2023年3月7日 第12回「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」 議事録

日時

令和5年3月7日(火) 18:00~20:00

場所

厚生労働省専用第14会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
厚生労働省:事務局

議題

  1. (1)精神障害の労災認定の基準について
  2. (2)その他

議事

議事録
○本間職業病認定対策室長補佐 ただいまから第12回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては大変お忙しい中、会議に御出席いただき、ありがとうございます。今回は阿部先生が所用で御欠席となります。また、座長の黒木先生、吉川先生以外の先生方については、オンラインでの参加となっております。
 はじめに、オンラインで参加される方に発言の際のお願いです。マイクのミュートを解除した上で、お名前と発言のある旨の発言をしていただくか、又はメッセージで「発言があります」と送信してください。その後、座長から「誰々さん、お願いします」と指名がありますので、その後に御発言をお願いいたします。
 検討会に先立ち、傍聴されている皆様にお願いがあります。携帯電話などは、必ず電源を切るかマナーモードにしてください。そのほか、別途配布している留意事項をよくお読みの上、検討会開催中はこれらの事項をお守りいただいて傍聴されるよう、お願い申し上げます。また、傍聴されている方にも、会議室に入室する前にマスクの着用をお願いしておりますので、御協力をお願いいたします。万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退室をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。写真撮影等はここまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。
 次に、本日の資料の御確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1「第12回における論点」、資料2「第11回検討会の議論の概要」、参考資料「団体からの意見要望」となっております。本検討会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。
 それでは座長の黒木先生、以後の議事の進行をよろしくお願いいたします。
○黒木座長 それでは始めたいと思います。今回は、資料1の1ページ、論点1「業務による心理的負荷の検討」、論点2「これまでの議論の整理」について検討することにします。まず、論点1の「業務による心理的負荷の検討」について、事務局から説明をお願いいたします。
○西川中央職業病認定調査官 資料1の論点1について御説明いたします。なお、先ほど御確認いただきましたが、資料2は前回の検討会の議事概要です。参考資料については、全国労働安全衛生センター連絡会議、過労死弁護団全国連絡会議、働くもののいのちと健康を守る全国センターから御提出いただいた意見要望になります。こちらについては説明を割愛いたしますので、適宜御参照をお願いいたします。
 資料1の1ページを御覧ください。論点1として、業務による心理的負荷の評価という形で御提示しております。具体的には2ページを御覧ください。業務による心理的負荷の評価に関する論点として、AからDの4点をお示ししております。これまでの御議論でまだ少し整理されずに残っている部分を御議論いただくものです。Aから順に御説明させていただきます。
 Aは、業務による心理的負荷評価表についてです。これまでの検討を踏まえ、どのような内容を示すことが適当かということで、別紙1のたたき台で検討してはどうかとさせていただいております。別紙1は3ページから7ページとなります。3ページ以降、前回の検討会でお示しして御議論いただいたたたき台から修正した部分について、赤字でお示ししております。そのほかの部分については、今回は黒字で示しております。赤字部分を中心に御説明いたします。
 まず3ページです。項目2について、「ケガだけではなく病気の危険のある事故の体験の可能性もある」という御指摘を踏まえて、「障害」を「傷病」と修正しております。
 続いて、4ページの一番下を御覧ください。項目12で、こちらは平仄を整えるための修正です。関連する「特別な出来事」がある項目の項目1、項目3、項目29については、「強」の具体例の下のところに注を入れておりまして、こういったものは特別な出来事として評価ということを記載しております。ただ、項目12については、これまで同様の注を入れておりませんでしたので、追記させていただいたものです。
 続いて、5ページを御覧ください。項目14ですが、この項目はハイリスクな業務に従事したことの心理的負荷を評価するものですが、「強」の具体例について、「感染症の危険についてしか書かれておらず、感染症以外の危険性について読めないのではないか」といったような御指摘を頂いたところです。御指摘を踏まえて、「等」を入れる形で修正をいたしました。
 項目17です。転勤・配置転換の出来事の「強」の具体例にある「左遷された」ということについて、項目20との関係や「左遷自体は客観的に捉えにくい部分もあるので、その後の状況についても十分に記載をすべきではないか」といった御指摘を頂いたところです。この「左遷された」については、判断指針の時代から具体的出来事として示されていたところですが、ほとんどの場合には担当業務の変更、すなわち配置転換を伴うものですので、平成23年の検討に当たって、配置転換の出来事に統合された経緯がございます。このことを踏まえて、「左遷」については現行の認定基準と同様に、担当業務の変更を伴っているということを前提として、引き続き項目17の具体例に記載しつつ、出来事後の状況として、「配置転換後の業務遂行に著しい困難を伴った」というような内容を追記させていただきました。ここで言う「困難」とは、新たな業務が畑違いで適応が難しいという場合もあれば、孤立して対人関係上の困難があるというような場合もあるでしょうけれども、いずれにしましても、ほかの具体例との均衡も踏まえつつ、御指摘を受けて、その後の状況についての記載を加えたものです。
 項目18です。複数人で担当していた業務を1人で担当することとなったという出来事ですが、「「強」の具体例において、この出来事の結果、労働密度が上がる、時間に追われる、時間が長くなるということに限らず、同じ時間でも、その中で非常に密度が高くなる、追われた形で働かなければいけないといったことが加味されるような表現が必要ではないか」という御指摘を受けて修正したものです。
 項目19は不利益処遇の出来事です。こちらについては、「強」の具体例において、どういったような差別事由を掲げるかということについて御指摘があったところです。まず前提として、「強」の具体例においては、これまでの御議論で幾つかの事由を記載しているところですが、最後に「等」というものを記載しております。したがいまして、これらの事由は限定してお示ししているものではなくて、ここに書いてあるものでなくても、この差別、不利益取扱いの程度が著しく大きく、人格を否定するようなものであって、かつ、これが継続したというような場合には、ほかの事由であっても心理的負荷は「強」というように評価されるものです。
 その上で、どのような事由を記載することが分かりやすいかという点です。まず、指摘を頂いた1つ目です。性的指向、性自認に関するものについては、御指摘の中にもあったとおり、項目22や項目23において、既に同様の注を入れているところです。そういう意味で、それらとの平仄を考えて追記させていただきました。そのほかにも幾つかの事由について御指摘いただきましたが、どのような場合が差別に当たるのかの判断が難しい場合も想定されることなども踏まえて、ここで例示させていただく事由は、なるべく紛れがないものがよいのではないかといった観点から、追記は見送らせていただいたところです。重ねて申し上げますが、ここに書いた事例でなければ認めないということではありませんので、事案ごとに判断をしてまいりたいと考えております。
 6ページと7ページの修正は、文末にある「場合」を削ったものです。併せて、7ページの項目29のセクシュアルハラスメントについてですが、具体例における助詞の使い方について、逆接でつなぐことについて御指摘があったところですが、「場合」を削った際の読みやすさの観点から、前回案のままとしております。恒常的長時間労働がある場合のところについては、文末から「場合」を削るという趣旨ではありませんが、「場合」という言葉の重複がありましたので、修正しております。
 評価表の修正事項については以上です。これについて御確認を頂きまして、御議論いただきたいというのがAの論点です。
 2ページにお戻りください。続いて、論点1のBです。こちらは、心理的負荷の評価の基準となる同種労働者についてです。第2回検討会での御議論において、業務による心理的負荷の評価は、本人ではなく「同種の労働者」を基準とすること、また、この評価の基準となる「同種の労働者」について、脳・心臓疾患の認定基準と同じように書けるかというと、それは適切ではなく、現行の精神の認定基準と同様に、「職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者」というように整理することが適当という方向性であったかと存じます。先ほどの心理的負荷評価表においては、具体的な出来事ごとに、平均的な心理的負荷の強度についても示していたところですが、これを事案に当てはめて、個別事案における心理的負荷の強度を判断するに当たっては、抽象的な「平均的労働者」ということではなくて、請求人と同じような労働者、「同種の労働者」が一般的にどのようにその事案の心理的負荷を受け止めるかということによって判断していく、そういった場面で、この「同種の労働者」という概念を用いていくということになろうかと思います。
 ここで、更にその内容を明確化するために、どのようなことを示すかについて、御議論いただきたいと思っております。Bのところの左側の欄には、*で2つお示ししております。こういったものを示してはどうかということです。
 まず1つ目は、「同種の労働者」の考え方、先ほど申し上げた職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者を想定する、これは結局どういうことなのかを分かりやすくイメージしてもらうための例としてお示ししてはどうかとするような内容です。新規採用者の方の例を書いております。新規に採用されて、従事する業務に何ら経験を有していなかった方が精神障害を発病したというような場合には、どういった方を「同種の労働者」として想定するかと言うと、その方と同じように、業務経験のない新規の採用者が「同種の労働者」として想定されるといった内容を記載しております。例えば、同じ職種の中にも、新規採用の方もいれば、10年、20年のベテランもいらっしゃるという場合も多々あろうかと思いますが、新規採用者が発病された場合に評価の基準となるのは、同じような新規採用者の方です。10年目、20年目の方であれば、問題のないような業務内容、業務量であったとしても、新人の方にとっては相当大変だったというようなこと、発病された御本人以外の方にとっても、一般的に新人には非常に大変だっただろうと判断される場合には、強い心理的負荷と評価され得るということを明確化したいという趣旨で書かせていただいております。
 2つ目の*です。現に働いている労働者の方は非常に多種多様で、性格傾向においても、頑健な方もいれば繊細な方もいらっしゃる。そういった意味で、「同種の労働者」には一定の幅があると考えられるということについては、第2回でも御議論があったところです。現行の運用においても、これは前提としているところで、多少繊細な方も含めて、一般的に強いストレスと想定されるというときには、そのように評価をしているところですが、そういったことが十分に理解されていないのではないか、やや硬直的なものと受け取られている、誤解をされているのではないかといった御指摘もあったところです。そういった意味で、一定の幅があることは認定基準としても前提にしていることを明確化する趣旨で記載してはどうかということです。もっとも、第2回の御議論の中でもございましたが、この幅を広く捉えすぎると、本人ではなく「同種の労働者」を基準とすることの意味が失われて、実質的に御本人を基準とすることとなり、心理的負荷の客観的な評価の観点から適当ではないということになります。ですので、一定の幅というのは無限定に広いものではありませんが、しかし、一定の幅があることは前提としているということについては明示することが分かりやすいのではないかといった趣旨で、こういった事項を示してはどうかとしているものです。御議論をお願いしたいと存じます。
 続いてCの論点です。評価期間における留意事項についてです。まず、評価期間については、第6回の検討会で御議論いただきました。評価期間自体は、診断基準を踏まえて、発病前おおむね6か月とすることが引き続き妥当という整理を頂いたかと存じます。その上で、評価期間に係る留意事項についても御議論いただきました。その際の御議論を踏まえて、現行の留意事項から少し修正をした記載をしている部分もありますので、御確認、御議論を頂ければと存じます。
 1つ目、ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものについては、それが発病前6か月以内の期間にも継続しているときは、開始時からの全ての行為を評価の対象とするということです。これは全体として一体のハラスメントとして考えられることから、現行でも、この取扱いとしております。表記としては、現行の留意事項では、「いじめやセクシュアルハラスメント」という記載になっておりますが、パワーハラスメントなどの問題もございますので、表記を修正しているところです。
 2つ目です。出来事の起点が発病の6か月より前であっても、その出来事(出来事後の状況)が発病前6か月にも継続しているというような場合には、発病前おおむね6か月の間における状況や対応についても評価の対象とするということを記載しております。現行の留意事項では、この記載に続く「例えば」の後ろの部分のみが記載されております。第6回の検討会での御指摘ですとか、ここまでの評価表に関する御議論なども踏まえて、例えば、現行でも、ノルマが課された出来事について、ノルマが課されたのは9か月前だけれども、発病前6か月間もずっとその対応をしているという場合には、出来事として評価をしているところですので、業務上の傷病による療養中の場合に限らない一般的な記載として、*の2つ目の本文の部分を追記しているところです。
 3つ目は、現行の留意事項と同様です。請求人の方が主張される出来事は発病の6か月よりも前のものであったとしても、発病前おおむね6か月間の状況についてはしっかりと調査をして、先ほどの出来事後の状況が継続しているというような場合であるとか、あるいは、その期間中に別の出来事があるといった場合には、それを見逃さずに、しっかりと発病前おおむね6か月の心理的負荷を評価するという内容です。
 4つ目も現行にもある留意事項ですが、医学的に評価期間の起点をどこにするかについてです。解離等の心理的反応、つまり非常にショックな出来事を忘れてしまう健忘とか、感情の動きが鈍くなる、無感覚などの反応のために受診が遅れるような場合には、こういった解離等の反応が生じた時期を起点として、その前おおむね6か月間を評価期間とするというものです。現行の留意事項を維持したいというものです。現行からの修正点が多いわけではありませんが、御確認と御議論をお願いしたいと存じます。
 論点1の最後で、複数の出来事の全体評価についてです。こちらについては、第5回の検討会で御議論いただいたところです。2ページ目には、右に「別紙2のたたき台で検討してはどうか」というように記載しております。別紙2は、資料の8ページと9ページです。
 8ページを御覧ください。こちらに、複数の出来事の全体評価の考え方(たたき台)とお示ししています。第5回に御議論いただいた内容を踏まえて、評価の枠組み、出来事が関連して生じている場合の考え方、関連していない場合の考え方、この3項目に分けて整理しております。
 1つ目の評価の枠組みです。ここは、現行の認定基準と同様の整理としております。業務による出来事が複数ある場合、心理的負荷としては、その全体を総合的に評価する必要があるところですが、実際の事案では、その状況は非常に多様だということで、こういったときには強い負荷、こういったときには強い負荷に至らないということを一律に示すことは難しいと整理しております。ただ、その上で、一旦は出来事をばらばらに評価して、ばらばらに評価したときに、単独で「強」と評価できる状況である場合には、全体としても「強」となります。いずれの具体的出来事でも単独では「強」と評価できないという場合には、それらの複数の出来事について、関連して生じているのか、あるいは関連はなく生じているのかということを判断した上で評価する。これが現行の枠組みで、この枠組みについては、第5回の検討会において妥当という方向性であったと存じます。
 その上で、2つ目の○は、出来事が関連して生じている場合の考え方についてです。まず、○の下の1つ目のポツです。ここは、平成23年の報告書や現行の認定基準には記載のない内容です。どのような場合が関連して生じている場合に当たるのかということについて、今は何も示していないため、これを示してはどうかとするものです。複数の出来事の関連の程度は事案によって様々ですし、関連の仕方も様々ですので、関連しているパターンを全て書き切ることはできないと思いますけれども、ここでは3つのパターンを示していて、少なくともこういった場合は関連と考えられるということで示しております。
 まず、同一時点で生じた事象を異なる視点から検討している場合です。これは、第5回のときにも御説明させていただきました点が、例えば工場で爆発事故があった、自分もケガをしたし、同僚がひどいケガをするのも見たというような場合には、自分がケガをして非常に苦痛だった、痛かった、苦しかったというような観点から、項目1に当てはめて評価しております。併せて、同僚がひどいケガをするのを見て、あるいは場合によってはお亡くなりになるようなことも見て、自分もそうなったかもしれない、非常に怖かったといった恐怖感等の観点から、項目2でも評価する場合がございます。こういったものが、同一時点で生じた事象を異なる視点から検討している場合ということで、このような場合には関連していると考えられるところです。また、同じ原因でAとBの出来事が両方起こったというような場合、Aの出来事の結果Bの出来事が起こった場合、こういった場合も関連している例になるかと存じます。こういったことを追加で示すことによって、少しでも明確化を図れないかということです。
 その上で、次の項目は現行の認定基準と同じ内容ですが、このように出来事が関連して生じている場合には、その全体を1つの出来事として評価することとしまして、原則として、最初の出来事を「具体的出来事」として評価表に当てはめ、関連して生じた各出来事は、出来事後の状況とみなすというような方法によって、全体の評価を行っております。これについて、引き続き妥当とするのが第5回での方向性であったかと存じますので、そのように整理させていただいております。ここは、考え方としてそのように考えたいというところです。
 さらに、これに関して、第5回の検討会では、事例を示すことで明確化をしてはどうかというような論点をお示ししたのですが、例そのものはお示ししていなかったところです。そこで、今回ここにイメージとしての例をお示ししております。こちらは、実際の支給決定例も踏まえつつ、個人情報保護の観点ですとか、あるいは、分かりやすい例としてお示ししたいといった観点から、いろいろと改変を加えて、事務局で記載させていただいた例です。実際の例そのものではありませんので、イメージという形で記載しております。
 ここに示しているAさんの例は、1つ目の出来事の結果、2つ目の出来事が起こったというパターンに近い例となります。Aさんは、発病前6か月以前に新製品開発の主担当となり、発病まで、引き続きこの業務に従事していました。取引先が厳しい、上司からも適切な支援や協力がないという中で、様々な部署との連携を図って、開発・製造・納品を行っており、労働時間についても、毎月60~75時間程度の時間外労働をずっとしていたというような例です。こちらを「新規事業の担当となった」という具体的出来事に当てはめまして、それなりに大変ではありますが、これだけで「強」には至らないということで、「中」と評価した例としています。
 ところが、このような状況の中で、発病の約2か月前に不適合品が製造されてしまった、そのために納期に間に合わなかった上に、廃棄処分となって損失が生じ、上司からも叱責され、また、納期を過ぎているわけですので、一刻も早く納品が必要という中で、原因解明、製造工法の見直しをして、納品に漕ぎ着けたといった例としています。こちらは、この2か月前からの一連の出来事自体を、「多額の損失を発生させるなど仕事上のミスをした」ということで当てはめまして、これもこれだけでは「中」と評価したという例です。
 単独ではいずれも「強」に至らないということですが、1つ目の出来事の結果、2つ目の出来事が生じているもので、関連する出来事であって、全体としてこういったミスを生じさせるぐらい、この新規事業の困難性が高かったということで、全体評価は「強」と判断できるという事例として、お示しさせていただいているものです。
 9ページは、出来事が関連せずに生じている場合の考え方です。1つ目の項目については、「中」の出来事が複数ある場合の考え方です。現行の認定基準にもこれに近い記載がございますが、御議論を踏まえて、考慮要素を幾つか追記した内容となっております。考慮要素として、ポツの3行目からですが、出来事が生じた時期の近接の程度、各出来事と発病との時間的な近接の程度、各出来事の継続期間、出来事の数、出来事の内容・程度及び発病に至るまでの経緯等を考慮するというような形で記載しております。その結果、全体評価として「強」となる場合もあるし、「中」にとどまる場合もあるけれども、そこは個別に評価するという内容です。現行の認定基準では、考慮要素として、出来事の数、出来事同士の近接の程度、出来事の内容、この3つを考慮要素として明示していますが、先ほど申し上げたように、発病との近接の程度、出来事の継続期間、発病に至るまでの経緯といった辺りが、新たに明示してはどうかという部分となるところです。
 さらに次のポツです。この評価に当たり、それぞれの出来事が時間的に近接・重複して生じている場合には、「強」まで至るかどうかは事案によるとしても、全体としての評価は、一つ一つの「中」よりも少し強い負荷と考えられる。一方で、それぞれの出来事が完結して落ち着いた状態となった後に、次の出来事が生じているという場合には、原則として、全体としての評価も、それぞれの出来事の評価と同じになる。それぞれが「中」であれば、全体としても「中」にとどまると考えられる。こういった点についても、御議論を踏まえて、新たに明示してはどうかという部分です。
 最後のところですが、「中」が1つで、あとが「弱」であれば全体は「中」、「弱」しかなければ全体も「弱」ということは、現行どおりの記載となります。
 こういった考え方の整理の上で、こちらも支給決定例を踏まえつつ作成したイメージとしての例として、Bさんの例をお示ししております。Bさんは、製品の製造・品質管理の責任者でした。材料をあちこちの外注先から調達して、自社製品を製造することになるわけですが、自社製品の大部分に使われる材料を製造している外注先で異物混入事故が発生してしまいました。このままでは大きな損失が生じてしまうので、これを回避するために、代替品の手配、外注先との交渉、再発防止のための材料製造手順の確認、現地での監査など、事態を収束するまで、発病前3か月に起こったこの事故について、発病時期まで、3か月間いろいろと対応をしたというものです。自分のミスではありませんが、様々な事後対応が必要ということで、「会社で起きた事故、事件について責任を問われた」に当てはめたという例としております。
 また、これとは別に、全く別の外注先から、発病の6か月前に、工場を移転したいという打診を受けて、諸々の手続を行いましょうということで、これをやっていたというところです。移転及び諸手続は、更に別の外注先との関係などから、本当は発病の3か月前には終了させなければならなかったところ、移転先でトラブルが生じるなどして遅れ、発病時期までずっとかかったということです。この移転の遅れに伴って製造も遅れまして、ほかの外注先から、別の材料の在庫をどうすればいいのだということで苦情を受けて、対応に苦慮していたし、さらに、この材料で製造する関連製品の新たな輸出規制への対応も行っていたというような状況を、「新規事業の担当となった」ということに当てはめて評価をしております。
 これらの出来事は、それぞれ関連せずに生じておりまして、単独では「強」に至らない、「中」と評価されるというところですが、2つ目の出来事が長く継続して、そこに1つ目の出来事が重なってきたということで、発病前3か月間はこれらの対応を同時にやらなければならなかったという状況となっております。複数の出来事が互いに近接、重層的に、かつ発病とも近接して生じておりまして、その内容、程度及び発病に至るまでの経緯などを踏まえて、全体評価は「強」と判断できるというような事例として示しているところです。
 このように考え方を整理して、その上で事例を示すことについて、どのように考えるか、御議論いただければと存じます。
 長くなりましたが、論点1についての説明は以上となります。論点A、論点B、論点C、論点Dについて、それぞれ分けて御議論いただければというように考えております。御議論のほど、よろしくお願いいたします。
○黒木座長 ありがとうございました。一気に論点1のA、B、C、Dということで、事例も詳細に説明していただきました。まず、分けて論点1のAです。別紙1、これは以前からずっと修正してきたものですけれども、これに関して御意見とかございますでしょうか。いかがでしょうか。丸山先生、何かございますか。
○丸山委員 全体として随分整った内容になったと思います。特に前も言いましたが、「強」のところが全て埋まりましたので、「強」と「中」の間がかなり大事だと思っていたのですが、そこら辺の切り分けもやりやすくなったように感じています。以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。荒井先生、どうでしょうか。
○荒井委員 今、丸山先生も御指摘になられたように、相当程度、今までの議論を踏まえて書き込みが多くなって、現場での判断の参考として相当整ったものができたと考えています。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。田中先生、どうでしょうか。
○田中委員 これまでの議論の内容が全てうまく反映されていて、我々が運用する際にも非常に分かりやすく利用しやすいものになったと思います。以上です。
○黒木座長 品田先生、いかがでしょうか。
○品田委員 前回言いましたとおり、とても分かりやすくなっていますので、これで完成と考えてもいいのではないかと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。小山先生、いかがでしょうか。
○小山委員 私も、かなりきれいに整理されて非常に使いやすいなという印象を持っていますので、これでいいかなと思います。前回の途中、問題にしておりました配置転換の左遷の問題だとか、それから14でしたか、そこで感染症だけでなくほかの化学物質の危険性もという話もしていましたけれども、それもうまくまとめていただけたので、これでいいかなと思います。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかに法律家の先生方、いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。ありがとうございます。少し事務局に時間外労働のことで確認したいのですが、恒常的な時間外労働という表の一番最後のところですけれども、出来事の前に恒常的な時間外労働があって、その出来事の前ですから、違う出来事後すぐ発病に至らないと。これは出来事後に過重性がある場合に業務上と考えるということで、よろしいでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 今、先生から御指摘がありましたのは、出来事の前に恒常的長時間労働があって、その後、「中」の出来事、あるいは「弱」の出来事という場合もあるかもしれませんが、それが生じたという場合の御指摘ですけれども、これについては、平成23年の報告書のときにも、長時間労働が一般に精神障害の準備状態を形成する要因となるという考え方を考慮した形で整理されていまして、そういった恒常的な長時間労働の下で発生した出来事の心理的負荷が、平均よりも少し強く評価される必要があるというような考え方で整理をしているところです。ただ、長時間労働と出来事との時間的な近接性についてはなかなか示すことが難しく、特に具体的なことが書かれていない状況になっているところです。先生のご指摘は、そこの関連性、近接性が表現されていないのではないかということでしょうか。
○黒木座長 はい。時間外労働については、時間外が100時間以上あること、例えば発症から遡って6か月前の100時間以上の時間外労働が独り歩きしたり、時間外労働が100時間あるいは3か月連続とか、あるいは時間外労働が出来事として独り歩きして、発症にどう関係しているのかがはっきり分からない場合もあるので、この辺は時間外労働と発症の関係を近接性といったことも含めて検討していただければと思ったのですが、ほかの先生方、いかがでしょうか。
時間外労働と言うと、どうしても100時間以上あると、それに引っ張られてしまうことがあるのですが、実際は、例えば出来事の前に時間外労働があって、その出来事とは全く関係ない出来事があり、そして具合が悪くなって発病してしまう。それが近接性でつながっている場合には検討してもいいと思いますが、そうでない場合も準備性が形成されたという形で、意外と業務上となることもあります。この辺の時間外労働と精神疾患発症の因果関係というところを、少し近接性等も含めて検討したほうがいいのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。荒井先生、いかがですか。
○荒井委員 時間外労働の重さは、今、黒木先生が御指摘になられたように、準備性の問題と、それから、出来事と発症との関係に一部影響を与えていると考えるのが妥当だと思います。前回のものでも出来事の前後に長時間労働があった場合に、どういうふうに扱うかという例示があったと思いますが、今回の書きぶりのほうが分かりやすいかなと私個人は思っています。以上です。
○黒木座長 丸山先生、どうですか。
○丸山委員 過重労働の面接が改正されて、80時間以上の時間外があれば、通常の労働者であれば面接指導となって、より厳しい流れになっていますので、その出来事との関係性をどれだけ詰められるかというのはなかなか難しいと思います。だから、100時間というのは時間外労働としては長いのだというコンセンサスがあれば、そこはそんなに突き詰めなくても、現状、そういうふうに判断しますので、よろしいかと思います。
○黒木座長 あくまでも、その出来事があって恒常的な時間外労働があり発病すると、これが基本だと思います。出来事の前に時間外労働があり、それから期間が随分空いて違う出来事があって発病する場合も、恒常的な時間外労働が前にあるとそれに引っ張られてしまうこともありますし、そこは個別で判断していくしかないかなと思います。その辺も何か表現できればどうかなと思ったのですが、これは事務局にお願いしたいと思います。
○西川中央職業病認定調査官 また御指摘も踏まえつつ、整理をさせていただきたいと思います。
○黒木座長 ほかには、この心理的負荷表で何か御質問なり確認とかございますか。なければ、論点1のBに移りたいと思います。論点1のB、評価の基準となる労働者ということで御発言があればお願いしたいと思います。品田先生、お願いします。
○品田委員 「労働者の性格傾向には幅があり」という文面ですが、2つ目の*です。この問題は、度々、本人がどう受け止めたかという視点から判断されるべきだという意見がありまして、その内容については慎重に表現される必要があるかなと常々思っていました。趣旨としましては、これまで議論されたとおり、ここに書いてあるBの2つ目の*の内容で異論はないのですが、しかしながら、その表現において少し留意が必要かなと感じている部分があります。つまり、もう少し、同種の労働者の相対性によって判断されなければならないということについて、論理的ないしは親切に説明される必要があるかなということです。恐らくこれは報告書の中に書かれることで、1つの参考として提示することになるかと思いますが、私個人としては、同種の労働者という概念に一定の幅があることをわざわざ書く必要があるのか多少疑問があります。議論を蒸し返すことになるので、これは必要とするとしても、2つ目の*の文面で「一定の幅を内包するものであるが」と、「が」という形で後段に文脈が続くのは、非常に問題があるという気がしています。そういう意味においては、「一定の幅を内包するものである」と一旦区切ってしまい、これを1つの検討会における視点として提示する限りにおいては、何とか納得し得るかなと。もしこの文面を通すというのであれば、「性格傾向には幅があり」と書いてありますが、性格を問題にしているものではないので、性格傾向という言葉は必要ないかなという気がします。
 それから、その後の文面についても少し説明が希薄かなと思います。つまり、「精神障害が業務に内在し」うんぬんということについても、少し説明不足で誤解を受けるかなという気がしますので、こうした内容を言うのであれば、例えば、「労働者災害補償とは、業務に内在し又は通常随伴する危険の現実化に対して補償を行うものであり、精神障害の発病が業務上の事由であると言えるためには、同種の環境下にあれば一般的な労働者は発病に至る可能性が高いと言えることが必要である。したがって、発病者本人がどのように感じたかではなく、一般的な労働者がどのように受け止めるかという観点が必須であり、その際には最も近似した環境にある労働者を想定することが有用である」と。このような形にすれば説明としては間違いないかなという気がします。最初に言いましたように、若干、誤解を受ける可能性もあるので、こうしたことを表現するのであれば丁寧にすべきだという意図です。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。客観基準をどうしてもこの中に入れたほうがいいという御意見だったと思います。三柴先生、いかがでしょうか。
○三柴委員 この点については非常に悩ましい論点だと思いますが、基本的に銘記しなければいけないのは、労働者の性格傾向というのは、時代や環境に合えば重宝され、逆に合わなければ補償の問題が生じるということがあって、労災補償も制度である以上、客観基準で切らなければならないのですが、精神の問題を扱うということで、一定の幅を認めること、これは一方では言っておかなければいけないだろうということです。ですから非常に悩ましい。品田先生のおっしゃることは非常によく分かります。
 他方、私からも縷々申し上げてきたようにメリハリが必要で、一定の性格傾向なり素因なりを持ちながら労働参加している人について、それが客観的に認識ないし受容可能な限りは補償の対象にしていくと。しかし、本人も申告していないとか、補償対象にしようがない事情については、補償外となっても仕方がないと考えますので、悩ましいなと思って伺っていました。
○黒木座長 ありがとうございます。素因とかと言うと余計に大変なような気がしますけれども、ほかの先生方、いかがでしょうか。法律家の先生、何か御意見はございますか。中益先生、いかがでしょうか。
○中益委員 私も、これに関しては非常に議論のあるところで、なかなか言語化するのが難しいと考えています。一方、御提案は、一応、一般的に妥当であろうという考え方を最大公約数的にまとめられているのではないかと考えています。あまりいろいろ書き込みますと、またそれはそれで意味を持ってくるだろうと思いますし、なかなか難しいなという感じがいたします。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。中野先生、いかがですか。
○中野委員 中益先生の御言葉に特段、付け加えることはないのですが、先ほど品田先生がおっしゃったように細かく書き込めば、確かに正確性は増すのかもしれませんけれども、その細かな書き込みがかえって議論を呼び得るということもあると思います。今の事務局の御提案は、今、中益先生がおっしゃったように最大公約数を示していただいていて、これはこれで、一応、妥当な文言としてまとまっているのではないかと私は受け止めています。
○黒木座長 ありがとうございます。丸山先生、いかがですか。
○丸山委員 同種の労働者という意味の中に、これがある程度平均化されたという意味合いが入っているので、それをもっと分かりやすく丁寧に表現されているということでいいと思います。先ほど品田先生が言われた話にすればかなり丁寧だと思いますが、また新たな議論が生まれそうなので、ここはこれでとどめておけばというところで賛成します。
○品田委員 新たな議論ということですが、もう一度、私が言ったことをちゃんと文面で見ていただければ、何ら新しいことを言っているわけではなくて、ここで書いてあることをより正確に表現すべきだというだけであり、何よりもこの文面で最大の問題は、「同種の労働者は一定の幅を内包するものであるが」という形で文脈を続けますと、それに対する述語と言いますか回答がどこにもないわけです。ある意味でトートロジーになってしまっていますので、もしこれをいかすとすると、法の性格上、他者との比較評価が不可避であって、その範囲内にあるか否かについて合理的な推認が必要だということまで言わざるを得なくなってしまうかと思います。そういう意味において、同種の労働者に一定の幅が内包するということについて表現が必要だというのであれば、それはそれでそこまででとどめておき、一方で、同種の労働者というものについてどうして必要なのかは別段にきちんと説明すべきだということです。もう一度読んでいただければ、資料の「が」の後の「精神障害が業務に内在し又は通常随伴する危険の現実化といえるためには」、もうここにおいて文脈がおかしいのですが、「心理的負荷は客観的に評価する必要があることから、本人を基準とすることはできず」、本人を基準とするという言葉は、よく弁護士さんたちも言ってこられることがありますけれども、要は、本人がどのように感じたかではなく、一般的な労働者がどう受け止めるかで判断しなければならないのだという意味であり、本人を基準とするというのは、簡潔にまとめたようで、私としては、やや運動論的な発想の文脈ではないかというふうに感じました。そういう意味において、新たなことを付け加えたわけでは全然なくて、きちんとした言葉遣いをすべきではないかと言ったにすぎません。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。確かに「本人を基準とすることはできず」という、ここをもうちょっと説明していただくほうがいいかなという気がしますので、また事務局のほうで検討をお願いします。次に移ってよろしいでしょうか。
○吉川委員 吉川です。この同種の労働者について、先ほど品田先生がおっしゃったように、下から3行目の「内包するものであるが」が「あり」となることで、一定の幅を内包するという言葉が非常に生きてくるかなと思いました。その点で1つコメントと、事務局に質問ですが、労災保険特別加入者は、今、保護の点から広がってきているところだと思いますけれども、その労災保険特別加入者は、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人として、一定の要件下のもので労災に特別加入ができるという制度で運用されていると思います。その点で、この同種の労働者というものは、労災保険特別加入者においても同様に解釈できるものだと理解できます。その点で、労災保険特別加入者を、この新しい認定基準を運用する際に、同種の労働者の範疇に含めて解釈するに当たって特に問題はないか、事務局に確認したいと思います。
○黒木座長 お願いします。
○西川中央職業病認定調査官 今、先生が御指摘のとおり、特別加入の方々でも精神障害の労災補償の対象になっている場合はございまして、別途の認定基準があるわけではありませんので、同じように考えていく形で認定をしているところです。もちろん、特別加入制度におきましては、もともと労働者でない方について労働者と同じように働いている面があるという観点から、対象も一定の制限を加えていますし、また、どのような場合に労災補償の対象とするのか、負傷等も含めてどのような場合に労災としての業務遂行性を認めるかについては、この特別加入制度上の一定の縛りがあるところです。そういった中で、端的に言えば、労働者と同じように働いている部分が特別加入としての業務遂行性を認めていく部分ということで制度上取り扱っています。その上で、労働者の中にも、当然、管理職の方、非常に経営者に近い方などもいらっしゃるところですので、精神障害の認定基準でいうこの同種の労働者という同じ考え方をしていくに当たっても、特別加入制度での枠組みとこの認定基準の枠組みの両方を使えば、適切に判断ができると考えているところです。
○黒木座長 よろしいですか。
○吉川委員 ありがとうございます。
○黒木座長 ほかには、いかがでしょうか。次に進んでよろしいでしょうか。
○田中委員 田中ですが、よろしいでしょうか。品田先生がおっしゃったように、私も、「性格傾向には幅があり」という表現については、最近は性格という言葉は精神科でもあまり使われなくなって、そのまま環境の影響を受けやすいパーソナリティを診断基準でも使っているところで、「労働者の性格傾向には幅があり」ということと、次の文章の「出来事によって受ける心理的負荷の強さの程度は個人ごとに差がある」ということと同じことを言っているので、あえて性格傾向という言葉は出さなくてもいいのかなというように思いました。以上です。
○黒木座長 先生、ここはどんな表現がよろしいですか。
○田中委員 例えば、「出来事によって受ける労働者の心理的負荷の強さの程度には個人ごとに差がある」とかというような表現でもいいかなと思います。
○黒木座長 「性格傾向」は使わない。
○田中委員 最初の「性格傾向には幅があり」ということは抜いてもいいかなと思います。
○黒木座長 これはいいのですね。
○田中委員 「幅があり」という文章は削除して、「労働者が出来事によって受ける心理的負荷の強さの程度は個人ごとに差がある」という表現にしたりとか、「出来事によって受ける労働者の心理的負荷の強度の程度はうんぬん」という形で、後ろの文章だけでまとめていいのではないかなと思っています。
○黒木座長 では、ちょっとこの辺も検討していただくということでよろしいでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 もう一度、事務局のほうで整理をさせていただきたいと思います。
○黒木座長 ほかには、いかがでしょうか。次にいってよろしいでしょうか。
 それでは、論点1のC、評価期間の留意事項について検討したいと思います。この件に関して、何か御意見や御質問があれば御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。中野先生、お願いいたします。
○中野委員 ちょっと細かな文言の問題で恐縮なのですが、*の2番と3番の「も」という言葉です。*の2番で、出来事の起点が発病の6か月より前であっても、その出来事が継続している場合にあっては、発病前おおむね6か月の間における状況や対応についても評価の対象とする、この「6か月の間における状況や対応についても評価の対象とする」の「も」は、出来事が発病の6か月より前で、その6か月より前の期間から全て、発病前6か月の期間も含めて、評価の対象とするということなのか。また同様に、次の*の3番目の、本人が主張する出来事は発病の6か月より前であっても、発病前おおむね6か月の間における出来事についても調査し、当該期間における発病前おおむね6か月の間の心理的負荷を評価することが必要という、こちらの「発病前おおむね6か月の間における出来事についても調査し」の「も」は、本人が主張する発病6か月より前の出来事から調査をし、発病前6か月間の出来事を含めてもちろん調査をするという「も」なのか。
 私の理解では、評価期間は基本的には発病前おおむね6か月間で、*の1番のように、ハラスメントやいじめのように、出来事が繰り返されている場合には、6か月より前の出来事の開始時に遡って全ての期間を評価対象とするが、特に*の3番の場合は、本人が主張しているのは発病の6か月よりも前の出来事なのだけれども、だからと言って門前払いをせずに、発病前6か月間はきちんと調査をしましょうという趣旨だと思っていたのです。ちょっと「も」という言葉の使い方で、評価対象とする期間の意味が変わってしまっているように思うので、御確認をお願いします。
○西川中央職業病認定調査官 まず、何を評価するのかということについては、中野先生の御指摘、御理解のとおりです。いじめやハラスメントのように、出来事が繰り返されるものは別ですが、基本的には、発病前おおむね6か月のことを評価するということになります。*の2つ目の「も」は、御指摘のとおり、要らないような気がしますが、少し精査をさせていただきたいと思います。*の3つ目の「も」ですが、これは現行の認定基準にも書いてはあるのですが、ただ、実際の運用としても、発病前6か月のことを調査し評価するということになりますので、そこについても、併せて適正な表現を改めて検討させていただきたいと存じます。
○黒木座長 よろしいでしょうか。
○中野委員 ありがとうございます。お願いします。
○黒木座長 品田先生、いかがでしょうか。お願いします。
○品田委員 中野先生がおっしゃられたとおりだと思っていたのですが、本人が主張する、これも前々から少し違和感を持っていたのですが、本人が主張する出来事うんぬんということを書き出すと、いろいろな形で御本人や代理人は言われるわけですから、そういうことに関係なく、そもそもが職権探知主義で決められた発病前6か月間を対象にするわけですから、こういう形でわざわざ説明する必要があるのかどうか。つまり、本人の主張にかかわらず、ともかく6か月前を調べて、それについて、必要であればその前を、関連している出来事がしょっちゅうないかを調べるわけですから、そもそもこういう表現が必要なのかどうかも含めて検討したほうがいいかなという気がします。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかには、いかがでしょうか。確かに、ちょっと長い感じはするので、誤解が出るかもしれませんので。
○丸山委員 丸山です。4つ目の*のところの確認なのですが、後半の「その場合、当該反応が生じた時期の前おおむね6か月の間の出来事を評価」となっていますが、この期間には、その前にある「生死に関わるケガ、強姦等の特に強い心理的負荷となる出来事」というのは、もう中に入っているということを想定した解釈でしょうか。それとも、それは入っていなくても構わないという解釈でしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 もともとの、平成23年の認定基準にこの留意事項を書き込んだときの趣旨としては、生死に関わるケガ、強姦等の特に強い心理的負荷となる出来事の評価が漏れないようにするようにという趣旨で書かれているものと理解をしていますので、この反応が生じた時期の前おおむね6か月の間に、これらの生死に関わるケガ、強姦等の特に強い心理的負荷となる出来事が入っているであろうというような想定の下に記載をされているものと考えています。
○丸山委員 そうだと思ったのですが、そのことを文言で何か含める必要は特にないということでよろしいですか。
○西川中央職業病認定調査官 丸山先生の御指摘は、確かに記載だけ見ると、必ずしもそうであるように論理的に読めないというか、書かれていないというような御指摘であろうかと思うので、もともとの趣旨を端的に表現できるように修文をすることが可能かどうかということも含めて、少し調整をさせていただきたいと存じます。
○丸山委員 分かりました。
○黒木座長 ほかには、いかがでしょうか。荒井先生、よろしいですか。
○荒井委員 結構です。今の議論でいいと思います。
○黒木座長 それでは、このCは終了とします。
 次に、論点1のDです。複数の出来事の全体評価について検討します。これについて、御意見があれば出していただきたいと思います。別紙2について、何か御意見はありますか。あと、この事例も出ていますので。品田先生、何かありますか。
○品田委員 評価の枠組みや考え方は、よく表現されていると思います。必要にして十分かなという気がしました。ただ、2つ目のBさんの事例は、正にこの問題の難しさを感じさせるものかなと思います。Aの事例との違いは分かるのですが、Bの事例についてよくよく考えてみると、2つの出来事はそれぞれに、Bさんの業務量が増した、業務としてのストレスが増したということにおいては、1つそう見ることもできなくもないわけで、そういう意味において、例えば、1つ目の出来事は、業務における責任を問われて非常に忙しくなったということ、もう1つは、全く違うものが起こったというようなものにしたほうが分かりやすいかなという気もしました。もちろん、最初の出来事については、責任を問われたということにおいて、違う出来事とも取れるのですが、しかし、代替品の手配や外注先との交渉うんぬんと書くことにおいて、忙しくなったということですよね。そういう意味においては、業務において忙しくなったと捉えられてしまうこともあるなと。いずれにしても、このことを具体的に事例で捉えて表現するのは難しいなと感じた次第で、では、これ以上に何かせよというわけではありません。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。荒井先生、何か。
 
○荒井委員 今、品田先生がおっしゃったことを現場で評価しているときに、その近接あるいは重層、その負荷の程度がお互いに独立はしているのだけれども、やはり総合的に判断すると「強」という、「中」が2つの例なのですが、これは現在もほぼ「強」にしているというように思われるので、それを再確認するという意味で、この事案を書いていただくのは、今やっていること、地方労災医員が考えていることに近い表現がされているのだろうというように思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。小山先生、何か御意見はありますか。
○小山委員 Aの事案は、非常に分かりやすく理解しやすいのですが、Bの症例は、やはりちょっと難しいなという、全体を見たら確かに2つの出来事が次々と続いて、忙しくなって大変だったと見て「強」だというぐらいに読めてしまう場合も、下手すればあるかと思います。そういう意味で、Bのほうの症例は、もう少し違った、関連のない出来事を2つ並べたほうが、皆さんには理解しやすいかなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。三柴先生、何かありますか。
○三柴委員 すみません、私は、よく書き分けられているように見えたのですが、Bのほうの例について、より関係ない背景が重なったのだということが分かるように、事務局において、ちょっと文言を工夫されてもいいかもしれませんという程度です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかには、いかがでしょうか、よろしいですか。では、このDのことについてはよろしいでしょうか。では、今御指摘のあった点を、また事務局のほうで整理していただきたいと思います。
 次に、論点2に進みます。まず、事務局から論点2について説明をお願いいたします。
○西川中央職業病認定調査官 論点1の御議論、ありがとうございました。それでは、論点2、これまでの議論の整理について御説明させていただきます。まず、1ページにお戻りください。2これまでの議論の整理です。1で御議論いただいたものを除き、これまでの議論を以下の項目ごとに整理いたしましたが、その内容について、どのように考えるかとしております。①精神障害の成因と業務起因性の考え方、②対象疾病等、③業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価、④療養及び治ゆ、⑤認定基準の運用等、⑥複数業務要因災害、この6項目に分けて整理をしています。
 具体的には別紙3で整理をしていますので、資料1の10ページの別紙3を御覧ください。10ページ、別紙3、これまでの議論の整理です。まず、1として、精神障害の成因と業務起因性の考え方について整理をまとめています。第1回の検討会において、精神障害の成因の考え方として、「ストレス-脆弱性理論」によることが適当という内容で整理いただき、その後の御議論もこれを前提に進めていただきました。そのことが1つ目の項目に書いてあります。
 次の項目、業務起因性の考え方については、認定要件のところで御議論いただいたことにも通じる部分となりますが、これまでの御議論に当たり、まず、労災保険制度が補償の対象とする業務上疾病は、精神障害に限らず、業務に内在する危険の現実化と評価される疾病となること。その上で、「ストレス-脆弱性理論」に依拠して精神障害の業務起因性を判断するに当たっては、精神障害が発病していることを前提として、業務による心理的負荷を評価するとともに、業務以外の心理的負荷や個体側要因についても確認することが必要となること。この確認の結果、精神障害が発病していて、評価期間において業務による強い心理的負荷が認められ、業務以外の心理的負荷や個体側要因に顕著なものがない場合には、業務起因性が肯定される。一方、業務による強い心理的負荷がない場合、事案としてはまれですが、業務による強い心理的負荷があったとしても、明らかに業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したと認められる場合には、業務起因性が否定される。こういった考え方に平成11年以降依拠してきていますが、この検討会でもこれを前提として、共通見解として御議論いただいてきたと考えています。改めて、これまでの議論の整理として取りまとめております。
 さらに、その上で次の項目です。心理的負荷の客観的評価です。業務による心理的負荷評価表の検討に関する医学的知見として、第6回の検討会には、丸山先生の編著の「ストレス学ハンドブック」をお示ししていました。そちらにも記載されていますが、ストレスに関する基本的、基礎的な医学的知見を示させていただいています。そして、労災補償の判断に当たっては、心理社会的ストレス要因の客観的評価が重要であること。個人はこれまでの経験等に基づいてストレスを評価して、またストレス反応を起こすものですが、その際、ストレスにどう対処していくか、あるいは周囲の支援なども重要であること。こういったストレスに関する基本的な情報についても整理をしております。
 11ページの(2)です。職業性ストレスを理解するためのモデルもいろいろありますが、このうち代表的なモデルについても整理をしています。その上で、これらのモデルにも表されているとおり、ストレス要因は個人が受け止めるものであり、その感じ方は個人によって異なりますが、労災保険として業務起因性の判断をするに当たっては、ストレスの強度をどのように評価するかが重要になってきます。その際、ストレスは様々な場面で存在し、強いものもあれば弱いものもありますが、この業務起因性の判断をするに当たっては、やはりこのストレスは客観的に評価することが必要であり、個人がある出来事を主観的にどう受け止めたかによってではなく、同じ事態に遭遇した場合に同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという客観的な基準により評価をするという整理、平成11年報告書から維持をしている整理ですが、このような整理でまとめさせていただいております。
 続いて、12ページの項目2の対象疾病です。こちらは、第7回、第10回で御議論いただいた内容を整理しています。まず、1つ目、対象疾病です。現行認定基準ではICD-10に基づき定められています。ICD-11の日本語訳がまだ確立していない状況ですので、現時点では現状維持とし、ICD-11の日本語訳の確立を待って別途検討と整理をさせていただいています。
 2つ目、発病等の判断についても、まずは発病の有無等の判断に当たっては、現行どおり、ICD-10の診断ガイドラインに基づき判断することになろうかと思います。治療歴がない自殺事案については、自殺に精神障害が関与している場合が多いことを示した上で、先生方に御相談をして、診断基準を満たす、発病をしたと医学的に推定される場合には発病したものと取り扱うという整理です。さらに、ほかの精神障害をお持ちの方の発病の有無の判断に当たっては、いろいろな場合がありますので、個別事案ごとに専門医の先生に御判断いただくことが必要であること、そのため、監督署においては、医証の収集や出来事の調査をしっかり行った上で医学的判断を求めるべきと整理をしております。
 続いて3つ目、発病時期です。出来事との関係や自殺日との関係などを踏まえ、できる限り時期の範囲を絞り込んだ医学意見を求めて判断することが必要とした上で、現行と同様、発病時期が出来事の前かもしれないし後かもしれない場合には、評価に漏れがないように、出来事の後に発病したと取り扱うこと。また、自殺事案については先生に御判断いただくわけですが、どうしても発病時期の特定が困難な場合には、遅くとも自殺日までには発病していたものと判断せざるを得ないという整理について記載をしております。
 続いて、精神障害の悪化と症状安定後の新たな発病についてです。まず、悪化はどういった状態を言うのかについて、これは個別事案ごとに医学専門家による御判断を求めるほかはないという御議論だったかと思いますので、そのように整理をしています。そして、2番目の項目、悪化の業務起因性についてです。3つ目の○が、現行認定基準と異なるところです。特別な出来事に該当する出来事がなくとも、悪化の前に業務による強い心理的負荷が認められる場合には、この業務による強い心理的負荷、本人の個体側要因、すなわち悪化前の精神障害の状況、業務以外の心理的負荷、そして悪化の態様やこれに至る経緯などを十分に検討して、この業務による強い心理的負荷によって精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したものと医学的に判断されるときには、悪化した部分について業務起因性を認めることが妥当という方向性での御議論となっていたと整理をしています。
 併せて、症状安定後の新たな発病についても、ここで整理をしています。既存の精神障害について、一定期間、通院・服薬を継続しているものの、症状がなく、あるいは症状が安定していた状態で、通常の勤務を行っている方も多々いらっしゃいます。一定期間そのような状況にあり、その後、症状の変化が生じた事案については、発病後の悪化の問題としてではなく、「症状が改善し安定した状態が一定期間継続した後の新たな発病」として、通常の認定基準に照らして判断すべきものが少なくないことについて、認定基準に明示すべきと整理をしております。さらに、この「一定期間」ですが、第10回での御議論の内容をまとめますと、ここの記載のとおり、一律の基準を明示することはできないが、例えば、うつ病については、おおむね6か月程度症状が安定して通常の勤務ができていた場合には、この症状安定後の新たな発病として判断すべきものが多いといった御議論の方向性であったかと思います。御確認をお願いいたします。
 最後、自殺の取扱いですが、精神障害を発病された方の自殺については業務起因性を認める、平成11年以降ずっと継続している整理ですが、これも現時点において妥当という御議論であったかと思います。
 続いて、15ページの3番の項目です。業務以外の心理的負荷及び個体側要因についての考え方です。大体は第8回で御議論いただき、一部は第10回で御議論いただいた部分です。まず、精神障害の認定要件について御議論いただきましたが、業務以外の心理的負荷又は個体側要因によって発病したことが明らかな場合には業務起因性が否定されるという整理です。業務による強い心理的負荷が認められる場合、業務以外の心理的負荷や個体側要因がないとき、あるいは業務以外の心理的負荷や個体側要因はあるが、それらによって発病したことが医学的に明らかだと判断できない場合、はっきり医学的にそうだということでなければ、業務起因性は肯定される。これが現行の取扱いですし、これも引き続き妥当という整理であったかと思います。
 その上で、業務以外の心理的負荷がある場合の評価ですが、本日の議論の整理としては別表までは示していませんが、現行認定基準においても、別表2として、業務以外の出来事による平均的な心理的負荷の強度を示した表を御用意しています。こういった平均的な負荷の強度を示した表に基づいて評価をしまして、業務起因性の有無の判断の際に考慮するというやり方が、引き続き妥当との御議論であったかと思います。その上で、先ほどの考え方のところでも示しましたとおり、業務による強い心理的負荷がある事案については、業務以外の心理的負荷により発病したことが医学的に見て明らかではっきりしている場合に限り、業務起因性を否定することになります。
 個体側要因がある場合の評価についても、個体側要因については、パーソナリティや家族歴などいろいろなものがありますが、業務による強い心理的負荷がある事案については、顕著な個体側要因と言い得るもの、すなわち、アルコール依存状況がある、治療が必要な状態にある精神障害をお持ちであるなどが明らかな場合に、その内容を詳細に調査をして、そして先生方に医学的に慎重に検討していただき、それによって発病したことがやはり医学的に見て明らかであると判断できるときに限り、業務起因性が否定されることになるという整理になろうかと思います。この個体側要因に関しては、現行の認定基準で記載をしている、個体側要因により発病したことが明らかな場合の例示、これこれの場合は個体側要因により発病したことが明らかな場合ですという例示は行わないこととして、このような整理としております。
 続いて、16ページの4療養及び治ゆです。おおむね第10回で御議論いただいた内容です。御議論いただいたもののうち、主要な部分を整理しています。まず、「心理的負荷による精神障害は、その原因を取り除き、適切な療養を行えば全治し、再度の就労が可能となる場合が多いが、就労が可能な状態でなくとも治ゆ(症状固定)の状態にある場合もある」とするのが現行の考え方です。これについて、その下のポツのところですが、精神障害の症状が現れなくなった、又は症状が改善し安定した状態が一定期間継続している(「寛解」後「回復」した)場合、あるいは、社会復帰を果たすためのリハビリテーション療法等を終えた場合であって、通常の就労が可能な状態に至ったとき、こういったときには、投薬等を継続していても、通常は治ゆ(症状固定)の状態にあると判断する形で、一層の明確化を図るという御議論の方向性であったかと存じます。
 また、療養期間については、平成23年の検討会報告書、現行の認定基準にも、その当時の医学的知見として、薬物が奏効するうつ病についての療養期間に関する報告が示されています。本検討会の御議論においても、現時点での医学的知見を踏まえ、療養期間の目安を一概に示すことは困難ではあるが、あらかじめ被災労働者や主治医に参考となる事項、例えば、うつ病の経過は、未治療の場合、一般的に6か月~2年続くとされていることなどを示しておくことが、被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために重要という方向性であったかと思います。
 さらに、職場復帰が可能とならない場合も含め、医学的知見を踏まえ、療養開始から1年6か月~3年を経過した時点で、医学的判断を求め、個別に状況を確認していくこと、ここについては少し具体的に追記をさせていただいていますが、主治医の意見を踏まえつつ、専門医の先生にも症状固定の有無に係る医学的判断を求めていくことは重要だと整理をしております。なお、その際に、御議論でも御指摘があったところですが、これはあくまで個別に状況を確認していくものでして、症状経過に係る状況などは事案によって異なるものですので、決して一定の期間で一律に症状固定と判断するものではなく、慎重かつ適切な対応が求められることについても、御議論を踏まえて追記をしております。
 最後、17ページです。こちらの5、6も、前回第11回に御議論いただいた事項です。まず項目の5、認定基準の運用等です。医学意見の収集については、現行認定基準を見直してはどうかという事項となります。1つ目は、現行では専門医意見を求めているものでも、主治医の意見のみで判断できる場合があるのではないか。具体的には、業務による心理的負荷が「強」に該当することが明らかな事案であって、業務以外の心理的負荷や個体側要因があるとしても、それが顕著なものでない事案であれば、主治医意見により判断できる場合があると考えられるということ。また、2つ目、3つ目は、現行は部会意見を求めているものでも、専門医の先生で御判断いただけるものがあるのではないかということ。具体的には、受診歴のない自殺事案や出来事の心理的負荷の強度が明らかでない事案についても、専門医意見により判断できる場合があると考えられるということ。しかし一方で、4つ目ですが、署長あるいは専門医の先生が高度な医学的検討が必要と判断した、部会で検討していただくことが必要と判断したというような場合には、引き続き部会による判断を求めることが適切であるということ。そういった整理であったかと思います。
 セクシュアルハラスメント事案の留意事項については、現時点においても妥当、また、本省協議事項、あるいは法律専門家の意見の聴取についても、現行どおりという整理です。法律専門家の意見の聴取については、前回の検討会で重要であるという御指摘を頂きましたが、現行の取扱いにおいても、必要な場合には躊躇なく実施するということですので、その趣旨で現行どおりと整理しております。
 最後、6番です。複数業務要因災害です。こちらも、令和2年の制度導入に合わせて考え方を取りまとめたところで、現時点においても、その考え方は妥当という方向性であったかと思います。
 論点2のこれまでの議論の整理についての御説明は以上です。これまで御議論いただいた内容を事務局で簡略に書き起こさせていただいたという趣旨で御用意していますが、内容を御確認いただき、ここはこういうふうに補ったほうがいい、より明確化したほうがいいなど、いろいろお気付きの点がありましたら御指摘を賜りたいと存じます。全体としては少し長いものになりますので、項目1と2、3と4、5と6と区切って御議論いただければと考えております。御説明は以上です。御議論のほど、よろしくお願いいたします。
○黒木座長 それでは、まず1と2、精神障害の成因と業務起因性の考え方、それから対象疾病ということについて議論したいと思います。今、事務局から説明がありましたが、これに関して何か御発言はありますか。丸山先生、何かありますか。
○丸山委員 11ページの(2)のNIOSH職業性ストレスモデルの段落ですが、その3行目のところに、「これらのストレス反応が高じて精神障害などが発病すると説明する」というものがあり、「高じて」に一部はという意味合いが入っているとは思いますが、ストレス反応が高じて全て精神障害あるいはストレス疾患を発症するわけではないので、その一部がそうなるという意味合いでは、「高じた場合」など、何かそういう表現にしたほうがより正確かなと思いました。やはり、ストレス反応が起きるまでの間に、いろいろな緩和因子であったり、いろいろな耐性因子、あるいは、それを強める因子が働くわけですが、一方、そのストレス反応が起きた後、精神障害あるいは心身症を発症する、この間でもいろいろな要因が関わってくるわけで、その後がとんとんと、何となく全てストレス反応が起きれば精神障害等が発症するという感じにならないように、「一部は」など少し表現を誤解のないようにしておいたほうがいいかなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。「これらのストレス反応が高じて」、この部分を少し分かりやすくお願いしたいと思います。ほかにはいかがでしょうか。
○品田委員 品田です。
○黒木座長 品田先生、お願いいたします。
○品田委員 今の11ページ、(3)の一番下を見ていただいて、先ほどの話を蒸し返すつもりはないのですが、ここに、同種労働者であることにおいて客観的な基準で評価すべきだと書いてあるので、果たして同種労働者の説明において先ほどの議論のようなところをもう一度書き込む必要があるのかどうか。ちょっとその辺も含めて検討いただきたいと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ここもまた検討していただければと思います。ほかにはいかがでしょうか。三柴先生、何かありますか。
○三柴委員 1点だけ、その業務起因性の考え方というところなのですが、これは原則としてという理解でよろしいのかということだけ、事務局に伺えればと思います。つまり、例えば3つ目の○のところですが、その後に出てくる発病時期についての具体的な考え方と、やや齟齬があると言いますか、原則では明確、客観なものを取り上げると言っているけれども、その具体的な判断では事情をしん酌すると見えますので、あくまで考え方は考え方で原則なのだという理解でいいのかということだけ、ちょっと伺えればと思います。
○黒木座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 三柴先生の今の御質問は、この「発病の時期及び疾患名について」の部分についてということでよろしいでしょうか。
○三柴委員 例えば、そこですね。あるいは、実際にその病名が明確にならないけれども、医学的に何らかの疾患にかかったという認定をすることがあるというのは、前の議事でもあったところですので、その辺りとの関係性で、あくまで原則としては明確、客観な医学的認定が必要だけれども、事情による判断は行い得るという理解でいいのか、そこをちょっと教えていただきたいと思います。
○西川中央職業病認定調査官 実際の運用としては、明確な医学的判断が難しいときに、専門部会の先生方に御議論いただいて、合議の結果、確かに御議論の中でも、F4の中のどれか分からないがF4はF4だというような御指摘、そういった判断までになる場合もあるというような御指摘も頂いておりますし、実際にそういった運用は行っているところです。そこについて、ここの書きぶりと少し齟齬があるように見えるという御指摘であるとするならば、どういった書きぶりがいいのか、ここはこのままにしておいて、その解釈にはそういった合議でこれでいいというところも含まれるとするのか、あるいは、ここの書きぶりを少し修正したほうがいいのか、そういったところも含めて、また調整をさせていただきたいと思います。
○三柴委員 ありがとうございます。「考え方」という書き方で原則とも読めるので、このままでもいいかと思いましたが、ちょっと御検討いただければという程度です。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
○中野委員 先ほどの品田先生の御発言は、誤って受け取っていたら申し訳ないのですが、この議論の整理のほうで同種の労働者について説明があるので、認定基準のほうには細かなことは書かなくてよいのではないかという御趣旨なのかなと思いました。ただ、私の理解が正しいかどうか分かりませんが、議論の整理と認定基準が別々に出る、議論の整理は報告書のような形で出て、認定基準は認定基準で別途出るとすれば、認定基準だけを見る人がいるということを念頭に置くと、認定基準のほうでも、その同種の労働者というのは、一定の幅を持つ概念として用いている、一定の幅を含むが、それは客観的なもの、被災した労働者本人ではなく、客観的な概念を用いているということを、ある程度は示しておく必要があるのかなと思います。その文言をどこまで細かくするのか、本日頂いた御提案からどの程度修文するのかというのはまた別ですが、必ずしもこちらの議論のまとめを見てくださる人ばかりではないということを思うと、認定基準のほうでもある程度書いたほうがいいのかなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。荒井先生。
○荒井委員 この心理的負荷の客観的評価のところで、今回、田中先生にも非常に幅広に科学に基づいた研究をしていただいて、それを基礎に考えているわけですので、生活上の出来事研究、ライフイベント研究を中心にしているのだということは、この客観的評価が求められているということを明確にしていただいたほうがいいのではないかと思います。一般的なストレス論ではなくて、生活上の出来事研究によって精神障害の発病を理解しようとしている、あるいは、これまでの知見に基づいて、発病を検討しているということについては、明確に記載したほうがよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○黒木座長 いかがですか。
○西川中央職業病認定調査官 先生の御指摘は、最終の報告書を取りまとめていくに当たって、全体の構成としてそういったことを重視しているということを記載すべきではないかという御指摘と受け取らせていただきました。また引き続き調整させていただきたいと存じます。
○荒井委員 よろしくお願いいたします。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。田中先生、何かありますか。
○田中委員 全体的には、これまで議論されたことが正確に反映されていると思いますし、今、先生方がおっしゃったことに加えて私から追加することはありません。
○黒木座長 ありがとうございます。それでは、次に進んでよろしいでしょうか。
 それでは、今度は3と4です。業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価と、資料1の16ページにあります療養及び治ゆということについて、まとめて検討したいと思います。御意見があれば、御発言をお願いいたします。
○吉川委員 吉川です。ここの3番、4番は非常に重要なところだと理解しています。特に4の療養及び治ゆに関しては、今後、いろいろな知見も踏まえて検討していく必要があると思います。その中で、例えば「療養及び治ゆに関し、次の事項にも留意」の、経過した段階で主治医の意見を踏まえつつ専門医にも聞いていくというところですが、実際の事案の中には、やはり療養が長くなってきている場合に、負荷が非常に大きかったということもあると思いますが、復帰のめどが立ちにくい方たちもかなりおられるのではないかと思います。具体的には、産業医の先生などがおられるような大規模なところだったら支援が入ったりするのですが、小規模の事業場など、支援が十分ないまま療養生活を続けなければいけないために、支援の差し伸べというか、復職支援が、十分なリソースがないために復職できてないようなケースもあるのではないかと思いますので、「復職支援の状況なども踏まえ」というような、例えば復職に向けての支援があるというようなことも検討することは重要なのかなと思いました。
○黒木座長 ありがとうございます。吉川先生がおっしゃったことは非常に重要なことです。症状固定にした後にどのようなことを考えていけばいいのか、これは非常に重要なことです。何か御意見はありますか。ちょっと内容がかなり多いので。
○田中委員 田中からよろしいでしょうか。16ページなのですが、上から6行目でしょうか。「精神障害の症状が現れなくなった又は症状が改善し安定した状態が一定期間継続している」の後に「(「寛解」後「回復」した)」と書いていますが、回復というのは寛解状態がしばらく続いた後ということになります。ですので、「寛解」後「回復」したとここで書くよりは、正にその上の行の「症状が改善し安定した状態」、これが正に寛解状態ですので、ここに(寛解状態)と書いて、それが一定期間継続しているということで、(回復した)だけをここに書くと、より正確かなと思いました。それぐらいです。
○黒木座長 ありがとうございます。これはいかがですか。安定した状態、病状が安定した状態が寛解、症状が消えていると。その後、継続している、回復というと、何か重複しているような気もしますが、いかがでしょうか。
○田中委員 寛解が継続した状態を回復というわけなので、「寛解」後「回復」という表現はちょっと引っ掛かるなと思った次第なのですが。
○黒木座長 ありがとうございます。
○荒井委員 よろしいですか、荒井です。今の議論は、例えばうつ病では寛解維持療法という概念があって、その場合には服薬も継続している場合が多いわけです。それで、薬も必要なくなって通常の生活ができるようになった場合、リカバー、回復と呼んでいるのが一般的だと思いますので、その線で、ここのところはちょっと見直していただいて、寛解と回復は違うと考えます。ただし、寛解維持療法の場合も通常の社会生活をされている方が多いので、補償学上は治ゆ、症状固定としているのが一般的だろうと思っています。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。寛解と回復、ここがちょっと誤解を生む可能性があると思いますので、ここはまた事務局で検討していただきたいと思います。
○田中委員 すみません、田中ですが、よろしいですか。報告書で出てくるのかどうか分かりませんが、回復という言葉は、あえてと言いますか、なかなか使わないでここまできたところなので、ここで急に回復と出てくるのがかえって混乱させる要因になるかもしれませんので、ここは(回復)という説明をしなくてもいいのかなという気もしていますが、いかがでしょうか。
○黒木座長 結局、回復というと何を回復した、どういうことをもって回復と言うのかということが出てくるので、ちょっと分からなくなってしまうのですね。ですから、一定期間症状が安定しているということで十分表現していると思うので、ここのところはもう一回ちょっと検討していただければと思います。ほかにはいかがですか。
○丸山委員 丸山です。今の議論ですが、「寛解」後「回復」したということではまずければ、「寛解あるいは回復」などにすればどうですか。例えば、DSM-Ⅳでは、完全寛解と部分寛解ということを定義付けていたと思います。また、DSM-Ⅳ、DSM-5の気分障害(うつ病、双極性障害)においては、完全寛解は2か月以上安定した状態で、2か月程度の安定した状態までは、部分寛解と説明されています。一方、例えばICDの反復性うつ病性障害という診断名を使う場合には、やはり、寛解ということよりは、回復(はっきりした気分障害のない数ヶ月間)してまた繰り返してうつ病になったと、その場合に反復性うつ病という使い方をするという解釈が普通だと思います。寛解というのは結構幅が広いので、再燃状態でまた病気が出てきても反復性とは言わないということになりますし、ちょっとその辺りはICDによる標準的な教科書に基づいた表現にとどめておいたほうがいいのかなと思います。確かに、実際には寛解というのはすごく幅広く使われているので、あまり回復というのは使わないかもしれませんが、ICDに基づく労災での表現としては、使い分けて「寛解し回復」としておいたほうがわかりやすいかもしれません。でなければ、先ほど言いました反復性うつ病性障害など、そういうところも診断名として混乱する可能性があるので、今日でなくても、少し議論して決めていけばいいかなと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。確かにここをどう扱うかというのは後に響いてくることなので、少し検討していただければと思います。ほかにはいかがでしょうか。個体側要因などはいかがでしょうか。中益先生、何か御意見はありませんか。
○中益委員 私もこのテーマはなかなか難しい論点がいろいろあると思いますが、先ほど御説明いただいたように、この会議で共通見解として得られたであろうところが、うまくまとまっているのではないかと考えています。以上です。
○黒木座長 ここの個体側要因のところで、「アルコール依存状況」と書いてありますが、アルコール依存というのは、自分で依存状態になって、脆弱性が高まった状態で出来事に遭遇するということなので、そのアルコール依存そのものが個体側要因ということではないですよね。だから、ここもうまく表現していただいたほうがいいかなという気がします。ほかにはいかがでしょうか。小山先生、何かありますか。
○小山委員 今、議論されているようなことを私も問題視していたので、それ以上に付け加えることはありません。
○黒木座長 ありがとうございます。品田先生、ここはよろしいでしょうか。
○品田委員 特に問題ないかと思います。特に先生方の先ほどの寛解か回復かという議論は、とても興味深く聞かせていただきました。そうした中において、この問題は本当にもう少し実証を含めた深い検討が必要だと思いますが、例えば16ページの※の真ん中辺り、「うつ病の経過は、未治療の場合、一般的に6か月~2年続くとされている」、さらに、その下にも「持続は2年を超えないとされている」ということの中で、職場復帰が可能とならない場合も含めて1年6か月~3年を経過をした時点でという、この3年という時期が、上の2年という期間との関係において、合理性を持つのかどうかを含めて、是非、専門の先生方の間で議論していただきたいなという感想を持ちました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。それではここのところはよろしいでしょうか。
 それでは、次に進みます。最後に資料1の17ページ、5の認定基準の運用等、それから6の複数業務要因災害について、まとめて検討したいと思います。ここは何か御意見はありますか。
○荒井委員 荒井です。よろしいでしょうか。現状を申し上げると、この認定基準の運用等は、考え方としては非常に正しい方向だろうと思っています。そう申しますのは、請求件数が非常に多くなってきて、部会で処理する限界がそろそろきている状況だろうと思っています。ですから、それぞれの労災に対する認定の基準がそれぞれ固まっている、地方労災医員あるいは監督署が定まってきていると思いますので、できる限り迅速に判断ができるようにしていく考え方が、運用が正しいのではないかというふうに思っています。さもないと、2,000件余りの請求を正確に判断していくことが困難ではないかと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。この医学意見の収集、それから留意事項、この辺もよろしいでしょうか。では、ここは荒井先生からまとめた御意見がありましたが、ほかになければ、これで終了ということにしたいと思います。よろしいですか。
どうもありがとうございました。
○荒井委員 どうもありがとうございました。
○小山委員 御苦労さまです。
○黒木座長 本日の議論全体を通して、何か御意見、御質問がありましたら御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
○三柴委員 では、一言よろしいでしょうか。今回、心理的負荷評価表を含めて、認定基準の枠組みについて非常に精緻な検討をされていると思いますが、幾らその時点での枠組みを決めても、恐らく想定外の出来事や申請というのが出てくる、それは避けられないと思います。その場合に、事務局になるのか、検討会なのか分かりませんが、御検討いただきたいのは、例えばこの負荷評価表以外の出来事が出てきた場合に、労基法の別表の1の2の11号に戻って、結局、それが補償対象だという裏付けの立証の責任は被災者申請者側に実質的には戻るということになるのか、それとも、この評価表なり留意事項なりの考え方を援用していくのかということ。そこはちょっとお考えいただいてもいいのかなと思っています。以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。何か今の意見に対してありますか。
○西川中央職業病認定調査官 事務局から、先生の御質問に補足での御説明をさせていただきたいと存じます。労基則の別表の1の2には、端的に申し上げますと、心理的負荷による精神障害というものが記載されているところです。そもそも精神障害に当たらない病気について御請求いただいたということになれば、11号、その他で判断ということになろうかと思いますが、心理的負荷を理由としての精神障害ということであれば、別表1の2の第9号に該当するということになってこようかなと思っています。
 その上で、表にない出来事での御請求という場合には、今、現場でもなきにしもあらずというところですが、基本的には、どこかの出来事の類推適用という形で判断をしている運用です。また、現行の認定基準においても、この認定基準により判断することが適当でない事案については、本省に協議するというような形を、認定基準上、規定をしていますので、そういったやり方で今も対応していますし、今後も対応していきたいと考えているところです。 
○三柴委員 ありがとうございます。私が気にしたのは、要するに、その枠内にある例と枠外にある例とであまりに落差が大きすぎると、ちょっと被災者について気の毒かなということ、他方で、労働者保護法制として、本人等にも適用を促しながら、やむを得ない場合には保護の対象を外れることはやむを得ない。そういうところのメリハリを付けていければいいのかなと、そういう考えであるということです。以上です。ありがとうございました。
○黒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、様々な御意見をありがとうございました。本日の議論をもちまして、精神障害の労災認定基準に関する主な論点について、ある程度整理が進み、大体の方向性は見えてきたように思います。そこで次回は、事務局に専門検討会報告書の形でこれまでの検討結果を整理していただき、それを検討していくということにしたいと思います。それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、事務局には、今の方針を踏まえ作業を進めていただきたいと思います。それでは、本日の検討会はこれで終了とします。どうもありがとうございました。
○本間職業病認定対策室長補佐 長時間の御議論、ありがとうございました。次回は、ただいま座長から御発言のありましたとおり、これまで検討いただいてきた内容を踏まえ、業務による心理的負荷評価表も含めて報告書案の形で資料を御用意させていただき、御議論いただく予定とさせていただきます。次回の検討会の日時、開催場所については、後日、改めてお知らせをさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。