2023年1月27日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和5年1月27日(金)16:00~

出席者

出席委員(17名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人4名出席
欠席委員(3名)五十音順
行政機関出席者
  •  八神敦雄(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  中井清人(医薬安全対策課長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日は、お忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 今回、薬事・食品衛生審議会の委員の改選が行われまして、本部会についても、新しく委員の任命が行われております。つきましては、事前にお送りしております医薬品第一部会の名簿に即しまして委員の先生方を紹介させていただきます。まず、本日御欠席ですが赤羽悟美委員、石川欽也委員、大谷壽一委員、本日御欠席予定ですが大森哲郎委員、川上純一委員、合田幸広委員、佐藤直樹委員、佐藤雄一郎委員、柴田大朗委員、代田浩之委員、新しく御参加いただきます髙橋悟委員、田﨑嘉一委員、新しく御参加いただきます中西浩一委員、長谷川俊史委員、堀恵委員、本日御欠席ですが新しく御参加いただきます前田愼委員、松野智宣委員、宮川政昭委員、森保道委員、それから新しく御参加いただきます矢野育子委員、以上です。
 また、本部会の部会長でございますが、昨日1月26日に選任が行われておりまして、医薬品第一部会につきましては森保道委員に部会長をお願いすることとされておりますので、御報告申し上げます。よろしくお願いします。
 さらに、薬事・食品衛生審議会令第7条第5項の規定に基づきまして、部会に属する委員のうちから、部会長があらかじめ指名する者がその職務を代理するとされており、部会長代理については、部会長から御指名いただくこととなっております。森部会長、いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。
○森部会長 ただいま部会長の指名を賜りました森保道でございます。どうぞよろしくお願いいたします。部会長代理におかれましては、合田委員にお願いしたいと存じます。皆様、いかがでございましょうか。ありがとうございました。それでは、合田委員に部会長代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○合田委員 了解しました。
○医薬品審査管理課長 合田委員、よろしくお願いいたします。それでは、出欠状況を改めて御報告します。本日ですが、先ほど御紹介しました3名の御欠席に加え、石川委員、川上委員、佐藤委員が後ほど御参加いただけると伺っております。したがいまして、現在のところ、当部会委員数20名のうち14名の委員がこの部会に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 また、本日ですが、審議事項議題1に関しまして、聖路加国際病院小児診療教育アドバイザーの草川功先生、国立成育医療研究センター手術・集中治療部統括部長の鈴木康之先生を、それから審議事項議題3に関して、公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院理事長の稲垣暢也先生を、それから審議事項議題8に関して、北里大学名誉教授の海野信也先生を、それぞれ参考人としてお呼びしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今回は改選後最初の医薬品第一部会でございますので、特に御留意いただきたい事項などにつきまして担当の事務局より御説明させていただきます。
○事務局 それでは、本部会への参加に当たっての留意事項を3点ほど御説明させていただきます。
 第1に守秘義務の関係です。国家公務員法第100条におきまして、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と規定されております。本審議会の委員、臨時委員、専門委員は非常勤の国家公務員であり、この規定の適用を受けますので、職務上知り得た秘密につきましては漏らすことのないようお願いいたします。
 第2に薬事に関する企業等との関係です。関連資料としまして、事前にメールにて資料16の薬事分科会規程及び薬事分科会における確認事項をお送りしております。適宜御覧いただければと思います。こちらの資料の7/29ページを御覧ください。薬事分科会規程第11条におきまして、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。こちらは、審議の中立性、公平性を確保する観点から規定されております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。
 第3に薬事分科会の審議事項でございます。13/29ページを御覧ください。医療用医薬品という見出しの表の右側、「部会」「分科会」と書かれております欄に、区分ごとに印が付いております。○印は審議、△印は報告、▲印は文書配布による報告、×印については審議・報告はなしとなっております。基本的には、これに基づき、部会、分科会において審議をお願いしております。
 6/29ページにお戻りください。第7条におきまして、「部会における決定事項のうち、比較的容易なものとして分科会があらかじめ定める事項に該当するものについては、分科会長の同意を得て、当該部会の議決をもって分科会の議決とする。ただし、当該部会において、特に慎重な審議を必要とする事項であるとの決定がなされた場合には、この限りではない」と定めております。先ほどの表に記載しております事項以外にも、このただし書きにありますように、部会において特に慎重な審議を必要とする事項であると決定された場合には、分科会において御審議をお願いすることとなります。
 委員の皆様におかれましては、このような規定を御承知の上、御審議いただきますようお願いいたします。説明は以上ですが、御不明な点がございましたら、事務局までお申し付けください。
○医薬品審査管理課長 事務局の説明は以上でございます。森部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 部会長の森でございます。よろしくお願いいたします。では、事務局から審議の進行方法の御説明をお願いいたします。
○事務局 審議の進行方法について御説明いたします。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に発言者を御指名いただきます。発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言いただきますようお願いします。なお、発言者が多いときには、発言されたい委員がメッセージ等で御記入、あるいは手挙げしていただければ、部会長より発言者を順番に御指名いただきます。適宜、メッセージ機能や手挙げ機能等も御利用ください。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず、事務局から、資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきまして御報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りした資料のうち、資料No.1-1~資料No.16と製剤写真を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。
 このほか、資料No.12として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.13として「専門委員リスト」、資料No.14として「競合品目・競合企業リスト」、資料No.15として「医薬品第一部会委員名簿」、資料No.16として「薬事分科会規程及び薬事分科会における確認事項」を、事前に電子メールにてお送りしております。また、直前の送付となりましたが、資料1-3として「プレセデックスに係る第一部会での御指摘及び対応について」と、資料10-4として「メフィーゴパック パブリックコメント資料案」を本日お送りしております。そちらも御準備をお願いします。なお、システムの動作不良などがございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続きまして、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料No.14を御覧ください。
 1ページ、「プレセデックス」ですが、本品目は「小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページ、「エンタイビオ」ですが、本品目は「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページ、「ウゴービ」ですが、本品目は「肥満症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページ、「マシテンタン」ですが、本品目は「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページ、「ダニコパン」です。本品目は「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページ及び8ページ、「ステラーラ」ですが、本品目は「クローン病及び潰瘍性大腸炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 9ページ、「モビコール」ですが、本品目は「慢性便秘症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 11ページ、「メフィーゴパック」ですが、本品目は「子宮内妊娠が確認された妊娠63日以下の者に対する人工妊娠中絶」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤がないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○森部会長 今の事務局からの説明につきまして、特段の御意見、御質問等はございませんでしょうか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきましては、皆様の了解を得たものとさせていただきます。次に、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりでございます。
 議題1、「プレセデックス」については、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員、高橋委員です。
 議題2、「エンタイビオ」については、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。
 議題3、「ウゴービ」については、退室委員、議決に参加しない委員、共にいらっしゃいません。
 議題4、「マシテンタン」については、退室委員なし、議決に参加しない委員、佐藤直樹委員、代田委員、高橋委員、中西委員、矢野委員です。
 議題5、「ダニコパン」については、退室委員、議決に参加しない委員、共にいらっしゃいません。
 議題6、「ステラーラ」については、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。
 議題7、「モビコール」については、退室委員、議決に参加しない委員、共にいらっしゃいません。
 議題8、「メフィーゴパック」についても、退室委員、議決に参加しない委員、共にいらっしゃいません。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明について、特段の御意見等はございませんでしょうか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものとさせていただきます。本日は、審議事項8議題、報告事項2議題、その他事項1議題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移ります。本日の審議事項議題1につきまして、機構より概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品プレセデックス静注液200μg「ファイザー」他1規格の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、前回御審議いただいた昨年10月の医薬品第一部会以降の状況を御説明いたします。
 資料No.1-2を御覧ください。なお、資料No.1-2について、事前に宮川委員より御意見を頂きまして、御指摘を受けて修正した資料、資料No.1-3を本日事務局より御送付しておりますが、資料No.1-3の修正内容については、後ほど事務局より御説明があります。
 資料No.1-2、1ページの2の項を御覧ください。こちらの項に、前回の医薬品第一部会で御指摘を頂いた内容を要約して3点に分けて記載しております。
 御指摘の内容の1点目ですが、本邦で実施された治験において、本剤で効果不十分時のレスキュー薬として使用されたプロポフォールは、本邦の臨床現場で使用されることはほとんどないと想定されるため、本剤とプロポフォール以外の鎮静薬との併用時の安全性を含めて情報を整理する必要があるとの御指摘を頂きました。
 2点目として、治験での環境と本邦の医療現場での、本剤を使用する医師の専門性の相違など、医療環境の乖離を考慮しても、本邦の医療現場で本剤を安全に使用できるのか、関連学会との協議内容も示した上で、安全対策の妥当性を説明する必要があるとの御指摘を頂きました。
 3点目として、小児を対象に本剤を投与した試験の2例で重大な呼吸抑制が報告されていること、及び当該情報に基づき治験計画立案時に投与時間について申請者と米国FDAとの議論があったことを踏まえ、治験における本剤の投与時間が選択された理由が分かる情報を医療現場に提供することが適切であるという御指摘を頂きました。
 同ページの3の項を御覧ください。先の御指摘を踏まえ整理をした安全性情報や安全対策を改めて御説明するとともに、申請者と関連学会との協議内容についても御説明させていただきます。さらに、治験計画立案時の投与時間の選択に関する申請者と米国FDAとの議論及び必要と考える対応についても併せて御説明させていただきます。
 まず、1点目の御指摘に関して、本剤とほかの鎮静薬を併用するときの安全性について御説明します。2ページの1)の項を御覧ください。本邦の医療現場では、プロポフォール以外の静脈鎮静薬、具体的にはバルビツール酸系薬剤、ミダゾラムなどと併用されることが多いと想定されることから、これら薬剤との併用時の安全性データを確認いたしました。同ページの2)の項を御覧ください。確認できた臨床試験等の概要は8ページ以降の別紙にお示ししているとおりであり、一部は適応症や用法・用量が異なりますが、これらの安全性データからは、本剤とバルビツール酸系薬剤あるいはミダゾラムなどを併用した際の安全性上の重大な懸念は示唆されておりませんでした。ただし、これらの鎮静薬を併用する場合には、鎮静合併症、具体的には循環動態及び呼吸状態に関する有害事象の発現リスクが高まることが想定されることから、次に御説明する安全対策を行うこととしております。
 続いて、2点目の御指摘に関して、治験と本邦の医療環境の乖離も踏まえた安全対策について御説明いたします。2ページの(2)の項を御覧ください。本邦の医療現場では、一般の小児科医が本剤を使用して鎮静を実施することが想定されます。また、医療設備及び医療体制に関して、小児患者のMRI検査のための鎮静をより安全に実施するための基準を示すことを目的に、本日、参考人としてお越しいただいている草川先生を中心に、関連学会が共同で、「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」を取りまとめております。治験では、この共同提言での推奨内容に沿った医療設備及び医療体制が整備された施設にて、必要なモニタリングが行われておりましたが、実際の医療現場では、鎮静を行っている施設において、共同提言にて推奨されている医療設備及び医療体制が整備されていない施設も存在することが想定されます。
 したがいまして、本剤とほかの静脈鎮静薬を併用する場合も含めて、本剤を安全に使用するためには、緊急を要する事態が生じた場合に速やかに適切な対処がなされるよう、必要な知識、技術を有する医師が、適切な医療設備及び医療体制の下で本剤を使用することを推進するための安全対策を講じる必要があると考えております。具体的な安全対策としては、3ページのⅰ)に記載している添付文書における注意喚起、4ページのⅱ)に記載している医療従事者向け資材による情報提供、同ページのⅲ)に記載している適正使用推進プログラムが、それぞれ実施される予定になっております。
 なお、ⅱ)医療従事者向け資材において、MRI検査を実施するに当たって、検査依頼医は、患者家族に対して、鎮静薬の副作用リスクを含む説明と同意取得を行う必要がある旨が記載されることになっております。資料No.1-2の通し番号29/80ページに該当の記載がありますので、適宜御参照いただければと思います。患者の御家族が、鎮静薬を使用することについて不安や疑問を感じる場合には、主治医である検査依頼医と十分に御相談していただくことが重要と考えております。
 続いて、申請者と関連学会との協議内容について御説明します。通し番号5ページの(3)の項を御覧ください。先に述べた適正使用推進プログラムにおいて、本剤を本適応で使用する際の施設、鎮静実施医師及び患者監視に専念する医療従事者の要件が設定されておりますが、これらの要件の設定に当たっては、関連学会とも協議が行われております。また、本剤の本適応に対する承認取得後、可能な限り速やかに、各要件及び適正使用推進プログラムの周知を含めた適正使用推進への協力依頼が関連学会を通じて行われる予定となっており、周知予定の文書案については、通し番号78/80ページ以降に記載がありますので、適宜御参照いただければと思います。
 当該文書におきましては、本剤単剤では処置あるいは検査を完了するための十分な鎮静効果が得られない場合の対処方法について、例えば他の静脈鎮静薬や緊急時に使用する薬剤の投与を念頭に、本剤を使用する場合には可能な限り2本以上の静脈ラインをあらかじめ確保しておくことなど、実際の診療での使用を想定した推奨がなされる予定になっております。また、本剤を本適応に使用するに当たりまして、麻酔科医などの専門医を除いて、プロポフォールの追加投与は推奨されない旨が記載される予定になっております。なお、当該文章の内容については、宮川委員より事前に御意見を頂戴しておりますので、後ほど事務局から御紹介をさせていただきます。
 また、医療従事者向け資材におきましても、同様の情報提供が行われる予定になっており、通し番号48/80ページに該当の記載がありますので、適宜御参照いただければと思います。
 最後に3点目の御指摘に関して、治験計画立案時の投与時間の選択に関する申請者と米国FDAとの議論を踏まえて、必要と考える対応について御説明します。6ページの(4)の項を御覧ください。治験計画立案時におきまして、公表論文にて報告された症例情報を踏まえ、米国FDAが申請者に、投与時間を変更するよう求めたという経緯があります。この症例について、前回の医薬品第一部会の審議資料では、発現した事象は「重大な呼吸抑制」と記載されておりましたが、「重大な徐脈」の誤記であることが判明したため、お詫びして訂正させていただきます。当該公表論文の情報及び治験計画立案時の投与時間の選択に関する申請者と米国FDAとの議論内容については、医療従事者向け資材にて情報提供される予定になっており、通し番号52/80ページに該当の記載がありますので、適宜御参照いただければと思います。
 以上、前回の医薬品第一部会での御指摘を踏まえた対応について、時間も限られておりますことから、資料1-2に沿って要点を御説明させていただきました。なお、前回の部会時点では、本申請適応について、米国で審査中と御説明しておりましたが、令和4年12月に米国にて承認されましたので、併せて御報告させていただきます。機構からの説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○事務局 続いて、事務局から、宮川委員より事前に幾つか御意見を頂いておりますので、その内容と、それに対する対応を御説明させていただきます。
 資料1-3をお開きください。まず、4ページに該当する件ですが、宮川委員からは、MRI等の検査が必要な2歳未満の患者の場合、一般的に様々な身体機能が未熟であることや重篤な先天性疾患を抱えていることが多いことから、より慎重に本剤を投与するべきであることを注意喚起することについて御意見を頂戴しております。
 臨床試験において、2歳以上と2歳未満で特定の有害事象等の発現状況は異なるといった傾向は認められてはおりませんが、治験での症例数も限られておりまして、宮川委員から御指摘いただいた御懸念は、機構としても考慮する必要があると聞いております。このため、機構から申請者に対して注意喚起の追加を指示いただいております。ここに記載している赤字のとおり、適正使用ガイドにおいては、低年齢の患者は解剖学的、生理学的にも未熟であり、新生児、乳児では呼吸に関する合併症の割合が高いことについても注意喚起がなされる予定です。具体的には、この資料の一番最後のページに適正使用ガイドの該当部分を抜粋しております。下の3.3.1項について、以下のように変更する予定と申請者から聞いております。
 続きまして、6ページを御覧ください。2点目の宮川委員から御指摘いただいている点としまして、6ページの上の部分に、学会から発出予定のレターの記載がありますが、このうち下から三つ目のポツの所で、2本以上の静脈ラインの確保について、もともと「可能な限り」と記載しておりましたが、その記載は分かりにくいのではないかとの御指摘を頂いております。これについては、学会の文書ですので、機構や厚生労働省から修正を指示することはできるものではないということについては御留意いただければと思っています。ただ、御指摘を頂いた点を踏まえて対応する案として、本日御出席いただいている参考人の鈴木先生とも御相談させていただいて、今回提示させていただいております。具体的には、「可能な限り」の記載は削除した上で、「望ましい。」と一端切った上で、かつ、なお書きで、2本以上の静脈ラインを確保できない場合の留意点を具体的に記載するといった形ではどうかと考えております。この案の妥当性も含めて、本日御議論いただいて、その結果については、部会意見として学会に対してお伝えするといった手続ではどうかと考えております。
 最後に、資料の6ページの下部に、米国FDAで議論がなされた文献について記載しておりますが、こちらについては、現状の記載ではCTDと文献のそれぞれの記載の関係が分かりにくいのではないかとの御指摘を頂いておりますので、文献の一部を引用するなどの明確化をさせていただいております。以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 機構と事務局からの御説明どうもありがとうございました。本日は、参考人の先生をお二方お招きしております。本議題についての御発言をお願いします。まず、草川先生から御発言をお願いしてよろしいですか。
○草川参考人 草川でございます。私は、この中に出てくるMRI検査時の鎮静の共同提言を作るときにずっと携わっておりまして、日本全国の鎮静に対する小児科医の考え方というものを、この10年間ぐらいずっと変化を見てまいりました。コロナで対面による講習会などができなくなってしまったということで、現状の把握が少ししづらくなった状態ではあるのですが、MRIの検査だけではなく、鎮静というものに対して、医療会、特に小児科の中でも非常にそこは大事なことということになっておりますので、意識がしっかりしてきています。ただ、その中にあって、添付文書上でしっかり使える静脈薬がない、静脈の鎮静に使える薬剤がないというのが逆に問題になってきておりますので、十分注意した上で、こうした薬剤が使えるということが、安全な鎮静のために一歩進む一番のところかなと、小児科医としては思っております。以上です。
○森部会長 草川先生、どうも御発言ありがとうございました。続きまして、鈴木先生から御発言を頂きます。よろしくお願いします。
○鈴木参考人 成育医療研究センターの鈴木でございます。私はこの治験に加わりまして、10例ほど治験の症例を行いました。まず、4ページに記載されている赤字の所、適正使用ガイドにて、低年齢の解剖学的、生理学的にも未熟であり、新生児、乳児では呼吸に関する合併症の割合が高いことが知られているので注意喚起がなされるということで、2歳未満の患者さんで、実際に今回のデータを見ても、特に2歳未満で合併症が多いということはなかったのですが、一般論としてこのようなことを記載するのは、注意喚起をする上で必要であろうということで、そのような形を取らせていただこうと思っています。
 実をいうと、いろいろデータを見てみますと、比較的低年齢の子は、もともと呼吸抑制や気道閉塞とかを起こしやすいことが分かっていますので、割と気を付けているのですが、むしろ年齢が高いお子さんの方が鎮静が効きにくいということで、過量投与になったりとか、合併症を起こしやすいとか、頻度としては小さい子の方が数としては多いのかもしれませんが、割合としては比較的多く起こっているということが最近分かってきたことなのです。ですので、小さいお子さんにはもちろん注意しなければいけないのですが、小さいお子さんだけではなくて、いろいろ合併症を持っているお子さんの方がより鎮静しにくいし、より注意が必要だということが、私たちが最近考えているところです。
 それから、6ページの所はかなり悩んだのですが、実際、我々が麻酔薬を点滴で投与するときとか、あとは静脈からプロポフォールを投与するときとか、静脈の持続の麻酔薬でレミフェンタニルというのがあるのですが、それを投与するときには、わざわざ2本取ることは実際にはしておりません。あとは、今回の治験のときも、子どもさんにラインを取るというのは結構難しいことも多いので、1本のラインで、患者の一番近い所に三方活栓を付けて、そこの三方活栓から投与するという形で治験も行われています。ですので、望ましいのは2本取ることです。その方が安全に投与できますし、いざとなったときの薬の投与も、残っているプレセデックス(デクスメデトミジン)が体の中に更に入ってしまうことを防げるので、その方がよろしいのですが、実際問題は患者になるべく近い所から投与するということをより丁寧に書くということで、赤字の所を加えております。
 それから、(4)の赤字の所ですが、2例に重大な呼吸抑制が報告というので、私もこの元の文献を見てみました。ちょっと驚いたのですが、これは中国から出ている文献でして、半年間で80件の気道異物の麻酔をしているのです。それで、プレセデックスとプロポフォールを使って麻酔をしているということで、結論としては、全体の論文の趣旨としては、プレセデックス(デクスメデトミジン)とプロポフォールを一緒に使った方が合併症が少なくて良かったと。逆に、醒めるまでに少し時間が掛かったというような趣旨でした。ここに書かれているとおり、呼吸抑制ではなくて、2例に徐脈があったと書かれているのですが、この徐脈というのも、sinus bradycardiaではなくて、いわゆるHeart Rateが60以下のものが3歳以上の患者さんに多かったというような形の書き方でしたので、むしろプレセデックスを安全に使えたというような趣旨でした。ですので、FDAとこの辺の議論があったみたいですが、論文の中身を見ますと、むしろ副作用が少なかったというのが趣旨であったようです。私の意見としては以上です。
○森部会長 どうも御発言ありがとうございました。それでは、委員の先生方から、御意見、御発言をお願いします。いかがでしょうか。宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。私から事前に問題点について、参考人の方々に教えていただきたいという思いから、いろいろ提言させていただきました。草川参考人、特に鈴木参考人からは、詳しくその点について御説明いただきまして、本当にありがとうございました。
 お二方のような素晴らしい先生の方々に、最終的には臨床上広く使われる状況になっているということであればとても幸いなことですが、そうではない場合も考えて、今後広く臨床で使用されたときのことを考えて、この3点を中心に御指摘させていただいたとお考えいただければと思います。
 先生方の示唆を、きちんと適正使用ガイドを含めて、広く現場に周知していただければならないと承知しております。私もこの承認の前からこの薬の存在を知っておりましたので、公知申請等を含めて協議の過程で大変大切な薬であるからこそ、しっかりと育薬という観点から使っていただきたいという思いで、発言させていただいたということを知りおいていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。以上です。
○森部会長 引き続いて、堀委員から御発言をお願いします。
○堀委員 私からは意見を申し上げます。COMLの堀と申します。よろしくお願いします。本日頂いた資料1-3の一番最後の所を御覧ください。12ページになります。適正使用ガイドの修正箇所という所の3.2を御覧ください。患者家族への説明と同意取得ですが、家族に対しては、1~4の説明をし、同意を得る必要があります、との記載でした。これを記載していただいたことは、本当に患者の家族としては有り難いことだと思います。そのことをふまえて、適正使用推進プログラムを受講されて要件を満たした医師というものが、患者の立場からでも確認ができるようなシステムを今後作っていただけたら有り難いと思います。私からは以上です。
○森部会長 機構から何かありますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘、御質問いただきましてありがとうございました。最後に御指摘を頂きました、患者様の立場で医師要件を満たしているかどうかを確認できるシステムについては、現状はそのようなシステムは予定しておりません。患者様の御家族として不安に思われる際に、実際に主治医の方が要件を満たしているかどうかを確認するような術があればよいという御指摘と理解させていただきました。先ほども御説明を差し上げたように、文書同意を取得する上で、患者様と御家族で何か御不安な点があるのであれば、主治医としっかり御相談していただいて、納得いただいた上でその医療を受けることが基本的な考え方かと考えています。
○堀委員 御返答ありがとうございます。その医師が本当にその要件を満たしている医師かどうかというのは、私たち患者には分からないので、その点がまだ不安は残るところですが、皆さんが適正使用推進プログラムを要件として確立していただいたことに関しては感謝しております。ただ、今後、このような意見もあるということを念頭に置きながら推進していただけたら有り難いです。私からは以上です。
○森部会長 そのほか、委員の先生から御発言はありますか。柴田委員、どうぞ。
○柴田委員 先ほど御説明いただきました資料1-2、資料1-3の(4)、書類の6ページの所の件です。先ほど鈴木先生から御説明いただきまして、結果として問題がなさそうであるということが理解できましたので安心いたしました。
 これは手続的なことではありますが、当初、重大な呼吸抑制が2例に起こったということがCTDに書いてあり、その論文や実際にどういう内容であるかというのは資料からは分からなかったのですが、なおかつ、FDAではそれによって専門家が関与して計画された治験の用法・用量を頭ごなしに否定されているという事実があったということは、やはり見逃さずに確認をされるべき事態であったとは思います。結果として、確認していただいて、問題がなかったことが分かりましたので、問題はないという結論になるのですが、そこのところは見逃しのないように御対応いただければと思います。情報提供も含めて、御対応に異存はありません。ありがとうございました。
○森部会長 ありがとうございました。機構からいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘を頂きましてありがとうございました。先生から頂いた御指摘を踏まえて、今後の審査に役立てていきたいと考えております。
○森部会長 そのほか、先生方から御発言はございますでしょうか。鈴木先生、1点教えていただきたいことがあります。先ほどの静脈のラインの2本のことに関することですが、2本を確保できない場合、なるべく患者さんに近い側管ということですが、これは例えば刺入部から何センチ以内などの目安等はありますか。
○鈴木参考人 これは何センチ以内と示すのはなかなか難しく、いろいろな輸液の機具が少量のものが販売されていまして、それで工夫をして、近い所から投与するという形しかないので、何センチ以内と具体的なことを示すのはなかなか難しいと思います。
 強いて言いますと、何センチというよりも、デッドスペースという言葉を使いますが、合流して完全に入るまでの用量が1ccとか2ccとか、少なければ少ないほどいいという形になります。
○森部会長 そちらの目安量を最適ガイドに追記する方法は可能ですか。
○鈴木参考人 実際問題は難しいと思います。
○森部会長 難しいでしょうか。
○鈴木参考人 はい。なるべくという言葉を使いようがないような気がするのです。
○宮川委員 宮川でございますが、鈴木先生、ありがとうございます。先生がおっしゃったように、デッドスペースに既存の薬が残っていないということを先ほど先生がおっしゃっていましたので、デッドスベースの中に残らないように、そういうことをきちんと確認するという意味合いのことを、括弧書きでもいいので、分かるようにしていただくことはできないのかと思っている次第なのですが、いかがでしょうか。
○鈴木参考人 では、ここは書きぶりを検討します。
○宮川委員 よろしくお願いします。
○鈴木参考人 一応、ポツの二つ上の所にも、「本剤が急速に投与されることを避けるため、併用する薬剤は可能な限り本剤とは別の静脈ラインから投与すること」と記載してあります。
○宮川委員 ありがとうございます。
○森部会長 そのほか、先生から御発言はよろしいですか。どうもありがとうございました。では、議決に入らせていただきます。なお、川上委員、高橋委員におかれましては、利益相反のお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっています。
 それでは、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 草川参考人、鈴木参考人、誠にありがとうございました。どうぞ御退室いただければと思います。
○鈴木参考人 ありがとうございました。
○森部会長 続いて、参考人をお呼びしております議題3について先に御審議いただきたいと思います。議題3について、機構から御準備をお願いします。議題3とその他事項議題1については関連性議題となりますので、まとめて御審議いただくこととなっております。まず、議題3について、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題3、資料No.3、医薬品ウゴービ皮下注0.25mgSD他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 本剤の適応疾患である肥満症について、本邦の診療ガイドラインでは、BMI25kg/m2以上を「肥満」と定義し、このうち、種々の健康障害と関連し、医学的に減量を必要とする病態を「肥満症」と定義しています。肥満は種々の健康障害を引き起こすことが知られており、海外の診療ガイドラインでは、食事療法及び運動療法を基本とした生活習慣の改善で十分な肥満改善効果が見られない場合には薬物治療を考慮するとされています。
 本邦の診療ガイドラインにおいても、海外と同様に、肥満症では、食事療法、運動療法及び行動療法からなる生活習慣の改善で、有効な減量又は合併症の改善が見られない場合に薬物療法を考慮するとされていますが、本邦における薬物治療の選択肢は限られています。そのほかの治療選択肢として外科療法がありますが、その適応は内科的治療で効果不十分なBMI35kg/m2以上の肥満症患者で、糖尿病、高血圧、脂質異常症等を合併する場合等であり、施設基準や医師要件等が規定されているため、実施施設も限られています。
 本剤は、GLP-1アナログであるセマグルチド(遺伝子組換え)を有効成分とする注射剤です。GLP-1受容体を介して、脳における食欲の調節機構に対して作用すること等により、肥満症患者に対して体重減少効果を発揮することが期待されます。なお、本邦では、同一の有効成分の製剤として、オゼンピック皮下注及びリベルサス錠が、2型糖尿病を効能・効果として承認されています。
 海外において、本剤は、肥満又は過体重に対する適応症で、2021年6月に米国、2022年1月に欧州で承認され、2022年12月現在、七つの国又は地域で承認されています。
 本品目の専門協議では、資料No.13に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
 有効性については、審査報告書14ページの表10を御覧ください。高血圧、脂質異常症、又は2型糖尿病を有し、かつBMI27kg/m2以上で二つ以上の健康障害を有する、又はBMI35kg/m2以上の主に日本人肥満症患者を対象とした東アジアでの国際共同第III相試験(4382試験)が実施されました。その結果、主要評価項目とされたベースラインからの投与68週時までの体重変化率及び投与68週時に5%以上の体重減少を達成した被験者の割合について、プラセボ群に対する本剤2.4mg群の優越性が示され、本剤1.7mgもプラセボ群を上回る傾向が認められました。
 次に、審査報告書18ページの表15を御覧ください。BMI27kg/m2以上で高血圧、脂質異常症等を有する又はBMI30kg/m2以上の日本人を含む患者を対象とした国際共同第III相試験(4373試験)が実施され、4382試験と同様に、体重減少効果に関する主要評価項目について、プラセボ群に対する本剤2.4mg群の優越性が示されました。
 また、審査報告書22ページの表20を御覧ください。2型糖尿病を有するBMI27kg/m2以上の日本人を含む患者を対象とした国際共同第III相試験(4374試験)が実施され、同様に、体重減少効果に関する主要評価項目について、プラセボ群に対する本剤2.4mg群の優越性が示され、本剤2.4mg群では本剤1.0mg群を上回る傾向が認められました。
 また、本剤投与による合併症の改善効果について、審査報告書15ページの表12を御覧ください。主に日本人肥満症患者を対象とした4382試験において、プラセボ群と比較して、本剤群では血糖、血圧、脂質パラメータの改善傾向が認められました。ほかの二つの国際共同第III相試験(4373試験及び4374試験)においても、審査報告書19ページの表17及び24ページの表22にそれぞれ結果を示していますが、血糖、血圧及び脂質パラメータの改善傾向が認められました。
 以上の結果等を踏まえ、本剤投与による体重減少効果は示されているとして差し支えなく、肥満症の合併症である高血圧、脂質異常症及び2型糖尿病の改善効果は期待できると判断しました。
 安全性については、審査報告書35~36ページの表37~39を御覧ください。ここでは、三つの国際共同第III相試験での有害事象の発現状況を示しています。本剤の安全性について、実施された各臨床試験における発現状況を中心に確認し、発現している主な事象は既存のセマグルチド製剤で既知の事象であり、糖代謝の程度、高血圧又は脂質異常症の合併の有無別での検討においても、特定の有害事象の発現が高くなる傾向は認められませんでした。本剤の作用機序、臨床試験成績等を踏まえ、胃腸障害、低血糖等の注目すべき事象について個別に検討した結果、既存のセマグルチド製剤と同様の適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 本剤の効能・効果について、国内の肥満症治療の実態を踏まえて計画された4382試験における選択基準及び肥満症治療における薬物治療の位置付けを踏まえ、本剤の適応対象は高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法及び運動療法をあらかじめ行っても十分な効果が得られず、BMI27kg/m2以上で二つ以上の健康障害を有する又はBMI35kg/m2以上の肥満症患者とすることが適切と判断しました。また、本剤の適応対象となる患者の基準を、資材等を用いて適切に情報提供し、本剤の適正な使用を図る予定です。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は新効能及び新用量医薬品であることから再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、その他事項議題1について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 その他事項、議題1のウゴービ皮下注について、最適使用推進ガイドラインを作成しておりますので御説明させていただきます。資料9-2を御覧ください。以降の説明において、ページ番号は、先ほどと同様、各ページの最下部の通し番号で御説明いたします。全体の構成は、他剤の最適使用推進ガイドラインと同様ではありますが、最適使用推進ガイドラインは保険診療上の留意点として作成しているものです。
 3ページの1.はじめにとありますが、今回の対象の効能・効果は、先ほど機構から説明がありましたとおり、肥満症であり、高血圧、脂質代謝異常症、2型糖尿病のいずれかを有する肥満症であることから、一般社団法人日本肥満学会、日本肥満症治療学会、一般社団法人日本糖尿病学会、一般社団法人日本循環器学会及び一般社団法人日本内科学会から御推薦いただきました専門家の先生の御意見を踏まえて、本ガイドライン案を作成しております。
 対象となる効能・効果及び用法・用量は、3ページの枠内にあるとおりです。また、記載の形式については、これまで作成している最適使用推進ガイドラインと同様でして、5ページ以降に今回審査された臨床試験の成績を、17ページには、ほかの最適使用推進ガイドラインと同様に、施設等に関する要件として、肥満症という疾患を適切に診断、監理、治療ができ、多職種による管理ができるような施設が選定されるように配慮されています。
 19ページには、本剤の投与対象となる患者に関する内容を記載しております。本剤については、適切な治療計画の策定及び食事、運動療法に関する事項についても詳細な記載をしております。
 最後に、21ページには、審査における内容を踏まえた投与に際する留意事項、注意に関して記載しております。説明は以上です。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは、参考人としてお越しいただいています稲垣先生から御発言をお願いしたいと思います。
○稲垣参考人 医学研究所北野病院の稲垣と申します。私の専門は糖尿病・肥満ですが、私の方から、この薬剤の臨床的意義、投与対象、肥満症における薬物治療の位置付け等についてお話させていただければと思います。
 先ほど、機構の方からも御説明がありましたが、肥満と肥満症というのは違うわけで、肥満はBMIが25以上を意味しますが、肥満症の診断は、肥満学会のガイドラインによりますと、肥満と診断された者のうち、肥満症の診断に必要な健康障害を合併している場合を肥満症と診断します。具体的にこの健康障害というのは、糖尿病や脂質異常症、高血圧、痛風、冠動脈疾患、脳卒中などです。もう一つは内臓脂肪型の肥満です。これは腹部CT検査などによって内臓脂肪の面積が100cm2以上の場合は、現在、健康障害を伴っていなくても、健康障害のリスクが高いために肥満症と診断することが可能です。
 肥満症の治療の基本というのは、BMIを25以下に減量することではなく、減量治療で合併する疾患を改善・解消することであります。肥満症の治療では、大体3%以上の体重の減量によって複数の健康障害が改善するという我が国のエビデンスに基づいて、3%以上の減量目標を設定しています。ただ、BMIが35以上の高度肥満症の場合は、全体重の5~10%の減量を目標とします。
 治療法は、先ほどもお話がありましたが、まず食事、運動、行動療法等の生活習慣改善療法が基本となります。体重を減らすためには、これは食事療法によって摂取エネルギーを減らすか、あるいは運動によって消費エネルギーを増やすか、そのいずれかになります。運動療法を維持・強化させるためには行動療法を併用するわけですが、私たちの日常の臨床現場においては、食事療法を何度も繰り返してもなかなか体重減少が得られず、そのうちに、次第に合併症が進行するという現象をしばしば経験しているわけであります。
 現在、肥満学会のガイドラインによれば、食事・運動・行動療法を行った上で、減量目標が未達成の場合には、薬物療法や外科療法の導入を考慮するとあります。薬物療法についてですが、肥満症治療薬として、現在我が国ではマジンドールしか保険適用が認められておりません。マジンドールは、実は適応が非常に限られていまして、BMIが35以上の高度肥満症がある患者さんが対象で、加えて、この薬物は薬理学的には特徴があって、向精神薬であるアンフェタミン類と類似することから、依存性に留意する必要があり、3か月以上の処方が認められてないという限界があります。そのような理由から、臨床の現場では、実際ほとんど用いられていないのが現状です。
 一方で、外科療法ですが、6か月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られない、BMIが35以上で、糖尿病、高血圧、脂質異常症又は睡眠時無呼吸症候群のうち一つ以上合併した高度肥満症に対して、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が2014年に保険収載され、2020年の診療報酬改定では、6か月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られない、BMIが32.5~34.9の肥満症及びHbA1cが8.4%以上の糖尿病患者さんに算定が付加されています。
 ただ、先ほどにも御説明がありましたが、我が国では、限られた認定施設でのみ手術が可能であること、また、手術ということですので、そもそも侵襲が大きいという理由で、次第に手術件数が増加しているものの、現在は年間1,000件程度ということで、件数としては、肥満症患者さんの数を分母と考えれば、非常に限られています。このような理由から、我が国においては、効果的な肥満症の治療薬がアンメットニーズとなっているわけです。
 本薬剤であるこのウゴービの治療対象は、最新の肥満症診療ガイドラインの診断基準に基づいて、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれか一つ以上を有し、BMIが27以上であり、かつ二つ以上の肥満症に関する健康障害を有している患者、あるいはBMI35以上の患者で、食事・運動療法を6か月以上行っても減量目標が未達成の場合に適応となるという点で、適切な基準であると考えられます。
 日本人が大部分を占める東アジアでの国際試験では、食事・運動療法と合わせて68週間の投与で、体重がプラセボの1.9% に対して、ウゴービ1.7mgで9.9%、2.4mgでは13.4%の体重減量が得られ、血糖値や血圧、脂質パラメータなどの改善が得られる一方で、副作用については、これまでの2型糖尿病治療薬としての用量で既に既知の事象であり、本剤の安全性は許容範囲内だと考えられます。
 そういった意味で、これまでに肥満症治療薬がほとんどなかった我が国の状況における本剤の登場は画期的であり、肥満症患者さんにとって福音となるものと思われます。ただ、薬剤に頼るのではなくて、このガイドラインによると、治療計画に沿って、治療後も食事・栄養療法をしっかり継続していただくことによって、治療のモチベーションも上がるような努力をしていただく仕組みとなっており、この点においても適切なものであると考えます。以上が、私からの意見とさせていただきます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見等をお願いいたします。いかがでしょうか。宮川先生、お願いいたします。
○宮川委員 日本医師会の宮川でございます。稲垣参考人、大変貴重なご教唆ありがとうございました。先生のおっしゃるとおり、今までの肥満症に関しての治療は非常に困窮していた状態ですので、この薬があるということは非常に重要なことであると認識しております。
 ただ、懸念として、これが実臨床の中に出ていくときに、今まで出ていたGLP-1が痩身目的で適応外使用されているという現状を、私たちも非常に重く受け止めております。海外で承認されていることを根拠に適応外使用がされているというのが現状で、ここで承認されることで、適応外使用が増加することを懸念しております。適正使用ガイドラインで歯止めをかけるということ、しっかりとした医師や医療機関の下で、適正に使用されるということが必要であると思います。
 19/23ページ、投与の継続・中止についての所に、「本剤の投与は最大68週とすること」ということで、一つの歯止めをかけていくことが重要です。そこでしっかりとした検証を行い、あえて再投与が必要である方には、一旦検討をし、その後に改めて再投与の検討をされることが非常に重要であると思います。68週で再評価を行うという、適正使用ガイドラインがしっかりと周知されて使用されていくことが必要であろうと、稲垣参考人をはじめとして、皆様の御努力に感謝しております。以上でございます。
○森部会長 宮川委員、御発言どうもありがとうございました。そのほか、委員の先生方から御発言はありますでしょうか。
 それでは、私から、添付文書に関することで、機構の方に申し上げます。添付文書の8.12の項目に、GLP-1受容体作動薬には共通ですが、網膜症の顕在化又は増悪に関する注意事項が、既に喚起されているところです。今回、東アジアの国際共同試験についても、コントロール不良で病勢が不安定な可能性のある網膜症の方、若しくは黄斑症のある患者さんはあらかじめ除外されているといったことがありますので、臨床成績の項に付記していただくような形で御配慮をお願いしたいと思っております。
 それから、胆石症に関する注意喚起も既にしていただいておりますが、糖尿病の自律神経障害の強い方ですと、腹痛の症状が弱かったり、非特異的だったりということもありまして、臨床検査上の肝胆道系酵素異常等も参考所見となりますので、資材作成の際等には、その点について御配慮いただきたいと思っております。以上、私から発言させていただきました。そのほか、先生方から御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本議題について議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。では、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、本議題は承認を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。稲垣参考人、大変詳細な御説明をどうもありがとうございました。御退出いただければと思います。どうもありがとうございました。
○稲垣参考人 どうもありがとうございました。
○森部会長 では、続きまして、同じく参考人にお越しいただいております議題8に移らせていただきます。議題8について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。それでは、議題8、資料No.10、メフィーゴパックにつきまして機構より御説明をいたします。審査報告書のファイルをお開きください。
 審査報告書の通し番号4ページ、1.起原又は発見の経緯を御覧ください。本剤は、1回の処置に用いるミフェプリストンを有効成分とする錠剤1錠と、ミソプロストールを有効成分とするバッカル錠4錠から構成される製剤であり、妊娠初期における人工妊娠中絶を効能・効果として製造販売承認申請がなされました。本邦では、母体保護法において、母体保護法指定医師のみが、同法で定める要件に該当する者に対して人工妊娠中絶を行うことができるとされております。
 現在、本邦においては、妊娠初期における人工妊娠中絶の方法として、妊娠12週未満の者に対する外科的処置が行われており、この時期の人工妊娠中絶に係る適応で承認されている薬剤はございません。一方、海外においては、人工妊娠中絶に係る適応で承認されている薬剤があり、外科的処置のほか、薬剤も選択肢として提供されております。2022年公表のWHOのガイドラインでは、妊娠12週未満の者に対する人工妊娠中絶の方法として、ミフェプリストンとミソプロストールを順次投与する方法が推奨されております。
 このような状況を踏まえ、今般、ラインファーマ株式会社より、国内臨床試験成績等に基づき、本剤の医薬品製造販売承認申請がなされました。本剤の審査に関し、専門委員として資料No.13に記載されております委員を指名いたしました。
 本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明をいたします。有効性につきまして、審査報告書の通し番号46ページ、7.2、第III相試験の項を御覧ください。国内第III相試験(LP010試験)は、子宮内妊娠が確認された妊娠63日以下の者を対象とした非盲検非対照試験であり、次のページの表28のとおり、主要評価項目である「ミフェプリストン投与からミソプロストール投与後24時間までに人工妊娠中絶が成功した被験者の割合」の両側95%信頼区間の下限値(87.3%)は、海外臨床試験の成績を基に事前に定められた評価基準値を上回りました。
 また、主要評価項目の点推定値で示された93.3%という人工妊娠中絶の成功割合は、本邦の外科的処置による方法で想定されるおおむね100%という域には至らないものの、本邦の医療現場に受け入れられる程度ではあると判断いたしました。
 安全性について、審査報告書の通し番号55ページ、7.R.2、安全性についての項を御覧ください。本邦では、母体保護法にのっとり、ミフェプリストン及びミソプロストールそれぞれの投与は、医療機関で母体保護法指定医師による確認の下で行う必要があるものの、海外では外来で使用されていることも踏まえ、本剤は外来診療下でも使用できることを前提として、本剤の使用に際して注意すべき事象である子宮出血、感染症及び下腹部痛に関連する有害事象を中心に検討いたしました。
 審査報告書の通し番号57ページ、7.R.2.2、子宮出血についての項を御覧ください。国内第III相試験では、本剤投与後、全例で子宮出血が認められましたが、子宮出血が急激に悪化して管理不能になるといった症例はありませんでした。一方、海外の安全性情報によると、まれに救急搬送や外科的処置又は輸血が必要となるほどの子宮出血が認められております。
 本剤投与後の子宮出血のプロファイルは、妊娠12週未満の稽留流産、不全流産、進行流産での子宮出血のプロファイルと類似しており、それらに対して本邦の医療現場で実施されている待機的管理と同様の管理方法で、本剤投与後の子宮出血は管理可能と判断いたしました。ただし、必要な処置を適切な時期に受けられるようにするため、本剤の投与を受ける者に対して、処方医療機関への連絡が必要な出血量の目安を示すとともに、緊急時に速やかに受診するよう指導すること、また、処方医療機関には本剤の投与を受けて異常を認めた者からの連絡を常時受け付け、必要に応じて外科的処置等の適切な対応が可能な医療体制が構築されていることが必要と判断いたしました。
 審査報告書の通し番号64ページ、7.R.2.3、感染症についての項を御覧ください。本剤投与後、子宮内容遺残に起因する感染症が発現する可能性がありますが、国内第III相試験で認められた子宮内膜炎1例では外科的処置により回復が認められました。一方、海外の安全性情報では、ミフェプリストン及びミソプロストールの投与後、まれに敗血症等の全身性感染症に至り、死亡した例も報告されております。しかしながら、妊娠12週未満の稽留流産、不全流産、進行流産の管理方法を踏まえると、子宮内容遺残が認められること自体は臨床的に許容し得ない事象ではなく、子宮内容遺残に起因する感染症が発現した場合に速やかに適切な処置が行われることが重要であることから、本剤の投与を受ける者に対して感染症が疑われる症状が認められた場合には、必ず処方医療機関に連絡するよう指導すること、また、処方医療機関には本剤の投与を受けて異常が認められた者からの連絡を常時受け付け、必要に応じて外科的処置等の適切な対応が可能な医療体制が構築されていることが必要と判断いたしました。
 審査報告書の通し番号66ページ、7.R.2.4、下腹部痛についての項を御覧ください。ミソプロストール投与前に鎮痛剤を投与する規定で実施された国内第III相試験において、本剤投与後に経験したことのない強い下腹部痛が認められた被験者が一定数おりました。しかしながら、各症例の痛みの経時的推移を確認したところ、ほとんどの症例で発現した強い痛みは一時的であったことから、非ステロイド性解熱鎮痛剤といった一般的に月経痛に用いられる鎮痛剤でおおむね管理可能と判断しております。
 機構は、以上の検討を踏まえ、臨床試験で発現した有害事象及び海外で報告されている副作用について、適切な注意喚起が行われ、本剤の使用に際して注意すべき事象である子宮出血、感染症及び下腹部痛に関連する有害事象について、適切なリスク最小化策を講じた上でそれらが遵守されれば、本剤の安全性は臨床的に大きな問題とならない程度に管理可能と判断いたしました。
 審査報告書の通し番号79ページ、1.2、効能・効果についての項を御覧ください。本剤の効能・効果については、本剤の投与対象とすることの妥当性が示された集団を明示することが適切であり、子宮内妊娠が確認された妊娠63日(9週0日)以下の者に対する人工妊娠中絶とすることが妥当と判断いたしました。
 審査報告書の通し番号75ページ、7.R.7、製造販売後の流通管理についての項を御覧ください。申請者は適切な医療体制が構築された医療機関において、母体保護法指定医師のみが処方及び投与できる本剤について、流通等を厳格に管理する必要があるとして、妊娠中期における治療的流産の効能・効果で承認されているゲメプロストを含有する腟坐剤の流通等の管理と同等の管理を、公益社団法人日本産婦人科医会の協力の下、実施することを計画しています。また、母体保護法指定医師が所属していること、異常が認められたときに夜間を含め常時連絡を受け付け、連携医療機関を含め緊急時に適切な対応が可能な体制が構築されていること等を、本剤納入の条件とすることを計画しています。機構は、これらの申請者の計画は妥当と判断いたしました。
 以上の審査の結果、審査報告書の通し番号82ページの承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本品目は、新有効成分含有薬品及び新投与経路医薬品としての申請であることから、再審査期間は8年が妥当と判断しております。また、本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、ミフェプリストンの原体及び製剤並びにミソプロストールの製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。
 なお、審査報告書に誤記がございましたので、審査報告書のファイル1枚目の修正表のとおり訂正いたします。本修正については、審査への影響がないことを確認しております。
 事前に、川上委員より、「本剤の処方は院内処方限定なのか、院外処方も視野に入っているのか。」といった御質問を頂戴しております。こちらの御質問につきまして、説明の中で述べましたとおり、本剤は母体保護法の遵守の観点から、母体保護法指定医師のみが処方及び使用できる薬剤であり、ミフェプリストン及びミソプロストールのいずれも母体保護法指定医師の確認の下、投与が行われるものとなりますので、院外処方は想定しておりません。そのため、製造販売後にはゲメプロストを含有する腟坐剤と同等の厳格な流通管理を実施し、母体保護法指定医師が所属する医療機関にのみ納入する方策を講じる予定でございます。機構からの説明は以上でございます。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 では、続きまして事務局から御説明をお願いします。
○事務局 続きまして、本剤の審議の取扱いについて事務局から御説明いたします。当日資料として配布いたしました資料10-4を御覧ください。本剤は、人工妊娠中絶を効果・効能とした国内初の経口薬であり、社会的関心が極めて高いことから、通常よりも慎重な手続きを取ることが必要と考えております。
 薬事・食品衛生審議会規程第5条の規定に基づき定められた薬事分科会における確認事項において、「分科会審議案件のうち、「社会的関心の極めて高い医薬品」については、部会における審議終了後、分科会における審議に際して、主要資料を公表し、一般からの意見を収集して、これを添えて分科会における審議の参考とする」とされていることから、本剤については、機構の審査報告書、添付文書案及び資料10-4のメフィーゴパックの概要をホームページ上に公開し、パブリックコメント手続きを実施したいと考えております。
 パブリックコメントでは、本剤の承認可否に関する御意見を広く募集するとともに、資料10-4の中段に記載いたしました製造販売後の管理方法についての案についても御意見を募集したいと考えております。
 具体的には、本剤の流通は妊娠中期における治療的流産に適応を持つプレグランディン腟坐剤と同等の厳格さをもって管理すること、ミフェプリストン経口投与及びミソプロストールの口腔内への静置は、母体保護法指定医師による確認の下で行うこと、本剤の使用状況はプレグランディン腟坐剤と同等の厳格さをもって記録・管理すること及び本剤による人工妊娠中絶は、緊急時に適切な対応が取れる体制を構築している医療機関で行うこと、なお、公益社団法人日本産婦人科医会との協議において、本剤発売当初は国内での経口中絶薬の使用経験が乏しいことを考慮し、十分な使用経験が蓄積され、適切な使用体制が整うまでの間、有床施設において外来や入院で本剤が使用されるものとされたこと、これらの取扱い案についても御意見を募集することとしたいと考えております。事務局からの御説明は以上です。
○森部会長 機構と事務局からの御説明どうもありがとうございました。引き続きまして、参考人の海野先生から御発言を頂きます。よろしくお願いいたします。
○海野参考人 海野でございます。私は産婦人科医でございまして、母体保護法指定医でもございます。今回のメフィーゴパックの審査における臨床的位置付けについて意見を述べてほしいという依頼を受けておりまして、これから申し述べさせていただきます。
 本剤は、妊娠初期の人工妊娠中絶を目的として、母体保護法指定医師によって投与されることを前提として開発されています。母体保護法指定医師は、研修及び実務経験によって、人工妊娠中絶に係るさまざまな課題や有害事象が発生した場合の対処方法を熟知しておりますので、本剤が妊娠初期の人工妊娠中絶の方法の選択肢として使用可能となった場合においても、重要な留意点を把握し、それに対処可能な体制を構築すれば、本剤の有するメリットを生かし、起こし得るデメリットを最小限に抑えて、適切に使用することができるだろうと考えられます。
 本剤の導入によって、人工妊娠中絶に伴う対象者、中絶を受けられる方ですが、対象者の身体的・精神的負担をこれまでより軽減することが可能になるだろうというふうに考えられます。対象者自身にとっては、また別の意味がありまして、人工妊娠中絶の方法として侵襲性が低い新たな選択肢が増えるということにはなるのですが、その一方で、これまでとは異なる対応も必要になるという、これも留意点の中で申し述べさせていただきたいと思っておりますが、重要であろうと考えております。
 私が考えております重要な留意点、これに関しては、先ほどの報告書の御説明の中でも触れられている部分がたくさんありますけれども、改めて申し述べさせていただきます。
 第1に、本剤は、母体保護法指定医療機関内で、母体保護法指定医師によってのみ使用されなければなりません。母体保護法によって指定医師というのがいるわけですけれども、指定医師はこれによって人工妊娠中絶を行うことができるのは、指定医療機関内に限られております。これは、実際にはセットで指定を受けているということになりますので、この指定医療機関内で、指定医師によってのみ使用されるような体制が整備されなければなりません。そのためには、本剤の流通及び管理体制は、先ほど報告書の中でもございましたけれども、現在管理をされているゲメプロストの腟坐剤と同等の極めて厳格な運用が必要であろうと考えられます。
 第2に、本剤は、これまでの手術による人工妊娠中絶術を完全に代替するものではありません。人工妊娠中絶の方法に、手術的な方法以外の、投与対象によっては侵襲性の低い新たな選択肢を提供すると位置付けていただくのが適切であろうと考えております。と申しますのは、先ほど御説明がありました国内第III相試験の結果においても、人工妊娠中絶達成率は93.3%であり、本剤が導入された場合、非達成症例が一定数発生することを想定する必要がございます。非達成症例に対しては、子宮内容除去術ないし子宮内容清掃術が必要になります。この手術自体は、現在行われております妊娠初期の人工妊娠中絶として行われております手術と、基本的にはそのリスクの面あるいは必要な医療設備や機器、薬剤、技術等に関しても同等と考えていただいて大丈夫ですけれども、そういう設備は必要だということでございます。
 本剤が、妊娠初期の人工妊娠中絶の方法としての選択肢として提示された場合、多くの対象者によってこの方法が選択される可能性は高いと思われます。しかし、この方法だけでは人工妊娠中絶の完遂は保障されませんので、人工妊娠中絶実施施設は今後も手術的な方法の可能な施設及び人員の体制を整備しておく必要があるということになります。
 第3に、本剤の導入によって、人工妊娠中絶実施施設にはこれまでの医療機能に追加して、新たな体制、すなわち24時間対応の相談窓口と緊急受診が可能な体制の整備が求められることになります。手術による人工妊娠中絶というのは、侵襲性が高いという部分はあるのですけれども、メリットもございます。それは、人工妊娠中絶に係る手術が、処置全体が、術後の経過観察期間も含め、医療機関内で完結するということです。対象者は人工妊娠中絶の経過中は専門家の管理下にあるということになります。術後の経過観察を終わってお帰りいただくわけですけれども、対象者は1週間後程度で必ず再受診をしてくださいということを求められるわけでして、その主な目的は術後の経過が順調であることの確認ということになります。
 基本的に、人工妊娠中絶は完結した後でお帰りいただいていますので、その後急変が発生する可能性はそれほど高いものではございません。これまで人工妊娠中絶の対象者に対して、24時間対応の相談あるいは受入れ体制の整備というのは、必ずしも必要ではなかったということになります。もちろん、そういう体制を整備している施設はたくさんありますけれども、そういう体制ではない施設もあるということです。
 これに対して、本剤による人工妊娠中絶では、第1剤のミフェプリストンの投与から36時間から48時間で、第2剤のミソプロストールの投与が行われます。基本的に、第1剤の投与から第2剤の投与までの間、そして第2剤の投与から胎嚢排出までの間、対象者は医療機関外で過ごすということも想定しておく必要がございます。言い換えれば、対象者は専門家の直接の管理下にない環境で、人工的な流産の過程の進行、そして下腹部痛、性器出血に続いて、子宮内容物の排出ということを経験するということになるわけです。このような環境下で、当事者にとって本剤の投与後の自身の身体上の変化が、本剤の通常の作用の範囲内のものであるか、あるいは重篤な有害事象の発生の懸念があるものなのかを判断するということは、難しい状況も相当の頻度で発生するだろうと考えておいた方がいいと思います。
 このため、本剤を用いた人工妊娠中絶を行う施設では、必ず24時間対応の相談窓口及び緊急受診の体制の整備が必要になると考えられます。この緊急受診は、救急医療というのとは少し性質が違っております。この本剤の投与に伴う想定内の対応ということになりますので、これを救急医療の仕組みの中に依存して対応するというような考え方というのは適切ではないと考えます。
本剤では、第2剤のミソプロストール投与後、胎嚢排出に至った可能性のある子宮出血が認められたとき、あるいはそのような子宮出血が確認されない場合であっても、遅くとも1週間を目途に実施施設に受診することが求められています。この受診は、胎嚢の排出と人工妊娠中絶の完遂を確認するために欠かすことができないものでありまして、実施施設としては、対象者が確実に受診する体制を整備する必要があります。
 4番目の論点ですけれども、本剤の導入によって、人工妊娠中絶を受けられる対象者の方々に関しても、これまでとは異なる対応をしていただく必要がございます。対象者は、本剤による人工妊娠中絶では、実際の人工的な流産の過程が、専門家の直接の支援のない環境で進行する可能性があることを理解している必要があります。また、対象者は、起こりうる身体症状とその程度について、あらかじめ把握して、必要に応じて、御自身の判断で実施施設への相談あるいは緊急受診によって対応できるということを理解していただき、それを前提として本剤の使用を選択していただく必要がございます。
 また、先ほど申し上げましたように、本剤投与の1週間後を目途に受診していただかないといけないのですけれども、これも先ほど申し上げたように、今までとはちょっと意味合いが違うということを深く理解していただくということ、それで確実に受診していただくということが必要であろうというふうに考えられます。私からまず申し述べたいと考えておりましたのは以上でございます。
○森部会長 海野先生、どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御発言をお願いいたします。堀委員、お願いします。
○堀委員 堀と申します。海野先生、ありがとうございました。一般市民でも非常に分かりやすい御説明をしていただき、大変有り難く思っております。
 私から2点質問をさせていただきます。1点目ですが、この薬剤を服用した場合、つまり経口中絶薬によって妊娠を中絶した場合、次の妊娠への影響というのはどのようなものなのか、まずこの点について教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○海野参考人 御質問ありがとうございます。この薬剤は、既に世界中でかなり使われております。また、私どもも、この薬剤ではないのですが、人工妊娠中絶後の妊娠の問題に関しては様々な経験があります。そういうことから判断させていただきますと、この薬剤を使った人工妊娠中絶を行って、その薬剤の影響は比較的短期間で全身的な影響などはなくなると思います。その後は、御自身の正常な月経周期が戻って、それで妊娠できる状態に、1か月ぐらいの間には回復してくれるだろうと考えるのが妥当なのではないかと思いますので、御懸念はよく理解できますが、その辺りについてはあまり心配していただく必要はないのかなと考えております。
○堀委員 どうもありがとうございました。もう1点は機構に質問いたします。本日配布していただきました資料10-4を拝見しまして、特に製剤販売後の管理方法についての案ということで、ここに書いてある項目は、私としても、一般市民としても、非常に支持できるものではないかと思います。また、これからパブリックコメントという形で一般市民からの意見があるかと思うのですが、特に四つ目の最後の所で、「本剤販売当初は国内での経口中絶薬の使用経験が乏しいことを考慮し、十分な使用経験が蓄積され適切な使用体制が整うまでの間、有床施設において外来や入院で本剤が使用されるものとされた」という項目は、私は非常に支持いたします。特に添付文書を拝見しまして、警告1.2の副作用、また、患者がもしこの薬を病院内ではなく、外で使用、服用する場合、それが悪用される、転用されるというようなことの危惧を考えますと、やはり医師の直接の監督の下、要するに面前なりで、有床施設において本剤が使用されることを私は支持をしたいと思います。
 それを踏まえた上で、ここの文言の「使用経験が蓄積され」というのは理解できますが、「適切な使用体制が整うまでの間」という項目は、具体的にはどのようなことを想定されているのかを教えていただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 堀先生、御質問ありがとうございます。機構でございます。産婦人科医会と厚生労働省の協議の内容に関して御質問いただいたかと思います。こちらに関しては、厚生労働省から御説明いただけませんでしょうか。
○事務局 事務局でございます。使用経験の適切な使用体制ということで御質問を頂いたと考えます。この適切な使用体制については、例えば日本産婦人科医会を中心に調査研究等を実施していただき、この調査研究を通じて、国内で安全に経口妊娠中絶薬の投与を行うために必要な医療の提供等の適切な使用体制についての評価を行ったりを考えております。具体的には、まずは有床施設での使用を想定していただくわけですが、これを無床の施設に使った場合においても、適切に使用できるのかといった面を調査していただくのだと考えています。そういった適切な使用体制についての評価を行っていただく、あるいはその適切な使用体制に係る手引き等の作成を行っていただく等の対応を考えております。
○堀委員 御回答ありがとうございます。是非、今後どのようにこの薬剤が使われるかということの調査は非常に大切だと思います。それとともに、患者向けの資材というものが、先ほど海野先生がおっしゃっていたように、まずは患者自体にどのようにこの薬剤を使ったらどういうことが起きるのかを周知させることが一番大切だと思いますので、是非この患者向けの資材の作成に関しては、より慎重に作成していただきたいと私からは願っております。私からは以上です。ありがとうございました。
○森部会長 ありがとうございました。厚労省の方、先ほどの日本産婦人科医会で行われる研究については、厚生労働省の事業として行うという位置付けになりますか。
○事務局 その具体的な部分については、日本産婦人科医会と調整をさせていただいておりますが、基本的には厚労省の事業として実施する想定で御相談させていただいております。
○森部会長 分かりました。続いて、大谷委員からお願いいたします。
○大谷委員 本剤を拝見いたしますと、やはり患者さんの理解をしっかりとして、患者さんとともに使っていくような医薬品かなと思います。そういった中で、添付文書案を拝見いたしますと、確かに十分に説明して同意を得てから本剤を投与することということが警告の所に書かれていて、その意気込みは非常に伝わってくるわけですが、このような薬剤に関しては、同意の確認が明確には示されていなくて、果たしてこれを文書で取ることを義務付ける必要がないのか、必要があるのかについては御検討されていますでしょうか。
○事務局 事務局から回答いたします。同意のことですが、これについては母体保護法において、中絶を行う者に対して同意を取ること、また、それに加えて、配偶者の同意を取るということが法的に定められております。そのため、この薬剤を使う中絶においても、母体保護法に基づき適切な同意を取った上で実施していただくものと考えております。
○大谷委員 ありがとうございます。母体保護法に基づく同意があるというのはもちろん承知しているのですが、それは妊娠中絶を行うことそのものへの同意ということかと思います。この医薬品を使うこと、それからその医薬品を使うことに関して必要な情報を十分に理解したということの同意とは、やや性質を異にするのではないかなと思うのですが、そこはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。御質問ありがとうございます。医療の内容を具体的にどのように説明し、同意を得るかについて、一般的に使用薬剤を含む医療行為の説明と同意の手順は、全ての医療機関や患者で一律ではないと認識しております。それぞれの施設で状況と目的に応じて整備等されているということを考慮いたしますと、本剤についても、適切な説明を受けた上で同意に至ることができるように、医療機関等の状況に応じて、最適化のための工夫がなされるべきと考えております。
 本剤投与に際して、投与を受ける方等の適切な理解を得る上で、画一的に文書を用いて同意を得るということのみを規定することは本質ではないと考えており、添付文書で文書を用いて同意と規定することは、今申し上げた点から少しなじまないのではないかというのが機構の考えでございます。以上です。
○大谷委員 ありがとうございます。確かにおっしゃるように、画一的にというか、ケースバイケースで、ある程度フレキシビリティがあってもよいかなとは思うのですが、薬が薬なだけに、私の個人的な意見ではありますが、少なくとも原則として文書でといったような形での記載が、添付文書若しくはこの規制上の項目の中にあってもいいのではないのかなというような気がしたものですから、ほかの委員の先生方がどのようにお考えになるかは分かりませんが、私の意見として述べさせていただいた次第です。ありがとうございます。
○森部会長 ありがとうございました。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。今の件についての追加というか考え方ですが、これは母体保護法の指定医師がこの薬剤を使うことに対して、了解を得た、同意を得たということが、カルテ上にしっかりと記載されなければならないことですので、そのことはガイドなどではしっかりと付記していただくということで、大谷委員の懸念が少しでも払拭されるのではないかと思っております。
 それから、海野参考人、適切な留意点をお示しいただきありがとうございます。日本医師会の宮川です。いつもお世話になっております。ほぼ語り尽くされたかなと思っておりますが、この薬が、先ほど先生がおっしゃったように、中絶の完遂ではないということが、しっかりとした認識をもって当たっていかなければならないということが大切です。ここに93.3%という実数も出ているわけですから、その後のフォローがすごく大事であるということを、当該母体保護法の指定医師並びに患者がしっかり認識していることが必要だろうと思います。
 日本と海外とで全く違う点は、性教育というものが十分に行われていないということ、それから避妊も含めてですが、妊娠に対しての教育がまだまだ不十分であるという現状の中で、このような薬が使われていくことが最大に違うのだということを、私たちは認識しなければならないはずだと思います。この薬が適切に使用され、育薬されることを私は常に望んでおります。誤った考え方の中で、性に利用されてしまう女性が出てこないように、そのような配慮というものが非常に重要だろうと考えております。日本の中で、この薬が本当に必要とされる困窮された女性に使われる、そして性に利用される女性が増えないような考え方をしていかなければいけないはずだろうと思っております。ですから、教育の重要性は非常に重要であろうと考えております。
 ただ、問題点としてですが、私も県医師会にいたときには、この母体保護法の指定医師との管理監督に携わっておりました。その中で、海野参考人がいる前で申し訳ないのですが、現場の医師とて様々でした。厚生労働省にお願いしたいのは、この薬が出されていったときに、適切に使われているということであればいいわけですが、それが使用が急増するような医療機関があった場合に、困窮している患者さんをお救いされていることがきちんとできているかどうかという情報を、しっかりと地方の県医師会やそれを見ていける仕組みを作ることが重要です。その中には都道府県の医師会と産婦人科医会の先生方が携わっているわけですが、しっかりとした情報共有ができるようなことにしないといけないはずです。そういう意味での販売体制や流通体制の管理が大切です。使用された後の流通体制の中身というものをしっかりと検証されていかなければいけないと私も思っておりますので、是非そのことも考慮されて、この薬が適切に使われるようにお願いしたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 宮川委員、どうもありがとうございました。
○医薬品審査管理課長 先ほどの最後の宮川先生からの御指摘に関しては、ここで示しております管理方法の中でも、そもそもそれを使う医療機関は管理しますし、その使用状況もしっかり管理するとしておりますので、どういう使われ方になっているのかというのは、薬の方からも十分チェックすることができると思っております。ですので、実際どのような形で対応できるのかということは引き続き検討させていただきますが、先生の御指摘を踏まえて、市販後になるかと思いますが、何らかのフォローをしっかりとできるよう検討させていただきたいと思っております。ありがとうございます。
○宮川委員 ありがとうございます。先ほど厚生労働省からもお話がありましたが、検証されるということが大切です。そういう意味では十分な適正使用が検証されるまで、有床診療所において入院の中でそういうことが行われて、外来体制に持っていくときにはやはり別ものであるという、考え方が大切です。患者さんへのしっかりとした教育の中で行われるのが本来であろうかと考えます。外国と同じようにやられるときにはそういう体制がしっかり組めることが教育の中で求められていくことが重要かと考えます。入院から外来に持っていくときには検証が重要であろうと思いますので、期限を切ることなく、しっかりとした研究が行われることを望んでおります。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。母体保護法の指定医師は、都道府県医師会が審査、指名し、都道府県医師会が委員会を設置して運営していると理解しておりますが、今後、この本剤の使用状況について、各都道府県医師会が管理、監督する方向性はあり得るのでしょうか。
○宮川委員 実際には、その情報が入ってこないのです。ですから、厚労省等を含めてですが、販売業者がどのような実績になっているのかということを、県医師会にしっかりと情報提供していただかないと管理はできないと考えております。そこも、しっかりとした立て付けが重要かなと思っております。
○森部会長 そこは国が関与なさるということですか。
○医薬品審査管理課長 どのような形ができるのかは、今この場で即答するのは難しいのですが、御指摘を踏まえて、どういうことができるのか、少なくとも薬の関連法についてはこちらで管理しますが、その辺りについてはどういう形でできるのかをしっかり検討させていただければと思っています。
○宮川委員 ですから、医会だけではなくて、都道府県の医師会にもそのような使用の状況を適切に教えていただくことが、最終的にはこの検証の中で重要な形になってくるのではないかなと考えます。販売後の管理方法のところ、先ほど言ったパブリックコメント後の中で検証されていくことになるのではないかと思っています。
○医薬品医療機器総合機構 機構からよろしいでしょうか。
○森部会長 機構の方、御発言ください。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど来お話をしておりますゲメプロストを含有する腟坐剤と同様の流通管理を本剤でも行うということですが、まず、販売数量に関しては、毎月、都道府県の医師会と産婦人科医会に、製造販売業者から情報を報告させていただくような流通管理を考えております。また、実際に中絶に用いた状況に関しても、都道府県の医師会や産婦人科医会に情報がいくような手順になっているものと認識しております。以上です。
○森部会長 それを踏まえますと、どういった対応が可能でしょうか。海野先生、お願いします。
○海野参考人 すみません、母体保護法指定医師としての発言なのですが、現状では人工妊娠中絶を行いますとそれを報告するのですが、その報告の内容には妊娠週数は書かれると思いますけれども、実際の人工妊娠中絶の方法自体は記載していないのではないかと思います。ですから、その辺りは母体保護法の運用上可能なのかどうかというところもありますが、また御検討いただく必要があるかもしれません。
○医薬品医療機器総合機構 機構からよろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 そちらについては、厚生労働省にて御検討いただいているところと、機構としては認識しております。以上です。
○事務局 事務局です。中絶の方法ついて、手術か薬かの報告の詳細について、なかなか把握し切れないという御指摘を頂きましたが、その点は母体保護法を所管しております子ども家庭局の母子保健課とも協議をしまして、中絶方法の詳細について何らか情報が取れるような対策について、引き続き検討していきたいと思います。以上です。
○森部会長 よろしいでしょうか。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。そういう意味ではまだ確立されていないので、ここでいろいろな文言を言ってもしょうがないはずでして、今後しっかりと精査をしていくということなのです。今後の管理の方法、それからどのようにカルテを含めて記載をして、そしてそれを報告していくのかというのは、これから非常に重要なことになったわけです。従来の方法にプラスされて、こういう経口薬が出て、それがどのように影響を及ぼしていくのかはしっかりとした検証が必要なのです。海野参考人がお話されたように、医会、学会、厚労省、そして当該局と議論していただいて、都道府県の中での母体保護法の指定医師の方々の協議の場で困窮しないようにしていただければと思っております。以上です。
○森部会長 先ほど大谷委員から御発言いただいた同意取得のことに関して、インフォームドコンセントという言葉がありますが、恐らく大谷先生はインフォームの部分をどうするかということの御質問であったと思います。
 先ほど、海野先生からも四つの観点からお話を頂いております。その四つの観点がいずれも重要であり、恐らくこの四つの観点はこの薬剤の投与をお受けになる方にも十分周知されていなければならないことであると理解しております。内容もかなり多岐にわたることから、口頭での説明ではやはり不十分になるおそれも懸念されるところです。委員の先生方にも後ほど御意見を伺いますが、まず海野先生からこの同意の在り方について、御意見いかがでしょうか。
○海野参考人 もちろん、詳しく薬の説明を文書を用いて、それも共通の資材があった方がいいと思いますが、それを用いて説明をするということ、それから、それぞれの実施施設ごとに体制が違うと思いますので、その体制も含めて詳しく文書で説明した方がいいと思います。と申しますのは、御本人だけではなくて、御家族の方も後から理解できるようなことがよろしいかということです。
 その上で、同意に関しても、現場としては母体保護法の範囲内で行っていることですから、同意書を確認して、本当にこれを実施することについてしっかり確認する作業を行っていますので、この薬剤を使うことに関しての同意書というものを文書で取ることが、現場に対して大きな負担になることではないなとは考えます。以上です。
○森部会長 ありがとうございます。先ほど、適正な使用体制を整えるという御発言もありましたが、事業として行われることが調整されている学会での研究活動の一環でも、適正な同意の手法について、同意文書のひな形や運用等も含めて御検討いただくことがよろしいかと存じます。この点について、委員の先生方から御発言はございますでしょうか。
○大谷委員 先ほどの補足をよろしいでしょうか。
○森部会長 大谷委員、お願いします。
○大谷委員 今、正に補足していただいたとおりでありまして、インフォームドコンセントということですと、コンセントとインフォームドというのが表裏一体のようですが、インフォームドのところを正に私が申し上げたところであります。例えばOTCでも、要指導医薬品や第1類の場合は、そこでコンセントというよりは、むしろインフォームドをされましたという確認を、OTCでも1類などの場合は努力として通常求めているわけです。そういった意味で、治療に対する同意があったというよりも、この説明の内容をしっかりと私は理解しましたというようなことも含めて、インフォームドをコンセントするというダブルのところで、文書による同意、サイン等を取らなくてもいいのかという、そういうような趣旨です。ありがとうございます。
○森部会長 堀委員、御発言ください。
○堀委員 堀です。私も、今の大谷委員の発言に同意いたします。医者からのインフォームドコンセントと言われているものが、今はどちらかというと、私たち患者は一方的な説明と理解しがちになっています。というのは、私たち患者は、専門医療用語をたくさん説明されても、それが何なのかよく分からず、でもそれが早急に、特に今回のような時間が押し迫っているような状況であった場合、何でも「はい、はい」と了解してしまうことがよくあると私は思っております。
 その場合、やはりこういう同意書という形で文章化したものをお互いに交わすことによって、私たち患者もその言葉の意味を再確認し、また、それに対する質問をする機会が得られるのではないかと思います。どうしても耳で聞いてしまうと、そのまま聞き流してしまうということが多いと思うのですが、文書化することで、お互いにシェアードディシジョンメイキングではないのですが、お互いにその言葉の意味を共有することにより、患者に理解してもらい意思を確定させることは必要ではないかと思います。以上です。
○森部会長 そのほかの委員の方から御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、そのほかのことについても、全般で先生方から御発言、御意見はありますか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 本品目については、冒頭、事務局の方からもお話がありましたが、大変社会的な関心が高い事項でございまして、慎重な審議が必要と考えられます。したがって、部会での議決を踏まえて、分科会でも御議論いただくことを考えておりますが、いかがでしょうか。
○合田委員 それがよろしいと思います。
○森部会長 今、合田委員からも御発言いただきましたが、特に先生方から御異論はありませんでしょうか。では、この点は先生方に御了解いただいたとさせていただき、引き続き議決に入らせていただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、部会としては承認を可と判断し、引き続き薬事分科会で御審議いただくことといたします。事務局から補足等はありますでしょうか。ありがとうございました。参考人の海野先生、どうもありがとうございました。御退室をお願いいたします。
○海野参考人 どうもありがとうございました。
○森部会長 続いて、議題2に移ります。議題2について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。それでは、議題2、資料No.2、医薬品エンタイビオ皮下注108mgペン、同皮下注108mgシリンジの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。資料につきましては、資料No.2の審査報告書を御覧ください。
 本邦における潰瘍性大腸炎の薬物治療は、治療指針等に基づき、メサラジン製剤、ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤等が使用されており、主に重症度に応じて治療法が選択されています。ベドリズマブは、ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体であり、本邦においては、点滴静注製剤が、2018年に潰瘍性大腸炎、2019年にクローン病に係る効能・効果で、それぞれ承認されております。
 今般、皮下注製剤(以下、本剤という)について、ベドリズマブ点滴静注製剤を投与後に治療反応が認められた潰瘍性大腸炎患者を対象とした国際共同第III相試験を実施し、維持療法における有効性及び安全性が確認できたとして、医薬品製造販売承認申請がなされました。本剤は、海外において、潰瘍性大腸炎の維持療法に係る効能で、2020年に欧州で承認されております。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.13に示します専門委員を指名しております。
 本剤の審査において、安定性試験中に、充填薬液による針詰まりが生じた製剤が認められたことから、申請者に原因究明や対応策の検討を求めました。その結果、針詰まりの発生リスクについて、包装資材の変更等一定の低減策が取られたと考えられ、また、本剤の添付文書及び資材において、貯法に従った管理を徹底すること等の本剤の取扱いに関する注意喚起がなされることにより、市販製剤への針詰まりの発生リスクは許容可能と考えました。詳細につきましては、審査報告書の通し番号6ページ、2.R.1以降を御参照ください。
 次に、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、審査報告書の通し番号16ページ、表13を御覧ください。国際共同第III相試験において、点滴静注製剤により6週目に症状が改善した被験者に対し、主要評価項目である52週目寛解率について、本剤群のプラセボ群に対する統計学的な有意差が示されました。また、本剤群の有効性は、参照群として設定された点滴静注製剤群と同様であることが確認されました。日本人集団については、審査報告書の通し番号21ページ、表27に示しますように、症例数が限られておりますが、全集団で異なる傾向は認められませんでした。
 安全性に関しては、審査報告書の通し番号23ページ、表30を御覧ください。国際共同第III相試験の維持期における全集団の有害事象の発現状況について、プラセボ群に比べ、本剤群で副作用の発現割合が高い傾向があるものの、皮下投与に伴う注射部位反応以外に特定の副作用が増加する傾向はありませんでした。また、現在までに得られている本剤の海外の製造販売後の安全性情報及び点滴静注製剤の国内外の製造販売後の安全性情報から、ベドリズマブの安全性プロファイルに対する新たな懸念は認められていないこと等を踏まえ、本剤は点滴静注製剤と同様の注意喚起をすることで、安全性は許容可能と考えました。
 以上、機構での審査の結果、既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎で、ベドリズマブの点滴静注製剤を投与後に治療反応が認められた患者に対する本剤の維持効果は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。なお、本品目は新投与経路医薬品であることから、再審査期間は6年、生物由来製品に該当し、製剤は劇薬に該当すると判断いたしました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御意見、御質問等をお願いいたします。いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。機構の方に一つお願いがあります。本製剤のデバイスに関して、写真の説明をしていただくことは可能でございますか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、ありがとうございます。製剤写真を御覧いただければと思うのですが、資料番号は、少々お待ちください。
○事務局 資料番号は付いていませんので、製剤写真としてお送りしているものを参照いただければと思います。下から2番目ですね。
○医薬品医療機器総合機構 すみません。補足いただきありがとうございます。製剤は2種類ございまして、ペン型製剤とシリンジ型製剤でございます。
 最初のページに載っておりますのがペン型製剤です。紫色部分がキャップになっていまして、投与する直前に外し、出てきた部分を投与部位に垂直に押し当て、押し込む方法で投与するようになっています。製剤写真では分かりづらいかもしれないのですが、窓になっているところから薬液が見えるようになっておりまして、投与前は透明若しくは少し色味がかっていますが、投与を完了しますと、紫色に変わるようになっています。
 また、シリンジ型製剤はニードルキャップを外し、通常皮下投与するように投与部位に対し斜めに刺して投与することになります。
○森部会長 機構の方、よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 この二つのデバイスの使い分けを教えていただきたくて。どういった医療現場での使い分けを念頭に置いているんでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 使い分けについてはニーズによるかと思います。ペン型製剤は針が見えない状態になっていますので、患者さんが投与する際に針が苦手だという場合にはペン型製剤の方が適しているかと思います。一方で、針が見えている方が打ちやすいといったような患者さんもおられますし、投与スピードを患者さんご自身で調節したい場合にはシリンジ型の方が適しているということになります。
○森部会長 この製剤は2週間に1度注射するということになっておりますが、患者さんが御自宅にこのシリンジやペンをお持ち帰りになって、御自宅で注射するということも選択としてはあるわけですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○森部会長 それは、その二つ、どちらかを患者さんと医師で選んで使うという、そういうことでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 それでよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 少し補足させていただきますが、承認後直ちからは、まだ自己投与はできないという状況にはなります。
○事務局 事務局ですが、補足させていただきます。自己投与する製剤は、一般的に新規に承認されてから1年程度経過した後に薬価収載されるというのが通常ですので。
○森部会長 はい、長期投与が可能になった状況でということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○森部会長 分かりました。ペンは自己注射用でシリンジは病院用かと、確認したかったのですが、両方選べるということが分かったので、それで結構です。どうもありがとうございました。
 そのほか、先生方から御質問、御意見はございませんでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。では、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようでございますので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、議題4に移ります。事務局から、議題4につきまして概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題4、資料4、マシテンタンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書のファイルをお開きください。
 報告書の最初のページの中段を御覧ください。申請者はヤンセンファーマ株式会社、予定される効果・効能は、外科的治療不適用又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症(以下、CTEPHという)です。
 まず、対象患者数についてですが、CTEPHは指定難病であり、指定基準を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性についてです。CTEPHは、器質化した血栓が肺動脈の狭窄や閉塞を起こした結果、肺血管抵抗が上昇し、肺高血圧症を呈する疾患です。本邦においては、CTEPHの適応を有する薬剤として、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるリオシグアトや選択的プロスタグランジンI2受容体作動薬であるセレキシパグが承認されておりましすが、これらを投与できない又は投与しても効果が不十分な患者がいることが報告されております。
 本剤は、エンドセリン受容体拮抗薬であり、エンドセリン受容体を介した血管拡張障害を抑制することで、CTEPHに対して有効性を示すと考えられています。本剤は、リオシグアト及びセレキシパグが投与できない患者への新たな治療法を、また、リオシグアト及びセレキシパグで効果不十分な患者に対する新たな併用療法を提供することが期待されております。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性について、外科的治療不適応又は外科的治療後に肺高血圧症が残存又は再発したCTEPH患者を対象とした国際共同第III相試験が実施されており、今後、当該試験成績等を踏まえて、本邦において承認申請が予定されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしているものと考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、御質問、御意見等がございましたらお願いします。よろしいでしょうか。特に循環器領域の御専門の先生からの御意見、御質問等はございませんでしょうか。
○代田委員 代田です。
○森部会長 はい。どうぞお願いします。
○代田委員 今の適応化は妥当だというふうに考えてよろしいと思います。
○森部会長 ありがとうございました。そのほか、よろしかったでしょうか。佐藤直樹先生、どうぞお願いします。
○佐藤(直)委員 佐藤です。同様で妥当と考えます。肺高血圧の治療には、病態にかかわる3系統の薬剤が使用できることが重要で、エンドセリン系も重要な系であり、この系に作用する薬剤は重要だからです。
○森部会長 ありがとうございました。それでは、議決に入らせていただきます。なお、佐藤直樹委員、代田委員、高橋委員、中西委員、矢野委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。それでは、本議題につきまして指定を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようでございますので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題5に移ります。議題5も希少疾病用医薬品でございますが、こちらにつきましても事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題5、資料5、ダニコパンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。希少疾病用医薬品該当事前評価報告書のファイルをお開きください。
 報告書の最初のページ、中段を御覧ください。申請者はアレクシオンファーマ合同会社、予定される効能・効果は発作性夜間ヘモグロビン尿症(以下、PNHという)です。まず、対象者数についてですが、PNHは指定難病であり、指定基準を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性についてです。本邦において、PNHに対して補体C5阻害薬であるラブリズマブ及びエクリズマブが承認されていますが、これらを投与した場合でも、補体C3を介した血管外溶血が引き起こされると報告されております。本剤は補体D因子のセリンプロテアーゼ活性を阻害する経口剤であり、補体第二経路のC3転換酵素の形成を抑制すると考えられております。ラブリズマブ又はエクリズマブと併用することで、血管外溶血を抑制することが期待されております。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性についてです。ラブリズマブ又はエクリズマブ投与下で、血管外溶血を示すPNH患者を対象とした国際共同第III相試験が実施されており、今後、当該試験成績等を踏まえ、本邦において承認申請が予定されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。委員の先生方から、御質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。本議題につきまして指定を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようでございますので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題6の再審査期間延長に関する可否につきまして、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題6、資料6、ステラーラ皮下注45mgシリンジ、同点滴静注130mgの再審査期間延長について御説明いたします。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条の4第3項に基づき、小児の用量設定等のための臨床試験を計画する場合で、必要があると認められる場合には、個別に部会に諮った上で、その製造販売承認があった日から10年を超えない範囲で再審査期間を延長することとしております。
 本剤に関しましては、小児のクローン病及び潰瘍性大腸炎のそれぞれの患者を対象とした第III相試験が実施されており、当該試験の所要期間等を勘案し、再審査期間は2025年5月まで延長することが適切と判断いたしました。御説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決の参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題につきまして、延長を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようでございますので、延長を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題7、こちらも再審査期間延長の可否についてでございますが、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題7、資料7、モビコール配合内用剤LD及び同配合内用剤HDの再審査期間延長について御説明いたします。本剤に関しましては、これまで有効性及び安全性が検討されていなかった1歳の小児慢性便秘症患者を対象として、この度、第III相試験が実施されることから、当該試験の所要期間等を勘案し、再審査期間を2026年12月まで延長することが適切と判断いたしました。御説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。本議題につきまして延長を可としてよろしいでしょうか。御異議はないようでございます。延長を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、続きまして報告事項に移ります。それでは、報告事項議題1、2につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項の議題1、2について御説明いたします。まず、報告事項の議題1ですが、医療用医薬品の再審査結果についてです。資料としては、8-1~8-4までの資料が該当いたします。今回、御報告する再審査の結果の品目は資料8-1がゼプリオン、資料8-2がイムセラとジレニア、資料8-3がネキシウム、資料8-4がアジルバ錠です。これらの品目については、いずれも製造販売後調査等に基づいて再審査の申請が行なわれて、機構における審査の結果、効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要のないカテゴリー1と判定されております。以上です。
○事務局 続きまして、報告事項の議題2、優先審査指定品目の審査結果について、事務局より御説明いたします。今回、優先審査となった品目がありましたので御報告いたします。資料11を御覧ください。
 販売名はレケンビ点滴静注200mg、同点滴静注500mg、一般名はレカネマブ(遺伝子組換え)、申請者はエーザイ株式会社です。申請された効果・効能は「早期アルツハイマー病(アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度認知症)の病態進行の抑制」です。
 優先審査の該当性について、通し番号の7ページを御覧ください。(1)適応疾患の重篤性についてです。適応疾患は、「病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾患に該当する」と判断されております。
 次に、(2)医療上の有用性についてです。今般、早期アルツハイマー病患者を対象とした国際共同第III相試験が行われ、主要評価項目とされた治験薬投与開始後18か月のCDR-SBのベースラインからの変化量が、プラセボ群に対して本剤群で有意に低値であることや、重要な副次的評価項目とされた治験薬投与開始後18か月の各臨床症状評価指標のベースラインからの変化量についても、プラセボ群に比べて本剤群で悪化の程度は低い傾向が認められたこと等から、早期アルツハイマー病の病態進行に対する本薬の抑制効果が期待できると考えております。
 また、安全性については、抗Aβモノクローナル抗体薬に特徴的なリスクであるアミロイドの関連画像異常(以下、ARIA)が、プラセボ群に比べて、本剤群で高頻度に認められたものの、本剤投与中には適切な頻度で脳MRI検査によるモニタリングを行い、ARIAのリスクを適切に管理することとすれば、ARIAの発現リスクが本剤に期待されるベネフィットを上回るとはまではいえないと考えております。
 以上から、本剤の医療上の有用性は高く、本剤は、「イ、有効性、安全性、肉体的・精神的な患者負担の観点から、医療上の有用性が既存の治療法、予防法若しくは診断法より優れていること」に該当すると判断されております。以上を踏まえて、優先審査品目に該当すると判断いたしました。御説明は以上です。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。議題1は再審査結果4剤ですが、この件に関して御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。また、議題2の優先審査指定品目に関する審査結果、この件について御質問や御意見等はございますでしょうか。認知症の診療に当たられる可能性のある先生、石川先生、特に御発言はございませんでしょうか。
○石川委員 石川です。私、認知症の専門医でもあるのですけれども、今の機構の方の御発言に関して賛同いたします。
○森部会長 ありがとうございました。そのほか御質問等ございませんでしょうか。それでは、報告事項議題1、2については御確認いただいたことといたします。
 続いて、その他事項に移ります。その他事項議題1について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 その他の議題といたしまして、資料9-1により最適使用推進ガイドラインの対象となる医薬品の選定について、事務局より説明させていただきます。2ページに最適使用推進ガイドラインの取扱いについて記載しておりますので、適宜御確認ください。医薬品名はレクビオ皮下注300mgシリンジ、一般名はインクリシランナトリウム、申請者はノバルティスファーマ株式会社です。
 本品目については、「家族性高コレステロール血症及び高コレステロール血症」の効能・効果で、既に最適使用推進ガイドラインが作成されている類薬と同様の効能・効果で申請されていることから、最適使用推進ガイドラインの対象とすることが適切であると考えております。今後、関係学会等にガイドライン(案)の検討依頼を行い、対象医薬品の承認について審議等を行う部会において、改めてガイドライン(案)を御説明することとなります。説明は以上です。
○森部会長 ありがとうございました。先生方から御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、その他事項議題1については御確認いただいたこととさせていただきます。本日の議題は以上ですが、事務局から何か御報告はございますでしょうか。
○事務局 次回の部会は、令和5年3月3日金曜日の午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 本日は予定時間を超過いたしまして、誠に申し訳ございません。お詫び申し上げます。先生方からの貴重な御発言どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)