法人東京大学大学院医学系研究科消化器内科教授の藤城光弘先生、それから審議事項、議題4に関連して、社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院小児総合研究センター・レット症候群研究センターセンター長の松石豊次郎先生をそれぞれ参考人としてお呼びしております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 続きまして、薬事分科会規程第11条への適合状況につきましては、全ての委員の皆様から適合している旨を御申告いただいておりますので御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、御協力を賜りまして誠にありがとうございます。
 それでは、森部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず、事務局から、資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきまして、さらに委員からの申出状況につきまして報告を行ってください。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~No.13を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストは、資料13に記載のとおりです。これらに関する委員からの申し出状況等を踏まえた薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員の審議参加に係る取扱いは次のとおりでございます。
議題1「コレチメント」退室委員なし、議決に参加しない委員は、前田委員です。
議題2「ソグルーヤ」退室委員なし、議決に参加しない委員は、川上委員です。
議題3「フェブリク」退室委員、議決に参加しない委員は、ともになしです。
議題4「イーケプラ」退室委員なし、議決に参加しない委員は、中西委員です。
議題5「希少疾病用医薬品の指定の可否」退室委員、議決に参加しない委員は、ともになしです。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等ございませんでしょうか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものといたします。本日は、審議事項5議題、報告事項4議題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移らせていただきます。それでは議題1について、機構から概要説明をお願いしたいと思います。機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題1(資料No.1)医薬品コレチメント錠9mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるブデソニドはステロイドですが、ブデソニドは、既存の他のステロイド剤と比較して全身性の副作用が少ないこと等が期待されるとして、国内外の複数の疾患領域で開発・承認されております。本邦の炎症性腸疾患領域においても、申請者の製品ではありませんが、ブデソニドを有効成分とする薬剤として、「レクタブル2mg注腸フォーム14回」が潰瘍性大腸炎に、「ゼンタコートカプセル3mg」がクローン病に対する適応で承認されています。
 本剤は、徐放化された素錠を腸溶性フィルムコーティングして大腸に薬剤を送達させるように設計された錠剤であり、今般、軽症から中等症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床試験成績等に基づき、本剤の製造販売承認申請がなされました。なお、本剤は、潰瘍性大腸炎に係る適応で2013年に米国で初めて承認され、2023年3月時点で、75の国又は地域で承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.12に示します専門委員を指名しています。
 以下、本剤の有効性、安全性について臨床試験成績等を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書の通し番号10ページの表8を御覧ください。国内第III相試験における主要評価項目は「8週時のUCDAIスコアのベースラインからの変化量」とされました。UCDAIスコアはこちらに示すとおり、排便回数、血便、粘膜所見及び医師による全般的評価をスコア化したものであり、潰瘍性大腸炎を対象とした国内外の複数の臨床試験で用いられている一般的な指標です。続いて、同じページの表10をご覧ください。海外第III相試験の主要評価項目に用いられた「臨床的かつ内視鏡的寛解」は、そこに示すとおり、UCDAIスコアが1以下、排便回数、血便、粘膜所見のそれぞれのサブスコアが0であり、かつ、表9に示す内視鏡的粘膜所見の重症度スコアがベースラインから1以上低下することと定義されています。
 次に、国内第III相試験の結果について御説明します。審査報告書の通し番号11ページを御覧ください。国内第III相試験において、主要評価項目の「8週時のUCDAIスコアのベースラインからの変化量」は、本剤9mg群とメサラジン3,600mg群の変化量の差の95%信頼区間の上限値が1.3を上回らないことが非劣性を示すための基準とされました。結果は表12のとおりであり、メサラジン3,600mgに対する本剤9mgの非劣性は検証されませんでした。
 続いて、海外第III相試験の結果について御説明します。審査報告書の通し番号14ページの表16を御覧ください。一つ目の海外第III相試験において、主要評価項目である「8週時の臨床的かつ内視鏡的寛解が認められた被験者の割合」について、本剤9mgのプラセボに対する優越性が検証されました。また、審査報告書の通し番号18ページの表20を御覧ください。二つ目の第III相試験においても、一つ目の海外第III相試験と同一の項目が主要評価項目として設定され、本剤9mgのプラセボに対する優越性が検証されました。
 以上の臨床試験成績を踏まえた本剤の有効性評価の方針について、審査報告書の通し番号20ページの中段を御覧ください。国内第III相試験におけるメサラジン3,600mg群の8週時のUCDAIスコアのベースラインからの変化量について、非劣性マージンの設定根拠であるアサコール錠の国内第III相寛解導入試験におけるアサコール錠3,600mg群の結果と比較すると、変化量が半分程度でした。したがって、国内第III相試験は、結果として非劣性試験としての分析感度が十分ではなく、当該試験成績から本剤の有効性を検証・評価すること自体に限界があると考えました。そこで、海外第III相試験の成績も考慮して、本剤の有効性を評価できないか検討しました。
 審査報告書の通し番号25ページに、本剤の有効性に関する機構の考えをまとめています。まず、本剤の薬物動態、潰瘍性大腸炎の診断基準及び治療体系に明確な国内外差はなく、日本人と外国人の潰瘍性大腸炎患者において、有効性評価に影響を及ぼすような民族的要因は特に認められていません。本剤は、二つの海外第III相試験において、軽症から中等症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象としてプラセボに対する本剤9mgの優越性が検証されています。また、海外での長年の使用実績から、欧米の診療ガイドラインにおいて、軽症から中等症の活動期潰瘍性大腸炎患者に対する寛解導入を目的とした治療として推奨されています。以上の点を考慮して軽症から中等症の日本人の潰瘍性大腸炎患者における本剤の有効性を評価することは可能と考えました。
 以上の有効性に関する機構の判断について、専門協議における議論を御説明します。審査報告書の通し番号32ページをご覧ください。専門協議においては、ブデソニドに係る民族的要因の説明、海外第III相試験成績や海外での使用実績等から、軽症から中等症の日本人の潰瘍性大腸炎患者においても本剤の有効性が期待できるとする機構の判断は支持されました。その上で、国内第III相試験の成績から日本人の潰瘍性大腸炎患者での本剤の作用についてどのようなことが言えるかを明らかにしておくことも重要であるとの意見が出されました。
 専門委員の意見を踏まえ、日本人の潰瘍性大腸炎患者を対象とした国内第III相試験において明らかとなった点を、より詳細にまとめました。まず、メサラジン3,600mg群の有効性が試験計画時の想定より低く、結果として分析感度が十分ではなかった要因について、審査報告書の通し番号33ページの表32と表33を御覧ください。国内第III相試験の非劣性マージンの設定根拠とされたアサコール錠の03010301試験、アサコール錠と同じくメサラジン製剤であるリアルダ錠のU33試験、本剤の国内第III相試験は、いずれも軽症から中等症の潰瘍性大腸炎患者を対象に、UCDAIスコアを主要評価項目として実施された試験です。これらの3試験について患者背景及び有効性を比較したところ、試験実施時期が比較的最近の試験ほど、前治療として高用量のメサラジンを使用していた患者の割合が増え、メサラジン群のUCDAIスコアの変化量が低下する傾向が認められました。本剤の国内第III相試験では、医療現場において潰瘍性大腸炎に対し高用量のメサラジン製剤が更に使用されるようになり、それらを投与しても疾患活動性を有する、治療反応性の低いことが想定される被験者の組入れ割合が高くなったことが、メサラジン3,600mg群において、非劣性マージンの設定根拠とした臨床試験と同程度の変化量が認められなかった一因と推察されました。
 国内第III相試験における本剤の有効性の結果解釈には限りがあるものの、主要評価項目であるベースラインからのUCDAIスコアの変化量について、本剤6mg群の変化量は-0.02であり、低下がほとんど認められていないのに対し、本剤9mg群の変化量は-0.87であり、試験計画時の想定より小さいものの、一定のUCDAIスコアの低下が認められていること、副次評価項目である臨床的改善が認められた被験者が本剤9mg群で一定の割合認められていることは、メサラジンの高用量が使用されている現在の日本人の潰瘍性大腸炎患者においても、本剤9mgが追加の有効性を示す可能性を示唆するものと考えます。
 続いて、本剤の臨床的位置付けについて御説明します。本剤は、欧米の診療ガイドラインでは、メサラジンで効果不十分な場合等に使用するとされ、長年にわたる使用実績があります。本邦においても同様の位置付けになることが推測されます。本剤の有効成分であるブデソニドは、従来のステロイドと比べて経口投与時の全身曝露量が低く、全身性の副作用が少ないことが報告されており、米国の診療ガイドラインでは副作用の回避を考慮する場合には従来のステロイド剤より本剤を選択することもあり得る旨が記載されていること等から、本邦においても安全性の観点から本剤が選択される可能性もあります。
 本剤の国内外の臨床成績等を踏まえた有効性に関する検討結果及び臨床的位置付けを踏まえると、本剤は、本邦における軽症から中等症の活動期潰瘍性大腸炎に対する治療の選択肢の一つとして臨床的に意義があると考えました。以上の機構の判断を改めて専門委員に提示し、専門委員から支持されました。
 本剤の効能・効果については、審査報告書の通し番号35ページに記載しているように、「活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く)」とし、効能・効果に関連する注意の項において、「「臨床成績」の項の内容を熟知し、メサラジン3,600mgを対照とした国内臨床試験で非劣性が検証されていないことを十分理解した上で、本剤投与の適否を判断すること。」と規定することが適切と判断しました。
 安全性について、審査報告書の通し番号25ページの表28を御覧ください。国内第III相試験及び海外第III相試験の本剤各群の有害事象の発現状況について、それぞれメサラジン3,600mg群及びプラセボ群と比べ臨床的に問題となるような傾向は認められなかったことを確認しました。
 以上の審査の結果、活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く)に対する有効性は期待でき、認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と考えられたことから、機構は、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本品目は、新投与経路医薬品として申請されたものの、本品目と同一の有効成分及び投与径路を有する既承認医薬品である「ゼンタコートカプセル3mg」の再審査期間(令和4年9月27日まで)が満了したことから、経口投与における新効能とみなして再審査期間は4年とすることが適当と判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。本日、参考人としてお二方の先生をお招きしております。それでは、本議題につきまして御発言をお願いしたく存じます。まず、黒瀬先生から御発言をお願いしてよろしいでしょうか。
○黒瀬参考人 よろしくお願いいたします。黒瀬です。本件に関して、臨床医の立場から、本剤の必要性や臨床的な期待についても説明させていただきます。御存じのとおり、潰瘍性大腸炎は若年者から高齢者まで幅広い年齢層が罹患しますし、また再発、再燃を繰り返すことの多い疾患であり、難治性の潰瘍性大腸炎も非常に多くみられます。また、炎症範囲も全大腸型から直腸炎型まで、正に多彩な病態を示す疾患です。さらに、合併症や併存する疾患、あるいは患者さんの体質など患者背景も様々ですので、その患者さんのそのときの個々の状況に合わせた治療法の選択が必要であり、薬物療法に関しても、できるだけ多くの選択肢を持つことが臨床上非常に重要であると考えられています。
 ステロイドは、潰瘍性大腸炎の慢性炎症の急性増悪の場合に、その効果が非常に期待されるわけですが、一方で全身的な副作用が懸念されるために、なかなか使いづらいという場面も決してないとはいえない状況です。その中で、ステロイド剤の中でも本剤の有効成分であるブデソニドは、腸管から吸収された後、肝臓で速やかに代謝されることが知られておりますので、そのため全身性の副作用が少ないことも期待されます。したがって、比較的使いやすいステロイド剤ということもいえると思います。
 また、本剤は、既に軽症から中等症の潰瘍性大腸炎患者を対象に、レクタブルの注腸フォーム剤が使用可能となっておりますが、特に高齢者などでは、なかなか御自身で注腸を行うということ自体が困難な症例も少なくありません。加えて、ゼンタコートという腸溶剤の徐放剤も発売されておりますが、こちらは主に、遠位小腸及び結腸近位部で放出されるように設計されており、クローン病に対する適応で承認が行われております。両者とも、炎症を起こした腸粘膜に対して、優れた抗炎症効果を示すことは臨床上認められています。
 以上から、今回のコレチメント錠9mgは多くの臨床場面、例えば全大腸型の潰瘍性大腸炎を含めて、軽症から中等症の潰瘍性大腸炎患者の治療に極めて有効であると、我々は判断しております。以上です。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。続いて、もうお一方の参考人である藤城先生より御発言をお願いしてよろしいでしょうか。
○藤城参考人 機構及び黒瀬先生から詳細な説明がありましたので、ごく簡単に申し上げます。潰瘍性大腸炎に関しては、近年、様々な薬が承認されてきているところですが、今回対象となる軽症から中等度の潰瘍性大腸炎に対しては、「カログラ」という薬が承認されたのみになります。今、黒瀬先生からありましたように、様々な治療の選択肢を持つことは非常に重要であり、本剤の必要性は臨床ニーズとしてあると判断いたします。
 さらに、今回、非劣性を検証するための試験が組まれ、非劣性を検証することはできませんでしたが、有効性を示すことはデータから類推することができますし、非劣性が検証できなかった理由も、機構が説明したとおりですので、私としても承認をお願いしたいと思います。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。引き続き、委員の先生方から御質問、御意見等をお願いします。大谷委員から御発言ください。
○大谷委員 大谷です。余り本質的な質問ではなくて申し訳ないのですが、本剤は腸溶性の徐放錠と伺っております。腸溶と徐放というダブルの製剤加工をかけているわけですが、腸溶性が失われた条件下では、何か薬効や副作用に影響が生じ得るとお考えでしょうか。
○森部会長 機構の方に御発言をお願いしてもよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 腸溶性が失われたというのはどのような状況を想定された御発言でしょうか。本剤は腸溶性のフィルムコーティングがされている錠剤になります。
○大谷委員 腸溶性の製剤においても、例えば胃の中のpHの酸度が下がってくると、本来は腸で溶けるべきものが胃の中で溶けてしまって動態が変わってしまうようなことは結構あるかと思います。よく知られている例ですと、例えばOTCで出ている便秘薬のコーラックなども腸溶性になっていて、それが胃の中で溶けてしまうと薬効が変わるので気をつけろということがOTCの説明文書にも書かれているわけですが、この薬に関しても、そのように胃の中で溶けてしまったりすると薬効や副作用が想定とは変わってしまうということはあり得るのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 潰瘍性大腸炎の病変部位である腸で溶けて局所的に作用することを狙った薬剤ですので、胃で溶けてしまった場合には有効性が低下する可能性は考えられます。本剤は、有効成分が吸収されると直ちに肝臓で代謝され、全身性の副作用が少ないことが期待される薬剤ですので、胃で溶けて吸収されたとしても副作用が増えるといった懸念はないと考えられます。
○大谷委員 胃で溶けると変化する場合というのは、胃で溶けないような条件が、できれば維持されてほしいので、例えばPPIを飲んでいるとか、無酸症の方が服用した場合に、それが悪影響を及ぼしたりしないのか。また、先ほどの人種差のお話もありましたが、比較的一般論でいくと、欧米人よりも日本人の方が胃酸の分泌量が少なめということもあり、そういったことが薬効の人種差の変動要因になっていないかということも危惧しつつ、腸溶性の維持が十分でなかったような条件で投与されることに対して何か影響がないかを危惧しているわけです。
○医薬品医療機器総合機構 少々お待ちください。
○大谷委員 もともと徐放になっているので、多少腸溶性が壊れても大して影響がないだろうという見通しであれば、それはそれでもいいのかなという気もするのですが、その辺りがちょっとよく分からなかったのです。それから、腸溶性という観点が大事だとすると、やはり胃酸が低下している方やPPIを飲んでいる方は少し気をつけなければいけないというような情報があってもいいのかなという気もいたしました。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。現時点で、添付文書等で、PPI等の併用や、胃酸の状況に関する注意喚起等は特に行っていません。臨床試験において、PPIの併用状況等、何か気になるような状況があるかどうかを再度確認させていただきたいと思います。
○大谷委員 ありがとうございます。もう一つは、製剤学的に、どの辺りのpHで溶けるような腸溶性になっているかがきちんと確認されているのかということと、それが実際に胃の中で溶けてしまうリスクがあるのか、そして胃の中で溶けた場合に何か悪影響があるのかという辺りの情報提供が、可能な限りで構いませんので、添付文書などでそういった情報提供があると有り難いなと思った次第です。ありがとうございます。
○森部会長 合田委員が挙手されていますので、どうぞ御発言ください。
○合田委員 今の大谷先生と、ほとんど同じ意見なのですが。高齢者は無酸の人が非常に多くて、その部分が、高齢者に対する薬効云々について、要するに効きにくくなるということについて、多分副作用の問題は大丈夫なのではないかと思うのですが、それは大丈夫なのだろうかというのは、私も同じように疑問に思いました。その部分について、データがあるのかどうなのか、それからそれに対して具体的にどのような添付文書での表示をされるのかということが、細かく読み込んでいないのですが、気になっています。それは、正に大谷先生が言われたことと同じですね。
 副作用がないからという話と、もう一つ、先生が言われたのと全く同じで、外人は非常に無酸の人が少ないのですが、日本人はかなり高齢者は多いのですね。私のジェネレーションですと、多分かなりの割合でそうなってしまいます。そうすると、多分こういうものでも胃で溶け始めるのではないかと思うのです。それに対して、どのような考察をされているのだろうかというのが気になりました。以上です。
○森部会長 機構から発言をお願いいたします。少々お待ちください。
○医薬品医療機器総合機構 日本人では無酸の高齢者が多いというお話でしたが、少なくとも海外で10年ほど使われている薬剤ですが、特に無酸等で問題があるという状況にはなっていないと理解しております。
 pH幾つで溶けるかという品質的な点については、資料を確認させていただきたいので少々お待ちいただけますか。
○合田委員 多分、高齢者の無酸症は日本人は非常に多いので、海外のデータはその部分は直接持ってこられないのではないかなとは思います。
○宮川委員 森部会長、よろしいですか。
○森部会長 宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。大谷委員と合田委員からあったのですが、私も同じ意見を持っています。日本人の場合、特に高齢者の場合には、無酸、低酸が多いというのは常識的なことなので、それによって、有効性に対して問題だろうと。安全性に関しては私も問題ないと思いますが、有効性については問題だろうと。ですから、国内の試験において、非劣性ということに関しても問題であったというのは、そこに帰着するのかどうかということを機構がしっかりと検討していないということが私は問題だろうと。それに対する正確なお答えはいただいていないと、私は認識しています。ですから、そういう問題に関して、しっかりとした理由を書き込んでいただきたい。
 そして、併用時の問題です。実際には高齢者の場合には併用の薬をたくさん飲んでいらっしゃるという状況があります。それに対して、臨床試験等を含めて、そのような併用薬の記載に関しての説明がないということは、私もどうかなと思いますので、それに関してお答えいただきたいと思っています。ですから、海外の話はしないでいただきたい。日本人の特性の中で考えていただかなかったら、これは導入できないわけです。そこを機構はよく理解して、説明をしっかりしていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。まず、製剤設計としては、pH7以上で溶けるように設計されており、品質面で規格としての管理も行っております。国内試験における無酸の方の割合等については、データを詳しく確認するため引き取らせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○宮川委員 pH7というところで分かるのですが、そうしたら胃の停滞時間はどのぐらい、つまり停滞時間をどのぐらいと計算して、そのようなことをおっしゃっているのかどうか。ですから、有効性に関して問題だと言っているので、安全性のことは私は申し上げていません。溶け始めて、どのぐらいの停滞時間があるから、どのぐらいの有効性が認められるのかと。胃の停滞時間はどのぐらいと計算されているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 少々お待ちください。御指摘いただいた点も含めて、データを精査させていただきたいと考えております。
○森部会長 部会長から、一つ質問させてください。今回の国内の臨床試験で、参加されている患者さんの年齢はどの程度なのでしょうか。情報は、そちらでお分かりになりますか。
○藤城参考人 参考人の藤城ですが、私の手元にある資料を紹介させていただきます。
○森部会長 申し訳ございません。ありがとうございます。
○藤城参考人 メディアンで45歳程度で、74歳が最高齢の方になるかと思います。この試験自体が75歳以下を対象にしており、無酸症の方は除外した中で試験が行われておりますので、今御質問のあった点に関しては、臨床的な検討が十分なされていないということになるのではないかと思います。以上です。
○森部会長 御回答どうもありがとうございました。大変助かりました。大谷先生、どうぞ、発言ください。
○大谷委員 薬効の方もそうですし、実際に7.0ということになりますと、PPIを飲んでいる方であると、あり得るかと。7.0ぐらいまで、ほぼ中性まではいくこともあると思いますので、溶けることはあり得ると思います。やはり精査していただいた中で、無酸症やPPIを飲んでいる方に対して、少なくとも情報提供、そういう場合に薬効が十分に担保されているという情報がないという旨の、何らかの情報提供は少なくともあって然るべきではないかなという気がいたしました。よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございます。消化器の御専門の立場から、前田委員から御発言いただくことは可能ですか。
○前田委員 前田です。先ほど藤城先生からもあったように、潰瘍性大腸炎の患者さんはお若い方が多いですし、恐らく30、40代の方が多いので、無酸症については、実際にはそんなには問題にならないのかもしれませんが。もし、pH6、7で薬効が落ちてしまうという事実が、どちらかの文献なり報告書であるのであれば、それは載せるべきかなとは思います。現実に、それが本当にあるかどうかを機構に調べていただいて、あればということなのですが、まあちょっとない可能性もあるかなと。
 もし、7が駄目であれば、PPIなりの併用は避けた方が望ましいというような記載は必要かなとは思います。以上です。
○森部会長 記載整備に関する御指摘も、どうもありがとうございました。柴田委員、お願いします。
○柴田委員 柴田です。今、諸先生方から御指摘いただいたお話とは別の動機でコメントしようと思っていたのですが、図らずも同じ延長線上の話でしたので、少し確認させてください。審査報告書の33ページの表34についての質問です。非劣性が証明できなかった理由として、分析感度がどうのこうのという御説明がありますが、こちらの表を素直に読むと、本剤9mgは思ったほど効いていなかったというのが、素直な解釈ではないかなと思います。
 そう考えると、やはり海外のプラセボ対照試験などを踏まえると、本剤に薬効が存在するものであろうということまでは分かりますし、いろいろな先生方のお話から、本剤の臨床的意義も期待できるということにも異存ありません。また、非劣性が証明できていないといってもそれはギリギリのところであったということも踏まえると、総合的な判断として機構の御判断を真っ向から否定するつもりはないのですが、この試験の結果を見たときに分析感度がなかったという話よりも、今回の効き目が、思ったよりも高くなかったという観点での分析は必須であると思いますし、それについての機構の御見解はいただく必要があるかなと思っております。
○森部会長 どうもありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 先生のおっしゃるとおり、事前の想定より本剤の効果が高くなかったというのは御指摘のとおりかと思います。様々な部分集団解析等も実施しましたが、本剤の有効性が低くなった原因を明確にすることは難しいと機構としても思っております。先ほど説明したようなメサラジンの高用量が使われるようになり、患者さんの疾患のコントロール等がかなりよくなっている状況で、それにもかかわらず、まだ少し症状が残っているというような、軽症から中等症ではあるのですが、そういったメサラジンだけでは寛解まで持っていくことが難しいような患者が多く組み入れられているということで、対照薬のメサラジンもですが、本剤について想定していたほどの効果が得られなかったということかと思っております。
○柴田委員 もし、そのようにいろいろサブグループ解析などをされた上での御判断であるのならば、分析感度が保たれていなかったなどというような紋切り型の説明ではなく、医学的に意味のある考察をここに示されるべきだと思います。実際、既に先生方が御指摘されているようなことは懸念事項として分析されるべきだと思いますし、そういう意味で、テクニカルなまとめ方ではなく、実際に何が起こっているのかが臨床現場の先生方に分かるような形での考察をされるべきではないかなと思います。以上です。
○森部会長 柴田委員、どうもありがとうございました。参考人の先生方、お二方にお伺いしたいことがあります。今回の国内の第III相臨床試験の成績で、UCDAIスコアの低下が-0.87であったという結果が出ておりますが、この結果は、先生方としてはおおむね予想されている範囲であるのか、やはり想定していたよりも効果が低いとお考えなのか、いかがでしょうか。
○黒瀬参考人 黒瀬です。率直に言いまして、やはり想像していたよりも効果が低いなというのは感じました。ただ、かといって、では効果がないのかというと、やはりプラセボとの比較試験を通しても、臨床的な意味はあるだろうと。最初に申し上げましたように、選択肢を広げることが、幅広い病態を持つ難病の疾患に対しては、臨床的な意義があるということが、私にとっては一番だと考えました。
 先ほど来のお話にあるように、確かに腸溶剤で必ず問題になるのは、胃の中のpHはどうなのだということになってくるわけですが。その辺りは、例えばゼンタコートなどを見ても胃酸の状況による吸収率のデータは、私も調べた限りでは出てこないのです。ですので、多分これからまたいろいろ調査が必要だとは思いますが、一定の条件をかけながらでも選択肢を広げていく、特に全身的な副作用が少なくて使えるということで、前向きな評価をしてもよろしいのではないかなと、私は率直に感じました。以上です。
○藤城参考人 藤城からも同様です。ベースラインで7のデータが、-0.87ということですので、私自身もブデソニドはもっと効果があるのではないかと思ったのですが。少し残念なところがありますが、データから見ると、有効性はあるだろうということと、安全性のあるステロイド剤を臨床現場に持っていくという臨床ニーズがありますので。安全性の面で、この薬は大丈夫だろうと感じた次第です。
 今後の市販後調査において、有効性に関してはしっかり検討する部分を設けるということを、専門協議の中では意見させていただいたということです。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。それでは、これまでの先生方の議論を総括いたします。まず、現病である潰瘍性大腸炎という疾患が、若年者から高齢者まで幅広い年齢層で罹患する疾患で、かつ非常に難治性、慢性化しやすい疾患であるという前提です。そして、現在の治療選択肢で、重症ではない方の治療選択肢が限られている中で、今回ブデソニドの内服薬の臨床試験が行われ、治療薬であるメサラジンとの非劣性に関しては今回は確認されず、その要因としては、メサラジンのレスポンスに関する経年的な変化に加えて、恐らくブデソニドは有効性が当初の予定よりも下回っていたという二つの要因があることも確認されました。
 もう一方で、本剤のブデソニドは、内服薬の有効性に関係する要因として、複数の先生方から胃のpH等を含めた本剤の吸収に関する要因について御指摘を頂き、今回の臨床試験を通じてはその点がまだ十分つまびらかになっていないという点も確認できました。しかしながら、既存の情報等でそこを精査することにより、何らかのサジェスチョンが得られる可能性もあるということで、その点については今後、機構の方が精査をされるということもお話を伺っております。
 また、参考人の先生方からは、潰瘍性大腸炎の治療選択肢をなるべく多くすることは患者さんの治療選択の拡大につながるということで、臨床現場からも歓迎されているという御発言等を全体に鑑みますと、今回の臨床試験でプラセボとの比較がされている海外臨床試験の成績等も加味して考えますと、本剤の実臨床での使用については前向きに検討することが可能であり、かつ今回の添付文書の記載整備に関しては、今後機構で解析をなさる予定の本剤の有効性に与える影響因子に関する考察を付記した上で、記載整備を行うということが、今、先生方の御意見の総和かと考えていますが、いかがでしょうか。
○合田委員 合田ですが、それで良いと思います。
○大谷委員 私も結構です。
○宮川委員 宮川としても、当然だろうと思います。ですから、今、参考人のお話がありましたように、多くの選択肢を持つということは非常に重要なことで、恩恵を受ける患者さんが存在することは必ずあるので、どうやってそれを選択して、しっかりと臨床現場に落とし込めるかが大事だと考えます。柴田委員がおっしゃったようなことを機構はしっかりと考えていただいて、表現をしっかりと書き込むということをしないと誤解をというか、論議だけが、それで時間を費やしてしまうことになります。正しい使い方をしていくためには、やはり機構も、そういう意味では表現の仕方を考えていただいて、審議を助けていただくことをしていただいた方がよろしいのかなと思っています。以上です。
○森部会長 ありがとうございます。また、専門協議におかれましても、今後の市販後調査に関する貴重な御助言もいただけるということで、本剤の有効性、安全性、更にはリスクとベネフィットに関わる重要な情報については、市販後調査でも今後収集していくということで。また、専門家の先生方からも本剤の有効性、また位置付けについて様々な意見を頂きながら、本剤の使用に当たっていくという基本的な方針を今確認いたしましたが、いかがでしょうか。
 追加の御発言、御意見等がありましたらお願いします。いかがでしょうか。
○柴田委員 柴田です。先ほど、宮川先生にコメントいただきまして、ありがとうございます。私も異存ありません。
○森部会長 ありがとうございました。それでは、ほかに御意見がないようでしたら、議決に入りたいと思います。なお、前田委員におかれましては、利益相反に関するお申し出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。黒瀬参考人、藤城参考人、誠にありがとうございました。どうぞ御退室ください。
○黒瀬参考人 ありがとうございました。
○藤城参考人 ありがとうございました。
──黒瀬参考人、藤城参考人退室 ──
○森部会長 それでは、会議の進行として、参考人をお呼びしております議題4について、先に御審議を頂きます。続いて議題4、イーケプラドライシロップの議題に移ります。機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題4、資料No.4、医薬品「イーケプラドライシロップ50%他」の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.4の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全37ページの通し番号の8ページの「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本薬について、本邦では、本薬ドライシロップ剤が、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)(以下、「部分発作」という)の効能・効果について、4歳以上に対する用法・用量等で承認されております。また、本薬静注製剤については、一時的に経口投与ができない患者におけるてんかん患者の部分発作に対する本薬の経口製剤の代替療法に係る効能・効果等で承認されております。海外では、本薬は、2022年5月現在、部分発作の生後1か月以上4歳未満の小児用量を含め、米国及び欧州を含む48か国以上の国又は地域で承認されております。
 今般、国内第III相試験成績等に基づき、部分発作の効能・効果について、生後1か月以上4歳未満の小児用量の追加に係る製造販売承認事項一部変更申請が行われました。本申請の専門委員として、資料No.12に記載されている4名の委員を指名しております。審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
 まず、審査報告書の通し番号21ページの真ん中辺りの「しかしながら」からの段落を御覧ください。国内第III相試験は、被験者の組入れが難航したことから、主要評価項目の部分発作の記録方法を患者及びその家族の負担が大きいビデオ脳波検査から患者日誌にするなどの変更が、試験実施中になされました。このことにつきまして、機構は、検証的な位置付け、かつ非盲検非対照デザインで実施された国内第III相試験において、試験開始時点で、あらかじめ規定した部分発作回数の記録方法に基づき評価する重要性は高く、主要評価項目等の変更は適切ではなかったと判断いたしました。一方、国内第III相試験の開始時の予想よりも生後1か月以上4歳未満の患者への本薬の使用実態から、試験の実施可能性が低くなっているとの状況は理解でき、新たな臨床試験を実施するのではなく、主要評価項目等を変更して国内第III相試験を継続したことには一定の理解はできると考えております。その上で国内第III相試験では、計画変更前後によらず、部分発作回数の評価が可能な水準で患者日誌による記録がなされていたと判断できることから、国内第III相試験に組み入れられた全ての被験者データに基づき本薬の有効性を評価することは可能と判断いたしました。ただし、非盲検非対照試験である国内第III相試験における計画変更前後の被験者データに基づく主要評価項目の解析は、第一種過誤確率が増大していることも考慮し、副次評価項目も含め得られた情報に基づき、本薬の有効性を総合的に評価することといたしました。
 さらに、生後1か月以上4歳未満のてんかん患者における本薬の薬物動態に明らかな民族差は認められておらず、診療体系や治療選択肢等も国内外で同様であることを考慮すれば、国内第III相試験成績に加え、部分発作を有する生後1か月以上4歳未満の患者を対象とした海外臨床試験成績等も踏まえて、生後1か月以上4歳未満の日本人患者の部分発作に対する本薬の有効性を評価することは可能と判断いたしました。
 以上の本薬の有効性評価方針を踏まえ、有効性について御説明いたします。審査報告書の通し番号15ページの表6を御覧ください。部分発作を有する生後1か月以上4歳未満の日本人患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である「併用療法の投与6週目における週あたりの部分発作回数のベースラインからの減少率」の95%信頼区間の下限値は事前に規定した閾値である15%よりも低い結果でした。国内第III相試験において事前に規定した閾値を満たさなかった要因の考察について、審査報告書の通し番号23及び24ページの表17及び表18を御覧ください。年齢区分別及び薬剤治療での管理が困難な可能性がある新たな発作型が認められた被験者別の本薬の有効性を比較しましたが、各部分集団間の部分発作回数の減少率の分布は重なっており、明確な要因は特定できませんでした。
 一方、審査報告書の通し番号24ページの表19を御覧ください。国内第III相試験の投与6週目における週あたりの部分発作回数のベースラインからの減少率の50%レスポンダーの割合及び発作完全消失例の割合を確認した結果、50%レスポンダーの割合は28.1%、発作完全消失例の割合は15.6%であり、プラセボ対照比較試験として実施した海外臨床試験のプラセボ群のデータと比較して高い傾向が認められました。
 また、審査報告書の通し番号17ページの表11を御覧ください。部分発作を有する生後1か月以上4歳未満の外国人患者を対象とした海外第III相試験において、主要評価項目である「部分発作に対する50%レスポンダーの割合」は、本薬群でプラセボ群と比較して統計学的有意差が認められました。
 以上の本薬の国内外の臨床試験成績を総合的に評価した結果に加え、本薬は4歳以上の部分発作に対して国内外で同一の用法・用量で承認され、国内外で本薬の有効性、安全性及び薬物動態に大きな差異は認められていないことも考慮すると、機構は、本薬は、生後1か月以上4歳未満の日本人患者に対しても部分発作に対する有効性を有すると判断いたしました。
 有効性に関する専門協議の議論について、審査報告書の通し番号32ページの「1.1.2 生後1か月以上4歳未満の部分発作に対する有効性について」の項を御覧ください。専門委員から、本薬の有効性について、乳児期のてんかん発作は、発作頻度や発作型が非常に不安定であり、実臨床においては1~2週間程度の短期間で発作回数が急増したり、新たな発作が加わったりすることもあることを考慮すると、副次評価項目とされたレスポンダーの割合や発作完全消失例の割合の結果も踏まえて評価することは理解でき、国内第III相試験の投与6週目における発作完全消失例の割合は15.6%であったことなどから、本薬の部分発作に対する有効性は示唆されているとの御意見が提示され、本薬は、生後1か月以上4歳未満の日本人患者における部分発作に対する有効性を有するとの機構の判断は専門委員から支持されております。
 次に安全性について、審査報告書の通し番号26~27ページの「7.R.2 生後1か月以上4歳未満の患者における安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験において、生後1か月以上4歳未満での本薬の使用に当たって、臨床上問題となるような新たな事象は認められませんでした。加えて、国内外の製造販売後安全性情報においても生後1か月以上4歳未満での本薬の使用に当たって、4歳以上での本薬の使用と比較して特別に注意を要する事象は認められていないことを踏まえ、4歳以上の小児及び成人患者と同じ注意喚起の下で生後1か月以上4歳未満の患者に対して使用されることで、本薬の安全性が臨床上大きな問題とはならないと判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新用量医薬品であることから、本申請に係る用法及び用量の再審査期間は4年間とすることが適切と判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 参考人の松石参考人をお呼びしておりますので、先生から御発言をお願いいたします。
○松石参考人 聖マリア病院小児総合研究センターの松石と申します。専門委員として、この審査に加わりました。けいれんとか、てんかんになじみの少ない方もおられるかもしれないので説明させていただきます。
 一般的に臨床の現場では、基礎疾患の有無、これは、乳幼児では脳の奇形があったり、知的障害を伴ったり、自閉症の傾向的症状のようなものを伴うてんかんとか、そういったものがございまして、様々で、そういった方々は、抗けいれん剤を投与しても、けいれん発作が減らなかったり、一過性に増えたりする患者がおられることも、しばしば経験することです。その際に、他の抗けいれん薬を追加したり、薬を変更することも、よく経験します。もう少し長い期間、抗けいれん薬を投与しないと効果が明確に分かりにくいこともあるということを、まず念頭に置いていただけたらと思います。
 イーケプラはドライシロップが発売されて以降、実際の小児科の臨床の現場では、海外同様に1か月以上4歳未満でも、部分発作に対しては非常に有効性が高く比較的安全に投与できるということで、幅広く使用されている抗けいれん薬であり、既に、もうほとんどの施設で使われています。先ほどの機構からの報告にありましたように、薬物動態でも国内外で差がなく民族差がないことも理解されています。
 「ベースラインからの発作減少率」が15%を上回る有効性が証明されなかった点は、非常に分かりにくいところはあるのですけれども、内容を見てみますと、まず、対象となった試験参加者のリクルートが非常に困難だったことが、一つの原因だと思います。既にほとんどの方が使われていたりするものですから、48時間のビデオ脳波検査を行うということは、普通は親子ともに3日間、その前の日も入れて2泊3日の入院が必要で、非常に親子の負担が高いということで、そういった方は2歳未満であれば薬剤抵抗性というか、もともとの薬が効きにくい方が非常に多いということが分かっています。
 実際にみてみますと、新たな発作型が認められた被験者10人中9人は2歳未満で、てんかん性脳症というのですけれども、非常に止まりにくいような、ほかの発作が部分発作以外に後で出てくるという「発達性てんかん脳症」が含まれていることは間違いないようです。そのために、こういった結果になったのではないかということを考えています。
 また、50%レスポンダー率を海外臨床試験のプラセボ群と比較しても、28.1%というのは非常に高い傾向にあること、及び発作が完全に消失した率が15.6%と高いことから有効性が示されていることは非常に適切であると思います。また、海外で広く行われている臨床試験と国内第III相試験の結果から有用であると、総合的に判断してよいというのが、専門委員会の一致した意見でありました。コメントさせていただきました。
○森部会長 御説明ありがとうございました。松石先生からは、臨床試験に様々な制約が生じていた国内での背景、疾患の特異性、特に生後1か月~4歳までの小児における疾患の特殊性、その多様性についてのお話を詳しく伺ったところです。
 委員の先生方から、追加の御発言、御意見等はございますか。
○宮川委員 今、参考人からいろいろ教えていただきまして本当にありがとうございます。
 生後1か月~6か月が5例、6か月~1歳が3例、1歳~2歳が1例、2歳~4歳が1例という形で、低年齢の方が組み入れられてきたということは、参考人がおっしゃったプラスの今までおっしゃったことに対して、それを補強するという形で考えてよろしいのでしょうか。結果として、そういう結果が出たと。それでも臨床的にいえば、高い有効率を示していたということで理解してよろしいのでしょうか。
○松石参考人 今おっしゃったとおりだと思います。実際、ほとんど外来で使っている方は有効性があったりして、入院してビデオ脳波を48時間取るという方は低年齢で、しかも発作が難治である方の家族が希望されますから、そういった方が試験参加者のリクルートの中に多く入ってきた可能性があるために、こういった結果になったのではないかと考えております。
○宮川委員 ありがとうございました。
○森部会長 堀委員、御発言ください。
○堀委員 まず、松石先生、いろいろありがとうございました。COMLの堀と申します。患者の保護者の立場から質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
 今、宮川委員からもございましたが、今回、試験参加者の年齢の配分などを教えていただき、大変有り難く思っております。それで、一点質問なのですが、生後1か月以上4歳未満の乳幼児における服用期間についてお尋ねいたします。
 添付文書を拝見しておりますと、長期服用期間については特段の記載がございませんでした。子供を持つ母親からしますと、生後1か月から、どれだけ長期服用をするかということに関しては、かなり心配です。それは、成長期ということと、あと、添付文書の「重要な基本的注意」の所で、「精神的な症状が現れるということもある」というように書かれていました。その場合、生後1か月、特に1歳未満の場合に関しては、そういう精神的な不安定さというのは、保護者がなかなか察することができないということもあり、そこに不安があるのですが、いかがでしょうか。
○松石参考人 ちょうど発達期にある子供ですから、長期的に服用する場合に、長期的な発達面に及ぼす影響などを考える必要はあると思います。非常に重要な御指摘だと思います。
 ただ、この薬が、今おっしゃったように、そんなに多い数ではないのですが、精神的にいらいらしたり、易刺激性といいますか、それを呈する方が一部、約1割ぐらいいらっしゃるのではないかと思います。そういったことがありますし、もともと発達上で、そういった易刺激性があるといいますか、自閉症の方とか、そういった方は特に注意して治療しているのが現状ではあります。
○堀委員 ありがとうございました。もう一点、機構に質問がございます。よろしいですか。今回、生後1か月以上から服用が可能ということで、このドライシロップの服用方法についてお尋ねいたします。
 特に、生後1か月ですと、母乳又は粉ミルクを哺乳瓶から飲むということがほとんどだと思うのですけれども、例えばドライシロップを粉ミルクに混ぜて飲ませることは可能なのか、そして、その場合、混ぜた場合の味、混ぜ方などは、今後、保護者向けの資材等に記入していただけるのかどうか、その点を質問させていただきます。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり、小さなお子さんということで、ミルク等を飲まれている患者もいらっしゃると思うのですが、ドライシロップ製剤は、水に溶かして飲ませることを前提に開発されていると認識しております。大変恐縮ですが、現在、ミルクに溶かしたときにどうなるかというデータまでは、持ち合わせてございません。基本的に水に溶かしていただいて、スポイトなどで飲ませたりとか、そういったことが想定されるのかなと認識しております。
○堀委員 御返答ありがとうございました。保護者向けの資材、特に生後1か月以上~4歳未満の保護者向けの資材というものは、今後作成なさる御予定なのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 現時点では、作成する予定はございません。
○堀委員 分かりました。保護者の立場から申し上げますと、生後1か月という生まれてすぐの赤ちゃんが、てんかんというような症状を持ち、それに対して薬を飲ませなければならないと聞いた保護者は、かなりナーバスに、神経質になっていると思います。その保護者の気持ちを汲み取った資材を何かしら作っていただけますと大変有り難いと思います。それこそ、今申し上げたような、ミルクに混ぜていいのか、いつ、どういうタイミングで服用したらいいのか、飲まなかったときはどうしたらいいのかなどの、そういう質問や疑問を、かなりの保護者が持つと思います。是非、そのような点からも、保護者向けの資材を作成していただきたいと思います。私からは以上です。
○森部会長 松石参考人から、追加の御発言がございましたらお願いいたします。
○松石参考人 非常に重要な御指摘で、その辺は保護者向けの資材は、メーカー側にも言って、そういったものがあった方が、いろいろ分かりやすいし、実際に今のような質問を受けることが、現場でも、外来であることだと思いますから、診療する側としても有り難いと思いますし、今後そういったことが重要になってくるのだと思います。是非、メーカー側にも、そういったことを強く働き掛けていただいた方が、現場としてもいいかなと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。堀委員からの、実際にどうやって服用するのかなどを保護者がわかりやすいように情報提供が必要だというご指摘について、承知いたしました。企業に、そのような情報提供が可能な資材を作成するように伝えたいと思います。ありがとうございます。
○堀委員 ありがとうございます。
○森部会長 機構の方に確認が一点あります。臨床試験では、どうやって服用させていたのかを教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 機構から、お答えいたします。まず、試験のプロトコルには、「ミルクに溶かす」とか、そういうことは書かれておりません。水に溶かして服用する旨、書かれております。具体的にスポイトを使って飲ませるなどは現場の御判断でやっていただいたような形になります。以上です。
○森部会長 水に溶かして使用したということは確認されているのですね。分かりました。松石参考人からは追加の御発言はございますか。
○松石参考人 結構です。
○堀委員 再び、よろしいでしょうか。部会長からの御指摘、ありがとうございました。そういうところが非常に大切ではないかと思います。私たち保護者は家庭でのませますので、そういう場合、どこに聞いたらいいかが分からない、今、スポイトということを機構からおっしゃいましたけれども、そのスポイトということすら思い浮かばない保護者の方もいらっしゃると思います。ですので、是非詳細な資材を作成いただきたいと思います。以上です。
○森部会長 疾患の特性を考えますと、お子さんが服薬に集中できないような状況もあり得るかと思いますので、保護者が慎重に服用される上での様々なガイダンスがあることが望ましいと考えているところです。柴田委員、御発言ください。
○柴田委員 細かいことなのですが、機構のスタンスをお伺いしたいと思いましてコメントさせていただきます。審査報告書の37分の21ページの「有効性評価項目の変更」に関する点です。これは非常に治験がやりにくい状況で、なおかつ評価も難しいところで、今回このような治験が行われたこと、それが申請につながっていることはとても大事なことですし、機構の御判断にも賛同するところです。
 一点、テクニカルではあるのですが、同様に希少疾病等での開発の妨げになってはいけないと思いまして、確認させていただきます。
 審査報告書の中で、第一種の過誤確率が増大するということが書かれてございます。ただ、これは結果を集計して、その集計した結果を見ながらエンドポイントを変えたとか、閾値の変更をしたということであれば、明らかに第一種の過誤はコントロールできていないと言うべきですけれども、この試験はそのようなことをしたのでしょうか。非盲検試験であっても、エンドポイントを変えるのみであれば、ここまで言わなくてもいいのではないかと思うのですが、そのようなことが述べられているような事情があるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 実際に企業側が変更するに当たって、解析を行っていたかまでは明確には分かってはいないのですが、非盲検非対照試験として、実施しており、いつでもデータが確認できるような状況になっているということを考慮しまして、申請者が開発中にそういうデータを全く見ていなかったということが客観的に否定する状況が難しいと考えておりまして、そのことも考慮しまして、このような考察をさせていただきました。
○柴田委員 分かりました。基本的には、確かにおっしゃるように、完全には否定できないですが、オペレーショナルバイアスが入る余地がないのであれば、ここまで強く言う必要はない、あるいはそういうようなやり方が許容されているという薬事承認申請のデータパッケージの中に含まれる検証的位置付けの非盲検試験の解析の方針が途中で変えられているとか、アルファの低い水準の割り付けが途中で変えられているという試験の事例もありますし、そこは具体的な懸念事項がないのであれば、そこは可能性にとどまって、余り厳密に否定するべきではないのではないかと思った次第です。ただし、可能性があるということ自体までは否定できないというのはおっしゃるとおりですので、懸念がある程度であれば異存はございません。
○森部会長 合田委員から御発言をお願いいたします。
○合田委員 先ほどの堀先生からの質問で、メーカーから実際の御父兄に対する情報を提供するというような話がございましたので、是非その資料の中には、この薬自体は味が苦いものですから、それをドライシロップで味を騙しているという状況なので、そういうようなことまでを含めて書いて頂けないでしょうか。味は実際には添付文書には書かないと思いますけれども、そういう情報ではそういうことを入れてあれば、逆に、子供に「甘いよ」と言って飲ませると、これは甘くないではないかということが必ず起こるのです。そういうようなことが、実はいろいろなクレームで来ることがございますので、是非、スポイトで入れるというのが一番いいのだろうと思いますけれども、そこの辺も含めて書かれるのがよろしいのではないかと思って発言させていただきました。
○森部会長 小さいお子様ですから、なおさら正確を期して記載するというご指摘だと思います。ありがとうございました。
○宮川委員 資材を作っていただく際に、スポイトというのは分かるのですが、スポイトは、正面から喉の奥に入れてはいけないのです。普通は、こういうドライシロップなど、ある程度の苦さがある場合は、特にスプーンで、頬の内側に入れて、舌を避けて流し込むような形が一番いいのです。スポイトも正面から入れるのではなくて、頬の内側に入れて、舌を避けるような形で横から入れる形で、小児科の場合には必ずそうしていますので、そういう実臨床の中で、しっかりと継承されているものを書き込まないと、ただスポイトでやればいいのだということではなくて、今のような具体的な書き方をしないといけないので、是非そのような書き込みを企業と一緒に作っていただくようにお願い申し上げます。
○森部会長 いろいろとお知恵をいただいて、よい資材になるように御協力いただきたいと思っています。
 機構の方と先生方にお伺いしたいのですが、今回のイーケプラの薬剤の1か月~4歳児までの有効性に関するアセスメントで、国内の臨床試験では十分な有効性を確認できなかった点もあり、海外の治験の成績をデータの補完のために何か所か引用されている背景があります。
 例えば、海外のN01009試験というものがあります。例えば、表11や表20が、本剤の有効性の詳査の一つとして引用されているのですが、これは添付文書には記載がない状況になっています。この情報は、臨床の現場の先生方には、ある程度知る機会を担保しておく必要があることを考えておりまして、含める方法として、添付文書に何らかの参考所見として追記する方法も考えられますし、インタビューフォームや資材等に記載することが十分に考えられまして、この点について少し御意見を伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 現時点で、医療従事者向けの資材には、データを記載している状況は把握しております。部会長の御指摘としましては、添付文書にも記載した方がよろしいという御指摘ということでよろしいでしょうか。
○森部会長 審査報告書では、この成績が有効性を確認する上での補完情報として使われていますので、現場の先生方にも提供すべき情報だと考えられているのですが、提供の方法には様々な方法がありますので、どういった方法が妥当かということについて、少し御意見を伺おうと思っていました。
○医薬品医療機器総合機構 先生からもコメントがございましたように、補完で使っていたことから、まずは情報提供資材での情報提供というところを考えてございました。
○森部会長 この点について、先生方はいかがでしょうか。柴田委員から御意見はございますか。
○柴田委員 これは一応、評価資料として出されているようでもあるので、添付文書に書かれた方がいいのではないかと個人的には思っておりました。
○森部会長 松石参考人、御意見はいかがでしょうか。
○松石参考人 添付文書に書いた方が、より親切で分かりやすいと思います。記載した方がいいと思います。
○森部会長 機構の方、このような御検討は可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘を踏まえまして、申請者と、添付文書に記載する方向で調整させていただきます。御指摘ありがとうございました。
○森部会長 それでは、先ほどから先生方から、特に資材、臨床現場並びに御家族向けの資材といった点にも要望がございましたので、是非その点も御配慮のほどお願いしたいと思っています。
 そのほか、先生方から御意見、御質問はございますか。よろしければ、議決に入らせていただきたいと思います。なお、中西委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようでございます。それでは、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。松石参考人、長時間ありがとうございました。どうぞ御退室ください。
○松石参考人 失礼いたします。
──松石参考人 退室 ──
○森部会長 それでは、議題2に進みます。機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題2、資料No.2、医薬品ソグルーヤ皮下注15mgの製造販売承認の可否、同皮下注5mg及び皮下注10mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。本剤は、ソマプシタン(遺伝子組換え)を有効成分とする週1回投与の成長ホルモン製剤であり、本邦において、2021年1月に「成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)」の効能・効果で承認されています。
 本申請の適応疾患である骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症(小児GHD)に対する標準治療は成長ホルモン補充療法であり、従来の成長ホルモン製剤は1週間に6~7回の皮下投与が必要です。連日の注射は患者やその保護者などの負担となっていることから、週1回投与の成長ホルモン製剤は、注射回数を減らすことでこれらの負担を軽減させることが期待されます。
 本剤は、成人成長ホルモン分泌不全症の適応にて、2020年8月に米国で、2021年3月に欧州で承認されています。また小児GHDの適応については、2023年4月に米国で承認され、2023年5月現在、欧州では審査中です。
 本邦では、小児GHDに対する週1回投与の成長ホルモン製剤として、2021年11月に御審議いただきましたエヌジェンラ皮下注に続き、2剤目となります。本品目の専門協議では、資料No.12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
 有効性については、審査報告書19ページの表15を御覧ください。成長ホルモン製剤で未治療の小児GHD患者を対象に、国際共同第III相試験が実施され、主要評価項目である投与52週時の年間成長速度について、週6~7回投与の既承認成長ホルモン製剤であるノルディトロピンに対する本剤の非劣性が示されました。また審査報告書20ページの表16に示しました身長SDスコア等の副次評価項目についても、本剤群とノルディトロピン群で同程度の改善傾向が認められました。以上の結果等から、本剤の有効性は示されていると判断しました。
 安全性については、審査報告書25ページの表25を御覧ください。こちらでは、国際共同第III相試験における有害事象の発現状況を示しております。臨床試験において認められた主な有害事象は、週6~7回投与の既承認成長ホルモン製剤を投与した際に認められる既知の事象であり、ノルディトロピン群と比較して、本剤群で新たに懸念すべき事象は認められませんでした。糖代謝障害や新生物等の個別の事象について検討した結果も踏まえ、既存の成長ホルモン製剤と同様に、適切な注意喚起を行うことで本剤の安全性は管理可能と判断しました。
 以上のような機構での審査の結果、既承認の成長ホルモン製剤と同様に「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症」を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。なお、小児の骨年齢の評価は手の骨X線画像を撮像し、Tunner-Whitehouse2(TW2)法等を用いて行われますが、骨端線の閉鎖は骨端骨と骨幹端の間隙(骨端線)が消失することをもって確認されます。投与継続の判断にあたっては、既承認の成長ホルモン製剤の使用時と同様に、骨年齢の評価に加えて成長速度等も考慮されると考えております。
 本剤は、新効能及び新用量医薬品としての申請であるものの、既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上であることから、再審査期間は残余期間である令和11年1月21日までと設定することが適切と判断しております。また、ソグルーヤ皮下注15mgについて、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問はございますでしょうか。いかがですか。ございませんか。
 機構の方、デバイスの御説明もしていただくことは可能ですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。5mg製剤と10mg製剤が、成人の効能で既に承認をされており、15mg製剤についても5mg製剤と10mg製剤と同じデバイスになります。デバイスは、同じ製造販売業者のインスリン製剤で用いられているフレックスタッチと同じようなものになっております。
○森部会長 分かりました。特にそのほか、御質問はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきたいと思います。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
○合田委員 賛成します。
○森部会長 特に御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題3に移らせていただきます。矢野委員におかれましては、薬事分科会審議参加規定第6条に基づきまして、議題3の審議の間、当該利用資料についての御発言を御遠慮いただくこととなっております。
 では、議題3につきまして、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題3、資料No.3、医薬品フェブリク錠10mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。本剤は、フェブキソスタットを有効成分とする痛風、高尿酸血症に対する経口投与用製剤であり、本邦においては、2011年1月に「痛風、高尿酸血症」を、2016年5月に「がん化学療法に伴う高尿酸血症」の効能・効果で成人の用法・用量が承認されています。
 高尿酸血症は、長期間持続することにより関節滑膜に尿酸塩結晶が析出し、その結果として痛風関節炎が生じます。血清尿酸値が高いほど関節内の尿酸塩結晶の沈着が進行しやすく、将来の痛風関節炎の発症率が高いことから、成人においては、痛風関節炎の発症抑制を目的として本剤が投与されています。小児の高尿酸血症・痛風の病態は成人と大きな違いはないと考えられており、本邦における医療現場においては、小児の高尿酸血症患者においても本剤を含む尿酸降下薬による治療がなされている実態があること等から、今般、申請者により本剤の小児患者を対象とした臨床試験の成績等を基に、小児の用法・用量を追加する承認申請がなされました。
 海外においては、本剤は、成人の痛風に係る効能・効果で欧米を含む80以上の国又は地域で承認されていますが、小児での用法・用量が承認されている国又は地域はありません。本品目の専門協議では、資料No.12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。それでは、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
 まず、有効性につきまして、審査報告書10ページの表5を御覧ください。小児の痛風、高尿酸血症患者を対象とした非盲検非対照の国内試験が実施されました。主要評価項目とされた投与開始26週時の血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成割合は63.3%であり、95%信頼区間の下限値43.9%は、事前に設定された有効性の基準値30%を上回りました。また、副次評価項目とされた血清尿酸値のベースラインからの変化率についても成人の痛風、高尿酸血症患者を対象として実施された臨床試験の結果と大きな違いは認められず、小児の痛風、高尿酸血症患者でも、成人患者と同程度の血清尿酸値の低下が期待できるものと判断しました。
 安全性について、審査報告書11ページの表7を御覧ください。小児の痛風、高尿酸血症患者を対象とした試験においては、重篤な有害事象は認められず、認められた事象からも、成人患者で認められた安全性プロファイルと異なる傾向は認められませんでした。したがって、既存の添付文書の注意喚起を行うことで本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上のような機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は、新用量医薬品であることから、再審査期間は4年に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、先生方から御質問、御意見等はいかがでしょうか。特段、よろしかったでしょうか。
 では、私から一点だけ、添付文書の記載整備に関するお願いが2か所あります。項目に関しましては、8.3の項目と、関連して15.1に関する所ですが、いずれもフェブキソスタットの薬剤がアロプリノールとの比較試験において、心血管イベントに関する評価がされているという成績を示したものですが、これが成人に限定しているので、今回は小児の適応症も含めるということになりますので、8.3と15.1については、成人ということを分かりやすく追記していただけませんでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただき、ありがとうございます。御指摘いただきましたとおり、添付文書に記載された試験については成人を対象とした試験となります。今回は小児の用法・用量を追加する申請となりますので、成人を対象とした試験であることを、添付文書の8.3項及び15.1項に追記させていただきたいと思います。
○森部会長 そのほかに、先生方から御質問、御意見等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。それでは議決に入らせていただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
○合田委員 賛成します。
○森部会長 はい。特に御異議がないようでございます。それでは承認を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題の5に移らせていただきます。議題5につきましては、事務局から概要説明をお願いします。御準備、お願いいたします。
○事務局 それでは、議題5、希少疾病用医薬品の指定の可否について、御説明いたします。資料5-1を御覧ください。今回から、このまとめ資料に基づき御説明させていただきますが、今回は1品目のみですが、こちらを御覧ください。
 対象品目は「Mavacamten」、申請者は「ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社」、予定効能効果は「肥大型心筋症」です。患者数は4,481人と推計されています。心筋症は構造的及び機能的異常をきたす心筋疾患であり、このうち、肥大型心筋症(HCM)は、高血圧等の心疾患や全身性疾患などの原因がないにもかかわらず、心室(左室)肥大をきたす慢性の進行性疾患であり、左室流出路の閉塞有無により閉塞性HCMと非閉塞性HCMに大別されます。現在、肥大型心筋症の。
○森部会長 事前評価報告書を参考にすればいいのでしょうか。
○事務局 そうですね。参考には、資料5-2を参考にしていただければと思っております。
○森部会長 はい。
○事務局 現在、肥大型心筋症の適応を有する治療薬は存在せず、症状緩和を目的とした対症療法が中心です。心筋サルコメアの活動亢進を直接抑制する本剤は、HCM患者における症状や運動能力の改善に寄与すると期待されております。
 本剤は、oHCMについては、2022年4月に米国において症候性oHCMの機能及び症状の改善に係る効能・効果で承認されており、国内第III相試験を実施中です。nHCMについては、海外第II相試験が完了しており、有効性が示唆されたことを踏まえて、国際共同第III相試験を実施中です。
 これらの結果から、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明をどうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等がございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
○合田委員 賛成します。 
○森部会長 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、報告事項に移らせていただきます。報告事項1~4について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、報告事項について御説明いたします。資料のNo.6としてまとめた概要資料を御用意しておりますので、こちらに基づいて御説明させていただきます。
 まず、議題1、資料7です。対象品目は、「グロウジェクト皮下注」、申請者は、「JCRファーマ株式会社」で、申請の概要は、「骨端線閉鎖を伴わないSHOX異常症における低身長」の効能・効果の追加です。
 この申請の概要です。まず、SHOX異常症についてですが、SHOX異常症は性染色体上に位置する擬常染色体領域内に存在する骨成長及び骨形成を制御するSHOX遺伝子の変異により機能喪失を生じる先天性の疾患とされています。SHOX異常症と低身長の症状の類似しているターナー症候群の主徴の一つである低身長もSHOX遺伝子の欠失がその一因とされています。
 本剤の有効性について簡単に御説明させていただきます。試験開始12か月後の暦年齢相当身長(SDS)のベースラインからの変化量を主要評価項目とした国内無作為化比較試験が行われており、本剤投与群と非投与群の群間に統計学的な有意差が認められています。また、安全性については、試験開始12か月後までに発現した主な有害事象には、本剤群と対照群で明らかな違いは認められませんでした。
 続きまして、議題2「リンヴォック錠」について御説明いたします。申請者は「アッヴィ合同会社」で、申請の概要としましては、「クローン病の寛解導入及び維持療法」となっています。こちらについても有効性を簡単に御説明いたします。まず、導入期の有効性については、12週時の臨床的寛解率及び12週時の内視鏡的改善率を主要評価項目とした二つの国際共同第III相試験において、プラセボに対する本薬45mgの優越性が検証され、日本人集団においても全集団と同様の傾向が認められました。
 また、維持期の有効性については、52週時の臨床的寛解率及び52週時の内視鏡的改善率を主要評価項目とした国際共同第III相試験において、プラセボに対する本薬15mg及び30mgの優越性が検証され、日本人集団においても全集団と同様の傾向が認められました。
 安全性については、導入期及び維持期における本薬群の有害事象の発現について、プラセボ群に比べ、臨床的に問題となる傾向は認められませんでした。
 続いて、議題3、資料9について御説明いたします。品目は「パルモディアXR錠」です。申請者は「興和株式会社」で、申請の概要としては、1日1回投与が可能な製剤として、「高脂血症(家族性を含む)」の効能・効果で申請がなされたものです。
 こちらについても少し補足的な説明をさせていただきます。審査報告書の資料9の24ページを御覧ください。24ページ下部の「1.3 安全性について」の項において、承認製剤の製造販売後臨床試験(PROMINENT試験)において、プラセボ群と比較して本薬群で静脈血栓症の発現割合が高かったこと等を踏まえて、ペマフィブラートの投与によるリスクとして、静脈血栓症についての注意喚起の要否を引き続き検討する旨を記載しております。この検討状況について補足させていただきます。既に、この試験の総括報告書の提出を受けており、当該試験以外での発現状況等も含めて精査を開始しており、肺塞栓症及び深部静脈血栓症に関しては、添付文書において情報提供を行う方向で検討を進めているところです。
 ここまでの3品目については、機構における審査の結果、この3品目を承認して差し支えないと判断しております。
 続きまして、議題4、再審査結果について御報告いたします。今回、御報告する品目は、こちらの2品目です。資料10-1として「リオナ錠」、資料10-2として「ボトックス注用」です。いずれの品目についても機構における審査の結果、用法・用量、効能・効果のいずれについても変更の必要はない「カテゴリー1」と判断しております。 以上です。
○森部会長 御説明いただきました。議題1、2、3については、製造販売承認の一部変更に関する、若しくは製造販売承認に関する議題でした。一つずつ、先生方から御意見がありましたらお伺いします。
 まず議題1について御意見はありますでしょうか。特段ありませんでしょうか。では、議題2のリンヴォックについて、先生方から御意見、御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、パルモディアXR錠は新規ですが、これは従来のパルモディアを徐放化したXR錠ですが、これに関して御質問、御発言はありますでしょうか。先ほどの、本剤の安全性に関する追加の情報として、『The New England Journal of Medicine』の2022年11月24日刊行の論文がありましてペマフィブラート即放錠は、中性脂肪低下作用に関する心血管リスクと関連した論文が報告されております。有効性に関する記載に加えまして、安全性に関する記載がなされており、静脈血栓、それから肺塞栓、深部静脈血栓症の発症数並びに発症頻度がプラセボと比較され、今、申し上げた3疾患について、いずれもハザード比が2を超えているということで注意喚起されている内容でした。
 本説を踏まえまして、PROMINENT試験において、安全部の方で情報収集をしていただき、今後、添付文書で注意喚起する内容として検討されているという現状を確認した次第です。今回のパルモディアXR錠について、臨床試験の行われた範囲では、私も確認いたしましたが、実際の臨床試験の被験者の方々で、血栓症の発症例は確認されていないということですが、いかがでしょうか。機構の方も分かりますか。機構の方に聞いてもよろしいでしょうか。
○事務局 そうですね。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。部会長から御説明いただいた内容のとおりです。
○森部会長 これは、審査報告書の表13でよろしかったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 該当する表はそちらで、事象としては発現しておりません。
○森部会長 表13でよろしいのですね。発現されてないということでした。したがいまして、その発生頻度は、海外の報告も含めて、頻度が決して高くないものですが、重要な安全性情報ということが考えられますので、今後、既存のパルモディア錠並びにパルモディアXR錠も含めて注意喚起が追加される可能性があるということを確認したところです。この点に関しましても、特に委員の先生方から御質問等はありませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 そして、議事内容について、委員の先生方から特に追加の御発言、御質問はありますでしょうか。特段、よろしいですか。それでは、議題1~4について、先生方から追加の御発言、御質問がないということですので、御確認いただいたものとさせていただきます。
 本日の議題は以上です、事務局から御報告はありますか。
○事務局 次回の部会は、令和5年7月24日(月曜日)午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 それから、本日の部会をもちまして、合田委員が御退任なされることとなられました。合田委員から御挨拶をお願いできればと思います。
○合田委員 突然なので。何年やりましたかね。第一部会は3年ちょっとですかね。ですけど、私は国立衛研の、この間までは所長だったんですが、今年の3月に定年退官しまして、今は名誉所長ということで、こういうような医薬品の直接的な審査の部分からは退官させていただこうということで、今回で後任の方に譲ることに致しました。この委員会に出まして、本当に医薬品の承認審査というのが、どのように行われているかということの舞台裏ですね、非常に精緻に、皆さんの議論の中で医薬品の承認審査が行われていることを学ばさせていただきました。そういう意味では、大変勉強になった委員の期間であったと思います。皆様、どうもありがとうございました。以上です。
○森部会長 合田委員の長年の本会に対する御貢献に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
 それでは、本日はこれで終了させていただきます。長時間の御審議どうもありがとうございました。失礼します。
( 了 )
 
 
 
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)