2022年8月25日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和4年8月25日(木)16:00~

出席者

出席委員(19名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人2名

欠席委員(2名)五十音順

行政機関出席者
  •  八神敦雄(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日は、お忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 まず、本日のWeb会議における委員の出席状況についてです。飯島委員、小崎委員より御欠席との御連絡をいただいております。また、代田委員、田﨑委員からは遅れて御参加との御連絡をいただいております。本日は現在のところ、当部会委員数21名のうち17名の委員にこの部会に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 なお、本日は審議事項議題10に関連して、国立研究開発法人国立成育医療研究センター教育研修センターセンター長の石黒精先生、同じく国立研究開発法人国立成育研究センター小児がんセンター血液腫瘍科診療部長の富澤大輔先生、このお二人を参考人としてお呼びしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告させていただきます。薬事分科会規程第11条におきましては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので御報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただき御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
 それでは、森部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず、事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告を行ってください。
○事務局 本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りした資料のうち、資料1~20を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。このほか、資料21として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料22として「専門委員リスト」、資料23として「競合品目・競合企業リスト」を事前に電子メールにてお送りさせていただいております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので事務局までお申出ください。
 続きまして、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料23の1ページを御覧ください。「リンヴォック」ですが、本品目は中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページを御覧ください。「スキリージ」ですが、本品目は中等症から重症の活動期クローン病の寛解導入療法及び維持療法を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページを御覧ください。「マンジャロ」ですが、本品目は2型糖尿病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページを御覧ください。「アイリーア」ですが、本品目は未熟児網膜症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページを御覧ください。「グラアルファ」ですが、本品目は他の緑内障治療薬が効果不十分な緑内障、高眼圧症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページを御覧ください。「コセルゴ」ですが、本品目は神経線維腫症1型における叢状神経線維腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 7ページを御覧ください。「アムヴトラ」ですが、本品目はトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 8ページを御覧ください。「フィンテプラ」ですが、本品目は他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないDravet症候群患者におけるてんかん発作に対する抗てんかん薬との併用療法を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 10ページを御覧ください。「リバゼブ」ですが、本品目は高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 11ページを御覧ください。「カブリビ」ですが、本品目は後天性血栓性血小板減少性紫斑病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 12ページを御覧ください。「トビエース」ですが、本品目は神経因性膀胱における排尿管理を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に関して、特段の御意見等はありませんでしょうか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものとさせていただきます。
 次に、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりです。
 議題1、リンヴォック、退室委員及び議決に参加しない委員はともになしです。議題2、スキリージ、退室委員及び議決に参加しない委員はともになしです。議題3、マンジャロ、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員です。議題4、アイリーア、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、代田委員です。議題5、グラアルファ、退室委員及び議決に参加しない委員はともになしです。議題6、コセルゴ、退室委員及び議決に参加しない委員はともになしです。議題7、アムヴトラ、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。議題8、フィンテプラ、退室委員及び議決に参加しない委員はともになしです。議題9、リバゼブ、退室委員及び議決に参加しない委員はともになしです。議題10、カブリビ、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。議題11、トビエース、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員、武田委員です。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に特段の御意見、御質問等はございますか。よろしければ、皆様の御確認をいただいたものとさせていただきます。本日は、審議事項が11議題、報告事項は8議題、その他事項1議題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移ります。なお、議事進行の都合上、議題10から始めさせていただきます。議題10、医薬品カブリビ注射用10mg製剤に関する審議に入ります。この議題10について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題10、資料No.10、医薬品カブリビ注射用10mgについて、機構より説明させていただきます。
 資料No.10の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全86ページの通し番号で5ページ、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤の有効成分であるカプラシズマブ(遺伝子組換え)は、二つのヒト化抗ヒトvWF抗体の可変領域をトリアラニンリンカーによって結合させた一本鎖二価モノクローナル抗体です。vWFは、出血時の血小板動員に重要な血漿糖タンパク質であり、血管内皮細胞で産生され、血中に分泌された超高分子量の多量体が、通常は特異的切断酵素であるADAMTS13により、標準的な分子量に切断されて機能します。
 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(以下、「後天性TTP」という)は、ADAMTS13に対する自己抗体産生に起因するADAMTS13の活性低下により、超高分子量vWFが蓄積し、蓄積した超高分子量vWF多量体と血小板が結合して、微小血管に血小板血栓を形成し、血小板消費性の血小板減少症、溶血性貧血、血小板血栓による局所虚血や臓器障害等を呈する疾患です。本剤は、vWFに結合して、vWFと血小板との結合を阻害することにより、血小板凝集を抑制すると考えられています。
 海外では、後天性TTPに係る効能・効果について、欧州では成人を対象に2018年に、12歳以上かつ体重40kg以上の小児を対象に2020年に、米国では成人を対象に2019年に、それぞれ承認され、2022年6月の時点で40か国以上で承認されています。
 今般、国内外の臨床試験成績に基づき、後天性血栓性血小板減少性紫斑病を効能・効果として製造販売承認申請されました。なお、本剤は、血栓性血小板減少性紫斑病の適応症について希少疾病用医薬品に指定されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号37ページを御覧ください。海外第III相試験として、後天性TTP患者を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。本剤の投与期間は、標準治療である連日血漿交換療法の実施期間及び連日血漿交換期間終了後30日間とされ、その後も患者の状態に応じて継続投与可能とされました。本剤の用法・用量は、投与初日は血漿交換前に本剤10mgを静脈内投与、血漿交換終了後に本剤10mgを皮下投与し、その後の血漿交換期間中は血漿交換終了後に本剤10mgを1日1回皮下投与、血漿交換期間後は本剤10mgを1日1回皮下投与することとされました。
 その結果、審査報告書の通し番号38ページ、下から2行目から記載しているように、主要評価項目とされた血小板数が正常化するまでの期間の中央値は、プラセボ群で2.88日、本剤群で2.69日であり、プラセボ群と比較して、本剤群で有意に短縮することが示されました。また、審査報告書の通し番号39ページ、表27に示したとおり、TTP関連死、TTP再発等の臨床的に重要なイベント発現に関する副次評価項目でも、本剤群でプラセボ群と比較して良好な結果が認められました。
 次に、審査報告書の通し番号41ページを御覧ください。国内では、後天性TTPの重篤性及び希少性等を踏まえ、非対照試験を実施した上で、国内外の臨床試験成績の類似性に基づき、海外第III相試験を利用して有効性等を検討する開発計画が採られました。国内第III相試験の結果、審査報告書の通し番号41ページ、下から2行目から記載しているように、主要評価項目とされた治験期間におけるTTP再発割合は6.7%であり、海外第III相試験成績及び医学専門家の意見等を踏まえて、事前に規定された成功基準である20%以下を達成しました。加えて、血小板数が正常化するまでの期間等について、海外第III相試験の本剤群の結果との類似性があると判断できることから、日本人後天性TTP患者においても、本剤の臨床的に意義のある有効性が期待できると判断しました。
 続いて、安全性について御説明します。審査報告書の通し番号57ページ以降、7.R.3、安全性についての項に示すように、臨床試験成績及び海外の製造販売後の情報から、本剤投与中は出血リスクに注意する必要があり、添付文書の各項で、出血の発現に関する注意喚起を行うことが適切と判断しておりますが、認められた有効性を考慮すると、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 次に、12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対する投与について御説明します。審査報告書の通し番号71ページ、7.R.5.5、12歳以上かつ体重40kg以上の小児における投与についての項を御覧ください。本申請効能・効果について、国内外の臨床試験において小児への投与経験はありませんが、成人で得られたデータから構築したPK-PDモデルに基づき、18歳未満の後天性TTP患者における本薬の曝露量及び反応性が推定され、12歳以上かつ体重40kg以上の小児についても、成人と同一の用法・用量が申請されました。
 後天性TTPの発症機序、病態生理学的特徴、疾患経過といった対象疾患の情報、発育状況や体重が薬物のPKに及ぼす影響、年齢と血液凝固系の成熟の関係並びに構築されたPK-PDモデルの妥当性を総合的に評価した結果、12歳以上かつ体重40kg以上の小児であれば、成人と同じ用法・用量を投与した際の曝露量、有効性及び安全性は、成人と同様であると推定できると判断しました。なお、非臨床毒性試験及び成人の後天性TTP患者への本剤投与時の知見から、本薬の作用機序に起因する出血リスク以外に、小児への投与時に特有の懸念は示唆されておらず、海外製造販売後においても、小児特有の安全性の懸念は報告されていません。
 さらに、後天性TTPは標準治療を実施したとしても、死亡に至ることのある重篤な疾患であり、本剤と同じ位置付けの既存薬は存在しないこと、小児における後天性TTPの発症率が極めて低く、本剤の開発過程において、海外第II相試験及び海外第III相試験で小児の後天性TTP患者の組入れを可能とする等、小児でのデータを得るための方策が講じられたにもかかわらず、結果として組み入れられなかったこと等を踏まえると、今後、臨床試験を実施して一定量のデータが得られる可能性が著しく低いこと等も考慮し、12歳以上かつ体重40kg以上の小児の後天性TTP患者に対して、成人と同一の用法・用量を適用し、本剤の投与対象に含めることは可能と判断しました。ただし、小児での臨床データが得られていないことを踏まえ、製造販売後には、小児への投与時のPK、有効性及び安全性に関する情報を収集し、小児における曝露量及び反応性に関する推定の妥当性を確認する必要があると判断しております。
 製造販売後調査については、小児での検討に加え、成人も含めた全投与症例を対象に、本剤投与時の安全性、抗血栓薬との併用時の安全性等に関する情報を収集する使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しております。
 なお、製剤写真外箱の展開図について修正が生じたことから、修正後の製剤写真外箱の展開図について、追加で事前送付させていただいたことを御報告します。
 以上のような検討を行った結果、本剤は承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。本件は、参考人の先生をお二方お招きしております。本議題について御発言をお願いします。まずは、石黒先生から御発言をお願いしてもよろしいですか。
○石黒参考人 成育の石黒でございます。よろしくお願いいたします。今、機構から御紹介いただきましたように、小児の後天性TTPは極めて稀で、年間10人程度と考えられております。
 ただし、一旦発症しますと、従来の治療法であるリツキシマブ、血漿交換、ステロイドをもってしても制御不能になることがありますので、本薬剤は大きく期待されております。問題点としては、治験のときに小児が組み入れられていないことです。これは非常に小児が希少のため、組み入れることが難しかったという事情によるものですので、その点は御配慮いただければと思います。私から申し上げることは以上でございます。
○森部会長 ありがとうございました。続きまして、富澤先生から御発言をお願いします。
○富澤参考人 国立成育医療研究センターの富澤でございます。ただいま石黒の方からも発言がありましたとおり、この疾患は小児では非常に稀です。私自身、20年間この領域に携わっておりますが、実は後天性TTPの小児患者さんというのは1人も診たことがないという状況です。むしろ、我々は先天性のTTPは比較的診療する機会があって、それでも私自身数例ということでして、本当に100万人に1人と言われており非常に稀ですので、新たに別途、小児の治験を実施するというのは実行可能性という点からは不可能だと存じます。
 もちろん、実際のデータがないという条件に関しては、いろいろ御議論のあるところと存じますが、後天性TTPという病気自体が、小児と成人とで発症機序やいろいろなメカニズムに差があるのかというと、基本的には全く、何か小児特有の病態があるとか、小児特有の臨床像があるのかといわれると、そういったことは全くございませんので、少なくともそういう観点からは、成人のデータを外挿してということは可能だろうと思います。
 後は、こういった抗体医薬品、もちろんPK-PDに関しても、データのないところで推測でものを言うことは慎重でないといけないことは重々承知はしておりますが、小児と成人とで大きく差があるものではないと思いますので、そういった観点からも、稀ではありますが、小児の必要な患者さんがいらっしゃったときに、適切にきちんと保険診療下で使用できるということは、疾患の重篤性ということから考えても必要なことではないかと思いますので、その点を十分に御考慮いただいて御審議の方をお願いできたらと思います。
 もう一点だけ付け加えますと、幾つか海外から、例えば英国の方からは、リアルワールドデータとか症例報告レベルでは、この薬剤に関しては幾つか文献が出ていますが、そういった少数例の報告ですので、パブリケーションバイアスということも十分考慮しないといけないのですが、少なくとも有効性とか安全性に関して、成人を対象とした臨床試験データ等を含めて大きな差があるということはなく、多くの患者さんで有効であって、安全立証できているという状況を踏まえますと、先ほどの私の意見を裏付けている状態なのではないかと考えております。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。今、石黒先生、富澤先生から御発言をいただきました。委員の先生方から、御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。御意見、御質問は特にございませんでしょうか。石黒先生、私から一つお伺いしたいことがあります。後天性TTPの病態は、特に小児と成人で大きく違いはないと思いますが、背景となる健康状態、基礎疾患等、何か小児での特徴はございますか。
○石黒参考人 原則ございません。ただ、小児では先天性免疫異常症が基礎にあり得えます。また思春期の場合はリウマチ性疾患を背景とすることはあり得ますので、その点は成人のTTPとは若干違うかと思います。ただ、起きている病態は同じです。
○森部会長 この薬剤を小児に使用する上で、支障になることは今のところ特に想定されていないということでよろしいですか。
○石黒参考人 はい、想定しておりません。先ほど言い忘れましたが、私、40年小児科医、血液をやっていますが、経験した症例はたったの2例ですので、それぐらい稀ではあるのです。非常に苦心した覚えがあります。
○森部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生の方からの御発言は特段ありませんでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加は御遠慮いただくことになっております。本議題について承認を可としてよろしいですか。御異議はないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。参考人の先生方、貴重な時間をどうもありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
──石黒参考人、富澤参考人退出 ──
○森部会長 続きまして、議題1に進ませていただきます。議題1、医薬品リンヴォック錠に関して、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品リンヴォック錠45mgの製造販売承認の可否、同錠7.5mg、同錠15mg及び同錠30mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。資料につきましては、資料No.1、リンヴォック錠7.5mg、同錠15mg、同錠30mg、同錠45mgの審査報告書を御覧ください。
 本邦における潰瘍性大腸炎の薬物治療は、治療指針等に基づき、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤等が使用されており、主に重症度に応じて治療法が選択されています。
 本薬はJAK阻害剤であり、本邦では、2020年に関節リウマチ、2021年に関節症性乾癬及びアトピー性皮膚炎、2022年に強直性脊椎炎に係る効能・効果でそれぞれ承認されております。今般、既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした国際共同第II相試験及び第III相試験成績に基づき、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、2022年3月時点で、本薬の関節リウマチに係る効能・効果は欧米等77か国で、潰瘍性大腸炎に係る効能・効果は米国を含む2か国でそれぞれ承認されております。
 本品目の専門協議では、本日の配布資料No.22に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、審査報告書の通し番号20ページの表18を御覧ください。導入期の有効性に関して、国際共同第III相試験(M14-234試験)SS2では、主要評価項目である8週時のAdapted Mayoスコアによる臨床的寛解率について、本薬45mg群ではプラセボ群に対する優越性が検証されました。続きまして、審査報告書の通し番号24ページの表23を御覧ください。国際共同第III相試験(M14-675試験)においても、主要評価項目である8週時のAdapted Mayoスコアによる臨床的寛解率について、本薬45mg群はプラセボ群に対する優越性が検証されました。
 次に、審査報告書の通し番号28ページの表31を御覧ください。導入期で一定の治療反応が認められた患者を対象とした維持期の有効性に関する検討が、国際共同第III相試験(M14-234試験)SS3で実施され、主要評価項目である52週時のAdapted Mayoスコアによる臨床的寛解率について、本薬30mg及び15mg群は、いずれもプラセボ群に対し優越性が検証されました。日本人集団におきましては、症例数が限られていることに留意する必要はありますが、導入期は審査報告書43ページの表53、維持期につきましては審査報告書45ページの表56にそれぞれ記載のとおり、全集団と同様の傾向が認められております。
 以上より、機構は、導入期について本薬45mgの有効性が示されたと判断しました。また、機構は、維持期について本薬15mg及び30mgのいずれについても有効性が示されたと判断しました。
 なお、長期間の投与の可能性がある維持期においては、有効性が認められる用量範囲内では低用量を選択し、曝露を減らすことが適切であることから、維持療法における通常の用法・用量として、本薬15mgを1日1回経口投与と設定することとし、患者の状態に応じて、本薬30mgを1日1回投与することができると設定することが適当と判断いたしました。
 安全性に関しては、審査報告書の通し番号47、48ページの表59及び表60を御覧ください。国際共同第III相試験の導入期及び維持期の有害事象の発現状況について、本薬群はプラセボ群に比べ問題となる傾向は認められませんでした。また、国際共同第III相試験で認められた事象は、いずれも本薬の現行の添付文書で注意喚起されており、既承認の効能・効果と同様に留意して対応することで、安全性は許容可能であると考えました。
 以上、機構での審査の結果、既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、効能・効果等の追加について承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
 なお、本申請は、新効能及び新用量医薬品としての申請であるものの、初回承認時の再審査期間の残余が4年以上あることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は、既に付与されている再審査期間の期限である令和10年1月22日までとすることが適当と判断しました。また、リンヴォック錠45mgにつきましては、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。平石先生、どうぞ。
○平石委員 新潟聖籠病院の平石でございます。本薬について質問させていただきます。潰瘍性大腸炎の治療については、先ほど御説明がありましたとおり、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調整薬、バイオ製剤、JAK阻害薬という薬剤が使われるわけですが、特に免疫調整に伴って起こってくる、例えばB型肝炎の再活性化は、診断治療が遅れますと、時に致死的な結果を招くことが報告されております。それはステロイド、免疫調整薬あるいはバイオ製剤の投与で生じるわけですが、本薬について、そういったB型肝炎の再活性化に係る副事象等の報告はあるのかということと、もしあるとするならば、それに対する警告はどのように提示されるのかをお伺いしたいと思います。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 潰瘍性大腸炎患者を対象とした試験成績の中では、B型肝炎に関する有害事象等は認められていません。また、添付文書では、9.1.5項のB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者の所で注意喚起しています。
○平石委員 そうしますと、日本肝臓学会でもB型肝炎の再活性化については、指針が示されておりまして、これは本薬に限らず、免疫調整をかける場合には、それが極めて重要な副事象になりますので、その指針に従ってフォローを行うということが含まれているということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そのように理解しております。
○平石委員 どうもありがとうございます。
○森部会長 機構の方にお伺いします。今、伺いましたB型肝炎については、今後、資材等で作成される中に注意喚起が含まれている可能性はございますか。いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 資材の方に含まれております。
○森部会長 分かりました。そのほかの御意見、御発言はございますでしょうか。それでは、議決に移らせていただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようでございますので、承認を可といたしまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題2に移ります。審議事項議題2、医薬品スキリージ点滴静注につきまして、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品スキリージ点滴静注600mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 本薬は、ヒトインターロイキン-23のp19サブユニットに対するモノクローナル抗体であり、皮下注75mg及び150mg製剤が既存治療で効果不十分な尋常性乾癬等を効能・効果として承認されています。今般、既存治療で効果不十分な中等症から重症の活動期クローン病患者を対象とした臨床試験成績等に基づき、静注600mg製剤と皮下注360mg製剤の製造販売承認申請がなされました。なお、2022年7月時点で、本薬は80の国又は地域で承認されており、クローン病に係る適応では、2022年6月に米国で承認されています。
 本品目の専門協議では、本日の配布資料No.22に示します専門委員を指名しています。
 以下、本薬の有効性、安全性について臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書の通し番号19ページの表16を御覧ください。本薬静脈内投与の導入期における効果を検討した国際共同第III相試験において、主要評価項目である12週時の臨床的寛解及び内視鏡的改善を達成した被験者の割合について、本薬各群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。
 続いて、審査報告書の通し番号25ページの表23を御覧ください。本薬静脈内投与により臨床的改善が認められた患者を対象とし、本薬皮下投与の維持期における効果を検討した国際共同第III相試験において、主要評価項目である52週時の臨床的寛解及び内視鏡的改善を達成した被験者の割合について、360mgSC群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。これらの試験の日本人集団の結果については、審査報告書の通し番号35ページの表35、通し番号38ページの表39に記載しており、全集団の結果と同様の傾向でした。
 以上より、機構は、導入期は本薬600mgを4週間ごとに3回静脈内投与、維持期は本薬360mgを8週間隔で皮下投与する用法・用量での有効性は示されたと判断しました。
 また、審査報告書の通し番号52ページの「7.R.6.3 効果減弱時」の項を御覧ください。維持期における効果を検討した臨床試験では、本薬の皮下投与中に効果が減弱した場合には、本薬1,200mgの単回静脈内投与、レスキュー治療を施行することが可能とされました。次のページの表64に示しますように、レスキュー治療後に臨床的寛解又は内視鏡的改善を達成した被験者が一定割合認められました。以上の結果から、本薬の皮下投与中に効果が減弱した場合に、本薬1,200mgの単回静脈内投与を設定することは可能と考えました。
 続いて、審査報告書の通し番号56ページの「1.3 用法・用量について」の項を御覧ください。効果減弱時の用法・用量について、専門協議において専門委員から支持する意見があった一方、臨床試験における投与実績を踏まえると、本薬におけるレスキュー治療を設定すること自体を否定するものではないが、臨床試験におけるエビデンスは限られていること、及び本薬600mgが検討されておらず、投与量を導入期の倍量である1,200mgと設定する積極的な理由が乏しいこと等から、レスキュー治療に関する用量としては1,200mgのみに限定せず、「1,200mgまでを単回点滴静注することができる」と情報提供することが適切ではないかと考えるとの御意見がありました。
 以上の専門協議での議論を踏まえた機構の判断について御説明します。レスキュー治療における本薬の用量(1,200mg)については、臨床試験において一定の有効性及び安全性は確認されており、1,200mg以外の用量は検討されていないため、レスキュー治療における本薬の用量は1,200mg単回投与と設定することは妥当と考えております。ただし、臨床試験の導入期において、600mgと1,200mgの3回投与の有効性が同程度であったことを踏まえると、レスキュー治療についても1,200mgよりも低い用量で効果が得られる可能性もあるため、レスキュー治療の用量については引き続き検討するよう申請者に指示いたしました。
 また、レスキュー治療に関するエビデンスは限られていることから、個々の患者の状態や臨床試験成績等を踏まえて投与の要否を検討する必要があり、添付文書の用法・用量に関する注意の項において、レスキュー治療の必要性を慎重に検討する旨を注意喚起することが適切と判断しました。
 安全性については、審査報告書の通し番号41~49ページに記載しています。臨床試験において、本薬群とプラセボ群との間に臨床上問題となる傾向がないことを確認しました。また、本薬で特に注目すべき有害事象とされた感染症、主要心血管イベント、過敏症及びアナフィラキシー反応、注射部位反応、肝関連事象並びに悪性腫瘍の発現状況についても、臨床的に問題となる傾向は認められていないことを確認しました。これらを踏まえ、添付文書における注意喚起内容は、既承認の効能・効果である尋常性乾癬等に準じて設定することが適切と考えました。以上より、本薬の安全性は許容可能と判断しました。
 以上の審査の結果、既存治療で効果不十分な中等症から重症の活動期クローン病に対する有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、機構は、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。再審査期間について、静注製剤は新投与経路医薬品であることから6年、皮下注製剤は静注製剤の投与後に使用する薬剤であることから、静注製剤と同様に6年間と設定することが適切と判断しました。いずれの品目も生物由来製品に該当し、製剤は劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。御説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がございましたらお願いいたします。
○武田委員 山梨大学の武田でございます。統計の解釈の仕方に関してお聞きしたいのですけれども、通し番号15ページの表12の統計解析なのですが、こちらは、CMH検定で有意水準両側10%、p値が0.0955で、「統計学的有意差が認められた」と書いてありまして、ここがちょっと引っ掛かったのです。それ以外の治験のデータで、例えば通し番号25の表23に関しては、有意水準両側5%で有意差があったという記載ですよね。それから、通し番号31ページの表31に関しても、有意水準2.6%で、p値は0.001とあります。この検定のやり方は余り変わらないと思うのですが、なぜこの有意水準を両側10%で表12を認めたのか、この辺の説明をしていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 表12は、第II相試験の結果です。こちらは検証的な位置付けではなく、用量反応性や用量の関係性を検討するために実施した試験ですので、こちらの有意水準10%の結果をもって有効性が示されたという判断はしておらず、あくまでも第II相試験としてはこのような結果であったということで記載しております。
○武田委員 そうであれば、「統計学的に有意差が認められた」という記載は直すべきではないでしょうか。傾向はあったとかで、これは有意差はないですよね。
○医薬品医療機器総合機構 第II相試験は、事前に有意水準10%と規定して実施されていますので、その規定は満たしたという結果と理解しております。
○武田委員 私も幾つか臨床治験のPIをやっていますけれども、有意水準10%、II相でも10%の差があるということを臨床試験前に決めていることは多分ないと思うのですが。
○森部会長 今、柴田委員も手を挙げていらっしゃいます。武田委員、柴田委員の御発言を認めてよろしいですか。
○武田委員 どうぞ。
○森部会長 では、柴田先生の御発言をお願いいたします。
○柴田委員 柴田です。武田先生の御指摘、この結果を余り強く解釈すべきではないという御指摘はごもっともなのですが、臨床試験において探索フェーズや希少疾患等で有意水準をあらかじめ緩めて設定するということは比較的頻繁に行われておりまして、こちらも、私はプロトコルの確認をしたわけではないのですが、機構の方が確認してプロトコルの段階からこのような意思決定をするという設定であったのであれば、有意水準両側10%で有意であったという、両側10%という基準も含めて有意であったと記述されるのであれば、通常の表現方法としては間違いではないというように考えている次第です。
○武田委員 探索的なもので、それである程度の傾向を見たいというところであれば納得できますので、こちらの「統計学的有意差が認められた」という記載を直していただいた方がいいのではないかという、個人的な意見でございます。どうもありがとうございました。
○森部会長 機構の方から補足はございますか。
○医薬品医療機器総合機構 補足等はございません。御意見ありがとうございました。今後の報告書の作成の際には気を付けたいと思います。
○武田委員 どうもありがとうございます。
○森部会長 機構の方、私からですが、一つ教えてください。これは米国でも承認されている薬剤ということで、資材には1.6として、外国における使用状況等に関する資料を添付いただいております。添付文書の所に、本薬剤の安全性に関する情報としまして、英文の添付文書を御確認いただきますと、右列のWARNINGS AND PRECAUTIONSの上から4番目に、クローン病に使った場合の肝障害という事項があります。これは、クローン病の症例で、トランスアミナーゼが上昇した症例があったということなので、12週間程度は肝機能をしっかりモニタリングをするようにということが付記されていますが、これは日本で解析した臨床の症例の中でも、こういった事例があったということなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 こちらは国際共同試験で認められた症例ですので、日本での申請データにも含まれている症例と理解しております。
○森部会長 症例の概要は、機構は把握されていらっしゃいますか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。把握しております。
○森部会長 トランスアミナーゼはどのくらい上昇したのでしょうか。正常の20倍程度という記載があったのですが。
○医薬品医療機器総合機構 本件につきましては、個別の症例経過を細かく確認しております。本来、細かいデータも見ていただいた方が分かりやすかったかもしれませんが、概要としましては、本薬静注製剤の投与開始2回目以降、軽度の発疹が1回、1週間後に出ていますが、消失しております。そこで投与は中止されているのですけれども、その後50日後に発疹がまた出現しまして、入院の経過をたどっております。その際に、ALTが2,000前後、ASTが1,000前後まで上昇しておりました。ちなみに、ビリルビンは2前後でした。その後、発疹の治療のためにステロイド剤が投与され、その効果があったのか、あるいは自然経過なのか分かりませんが、3日後には速やかにALT及びASTが改善したという経過をたどっています。
 以上から、一般的な薬剤性の肝障害としては、投与終了後からかなり時間がたってから発現しておりますことと、余りにも経過が速やかであるということで、何らかのウイルス感染の一過性の悪化のような、発疹を伴うような状態などが考えられるのではないかと、機構としては複数の者で判断した次第でございます。
 米国FDAで、この症例をどのように解釈されたか、また、治験担当医師は因果関係は否定できないという判断をされておりますので、そこはそれぞれの判断を尊重したいと考えておりますが、機構としまして、この1例をもって、強く肝障害を疑い、注意喚起を出すことには至らないのではないかというように考えた次第でございます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。委員の先生方から、今の御発言につきまして、追加の御意見や御質問はございますでしょうか。現在の日本の添付文書では、特に肝障害に関する注意等の発言はありませんが、今の肝障害の発例については、臨床成績の所の安全性情報に関して何か追記などはございますか。記載はございましたでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書の方には、具体的には書いてございません。
○森部会長 そうですか。このタイムコースからいうと因果関係が、ただ、否定はされていないということでしたか。
○医薬品医療機器総合機構 治験担当医師は、因果関係は否定はできないという判断でございますが、企業の説明としては、ほぼないという判断でして、データシートの方にもこの件に関して、肝障害の記載はないという状況でございます。
○森部会長 本剤を2回投与を行って、発疹で中止して、50日後とおっしゃいましたかね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。最終投与から50日後でございます。
○森部会長 50日後で、トランスアミナーゼが2,000以上の上昇で、短期間で改善したという事例です。
○医薬品医療機器総合機構 臨床的に100%否定はできないというのは、そのとおりかと思いますが、この1例で判断するのは非常に悩ましいのではないかと考えておりまして、臨床試験の全般的なデータを見ましても、そのほかプラセボとの関係や、用量反応等、強く肝障害について何かしらの注意喚起をすべきというような材料が、今のところ通常の判断では出てきておりませんので、今、添付文書では、特に記載をしていない状況でございます。
○森部会長 程度としては強いですよね。トランスアミナーゼが2,000ですからね。
○宮川委員 はい、やはり注意喚起は。
○森部会長 注意喚起はどこかで。
○宮川委員 どこかで注意喚起は必要なのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
○森部会長 どこの箇所への記載が適切ですかね。
○宮川委員 どこがいいかということが一番の問題点だろうと思います。何も語らないのはいけないので、語るのであれば、どこに挿入するかということを検討されるのが一番いいのではないでしょうか。
○森部会長 少なくとも、この薬剤を投与された方が治験期間中に比較的高度の肝機能障害を呈したということを、どこかに記載していただくことが望ましいと思いますが、その場合はどこが適切でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 やはり細かい経過等も情報提供した方がよいと思いますので、資材で丁寧にこういった症例があって、こういった経過でしたというのを御説明するのがよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○森部会長 詳細な経緯はそれでいいと思うのですが、そういった肝障害があったということの概要だけを添付文書のどこかに記載していただくことが望ましいと思います。肝障害が発現したのは治験期間中ですか。中止して治験が終わった後ですか。
○医薬品医療機器総合機構 中止はしておりますが、その後の安全性のフォローは行っていたという状況かと思います。
○森部会長 安全性の観察中ですね。それでは、治験の臨床成績の中に含まれる内容だと思いますので、添付文書には、トランスアミナーゼの上昇とビリルビンの軽度上昇を来した症例が1例あったということを書いていただきまして、資材で詳細に1例提示いただくということがよろしいのではないでしょうか。このような作用機序を持つ薬剤の肝障害については、まだ十分に知見がないところでもありますので、現時点で因果関係の判断は難しいものも、御記載いただくことがよいと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。そうしましたら、こういった症例が認められた旨を、添付文書に記載できないか検討いたします。また、資材において、より丁寧に説明するという方針で対応したいと思います。
○森部会長 委員の先生方から、今の追加する方針に特に御意見等はございますか、いかがでしょうか。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。同意いたします。
○森部会長 御異論はございませんでしょうか。では、機構の方、是非お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 そのほかに追加の御発言、御質問はございますでしょうか。では、よろしければ、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようでございますので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題3、医薬品マンジャロ皮下注の内容につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料No.3、医薬品マンジャロ皮下注2.5mgアテオス他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 本剤は、チルゼパチドを有効成分とする週1回皮下投与用の2型糖尿病治療薬です。本剤は、GIP受容体及びGLP-1受容体に対するアゴニスト作用を有し、膵β細胞の受容体と結合することで、グルコース依存的にインスリン分泌を促進させること等が期待されます。本剤は、米国では2022年5月に承認され、欧州では2022年7月に、EMAのヒト用医薬品委員会(CHMP)で、製造販売承認に対して肯定的意見が採択されています。
 本品目の専門協議では、資料No.22に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書38ページの表37を御覧ください。2型糖尿病患者を対象に、本剤の単独療法における国際共同第III相試験が実施され、主要評価項目とされたベースラインから投与40週時までのHbA1c変化量について、いずれの本剤群もプラセボ群に対する優越性が示されました。また、審査報告書41ページの表41を御覧ください。本剤の単独療法における国内第III相試験が実施され、主要評価項目とされたベースラインから投与52週時までのHbA1c変化量について、いずれの本剤群もデュラグルチド0.75mg群に対する優越性が示され、投与52週間にわたって効果の持続も確認されました。
 併用療法については、審査報告書44ページの表44を御覧ください。経口血糖降下薬単剤による治療で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者を対象に、国内第III相試験が実施され、いずれの併用療法群においてもHbA1cの低下が認められました。また、審査報告書49ページの表47を御覧ください。インスリンとの併用療法における国際共同第III相試験が実施され、主要評価項目とされたベースラインから投与40週時までのHbA1c変化量について、いずれの本剤群もプラセボ群に対する優越性が示されました。以上の結果等を踏まえ、2型糖尿病に対する本剤の有効性は示されていると判断いたしました。
 安全性については、審査報告書55、56ページの表55~58を御覧ください。それぞれ本剤単独療法、経口血糖降下薬との併用療法、インスリン製剤との併用療法における臨床試験での有害事象の発現状況を示しています。単独療法で実施された試験結果から、本剤5mg群、本剤10mg群及び本剤15mg群の有害事象及び副作用の発現割合に大きな違いは認められず、デュラグルチド0.75mg群との比較においても、胃腸障害を除き、有害事象の発現が高い傾向は見られませんでした。また、各併用療法においても、低血糖を除き、各併用療法間で有害事象の発現状況に大きな違いは認められませんでした。本剤の作用機序、臨床試験成績等を踏まえ、低血糖、胃腸障害、体重減少、心血管系リスク等の注目すべき事象について個別に検討した結果、これらの事象に対する適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤は承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 それでは、委員の先生方から御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。
○堀委員 堀です。よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞお願いいたします。
○堀委員 私からは、お送りいただきましたマンジャロの製剤の写真についてお尋ねいたします。今、お送りいただきましたマンジャロ製剤の写真を拝見していますと、表しか見えていないのですが、注入器の所に1週間に1回ということが書かれている所が見えなかったのですが、1週間に1回ということは書かれているのでしょうか。確認です。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。ラベルに記載があります。
○堀委員 ありがとうございます。また、外箱の所にも、マンジャロの製剤の名前の上に週1回投与とは書いてあるのですが、この外箱のサイズというのは画面で見るサイズよりももう少し大きいサイズなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 実物が手元にあるのでWebカメラで画像を共有いたします。ペンがこれぐらいの大きさでして、これが2本入る箱なので、結構大きな箱になると思います。
○堀委員 ありがとうございます。患者にしてみますと、週1回投与というのは結構忘れてしまうこともあるかと思うので、表示の確認させていただきました。後、患者向けの資材ですが、添付文書の7.2で、例えば、忘れてしまった場合などのときにはどうしたらいいというようなことが書かれていると思うのですけれども、それは資材にはきちんと大きく書かれているのでしょうか。患者向けの資材に関してお尋ねいたします。
○医薬品医療機器総合機構 投与方法に関するリーフレットを作成する予定があると申請者から聞いております。そちらには投与方法であったり、投与を忘れてしまった場合に関する内容も記載される予定です。
○堀委員 分かりました。どうもありがとうございます。安心いたしました。私からは以上です。
○森部会長 デバイスについて私からも一つ教えてください。マンジャロの製剤2.5mgから15mgまで6製剤、写真を拝見しているのですが、視力障害の方が識別が可能な、何か触って分かるような差別化されている所はございますか。押すボタンにマークが付いているのはインスリンではよくあるのですが、この製剤はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。アテオスのデバイスについては、視覚障害の方が触って分かるような工夫というのはされていない状況です。そのため、補助いただく方にラベルを見ていただいて、投与の補助をしていただくということになろうかと思います。
○森部会長 よく分かりました。ありがとうございます。そのほか、先生方から御質問はございませんか。では、私から、マンジャロは、この薬剤もFDAで既に承認をされており、添付文書については、1.6に資料の添付もいただいているところです。海外で注意喚起されている項目には、糖尿病網膜症の悪化リスクに関することや、胃腸障害に加えて、胆石や胆嚢炎等の急性胆嚢疾患に関する注意点並びに胃腸障害に伴った急性腎障害のことが比較的大きく提示されているという背景がございます。今回の日本の添付文書の作成に当たって、これらの点について何らかの注意喚起の御配慮をいただくことは可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。まず、急性胆嚢疾患と糖尿病網膜症の件ですが、国内ではデュラグルチド対照、海外ではセマグルチド1mg対照の臨床試験が実施されており、有害事象の発現状況は本剤群と対照群で大きな違いはないところです。一方で、御指摘のように、GLP-1受容体作動薬での胆道系のリスクや、糖尿病網膜症の悪化というのは一般的に知られているリスクかと思いますので、臨床試験でも実際にこれらの事象が発現していることを鑑みて、マンジャロについては「重要な基本的注意」と「その他の副作用」の項に記載をさせていただくことはいかがでしょうか。胃腸障害から脱水を来して急性腎障害に至るリスクに関する注意については、現在、「その他の副作用」の項に脚注で記載しておりますが、ここでは分かりづらいということであれば、記載場所の変更を検討させていただきたいと思っております。
○森部会長 なるべく分かりやすい場所に御記載いただくといいかと思いますので、こちらも是非御検討をと思います。もう一点、血圧低下が見られたという報告があり、詳細に解析いただいていますが、日本人の方が少し血圧低下が起こりやすい傾向はございますか。
○医薬品医療機器総合機構 デュラグルチド0.75mgと比較した国内試験においても、海外試験成績と比較して日本人の方が少し血圧低下が起こりやすいかもしれないという成績は得られているかと思います。そのため、「その他の副作用」の項に「血圧低下」と記載した上で、血圧低下が見られた場合には気を付けるようにとする注意も記載させていただいております。
○森部会長 特にその中でも、一部の患者さんには収縮血圧が90mmHgを下回り、ベースラインから20mmHg以上低下した症例が若干例、数パーセントいらしたことも詳しく解析していただいていて、実臨床上それだけの血圧低下が起こりますと、やはり患者さんの体調に影響したり、慎重な注意喚起が必要なケースが生じ得ると思われます。記載していただいた場所は何ページでしたか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の75ページの下の方にございます。
○森部会長 75ページの下、少々お待ちください。先生方にも少し御確認いただきたいのですが、特に大きく低下した方の割合等をお示ししていただいています。数パーセントではありますが、こちらのような方も一部いらっしゃるということを鑑みますと、血圧低下についても分かりやすく注意喚起していただきたいと考えておりますので、添付文書にその旨の御配慮をいただくということは可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど御指摘いただいた急性腎障害の脚注と、「その他の副作用」に記載しております血圧低下の脚注の内容の記載場所については、もう少し上の項に移動することを検討させていただきたいと思います。
○森部会長 どうもありがとうございます。そのほか、委員の先生方から御発言等はございますでしょうか。そのようにして、この薬剤がより安全に使用されるような配慮をして、今のような指摘点を分かりやすく追加いただくということでよろしかったでしょうか。そのほか、先生方から特に御発言がないようでしたら、議決に入りたいと思います。なお、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。では、御異議ないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、続いて議題4、医薬品アイリーア硝子体内注射液に関して、機構から概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。よろしくお願いいたします。議題4、資料No.4、医薬品アイリーア硝子体内注射液40mg/mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より説明させていただきます。
 資料No.4の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、5/42ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、ヒト免疫グロブリンG1のFcドメインに、ヒト血管内皮増殖因子、VEGF受容体の細胞外ドメインを結合した組換えタンパク質であり、本邦において、2012年9月に中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性を適応として承認されて以降、成人の各種眼科疾患に対して承認を取得しています。
 本剤は、未熟児網膜症の病態生理において重要な役割を果たすことが明らかになっているVEGFを阻害することで、未熟児網膜症に対して治療効果を示すことが期待されたことから、2019年9月より臨床試験が開始され、今般、未熟児網膜症に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。2022年7月現在、本剤が未熟児網膜症に対して承認されている国又は地域はなく、欧州では現在審査中となっています。なお、本邦では、同じ未熟児網膜症に対して、VEGF阻害薬であるラニビズマブが承認されています。
 本品目の審査に関して、専門委員として、資料No.22に記載されております4名の委員を指名いたしました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。9/42ページ、表2を御覧ください。国際共同第III相試験としては、標準治療の一つである網膜光凝固術を比較対照とした無作為化非遮蔽並行群間比較試験である20090試験が実施され、その20090試験で試験治療を受けた患者の追跡調査を行う長期継続試験である20275試験が実施されました。
 まず、有効性について説明いたします。10/42ページ、表3を御覧ください。20090試験の本剤群での主要評価項目とされた「試験治療開始から24週目に活動性の未熟児網膜症がなく、かつ不良な形態学的転帰もない被験者の割合」は82.7%でした。本邦における主要解析としては、事前に設定された閾値との比較に基づく有効性評価が計画され、本剤群における奏効割合の両側95%信頼区間の下限値72.2%が、事前に規定された閾値の66%を上回ったことから、試験の成功基準を満たしました。なお、閾値は、未熟児網膜症患者を対象に先行して実施されたラニビズマブと網膜光凝固術の比較試験であるRAINBOW試験における網膜光凝固術群の成績66.2%を参考に設定されました。
しかしながら、表3の1行上の「なお」から始まる文章の記載のとおり、20090試験で比較対照とされた網膜光凝固術における奏効割合は84.2%であり、閾値設定に用いたRAINBOW試験における網膜光凝固術群の成績より高値を示したこと等を踏まえると、本邦における主要解析に基づく有効性評価には限界があると考えられたことから、当該主要解析以外の結果も踏まえて本剤の有効性を検討しました。
 38/42ページの下から9行目「上記の意見を踏まえ、機構は」から始まる段落を御覧ください。20090試験での群間比較は探索的な解析とされており、結果の解釈には注意が必要ですが、本剤群から網膜光凝固術群の奏効割合を引いた群間差の点推定値は-1.5%、両側95%信頼区間は-16.0%~+12.9%であり、網膜光凝固術群と比較して本剤群の奏効割合が大きく劣る傾向は認められませんでした。また、20090試験における副次評価項目の結果及び20275試験における1歳時点の暫定的な結果においても、本剤群と網膜光凝固術群で有効性が大きく異なる傾向は認められませんでした。さらに、網膜光凝固術では、長期的な眼合併症のリスクが懸念されること等を考慮すると、20090試験の本剤群で認められた奏効割合は、臨床的意義が期待できるものと考えられました。以上より、機構は、本剤の未熟児網膜症に対する有効性は臨床的に期待でき、抗VEGF療法の一つとして本剤を医療現場に提供する意義はあると判断しました。
 続いて、安全性について説明いたします。20090試験及び20275試験における眼及び眼以外の有害事象の発現状況について、ページを戻って23/42ページの表11と、24/42ページの表12を御覧ください。網膜光凝固術群との比較において、本剤群で臨床上大きな問題となるような安全性上の懸念は認められず、また、未熟児網膜症又は早産に起因する可能性がある事象を除けば、既承認の成人疾患患者と明らかに異なる安全性上の懸念は示唆されませんでした。以上より、既承認効能と同様の適切な注意喚起等が行われることを前提とすれば、本剤の未熟児網膜症患者に対する安全性は許容可能と判断しました。ただし、本剤のVEGF阻害作用から懸念される神経発達への影響を含めた長期的な安全性については、被験者が5歳になるまで追跡調査を行うと計画されている製造販売後臨床試験等において、適切に情報収集する必要があると考えております。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本申請は新効能・新用量医薬品としての申請であることから、再審査期間は4年とすることが適切と判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問がございましたら、お願いいたします。それでは、本議題については、今回の有効性の判定に関して、柴田委員に御発言をいただく準備をさせていただいておりました。柴田先生、御意見をいただいてよろしいでしょうか。
○柴田委員 はい。あらかじめコメントをお送りさせていただきました。今回、対象疾患の数、患者さんの数などを考えると、厳密な臨床試験が行い難い状況であるということは理解できます。そのような場合に、単群の試験に基づいて有効性を評価せざるを得ないという状況があるということも理解できます。そのような背景に基づき、企業の方と事前に相談をして、単群の解析、試験として計画をするという判断をされること自体には、著しい違和感を覚えることはありません。
 一方で、その相談の過程で、国際共同試験として実施するに当たり、2対1割付けではあるけれどもランダム化して試験を行うことになったという情報を得て、そうでありながら単群の試験として解析を行うという判断に拘泥された機構の判断の根拠を教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。今回、先生より御指摘いただいているように、日本と日本以外で異なる主要解析を行う計画に変更になった後に、再度、相談を受けております。その議論においては、欧州での試験デザインの変更を受けて、○○○○の○○○○○○○するとの提案は○○○から○○○○○○○こと、一方で、前回相談時の議論に基づいて、○○○○の○○○○においてより適切な○○等を設定するとの提案がなされたことを踏まえ、本邦においても欧州と同様の主要解析を設定するよう、機構から積極的な提案は行わなかったという経緯でございます。
○柴田委員 素朴な疑問なのですが、相談記録を拝見しましたけれども、1回目の相談のときに、機構側もできれば○○○○○○○○がいいということはコメントされていたと思います。それで、それができないので○○○試験でやろうという話になっているわけですが、それができるということになったのですから、それであれば当初の機構の予定どおり、その全体の国際共同治験の方針に従って、○○○○を○○○○○○○○した○○との○○○○○○○結論を導くという○○○○に変えるという議論がなされるのが自然ではないかと思うのです。というのは、○○の○○と○○○○○○○○○があったときに、どちらに基づいて、どちらを信頼して、あるいはどちらをより重視して意思決定されるかという質問なのですが、そこのところが今の御説明をもってしてもよく理解できなかったので、補っていただくことができればお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。先生の御指摘はごもっともと考えておりまして、経緯としては、先ほど機構から申し上げたとおり、今回、相談を2回実施しております。1回目の相談の中で○○の○○とすることでおおむね合意に至っておりましたが、課題として、○○で実施するのであれば試験の○○○○は○○○に○○○○○ではないかという議論があり、2回目の相談の際には、○○○○の○○○○においてより○○な○○等を設定するとの提案が申請者よりなされたところです。一方で、2回目の相談では、海外向けの主要解析で対照群を置いた解析を実施するということは把握しておりまして、今、振り返ってみますと、先生の御指摘のとおり、なぜ日本と海外で異なる解析のままとしたのかという疑問が生じるのは当然のことと思います。しかしながら、当時の判断としては、相談の中での機構の意見の一貫性や、相談者と一度合意に至っているという事実を重視して、日本向けの主要解析について単群を前提とした計画とすることを受け入れたものと考えております。
 ただし、審査報告書にも記載いたしましたが、今回の20090試験では、当該試験の網膜光凝固術群の成績から、ラニビズマブのRAINBOW試験の網膜光凝固術群の成績に基づき事前に設定した閾値の妥当性に疑義が生じている状況です。結果的に本剤の有効性評価が難しくなってしまったということで、単群を前提とした評価には一定の限界があったと認識しております。お答えになっていないかもしれないのですが、経緯というか、機構の考えとしては、今申し上げたような内容となります。
○柴田委員 ありがとうございます。資料を拝見する限り、閾値は○○○○○であったのが66%になったと書いてあったと記憶しているのですが、ちょっとその話は後に回すとして、最終的な判断については一定の理解はできます。一方で、この20090試験は、プロトコルを拝見しても、統計解析計画書を拝見しても、あるいはJAMAに掲載された論文を拝見しても、機構の方が主張されている解析は、あくまで補足的なものとの位置付けにしかなっておらず、論文の中でも言及されていないはずです。サプリメントには機構の名前が出てきますが、そのような状況であるならば、この試験はプライマリーの解析としては、ランダム化比較試験の結果があって、それを添付文書に記載した上で、一方で国内においてはこのような事前の判断根拠を設定していたので、このような条件を満たしているという記述の仕方にするべきではないかなと思います。
 このように申し上げる理由は、試験の手続上の問題を今御指摘しましたが、一方でランダム化比較試験のデータというのは、日常診療の中では得難い情報であって、その情報ではなく、単群のデータであれば、比較的日常診療の中でも蓄積して評価が可能ですが、通常の日常診療の中では取得困難なデータが、きちんと臨床試験として実施されているわけですから、それは添付文書に記載されるべきではないかなと考える次第です。
○森部会長 機構の方、今の柴田委員の御発言に沿う形での添付文書の修正、追記等は可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。まず、柴田先生から御指摘のあった治験実施計画書や統計解析計画書における日本向けの主要解析の位置付けについて、少し説明させていただきます。先生の御指摘のとおり、そういった公表されている資料では、治験全体の解析としては、ベイズ統計モデルに基づく対照群との非劣性の検証、すなわち海外向けの主要解析が主であるように読めるということは認識しております。一方で、治験実施計画書等を作成した申請者に、日本向けの主要解析の位置付けを確認いたしましたが、申請者としては、日本においては日本向けの解析が主たる解析であるとの認識であり、その認識の下で統計解析計画書等を作成しているとのことでございました。先ほど申し上げた相談での経緯も踏まえ、機構としては、今回の審査においては、日本向けの主要解析を主たる評価対象として審査を行ったところです。
 その上で、柴田先生から御指摘のあった比較試験のデータは重要ではないかとの点はそのとおりかと存じますので、御指摘を踏まえて、添付文書に海外向けの主要解析の結果を追記させていただきたいと考えております。具体的には、添付文書案のPDFファイルの11ページ、17.1.13項に、今回の未熟児網膜症患者を対象とした臨床試験成績を記載しており、現在は日本向けの主要解析である奏効割合の結果を記載しているところですが、ここに海外向けの主要解析の結果を追記させていただきたいと考えております。このような形でいかがでしょうか。
○柴田委員 添付文書にその情報が記載されるのであれば、大きな問題は一つ解決したと思います。お言葉を返すようですが、論文等においても機構が提案された解析というのは本文中では言及されておらず、また、統計解析計画書の中にセクションを設けて、日本向けにこのような解析をプライマリー解析として実施するということは、記載はありますけれども、あくまで、それは全体の試験の結果を補足するものであるということが、背景の経緯とともに統計解析計画書に記してあります。とするならば、この試験の主たる解析は、やはりあくまでRCTとしての解析であると解釈するべきではないかなと思います。
 念のために補足いたしますと、このようなことというのは、臨床試験の世界で時々起こります。例えばFDAとEMAの判断が変わっていて、それぞれ違うディシジョンルールをプライマリーの解析にするように求めることがあります。ただし、そのような場合、論文中でそれが明確に書かれるということがあります。論文の本文中に、FDAはこのような主張をしていて、EMAはこのような主張をしていて、それぞれについて結果を提示するというのを、ちょっと調べてみていただいたらそのように書いてある論文というのが出てくるのですが、それがなされていないということは、やはり機構の提案されている解析は、試験全体から見ると副次的な解析と思われていると解釈せざるを得ませんし、そのようにきちんと整理しておかないと、JAMAの論文を読んだ方が機構の書いている文書との齟齬(そご)について十分に理解できないで、混乱を生じさせるのではないかなと思います。
 結論として、機構の方が提案されている解析は事前に定めたものであるので、それに基づいて判断されるということ自体は結構ですし、試験全体がネガティブであったことを記述していただいた上で、それが対照となる凝固療法との比較において、本剤の位置付けを考えると非劣性で十分であろうということを踏まえると、結論として承認されるという判断に異議を申し上げることはありませんが、やはり、そこはきちんと整理しないといけないのではないかなと考える次第です。長くなってすみません。以上です。
○森部会長 柴田委員、ありがとうございました。機構の方、確認で教えてください。日本を除く国のRCTの部分の主成績は、今の報告書の表9に当たるものでしょうか。20ページの表9の内容でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり、審査報告書の通し番号で20/42ページ、表9に海外向けの主要解析の結果を示しております。
○森部会長 このベイズ統計モデルによる奏効確率のデータ、これが主成績ですね。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおりです。
○森部会長 分かりました。機構の方、この欧州の開発状況ですが、今審査中ということで、欧州では、追加の解析や追加の情報等が出るなど何か得ていらっしゃいますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり、欧州では現在審査中でございます。現在、20090試験からの長期継続試験が実施中ですが、当該試験のより長期のデータが得られているので、○○○○○○として、そのような○○○を○○○○○○に○○○○○○○があるとの旨を申請者から伺っております。
○森部会長 分かりました。それでは、そのほか先生方から追加の御意見、御発言はございますか。
○武田委員 山梨大学の武田でございます。
○森部会長 お願いいたします。
○武田委員 通し番号21番の下の方で、ROPの再発割合についてということで、下から5行目に「本剤投与後の定期的な眼底検査等の実施の必要性を注意喚起することとする」と開発者が言っておりまして、次のページで機構も同じように、そのように認めるとおっしゃっていたのですが、添付文書にはどのぐらいの期間、間隔で定期的な検査をするとか、そういうことが一切記載されていないのですけれども、これは何かほかの資料を作られるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただき、ありがとうございます。先生の御指摘のとおり、こちらは医療従事者向け資材等において情報提供される予定でございます。
○武田委員 眼科学会が作っているVGEF療法の手引きというものが、一昨年12月に発行されていますが、そこでは、投与後1年間は可能な限り2週間に1回程度の眼底検査を行うことが望ましいと書いてあります。こんなにいっぱいできるかどうか分からないですが、かなり難しい病気なのできちんとやっていかないと、患者さんのデメリットになってしまうので、その辺はきちんとやっていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。資材等での情報提供に当たっては、先生から御指摘のあった手引きの内容等も踏まえて、適切に情報提供を行うよう申請者にお伝えしたいと思います。
○武田委員 ありがとうございました。
○森部会長 先行で承認されていますラニビズマブの使用に関する注意事項も詳しく手引きに記載されていますので、是非、本薬もその手引きの内容を十分に考慮した上での資材提供をお願いしたいと思っています。そのほかに御発言はございますか。どうぞ、柴田先生、お願いいたします。
○柴田委員 先ほどちょっとテクニカルなコメントのみしてしまったのですが、本質は、やはり今、既に先行する類薬がある中で、類薬との相対的な力関係というのが直接は比較できていなくて、直接比較することの代替として、凝固療法との比較、相対的な関係の情報が重要になってくるのではないかなと思う次第です。そういう意味で、仮に既存のものの方がよい可能性があるのであれば、臨床現場でそれを選択されることになると思うのですが、それを可能とするような形でデータを出す必要があると思います。先ほどの発言の補足をさせていただきました。
○森部会長 柴田委員、一つ教えてください。2剤を直接比較する以外の方法で、例えば手術を対象にした間接比較ということも可能なのでしょうか。
○柴田委員 数理的には、そのような可能性は選択肢としてはあると思います。直接のランダム化比較に比べると、エビデンスのレベルは下がりますが、海外の試験においても、外部のデータを組み合わせて、情報量を増やして比較しようということがなされていますが、それと同じように、何らかの形で相対的な関係を分析するということは不可能ではないと思います。ただ、試験数が限られていますので。試験数が多い領域では直接比較をしていない薬剤同士の比較をするために、ネットワークメタアナリシスという手法が使われていたりなどという分析のアプローチはありますので、何らかの形で今後、アカデミックな形で検討が進むとよりよい情報が出てくるのではないかと考える次第です。
○森部会長 どうもありがとうございました。機構の方、初期治療をした後の再発率に関して、国際的な集団と日本人集団の特徴をまとめていただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。審査報告書の22/42ページの表10を御覧ください。本剤群の全体集団では再発した被験者の割合は26.7%です。一方、日本人と外国人の部分集団においては、日本人集団で70%、外国人集団で20%という結果となっております。ただし、日本人被験者数は10例と限られており、解釈には限界があるものと認識しております。また、少し補足させていただきますと、日本人では再発した被験者の割合が高かったところではありますが、本剤の再投与により、7例中6例が奏効例として判定されていることを確認しております。
○森部会長 ありがとうございました。報告書に御記載があるように、資材の適切な情報提供等も併せてお願いしたいと思います。赤羽委員、どうぞ。
○赤羽委員 ちょっと長くなってしまって申し訳ございません。39/42ページ、安全性の所で、長期的な予後として神経の発達であったりとか、そういったところに影響がある可能性もあるので、今後また継続的に試験を行うというようなことが記載されているかと思います。ラニビズマブは、承認されてから3年ぐらい経過しているかと思うのですが、そちらに関しては、未熟児網膜症の患者さんに適用した場合の長期的な有害事象であるとか、神経発達に関する情報とかはございますか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。審査報告書の28/42ページを御覧ください。ポツが二つあると思いますが、1ポツ目の下から6行目、「また」以降の所で記述をさせていただいております。ラニビズマブと網膜凝固術の無作為化比較試験であるRAINBOW試験の継続試験において、ラニビズマブ投与後の2年間の転帰として、神経発達スコア等はラニビズマブ群と網膜光凝固術群で同程度であり、ラニビズマブの硝子体内投与は眼以外の乳児の発達に影響を及ぼさないようであったという報告が現時点ではなされております。
○赤羽委員 御説明ありがとうございました。では、また継続して経過を見るということですね。ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 そのほか、御質問はいかがでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。なお、佐藤直樹委員、代田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。それでは、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございました。御異議はないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では続いて、議題5に進ませていただきます。議題5、医薬品グラアルファ配合点眼液について、機構から概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料No.5、医薬品グラアルファ配合点眼液の製造販売承認の可否等につきまして、機構より御説明いたします。資料No.5の審査報告書を御覧ください。
 審査報告書の通し番号3/31ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤はRhoキナーゼ阻害薬であるリパスジル塩酸塩水和物とアドレナリンα2受容体作動薬であるブリモニジン酒石酸塩を有効成分とする配合点眼剤です。本邦において、リパスジル塩酸塩水和物単剤の点眼剤は2014年9月に、ブリモニジン酒石酸塩単剤の点眼剤は2012年1月にそれぞれ承認されております。今般、新医療用配合剤として本剤の製造販売承認申請が行われたところです。なお、海外において本剤が承認されている国又は地域はございません。
 本品目の審査に関しまして、専門委員として資料No.22に記載されています4名の委員を指名しております。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書の通し番号9/31ページの表7を御覧ください。今般の申請に当たり、国内第III相試験として、リパスジル塩酸塩水和物単剤を対照としたK-232-01試験、ブリモニジン酒石酸塩単剤を対照としたK-232-02試験、そして長期投与試験であるK-232-03試験が実施されました。
 まず、有効性について御説明いたします。リパスジル塩酸塩水和物単剤で効果不十分な原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象に、リパスジル塩酸塩水和物単剤を対照とした無作為化二重遮蔽並行群間比較試験として実施されたK-232-01試験における有効性の結果につきまして、審査報告書の通し番号11/31ページの表8を御覧ください。主要評価項目とされた治療期4、6及び8週におけるベースラインからの眼圧変化量において、本剤群のリパスジル塩酸塩水和物単剤群に対する統計学的な有意差が認められました。続いて、ブリモニジン酒石酸塩単剤で効果不十分な原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象に、ブリモニジン酒石酸塩単剤を対照とした無作為化評価者遮蔽並行群間比較試験として実施されたK-232-02試験における有効性の結果について、審査報告書の通し番号12/31ページの表9を御覧ください。先ほどの試験と同様に主要評価項目とされた治療期4、6及び8週におけるベースラインからの眼圧変化量について、本剤群のブリモニジン酒石酸塩単剤群に対する統計学的な有意差が認められました。以上から、本剤群の各単剤群に対する優越性が検証されたことから、本剤の有効性は示されたと判断しております。
 続いて、安全性について御説明いたします。先ほど御説明しました二つの第III相比較試験における有害事象の発現状況について、通し番号18/31ページの表13を御覧ください。これら臨床試験の有害事象の発現状況から、本剤特有の新たな安全性上の懸念は示唆されませんでした。また、長期投与試験であるK-232-03試験における有害事象の発現状況については、同ページの表14を御覧ください。当該試験からも本剤特有の新たな安全性上の懸念は示唆されず、本剤とほかの緑内障治療薬との併用においても、特段な安全性上の懸念は示唆されませんでした。以上より、各単剤と同様の注意喚起を行うことで、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 最後に、本剤の配合意義について御説明いたします。審査報告書の通し番号23/31ページから始まる7.R.3、配合意義についての項を御覧ください。緑内障治療においては、単剤での治療をまずは目指しますが、単剤では十分な眼圧下降が得られない場合も多く、そのような場合は併用療法が行われることが一般的です。併用療法においては、点眼間隔を一定時間空けることが必要とされており、多剤併用療法の際には、配合点眼剤の使用により患者のアドヒアランスなどの向上も考慮すべきとされております。本剤に含まれる二つの有効成分の単剤については、医療現場において一定程度併用されている実態があるものの、両成分を含む配合点眼剤は承認されていないことから、両成分の配合点眼剤である本剤は、緑内障に対する多剤併用療法が必要な患者における利便性あるいはアドヒアランスの向上が期待できると考えられることから、本剤の配合意義は認められると判断いたしました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会にて御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 本剤は新医療用配合剤であることから、再審査期間を6年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。委員の先生方から、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。特にございませんでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題6、医薬品コセルゴカプセル10mg及び同カプセル25mgについて、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品コセルゴカプセル10mg、同カプセル25mgの製造販売承認の可否等について、機構から御説明いたします。資料No.6の審査報告書を御覧ください。
 審査報告書の一番下、全82ページの通し番号で4ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。神経線維腫症1型(以下、「NF1」という)は、カフェ・オ・レ斑と呼ばれる特有な色素斑と神経線維腫を主徴とし、皮膚、神経系、眼、骨などに多種病変が出現する常染色体優性の遺伝性疾患です。本邦において、神経線維腫症は指定難病であり、NF1の患者数は約4万人と推定されております。NF1患者の約20~50%で認められる叢状神経線維腫(以下、「PN」という)は、眼窩、顔面、上肢、下肢、背部など、様々な神経に沿って発生する組織学的に良性の神経鞘腫瘍であり、発現部位により外観状の変形や疼痛などの臨床症状が認められ、PNが生命維持に重要な器官を圧迫する場合には、血管や脊髄の圧迫、気道閉塞などの生命を脅かす重度の合併症につながる可能性や、悪性末梢神経鞘腫瘍が続発する可能性も報告されております。
 本邦におけるNF1患者のPN治療の第1選択肢は外科的切除であり、NF1におけるPNに対して承認された治療薬はありません。本剤は、ニューロフィブロミン1遺伝子の変異により生じた、活性型RASによるRAF/MEK/ERKシグナル伝達の異常な活性化を阻害することで、NF1患者におけるPNの増殖を抑制することが期待されております。
 今般、国内試験及び海外試験の成績等に基づき、PNを伴う小児NF1に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。海外では、米国で2020年4月に、欧州で2021年6月にそれぞれ承認されております。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。
 本申請の専門委員として、資料No.22に記載されている9名の委員を指名しています。
 本品目の審査の内容につきまして、臨床試験成績を中心に御説明いたします。まず、有効性について、審査報告書の通し番号で47ページの表41を御覧ください。手術不能かつ症候性のPNを有する日本人小児NF1患者を対象とした国内第I相試験である国内13試験が実施され、NF1の臨床試験における画像評価のためのガイドラインであるREiNS基準に基づく、追加解析時点であるサイクル13の投与初日までのMRIを用いた標的PNに対する奏効率は33.3%でした。
 次に、審査報告書の通し番号49ページの表の42を御覧ください。手術不能なPNを有する小児NF1患者を対象とした海外第I/II相試験である海外57試験が実施され、表42の左から2列目にお示ししております第II相パート層1の主要解析時点において、主要評価項目であるREiNS基準に基づく奏効率は66.0%であり、95%信頼区間の下限値は事前に設定された閾値15%を上回りました。以上の結果等を踏まえ、小児NF1におけるPNに対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 続きまして、安全性について審査報告書の通し番号57ページから始まる7.R.3、安全性についての項を御覧ください。今般提出された臨床試験成績、本剤の作用機序等に基づき個別の事象について検討した結果、本剤の投与に当たっては、駆出率低下等の心機能障害、眼障害、肝機能障害、筋障害、血球減少などの有害事象に注意する必要があるものの、適切な注意喚起の下であれば管理可能であり、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。また、本剤についての十分な知識とNF1治療の十分な知識・経験を持つ医師の下で、有害事象の観察や管理等の適切な対応がなされるよう注意喚起することが適切と判断いたしました。
 なお、日本人における投与経験は限られていることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しています。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当と判断いたしました。
 本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。委員の先生方から、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
○堀委員 堀です。私からは、この薬が入っているボトルの性状についてお尋ねいたします。そちらから送っていただいたページを見ておりますと、これは28カプセルがボトルの中に入っています。それで、本当に素朴な質問なのですけれども、これは患者さんが自宅で1日2回服用するものなのでしょうか。それとも、入院中医療機関で薬が出されて服用するものでしょうか。まず、その点をお聞かせいただけたら有り難いです。
○医薬品医療機器総合機構 御質問くださり、どうもありがとうございます。本剤は、薬局で患者さんにボトルが渡され、そのボトルから必要投与量を取り出して自宅で服用するものです。
○堀委員 ありがとうございます。そういたしますと、今回該当する患者さんは小児が対象ですので、海外とかですと、例えば小児が使う薬が入っている瓶の蓋がなかなか開けにくいようになっていたりといった工夫が行われていると思うのですけれども、今回のものに関しては、何か工夫はなされていらっしゃるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。チャイルドロックのような特別な開けにくい工夫がなされているかどうかは確認できておりません。
○堀委員 そうなのですね。分かりました。どうしても7歳や8歳とかですと、親のみていない時に、自分でボトルの蓋を開けて自分で飲んでしまう、ということが、私も子育てのときにありました。その際に決められた以上の錠数を出してしまったり、蓋を思い切って子供がバーッと開けてしまって、薬をばらまかれたという経験もあったものですから、多量の服用や薬の管理方法など、そこが心配になってお尋ねいたしました。もしできれば、特に小児に対するお薬に関しては、そのような配慮が必要かと思いましたのでまた御検討ください。
○医薬品医療機器総合機構 コメントどうもありがとうございます。いただいた御意見につきましては、企業にも十分に申し伝えさせていただきたいと思います。
○森部会長 そのほか御発言、御意見ございますでしょうか。
○合田部会長代理 合田です。マイナーなことなのですけれど、1/82ページの一番最初に書かれている日本名が、一番最後の所が「カルボキシアミド」になっているのですが、これは和訳が間違っていまして、「カルボキサミド」ですね。ですから、そう直さないといけないと思いました。字訳というのでしょうか、読み方が違います。
○森部会長 では、これは正確を期して修正していただくことでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘どうもありがとうございます。こちらの字訳につきましては、通知されているJANから取ったものでございます。
○合田部会長代理 それは間違いですね。一般名は合ってるのですよ。JANは一般名を決めているのであって、字訳は決めてないと思いますよ。字訳は何かそこで責任を取るという話では多分ないと思いますね。要するに、一般名はいろいろな所で使われるのですけれど、これはたまたま英名の字訳なので。
○医薬品医療機器総合機構 どうもありがとうございます。JANの通知では一般名と字訳の両方が記載されている状況ではございます。
○事務局 よろしいですか、事務局です。失礼いたします。JANの通知の記載の内容の正確性も含めて、ちょっと確認させていただいて対応させていただきたいと思います。
○合田部会長代理 はい。
○森部会長 そのほかに、この薬剤に関して御質問、御意見ございますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題7に移らせていただきます。機構の方、概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料No.7、医薬品アムヴトラ皮下注25mgシリンジの製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。資料No.7の審査報告書を御覧ください。
 審査報告書の一番下、全71ページの通し番号で4ページ、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーにつきましては、トランスサイレチン(以下、「TTR」という)の遺伝子変異によって、TTRタンパク質に由来するアミロイドが末梢神経や各種臓器に沈着することで、感覚神経障害、運動神経障害、自律神経障害や心筋症等の臓器障害を引き起こす常染色体優性遺伝疾患となります。
 本疾患につきましては、指定難病であります全身性アミロイドーシスの一種であり、病態の進行に伴い、重度の運動障害、消化管吸収不良、栄養障害等によって衰弱し、心不全又は感染によって死亡に至るとされています。本邦における本疾患の患者数は約140人と推定されています。
 本剤はTTR遺伝子のmRNAを特異的に標的とする低分子干渉リボ核酸を有効成分とする注射剤です。肝細胞内でTTR mRNAの分解が誘導されることによって、TTRタンパク質の産生を抑制し、TTRタンパク質の凝集や組織沈着を抑制することで、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに対して効果を示すことが期待されています。本邦におけるトランスサイレチン型アミロイドポリニューロパチーの治療薬としましては、TTR四量体の安定化薬であるタファミジスメグルミンと、本剤とは、ヌクレオチド配列が異なる低分子干渉リボ核酸のパチシランナトリウムが承認されています。
 今般、国際共同第III相試験の成績等に基づき、有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。海外の状況につきまして、米国では2022年6月に承認され、欧州では2022年7月にEMAのヒト用医薬品委員会(CHMP)にて、製造販売承認に対して肯定的意見が採択されています。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されている状況です。
 本申請の専門委員として、資料No.22に記載されている9名の委員を指名しております。
 以下、本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明します。有効性につきまして、審査報告書の通し番号41ページの表28を御覧ください。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者を対象とした国際共同第III相試験(以下、「002試験」という)が実施され、本剤の有効性は002試験の本剤群と、外部対照でありますAPOLLO試験のプラセボ群との比較に基づき、有効性が評価されました。その結果、主要評価項目とされた神経障害の進行の程度を評価するmNIS+7スコアのベースラインから投与9か月時までの変化量につきまして、本剤群とAPOLLO試験のプラセボ群との間に統計学的な有意な差が認められました。
 また、審査報告書の通し番号で49ページの表36を御覧ください。投与18か月時までの長期投与時におきましても、APOLLO試験のプラセボ群と比較して、本剤投与によりmNIS+7スコアの改善傾向が認められました。さらに、002試験の参照群として設定されましたパチシラン群におけるmNIS+7スコアのベースラインからの変化量は、本剤群と大きな違いはありませんでした。以上の結果等を踏まえ、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者に対して、本剤の有効性が示されていると判断しました。
 次に安全性につきまして、審査報告書の通し番号の52ページから始まる7.R.3、安全性についての項を御覧ください。今般提出された臨床試験成績、本剤の作用機序等に基づき、個別の事象について検討した結果、本剤投与に当たっては、特にビタミンA欠乏に伴う有害事象や心機能障害について注意喚起する必要があるものの、適切な注意喚起の下であれば管理可能であり、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 なお、日本人における投与経験が極めて限られていることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しています。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会にて御審議いただくことが適当であると判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。特にありませんでしょうか。ないようですね。では、議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決には参加を御遠慮いただくことになっています。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、承認を可とし薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして議題8に移ります。では、議題8につきまして、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題8、資料No.8、医薬品フィンテプラ内用液2.2mg/mLの製造販売承認の可否等について機構から御説明いたします。資料No.8、審査報告書を御覧ください。
 はじめに審査報告書の一番下、全81ページの通し番号で4ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。Dravet症候群は精神運動発達、行動発達及び神経学的発達の重大な障害につながる進行性の脳機能障害を伴う薬剤抵抗性の難治性てんかん症候群であり、本邦では指定難病とされています。Dravet症候群では、一般的なてんかん患者と比較して、てんかんの予期しない突然死(SUDEP)の発現率が6倍高いとの報告もあり、本邦におけるDravet症候群患者の死亡率は10.1%と推定され、死因の53%をてんかんの予期しない突然死(SUDEP)が占めています。
 本剤の有効成分であるフェンフルラミン塩酸塩(以下、「本薬」という)は、セロトニン放出作用を有し、1970年代以降、成人における肥満症治療のための食欲抑制剤として使用されてきましたが、本薬と原発性肺高血圧症及び心臓弁膜異常との関連が報告されたため、1997年に米国で発売が中止されて以降、世界中で販売が中止されました。しかしながら、本薬がDravet症候群患者の発作回数を減少させるとの臨床研究結果を受け、Zogenix社によって、2016年からDravet症候群患者を対象とした本剤の開発が開始されました。本邦では2019年7月からDravet症候群を対象とした臨床試験が開始され、今般、Dravet症候群に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。
 海外の状況について、米国では2020年6月に、欧州では2020年12月にDravet症候群に係る効能効果で承認されています。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。
 本申請の専門委員として、資料No.22に記載されている12名の委員を指名しています。
 臨床試験成績を中心に、本品目の審査の内容について御説明します。まず、有効性について、審査報告書の通し番号で42ページの表31を御覧ください。日本人Dravet症候群患者も参加した国際共同第III相試験(以下、「試験3」という)において、主要評価項目であるT+M期の28日間当たりの痙攣発作回数のベースライン期からの変化量について、本剤群とプラセボ群の間に統計学的な有意差が認められ、本剤群で痙攣発作回数が減少しました。また、審査報告書の通し番号で50ページの表37のとおり、日本人集団においても全体集団と一貫した結果が認められました。
 次に安全性について、審査報告書の通し番号で53ページから始まる7.R.3、安全性についての項を御覧ください。今般提出された臨床試験成績、本剤の作用機序等に基づき、個別の事象について検討した結果、本剤投与に当たっては、特に食欲減退、体重減少、セロトニン症候群、心臓弁膜症、肺動脈性肺高血圧症について注意する必要があるものの、適切な注意喚起の下であれば管理可能であり、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 特に、成人の肥満症の治療のための食欲抑制剤として海外で使用されていた期間に、本薬との関連が報告されている心臓弁膜症及び肺動脈性肺高血圧症に対する注意喚起について検討しました。審査報告書の通し番号で76ページ、1.2、安全性についての項を御覧ください。審査報告書に記載しました各要点を踏まえ、添付文書の警告欄及び重要な基本的注意の項において、本剤の投与開始前及び投与中は、定期的な心エコー検査を実施し、循環器を専門とする医師との連携の下で使用することを注意喚起するとともに、重要な基本的注意の項において、本剤投与中は聴診等の身体所見、胸部エックス線、心電図等を含む十分な観察を定期的に行うことを注意喚起することが適切と判断しました。
 続いて、効能・効果について、審査報告書の通し番号で75ページの1.1、有効性及び効能・効果についての項を御覧ください。試験3において、てんかん発作の主な発作型における有効性は一貫して認められていることから、効能・効果において発作型を限定しないことは可能と考えました。また、本剤の臨床試験は、既存の抗てんかん薬と併用するデザインで実施されていること、Dravet症候群に対する治療は併用療法が主流であり、本剤も他の抗てんかん薬との併用療法として使用されることが想定されることから、効能・効果において、本剤は既存の抗てんかん薬でてんかん発作を十分にコントロールできない場合に、併用療法で使用されることを記載する必要があると判断しました。
 なお、日本人における投与経験が極めて限られていることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講ずる旨の承認条件を付すことが適当と判断しています。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問をお受けいたします。代田委員、お願いします。
○代田委員 先ほどの弁膜症あるいは肺高血圧の合併症について、定期的に心エコーあるいは心電図などを取ることによって予防できると理解してよろしいかということが1点ですが、そうすると、そういうことを、どの程度頻繁にすることによって予防できるかという資料が、1990年代の肥満症のときに行われた資料からある程度推測できているのかどうか、その2点についてお伺いします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えします。まず、1点目のご質問についてですが、今回のDravet症候群患者を対象とした臨床試験においては、肺高血圧症及び心臓弁膜症を発症した患者、被験者はおりません。ただし、臨床試験において心エコー異常が認められた症例があったことを踏まえまして、注意喚起は必要であろうということで、警告欄等で注意喚起をしています。
 海外において、過去に食欲抑制剤として使用されていた過程で、こういった事象が認められたこととの違いになりますけれども、成人での肥満症に対する投与量と比べて、今回のDravet症候群を対象とした投与量では異なりますので、そういった事象の出方が異なっているところはあると思います。
 2点目の御質問につきましても続けてお答えいたしますが、今回の添付文書においては、心エコー検査について定期的に検査を行うということで、特に目安等は記載していないのですけれども、医療従事者向け資材において検査頻度の目安を記載するように指示をしていまして、申請者に対応いただいています。
○代田委員 ありがとうございます。用量が違うというのは、「/kg」に直しても用量はかなり少ない量という理解でよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。臨床の曝露量として、成人の肥満症に対する最小用量での曝露量と、今回のDravet症候群患者での/kg換算での最大投与量、上限が決まっているのですけれども、その上限での曝露量とが重ならないように、投与量が設計されていまして、臨床曝露量が、少しは重なると思うのですけれども、余り重ならないようにという投与量になっています。
○代田委員 それから、肥満症に対して投与された場合の循環器の合併症の発症というのは、大体どのぐらいのタイミングで起こっているかについては、どのようになっているでしょうか。というのは、経過が長くなればそのリスクが上がっていくとか、そういうことがあるかということと、それをカバーするための定期的なフォローアップのシステムを明確に示す必要があるかということです。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。今、投与からどれぐらいで発症するかというところは、把握している範囲でお伝えしますと、投与量に依存してそういった症例が増えてくること、また、投与期間に応じて発症する症例が増えてくるといった報告はされている状況です。
○代田委員 すると、定期的にフォローアップしていって、早期に見付けることによってこれが予防できるだろうという認識でよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そういった認識でおります。
○代田委員 分かりました。そうすると、使う医師に対しての十分なそういう情報を提供していただくことが必要だろうと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 コメントありがとうございます。おっしゃるとおりでして、そちらの部分の情報提供については非常に重要と考えています。また、循環器を専門とする医師との連携というのも大事だと考えていますので、そういった内容の注意喚起を添付文書の方でもしています。申請者にも、やはりその点はしっかり情報提供をしていくようにということでお伝えしたいと思っています。
○代田委員 ありがとうございます。
○森部会長 では、佐藤直樹委員から御質問いただきます。
○佐藤(直)委員 今の代田委員の方からの御質問にも関連するのですけれども、この薬剤の弁膜症の経過というか、ガイドラインに準じた形でフォローアップと書いてありますけれども、通常の弁膜症どおりのフォローアップでいいのか、あるいは用量とか状況によってもう少し密に見た方がいいのか、あるいは異常があって中止をした場合にその後のフォローアップをどうしたらいいかというところも、重要です。それに関連する資料というものを循環器と連携を取る際にどうしても必要になると思うので、情報提供をしっかりしていただきたいと思います。それから、添付文書も含めて、心エコー上の異常というのは余りにも大まかすぎるので、それが循環器にコンサルトされたときに何を中心に見たらいいのか、いわゆる肺高血圧に関連するような三尖弁閉鎖不全を見るとか、右心系の負荷を見るとか、もう少し何か具体的な指標というものを、資材でもよいのですが、明確にしておいていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。資材の方にも今回、心エコーのモニタリングに関しては、米国等で情報提供されている頻度と同じ情報が提供される予定です。投与中と投与後、終了した後も、投与3か月から半年程度で心エコーをするようにという注意喚起になっています。
 後半で御指摘いただきました心エコー検査の中でどういったところを重点的に見ていくのかということも、できる限り情報提供するようにと申請者にも伝えたいと思います。是非、申請者とも議論をしたいと思います。ありがとうございます。
○佐藤(直)委員 はい、お願いします。
○森部会長 どうぞ、宮川委員。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。今、代田委員と佐藤委員からお話があったように、幼児、小児に関して、Dravetの場合にはそういうフォローアップをしなければいけないということが確実に分かっていますので、今は3か月、それから4か月、ある程度定期的なフォローアップが必要なのではないでしょうか。今お話があったような、どこを重点的にどのように見るのかというのは資材できちんと示されないと、具体的な方法を示された方が安全性に関して非常に担保できると思いますので、是非そのような書き込みをお願いしたいと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。補足なのですけれども、資材の方には、モニタリングの頻度について、投与開始後最初の2年間は6か月ごと、その後1年ごと、投与終了後3~6か月目を目安に患者の状態に応じて心エコー検査を行うといったことが目安として書かれています。
 御指摘の点についても、よりどこを重点的に見ていくのかというところについても、今後資材に記載するように、申請者の方と検討したいと思っています。
○宮川委員 それは、投与される対象が、小児か幼児か成人かによってかなり違いがあると思うので、幼児や小児の場合に6か月というのが適切なのかどうか、少し御検討いただければと思います。最初の検査時というのはどの時点でするのが正しいのか、もう少し早くするべきではないのかなと私はずっと思っていましたので、少し配慮していただければと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。機構としましても、あくまで資材に書かれていることを御説明したのですけれども、こちらは目安と考えていまして、患者の状態に応じてしっかりと循環器の専門の先生も交えて、モニタリングのタイミングについては検討していただくものと考えています。
○宮川委員 ありがとうございます。
○堀委員 堀ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 堀委員、どうぞお願いします。
○堀委員 ありがとうございます。今、宮川先生の御提案もあったと思うのですけれども、その資材というのは医師向けの資材だと思うのですが、患者向けの資材にも、例えば定期的にエコー検査をするとか、そういう記載はあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。患者向け資材につきましても、定期的な心エコー検査を受ける必要があるということが情報提供されています。
○堀委員 分かりました、ありがとうございます。保護者として見ますと、2歳の子供に薬を飲ませることとか、どれだけ長期投与したらいいのだろうかとか、とても不安になってくるかと思いますので、是非その部分もお願いします。
 それから、患者向けの資材についてなのですけれども、添付文書の14の適用上の注意の所で、「冷蔵又は凍結しないように指導すること」と書いてあります。小さい子向けのシロップ感覚といったら大変失礼なのですけれども、どうしても冷蔵してしまうお母様が多いと思うので、是非そこの部分を、患者向けというか、保護者向けですね、その資材にも、適用上の注意の14.1.2、14.1.3、14.1.4に関しては、かなり大きく記載していただけたら有り難いと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。適用上の注意の内容に関しては、患者向け資材の方にも図等を用いて説明するようになっています。本剤の保存方法ですけれども、室温で保存するように、凍結を避けるために冷蔵又は冷凍しないようにということは記載されています。その点がしっかりと見やすく情報提供できるように、申請者にも伝えたいと思います。
○堀委員 ありがとうございます。夏ですと、部屋の中の温度がかなり高くなってくると思います。そのときに、どうしても冷蔵庫に入れてしまうというイメージが保護者の中にはかなり多いかと思いますので、是非そこの記載の部分は大きく見やすく書いていただけたら有り難いと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 そのほかに御質問ございませんでしょうか。赤羽委員、どうぞお願いします。
○赤羽委員 今、話題になっているところなのですけれども、先ほど機構の方からの御回答で、今回の臨床試験の間には心血管系の有害事象は認められなかったという御説明があったと思うのですけれども、59/81ページの三つ目のポツですか、今回の臨床試験では本剤の投与を開始する際に心血管系のリスクがある方は組み入れていないということが書かれていますので、あらかじめそういうリスクを排除した上ではそういったことが認められなかったということかと思うのです。その辺り、事前のスクリーニングがしっかりなされていたと思うのですが、添付文書の方も警告の所の一番最初に、投与開始時にそこをしっかりチェックするようにということが書かれていますけれども、もし可能であれば、重要な基本的注意の辺りにも、投与開始してからモニタリングをするということに加えて、事前にきちんとしたモニタリングで投与するか否かの判断をすることというような一言を加えていただけるといいのかなと思いました。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。御指摘の本剤の投与開始前に心エコー検査を実施しまして、心臓に異常がある患者さんをちゃんと見極めるというところに関しては、警告の欄だけではなく、重要な基本的注意の8.1項の二文目に、本剤の投与開始前及び投与期間中に定期的なエコー検査を実施するということになっていまして、投与開始前も心エコー検査を実施するということが重要な基本的注意の方にも書かれている状況になります。
○赤羽委員 これで十分だと御判断されたということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、警告欄の方にも8.1項が参照されていますので、適切に注意喚起できていると考えています。
○赤羽委員 分かりました。何かもうちょっとはっきり書いてもいいかなと思ったのですけれども、分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 今の赤羽委員の御発言を踏まえますと、8.1の基本的注意の所を、まず開始前の必ず行うべきことというところでまとめて、次に8.2で定期的なインターバルの検査をすることというふうに、分けた方が分かりやすいということでしょうか。それとも、今のように一括になっていて、前と後でという形とどちらがよろしいでしょうか。
○赤羽委員 今おっしゃっていただきましたとおり、分けていただいた方が明確かなと思いました。
○森部会長 この点、委員の先生方はいかがでしょうか。代田委員や佐藤先生も御発言としてはいかがでしょうか。
○代田委員 代田です。分けた方が、私もより分かりやすいと思います。
○森部会長 ありがとうございます。特に心エコーのインターバルについても、投与前の心エコーの状態や心電図の状態に応じて、適したインターバルというものがやはり尊重されるべきだと思いますので、8.1はまずそこで投与前の初期評価をしっかりし、8.2で経過観察を重点的にするというふうに分けて記載を整備していただくということは可能でしょうか。機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。先生方の御意見の趣旨は理解いたしましたので、8.1項をまず投与前にしっかりとモニタリングしていただくという注意喚起、その次に項を分けて投与期間中の定期的なモニタリングという形で注意喚起をするようにしたいと思います。ありがとうございます。
○森部会長 どうもありがとうございました。そのほか先生方から、追加の御発言、御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題9に進みます。議題9につきまして機構から概要説明の御準備をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題9、資料No.9、医薬品リバゼブ配合錠LD及び同配合錠HDについて、機構より説明させていただきます。資料No.9の審査報告書を御覧ください。
 審査報告書の一番下、全25ページの通し番号で3ページの1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、HMG-CoA環元酵素阻害剤であるピタバスタチン水和物及び小腸のコレステロールトランスポーター阻害剤であるエゼチミブを有効成分とする配合剤です。両有効成分は、いずれも国内外で承認され、異なる作用機序で血中低比重リポタンパクコレステロール(以下、「LDLコレステロール」という)を低下させる医薬品として広く臨床で併用されています。
 今般、国内臨床試験成績を基に、ピタバスタチン2mg又は4mgとエゼチミブ10mgを配合するLD錠及びHD錠が、両単剤に共通する既承認効能・効果である高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症を効能・効果として製造販売承認申請されました。なお、2022年6月現在、海外では本剤は開発されていません。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明します。審査報告書の通し番号9、10ページを御覧ください。高LDLコレステロール血症患者を対象として、ピタバスタチン単剤投与時と本剤LD又はHD投与時のLDLコレステロール低下作用を比較する二重盲検比較試験が実施されました。その結果、審査報告書の通し番号11ページ、表6に示しますように、有効性の主要評価項目である二重盲検治療期12週時におけるLDLコレステロールのベースラインからの変化率について、本剤HD群と本剤LD群のいずれにおいても、対応する用量のピタバスタチン単剤群に対する優越性が示されました。また、本剤HD群のLDLコレステロール低下効果は、本剤LD群を上回ることが示唆されました。
 続いて、安全性について御説明します。審査報告書の通し番号16ページ以降の7.R.4、安全性についての項にお示ししますように、臨床試験成績及び国内の市販後の併用に関する情報から、本剤投与時に注意すべき有害事象の発現リスクは、ピタバスタチン及びエゼチミブの各単剤投与時に認められるリスクの範囲内であり、両成分の配合により各単剤投与時と異なる懸念を生じるものではないと判断しました。したがって、現時点では、本剤の添付文書における注意喚起は両単剤と同様とすることで、本剤は適切な臨床使用が可能であると判断しています。
 次に本剤の配合意義について、ページが前後しますが、審査報告書の通し番号13ページの7.R.1、本剤の配合意義についての項及び14ページの7.R.2、配合用量の選択についての項を御覧ください。ピタバスタチンとエゼチミブの併用は、国内外のガイドラインにおいて高LDLコレステロール血症に対して推奨される併用療法の一つであり、まずはスタチンであるピタバスタチン単独で治療が開始され、効果不十分な場合にエゼチミブの追加が選択肢となります。ピタバスタチンとエゼチミブは、本邦の医療現場で既に併用されていること、提出された本剤の臨床試験成績から、これら2成分の同時投与による効果に臨床的意義があると判断できることから、この2成分を投与する際の選択肢の一つとして、配合剤という形で臨床現場に提供することに意義はあると判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。本剤は、新医療用配合剤であることから、再審査期間は4年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見がありましたらお願いいたします。宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。実臨床において、普通はピタバスタチンに関しては1mg、2mgから始めて、最大用量4mgというのが認識としてあるのですが、このLDを2mg、それからHDを4mgの方にしているということが、果たして一般の臨床上のところで誤解を生まないかどうかということが少し心配ではあります。普通はロードーズという感じで半分という形だと、1mgというような感覚で私は最初ぱっと見たのですが、申請者がそういうふうに名前を付けたというのはしょうがないのかもしれませんが、実臨床からすると、普通は最大用量を、Hというよりはすごい量という形で私たちは日常診療では見るので、これは家族性のコレステロール血症などを含めて難治性であるなというところで、どうしても使いたいという形になるのだろうと推察しますが、ネーミングが非常に悩ましいなと。実臨床の中では少し逸脱したようなLDとHDのネーミングだろうなというのが、実臨床の感覚としてはそういうふうに思えたので、ちょっとお尋ねしたというか、これは仕方ないのかもしれませんが、このネーミングはどうなのかなということで、ちょっと心配なものですからお聞きしました。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。最大用量の選択した経緯等については、審査報告書の14ページに書かせていただいているとおりで、医療現場でピタバスタチンとエゼチミブの両剤を既に併用している患者数等から見ますと、ピタバスタチン1mgよりは2mg以上の用量になったときに、エゼチミブと併用しているケースが多いというところもありまして、申請者としては2mgと4mgの配合剤を開発したというところになります。
 名称の付け方については、例えば既にピタバスタチン以外のスタチンとエゼチミブの配合剤が承認されているものがありますが、そちらについてもスタチンの複数用量のうちの2用量を選んでいるようなものがありまして、そういったものについても、必ずしも一番下の用量から選択していないという状況もあります。そのときに選んだ2用量の中で、LDとHDというふうな付け方をしていますので、今回も類似の前例なども確認した上で、申請者がこのように付けたのではないかというふうに考えているところです。
○宮川委員 ほかの配合剤も、ほとんど多くは通常用量がHDで、その半量がLDというものがほとんど、高脂血症だけではなくて、高血圧と脳の薬もみんなそうなっているので、これだけが意外と突出して、4mgがHDで2mgがLDというのがあったものですから、少し懸念をしたということです。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 貴重な御意見ありがとうございます。機構より補足で説明させていただきます。御指摘のように、まず配合錠の命名ルールが整理された時点において、基本的には特殊な意味を持たせないアルファベット2文字以上で規格を区別するということで、今回も前例にならってLD、HDとされていましたが、その整理の際に当然そうするとどの有効成分が何mg入っているかというところは、販売名だけでは詳細には把握し切れないということで、そもそも配合錠全体について、どういった有効成分が何mg入っているかということは、名称以外のところで丁寧に情報提供を行うとしてきましたので、御指摘いただいたように、この剤についても含有量が誤解されないように、適切な情報提供を行っていくよう申請者に伝達させていただきたいと思います。
○宮川委員 よろしくお願いいたします。
○森部会長 既存の配合薬では、AとBで識別しているものもありますね。LとHですと、やはりLowとHighという意味が何となく伝わるというところです。今、宮川委員からの御発言にもありましたように、実臨床上ではピタバスタチンが1mg、2mg、4mgと広く使われているので、いずれにも配合剤があればなおよく、L、M、Hがあればいいなと思っていましたが、2剤の方がやはり混乱もしにくいということで、一定の理解をしたところです。
○宮川委員 H、M、Lがあればいいなというふうに思ったものですから、これは大変失礼しました。でも、そういうのが実臨床の中で混乱を起こさないということで非常に重要かなと思ったので、御発言させていただきました。ありがとうございます。
○森部会長 より厳格な脂質管理を要する状況で、ピタバスタチンの2mgないし4mgが選ばれ、かつ、エゼチミブの併用がなされるという臨床上の実情を考えますと、この配合も理解できるというところでした。代田先生、何か御発言はございますか。循環器のお立場からはいかがでしょうか。
○代田委員 はい、宮川先生の御意見は確かにそういうふうに感じる部分もありますが、循環器の2次予防という観点からいうと、大体2mg、4mgを使っていてハイドーズと通常用量というような感じで使っていますので、この領域では理解できるのではないかというふうに考えています。以上です。
○森部会長 ありがとうございます。では、そのほか御発言、御意見はございますでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようですので、承認を可とさせていただき、薬事分科会に報告をさせていただきます。
 では、この後、議題11、先ほど10が終わりましたので11に移らせていただきます。トビエース錠について、機構からの概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題11、資料No.11、医薬品トビエース錠4mg、同錠8mgにつきまして、機構より説明させていただきます。
 資料No.11の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全34ページの通し番号で5ページ、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤の有効成分であるフェソテロジンフマル酸塩(以下、「本薬」という)は、ムスカリン受容体拮抗薬であり、本邦では2012年12月に過活動膀胱(以下、「OAB」という)に係る効能・効果で承認されています。海外では本薬は、欧州で2007年にOABに係る効能・効果で承認されて以降、2022年7月現在で欧米を含む40以上の国又は地域で承認されています。
 今般、二分脊椎等の神経学的原因による排尿筋過活動がある小児を対象とした国際共同第III相試験の成績を主要な根拠として、神経因性排尿筋過活動(以下、「NDO」という)の小児への使用に係る効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。なお、米国では2021年6月に、6~17歳かつ体重25kg超のNDOの効能・効果が追加承認されています。
 本剤の審査に関し、専門委員として、資料No.22に記載されている委員を指名しました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号12ページを御覧ください。国際共同第III相試験として、6~17歳のNDO患者を対象に無作為化非盲検並行群間比較試験が実施されました。本試験は体重25kg超の患者を対象に本剤を投与するコホート1、体重25kg以下の患者を対象に本剤とは異なる製剤を投与するコホート2から構成されていますが、本申請はコホート1で示された本剤の有効性等の評価に基づいたコホート1の範囲内の申請ですので、コホート1の結果を説明いたします。
 審査報告書の通し番号14ページ、表6を御覧ください。主要評価項目は、投与12週目における最大膀胱容量のベースラインからの変化量とされ、本剤4mg群及び本剤8mg群で、ともに投与12週目における最大膀胱容量はベースラインと比較して有意に大きく、本剤4mg群及び8mg群のいずれでも臨床的に意義がある結果が示されたと判断しました。日本人集団の結果も全体集団の結果と同様でした。
 また、審査報告書の通し番号20ページ、表9に示していますとおり、症状改善に関連する主な副次評価項目についても、本剤4mg群及び本剤8mg群でともにベースラインから改善する傾向が示され、また日本人集団の結果も、全体集団の結果と同様であったことが確認できたことから、本剤はNDOの小児患者において、膀胱容量を増加させることで膀胱コンプライアンスを改善させ、尿禁制の改善といった適切な排尿管理を可能とすると判断しました。
 以上より、体重25kg超のNDOの日本人小児患者における排尿管理について、本剤4mg及び本剤8mgは臨床的に意義のある有効性を示すと判断しました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号21ページ以降、7.R.4、安全性についての項に示しますように、臨床試験成績及び国内外の製造販売後の情報からNDOの小児患者への本剤投与時に発現が懸念される有害事象は、本剤を含む抗コリン薬の投与で発現することが知られている便秘や尿閉などであり、既承認効能・効果と同様に注意喚起すること等で臨床的に大きな問題とならない程度に管理可能であり、認められた本剤の有効性を踏まえると、NDOの小児患者における本剤4mg又は8mg投与の安全性は臨床的に許容可能と判断しました。
 効能・効果について御説明します。審査報告書の通し番号23ページ、7.R.5、効能・効果についての項を御覧ください。本邦では基本的に効能・効果には疾患名を規定して、小児や成人の別は用法・用量に明記していること、NDOについて小児に特有の病態はないことから、本剤についても効能・効果で小児と規定せず、用法・用量で小児と規定することが妥当と判断しました。また、本剤と同じNDOに適用される既承認の抗コリン薬の効能・効果は、神経学的原因による排尿筋の過活動、すなわちNDOに加えて、低活動を含む神経因性膀胱に係るものとされていますが、実臨床では薬理作用を踏まえてNDOに適用されています。本剤と同様の位置付けである既承認の抗コリン薬と異なる効能・効果と表記した場合に、各薬剤の位置付けが誤認される可能性を考慮し、本剤の効能・効果は神経因性膀胱に係るものとすることが妥当と考えました。さらに、臨床試験では、本薬による排尿管理の改善が示されたことから、本剤の効能・効果を神経因性膀胱における排尿管理とすることが妥当と判断しました。
 用法・用量について御説明いたします。審査報告書の通し番号25ページ、7.R.6、用法・用量についての項を御覧ください。体重25kg超35kg以下の患者に本剤8mgを投与したとき、本薬の活性代謝物である5-HMTの曝露量の範囲が既承認の用法・用量での投与時よりも高くなる可能性が推定されましたが、機構は、提出された臨床試験成績から、体重25kg超の小児患者への本剤8mgの投与に安全性上の大きな問題があることは示唆されていないことから、国際共同第III相試験で認められた本剤4mgと8mgの有効性及び安全性を踏まえ、本剤の用法・用量は、通常、体重25kg超の小児に本剤4mgを投与し、患者の状態に応じて8mgを投与することができる旨の用法・用量とすることが妥当と判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。本申請は、新効能・新用量医薬品に係る申請であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は4年とすることが妥当であると判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。これは機構の方にお伺いします。米国での添付文書では、承認病名としてはNDOになっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答させていただきます。米国ではNDOに係る効能・効果で承認されています。
○森部会長 分かりました。これは武田委員に御発言を伺うことは可能でしょうか。いらっしゃいますか。
○事務局 退室されています。
○森部会長 分かりました。委員の先生方、この7.R.5の効能・効果についての機構の見解ですが、特に先生方から御意見はありませんでしょうか。神経因性膀胱という病名として、今回このトビエースの承認適用を、実際に添付文書を御覧いただきますと、今回の添付文書では効能・効果の所は神経因性膀胱における排尿管理というふうに病名が付いているのですが、この内容で適切と考えてよろしいですか。事前に武田委員からはご意見はないですね。
 神経因性膀胱ですと、収縮力の弱いタイプで、過活動ではない病態が含まれるので、それに対してこの薬剤が使用されることは、実臨床では余り想定されていないということではありますが、何らかの注意喚起を加えるとしますと、例えば5の効能又は効果に関連する注意の所に、この神経因性膀胱における排尿管理という項目で5.4と設定していただいて、弛緩している収縮力の弱いタイプの疾患には適用ではないといったような注意喚起を加えていただくということは可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。機構より回答させていただきます。いただいた御意見を踏まえまして、効能又は効果に関連する注意に排尿筋が低活動状態の患者には使用しないといった注意喚起をすることを検討させていただきたいと思います。
○森部会長 分かりました。それでしたら、この病態に合っていると思います。では、そのほかの委員の先生方から御質問は特にありませんか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。川上委員、武田委員におかれましては、利益相反のお申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくこととなっています。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようでので、本議題については承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、続きまして報告事項に移らせていただきます。
○事務局 報告事項の1~8までについて、事務局から御説明させていただきます。まず報告事項、議題の1~7までですが、これらはいずれも生殖補助医療に関する品目ですので、まとめて御説明させていただきます。資料としては、報告事項の資料12~18までが該当いたします。これらについては、いずれも医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に関する報告書が取りまとめられまして、本年2月25日に開催された本部会、医薬品第一部会において事前評価が行われました。今般、これらの品目について、この事前評価に基づきまして申請者から適用を追加する一部変更の申請がなされたものです。いずれについても、機構における審査の結果、これらの申請を承認して差し支えないと判断されています。
 続きまして、議題8、再審査の結果について御報告します。今回、再審査の対象となったものについては、資料19-1~19-3までです。まず、資料19-1ですが、対象品目は「ボンビバ静注」です。資料19-2は「トピロリック錠及びウリアデック錠」です。資料19-3が「ノウリアスト錠」です。これらの品目について、製造販売後調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、承認拒否事由のいずれにも該当しない効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要がないカテゴリー1と判定されています。以上です。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは、委員の先生方から、御質問等がありましたらお願いいたします。特段ございませんでしょうか。それでは、報告事項議題1~8については御確認いただいたものとさせていただきます。
 では、続きましてその他事項に移ります。その他事項議題1について、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○事務局 それでは、その他事項議題1について、事務局より御説明します。資料No.20を御覧ください。今まで先生方にも御確認いただいてきたところですが、最適使用推進ガイドラインについて、ちょっと簡略化をしようというような趣旨でございます。こちらなのですが、「改定の背景と方針」の所にもありますが、再審査期間を終えた品目/効能・効果に対して有効性、安全性に関する情報が蓄積されてきたとして、事務的な手続について簡略化できないかといったことを考えているものです。今後、再審査の評価が終了した品目/効能・効果については、一部変更承認等のガイドライン改訂のタイミングにおいて、簡略版に切り替える方針としています。
 簡略版の記載内容としましては、「方針」の所を御覧いただければと思いますが、基本的には臨床成績等の添付文書に記載のある部分を削除することで、体裁を簡素化するもので、あくまでもガイドラインの位置付けはこれまでと同じものとなっています。
 2ページを御覧ください。手続としては、今後も簡略版に関しても部会でも確認をしていただきまして、中医協でも確認していただくというようなもので、今までと基本的には変わらないものを考えています。今回、この第一部会でも報告をして了承いただけましたら、今後は医薬品第二部会でも同様の御報告を差し上げることと、その後、中医協でも御説明をする予定です。また、その後に、既存の通知に簡略版のガイドラインに関する内容を盛り込んだ改正通知について、今後の部会や中医協で御了解いただけましたら、発出することを予定しています。説明としては以上となります。
○森部会長 ありがとうございました。最適使用推進ガイドラインの簡略化について御報告いただきました。先生方から御意見、御発言はございますか。特段ありませんか。それでは、その他事項議題1については御確認いただいたものとさせていただきます。
 本日の議題は以上となっています。事務局から報告事項はございますか。
○事務局 次回の部会は令和4年10月28日金曜日の午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 本日は大変長時間の審議になりましたが、大変活発な意見交換をさせていただきました。誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
 
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)