2021年7月30日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

日時

令和3年7月30日(金)18:00~

出席者

出席委員(20名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(1名)
行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  中井清人(医薬安全対策課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは定刻を過ぎましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会のWeb会議を開催いたします。本日はお忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 本日のWeb会議における委員の出席状況についてですけれども、小崎委員より御欠席との御連絡をいただいています。また、川上部会長代理が遅れて御参加いただけると認識しておりますので、現在の状況でございますが、当部会員数21名のうち、現時点で19名の委員がこのWeb会議に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告させていただきます。薬事分科会規程第11条におきましては、『委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合は、辞任しなければならない』と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告をさせていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますけれども、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてはマスクを着用したまま説明させていただきますので、御了承いただければと思います。
 それでは清田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○清田部会長 清田でございます。皆様こんばんは。それでは本日の審議に入ります。まず、事務局から資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~資料No.16-3と製剤写真を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。このほか資料No.17として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」を、資料No.18として「専門委員リスト」、資料No.19として「競合品目・競合企業リスト」、また、資料No.20として「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の一部改正等(令和2年9月1日施行)について」を事前に電子メールにてお送りしております。なお、システムの動作不良などございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告します。資料No.19の1ページを御覧ください。まず「ステルイズ」ですが、本品目は「梅毒」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
 2ページを御覧ください。「リンヴォック錠」ですが、本品目は「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
 3ページを御覧ください。「コセンティクス皮下注」ですが、本品目は「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
 4ページを御覧ください。「レットヴィモカプセル」ですが、本品目は「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
 5ページを御覧ください。「アシミニブ塩酸塩」ですが、本品目は「慢性骨髄性白血病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
 6ページを御覧ください。「ペボネジスタット塩酸塩」ですが、本品目は「骨髄異形成症候群」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。今の事務局からの御説明に、特段の御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解をいただいたものといたします。
 それでは、委員からの申出状況について御報告をお願いいたします。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりです。議題1「ステルイズ」。退出委員なし。議決に参加しない委員、亀田委員、川上部会長代理、横幕委員です。
 議題2「リンヴォック」。退出委員なし。議決に参加しない委員、亀田委員、川上部会長代理、中野委員、松下委員、南委員です。
 議題3「コセンティクス」。退出委員、亀田委員、島田委員。議決に参加しない委員、中野委員です。
 議題4「レットヴィモ」。退出委員、松下委員、山口委員、山本委員。議決に参加しない委員、亀田委員、濱委員、南委員、横幕委員です。
 議題5「アシミニブ」。退出委員、南委員、山口委員。議決に参加しない委員、亀田委員、川上部会長代理です。
 議題6「ペボネジスタット」。退出委員なし。議決に参加しない委員、川上部会長代理、松下委員、宮川委員。以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。今の事務局からの御説明に、特段の御意見はございますか。よろしいでしょうか。よろしければ皆様に御確認いただいたものといたします。本日は審議事項6議題、報告事項8議題、その他事項1議題となっております。それでは審議事項の議題に移ります。議題1について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、機構より資料の御説明をさせていただきます。議題1、資料No.1、医薬品ステルイズ水性懸濁筋注60万単位シリンジ、同水性懸濁筋注240万単位シリンジの製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。タブレットの資料No.1のフォルダを開き、★マークの付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 では、説明を開始します。ステルイズ水性懸濁筋注60万単位シリンジ、同水性懸濁筋注240万単位シリンジ(以下、「本剤」)はベンジルペニシリンベンザチン水和物(以下、「本薬」)を有効成分とする筋肉内投与の注射剤であり、性感染症である梅毒を適応症として申請されました。本剤は投与部位から有効成分が緩徐に放出される特徴があるため、早期梅毒に対しては単回投与で治療が可能であること等から、海外においては梅毒治療における第一選択薬として使用されています。一方、本邦における主な梅毒治療薬は、本薬筋注製剤は過去に承認されていたものの、国内市場から既に撤退していることから、やむを得ずペニシリン系抗菌薬の類薬であるベンジルペニシリンカリウム静注製剤、アモキシシリン水和物経口剤、又は本薬の経口製剤を用いて治療が行われています。
 本薬筋注製剤は、海外ガイドラインで梅毒治療の第一選択薬として、欧米等では約70年間にわたり使用されていること、早期梅毒に対して単回投与により服薬アドヒアランスが向上すること等から、日本感染症教育研究会より、成人及び小児における神経梅毒を除いた梅毒に対する使用について開発要望が提出され、厚生労働省の第11回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、「医療上の必要性が高い」と評価されました。今般、日本人健康成人を対象とした薬物動態試験成績、公表文献等に基づき、本剤の製造販売承認申請が行われました。なお、本剤は、2021年5月時点で米国を含む五つの国又は地域で承認されています。
 本申請の専門委員としては、資料No.18に記載の3名の委員を指名しました。審査内容について、公表文献、日本人薬物動態試験成績及び海外市販後の安全性情報を中心に御説明します。
 まず、有効性について、通し番号16/28(審査報告書14ページ)表9を御覧ください。表9に記載のとおり、海外の診療ガイドライン及び成書において、梅毒に対する治療薬として本薬筋注製剤(PCGベンザチンの筋注)が推奨されています。続いて、通し番号17/28(審査報告書15ページ)表11を御覧ください。本薬筋注製剤を使用した海外公表文献の概要であり、早期梅毒患者、後期梅毒を含む妊婦梅毒患者、新生児の先天梅毒患者において、一定の有効性が報告されています。
 通し番号13/28(審査報告書11ページ)を御覧ください。下段の「6.R.2.1」項を御覧いただきますと、早期梅毒については目標をPK-PDパラメータとして、少なくとも7~10日間、血中ベンジルペニシリン濃度を目標の0.018μg/mL 以上に保つ必要があると考えられており、国内第I相試験において日本人健康成人に対して本剤を申請用法・用量で投与したとき、血中ベンジルペニシリン濃度が当該目標値を超えていた期間の中央値は、561時間、日数換算で23.4日であったことから、目標とする7~10日間を超えて、ベンジルペニシリンの血中薬物濃度が維持可能であることが確認されました。
 以上を踏まえ、神経梅毒を除く梅毒患者に対して本剤の有効性は期待できると判断しました。
 次に安全性について、通し番号19/28(調査報告書17ページ)マル1を御覧ください。こちらは日本人健康成人を対象とした第I相試験では、死亡例、重篤な有害事象は認められませんでした。次に、同じページの下段、表12を御覧ください。こちらは1952年に米国で本剤が承認されて以降、記録が保存されている範囲で2020年5月までにファイザー社の安全性情報データベースに蓄積された2,784件の海外市販後の自発報告のうち、重篤な有害事象としては、アナフィラキシー反応、注射部位関連の有害事象が比較的多く報告されていることから、当該事象に対する注意喚起が必要と判断しました。また、通し番号20/28、表13を御覧ください。こちらは重篤度を区別しない自発報告における主な有害事象となりますが、先ほどの重篤な有害事象と同様に注射部位関連及びアナフィラキシー反応の有害事象が多く報告されています。
 さらに、同じページの中段マル3をご覧ください。小児における本剤の安全性について、新生児を対象とした文献情報から、本薬筋注製剤の忍容性は良好であることを確認しました。
 以上を踏まえ、本邦で市販されている本薬経口製剤及びベンジルペニシリンカリウム静注製剤の添付文書での副作用と比べて、本剤の安全性プロファイルは大きな差異はないと考えられることから、本薬経口製剤、類薬のベンジルペニシリンカリウム静注製剤及び海外における本剤の安全性管理と同様の対応を行うことで、梅毒患者に対する本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、機構は本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。本品目は新投与経路医薬品ですが、本薬経口剤と比較して新たな安全性リスクは認められていないこと等から、再審査期間は設定しないことが適切と判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しました。なお、薬事分科会には報告を予定しています。
 以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございました。これは古いお薬で、感染症学会や性感染症学会で、日本だけ使えなかったのですね。長らく使えなかった。我々が切望している薬です。もう海外では当たり前のように使っているのですね。ですから、非常に私どもとしては福音だと感じています。何か委員の先生方から御意見、御質問はございますか。よろしいでしょうか。
○南委員 南ですけれども、少しよろしいでしょうか。小児における安全性に関してですが、小児は2歳になると腎機能が成人とほぼ同等になるという記載が13/28ページにあります。この場合の腎機能というのは、体重で標準化した腎機能だと思うのです。一般的に腎機能eGFRは体表面積当たりで補正して論じます。一方、用法・用量に関しては、小児2歳以上13歳未満までは成人と同じ投与量240万単位/bodyを使用することになっていますが、体格が、さすがに2、3歳のお子さんと成人では異なると思います。この2歳~13歳未満の小児で240万単位を使用するというのは、海外と同じ用量と考えていいのか、安全性に関しては問題ないことを確認させてください。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございました。2歳~13歳未満について原則成人と同様の240万単位の投与に関して、安全性上、特に低年齢小児に対して大丈夫なのかという観点からの御質問と理解しました。本件について御説明します。
 まず、薬物動態に関して、審査報告書の11ページ、通し番号で言うと13/28を御覧ください。表7を御覧ください。こちらは直接比較することには限界があるのですけれども、日本人健康成人に本剤240万単位を投与したときのデータと、外国人のデータにはなるのですけれども、体重が27kg以上の膿痂疹小児患者6例に対して、120万単位を単回筋肉投与したときの各測定時点における血中ベンジルペニシリン濃度の推移を示しています。小児のPK用について用量比例性を仮定した、つまり測定値を2倍した状況によりますと、小児に対し体重によらず本剤240万単位を単回筋肉投与したときのベンジルペニシリン濃度推移は、日本人健康成人に本剤240万単位を単回筋肉投与したときと、大きく異ならないということが示唆されています。
 また、本剤と同一の活性本体を有するベンジルペニシリンカリウムの小児梅毒に対する、米国の小児用法・用量は20から30万単位/kg/dayを10日~14日間静脈投与することとされており、こちらと比べましても、安全性の観点からは十分マージンが取れている、許容可能と考えています。
 また、本剤は、薬液の粘度が高く、シリンジに目盛りを付しても正確な用量調整が難しいといった製剤学的な特徴もあり、小児に対してもシリンジ240万単位全て投与していただくことが推奨されると機構は考えていますが、低年齢小児における筋肉量の関係等から、4mLの全量投与が困難と考えられるようなケースでは、適宜減量もできるような規定としています。
 具体的に米国CDCガイドラインでは、幼児及び小児に対して5万単位/kgで投与することも考慮するよう推奨していますので、当該用法・用量も考慮して、場合によっては低年齢小児に対しては減量投与ができるような規定としています。こちらについては添付文書の用法・用量に関連する注意において、「本剤を使用する際には、国内外の各種ガイドライン等、最新の情報を参考にして投与すること」と記載しています。御説明としては以上となります。
○南委員 ありがとうございます、了解しました。このガイドラインと投与方法について徹底するように、これは製薬企業というよりも関連学会なのでしょうか、働き掛けをお願いできればと思います。
○清田部会長 ほかに御意見はございませんか。
○大隈委員 よろしいでしょうか。関西医科大学の大隈ですけれども、少し質問させてください。副作用として注射部位の疼痛が見られますけれども、これは比較的一般的なものなのか、この製剤はより強いのかというのが少し気になるのですけれども。
 特に添付文書にはそういったことへの記載はないようですけれども、それでよいのかというのと、さらにもう一つ、表3に単回投与の毒性試験の結果があるのですけれども、腹腔内に投与した場合は死亡しているのですね。これは結構劇症といいますか、そういった症状を示しているようにも見えるのですけれども、これは何か理由があるのでしょうか。
 投与方法が、実際の投与は筋肉内投与なので、余り関係ないとは思いますけれども、もし原因など理由が分かっていればお教えください。以上です。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 まず、2点目の御質問、マウスに対する腹腔内投与試験において死亡例が認められている状況に関して説明します。当該腹腔内投与毒性試験成績に加え、誤って静脈内に投与した場合にはかなり重篤な有害事象が出るということも海外から報告されていますが、本剤は筋注製剤であり、あくまで筋肉内投与で使っていただく上では安全性は確保されていると考えています。
 そうした観点から、直接の容器にもこちらの製剤は筋肉内用というものをラベルして、筋肉内に確実に投与されるよう安全対策を施しています。
 1点目の疼痛に関しては、国内データが8例の日本人健康成人のデータしかないというところもあり、情報は限られるのですけれども、痛みと関連する具体的なデータはないという状況です。海外ではWHOのガイドラインも含めて第一選択薬として推奨され使われている状況も踏まえ、実臨床上問題となるような点はないと考えています。また、基本的には成人に投与されることがほとんどですので、忍容されるものだと考えています。以上、御質問に対する回答となります。
○大隈委員 特に添付文書へのそういった記載は必要ないですか。
○医薬品医療機器総合機構 疼痛に関しては、今のところ特段何か記載するということは想定しておりません。
○大隈委員 分かりました。ありがとうございました。
○清田部会長 ほかに御質問はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは議決に入りたいと思います。亀田委員、川上部会長代理、横幕委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、議題2に移ります。議題2について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、始めさせていただきます。議題2、資料No.2、リンヴォック錠7.5mg及び同錠15mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否、並びにリンヴォック錠30mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 審査報告書をお手元に御用意ください。以後の審査報告書のページ数は、各ページの下段に「46分の●(いくつ)」で記載しております数字を使用いたします。本剤の有効成分であるウパダシチニブ水和物はヤヌスキナーゼ阻害剤であり、既存治療で効果不十分な関節リウマチ及び関節症性乾癬に係る効能・効果で承認されております。今般、実施された臨床試験成績等を踏まえ、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請等がなされました。
 本申請の専門委員として、資料No.18に記載されております5名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡潔に御説明いたします。なお、審査報告書40ページ「10.その他」に有効性の評価方法の詳細を示しておりますので、適宜、御参照ください。
 有効性につきまして、ステロイド外用剤等で効果不十分、又はアトピー性皮膚炎に対する全身療法の治療歴がある12歳以上のアトピー性皮膚炎患者を対象とした国際共同第III相試験であるM16-047試験成績より説明いたします。審査報告書19ページ、表18を御覧ください。本試験では、投与16週時における皮疹に関する医師の全般的評価が「病変なし」又は「ほぼ皮膚症状なし」とされた患者の割合である「vIGA-AD(0.1)達成率」、及び全身の皮膚症状をスコア化したEASIスコアがベースラインから75%以上減少した患者の割合である「EASI-75達成率」がco-primary endpointとされ、「プラセボ群との差」の行に示しますとおり、いずれの評価項目についても15mg群及び30mg群とプラセボ群との各対比較において統計学的に有意な差が認められ、プラセボ群に対する本剤15mg群及び30mg群の優越性が検証されております。日本人部分集団の成績は同じ表18の下半分に示しますとおり、全体集団と同様の成績が得られております。
 以上より、機構は、アトピー性皮膚炎に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 安全性につきまして、既承認効能・効果である関節リウマチ及び関節症性乾癬の成績とともに、安全性の概要を審査報告書29ページ、表29、認められた有害事象の発現状況を審査報告書30ページ、表30に示しております。なお、表ではアトピー性皮膚炎をAD、関節症性乾癬をPsA、関節リウマチをRAと記載しております。また、日本人部分集団の安全性については、審査報告書31ページ、表31に記載しております。対象疾患、患者背景、ばく露期間、併用薬等が試験間で異なるため直接の比較には限界がございますが、皮膚感染症を除き、アトピー性皮膚炎患者に特有の新たな安全性上の懸念は示唆されていないと判断いたしました。
 皮膚感染症につきましては、審査報告書32ページ以降の「7.R.3.2 皮膚感染症」に記載のとおり、アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験で、皮膚ウイルス感染症の発現が多く認められております。アトピー性皮膚炎患者は皮膚バリア機能の低下により皮膚感染症を合併しやすいとされていることも踏まえ、アトピー性皮膚炎患者への本剤投与時には十分な観察を行い、皮膚感染症の発現に注意するよう、新たに注意喚起を行うことが必要と判断いたしました。
 効能・効果につきまして、臨床試験では、ステロイド外用剤等の既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者において有効性及び安全性が確認されていることから、本剤の効能・効果は、申請のとおり「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」と設定することが適切と判断いたしました。
 用法・用量につきましては、審査報告書35ページ以降の「7.R.6 用法・用量について」に記載しております。臨床試験では、本剤15mg群及び30mg群のいずれもプラセボ群に対する優越性が検証され、30mg群でより高い有効性が認められる一方、一部の有害事象や部分集団では、用量依存的な有害事象の発現が認められております。
 成人では既承認の関節リウマチ、関節症性乾癬を含めた他疾患の臨床試験において、30mg投与時の安全性データの蓄積があることも踏まえ、成人に対しては、通常15mgの1日1回投与とし、患者の状態に応じて30mgが投与可能となるような用法・用量を設定することが適切と判断いたしました。また、12歳以上の小児に対しては、他疾患も含め30mg投与時の臨床試験成績が乏しいことから、15mgの1日1回投与の用法・用量を設定することが適切と判断いたしました。
 なお、M16-047試験は、国際共同試験として実施されたことから、小児患者の選択基準として体重40kg以上が設定されておりましたが、母集団薬物動態解析より30kg以上の小児患者でも40kg以上の成人及び小児患者と同程度のばく露量となることが予測されること、40kg未満の成人患者への投与経験があること、日本人小児における年齢別の体重分布等も考慮し、30kg以上の小児を投与対象とすることは可能と判断いたしました。ただし、体重30kg以上40kg未満の小児に対する臨床成績は得られていないことから、当該患者に本剤を投与する場合には、観察を十分に行い、慎重に投与する旨の注意喚起が必要と考えております。
 以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新効能及び新用量医薬品としての申請であるものの、既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は、既に付与されている再審査期間の期限である令和10年1月22日までとすることが適切であり、リンヴォック錠30mgについては、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は劇薬に該当すると判断しております。
 薬事分科会では報告を予定しております。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方から、御質問、御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
○宮川委員 宮川です。
○清田部会長 宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 32ページ、33ページの所なのです。特に33ページの所の記載ですが、「緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師がうんぬん」と書いてあります。更に副作用としての感染症の発現というのがかなり重要であろうかというふうに考えます。この類薬を含めたモニタリングなどに注意を払ってもらいたいと思うので、最適使用ガイドラインを含めてですけれども、そのような注意喚起というものが、必要なのかと思うので、是非そのところはお願いしたいというように思います。
 さらに12歳以上、30kg~40kgについての情報がないため、機構は慎重な使用を求める注意喚起を行うと38ページに書いてあります。そしてその所で、この読み方が分からないので少し教えていただきたいのです。表の37で、42ページ、「医薬品リスク管理計画」という所ですけれども、そこの「該当なし」、「重要な不足情報」という所の「該当なし」というのは、これは何を示すのでしょうか。教えていただきたいのです。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。まず、1点目ですが、注意深く慎重に使うということと、対応可能な施設での使用をということの御指摘との理解でよろしいでしょうか。
○宮川委員 はい。
○医薬品医療機器総合機構 他のJAK阻害薬でも同じように緊急時の対応が可能な施設で使うこととなっており、また、本剤につきましては関節リウマチなどで承認されていることから、既に緊急時に対応可能な施設で使用されている実績がございますので、今回、アトピー性皮膚炎に関しましても同等の対応が取れるような医療施設で使うべきと考えており、機構も申請者をそのように指導してまいりたいと思っております。
○宮川委員 はい。そのようにしっかりとやっていただきたいとお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 承知いたしました。2点目に御質問いただいている重要な不足情報の部分ですが、検討されたデータから今回は30kg以上の部分における曝露量なども含めた説明は受入れ可能で、承認可能と機構は判断しております。重要な不足情報には、情報が明らかに足りず、追加検討が必要な場合に記載している事例が多いと考えております。
 ただ、その続きの43ページの表39に示しておりますが、臨床試験での検討例数も踏まえ、12歳以上18歳未満の特定使用成績調査を実施し、特に低体重の患者さんについては、可能な限り情報を収集して、かつ早めに臨床現場に提供するよう申請者に指示し、申請者も適切に対応する旨、回答しております。
○宮川委員 そうすると、整合性が取れていないような気がするので、やはり12歳以上、30kg~40kgに対しての情報がないというようなことも含めて、その重要な不足情報という中に入れておかないと、やはりこの表を見たときによく分かりません。是非とも整合性を取れるような表作りというのはできないのでしょうか。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 医薬品リスク管理計画の作成の手引というものを公開しているところでございまして、重要な不足情報に記載するような内容としまして、医薬品リスク管理計画を策定した時点では十分な情報が得られておらず、製造販売後の当該医薬品の安全性を予測する上で、不足している情報のうち重要なものを言うというような記載となっております。
 例えば、希少疾病用医薬品でございますとか、情報が大きく不足しているような場合に、重要な不足情報に記載して、その部分を製造販売後に補っていくというような形で、この重要な不足情報というところを医薬品リスク管理計画の中では使用しているような状況でございます。
○宮川委員 ではそのような情報がないため、機構は慎重な使用を求める注意喚起を行うというふうに38ページに書いてあるわけですけれども、慎重な使用を求める注意喚起というのは、今、言ったように39の表のようなことしかないということですか。12歳以上、30kg~40kgの対象に対してはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 慎重に投与するための方策ということでしょうか。
○宮川委員 そうです。
○医薬品医療機器総合機構 説明に不十分な点がございまして、大変申し訳ございませんでした。添付文書案の3ページの「9.7 小児等」の所の「9.7.2」が、今回アトピー性皮膚炎に関して新たに追加する注意喚起の部分となっていますけれども、こちらに「30kg以上40kg未満の小児に投与する場合には観察を十分に行い、慎重に投与すること」という注意喚起とともに、12歳未満ですとか、体重40kg未満の小児等を対象とした臨床試験は実施されていないということを明示しておりまして、さらには、これ以外にも医師向け資材ですとか、そういった各所において、臨床試験成績が得られていないので慎重に投与してほしい、という注意喚起は十分に実施する予定でございます。
○宮川委員 これは順番が逆なのではないでしょうか。臨床試験がないのだ、ということが先に来て、それから慎重にやるというのなら分かるけれども、慎重にやるということを書いてから、臨床試験の結果がないというのは、何か逆のような気がして仕方がなかったので質問させていただいたのです。やはりそのようなことを、どこかにきちんと書かないといけないのかと思います。
 もちろん、このように添付文書などに書いてあるのは、使用ありきの表現になっているので、使用ありきではないのだということを最初に書くべきであろうと思っていたので質問させていただきました。
○清田部会長 よろしいでしょうか。それでは、この文章を逆にできるかどうか検討させていただくということでよろしいでしょうか。
○宮川委員 はい。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、今、御指摘いただいているのは添付文書の記載でしょうか。
○宮川委員 もちろん両方です。添付文書のことは、そちら側、機構の方が言ったので、それに対してはそのような対処をするのが当然だろうと。もちろん使用するということを前提にしてこういう添付文書を書かれているので、それもおかしいでしょうというお話をしたので、その両方のことは機構がおっしゃったので、添付文書のことを私は言いましたけれども。
○医薬品医療機器総合機構 はい、承知いたしました。
○宮川委員 その前のことはきちんとしなければいけないのかと思って、両方です。
○清田部会長 よろしいでしょうか。機構、いいですか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書の記載や医薬品リスク管理計画の記載につきましては、他剤との整合性の部分もございますので、今、頂いた御意見は真摯に検討させていただいて、今後どのような形で記載していくことがより適切であるかというのは、考えてまいりたいと思っているところでございます。
○宮川委員 ありがとうございます。小児期から使うということになると、非常に長く使わなければいけないということもあるので、是非ともそのところはよろしくお願いいたします。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○清田部会長 それでは宗林先生、お願いします。宗林先生、どうぞ。
○宗林委員 宗林です。質問なのですけれども、アトピー性の皮膚炎は、小さい頃から、あるいは成人になっても長期間にわたって症状が出る疾病だと理解しています。その中で、例えば19/46では、16週目の所で効果を判定されていますが、一方、安全性の所では104週間という2年間の所で安全性の評価をされているようにこの中では書かれています。実際には、有効性の評価が16週で、非常に効果が出た場合はこの使用の方法は保湿剤を塗りながらというようなことが書かれていますが、ずっと継続して使っていく、そして2年間までの安全性の評価を取ったというような流れの審査報告書になるのでしょうか。あるいは一定の効果が出たら、それはそれで一旦休止とか、そのような形を前提とされているのでしょうか。教えてください。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。開発段階において、やめどころに関する検討は、なかなか難しいところでございまして、本剤につきましてもそこまでは検討されていないような状況でございます。一方で、有効性の部分につきましては、16週時点での評価に加えまして、審査報告書の26ページなどでは、より長期間、52週時までの有効性も併せて評価しているところでございまして、このような成績もご理解されつつ使用されていくものと考えております。
○宗林委員 そうしますと、43ページの所に、「観察期間を104週間」、2年間だと思いますが、そうした記述もありますが、少なくとも2年間は使い続けてもという観点で、これは安全性の所が書かれているということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 小児の方はどこまでしか使えないというところまでは、なかなか規定することは難しいと考えておりまして、もちろん御指摘いただいたとおり、かなり皮膚症状が良くなった患者さんに、ずっと飲み続けていただくお薬かというところは、現場の医師とお話いただいて、例えば、皮膚症状が非常に改善している場合には、慎重に本剤の投与を、例えば30mgの人であれば15mgにして、その後中止するというようなことも併せて検討されていくものと考えております。
 一方で、なかなか疾患活動性が高くて、本剤が切れないような患者さんも、恐らく一定数はいらっしゃると考えておりまして、そういった場合には本剤が2年間、若しくはそれ以上継続して投与される可能性も考えられますので、こちらの表39に示しておりますような特定使用成績調査におきましては、そういった長く投与された場合に新たな安全性上の懸念があるかどうかというところを確認したいという意図での調査が計画されております。
○宗林委員 分かりました。ありがとうございました。
○清田部会長 ありがとうございます。ほかに御質問はございますか。よろしいですか。ありがとうございました。それでは、そろそろ議決に入りたいと思います。議題2につきましては、亀田委員、川上部会長代理、中野委員、松下委員、南委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、御異議がないようですので承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。事務局から引き続き御説明がございます。よろしくお願いいたします。
○事務局 先ほど宮川委員からも御指摘がありました、最適使用推進ガイドラインについて本品目も作成しておりますので、No.16-1を御覧いただけますでしょうか。アトピー性皮膚炎につきましては、これまでデュピクセントやオルミエントといった製剤について最適使用推進ガイドラインを作成しておりますが、同様に本剤についても案を作成しております。まず、資料の3ページ、中ほどを御覧ください。今回のガイドラインは機構のほか、日本皮膚科学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児科学会及び日本臨床皮膚科医会の方から推薦を頂いた先生方に御意見を頂いて作成しております。
 続きましてのページからは、本剤の特徴や有効性についての記載をしておりますが、それは先ほどの機構からの説明のとおりですので割愛させていただきます。
 続きまして、12/16ページを御覧いただけますでしょうか。こちらに先ほども御指摘のあった施設の要件を記載させていただいております。中ほどに医師の要件を記載しておりますが、成人のアトピー性皮膚炎患者に投与する場合は、これまでの剤と同様の要件としておりますが、本剤はこれまでと異なり小児の適用を許しておりますので、小児の場合の要件として、この(イ)の中に、3年以上の小児科診療の臨床研修を含むことを要件として追加させていただいております。
 それから14ページを御覧いただけますでしょうか。こちらに患者選択について記載しております。患者選択の要件につきましては、アトピー性皮膚炎の確定診断がなされていること、既存治療では効果不十分であることなど、これまでと同様の要件を記載しております。
 また、その下には「投与の継続にあたって」として、投与継続の取扱いについて記載しております。最適使用推進ガイドラインにおきましては、「投与開始後12週までに治療反応が得られない場合は、本剤の投与を中止すること、また、投与中は定期的に効果を確認し、投与継続、減量及び中止を検討すること、他の外用剤との併用により一定期間寛解の維持が得られた場合には、併用薬が適切に使用されたことを確認した上で、本剤投与の一時中止等を検討する」としております。
 また、これ以降のページにつきましては、投与に際し留意すべき事項といたしまして、添付文書等の注意喚起を入念的に本ガイドラインにおいても記載を行っております。御説明は以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございました。それでは、この件に関しまして、委員の先生方から御意見がございましたら承ります。いかがでしょう。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、このリンヴォック錠7.5mg、同錠15mg、同錠30mgの最適使用推進ガイドラインについては御確認いただいたものといたします。
 続きまして、議題3に移ります。亀田委員、島田委員におかれましては、薬事分科会審議参加規定第5条に基づきまして、議題3の審議の間、会議から御退出いただいて、御待機いただくことといたします。亀田委員、島田委員は御退出をお願いいたします。
── 亀田委員、島田委員 退室 ──
○清田部会長 それでは、議題3につきまして機構から概要の御説明をお願いいたします
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料No.3、コセンティクス皮下注75mgシリンジ他の製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。審査報告書をお手元に御用意ください。以後の審査報告書のページ数は、審査報告書の下段に「35分の●(いくつ)」で記載している数字を使用いたします。
 本剤の有効成分であるセクキヌマブ(遺伝子組換え)は、ヒトインターロイキン-17Aに対するモノクローナル抗体であり、本邦では、「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬」の効能に対し、成人に係る用法・用量が承認されており、今般、これら乾癬について新たに小児の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、海外では、小児乾癬患者に対する適応は、欧州では2020年7月に、米国では2021年5月にそれぞれ承認されております。
 本申請の専門委員として、資料No.18に記載されております5名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡潔に説明いたします。なお、審査報告書30ページ「10.その他」に有効性の評価方法の詳細を示しておりますので、適宜、御参照ください。
 本剤の有効性について、尋常性乾癬や関節症性乾癬の主要な皮膚症状である局面型皮疹、関節性乾癬の関節症状、及び膿疱性乾癬に対する有効性の観点からそれぞれ御説明いたします。
 まず、本剤の局面型皮疹に対する有効性について、6歳以上18歳未満の重症の局面型皮疹を有する乾癬患者を対象とした国際共同第III相試験であるA2310試験の成績より説明いたします。審査報告書11ページの図2を御覧ください。A2310試験では、本剤の用量は既承認である成人における低用量、高用量、同程度の曝露量となるよう、低用量群及び高用量群の2用量が設定され、プラセボとの優越性を検証するデザインとされていました。結果については、審査報告書12ページ、表5を御覧ください。本試験では、co-primary endpointが設定されており、表5の4行目の「投与12週時のPASI75達成率」及び7行目の「投与12週時のIGA(0/1)達成率」に示すとおり、両項目においてプラセボに対する本剤低用量群及び高用量群の優越性が検証されていること等から、尋常性乾癬等の主要な皮膚症状である局面型皮疹に対する本剤の有効性は示されていると考えました。なお、本剤低用量群及び高用量群で有効性に大きな違いは認められませんでした。
 次に、審査報告書22ページ、「関節症性乾癬患者の関節症状に対する有効性について」の項を御覧ください。A2310試験において、局面型皮疹を有する小児関節症性乾癬患者の関節症状に対する有効性評価がCHAQスコアを用いて行われました。小児関節症性乾癬患者は少数であるため検討例数は限られておりますが、本剤投与により一定の臨床的に意義のある改善が認められております。続いて、ページが戻りますが、審査報告書18ページ、表13及び図4を御覧ください。2歳以上18歳未満の付着部炎関連関節炎患者又は関節症性乾癬患者を対象としたF2304試験の治療中止期である第2治療期において、プラセボ群に対し本剤群で主要評価項目であるJIA分類基準に基づく疾患再燃までの期間の延長が認められております。また、審査報告書23ページ、表20及び図5のとおり、A2310試験の関節症性乾癬の部分集団においても同様の傾向が認められております。以上の成績、及び成人の関節症性乾癬患者における関節症状に対して有効性に国内外差は認められていないこと等を踏まえ、関節症状に対する有効性も期待できると考えました。
 最後に、小児膿疱性乾癬に対する有効性について、次のように考察しております。小児膿疱性乾癬患者数は特に少なく、臨床試験成績は得られておりませんが、局面型皮疹を有する小児乾癬患者を対象としたA2310試験及びA2311試験の成績に加え、審査報告書24ページ、表21に示す小児膿疱性乾癬患者を対象とした症例報告や、小児及び成人の膿疱性乾癬の病態生理に係る知見、並びに成人の膿疱性乾癬の臨床成績等を踏まえると、小児膿疱性乾癬患者に対する本剤の一定の有効性は期待できると考えております。
 以上より、機構は、本剤の小児尋常性乾癬、関節症性乾癬及び膿疱性乾癬に対する有効性は示されていると判断いたしました。ただし、日本人の小児乾癬患者の成績は非常に限られていることから、製造販売後の調査等において、有効性についても可能な限り情報収集に努めることが適切と考えております。
 安全性について、審査報告書26ページ、表22に小児乾癬患者を対象とした臨床試験における本剤の安全性の概要を、成人乾癬患者を対象とした臨床試験における安全性の概要とともに示しております。6歳以上18歳未満の小児乾癬患者における本剤の安全性は、既承認の成人乾癬患者と比較して、現時点で新たな懸念を示唆する成績は得られておらず、また、用量間で明らかな違いは認められていないことから、既知の副作用の発現に留意するとともに、既承認効能・効果で実施されている安全対策を小児乾癬患者においても実施することにより、本剤のリスクは管理可能と判断しております。
 用法・用量について、審査報告書28ページ、「7.R.5」を御覧ください。これまでに説明いたしました内容等から、提出された臨床試験において設定されていた本剤低用量と高用量で有効性に大きな違いはなく、本剤低用量群で、小児乾癬患者に対して臨床的ベネフィットが得られると考えられたことから、6歳以上の小児尋常性乾癬、関節症性乾癬及び膿疱性乾癬患者における用法・用量として、低用量に当たる体重25kg未満及び25kg以上50kg未満は75mg、並びに50kg以上は150mgを通常用量と設定することが適切と判断しました。一方、体重50kg以上の小児患者については、体重上限の設定がなく、通常用量が1回300mgである成人乾癬患者と同程度の体重となる小児患者も一定数存在すること等を踏まえ、体重50kg以上の小児乾癬患者において、ばく露量が低くなることが想定される場合等に、高用量に相当する1回300mgを選択可能とすることは意義があると考え、用法・用量を審査報告書34ページ、[用法及び用量]欄のとおり修正して設定することが適切と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新用量医薬品としての申請であることから、再審査期間は4年と設定することが適切と判断いたしました。また、コセンティクス皮下注75mgシリンジについては、生物由来製品に該当し、製剤は劇薬に該当すると判断しております。
 薬事分科会では報告を予定しております。以上、よろしく御審議のほどお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見がありましたら承ります。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○宮川委員 教えていただきたいのですが、乾癬ですので、これは長期に使うことが前提だと考えたほうがいいのかと思うのですが、実際に28/35などのように、最終的には日本人小児患者に本剤を自己投与したときは非常に長くなると考えます。成長期において段階的に用量を増やしていく形なのだろう推察します。これは中止の時期、実際には乾癬ですから考えなくてよろしいとも考えますが、効果がある限り続けて投与し続けるという薬と位置付けてよろしいのでしょうか。心配だったもので、私は十分な知識がないものでお聞きしたいと思いました。以上です。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。御指摘のとおり、乾癬治療において、明確なやめ時の設定は難しく、本剤の効果が認められている限り使用されるのかと考えております。
○宮川委員 ありがとうございます。大変な疾患ですので、分かりました。
○清田部会長 ほかに御質問はありますか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは議決に入りたいと思います。議題3については、中野委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことにします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、ロビーで御待機されている亀田委員、島田委員をお呼びください。
── 亀田委員、島田委員 入室 ──
○清田部会長 続いて、議題4に移ります。山口委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議題4及び5の審議の間、会議から御退出して御待機していただくこととします。また、松下委員においても、利益相反に関する申出に基づき、議題4の審議の間、会議から御退出して御待機いただくこととします。また、山本委員におかれましては、薬事分科会審議参加規定第5条に基づき、議題4の審議の間、会議から御退出して御待機いただくこととします。山口委員、松下委員、山本委員は御退出をお願いします。
── 山口委員、松下委員、山本委員 退室 ──
○清田部会長 それでは、議題4について、機構から概要の説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 審議事項の議題4、資料No.4、医薬品レットヴィモカプセル40mg他の製造販売承認の可否等について御説明します。以後の審査報告書のページ数は、各ページの79分の●で記載している数字を使用します。
 Rearranged during transfection(以下、「RET」)が、RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌においては、RET融合遺伝子が非小細胞肺癌の発癌に重要な原因遺伝子であると考えられております。本剤の有効成分であるセルペルカチニブは、RET等のキナーゼを阻害する低分子化合物であり、RETのキナーゼ活性を阻害し、RETを介したシグナル伝達を阻害することにより、RET融合遺伝子を有する非小細胞肺癌に対して腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられております。
 今般、本剤は、「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として承認申請されました。なお、本剤は、令和2年10月の当部会における審議を経て、希少疾病用医薬品に指定されております。令和3年4月時点において、RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に係る効能・効果で、34か国で承認されています。
 本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料No.18にありますとおり8名の委員です。
 以下、臨床試験成績を中心に審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国際共同第I/II相試験である17001試験が提出されました。
 有効性については、審査報告書38ページの表28を御覧ください。17001試験のコホート1に組み入れられた化学療法歴のあるRET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者、及びコホート2に組み入れられた化学療法歴のないRET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者において、主要評価項目であるRECIST ver1.1に基づく独立評価委員会判定による奏効率は、それぞれ55.2%及び71.4%でした。
 当該成績に加えて、RET融合遺伝子が癌のドライバーであること等を考慮すると、RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者に対する本剤の一定の有効性は示されたと判断しました。
 安全性については、審査報告書41ページ、7.R.3項を御覧ください。本剤投与時に特に注意すべき有害事象として、肝機能障害、過敏症、QT間隔延長、高血圧及び出血が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師による有害事象の観察や管理、本剤の用量調節等の適切な対応により、忍容可能と判断しました。ただし、日本人における検討症例は限られており、製造販売後には、本剤を使用した全例を対象とした使用成績調査の実施が必要であると判断し、承認条件としております。
 以上のような審査の結果、機構は、「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年とすることが適当であり、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。
 薬事分科会には報告を予定しております。
 なお、事前に南委員より3点御意見をいただいておりますので、1点ずつ機構より回答いたします。1点目は、「審査報告書32ページ、表26では、日本人でのCmax、AUCは、外国人と比べて明らかに高くなっています。中央値(25-75パーセンタイル)は、おおむね重なっていると書いてありますが、重なりながらも日本人での曝露は高くなっています。審査報告書46ページの表32では、安全性は日本人と外国人で差は認められていませんが、日本人の患者数は限られています。このような場合、臨床的に意義のある差ではないと海外と同じ用量で承認されますが、日本人で副作用が頻発した抗悪性腫瘍剤の前例もあります。日本人で過度の減量を促すべきではありませんが、何らかの形で注意喚起はしたほうがいいと考えます」との御意見です。
 御指摘のとおり、Cmaxの幾何平均値は、外国人と比較して日本人で数値上高い傾向が認められております。このようなPKの差異が有害事象の発現率にどの程度影響を及ぼすかについて、ピボタル試験である17001試験データに基づき検討され、本剤投与時に特に注意すべき有害事象のうち、肝機能障害、過敏症及び高血圧の発現率に対する統計学的に有意な共変量はなく、本剤の曝露量との間に明確な関連は認められませんでした。
 一方、QT間隔延長については、臨床薬理試験である18032試験の結果、本剤の曝露量の増加に伴い、QTcFのベースラインからの変化量のプラセボとの差が延長することが示唆されました。しかしながら、17001試験において日本人患者や低体重患者で有害事象としてのQT間隔の延長の発現率が明らかに高くなる傾向は認められていないこと等を考慮すると、添付文書の重要な基本的注意として、試験設定に基づく海外よりも綿密なモニタリングを設定するとともに、用法・用量に関連する注意の項で、QT間隔延長の程度による用量調節基準の目安を提示することにより管理可能と判断いたしました。ただし、御指摘のとおり日本人データは限られておりますので、製造販売後の安全性情報を注視し、注意喚起の追加の要否等について引き続き検討してまいりたいと思います。
 続いて2点目です。「審査報告書50ページの記述を見ますと、PD-1/PD-L1阻害薬による前治療歴があると、明らかに過敏反応の頻度が増しています。まだ確定的なことは言えないにしても、やはり何らかの形で注意喚起をしたほうがいいと思います」との御意見です。
 専門協議においても同様の御意見をいただきました。機構としても何らかの注意喚起・情報提供が必要と考えており、本剤投与による過敏症等の発現リスクとPD-1/PD-L1阻害剤による治療歴の有無との関係については、資材で情報提供する予定です。また、製造販売後調査においても、前治療歴の情報を収集し、引き続き検討します。
 最後、3点目です。「以前にもお願いしましたが、このように単群の試験のデータで承認する場合、奏効割合だけでなく奏効期間も考慮すべきです。臨床に関する概括評価の表2.5.4-7に奏効期間の概要がまとめられており、中央値は6~12か月の間ということは分かりますが、まだ治療中の患者もいるため、全体像が把握できません。何度か申し上げておりますが、スパイダープロットあるいはスイマーズプロットを示すようにしてください。また、有効性は奏効割合だけで評価するわけではありませんので、可能であれば審査報告書に記載してください」との御意見です。
 審査報告書の40ページを御覧ください。昨年5月の当部会において同様の御指摘をいただきまして、その後、単群試験の結果等に基づく審査品目については、ウォーターフォールプロットと奏効期間の要約統計量を審査報告書に記載することとしました。今回の奏効期間については、図の直前に記載しておりますとおり、コホート1の化学療法歴のある患者では、中央値の95%信頼区間の下限が12.1か月、コホート2の化学療法歴のない患者では8.2か月でした。投与継続中の被験者が明示され全体像の把握に役立つと御指摘いただきましたスパイダープロット及びスイマーズプロットについては、CTDに記載する等、対応したいと思います。また、審査報告書に記載するデータについては、先生の御指摘を踏まえて今後検討してまいります。
 事前に頂いた御意見に対する回答については以上になります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございます。まず南先生、いかがでしょう。今の回答でよろしいでしょうか。
○南委員 ありがとうございます。御説明いただきまして理解しました。このスパイダープロットやスイマーズプロットを拝見しますと、承認には全く支障がないレベルだと思います。また、やはりPRと判定できなくても、若干縮小しPRに至らないまま長期間増悪を認めない患者さんが多いということが分かりました。そのような情報も有益ですので、是非、今後御提示いただければ有り難いと思います。
 それから、最初に指摘しました血中濃度の差につきましては、依頼者とすればPKに差がないと主張したいのはよく分かるのですが、そうした主張で臨床的に意義のある差は認めなかったと言って承認されて、実際は日本人で副作用が頻発したという事例がありますので、添文に盛り込むほどの情報ではないかもしれませんが、是非、この点に関しましても、資材等を通じて情報提供を促していただければと思います。よろしくお願いします。
○清田部会長 ありがとうございます。ほかに御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、議決に移りたいと思います。なお、亀田委員、濱委員、南委員、横幕委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは、ロビーで待機されています松下委員、山本委員をお呼びください。
── 松下委員、山本委員 入室 ──
○清田部会長 それでは、続きまして議題5です。南委員におかれましては、薬事分科会審議参加規定第5条に基づきまして、議題5の審議の間、会議から御退出して、御待機いただくこととします。南委員は御退出をお願いいたします。
── 南委員 退室 ──
○清田部会長 それでは、議題5につきまして事務局から概要の説明をお願いいたします。
○事務局 議題5、資料No.5、アシミニブ塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料No.5の「2 事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書1ページ中段を御覧ください。申請者は「ノバルティスファーマ株式会社」、予定される効能・効果は、「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病」です。
 まず、1ページの「対象者数」について御説明いたします。本剤の対象となる慢性骨髄性白血病(以下、「CML」)の患者数は5万人未満であり、対象者数に係る要件を満たしているものと考えております。
 次に、「医療上の必要性について」御説明いたします。CMLに対する治療として、イマチニブメシル酸塩、ボスチニブ水和物等の複数のチロシンキナーゼ阻害剤が推奨されています。しかしながら、これらのチロシンキナーゼ阻害剤による治療を行った場合であっても、治療抵抗性又は不耐容となることが報告されており、新たな治療薬の開発が望まれています。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、「開発の可能性について」御説明いたします。2剤以上のチロシンキナーゼ阻害剤による前治療に抵抗性又は不耐容の慢性期CML患者を対象とした国際共同第III相試験において、ボスチニブ群に対する本剤群の優越性が検証される等の試験成績が得られています。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは議決に入ります。亀田委員、川上部会長代理におかれましては利益相反に関するお申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それではロビーで待機されている山口委員、南委員をお呼びください。
── 山口委員、南委員 入室 ──
○清田部会長 それでは、続きまして議題6に移ります。議題6につきまして事務局から概要の御説明をお願いいたします。
○事務局 議題6、資料No.6、ペボネジスタット塩酸塩を先駆的医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。先駆的医薬品につきまして、まずは、当日資料としてお配りしております資料No.20の参考資料を御覧ください。資料の2ページに記載しておりますが、これまで運用で優先審査等の対象として取り扱うこととしておりました先駆け指定医薬品について、昨年の法改正に伴い、先駆的医薬品として法律上明確化した制度でございます。なお、指定要件としては2ページ中段から3ページ上段に記載の4要件でございます。制度の仕組みとしては、希少疾病用医薬品と同様で、承認申請の前に探索的試験の結果等を踏まえて指定するということになります。その指定後に検証試験等の主要な試験成績が得られた上で承認申請が行われ、その審査期間が通常12か月の目標となるところ、6か月になるなどの措置が受けられることとなります。
 それでは、資料No.6の「2 事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書1ページ中段を御覧ください。申請者は「武田薬品工業株式会社」、予定される効能・効果は「骨髄異形成症候群(骨髄芽球比率が20~30%の急性骨髄性白血病を含む)」です。
 まず、1ページの指定要件1「治療薬の画期性」について御説明いたします。本剤はNEDD8活性化酵素に対する阻害作用を有する低分子化合物であり、本剤と同一の作用機序を有する抗悪性腫瘍剤はないことから、指定要件1を満たしているものと考えております。
 次に、指定要件2「対象疾患の重篤性」です。骨髄異形成症候群(以下、「MDS」)は高率に急性骨髄性白血病へと進展する予後不良かつ難治性の疾患であることから、指定要件2を満たしているものと考えております。
 続きまして、指定要件3について御説明いたします。同種造血幹細胞移植非適応のMDS患者を対象に、標準的な治療であるアザシチジンに対する本剤の上乗せ効果を検討した海外第II相試験において、主要評価項目とされた全生存期間について、本剤の上乗せによる延長効果が認められています。また、同様の対象で検証的な位置付けの国際共同第III相試験が実施中でございます。以上を踏まえ、本剤は既存の治療に比べて有効性の大幅な改善が見込まれることから、指定要件3を満たしているものと考えております。
 最後に、指定要件4について御説明いたします。本剤は、世界に先駆けて又は同時に本邦で承認申請を行う予定とされていることから、指定要件4を満たすと考えております。
 したがいまして、先駆的医薬品の指定の4要件を満たしていると考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございます。それでは、まず委員の先生方からの御質問、御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。御質問等ないようですので、議決に入りたいと思います。川上部会長代理、松下委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
続きまして、報告事項に移ります。それでは報告事項議題1~8、及びその他事項議題1につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 まず、報告事項の議題1、議題4、議題5について、併用して使用する医薬品ですので、まとめて御説明させていただきます。議題1は報告事項に関する資料の7を御覧ください。議題4はカルボプラチンに関する資料No.10、議題5については11を御覧いただければと思います。議題1、医薬品キイトルーダ点滴静注100mgの一部変更承認について。キイトルーダはPD-1に対するヒト化モノクローナル抗体である、ペムブロリズマブを有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。既に承認をされている医薬品です。
 また議題4のカルボプラチンですが、カルボプラチンを有効成分とする白金系抗悪性腫瘍剤で、現在、既に承認されている医薬品です。
 また、議題5のアブラキサンですが、パクリタキセルを有効成分として、ヒト血清アルブミンを添加物として含有する抗悪性腫瘍剤で、現在既に承認されている医薬品です。
 今般、キイトルーダについては、MSD株式会社から、「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸・直腸癌」の効能・効果を追加。また、「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」の効能・効果、用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。
 また、カルボプラチンについては、マイラン製薬株式会社から、「乳癌」に対するキイトルーダ及びゲムシタビンとの併用投与に係る用法・用量を追加、アブラキサンについては、大鵬薬品工業株式会社から、「乳癌」に対するキイトルーダとの併用投与に係る用法・用量を追加する一部変更承認の申請がそれぞれなされました。機構における審査の結果、以上の3品目を承認して差し支えないと判断されております。
 ペムブロリズマブの最適使用推進ガイドラインについて御説明いたします。資料No.16-2を御覧ください。ペムブロリズマブにつきましては、MSI-Highを有する結腸・直腸癌及び乳癌に関する一部変更承認申請に伴い、最適使用推進ガイドラインの改正及び作成を予定しております。まず、MSI-Highを有する結腸・直腸癌は3/31ページの枠内に対象となる効能・効果を追記しております。また、7~9ページにかけて、今回審査された主要な臨床試験の成績を記載しております。安全性については11ページ以降に記載しておりますが、新たに注意すべき事項は認められておりません。15ページの「施設について」には、マル1-2として、本剤による治療を行う際に責任者として配置される医師に関する内容を今回追記しております。また、17ページの「投与対象となる患者」を御覧ください。「有効性に関する事項」について、KEYNOTE-177試験で臨床的有用性が示された対象患者等を追記しております。
 続きまして、乳癌についてです。19/31ページを御覧ください。ここから新たに乳癌に関する最適使用推進ガイドラインを作成しております。対象となる効能・効果は21/31ページに記載しております。また、23ページ以降に今回審査された臨床成績を記載しております。安全性については25ページ以降に記載しておりますが、特に新たに注意すべき事項は認められていません。28ページに「施設について」の記載をしております。28ページですが、マル1-2として、乳癌の化学療法及び副作用発現時の対応に十分な知識と経験を持つ医師を治療の責任者として配置していただくよう記載しております。30ページに、「投与対象となる患者」についての記載をしております。「有効性に関する事項」として、臨床試験の結果に基づきまして、有効性が示されている対象と、本剤の投与対象にはならない場合を記載しております。安全性に関する事項は、これまでに作成しているキイトルーダのガイドラインと同様の内容となっております。また、31ページ以降には留意すべき事項について記載しております。
 続きまして、報告事項の議題2、議題3について説明させていただきます。資料は、お戻りいただきまして、報告事項の資料No.8を御覧ください。資料No.8と資料No.9が、オプジーボとカボメティクスに関する資料となっており、併せて御説明させていただきます。オプジーボにつきましては、PD-1に対するヒト型モノクローナル抗体であるニボルマブを有効成分とする抗悪性腫瘍剤で、各種の癌に対する効能・効果として承認されております。
 また、カボメティクスにつきましても、血管内皮増殖因子受容体2等を介したシグナル伝達分子のリン酸化を阻害するカボザンチニブリンゴ酸塩を有効成分とする抗悪性腫瘍剤で、現在、各種の癌に関する効能・効果として承認されております。
 今般、小野薬品工業株式会社及び武田薬品工業株式会社から、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌患者に対するオプジーボとカボメティクスの併用投与の用法・用量を追加する一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、これら2品目を承認して差し支えないとの判断がなされております。こちらにつきましても、最適使用推進ガイドラインの改正を予定しておりますので、御覧いただけると幸いです。
 資料No.16-3を御覧ください。ニボルマブについて、腎細胞癌に係る製造販売承認事項一部変更承認申請に伴いまして、最適使用推進ガイドラインの改正を予定しております。先ほどと同様ですが、3ページに今回追加となる用法・用量に関する記載を追記しております。また、9~10ページにかけて、今回審査された主要な臨床試験の成績を記載しております。
 安全性については13ページ以降に記載しておりますが、新たに注意すべき事項は認められておりません。施設については、18/23ページに記載しておりますが、こちらは特に変更はございません。また、20ページに「投与対象となる患者」を記載していますが、「有効性に関する事項」について、先ほど御説明した国際共同第III相試験で臨床的有用性が示された対象患者を追記しております。
 続きまして、報告事項6、資料No.12を御覧ください。報告事項議題6は、ブスルフェクス点滴静注用の製造販売承認事項一部変更承認についてです。本剤は、スルホン酸エステル系のアルキル化剤であるブスルファンを有効成分とする抗悪性腫瘍剤で、現在は「同種造血幹細胞移植の前治療」及び「ユーイング肉腫ファミリー腫瘍及び神経芽細胞腫における自家造血幹細胞移植の前治療」を効能・効果として、小児に対して本剤を1日4回投与する用法・用量が承認されております。
 本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、本年1月29日に開催された本部会において事前評価を頂いております。この内容を踏まえて、今般、大塚製薬株式会社から、「小児に対する1日1回投与」の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断されております。
 続いて、報告事項の議題7、医療用医薬品の承認条件について。資料No.14の2ページを御覧ください。今回は、「ダルナビル エタノール付加物/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩」を有効成分とする医薬品「シムツーザ配合錠」の承認条件に係る御報告です。本剤は、令和元年6月に「HIV-1感染症」の効能・効果が承認され、その際、承認条件が付されております。この度、ヤンセンファーマ株式会社から臨床薬理試験の成績が提出され、機構において評価されましたので御報告いたします。
 3ページを御覧ください。臨床薬理試験として、日本人健康成人を対象に、本剤を標準食摂取後に単回経口投与したときの薬物動態及び安全性を検討することを目的とした非盲検非対照試験が実施されました。通し番号4ページの表の1を御覧ください。本試験で得られたPKパラメータと、本剤の承認申請時に提出済みの海外臨床試験から得られた外国人健康成人でのPKパラメータは表に示すとおりであり、本試験と海外臨床試験の結果について、臨床的に意義のある民族差は認められませんでした。
 また、通し番号の6ページに安全性について記載しておりますが、現時点で追加の対応が必要となる問題は生じておりません。
 機構における評価の結果、提出された資料から、承認条件は対応されたものと判断されております。
 最後に、議題8、医療用医薬品の再審査結果について御報告します。資料No.15を御覧ください。資料No.15-1~資料No.15-4にかけて、今回5品目、ゴナックス皮下注用、バンコマイシン眼軟膏、サムチレール内用懸濁液、ルコナック爪外用液について、再審査の結果を御報告いたします。これらの品目について、製造販売後調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないことが確認され、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はないと判定されたものです。御報告は以上です。
○清田部会長 委員の先生方から御質問等がございましたら承ります。いかがでしょうか。
○渡辺委員 よろしいでしょうか、渡辺です。議題5ですが、もともと乳癌の場合には、資料No.11に書いてありますA法、これは3週に一遍の投与法で、E法というのが、アテゾリズマブとの併用が承認された際にE法となって、アテゾリズマブとnab-パクリタキセルの併用になったわけですが、その際に今まで乳癌に対してアブラキサンの週1回の投与が世界水準として当たり前に行われていたのですけれども、アテゾリズマブとの併用が認められた途端にnab-パクリタキセルの単剤、あるいはアドリアマイシンなどとの併用での通常の化学療法が一切認められなくなったわけですね。それで今般ペムブロリズマブとの併用が承認され、さらにカルボプラチン、ゲムシタビンなどがnab-パクリタキセルとの併用を認めたということですが、今後の考え方として、他の抗悪性腫瘍剤との併用においてということが承認されていることになっていることから、nab-パクリタキセルとの併用の相手というのは、臨床医の判断で、ある程度今まで標準と考えられてきたものは併用してよいということでよろしいのでしょうか。お答えください。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。今回、「他の抗悪性腫瘍剤との併用において」と記載させていただいたのは、先の承認のアテゾリズマブとの併用と、今回新たに試験が提出されているペムブロリズマブとの併用の二つのことを指して、他の抗悪性腫瘍剤との併用と記載させていただいているところです。なので、我々の趣旨としては、この2剤の併用を意図して記載させていただいているところです。そのほかの抗悪性腫瘍剤との併用における使用に関しては、我々の方では推奨はできないと考えているところです。先生がおっしゃっているように、保険上の取扱いというのは、また少し別の観点からになりますので、我々からの説明は控えさせていただきたいと思います。
○渡辺委員 何となく煮え切らないお返事ですけれども、最終的に今回の、もしこれが承認された場合には、添付文書にはこのE法、他の抗悪性腫瘍剤との併用においてという文が残るだけと考えていいわけですね。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。用法・用量は「他の抗悪性腫瘍剤との併用において」と記載し、この他の抗悪性腫瘍剤というのが何を指しているかというのは、用法・用量に関連する注意の項において、併用する薬剤は、添付文書の臨床成績を参照してくださいという形で、用法・用量と用法・用量に関連する注意の組み合わせで注意喚起をさせていただいております。
○渡辺委員 そうした余計な注意喚起はしなくても、本来、パクリタキセルという薬剤は、乳癌において、ウィークリーの投与というのが3週1回の投与よりも優れているという結果が出ているわけです。それの改善薬であるnab-パクリタキセルの場合には、単剤で、ウィークリーの投与というのが標準的と世界は考えられているので、今般、このような非常に懐が深いといいますか、他の悪性腫瘍剤との併用という言葉で決めてくれた以上は、それ以上、余分なことはガタガタ付けないほうがいいかと思うので、御検討いただけませんでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 直接的な回答にはならないかもしれないのですが、我々は提出された臨床試験成績に基づいて、用法・用量、用法・用量に関連する注意の記載を検討させていただいているところです。その範囲を超えた薬剤に関する使用については、言及しづらいところがございますので、その点は御理解を頂ければと考えております。
○渡辺委員 だから、言及していただかなくてもいいのです。臨床の現場として、例えばカルボプラチンやゲムシタビンとの併用というのも実際にここに書いてあるわけですから、今後、次から次へ出てくる薬剤との併用が予想されるわけですから、この一文にとどめておいていただけませんでしょうか。他の抗悪性腫瘍剤との併用においてということで、具体的な併用どうのこうのとか、ほかの部分にまた付けるとこれをバサバサ切られることになるわけです。そうすると実地臨床の現場にいる我々としてはとてもやりにくいわけです。ですから、そうした点も考えて、及び治療を受ける患者の立場として考えた場合にも、余り細かな規定をすることはいかがなものかと思うのですが、もう一回お答えください。
○医薬品医療機器総合機構 確かに先ほど先生がおっしゃっていたように、アテゾリズマブのときは、併用相手が用法・用量できっちり制限されているような解釈になったと思うのですけれども、今回、用法・用量上は、相手薬を明記しておりませんので、ここで制限をかけていることにはならないというように考えております。
○渡辺委員 大分いい方向に譲っていただけたと思います。感謝いたします、ありがとうございます。
○清田部会長 よろしいでしょうか。ほかに御質問はございますか。はい、ありがとうございます。
○宮川委員 宮川です。今のお話は実地臨床の所でどのように使いやすくするかという実地医家としての方の御意見だろうと思います。それは貴重な発言であることを、是非心に留めておいていただかないと、今後の実臨床の動きが妨げられることになりかねません。是非そのような書きぶりでお願いいたします。
○渡辺委員 宮川先生、ありがとうございました。
○清田部会長 ほかに御意見はよろしいですか。そうしましたら、報告事項、議題1~議題8、その他事項議題1について御確認いただいたものといたします。
 続きまして、その他事項に移ります。事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。事前にお送りしました資料No.13、シルガード9水性懸濁筋注シリンジに関する「審査報告書の修正表」を御覧ください。修正の内容として、国際共同第III相試験である001試験において、いずれかの群で5%以上に認められた注射部位の反応として、「疼痛」「腫脹」「紅斑」を記載していましたが、「そう痒感」のデータが漏れていたことから表に追記するものとなっております。なお、本修正による審査結果の変更はありません。報告は以上です。
○清田部会長 この件につきまして、委員の先生方から御質問等がございましたら承ります、よろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。それでは、その他事項につきましては御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か御報告がございますか。
○事務局 次回の部会は、9月6日月曜日午後6時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○清田部会長 本日はこれで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。お疲れさまでした。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)