2020年10月5日 薬事・食品衛生審議会 日本薬局方部会 議事録

日時

令和2年10月5日(月)14:00~

場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール15E(15階)

出席者

出席委員(11名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 

欠席委員(1名)

行政機関出席者
 

 山本史(大臣官房審議官)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
 田宮憲一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構執行役員) 他

 


 

議事

○事務局 ただいまから「薬事・食品衛生審議会日本薬局方部会」を開催させていただきます。委員の先生方におかれましては、大変お忙しい中御出席を頂き、誠にありがとうございます。初めに、本部会は基準に関する審議を行いますので、公開にて開催させていただきます。お手元にて紙媒体として配付している委員名簿に従い、委員の先生方を御紹介させていただきます。名簿の順で読み上げさせていただきます。まず、荒戸照世委員、伊藤美千穂委員、今回から新しく委員になられました太田茂委員、川崎ナナ委員、川原信夫委員、坂本知昭委員、出水庸介委員、橋田充委員、深澤征義委員、福原潔委員、堀正敏委員、安原眞人委員です。
また、今回は前回の改選から初めての開催となりますので、新たに部会長代理を選出させていただきたいと思います。部会長代理については、薬事・食品衛生審議会令第7条第5項の規定に基づき、部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者がその職務を代理するとされております。部会長、御指名をよろしくお願いいたします。
○橋田部会長 日本薬局方の作成に、いつも非常に重要な役割を果たしていただいております坂本委員に、新たに部会長代理をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、坂本委員に部会長代理をお願いします。どうぞ、こちらのほうへ御移動をお願いします。
○事務局 それでは、本日の委員の出席状況ですが、先ほど申し上げましたとおり、荒戸委員より御欠席の御連絡を頂いております。現時点で委員12名のうち11名が御出席いただいているということで、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
続いて、事務局の紹介をさせていただきます。まずは厚生労働省です。本日、少し遅れているようですが、医薬・生活衛生局長の鎌田です。続いて、大臣官房審議官の山本です。同じく少し遅れているようですが、医薬品審査管理課長の吉田です。続いて、医薬品医療機器総合機構です。審査センター長の新井です。少し遅れているようですが、執行役員の田宮です。審査マネジメント部長の美上です。
それでは、部会を開始する前に、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない。」と規定しております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に該当する事項はない旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
それでは、本日は、日本薬局方の全部改正について、御審議を頂くこととしております。橋田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○橋田部会長 改めまして、本日は委員の先生方におかれましては大変お忙しいところ、日本薬局方部会に御出席を賜り、ありがとうございます。それでは、ただいまから議事に入らせていただきます。最初に、事務局から、本日の資料の確認をお願いします。
○事務局 事務局より御説明申し上げます。資料については、今般、各部会においてペーパーレス化を実施しております。各委員におかれましては、お手元のタブレット端末で資料を御確認いただければと思います。
タブレットの使用方法について御説明させていただきます。お手元に「ペーパーレス審議会タブレット操作説明書」を配付させていただいておりますので、併せて御確認いただければと思います。
タブレットの操作説明書の1ページを御覧ください。お手元のタブレット端末ですが、議事次第を画面に表示した状態で置かれているかと思います。他の資料を画面に表示するには、画面左上の「マイプライベートファイル」をタップしていただきますと、資料が並んでおります。その表示されている順に上から申し上げます。マル1として薬局方議事次第、マル2局方部会委員名簿、マル3座席表、そしてフォルダーで参考資料が格納されております。
以下、資料として、資料1の順番が入れ替わっておりますが、上から申し上げますと、資料1-1、2として通則等、資料1-3は医薬品各条の化学薬品等のア~コ、資料1-4は医薬品各条の化学薬品等のサ~ノ、資料1-5は医薬品各条の化学薬品等のハ~ワ、資料1-6は医薬品各条の生薬等、資料1-7、8はUV・IRスペクトル、資料1で第十八改正日本薬局方(案)について。
こちらから資料2になります。資料2-1は参考情報等、資料2は日本薬局方の参考情報・附録改正、資料3は日本薬局方新規収載候補品目(案)についてです。タブレットの使用方法、配付資料等については以上です。
○橋田部会長 ただいまの説明について、何か御質問等はありますか。よろしいですか。それでは、審議事項1及び報告事項1に移らせていただきます。まず、事務局より説明をお願いします。
○事務局 それでは、審議事項1及び報告事項1について、御説明させていただきます。まず、資料1の「第十八改正日本薬局方(案)について」を御用意ください。資料1については、日本薬局方の本体告示の部分でして、御審議いただく事項という扱いになります。また、資料2の「日本薬局方の参考情報・附録」については、本体、告示の部分には含まれず、扱いとしては報告事項という形になります。第十八改正として全体像を御理解いただくため、審議事項1と報告事項1を続けて御説明させていただきたいと思います。
お手元の資料1「第十八改正日本薬局方(案)について」を御用意ください。資料の1ページですが、1.は日本薬局方について記載をしております。日本薬局方は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の第41条の規定に基づき、医薬品の性状及び品質の適正を図るために作成されている規格基準書です。薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めることとされているものです。
次に、2.は日本薬局方の改正歴等をまとめております。日本薬局方が改正された公示年月日と収載品目数の変遷をまとめております。明治19年(1886年)の初版の公示以来、日本薬局方は、これまで134年の歴史があり、今日に至るまで改正が重ねられております。薬機法の第41条第2項で厚生労働大臣が少なくとも10年ごとに改定をするとしておりますが、それぞれの改定歴を見ますと、昭和51年の第九改正からは5年ごとに全面改正が行われております。また、第十二改正からは、全面改正の後に2回追補を作成している状況です。追補以外にも、必要に応じた部分改正を行っているところです。医薬品各条における収載品目は、改正ごとに増加が図られており、現在、2,008品目が収載されている状況です。
3.については、第十八改正日本薬局方の作成の動きについて記載しております。
4.は、第十八改正の審議経過について記載されているものです。平成16年の独立行政法人医薬品医療機器総合機構の設立以降、日本薬局方の原案の作成は機構において行うこととされ、必要な委員会は全て機構に設置しております。平成30年12月から令和2年8月までの間に、計127回の委員会が開催されております。その後、原案が取りまとめられ、本年8月に機構から厚生労働省に対して原案の報告がなされました。この報告を基に、本日、当部会において御審議を頂くものとなっております。
今後の予定としては、本日の審議を踏まえ、所定の手続を行った上で、来年6月をめどに第十八改正の告示を行いたいと考えております。
以降、資料2と資料2-1の日本薬局方の参考情報及び附録部分の改正(案)も含めまして、具体的な改正内容については、総合機構から御説明をさせていただきます。
○橋田部会長 お願いします。よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、審議事項「第十八改正日本薬局方(案)」及び報告事項1「日本薬局方の参考情報の改正(案)」について、御説明させていただきます。
資料1を御覧ください。資料1では第十八改正日本薬局方(案)の概要等を説明する資料です。初めに、この資料の構成について御説明させていただきます。資料1の1~9ページは、今回の改正までの経緯等を示しております。次に、10~16ページまでが改正内容の概要になります。続いて、18ページが通則の新旧対照表になっており、19ページから一般試験法の新旧対照表があります。続いて、26ページから収載・改正品目の一覧表となっております。また、別の資料になりますが、資料1-1から1-8が、第十八改正日本薬局方(案)の本体となっております。
報告事項1の「日本薬局方の参考情報・附録の改正(案)」についても、一連の日局本体の改正に関する内容であることから、審議事項とあわせて御説明させていただきます。
では、資料1の第十八改正日本薬局方(案)の概要について御説明させていただきます。10ページ「1.通則」を御覧ください。まず、通則の改正の内容について御説明させていただきます。通則とは、日本薬局方全般に共通する事項を定めたものです。通則には、新たに1つの事項が収載され、既存の1つの事項が改正されました。
1.1.新たに収載する「通則34」は、本邦ではこれまで新薬を対象として適用されてまいりました「医薬品の元素不純物ガイドライン(ICH-Q3D)」を日本薬局方収載品全般に適用するものです。
1.2.改正する「通則8」では、日本薬局方に用いる原子量をこれまで用いてきた2007年国際原子量表から、2015年国際原子量表によるものといたしました。なお、2015年国際原子量表において原子量が変動範囲で示される元素の原子量は、従来どおり2007年国際原子量表によるものといたしました。以上が、通則の主な改正の内容です。
続いて、「2.一般試験法」について御説明させていただきます。一般試験法とは、医薬品各条に共通する試験法で、医薬品の品質評価に有用な試験法及びこれらに関連する事項を定めたものです。現在、日本薬局方において規定している一般試験法の一覧を資料1の26~27ページに示しております。今回は、新たに1項目を収載し、既存の11項目を改正いたしました。それでは、主な内容を御説明させていただきます。
10ページにお戻りいただき、「2.1.新たに収載する試験法」です。(1)の「2.05 サイズ排除クロマトグラフィー」では、溶液中の分子をそのサイズに応じてクロマトグラフィーにより分離する方法を新規に設定させていただきました。
次に、「2.2.改正する試験法等」ですが、主なものとして、(1)、(3)、(6)及び(11)について御説明させていただきます。(1)の前文は、ユーザーに分かりやすい日本薬局方となるように、試験法番号の説明を追記し、従来記載しておりました五十音順による試験法名の一覧を削除いたしました。
(3)の「2.48 水分測定法」では、測定の適合性に関する項目を追加して、この適合性試験で適切に水分測定ができることを確認することを前提に、陽極液/陰極液及び試薬について、柔軟な使用を可能とする記載といたしました。また、電量滴定法における水1mgに対する電気量(C/mg)を国際機関発行の物理定数を基に計算した値(10.71)に変更いたしました。
(6)の「2.66 元素不純物」では、一般試験法「2.66 元素不純物試験法」と参考情報「製剤中の元素不純物の管理」を統合し、試験法名を「2.66 元素不純物」に改めるほか、ICH-Q3Dの改正を反映いたしました。
次の(11)の「9.62 計量器・用器」は、化学用体積計のガラス製体積計について、日本産業規格等のクラスAの体積許容誤差に適合したものを使用する旨を追記いたしました。
「2.3.新たに収載する標準品」については、今回、新たに14件追加するとともに、次の12ページの上段2.5.にあります11件の標準品を、「9.01(2)国立感染症研究所が製造する標準品」から削り、「9.01(1)」へ加えることといたしました。以上が一般試験法の改正の概要となります。
続いて、医薬品各条について御説明させていただきます。「医薬品各条」とは、個々の医薬品原薬や製剤の規格を記載しているもので、30ページ以降に一覧表を示しております。この表には、改正品目における変更項目も併せて示しております。
それでは、12ページにお戻りいただき、「3.医薬品各条」のところから概要を説明させていただきます。「3.1.新たに収載する品目」ですが、33品目を予定しております。33品目の内訳は、化学薬品・抗生物質27品目、生物薬品3品目、医薬品添加物1品目、生薬等2品目です。
13ページを御覧ください。「3.2.改正する品目」ですが、168品目を予定しており、その内訳は、化学薬品等91品目、生薬等77品目です。なお、16ページの「3.3.削除する品目」にありますように、引用元の生物学的製剤基準から削除された品目等、8品目を今回削除する予定です。
以上が、第十八改正日本薬局方(案)について、御審議いただきたい内容です。
続いて、第十八改正日本薬局方の参考情報の改正等について御説明させていただきます。資料2の「日本薬局方の参考情報・附録の改正(案)について」の1ページを御覧ください。1.1.ですが、参考情報は第十八改正においてユーザーへの分かりやすさの観点から、構成全体を変更させていただき、カテゴリー分類の見直しを行うほか、各参考情報に固有番号を付与いたしました。
次の「1.2.新たに作成する項目」ですが、(1)~(7)の7項目です。それぞれの概要について御報告させていただきます。(1)ですが、「G3.生物薬品関連」では、ICHのバイオ医薬品関連のガイドラインのうち、特にバイオ医薬品に特有の要素を中心に品質確保の基本的考え方を示した、「G3.バイオテクノロジー応用医薬品(バイオ医薬品)の品質確保の基本的考え方<G3-1-180>」を新たに収載いたしました。
続いて、(2)と(3)ですが、「G4.微生物関連」の項に、微生物試験に用いる培地及び微生物株の試験室での管理における留意事項を示すため、「G4.微生物試験に用いる培地及び微生物株の管理<G4-2-180>」を新たに収載いたします。
また、次のページですが、エンドトキシン試験法<4.01>及び遺伝子組換えタンパク質を利用したエンドトキシン測定試薬を用いてエンドトキシンを測定する際の留意点を示すために、「G4.エンドトキシン試験法と測定試薬に遺伝子組換えタンパク質を用いる代替法<G4-4-180>」を新たに収載いたします。
続いて、(4)は「G5.生薬関連」の項に、「G5.生薬の放射能測定法<G5-8-180>」を新たに収載いたします。当該参考情報では、生薬中の放射性物質の測定方法を記載しております。
次に、(5)は「G6.製剤関連」の項に、「G6.錠剤硬度測定法<G6-4-180>」を新たに収載いたします。当該参考情報では、製造工程から使用までの衝撃や圧迫などのストレスに対する錠剤の機械的強度の確保などに用いられる錠剤硬度の測定法について、測定の原理、種類、装置構成や考慮すべき点を記載しております。
(6)と(7)ですが、「G7.医薬品包装関連」では2つの参考情報を新たに収載いたします。(6)の「G7.無菌医薬品の包装完全性の評価<G7-4-180>」は、無菌医薬品の包装が製剤の品質を維持するために必要な、微生物の侵入及び物質の出入りを防止する能力を保証するための考え方とその手法を記載いたしました。(7)の「G7.無菌医薬品包装の漏れ試験法<G7-5-180>」は、無菌医薬品の包装完全性試験の中でも特に種類の多い「漏れ試験」について、試験の概要を記載しております。
続いて、「1.3.改正する項目」ですが、(1)~(3)の3項目です。(3)の「GZ.第十八改正日本薬局方における国際調和<GZ-3-180>」については、国際調和に対応した速やかな情報提供のため、国際調和に係る情報を一元的に独立行政法人医薬品医療機器総合機構のウェブサイトで発信し、本参考情報における提供を廃止することといたしました。
次に、3ページ、「1.4.廃止する項目」ですが、(1)の「G1.製剤中の元素不純物の管理」については、一般試験法「2.66 元素不純物」に統合するため、参考情報から削除することといたしました。
参考情報の改正(案)についての御報告は、以上となります。以上、御審議、御確認のほど、よろしくお願い申し上げます。
○橋田部会長 ただいま事務局及び機構から御説明いただきましたように、本日の議題は第十八改正日本薬局方の改正について、御審議いただくということです。この薬局方案ですが、第十七改正日本薬局方は5年前に告示されましたが、その後、第十八改正日本薬局方の作成の基本方針というものを、この部会でも御審議いただき、決めました。それに基づいて、機構を中心に専門の委員会、先ほど127回という回数もございましたが、そういった経過を踏まえて、今日、原案として御提案いただくということになっております。
委員の先生方におかれましては、あるいは専門委員としても、そういう御審議に既に参加していただいていることもあろうかと思いますが、そういうお立場も含めまして、ただいまの御説明に対して御質問、御意見、追加の御説明等がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
○川崎委員 基本方針に関しては今、御説明がなかったのですが、第十八改正基本方針については、本日の資料の全体方針に加えて、各委員会も基本方針を策定しているのではないかと思います。全体的にどの程度達成されたのでしょうか。例えば第十九改正に向けた課題として残ったことなどがありましたら、教えていただけませんでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 作成基本方針については、中長期的な課題も記載しております。また、達成度を定量的に示すことは非常に難しいものと考えております。実際に達成できたことを御説明させていただきます。
先ほど御説明したICH-Q3Dの日本薬局方への取り込みに関し、ロードマップを作成すると日局18作成基本方針に示されております、日局18までに取り込みを終えました。そのほか、生薬の放射能測定法の参考情報への収載が、今回の第十八改正で達成できた事項として挙げられます。
一方で、医薬品各条における有害試薬の可及的排除については、原案作成企業の協力を得るのに苦労しておりまして、日局18では対象の全品目を改正することはできなかったのですが、業界団体宛の通知を利用しまして、関係企業の方々に呼び掛けを行い、その結果、対象のほとんどの品目で協力いただけることになっております。今後、十八改正の追補以降でも、企業から協力を得られたものから順次、改正作業を進める予定でいます。
○橋田部会長 よろしいですか。ほかに御質問、あるいは御意見がございましたらお願いいたします。
○深澤委員 今回初めて参加するので、どのような形で申し上げたらいいのか分からないのですが、この資料を見せていただいたときに、20ページ等で、医薬品医療機器総合機構のWebサイトに掲載しているということが書いてありますが、実際にWebサイトのアドレス等を記入して、リンクを張るようなことをすると、より便利がいいのかなと思いましたので、お伝えさせていただきます。
○橋田部会長 この点について御説明いただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。PDG調和試験法などの冒頭には、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構のウェブサイトに掲載している」としておりまして、参考情報の「第十八改正日本薬局方における国際調和」に実際のURLを記載いたしました。
○深澤委員 分かりました。
○橋田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○川崎委員 3.の具体的な方策の(2)最新の学問・技術の積極的導入による質的向上のマル5の生物薬品に係る整備について、幾つかお尋ねいたします。
まず、基本原則に関してですが、ここに書かれている「生物薬品の品質保証の基本原則を整備するとともに、積極的に各条収載をはかる」ということに関して、今回、参考情報に「バイオテクノロジー応用医薬品の品質確保の基本的考え方」が追加されたことは支持できると思います。つまり、バイオ医薬品の開発が進む中で、なかなかバイオ医薬品の各条新規収載が進まない現状を考えますと、参考情報の新規作成というのは、1つの方策ではないかと思います。
先ほど基本方針の課題の中で御説明がなかったのですが、生物薬品については、生物薬品総則を作成することが一時話題になったと思いますが、今回のこの参考情報は生物薬品総則に代わるものでしょうか、それとも、総則は別に作成中ということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、生物薬品では、先生も御承知のとおり、バイオ医薬品のほか、生物由来原料から抽出されたようなワクチンなども含まれるというように考えておりまして、それについては対応した公定書として生物学的製剤基準がございます。
現時点においては、日局のみで生物薬品総則を作成することは困難と考えておりまして、今後、生物学的製剤基準などの動きも見ながら、生物薬品総則の議論が可能となった段階で、改めて議論を再開したいと考えております。つまり、現時点では、それについては議論が進んでいない状況にございます。
○川崎委員 生物学的製剤基準と一緒に検討していくことは重要なことだと思います。 つぎに、バイオ後続品についてお尋ねいたします。バイオ後続品については、1つの先行品に対して複数の後続品が承認されるようになり、その開発と普及が進んでいると思います。この部会でも、日局におけるバイオ後続品の取扱いが話題になっていたと思うのですが、その後、日局とバイオ後続品に関して、どのような議論がなされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 バイオ後続品につきましては、個別の各条として収載することが非常に難しいと考えておりまして、例えば抗体医薬品、インスリン類といったくくりで、ジェネラルモノグラフのようなものとして、各品目群のCQA、その評価方法の項目を参考情報で示す方法はあるのではないかとは考えております。
18局では、その基盤となる参考情報として、「バイオテクノロジー応用医薬品(バイオ医薬品)の品質確保の基本的考え方」を作成いたしました。
今後ですが、評価方法として日局参考情報又は一般試験法の充実化を図るとともに、先ほど申し上げたようなジェネラルモノグラフ的なものは、参考情報として作成することなどの可能性も含めて、機構に設置している原案検討委員会の先生方とも、引き続き議論をさせていただきたいとは考えています。
○川崎委員 どうもありがとうございました。
○橋田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○伊藤委員 大学にいる者から一言という形で言わせていただきます。薬局方の温度の基本になっているものは水銀温度計です。17局から18局になるときに、これは何も変わっていません。この水銀は、水俣条約で大学中の水銀の温度計のものを全部集めて捨てなさいということで、保管させられている状況で、いつも実習の場で「薬局方は水銀が基になっているのですが、どうしましょう」という話が常に出てきます。
これに対して、私がここの場に座っているということはほかの先生も御存じなので、審議会ではこの水銀をどのように扱っているのですかということを聞かれることが、時々あります。そのときには、どのように返事をすればよいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 18局に向けて、この水銀を使用した試験などについては順次削除を進めております。先生に御指摘いただきました日局一般試験法の温度計につきましても、機構の原案検討委員会で検討は進めたのですが、代替となる温度計との互換性を評価することがなかなか難しいということで、検討が進んでいないという状況にございます。
○伊藤委員 ということは、近い将来には変わる見込みがないということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 近い将来という意味では、まだ検討が進んでいないので、時期は明言できないのですが、検討は進めているものの、すぐの変更は難しいものと考えております。
○橋田部会長 作成の基本方針において、国際化の一層の推進というのがいつもあるわけですが、例えば今の問題はグローバルに見たら、どういう形で取り扱われているのですか。他の薬局方、或いはいろいろな基準でしたら、どうでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 例えば調和品目の添加物のステアリン酸では、凝固点を水銀の温度計で測定するようにEPやUSPは規定しているのですが、日局は水銀温度計を使わずに、代替法を規定しているという状況がございます。ですので、EPやUSPでも、まだ水銀を排除するというところは進んでいないと考えています。
○橋田部会長 国際的に見ても、現状としてはそういう段階だということのようです。ほかにはいかがでしょうか。
○川崎委員 マル6の参考情報の活用についてですが、日局では今まで、参考情報が各条でそのまま採用されることはなかったかと思うのですが、生物学的製剤基準の各条では、日局の参考情報がそのまま採用されることがあるようです。
日局の参考情報は、このように日局を超えて広く活用されているところがありますので、これからも充実、改定していただけるとよいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 重要な御指摘と受け止め、19局へ向けても、引き続き充実、改正をさせていただきたいと思います。
○橋田部会長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。この改正案につきましては、CD-Rで事前に我々も頂いておりますが、膨大な内容ですので、いろいろなところで御指摘いただく点もあろうかとは思いますが、よろしいでしょうか。
○川崎委員 一般試験法の2.52の熱分析ですが、参考情報のバイオテクノロジー応用医薬品の品質確保の基本的考え方にも記載されていますように、DSCはバイオ医薬品、特に抗体医薬品の高次構造評価でもよく用いられています。
国際調和試験なので変更は容易ではないと思いますが、バイオ医薬品でも利用されるというような説明も追加していただけるとよいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。非常に難しい御意見ではありますが、今後検討させていただきたいと思います。
○橋田部会長 一般試験法のところは、最新の学問技術の積極的導入という観点に対応する項目も多いかと思いますが、そういう観点で、今回追加になったもの、あるいは修正のあったもの、これまでの内容についても、もし御意見がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
特に、バイオ医薬品の話題は、さっき生物薬品の総則というような、あるいは生物学的製剤基準ということがありましたが、こういったものとお互いに見比べながら、国際調和を考えて、いろいろ考えていくということかと思っています。
○安原委員 先ほどの川崎委員の御発言とも関連すると思いますが、今回の改正の基本方針の5本柱の1番最初が、保健医療上重要な医薬品の全面的収載とあります。1年前の部会のときも、部会長から最後に発言があったと思うのですが、抗体薬は医療の現場に出て20年を超えていると思うのです。しかし、まだ1つも入ってこないというのは、先ほどから議論にあるような、外形ができていないから掲載できないのか、それとも、ほかに何か具体的なハードルになるものがあるのか。現場から見ていると、そこの部分が全く入っていないというのが、まだまだスタンダードとしての薬局方とすると、何か奇異な感じを受けるのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 前回の部会で、新規収載候補品目として、バイオ医薬品関連のものは今後収載を検討するものとして御報告させていただきました。実際に検討を進めるためには、個別の企業の方々に御協力いただく必要がございます。
実際に進めようとしますとなかなか進まず、それぞれ理由は異なりますが、なかなか協力が得られない状況にございまして、日局収載に至っておりません。
○橋田部会長 ありがとうございました。いかがですか。よろしいですか。
○川崎委員 今の安原委員のコメントについて、私も全く同様に考えます。報告事項の議題2で意見を述べようと思っていましたが、生物学的製剤基準と日本薬局方にはそれぞれいい点と課題があると思います。生物学的製剤基準のすばらしいところは、承認されて製品が出ると同時に、概略ではありますが、どのような品質管理がなされているかが同時に示される点です。これはワクチンなど、国民の関心が高いものに関しては非常に有用なことなのではないかと思います。
一方、日局に関しては、本当に丁寧な議論がなされ、詳細なところまで公開されます。日局と生物学的製剤基準には、歴史や体制の違いはあるのですが、相互にいいところは参考にされてはどうかと思います。例えば日局においても概略だけを示すという形はあるのではないでしょうか。
先ほどバイオ後続品のところの御回答で、ジェネラルモノグラフを作るということで、例として抗体医薬品も御説明いただいているのですが、そのようなアイディアは後続品だけでなく、抗体医薬品や他の先端的な医薬品についても積極的に御検討いただいたらいいのではないかと思いました。
○橋田部会長 ほかに御意見、御質問等はございますか。委員の先生方からいろいろな形で、御質問あるいは御意見を頂きました。まだまだ課題もあるということではございましたが、御回答、御説明を頂きまして、基本的には、必要な事項につきましては今後の課題として引き継がれていくということであったと思っております。
ただいまの質疑で、特に非常に大きな問題になるというご指摘はなかったかと思いますので、特にこれ以上なければ、この第十八改正日本薬局方案について、議決に入らせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは伺います。第十八改正日本薬局方案を承認してよろしいでしょうか。
御異議はないようですので、部会として承認とさせていただき、薬事分科会での審議に進めさせていただきます。また、報告事項1についても、御確認いただけたものとさせていただきます。
それでは、次の報告事項2に移ります。報告事項2「日本薬局方新規収載候補品目(案)について」です。機構から御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 資料3「日本薬局方新規収載候補品目(案)について」を御覧ください。こちらの新規収載候補品目の案ですが、前回の平成31年1月の日本薬局方部会で御報告させていただいた後、新たに追加及び削除する品目について、本部会で報告させていただきます。
まず、表紙の次のページを御覧ください。上段にある新規収載候補品目の案は、日本薬局方原案検討委員会の総合委員会において、第十八改正日本薬局方作成基本方針に基づいて検討、了承されまして、機構での意見募集を経て、厚生労働省に報告するものです。
今回、候補として追加するものとしては、医薬品製造販売承認取得企業からの収載要望に基づき、日本薬局方原案検討委員会にて、その妥当性が確認された化学薬品の5品目です。なお、下段にある新規収載候補品目リストからの削除品目の案にある8品目については、承認整理などがなされまして、新規収載候補品目から削除することとなったものです。併せて御報告させていただきます。以上、御確認のほど、よろしくお願い申し上げます。
○橋田部会長 ただいま日本薬局方新規収載候補品目の案ということで、資料3の御説明を頂きました。これにつきまして、御質問あるいは御意見がございましたらお願いいたします。
○深澤委員 新規に収載されることになったもので、例えば2番はOD錠になっていますが、それ以外にカプセルがあると思います。それは承認取得企業からの要望が、そちらはなかったから審議されなかったということなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 プレガバリンの原薬とカプセルについては、平成27年4月24日の本部会で新規収載候補品目として挙げさせていただいております。原薬及びカプセルは機構で新規収載候補品目として選定したもので、既に機構の原案検討委員会で検討を進めております。今回、企業からの要望として2番のプレガバリン口腔内崩壊錠の収載要望がありましたので、新規収載候補品目に追加させていただきました。
○深澤委員 分かりました。
○橋田部会長 ほかにいかがでしょうか。新規収載候補が5品目、これまでこの候補品目リストに入っていたものの中から、8品目を削除するという御説明でした。できるだけ収載の内容を充実させることは1つの方針だとは思います。そういった観点も含めていかがでしょうか。実際には、御説明いただきましたように、いろいろな事情が背景にあるということで、特に、実際にそれを製造販売しておられる企業のスタンスということもあると思います。いろいろな背景があるようですが、よろしいでしょうか。それでは、この件につきましても御確認を頂いたものとさせていただきます。どうもありがとうございました。
以上で、本日の審議と報告事項は終了いたしました。事務局から追加等はございますか。
○事務局 今後のスケジュールですが、本日御審議いただいた第十八改正日本薬局方については、今後パブリックコメント、WTO通報など所要の手続を行った上で、薬事分科会における審議を経て、告示を行う予定です。その際、法令等の関係で、書式・体裁等の必要な修正等が行われることもあると思います。その点は御了承いただければと思います。
次回の部会の日程ですが、事務局にて調整しまして、改めて御連絡させていただきます。事務局からは以上です。
○橋田部会長 予定の終了時間まで少しあります。この機会に何か御意見等賜ることがございましたら、お願いいたします。今回初めて部会に御出席になった先生もおられますが、いろいろお感じになった点もあろうかと思います。何か、そういう御意見を頂けましたら、また今後の運営の参考にさせていただきたいと思っております。よろしいでしょうか。
それでは、本日の部会は予定の案件を終了しましたので、これで終了とさせていただきます。委員の先生方、どうもありがとうございました。
( 了 )
 
備考
本部会は、公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 高畑(内線2737)