2023年1月31日 第11回「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」 議事録

日時

令和5年1月31日(火) 18:00~20:00

場所

厚生労働省専用第15会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
厚生労働省:事務局

議題

  1. (1)精神障害の労災認定の基準について
  2. (2)その他

議事

議事録
○本間職業病認定対策室長補佐 定刻となりましたので、第11回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中会議に御出席いただきありがとうございます。今回は座長の黒木先生、吉川先生以外の先生方についてはオンラインでの参加となります。
はじめに、オンラインで参加される方に発言の際のお願いです。マイクのミュートを解除した上で、お名前と発言があります旨の発言をしていただくか、又はメッセージで発言がありますと送信してください。その後、座長から誰々さんお願いしますと指名がありますので、その後に御発言をお願いいたします。
 検討会に先立ち、傍聴されている皆様にお願いがあります。携帯電話などは必ず電源を切るか、マナーモードにしてください。そのほか、別途配布しております留意事項をよくお読みの上、検討会開催中はこれらの事項をお守りいただいて傍聴されるようお願い申し上げます。また、傍聴されている方にも会議室に入室する前にマスクの着用をお願いしておりますので、御協力をお願いいたします。万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退室をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。写真撮影等はここまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。
 次に、本日の資料の御確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1、第11回における論点、資料2、論点に関する労災補償状況、資料3、論点に関する医学的知見、資料4、論点に関する裁判例、資料5、第10回検討会の議論の概要、参考資料として、団体からの意見要望となっています。
 本検討会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。それでは、座長の黒木先生、以後の議事の進行をよろしくお願いいたします。
○黒木座長 それでは始めたいと思います。今回は論点1「業務による心理的負荷評価表」の検討。次いで、論点2として「運用」について検討し、最後に論点3「複数業務要因災害」について検討することにします。
 まず、論点1の業務による心理的負荷評価表の検討について、事務局から説明をお願いいたします。
○西川中央職業病認定調査官 事務局から論点1について御説明させていただきます。併せて資料3と4についても御説明したいと存じます。なお、資料2については、後ほど論点2のところで御説明いたします。このほか、資料5は前回の検討会の議事概要、参考資料は、12月に過労死弁護団全国連絡会議から御提出いただいた意見要望となります。こちらについては、御説明を割愛させていただきますので、適宜御参照をお願いいたします。
 論点1です。資料1の3ページを御覧ください。業務による心理的負荷評価表の検討ということで、この業務による心理的負荷評価表について、これまでの検討を踏まえ、どのような内容を示すことが適当かを記載しております。右欄の別紙1と別紙2のたたき台で検討してはどうかと書いておりますが、別紙1のほうが、左の欄の1つ目のポツに対応する評価表それ自体のたたき台となります。別紙2のほうが、左の欄の2つ目のポツに対応する、この評価表の考え方のたたき台となります。それぞれ分けて御議論を頂ければと考えております。
 まず、別紙1の心理的負荷評価表のたたき台です。資料1の4~8ページがこちらの資料となっております。この資料は、第6回~第10回の検討会において御検討いただいた心理的負荷評価表のたたき台について、その際の御指摘を踏まえ、修正をして全体を統合したものとなっております。現行の評価表から変更のない部分が黒、現行から修正している部分は赤で示しておりますが、更にその以前、検討会にお示ししたものからの修正点が青字となっております。これまでは現行の評価表の項目番号で御議論いただいておりましたが、このたたき台を統合するに当たり、項目番号を通しで振り直しております。こういった具体的出来事の追加・修正・削除、そして項目番号の対応関係については、9ページからの参考1にまとめております。また、10~12ページのほうには、これまでの検討会で頂いた主な御意見を項目ごとにまとめてお示ししております。こちらの資料の9~12ページの御説明は割愛いたしますが、適宜御参照いただければと存じます。
 4ページです。これまでのたたき台からの修正点を中心に御説明いたします。青字の部分は、基本的に、これまでの御意見を反映して修正したり、あるいは全体の平仄を整えるための修正をしておりますが、主なものを御説明いたします。まず、4ページの一番上、特別な出来事のところの「6か月を超えて」の部分が分かりにくい、不要だという御指摘を受けて削除しております。総合評価の留意事項についてです。ここはいろいろと御議論があったところです。第6回でお示しをしたたたき台では6項目を示しましたが、1項目目に、もともと6項目お示ししていたもののうち、今回の2項目と3項目以外の全体をまとめております。結果として、3項目に集約したものをたたき台としてお示ししているということになります。
 まず、1項目目の御説明をいたします。まずは、出来事それ自体と出来事後の状況の双方を十分検討する必要があるということ、これまでも書いていたことを書いております。職場環境の変化については、前回のたたき台では、温度や騒音等の作業環境の変化の出来事、これを具体的出来事に追加したので、ここの留意事項のところから削除してはどうかということをお示ししたところですが、この職場環境のほうが広い意味があるのではないかといった御指摘もあって、出来事後の状況として考慮することを引き続き明示する形で、「職場環境の変化などの」といった形で触れております。さらに、当然のことではありますが、その後ろ「例示されているもの以外であっても出来事に伴って発生したと認められる状況や」のところですが、様々な状況が実際の事案では起こってくるということで、こういったものは全て考慮するのだということを示しています。最後のフレーズ、「当該出来事が生じるに至った経緯等も含めて」と記載しております。例えば、対人関係上の問題であれば本人の行動がどういったもので、相手方の行動がどういったもので、それは相当なものなのかどうかなど、どういった形、どういった経緯で出来事が生じていったのかということ、あるいは、会社が行った処遇が問題になるような場合であれば、どういった理由でその処遇が行われたのか、一般的な会社のルールに従ってなされたのか、あるいは、御本人さんに特段の不利益を課すものとして行われたのか、相当なものだったのか、必要性があったのかなど、そういった経緯等も含めて総合的に評価するということで、これまでの御議論を踏まえてまとめさせていただきました。
 2項目目は、職場の支援・協力の欠如についてです。こちらは、個々の具体的出来事の総合評価の視点にも明示している項目も多々あるところですが、全体に共通して重要な内容ということで、前回のたたき台と同様に記載しております。
 3項目目、裁量性の欠如についてです。こちらも前回のこれまでの御指摘を踏まえて修正をしておりますが、やはり重要な視点ということで記載しているところです。
 続いて、具体的出来事の各項目です。項目1、2については業務によるものであるということを明示しております。項目2の中の具体例は「強」の例と対応するように修正しております。また、「強」の例の「傷害」という文字ですが、前回のたたき台では後遺障害の「障害」を記載しておりましたが、後遺障害を残す場合に限らず、重大な傷害という趣旨で漢字を変更しております。
 項目4です。具体的出来事の名称について、ちょっと具体的すぎるという御指摘があった部分を削除しております。また、不正行為に関する事実確認をされたという「弱」の例ですが、第8回のたたき台では、「不利益な処遇等を受けた」の例としていたところです。こちらはその項目ではなくて、「責任を問われた」の項目にすべきではないかとの御指摘があったところですが、項目5の「責任を問われた」という出来事については、本人が引き起こしたものではない事故、事件についての項目としているので、本人が行ったことに関するものである項目4に配置いたしました。
 5ページです。項目7のノルマのところです。パワーハラスメントの項目にパワーハラスメントの6類型全てを明示したこととの関係もあって、パワーハラスメントでいう「過大な要求」に該当する場合は、そちらの項目で評価するということを明示したところです。こちらの項目7のほうでは、業務上必要があって課されたノルマであっても、これに対応するのが大変であった、心理的負荷が強かったという場合を評価することを想定しております。
 項目9の「中」も、すみ分けの関係です。顧客等からの要求等が著しい迷惑行為、つまりハラスメントに当たる場合はカスタマーハラスメントの項目で評価する、そうではない場合には、この項目で評価することを示していて、「中」の例のところも、御指摘を踏まえて、顧客等からの指摘の内容は妥当だけれども、対応が困難なものを想定していることを明示しております。
 項目10ですが、前回のたたき台では「強」になる例を示しておりませんでしたが、ほかの出来事の「強」の例を参考としながら追記したところです。
 6ページです。項目11ですが、ほかの出来事との統合の関係で、統合する出来事に記載のあった総合評価の視点で漏れていた要素の追記などをしているところです。
 項目13、連続勤務のところです。前回のたたき台で欄外の注記としていたものの一部を、現行の基準と同様に欄内の括弧書きに戻したところです。
 項目14は追加する出来事となります。感染症等の危険性が高い業務の関係ですが、御指摘を踏まえて、病原体以外にも、化学物質等で危険性の高いものの取扱いなどを含める趣旨で総合評価の視点を修正しております。
 項目15です。まず、1点お詫びですが、第7回の資料内では、項目名の一覧表の資料には「作業速度」の記載が落ちていて、評価表のたたき台の資料には「作業速度」が入っていたという状況となっておりました。申し訳ございません。このため、「作業速度」の記載を入れる形に合わせております。その上で、御指摘を踏まえて具体例から御人の意向に関する記載を削り、また、「強」の具体例ですが、「勤務形態が頻回の急な変更により著しく不規則となり、その予測も困難であって、生理的に必要な睡眠時間をまとまって確保できない状況となり、かつこれが継続した」といったような、夜に全然まとまって眠れない、非常に睡眠が取れないというような状況を示したところです。
 項目16です。早期退職制度の導入については、「弱」の具体例をこちらの出来事に統合したほうがよいという御指摘を頂いて、移動しております。また、こういった制度の強い退職勧奨は「中」にもなり得るという趣旨で、「中」の具体例も修正いたしました。
 項目18です。「複数名で担当していた業務を一人で担当するようになった」という項目ですが、以前の事務局のたたき台では、仕事内容・量の変化に統合してはどうかとしていたところです。ただ、御指摘を受けて、テレワークなどで一人で担当という事態が増えてくるのではないか、一人で担当することによる孤立感やサポートの欠如など、単なる業務量の増加とは質が異なる面があるのではないかという御指摘を踏まえて、具体的出来事として残し、具体例も現行のものからそういった量の増加という面ではなく、「一人で」といったことに着目したものにするように、修正してお示ししているところです。
 項目19です。総合評価の視点に、この項目に差別が含まれることを示しました。「弱」の例は先ほど御説明したとおり、項目4に移動しております。
 項目20です。こちらも、早期退職の導入の例を項目16に移動しております。
 項目22です。上司等の職務上の関係について、項目24の上司トラブルのところと平仄を合わせて修正をしております。項目23と25の関係も同じです。
 主な修正事項は以上ですが、これらの心理的負荷評価表のたたき台について、御議論をお願いできればと存じます。また、このたたき台に関して、資料3と資料4について、ここで御説明させていただきたいと思います。
 まず、資料3の医学的知見を御覧ください。資料3の医学的知見ですが、労働時間の検討に当たって、追加で御参考としてお示しするものです。目次を見ていただくと分かるように、2つの文献をお示ししております。1つ目のRuguliesの2021年の文献ですが、こちらの2021年の文献ということで、2020年に私どもで実施した文献収集事業では収集できていなかったということで御紹介するものです。こちらはうつ病と労働時間との関係について、過去に様々な研究者が行った研究データを再度分析して検討したというメタアナリシスですが、こちらの文献においては、週55時間以上の労働とうつ病との関係について、有意な相関がなかったという結論になっております。後ろのほうに、2つ目のVirtanenの2018年の文献をお示ししております。こちらは2018年の文献ではありますが、先ほどの2021年の研究の中で用いられている研究データの中で、規模が大きく重要なものであるという御示唆を吉川先生から賜りまして、今回御紹介することとしたものです。文献収集事業では収集できておらず、これまで御紹介できていなかったので、御紹介させていただいたところです。こちらの文献は、長時間労働とする時間数は示されておりませんが、長時間労働とうつ病について、有意な相関があったという結論になっているものです。
 それぞれの内容はそういったところですが、いずれにしても、第7回において収集文献を御紹介した際に、医学的知見の状況としては有意な関係を認めるものもあるが、認めないものもある、有意な関係を認める研究においても、長い労働時間の定義、時間数は様々であるというような状況であって、現行の認定基準で示している、労働時間の考え方を大きく変更するに足りる知見があるとは言い難いのではないかといった御説明をさせていただいたところです。今回御紹介したものを含めても、同様の状況ではないかと事務局としては考えているところですが、御議論の参考としていただければと存じます。
 資料4は裁判例です。以前、第3回検討会で裁判例をまとめてお示ししておりました。その際、国勝訴事案については、数が多いため一部に絞って御紹介し、国敗訴事案は、この現行認定基準の報告書が取りまとまった平成23年11月以降、令和3年末までのものを全て御紹介したところです。年が明けて令和5年になり、令和4年の国勝訴事案と国敗訴事案が出てきたところですが、勝訴事案のほうは、もともと絞って御紹介しておりますので、今回は御紹介を割愛いたします。国敗訴事案については全件御紹介するという趣旨で、令和4年中の国敗訴事案のみの資料としております。5事案あります。なお、1つ目 O1番の事案については、前回、第10回の検討会の資料4で敗訴の「追加」として示したものと同じ事例です。こちらも、具体例等の御議論の参考としていただければと存じます。
 資料1に戻ります。13ページを御覧ください。13ページからは別紙2ということで、心理的負荷評価表についての考え方を整理したものになっております。平成23年の報告書や、現行認定基準にも同じような考え方の整理が記載されていて、同じ部分もあれば、一部修正をした部分もありますが、この別紙2をたたき台として御議論を頂きたいというように思っております。
 1項目目です。「強」「中」「弱」の定義のようなものを記載しております。強い心理的負荷が「強」、そうでないものが「中」又は「弱」というように記載しております。「弱」の説明のところですが、現行の記載から、一部修正をしております。現行の認定基準は「弱」というものについて、「日常的に経験するものであって、一般に弱い心理的負荷しか認められないもの」という、頻度のみに着目をした記載となっております。しかしながら、現行認定基準においても、例えば、以前に経験した業務など、容易に対応できる配置転換は「弱」としておりますが、こういったものは、頻度の面からは日常的とは言い難いのではないかというように考えております。そういったことを考慮して、こちらのたたき台では、「「弱」は、日常的に経験するものや一般に想定されるもの等であって通常弱い心理的負荷しか認められないものであり」といった記載としております。
 2項目目から4項目目は、現行とほぼ同様の記載です。特別な出来事の考え方、あるいは具体的出来事の考え方、平均的強度を示して、実際の事案においては、その内容に即して「強」「中」「弱」の3段階で総合評価をするということ。そして、類型①については、出来事自体、事故や災害の大きさ、これを特に重視して、ほかの類型は出来事と出来事後の状況の両者のどちらも重視して評価しているといった記載をしているところです。
 14ページです。1つ目の項目は、現行ではセクシュアルハラスメントと書いてある記載について、パワーハラスメントなど、ほかのハラスメントも含む趣旨で、ハラスメントという形で修正した以外は現行と同じ内容となります。ハラスメントやいじめのように、出来事が繰り返されるものについては、一つ一つの行為を切り分けて、ばらばらに評価するのではなく全体を一体のものとして評価して、この継続する状況は負荷が強まるというように評価するという内容です。
 2項目目以降は、現行では記載がありませんが、整理しておくことが必要と考えたものです。まず、2つ目ですが、評価表のたたき台、先ほど総合評価の留意事項の欄について御説明しましたが、そこにも記載した内容をまとめて記載しているところです。表にも書いておりますが、むしろ、評価のやり方と考え方としては、こういった本文の形でまとめることが、よりなじむのではないかということで、重複はしますが、こういった整理が重要という趣旨で記載しているものです。
 最後の2つは、評価表における用語の解説のような位置付けです。まず、時間外労働の関係です。以前のたたき台では、評価表の欄外に注記としてお示ししておりましたが、本文のほうがよいのではないかという御指摘を受けたものです。時間外労働については、認定基準上はその会社会社の所定労働時間にかかわらず、週40時間を超えて労働した部分をいいますと、また、時間数を示した具体例としては、労働密度が特に低い場合を除きますし、また、その業務内容が、通常その程度の労働時間を要する場合を想定していると、連続勤務についても同様であるという内容を示しております。
 最後は、前回御議論になった「反復継続するなどして執拗に」という表現の補足です。一般的に「執拗」というのは、繰り返されているというような状況が多いというように思われますが、たとえ一度の言動であっても、長時間で態様も強烈、悪質といった場合には、「執拗」と評価する場合があることを明示したものです。
 長くなりましたが、論点1についての御説明は以上となります。別紙1と別紙2ということで、それぞれ分けて御議論を頂ければと考えております。御議論のほどよろしくお願いいたします。
○黒木座長 ありがとうございました。ただいま、事務局から論点1について説明がありました。また、別紙1の心理的負荷評価表のたたき台、別紙2の心理的負荷評価表の考え方のたたき台で検討してはどうかという提案もありました。まず、資料1の4ページから8ページの別紙1の心理的負荷評価表のたたき台について検討したいと思います。この点について、何か御質問、御意見があれば御発言をお願いします。どうぞ、品田先生。
○品田委員 全体として、とても分かりやすくなりましたし、洗練されたなという印象を改めて持ちました。そういう意味において、全体についての問題点はほぼないかなと思っておりますが、しかしながら、やや細かいこと、もう重箱の隅を突っつくような話になってしまいますが、気付いたこととして4点指摘させていただきたいと思います。まず、項目2のところの、先ほど、わざわざ「障害」という字を変更されたわけですが、事情によっては病気もあり得るのです。例えば、原発事故などにおいては、その後の病気を心配するということもありますので、これは「傷害」ではなくて「傷病」にしたらどうかと思いました。これが1点です。
 2つ目は、これは異論もあるかもしれないのですが、項目19番です。今回、様々な差別を想定して不利益な取扱いを受けた場合を記載したわけですが、これ自体において違和感は別にないのですが、しかし、例えば、「強」になる例の中において、「雇用形態や国籍、人権、信条、性別等を理由になされた」、もうそれ以外はあまり考えなくてよいかなとは思うのですが、1点少し気になるのは、項目22とか項目23にはあるのですが、いわゆる性的指向等に係る差別の問題も、項目22や項目23にあるような形でのアスタリスクを付けた記載を追加しておくのはどうかなと思います。性別等の中に含まれているという意見もありますが、外形的に分かる性別等における差別と、やはり信条に近い性的指向、内面的な問題を対象とする性的指向とは、やはり似て非なるものだと考えるべきかと思いますので、注意を喚起するためにも、ここに置いておく必要があるのではないかと思います。つまり、パワハラやセクハラ等にならない形でのそうした差別も、やはり禁じられるものだということをきちんと明記しておくことが望ましいのではないかと思いました。
 3つ目は、これはお気付きの方もおられるのではないかと思うのですが、項目22、23、27、29辺りに、何々した場合という、この「場合」という言葉があるのですが、これを付けるのでしたら全部に付けないといけないわけで、この「場合」というのはもう不要ではないかと思います。一応、「場合」を取って読んでみても、他の項目との比較において違和感はなかったので、そういう面では、これは削除する方向で考えられるべきではないかと思いました。
 4つ目は、本当に細かい話なのですが、セクシュアルハラスメントのところの「強」の例を見ていただきたいのです。3つ目、4つ目のポツ辺りを読んでいただきますと、少し文章としておかしいかなという気がします。つまり、例えば3つ目のポツですと、「身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた場合」。「あって」というのが、次の文章はもう逆説になっていますので、「あっても」というような形で「も」を付けることで文章が成り立つかなという気もしますので、何らかの形で、逆説であることを言葉の流れとして分かるような表現にすべきかと思いました。気付いた点は以上4つです。
○黒木座長 ありがとうございます。まず、「傷害」を「傷病」と。それから19番に関しては、性的指向等を具体的に入れたほうがいいのではないか。それからもう1つは、「場合」です。27番の「場合」を除いたほうがいいのではないか。あとはセクハラに対しての見解ということですが、事務局としてはいかがでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 御指摘を踏まえまして、ほかの先生方の御指摘を頂きつつ、まだまだ最終案ではありませんので、追って調整をさせていただきたいと思います。
○黒木座長 今の品田先生の御意見に関して、何か御意見ございますか。丸山先生、いかがでしょうか。
○丸山委員 またいろいろ事務局でも検討していただければいいかなと思いました。全体的なことを言えば、先ほどお話があったように、非常にこの表も引き締まって、いい感じに出来上がってきたなと感じています。私が特に大事だと思うのは、「強」と「中」の境界です。そこはかなり重要で、業務上になるか外になるかという辺りです。今回、空欄になっていたところにも「強」の表現が入りました。そういうことで、実務的にも使いやすいかなと思いました。あとは、18の項目を私は入れていただいたのは非常にいいかなと思っています。それで、「強」のところなのですが、労働密度と言いますか、仕事の内容の高度化と言いますか、それが非常に強くなると時間的にも追われるので、そういったことが少し加味されるような、「緊張」という言葉でちょっと表し切れていないところもあるかなと感じましたので、もう少し具体的な表現を入れていただければと思いました。大体、以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。荒井先生、いかがですか。
○荒井委員 今、品田先生と丸山先生が御指摘されたことについては、事務局でよく御検討いただいて、全体としては二人もコメントされておられますが、非常にまとまってきていて、判断をしていく際に、相当、基準となっていくかと思っております。今の御指摘の点については、事務局で御調整を頂きたいと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。小山先生。
○小山委員 よろしいですか。ちょっと教えていただきたいのです。14番の感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したという項目ですが、これは「弱」とか「中」の中には、感染症だけではなく「事故の危険性のある業務」という言葉が入ってきているので分かるのですが、「強」の例のところでは感染症だけをとらえた書き方をしているので、少し作業現場として、危険性のある作業現場で業務をやっている人たちがおりますので、そういう意味では、もう1つ具体例として、そういうところをとらえて、感染症だけでなく書いたほうがいいのではないかなと思います。
 例えば最近、労災の事故は、結構、多くなっております。化学物質の取扱いも制度が変わりましたし、そういう意味では、少し何か具体例があったほうがいいのではないかと思います。ここは放射線も係るならば、そういった高レベルの放射線対策作業をやっている場なども、かなり感染症と同じような、同等な危険性をはらんでいる作業場となりますし、あと、トンネルだとか下水道だとか、そして高圧関連の作業場というのは、常にやはり危険をはらんだ場所なので、そういう作業場で業務をする人たちというのは、やはり「強」に近い状況ではないかなと思うので、感染症だけではなくて、そういったものも入れたほうが判定のときに少し分かりやすいかなと思うので、そういうことを少し検討していただきたいなと思います。
 そしてもう一点あるのです。次の17ですか、転勤・配置転換というところの項目で、「強」になる例として、「左遷された(明らかな降格であって配置転換としては異例、不合理なものであり、職場内で孤立した状況になった)」という、これが具体例として挙がっているのですが、左遷されたというのと、転勤・配置転換と同列のものとして扱っていいのかなという疑問です。むしろそうなれば、20番では、確かに地位の昇格、昇進になっているので、そこに入れるのもどうかと思いますが、地位の変更ということを考えれば、ある意味では20番の具体例にならないかなと思ったもので、その2点を少し教えていただけたらと思います。
 あとのほうは、本当に先生方がおっしゃったとおり、非常に分かりやすく、確かに私たちがこれを見て評価するにも評価しやすくなっているなという、イメージが湧いてくるなという感じで受け止めておりましたが、今の2点のところがもう少し、そういう意味では、具体例を検討していただいたほうがいいかと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。感染症のところと配置転換のところも、もう少し掘り下げて具体的に検討していただくということでよろしいでしょうか。三柴先生、いかがでしょうか。
○三柴委員 項目19について、先ほど、品田先生より性的指向について言及がありました。ここに例示として書かれている項目は、労基法の3条とか4条とか、要するに、明らかに違法とされるものになっているわけですが、あくまで例示であることを踏まえたとき、もう明確に法令上は差別だというものを書くのか、ある程度現代の状況も踏まえて、分水嶺となるようなのものを書くのかというところは判断のしどころかなと思っています。具体的には、障害と年齢というのを入れるか、あと、例えばフランスの差別禁止制度のようにやるのでしたら、容貌とかになると思うのですが、そこまでは入れないにしても、そういったものを書き込むのはどうかというのを事務局に検討していただければとは思いました。国籍とか人種による差別で精神障害というのは、今はあまり考えにくいのかなと思っています。むしろ、現に問題になった事件もあり、判断に迷うようなものを書いておく。それでも、総合的視点のところでかなり実質的な判断ができるような書きぶりになっているので、いいのではないかとも思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。では、ここのところも、少し事務局でまた検討していただくことにしたいと思います。ほかにはいかがでしょうか。田中先生、何かありますか。
○田中委員 特にはございません。本当に分かりやすくなったなと思っております。私も1点、小山先生がおっしゃった「左遷された」という表現には、若干抵抗があるといいますか、「強」の例として、この左遷というのもある程度客観的に説明されていますが、左遷されたと思っても、その後の状況が大事で、職場内で孤立した状況になったとか、かなり大きないろいろな心的苦悩を生じることになったみたいなところが説明としてないと、左遷されたという言葉だけが一人歩きして、それが「強」の例になるのは、ちょっと気を付けるような表現にしたほうがいいかなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。確かに左遷というと、そうですね、客観的にどう評価するかというところはやはり難しいところだと思います。ほかにはいかがでしょうか。
品田先生、どうぞ。
○品田委員 正におっしゃられるとおり、言われてみれば、左遷という言葉をここに入れて「強」の例にするのは、確かに誤解を招くかなと思いますので、ちょっと検討したほうがいいと思いました。
 もう一点、先ほど三柴先生が言われた件なのですが、そもそもこの19番については、非正規であることに対する差別というのが従前あった基準でして、それを、今回検討会の中でいろいろ議論して、こういった形でより広い範囲でとらえられるものにしたという経緯があったかと思います。そうした中で、基準法上の差別に照らして違法であるかどうかは、少なくとも労災においては関係ありませんので、そういうことが基準にあるということは考えないほうがいいかなと思います。そうした中で、やはり人種や国籍の差別、確かに日本では多く注目はされておりませんが、今後、そういうことは十分あり得ると考えますので、そういう意味において、これはそれなりの意味を持つと考えます。そういった中で、非正規であることがこの基準の当初のターゲットであったことを考えると、基本、こういう形でいいのではないかと私は思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。吉川先生、何かありますか。
○吉川委員 吉川ですが、2つコメントを追加いたします。まず14番の小山先生におっしゃっていただいたところは、「等」が「中」と「弱」に入っているので、前の青のところで追加した化学物質とかが含まれると私も理解していたのですが、よく読むと、確かに、「強」は感染症だけかなという感じがしましたので、化学物質等が含まれるような形で、「等」を加えるか、新たな例示を1つ入れても確かにいいのかなと思いました。
 もう1つは、追加で事務局から提供いただいた労働時間に関する点です。2021年のILOとWHOのシステマティックレビューで、これは脳・心臓疾患のほうでも、労働時間と心臓疾患との関係が出ていたものの、精神障害というかうつに関するものですが、週55時間ではネガティブになったという結果です。その前の2018年のVirtanenの論文では、弱い影響があるということで違った結果が出ているわけなのですが、論文から言えば、システマティックレビューでかなり水準の高いものなので、どちらも正しいと。ただ方法論が若干違うので異なったということだと理解しています。
 ただ、2018年のこのVirtanenの論文は、北米ではネガティブだけれどもアジアでは有意に出ているといった、地域性の視点を指摘しているのが非常に重要だと理解しています。その意味で、この評価表の中では、例えば長時間労働の後の出来事だとか、労働時間単独ではなく総合的な評価の中で判断されるという形になっていますので、日本の労働文化を踏まえた上での、それぞれの出来事が解釈されるような表になっていると思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。阿部先生、何か御意見ございますか。
○阿部委員 特にはございません。見やすくなっていると思いました。
○黒木座長 ありがとうございます。中野先生、いかがでしょうか。
○中野委員 私も、これまで述べてきた意見も反映していただいておりますし、本日は、この論点については特段申し上げることはありません。
○黒木座長 ありがとうございます。中益先生、いかがでしょうか。
○中益委員 私も特段の意見はございません。
○黒木座長 ありがとうございます。
○三柴委員 品田先生に1つだけお尋ねです。もともと非正規差別を項目化したものという経緯と、それから、先生が先ほどおっしゃった性的指向を入れることがどう関わるのか。そして、実際に起きそうな問題を拾い上げることがいけないかどうかという、そこについては御意見を改めて伺えますか。
○品田委員 まず、先ほど言いましたように、非正規であることを理由とする差別を禁じる規定が従前あったことに対する修正として、こういう形になったというものですので、当然、それらも含めて、こうした差別を対象としようという意図で変更がなされたという事実があります。それを踏まえる必要があるだろうなという意見です。性的指向について、加えたほうがいい、加えるといっても、ほかのところでアスタリスクで加えてありますので、そういう形で少し補足的に入れておいたらどうかということです。現実には、決して差別の意識を明確にもたらすパワハラ的な行動ではなくして、そうした人に対する差別的な取扱いがなされていると、少なくとも本人はそう思うということが、たまにですがありますので、そういう観点から、これもちょっと現代的な問題として含めたらいかがかという意見です。よろしいでしょうか。
○黒木座長 三柴先生、何か。
○三柴委員 御意見は分かりました。
○品田委員 はい。
○黒木座長 よろしいですか。この件はまた、事務局で進めていただくことにしたいと思います。
○三柴委員 はい、結構です。ありがとうございます。お考えいただければと思います。
○黒木座長 ありがとうございます。それでは次に、13ページから14ページの別紙2の、心理的負荷評価表の考え方のたたき台について御意見を頂ければと思います。
○田中委員 田中ですが、よろしいでしょうか。
○黒木座長 お願いします。
○田中委員 私は、これについても、本当に分かりやすくまとめられていてとてもよかったと思います。私自身もこだわっていた、一回の言動であっても執拗であればそれが認定される可能性もあるということを、しっかりと明示したほうがいいのではないかというところなのですが、それについてもきちんと分かりやすく説明を加えていただいているので、とても運用しやすいかなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。丸山先生、どうですか。
○丸山委員 全体的には分かりやすいと思いました。あと、最後から2つ目の項目の「労働密度が特に低い場合を除くものであり」というのがありますが、そこら辺が、なかなか実際の労働時間のカウントをするときに悩ましいときがあるので、ここではこのように記載して、例えば待ち時間であったり、いろいろな負荷の少ないものをどう扱うかというのは、運用等で細かく記載していただければいいのかなと思いました。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょう。小山先生、いかがですか。
○小山委員 私は、この考え方は非常に分かりやすくなって、まとめていただいて、特にこれで問題はないかなと思って読ませていただきました。特に問題はございません。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかの先生方、いかがでしょうか。
○吉川委員 よろしいですか。
○黒木座長 お願いします。
○吉川委員 吉川ですが、これもコメントです。14ページの新たに総合評価の視点が、田中先生にもおっしゃっていただいたように、明確に記載されたというのは、非常に評価に当たって重要かなと思います。特に、職場の支援・協力が欠如している、それから裁量性が欠如、これはこの間ずっと議論されてきたことだと思いますが、負荷要因だけではなくて、サポートがないことによって発症している事例をよく現場では見聞きをしますので、その意味で、これが総合評価の中に入ったというのは、いろいろな解釈の際に重要な視点だと改めて思いました。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。法律家の先生方、いかがですか。品田先生、いかがでしょうか。
○品田委員 私も全体としてよくできていると思います。特に、最後の「執拗」ということについての解釈、この点は様々な方が関心を持つ点だと思うのですが、あくまでも「執拗」というのは1つの言葉の表現であって、回数を表すものではないことが確認されることが重要だと考えていましたので、こういう形での表現で私は非常にいいのではないかと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。三柴先生、よろしいですか。
○三柴委員 結構です。
○黒木座長 ありがとうございます。それでは、皆様の御意見は、また事務局で取りまとめていただくことにしたいと思います。それでは、資料1の15ページの論点2の運用について、検討したいと思います。事務局から資料の説明をお願いします。
○西川中央職業病認定調査官 論点1の御議論、誠にありがとうございました。それでは論点2「運用」について御説明いたします。資料1の15ページを御覧ください。論点A、B、Cと分けておりますが、まずAです。Aは医学意見の収集方法、どのような医学意見を収集して決定を行うかについてです。右側の欄に現行認定基準を記載しておりますが、精神障害の認定基準では、どのような医学意見を収集するかをかなり詳細に規定しているところです。受診歴のない自殺事案、主治医の方がいらっしゃらない事案を除き、全ての事案について主治医の方の御意見を確認しておりますが、その上でそれだけで、つまり主治医の意見のみで決定するもの。そして、お一人の専門医の御意見で決定するもの。3人の専門医の合議体である専門部会の御意見を聞いて決定するものといった3つのやり方を定めているところです。具体的には右欄1、2、3とありますが、項番2の専門医意見による判断のところです。例えば③のところです。出来事の評価が「中」又は「弱」であることが明らかな場合や、④出来事の評価は「強」だけれども、何らかの業務以外の心理的負荷や個体側要因が認められる場合といったものは、専門医の御意見を伺うこととしております。また項番3の①ですが、全ての自殺事案について、あるいは②の「強」かどうか判断し難いものといったものなどは、専門部会の御意見を伺うといった内容が規定されているところです。出来事評価が「強」に該当することが明らかで、業務以外の心理的負荷や個体側要因が何にも確認されなかった場合のみ主治医意見のみで決定できることになります。
 参考までに、この認定基準が定められる前の判断指針の時代は全て専門部会で合議いただいておりましたが、現時点の認定基準になってからはこのような規定になっているところです。
 これに関しまして、資料2で実際の医学意見別の補償状況についてお示ししております。資料2を御覧ください。資料2は、医学的判断別ということで主治医、専門医、専門部会と区分しております。現在においては、専門部会で御検討いただいている事案が大体全体の3分の1ぐらい、専門医のものが6割前後、主治医のものが1割弱となっております。併せて、この区分ごとの処理期間をお示ししておりますが、主治医のみの御意見で決定する場合には6か月強、専門医事案ですと8か月強、専門部会事案ですと9か月を超える状況になっております。こちらは、もちろん調査が難しくて判断が難しい事案が専門部会事案となる面がありますので、部会意見を求めることが理由となって長期となっているとは限らないところですが、一方でやはり3名の先生方の日程を確保いただいて合議いただくということに伴って時間を要する面もあるところです。
 そこで、論点に戻っていただき資料1の15ページの論点です。現行認定基準になってから10年が経過し、決定事案は相当に集積をされてきたところです。先生方や行政側も共に一定の経験、知見を有するようになってきたのではないかと考えております。そして現時点でも、年間約2,000件、10年前のおよそ2倍の件数を決定している状況で、今後も請求件数は増加が見込まれる、決定すべき件数も増加が見込まれる中で、請求人の方々をお待たせしないためにも、一層効率的な対応が必要なのではないかと考えているところです。このため、こういった決定事案の集積を踏まえ、現行基準において専門部会意見による判断が定められている事案でも、専門医意見により判断できるものがあるのではないか、あるいは専門医意見によることになっている事案であっても、主治医意見で判断できるものがあるのではないかという論点です。具体的にはアスタリスクを3つ記載しておりますが、例えば受診歴のない自殺事案であっても、私どもは周りの方についての調査をいたしますが、そうしますと、いついつのあの出来事の後から明らかに落ち込んでという状況が認められる場合もあります。そういった場合、専門医の方に複数名お伺いしても、判断がぶれないのではないか、お一人の専門医の意見により判断できる場合があるのではないかということをお示ししております。また一方で、自殺の直前まで何ら兆候が見られないといった発病の有無や発病時期について判断が難しいという事案は、引き続き高度な医学的検討が必要と考えられるということで、専門部会で御検討いただく必要があるのではないかということも併せて、自殺事案を全て専門部会ということではなくてもよいのではないかという点。それから、出来事の強度につきましても、これまでの一定の集積があり、また認定基準もより使いやすいように見直していくことも併せて、専門医意見で判断できる場合があるのではないか。更に、先ほど御説明をしたとおり主治医意見の関係ですが、現在では業務以外の心理的負荷や個体側要因が何らか認められれば主治医だけでは決定できず、専門医以上の御意見を伺うという規定になっておりますが、業務による心理的負荷が「強」ということを前提としますと、顕著でない業務以外の心理的負荷や個体側要因があっても結論には影響を与えないと考えられます。ですので、そういった事案、業務以外の心理的負荷が顕著なものでなければ主治医意見により判断できるのではないか。一方で、労働基準監督署長あるいは専門医の方が高度な検討が必要と判断した場合、3人で合議をしたほうがよいと判断された場合、特に発病の有無や、治療中の精神障害にかかっておられての悪化なのか、新たな発病なのか判断が難しいといった事案、あるいは心理的負荷の強度が「中」か「強」か、なかなか判断し難いという場合などについては、引き続き専門部会による判断が必要ではないかと考えているところです。
 こういったたたき台をお示したものが、別紙3の17ページになります。17ページの図は、真ん中のほうに長い矢印を3本引いております。一番左側の矢印が、主治医の御意見のみで決定するもの。真ん中が、専門医の御意見を聞いて決定するもの。右側が、専門部会の御意見を聞いて決定するものとなっております。網掛けの部分が現行となっており、その上に記載をしているのが、現行をこのように変えてはどうかというたたき台の部分となりますが、先ほど申し上げたように専門部会の矢印のところには、専門医又は署長が高度な医学的検討が必要と判断した事案とざっくりとした記載をしております。医学的判断が難しいもの、出来事評価が難しいものといった、事案の状況などを踏まえて判断が難しいものを専門部会に御相談する趣旨で、各労働局の実情や各局の先生方の実情あるいは事案の状況などを踏まえて、御相談する事案を決めるようにできないかという趣旨です。一番左側の主治医の矢印のところは、出来事が明確に「強」であり、業務以外の心理的負荷や個体側要因に顕著なものは認められない事案というふうに記載をしております。顕著なものはという点がポイントで、顕著でないものであれば少し何らかあったとしても、主治医のみで決定してよいのではないかということです。こういったたたき台について、御議論いただければと考えております。
 続きまして、16ページの論点のBです。こちらは、精神障害を発病された方の自殺の取扱いについてです。労災保険法には、もともと故意による災害について保険給付を行わないという趣旨の規定がございます。しかしながら、右の欄にありますように、精神障害によって正常の認識が阻害されているなどの状態で自殺がなされた場合には、ここで言う給付を行わない「故意」には該当しない、給付をしていいのだという考え方を平成11年に整理をしております。この考え方について、維持してよいかということについて御議論いただければと考えております。
 論点のCです。そのほかの留意事項などについてです。Cの1は、セクシュアルハラスメント事案の留意事項についてです。セクシュアルハラスメント事案の留意事項につきましては、平成23年、この認定基準を定めた当時、専門検討会に分科会を置き、こういったセクシュアルハラスメント事案特有の事情を踏まえて御検討いただき、取りまとめが行われたところです。そこでは、ここの右欄にありますように①②③④と記載しておりますが、例えば、①被害者の方が勤務を継続したい、セクハラそれ自体を被害をできるだけ軽くしたいといった心理などから、行為者の方に迎合するような反応をする、あるいは行為者の誘いを受け入れることがある。ただ、そういった事実があったからと言って、それはセクハラではなかったと、セクシュアルハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならないということ。また被害者の方、被害を受けてからすぐに相談行動を取らないことがあるけれども、だからと言って心理的負荷が弱かったと単純に判断する理由にはならないということを示しているところです。これらの留意事項につきましては、現時点においても妥当なもの、重要なものと考えられるのではないかと存じますが、そのように整理してよいかということについて御議論をお願いしたいと思います。
 Cの2につきましては、そのほかの運用上の取扱いについてです。まず現行認定基準では、ICD-10のF5~F9に分類される対象疾病に関する事案、睡眠障害や発達障害、パーソナリティー障害といったものを、今回業務によるストレスによって発病したと請求があったような事案。あるいはこの認定基準により判断することが適当でないというふうに思われる事案については、本省に協議することという規定をしております。これにつきましては、第7回のときにも少し御説明しましたが、現在ICD-11が既に発効されているところです。しかしながら、まだ日本語訳は作成中といった状況です。こういった状況を踏まえますと、このICD-10に基づく今の取扱いについては、当面維持をすることが適当ではないかと考えているところです。
また、事実認定などの方法などについて助言が必要な場合には、法律専門家の意見を求めることも認定基準に記載をしております。こちらも、これは必ずということではなく、あくまで必要に応じてというものですので、維持してよいのではないかと考えておりますが御検討いただければと存じます。
論点2の運用につきましては、以上でございます。御議論のほどよろしくお願いいたします。
○黒木座長 ありがとうございました。それでは、ただいま事務局から論点2の資料の説明がありました。はじめに、資料1の15ページの論点2のA、医学意見の収集について、より効率的な決定ができるようにする必要があるのではないかということについて検討したいと思います。この件について、いろいろな御意見があると思いますので、現状あるいはどうすればいいかということで、部会に関わっている先生方の御意見をまずお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
○田中委員 よろしいでしょうか。実際、かなり時間が掛かっているという現状が、まだ十分に解決されていないことを考えると、一番時間が掛かる部会方式から専門医方式へ、また専門医方式から主治医方式へ割合を増やすことはとても大事なことだと思っています。特に自殺事案を全て部会方式でやっていましたが、実際にやっていても明らかに専門医だけでも十分である事例も多く含まれていることは確かですので、そういったものを枠を変えて専門医に回すということができればと思います。
 専門医で検討していても、やはり不明な点が分かってまた部会にということは現在もやっていることですので、そういった安全弁があれば、現行の御提案どおりに専門医方式に移していくということはそれほど特に抵抗はなく、この案でいいのではないかと感じております。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。全ての自殺事案を部会ということではなくて、専門医が判断をしてそれでも難しいものは部会という流れになるのであれば、効率が良くなるということだろうと思います。荒井先生、いかがでしょうか。
○荒井委員 1点、この別紙の3の意見聴取のところについて、私たちが労災医員としていろいろな事案に関与していくわけですが、法律の専門家のところが破線になっていますが、これをもう少し機動的に、私たちが疑問に思ったことはすぐに法律家の先生にも御意見を頂戴して、それを含めて総合的な判断をしていくということで、これは破線ではなくて実線で、意見聴取を法律の専門家の先生にもお願いすることを担保するということは必要ではないかと思っております。いかがでしょうか。
○黒木座長 ありがとうございます。この件に関してはいかがでしょうか。確かにこれは心理的な負荷の強度ということにも関係してくるものだろうと思いますけれども、これは、事務局のほうで何か御意見はありますか。
○西川中央職業病認定調査官 どういった観点で専門医の先生から御指摘を頂いたかにもよるかなとは思いますが、現行でも必要に応じて実施をするという形になっておりますので、例えば事前の御相談等で専門医の先生から法律的に、ここの解釈が知りたいとか、事実認定はどうなるのかというような御指摘があれば、これは必要であるということになると思いますので、適切に御相談をするという形でやらせていただきたいと思っております。
○黒木座長 よろしいでしょうか。品田先生、どうぞ。
○品田委員 一応、法律家の端くれとして言わせていただくと、正直言いまして、法律家といってもこの問題に詳しい方が全国にどれだけおられるかが疑問であるとともに、多くの場合、弁護士さんということになるかと思いますが、弁護士さんもいろいろな立場もありますし、また労働のこうした問題に詳しい方がおられる地域もありますが、そうでない方もおられます。そういう意味においては、必要に応じて聞いていただくことは重要かと思いますが、ここは破線ぐらいでいいのではないかなというのが私の正直な気持ちです。この種の問題は、やはり医学的な問題であって、正直に言って法律で考えてできることはあまりありませんので、お医者さんに主体になっていただければと思います。
 ついでに言わせていただきますと、何よりも、先ほどのどのぐらい時間が掛かっているかということについてのポイントはとても重要で、確かに田中先生がおっしゃるとおり時間は掛かるのですが、しかし極力短くするように、審査会などでもやっておりました。また、現在は審査官の審査を受ければ、審査会を飛ばして裁判所に行けるというようなことになっている背景は、やはり一刻も早く救済を確定させるべきだという考え方があるからだと思います。そういう意味で田中先生がおっしゃられたとおり、専門医でできることはやっていただくとともに、法律家に聞くことも必要な場合はしてもいいとは思いますが、破線ぐらいでいいのではないかというのが私の意見です。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ここはどうでしょう、荒井先生、また事務局のほうでも検討してもらうと。
○荒井委員 なぜ申し上げたかと言いますと、事前の相談がありまして、そのときに三柴先生が一度御指摘になった、法的には問題がないことが心理的負荷が発生するといった場合に法律家の先生方の意見を聞いて、それを参考にして我々が判断をしていくという流れもあってもいいのではないかと思いまして、別に破線だからということはないのですが、重みとしては、今、品田先生がおっしゃったように、時間が掛かってしまったりすると問題があるかと思いますが、それがスピードが早くできるのであれば破線ではなくて実線でもいいのではないかと思っておりますが、これは法律家の先生方の意見も参考にといいますか御意見を頂ければと思います。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。三柴先生、いかがですか。
○三柴委員 なかなか意見を申し上げにくいところがありますけれども、法律家の強みというと、要するにサイエンスで明確にエビデンスがない中でコンセンサスを形成していったり、理論的に話を整理して考えやすくしたりなど、特にそれを法に照らして行うというところに取り柄があるだろうと思っています。この件については私も破線のままでいいかなと思っておりまして、そういう法律家の取り柄を活用できる場面があればお聞きいただくと、そこは躊躇しないというぐらいのニュアンスでいいかなと思います。
○荒井委員 ほかの先生方の御意見を聞いて、この検討会で破線でいいということであれば、それはそれで私は異論ありません。
○黒木座長 必要な場合には迅速に聞ける体制ということでよろしいですよね。ほかにはいかがでしょうか、何か効率化ということについて御意見がありますか。丸山先生、いかがですか。
○丸山委員 破線のままでいいと思います。今お話があったように、サイエンスといいますか医学的な知見で公正、公平に判断していくという流れがまずあって、すぐさま法律家の活用ありきでもないので、やはり、その辺りはきちんとこれまでどおりに進めていただいたほうがいいと思います。
 平均処理期間が長くなっているのが、やはり私も問題と感じ、できるだけ早く処理できるといいかなと思います。ただ、専門部会の全体の平均が9.6か月とか、それから専門医であれば8.0か月とかになっていますが、都市部は高度労災補償調査センターのような機関があって割とスムーズに、それから専門部会もかなり頻繁に行われているので、ちょっと地方とは違うかもしれませんが、その辺りの違いがどうなのかということも知りたいです。一部の遅いところが引っぱっているようなところがあるのか、もしあれば、その分布がどうなのかが分からないんですね。そういうことがあれば、改善の焦点化をはからなければ、早くなるところはより早くなり、遅いところは相変わらず変わらないなどが起きやすい。
 さっきお話があった日程確保の問題というのがあれば、それは何か改善していただく必要があり、そういうことで遅れることはなるべく減らす一方、内容で非常に慎重を要する調査が求められたり、訴訟になっていて非常に細かいところの確認が必要であれば、ある程度時間が掛かることはやむを得ないとは思います。事務処理的なことでも可能であれば、少しでも何とか詰めれないかなと思います。
 都市部といいますか、非常に件数の多いところと少ないところとの違いがどうかということも、この資料だけではちょっと分からないので、口頭でも教えていただければ、いろいろ考える、判断の材料になるかと思います。いかがでしょうか。
○黒木座長  ありがとうございます。事務局、いかがでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 事務局から御説明をさせていただきます。全体の分布を地域別にということはなかなか難しいのですが、局によって平均的な処理期間の差はございます。ただ一概に都市部のほうが必ずしも早いというわけでもなく、それぞれの状況によってボトルネックとなっている部分が異なっているのではないかというところがあります。
 やはり、件数の多いところでは当然、毎月一定数の事案がありますので、事案の有無にかかわらずといいますか、事案がないことなどはあり得ないということで、最初から先生の御予定を確保して、そういった面での遅れはおそらくほぼないだろうと思っておりますが、一方で請求が多いのもいわゆる都市部ということになりまして、やはりマンパワー的な大変さという面もあります。
 また、規模が小さい局においては、請求件数が少ないことで経験が積みにくいということも、もちろんありますが、一方でその事案に一定の手間を掛けられるという意味でのメリットがある局もありまして、本当に千差万別で長い局もあれば短い局もあるといったような状況になっております。その中でも事案によって、この局だから必ず長い、この局だから必ず早いということでもなく、やはり当然事案による差も出てきますし、件数が少なければ少ないほど一事案の影響が大きいために、ぶれが大きいというような状況もございます。
 ただ、今、先生がおっしゃられたように、我々としても請求人の方をお待たせしないようにできるだけ早く決定はしたいと思っておりますので、事務的に早くできる部分についてはなるべく早くできるようにということを全国的に取り組んでいっておりますし、今後も取り組んでいきたいと思っております。そのほかにも田中先生から御指摘がありましたように、部会でないといけないとルールで決まっているから部会に御相談をしているという事案も、現状ないわけではないところもありますので、様々な観点から処理期間を短くしていきたいと私どもも思っておりますけれども、そのうちの1つとして、この基準について御検討いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○黒木座長 ありがとうございます。要するに調査による時間が非常に掛かったり、あるいは既存の精神障害というとカルテを全部集めてそれを分析すると。これも大変な労力で、やはり時間も掛かるということもあるので、どういった事例が長引いているのかということもある程度傾向をつかんで、そこを客観的に見て短くできるかどうかということも、また検討をしていただければと思います。ほかにはいかがでしょうか。
○田中委員 すみません、余計なことかもしれませんが、実際、部会に回ってくるのは、悪化か新たな発病かみたいなところの判断のケースが最近は増えているような気がします。増悪、悪化についての判断は少し難しいところもありますが、新たな発病についてはこの検討会でも少し議論がありましたけれども、東京では経時的に、ずっと経過を表に分かりやすくまとめていただいていて、その中でも、例えば何か月以上、就業制限もなく治療の特別な変更もない状態だったら、もう、この間は寛解していて新たな発病とみなすみたいなことも、ちょっとは基準化してもいいのかなと。それによって専門医で処理するものを増やすということも検討してもいいのかなとは個人的には思っております。
○黒木座長 ありがとうございます。田中先生の御指摘は非常に大事なことで、本当にこれは大変だと思っていて、請求人が自分はここから悪化したと主張している場合もあるし、それでなくても全部洗うということがやはり今行われているので、この辺りも簡略化できないかどうかということは、今後検討されたほうがいいかなという気はします。ほかにはいかがでしょうか。小山先生、いかがですか。
○小山委員 石川局は確かに都市部に比べたら件数は少ないです。比べたら件数は少ないかなとは思いますが、できるだけ早くに判定しようというような努力はしておりますので、そういう意味では今のところ、先ほど事務局の方が説明された方法で、うちも準じてやっておりますので、そう何か問題はないかなと思って事務局の話を聞いておりました。
 それから、法律の専門家のところについては必要に応じて法律家の相談ができたり、そして、複雑な事例の場合に厚生労働省のほうにお聞きできるということが必要に応じてできており、そういう場があるということが私たちは評価するときに非常に役に立っていると思いますので、そういう意味では破線でいいと思います。そういう相談できる法律家であったり、複雑な事例、記載された事例にないような場合に扱いをどうするかというときに、ちゃんと本省のほうに聞くことができれば、特に今のところ問題はないかなと思っております。
 今のやり方が早いのか遅いのかは分かりませんけれども、私たちはできるだけ早くにということは心掛けておりますので、局の調査をする方たちにも、できるだけ早くに調査をして、こういうことが必要だというようなことも、場合によっては相談を受けたら指示をしますし、それから、経時的な並べ方をしていただいて、確かに、治療歴があるかないかなどを分かりやすく提示していただくことも試みております。そういうことで、自分のところだけのことで言えば特に問題はないかなと思っております。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかには法律家の先生方、いかがでしょうか。吉川委員、何かありますか。
○吉川委員 特にありません。
○黒木座長 よろしいでしょうか。それでは、先生方の意見を踏まえて、また事務局のほうで更に効率化ができるように検討をしていただければと思います。
 それでは続いて、資料1の16ページ、論点2のB、精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合の考え方について検討します。現在、業務によりICD-10のF0~F4に分類される精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には、自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し、業務起因性を認めるとの運用になっておりますが、これを引き続き妥当なものとしてよいか、あるいは何か追加、修正すべき点があるかということについて御意見をお伺いしたいと思います。この件に関しては、いかがでしょうか。
○荒井委員 いろいろな自殺の案件があって、受診なしのケースもありますが、御家族、その他の方の情報によって発病を推定していくケースは多くあります。ただ、例外的なのは、明確な覚悟の自殺だと判断せざるを得ないような記録、遺書等が残っているものについては、そういう観点からも検討することになります。いずれにしろ、この前8割という数が出ましたけれども、自殺の原因の多くが精神障害によるものだということが、ほぼ医学的、一般的に承認されておりますので、基本的には発病があるのではないかという視点から調査をすることだろうと思っております。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。この件に関しては、いかがですか。現状ということでよろしいでしょうか。
○田中委員 現行基準のままでいいかと思います。
○黒木座長 ほかの先生方、よろしいですか。
○小山委員 はい。
○黒木座長 これは現状、妥当なものとして今後も運用をしていくということで、よろしくお願いいたします。
 次に、資料1の16ページ、論点2のC1、セクシュアルハラスメント事案の留意事項についてです。これについて追加、修正すべき点があるかについてです。これも、御意見はいかがでしょうか。4つ書いてありますけれども、よろしいでしょうか。
○田中委員 田中です。現行の認定基準のままで何も問題ないと思っております。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。丸山先生、いいですか。
○丸山委員 よろしいと思います。
○黒木座長 荒井先生。
○荒井委員 基本的に問題はないと思います。
○黒木座長 小山先生もよろしいでしょうか。
○小山委員 はい、これでいいかなと思います。
○黒木座長 これも現状ということで運用することにしたいと思います。
 それでは、次に資料1の16ページ、論点2のC2、その他の運用上の取扱いについてです。現在の運用において、ICD-10のF5~F9に分類される対象疾病に係る事案、及び認定基準により判断することが適当でない事案については、本省に協議する。また、事案によって法律の専門家に意見を求めることを記載しているところです。これについて御意見がありますでしょうか。
○荒井委員 荒井です。日本語訳が出ていないというのも大きな要因であることは間違いないのですけれども、厚生労働省が死亡統計によるもの、今ICD-10で示しておりますので、これがICD-11に変更になった時点で明確に議論をしていかなければいけませんが、それまでに我々が対応できるように、ICD-11の準備をしていくことが必要だと思っております。既にICD-11の傷病名で申請が出てきているものがありますので、段々と準備をすることが必要だと思いますが、変更の時点は、今申し上げた死亡統計が変わったときに変更していくというのが妥当だろうと思っております。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ICD-11については、精神神経学界では、シリーズでもう出ているのですけれども、これは1冊のまとまった本としてはまだ出ていないので、近々出されるものと思いますので、そうなったらきちんと検討しなければいけない。ICD-11ではいろいろな面、考え方も大幅に変わりますので、これは検討が必要かなという気がします。ほかにはいかがでしょうか。この件もよろしいでしょうか。
○小山委員 はい。
○黒木座長 これも継続ということで、よろしくお願いいたします。以上で、論点2の検討は終わります。
 次に論点3、複数業務要因災害に係る心理的負荷の強度の判断に係る整理について、追加、修正すべき点があるかです。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○西川中央職業病認定調査官 論点2についての御議論ありがとうございました。最後となりますけれども、論点3、複数業務要因災害について説明します。資料1の18ページを御覧ください。複数業務要因災害につきましては、令和2年の検討会でも御議論いただいたところですけれども、兼業・副業で、2か所以上で働いていらっしゃる労働者の方、これを複数事業労働者と呼んでいます。こういった複数事業労働者の方の二以上の事業、複数の事業の業務を要因とする傷病のことです。これについて新たな給付を行う、業務災害、通勤災害とは別に、新たな類型として給付を行うということが、令和2年の法改正により、令和2年9月から施行されております。この複数事業労働者でも1社の業務で強い心理的負荷となるという場合には、業務災害として認定するわけですけれども、1社の業務だけでは強い心理的負荷とは認められないという場合には、二以上の事業の業務の負荷を総合的に評価することとなります。この場合の心理的負荷の強度の判断に関して令和2年度の検討会では、18ページに書いてありますとおり整理したところです。アスタリスクが3つありますけれども、①二以上の事業において、業務による出来事がその事業ごとに、会社ごとにある場合には、異なる事業における出来事はそれぞれ具体的出来事に当てはめて心理的負荷を評価して全体の評価を行う。こういったものは別の会社の出来事ですので、原則としては関連のない複数の出来事の評価方法でやるという形の整理。そして、②労働時間、労働日数、こちらは脳・心臓疾患と同じですけれども、数字的なものは通算するということ。③こういったことに基づく判断に当たりましては、それぞれの事業における職場の支援などの心理的負荷の緩和要因をはじめ、二以上の事業で労働することによる個別の状況を十分勘案して、心理的負荷の強度を全体的に評価するといったような整理をまとめたところです。このように整理しまして、これを認定基準に盛り込んだところですが、今回、今の精神の認定基準全般を検討するに当たって、改めてこの点も御検討いただきたいというものです。とはいえ、事情は令和2年に検討いただいたときと変更はないと考えています。なお、その後の決定状況については右欄に記載してありますが、先ほど申し上げたとおり令和2年9月1日施行になりますけれども、精神障害に関しましては令和3年度までにおきまして支給決定事例はありません。さらに、この間、不支給も含めた決定事例もないというところです。いずれにしましても、考え方を変更するほどの事情はないと考えていまして、現行の整理は維持をすることが適当ではないかという論点のたたき台としていますけれども、御議論いただければと思います。説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
○黒木座長 ありがとうございます。ただいま事務局からの説明がありましたけれども、この件に関して御発言があれば、よろしくお願いいたします。
○三柴委員 よろしいですか。
○黒木座長 どうぞ。
○三柴委員 結論的に事務局案に賛成です。理由ですけれども、海外の例に倣っても、複数の就業先の就労を踏まえるという判断でいいということと、それから、日本独自の事情として、副業・兼業を促進しようという流れがあること。それから、大きな産業の流れ、働き方の流れを踏まえて、労災も社会的に連帯して補償していくという方向にもっていく必要があると考えられること。以上の3点から、事務局案に賛成です。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。品田先生、何か御意見ございますか。
○品田委員 私も基本的には賛成です。実際上、労働時間以外の問題をどのように評価するかを一般論で書くことは極めて難しいと言わざるを得ないと思います。そういう意味で、具体的な内容を書き込むべきではないと思います。全体として評価するという、この表現しかないと思いますので、事務局案に賛成です。以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ほかの先生方、いかがでしょうか。法律家の先生、何か御意見ございますか。大丈夫ですか。丸山先生、何かありますか。
○丸山委員 先生方が言われたように、いろいろなことを書き込みすぎるとややこしくなるので、このままがいいと思います。
○黒木座長 よろしいですかね。それでは、現状のままということで、よろしくお願いしたいと思います。以上で、論点3の検討を終了します。
 本日の議論は、これで終了としたいと思います。皆様の御意見は、また事務局で検討していただくことにしたいと思います。本日の議論で、全体を通じて何か御意見、御質問があれば、御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、本日の検討会は、これで終了ということにしたいと思います。どうもありがとうございました。
○本間職業病認定対策室長補佐 長時間の御議論、ありがとうございました。次回の検討会の日時、開催場所につきましては、後日改めてお知らせをさせていただきますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。本日は、お忙しい中、大変ありがとうございました。