2022年10月28日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和4年10月28日(金)16:00~

出席者

出席委員(15名)五十音順
(注)◎部会長
欠席委員(6名)五十音順
(注)○部会長代理 
行政機関出席者
  •  八神敦雄(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) 他

議事

○事務局 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開始いたします。本日、公務にて医薬品審査管理課長が遅れておりますため、事務局から進行をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からWebでの審議とさせていただきます。
 本日のWeb会議における委員の出席につきましては、飯島委員、大森委員、合田委員、小崎委員、武田委員、平石委員より御欠席との御連絡を頂いております。このほか、佐藤直樹委員から遅れて御参加との御連絡を頂いております。また、田崎委員がまだ会議には参加されておりませんが、後ほど御参加されるかと思います。
 本日は現在のところ、当部会委員数21名のうち13名の委員がこのWeb会議に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない。」と規定しております。
今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますことを御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、森部会長、以後の進行をお願いいたします。
○森部会長 本日の審議に入らせていただきます。まず、事務局から資料の確認と、審議事項に関します競合品目・競合企業リストにつきまして御報告をお願いいたします。
○事務局 本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りいたしました資料のうち、資料No.2~資料No.4-10を用いますのでお手元に御用意いただけますでしょうか。その他、資料No.5として、「審議品目の薬事分科会における取扱い等の(案)」を、資料No.6として、「専門委員リスト」、資料No.7として、「競合品目・競合企業リスト」を事前に電子メールにてお送りいたしております。
なお、システムの動作不良などがございましたら、会議の途中でも結構ですので事務局までお申し付けください。
 続きまして、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料No.7の1ページを御覧ください。プレセデックス静注液200μg「ファイザー」他1規格ですが、本品目は、「小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 今の事務局の説明につきまして、何か御意見、御質問等はございますでしょうか。それでは本Web会議の審議事項に関します競合品目・競合企業リストにつきましては皆さんの了解を得たものとさせていただきます。
 それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては次のとおりです。議題1、プレセデックス、退室委員なし、議決に参加しない委員、川上委員、以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に特段の御意見はございませんでしょうか。よろしければ皆さんの御確認をいただいたものといたします。
 本日は審議事項1議題、報告事項2議題となっております。それでは審議事項の議題に移らせていただきます。議題1につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.2、医薬品プレセデックス静注液200μg「ファイザー」他1規格の製造販売承認事項一部変更承認の可否等につきまして、機構より御説明いたします。
資料No.2の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、通し番号5/37ページの1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。小児では、処置及び検査を実施するに当たって、成人と異なり、行動制御ができず自発的な安静を得ることが困難な場合があるため、体動を抑制するための鎮静が必要になることがあります。
本邦において、小児の鎮静を要する検査等に使用されている主な鎮静薬としまして、トリクロホスナトリウム、抱水クロラール、バルビツール酸系薬剤、及びミダゾラムがありますが、このうち小児の検査時の鎮静に係る効能・効果を有している薬剤は、トリクロホスナトリウム及び抱水クロラールのみです。経口又は経腸投与されるトリクロホスナトリウム及び抱水クロラールは、鎮静効果が得られるまでの時間が長く、また検査実施中に鎮静不十分となった場合に追加投与が困難である等の課題があるため、本邦の医療現場では、小児の検査時に使用可能な新たな鎮静薬の選択肢が望まれている状況です。
本剤はα2アドレナリン受容体作動性の鎮静薬であり、本邦において、集中治療における鎮静、手術及び処置時の鎮静に係る効能・効果で承認されておりますが、手術及び処置時の鎮静に係る効能・効果では、成人に対する用法・用量のみが設定されております。
 海外において、本剤は、小児の検査のうち特にMRI検査時における鎮静薬としての有用性が報告されていること等を踏まえ、2020年2月より、日本及び米国においてMRI検査を受ける小児患者を対象とした国際共同治験が開始されました。今般、本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
海外では、米国において本年5月に承認申請がなされ現在審査中であり、本年9月時点で本申請に係る効能・効果については、いずれの国又は地域でも承認されておりません。
なお、本剤は「小児における非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静」を予定効能・効果として本年3月、特定用途医薬品に指定されております。
 本品目の審査に関しまして、専門委員として資料No.6に記載されております4名の委員を指名いたしました。
 本品目の審査の概略につきまして、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書通し番号7/37ページの表1を御覧ください。国際共同第III/IV相試験として、MRI検査を受ける小児患者を対象に、本剤の用量群として、高用量、中用量、低用量の3群を設定した無作為化二重盲検用量範囲設定試験が実施されました。
まず、有効性について、本試験の主要評価項目としましては、MRI検査を完了するために、鎮静薬であるプロポフォールの併用を必要としない被験者の割合が設定されました。その結果は、通し番号9/37ページの表4を御覧ください。高用量群で63.2%、中用量群で35.7%、低用量群で14.3%であり、高用量群では低用量群と比べて統計学的に有意に高い結果でした。当該結果等から、高用量群の用法・用量で本剤を投与することによる一定の有効性は示されていると判断いたしました。なお、本剤単独投与では適切な鎮静が得られない患者が一定の割合で存在し、検査や処置を完了するために、他の鎮静薬を追加投与する必要性が生じることが想定されるため、このような場合には、患者の全身状態を注意深く観察し慎重に投与する旨が注意喚起されることになっております。
 次に、安全性について御説明いたします。国際共同第III/IV相試験の有害事象の発現状況について、通し番号16/37ページの表8を御覧ください。主な有害事象として、徐脈、高血圧、低血圧といった循環動態への影響及び徐呼吸、低酸素症といった呼吸状態への影響が認められました。一方、これら有害事象の多くは介入を必要とせず、介入を必要とした場合でも薬剤や酸素投与等の適切な処置により管理可能でした。
以上から、本剤投与に当たっては、主に循環動態及び呼吸状態への影響について注意する必要があるものの、これらの影響を継続的に監視できる体制の下で、小児の非挿管での鎮静における患者管理に習熟した医師が使用する等の適切な注意喚起等が行われることを前提とすれば、小児の非挿管での処置及び検査時の鎮静における本剤の安全性は管理可能と判断いたしました。なお、添付文書案の8.15項~8.18項等について、本剤投与に当たっては全身状態を注意深く継続して管理すること、呼吸管理、循環管理を行えるよう準備しておくこと、検査・処置中に患者を観察する医療従事者を配置すること、処置・検査後は患者が回復するまで管理下に置くこと等について、注意喚起する予定になっておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 次に、用法・用量について御説明いたします。通し番号22/37ページの「7.R.5 用法・用量について」の項を御覧ください。設定予定の用法・用量は国際共同第III/IV相試験の高用量群の用法・用量に基づいております。当該用法・用量は既承認の集中治療における鎮静に係る小児の用法・用量とは異なり、初期負荷投与が規定されており、また維持量についてもより高い用量が規定されております。この理由としては、小児患者の多くは検査を受ける前に不安を感じ、興奮状態であると想定されますので、速やかに目標鎮静レベルに到達させる必要があると考えられること、またMRI検査時に求められる鎮静レベルは集中治療における鎮静レベルよりも深いこと、海外において初期負荷投与を含めた高用量投与により本剤の小児MRI検査時の有用性が報告されていること等が考慮されたためです。国際共同第III/IV相試験の結果、用量依存的な有効性が示されるとともに、高用量群の安全性は適切な注意喚起等の下であれば管理可能と考えられたことから、高用量群の用法・用量に基づき承認用法・用量を設定することは可能と判断いたしました。
 最後に、適正使用推進のための方策について御説明いたします。通し番号32/37ページ、「1.5 適正使用推進のための方策及び製造販売後の検討事項について」の項を御覧ください。特にMRI検査では、MRI検査装置内の患者へのアクセスが限られ、緊急事態に陥った場合にも磁性体を含む医療機器を持ち込めず、検査室内での対応が限られることから、循環動態及び呼吸状態に関する副作用が生じた場合のリスクが高いと考えられます。また、本剤が本申請適応に対して使用可能となった場合、現時点では既承認効能での本剤の使用経験が乏しい一般の小児科医等の医師も今後本剤を使用することが想定されます。これらを踏まえると、適切な医療体制下で適正使用されることを推進する方策を講じることは非常に重要と考えており、申請者からは次に述べるような方策が提案されております。
 まず、関連学会が公表しているガイドライン等を参考に、処置及び検査時の鎮静管理のポイント、本剤投与に当たっての注意事項等を記載した医療従事者向けの資材が提供される予定です。また、関連学会とも協議し本申請適応に対し、本剤を適正に使用するための施設、鎮静実施医師及び患者監視に専念する医療従事者の要件を定めた上で、これら要件を満たした施設、医師等により、適正使用されることを推進するための適正使用推進プログラムが計画されております。当該プログラムでは、製造販売業者の担当者が本剤の全納入施設に対して、各要件を満たした上で本剤を使用するよう注意喚起するとともに、これら要件に適合していることを確認する手順が規定されております。
 加えて適正使用に関する実態調査を並行して実施し、各要件を満たさない状況で本剤が本申請適応に対して使用されていることを把握した場合は、適正使用を行うよう速やかに依頼することになっております。さらに本剤の本申請適応に対する承認取得後、可能な限り速やかに、上述した各要件及び適正使用推進プログラムの周知を含めた適正使用推進への協力依頼が関連学会を通じて行われる予定になっております。申請者から提案されているこれらの方策は適切と考えておりまして、専門協議においても御支持を頂きました。
以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 本品目は特定用途医薬品に指定されていることから、再審査期間は5年10か月とすることが適当と判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 なお、本日御欠席の武田委員より事前に御意見を頂戴しておりますので御紹介させていただきます。「磁性体を持ち込めない狭いMRI空間内での緊急対応はかなり難しく、また、使用頻度が高くなると救急対応の経験に乏しい小児科医が使用する可能性があることから、申請者が提案している医療従事者向け資材の作成及び配付、適正使用推進プログラムの実施、適正使用に関する実態調査の実施では不十分であり、施設や医師に対する許可制度が必要と考える」旨の御意見を頂戴しております。
 この御意見につきまして、適正使用推進のための方策を少し補足させていただければと思います。武田委員より御指摘がありました使用医師の救急対応の経験について、一般の小児科医が本剤を本申請適応に対して使用する際には、小児患者に対する救命処置の講習を受講し、有害事象に対応できる救命処置について熟知しており、実践可能であるということに加えて、本剤投与に精通した医師に協力を得ることが可能であるということを要件として設けております。その上で、今述べました要件を含む各要件を満たした医師、施設等により適正使用されることを推進するための適正使用推進プログラムを実施し、またこれらの要件や適正使用推進プログラムについては、承認後に関連学会を通じて広く周知されることになっており、これらの方策は本剤の適正使用推進に当たって一定の効果が期待できると考えております。
 武田委員より御指摘がありました施設や医師に対する許可制度につきましては、今述べました医師要件及び施設要件を設定し、適正使用推進プログラムで要件への適合性を確認するということで、一定の手当がなされているものと機構としては考えております。また、本剤は既に小児を含む集中治療下での鎮静や成人の手術及び処置時の鎮静の適応を有し、幅広く使用されている状況であることを踏まえると、本申請適応にのみ使用する医師や施設に対して、法令等に基づく許可制度を設けることは現時点では難しいものと想定しております。ただし、武田委員より頂戴いたしました御意見を踏まえ、現状、提案されている適正使用推進のための方策を行ったとしても不適正の使用が散見される等の場合は、さらなる方策を積極的に検討するよう申請者に申し伝えたいと考えております。この説明内容については、武田委員に事前に御説明をし、御了解を頂いているところです。機構からの説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 委員の先生方から、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
○堀委員 患者の立場、小さい子供を持つ患者の親の立場からお聞きしたいと思います。
今の武田委員からの御質問は、もっともだと私は思っておりました。と言うのは、私たち患者が、例えば小児科にかかる方が、既にこの薬は成人に対しては幅広く承認されていて鎮静薬として使われているということですが、実際に小児科医として、小児に対する新しい今回の効能・効果ということのものに精通しているかどうかということを、私たち患者が判断できる何か評価のものというのはあるのでしょうか。機構の方、教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 今、頂いた御質問としては、患者様の立場で、医師が今回の適応に対して精通しているかを確認する方法があるのかという御質問を頂いたと理解しておりますが、そのような理解で差し支えないでしょうか。
○堀委員 はい。
○医薬品医療機器総合機構 患者様の立場から鎮静薬を使用する医師が今回の適応に対して精通しているかについて確認する方法は、今のところ想定はしておりません。
○堀委員 分かりました。となると、実際に検査の前に、小さいお子さんなどがこのお薬を使うことになり、小さいお子さんですとかなり興奮状態で鎮静が難しいということでこれからこのお薬が活用されるかと思うのですけれども、その使用や処置の部分において、私たち患者は、全て治療に関してはお医者様に託すしかすべがないだけに、今のお話を聞いていると、かなり不安な要素は残るので、感想なのですが、その辺が患者としてかなり不安です。
○森部会長 機構から追加の御回答はありますか。
○医薬品医療機器総合機構 今、かなり不安を感じるとの御意見を頂戴しました。先ほど申し上げた医師あるいは医療従事者の要件、施設の要件を満たすことを確認するなど、本剤が使用される環境作りについては、できるだけのことは申請者の方から御提案を頂いていると思っておりますので、このような方策にて適正使用は担保していくことを考えております。
○森部会長 今の掘委員からの御質問に関連して、私から1点指摘させていただきます。
審査報告書の7.R.1に関することなのですが、今回、申請に用いられている国際共同第III/IV相試験で、この試験では、まずレスキューする場合にはプロポフォールが使われているという点が国際的に行われておりまして、日本でもそのプロトコルに従って、レスキューはプロポフォールを使っていることが記載されています。
 読み進めていきますと、鎮静を行って小児のMRI検査を行う場合、日米で医療環境に大きく違いがあり、本邦では鎮静薬を用いて行った検査のうち、麻酔科医が関与した鎮静が1.8%ということですけれども、米国では集中治療専門医や救命救急医、麻酔科医がかなり高頻度にコミットしているということがありまして、日本と米国では、そもそもMRI検査を行うときの医療環境が大きく違っているということです。
 それから、日本ではプロポフォールを鎮静に使うことは、小児では非常に一般的ではなくて、5.3%という報告があります。一方で米国では手術室外での小児検査時には57%にプロポフォールが、これは適応外ではありますが、使われているということがあり、今回、この国際共同治験でプロポフォールでレスキューするということになった経緯は、この状況を反映していると思われます。今回行われている治験を基に本剤が日本で使用される場合、日本では小児科の先生がこの薬剤を使うという前提で、我々はデザインしていかなければいけないのか、若しくは米国に倣って、集中治療専門医や救命救急医、麻酔科医がしっかりコミットした上でこの薬剤を使うというように、そもそも使用環境自体を変えた中で、この薬剤を位置付けていくかということを、どのように機構ではお考えでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 小児の鎮静を行う上で、もちろん麻酔科医、集中治療医といった、鎮静を専門とするような医師が使用することが望ましいとは考えていますが、本邦の医療実態を踏まえると難しいと考えていて、一般の小児科医が使用せざるを得ないという状況も想定しています。
 この薬剤については循環動態あるいは呼吸状態への影響もございますので、適切なモニタリング等が必要と考えております。先ほど述べましたように、使用する医師あるいは患者監視に専念する医療従事者に対して、小児の救命処置のスキルがあるというところを要件として定めた上で、安全に使用できるような体制作りが重要と考えております。
○森部会長 もう一つ、実際に日本で行われた治験について、治験担当医師に、小児麻酔科や麻酔科の医師のうち、プロポフォールを日常的に使用して、その特性を十分に理解している医師を選んでいたということがありますので、この治験が行われていた我が国での医療環境と、承認後に実際にこの薬剤が使用される医療環境に大きく乖離がある可能性があることを懸念しています。この点については、後ほど委員の先生から御質問を受けようと思っていますけれども、柴田委員からも御質問を頂きましたので、柴田委員の御発言を進めてください。
○柴田委員 2点お伺いしたいことがあります。まず、審査報告書の11/37に、7.R.1で、米国においては今回参考資料とされている臨床試験が、「有効性を評価するデザインとして適切ではないと判断された」という記述がございます。これは、どの部分が、どういう内容が不適切で、今回の追加臨床試験を実施されるに至ったのか。つまり、どういう懸念材料が、今回の新しい臨床試験で解消されたのかについて、機構の考えをお聞かせください。
○医薬品医療機器総合機構 柴田先生から御指摘いただいた、海外で実施されたDEX-10-16試験について、米国FDAが有効性を評価するデザインとしては適切ではないと考えた理由ですが、その点については特に申請者に確認はしておらず、今般計画された国際共同治験の妥当性については、治験相談等で確認をした上で、今回の審査に至っています。
○柴田委員 分かりました。質問の2点目です。用法・用量の設定に関する質問です。CTD2.5、臨床に関する概括評価の5ページ、6ページを開いていただけますでしょうか。ここに、今般追加された臨床試験のデザインに当たってFDAと企業とのやり取りが書いてあります。6ページの下の方、黒ポツの下から三つ目の所に、初期負荷投与の投与方法に関する論点があります。2歳以上17歳未満の高用量群における初期負荷投与について、当初、初期負荷投与について「5分かけて投与すること」と設定したが、6~60か月の小児を対象に本剤4.0μg/kgを10分かけて投与した試験において、2例に重大な呼吸抑制が報告されていることから、「2.0μg/kgを10分かけて投与すること」と変更すべきとのFDA見解及び面談での協議結果も踏まえ、初期負荷投与について、「10分かけて投与すること」に変更したと記述がございます。
 これについて、この6~60か月の小児を対象に投与した試験で2例の重大な呼吸抑制が報告されているということですが、どの試験なのでしょうか。それと、添付文書には、最終的には「10分かけて投与する」と書いてあるのですけれども、5分かけて投与するということを製薬企業の方が提案するような状況において、5分ではなくて10分にした理由というのをきちんと説明しなくてもよいのかという点について、どのようなお考えなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、1点目で御指摘いただいた、6~60か月の小児を対象に、本剤4.0μg/kgを10分間かけて投与した試験について、現状、どのような試験であったかについては、すぐには回答できませんので、しばらくお時間を頂いてもよろしいでしょうか。
○柴田委員 はい。
○医薬品医療機器総合機構 2点目については、10分かけて投与することの妥当性というところ。
○柴田委員 正確には、当初は5分かけて投与することというのを企業側が提案されていたものに対して、FDAが待ったをかけたという経緯があるわけですが、このような経緯というのは、添付文書に「最終的に10分かけて投与すること」と、ピンポイントで書かれるだけでは分からない重要な情報なのではないかと思ったのですが、それについては特に取り上げるまでもないという話なのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床試験において10分間かけて投与することによって、適切な鎮静効果が得られて、安全性上も大きな懸念はなかったことをもって、申請用法・用量として、10分間静脈内へ持続注入することを規定していますので、添付文書上で、更なる注意喚起等は不要と考えております。
○柴田委員 質問は、10分と決めてやったらうまくいきましたということに関する機構の解釈はいいのですが、その10分と決めるに当たって、5分かけて投与するという提案は受け入れられないというFDAの見解、その理由が、10分かけた投与ではあるけれども、より高用量を投与したときに2例に重大な呼吸抑制が報告されているから、5分ではなくて10分、しかも2μをゆっくりかけて投与しましょうという話になっているという話は、臨床的に重要な情報なのではないかと思うのですが、それについては重要ではないという解釈だということでよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 重要ではないという解釈はしておりません。もちろん、そういった知見があるという状況である、成人の手術及び処置時の鎮静で10分間かけて投与していることもございますので、小児に対して、より短い時間で高用量投与するのではなくて、10分間かけて初期用量を投与することは重要と判断しておりますので、重大な呼吸抑制が生じたとの報告については、重要視すべき内容と思っております。
○柴田委員 分かりました。資材等で情報提供されるという理解でよろしいですか。設定根拠に関する情報等で。
○医薬品医療機器総合機構 現状、今回実施された国際共同第III/IV相試験の用法・用量の設定根拠の詳細を記載する予定はありませんでしたので、今、御指摘いただいた点について、適正使用ガイド等に盛り込んでいただくよう、申請者の方に申し伝えたいと思います。ありがとうございます。
○森部会長 その他、委員から御発言、御意見はございますでしょうか。
○宮川委員 今、いろいろと縷々お話があったように、試験環境と、実際にこれから想定される臨床での使用環境というものは、かなり違ってくる可能性もあるので、そこは非常に重要なことだろうと考えます。そうでなければ、副作用を含めていろいろなことが出てくるということが、今の時点でも想定されるということがありますので、かなり実際の使用の場面では適正使用のこと、それから、10分間どのような臨床症状を見ていくのか、そういうような細かいものがなければ、これは非常に難しい問題だろうと思います。そのことについて、機構はどのように考えているのか教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 我々としても、今回治験が行われた医療環境と、実際に本剤を日本の医療現場に提供した場合の医療体制が異なることについては、重々理解しているところですので、申請者には、一般の小児科医が使用するような状況も想定した上で、添付文書での注意喚起、あるいは適正使用推進プログラムを立案していただいています。
 添付文書では、例えば添付文書(案)の8.16項等において、実際にモニタリングが推奨される項目も列挙した上で、それらをしっかり観察できる医療従事者を置いて、投与中は観察してくださいといった内容についても注意喚起を行っていて、医療従事者向けに提供する資材においても、その辺りのモニタリング項目も含めて、関連学会が出しているガイドライン等に基づいて、細かく情報提供させていただいているところです。
○宮川委員 そういう意味では、適切な鎮静レベル、至適鎮静レベルというように書いてあるのですが、それは何をもって至適鎮静レベルというようなことに落とし込めるのか、その言葉自体も非常に曖昧な状況であると認識しているので、是非ともしっかりとした状況が必要であろうと思っております。「状況に応じて至適鎮静レベル」とあって、「至適」というのは何をもって至適なのか、一言で書いてあるのですが、「至適」というのはどのように取っていいのかよく理解できないので、それも教えていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 至適鎮静レベルについては、実際に行う検査、あるいは処置によって異なると考えていて、例えばMRI検査においては、体動を完全に抑制する必要もございますので、深い鎮静が必要になりますし、体動が許容される検査あるいは処置においては、MRIほど深い鎮静レベルは必要ではないこともございますので、検査、処置、患者の自制の状況といった点を踏まえて、患者ごとに至適鎮静レベルを見定めた上で、本剤投与を行うことになると想定しています。
○宮川委員 言葉でそうやって言うだけですから、それを規定するというのは非常に難しいので、そこは臨床現場でどのように問合せが出るかというのは、適正使用のガイドラインも含めて、そういうプログラムというものを含めてしっかりとした周知をしていかなければいけないと思っております。
 もし、至適なレベルというものを強く求める場合には、検査後に、回復するまでどのような管理下に置くのかということも非常に重要ですので、そこも認識していただくようにしなければならない。添付文書で強く注意喚起するということは適切であると考えるというように機構の方も書いておりますが、その辺の立て付けがより重要になってくるだろうと思っております。
 子供によっては、恐怖というものと鎮静というのは、非常に難しい取り回しになります。強く恐怖を感じる子供には、より深く薬を使わなければいけないはずです。それがどのぐらいの持続時間でもって、とのぐらいの薬用量を入れるのかということは、お話をしながら進めていくべきところですので、今、お話があったように、言葉で表すことは非常に難しいと思いますので、資材等を含めて、しっかりとした立て付けの中でやっていかなければなりません。企業側は非常に前のめりになりますので、そこはしっかりと指導していくことが必要だろうと思っています。一番最初に堀委員が懸念されたことが、全てそこに帰着していくのではなかろうかなと思います。
○森部会長 私から基本的な質問をさせていただきます。添付文書の臨床成績の所の17.1.6の項目の所に今回の使用成績を記載いただいているわけですが、「適切な鎮静レベルに達していない場合には、プロポフォールを併用可能にした」ということが書いてあります。これは、日本の実臨床で使用される場合も、プロポフォールを使用することを添付文書上容認しているというように取られる可能性もありますが、それは趣旨の範囲内でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床試験としては、レスキューとしてプロポフォールを併用可能としたわけですが、これをもって小児の処置時の鎮静に対してプロポフォールの投与を推奨することを意図しているものではございません。
○森部会長 推奨はしないというメッセージを追記する必要があるのでしょうか。質問の意味は、今回、日本で本剤を審査している段階で、日本の実臨床では小児の鎮静にプロポフォールは基本的に使えないという状況だと思うのです。後ほど小児科の先生にも御意見を聞きますけれども、治験のデザインとして、レスキューがプロポフォールでしか行われていないので、機構の方でも、プロポフォールでしかレスキューをしていないというデザインは不十分なデザインだということは認識していらっしゃるのですが、他の薬剤を使ってレスキューをしたというデータが全然ない中で、今、日本でこの薬剤を審議することが妥当かどうかということを、そもそも問いたいと思います。
本剤を使ってMRIの検査が、特に追加のレスキューは必要なく行った方も多数いらっしゃいますけれども、一部の方はレスキューが必要で、その場合に、このプレセデックスの投与量を調整することで鎮静レベルを深くするように対応すべきなのか、治験では使用していませんが、他の鎮静薬を使って鎮静すべきかということも実は書かれていないのです。そこは治験でも検討されていないという、重大な欠陥があります。この点は、機構の方はいかがお考えなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 今、頂いた御質問に関してですが、治験相談のときから申請者側とは議論してまいりました。森先生から御指摘いただいたように、小児に対する鎮静としてプロポフォールは認められていないところもございますので、他の鎮静剤も含めたデザインにするよう議論はしていたところではございますが、本剤単剤での安全性及び有効性を評価するという観点では、併用する鎮静薬をプロポフォールに限定することは受入れ可能とのことで議論を進めてきたところです。
 本剤を投与して効果不十分であった場合に、まず本剤の投与速度を調節して、より深い鎮静レベルにすることについては、現状としては推奨できないと考えております。治験の中で行われた本剤の投与方法としては、固定用量であったため、本剤投与中に、投与速度を加速することで鎮静レベルを深くしたデータはございませんので、安全性の懸念から下げる分には問題ないと考えておりますが、効果不十分のため投与速度を上げることは推奨できないと考えています。
 やはり日本の医療環境を踏まえると、検査中に効果不十分になった場合には、中止ではなくて他の鎮静薬を使用するという場合も想定せざるを得ないと考えており、添付文書案の8.17項を御覧ください。ここで、「本剤投与開始後に目標とする鎮静レベルに達しない又は鎮静レベルに達した後の効果減弱により、他の鎮静剤を追加投与する場合には、鎮静作用、循環動態及び呼吸状態への作用が増強し、副作用があらわれやすくなるおそれがあるため、患者の全身状態を注意深く観察し、慎重に投与すること」を注意喚起しているところです。
 他の鎮静剤を追加投与する際の注意については、添付文書だけではなくて、適正使用ガイド、あるいは関連学会から本剤の適正使用に関して周知をしていただくのですが、その中でも、他の薬剤との併用に関しては、特に注意を促すような方向になっていると聞いております。
○森部会長 それでは、小児科の領域の立場から、長谷川委員から御意見を頂きたいと思います。
○事務局 電車で移動中とのことです。
○森部会長 臨床試験では、実臨床上で起こり得るおおよその想定の範囲での薬剤は、実際使用されて、その中での安全性及び有効性が担保されているということが最低限だと思うのですが、日本の実臨床で使用できないプロポフォールのみでレスキューしたデザインの試験の結果のみで、ここで審議して承認するのは、データが不足しすぎているのではないかと懸念しているところです。
 委員の先生方、この件に関して御発言はありますでしょうか。
○赤羽委員 今、先生方が御懸念されているところは、私も非常に不安に思っているところです。それで、17.1.3の所の小児における、これは集中治療に関する国内第III相試験においては、併用薬としてミダゾラムがレスキューで使われているようなのですが、これに関するところは、MRI検査等に用いるときには、使えるかどうかに関しては、まだ今のところ全く情報がないということでしょうか。1点確認をさせていただきたくお尋ねします。
○医薬品医療機器総合機構 ミダゾラムについては、歯科領域での鎮静については効能・効果を有していると理解しておりますが、歯科領域以外の領域について、検査あるいは処置時の鎮静に関する効能・効果は有していないと理解しております。
○赤羽委員 そうしますと、でも、国内第III/IV相試験では一応、レスキュー薬としては使われたということですか。
○医薬品医療機器総合機構 集中治療下の小児患者を対象とした第III相試験という趣旨でしょうか。
○赤羽委員 そうですね。参考のデータになるということですね。
○医薬品医療機器総合機構 本剤とミダゾラムを併用したときの情報としては、参考の情報になるものとは考えております。少し補足をしますと、今回、使用成績調査も計画しておりまして、その中では、本剤で効果不十分な場合に他の鎮静薬を併用したときの安全性に関する情報についても、情報収集していただくことになっております。
○赤羽委員 それでは、プロポフォール以外のものを実臨床で使っていくときの情報を、これから収集していくことになるということですね。まだ、これからのお話ということですね。確認させていただきました。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね、他の適応では、本剤とミダゾラム等の薬剤を併用した経験は一定程度あると理解しておりますが、今回の適応に対して、今回承認する用法・用量で他の鎮静薬を併用したときの情報についてはまだ限られておりますので、市販後において、その点については引き続きフォローしていただくことを考えております。
○赤羽委員 ありがとうございました。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。「限られている」ということなのか、「ない」ということなのか、どちらなのかを教えていただきたいと思います。情報に関して、なければならないわけですから、本適用に関してないのかどうかということをお示しください。そこは非常に重要なところなので、しっかりとした議論の中の前提として置かなければならないのだろうと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明します。今回の適応に対して、ミダゾラムとの併用については、今回実施された国際共同第III/IV相試験ではありませんが、海外で実施されたDEX-10-16試験でミダゾラムと本剤を併用した経験はありまして、特段、安全性上の懸念は示唆されておりません。ただ、併用例については数十例程度ということで、たくさんあるものではない状況です。
○森部会長 欧米では、半数以上の症例は、プロポフォールを用いてレスキューしているという実態に基づいて、海外ではこの情報でいいと思うのですが、日本の臨床の実状にはかなり合っていなくて、添付文書でプロポフォールを併用可能とした試験成績のみで提示していますと、プロポフォールを併用することを国が認めていると、医療者の方々が受け取ることも十分あり得ることが懸念されると思いました。また、堀先生からのご発言のように、この医薬品を使う環境が海外の状況と日本では、医師の専門性等も異なっているといった点等も鑑みますと、やはり、この薬剤を使用する状況についての準備情報がまだ不足していると考えられます。
 もちろん今、機構の方に、何の情報が必要かは列挙していただいているところではありますが、それがまだ準備段階ということです。もちろん、承認した後にそれが動き出すことも我々は理解しておりますが、現状では、それが適切に注意喚起され、患者さんの手元に届くまでに適切なものとして構築されるかどうか、我々が確認する余地がないという点が懸念されている点かと思います。
 とは言え、臨床現場で小児の鎮静に困っていることは、これはもちろんニーズとしてはあるわけです。小児科の先生が適切に御使用しうるか。長谷川先生、今、御移動中とのことですが御発言が可能ですか。本薬に関して御発言ございますか。
○長谷川委員 これは検査に用いるものというのが前提ですので、やはり安全性が非常に担保されないと、私たちは使いにくいなというのが第一です。かなり厳密に、使用に関しては慎重になるべきかなとは、小児科医としては感じております。
○森部会長 国際共同治験のレスキューがプロポフォールのみで行われているのですが、日本の臨床現場としては、情報はやはり不足していますでしょうか。
○長谷川委員 そうですね、まだ十分には入っておりませんので、もう少し情報を頂きたいと思います。
○森部会長 そうしましたら、国際共同試験が日本で行われた際に、麻酔科や集中治療の先生がどのようにコミットしたのかということについて等、情報を頂くのがよろしいですね。
○長谷川委員 そうですね、それがいいと思います。後、実際に日本で使うとなると、少なくとも小児科医が中心となってMRIの検査の鎮静で、何か、集中治療医が一緒に対応するというのは現実的ではないと思いますので、もう少し詳しい情報を受ける、頂ければなと思いますし、とにかく既存の薬剤に比して本薬剤が、同等あるいは有意に安全であってほしいと考えます。とにかく、検査ですので治療薬ではございませんので、位置付けとしましては、安全性が一番だと思いますので、その辺りをもう少し詳しく教えていただけますと助かります。
○森部会長 ありがとうございます。今後の対応をどういたしましょう。
○医薬品審査管理課長 どうしましょうか。今、日本で使う場合の安全性情報の確認と言いますか、その辺りを確認する必要があるということだと思いますが、いずれにしても、それは、また新たに治験をやるという話には多分ならないと思いますし、なかなか難しいかもしれませんので、取りあえずは、治験に関係した先生方、あるいはメーカーを通じて情報を整理してもらって。
○森部会長 整理していただいて。
○医薬品審査管理課長 それをどうしましょうか。再度この場で確認をした方がいいというのであれば、次の会議までに整理したもので、次の会議でそれを確認して、再度、審議をするというやり方が一つ。ちょっとそこまでやらなくとも、おそらく大丈夫だろうと思われるのであれば、承認を前提として、個々に先生方からご意見を頂いて、確認することでやるというやり方もあろうかと思いますが、そこはですから、安全性の確認ができる見込みが、どれぐらいあると思われるかというところかなと思います。どこまで慎重にした方がいいかというような御判断かと思います。
○森部会長 関連学会との御相談をしていただくことも大変重要だと考えておりますし、特に、小児科医の御専門の先生方が、このレスキューに関する情報がプロポフォールしかないという状況で、本薬剤をどうやって安全に御利用いただくのかということについて、今、どういった御見解なのかということを確認しておくことは大変重要だと思います。これは、本剤の安全性の根幹に関わることですし、御家族に不安を与えることも、御本人に不安を与えてもいけません。今、集められる情報は全て集約し、専門家との意見交換もしっかり行った上で、本薬剤を承認するかどうか判断することがよろしいのではないでしょうか。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。今、森部会長の言われることが当然だと思いますので、私は部会長にそれを委任したいと思います。今の発言が当然だろうと思っております。以上です。
○森部会長 委員の先生方から追加の御意見等ございますでしょうか。もう少し、本件について情報収集をした上で、もう一度お諮りすることにさせていただくことはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構から少し発言させていただいてもよろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 説明が繰り返しになるのですが、今回の第III/IV相試験を計画するに当たり、日米共同試験として実施する中で、有効性の評価の観点から、プロポフォールという一つの薬剤に絞った方が有効性評価はしやすいという点も検討されたと理解しております。そのような試験デザインで実施された結果、プロポフォール以外の薬剤と本剤を併用した際の安全性情報が得られていないことは御指摘のとおりかと思います。また、治験のときには麻酔科医等が関与することで、被験者の安全性に配慮した形で実施されている一方で、市販後においては、これも先ほど来御指摘いただいているように、一般の小児科医等が使用する状況も想定されると理解しております。
 そういう中で、我々もそこは審査の中で十分確認しており、冒頭の御説明の中で申し上げたとおり、市販後においては、適正使用推進プログラム等を実施することによって、またその中で医師要件、施設要件等を設定することによって、きちんと患者さんの安全性を確保した状況で本剤を使っていただくための方策が講じられることになっていると理解しております。また、プロポフォール以外の薬剤の併用に関しては、現状、データが限られていますが、市販後調査の中で情報を収集していって、必要があれば追加の安全対策等を講じる予定としております。
 今まで述べたことの繰り返しにはなりますが、このような状況の中で、追加の情報収集をした上で、改めて審議することが適切ではないかとのことだと理解しています。追加の情報として、どういった観点で情報をまとめていけばいいのか、確認させていただきたいのですが、いかがでしょうか。
○森部会長 機構の方がそのような問題意識をお持ちだったのであれば、そもそも治験のデザインとして、プロポフォールの単独のレスキューのデザインをお認めにならず、日本で使用され得る他の鎮静薬の併用もできるような形で、国際共同治験を行うように働き掛けるべきだったと思います。それは、現状では、もうその状況を変更することはできません。この状況で行われた臨床試験の中で承認することによって、最も不利益を受けることは患者さんになります。私たちが今の情報で承認して良いかどうかということはここで決められますので、不足している情報が何かということを機構の方も今一度よくお考えいただいて、何の情報が集められるのかを我々に提示してください。その中で、我々も、何の情報を追加で頂けるかということを踏まえた上で、次の審議のときに、更に意見を述べようと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構ですが、少し発言してもよろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 本日、いろいろ貴重な御指摘を頂きありがとうございます。実は、私どもが審査を開始するときからの問題意識が、本日、先生方から御指摘を頂いたこととかなり近いものがございます。ただ一方で、今回、特定用途医薬品に指定されていることの背景として、やはり、実際に今、使われている鎮静薬のバルビツール酸系薬剤やミダゾラムが承認を取得していない状況で、使用実態に即した治験も非常に大事ではあるのですが、例えば、ミダゾラムの追加投与について添付文書で推奨できるのかは非常に苦しいところがあります。ある程度使用実態を鑑みて、追加が必要な場合には注意して投与してくださいということを、現状の添付文書案の8.17項で注意喚起しています。また、相互作用の併用注意の項で、鎮静に使われる可能性のある薬剤との併用については注意が必要とあります。もともとプロポフォールの併用を許容したことに問題意識があるわけですが、開発のコンセプトとしては、単剤だけで鎮静ができれば一番望ましかったのですが、試験の結果としては、高用量でも単剤だけで100%鎮静ができなかったことも、問題としては残っております。
 先生方が御懸念のように、確かに治験ではプロポフォールの追加を許容し、安全性に配慮したデザインで行われたけれども、そういった治験の環境と現在の日本の医療実態がどの程度類似しているのか、乖離があるのかといったことの情報も不足している可能性があるとも、今回、理解しましたので、そのような情報も追加して、現在の日本の医療実態で安全に使えるのかが判断できる情報を機構として検討して、情報収集した上で、また先生方に審議を諮るという理解でよろしいでしょうか。
○森部会長 現在、添付文書に規定されている用量を実際の患者さんに御使用して、患者さんが途中で覚醒したり、鎮静がうまくいかなかった場合の現場の対応が、臨床試験から何かしらの情報もない状況で全て現場の医師に一任されている状況は、やはり避けるべきだと思います。したがいまして、関連学会の御協力も頂いて、事前に十分シミュレーションをした中で、こういった薬剤の使用が推奨されるとか、対応策のリコメンドを頂くとか、何らかの、この治験で確認されていない点を補完する情報をきちっと事前に提供しない上では、本剤の承認はやはり難しいのではないかと私は考えています。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。御説明いただきありがとうございました。理解いたしました。
○森部会長 御尽力いただいている中で、こういった発言で申し訳ございませんが、是非、今、できることを全力を挙げて取り組むということでいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構ですが、もう少し補足をさせていただいてもよろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど、関連学会の御協力との御指摘がありましたが、既に申請者から、日本小児科学会と日本小児麻酔学会と協議を頂いています。その中で、本剤を安全に使用するための施設あるいは医師、医療従事者の要件を協議いただいて、今回の適正使用推進プログラムで設定していただいたものを先ほど御説明しました。本剤投与によって十分な鎮静効果が得られない場合の対処方法についても、学会と既に協議をしていただいております。本剤で鎮静効果が得られない場合には、他の静脈鎮静薬としてプロポフォール、ミダゾラム、チオペンタールナトリウム等の追加投与が想定されるということです。
 国際共同第III/IV相試験では、プロポフォールの追加投与のみが認められていましたが、その中で得られた知見を含めて、他の鎮静薬と併用する際には循環動態あるいは呼吸状態に十分注意する必要があります。また、静脈鎮静薬を追加投与する場合の注意点として、本剤は持続的に静脈内注入する薬剤ですので、静脈ラインがあるのですが、実際に併用鎮静薬を投与する場合には、患者さんから離れた所から投与すると、本剤がフラッシュされてしまうこともありますので、患者さんのできるだけ近くから投与するといったこと、あるいは、患者さんの状態によっては、別の鎮静薬を投与できる別のラインを取っておくことを推奨する旨を、学会からの周知レターには盛り込んでいただけることになっています。申請者と学会では、他の鎮静薬を使用する場合の対処方法について、かなり細かいところまでシミュレーションをして注意喚起していただく予定にはなっています。
○宮川委員 それが見たいね。
○森部会長 そうですね、できましたら、少しお話を具体的に伺えるとよろしいのですが。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。私は、未承認の審議のところでも関わっているところなので、現場が困窮することは十分に理解しており、非常に重要なことと理解しています。だからこそこうやって審議しているのです。ですから、これを承認してほしいと思っている人間の一人です。しかしながら、現場でいろいろな齟齬(そご)が起こったらば、誰が困るのかといったら、やはり患者さんや家族が一番困るので、それがないように、そして、現場の医師が困ることのないような立て付けをしっかり作っていくことが重要なのです。もしそのような形で、もちろん小児科と小児麻酔におけるしっかりとした立て付けを作っていることは分かっていますが、でしたら、それをしっかりと明文化していくことが重要です。先ほど代替薬の中でそれを明確にしないと、プロポフォールがつい入ってしまうわけです。それは絶対に使えないのだというところの前提で行わなければいけないので、そこのところの前提が、齟齬(そご)を起こしていると何度も議論の中に出てきているわけです。ですから、そこはしっかりとした明文化されるようなことがなければ駄目です。
 もし、審議をこのまま続けて行ったら、継続審議か、審議において不可という形になるのか、これはどちらかになってしまうわけです。ですから、先ほど言っているように、また座長がお話になっているように、資料をそろえて、しっかりとした審議ができるような環境を作って、審議会の委員の賛同を得るようにしなければ、委員が困窮している状態になります。ですから、機構は非常に御苦労されていることは本当に分かります。ですからこそ、しっかりとした立て付けを考えていただいて、審議の中でいろいろな過不足のない議論の中で、承認ができるような体制を作っていただきたいと願っております。よろしくお願いします。
○森部会長 宮川委員、御発言どうもありがとうございました。特に委員の先生から追加の御発言がないようでしたら、本議題につきましては、継続審議とさせていただくことで御異議ございませんでしょうか。特に御異議がないようです。では、本議題は継続審議とさせていただきました。
 それでは、引き続きまして、報告事項に移らせていただきます。報告事項議題1につきまして、事務局から説明をお願いします。
○事務局 報告事項、議題1、資料No.3、医療医薬品の承認条件について、事務局より説明します。資料No.3の2/7ページです。イノベロン錠100mg及び同錠20mgは、平成25年3月25日に「他の抗てんかん薬で十分な効果が得られないLennox-Gastaut症候群における強直発作及び脱力発作に対する抗てんかん薬との併用療法」との効能・効果で承認され、その際、全例調査に係る承認条件が付されております。この度、エーザイ株式会社から、承認条件に基づいて実施された全例調査の中間報告書が提出去れ、機構における評価の結果、承認条件は対応されたものと判断しております。
 続きまして、報告事項、議題2、医療用医薬品の再審査結果について報告します。資料No.4-1~4-9までを御覧ください。今回、再審査の対象となった品目は順に、コムクロシャンプー、献血ヴェノグロブリン、リキスミア、ネキシウムカプセル、ビプレッソ徐放錠、ビソノテープ、オノアクト、ダットスキャン、トラクリアです。これらの品目につきまして製造販売後調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、承認拒否事由のいずれにも該当しない、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定されております。
 続きまして、資料No.4-10です。医療医薬品の再審査結果についてのうち、「アリセプト」の取扱いについて事務局より説明します。資料No.4-10、再審査報告書の1ページ及び2ページです。アリセプト錠、同D錠、同細粒、同内服ゼリー及び同ドライシロップの各規格につきましては、平成26年9月に実施された医薬品第一部会において、「レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制」の効能・追加について審議いただき、その結果として、当該効能が追加された品目です。本剤については、当該効能の承認時に、承認条件として「レビー小体型認知症を対象に、本剤の有効性の検証及び安全性の確認を目的とした臨床試験を実施し、終了後速やかに臨床試験成績及び解析結果を提出すること」が付されておりました。
再審査報告書6ページです。承認条件に基づき、レビー小体型認知症に対する本剤の全般臨床症状に関する有効性等を検討する目的で2週間の観察期、12週間の無作為化二重盲検比較期及び48週間の非盲検対照期からなる計62週間を観察期間とする製造販売後臨床試験が国内54施設で実施されました。結果につきましては、再審査報告書の7ページ以降に記載しております。全般臨床症状の指標であるCIBIC-plusについては、本剤群とプラセボ群で有意差は見られませんでしたが、一方で、認知機能の指標であるMMSEについては8ページの表8及び9ページの図1にありますとおり、本剤群でプラセボ群と比較して、有意ではないものの改善傾向が見られており、この傾向につきましては、本剤の開発段階に実施された治験の成績においても、同様の結果が一貫して得られておりました。    
現時点で、レビー小体型認知症に対する認知症状の評価指標は十分に確立しているとはいえず、レビー小体型認知症に対する本剤の有効性を臨床試験の成績から正確に評価することは困難と考えます。そのような中、本剤の製造販売後臨床試験においては、本剤の承認後に実施するプラセボ対照試験という実施の困難さがあったにもかかわらず、認知機能の改善については、これまでの治験成績と一貫した改善効果が見られており、また、全般臨床症状についても、一定数の患者で有効性が見られていたことから、本剤のレビー小体型認知症に対する有効性は、蓋然性をもって検証されたものと考えます。
一方で、個別の患者ごとの成績においては、本剤投与によって有効性が得られるレスポンダーの患者、あるいはノンレスポンダーの患者に分かれる傾向が見られており、ノンレスポンダーの患者においては、本剤の継続投与は望ましくないことから、本剤の投与開始後12週間までを目安に有効性を個別に判断し、有効性が得られていない場合は本剤の投与を中止することが適切であるとの結論に至り、再審査報告書23ページに記載しました「用法・用量」及び「効能・効果に関連する注意」の一部を変更することが妥当と判断しております。
なお、本剤投与開始後の投与継続可否の判断方法につきましては、「家族・介護者から自覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価すること」としております。この点につきましては、専門協議においても、「レビー小体型認知症の進行は患者ごとに異なり、問題となる症状も異なるため、本剤の投与中止の指標や基準を一律に決めることは困難」との御意見を頂戴しており、23ページの「効能・効果に関連する注意」の項に追記しましたように、認知症治療に精通し、本剤の臨床成績の内容について十分理解した医師又はその指導の下で本剤が使用される範囲では、適切に投与可否の判断が可能であるとの結論に至りました。
 以上より、本剤の再審査結果については、承認事項の一部を変更すれば、医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当しないと判断しました。事務局からの説明は以上です。
○森部会長 先生方から御質問、御発言いかがでしょうか。柴田先生、お願いします。
○柴田委員 今の説明についてですが、この試験の結果というのは、今後提供文書に反映されるのでしょうか。
○事務局 事務局です。今回実施されました製造販売後臨床試験の結果につきましては、添付文書の臨床成績の項に追記を予定しております。
○柴田委員 プライマリーで有意差が付かなかったということも含めて記されるということですね。
○事務局 はい、そのとおりです。
○柴田委員 分かりました。ありがとうございました。
○森部会長 石川先生、御発言可能ですか。少しお伺いしたいことがありまして。
○石川委員 はい、どうも。
○森部会長 石川先生、まず、今のアリセプトに関しましては、いかがでしょうか。
○石川委員 今の事務局の方の御発言が、私の実際の感覚に非常に近いと思いまして、何の異論もございませんでした。私だけでなく多くの専門医がそういう認識をもっておりまして、有効性を臨床試験の成績から正確に評価することは困難ということは、そのとおりだと思っております。
○森部会長 今の柴田委員からの御発言がありましたように、添付文書に一部この成績の追記を行うわけですが、今、先生方に御教示いただいている幾つかの解析の中で、添付文書に更に追記をした方がよい成績等はございますか。私は、表17の幻視の情報は特に重要かと思われましたが、臨床医の先生方にミスリーディングになってもいけないので、追記をする要否は、先生は、どうお考えでしょうか。
○宮川委員 日本医師会の宮川ですけれども、よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、宮川先生。
○宮川委員 レビー小体の場合には、そういう幻視を含めてですけれども、非常に幻聴、幻視、非常に困窮する場合がありますので、そういう情報が入ってくると、しっかりとした使い方ができると考えます。どのような患者さんに使って、そして、それを確かめるということが、臨床経過の中ではっきり分かりますので、そういう情報があれば、より勝れていると考えます。
○森部会長 医師会の御意見も伺いました。石川委員、いかがでしょうか。
○石川委員 それでいいと思います。先ほど言及された情報は、事務局の方が言及された、三つおっしゃっていましたけれども、全部載せるかどうかは、載せられるのならその方がいいと思います。それから、神経内科だけではなく精神科の医者もほとんど同じように思っていらっしゃると思いますので、先ほど言及してくださった三つの案を出典に載せていただければと思います。
○森部会長 ありがとうございました。追記案を柴田委員、石川委員、宮川委員にもご確認いただくことといたします。追記案ができましたら、委員の先生方に共有いただくようにしますので、その際は御発言いただければと思っております。どうもありがとうございました。
 その他、報告事項、議題1につきましても、特に先生方、御意見よろしいでしょうか。それでは、御確認いただいたものとさせていただきます。本日の議題は、以上となっております。事務局から御報告ございますか。
○医薬品審査管理課長 よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ。
○医薬品審査管理課長 アリセプトについては、基本的には御確認いただいたということで、添付文書については、事後的に確認させていただくということでよろしいですね。
○森部会長 今、厚労省の方から確認事項がありましたけれども、このアリセプト錠の再審査はいかが扱いましょうか。。
○医薬品審査管理課長 再審査結果については以上、こういう形でいいということで了解をいただいた、確認したということで。まず、そこだけを確認。その上で、添付文書の今後のよりよい反映については、事後的に先生方に報告させていただいて、こちらで確認をさせていただくという形でよろしいですね。
○森部会長 それでは、議題1並びに議題2、特にアリセプト錠につきましても、皆様、お認めいただいたということでよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、お認めいただいたということで確認させていただきました。では、事務局の方からお願いします。
○事務局 次回の部会は、令和4年11月25日(金)、午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日は、長時間の御審議ありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)