令和2年度第2回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和2年10月5日(月)13:30~15:30

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 12F

議題

  • がん原性試験の結果の評価について
    酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)
    2-ブロモプロパン
  • 遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の評価等について
  • 職場における化学物質管理等のあり方に関する検討会リスク評価ワーキンググループの設置について
  • その他

議事

議事内容
○神田有害性調査機関査察官 それでは、お時間になりまして、皆さんおそろいになられましたので、本日の検討会を始めさせていただきたいと思います。
本日は、大変お忙しい中、皆様には御参集いただきまして、誠にありがとうございます。これより令和2年度第2回の有害性評価小検討会を開催させていただきたいと思います。
いつものことでございますが、本日は新型コロナウィルス感染症の状況に鑑みましてリモート開催との併用とさせていただいております。リモートでは平林先生、西川先生、吉成先生が御参加となっております。先生方、よろしくお願いいたします。
そのため、御発言の際には、挙手の上、座長の指名を受けてから御発言いただきますようによろしくお願いいたします。
また、会場にお越しの先生方にお願いでございますが、御発言の際は手元に御用意させていただいておりますハンドマイクを使って御発言いただきますようにお願いします。
また、リモート参加の先生方におかれましては、周囲の音を拾ってしまうことがありますので、発話のない時間にはマイクをオフにしていただきますようよろしくお願いいたします。
あと、リモートの先生方、ぜひビデオをオンにしていただいてお顔を見せていただきますと大変ありがたく存じますので、よろしくお願いいたします。
○平林委員 すみません、平林ですが、カメラがないので、申し訳ございません。
○神田有害性調査機関査察官 よろしくお願いいたします。
では、本日の委員の出席状況でございますけれども、本日は高田先生から所用のため御欠席との御連絡をいただいております。
また、本日は日本バイオアッセイ研究センターから加納様、梅田様、笠井様、齋藤様、小川様に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、以後の進行は座長の大前先生にお願いいたします。
大前先生、よろしくお願いいたします。
○大前座長 どうぞよろしくお願いいたします。
今日はメインががん原性試験の結果の評価、それからあと二つ重要な報告がございますので、よろしくお願いします。
まず最初に資料の確認をお願いします。
○神田有害性調査機関査察官 資料の確認でございます。
資料一覧を今画面に出させていただきました。会場の先生方におかれましては手元のタブレットのスイッチを入れていただければと思います。
資料は、参考資料1~4と資料として1と2-1~2-7、3-1~3-7、そして資料4、資料5と用意させていただいております。あと、お手元限りという形で幾つか資料を御用意させていただいておりますが、必要なときに御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。
資料1が酸化チタンと2-ブロモプロパンの遺伝子改変動物を用いた中期発がん性試験の評価についてということで、昨年の9月に発がん性ワーキングで御評価いただいた内容の御報告の資料となっております。資料2が酸化チタンの長期試験の結果報告。また、資料3が2-ブロモプロパンの長期発がん性試験の結果。資料4が遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の結果ということでございますけれども、こちらは先ほどのとは違いまして、今年の6月に本年度第1回の発がんワーキングで御評価いただいた発がん性試験の結果となっております。また、資料5は、これから議論が始まっていきますリスク評価のあり方に関する検討の方針について説明させていただきたいと思っております。
資料は以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。よろしいですか。
それでは、早速本日の議題に入ります。
まず議題1「がん原性試験の結果の評価について」です。これにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 それでは、議題1について説明させていただきます。
本日は、長期発がん性試験の結果を報告させていただきますので、がん原性指針への追加の要否について御意見を賜ることができればと考えております。
本題に入る前に、今回御報告させていただく試験結果の位置づけというものをおさらいさせていただきたく思います。
まず参考資料3を御覧いただければと思います。
今回、議論の中身で遺伝子改変動物を用いた試験が登場しますけれども、2種類ございますので、それを説明させていただきたいと思います。
1つ目は長期発がん性試験とセットで実施するものでございまして、今回、2-ブロモプロパンと酸化チタンがこちらの対象になっております。従前は2種類のげっ歯類、ラットとマウスを用いた長期発がん性試験を実施していたところでございますけれども、平成25年度に新規に着手する化学物質から、以下の丸1と丸2を組み合わせた試験方法を試行的に導入しております。1種類の長期発がん性試験と、もう一種類、短期・中期in vivo試験系による試験を組み合わせて実施するということでございます。今回はWildタイプのラットとrasH2マウスを用いた試験を実施させていただいておりまして、こちらを評価いただければと思っております。
もう一つは、発がん性スクリーニングに係る試験として実施しております。こちらは、スクリーニングにおける中期発がん性試験につきまして、液体・固体の物質につきましては肝中期発がん性試験を実施しており、ガス・粉状の物質に関しましては遺伝子改変動物を用いた発がん性試験を実施することにしております。遺伝子改変動物を用いたこちらの発がん性試験につきましては平成29年度から導入されておりまして、今回報告させていただきます4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールと二酸化窒素につきましては今回初めて発がん性評価ワーキンググループで評価させていただいたので、そちらを報告させていただくというものでございます。
続きまして、今回報告させていただく中で酸化チタンがございますけれども、これまでの検討の結果を改めて御説明させていただきたく思います。
参考資料4を御覧ください。
酸化チタンでございますけれども、分類・用途など、多岐にわたっておりまして、形態で見ますとルチル型とアナターゼ型、そしてナノ粒子であるかどうか、表面処理があるかどどうかということで、これだけでも8つに分類されるものでございます。用途に関しましては、ルチル型が化粧品、塗料など、アナターゼ型に関しては光触媒、工業用触媒担体塗料が代表的な用途でございます。また、ナノ粒子か否か、表面処理のある・なしで御覧いただいているような用途があるということでございます。
リスク評価及び健康障害防止措置の検討ということで、行政で検討を進めている状況を御説明させていただきます。
まずリスク評価に関しまして、平成27年度詳細リスク評価、これはナノ粒子に関してのものでございますけれども、酸化チタンのナノ粒子を製造している事業場における充填または袋詰め作業はリスクが高いと評価しているところでございます。
平成28年度詳細リスク評価、こちらはナノ粒子以外のものでございますけれども、酸化チタンのナノ粒子を除くものを粉体塗装する作業はやはりリスクが高いという結論を得ているところでございます。
続きまして、健康障害防止措置の検討ということで、それらの評価を踏まえまして、平成29年3月から化学物質による労働者の健康障害防止措置検討会におきまして関係業界団体へのヒアリングを踏まえて検討を行ってまいりました。そこでいろいろと御意見を頂きましたが、まず1つは、酸化チタンには表面処理したものと未処理のものがございます。IARCの評価は2Bということでございますけれども、酸化チタンの発がん性の根拠として採用した動物実験では表面処理なしの酸化チタンが使用されているということでございます。一方、表面処理された酸化チタンの有害性に関する試験はほとんど行われておらず、論文も少ない。そして、表面処理された酸化チタンの有害性は表面処理なしの酸化チタンと同等なのかどうかということについて明確に判断できない状況にあるということが言われております。
また、酸化チタンの発がん性については、現在EUでも検討が進められている状況です。
それから、酸化チタンが発じんする可能性のある作業について、特に表面処理なしの酸化チタンを取り扱う事業場に関して改めてばく露実態調査を行う必要があるのではないか。
それから、日本バイオアッセイ研究センターで今回御報告させていただきますけれども、酸化チタンの表面処理がないアナターゼ型ナノ粒子の長期発がん性試験の結果を考慮して今後の対策を検討していく必要があるのではないかということでございます。
これらを踏まえまして、平成30年8月、酸化チタンに係る措置検討を一旦中断しまして、EUにおける議論の状況も勘案しながら、そして日本バイオアッセイ研究センターにおける長期発がん性試験の結果等新たな知見が出そろったところで再度リスク評価検討会において有害性評価等を行うということで結論を頂きまして、当面の取組として以下の4つを実施することとされております。
表面処理なしの酸化チタンを取り扱う事業場を対象としたばく露実態調査を行うということで、こちらは実施しております。
それから、樹脂等と混合された酸化チタンの再発じんの可能性に係る調査を実施すること。
それから、EUにおける議論に係る情報収集や酸化チタンに係る新たな知見の収集を行うこと。
さらには、固有の毒性の有無に関わらず、粉状物質である酸化チタンを長期間にわたって大量に吸入すれば肺障害の原因となり得るため、措置の検討を中断するに当たっては、酸化チタン関係業界に対して改めて注意喚起するというようなことになっております。
これらの状況を踏まえまして、今回評価対象となっている酸化チタンと2-ブロモプロパンの早期発がん性試験の結果を報告させていただきたいのですが、まずはそれに先立ちまして、昨年9月の発がん性ワーキンググループで報告させていただきましたこれら2物質の遺伝子改変動物rasH2マウスを用いた中期発がん性試験の評価結果について報告させていただきたいと思います。
資料1を御覧ください。
先ほど説明させていただきましたけれども、長期発がん性試験の実施に関しましては、ラットを用いた試験と併せて、遺伝子改変動物rasH2マウスを用いた中期発がん性試験を実施することとなっております。
昨年度、酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)と2-ブロモプロパンのrasH2マウスを用いた吸入による中期発がん性試験の試験結果につきまして、令和元年度第2回発がん性評価ワーキンググループに報告しまして、がん原性指針への追加の要否について評価を受けましたので、その概要について下記のとおり報告いたします。
まず1つ目、酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)でございます。
物質の基本の情報はそこに書いてあるとおりでございますが、時間も限られてございますので、割愛させていただきますと、試験結果といたしましては、雌雄ともがん原性を示す証拠は得られなかったと結論されました。
評価結果に関しましては、被験物質の最高投与濃度が32 mg/m3という試験条件下においては陰性と判断されたところでございます。
詳しい結果の内容につきましては、資料1の別添1を御覧いただければと思います。
続きまして、2-ブロモプロパンでございます。
物性等は割愛させていただきますが、試験結果としまして、雌雄のrasH2マウスに対するがん原性を示す証拠が得られたと結論されたところでございます。
評価結果としては陽性と判断されました。
詳しい内容は資料1の別添2を御確認いただければと思います。
説明は以上です。
○大前座長 ありがとうございました。
酸化チタンにつきましては、措置検で数回検討しまして、このバイオの結果等々を見てもう一回検討し直そうということで、今回結果が出てきたからということになります。
それから、遺伝子改変動物の試験が2つ、酸化チタンはネガティブ、2-ブロモプロパンはポジティブという形で今報告がありましたけれども、この報告につきまして御質問あるいは御意見はいかがですか。
酸化チタンの最高濃度が32 mg/m3という量ですけれども、これはすごい量だと思うのです。直観的にはチャンバーの中は真っ白といいますか、向こうが見えないぐらいの量ではないかと思うのです。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 担当いたしました笠井でございます。
そのように曇ったような状況ではありませんでした。ただし、かなり高濃度だというのは間違いないかと思っております。
○大前座長 それはナノだから透明に見えるということですか。ミクロだとひょっとしたら白いとか、そんな感じですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 どうでしょうか。よく分かりません。すみません。
○大前座長 分かりました。ありがとうございます。
そのほか。
○江馬委員 酸化チタンはマウスで発がん性があるという報告はなかったと思います。報告がないということはあるのかどうか分からないのですが、マウスで発がん性がないものでも遺伝子改変動物で発がん性を示す可能性はあるのですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 まずマウスの結果で発がん性があったかというのは、今までマウスの実験では出ていないです。今回は、ラットと遺伝子改変マウスのセットということで、さてどうなんだろうということで調査に入ったかと思うのですが、遺伝子改変動物では試験されておりません。
○大前座長 よろしいですか。
○江馬委員 はい。
○清水委員 今、空中は白っぽくはならないというのですが、床面はかなり真っ白になるのですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 先生のおっしゃるとおりで、チャンバーの壁面とか、ホッパというところがあるのですが、そこは白くなっております。
○清水委員 そうすると、手足あるいは皮膚、毛などにもかなり付着するわけですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 していたと思います。
○清水委員 そうすると、なめるということは消化器官からも入るということですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 消化器官からは必ず入っていたと思っております。
○清水委員 ありがとうございます。
○大前座長 そのほか、リモートの先生方は何かございますか。
○大前座長 
そうしましたら、具体的に酸化チタンの発がん試験の結果に行ってよろしいですか。
それでは、酸化チタン、ナノ粒子、アナターゼ型でコーティングなしという物質の長期発がん試験の結果につきまして、事務局から説明をよろしくお願いします。
○植松化学物質評価室長補佐 こちらの長期発がん性試験の結果につきましては、その概要を資料2-6にまとめてございます。
内容につきましては日本バイオアッセイ研究センターから御説明いただければと思います。
よろしくお願いいたします。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 では、よろしくお願いいたします。
マウスと一緒のところがありますので、どこまで説明をはしょってよろしいでしょうか。
○大前座長 笠井さんの判断に任せます。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 分かりました。
そういたしましたら、1ページから見ていただきまして、化学物質の物理的性状とか、使用被験物質はテイカ製を扱っておりますが、一次粒子径は20~29 nm、酸化チタンの論文で多くみられる径に近いというところで選択しました。
製造量等は3万1,000 tぐらいということになっておりまして、主な用途といたしましては、光触媒等に使われております。
許容濃度等におきましては、日本産業衛生学会では0.3 mg/m3、発がん性の分類は2Bということで決定されております。
また、遺伝毒性といたしまして、多くの試験で陰性、陽性いずれの結果も報告されておりまして、よく使われておりますAmes試験では陰性、これはUV照射とかS9添加をいたしましても陰性。その他、陽性、陰性とかありますが、in vitro及びin vivoの毒性試験の複数の試験で陽性の結果が多くあるということで、酸化チタンナノ粒子は遺伝毒性を有すると考えられると結論付けられると思います。
ただし、ナノ酸化チタンは過酸化水素あるいはヒドロキシラジカルを産生するとされ、そのフリーラジカルによる様々な反応の結果、最終的に遺伝毒性を惹起する可能性はあるとされ、遺伝毒性試験においては核内ではなく細胞質に局在すること、フリーラジカルは細胞質内のミトコンドリアの障害において産生されることから、酸化チタンナノ粒子に認められる遺伝毒性は間接的な反応の可能性が高いということになっております。
我々の2年間の試験において、目的といたしまして、がん原性を検索するために、酸化チタン、これはナノ粒子、アナターゼ型でございますが、F344ラットに104週間吸入ばく露し、その生体影響を検索いたしました。また、がん原性試験とは別に、サテライト群を設け発がん性との関連を検索しております。
方法といたしまして、がん原性試験群では、各群雌雄50匹ずつ、合計400匹、サテライト群では各群雌雄10匹、合計80匹。これらを同じチャンバーでばく露しておりまして、投与群としては3群、濃度といたしましては、0、これは対照群ですが、0.5、2、8 mg/m3を設定いたしました。ばく露は1日6時間、1週5日間の全身ばく露による経気道投与で、がん原性試験群は104週間、サテライト群は52週間ばく露しております。ばく露期間・飼育期間中、生死及び一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、がん原性試験群だけですが尿検査を行っております。また、がん原性試験群は、ばく露期間終了後、動物を解剖し、血液学的検査、血液生化学的検査、解剖時の肉眼的検査、臓器重量の測定、気管支肺胞洗浄液検査、肺中酸化チタン量測定、そして病理組織学的検査を行っております。サテライト群は、52週間のばく露を行った後、直ちにばく露チャンバーとは異なるチャンバーに動物を移動し、正常空気下で飼育を継続いたしました。定期的に、3回なのですが、ばく露終了翌日、ばく露が終了してから26週間の観察期間後、ばく露終了後52週間の観察期間後に動物を搬出・解剖し、肉眼的検査、臓器重量の測定、肺中酸化チタン量及び病理組織学的検査を行っております。
以上が方法です。
投与濃度の設定理由といたしまして、13週間試験の結果をもとに決定しております。13週間試験は、0(対照群)、6.3、12.5、25、50 mg/m3の濃度で、雌雄ラットに13週間ばく露しております。
この結果、動物に死亡は見られず、体重増加の抑制も認められておりません。
しかし、濃度依存的に6.3 mg/m3群から肺胞上皮過形成が認められ、酸化チタンの肺沈着量も増加しております。また、50 mg/m3群ではマクロファージの崩壊も認められておりますし、過形成性病変は腫瘍発生への関与、またマクロファージの崩壊はクリアランスの阻害が疑われる所見であることから、これらの所見と肺沈着量を測定しておりまして、これからがん原性試験の投与濃度を決定いたしております。
13週間試験での肺沈着量は、雄では50 mg/m3群で18.4 mg。これは肺1g当たりですが、25 mg/m3群では6.4 mg、12.5 mg/m3群では3.5 mg、6.3 mg/m3群では2.2 mgでありました。雌は、同様に、50 mg/m3群で21.3 mg、25 mg/m3群で8.7 mg、12.5 mg/m3群で3.5 mg、6.3 mg/m3群で1.3 mgという結果でした。50 mg/m3群では、中等度の過形成が雌雄の全例、マクロファージの崩壊が雌雄の各9例に認められておりまして、肺沈着量は雌雄平均で19.9 mgでありました。25 mg/m3群では軽度の過形成が雄の5例、雌の9例に認められ、肺沈着量は雌雄平均で7.6 mgでありました。マクロファージの崩壊は認められておりません。
これらの結果から、がん原性試験の最高濃度は、2年間の投与終了時の肺沈着量として20 mgを超えない量が望ましいと考えました。がん原性試験群では投与期間が13週間試験の8倍となることから、13週間試験の雌雄の平均肺沈着量を8倍してがん原性試験の推定沈着量を求めました。各ばく露濃度における推定沈着量は、50 mg/m3では158.8 mg、25 mg/m3では60.4 mg、12.5 mg/m3では27.2 mg、6.3 mg/m3では14.0 mgと計算されております。
これらの結果から、肺沈着量が20 mgとなるばく露濃度は8.5 mg/m3と計算されております。前述いたしましたように肺沈着量は20 mgを超えない濃度が望ましいということから、がん原性試験の最高濃度は8 mg/m3、予測肺沈着量は18.9 mgを選択いたしました。
一方、最低濃度については、13週間試験の最低濃度である6.3 mg/m3群では酸化チタンの肺沈着量は雄で2.2 mg、雌で1.3 mg、平均で1.75 mgと求められました。13週間試験においては、同群の病理組織学的検査では雌の少数例に肺胞上皮の過形成が認められましたが、雄には認められておりません。がん原性試験終了時の肺沈着量が1.75 mgとなる投与濃度は0.74 mg/m3と推計されまして、この投与濃度で2年間の吸入投与を行った場合であってもわずかな毒性は観察されると考え、2年間の最低投与濃度はこれに近い濃度が妥当と考えました。
以上のことから、がん原性試験の投与濃度は雌雄とも最高濃度を8 mg/m3とし、以下、2 mg/m3、0.5 mg/m3(公比4)と決定いたしました。
よろしいでしょうか。
では、この結果を発表したいと思います。
ページで言いますと8ページですが、体重の推移曲線が出てまいります。上が雄で、下が雌ですが、ばく露期間の初期ぐらい、このグラフで言いますと、12、16週、このあたりまでは少しがたがたしているように見えます。ここが0.5 mg/m3群、2 mg/m3群で体重の低値が雄で認められたというようなグラフになります。ただし、このようなところで統計学的有意差は見られたのですが、毒性とは考えておりません。
下の雌でも同様のことで、0.5 mg/m3群と2 mg/m3群では低値の週がよく認められておりますが、8 mg/m3群においては対照群との差がないことから、これらの差は酸化チタンの投与によるものとは考えておりません。尿検査、血液学的検査、血液生化学的検査ではばく露の影響は認められておりません。ただし、8 mg/m3群の雌雄で肺の実重量と体重比の高値が見られ、肺重量の増加が認められております。
サテライト群でも、ばく露群と同様、雄でばく露期間の初期に軽度の体重増加の抑制が見られましたが、その後は対照群と大差なく推移しております。雌は対照群と同等かそれ以上で推移しておりまして、摂餌量では雄は対照群と差は見られず、雌はばく露期間の初期に軽度な低値が見られましたが、その後は対照群と差はなく推移しております。
以上が病理の臓器重量測定までの結果です。
引き続きまして、病理組織学的検査及び肺沈着量の測定結果を説明いたします。腫瘍性病変といたしまして、表1と2を見ながらよろしくお願いいたします。
腫瘍性病変といたしまして、がん原性試験群では雌雄の肺に腫瘍性病変が認められております。
雄では細気管支・肺胞上皮がんの発生が8 mg/m3群の2匹に認められ、これがPeto検定、Cochran-Armitage検定で増加傾向を示しております。8 mg/m3群の発生率は当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲の上限でございました。一方、肺の総腫瘍といたしましては、腺腫とがんを合わせた発生ですが、対照群と比較して有意な増加は認めておりません。したがって、雄の細気管支・肺胞上皮がんの発生について発がん性を示す不確実な証拠と考えました。
雌では細気管支・肺胞上皮腺腫の発生が対照群で1匹、0.5 mg/m3群で2匹、2 mg/m3群で3匹、8 mg/m3群で4匹認められ、これは統計学的な有意差は示されていないのですが、増加の傾向が見られたということ、また8 mg/m3群における細気管支・肺胞上皮腺腫の発生が当センターのヒストリカルコントロールデータの上限を超えていたことによって、細気管支・肺胞上皮腺腫の発生は発がん性を示す不確実な証拠と考えました。
腫瘍性病変については以上です。
次に非腫瘍性病変、これは表3と4でございます。
雌雄の肺に粒子誘発による肺胞上皮過形成及び肺胞壁の線維化が認められております。解剖時の肉眼的検査では、がん原性試験群及びサテライト群の雌雄の0.5 mg/m3以上で肺の白色斑が全葉に散在性に認められております。
これはフォトグラフが出ますでしょうか。資料2-4。こちらはチャンバー内の粒子の像ですが、これが解剖したときの、左がコントロール、これが0.5 mg/m3群、下が2 mg/m3群、そして右下が8 mg/m3群で、このように肺の白色斑が認められております。病理組織学的検査では、酸化チタン貪食マクロファージ、コレステリン肉芽腫、各種炎症細胞浸潤が認められ、肺胞構造の破壊が認められております。また、ばく露濃度に対応した病変の強度の増強も認められました。8 mg/m3群では病巣において過形成と線維化の癒合が顕著でございました。
肺沈着量についてです。雌雄ともばく露濃度に対応して沈着量は増加いたしました。
これは資料2-2のTABLE Qです。こちらが沈着量を計算したものです。サテライトの52週、サテライトの52週+26週とあって、一番右がCarcinogenicity study となっておりまして、そこが肺沈着量です。雄からですが、0.5 mg/m3群と2 mg/m3群を比べますと、公比4になるのですが、沈着比は4.6。また、2 mg/m3群と8 mg/m3群の比が雄で9.2となっております。雌も下にあるのですが、他の群から比較してみますと、公比4で来ますので、4とか5となれば良かったのでしょうが、それを超える量が沈着しているということになりまして、クリアランスの遅延が生じているのではと考えております。
次にサテライト群の病理検査結果について説明します。サテライト群では雌雄に腫瘍性病変は認められておりません。
そして、非腫瘍性病変につきましては、52週までばく露いたしまして、その後解剖しておりますが、52週間ばく露翌日群では過形成が全ての群で認められております。この所見は、最低ばく露群の0.5 mg/m3群でも回復期間中に消失せずに観察され、また、新たにこれとは別に肺胞壁の線維化が8 mg/m3群の52週間回復群の雌雄で認められております。腫瘍関連病変は時間経過に伴い進展することが示唆されました。
肺沈着量といたしまして、資料2-4を繰っていただいて、こちらです。これが52週間ばく露したものです。上のほうから、2409というのはコントロールの動物番号になります。隣が0.5 mg/m3群、下が2 mg/m3群、その隣が8 mg/m3群で、このように白色斑が回復せずに認められたという結果になっております。
そして、肺沈着量をお願いいたしますが、資料2-2をお願いいたします。またQまで行っていただきまして、サテライト52週、サテライト52週+26週、サテライト52週+52週というのは、52週間ばく露した翌日解剖のものが一番左になっていまして、26週間回復期間を設けたものが真ん中で、52週観察したものが一番右端になっております。このように、ばく露と同様に、ばく露群に比例して沈着量が増えています。
次は資料2-3をお願いします。FIGURE 13です。上が雄で、下が雌になっていますけれども、0というところが52週ばく露で、26、52と書いてあるところが回復期間の26週と52週を示しております。26週回復群の沈着量は、各群雌雄とも52週までばく露したものから全て減衰しております。ただし、26週から52週に関しては、グラフで言いますと増えているようにも見えるのですが、これは減らなかったと判断しております。回復期間の26週までに排泄されずに肺内に存在した酸化チタンはこれ以降は排出されなかったということが明らかになったと文章では書いております。
まとめといたしまして、酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)を0、0.5、2及び8 mg/m3の濃度で2年間にわたり雌雄のF344ラットに全身ばく露した結果、雄で細気管支・肺胞上皮がん、雌で細気管支・肺胞上皮腺腫の発生の増加の傾向が見られた。したがって、本試験条件下において、酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)の雌雄ラットに対する発がん性を示す不確実な証拠と結論されたと結んでおります。
以上です。
○大前座長 詳細な結果をありがとうございました。
いかがでしょうか。意外と52週のサテライト群で酸化チタンの減りが比較的遅いなと。特に26週から52週のところはほとんど平たいというのがあって、意外と残るものだなということが非常に印象的ですけれども、御質問、御意見はいかがでしょうか。
○津田委員 量ですけれども、「mg/lung」と、「lung」とあるのは、全部?グラム?
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 肺の一部を測定いたしまして、肺の重量を測っています。
○津田委員 それで合わせて調整して。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 それを合わせて。「/rat」でもいいですし、「/head」でもいいですし、「/lung」です。
○津田委員 もう一つ、先ほどからマクロファージの崩壊と言われているのはどういう像でしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 資料2-4です。PHOTOGRAPH 9をお願いします。BALFの観察結果でございまして、左のものが正常と思われる、マクロファージがいっぱいあるものですが、右側で茶色く見えているのが酸化チタンになります。崩壊と書いていますのは、右の真ん中あたりから散在性に散らばっている、こういう状態を崩壊。また、マクロファージ一個一個が左からすると大きくなっているように見えますので、大きくなったと結んでおります。
○津田委員 これはどうやって集めたマクロファージですか。胸腔洗浄液?
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 いえ、肺洗浄液です。肺を洗浄いたしまして。
○津田委員 bronchial lavageですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 そうです。
○津田委員 肺の中に染色か何かを入れて、吸い取って。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 どっと出てきたものを集めて。
○津田委員 肺胞内にいたマクロファージを集めたものですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 そうです。
○津田委員 だけど、これは急性期でしょう。2年たっても同じように見えるのですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 これは2年たったものです。本来は試験計画書になかったのですが、追加してみようと思いましてやった結果、2年間ばく露したものなのですが、このようになりました。
○津田委員 肺には肉芽は作ってこなかったのですか。普通はマクロファージで食べ切れないと肉芽を作って組織化するのですけれども、これは作らなかったですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 病理の梅田ですけれども、肉芽種は作っていなかったです。今、これはBALFのほうの写真をお見せしておりますけれども、病理のほうは典型的なところを写せていないのですけれども、Photograph 23が上皮の過形成の写真なのですが、そこにも少しマクロファージの崩壊像を、ちょっと見にくいですけれども、真っ茶色になっている部分、写真の左下あたりですけれども、そういったものは酸化チタンを大量に食べたマクロファージが集簇している像です。左上のあたりは酸化チタンがばらけたような状態になっておりますが、そういったところはマクロファージが崩壊して酸化チタンが細胞質から出ているような像として捉えることができます。こういった病変はありますけれども、肉芽腫を作るというよりは、上皮が増えたり、肺胞構築が壊れた状態で、そういったところを線維性結合織が埋めるといった線維症を引き起こしているといった像になります。線維症の像はPhotograph 25で、こういった形で認められます。
○津田委員 Photograph 24というのは、Photograph 13の表面のぼこぼこのやつを見るとこうなっているわけですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 はい、そうです。
○津田委員 そうすると、肺の表面から見える肉芽を作って、それは恐らく胸膜から白斑として見えるのでしょう。そ腫瘍性変化ではないと思うのですがどうでしょう。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 そうですね。白色斑が肉眼で見られましたけれども、あの白色の点一個一個は腫瘍ではないですし。
○津田委員 チタニウムが集まっているわけでもない。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 チタンでもないです。こういった組織の線維化の像と、あとは過形成の像になります。
○津田委員 非腫瘍性の範囲内のⅡ型肺胞上皮の過形成というか増殖が見られたわけですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 はい、そうです。
○津田委員 わかりました。
○江馬委員 二酸化チタンの発がん性は、クリアランスの遅延によるオーバーロードにより持続的炎症が起きて、それによる発がんで、ラットに特有だというような議論がされていたと思うのです。今回の実験でも、不確実な証拠ではあるけれどもがんが増えていて、クリアランスの遅延も見られているということですよね。その不確実な増え方のがんというのはクリアランスの遅延と関係あるのかということと、ラットに特有であるというのはどのようにお考えでしょうか。もし何かお考えがあれば教えて下さい。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 とても難しい質問であります。
クリアランスの遅延に関しましては、実は先ほどのグラフで0.5 mg/m3でも起こっております。クリアランスの遅延、またマクロファージの持ち出し、要はクリアランスの阻害があることはオーバーロードと今は定義されております。昔はオーバードーズがオーバーロードだという考え方もあったのですが、この頃はマクロファージが持ち出す、それはまた60日とか90日とか、そういう細かいことはあるのですけれども、我々が見ていた0.5 mg/m3からオーバーロードは起こっていると考えているのですが、このオーバーロードに関して考えなければいけないのは、毒性の低い、あるいは毒性のない粒子について考えるという決まりがあるので、果たして我々が行ったこの酸化チタンが果たして毒性の低いものに分類されるのかということになると私はよく分からないということがあります。確かにラット特有の現象で起こるということもあるでしょうし、オーバーロードも絡んでいるでしょうし、またオーバーロードということでしたら0.5 mg/m3群から間質のにも行っていますので、それもオーバーロードという1つの指標になります。非常に難しいところで、何と答えていいのか分からないのですけれども、ラット特有の現象もあるだろうし、酸化チタンそのものの毒性もあるだろうと思っております。江馬先生の質問に対してお答えできているのか分からない状況ですが、ちょっと分からないというのが結論になります。すみません、よろしいでしょうか。
○江馬委員 もう一つ、肺の重量が8 mg/m3で増えていましたね。それは酸化チタンが沈着したためですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 いえ。沈着ですと、ほんの数 mg、8 mg/m3群でも11 mgなので、そうしますと、沈着したものに対しての反応によって重たくなっていると考えています。肺重量はコントロールよりも1~1.2倍ぐらいの重さになるので、重量から言ったらオーバーロードということにはならないというところがあります。
○大前座長 そのほかにいかがでしょうか。
今回は最大量が8 mg/m3ですけれども、これは過去にリスク評価をやったときに現場で測定していますよね。あれの数字はどれぐらいでしたっけ。ヒトのばく露の数字になりますけれども。
○神田有害性調査機関査察官 以前リスク評価したときのばく露実態調査の最大ばく露量でよろしいですか。
○大前座長 はい。
○神田有害性調査機関査察官 「ナノ粒子」のほうでは1.644 mg/m3です。また、「ナノ粒子を除く」のほうにつきましては3.1 mg/m3となっています。
○大前座長 でも、今回はナノですから、ナノの最大値が1.6 mg/m3ぐらいで、今回は8 mg/m3がマックス。先ほどは0.5 mg/m3からですから、結構ヒトのばく露量に近いといいますか、あまり大きな乖離がないところで実験結果が出たということになります。
リモートの先生方、いかがでしょう。
○西川委員 投与量について確認させていただきます。通常の試験ですとある程度体重に影響が出る用量を用いるのが普通なのですが、資料2-6の8ページ(これは先ほど説明していただいたところです)をみると、一番高い8 mg/m3の群ではほとんどコントロールと差がないので、これはひょっとして投与量が低いことが肺腫瘍発生の増加傾向にとどまったのではないかという心配があるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。つまり、先ほどのrasH2マウスの試験ですと32 mg/m3までやっているわけです。だから、ばく露の濃度としてはもっと高い濃度でできたと思うのですけれども、そのあたりを教えていただければと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 ばく露濃度に関しましては、13週間試験で肺に沈着した量から決定しておりまして、13週間試験で50 mg/m3だった濃度のときに沈着した肺沈着量が18.4 mgだったことから、2年間のばく露で沈着する量は20 mgを超えないところが妥当だろうと考えて、そこから逆算した形で8 mg/m3と決定しました。
○西川委員 したがって、そういうやり方で用量を決めるということは今までになかったやり方なので、13週と104週を比べて8倍ですか、それを前提に計算しているわけですけれども、その前提が正しいかどうかという確認はされているのですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 これに関しては確認しようがなかったというか、ちょっと乱暴な話になるかもしれませんが、8 mg/m3を選びました。10 mg/m3でも良かったのかとか、そういう議論になると思うのですが、選んだのは8 mg/m3でございました。
○西川委員 これは表面加工のないナノ粒子の酸化チタンですよね。既に同じものを使った長期試験で肺腫瘍の発生が増加したという報告もありますよね。ですから、気になるのは、もう少し量を上げれば腫瘍が有意に増加した可能性もあるのではないかという心配があるのです。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 そのとおりです。もっと高かったらもっとはっきりとした結果が出た可能性は大いにあると思います。
○西川委員 ありがとうございます。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 病理の梅田ですけれども、動物の体重が下がっていない。化学物質は一般的に投与して、最大耐量という議論が出てまいりますけれども、体重を10%抑制する程度が最大耐量ではないかといった議論はあるのですが、肺に障害を起こすような物質をばく露した場合、あまり顕著に体重にはあらわれないかなというのが今までバイオアッセイでやってきた中でも経験としてございます。酸化チタンの論文ですけれども、先生がおっしゃったとおり、顔料サイズですと250とか、ナノサイズですと平均値で10.4、濃度を上げ下げしたような変わった論文だったように思うのですけれども、10 mg/m3を18時間という長い時間ばく露した論文では肺の腫瘍が出ていたかと思います。そちらの文献で見ても体重は下がっておりませんので、量が足りないから体重が下がっていないとか、そういった議論はないのかなと思っています。ただ、先生がおっしゃるとおり、もっと多かったらどうだったのかなという疑問はバイオアッセイでも残っているのは事実です。どの程度だったのかといった一つの指標なのですが、10 mg/m3で18時間。バイオアッセイは6時間ですので、ばく露時間は3倍長い時間でばく露した論文値では肺の沈着量が3倍以上入っています。バイオの結果は10 mgとか11 mgですけれども、論文のほうの数値は40 mgぐらいで、3倍以上沈着量があります。40 mgというのはかなり多いと思います。過剰な負荷がかかればそれなりに腫瘍が出るかと思いますし、バイオの結果は負荷がかかっていないと言ったらうそになります。クリアランスの遅延が起きておりますので、弱い負荷がかかれば弱い腫瘍が出たと考えるのかなと思っております。
○西川委員 丁寧に説明していただきまして、よく分かりました。了解しました。
○大前座長 ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。
○津田委員 この粒子の大きさは?ちょっと聞き逃したかもしれません。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 粒子の大きさは言っていないです。平均で1 µmを若干切るぐらいです。0.9 µmとか1.0 µmとかでした。あとは、これに対して偏差も出るのですが、2~2.2。実はこれは本文中に書いてございまして。
○大前座長 一次粒径が30nmと書いてある。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 一次粒径は30 nmのものを使っています。ただし、チャンバー内では凝集しますので、1.0 µm、0.9 µmとかいうものでした。
資料2-3をお願いします。一番上のものが粒子径のグラフで、今出ているのが1週目と14週目。13週間置きに粒子径の測定をやっております。0.5 mg/m3群が黒で、2 mg/m3群が三角の青で、8 mg/m3群が赤を使っておりまして、横軸の50というところが質量でいうところの中位径になりまして、そこを下ろしていきますと、中位径は上のグラフも下のグラフも1 µm前後。こ、各濃度チャンバーとも変わらず同じ状況でばく露されていたということを示しております。、2年間の間、8回でしょうか、計測しております。
○大前座長 凝集径が1 µm前後ですから、吸入は十分されるサイズなわけですね。中に入ってから、先ほどのマクロファージのようにばらつくといいますか、そういうスタイルになるわけですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 そうです。酸化チタンをばく露するにあたって1年間近くのフィージビリティの期間をいただきまして、一番最初の粒子径平均は2.6 µmだったのですが、大前先生からもう少し小さくならないかということで、時間をいただきましてやった結果が1 µm。そうすると、1 µmは動物の肺にも十分入るであろうということで、この縦軸80%のところで、2 µmぐらいですか、これらの多くが肺胞には届くであろうということです。
○大前座長 そのほかに御意見あるいは御質問。
○津田委員 細かいことを聞くようですけれども、これは胸腔には移行しないのですか。といいますのは、線維ですとほとんどが胸腔に移行して、アスベストなんかですと大量に移行して中皮腫が起こる原因であろうと言われれているのですけれども、これはあまりとがっていないというか、線維でない異物は胸腔に行かないのですか。リンパ流を通っていくとは考えられるのですけれども。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 行くと思っておりますが、特に中皮腫等は出なかったものですから、胸腔の洗浄液を集めて測定するというところには至らなかったです。
○津田委員 分かりました。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 またフォトグラフを出してほしいのですけれども、資料2-4のフォトグラフです。一番最後のページにPhotograph 34から37までの4枚が出ていると思いますけれども、これは52週ばく露して52週回復したものです。肺胞腔内に酸化チタンはほとんどなくなるのですが、拡大を上げているところは血管周囲の恐らくリンパ流路ではないかと考えているのですが、こういったところに入ってまいります。それを考えますと、胸腔に出た可能性はあると思います。
○大前座長 そのほかはいかがでしょうか。
今説明していただき、あるいは質問等々でディスカッションがあったということなのですが、最終的な結果としては、今回の結果につきましてどのように判断しましょうか。バイオのまとめとしては不確実な証拠ということでございますが、発がんに関してはそういう証拠。それから、先ほどおっしゃった線維化に関しましては、結構表面が白くなったりでこぼこしている、それは当然また別の所見としてあるわけですけれども。
○津田委員 それは毒性変化ですね。
○大前座長 そうですね。
労働者に対してがんを生ずるおそれがあるという判断をするのか、ないと判断するのか、あるいは、今日は量の問題等々で少し微妙な議論があったと思うのですけれども、判断するための何らかの材料を求めるようなことにするのかということですけれども。今までは、不確実な証拠ですと一応ありということにしていましたっけ。
○植松化学物質評価室長補佐 発がん性はありとしながらも、がん原性指針の対象とするまでには及ばないということで、リスク評価のスキームに移行させているような物質がございます。ただ、この物質に関しましては現在もうリスク評価のスキームに移行しておりますので、そこら辺を含めてどう判断いただくのかということだと思います。
○大前座長 そうすると、今までのような判断でよろしいですか。この実験結果では、がん原性はあるにしても指針にする必要はないと。多少濃度が高ければもう少しクリアながんが出るのかもしれませんけれども、それは今言っても仕方がないことですけれども。
先生方、よろしいですか。
リモートの先生方はよろしいですか。
それでは、結論としては、がん原性ありですが大臣の指針の公表に至るまでのことはないということでよろしいですか。先ほどの話ですと結構残りますので、長期にずっと残った場合に何が起きるか、ラットは2年間ですけれども、ヒトは何十年という話なので、なかなか微妙なところではありますよね。あまり油断してはいけない物質ではあろうかと思います。
○津田委員 これの評価がIARCで出ていましたけれども、93だと思います。結局同じようなことになりまして、ある実験では、大量にやった場合には確かに出ているのですけれども、そんな値ではあり得ないということでいろいろな議論がありまして、結局2Bにするかしないかで議論があったのです。だけど今おっしゃられたようなことを考慮して2Bに落ち着いたといういきさつがあります。
○大前座長 ありがとうございます。
それでは、次の物質に移りたいと思いますが、よろしいですか。
では、2-ブロモプロパンの発がん試験につきまして、説明をよろしくお願いします。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 日本バイオアッセイ研究センターの加納です。
酸化チタンで時間も押しているようなので、少しはしょりながらいかせていただきます。
資料3-6で、名称、構造式、物性等は飛ばさせていただきまして、1-5、主な用途としては、医薬中間体、農薬中間体、感光剤中間体などとして使用されております。
許容濃度につきましては、産業衛生学会で1 ppm、重量濃度で5 mg/m3に設定されております。また、経皮吸収あり、生殖毒性分類として第1群に分類されております。
次ページに行きます。
1-7、発がん性、こちらに国内あるいは各国際機関で評価されていないという記載がございます。
変異原性、これもはしょりますが、in vitroでAmes試験で陽性あるいは陰性の報告があります。また、培養細胞を用いた染色体異常でも陽性、陰性が両方とも報告されております。In vivoの遺伝毒性試験では、腹腔内投与でのラットの骨髄で小核の誘発はなかった。また着床前期の母マウスに本物質を腹腔内投与した結果、小核の誘発を認めたとの報告があります。
次に試験の結果に行きます。
試験の目的は、2-ブロモプロパンをラットに104週間全身ばく露し、そのがん原性を検索しました。
方法につきましては、被験物質投与群3群、対照群1群の4群構成で、雌雄とも各50匹とし、合計400匹のラットを用いました。ばく露期間等は、1日6時間、1週5日間、104週間とし、全身吸入ばく露を行いました。投与濃度は、雌雄とも0、67、200、600 ppmとしました。検査項目等につきましては先ほどの酸化チタンと同様です。
次のページに行きまして、試験の結果になります。
まず生死状況ですが、図をスクロールしていただいて、11ページに生存率のグラフがございます。雌雄とも投与群は対照群に比べて生存率の低下が見られております。600 ppm、最高用量では雌雄とも85週までに全ての動物が死亡しました。104週間における生存率ですが、雄対照群76%に対しまして、67 ppmで62%、200 ppmで38%、600 ppmで0%となっております。雌につきましても、対照群86%に対しまして、67 ppmで72%、200 ppmで50%、600 ppmで0%となっております。
先に体重を説明します。次のページに行きまして、体重のグラフがございます。600 ppm群では、雄では投与4週目から、雌では5週目から体重増加の抑制が見られております。最終計測日の各投与群の体重は、対照群に対しまして、雄の67 ppmが101%、200 ppmが99%、600 ppmは82週目の時点で69%になっております。雌についても、対照群に対しまして、67 ppm群で99%、200 ppmで103%、600 ppmで82週目の時点で72%になっております。
それでは、資料の3ページ目に戻っていただきまして、一般状態。主な所見を表にまとめております。上段が雄、下段が雌になります。
まず雄から、最上段に死後発見された動物の数。2行目に切迫屠殺したものです。600 ppm群で全例死亡したと申しましたが、ほとんど死亡ではなく、切迫屠殺で搬出しております。雌も同様です。そのほか、Mと書いてあるのは外部腫瘤の略ですが、口周囲とか耳根部、胸部、腹部、背側前、背側後などに見られております。また、痂疲の形成、貧血、不整呼吸なども投与群で多くの動物に見られております。
雌につきましても、外部腫瘤の場所が若干違いますが、雄とほぼ同様の所見が見られております。
以上で、病理に代わります。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 病理の説明をいたします。
たくさんの腫瘍が出ておりますので、文章よりも表のほうが分かりやすいと思います。
13ページに送っていただいて、こちらになります。非常にたくさんの腫瘍が出ております。こちらが雄の腫瘍の結果になります。投与濃度0、67、200、600 ppmと濃度が振ってありまして、腫瘍の発生匹数が数値で表れております。上から御説明いたします。
耳道腺の2行目、耳道腺腫瘍の悪性で0、5、6、23と増加しておりまして、Peto検定、Cochran-Armitage検定いずれも増加傾向。Fisher検定では一番下の67 ppmから上がっております。良悪足したものも同じような結果になっております。
また、皮膚では、基底細胞腫が、増加傾向のみですが、上がっております。また、角化棘細胞腫もPeto検定のみで上がっております。皮脂腺腺腫がPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示し、600 ppmでFisher検定有意です。扁平上皮がんが67 ppmと600 ppmに認められています。明らかなのは、基底細胞がんが最高用量の600 ppmで12匹、Fisher検定で有意です。これらの皮膚の腫瘍を全て足した発生匹数が5、6、9、22と、Peto検定、Cochran-Armitage検定ともに上がっておりまして、Fisher検定では600 ppmのみ上がっております。
それから、包皮腺が、腺腫と腺がんを足しますと増加傾向のみ認められています。
肺の腫瘍に関しましても、細気管支・肺胞上皮腺腫とがんと扁平上皮がんを全部足したものが4、8、6、9とPeto検定が上がっております。
胃では、同じように良性・悪性の腫瘍を足した匹数が0、0、1、5と、Peto検定、Cochran-Armitage検定が増加傾向を示し、Fisher検定では600 ppmのみで上がっております。
小腸では腺がんが600 ppmでFisher有意です。
大腸では腺腫と腺がんが出ておりまして、腺がんで傾向検定が上がっておりまして、Fisherでも200 ppm、600 ppmで有意差が上がっており、腺腫と腺がんを足した発生も同様の結果となっております。
また、膵臓でも島細胞腺腫と腺がんを両方足した匹数がPeto検定のみで上がっております。
甲状腺におきましても、濾胞状腺腫とがんを足した発生で増加傾向を示し、200 ppmのみでFisher検定有意。
ここまでが上皮系の腫瘍の増加を示したものを示しており、下の段は非上皮系腫瘍です。肉腫等ですけれども、皮下の血管腫が増加傾向。線維腫も増加傾向です。先ほどの甲状腺もそうだったのですが、200 ppmのみ上がっているものも600 ppmでほかの腫瘍で死んでおりますので、200 ppmだけがFisher検定が上がっているものも投与の影響と見ております。皮下の線維肉腫は1匹のみ200 ppmで出ておりますが、これらの腫瘍を全部足した発生も200 ppmでFisher検定有意という形で出ております。
あとはリンパ節のリンパ腫が増加傾向で、600 ppmのみFisherで有意。
脾臓の単核球性白血病も増加傾向です。
脳を飛ばしてしまいました。脳の膠腫、グリオーマ、こちらも傾向検定で増加を示しております。
以上が雄の腫瘍の結果です。
次に送っていただいて、雌も大変多くの腫瘍が出ております。
雌で一番顕著だったのは乳腺の腫瘍です。雌の生存率はほとんど乳腺の腫瘍で落ちた結果となっております。腺腫は少ないですけれども、線維腺腫が200 ppmのみで有意差がついていて、特徴的だったのは、腺がんが0、2、5、48と、50匹中48匹出ておりまして、一番上の高用量ではほとんどの動物が乳腺の腺扁平上皮がんになっておりました。こちらはPeto、Cochran-Armitage、Fisherともに有意です。
雌は200 ppmからの有意差になっております。雄と同様に耳道腺にも腫瘍がありまして、悪性腫瘍と良性、悪性を足した発生がPeto、Cochran-Armitageで増加を示しました。
陰核腺も腺腫がPetoのみで増加を示しております。匹数は少ないですけれども、陰核腺の腺癌も200 ppmと600 ppmのみで1匹ずつ、大変珍しい腫瘍ですので、これも影響だと思いますけれども、腺腫と腺癌を合わせた発生もPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しております。
皮膚ですが、皮膚の扁平上皮乳頭腫がPeto検定のみで有意差を示し、扁平上皮乳頭腫、嚢胞上皮腫、基底細胞腫、角化棘細胞腫、扁平上皮がん、これらを足した発生匹数がPeto検定で増加傾向を示しております。
また、膣の扁平上皮乳頭腫が増加傾向を示しておりまして、200 ppmでFisher検定有意を示しております。この結果は扁平上皮がんと乳頭腫を足した発生匹数でも同じ結果を示しております。
大腸ですけれども、大腸も大変珍しい腫瘍なのですが、200 ppmから600 ppmで発生しており、腺腫と腺がんを足したものでPeto検定、Cochran-Armitage検定で有意差を示しております。
膵臓ですが、膵臓は島細胞腺腫、腺がんを足した匹数がPeto検定で有意。
子宮では、腺腫、腺がんを足した発生匹数がPeto検定で有意を示しております。
非上皮系の腫瘍ですが、皮下の線維腫が最高で0になっておりますが、これも死亡時期を加味したPeto検定ですので、増加傾向を示しております。線維肉腫はもともと発生匹数が少ないまれな腫瘍ですが、200 ppmと600 ppmに1匹、2匹出ておりまして、これらの良悪の腫瘍を足しますとPeto検定で有意。
子宮の子宮内膜間質性ポリープに関しましてもPeto検定で有意差を示しております。
また、脾臓の単核球性白血病はよく見られる腫瘍ですが、こういった腫瘍も200 ppmでFisher検定有意という形で、大変多くの臓器に腫瘍の発生が認められました。
10ページに戻っていただいて、死因に関しても文章で書いてありますが、死亡の原因の多くは、雄では耳道腺や皮膚、付属器の腫瘍で、雌に関しましては乳腺腫瘍が死亡の原因となっております。
以上をまとめますと、2-ブロモプロパンのラットを用いた吸入によるがん原性試験を行った結果、雌雄に腫瘍の発生増加が示されたことから、雌雄ラットに対する発がん性を示す明らかな証拠が得られたと結論しました。
以上です。
○大前座長 ありがとうございました。
これはあちこちの臓器にたくさん出ていますので、明らかな腫瘍であることは間違いないですけれども、先生方から御意見、御質問はいかがでしょうか。
リモートの先生方はいかがでしょうか。―よろしいですか。
特に御意見がなければということですけれども、これはがん原性がある物質で、かつ大臣指針としなければいけない物質という判断でよろしいですか。
リモートの先生はよろしいですか。―分かりました。
それでは、労働者にがんを生ずるおそれがあるものと判断しまして、大臣の指針を公表する必要があるということでございますので、事務局は指針公表に向けてそのような作業をよろしくお願いいたします。
1-ブロモプロパンも大腸に腺腫があったり皮膚にがんが出たりで、非常によく似ていますよね。これはやはり臭素なんですかね。何らかの代謝で臭素が何らか変化して発がん性を持つということなのですかね。
それでは、次の議題に行きますが、よろしゅうございますか。
○植松化学物質評価室長補佐 1点、先ほどの酸化チタンのことで付け加えさせていただきます。先ほどのナノ粒子、アナターゼ型の酸化チタンにつきましては大臣指針の対象とはしないということで結論を頂きましたけれども、今回の試験結果及び御議論いただいた内容等、最新の知見を持ち帰ってリスク評価検討会で議論いたしまして、労働者ばく露の防止のために必要な措置を検討してまいりたいと思います。
以上です。
○大前座長 ありがとうございます。
それでは、議題2でございますけれども、遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の評価等につきまして、事務局から報告をお願いいたします。
○神田有害性調査機関査察官 遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の結果の評価等についてということで、資料4を御覧いただければと思います。
こちらの位置付けについては、先ほど説明がありましたとおり、発がんスクリーニングの一環として実施しているということでございます。
資料4の別添1というページを見ていただきますとこれまでの中期発がん性試験の実施状況が出ておりますので、御確認いただきたいと思います。
このように実施してきたわけではございますけれども、これまでの中期発がん性試験のやり方では、多臓器の標的性が疑われても、その調査結果のみでは発がん性の強度は評価できないとか、経口ばく露による調査が不能なガスや蒸気、粉じんといったものには対応できないといった問題点があったところでございます。
このため、発がん性評価ワーキングにお諮りいたしまして、今回の遺伝子改変動物による発がん性試験の導入の承認を得まして、翌年度より、今回報告させていただく4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールと二酸化窒素について、バイオアッセイ研究センターにおいて実施していただいたところでございます。
その試験結果につきましては、こちらの資料の別添2~6につけさせていただいた結果をもとに令和2年度第1回の発がん性評価ワーキングで御評価いただきましたので、その結果について簡単に報告させていただきたいと思います。
まず1つ目が、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールでございます。
基本情報等は以上のとおりでございます。
(2)の試験結果でございます。まずp53KOマウスですが、こちらは雌雄ともがん原性を示す証拠は得られなかった、no evidenceと結論されました。rasH2マウスでございますが、雄でがん原性を示す証拠、some evidenceという結論。また、雌ではno evidenceといった結論となりました。
こちらを御評価いただきまして、陽性と御判断いただきました。しかしながら、直ちに長期試験を実施する必要性を見出すほどの強度は認められないということになりまして、がん原性指針への追加は必要なし、また長期試験の実施の優先度は低い、リスク評価についても他の情報を含めて今後判断していくといった御評価をいただきました。
次に二酸化窒素でございます。
こちらの基本情報は以上のとおりでございます。
試験結果ですが、アとしてp53KOマウスで、雄でがん原性を示す不確実な証拠、equivocal evidence、雌でがん原性を示す証拠は得られなかった、no evidence。また、rasH2マウスでございますが、こちらは雄でがん原性を示す不確実な証拠、equivocal evidence、雌ではno evidenceということで、がん原性を示す証拠は得られなかったといった状況でございました。
こちらを評価いただいたのですけれども、こちらは評価結果としては陽性ということで御判断いただきました。しかしながら、直ちに長期試験を実施する必要性を見出すほどの強度は認められないということでございまして、がん原性指針への追加は必要なし、長期発がん性試験の実施についても優先度は低く、リスク評価についても他の情報を含めて判断するといった状況で御評価いただいたところでございます。
バイオから補足説明がありましたら、お願いいたします。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 補足します。
今、神田査察官から説明がありましたが、資料4の最終ページの二酸化窒素の結果ですが、まず(2)でア、イということでここに記載があり、上から順番にいきますと、equivocal evidence、no evidence、equivocal evidence、no evidenceとなっておりまして、その下の(3)の評価結果は陽性となっておりまして、若干矛盾を感じるような評価になっております。この(2)はバイオアッセイの最終報告書の評価で、(3)は前回の発がん評価ワーキンググループの評価結果となりますが、この部分を説明したいと思います。
恐れ入りますが、資料4の別添5がございます。スクロールしていただきますと、5ページ目に表1がありまして、二酸化窒素のrasH2マウスの雄。
○神田有害性調査機関査察官 すみません、資料4の大きなページでいきますと38ページかと思います。すみません、たくさん資料を合わせたものですから、分かりやすくと思って通し番号を打ったのですけれども、逆に分かりにくくなってしまいまして、失礼しました。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 まずバイオアッセイの判断としては、脾臓の血管腫と血管肉腫の発生が最高濃度の40 ppm群だけで1例ずつみられております。この脾臓の血管腫と血管肉腫を合わせたもの、0、0、0、2匹になりますが、これはPeto検定とCochran-Armitage検定の傾向検定でのみ有意な増加が見られております。これらをバイオアッセイのヒストリカルデータと比較しますと、過去の発生が0から2匹ということで、過去の最大発生率の上限と全く同じ値でした。したがいまして、バイオアッセイとしてはこれをsome evidenceと評価するには不十分と考えまして、equivocal evidenceということで報告書を提出しております。
これが前回の発がん評価ワーキンググループで委員の先生方から意見を頂きまして、今、血管腫あるいは血管肉腫が脾臓、皮下組織、骨髄、胸腺、腎臓、精巣など各1例なのですが、多くの臓器に見られております。これを合計しますと、対照群から順に、1、1、1、4例となりまして、これは最高用量で血管腫あるいは血管肉腫の発生増加が見られているのではないかという評価を得まして、ワーキンググループの結論としてsome evidenceということで、最終結果として陽性になったということです。
以上、補足で、うちで出した報告書の結論と委員会の結論が異なっているということです。
○大前座長 ということだそうです。
これは臓器が違っても血管腫ということでまとめて評価してもいいものなのですか。そこら辺はいかがでしょう。ワーキンググループはまとめて評価していいという判断をされたということになるわけですね。
○西川委員 今見た表について、コントロール群から1、1、1、4の発生頻度という説明でしたが、たしかワーキングの際には、ダブって腫瘍を持っているのがいないので1、1、1、6かなと思っていたのですけれども、そのあたりの確認をお願いします。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 血管腫、血管肉腫を足したものの0、0、0、2というのが1行入っていますので、それを除くと1、1、1、4という結果がとれます。
○西川委員 分かりました。
○大前座長 そのほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。これは報告事項でございますので、特に決め事をするわけではございませんけれども、よろしいですか。
特になければ、次の最後の議題ですが、職場における化学物質管理等のあり方に関する検討会リスク評価ワーキンググループの設置につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。
○内田化学物質評価室長 それでは、資料5になります。「リスク評価のあり方等に関する検討について」ということで、報告事項でございます。
ほかの検討会でも御説明しておりますので、一部の先生方には重複するところがありますけれども、御容赦いただければと思っております。
括弧書きでタイトルのところに書いてございますけれども、「職場における化学物質管理等のあり方に関する検討会およびWGでの検討」ということで、実はこういう検討会は、もう1年ぐらいになりますけれども、進めておりまして、化学物質に関する規制に関してどうしていくのかということでいろいろ検討してきた経過がございますけれども、この中で、今後リスク評価についても規制のあり方に絡めて検討が必要だという形になってございまして、今月の20日からワーキンググループを設置して検討を進めるというような状況になってございます。その検討の状況に応じてこの有害性検討会での検討についても少し変わってくる部分があるかもしれませんので、そういったことも含めて情報提供ということで御説明させていただきます。
問題意識といたしましては、1の経緯のところに書いてございますが、2行目にございます。我々はもともと、こういう形でリスク評価をして、リスクが高いとされたものについては個別管理ということでそれぞれの物質に応じた各種規制を設けてやっているところでございますけれども、最近、化学物質による労働災害につきましては、そういう規制を設けていない物質による労働災害が頻発しているという状況。それから、2パラ目の3行目にございますけれども、特に知識、人材が不十分な中小企業とか製造業以外の業種でそういう労働災害の事案が増えている、特に取組が不十分な事業場が多いというようなことがございます。
そういったことを踏まえて、去年の9月から検討を開始して、これまでに9回この検討会を開催いたしまして、こういったメンバーということで、大前先生にも入っていただいておりますけれども、検討を進めているという状況でございます。
少し先に行って、2ページ目の中段で、今し方問題意識を申しましたけれども、もう少しかみ砕いて言いますと、(2)の下のところ、現行の化学物質管理体系の課題ということで、先ほど申しました特別規則の対象となる個別管理物質―今、化学物質は7万ほどございますけれども、この個別管理物質と呼ばれるもの、特化則とか有機則といった特別規則の対象になっているものは120ほどございます。こういったものについては物質ごとに局排の設置とか健康診断とか具体的な措置が罰則付きで義務付けられているといった状況がございまして、ここで議論いただいて、リスク評価の結果、リスクが高いということで個別管理物質に追加することが決まると、そういった物質の使用をやめて、規制がかかっていない自主管理物質に変更して、その結果十分な対策が取られずに労働災害が発生するといういたちごっこみたいな状況が生じているといったことが最近出ております。
加えまして、リスク評価を行うに当たっても、ここでやっていただいております危険有害性に係るデータの収集あるいはばく露実態調査をするということで、実際にリスク評価を踏まえて個別管理の対象にするかどうかはリスク評価の物質を選んだ時点から10年ぐらいかかっているというように、長きにわたって評価いただいた結果、それに位置付けられると使用をやめてしまうという繰り返しになっているといった状況がございます。
他方、そういった物質に比べまして、自主管理物質と呼んでございますけれども、こういったものについては法令上求められる措置の具体性に乏しいということで、その結果、個別管理と自主管理との間にばく露防止措置の実効性という観点で大きな差が生じている。自主管理については規制があまりかかっていないといった形で、きちんとした対応がとられていない。その結果として、下に書いてございますように、8割ぐらいは自主管理物質によって労働災害が起きているといった状況がございます。
そういったことを踏まえて、少し規制のあり方について見直しをしていこうということで、この資料の4枚目にピラミッド型のものがございますけれども、先ほど来申しております上から2つ目、個別管理物質は122と書いてございます。こういったものがこれまではリスク評価の結果を踏まえた規制の対象になってきたということでございますけれども、その下にございます自主管理物質については規制が弱かったということで、この部分をより強化していく必要があると考えてございます。
そういった中で、左上のほうに書いてございますが、今まではリスク評価をしてどんどん個別管理物質に追加していくということを我々の施策の目標として取り組んできたところでございますけれども、どちらかといえば、その部分については基本的に追加しないという方針のもと、ただ、重篤な労働災害が多発するなど、ある要件を満たすもの、これはこれから要件を検討しますけれども、そういったものに限って対象にして、迅速にリスク評価なり特別措置の検討を進めて、今は10年ぐらいかかってございますけれども、それをできるだけ短くして、必要なものだけこういうものに追加していくという対応が必要ではないかと思っております。
他方、その下、ここでは自律管理と書いてございますが、例えば今までラベル表示とかSDSの交付、これらについても義務の対象になっていたものと努力義務という2つに分かれてございましたけれども、できるだけこういった表示なり交付による危険有害性の情報伝達を進めて、相手方にもそれがどういうものなのかという化学物質の特性を理解した上で扱っていただく必要があるという観点から、こういう義務対象をできるだけ増やしていく。ここに3,000物質と書いてございますけれども、そういった形で取組を進めていく。あるいは、その右に書いてございますけれども、例えばばく露限界値を設けて、それ以下できちんと管理していただくとか、そういうばく露限界値がないものについても、今まであまりこういう措置をしなさいという形で細かく規定はしておりませんでしたけれども、今後はきちんと、衛生基準ということで、一般的なルールを設けて、それを遵守してもらうように義務としてやっていただくといった形で、こういう自主管理物質における取組を強化していく。
こういうことを進めるに当たって、左下にございますけれども、そういう物質が危険有害性としてどういうものがあるのかというのが分かっていないとこういう取組もできないということで、国によるGHS分類も進めていく。
こういった一連の、特に有害性情報の提供とか、そういう情報をもとに各事業者が扱う上でどのように扱えばいいかという判断基準みたいなものをお示ししていくことを中心に据えていくという方向性を今検討いただいている。これはまだ決まったわけではございませんけれども、そういったことで検討を進めているところでございます。
そういったことを踏まえて、この資料の2ページ目に戻りますけれども、特に下の(3)のところに書いてございます。今のような見直しの検討を踏まえて、こういう規制のあり方が変わってくると、それに連動してリスク評価とか有害性調査といったものが変わってくるという形になりますので、この10月からワーキンググループを設置して、検討いただいて、来年度の早い段階で取りまとめを行っていただくということで考えているところでございます。
具体的には、このワーキンググループでは、丸1と書いてございますが、先ほど申しました個別管理と自律的な管理のあり方についてどうしていくのかということ。
それから、その次の3ページ目、丸2と書いてございますが、そういう管理のあり方を踏まえてリスク評価をどう見直していくのか。
あるいは、2つ目の丸に書いてございますけれども、リスク評価における手段の1つとして、今日も御説明がございましたように、各種試験、発がん性試験などもしていただいておりますけれども、そういったものをこのリスク評価のあり方の見直しを踏まえて今後どうしていくのかといった点。
それから、特に有害性等に関する情報の一元化、他省との連携と書いてございますが、その下のほうに参考とございます。これまで検討会の中でもリスク評価については省庁別にばらばらにやっているということで、特に御参加いただいている先生方にもいろいろな御負担がかかっているといった状況もございますので、そういったものを各省連携して統一的にやるべきではないかというような御指摘も頂いております。そういったことがどこまでできるのかというのはありますけれども、できるだけ効率的にやるという観点から情報の一元化なり他省との連携も今後検討していくように考えているところでございます。
それから、丸3といたしまして、事業者に新規化学物質の有害性調査ということで、変異原性試験を中心に実施していただいておりますけれども、この制度についても40年来変えていないという状況もございますので、こういう様々な見直しの中で一度立ち返って、こういう制度についても今後どうしていくべきなのかというのを併せて検討していきたいと思っているところでございます。
といったことで、本来であればリスク評価に関しては企画検討会とかもあるので、そういったところでの検討ということも考えていたのですけれども、こういう有害性調査といった別のことも含めて、あるいは規制のあり方も絡めてということなものですから、新しいワーキンググループを設置いたしまして、その中でこういったものについても検討を進めていきたいと思っております。
特に、資料として、タブレットの上から7つ目に、発がん性スクリーニングの実施状況、令和2年3月末というのがございます。ちょっとお開きいただければと思います。
今日も2つ目の議題でありましたけれども、発がん性スクリーニングについて各種試験を実施していただいております。これは平成25年度からやっていただいておりまして、上にございますけれども、1事業場で年間1トン以上の製造・輸入量がある物質ということで、5,000物質ほどを対象として、遺伝毒性があるのかといった区分、文献情報などをもとに各種試験を実施してこういう形になっているところでございます。特に肝中期発がん性試験ということで38物質やっていただいて、そのうち陽性については1物質という形になっています。また、今日報告がありましたけれども、右にあります遺伝子改変動物による発がん性試験については、今年度新たに2物質の評価を頂いて、陽性ではありましたけれども、その先のがん原性指針なり長期発がん性試験に行くほどのレベルではないといった状況もございまして、こういったものについても25年度から実施していただいて、それぐらいの年限がたっているという状況の中で、こういうスクリーニングを今後引き続きやるのか、あるいは別の形で国としてどういう試験をやっていくべきなのかとか、そういったことも、こういう成果を踏まえながら、あるいは規制のあり方も踏まえながらよく検討していかなければいけないと思っております。
そういった意味で、本来こういうところでもきちんと議論すべきかもしれませんけれども、別の場で検討していくという形になりましたので、その点について御理解いただきたいということと、必要に応じて情報提供なり、あるいはこういった場で御意見を伺うこともあるかもしれませんので、そういったところにつきましては御協力を賜れればと思っております。よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして御意見あるいは御質問はいかがでしょうか。こういうスタイルで今後のあり方を検討していこうということでございますけれども。特に最後の肝中期発がんとか遺伝子改変動物の発がんはなかなかポジティブに出てこないということで、これをどうしようかというのも当然議論の対象になろうかと思いますけれども、これは試験そのものの問題なのか、あるいは選ぶ物質の問題なのか、その両方があると思いますので、そこら辺をどうするか。
○津田委員 あのロジックツリーをつくったときの委員の一人でありまして、随分検討しました。今までこの委員会では発がん代替試験として、遺伝子改変動物試験と肝中期試験を指定していますが、陰性結果が多いというのは検体がやはりそういう化合物であったと思っています。
決して間違ったデータが出た訳ではありません。検出率は十分信頼性は高いので、これをやめてしまうと、今度は試験をする方法がなくなってしまう事になります。元に戻ってin vitroのデータから動物実験の長期実験を実施するというとまたお金がかかることになるので、考え直すといっても、それに代わる方法は現状では見つからないことになります。大変なことになるのではないかと危惧します。
○大前座長 そうすると、むしろ物質の選定のほうの問題だと。
○津田委員 そういうことだと思います。
○大前座長 今までは変異原性等々が最初の判断基準になっていましたけれども、例えば今日の酸化チタンみたいに線維化を起こすものなんかはここに入ってこないですよね。肺がんをターゲットにした場合。例えば線維化を起こしやすいものも候補に入れていくとか、そのような考え方。
○津田委員 それは一般毒性ですよね。それはほとんどの場合13週の試験で分かるのでそのために2年試験を実施する必要はほとんどありません。ロジックツリーの肝中期試験法は、肝臓の前がん病変を見ることになります。遺伝子改変マウスは26週ですが、13週の倍もかかっているわけですから、そういう毒性も全部出てくるはずです。そういう非腫瘍性一般毒性は遺伝子改変状態とは関係なく発現されると考えられています。
○大前座長 そのほかに御意見、御質問はいかがでしょう。
エピジェネティックな発がんに関してはどのような物質選択の仕方がありますか。
○津田委員 それは難しいです。ただ、肝中期試験では遺伝毒性がネガティブな発がん物質でも陽性になるというデータは300検体ぐらい背景データで明らかにされています。p53とrasのほうはデータはあまりないのではないかと思いますが、一遍調べてみられたらいいと思います。rasの方は実中研でかなりのバックグラウンドを出しておられます。実中研の野村先生のhグループのお仕事で論文化されています。
○大前座長 ありがとうございました。
そのほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
リモートの先生方はよろしいですか。西川先生、何か御意見ありますか。あれば先ほどのように携帯でと思いますけれども。あれば手を挙げてください。―なさそうですね。ありがとうございます。了解しました。
それでは、特にそのほかに意見がございませんので、今回の議題は終わりました。
そのほかに何か事務局からございますでしょうか。
○神田有害性調査機関査察官 ありがとうございました。
本日お諮りしたい件は以上でございます。
次回ですけれども、11月11日でお願いしたいと思っておりますので、またスケジュールの確保を確認していただければと思います。
事務局からは以上です。
○大前座長 ありがとうございました。
それでは、次回の予定をお願いいたします。
それでは、以上で本日の有害性評価小検討会を閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。