第159回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和3年11月19日(金) 13:00~14:00
 

場所

 オンラインによる開催
 厚生労働省 職業安定局第1会議室
 

議事

議事内容

○伏木補佐 お集まりいただきまして、ありがとうございます。定刻の少し前ですが、開会に先立ちまして、今回の開催の方法の御案内を申し上げます。これまでしばらく部会長以外の皆さんはオンラインという形で御参加いただいていましたが、本日からこちらの会場とオンラインの併用という形での開催となっております。また、部会長がオンラインでの御参加という形になっております。方法としてはこれまでと同じくですが、部会の進行中、オンラインで参加の皆様はマイクをオフにしていただき、発言の際には挙手ボタンでお願いします。部会長のほうから指名があった後に御発言いただければと思います。会議進行中に通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や、音声が聞き取れなくなった場合等、トラブルがありましたら、チャットや、御案内しております電話番号まで御連絡ください。また、通信遮断が生じた場合は、部会を一時休憩とすることもあり得ますので、あらかじめ御容赦ください。

傍聴につきましても、本日も感染症のまん延防止の観点から、別会場にてオンラインで行わせていただいております。傍聴の皆様におかれましても、御理解いただきますよう重ねてお願いいたします。

進行に関しての説明は以上となりますので、部会長、進行のほど、お願いいたします。

○守島部会長 皆様方、急な開催、お集まりいただいてどうもありがとうございました。それでは、ただいまより「第159回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」を開催いたします。今日もよろしくお願いいたします。

 本日の出欠状況ですけれども、公益代表の小畑委員と水島委員、労働者代表の三島委員、使用者代表の柴田委員が御欠席と伺っております。

 それでは議題に入りたいと思います。まず、議題1「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について」です。前回の部会では主として財源面に懸念をいただきまして、答申を見送ることとさせていただきましたが、改めて事務局から財源面も含めて現在の状態を御説明いただき、その後、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。それでは、事務局、よろしくお願いいたします。

○長良雇用保険課長 雇用保険課長の長良でございます。本日の議題の1点目は、休業支援金の支給の12月までの延長を内容とする省令案要綱の諮問についてです。今、部会長からお話がありましたように、財源面に関する御懸念ということがありました関係で答申は見送られたわけですが、その後の状況に関して、私から御説明をさせていただきます。

現在、雇用調整助成金の財源が不足をしている状況でございますが、これについては既にこの部会でも縷々申し上げてきたところでございます。また、雇用保険の本体の積立金に関しましても、令和3年度末において、4,000億円の水準まで減少するというようなことで、極めて逼迫をしているということです。以上のことから、当面の雇用調整助成金などの財源確保、雇用保険財政の安定を図る、この2点を目的といたしまして、現行のスキームでは雇用保険臨時特例法に基づく一般会計からの繰入れのルールがあるわけですが、このルールを活用いたしまして、一般会計からの繰入れを行うことによって、今申し上げた当面の雇用調整助成金などの財源確保、雇用保険財政の安定を図るということを講ずるべく、現在、経済対策の議論の中で最終的な調整を行っているということでございます。

経済対策に関しましては、近々閣議決定予定でございますし、必要な補正予算などの措置も講じられる見込みです。今この時点では私どもからはこのような御発言しかできないわけですが、今申し上げた繰入れに関しまして、繰り返しになりますが、経済対策のほうで盛り込む方向で最終調整を行っているということでございますので、そのような前提で、この省令案の諮問について御議論いただければと存じます。よろしくお願いいたします。

○守島部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問、御意見がありましたらお伺いしたいと思います。

○平田充委員 御説明ありがとうございました。部会長からも御説明がありましたけれども、前回の部会で、収入確保策が示されなかったことを理由に、直ちに答申するのは適切ではないと申し上げました。今、課長から御説明がありましたとおり、今回、一般財源の投入によって、財源の確保を前提に、特例の措置の延長がなされると理解をしました。ただし、投入される一般財源の大部分は積立金を経由して二事業への貸出しになります。結果として、事業主のみが負担する雇用保険二事業の借入金が更に増大するということは事実であると理解しています。繰り返しになりますけれども、感染症対策として特例措置が延長されていますので、適切な費用分担の在り方の検討という課題は引き続き残っていると認識しています。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。続きまして、杉崎委員お願いいたします。

○杉崎委員 失業率を始めとした雇用関連指標を見ましても、長引くコロナ禍において、雇用調整助成金や休業支援金の特例措置が「雇用の維持」、「事業の存続」、「社会の安定」に果たしている役割は大きく、有効に機能していると認識しています。したがって、特例措置の12月末までの延長自体は、財源の確保のめどがたったこともあり、妥当であると考えます。雇用吸収力のある産業や成長産業への労働移動の必要性は十分に認識していますが、経済・雇用に関する各種指標がコロナ禍以前の状況に戻るなど、コロナ禍が収束し、経済が回復するまでの間は、雇用調整助成金等の特例措置、とりわけ業況特例は対象労働者11日当たりの上限額、助成率など、現在の助成内容を延長すべきであると考えます。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。ほかにどなたか御意見、御質問はありますでしょうか。

○冨髙委員 ありがとうございます。新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数は第5波以降かなり減少しておりまして、回復の兆しは出てきているのだと思いますが、コロナ禍の前と比較して業況がそれほど回復していない産業、企業、あるいは地域からは、雇調金の特例措置と休業支援金によってようやく雇用が守られているのだというような切実な声が、現在でも我々に寄せられています。先ほど説明がありましたとおり、雇調金、休業支援金などの支給に支障が生じない程度の一般財源の投入強化をはじめとした収入確保策の具体化というところは、一定程度果たされるものと我々としても捉えましたので、本議題の諮問に対する答申を今回の部会で行って差し支えないのではないかと考えています。したがって、休業支援金の現行措置を12月まで継続する省令案要綱については、おおむね妥当だというように考えているところです。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。ほかにどなたか御質問、御意見はございますか。

 それでは、当部会としては、「新型コロナウイルス感染症等の影響等に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」につきまして、おおむね妥当と認めることとし、その旨を職業安定部会長宛てに報告いたしたいと思います。それでよろしいでしょうか。

(了承)

○守島部会長 ありがとうございます。では、この議題は終わらせていただきます。それでは、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」の報告文案を画面に写しますので、御確認いただければと思います。

(報告文案画面共有)

○守島部会長 ただいま画面に表示されている報告文案によって、職業安定分科会に報告したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

(了承)

○守島部会長 ありがとうございます。それでは、この報告文案で、後ほど開催される職業安定分科会に報告いたします。

 続いて、議題2に移ります。議題2は「雇用保険制度について」です。事務局から資料について説明いただき、その後、委員の皆様に御議論いただくことにいたします。事務局、御説明をよろしくお願いいたします。

○山口調査官 それでは資料2に基づいて御説明いたします。「雇用保険制度の財政運営」と題した資料となっております。まず1ページを御覧ください。失業等給付関係の収支状況の資料となっております。下から2段目に積立金残高の項目があり、令和元年度は4.4兆円ほど積立金がございました。令和2年度になり保険料収入が3,800億円、これが保険料率2‰に相当するものですが、それに対して失業等給付費が1.4兆円弱となっております。少ない保険料に対して支出が多いので、差引剰余が-1.1兆円となっており、これは積立金を取り崩すことによって充てる構造になっておりました。

ここにコロナ禍が起き、雇用調整助成金で大きな支出が生じたということで、一番下の欄に雇用安定事業費への貸出額累計のところで1.4兆円弱、積立金から二事業へ貸出しを行ったという結果として、積立金が更に取り崩されるという形になっております。令和3年度も同じ構造が継続し、結果として積立金残高が4,039億円、貸出し累計額が1.6兆円となっている状況です。

 2ページは雇用保険二事業関係収支の状況です。同じく下から2段目に安定資金残高という欄があり、令和元年度の数字は1.5兆円となっておりました。これが令和2年度は雇用調整助成金の支給が非常に大きくなったことにより、安定資金残高が0円となったところです。雇調金等の欄を御覧いただきますと、収入に対して支出が3.6兆円となっております。このうち6,500億円は令和3年度に繰り越しておりますので、実質的には3兆円の支出となっております。

 安定資金を取り崩しても足りない部分については、一番下の欄にありますように、積立金からの借入れという形で1.4兆円弱借入れを行っているところです。令和3年度についても同様の状況が続いており、特に雇調金の予算は、もともと当初予算で用意しておりました6,117億円に、前年度から繰り越してきました6,576億円を加えた1.3兆円弱の予算を用意していた状況です。これに対して、現在、月平均2,000億円の支出が継続しているということです。

 3ページです。失業等給付に係る雇用保険料率、それから受給者実人員は失業手当を受けている方の人数ですが、それと積立金、それから国庫負担率の推移の表です。棒グラフが積立金の残高を表しており、平成27年度に過去最高6.4兆円となっておりました。これに対して、近年、底になっておりますのが平成14年の4,064億円で、足元の令和3年度は4,039億円ですので同程度の水準となっているところです。

 青い線を御覧ください。こちらは受給者実人員の折れ線グラフです。平成15年改正で給付内容を見直したことがあり、それ以前は少し実態より多く実人員が出る傾向にありますので平成16年以降で御説明いたしますが、平成21年度にリーマンショックが起こったときに85万人といった水準まで上っておりました。その後、経済情勢は改善し、平成30年度の37万人まで下がっていたところです。令和2年度は48万人と若干増加しており、令和3年度が59万人となっておりますが、これは予算ベースでの数字ですので実績はもう少し下がる見込みとなっております。

 それから緑の線が基本手当の国庫負担率についての折れ線グラフです。平成5年に本則の1/480%、つまり20%という水準になっておりましたが、平成10年に更にそこから引き下がっておりました。ただこの間、雇用情勢が悪化し、積立金が減少した背景があり、平成13年度は本則の25%水準に戻っております。その後、順調に積立金が積み上がってきたこともあり、平成19年度から当分の間、本則1/455%水準とするとされ、更に平成29年度から本則の10%水準になるといった経過をたどっております。

 赤い線は雇用保険料率の推移になっております。平成5年から平成12年までは0.8%でしたが、積立金が非常に少なくなってきたことも背景にあり、順次、引上げが行われておりました。その後、経済情勢の改善に伴い、少しずつ保険料率が下がってきており、平成28年度に0.8%という水準になり、更に平成29年度から0.6%、令和2年度から0.2%に下がっておりますが、これは育休分を区分経理したということであり、失業等給付分については実質的には変更ないということです。

 4ページは、雇用安定資金残高及び雇用保険二事業に係る雇用保険料率の推移のグラフです。二事業の場合、保険料率は安定資金残高がある程度積み上がる場合は弾力条項によって0.3%に引き下がるという構造です。平成19年から弾力によって0.3%に引き下がっていたわけですが、リーマンショックが起こった影響で雇調金の支出が増大し、安定資金を大幅に取り崩したことから、弾力条項で0.35%に保険料率が戻っておりました。その後、経済情勢の回復ということもあり、順調に安定資金残高が積み上がっておりましたので、また弾力の発動により平成28年度から0.3%となっていたところです。令和元年度に1.5兆円まで安定資金残高は積み上がっておりましたが、令和2年度はコロナの影響で雇調金支出ということで0円になっていた、令和3年度もその状況が継続しているということです。

 5ページは、近年の雇用保険料率と国庫負担割合の変遷と考え方について整理をしたものです。まず一番左側の青い枠囲みは、平成19年度に国庫負担を当分の間、本則の55%としたときの雇用保険部会報告の抜粋となっております。雇用保険制度について、国庫も失業等給付に係る費用の一部を負担している考え方ですが、雇用保険制度における最も主たる保険事故である失業は、政府の経済政策、雇用対策と無縁ではなく、政府もその責任の一端を担うべきであるとの考え方に基づいております。したがって、この国庫負担制度を全廃することは、国の雇用対策に係る責任放棄につながり適当ではないとされております。

ただし、当時、行政改革推進法の制定があり、特別会計の改革が行われておりました。この中で国庫負担の廃止を含めて検討とされていたわけですが、先ほど御覧いただいたように全廃は適当ではないとしつつも、雇用保険財政の状況や国庫負担の縮減、過去の縮減方法に鑑みて、雇用保険制度の安定的な運営を確保できることを前提として、当分の間、本則の負担額の55%に引き下げることもやむを得ないとされたところです。

 次に真ん中のオレンジの四角囲みは、平成28年度に保険料率を本則12/1000、弾力で8/1000としたときの雇用保険部会報告です。平成26年度末の積立金残高が62,586億円に上っており、財政収支が非常に多い状況でした。そこで過去10年間(平成17年度から平成26年度まで)の平均的な雇用情勢(受給者実人員で約61万人)を想定して収支を弾きますと、収支均衡となる雇用保険料率は12/1000程度となるということで基本となる保険料率が設定されたところです。こちらは弾力を発動して8/1000に引き下げたケースを想定して試算を行っても安定運営を行えることが確認されたところです。

 一番右の緑の枠囲みは、平成29年度に保険料率と国庫負担の両方を引き下げたときの雇用保険部会報告です。保険料率は、積立金残高が64,260億円となり、弾力倍率2を大きく上回る状況で安定的な運営が維持され得ると見込まれる3年間に限り、雇用保険料率を2/1000引き下げ、労使の負担軽減を行うとされました。また、国庫負担についても過去保険料率とあわせて国庫負担についても一定軽減してきた例があることも踏まえ、アベノミクスの成果等の果実を還元するという観点から、国庫負担について3年間に厳に限定し、本来負担すべき額の10%に相当する額とすることもやむを得ないと結論づけられたところです。

 最後の6ページは、受給者実人員に応じた雇用保険財政の運営イメージについての資料です。先ほど御紹介しましたように、現行の保険料率(失業等給付分0.8%)は、平成28年改正時に過去10年の平均受給者実人員(61万人)にバランスする水準ということで設定されたところです。これを直近の実績をもとに、収入、支出、それぞれ一定の仮定を置いた上で計算し直したということです。まず、支出面の前提ですが、主として支出は基本手当の受給者実人員に応じて変動すること。受給者実人員60万人の場合は、足元の実績に置き直すと支出は約15,500億円であること、具体的には平成30年度から令和2年度決算を基礎とした金額に置き換えております。そして、実人員が10万人増減するごとに給付、支出が約1,600億円増減する形になっております。それから過去実績から見ますと、先ほど御覧いただきましたように、受給者実人員の変動幅はおおよそ40万人から80万人程度の幅であること、具体的には最も底だった平成30年度の37万人に対して、リーマンショックのときは85万人であったことを前提にしております。また収入面は、保険料収入が1‰当たり約1,900億円という収入実績となっております。

以上を踏まえた上で、下の表で真ん中の60万人のところを御覧いただきますと、支出が15,500億円となっており、収入は項目としては保険料、国庫負担の2つになっておりますが、国庫負担については、水準をどの程度に置くかということで、上から本則の10%、真ん中が本則の55%、一番下が本則水準という金額で多少の幅があります。その前提の上で保険料をバランスする水準はどこかと計算した場合に8‰という結果になっております。これに対して4080万人の幅で変動の可能性があるので、それぞれ検証してみますと、40万人の場合は支出が12,300億円、同様に国庫負担も起用しますと、収支均衡するラインは6‰程度、80万人の場合は10‰程度となるところで計算をしているところです。私からは以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について御意見、御質問がありましたらお願いしたいと思います。菱沼委員、よろしくお願いします。

○菱沼委員 先ほど、事務局から説明をいただきましたが、失業等給付関係収支状況や雇用保険二事業の収支状況、それぞれの資料を拝見し、積立金残高や安定資金残高、それぞれ厳しい状況にあることは、今ここに臨席の委員の一致するところと思っております。資料にありますとおり、国庫負担がある失業等給付は、過去にも積立金残高が枯渇しそうになった時期もあり、その際は国庫負担を引き上げて財政を立て直したこともあったということですので、その点も踏まえ、財政当局とも交渉していただければと思っているところです。

 また、この雇用保険二事業については、事業主による保険料負担にも限界があり、国の財政支援を得て既存の事業、来年度にも関係がありますが、事業を動かしていきながら立て直しを図っていくべきだと考えております。やはり、平成29年の部会報告に挙げていた「3年間に限り」ということはすごく重いことだと思っておりますので、その点を御意見として申し上げます。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。杉崎委員お願いします。

○杉崎委員 雇用調整助成金の支給増大により、雇用保険二事業会計は既に枯渇化が必至な状況であり、失業等給付に係る雇用保険会計の積立金から16,000億円の借入れをしても、なお今年度末の安定資金残高は0となる見込みです。また、失業等給付に係る雇用保険会計に関しても、雇用保険二事業会計への多額の貸出しにより積立金は2019年度末の44,000億円から今年度末には4,000億円に一気に減少する見込みです。

 このように、雇用保険財政が極めて厳しい状況の中で、雇用調整助成金の特例措置とコロナ禍の長期化に伴う一連の措置は、事業主のみが負担する共同連帯の制度である雇用保険二事業の範疇を大きく超えており超えて超え、感染症対策としての性格が極めて強いことから、その財源は本来全て一般会計による国費で負担すべきであると、日商は労働政策審議会の場に加え、財政制度等審議会等、あらゆる場面においてかねてから主張してまいりました。現在、失業等給付は2.5%としている国庫負担を本則に戻すことはもとより、一般会計から資金を投入することで雇用保険二事業会計を含めた雇用保険財政の安定化を早期に確保すべきです。

 また、足元では雇用調整助成金の今年度の予算は既に使い切っている一方で、支給申請件数や支給決定額のペースは落ちていないことから、支給が滞る事態に陥らないよう、速やかに一般会計による財政措置を講ずることが不可決です。なお、来年度の雇用保険料率は、法が定める弾力条項により引き上がることが考えられますが、長引くコロナ禍により厳しい業況の企業がいまだに多く、加えて、料率0.1%が約1,900億円に相当するなど、負担の規模が非常に大きいことから、コロナ禍が収束し経済が回復するまでの間は料率が引き上がることがないよう強く要望します。また、雇用保険料の引上げは将来にわたり、できる限り回避すべきであると考えます。

 併せて、今回のコロナ禍での経験を踏まえ、激甚災害の指定を受けた災害や大規模な感染症等の際には、雇用調整助成金の財源を全額一般会計で負担する制度を創設するなど、保険料財源では対応が困難な有事の場合における国の責任の範囲、すなわち一般会計からの資金投入に関する考え方についても、早急に検討し整理すべきであると考えます。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。ほかにどなたか御意見、御質問ありますでしょうか。冨髙委員、よろしくお願いします。

○冨髙委員 何点か意見を申し上げたいと思います。まず国庫負担割合のところです。国庫負担の意義は、労働者雇用に極めて大きな影響を与える雇用政策の担い手として、国の責任を示すということで支出しているものであり、その責任が時々の財政状況によって変わるものではないと認識しているところです。先ほどの御説明の中にもありましたが、当面の措置ということで2007年度以降は本則の本来の負担額の55%に引き下げられて、更に2017年度以降は時限的に本来の負担額の10%に引き下げられているということです。これは本来の責任が果たされていない状況と捉えており、次年度に本則に戻すべきではないかと考えているところです。

 なお、本来の負担額の10%に引き下げる時限措置については、2017年改正時の附帯決議において、2019年度までの3年間に限ることとされておりましたが、それを反故にするような形で、2020年改正で時限的な引下げがなされたという認識です。その際の附帯決議では、「時限的な引下げ措置が継続されることは遺憾であり、2021年度までの2年間に限ること」とされていることを踏まえれば、少なくとも次年度に10%への引下げを解除して55%にすることについては議論の余地がないのではないかと考えているところです。

 次に、弾力条項のところについても御意見を申し上げたいと思います。失業等給付の2020年度決算の結果から、2022年度の雇用保険料率については弾力条項に基づく調整はなされない見通しと考えておりますが、コロナ禍が収束してきたものの、先ほども申し上げたように広く業績が回復しているとまでは言えない状況であり、また、労働者のこれまでの賃金や一時金への影響も踏まえれば、弾力条項に基づく4/1000の引下げが無くなることによる雇用保険料率の上昇、また、時限的に2/1000の引下げ措置が期限を迎えることによる雇用保険料率の上昇、この両方を受け入れる状況には到底ないのではないかと考えているところであり、現行の時限的な引下げについては、2/1000の引下げを最低限として継続すべきと考えているところです。また、今後の弾力条項の在り方については現行制度を堅持することの妥当性、また過去15年間は国庫負担割合が引き下げられてきた経緯も踏まえ、必要に応じて見直しを検討することも必要ではないかと捉えております。

 最後に、繰り返し申し上げているところですが、今回の雇用保険財政の危機的状況というものが、政府の感染症対策として実施された休業要請などに起因していることを捉えれば、まずは早期に補正予算の措置をしていただくこと、次年度予算についても一般会計からの繰入れを十分に実施していただくことが不可欠ではないかと考えております。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。続いて、酒井委員お願いします。

○酒井委員 私からは、今、御説明いただいた資料の6ページにある雇用保険財政の運営イメージに関して1点述べたいと思います。これは財源の在り方に関する話ではなく、このようなことが予想され得るのではないかということです。私はこの試算案に関しては、詳細、どのような仮定を置いているのかを必ずしも十分に理解していない部分もあるかと思いますが、今後、何らかの形で雇調金を段階的に縮小していくであろうことを考えると、来年度も含めて、一時的には失業者が増加する局面もあるのではないかと考えております。もちろん、雇調金の縮小は景気回復に足並みをそろえる形であるとは認識しておりますが、そうであっても、一時的には失業が増えることは織り込んでおいたほうがいいのではないか。そうすると、受給者実人員60万人、支出は約15,500億円が恐らくベースというような推計かと思いますが、受給者実人員、支出ともに上ブレする可能性を十分に念頭に置いた上で、今後の財政を考えていく必要があるのではないかと思います。特に、積立金がこれだけ薄い現状では、保険の原則としては上ブレすることを念頭に十分織り込んだ上で、議論する必要があると思っております。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。ほかにどなたか御意見、御質問ありますでしょうか。平田充委員、よろしくお願いします。

○平田充委員 御説明ありがとうございました。課長から御説明のあったとおり、一般財源を投入する方向で最終調整ということでしたが、いずれにしても、資料の12ページを見ますと、雇用保険財政は非常に厳しい状況にあることは変わりないと思っています。

 資料の6ページに今後の運営イメージが示されていますが、2022年度の保険料率は今後の議論であると認識しています。御提示いただいた資料では、過去、受給者実人員が4080万人の範囲で推移している中、その中間である60万人分の支出に対応して、保険料率0.8%が本則として設定されていると理解しています。この考え方を今の時点で変更する必要はないと考えておりますので、意見として申し上げておきます。

 最後の3点目は、資料5ページの国庫負担です。平成19年の報告から遡っておりますが、国庫負担について、政府としての見解がこのときから変わっているのかどうか、改めてお伺いします。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。では、お答えいただけますか。

○長良雇用保険課長 雇用保険課長よりお答えします。ただいまの御質問、平成19年の雇用保険部会報告の抜粋の中で、国庫負担の基本的な考え方をお示しされたものでございます。私どもも十分それを念頭に置いた形で、これまでの制度、また御議論をお願いしてきたところでございます。考え方自体は、ここに書いてあるものをしっかりと踏まえて対応していく必要があると認識しております。

○守島部会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。御意見、御質問がないようですので、予定されている議題は終わりましたので、本日の部会はこれで終わりにさせていただきたいと思います。委員の皆様、お忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございました。