2023年6月20日 第14回「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」 議事録

日時

令和5年6月20日(火) 18:00~20:00

場所

AP虎ノ門 C・Dルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
厚生労働省:事務局

議題

  1. (1)精神障害の労災認定の基準について
  2. (2)その他

議事

議事録

○本間職業病認定対策室長補佐 定刻となりましたので、第14回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中検討会に御出席いただき、ありがとうございます。今回は、阿部先生、荒井先生、小山先生、品田先生、中野先生、中益先生、三柴先生は、オンラインでの御参加となります。また、三柴先生は少々遅れての御参加となっております。
 オンラインで参加される方に発言の際のお願いです。マイクのミュートを解除した上で、お名前と「発言があります」旨の発言をしていただくか、またはメッセージで「発言があります」と送信してください。その後、座長から「誰々さん、お願いします」と指名がありますので、その後に御発言をお願いいたします。
 検討会に先立ち、傍聴されている皆様にお願いがあります。携帯電話などは必ず電源を切るかマナーモードにしてください。そのほか、別途配布しております留意事項をよくお読みの上、検討会開催中はこれらの事項をお守りいただいて傍聴されるようお願い申し上げます。万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退出をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。写真撮影等はここまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。
 次に、本日の資料の御確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1として「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(案)」、資料2として「第13回検討会の議論の概要」、参考資料として、団体からの意見要望となっております。本検討会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。
それでは、座長の黒木先生、以後の議事の進行をよろしくお願いいたします。
○黒木座長 それでは始めます。今回は、資料1「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(案)」について検討します。前回、報告書の事務局案を検討しましたが、委員の皆様の御意見を反映し、再度、報告書案として御用意したものになります。本日は、前回予告しましたように、最終回となることを念頭に、報告書案の記載ぶりの確認や検討を行っていきたいと思います。はじめに、事務局から前回資料との修正点などについて、説明をお願いいたします。
○西川中央職業病認定調査官 まず、資料2については、先ほどございましたように前回の検討会の議論の概要となっております。参考資料については、1ページ目から5ページ目が、全国労働安全衛生センター連絡会議から御提出いただいた意見要望です。6ページ目ですが、6月16日付けで働くもののいのちと健康を守る全国センターが取りまとめた請願書面を頂きましたので、参考にお付けしております。1,183筆の署名を頂いております。これらについての説明は以上とさせていただきますので、適宜御参照をお願いいたします。
 資料1を御覧ください。今回の資料については、前回の第13回にお示しした報告書(案)に、冒頭に参集者名簿、これまでの開催状況を追加した上で、修正のある箇所を黄色のマーカーでお示ししたものです。前回の検討会で賜った御指摘、その後に各先生方から頂いた御指摘などを踏まえて、修正させていただいたものとなります。なお、単純な誤字・脱字、漢字と平仮名の相違、参照文献の表示形式等についてはマーカーをしておりませんので、こちらも申し添えさせていただきます。
 PDFの1ページ目は表紙です。2ページ目は空白ページで、3ページ目は参集者名簿、4ページ目はこれまでの開催状況です。開催状況のところに示しているように、令和3年12月の第1回から本日まで、14回の検討会を開催して、御議論を賜ったところです。
 続いて目次ですが、最後に取りまとめるものでは各項目ごとのページ数も入れ込むことになりますが、今日の資料ではページ数は入れていないものとなっております。本文がⅠからⅩまでありまして、その後ろに別添1、別添2、別添3が入ります。
 内容の修正点の御説明に入ります。本文の1ページを御覧ください。Ⅰ「はじめに」のところの表現の修正です。同じ言葉の繰り返しを避けるとか、読みやすくするといった観点から、修正しております。修正したところには黄色のマーカーを付けております。
 2の「検討状況」のところですが、●で「●回にわたって」という記載をしておりますが、本日御議論いただきまして、報告書(案)の修正について、座長一任としていただけるという場合には、ここに「14回」という数字が入ることになります。
 2ページ目ですが、ここも読みやすくするための修文で、前回の案では主語がはっきりしない文章となっていたので修正をしたものです。
 3ページ目を御覧ください。上段は、「も」の場所が、前回案では「認定基準にも所要の改正が行われた」となっていたものを、場所を変えております。
 3ページ目の2つ目です。後段の「治ゆ、寛解」のところですが、こちらは検討会の場で御指摘いただいたものです。前は「治ゆ(寛解)」としていたものを、「治ゆ、寛解」と並べて記載しております。この報告書の中では、労災保険制度上の概念としての治ゆ、すなわち症状固定というものについて、「治ゆ(症状固定)」というような表現を第Ⅶ章などでしておりますので、その表現と混乱しないように修正したものです。
 続いて、Ⅱの「精神障害に係る現状等」です。こちらはデータのところは何箇所か修正しておりますので、細かく説明させていただきます。まず、4ページの見出しです。前回は「精神障害の現状等」としておりましたが、御指摘があったように、精神障害という疾病の概念の現状ということではなくて、患者の状況がどうか、自殺についても自殺者の状況はどうかというものになりますので、その趣旨で修正をしているものです。
 その上で4ページに記載しているのは、患者調査の状況です。まず、前回お示ししていたグラフは、灰色の折れ線だけで、今回赤と青で示している男女別のグラフを示しておりませんでしたが、5ページのグラフ、6ページのグラフでは、男女別も示していたところで、こちらの患者調査についても示したほうがよいとの御指摘を賜りましたので、追加をしたものです。図2-1の見出しに黄色のマーカーをしているのは、グラフ自体を差し替えたという趣旨で付けています。この内容を本文のほうにも追記しておりますが、男女別に見ると、平成11年以降、女性の患者数が男性の患者数を上回っているという状況にあるところです。また、入院・外来別、疾病分類別の記載についても言及してはどうかという御指摘も別途賜りましたので、グラフには反映しておりませんが、本文に記載しております。患者調査は、この統計自体が患者の総数を調査しているものではなく、ある調査日の1日の患者数を示すものとなりますが、入院と外来で区分してみた場合、長期的に外来の患者数の割合が上昇しているところです。また、疾患別では、最も多いのは「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」ですが、この疾病の推計患者数は長期的に減少傾向にありまして、「気分〔感情〕障害(躁うつ病を含む)」というような分類の患者が増加傾向にあるということについても言及しているところです。なお、精神障害の患者数といったときに、統計によっては、アルツハイマー病やてんかんの患者を含めて数字を示されている、議論されるというようなこともございますが、このグラフでは、それらの疾病は分類が異なる、Ⅵの神経系の疾患に分類されるということで含めておりませんので、その旨も誤解のないように注2に注記しております。
 5ページ目です。協会けんぽのものとなりますが、健康保険の状況です。傷病手当金を受給されている方、すなわち傷病により会社を休業されている方のうち、精神障害を原因とされる方が最も多いというような状況です。その旨は前回の資料では改めて書いておりませんでしたけれども、明確化するという趣旨で、別途賜った御指摘を踏まえて追記しております。2番目に多いのは、がんで休業されている方なのですが、その倍以上となっています。男女別に見ると、女性のほうが精神障害で休まれている方の割合がより高いという状況です。
 6ページ目と7ページ目は、自殺の状況です。6ページ目は自殺者数の年次推移についてです。前回の案でも男女別の記載をしておりましたが、ほかの図に関する記載と同様に男女の比較に焦点を置いた記載として、シンプルに修正をしているものです。自殺者については、男性が女性の倍以上で、2.1倍となるところです。7ページの修正はございません。
 8ページは労災補償の状況です。グラフは変えておりませんが、グラフの下に記載している労災補償状況については、少し細かく説明しております。ここで前回の検討会においては、男女別や就業形態別の状況も追記したほうがよいのではないか、先ほどまで見ていただいた精神障害全体の状況と対比して労災保険ではどうかということがわかるようにしたほうがよいといった指摘を頂いたところで、その旨を記載しております。また、現行の認定基準を策定した平成23年度から、現時点で取りまとめられている令和3年度までの累計での状況について、前回の案では11年間全体の状況のみを記載しておりましたが、最近の状況も分かるようにしたほうがいいのではないかという御指摘も別途で賜ったところです。そうした趣旨でいくつか追記しております。
 具体的に内容を説明いたします。まず、男女別です。労災については、男性が多いという状況にあります。11年間の累計では、男性が65%、女性が約35%です。このうち自殺事案について見ると、更に男性の比率が高くて、男性が約96%、女性が約4%となっております。一方で、近年では女性の割合は上昇傾向にあります。直近の令和3年度においては、約44%が女性となっております。自殺事案については5%です。業種別についても、11年間の累計で見ると製造業が最多ですが、近年は「医療、福祉」の業種の割合が上昇しております。令和3年度においては、「医療、福祉」が最多となっております。職種別については累計と近年の状況は変わりませんが、「専門的・技術的職業従事者」が最も多いという状況です。
 年齢別については、最多が40歳代であることは累計も直近も同じですが、近年は20歳代の割合が上昇していまして、30歳代の割合は累計に比べると少なくなっているという状況です。9ページに移ります。就労形態別ですが、正規職員・従業員の方が8割を超えているというのは、累計でも直近でも同じです。
 こちらの8ページと9ページについては、本日時点で最新となる数字は、令和3年度までの数字となっていますので、これを記載しておりますが、精神障害の労災補償状況については、例年、私どものほうで6月末頃に前年度の件数を公表しております。現在は6月20日ですので、本年についても、本日時点では令和4年度の件数の公表に至っていないところですが、近いうちにこれを公表するべく作業を進めているところです。このため、本日については令和3年度までの数字での記載ぶりを御確認賜りたく存じますが、最終的な報告書の確定、公表の前には、恐らく令和4年度の件数も公表できていると存じますので、令和4年度の件数に修文したものについて、各先生方にも御確認を賜りまして、その上で座長の黒木先生にも御確認いただいて取りまとめるという形で、この後は進めさせていただければと考えております。したがいまして、現在は11年間の累計を書いておりますが、令和4年度までの12年間の累計の数字に変えます。それから、本日見ていただいたもので、令和3年度について記載している部分については、令和4年度の記載に変えるという趣旨です。この点も踏まえまして、御指摘等がありましたらお願いいたします。
 最後の段落は訴訟に関するものです。こちらについては、本日時点で前回の案から修正している部分はありませんが、こちらは令和3年度までのグラフ、件数を示しているところです。こちらも先ほどの補償状況と合わせて、最終的には令和4年度の状況を反映したものとさせていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 Ⅲ「精神障害の成因と業務起因性の考え方」についてです。10ページを御覧ください。前回の御議論を踏まえまして、まず、「ストレス-脆弱性理論」の参考文献を追加しております。また、心理的負荷が強ければ個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こるし、脆弱性が大きければ心理的負荷が小さくても破綻が生ずるという部分ですが、前回の資料では、後段に「逆に」と入れておりましたが、こちらも前回の御議論を踏まえて、「逆に」という記載を削っているところです。その下です。図3-1の概念図ですが、こちらも御指摘いただいたことを修正したものです。
 11ページから12ページにかけては、精神障害の生物学的側面についての部分です。まず、見出しに番号を振っていて、これはこの後に出てくる参考の囲み記事についても、全て同じです。また、囲みの中の記載ですが、重複を避け、客観的な表現にするといったような趣旨で、全体に修文しております。その上で、一番最初のところに、「精神障害(精神疾患)」と記載しております。「精神障害」という表現について、前回御議論のあったところですが、この報告書においては、既にあるICD-10の日本語訳を前提に定められた今の労働基準法施行規則の別表、いわゆる職業病リストや、現行の認定基準等の表記を前提にしまして、「精神障害」という語を用いつつ、前回の御議論で御指摘のあったとおり、この「障害」という言葉については、「疾患」あるいは「症」という表現に改めるということについての御議論が学会でもなされていることも踏まえまして、ひとまず、この報告書では、「精神障害」と「精神疾患」を同義で用いているということを示すために、この11ページに「精神障害(精神疾患)」という記載をしたところです。
 16ページまでお進みください。「業務起因性の判断における心理的負荷の客観的評価」のところです。明確化、読みやすさという趣旨で、「心理学の分野では」と書いてあったところを削りまして、また、「ストレス」を「ストレス反応」と明確化するというような修正をしております。
 続いて対象疾病です。17ページからのⅣ「対象疾病等」については、参考に番号を振った以外の修正はございません。こちらの参考4-1については、ICD-10に基づいた記載という趣旨で、「精神障害」という表現を用いているところです。
 続いて22ページからです。Ⅴ「業務による心理的負荷の評価」です。修正箇所については、まず24ページです。今回の評価表の見直しにおいて、項目の追加・統合だけではなく、前回御指摘いただいたとおり、総合評価の視点や強度ごとの具体例の拡充、こちらは重要なポイントとなってきますので、その旨を追記しております。
 続いての修正点は28ページです。複数の出来事の評価についての部分です。前回の検討会での御指摘を踏まえて、現行認定基準にある表現で、28ページのところは関連する複数の出来事の評価に係る表現ですが、「具体的には、「中」である出来事があり、それに関連する別の出来事(それ単独では「中」の評価)が生じた場合には、後発の出来事は先発の出来事の出来事後の状況とみなし、当該後発の出来事の内容、程度によって「強」又は「中」として全体を評価する」、こちらの表現について、記載しておくことが分かりやすいという趣旨で追記しております。
 次の29ページです。同じ趣旨で、こちらは関連しない複数の出来事の評価ですが、関連しない複数の出来事が生じている場合であって、単独の出来事の評価が「中」と評価する出来事が複数あるときには、全体評価は「強」又は「中」となるということを記載しているところです。こちらの「強」と「中」の語順については平仄を整えまして、語順により「強」になる可能性が高い、「中」になる可能性が高いということではなくて、その判断は事案によるということですが、表現は揃えて、いずれも「強」又は「中」となるというような記載としているところです。
 30ページからは、Ⅵ「業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価」です。31ページですが、医学的に紛れのない表現にするという趣旨、あるいは重複を削って読みやすくするというような趣旨で、表現を修正しています。
 32ページの図6-1です。こちらに挙げている例については、別添1の「業務による心理的負荷評価表」に示した出来事の類型の表示に揃えて修正をしたところです。パワーハラスメントとセクシュアルハラスメントの類型もございますが、それらについては、広い意味で対人関係にも含まれるというところですので、なるべく分かりやすく、かつ包括的な記載ということで、ここに例を5個挙げているところです。業務以外の心理的負荷のほうの例についても、別添2の「業務以外の心理的負荷評価表」の類型の表示に合わせているところです。いずれも、先ほどのパワハラとセクハラも含めて、全部は書ききれておりませんので、「等」を付けているということになります。
 続きまして、33ページからのⅦ「療養及び治ゆ」です。まず、33ページの2段落目です。「一定の障害」の後ろに、「(後遺障害)」というものを追加しております。前回に御指摘賜りましたように、ここでの「一定の障害」というのは精神障害の「障害」という趣旨ではありませんで、症状が固定して永続的に残る障害という趣旨で書いているものですので、そこの誤解がないようにということで、表示しているところです。
 また、図7-1ですが、図の修正をしております。前回の検討会での御指摘を踏まえて、より分かりやすいようにということでの修正です。真ん中にあった点線を削っております。それから、「治ゆ(症状固定)」の赤い矢印ですが、前回の案では期間の青い矢印よりも下に記載しておりましたが、そこだと分かりにくいという趣旨で、上に移動しました。また、傷病経過によって、どの段階で症状固定と判断されるかは事案によって異なりうるということで、矢印のスタートの部分は破線という形にしております。なお、この「治ゆ(症状固定)」の矢印ですが、前回の検討会でもありましたとおり、重症度との関係を示すものではありません。実際に治ゆと判断される時期は事案によって異なるものではありますが、あくまでも期間としてこの辺りになってくるのだろうということを示すものとして記載しているものです。
 また、その矢印の上のところですが、「再発」の下に「(新たな発病)」という表現をしております。こちらについても御指摘のあったところですが、これについては報告書(案)の20ページにおいても御確認いただいている内容で、対象疾病が一旦治ゆ(症状固定)した後において再びその治療が必要な状態が生じた場合には、労災保険制度としてはということですが、新たな発病というように取り扱いまして、改めて認定要件に基づいて業務上外を判断するということで、現行の認定基準でもそのようにしておりますし、それは現時点においても妥当だという整理をしていただいております。その旨を20ページに書いているところですが、そういった場合に当たるという趣旨で、労災補償の観点から、そのように取り扱うのだという趣旨で「新たな発病」というように記載をしているものです。
 また、この図7-1の参考文献ですが、もともと書いていました43の『標準精神医学』が基としている、42の文献についても参考文献に追加しているところです。
 34ページです。全体の表現の平仄を合わせるという趣旨、また、今後の検討についての記載ぶりについて、修正をしているところです。
 35ページは見出しのみの修正です。番号を付けたということと、参考7-1は前は「障害等級認定基準(抜粋)」と書いていましたが、分かりやすさのため、基準そのものとは異なる書きぶりのところもございますので、「(抜粋)」という記載は削っているところです。
Ⅷ「認定基準の運用等」、Ⅸ「複数業務要因災害」については、修正点はございません。
 Ⅹ「まとめ」です。こちらも前回の御議論を踏まえまして、重複を削る、読みやすくするといった観点から修文しているところです。まず、第1段落については、重複を削るという趣旨で修文いたしました。
 第2段落ですが、この報告書を基に認定基準を見直すに当たって、改正事項となる内容です。25ページ、先ほどⅤのところで御説明したのと同様に、評価表の修正として、前の案から項目の追加や一部統合ということは書いておりましたが、総合評価の視点及び強度ごとの具体例の拡充、これは評価表の見直しの要点となってきますので、その旨を追記しております。
 さらに、「本検討会としては」の段落ですが、前回の検討会での御指摘を踏まえて修正しているところです。「本検討会としては、今回の報告に基づく認定基準の改正により、認定の公正が一層確保されるとともに、どのような場合に労災認定がなされるかが労働者・事業主や行政職員等に分かりやすくなることを通じて、認定に係る判断が迅速かつ円滑に行われるようになることを期待するものである。行政当局においては、新たな認定基準の考え方及び内容について、関係者に周知するよう適切な手立てを講じることはもとより、相談や問い合わせがあった際には、丁寧な説明を行うよう努めていただきたい」というような表現となっております。
 39ページの最後の3行のところです。過労死等の防止に係るまとめの部分です。前回の検討会での御指摘を踏まえまして、セルフケアやラインによるケア、すなわち現場の管理・監督者によるケアについても、重要な事項という御指摘を頂きましたので、これに言及するといった修正をしております。事業場内・事業場外の産業保健スタッフの支援についても言及しているところです。
 その後ろは、別添1、別添2、別添3を付けております。別添1は「業務による心理的負荷評価表」です。誤記がありましたので修正している箇所がございますが、内容の修正についてはありません。別添2、別添3については、全く修正はしておりません。
この内容で問題がないかも含めまして、今一度御確認を賜れればありがたいと考えているところです。
報告書(案)についての御説明は以上です。御議論のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○黒木座長 事務局から、資料1「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(案)」について、前回案からの修正点などの説明がありました。委員の先生方からの御意見を、報告書案全体を通じていただければと思います。御意見、御質問がありましたら御発言をお願いいたします。報告書(案)の具体的記載についての御意見等の際には、報告書案に記載されているページ番号を指摘された上で御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。小山先生、何かありますか。
○小山委員 いろいろと表のところに注文を付けましたが、まとめていただきましてありがとうございました。1点だけ、8ページの精神障害に係わる労災補償の状況のところなのですが、表の下のところで、(累計)と書いて後はパーセントで表していらっしゃるのですが、例えば累計のところは支給決定事案ですので、5,420件というように件数を入れたほうが分かりやすいのではないかと思います。ですから、自殺事案も括弧をして、このうち920件と。あとは件数はいらなくてパーセントで分かるのですが、この支給決定件数の累計と自殺事案の件数だけ、足し算をして合計数の件数を入れたほうがより分かりやすいかと思います。いかがでしょうか。
○黒木座長 ありがとうございます。具体的に数が入るだけで随分違うと思いますが、いかがでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 御指摘を踏まえて、一旦書いてみて、また各先生方に諮らせていただいて、よろしければそのような形にさせていただければと思います。
○黒木座長 小山先生、よろしいですか。
○小山委員 はい、それで結構です。わかり易くまとまり、丁寧な記載報告書になっているので評価・認定がとてもやりやすくなったのでないかと思います。
○黒木座長 品田先生、いかがでしょうか。
○品田委員 散々意見を言わせていただきましたので、全体を通して満足しております。特に、今回の検討会における報告書のポイントとして改めて読んでみますと、医学的な問題について、我々が認定審査をしていた段階で迷うようなことがきちんと端的に整理されていることにおいて、非常に意義があると感じました。例えば、「ストレス-脆弱性理論」についての背景や、さらには社会的ストレスというものがどういうものであるのかが非常に理解しやすくなっていること。さらに、実務上非常に困難を極めた治療歴のない自殺案件についての発病の有無について、何を視点にすればいいのか、最終的にどのようなことで決断をすればよいのかが医学的な説明の下に明らかにされていることも、実務的に非常に大きいと感じました。
 もう1つ言うと、既存の精神障害の悪化なのか、若しくは新たな発病なのか、これも非常に迷うところであったわけですが、その判断基軸みたいなことが一定程度示されて、どこに留意して問題をみればいいのかが分かりやすくなっているような気がしました。そういう意味において、私個人としては、この医学的な視点が明確になったことは非常に意味があったのではないかと感じております。以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。荒井先生、何かありますか。
○荒井委員 全体を読ませていただいて、これまでの13回の議論をうまく集約していただいて、また別表もこれまでの蓄積を踏まえ、非常に分かりやすくなったと思っております。また、実務的に業務上外の判断をするときの明確なというか、大きな根拠が示されたと思っておりますので、労災医員にとっても役に立つでしょうし、行政の調査その他についても、なるべく正確に、かつ短い時間で集約できるというメリットもあるかと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。中野先生、いかがでしょうか。
○中野委員 私は、特段今日付け加えさせていただくことはありません。前回私が申し上げた「障害」という言葉の使い方についても御対応いただいておりますし、これまでの議論をとてもうまくまとめていただいたと思います。荒井先生や品田先生がおっしゃったことに、特段付け加えることはありません。
○黒木座長 ありがとうございます。丸山先生、いかがですか。
○丸山委員 全体としての話になりますが、前回の検討会から今回1年半掛けて検討会をやってきたわけですが、その間にいろいろな世の中の変化に伴って問題点に対してのいろいろな課題が出てきました。それについて、かなり緻密で、特に医学的なエビデンス、それからエキスパートコンセンサスに基づいた議論がなされたということで、大きな成果があったと思います。特に、別添1の「業務による心理的負荷評価表」の完成度はかなり高くなったので、課題であった迅速化の問題は、これにかなり寄与するかと思います。
 もう1つは、公正・公平であることは非常に重要なのですが、これまでの「業務による心理的負荷評価表」の中で問題であった「強」と「中」の間の切り分けが少し曖昧なところもありましたし、「中」と「弱」もあまり切り分けられていないところがありましたが、この辺りはきちんと多くの判例に基づいて例を入れられたので、かなり実態を反映したものとなっていると思います。例えば「中」が複数あると、これは非常に悩ましいです。「中」と「中」があった場合に「強」又は「中」になるわけですが、「強」になる場合と「中」になる場合では、上外になりますから、かなり大きな違いが出ます。このときに、「中」の中でも「強」寄りの「中」であるとか、「中」であっても「弱」寄りの「中」であるという評価も、今回の評価表ではかなり分かりやすくなったと思います。そういう意味では、先ほど申し上げたことを繰り返しますが、迅速化と公正・公平であることにかなり寄与する内容になっていると思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。中益先生、いかがでしょうか。
○中益委員 私は本日特に付け加える点はありません。先生方がそれぞれ御指摘なさったような意義があり、これが実際に労働者や、現場で業務上外の認定を判断する方々にとって、役に立てばよいなと思っております。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。吉川先生、いかがですか。
○吉川委員 長い議論の中に参加させていただいて、私自身も大変勉強になりました。特に今回、この10数年の中で蓄積されてきた裁判事例が丁寧に検討されて、何が論点であったかがかなり検討会の中で議論されたこと、それから、日本産業精神保健学会が行ったストレス評価の客観的な調査が提供されて、最新の、若い人も含めた心理的な負荷の状況について整理されたことが反映されたものになっていると思います。
 もう1つ、報告書の中では図が改訂され、現場で分かりやすく見られるような図7-1などが入ったことは、いろいろと判断する意味で、初めて関わる方にも理解がしやすいものになったと思いました。
 それから、多くの先生方から御指摘いただいている負荷表についても、最近のコロナでの状況なども踏まえた感染症対策従事の心理的負荷はどのような状態なのか、あるいはカスハラのようなものも新たに整理されて項目として起こされたことは、非常に重要な意義がある表になったのではないかと思います。
○黒木座長 ありがとうございました。阿部先生、いかがでしょうか。
○阿部委員 私も、特に今回の報告書で追加することはありません。ほかの先生方がおっしゃっていたことと繰り返しになるのかもしれないですが、今回の報告書は前回や前々回までと比べて、より分かりやすく丁寧な記載になっていると思いました。特に2点、強度ごとの「弱」、「中」、「強」の具体例が書き込みされたのは、これまでとかなり違う改正点だと思います。現場の労基署の方が当てはめしやすいというのはあると思います。表にぎっしり文字が書いてあるので、すっきりしていないという点はあるのですが、迅速化にもつながるのかなと思いました。
 それから、治ゆや寛解や悪化についても、今回は随分議論がされましたし、図7-1のうつ病の経過の図なども非常に分かりやすくなっていて、評価できるかなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。田中先生、お願いします。
○田中委員 私も、前回を含めてこれまでの議論を適切に反映されたいいまとめの報告書になっていると思います。細かいことですが、11ページの参考3-1の精神障害の生物学的側面についての記述ですが、ここは各段落ごとに遺伝学や脳画像、生化学所見といった形でそれぞれまとめているところですが、最初の段落の遺伝医学の一番最後のほうに、統合失調症の画像診断、画像所見の記述がありますので、これについては次の段落に移してまとめる等の修正がより適切かなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。三柴先生、報告書案の説明と先生方の御意見を大体伺ったところですが、全体を通してこの報告書案について何か御意見はございますか。
○三柴委員 特段ありません。関係者におかれましては、検討会運営、お疲れ様でございました。本認定基準は、大いに具体性を増したと存じます。
○黒木座長 ありがとうございます。今回は認定実務というところで、どうやればいいのだろうという観点から、いろいろな問題点がこの10年間で出てきました。先ほど品田先生がおっしゃったように、既存の精神障害、治療歴のない精神障害の認定をどのように考えるのか、それから症状固定をどう考えるか、どの時点で症状固定、治ゆと判断するのかという点についても、先生方の御議論で随分まとめられて分かりやすくなったと思います。
 本日の御議論、それから御確認いただいた内容、また精神障害の現状に関して説明がありましたが、近々公表される令和4年度の支給決定件数を反映した報告書とすることを含め、座長一任とさせていただき、報告書をまとめたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(異議なし)
○黒木座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。御異存のないことを確認いたしましたので、報告書については私が最終的な確認などをし、字句の修正などを事務局に指示した上で完成させ、厚生労働省に提出することといたします。
 以上で、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会は、全ての検討を終了いたしました。各委員の皆様には、1年以上に及ぶ長い期間、検討に参加していただき、また様々な貴重な御意見を頂いたことを、厚く御礼申し上げます。それでは、議事を事務局にお返しいたします。
○本間職業病認定対策室長補佐 長時間の御議論、ありがとうございました。ただいま座長から御発言のありましたとおり、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」は、事務局において、座長の最終的な御確認、御指示を頂き、完成させていただくことといたします。
 それでは、本検討会の最後に当たり、梶原審議官より御礼の御挨拶がございます。
○梶原大臣官房審議官 労災担当審議官の梶原です。会の最後に当たり、御挨拶を申し上げます。
 本日の検討会での御議論、御意見、誠にありがとうございました。本検討会は、精神障害の労災認定基準について、平成23年に策定をされて以降、全体的な検証、改正がなされていなかったこと、また、近年の社会情勢、職場環境の変化などに適合し、より適切に審査が行われるよう、最新の医学的知見を事務局で収集をした上で、令和3年12月に第1回の開催をお願いいたしました。以降、本日を含めて実に14回の御議論を重ねていただき、本日、報告書案について委員の皆様から座長への御一任を頂き、最終的な取りまとめを迎える段階に至りました。これも、大変御多用の中にもかかわらず、貴重なお時間を毎回割いて御議論に御参加いただいた黒木座長をはじめ、各委員の深い御理解と御協力の賜であると、重ねて御礼を申し上げます。
 精神障害の労災認定基準は、それまで判断の指針であったものを、平成23年度に認定の基準とし、それ以来の全面的な検証と見直しを行ったものであり、本検討会は、認定基準策定以降蓄積をされてきた医学的知見などを総括し、現代、現在の労働環境などに適合した認定基準に改正をするための取組でした。今後、座長に御確認をいただいた報告書を公表した上で、報告書を踏まえた、行政通達であるところの認定基準の改正を行い、より一層現在の労働環境にマッチした労災認定が現場で行われるよう、引き続き努めてまいりますことをお約束いたします。
 また、各委員におかれましても、引き続き、労働基準行政、労災補償行政の推進に当たり、御意見、御指導などを賜れれば幸いに存じます。
 最後となります。本日の検討会で、精神障害の労災認定基準に関する検討会は一つの区切りを迎えたわけですが、各委員の本日までの多大なる御貢献に改めて重ねての御礼を申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。誠にありがとうございました。
○本間職業病認定対策室長補佐 ありがとうございました。以上をもちまして、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会を終了いたします。本日は大変お忙しい中、誠にありがとうございました。