2023年8月9日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第50回) 議事録

日時

令和5年8月9日(水)9:29~10:59

場所

中央労働委員会 労働委員会会館 講堂

出席者

今村主査、酒井構成員、関口構成員、土井構成員、土橋構成員、西岡構成員、三宅構成員、宮崎構成員、安井構成員

議事

議事内容
○政策立案・評価担当参事官室室長補佐
 定刻になりましたので、ただいまから第50回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WGを開催します。事務局の政策立案・評価担当参事官室室長補佐の岡崎です。よろしくお願いいたします。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。今回の会議は対面参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリット形式となっております。オンライン参加の先生の皆様への御連絡になりますが、会議中は、御自身が御発言される場合以外はマイクをoffにして、音声ミュート状態にしていただくようお願いいたします。また、質疑応答などの際に御発言の希望がある場合には、WEBEXの「挙手」アイコンをクリックいただくか、チャット機能を使って発言の希望がある旨を事務局に御連絡ください。事務局にて御発言の希望を確認した後、発言者を主査が指名しますので、主査から指名を受けましたらミュートを解除し御発言ください。御発言が終わりましたら再度、マイクをミュートにしていただくようお願いします。
 本WGの出席状況について御報告します。本WGは今村主査、酒井構成員、関口構成員、土橋構成員、西岡構成員、宮崎構成員、安井構成員が会場での御参加、土井構成員、三宅構成員がオンラインでの御参加、梅崎構成員が欠席です。なお、土井構成員におかれましては若干、オンライン会議への入室が遅れているようです。
 続きまして、本日の資料について説明します。本日の資料に関してはお手元のタブレットに収納してありますので、そちらを御覧ください。オンライン参加の構成員の方々におかれましては、お手元に事前にお送りしている会議資料を御準備ください。本日の資料は資料1及び資料2、参考資料が1~6までとなります。資料の不足などがありましたらお知らせください。それでは、今村先生、議事の進行をお願いいたします。
 
○今村主査
 おはようございます。今回は労働政策研究・研修機構につまして、令和4年度業務実績評価に係る意見聴取を行うこととなっております。まず、法人から各評価項目における評定の根拠について重点的に説明いたしますので、評価の内容を中心に、皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。本日の会議は、おおむね1時間半を予定しております。この後、長丁場で幾つか続きますので、円滑な議事運営に御協力いただきますように、どうぞよろしくお願いします。
 それでは早速、議事に入りたいと思います。まず、労働政策研究・研修機構の令和4年度業務実績評価について御議論いただきたいと思います。はじめに、法人から簡潔に御説明いただき、説明が終わってから質疑応答という流れで進めていきたいと思います。それでは、どうぞ説明をお願いいたします。
 
○労働政策研究・研修機構総務部長
 おはようございます。労働政策研究・研修機構の総務部長です。お手元の資料の「評価の要約」と書いてある資料2-1に基づき、御説明いたします。令和4年度については、私ども機構の第5期の中期目標期間の初年度に当たります。2ページは、当機構の概要です。役員が5名、職員が100名弱の法人で、労働政策に関わる総合的な調査研究を行うとともに、ハローワーク、監督署といった労働行政の職員に対する研修を埼玉県朝霞市にある労働大学校で実施をしております。
 3ページ以降が、評価項目ごとの資料です。評価項目としては、業務関係が1-1、労働政策研究、以下4項目あります。管理関係が2項目ということで、計6項目項目を立てております。当機構としての自己評価では、当機構の中核業務であります1-1の労働政策研究をA、その他の5項目はBとしております。以下、順次御説明をいたします。
 まず、労働政策研究についてです。飛んで恐縮ですが、6ページの上半分を御覧ください。労働政策研究は、政策立案の基礎となる幅広い分野について、中長期的な視点に立ち、体系的に研究を行うプロジェクト研究を、Ⅰ~Ⅵまでの6テーマ、それから①~⑫までの12のサブテーマの下、実施をしております。これに加えて、そのときどきの政策ニーズに応じて、厚労省からの要請に基づき実施する課題研究、緊急調査を実施しております。
 3ページに戻ります。Ⅱ指標の達成状況とあります。この評価項目については、4つの数値による指標が設定をされております。まず①です。各専門の研究者の先生方によるリサーチ・アドバイザー部会の外部評価で、成果ごとにS評価は3点、A評価は2点といった評価を頂き、その平均点を2.0以上とすることが目標となっております。これに対して、令和4年度の実績は2.40となっております。
 ②です。先ほど6ページで御覧いただいた①~⑫までのサブテーマ12本について、厚生労働省から政策貢献が期待できるかの評価を受け、12テーマの全てについて期待できるとの評価を受けております。
 ③です。個別の研究について、労働政策の企画・立案及び実施に繋がったかについて、厚労省の担当課に評価を頂き、1本を除き繋がった旨の評価を受けました。なお、残りの1本についても、現時点では具体的にどこかで活用ということが決まっているものではないが、今後活用の可能性もある旨のコメントもいただいております。
 ④です。当機構では、毎年度有識者、すなわち学識経験者、地方行政官、労使に対するアンケート調査を行っております。この調査において、調査研究成果物について、大変有益3点、有益2点といった有益度の評価を頂きました。実績は2.55となり、回答の半数以上が大変有益という高い評価を頂きました。
 4ページを御覧ください。Ⅲ、評定の根拠・理由です。数値目標の達成については、先ほど申し上げた4つの指標の中で120%以上の達成度とすることが算術的に不可能な指標もある中で、全ての指標において達成度が110%以上となっており、とりわけ先ほど最初に御説明した①リサーチ・アドバイザー部会の外部評価では、専門の先生方から高い評価を得ることは通常難しいところ、達成度120%という高い評価が得られたところです。
 加えて表のその下ですが、労働政策の企画立案・実施等への貢献などを根拠・理由として、掲げておりますが、具体的には6ページ以降で説明をさせていただきます。6ページを御覧ください。上半分は、先ほど御覧いただいたものですが、このページの下半分はプロジェクト研究と厚労省の要請による研究が労働政策の企画立案・実施等にどのように貢献しているか、令和4年度の研究から拾って整理をしたものです。労働市場政策、人材育成等に分類をしておりますが、労働政策の幅広い分野で貢献できたと言えるものと考えております。
 かいつまんで御説明をいたします。まず労働市場政策では、労働市場インフラとして期待をされております職業情報サイト、日本版O-NETのコンテンツの充実に大きく貢献をいたしました。人材育成については、デジタル人材について従前の調査・研究成果のレビューを行ったほか、在職者の能力開発が注目をされる中、企業内の能力開発、キャリア支援の実態把握を行いました。
 その下の第一線の現場力向上としては、ハローワークの職業紹介業務でのナッジ活用を進める動画を作成し、提供いたしました。右側の労働条件では、議論が続いている解雇に関する紛争解決制度についての審議に資するため、裁判所の記録の閲覧により労働者や企業の属性、解決内容等を迅速に調査をいたしました。その他、賃上げ、新型コロナへの政策対応についても記載をしておりますが、研究成果については厚労省をはじめとする審議会、研究会等で数多く活用をされたところです。
 次に7ページです。左上は、厚生労働省との連携・EBPM支援等です。厚労省幹部との意見交換等により、政策ニーズの把握等に努め、また当機構の研究員が厚労省等の審議会・研究会等に参画する等としているほか、2つ目の■ですが、厚労省でEBPMを進めるための若手・中堅職員によるプロジェクトチームができておりますが、当機構としてセミナーを開催し、厚労省職員とのインタラクションにより、その分析能力アップを支援しております。省庁でのEBPM推進が求められる中、大きな貢献をしているといえるものと考えております。
 右の第4期の総括等です。研究成果が今後の活用につながるよう、まず第4期のプロジェクト研究の集大成としての書籍の刊行を行い、その下ですが、当機構がコロナ禍で実施し、各方面から高く評価を頂いてきた企業調査・個人調査について、その総括として、令和4年度は内外の研究者による二次分析を行い、ワークショップの開催や書籍の刊行等を行ったほか、個票データをデータアーカイブで順次提供すべく準備を進めました。なお、データアーカイブでの提供については、先月以降可能なものから開始をしております。
 続いて、下の共同研究の促進です。NHKとの共同研究を行い、NHKスペシャル「中流の危機」で紹介をされ、大きな反響があったほか、右のOECDの辺りですが、AI等が職場に及ぼす影響に関するOECDの8カ国共同研究に参加するなどいたしました。
 続いて8ページです。左側は研究手法の工夫等として、予算も厳しい中、既存の調査や行政記録情報等の活用を図るほか、基幹的なアンケート調査の継続実施、新たな企業・個人連続パネル調査の開始等、様々な工夫等をしながら研究を進めるとともに、このページの右ですが、国際的な研究交流等にもコロナ禍の様々な制約の下ではありましたが、取組を進めたところです。
 以上、労働政策研究については、数値目標の達成状況に加え、EBPMへの支援等を含めた労働政策の企画立案・実施等への幅広い貢献、質の高い研究成果を生み出していくための共同研究への積極的な取組や研究手法の工夫等、定性的な要素も勘案し、自己評価はAとしております。
 冒頭申し上げましたとおり、この労働政策研究以外の評価項目については、自己評価は全てBとしております。順次、簡潔に御説明をいたします。
 9ページ以降は、評価項目1-2、労働事情・労働政策に関する情報の収集・整理です。Ⅱ指標の達成状況ですが、①②の国内及び海外の情報収集成果の提供件数については、目標をクリアしております。また、③~⑤は、第5期に新たに設定をした指標ですが、労働政策研究でも出てきた有識者アンケートにより、ホームページのそれぞれ国内労働事情、海外労働情報、統計情報について、有益度を回答いただくもので、いずれも目標をクリアし、高い評価を頂いております。
 11ページです。左上の国内労働事情の収集・整理については、労使関係者等とのネットワークを活用し、リスキリング・リカレント学習等、労働分野の最新トピック等についての実態把握と情報提供を行うとともに、厚労省の要請に基づき、最低賃金の審議で活用される調査や、副業・兼業等の重要なテーマについての調査を行いました。
 右上です。海外労働事情の収集・整理については、海外の研究者・研究機関等とのネットワークを活用して情報収集を行ったところ、例を挙げますと諸外国の雇用維持政策に関する動向調査と書いてあります。これは、日本でいえば雇用調整助成金に相当するものですが、4カ国の政策動向を調査をした結果が、厚労副大臣をトップとするプロジェクトチームの報告書に掲載される等、大きく貢献をいたしました。また、諸外国の国家公務員の働き方についても情報提供を行いました。
 左下です。統計データの収集・整理については、労働関係統計の各種データを継続的に収集・整理・提供したほか、第5期の中期目標で取組の強化が求められているデータアーカイブの利用促進に向けて、新たなデータ公開の本数、これは第4期の年平均は11本であったところ、28本となったほか、データを提供する形式や分野別等でのデータリストの追加、周知の工夫等を行ったところです。
 続いて12ページからです。評価項目1-3、労働政策研究等の成果及び政策提言の普及です。12ページのⅡ指標の達成状況ですが、メールマガジン、労働政策フォーラムの回数及び有意義度評価等に関し、定量的指標が設定されているところ、いずれも目標を達成しております。14ページです。左上のメールマガジンでは、機構の調査研究成果、行政、労使団体の動向等の最新のニュースを、前年度比1,500人余り増の約4万7,000人の読者に提供いたしました。
 その下の労働政策フォーラムについては、「転職と中途採用について考える」「働く人のキャリア支援を考える」といった社会的に関心の高い政策課題をテーマとして取り上げ、引き続きオンラインにより調査研究の成果を活用しつつ先進事例を交え、議論が深まるようプログラムを工夫して実施し、高い評価を得ました。
 右上です。ホームページでは、多様な情報を発信しておりますが、令和4年度は賃金引上げ、日本版O-NETについて特設サイトを右の絵にあるような形で開設し、関連する情報をまとめて掲載する等の工夫を行いました。右下の、『日本労働研究雑誌』、東京労働大学講座についても、高い評価を得たところです。
 続いて、15ページからです。評価項目1-4、労働行政担当職員その他の関係者に対する研修です。15ページのⅡ指標の達成状況ですが、①②は実施をした研修コースについて、修了後半年から1年程度のタイミングで、それぞれ研修生から業務に生かせているか、研修生の上司から役に立っているかの事後評価を受けるもので、実績値に記載のとおり高い評価を得ました。また、③④は、研究と研修の連携に関わる指標で、いずれも目標をクリアしております。
 16ページです。左半分ですが、労働大学校ではコロナ禍の中で集合研修を行うことが困難となり、オンラインを活用した研修に取り組んできたところです。令和4年度は、2年ぶりに集合研修を再開したところです。コロナ禍での実践をいかし、知識系は事前に「オンライン」、班別討議や事例研究は「集合又はオンライン双方向」と、オンラインと集合のハイブリッド方式による効果的な研修の実施に努めました。また、他の独法など、様々な外部機関による講義も多く組み込んでおります。感染防止対策には細心の注意を払い、集合研修中止の事態に至ることなく全日程を修了いたしました。
 右側です。研究と研修の連携ですが、これは研究と研修のシナジー効果が生み出せるよう取り組んだところです。まず、労働行政オンライン公開講座ですが、これは令和3年度に準備を進めたもので、当機構の研究員が研究成果を踏まえた講義動画を作成し、それを狭義の労働大学校の研修生だけではなく、地方労働行政職員であれば誰でも受講できることとし、受講者アンケートの結果を研究員にフィードバックする仕組みとしてスタートさせたところです。また、令和4年度は延べ94人の研究員が研修に参画をいたしました。オンライン公開講座等を含めて、研究員が参画した研修は受講者アンケートでも高い評価を得ております。
 最後に、17ページ以降です。管理関係の2つの評価項目を、まとめて御説明いたします。Ⅱ指標の達成状況ですが、経費の節減については、第4期の最終年度と比べて5年間で一般管理費、業務経費をそれぞれ15%以上、5%以上縮減との目標が立っております。この表の数値は予算ベースの数字ですが、一般管理費については5年間で15%のところを、1年間で3%と、求められる水準はクリアしております。
 一方、業務経費については、雇用保険二事業の財政が雇用調整助成金等のコロナ対策の実施により逼迫していることを受けて、令和4年度は令和3年度と比べて予算ベースで約2割の減となり、法人としてはこの与えられた予算の枠内での業務運営となったものです。
 続いて、20ページの左上です。令和4年度は電気料金の高騰、それから労働大学校の集合研修再開の影響などで、光熱水料の負担が増加するなど、厳しい状況の中、予算の範囲内での計画的な執行を図りました。
 18ページに戻ります。内部統制、組織運営・人事管理等の評価項目2-1、それから評価項目3-1の財務関係事項を通じて、総じて適切に取り組んだものと考えております。1点だけ、18ページの左下の部分の2.の最初の○に書いてあります総合企画チームの設置について触れます。これは、第5期の開始に当たり、機構の広報のあり方について集中的に検討を行うために設置したもので、組織横断的かつ世代横断的なメンバーにより活発な議論を行いました。これにより、組織全体の士気高揚など、将来につながる効果を生み出すことができたのではないかと考えております。ご説明は以上です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
○今村主査
 それでは、この令和4年度の実績評価について、皆様から御意見、御質問等がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。オンラインで参加の構成員も適宜お手をお挙げいただくなど、あるいはチャットに書き込んでいただいても結構ですので、御発言ください。安井構成員、お願いします。
 
○安井構成員
 御説明いただきまして、ありがとうございました。タイムリーなアンケート調査ですとか、関心が高まっているトピックに関するリサーチを提供していただいておりまして、私の所属する民間シンクタンクでも、レポート等を活用させていただいております。そういった意味で、一番最初の労働政策研究の評価Aというのは、私は違和感はないところです。その上で3点ほど簡潔に質問させていただきます。
 4ページ目の所で、「厚労省EBPM若手・中堅プロジェクトチームと連携してセミナーを開催」とございます。EBPMへの支援ということだと思うのですが、セミナー資料等、内容はどういったものなのかというところなのですが、恐らく大学とか大学院の講義形式のセミナーに終始しているように推察されるのですが、EBPMを推進していくためには、厚労省の職員が、自らデータ分析能力を高めていく必要があるのではないか。その点、ただ単に有識者を呼んで講義してみらったり、JILPTから研究者の方が来て教えてもらったりするだけではなくて、厚労省の職員がStataやPythonなどの分析ツールを使って、雇用動向調査や賃金センサスとか、毎勤統計など厚労省が所管している統計の個票を用いて分析をしてみることが必要だと思います。そういった支援に今後シフトしていくということはないのでしょうか。これが1点目です。
 2点目です。6ページ目の人材育成の所で、デジタル人材の能力開発、キャリア形成に関する調査研究がありまして、こうしたテーマは非常に重要だと思います。今後、是非求職者支援訓練におけるIT分野の訓練の問題点等についても分析していただいて、改善策を提示していただきたいと思っております。昨年度からだったと思うのですが、地域職業訓練開発推進協議会というものが新たに発足しまして、その議事録とか資料などを拝見いたしますと、求職者支援訓練就職状況の実践コースのIT分野は、応募者が非常に多いものの就職率が非常に低いという奇妙な状況になっております。このままですと、国がデジタル人材を育成しようと言って、それに呼応して人々が求職者支援訓練でIT分野を学んでいるにも拘わらず、実際には学んだあとも就職できないとなると、これはどういうことだということになり兼ねませんので、そういった問題について分析していただきたいと思っております。
 最後になりますが、8ページ目の真ん中の所に「新たな企業・個人連続パネル調査の開始」というものがございます。今度こそ、集計後、すぐにミクロデータを一般の人も使えるようにしていただきたいと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
 
○労働政策研究・研修機構理事(志村)
 理事の志村でございます。いつもお世話になっております。1点目と2点目のEBPMとDXの関係について、答えさせていただきたいと思います。
 EBPMセミナーの中で実際に担当者が手を動かしてというようなことで、EBPMにつきましては、前の樋口理事長のときから問題意識は強く打ち出しておられまして、3年、4年は実際に取り組んだし、本省にも当然EBPM担当部局があって、省庁のEBPMの動きなども教えていただけるのですけれども、当機構は正に労働政策を担当する研究員などがおりますので、そこの問題意識とうまくマージさせるような形でやってきております。ただ何分、手探りみたいなところが結構ございました。
 私自身も、EBPMセミナーでお話をするというようなこともございました。私自身も行政から出向しているという関係もございまして、訓練だとか、そういったようなものについての、実際には本省の部局の若手が手を動かして、例えば介護労働に関して、ハローワークデータを使って行った分析のときには、私のほうからもそれの前提となる、いわゆる訓練制度の問題点とか、あるいはデータ傾向で出やすいような、実務面から見た動作と言うか、そういったようなものについての説明をさせていただいて、また研究は研究員で、プロパーの研究は研究員で参加しておりまして、これは1つの例でございますけれども、せっかく行政のデータと一般的な統計データも含めて、そこが実際の労働行政の文脈で生きたものとなるようにということで、この場では詳しく申せませんけれども、努力しているというのが1点でございます。
 あと、求職者支援訓練の問題点ということで、これも私も求職者支援訓練の動向を見させていただくと、確かにWebデザインとかIT訓練というのは、ハローワークの現場では非常に希望者が多いという状況にあります。
 就職率ということになると、ハローワークのやるWebデザインの訓練というのは、それを受けた瞬間にいわゆるベンダー企業にすぐに人材として就職できるというものではございません。各地、いろいろな500近くのハローワークの就職あっせんの現場があります。そうすると、必ずIT専業の企業ばかりではなくて、地元の中小企業で、その中の事務の中で、この人はWebデザインを受けたのかというようなことで、多少そういったようなことも評価して雇っていこうというようなことで、結果としてポイントポイントの就職につながっていっているという現状があります。
 ですから、求職者は事務の訓練を希望するのですけれども、実際には受けた所の求人内容とマッチするというのはなかなか難しいということがあって、そういったようなところで言うと、事務での就職率のところが、例えば50%とか60%というところです。
 同じ訓練で違う例を出しますと、介護の訓練などは80%、90%なのです。ここは、それは求職者の意向自体が、介護に就職しようということで明確な面もありますし、雇う側も求職者支援訓練で培った能力を評価しやすいという点もあります。その2つがマッチすると、高い就職率につながっているようなこともございます。
 そういったようなことも、JILPTの中でのいろいろな労働政策だとか研究だとかに引き寄せて、また、実際のハローワークの求職者支援の現場だけではなくて、いわゆる一般的な能力開発といったような点も含めて、求職者支援訓練のDXのいろいろな企業の意識調査などもやっていっています。
 そのようなところも合わせて、本省の政策の貢献ともつなげていければなというのは思っています。
 
○労働政策研究・研修機構理事(内田)
 研究担当理事の内田でございます。前回、コロナのパネル企業・個人調査につきましては、データを何とか早く出すようにという御指摘を頂いておりましたが、コロナのときは年に3回から4回実施しておりましたので、それぞれの実査後、データの整理をし、研究会参加者による分析をしておりました結果、今、データを公開しているところで、余りに遅いという御指摘だと思います。
 そういう中で、今回、新設をしました企業・個人パネル調査については、両方とも既に第1回目が終わっており、御指摘を受けまして、1回目からきちんとデータの整理をしつつ、今年度に2回目をどちらも実施する予定で進めております。
 ただ、パネル調査ですので、今年度に2回目が少なくとも終了した後に、研究会参加のメンバーがそれぞれ何らかの分析・公表をした後、整理は進めておりますので、できる限り早く提供させていただければと考えております。
 
○安井構成員
 パネルデータについては、整理でき次第、速やかに民間にも公表していただけるということですね。
 
○労働政策研究・研修機構理事(内田)
 そうです。ただ、パネルでございますので、少なくとも2回実査後、私どもで分析をした後ということになりますが、1回目はデータがきれいに整いつつありますので、大丈夫かなと思っております。
 公開につきましては、私どものデータアーカイブの中で公開させていただきたいと思っております。
 
○安井構成員
 ありがとうございます。もちろん、リサーチ・クエスチョンを基にして調査票の設計をしている以上、パネルデータを構築後、すぐにそれ公表したとしても、設計に携わった研究者が最初にアカデミックな分析をできると思います。したがって、すぐに出したらほかの人に取られてしまうということはないと思いますので、パネルデータは公共財でもありますから、是非速やかに外部の者が利用可能になるようにしていただきたいと思います。
 それから、求職者支援訓練の話については、定性的な分析と言うよりも、JILPTに定量的かつ精緻な分析を行ってほしいという、単なる要望ですので、今やっていないではないかとか、そういった批判的な意図はございません。
 EBPMについては、厚労省とJILPTの関係もあると思いますので、厚労省が、そうやってEBPM人材を育てていくということとうまく呼応していけるとよいのかなと思います。
 
○労働政策研究・研修機構理事長
 理事長の藤村でございます。2番目の御質問についてお答えいたします。現職に就く前から、中央の協議会、東京都の協議会にそれぞれ参画しておりまして、議論をしてまいりました。
 安井構成員が御指摘のように、IT分野の希望者は多いのだけれども、それがなかなか就職に結び付かない。これは簡単に言うと、求職者側が習得したITの技術と、求人側が求めるITの技術が合っていない。求人側は割と高いレベルを求めるのです。でも、求職者側は、ワードやエクセルをはじめとした基本的なコンピュータの操作ができれば、それが就職につながるだろうと思って来られるのですが、そこがうまくいかない。
 ですから、求人側が何を求めているかというところの分析をした上で、では、どこまで求職者訓練で提供できるか。ここの分析が必要だと思っておりまして、私もそういう分野の研究をしておりますので、引き続き取り組んでいきたいと思います。
 
○安井構成員
 どうもありがとうございます。求職者支援訓練は、御案内のとおり基礎コースと実践コースに分かれております。実践コースですら低い就職率です。今おっしゃっていたのは、求人側の問題ではなく、訓練において求人側が求める適切なスキルにならないということでしたら、正に訓練の問題ですから、訓練内容の見直しということを是非提言していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
○今村主査
 割り込んで申し訳ないのですが、今の件の一番最初のEBPMなのですが、実は、この間、私、ゼミの学生と具体的商品名で、スタティスタという、オンラインで検索して、こちらの需要に応じてデータが取れるというものを使って、ハイブリッドで、オンラインと対面と全部結んで、データを基にいろいろな政策提言を議論しようと。マーケットリサーチをしたり政策提言をするということをするのですが、以前、私が朝霞の研修で経済学研修というのをやったら、厚労省の官僚職員はこれが経済学の最初で最後だという話を聞きまして、えっーと驚きました。
 つまり、何を申し上げたいかというと、EBPMにおいて経済分析と言うか、いろいろなデータ分析というのはものすごく重要になってくると思うのですが、それは恐らく実践的にデータを活用して、具体的に政策提言の文書化に活用してほしいという意図があると思うのですが、その辺の目的はどのように達成されているのか。今の説明では十分に分からなかったのですが、具体的に政策提言で文書を作成するときに、JILPTが持っていらっしゃるデータを政策提言に使っていただきたいという思いが背景にあると思うのですが、その辺の体制はいかがでしょうか。
 
○労働政策研究・研修機構理事(志村)
 多分、いろいろ行政の職員がいる中でも、JILPTのやっている研究が使われる、大きく分けて政策統括官部局が労働白書とか、そういったようなものを毎年アニュアルにやっているという部分もありますし、あと、JILPTの関係では雇用政策研究会とか、最近は毎年のようにやっていますし、あと、今年は労働力需給推計もやるとか、そういったようなこともありますし、それが課長補佐だとか係長だとかが、各研究会とか、あるいは白書のテーマはどういったことをやっていこうかというような、その場の中で、落とし込んで使っていくというのは、今日この日、何をやっているというのはなかなか説明するのは難しいのですけれども、そういった中で、質を高めながら、そこは連綿とやっていっているのかなとは考えております。
 
○今村主査
 ありがとうございます。どうぞ。
 
○宮崎構成員
 ご説明ありがとうございます。先ほど安井構成員からもありましたけれども、デジタル人材の能力開発などが重要だと思っております。それで、政府の経済財政運営の改革基本方針、骨太の方針2023という閣議決定においても、人への投資というのが重点分野になっていまして、リスキリングとか、成長分野の労働の移動の円滑化というのが非常に重要なテーマになっております。
 ですから、デジタル人材の能力開発と育成というのは多いに研究していただければと思うのですが、その中で例えばなのですが、11ページの海外研究などを見ますと、海外の労働の法制とか、制度の調査をされているのですが、リスキリングとかIT高度人材の育成とか、労働能力の転換というのは、海外ではどういう取組をしているのかとか、そういったことも是非研究していただければと思います。
 また、先ほどの職業能力訓練で、求職者と求人者のITスキルの需給が合っていないようなお話がありましたが、個人的に思うのですが、1回離職した方の職業訓練としてリスキリングを想定されていると思うのですが、辞めないとリスキリングできないという仕組み自体に個人的に違和感がありまして、企業にいたままの状況でも高度IT人材を育成するとか、職業能力訓練をやるという計画を立てる企業に対して、研修をやる所にサポートしていただくというような仕組みがあってもいいような気がしまして、本当にリスキリングをやろうと思ったら、仕事を辞めないとリスキリングができないとなると、辞めた後にどれだけの効果が出るかということが自分で分からないと、辞めようとまで思わないのですが、企業の中で、どんどんIT高度人材を作っていこうというところであれば、辞めなくてもそういう研修を受けられる機会が得られるはずで、将来の失業を予防するための企業サポートも、雇用政策の一環としてあってもいいのではないかと思っていますので、是非そういったところも含めて、海外の事例もよく研究いただいて、政策提言いただければなと思っております。
 
○労働政策研究・研修機構研究所長
 所長の濱口でございます。JILPTの教育訓練に関する研究は外部市場と内部市場と両方やっておりますが、どちらかと言うと、むしろ内部市場に重点を置いておりまして、正に宮崎構成員が言われたような、企業の中でIT人材をどのように育成しているのかを、今までも繰り返し調査してまいりまして、昨日、調査設計について内部で会議をしたところです。
 それを含めて言うと、逆に求職者支援のようなところにやや目が及ばなくなっているところは問題かなというように、先ほど安井構成員のお話を伺って感じたところです。やはりリスキリングというのは、内部と外部の両方を合わせて進めていかなければいけないと思っていますので、正に今、内部におけるIT人材の育成についての調査を進めているところです。海外については、副所長からお話をいたします。
 
○労働政策研究・研修機構研究所副所長
 海外のデジタル、IT人材の訓練あるいは活用については、主に英米独仏という主要先進国の事例を、現段階でどのようにIT人材が育成されているのかを調査しまして、結果を資料シリーズという形で、ホームページにアップしております。
 また、特にデジタル分野の中のAIについては、OECDの8か国で比較調査をOECDの主導でやっているのですが、そこに日本からはJILPTが参画する形で行っています。これについては、全体の結果が取りまとめられた後に、報告書の形で報告させていただきたいと思います。
 
○労働政策研究・研修機構理事(志村)
 1点補足させていただきます。先ほどの海外の話とか、正に研究ベースの話はそうだと思います。ただ、日本は先ほどおっしゃったところの離職者訓練的な重点で語られていましたけれども、企業に勤める人の能力向上、在職者訓練というレベルで言うと、日本では教育訓練給付がありますし、人材開発助成金というような制度で、企業が訓練を行ったときに、その費用を見ていくというものがあります。
 そういったところが、今回のDX推進というようなことでパワーアップされているということがありましたので、JILPTが常に連綿と人材調査をやっていますけれども、そういったときに、本省のほうも雇用保険制度と言うか、一般会計も含めて訓練制度を変えていこうと、特に離職者だけではなくて、当然に在職者もリスキリングということで意識していかなくてはうまくいきませんので、そういったような資格も注入していくようなことでやっていっております。
 あと、もう少し定性的な話なのですが、経産省(独法IPA)のほうも、ITSSのような形で、人材ベースの能力引上げをずっとやってきたのですが、最近はもう少し企業組織内のDX底上げのようなことを意識した評価基準のようなものを変えてきているし、能力開発システムも変えてきているという動きが、昨年末ぐらいにかけて起こってきていますので、厚労省の制度だけではなくて、IPAだとか、一生懸命経産関係の団体などが能力開発とデジタルをやっていますので、そちらの動きもJILPTは研究に取り込んでやっていけないかと努力しているところでございます。
 
○労働政策研究・研修機構理事長
 この3月まで法政大学の社会人向けの大学院で教えておりました。いわゆるビジネススクールです。そちらに来る学生たちというのは、大半が働きながら勉強する人たちです。土曜日、平日の夜ということで、この間、経営系のビジネススクールというのは、なかなか学生数が伸びてこなかったのですが、コロナをきっかけに少し時間ができたというのがありまして、それと同時に働き方改革で、よけいな残業をしなくてもよくなったこともありまして、各ビジネススクールは最近は志願者が増えています。
 こういうことを後押ししているのが教育訓練給付金でして、それがどれぐらい効果があるかというのは、残念ながらまだちゃんとした研究はないかと思います。是非これからそういった点の解明にも取り組んでいきたいと思っております。
 
○酒井構成員
 御説明ありがとうございました。様々な研究が政策につながったとするエビデンスは、非常にすばらしいものだというように思っています。こういった、どういうように政策につながったかということを見える化した例というのは、なかなかほかの研究機関でもないのではないかと思って、非常に感心して見ておりました。
 ですので、この検討政策研究に関しての自己評価に関して、私として異を唱えるものではないのですが、1つ質問させていただきたいのは、一方で研究機関として、労働政策研究の学術レベルの確保とか、質の高い研究ということもうたわれているわけですけれども、今回の説明資料の中で、JILPTでやられている研究が、このように学術的に貢献したのだというエビデンスというのは、具体的にどこを見ればよろしいのでしょうか。
 と言うのは、ほかの機構では、例えばこういう国際的なジャーナルに研究成果が掲載されたということを掲げたりされているわけなのですが、そういうような国際学会での報告とか、学術雑誌への掲載というのは、必ずJILPTさんのほうでも成果があると思うのですが、そういったピアレビューを受けた評価研究といったものの成果に関しては、エビデンスはないのでしょうか。参考資料も見たのですが見当たらなかったので、教えていただきたいと思いました。
 もう1つ、細かい質問で恐縮なのですが、資料9ページの労働事情・労働政策に関する情報の収集・整理という所で、指標①、指標②で、提供件数を指標として掲げられています。私は昨年度までこの評価に参加していなかったので分かっていないというだけなのですが、提供というのは、どういった情報をどこに対して行っているのでしょうか。
 
○労働政策研究・研修機構理事(内田)
 1点目の学会等への貢献というお尋ねですが、資料には記載されておりません。と言いますのは、8ページの評価指標の所を見ていただけますでしょうか。①にリサーチ・アドバイザー部会の外部評価というものがあります。こちらは個別研究成果の評価をしていただいているのですが、加えてその会議におきましては、重点的に、例えば御指摘のありました学会への参加や、学会の役員をしているとか、学会で報告をさせていただいたとか、査読誌に掲載された論文の引用、学会等において受賞したケースとか、国際学会に招待されて報告をしたという件数を、こちらのリサーチ・アドバイザー部会には御報告しているのですが、ページ数の関係もございまして評価指標への対応を中心に資料が作られているものですから、その辺りは落ちておりました。そうした数字につきましては、後ほど御報告を申し上げるとともに、来年度以降はこちらに掲載するようにさせていただきたいと思います。
 
○労働政策研究・研修機構総務部長
 もう1つ、情報提供の件数についての御質問があったと思います。資料2-1の11ページに、国内労働事情と海外労働事情を並べています。例えば国内労働事情の収集・整理の2つ目の所に、「ニュースレター、ホームページ、メールマガジンによる情報提供」というものがございます。ニュースレターというのは、ビジネスレイバートレンドというものを以前は紙ベースで発行していたのですが、今は予算の都合等もありまして、ネットで掲載ということにしております。そういったものを活用したり、ホームページで提供したり、メールマガジンで提供したり、ここに書いてあるようなツールで提供した件数ということで、御理解いただければと思います。
 
○労働政策研究・研修機構研究所副所長
 補足いたします。総務部長から、データの数字の数え方については御説明しましたが、基本的に国内と海外、提供した情報が、これがベースになっておりまして、これが我々のデイリーなワークという形になっています。ここから派生して、いろいろな政策に関するテーマを深めていったりとか、あるいは要請調査につなげていったりということで、これが基本的なデータということになります。
 例えば海外でしたら、その当該の国で起こっている労働政策上のイシュウを追って出します。ただし、その中で日本の政策との比較で、非常に重要になってくるというものが出てくるわけで、こうやって日々フォローアップしている情報の中からそうやって政策研究、あるいは最終的には政策提言という形に結び付けていくような研究のベースとなるものです。
 
○酒井構成員
 提供というのは、何か問合せがあって提供しているのかと思ったのですが、基本的には不特定多数への提供ということなのですね。分かりました、ありがとうございます。
 
○今村主査
 引き続き御意見や御質問等ございましたらどうぞ。
 
○西岡構成員
 御説明ありがとうございました。今、酒井構成員から研究成果について少しお話があったのですが、御説明いただいたリサーチ・アドバイザー部会での評価に関連して私からも質問させていただきます。今回、資料3ページを見させていただくと、S評価のものが2本、A評価のものが3本ということで、この評価はすばらしく、きちんと評価プロセスを踏まれていることもわかりました。ただ研究の中身によって複数年度にわたっている研究があるかと思いますが、JILPTとして今年度報告が計5本というのをどう評価されているのかを、少しお伺いしたいなと思った次第です。
 というのも、いろいろな形で成果というのを公表されているかと思いますが、やはり最終成果物として報告書というのがある程度客観性もあり、内部でも精査されたものだというように私どもは捉えています。それをある程度タイムリーに報告していただくことが非常に重要だなと思っています。年度によって違うというのは重々承知していますけれども、その辺を教えていただきたいです。
 もう一点は、研究と研修の連携というところで、研究員の方が研修に参画されたことは、研究・研修機構ですので、その連携はすばらしい取組だと思います。ただこれは講座の内容ですとか、例えば延べ人数で94人となっているのですが、実人数で言うとどうなのか。特定の研究員の方にもしかしたら業務が偏っているとか、若しくは講座の内容がその研究員の研究の内容によってしまっているというようなことがないのかが懸念されます。その辺について、選定基準も含めてなのかもしれませんがお教えいただければと思います。
 
○労働政策研究・研修機構理事(内田)
 御質問ありがとうございます。それでは、1点目の報告書のリサーチ・アドバイザー部会での評価ということで、本数が5本ということですけれども、御認識していただいているとおりでございまして、5年間の研究成果の集大成的なものを労働政策研究報告書として取りまとめているということです。令和4年度につきましては中期計画の初年度でございます。例えば、今第5期ですが、第4期の本数を申し上げますと、第4期の平成29年度の1年目も、やはり4本ということで、最終年度に12本出しております。どうしても最終年度に固まって出すということになります。もう少しタイムリーに出したらという御指摘につきましては、報告書を最終年度に取りまとめる前に、都度なのですが、アンケート調査をした場合はその年度か、若しくは翌年度くらいに調査シリーズということで、こういう調査結果でしたということをとりまとめます。それから、中間的なものとしてディスカッションペーパーとか、資料シリーズという形でリサーチ・アドバイザー部会で学術的な評価を頂く前に、その都度出しているというものを合わせて、今回の20数本のとりまとめ研究成果件数となります。
 
○労働政策研究・研修機構労働大学校長
 御質問ありがとうございます。JILPTの労働大学校の校長でございます。研究と研修の連携の関係でございますが、延べ94名の研究員が参加をしたと、講義をしたということなのですけれども、これは延べですので、御指摘のとおりなのですが、重なっている研究員が結構います。実質的には約10名の方がやっておられるのですけれども、94人というのは、実質94回やったということなのですが、10人が均等にやっているわけではなくて、やはり、そこはばらけていると。かなりやっていただいている研究員の方がいらっしゃいますし、1回しかやっていませんという方もいらっしゃると、こういう状況でございます。
 分野的に言いますと、職業指導に関するものであるとか、労働政策の歴史とか、あるいは判例の研究といった、分野的には幅広いと思いますけれども、いずれにしても研究員の負担という観点からいうと、ばらつきがちょっとあるのかなというように思いますので、その点については今後、基準と言いましょうか、こういう目安でやっていきましょうということについては検討していきたいと思います。以上でございます。
 
○西岡構成員
 ありがとうございます。やはり研究者の方の負担というのもかなりあるかと思いますし、公平性の観点からも御検討いただければと思います。
 先ほどの報告書の件に関して、私が少し気になったのは5本のうちの評価で、達成度というのを出されていますけれども、その場合と10何本あったときとでは、母数が違うため結果の意味合いに差が出てくるのではないかなと。各年度で、もう少し比較できるようにできれば、毎年の評価の差が見て取れるのかなというのを少し思いました。その辺について、もし工夫ができることがあれば、していただければと思います。どうもありがとうございます。
 
○今村主査
 いかがでしょうか。土橋構成員どうぞ。
 
○土橋構成員
 土橋ですが、労働政策研究の所の3ページの辺りを見ますと、この表の中の目標の所に、政策に貢献することができる調査研究に重点化ということになっておりまして、基本的には厚労省の政策と連携してというのが非常に重要なことだと思うのですけれども、一応、研究機構ということですので、今、すぐに政策には貢献しなくても、将来も少し見据えた研究の種というか、そういったものを研究して蓄えておくということも必要かと思うのですが、重点化してしまうということは、そういうところは余りやらないというお話なのか、あるいはほかの部門のところに入っているのかもしれませんが、その辺をお聞かせいただければと思います。
 
○労働政策研究・研修機構研究所長
 かつて日本労働研究機構と言っていた組織が労働政策研究・研修機構という形で、正に政策研究に特化してやれというようになったことからしますと、いろいろ我々に対する評価も政策に直結したものなのか、政策にどう貢献したのかというのが、ある意味、全てについて掛かってくるという、そういう状況になっておりますので、当然のことながら、我々としても常にそういうことを意識しながら研究テーマを選択し実施しているのですが、と同時に、正に先ほど酒井構成員が言われたように、だからといってレベルを下げていいわけではございませんので、そういった政策に貢献するようなテーマを取り上げつつも、それがきちんとアカデミックなレベルでも貢献できるといいますか、評価されるようなものでなければならない。なかなかそこを両立させるというのは、正直難しいところではあるのですが、前期、第4期のときには、すぐに政策に直結するということではないという観点で雇用システムに関する研究を1つテーマとして取り上げておりまして、これも、実は最近の政策の動きからすると、ある意味ちょっと政策に直結するような話になってきつつあるのですが、前期には、直ちに政策には直結しないため政策的な観点の評価からは外すということで、1本、そうしたテーマを立ててやっておりました。
今期はそういう形では立てておりませんが、サブテーマやサブサブテーマなど、色々な個々の研究テーマをやっていく際には、常にそれが、もちろん厚労省にとってどのような観点から政策貢献するかということとともに、やはり労働に関わる労働法、労働経済、社会学、心理学、そういった観点の先生方から見ても、きちんとした研究成果となるようなことを常に両面を意識しつつ、少なくともやっていきたいと思っております。そこを、正にご判断いただくのがリサーチ・アドバイザー部会ということになるのかなと。その観点からも、正に西岡構成員が言われたように、できるだけ多くの研究成果をリサーチ・アドバイザー部会で出してご評価を頂くようにしていきたいと思います。
 研究員に対しても、調査シリーズや資料シリーズといったリサーチ・アドバイザー部会で出ない形ではなく、出る形の研究成果を途中段階でもできるだけ書いてくださいと我々の方からは言っているのですが、なかなかそこが、ちょっと中途段階のものを出すのがいかがなものかといったところもあり、内部でそこのところは、常にそういう議論をしているのですけれども、できるだけそういう方向になるようにやっていきたいと思っております。
 
○土橋構成員
 将来を見据えた布石という辺りも、是非御考慮いただければと思います。
 
○今村主査
 ありがとうございます。最後に1つ、いいことを、良い印象を申し上げようと思うのですが、コロナ禍中の前回からずっと見ていて、今回このパワーポイントを見て、集合研修でオンラインと対面のハイブリッド型をやったとか、組織運営で総合企画チームを設置したとか、つまり、何を申し上げたいかというと、横のつながりというものを強化しようという、あるいは対面でのコミュニケーションを活かしつつ、もっと機構の成果をしっかりと共有・浸透させようという、そういう御努力があるようにこのパワーポイントを見て感じました。それで、もう1つは、いま御紹介申し上げたことに関連して質問したいことがあります。デジタルとかあるいはAI、それから対面等、これから機構としてどのようにコミュニケーションをデザインしていかれるのか。藤村理事長の下でリーダーシップというか、ガバナンスを強化していかれると思うのですが、その全体として機構のコミュニケーションがどこまで達成したい、ちょっと抽象的な質問で申し訳ないのですけれども、それを通じてEBPMにも関係するのですが、ちゃんと機構の成果を浸透したい対象の人たちにどうコミュニケーションしていくか。あるいは海外とのコミュニケーションの中で、AIについて「ル・モンド」でも紹介されたと書いてあるのですが、その全体像としてどこを目指していらっしゃるのかという漠然とした質問で申し訳ないのですが、機構が研究機関から政策への効果、反映というように推移していく中で、今回のパワーポイントは非常によくそういう方向が見えていると思うのですが、もう1つ、アイデンティティーでいくというか、そういうポリシーみたいなのがもしあれば教えていただければなと思うのですが、どうでしょうか。
 
○労働政策研究・研修機構理事長
 ご指摘、どうもありがとうございます。デジタル化の中で対面の良さ、あるいはそれ以外の手法をどのように組み合わせていくかというのは、正に今、私どもが考えているところです。世の中ではオンラインでやることがよくて、対面は駄目だというような風潮があるのですが、そうではないと思います。道具ですから、目的に合わせて、それを使い分ける必要があると考えます。
例えば日韓、あるいは日中韓の会議というのは、この間、ずっとやってまいりました。コロナがありましてオンラインでやってきたのですが、日中韓は今年は対面実施で準備しています。やはり実際に会って話をする、それによって、いわゆる周辺情報というか、いろいろな情報共有ができるということで、そこは大事にしていきたい。ただ、デジタルの良い面、これもしっかり使っていこうと思っています。これは研究員の中でも在宅勤務の方がいらっしゃいますが、やはり出て来て議論することの大切さというのは、これは大切にしていきたいと。
ですから、ズバッとしたお答えは、まだできないのですが、私としては、正にうまく融合して目的に合わせてツールを使い、より質の高い研究成果に結び付けていきたい、そういう試行錯誤をする場であると思います。それは労働大学校においてもオンラインでの知識教育の部分と、実際に会って議論することによって、実際の現場で起こっていることにどう対応するかという能力を高めてもらうと、これをどのように組み合わせていくか。正に今、試行錯誤しているところで、徐々にそういった成果も出てくるかなと思っております。以上です。
 
○今村主査
 ありがとうございます。大いに期待して、是非成果をもたらしていただければと。他の独法とか政策機構のお手本になるように、是非、良いものを見せていただければと思います。ほかになければ、これで一通りの質疑応答は。では、どうぞ、少しだけ。
 
○宮崎構成員
 今の内容に若干、関連しますが、先ほどの労働大学校の研究員の方の講義が大変だというか、偏りもあるみたいなお話もありましたが、私もオンラインやハイブリッドで議論したり、いろいろ情報を交流させるところは対面がやはり重要かなと思っているのですが、その中で、労働大学校がハイブリッドにしていくことによってリアルの授業というか、講義が減っていくとか、これは去年もお伝えしたのですけれども、施設の有効活用という観点もあって、財務内容の改善のところで、収支がしっかり取れましたというお話がありましたが、もう1つ、保有資産も有効活用するという姿勢も重要だと思っています。
 その中で、例えば、ほかの独法などでもやっているのですが、オンラインと言っても、ハイブリッドで同時で、ただ単にWebで実行するのではなくて、e-learningのように、いわゆる知識の研修であれば、あらかじめ収録しておいたものをダウンロードして視聴するとか、やっていく、そのための事前に録画するような施設だったり、部屋を作って施設を有効活用している独法などもありますので、実際リアルの講義が減った部分は事前に録画するとか、そういう工夫をするところで、先ほどの講師の負担なども工夫できると思いますので、ハイブリッドのどういうスタイルにいくかというところに施設の有効利用という観点も踏まえて、是非検討いただければと思います。
 
○労働政策研究・研修機構労働大学校長
 御指摘ありがとうございます。労働大学校長でございます。労働大学校の研修は、確かにコロナ前に比べるとリアルの授業が減って、いわゆるオンラインの授業が増えているという状況でございます。御指摘がありましたように、あらかじめ録画するとか、そういうことはあり得るのではないかということなのですけれども、実際オンラインでリアルタイムでやるのと、録画をしてそれを一定期間で視聴して知識を身に付けるというものに実はオンラインは分かれておりまして、そういう一定期間の間に視聴してくださいということについては、これはものすごいいい施設というわけではないですけれども、施設の中にそういう録画できるようなスペースをつくって、あらかじめ動画を作っておくということをやっております。
 施設の有効活用等々につきましては、研修が全体100あればどれぐらいの単位で、これはオンラインでいいのだと、これは集合してもらってリアルでやりましょうというのを分けなければいけないのですけれども、そこはまだ試行錯誤のところがございますので、そういう一定の何となく相場観ができたところで、施設の在り方等々についても考えていくべきかなと思っております。以上でございます。
 
○今村主査
 ありがとうございます。それでは、大分時間も経過しておりますので、よろしいでしょうか。では、関口構成員どうぞ。
 
○関口構成員
 すみません、時間ということですけれども、簡単に1点だけなのですが、機構に求められる役割は非常に今後も拡大というか、期待される部分が多いと思うのですが、今年度の財務内容のところでいきますと、10%自己収入が上回ったということなのですが、今後はいろいろ支出の部分も、電気料金その他も支出の部分が多いということで御懸念されていると思うのですが、今年度あるいは来年度以降はどのような見込みをお持ちなのかという、その一点だけをお伺いできればと思います。
 
○労働政策研究・研修機構総務部長
 頂いた御質問につきましては、やはり先ほど御説明いたしましたように、令和4年度はかなり3年度と比べて予算が減ったということで、その中で電気料金も上がるということで、非常に苦労しながらやらせていただいたというのが実情でございます。
 今後に向けてということなのですが、実は令和4年度、言わば、縮小した予算の中でやってみて、やはり様々な課題が見えてきたところというのはございます。例えばですが、先ほど来出てきております緊急調査という枠組みもあったりしますけれども、年度の途中でこういうことを調査してくださいということで対応するということなのですけれども、予算的に余裕がなくなってくると、フレキシブルにいくかというと、うまくいかないといったようなことですとか、様々、やはり課題が見えてきたなという感じがしております。そういったものにつきましては、厚労省の御担当のほうにも御説明したような共有を図っているところでございます。
 厳しい財政状況の中、特に今、二事業が厳しいということですので、そもそも金庫にお金がないという状態なものですから、なかなかすぐに何か改善するというのは難しいところではありますけれども、少し課題の共有というものを図りながら我々としてはミッションをうまく果たしていけるように、年度ごとに可能な対応というものもございますから、その辺も十分に相談をして対応していければと思っております。以上です。
 
○今村主査
 大変熱心な御意見、御質問ありがとうございました。それでは続いて法人の監事及び理事長から、年度中期目標期間における目標の達成状況を踏まえまして、今後の法人の業務運営等についてコメントをいただければと思います。まず、法人の監事から、続いて法人の理事長よりお願いいたします。
 
○労働政策研究・研修機構監事(寺尾)
 監事の寺尾でございます。よろしくお願いいたします。当機構の令和4事業年度に係る監査報告は、お手元の資料2-4のとおり、6月14日付けにて理事長宛に報告いたしました。
 当機構の監査結果を御報告いたします。お手元の資料、監査報告Ⅰに記載のとおり、監査計画に基づき、業務監査にあっては、役職員からその職務の執行状況について聴取するとともに、全ての理事長決裁書類の内容確認を行ったほか、経営会議等重要な会議への出席などを通じて、当機構の意思決定過程や、業務活動状況を監査いたしました。会計監査にあっては監査法人の監査結果を聴取し、会計に関する帳簿及び各種証憑書類を閲覧、点検し、資産の実地監査を行うとともに、会計責任者から聴取を行いました。それらの結果につきましては、監査報告Ⅱに記載のとおり、法人の業務は、法令等にしたがい、適正に実施され、中期目標の着実な達成に向け、効果的かつ効率的に実施されているものと認めます。
 また、内部統制に関すること、役員の不正行為、法令違反の有無、財務諸表等の内容、事業報告書の内容につきましても、詳細は割愛いたしますが、いずれも適正に行われており、指摘すべき事項及び特段の意見はございません。監査は私と非常勤の吉田監事の2名で実施しておりますが、両監事間での意見の相違はございません。
 監査の報告は以上でございますが、効果的かつ効率的な業務運営の遂行にあたり、日頃からの監査や役職員との意見交換を通じて気付いた点を少し述べさせていただきます。令和4事業年度は、第5期中期計画の初年度として、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中、きわめて厳しい予算枠下においても、多様性をキーコンセプトとする調査・研究と研修事業のパフォーマンスを維持・強化させることで、達成目標を上回る業績結果を得られたことは高く評価されると思っております。厚生労働省をはじめとする機構外関係先との協業連携はもとより、機構内におきましても、限られた予算を適時適切に執行しうるPDCA構築も含め、部門内外への連携が着実に強化されており、これらが業績結果にもつながっているものと考えております。
 令和5事業年度以降につきましても、情報セキュリティ対策や施設整備等への対応が途上にあり、これらの事業基盤関連予算の捻出と確保による遂行も含め、中長期的な観点からの業務運営高度化をより一層推進していただくことを期待しております。以上でございます。
 
○今村主査
 ありがとうございます。それでは法人の理事長よりお願いいたします。
 
○労働政策研究・研修機構理事長
 この4月1日に当機構の理事長に就任いたしました藤村でございます。本日は有識者会議構成員の皆様におかれましては、いろいろな側面から御意見いただきどうもありがとうございました。
 令和4年度は第5期の中期目標期間の初年度であり、中期目標に掲げられた6つの中長期的な労働政策の課題に対応したプロジェクト研究テーマを設定するとともに、厚生労働省からまいります要請を踏まえつつ、この間研究を進めてきております。特にEBPM支援という大事な役割もございます。それを進めていきます上で、やはり調査研究の質を確保するということがとても大事だと思います。ただ、実は悩ましいところがございまして、今日も関口構成員からもございましたように、予算が非常に限られた中でやっていかなければいけない。やはりいい研究をするためには試行錯誤が大事で、やってみたけれどうまくいかなかったということも起こります。ある種の余裕がないと試行錯誤ができないと考えます。しかし予算が限られている中で、ぎりぎりなんとか厚生労働省からの要請に応えていくということで、令和4年度は研究員、職員の努力で何とかやってまいりました。ただこの状態が常に続くとなると、やはり研究の質に影響を与えかねないと思います。どういうふうにこれから改善をしていくか、これが私の理事長としての大事な役割と思っております。
 今日も御紹介いたしましたように、労働大学校におきましてもコロナ禍もあり、オンラインでの研修や集合研修も併せたハイブリット型にも取り組んでおりまして、正に災いを転じてうまくそれを利用するということで、労働大学校での講義内容もこれからさらに充実をさせていきたいと思います。
 日本社会では、いろんな形で労働に関する課題が出てきております。その課題をしっかり見据えて、正しい政策決定をしていただくために、JILPTとしては事実を正確に把握して、お伝えをしていくということが必要かと思います。そのためには厚生労働省関連、あるいはその他の機関との連携ということも必要だと思っておりまして、そこにも引き続き取り組んでいきたいと思います。どうぞ今後とも御指導、御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げて本日のお礼といたしたいと思います。どうもありがとうございました。
 
○今村主査
 どうもありがとうございました。ただいまの御発言内容について御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。よろしいですか。どうもありがとうございました。それでは以上で本WGの議事を終了いたします。最後に事務局からお願いいたします。
 
○政策立案・評価担当参事官室室長補佐
 今後の流れについて御連絡いたします。本日御議論をいただきました労働政策研究・研修機構の令和4年度業務実績評価につきましては、この後本WGにおける御意見や、法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表いたします。決定したそれぞれの内容につきましては、後日構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
 
○今村主査
 それでは本WGはこれで終了とさせていただきます。大変熱心な貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。また円滑な議事運行に、運営に御協力いただきましてありがとうございます。構成員の皆様、引き続き2つほど控えておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。