2023年3月3日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和5年3月3日(金)16:00~

出席者

出席委員(15名)五十音順
(注)◎部会長
 
他参考人2名出席
 
欠席委員(5名)五十音順
(注)○部会長代理

 
行政機関出席者
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、ただいまから薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催いたします。本日はお忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議といたします。
 まず、本日のWeb会議における委員の出席状況ですが、大森委員、合田委員、佐藤雄一郎委員、田﨑委員、松野委員より、御欠席の御連絡を頂いております。このほか、長谷川委員から遅れて御参加との御連絡、また、石川委員は後ほど御参加いただけると承知しております。したがって、本日は現在のところ、当部会委員数20名のうち13名の委員が、このWeb会議に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 なお、本日ですが、審議事項議題6に関して、国立研究開発法人国立成育医療研究センター遺伝診療科診療部長の小須賀基通先生、独立行政法人労働者健康安全機構千葉労災病院院長の岡本美孝先生を参考人としてお呼びしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、御報告いたします。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告をいたします。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、森部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず事務局から、資料の確認と審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」について、報告をお願いします。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をいたします。本日は、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~資料No.19と製剤写真を用いますので、お手元に御用意ください。このほか、資料No.20として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」を、資料No.21として「専門委員リスト」、資料No.22として「競合品目・競合企業リスト」を、事前に電子メールにてお送りしております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、御報告いたします。資料No.22の1ページを御覧ください。まず「ドプテレット」です。本品目は、「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページを御覧ください。「アポハイドローション」です。本品目は、「原発性手掌多汗症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページを御覧ください。「リネイルゲル」です。本品目は、「巻き爪矯正の補助」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 4ページを御覧ください。「エムパベリ」です。本品目は、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページを御覧ください。「オンボー」です。本品目は、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法及び維持療法」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページを御覧ください。「パリンジック」です。本品目は、「フェニルケトン尿症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページを御覧ください。「オファコル」です。本品目は、「先天性胆汁酸代謝異常症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 8ページを御覧ください。「アトガム」です。本品目は、「中等症以上の再生不良性貧血」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 9ページを御覧ください。「ファリシマブ」です。本品目は、「新生血管を伴う網膜色素線条」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 10ページを御覧ください。「リツキシマブ」です。本品目は、「臓器移植における抗体関連型拒絶反応の治療」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 11ページを御覧ください。こちらも「リツキシマブ」です。本品目は、「臓器移植における抗体関連型拒絶反応の抑制」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 12ページを御覧ください。「fidrisertib」です。本品目は、「進行性骨化性線維異形成症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 13ページを御覧ください。「lonafarnib」です。本品目は、「ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群等」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 14ページを御覧ください。「Lu AF82422」です。「多系統萎縮症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 15ページを御覧ください。「サトラリズマブ」です。本品目は、「自己免疫介在性脳炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 16ページを御覧ください。同じく「サトラリズマブ」です。本品目は、「抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 17ページを御覧ください。「オンボー」です。本品目は、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法及び維持療法」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。今、事務局からの御説明について、特段の御質問、御意見等ありませんか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を得たものとさせていただきます。それでは、委員からの申出状況について、報告をお願いします。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づき、各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりです。
 議題1「ドプテレット」。退室委員なし。議決に参加しない委員、長谷川委員、矢野委員です。
議題2「アポハイド」。退室委員なし。議決に参加しない委員、川上委員、高橋委員です。
議題3「リネイルゲル」。退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題4「エムパベリ」。退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題5「オンボー」。退室委員なし。議決に参加しない委員、川上委員、高橋委員、前田委員です。
議題6「パリンジック」。退室委員、川上委員。議決に参加しない委員、佐藤直樹委員、代田委員、高橋委員、長谷川委員、前田委員です。
議題7「オファコル」。退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題8「アトガム」。退室委員なし。議決に参加しない委員、川上委員、高橋委員です。
議題9「ファリシマブ」。退室委員なし。議決に参加しない委員、高橋委員、中西委員、長谷川委員です。
議題10「リツキシマブ」の治療の方ですが、退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題11「リツキシマブ」の抑制の方ですが、こちらも退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題12「fidrisertib」。退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題13「lonafarnib」。退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題14「Lu AF82422」。退室委員、議決に参加しない委員、共になしです。
議題15「サトラリズマブ」。退室委員なし。議決に参加しない委員、川上委員、高橋委員、中西委員、長谷川委員、前田委員です。
議題16、こちらも「サトラリズマブ」。退室委員なし。議決に参加しない委員、高橋委員、中西委員、長谷川委員です。
議題17「オンボー」。退室委員なし。議決に参加しない委員、川上委員、高橋委員、前田委員。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の意見等はありますか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものとさせていただきます。本日は、審議事項17議題、報告事項1議題、その他事項1議題となっています。
 それでは、審議事項の議題に移ります。初めに、参考人をお呼びしている議題6から先に御審議いただきたいと思います。それでは、議題6ですが、まず川上委員においては、利益相反のお申出に基づき、議題6の審議の間、会議から御退室となっていますので、御待機のほどお願いします。川上委員は御退室をお願いします。
──川上委員退室 ──
○森部会長 それでは、議題6について、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品パリンジック皮下注2.5mgほかの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。
本剤の適応疾患であるフェニルケトン尿症は、フェニルアラニン水酸化酵素をコードする遺伝子の変異により、フェニルアラニン水酸化酵素の酵素活性が低下することで、高フェニルアラニン血症を呈する常染色体潜性の遺伝性疾患です。血中フェニルアラニンの高値は、小児では精神発達遅延等の臨床症状を引き起こし、成人においてもうつ状態、神経症、認知機能の低下等の様々な精神疾患を来します。本邦におけるフェニルケトン尿症の新規患者は、年間約20人と報告されています。
 フェニルケトン尿症に対する治療は、治療的特殊ミルク等を用いた食事療法が実施されていますが、厳格なフェニルアラニン摂取制限の遵守は患者の生活への負担が大きく、特に成人患者では食事療法の継続が難しく、長期のタンパク質摂取制限に伴うビタミンやミネラルなどの栄養欠乏症のリスクも懸念されます。また、薬物療法について、フェニルアラニン水酸化酵素の補酵素BHの製剤であるビオプテン顆粒が承認されていますが、全てのフェニルケトン尿症患者に効果が期待できるわけではなく、フェニルケトン尿症に対する薬物治療の選択肢は限られています。
 本剤は、遺伝子組換えフェニルアラニンアンモニアリアーゼ類縁体を有効成分とする注射剤です。BH非依存的に血中のフェニルアラニンを分解し、フェニルアラニン水酸化酵素の代替として、血中フェニルアラニン濃度の低下をもたらすことが期待されます。また、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。
 海外において、本剤は2018年5月に米国、2019年5月に欧州で承認され、2023年1月現在、欧米を含む五つの国又は地域で承認されています。
 本品目の専門協議では、資料No.21に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性については、審査報告書41ページの表36を御覧ください。先行して実施された本剤の臨床試験を完了したフェニルケトン尿症患者を対象に、海外第III相試験が実施されました。その結果、主要評価項目とされたランダム化治療中止期であるパート2におけるベースラインから8週時までの血中フェニルアラニン濃度の変化量について、全本剤群(本剤20mg/日群及び本剤40mg/日群の統合群)は、各プラセボ群と比較していずれも統計的に有意な差が認められました。また、審査報告書42ページの表37及び図6を御覧ください。同試験の継続投与期であるパート4において、血中フェニルアラニン濃度の低下とその持続が認められました。また、審査報告書46ページの表42を御覧ください。日本人フェニルケトン尿症患者を対象に国内第III相試験が実施され、海外試験と同様にベースラインからの血中フェニルアラニン濃度の低下が認められました。以上の結果等を踏まえ、フェニルケトン尿症に対して本剤の有効性は示されていると判断しました。
 安全性については、審査報告書54ページの表49を御覧ください。ここでは、国内第III相試験及び海外試験の併合解析集団における有害事象の発現状況を示しております。本剤の安全性について、実施された各臨床試験における発現状況を中心に確認し、ほぼ全ての被験者で過敏症関連事象が認められました。アナフィラキシー、血清病等の個別の事象について検討した結果から、これらの事象に対する適切な注意喚起がなされることに加え、本剤の使用に際しては、フェニルケトン尿症の治療に対して十分な知識と経験を有する医師が、本剤によるアナフィラキシー等の過敏症反応のリスクと対策を十分に理解し、エピペン及び患者カードの常時携帯を含め、患者に適切な指導を行う等のリスク最小化活動が確実に実施されることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 なお、日本人における投与経験が極めて限られていることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講ずる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは、まず参考人の先生方から、本議題について御発言をお願いいたします。まず小須賀先生から御発言いただけますか。
○小須賀参考人 国立成育医療研究センターの小須賀です。何か発言というのは、この薬に関してですか。
○森部会長 はい。本剤の有効性、安全性、並びに安全に使用する上での現在の注意喚起の体制について、添付文書等含めて、先生方の御判断はいかがでしょうか。
○小須賀参考人 まず、このフェニルケトン尿症という先天代謝異常症は、一生涯治療を必要とする病気で、従来は食事療法といってアミノ酸を制限することが唯一確実な治療法でしたが、今の説明にもありましたように、一生涯それを続けることは大変なことで、今回このような薬が出てきたことは、かなり画期的な治療法であると判断しております。
 そして、その有効性に関しても、明らかに血中のフェニルアラニンの濃度が有意に下がっているということで、これはかなり有効性が期待できると考えております。一つ安全性について懸念があるということで、特に在宅で自己注射をするため、アナフィラキシーの管理等に不安が残る可能性があります。これに関しては、投与初期には医師の管理の下、アナフィラキシー等が起きないことを確認してから、徐々に在宅での自己注射に切り替えていく、あるいはアナフィラキシーが起きた場合は、エピペン等を使ってアナフィラキシーを抑える等の指導、あるいは意識してやることによって、安全に投与可能であると考えています。
 こういった代謝異常症の疾患で、酵素や外からこういったものを加える場合は、どうしてもアナフィラキシーが起きやすいのですが、そういったことはある程度管理をすることによって、問題ないと私は考えております。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。続いて、岡本先生から御発言をお願いいたします。
○岡本参考人 千葉労災病院の岡本と申します。本剤は、今説明がありましたように、非常に有用性は高いと思われます。一方で副作用、特に過敏性の出現はほぼ必発と考えてよいと思います。多くは軽症、中等者なので問題はさほどありませんが、重症例のアナフィラキシーの報告が一定の割合であるということです。海外の第III相臨床試験でも、1、2%ぐらいの頻度で起こっています。それから、海外での市販後調査の結果を見ても、やはり2%ぐらいアドレナリン投与を必要とした症例がありますので、十分注意が必要です。ただ、挿管したとか昇圧剤投与といった症例はこれまで報告がないということなので、きちんと適切に使用し、そして、万が一アナフィラキシーが起きても適切な対応がとれるようにすれば、この薬の投与は十分意義があると思います。ただ、やはり実際にはこの薬の特徴は、御自宅で患者さん自身が投与することが中心の治療となってきますので、やはり投与する医師、治療をする医師、それから関係する薬剤師に対して、十分副作用の可能性とその対応について、それから患者さんにリスクの話、そしてアナフィラキシーが起きたときのアナフィラキシーそのものの症状の発現がどんなものなのか、そしてその治療について十分対応することが可能なように、患者さんを指導することの重要性を十分周知することが非常に重要だと思います。
 また患者さんについては、自分で判断して必要な場合にはエピペン、アドレナリンの投与が必要になるということで、実際の指導についても、患者用の資材あるいは動画を作成した上で、十分な周知をしていただくことが非常に重要だと思います。そういうことを対応されれば、有用な薬物治療になると考えられます。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御発言、御意見はいかがでしょうか。
○大谷委員 大谷ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、お願いします。
○大谷委員 大変画期的な薬であると考えられるのですが、一方でこういう薬ですので、当然、抗薬物抗体が発現するかと思うのです。実際に治験の段階でもそれがみられているとは思うのですが、その抗薬物抗体が生じている患者さんにおける薬効に対する影響はどうなのでしょうか。すなわち、抗薬物抗体が生じて、かなり効き目が低下している状態になってしまって、一方で、アナフィラキシーのリスクだけを背負って、治療を続けていくなどということがあるとよくないので、そういった患者さんを峻別できるようなシステムがあるといいなと思ったのですが、その辺りはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構より説明いたします。審査報告書においても、中和抗体が認められた患者さんでの血中フェニルアラニン濃度の推移を提示しています。具体的には53ページの図8になります。
○大谷委員 要するに、実際ある程度薬効が低下する人もいるということでよろしいのですか。
○医薬品医療機器総合機構 中和抗体が持続的に発現している患者さんでは、やはり本剤の増量が必要になってまいります。臨床試験では最長4年ほど本剤が投与されている患者さんもいらっしゃいますが、現状、60mgまでの範囲できちんと血中フェニルアラニンの低下が維持できていますので、中和抗体が発現した患者さんでも、現時点では有効性は維持できています。
○大谷委員 そうすると、血中フェニルアラニン濃度をしっかりとモニターしていけば、それに応じて増量することで懸念はないということでしょうか。薬効の減弱しすぎてしまって使えなくなって、いわゆる有効性と安全性のバランスが崩れてしまうというような懸念は、余りないという理解でよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御理解のとおりです。
○大谷委員 どうもありがとうございます。私からは以上です。
○森部会長 そのほか、委員の先生方から御質問はいかがでしょうか。
○佐藤(直)委員 佐藤ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、お願いします。
○佐藤(直)委員 過敏症の件なのですが、投与を繰り返すうちに過敏症の重症度の程度の違いについては、申し訳ありませんが全部見きれていないので、もし分かれば教えてください。もし違いあるとすれば、それに対しての患者さんへの指導は、具体的にどのようにすることになっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。過敏症反応の発現について、本剤では、臨床試験の発現時期別の結果から、投与の初期の方が多い傾向がございます。重症度についても、投与を継続することで重症度が上がるというよりは、初期の段階に過敏症が多く発現し、それがある程度投与を継続すると、恐らく免疫応答が成熟されていくことで、過敏症の発現は少なくなっていくような傾向がありますので、投与を繰り返すことで過敏症の重症度が上がるというような懸念は、臨床試験の段階では認められていないと考えております。
○佐藤(直)委員 ありがとうございました。
○森部会長 今の継続使用に関することについて、有効性、安全性について、参考人の先生方から特に追加の御発言はありますか。もしありましたら、お願いします。
○岡本参考人 千葉労災病院の岡本です。特に大きな追加はありませんが、やはり今説明がありましたように、薬の開始時期から増量期に副作用の発現が多いということですが、維持期でも全く報告がないわけではないので、やはり、ある程度長期にわたっての注意、特にアナフィラキシー反応に対する注意は必要だと思います。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございます。
○宮川委員 よろしいでしょうか。
○森部会長 宮川先生、お願いします。
○宮川委員 機構にお尋ねいたしますが、このアナフィラキシーに対してのアドレナリンの投与量は、どうなっているのでしょうか。エピペンぐらいの用量で対応できるのか、それ以上のアドレナリンの量が必要であった事例があるのかどうか。つまり緊急時でどのように対応できるのかということもあるので、是非、その投与量を教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。海外の市販後の情報では、自己投与可能なペン型注入器でのアドレナリン投与がされている状況です。それ以上の何か投与というのは、エピペンを投与した後に救急搬送か近くの病院にかかられると思いますが、そこでの処置で十分な状況と理解しております。
○宮川委員 分かりました。では、超初期という言い方はおかしいですが、そのときにはエピペンのアドレナリン量で十分対応できると考えて、その後の症状が続いた場合には、救急搬送を含めて適切な処置が必要であるという認識でよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御理解のとおりです。
○宮川委員 ありがとうございます。それから、もう一つお願いしたいのですが、妊婦への影響が少なくないと感じておりますが、ホームページでも妊娠と薬でこれから立ち上がるという形なのですが、それを適切に使用できるような環境というか、状況はとられるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 妊婦への投与については、非臨床試験では母体の低フェニルアラニン血症を伴う、胎児の催奇形性所見がみられている状況です。一方で、フェニルケトン尿症の患者さんでは、高フェニルアラニン血症による胎児への催奇形性のリスクが懸念されています。ほかに治療の選択肢がなく、本剤を投与することでフェニルアラニン濃度が一定に維持できるような患者さんに限っては、やはり投与の選択肢を残しておくべきと考えて、そのような内容を添付文書で注意喚起させていただいています。もし仮に、本剤の投与が必要との医師の判断になりましたら、厳格にフェニルアラニン濃度のモニターをしていただきながら、投与されるものと考えております。
○宮川委員 分かりました。そのような形で、しっかりとしたインフォメーションができるようにしていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
○森部会長 今の機構からの説明について、特に参考人の先生から補足事項等がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。特段ありませんか。ありがとうございます。一点、臨床試験を行っていた際に、抗ヒスタミン薬としてH1ブロッカーとH2ブロッカーの併用をしていたという記載があり、臨床成績にもその旨が記載されていらっしゃいますが、今後の実臨床でどのように対応していくべきか、機構のお考えと参考人の先生方のお考えを少し伺ってよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床試験においては、H1受容体拮抗薬とH2受容体拮抗薬の前投与がされておりました。この前投与の目的は、皮膚症状などの過敏症反応の症状の軽減のためと理解しております。臨床試験では両剤併用されておりますので、それぞれH1単独、H2単独での効果は判断できないところではありますが、アナフィラキシーに対する対応での薬剤の使用方法を考えますと、H2受容体拮抗薬を追加することで、アナフィラキシーのリスクを軽減する効果があったとは考えにくいのではないかと思います。一方で、皮膚症状の軽減には寄与していた可能性はあるかもしれないと考えております。したがって、実臨床においては医師が、患者さんに応じて、個別にH2受容体拮抗薬の追加が必要かどうかを、判断いただくことがよいのではないかと考えております。
○森部会長 特に参考人の先生から、今の発言に御意見はありますか。よろしいですか。
○小須賀参考人 国立成育医療研究センターの小須賀です。抗ヒスタミン薬は一般的にはH1ブロッカー、いわゆる抗アレルギーの抗ヒスタミン薬として使うことが多くて、H2ブロッカーは通常我々がイメージするのは、いわゆる胃薬、胃酸の分泌を抑えるような薬で、ごく希にアレルギーのH1だけでは維持できない場合、H2ブロッカーを追加することもあります。基本的にアレルギーに関しては適用外ということもあって、我々は実臨床では、余りH2ブロッカーはアレルギーの抑制として使うことは少ないです。場合によっては違う薬を使うといったことも実臨床ではあると思うので、H1、H2をそれぞれ使うようなシチュエーションを余り想定してはいないので、それを余り文章化して何か示唆するのは合わないのかなと私は考えております。
○森部会長 分かりました。そうすると、現在の添付文書の臨床成績の所に、治験での状況を説明しているのみで、記載としては十分という判断でよろしいでしょうか。
○小須賀参考人 私はそう思います。
○森部会長 どうもありがとうございました。
○岡本参考人 参考人の岡本です。
○森部会長 はい、どうぞ。
○岡本参考人 私も同様な考えで、特にH2ブロッカーのアナフィラキシーの治療・予防に対するエビデンスは、非常に不足しているのが現状だと思います。通常は、セカンドラインの治療として加えてもいいという程度の考えなので、特に明記する必要は必ずしもないのではないかなと思います。ただ、海外の臨床試験で使われていることは、もちろん記載すべきだと思うのですが、実際にそれを推奨するかどうかは、私自身は少し疑問に思っています。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。先生方の発言をまとめますと、本剤としては過敏症、アナフィラキシーに対する対応を、実臨床でしっかりと説明も含めて行っていくということ。患者さんへの情報提供や資材などについて、今の準備状況を少しまとめて伺ってよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 アナフィラキシー、過敏症反応に関しての患者向け資材については、どういう症状が起きるのか、エピペンの投与が必要な徴候・症状の具体的な記載があり、こういう場合にはエピペンを投与をしてください、投与をしたら病院にかかるか緊急搬送を、というような内容が記載されております。この資材を用いて医療従事者の方が患者さんに説明いただくように、医療従事者向け資材にも記載させていただいています。
 加えて、患者カードという常に携帯いただくカードを作成しております。医師から、本剤のリスク、アナフィラキシーの対処方法を患者さんに指導いただき、その内容を患者さんが理解できましたら、患者カードをお渡しすることになります。患者カードには、緊急時の対応や緊急の連絡先、病院の連絡先、本剤の情報が読み取れるQRコードなどを記載しており、患者さんはこのカードを常時携帯されることになります。
○森部会長 委員の先生方から追加の御意見、御発言はありますか。よろしいでしょうか。それでは議決に入ります。なお、佐藤直樹委員、代田委員、高橋委員、長谷川委員、前田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくことになっております。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、本件について承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。小須賀参考人、岡本参考人、御発言いただき誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。どうぞ御退室ください。
 それでは、ロビーで待機されている川上委員をお呼びください。
──川上委員入室 ──
○森部会長 続いて議題1に移ります。審議事項議題1について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品ドプテレット錠20mgについて、機構より説明いたします。資料No.1の「審査報告書」を御覧ください。審査報告書の一番下、全80ページの通し番号で4ページの「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。
 本剤の有効成分であるアバトロンボパグマレイン酸塩は、トロンボポエチン受容体作動薬であり、造血幹細胞の増殖並びに巨核球への分化及び成熟を促して血小板産生を促進する薬剤です。慢性肝疾患患者では、内因性トロンボポエチンの産生低下、門脈圧上昇に伴う脾臓での血小板貯留等により、血小板減少症がしばしば認められます。このような患者で観血的手技を実施する場合、術前に血小板数を増加させ、重大な出血リスクを低減することを目的として、血小板輸血やトロンボポエチン受容体作動薬を用いることが、肝硬変診療ガイドライン等で推奨されています。
 海外においては、本剤は待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症に係る効能・効果で、米国で2018年5月、欧州で2019年6月にそれぞれ承認され、2022年11月時点で八つの国又は地域で承認されています。今般、国際共同第III相試験成績等に基づき、待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善を申請効能・効果として、医薬品製造販売承認申請がなされました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の43ページの「7.3.1国際共同第III相試験」の項を御覧ください。有効性は、二つの国際共同第III相試験で検討されました。まず、日本人を含む待機的な観血的手技を予定している血小板減少症を伴う慢性肝疾患患者を対象に実施された、プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験の結果を示します。本試験では、ベースライン時の平均血小板数が4万/μL未満の患者は低血小板数コホート、4万以上5万/μL未満の患者は高血小板数コホートに組み入れられました。低血小板数コホートではプラセボ又は本剤60mgが、高血小板数コホートではプラセボ又は本剤40mgが、予定する観血的手技の10~13日前から1日1回5日間、食後に経口投与されました。
 主要評価項目は、無作為割付けから観血的手技実施7日後までの血小板輸血、及び出血に対する救済措置を回避した被験者(以下、レスポンダーとする)の割合とされました。その結果については、審査報告書の45ページの表34を御覧ください。こちらに示したとおり、ベースラインの血小板数別のいずれのコホートにおいても、レスポンダーの割合は本剤群でプラセボ群と比較して有意に高い結果でした。日本人集団の結果については、審査報告書の47ページの表36を御覧ください。こちらに示したとおり、いずれのコホートにおいても、主要評価項目について全体集団と一貫した結果が示され、全体集団で認められた本剤の有効性は、日本人患者においても期待できると判断いたしました。
 同様の試験デザインで実施された別の海外第III相試験においても、主要評価項目とされたレスポンダーの割合は、ベースラインの血小板数別のいずれのコホートにおいても、本剤群でプラセボ群と比較して有意に高い結果でした。 以上より、臨床的意義のある本剤の有効性は示されていると判断いたしました。
 審査報告書の57ページの「7.R.3安全性について」の項を御覧ください。安全性について御説明いたします。国際共同第III相試験における有害事象の発現状況からは、本剤投与時の安全性について、重大な懸念は認められませんでした。本剤の作用機序からは、血小板数の過度の増加により血栓塞栓症のリスク増大が懸念されます。国際共同第III相試験においては、プラセボ群と比較して本剤群で血栓塞栓症関連事象の発現割合が高い傾向は認められませんでしたが、添付文書では本剤の作用機序を考慮して、慢性肝疾患患者では門脈血栓症等の血栓塞栓症を生じやすい状態であること等を踏まえ、本剤投与後には血小板数によらず、血栓塞栓症の発現に十分に注意すること等を注意喚起することが適切と判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 次に、部会長より事前に頂いた御意見について、機構にて検討した結果を御説明いたします。部会長からは、「肝障害の重いChild-Pugh分類Cの症例への使用に際して、添付文書9.3.1項において、投与可否を慎重に判断するよう注意喚起されているが、リスクベネフィット判断の基となる臨床成績に関する情報提供の方法について、検討が必要である」との御意見を頂いております。まず、Child-Pugh分類Cの症例での有効性及び安全性の成績について御説明いたします。有効性について、審査報告書の53ページの表42の一番下、Child-Pugh分類別の結果を御覧ください。国際共同第III相試験におけるChild-Pugh分類別の主要評価項目のレスポンダーの割合は、Child-Pugh分類A及びBの部分集団では全体集団と大きく異ならず、Child-Pugh分類Cの部分集団のうち高血小板数コホートでは、本剤40mg群でプラセボ群よりも高かった一方で、Child-Pugh分類Cの低血小板数コホートでは、本剤60mg群でプラセボ群より低い結果でした。
 ここで、画面共有にてより詳細な資料を提示いたします。こちらには、低血小板数コホートにおけるChild-Pugh分類Cの、個々の被験者での血小板数の推移等をお示ししております。専門協議では、当該疾患領域を御専門とする先生方に御意見をお伺いし、観血的手技が実施されず、手技前の血小板数測定値がなかった1例を除き、本薬群の6例全例で、ベースラインから観血的手技施行日までに血小板数が増加していたこと、6例中3例で血小板輸血を要さず、治験担当医師により観血的手技の実施が可能と判断され実施されたこと等から、低血小板数コホートのChild-Pugh分類Cの被験者でも、臨床的に有用な増加が期待できるとの機構意見を支持いただいております。
 安全性については、審査報告書の63ページの表51を御覧ください。Child-Pugh分類Cの患者では、CTCAE Grade3以上の有害事象及び死亡に至った有害事象の発現割合が高い傾向が認められたものの、いずれも治験薬との因果関係が否定され、副作用とは判定されておりません。ここで、画面共有にて肝機能障害の程度を表す指標の一つである、MELDスコア別の有害事象の発現状況をお示しいたします。MELDスコア別でも本薬の安全性に対する明らかな影響はないと考えられ、専門協議でも当該機構の判断を支持いただいております。
 以上の検討を踏まえ、添付文書では、Child-Pugh分類Cの患者では投与可否を慎重に判断する旨を注意喚起することが妥当と判断し、この判断は専門委員に支持されました。部会長から御指摘いただいた関連情報の提供方法については、Child-Pugh分類Cの患者では検討例数が少なく、これらの患者における有効性及び安全性を評価するに際しては、レスポンダー率や有害事象の発現割合等の代表値の比較のみではなく、先ほど御提示したような、個別症例の血小板数の推移や観血的手技の実施の可否、発現した有害事象の内容や本薬との因果関係判断等も加味して検討する必要があると考えておりますが、これらの詳細な情報全てを添付文書に記載することは困難と考えております。したがって、重度肝機能障害患者における有効性及び安全性については、先ほど御提示したような詳細な周辺情報も含めて、医療従事者向け資材に記載し、医療現場で判断材料となるよう適切に情報提供するようにいたします。御説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。また、当方からの質問についても大変詳細に解析いただき、どうもありがとうございます。委員の先生方から御質問等はいかがでしょうか。
○宮川委員 よろしいですか。
○森部会長 宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 宮川です。詳細に御説明いただいて、本当にありがとうございました。そうすると、Child-Pugh分類Cの患者さんについては、ここに書いてあるとおり門脈圧上昇も含めた門脈血栓症、そういう危険性というか、どちらかというとそういうものから注意喚起をすると、そういう考え方でよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。先生、御質問ありがとうございました。Child-Pugh分類C、いわゆる肝硬変で非代償期に入ってくるような患者様では、門脈圧の亢進ももちろんありますが、それ以外にも、もともと凝固能が血小板以外にも低下等もありますので、全身状態等も含めて、様々な観点からリスクベネフィットを考慮して投与されるものと考えております。本部会には、消化器が御専門の前田先生もいらっしゃいますので、御意見等を賜れれば幸いです。
○森部会長 それでは前田委員、御発言は可能でしょうか。
○前田委員 前田です。そうですね、Child-Pugh分類Cの患者様ですと、門脈圧亢進と肝機能低下という両方が相当進んだ状態ですので、トロンボポエチン自体は、門脈圧亢進には恐らく余り効果がないと思いますが、肝臓の機能を考えると、効果としては認められるのは当然だと思うので、使用自体は勧めてもいいと思うのです。ただ、Child-Pugh分類Cの患者さんで率先してというか、こういう薬剤を長期にというか、少し投与してからの治療等になりますので、現実的に使われるかどうかは現場で判断ということになると思いますが、我々としては緊急性のあるものが多いので、その場合は血小板輸血等で投与するということになると思います。
 あと、ムルプレタ錠、前の競合薬になると思いますが、Child-Pugh分類Cの所でこの薬剤との差がどこにあるのかと言われると、現場では使用に若干戸惑うところがあるかなと思っております。私としての意見はこの程度なのですが、よろしくお願いいたします。
○宮川委員 宮川です。前田先生、いつもお世話になって、ありがとうございます。そうすると、類薬のムルプレタを含めてですが、類薬との違いとかそういうことは、現場では、それよりもはるかにChild-Pugh分類Cのそういうグレードからして、このような薬を使うよりは、他の選択肢で輸血等を含めて考える方が、現実的だなと考えてよろしいのでしょうか。
○前田委員 そうですね。Child-Pugh分類Cの患者さんでこういう薬剤を使うときというのは、薬剤というか血小板を増やす必要がある場合というのは、緊急性のある場合が多いと思うのです。ですので、余り使われる機会はないのではないかと思います。もちろん、Child-Pugh分類Cの患者さんでも、他の部位の手術をするとか、そういうこともあると思いますので、Child-Pugh分類Cの患者さんに使われるとすると非常に便利であるというか、対象となる患者さんはそれなりにいるかなと思います。
 先ほど成績に関しては、因果関係のない副作用が結構、もちろんChild-Pugh分類Cの患者さんですので、それそのものの疾患の病態の進行というのが、どうしてもいろいろな副作用や死亡に結び付いているかと思いますが、実際には薬剤として余り関係なさそうですので、認めていただけると現場としては非常に役に立つかと思います。しかしながら、もちろん注意喚起は強くしていただいた方がよろしいかと思います。以上です。
○宮川委員 ありがとうございました。
○森部会長 今後、御専門の先生方が、本剤を適正に御使用なさるに当たって、極力詳細な臨床情報を御提供しておきたいということもあって、添付文書では注意喚起にとどめておりますが、より詳細な資材を提供することで、今回の第III相臨床試験に関する情報を漏れなくお伝えできればと思ったところです。また、添付文書上では、今回、臨床試験を行った症例は、MELDスコアの24を超えている症例は除外されているという情報が抜けておりましたので、そちらについても追記いただくように機構にお願いしております。まず、臨床試験の状況は添付文書には含めて、なおかつ資材では肝疾患の重症度分類に応じた有効性、安全性に関する情報を御提供するということにしたいと思っております。これは、インタビューフォームでは難しそうでしょうか。機構の方、いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。インタビューフォームに関しては、本来は企業の責任において作成されるものと考えておりますが、本件については、この部会で頂いた御指摘を踏まえて、企業に対応を依頼したいと思います。
○森部会長 どうもありがとうございました。それでは、そのほかの御意見、御発言はいかがでしょうか。特段ございませんか。それでは、議決に入らせていただきます。なお、長谷川委員、矢野委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加は御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようです。承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題2に移らせていただきます。議題2について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題2、資料No.2、医薬品アポハイドローション20%の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。資料については、資料No.2の「審査報告書」を御覧ください。
 原発性手掌多汗症は、手の平に日常生活に支障を来すような大量の発汗が生じる疾患です。本剤は、ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬のオキシブチニン塩酸塩を有効成分とする外用剤であり、コリン作動性神経により調節されている汗腺の神経伝達を阻害することで、発汗を抑制することが期待され、開発に至りました。今般、原発性手掌多汗症患者を対象とした国内臨床試験により、当該患者に対する本剤の有効性及び安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。なお、2022年10月時点において、本剤は海外において承認されていません。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.21に示します専門委員を指名しています。
以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
有効性に関しては、審査報告書通し番号17ページ、表18を御覧ください。第III相試験の主要評価項目である「4週時の発汗量がベースラインから50%以上改善した患者の割合」について、本剤群はプラセボ群に対する優越性が検証されました。以上より機構は、原発性手掌多汗症患者に対する本剤の有効性は示されたと判断しました。
 続きまして、安全性に関しては審査報告書通し番号18ページ、表19及び表20を御覧ください。第III相試験の投与4週後までの有害事象及び副作用の発現状況を示しています。プラセボ群と比較して、本剤群で有害事象及び副作用の発現割合がやや高かったものの、本剤群で認められた事象の大半は軽度であり、高度な有害事象及び重篤な有害事象は認められませんでした。
 次に審査報告書通し番号24ページ、表28を御覧ください。本剤の長期投与時の有害事象の発現状況を示しています。投与期間の長期化に伴い、有害事象の発現割合が増加する傾向は認められませんでした。
 続きまして、審査報告書通し番号26ページ、表30を御覧ください。抗コリン作用に関連する有害事象の発現状況を示しています。第III相試験における有害事象の発現状況は、プラセボ群と本剤群で大きな差はなく、認められた事象はいずれも軽度であり、重篤又は高度な事象はありませんでした。また、長期投与試験において認められた有害事象は、傾眠1例が中等度であったことを除き、いずれも軽度でした。以上から、本剤の抗コリン作用によるリスクは許容できるものの、本剤塗布後の手で眼などに触れないよう、添付文書や資材で注意喚起します。以上より機構は、本剤の安全性について、添付文書における注意喚起等の対応を取ることで許容可能と考えました。
 以上、機構での審査の結果、原発性手掌多汗症に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。なお、本品目は新剤形・新効能医薬品であることから、再審査期間は4年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。機構からの説明は以上です。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等をお願いいたします。
○大谷委員 大谷です。この薬は既に有効成分としてオキシブチニンというものが知られていまして、内服並びに経皮吸収型製剤ということで既に市販されているわけですが、血中濃度推移等を見ますと、そういったいわゆるシステミックに作用する薬とほぼ同じ、若しくはそれより高い血漿中濃度が得られていると見ました。その中で例えば、オキシブチニンの経皮吸収型製剤ネオキシテープ等の添付文書、又はそういった禁忌等と比較しますと、今回のアポハイドローションに関しては、例えば胃アトニー、腸アトニー、それから授乳婦、こういった方々への禁忌表示はされていません。一方、こういったものはネオキシテープ、オキシブチニンの経皮吸収型製剤においては禁忌とされているわけですが、この辺りの整合性についてはどのようにお考えでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まずアトニーに関しては、用語自体が、現在の医療現場ではほとんど使われていないということから、今回、禁忌には記載しなかったということになります。
○大谷委員 アトニーに関しては、用語として余り使われていないということではありますが、消化管運動が低下したような病態に対して使用されるということに対して、特に懸念はないということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 同じく禁忌の項において、腸閉塞又はイレウスのある患者として併せて注意喚起しており、今回のような記載にいたしました。
○大谷委員 結構、イレウスというとかなり重症な形で、胃アトニーは余り使わない言葉だということですが、消化管運動が低下したような病態に対して使うというのは、余りよろしくないような気もしまして、そういった観点から何らかの注意喚起があってもしかるべきかと思ったのですが。
○医薬品医療機器総合機構 注意喚起に関して、先生のおっしゃることはもちろん理解できるところなのですが、胃腸の運動が低下しているという状態を評価するということが確立しているものもないので、注意喚起としても難しいのではないかという判断に至っています。
○大谷委員 例えば、特定の背景を有する患者に関する注意というところに、当然、その疾患というものがあるわけなので、やはり消化管運動が低下した病態というものが存在しないわけではありませんから、何らかの注意喚起があってもしかるべきではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生から頂いた意見を踏まえまして、再度検討したいと思います。
 授乳婦の記載について、先生のおっしゃるとおり、ネオキシテープのデータも再度評価した上で、今回のような記載にいたしました。
○大谷委員 実際、授乳婦に対して、そんなに大きな影響がないというようなことで、過去との統一性よりも、こちらの薬の方の最新の情報を優先したという理解になりますか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのような理解で問題ありません。
○大谷委員 それでしたら、結構です。それに関係してではないですが、例えばこのネオキシテープでは過量投与時の処置が13番の項目で、添付文書等でちゃんと注意喚起されていまして、症状と処置等は書かれているのです。こちらも今回の薬に関しては、過量投与がそんなに起きるかどうかは別として、何かの薬と間違って塗ってしまって、たくさん塗ってしまったときなどは過量投与になるおそれがあるわけですから、そういった意味では、情報提供をしっかりとしておく必要があるのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 薬物動態の検討において、24時間という比較的長い時間の塗布での結果も得られております。その結果、塗布後8時間と比べますと曝露は上がっていますが、安全性の観点では臨床的に問題となる事象は認められていないということを確認はしております。先生から頂いた御意見も踏まえまして、情報提供の要否を改めて検討したいと思います。
○大谷委員 ありがとうございます。ネオキシテープの方も血中濃度を見ますと、5ナノぐらいまでしか上がっていないのです。今回の薬が上がるときは10~15ぐらいまで上がってきて、これが過量投与になると、ネオキシテープを過量投与したときよりも、かなり高い血中濃度に到達する可能性がありますので、その辺りは情報提供しておいても損はないかと思いますので、御検討のほどよろしくお願いいたします。私からは以上です。
○森部会長 ありがとうございました。そうしますと、同成分を含む貼付剤での注意喚起に準じた注意喚起を、特に胃アトニー等を含む消化管運動の低下した方に対する注意喚起を加えるということですね。あとこれは比較的容易に使用できる剤形として、先ほど写真も拝見したところですが、寝る前に使った後に、翌朝うっかり使ってしまうということもあり得るので、そういった場合にどういった処置をすべきか、例えば速やかに洗い流すといったことは必要かということも含めて、資材で御提供いただくということはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本品目は、用法・用量等で就寝前に使用するとなっております。患者用の指導箋においても、目立つ形で就寝前に使うことや、起きた後に必ず洗うことを注意喚起しており、情報提供できるようになっていると思います。
○森部会長 分かりました。では、堀委員から御意見をお願いいたします。
○堀委員 ありがとうございます。堀です。私からは添付文書の14の2の所について質問をさせていただきます。今、お話がありましたように、この薬は就寝のときに塗布をするということなのですが、特にここの14.1.2では、塗布の部位以外に触れないようにするという記載があります。ただ、アレルギーを持っていらっしゃる患者さんですと、眼の周りにアレルギー症状が出た場合、就寝中に無意識のうちに眼の周りをかきむしってしまったりすることもあり得るかと思います。先ほど機構からは、患者用の資材が御用意できるということでお聞きしましたが、そのような場合を想定しての何か記載などはありますか。説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど申し上げました患者用の指導箋に、お薬を塗った手で絶対に眼を触らないでください、万が一、眼に入った場合はすぐに手で洗い流してください、という注意喚起を記載しています。
○堀委員 それは分かっていても、やはり無意識のうちに、就寝中にかきむしってしまうことがあるかと思うので、私としては何か手袋を着用するなど、そのようなことを一言入れていただけると、非常に患者としても有り難く、安心して寝れるのではないかと思ったのですが、そのような記載があるかどうかを、ちょっと確認したくて質問させていただきましたが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見を踏まえ、情報提供の内容を改めて検討したいと思います。ただ、手袋をすることに関しては、添付文書「14.1薬剤使用時の注意」の1.3項の密封法は行わないことに抵触してしまいますので、対応することは難しいと考えています。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。やはり眼の周りは、私も同じような症状を持っているので心配です、特にこの薬に関しては、先ほど先生もおっしゃったように、似たようないろいろな薬や同じような薬を塗っていらっしゃる方だと、混合してしまう可能性もあるかと思いますので、是非、御検討いただけたらと思います。ありがとうございます。以上です。
○森部会長 本剤は本邦でのみ開発されているという状況で、今後、実臨床に供される可能性は高いと思っているのですが、患者さんが手掌全体に塗布するということは、指はどのようになるのでしょうか。実際にどう塗るかというところは、どうマニュアルとして載っているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど説明しました患者用資材の中では、手の平に薬を塗布して、手の平全体に塗り広げると記載しています。
○森部会長 ということは、基本的に薬剤は指には余りいかないように、資材に記載されているということですか。
○医薬品医療機器総合機構 積極的には指に付かないことにはなりますが、触れる可能性はあります。
○森部会長 指先までくまなく塗るように資材が作られていると、夜間うっかり眼に入ってしまうリスクは高まってしまいますので、薬効を期待する上で、手掌を中心に塗っておけばよいというのであれば、そのように資材を作っておくことはとても重要だと思います。それが就寝中、誤って眼に入るリスクが大幅に変わってきます。資材作成の際に、企業と十分に意見交換をしていただいて、本剤の薬剤の有効性に支障のない範囲で、手指に不要な薬剤が付かないように、資材を作っていただくことは可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘も踏まえまして、例えば両手の平の中心で塗る等、できる限り指に付かないような注意喚起を検討いただくよう、企業に伝えたいと思います。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。本当にありがとうございます。そういう意味ではしっかりとしたそういう指導というものをしないと、患者さんの誤用の中で、いろいろな起こってはいけないようなことが、たくさん報告されるようなことになってしまいます。機構も大変でしょうけれども、是非、そういう指導用の資材、密封法というのは何をもって密封法なのか、つまり、サランラップみたいなそういうものを用いての本当の密封法みたいな形なのか、それから手袋であれば、そういう絹も含めて、そういうような手袋だったら大丈夫なのか、これでは全く分からないのです。密封法という意味が全く分かりません。そういうことは患者さんの資材の中で、しっかり書かれないと大変なことになってしまいます。それから指先に付いてしまえば、想定外のことが起こります。これは血中濃度に依存してしまうという形なので、広い部分を塗布してしまえば、必ずそれが血中濃度として上がってしまって、先ほど大谷委員がおっしゃったような、あってはならないようなことを起こしてしまうので、適切な使用をしないと駄目だということで、この使用上の注意14ポツの所はしっかりとした書き込みがなくてはいけないと思います。それについて、そういう指導という形のものは、作り込みをしなくてはいけないということで、しっかりと企業の方に説明をしていただいて、それができたところで、私たちはやはりすごく関心を持っていますので、是非、それは拝見したいと考えています。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 頂いたご意見を企業にも伝えて、検討したいと思います。
○大谷委員 すみません、もう一点ですが、製剤の実物がちょっと手元にないのではっきり分からないのですが、この容器自体はチャイルドレジスタンスになっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 チャイルドレジスタンスにはなっていないと思います。
○大谷委員 これはその辺に置いておいて、子供が飲んでしまったり、手に付いてしまったり、遊んでしまったりすると、相当大変なことになると思うので、やはりチャイルドレジスタンスになっておくべき製剤ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 企業にお伝えしたいと思います。
○大谷委員 是非、よろしくお願いいたします。
○森部会長 具体的にはどういった可能性があるのですか。ロックを付けた製剤にするということでしょうか、大谷委員。
○大谷委員 はい、ねじで1回回さないと出ない、例えば2段階で1回ひねってから押さないと出ないなど、単に上から押しただけで出なくて、角度でねじりながら押すなど、何かローションであると思います。普通に置いておいて、子供が押しただけで出てしまうようなものは非常に危ないと思います。
○宮川委員 従来、堀委員がよくチャイルドレジスタンスのことを言われているのですが、そういうような工夫がされない限り、これは非常に外的な写真を見ている中では、少し危ういなというところも見られるので、是非、そういう改善をしていただかないといけないと思います。今、大谷委員がおっしゃったとおり、これは置く場所だけではなく、その使用に対して、ブロックを掛けておかないといけないのではないかなと思う次第です。
○医薬品医療機器総合機構 子供の手や目に届かないところで保管する旨の注意喚起はしておりますが、御意見も踏まえて、より注意喚起をするように、まずは企業に申し伝えたいと思います。容器については、企業も検討していると思いますが、やはり容器の変更となると、すぐに対応できる事項ではないと思いますので、本日いただいた御意見を企業に伝え、まずは注意喚起で引き続き検討するとともに、容器の変更は今後の検討課題として、企業に重々伝えたいと思います。
○大谷委員 この容器というものも、やはり審査要件の一つですので、ここで容器を変えないでも認めるか認めないかというのは、非常に重要な問題だと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 実際の容器は手元にあり、開けるときにそれなりの力が必要となりますが、さらに注意喚起も合わせて徹底して行う、より積極的に注意喚起を行う、ということを考えております。
○大谷委員 これは委員の先生方の意見にもよると思いますが、やはり医薬品の審査ということで、ローションそのものだけではなく、包装容器その他も含めて、それが医薬品としてのここでの審査ですので、包装がやはりよろしくない、容器がよろしくないということであれば、そこも審査対象になる。そこで委員全体として、委員会でOKということであれば、容器も含めてOKということで皆さんの同意を得て、承認するということになるのではないかと思います。
○医薬品審査管理課長 それはそうなのですが、容器を変えるとなると、なかなかすぐに対応できるという保証はないと思います。ですから、一旦は周りの付随する注意喚起を徹底する、とりあえず徹底する。その後、必ずと言いますか、対応するというような条件、例えば条件という形であれしてあげないと、この段階でとなると、なかなか厳しいのではないかなと思いますので、できればそういうような形で御対応いただければと思います。今、機構からも説明しましたが、現状で子供がすぐにということではないというのは、機構の方で一応確認しているという形かと思いましたので、できれば今後、そういう形で対応するというようなことをもって、物自体に問題がないのであれば、そういう形で御対応いただけると有り難いかなとは思います。
○大谷委員 いえいえ容器も物ですから、そういうのはよくないと思います。やはり容器も医薬品ですから、物自体はうんぬんと言ってしまったら、容器も物です。
○医薬品審査管理課長 もちろん容器も含めて物ですが、ただそれを今の注意喚起、あるいは対応で絶対に危ないのかということについては、今の機構の説明において、必ずそうなのかというところの判断だと思いますが、いずれはそれを更に変えた方がいいということはあると思います。それを条件という形でいかがでしょうか。
○大谷委員 ただ子供がもし押してしまった場合、恐らく常用量が5プッシュですから、1プッシュが子供についた時点で、このネオキシテープを貼ったのと同じくらいの血中濃度が出るだろうということは、容易に想像できます。それを考えた上で、そういった医薬品のシステミックな全身性の副作用が起こり得る外用剤だということを考慮した上で、それで委員の先生方が全員OKだということであれば、それはそれでもちろんいいと思いますが、そこは十分に考えた上で承認審査をすべきだと、私は申し上げているわけです。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。大谷先生のおっしゃることは非常に重要なことだと思いますので、機構もこのような審査の中で真摯に検討して、審査を行っているということを念頭に入れていただいて、企業の方にはしっかりと改良を加えていただくことが重要です。それを条件にして、それで承認するなら承認すると形でいいのですが、ただしその前段階で、そういう子供の手の届かないところに置くというような注意喚起を、しっかりとしていただかないといけないということを、是非、これは御認識いただければと思います。でなければ、私たちは中途半端な審議の中で行ったということになってしまうので、大谷委員のおっしゃることは一番当然だと思います。そのところを踏まえて、承認するということは念頭に入れますが、そういう改良をしていくということを、是非、企業の方に強く申し述べていただくということが条件だということを認識してください。それから、なるべく短期間に変えていただくということを、是非、お願いしたいと私からもお願い申し上げます。
○森部会長 部会長から発言します。本件について、委員の先生に御意見をお伺いします。今回、大谷委員から大変重要な御指摘を頂いているところで、本剤が小児の容易に手の届かないところで保管していただくということを、使用者に十分義務付けること。またその製剤のラベルやパッケージに、小児が決して使わないように注意喚起をすること。そしてもう一つは、うっかり小児の方が手に取った場合でも、容易に使用されないようなチャイルドレジスタンスにする。この三点について本剤の承認の条件とすべきかどうか、御意見を伺ってよろしいでしょうか。
○堀委員 堀です。よろしいでしょうか。皆さんから本当にいろいろな意見を聞かせていただいて、全くそのとおりだと思いました。確かにメーカーがこれからいろいろなことを改良するのは、非常にコストも時間も掛かるということは理解できます。ですので、もしできるのであれば、できるところからやっていただければと思っています。今、部会長がおっしゃったように、例えば患者向け資材に関して、例えば赤文字で子供が使ったりしたときには、こういう症状が出てくるので、危ないから絶対に子供が届かないようなところに保管してくださいなど、先ほどおっしゃったように入れものの所に赤いシールを貼って、これは簡単に塗ってしまうと、いろいろな副作用が起きますというような、ウォーニングが出るようなシールを貼るなど、ちょっとしたことでも現状から少しは進歩できるのではないかと思います。ですので、それほどコストが掛からないものの改良というものを是非、御検討いただければと思います。私からは以上です。ありがとうございます。
○森部会長 ほかの委員の先生方は御意見いかがでしょうか。恐らく、実際に御使用になる患者さんは、この製剤を小児の方が誤って使った場合の危険性については、なかなか理解できないと思います。したがって、やはり製剤を提供する側がそのリスクを十分に理解した上で、フェイルセーフにしておくということが極めて重要で、これは日本の医薬行政全体のポリシーというか、スタンダードにも関わってくるので、やはり今回は、その承認は三つの点を条件として承認するということで、部会の合意としてよろしいでしょうか。いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 例えば、患者用資材等において、注意喚起をより目立つように赤字で記載する等は、速やかに対応が可能かと思いますが、容器を必ず変更しなければいけないとなると、外用剤に限らず、今後の品目やこれまでの他の製剤も含めて、対応の要否を検討する必要性がでてくる可能性があると考えます。まずは、速やかに対応が可能な事項として、資材等における注意喚起を赤字で記載する等を考えておりますが、いかがでしょうか。
○事務局 すみません、事務局です。恐らく今の部会長の御指摘は、本日の部会の先生方の御指摘を踏まえて、それに対応することを前提として本日の議決に進めていただく、その対応方針は当然、後日、部会の先生方にはお知らせしますので、その中でまた確認いただく、そういったイメージでしょうか。
○医薬品審査管理課長 多分、これについては、そういった形で、今回の承認に当たっては一旦、できることをやって、ただそういう対応を今後、必ずやってくださいということを条件にすれば、承認することができるだろうということを、今、議論しているのだと思います。おっしゃるように、これまでに出ているものを今後どうするのかということですが、それについて私が考えているのは、今後、こういったものについては、例えばチャイルドレジスタンスのようなものをちゃんと考えるということは、一般論として、業界に対して指示するべきではないかなと思っています。すなわち、そういうことが想定されるものについては、今後、検討しなさいということを出しつつ、今回はそういうことで、それを条件として対応しなさいと、ただすぐには多分できないと思います。できるだけ早く考えてということはお願いしたいと思いますが、即、これができないと最初から承認できないかというのは、それはさすがにあれなので、それは今後対応をするということを条件に、承認しても差し支えないというような判断ができるのではないかということを、今、御議論いただいているのだと思います。御指摘のほかのもののハネについては、そういったものをどこまでやるのかというのは議論があるかもしれませんが、一般論として、今、ここで議論していることは正しいことだと思いますので、そういうことを医薬品業界に対して、そういうことは考えてください、検討してくださいということを広く指示、周知した上で、個別に考えていかなければいけない問題ではないかなと私は思いました。繰り返しになりますが、そういった方向で何らかの指導なり、通知を出すということはあり得るかなと思っています。そういう形でよろしいですか。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。今、正に課長がおっしゃったとおりだろうと思います。ですから、既存の製品がどうのこうの、それからそういうようなことまで言及しているのではなくて、この薬剤に関して、こういうような姿勢で臨んで、それで委員が承認したということを言っているのだということを、機構はよく理解してください。既存のあれを変えろなどと言っているのではないので、機構もそういうことは言うべきことではないと私も思っています。それは今後、機構がいろいろなことを審査するときに、そういうことを配慮しなくてはいけませんということを言っていただければ、更に有り難い話だということで、今回のことが一つの契機になればいいかなということを、ほかの委員も大谷委員も、それから部会長もそうおっしゃっているのだろうと私は理解しています。以上です。
○大谷委員 よろしいでしょうか。私も基本的に承認をするなと言っているわけではもちろんありませんが、ただ今回、このチャイルドレジスタンスにしてくださいということを附帯して、前向きに検討してくださいということで承認して、その結果、実は開けてみたら、1年経っても2年経ってもチャイルドレジスタンスにならなかったなど、そういうことがあるのは非常に本意ではないので、そこはしっかりと御指導していただいて、なるべく早くやっていただきたいということです。
 今回、特に私が申し上げているのは、一般のローション製剤などと違って、1プッシュ、2プッシュするだけで、飲み薬と同じくらいの血中曝露が出るような製剤だという特殊性から踏まえて、特に注意が必要であろうということで、今回、申し上げているわけで、全ての製剤を遡ってチャイルドレジスタンスにしろなど、そういうことを言っているわけではありませんので、そこは是非、御理解いただきたいと思います。
○森部会長 大谷委員、私から一点確認です。本剤はやはり他の外用薬と比べても、皮膚からの吸収の高い薬剤と理解してよろしいのでしょうか。
○大谷委員 私はそう思います。普通の量を塗っただけで、いわゆる飲み薬や全身性の作用をするような製剤と同じ量が、全身に移行するような製剤ですので、非常にやはり注意喚起が必要だと考えています。機構さんもシステミックな曝露という点では、そのようにお考えなのではないかと思いますが。
○森部会長 それでしたら、特に本剤に関しては、承認条件として先ほど申し上げた三点については、是非、御考慮いただくということは、部会として強く申し上げておきたいと思います。ほかの先生方から御意見はいかがでしょうか。
○赤羽委員 赤羽ですが、よろしいでしょうか。今、大谷委員それから部会長、宮川先生方がおっしゃっていることは、正にそのとおりだと思います。今後、このような薬剤を開発するときには、容器からちゃんと企業の方に考えていただかなければいけない。それをこの部会でそういう情報も発信するということと、先ほど委員から御発言がありましたとおり、まず現実的にできることからやっていただくということで、ただやはり今回、もし承認するとしても、この容器のことが、この後どれくらいの計画で改善をしていただけるかということは、きちんとした回答を頂きたいと思います。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。是非、企業の方にもこういった皮膚吸収性の高い薬剤の開発において、その提供する容器についても、様々な観点から配慮を求めたいということで、是非、本剤をその端緒としてお取り組みいただきたいという部会の意向を、お伝えいただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 まず、速やかに対応可能なものとして、資材等の表記の工夫等を行いながら、容器についても、企業に、強い御意見があったということを伝えるようにいたします。その上で、どのような対応を、どれくらいの期間で行えるのかということを、積極的に考えていただくよう、申し伝えたいと思います。先ほど御意見があったように、企業に伝えただけで、何も変更がなかったということがないように、強く申し伝えたいと思います。
○森部会長 ありがとうございました。そのほか、委員の先生方から御発言はありますか。
○事務局 承認条件と言ってしまうと、ちょっと別の意味になってしまうところがありますので、そういうことを前提としてということでよろしいですか。
○森部会長 結構です。今、十分な意見交換ができましたので。ありがとうございました。
それでは本件、議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。なお、川上委員、高橋委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっています。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようです。承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、続きまして議題3に移ります。議題3について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題3、資料No.3、医薬品リネイルゲル10%の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
巻き爪は爪の両側が内側に向かって過度に彎曲した状態であり、主に爪矯正具を用いた保存的治療や外科的治療が行われております。
 本剤は、アセチルシステインを有効成分とする外用のゲル剤であり、爪に塗布すると、爪の構成成分であるケラチンに含まれるジスルフィド結合を還元して開裂することで爪を柔らかくし、爪矯正具と併用することで巻き爪の矯正効果を発揮することが期待されます。今般、巻き爪患者を対象とした国内臨床試験の成績等に基づき、本剤の製造販売承認申請がなされました。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.21に示します専門委員を指名しております。
以下、本剤の有効性、安全性について臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性について、審査報告書通し番号9ページ、図1を御覧ください。臨床試験の有効性評価には、図1のように定義される「遠位爪幅狭小化率」が用いられました。続いて、審査報告書通し番号12ページ、表12を御覧ください。第III相試験の主要評価項目である「第8日における遠位爪幅狭小化率70%達成割合」について、プラセボ群25.6%、本薬10%群47.5%であり、本薬10%群のプラセボ群に対する優越性が示されました。以上より、本剤の巻き爪に対する有効性は示されたと判断いたしました。
 安全性について、審査報告書通し番号15、16ページに記載しております。第III相試験における全ての有害事象及び塗布部位又は塗布部位周囲に発現した有害事象の発現状況について、本薬10%群でプラセボ群と比べて臨床的に問題となるような傾向は認められず、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上の審査の結果、巻き爪に対する有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、機構は、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本申請は新投与経路医薬品であることから再審査期間は6年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないとすることが適当と判断いたしました。薬事分科会では報告を予定しております。御説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。委員の先生方から御意見等ございましたら、お願いいたします。
○堀委員 堀です。よろしいでしょうか。
○森部会長 堀委員お願いします。
○堀委員 使い方についてお聞きしたいので、添付文書の14-1を御確認ください。「本剤使用前及び使用中の爪には化粧品等を使用しないこと」と書いてありますが、この化粧品というのはマニキュアやジェルネイルのことを表すのでしょうか。お答えください。お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明します。御指摘のとおり、爪に塗るようなマニキュアやネイル等を想定しております。
○堀委員 ありがとうございます。そうしますと、使用前及び使用中の爪にはネイルはしてはいけないということですが、使用後に関しては、何か患者向け資材等に、すぐに使える、ある程度一定の期間をおくなど、そのような記載はあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本剤の使い方としては、まず、爪矯正具を爪に装着した上で本剤を塗布して、一日経ったら患者さんに洗い流していただきます。爪矯正具は装着したままになるので、爪矯正具を装着した状態でマニキュア等を塗ることはあまり想定されないのではないかと思いますが、医師に相談していただいた上で、どのようにするかは判断されるのかなと思います。
○堀委員 ありがとうございます。では、その矯正器具をずっと付けることに関して、患者向け資材にどれぐらい付けるかというのは、「医師との相談の上」という記載はあるということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そのとおりです。医師の指示した期間は装着し続けていただくように、患者向け資材等でも情報提供したいと考えております。
○堀委員 ありがとうございます。あと、塗布の仕方ですが、先ほど、爪の矯正器具を一緒に爪に付けていただいた上で本剤を塗布してとのご説明でしたが、手などで塗っていいということなのでしょうか。それとも、何かクリームをつけるようなヘラみたいなものがある等も、資材では説明はされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 こちらの薬剤では、爪矯正具の装着と薬剤の塗布は医師が行います。医師が何らかの器具を使って薬剤を塗布することはあるかと思いますが、患者さん自身がこの薬剤を塗布することはありません。
○堀委員 ありがとうございます。そうしますと、この24時間後に「水又は湯で洗い流す」というのは、これは患者自身がすることなのか、それとも、通院して医師にやっていただくことなのか、そこはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 「24時間後に洗い流す」というのは患者さんに行っていただきますので、患者向けの資材等でも情報提供しております。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。使い方に関して添付文書を拝見しただけでは、患者がどのように使ったらいいのか分からなかったのでお聞きいたしました。分かりました。是非、分かりやすい説明を患者向け資材に記載いただければ有り難いと思います。以上です。
○森部会長 そのほか、御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入りたいと思います。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 今、堀委員からもお話がありましたが、今回のような外用薬を御提示いただくときには、実際の使用の様子が分かる資材を、何か御提示いただきますと、我々も使用実態が把握しやすいので、御配慮いただければと思います。
 続いて、議題4に移ります。議題4について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題4、資料No.4、医薬品エムパベリ皮下注1080mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 資料については、資料No.4の「審査報告書」を御覧ください。発作性夜間ヘモグロビン尿症、以下PNHと省略いたします。PNHは赤血球表面上の終末補体制御因子CD55及びCD59の欠損により溶血を来す疾患です。補体C5阻害薬が標準的な治療薬として使用されておりますが、一部の患者では補体C3を介した血管外溶血が認められており、現在、治療上の課題となっております。
 ペグセタコプランは、ポリエチレングリコールの両端にペプチドが共有結合した構造をしており、ペプチド部分がC3及びC3bに結合し活性を阻害することにより、血管内溶血及び血管外溶血の両方を制御することが期待されます。今般、申請者はPNH患者を対象とした国際共同試験を実施し、本薬の有効性及び安全性が確認できたとして、医薬品製造販売承認申請がなされました。なお、海外においては、PNHに係る効能で2021年に米国及び欧州で承認されております。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.21に示します専門委員を指名しております。
本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性に関しては、審査報告書通し番号32ページ、表35を御覧ください。C5阻害薬であるエクリズマブの効果が不十分なPNH患者を対象とした国際共同第III相試験において、主要評価項目である無作為化期16週時点のヘモグロビン値のベースラインからの変化量について、本薬群のエクリズマブ群に対する優越性が示されました。日本人集団については、審査報告書通し番号35ページ、表37を御覧ください。症例数が限られておりますが、全体集団と日本人集団で異なる傾向は認められませんでした。
 続いて、安全性に関しては、審査報告書通し番号33ページ、表36を御覧ください。国際共同第III相試験における有害事象の発現状況について、エクリズマブと本薬では投与経路が異なるため、本薬群では皮下投与に伴う注射部位反応に関連する副作用が多く認められておりますが、重度の事象や投与中止に至った事象は認められておらず、許容可能と考えております。
 また、本薬は補体経路の活性化を阻害するため、莢膜形成細菌である髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌等の感染症のリスクがあります。そのため、C5阻害薬と同様に、PNHの診断、治療に精通し、本薬のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関の下で、髄膜炎菌等の莢膜形成細菌による感染症の診断、治療に精通した医師と連携して行う必要があると考えます。
 さらに、国内での治験症例数が極めて限られていることから、製造販売後、全症例を対象に使用成績調査を実施し、本薬投与時の安全性情報を早期に収集する必要があると考えます。したがって、これらの点については、審査報告書通し番号2ページに記載しました承認条件を付すことが適切と判断いたしました。以上、機構での審査の結果、PNHに対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原薬及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。機構からの説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等お願いいたします。いかがでしょうか。専門協議でも、大変、的確な御助言を頂いており、感染対策やワクチンの適切な接種、また専門家医師の必要性の判断等々も十分に御議論いただいていると思います。特によろしいでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。前田先生お願いします。
○前田委員 この承認条件の最後に、治療に精通し、かつ髄膜炎菌感染症の診断、治療に精通した医師との連携と書いてあるのですが、これは具体的にどのような要件の医師になるのでしょうか。これは結構分かりにくいのですが、何か具体性はあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。こちらに関しては、既に承認されておりますC5阻害薬であるソリリスやユルトミリスでも付いている条件で、実際、本剤を使用する場合には、ソリリスやユルトミリスを使用している患者さんに使用することになりますので。
○前田委員 では、同じ要件ということですね。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。同じ要件ということです。
○森部会長 御発言ありがとうございます。そのほか、御意見等ありますでしょうか。では、議決に入りたいと思います。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に、御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題5に移りたいと思います。議題5と議題17が関連する議題となりますので、まとめて御議論いただきますようお願いいたします。まず、議題5について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題5、資料No.5、医薬品オンボー点滴静注300mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
本薬はヒトインターロイキン-23のp19サブユニットに対するモノクローナル抗体であり、今般、既存治療で効果不十分な中等症から、重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床試験成績等に基づき、製造販売承認申請がなされました。なお、現時点で、本薬は米国、欧州等において承認申請中であり、承認されている国又は地域はありません。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.21に示します専門委員を指名しています。
以下、本薬の有効性、安全性について臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性について、審査報告書通し番号35ページ、表31を御覧ください。国際共同第III相導入期試験において、主要評価項目である「12週時の臨床的寛解を達成した被験者の割合」について、本薬IV群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。
 続いて、審査報告書通し番号39ページ、表35を御覧ください。国際共同第III相維持期試験において、主要評価項目である「維持期40週時の臨床的寛解を達成した被験者の割合」について、本薬SC群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。これらの試験の日本人集団の結果は、審査報告書通し番号46ページの表45、通し番号48ページの表48に記載しており、全集団の結果と同様の傾向でした。以上より、導入期及び維持期における本薬の有効性は示されたと判断いたしました。
 安全性について、審査報告書通し番号49~60ページに記載しています。臨床試験において、本薬群とプラセボ群との間に臨床上問題となる傾向がないことを確認いたしました。また、本薬を使用するに当たり、注意を要する事象と考えられる感染症、過敏症反応、注入部位反応及び注射部位反応、肝障害に関連する事象、悪性腫瘍、心血管障害の発現状況についても、臨床的に問題となる傾向は認められていないことを確認しました。以上より、本薬の安全性は許容可能と判断しました。
 以上の審査の結果、既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対する有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、機構は、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本品目は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断いたしました。薬事分科会では報告を予定しております。御説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 続いて、議題17についても事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題17、資料No.17、オンボー点滴静注300mg他2規格の再審査期間延長について、御説明いたします。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条の4第3項に基づき、小児の用量設定等のための臨床試験を計画する場合で、必要があると認められる場合には、個別に部会に諮った上で、その製造販売承認があった日から10年を超えない範囲で再審査期間を延長しております。
 品目概要のファイルを御覧ください。本剤に関しては、先ほど機構から説明のありました議題5の資料に含まれている臨床試験とは別に、現在、小児の潰瘍性大腸炎患者を対象とした第II相試験が本邦を含めて既に開始されており、今後、第III相試験も本邦を含めて実施される予定とされていることから、再審査期間は先ほど御説明のありました8年から2年延長して、初回承認からの10年とすることが適切と判断いたしました。御説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から議題5、議題17、併せて御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
○前田委員 前田です。私は今回初めてなので教えていただきたいのですが、先ほどの二つ目の議題で、8年間を10年間に延ばすという、その2年間延ばす根拠はどこにあるのでしょうか。
○事務局 事務局です。この再審査期間の延長というのは、基本的には薬機法の第14条の4の規程に基づき、追加的に医薬品の再審査の期間を延長して、より有効性、安全性について調査等を行う必要があるものについて延長することになっております。ただ、実態としては、この小児分野の医薬品開発を、ある意味促進する観点から、この再審査期間の延長という取組を行っているところもあります。基本的には、小児の開発をした医薬品については、成人について調査期間を延長する措置を通常とっているところです。ですので、本剤についても。
○前田委員 プラス2年というのが普通なのですね。
○事務局 そうです。新有効成分医薬品は再審査期間が8年間付与されることとなっております。この法律上の規程が10年間までの延長という規程となっておりますので、その差分をとって2年間というのが通常とられる措置です。
○前田委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 事務局から、事前に御説明すれば良かったです。失礼しました。そのほか、御意見はありますでしょうか。リスク管理計画についても適切に設定していただいているものと考えております。そのほか、特に先生方から御意見がないようでしたら、議決に入りたいと思います。なお、川上委員、高橋委員、前田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づいて、議決の参加を御遠慮いただくことになっております。
 では、まず議題5について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。続いて、議題17については、延長を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、延長を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、議題7に移ります。では、議題7について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題7、資料No.7-1及び7-2、医薬品オファコルカプセル50mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
本剤は、コール酸を有効成分とする先天性胆汁酸代謝異常症に対する経口投与用の製剤です。先天性胆汁酸代謝異常症は、肝臓内でのコレステロールから胆汁酸までの生合成経路に関与する酵素のいずれかが欠損し、中間代謝物である異常胆汁酸等が肝細胞内に蓄積することにより肝機能障害を生じる常染色体潜性の遺伝性疾患です。本疾患では一次胆汁酸合成が損なわれるため、進行性の胆汁うっ滞を認め、脂溶性ビタミンの吸収不良を伴い、肝硬変や肝不全等を呈します。本剤の有効成分であるコール酸は、ヒトの胆汁中に最も多く含まれる一次胆汁酸であり、先天性胆汁酸代謝異常症患者に投与することで、肝臓における異常胆汁酸等の産生を抑制し、脂溶性ビタミンを含む脂肪の吸収を促進する効果を示すと考えられます。
コール酸は、海外においては、先天性胆汁酸代謝異常症に対する標準的治療法とされており、長年に亘る使用実績が蓄積されています。また、本剤は2022年12月現在、欧州を含む五つの国又は地域で承認されており、米国においては本剤とは異なるコール酸製剤が本疾患に関する適応で承認されています。本邦における患者数は7例との報告があり、本薬は希少疾病用医薬品に指定されています。また、本剤の先天性胆汁酸代謝異常症に対する適応については、第35回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、医療上の必要性は高いと判断され、その結果、開発企業を公募され、今般、申請者が本剤の開発を行うこととされました。本品目の専門協議では、資料No.21に示す先生方を専門医として指名させていただいております。
 それでは本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず有効性について、審査報告書の33~34ページの表32を御覧ください。先天性胆汁酸代謝異常症患者を対象とした国内非盲検非対照試験が実施されました。本試験に組み入れられた患者数は4例であり、尿中又は血清中の異常代謝産物の濃度について、おおむね維持又は減少する傾向が認められました。また、肝機能や脂溶性ビタミンの濃度についても、維持または改善する傾向が認められました。
 安全性については審査報告書34ページ、表32の下、「安全性について」から始まる段落を御覧ください。臨床試験においては、重篤な有害事象及び投与中止に至る有害事象は認められませんでした。また、海外においても、年余に亘る長期的なコール酸の投与がなされた症例も含め、大きな懸念は認められていません。
 以上に加え、本剤の薬理作用から過剰投与時に発現する懸念がある肝機能障害については、本剤投与中は肝機能や胆汁酸を適切にモニタリングし、必要に応じて用量調整を行うことで管理可能と考えられることから、本剤の安全性は許容可能と判断しました。なお、日本人における投与経験が極めて限られることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施し、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。
以上のとおり機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等ございましたらお願いします。
○堀委員 堀です。お願いいたします。
○森部会長 はい、お願いします。
○堀委員 ありがとうございます。私からは、添付文書の製剤の性状についてお尋ねいたします。同じく添付文書の7.1を拝見しますと、「乳幼児等で必要な場合には1日3回以上に分けて投与できる」と書いてあります。乳幼児にとって、この薬の性状は、飲みやすさというものはいかがでしょうか。教えていただけたら有り難いです。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただいて、ありがとうございます。まず本剤の適応症となる疾患は遺伝性疾患であることから、極力早期からの治療開始が望ましいと考えられます。本剤はカプセル剤として申請されていますが、乳幼児の患者さんに対しては、脱カプセルを行って投与されることが想定されます。本剤の有効成分は胆汁酸とであることから、苦みが強い成分となりますが、乳幼児に対する実際の服用方法としては、○○○○ミルクや離乳食や、補助ゼリーなどに混ぜ合わせて服用させるといった方法がなされています。したがって、乳幼児の患者さんに対しても、○○○○○○○○○○○投与方法が考えられております。乳幼児の患者さんに対する投与方法については、情報提供資材において情報提供を予定しております。
○堀委員 ありがとうございます。脱カプセルということを聞いてちょっと安心したのですが、どうしても小さいお子さんにカプセルですと、喉に引っ掛かってしまう症例を私もよく聞いておりますので、この脱カプセルということに関しても、よく資材で御説明いただけたらと思います。ただ、ミルクなどと混ぜてしまったときに味がやはり心配ですので、一番良い方法、先ほどゼリーや食物に混ぜるという御提案があったと思うのですが、やはりその年齢に応じて、一番飲みやすい方法を是非、資材の方でも御提示いただけたら有り難いと思いました。以上です。是非、御検討お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。ミルクや離乳食に混ぜて投与する場合、ミルクや離乳食自体を食べなくなってしまう懸念もありますので、現時点での情報提供資材案ではそのようなことにも注意するよう記載予定です。引き続き、情報提供資材については検討させていただきたいと考えています。
○堀委員 ありがとうございます。1日1回ではなく、1日数回ということであるならば、要するに食べるものに対して拒否反応を子どもが起こしてしまうと、栄養不足にもなってしまう心配があったので、是非その点も御留意いただけたら有り難いと思います。以上です。ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 本剤の性質上、病気の診断がついた状態では速かに治療を開始することが、本疾患の病勢悪化をくい止めるのに大変有効だということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御指摘のとおりです。
○森部会長 本疾患の多くが先天性遺伝で、御両親は基本的に症状がないということですから、お子さんが発症した場合に速かに診断をなされて、有効性が確認されている医薬品を早期から御使用いただく。そういったことを今回確立するということで、現在、日本ではまだ症例数は大変少ない状況ですけれども、今後の新規の症例発症の場合にも、迅速に対応できることを可能にすると理解してよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御指摘のとおりです。
○森部会長 どうもありがとうございました。それでは、特に御意見ないようですので、議決に入らせていただいてよろしいですか。
 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。大変希少な疾患ですが、本剤の開発に御従事いただきました企業の方々や患者の方々に厚く御礼申し上げます。
 では続きまして、議題8に移ります。
○医薬品医療機器総合機構 続きまして議題8、資料No.8、医薬品アトガム点滴静注液250mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.8のフォルダの「審査報告書」のファイルをお開きください。本説明中にお示しするページ数は、各ページ下段に青色で記載の、○/42の数字を使用いたします。本剤は、ヒト胸腺細胞で免疫されたウマの血漿から分離生成された、抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン(以降、ウマATG)であり、強力なT細胞抑制作用を有します。本剤は、米国において1985年に再生不良性貧血の適応が承認されて以降、複数の国または地域において承認されており、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議による開発要請を受けて、開発が進められたものです。
 今般、この開発要請を受けて実施した国内臨床試験成績が得られたことから、この試験の成績に加え、国内外における臨床試験、公表文献、教科書、診療ガイドライン等を根拠として、中等症以上の再生不良性貧血の効能・効果で、製造販売承認申請がなされました。本剤の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料No.21に記載した6名の委員です。
 審査の概略について御説明いたします。審査報告書4/42ページ、上から4~7行目を御覧ください。まず、本剤の品質について御説明いたします。本剤の原料となるウマ血漿を得るため、ウマの免疫に使用されるヒト胸腺について、生物由来原料基準で規定されているドナーの適格性確認の一部が実施されていませんでした。
続きまして、審査報告書7/42ページ、2.R.1項を御覧ください。しかしながら、ヒト胸腺を採取した後にドナーが症状等に気付いた場合には、その旨を連絡されること、ウマ免疫前のヒト胸腺の処理等の状況、本剤の精製工程におけるウイルス不活化/除去能が確認されていること等から本剤の品質及び安全性への影響がない、とする申請者からの説明を踏まえ、本剤を使用することは可能と判断いたしました。
なお、本剤は前に説明した特殊な論点があることから、品質評価に関するコメントを頂くために、医薬品第二部会の委員でもある国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部部長の石井明子先生に御意見を伺っております。石井先生からは、申請者からの説明に基づく機構での整理、考察は妥当と考える旨、コメントを頂いております。
 以降は臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書18/42ページ、表13を御覧ください。有効性については、12週時点の網赤血球数・好中球数・血小板数に基づく血液学的反応が主要評価項目とされ、表右端のとおり、国内臨床試験に組み入れられた3例中2例で有効性ありと判断されました。また、審査報告書の19/42ページ、表14を御覧ください。本剤の申請用法・用量と同じ用法・用量にて有効性等を検討した公表文献が複数報告されており、これらの報告を踏まえ、教科書及び診療ガイドラインにおいても、申請用法・用量での本剤の使用が推奨されています。
以上より、国内臨床試験は少数例での非盲検非対照試験であり、この試験の成績に基づく有効性の評価には限界があるものの、3例中2例で本剤による有効性が認められたこと、申請用法・用量での有効性等に関する報告が複数あり、教科書などで本剤の使用が推奨されていること、加えて、2009年まで本邦に供給されていた、本剤とは異なるウマATG製剤の日本人における一定の使用実績が蓄積されていることも考慮すると、本邦においても中等症以上の再生不良性貧血患者に対する、ウマATGである本剤の有効性は期待できると判断いたしました。
 次に審査報告書21/42ページ、7.R.3項を御覧ください。安全性については提出された臨床試験、公表文献等において認められている有害事象、並びに類薬のウサギATG製剤であるサイモグロブリン点滴静注用25mgで注意喚起されている有害事象について検討し、本剤投与時に特に注意を要する有害事象は、2行目以降に記載したショック・アナフィラキシー、サイトカインリリースシンドローム、血清病等のinfusion reaction、骨髄抑制、感染症、出血、肝機能障害、腎機能障害及び間質性肺炎であり、本剤の使用に当たっては、これらの有害事象の発現に注意すべきと判断し、添付文書において注意喚起することが適切と判断しております。
本剤の使用に当たっては、これらの有害事象の発現に注意すべきであるものの、再生不良性貧血に対して十分な知識と経験を持つ医師によって、有害事象の観察や管理、本剤の休薬・中止等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能であると判断いたしました。以上の審査の結果、機構は本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、再審査期間は10年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
最後に一点。審議事項以外での説明事項があります。今般、本剤が投入された場合には、再生不良性貧血の治療薬としてウマ、ウサギと由来動物の異なるATG製剤が使用可能となります。同じ動物種由来の血清製剤を再投与した場合には、ショック等の発現リスクが懸念されることから、添付文書において、本剤を含むウマ血清製剤の投与歴のある患者には、他種由来のATG製剤の投与を考慮する旨を注意喚起する予定です。これに関連し、既承認のウサギATG製剤であるサイモグロブリン点滴静注用25mgの添付文書についても、同様の注意喚起を行う方針で、厚生労働省にて検討中と聞いております。説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 大変重要な点も喚起できました。ありがとうございました。それでは委員の先生方から御質問、御意見等ございますか。いかがでしょうか。
○佐藤(直)委員 佐藤ですけど、よろしいでしょうか。一つ確認なのですが、再投与する場合、他のウマの製剤は禁忌と記載がありますが、再投与に関してはどのように対応するのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤投与して、その後再発等した患者さんに対しまして、再度ATG製剤を再投与するということ自体は、ガイドライン等にも記載があることですので、再投与される可能性はあるかとは考えております。一方で、先ほどちょっと説明をさせていただいたとおり、本邦において、これまでウサギのATG製剤のみしかなかったところ、今般、本剤が承認されることにより、異なる種のATG製剤が2剤そろうことになりますので、再度投与する場合には、ほかのATG製剤を投与するということも含めて、現場にて検討されるものと考えております。説明は以上です。
○佐藤(直)委員 はい、分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 そのほか先生方から御質問、御意見ございますか。よろしいでしょうか。では議決に入らせていただきます。なお、川上委員、高橋委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことになっています。
 では本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして議題9に移ります。議題9につきまして、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題9、資料No.9、ファリシマブ(遺伝子組換え)を、希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明します。「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書の最初のページ中段を御覧ください。申請者は「中外製薬株式会社」、予定される効能・効果は、「新生血管を伴う網膜色素線条」です。
 まず、対象患者について、本邦のDPCデータから、全国DPC対象施設における網膜色素線条の患者数は、約1,100人と推計されています。また、網膜色素線条の原因疾患の一つとされている弾性線維性仮性黄色腫の患者数、及びこれを原因疾患とした網膜色素線条患者の割合に関する報告等を踏まえ、網膜色素線条患者数は約350~510人と推計されております。以上より、5万人未満の要件を満たすと考えております。
 次に、医療上の必要性について、網膜色素線条は脈絡膜新生血管が黄斑部に及んだ場合には、無治療では視力予後が不良です。本邦では現在、網膜色素線条に関する効能・効果で承認されている薬剤はないため、脈絡膜新生血管を伴う網膜色素線条に対する新たな治療薬の開発が求められています。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性について、現在、国内第III相試験を実施中であり、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは議決に入らせていただきます。なお、高橋委員、中西委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっています。では、本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題10に移ります。議題10につきましても、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題10、資料No.10、リツキシマブ(遺伝子組換え)について、臓器移植における抗体関連型拒絶反応の治療を予定効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定することの可否について、事務局より御説明いたします。「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書最初のページ中段を御覧ください。申請者は「全薬工業株式会社」、予定される効能・効果は記載のとおりです。以下、「臓器移植における抗体関連型拒絶反応」は、ABMRと略させていただきます。この後の審議事項11においても同じ略称を使わせていただきます。
 まず、対象者数について、日本移植学会が中心となり実施した調査の結果、ABMRに対する治療が行われた症例数は腎移植で493例、それ以外の肝臓等の合計は125例とされており、指定基準を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性について、ABMRはレシピエントが保有する抗HLA抗体等に起因して生じる拒絶反応であり、発現機序や現在実施されている処置等については、移植臓器による差異はありません。ABMR治療としては、現在、ステロイドパルス療法等が行われているものの、ABMRの原因となる抗体産生を直接的に抑制するような治療薬はありません。本剤は抗体産生細胞に分化するヒトB細胞に結合して傷害することから、抗体産生を抑制すると考えられ、ABMRの治療薬として医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性についてですが、ABMRを発現した腎移植患者を対象とした本剤の国内第III相試験が実施され、主要評価項目について有効性の達成基準を上回る等の結果が得られています。また、腎臓や肝臓等の移植を対象とした国内使用実態調査等から、本剤の有効性及び安全性に関するデータが集積されております。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは議決に入らせていただきます。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。特に異議はないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、続いて議題11に移らせていただきます。議題11につきましてお願いいたします。
○事務局 議題11、資料No.11、リツキシマブ(遺伝子組換え)について、臓器移植における抗体関連型拒絶反応の抑制を予定効能・効果として、「希少疾病用医薬品に指定することの可否」について御説明いたします。同じく、「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。
 まず、対象患者数について、先ほど同様に日本移植学会が中心となり実施した調査の結果、抗HLA抗体等陽性移植例数は腎移植で529例、それ以外の肝臓等での合計は145例とされております。よって指定基準を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性について、移植前の抗体産生の抑制には、既存治療としてアザチオプリン等があるものの、ABMRの原因となる抗体産生を直接的に抑制するような治療薬はなく、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に開発の可能性について、生体腎移植患者を対象とした本剤の国内第III相試験が実施され、主要評価項目である移植24週後時点の生着率は91.7%でした。また、腎臓・肝臓等の移植を対象とした国内使用実態調査等から、本剤の有効性及び安全性に関するデータが集積されています。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは委員の先生方から御意見、御質問等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ないようでしたら、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、議題12に移ります。議題12につきまして、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題12、資料No.12、fidrisertibを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書最初のページ中段を御覧ください。申請者は「IPSEN株式会社」、予定される効能・効果は「進行性骨化性線維異形成症」です。以下、「進行性骨化性線維異形成症」はFOPと略させていただきます。
 まず、対象者数について、FOPは指定難病で指定基準を満たしているものと考えております。次に医療上の必要性について、FOPはALK2遺伝子の変異を原因とする遺伝性疾患であり、軟部組織浮腫及び異所性の骨形成が生じる疾患です。本邦ではFOPに対する治療薬は存在しておりません。本剤は非臨床試験において、ALK2に対する阻害作用が示され、FOPモデルマウスでも外傷誘発性浮腫等の発症を抑制する結果が得られており、新規のFOP治療薬として期待されます。
以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に開発の可能性について。現在、国際共同試験が実施中であり、本邦の医療機関も参加されることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件は満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見いかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。それでは議決に入らせていただきます。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして議題13に移ります。事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題13、資料No.13、lonafarnibを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明いたします。同じく、「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書最初のページ中段を御覧ください。申請者は「アンジェス株式会社」、予定される効能・効果は記載のとおりです。以下、「ハッチソン・ギルフォード・プロジェリア症候群」はHGPS、「プロジェロイド・ラミノパチー」はPLと略させていただきます。
 まず、対象者数について、HGPSは指定難病であり、またプロセシング不全性のPLについては、文献調査から、2例の国内患者の生存が確認されていることから、指定の基準を満たしていると考えております。
 次に、医療上の必要性について、HGPS及びプロセシング不全性のPLは、プロジェリン又はプロジェリン様タンパク質の蓄積により、早期老化を来す疾患です。本邦ではこれらに係る効能・効果を有する治療薬はなく、臨床症状に対する対症療法が主に実施されております。本剤はヒトファルネシルトランスフェラーゼに対する阻害作用を有し、プレラミンAのファルネシル化を阻害することで、プロジェリン又はプロジェリン様タンパク質の生成を抑制し、病態の進行を抑制又は改善することが期待されております。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に開発の可能性について、HGPS及びプロセシング不全性のPL患者を対象とした、海外臨床試験が実施され、日本人患者3例が組み入れられております。当該試験の結果等から、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、先生方から御質問や御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議はないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告いたします。
 続きまして議題14に移ります。事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題14、資料No.14、Lu AF82422を先駆的医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。「先駆的医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書最初のページ中段を御覧ください。申請者は「ルンドベック・ジャパン株式会社」、予定される効能・効果は「多系統萎縮症」です。
 まず、指定要件1、治療薬の画期性について御説明します。本剤はin vitro試験の結果から、多系統萎縮症患者の脳検体へのα-シヌクレインに結合し、α-シヌクレインの播種及び凝集を阻害することが示されており、現時点でα-シヌクレインを標的とする薬剤は承認されていないことから、指定要件1を満たしているものと考えております。
 次に、指定要件2、対象疾患の重篤性について御説明します。多系統萎縮症は、急速に進行する孤発性神経変性疾患であり、自律神経機能不全、パーキンソニズム、小脳症状を特徴とします。発症後は平均約5年で車椅子使用、約8年で臥床状態となり、発症後の生存期間の中央値は6~9年と報告されており、本疾患は生命に重大な影響がある重篤な疾患及び根治療法がなく、社会生活が困難な状態が継続する疾患であることから、指定要件2を満たしていると考えております。
 続いて、指定要件3、対象疾患に対する極めて高い有効性について御説明します。この指定要件につきましては、通知において既承認薬が存在しない、又は既存の治療薬、治療法に比べて、有効性の大幅な改善が見込まれる。若しくは著しい安全性の向上が見込まれることを要件とされております。本剤については現在、多系統萎縮症を効能・効果として承認されている薬剤が存在しないこと等から、指定要件3を満たしているものと考えております。
 最後に、指定要件4、世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思・体制について御説明します。本剤は世界と同時に、本邦で承認申請を行う予定とされていることから、指定要件4を満たすと考えております。したがいまして、先駆的医薬品の指定の4要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは委員の先生方から、御質問、御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。石川先生。
○石川委員 石川です。ありがとうございます。ちょっと質問してもよろしいですか。
○森部会長 どうぞお願いします。
○石川委員 この資料の中で、幾つか理解ができなかった点があるのですけれども、例えば36ページ中の14ページのパネル5という所の説明の一番下の所ですね。そこに、Lu AF82442を用いた免疫枯渇によりMSA PDうんぬんと書いてあって、最終的にその凝集体が抑制されたというものがございますけれども、あっ、ごめんなさい、すみません。その上ですね。パネル4の説明した中の最後の行の、α-シヌクレインレベルがCisbioで測定したα-シヌクレイン凝集体のレベルに対応していたと書いているのですけれども、これはデータがないように思うのですけれども、機構の方では、御確認されていますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。先生に御指摘いただいた箇所を確認しておりますので、少々お待ちいただければと思います。
○石川委員 もう一つ質問させていただいていいですか、その間。
○森部会長 はい、お願いします。
○石川委員 臨床試験の最後に、デザインのところなのですけれども、例えば28/36ページ~29/36ページにかけての説明で、標的結合および用量検討という小見出しが28ページの所にあると思うのですね。それで血漿中の結合をもともと見ていて、良好な相関関係が認められたというのが、最初の段落の所の結論として書かれています。28ページの標的結合および用量検討という小見出しの最初の段落の所ですね。これは血漿中で調べていらして、最終的には29ページの最初の図は、髄液中になっているように思うのですね。その説明が、この血漿中と髄液中の関係を裏付けるデータというのを確認されているかどうかについても質問です。文章を読んでいるだけだと、どうしてこういう図が出るかが分からないのですが、この点も御確認されたかを教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 石川先生、御質問ありがとうございます。機構です。2件目に頂いた御質問なのですけれども、あくまでも今回の標的結合と用量の検討に関しては、申請者自身がvitroのデータ等も踏まえて、まずは用量を予測したというところの情報でして、機構で詳細な情報までは、ここに提示されている以上の情報は確認しておりませんが、最終的に承認申請された際の用法・用量の妥当性につきましては、今後に得られる臨床試験成績等も踏まえまして、審査の中で確認してまいりたいと思います。以上でございます。
○石川委員 分かりました。ちょっと臨床試験を掛けるに当たって、今の二つ目の質問の方は根幹になるのではないかと思ったものですから、お尋ねしたのですけれども、もし、そういうことではないということなら、またそのときに教えていただければと思います。
 一つ目の質問に関しては、それも根本的な問題なのですけれども、ちょっと時間が掛かるようでしたら、また別のときに回答していただければと思います。ありがとうございました。
○森部会長 石川先生、では進めてよろしいですか。
○石川委員 はい、どうぞお願いいたします。
○森部会長 機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。すみません、ちょっと今、回答ができない状況ですので、また追って御説明させていただければと思います。
○石川委員 そうしましたら、その会社の方にお尋ねになるときには、例えば最初の方のパネルに、ちょっと字が隠れてしまって見えにくかったりしていますので、具体的には、13ページのパネル3の完全長及び切断型が完全長とかもかぶってしまって、少なくとも私が頂いた書類は、そうなっているのですけれども、こういうのがもうちょっと、きちんと写るように、その上の方のパネル3の上の所、一番上、IgG HEL(対照)というものが、多分コントロールというものの上にかぶってしまっていたり、そういったところを修正してもらった方が見やすいと思います。ほかにもちょっと、幾つかそういうものが見えますので、どうぞよろしくお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。資料の不備等ございまして、大変失礼いたしました。今後は気を付けたいと思います。ありがとうございます。
○森部会長 では、そのほか、先生方から御発言はありますでしょうか。特にないようでしたら、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして議題15に移ります。事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題15、資料No.15、サトラリズマブ(遺伝子組換え)を先駆的医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。「先駆的医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書最初のページ中段を御覧ください。申請者は「中外製薬株式会社」、予定される効能・効果は、「自己免疫介在性脳炎」です。
 まず、指定要件1、治療薬の画期性について御説明いたします。本剤はpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体であり、自己免疫介在性脳炎の病態メカニズムに関与している可能性がある自己抗体産生等の抑制が期待できます。自己免疫介在性脳炎に対する治療薬として、承認された薬剤はないことから、指定要件1を満たしているものと考えております。
 次に、指定要件2、対象疾患の重篤性について御説明します。自己免疫介在性脳炎は記憶障害、認知機能障害、精神症状、てんかん発作等の複雑な神経精神症状を特徴とする疾患です。急性期には、集中治療室での治療を必要とすることが多く、死亡に至る患者も存在し、急性期を脱した後も、社会生活に影響を及ぼすような認知機能障害等が残存することがあり、本疾患は生命に重大な影響がある重篤な疾患及び根治療法がなく、社会生活が困難な状態が継続する疾患であることから、指定要件2を満たしていると考えております。
 続いて指定要件3、対象疾患に対する極めて高い有効性についてですが、本剤については現在、自己免疫介在性脳炎を効能・効果として承認されている薬剤が存在しないこと等から、指定要件3を満たしているものと考えております。
 最後に、指定要件4について御説明します。本剤は、世界で初めて申請される国又は地域と同時に、本邦で承認申請を行う予定とされていることから、指定要件4を満たすと考えております。したがいまして、先駆的医薬品の指定の4要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、先生方から御質問、御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。なお、川上委員、高橋委員、中西委員、長谷川委員、前田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。では本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして議題16に移ります。議題16につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 議題16、資料No.16、先ほどの議題と同じ成分になりますが、サトラリズマブ(遺伝子組換え)を先駆的医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。「先駆的医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書最初のページ中段を御覧ください。申請者は「中外製薬株式会社」。こちらの議題では、予定される効能・効果は、「抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患」です。
 まず、指定要件1、治療薬の画期性について御説明します。本剤はpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体であり、本疾患の病態メカニズムに関与している可能性がある自己抗体産生等の抑制が期待できます。本疾患に対する治療薬として、承認された薬剤はないことから、指定要件1を満たしているものと考えております。
 次に、指定要件2、対象疾患の重篤性について御説明します。抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患は、視神経炎、脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎等が認められる発作を呈し、青年期及び成人の患者では約80%で再発が見られ、再発を繰り返すことで運動機能、視力等の障害が重症化するとともに、社会生活に影響を及ぼすような機能障害が残存することがあり、本疾患は根治療法がなく、社会生活が困難な状態が継続する疾患であることから、指定要件2を満たしていると考えております。
 続いて、指定要件3、対象疾患に対する極めて高い有効性についてですが、本剤については、現在、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患を効能・効果として承認されている薬剤が存在しないこと等から、指定要件3を満たしているものと考えております。
 最後に、指定要件4、世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思・体制についてですが、本剤は世界で初めて申請される国又は地域と同時に、本邦で承認申請を行う予定とされていることから、指定要件を満たすと考えております。したがいまして、先駆的医薬品の指定の4要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。御質問、御意見いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。なお、高橋委員、中西委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっています。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして報告事項に移ります。それでは報告事項、議題1につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項の議題1、資料No.18-1と18-2を御覧ください。医療用医薬品の再審査結果について御報告させていただきます。
今回御報告する再審査の結果は、資料No.18-1が、献血ノンスロンに関するもので、資料No.18-2がタペンタ錠に関するものです。これらの品目につきまして、製造販売後調査等に基づいて再審査申請が行なわれ、機構における審査の結果、効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要のないカテゴリー1と判定されております。以上です。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは報告事項、議題1につきましては御確認いただいたものとします。
 続きまして、そのほかの事項に移ります。そのほかの事項、議題1につきまして、事務局からお願いいたします。
○事務局 その他事項、議題1、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について、事務局より御説明いたします。その他事項の資料19、「公知該当性評価報告書」のファイルをお開きください。
 今回、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが適当とされ、本部会に御報告する品目が3品目ございます。2ページを御覧ください。一般社団法人日本リウマチ学会より、リツキシマブ(遺伝子組換え)の既存治療で効果不十分なループス腎炎の効能・効果追加が要望されたものです。医療上の必要性に関しては、既に該当ありとされております。
 続いて48ページ下方、「8.効果・効能及び用法・用量等の記載の妥当性について」を御覧ください。効能・効果に「既存治療で効果不十分なループス腎炎」を追加しております。次のページにお進みいただき、効能・効果関連注意については、「既存治療(ステロイド、免疫抑制剤等)で十分な効果が得られない患者に対して本剤の投与を考慮すること。」と記載することが適切と判断されました。用法・用量につきましては、中ほどに記載がありますとおり、リツキシマブとして1回375mg/mを1週間間隔で4回点滴静注することとし、関連注意には服腎皮質ステロイドの併用、再投与時の注意喚起をすることとしております。これらの設定根拠につきましては、国内外の診療ガイドライン、教科書、公表文献の記載内容等を踏まえ、当該効能・効果、用法・用量は、医学薬学上公知であると判断しております。
 続きまして55ページを御覧ください。日本外科学会よりインドシアニングリーンの肝外胆管の描出の効能・効果の追加が要望されたものです。こちらも医療上の必要性に関しては、既に該当ありとされております。
 次に67ページ「8.効能・効果及び用法・用量等の記載の妥当性について」を御覧ください。次のページになりますけれども、効能・効果は肝外胆管の造影とすることが妥当と判断しております。また、用法・用量については、インドシアニングリーンとして2.5mgを1mLの注射用水で溶解し、静注内投与するということが妥当と判断されました。設定の妥当性ですが、海外における承認状況、国内外の臨床試験成績及び教科書、並びに海外ガイドラインの記載内容を踏まえ、当該効能・効果、用法・用量は、医学薬学上公知であると判断しております。
 次に、74ページを御覧ください。日本小児循環器学会、日本川崎病学会より、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムの川崎病の急性期の効能・効果の追加が要望されたものです。医療上の必要性に関しては、こちらも既に該当ありとされております。
 次に、89ページ、「8.効能・効果及び用法・用量等の記載の妥当性について」を御覧ください。効能・効果は川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)とし、関連注意として静注用免疫グロブリン不応例、又は静注用免疫グロブリン不応予測例に投与することが妥当と判断しております。また、用法・用量については、通常のメチルプレドニンゾロンとして、30mg/kg(最大1,000mg)を1日1回、患者の状態に応じて1~3日間点滴静注するということが妥当と判断されました。設定の妥当性ですけれども、国内外の教科書及びガイドラインの記載内容を踏まえ、当該効能・効果、用法・用量は医学薬学上公知であるというように判断しております。以上となります。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、御質問、御意見いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。それでは、そのほか事項、議題1につきましては、御確認いただいたものとさせていただきます。本日の議題は以上となります。事務局から何かありますでしょうか。
○事務局 次回の部会は、令和5年4月26日水曜日午後6時から開催させていただく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 本日も大変長時間となりましたが、一つ一つ丁寧に御議論いただき、どうもありがとうございました。本日は以上とさせていただきます。失礼します。
( 了 )
 
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)