2019年10月25日 第14回HTLVー1対策推進協議会 議事録

健康局結核感染症課

日時

令和元年10月25日(金)14:00~16:00

場所

厚生労働省 中央労働委員会 講堂(7階)
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

(1)HTLV-1の感染症法上における取扱いについて
(2)その他

議事

 
○加藤結核感染症課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第14回HTLV-1対策推進協議会を開催いたします。本日は御多用のところ、本会議に御出席いただきありがとうございます。初めに、健康局長から御挨拶申し上げます。
○宮嵜健康局長 健康局長の宮嵜でございます。開会に当たりまして一言御挨拶申し上げます。本日は御出席の構成員の皆様には、御多用のところ、また足元の大変悪い中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、平素より厚生労働情勢、HTLV-1の対策の推進につきまして、御指導を賜り厚く御礼申し上げる次第です。
HTLV-1は、感染症という側面だけではなくて、関係する領域が多岐にわたっておりまして、総合的な対策が重要でございます。今から9年前の平成22年には、HTLV-1総合対策が取りまとめられ、翌23年にはHTLV-1対策推進協議会の第1回が開催されました。その後、本協議会では、総合対策が掲げる5つの重点施策、すなわち感染予防対策、相談支援、医療体制の整備、普及啓発・情報提供、研究開発の推進の5つでございますが、これにつきまして精力的に御議論を頂き、我々もそれを踏まえて対策を推進してまいりました。
14回目の開催となります今回は、HTLV-1学会より頂きました「HTLV-1感染の感染症法・5類感染症指定に関する要望」につきまして、様々な観点から御意見を頂く予定としております。HTLV-1総合対策の一層の推進に向けまして、構成員の皆様には、今回も真摯かつ活発な御議論を頂きますようにお願い申し上げまして、簡単ではありますが、開催に当たっての御挨拶とさせていただきます。他の公務がありまして、途中で退席させていただきますが、本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
○加藤結核感染症課長補佐 先ほど挨拶にもありましたように、健康局長は公務のため、この後退席させていただきます。日下結核感染症課長も公務のため、途中で退席をさせていただく予定です。
本日の出席状況について御報告いたします。本日は構成員14名のうち、10名御出席の予定でございます。岩本構成員、内田構成員、森内構成員、今冨構成員より御欠席の連絡を頂いております。また、安河内構成員と山野構成員につきましては、恐らく遅れて御参加をいただく予定です。また、本日は参考人として東京大学大学院内丸薫参考人に御出席いただいております。
それでは、配布資料の確認をいたします。まず議事次第、構成員名簿、座席表の後に、資料1として、日本HTLV-1学会からの「HTLV-1感染症法・5類感染症指定に関する要望書」、続きまして資料2として、日本HTLV-1学会からの「HTLV-1感染の感染症法・5類感染症指定に関する要望」、そして資料3として、患者会からの「HTLV-1を感染症法における5類感染症に指定することの意見書」の3点です。不足の資料がありましたら、事務局にお申し付けください。
以後、議事の運営につきましては渡邉座長にお願いしたいと思います。
○渡邉座長 まず、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
以降の議事運営につきましては、私がやりますが、議題の確認です。本日の議題は「HTLV-1の感染症法上の取扱いについて」です。まずHTLV-1学会の要望書とその背景について説明があり、その後は患者会からの意見書について説明を頂きます。これらの説明の後、皆様に様々な観点から御意見を頂く予定としております。構成員の皆様には、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。
では、早速ですが議事に入ります。まず、資料1について、私は今座長をしておりますが、日本HTLV-1学会の理事長としての立場で、私のほうから要望書を読み上げさせていただきます。資料1です。
2019年10月吉日。厚生労働省健康局結核感染症課長日下英司殿。一般社団法人日本HTLV-1学会理事長渡邉俊樹。HTLV-1感染の感染症法・5類感染症指定に関する要望書。記。本邦に約80万人以上の感染者が存在すると考えられるヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)は、感染すると約5%に致死率の高い成人T細胞白血病リンパ腫を、約0.3%に進行性の神経疾患であるHTLV-1関連脊髄症などを引き起こします。これらのHTLV-1関連疾患は、治療法や発症予防法がまだ確立していないため、新たな感染予防、早期診断・早期治療が効果的な対策です。また、HTLV-1感染者は世界で数千万人と推測されますが、先進国で感染者が多いの日本のみです。HTLV-1対策は日本がリードすべき課題であり、特に感染対策の成功は、世界のHTLV-1侵淫国のモデルケースとなることが期待されています。
このような背景を踏まえ、2010年に作成された「HTLV-1総合対策」では、母子感染予防対策の充実、無症候感染者(キャリア)対策の充実を図っておりますが、「HTLV-1感染者の実態把握」ができていないため、対策の評価が困難であるという問題が明らかになりました。現在示されている感染者数は、日本赤十字の献血者の抗体スクリーニングで得られた情報に基づく推定値でしかなく、妊婦健診の際の抗体検査結果も公的に把握する仕組みがありません。そのため、母子感染予防介入の成果を判定するキャリア妊婦から児への感染実態の把握もできておりません。
また現在、母子感染に次ぐ感染ルートである性行為感染も年間4,000件以上であると推測され、更に若年成人における感染率の増加も明らかになってきました。今後、更なる若年層でのHTLV-1感染の蔓延が危惧されており、早急かつ有効な水平感染対策も重要であると考えられます。
これらの感染実態の把握や水平感染対策といった課題を解決していくためには、HTLV-1感染に対する何らかの法的な根拠が必要ですが、現状では存在しません。実態を把握する法的な根拠があることで、都道府県の認識も変わり、HTLV-1の検査を希望する方への検査・相談体制及び啓発活動の強化につながります。
以上の状況を踏まえ、これまでの「HTLV-1総合対策」に加えて、HTLV-1感染の感染症法・5類感染症への指定につきまして、要望書を提出いたします。以上。これが要望書の内容です。
次に、「HTLV-1感染の感染症法・5類感染症指定に関する要望書」の付帯文書です。日本HTLV-1学会が「HTLV-1感染の感染症法・5類感染症指定に関する要望書」を提出するにあたり、当学会理事会において議論を行った結果、感染症法の5類感染症指定に伴い、HTLV-1感染に対する偏見などの社会的トラブルが引き起こされ、却ってキャリアの不利益になる懸念が否定できないとの認識が共有された。
したがって、指定に当たっては、以下のような点への配慮を同時に要望することが確認された。
1.HTLV-1感染についての啓発活動の更なる活性化と継続を可能にする体制が必要であること。
2.相談及び診療体制の改善・整備が必要であること。
2019年10月吉日、一般社団法人日本HTLV-1学会理事長渡邉俊樹。
これが日本HTLV-1学会から提出した要望書及び付帯文書です。それでは、要望書の詳細につきまして、資料2の説明を、内丸参考人からお願いします。
○内丸参考人 参考人としてお招きをいただきました、東京大学の新領域創成科学研究科の内丸です。参考人としてお招きいただきありがとうございました。本日は私のほうから、資料2に従いまして、日本HTLV-1学会の理事という立場で、先ほど座長、あるいは日本HTLV-1学会理事長渡邉先生から御説明がありましたが、HTLV-1感染の感染症法・5類感染症指定に関する要望書提出の背景等について、若干の資料を用いて御説明をさせていただきます。
1枚目は表紙で、2枚目です。これは各構成員の先生方、よく御存じのとおりの、HTLV-1総合対策が2010年に策定されています。その中で推進体制、重点施策等が記載されていますが、重点施策の中の1番に掲げられておりますのが、感染予防対策です。具体的には全国の妊婦のHTLV-1抗体検査、及びその結果を受けて保健所の方での相談指導体制の整備が1番目の重点施策として掲げられております。
次のスライドです。そういった総合対策の策定を踏まえて、厚生労働関連の研究班としては、板橋班で、HTLV-1感染抗体陽性のお母さんを対象として、この当時推奨されていた3つの授乳法を選んでいただいて、それらの授乳介入の児への感染予防効果について検証するといった研究も運用されてまいりました。
次のスライドをお願いいたします。この板橋班では、2017年、母子感染予防のための授乳資料のマニュアルの改定も行われ、以前推薦されていた3つの授乳法、すなわち赤線を引いておりますが、1.完全人工栄養、2.短期母乳栄養、3.凍結母乳栄養の3つが並行して推奨されていましたが、改定マニュアルでは原則として完全人工栄養を勧めるという形での感染予防のための授乳介入を行ってまいりました。
次のスライドをお願いいたします。こういった感染予防のための対策が進められているわけですが、アウトカム、結果として実際に感染者の減少という効果が得られているかどうか、その評価ですが、妊婦の数に関して言えば、抗体検査で、抗体陽性の妊婦健診のデータを日本産婦人科医会で把握していますので、こういった形で、例示していますのは2017年のデータですが、把握することが可能です。ただ、キャリアマザー、妊婦以外の国民全体という観点から見たときの、長期的に、今後、こういった介入によるHTLV-1キャリアの減少効果の把握というような体制はいかがであろうかということを考えた場合、現状では研究班ベースの、ここでは2つの研究班のデータを示しています。
上段のほう、「前回」と書いてありますのは、厚労科研の山口班のデータです。「今回」と書いておりますのは、AMEDの浜口班の研究データです。日赤の献血のデータをベースにした研究班ベースで全国でのキャリアの数を推定するといったデータが存在するのみで、あくまでも研究班のデータしか存在していないというのが現状です。
次のスライドです。更に昨今懸念されますのは、これも同じく先ほどのAMEDの浜口班の研究データですが、日赤のリピーターの継続的な献血者の抗体の途中陽転というデータをもって、現状でどれぐらい水平感染が起こっているのかを推定をした研究データです。左側のグラフは、縦軸の単位が100,000人年当たりの人数という単位になっていますが、左側が各地方別に集計したもの、右側が出生年別、年代別ということですが、それをまとめたものです。これらを集計いたしますと、年間で新規に約4,000人のHTLV-1感染者が発生しているものと推定されるというデータが出てきています。
こういった現状を踏まえて、これらが今後どのようになっていくのだろうかという見通し、あるいはこういった水平感染者が果たして母子感染者と同様なリスクがあるのかということについての検討、あるいはこういった水平感染に対してどのような対策を打つべきかなど、様々な課題が想定されます。そういったことを考えますと、水平感染の実態の把握という意味でも、現状の把握は非常に重要なことになろうかと思われます。
次のスライドです。AMEDの浜口班のほうでは、更に第2次調査として、これは九州地区限定ですが、同様に献血者のデータを用いた、水平感染の状況についてのデータを解析しています。こちらの各グラフの青いほうが先ほどの第1次調査の結果でありまして、黄色いほうが第2次調査の結果です。御覧いただきますとおり、黄色いほう、今回の調査のほうが、主に若年者の男性で、新規の水平感染の発症率が増加している可能性が懸念されるということです。現状でも、HTLV-1感染の状況がまだ動いている可能性が懸念されます。そういった意味でも、HTLV-1感染の動向を把握をしていくということが今後の対策を検討していく上でも、非常に重要なことになろうかと思います。
次のスライドをお願いします。更にはこういった動向の把握が、先ほども御紹介いたしましたHTLV-1総合対策におかれましても、推進体制の中で、各都道府県でHTLV-1母子感染対策協議会の設置ということがうたわれていますけれども、こちらに掲げていますのは、昭和大学の宮沢先生、板橋先生たちの調査の結果です。全国の都道府県の中で、少なからざる県で未だに都道府県母子対策協議会が設置されていない、更に設置をされている都道府県でも、実質的には活動していないというところが複数ありまして、少なからざる都道府県で母子感染対策推進協議会が機能していないのではないかということが考えられます。こういった活動を活性化するために、現状の把握が非常に重要かと思われます。
また、先ほど保健所での相談指導の強化という総合対策にうたわれていたことですが、こういった保健所での活動を行っていくに当たっても、何らかの法的な根拠があった上での活動というようにしたほうが、よりスムーズになるのではないかというようなことが期待されます。
そういった現状あるいは問題点を踏まえまして、後ほど改めて私のほうからごく簡単にですが、感染症法の御説明をしますけれども、感染症法の中の1類から5類まである、その5類感染症というのは、感染症法の中で下段に赤枠で囲ってお示ししていますように、感染の発生動向調査を行って、その結果等に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症と規定されています。実際の対応措置としてうたわれているのが、感染症発生状況の収集、分析とその結果の公開、提供であり、正に抱えている現状に非常にフィットするものではないかと学会として考えた次第です。
次のスライドをお願いいたします。ただ、一方で、先ほど理事長のほうからも付帯文書の中でうたわれましたように、5類感染症への指定を検討した場合に、幾つかの重大な懸念が考えられます。この点に関しては理事会の中でも熱くといいますか、議論になったところです。1つは、5類感染症というものに指定されることによって、現状でもHTLV-1に感染しているというようなこと、診断されることによって、非常に大きなショックを、妊婦だけではなくて、様々な経緯で診断された方はショックを受けられるわけですが、診断されたHTLV-1感染というのが、法律で指定されている感染症であるというようなことで、何か非常に重大なところにぶつかっているのではないかというように懸念されるのではないかと。そういった点が大きな懸念として挙げられます。
また、法律で指定されている感染症だと言われることによって、いわれのない、法律で指定されるような感染症を持っている人なんだというような形で、偏見にさらされるのではないか。ここでは2段目の所に、「うちの嫁(妻)は」と、女性を例にとっていますが、これは男性でも同じことです。こういった法律で規定されているような感染症を持っているということになることによって、いわれのない偏見にさらされる懸念、これを強い懸念として挙げることができます。
そういったことを踏まえて、先ほど御説明がありました、付帯文書のほうでは、こういった点に対する対策を並行して強く押し進めるということは非常に重要であるということを掲げています。
1つは、そういった診断を受けた方に対する相談支援体制の更なる強化ということです。HTLV-1学会では、昨年度からHTLV-1学会登録医療機関という制度を始めまして、現在13施設が登録しています。こういった機関のネットワークを介して、各地域の保健所であったりとか、近隣の医療機関であったりとか、そういった所との連携をより強化しすることによって、そういった診断を受けた方々の悩みであったりとか、不安であったりとか、そういったことに対する、相談機能をより強化すること、これは必須であろうと考えられます。
もう1点、先ほどのいわゆる偏見であったりとか、そういった問題ですが、これにつきましては、今まで以上に更なる国民の啓発を進めていく。これにかかっていると考えられます。
これまで厚生労働省のほうでも、ここに例示として2つのアニメを使った資料を掲げさせていただきました。個人的には大変画期的なものだなと思っておりまして、若い世代を中心に、好評なのではないかと考えています。
一方で、右下のほうに、これは日赤で抗体陽性と通知を受けた方々を対象にした、調査母体、母数が少ないので、あくまで参考データですが、一部の世代、40代、50代では、こういったアニメーションによって情報を提供されるということ、必ずしも快しとしないという方々もいらっしゃるということが浮かび上がってきています。余談ですが私は50代の中に入りますので、私個人的にはそういった情報提供は大変素晴らしいと思っていますが、世の中は必ずしもそうではないんだなというように感じた次第です。様々な形、様々なモダリティで、より情報提供・啓発を強化していく。これも併せて教育を進めていく必要があろうかと考えています。
こういったことを踏まえまして、今回現状のHTLV-1感染に対する対策をより強化し、それを進めていくための体制の整備に資するようにというような観点から、HTLV-1学会として、先ほど申し上げましたように、幾つかの重大な懸念がありますが、そういったことに対策を打ちながらという前提ですが、今般、学会のほうから先ほど御紹介のあったような、要望書を提出させていただいたという次第です。
参考までに、これは私からこういった法律の説明を御説明させていただくのは、適切かどうか、必ずしも自信はないのですが、簡単に感染症法及び5類というものについて御紹介をするようにというようなことでございましたので、こちらにお示ししておりますのは感染症法のいわゆる前文に当たるところです。真ん中辺りのパラグラフの所に、「一方、我が国においは、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後にいかすことが必要である」というような記載があります。こういったことを踏まえ、感染症の、今回……の場合には、患者という部分はキャリア、無症候性キャリアというようにように置き換えて読むべきかと存じますが、迅速かつ適確に対応することが求められていて、この法律は感染症の予防、感染者の患者に対する医療に対し、総合的な施策の推進を図るためのものだということが前文でうたわれています。
実際に、感染症法で指定されている感染症、感染症の特性によりまして、1類から5類までに分類されております。これにつきましてはこの次のスライドで御説明します。今般問題にしております5類ですが、感染症法ではここに掲げております8つの感染症が指定されています。更に9番の所にあります、省令で規定される感染症とあります。1枚めくっていただきますと、「感染症法の対象となる感染症」ということで、5類感染症というところに、法律で規定された感染症、その下に省令ということで、ここに掲げられているものが5類感染症として挙げられているものだということで、御参考までに御覧になっていただければと思います。
1枚めくっていただいて、前のスライドでお示ししたものと同じですが、この中の5類感染症というのは、先ほど御説明したとおり、感染症の発生の動向を把握をするというようなことを目的としておりまして、そういった観点からは、現状のHTLV-1感染症に対して、非常に有用なものではないかと考えております。
最後のスライドになりますが、この発生の動向の把握ということですが、5類感染症では、全数把握と定点把握というようなことで2つに分かれています。今般、学会のほうからHTLV-1感染の、5類感染症への指定の要望書を提出するにあたり、学会では全数把握とすべきか、定点把握とすべきかについては、必ずしも結論を出していないという状況で、今後、もしこの要望が前向きに進むのであれば、その過程で改めて検討されるものであるのかなと考えています。私からの御説明は以上になります。
○渡邉座長 どうもありがとうございました。それでは、続きまして御質問や御意見等は、全ての発表が終わった後にまとめてということにさせていただきます。続きまして、菅付構成員から資料3の説明をお願いいたします。
○菅付構成員 患者会、キャリアの会はHTLV-1を感染症法における5類感染症に指定することに賛成します。その賛成理由として、その(1)、HTLV-1への認識が高まり、行政や医療現場による地域差の解消が期待できます。現在、全ての医療機関、行政でHTLV-1が認知されているわけではありません。医療機関においては、HTLV-1関連疾患の診断がいまだつかず、また確かな情報が得られず、不安を持つ患者の相談がいまだに存在します。またキャリアと診断された人が相談できる行政の窓口は、地域によって機能していない所が散在しています。第5類感染症に指定することで、認識が高まり、どの地域でも正確な診断や情報発信ができるように望みます。
その(2)、正確な患者、キャリア数の把握ができるようにして、HTLV-1の研究をより一層進めてほしい。第5類感染症指定により、正確なHTLV-1関連の患者、キャリアの数が把握できるようになると思います。これにより研究が進み、感染拡大の防止を図り、予防薬、ひいては治療薬開発へつながることを期待します。
その(3)、キャリアの相談窓口として、保健所(保健センター)が機能しやすくなる。現在は、HTLV-1について対応できる市町村の相談窓口は、数少ないです。啓発を進めるために相談体制を整えることは重要で、その役割を担う保健所(保健センター)は第5類感染症にすることで法の後押しになり、機能しやすくなると思います。
最後に、第5類感染症指定によって、偏見や差別を助長するのではないかという意見も聞きます。しかしながら、偏見や差別を生む原因は「無知」にあり、「患者本人、そして社会や周囲、家族が正しく知ること」で問題はなくなると考えます。
以上ですが、対策の推進のためにHTLV-1を感染症法における5類感染症に入れるとともに、十分な普及啓発をお願いします。「NPO法人スマイルリボン」理事長の菅付加代子と、そのスマイルリボンの中にキャリアのママの会、本人がHTLV-1の患者でもありキャリアの段階を経て急性化した経験もある母親で、その娘さんたちがキャリアで「カランコエかごしま」を、交友会を開催して同じキャリアの方の悩み相談を受けている団体です。そして、「アトムの会」会長、石母田衆さん、この全員の一致する意見であります。よろしくお願いします。
○渡邉座長 ありがとうございます。それでは、これまでの説明、学会側からの要望書そのものの紹介と、その要望書を作るに至った背景の説明がありました。それから、今、患者、キャリアの立場から菅付さんを代表とする団体からの意見書を紹介していただきました。これらについて、御自由に御発言を頂ければと思います。
○齋藤構成員 通常、感染症というのは何らかの感染症の症状があって、調べて感染症を告知するという場合がほとんどです。しかしながら、産婦人科で全妊婦に対して行っていますHTLV-1の抗体検査によって、感染者、いわゆるキャリアと告知される方は全く症状がありません。私たち産婦人科は母子感染を防止するためという目的で、この検査をしますということを説明した上で、もしキャリアであればどのような栄養にしますかという形の説明をして、それでどういう類で母乳法を選択していると。そういう状況にあります。
ですから、全くいわゆる感染徴候もない方が、途端に第5類感染症であるということを言われた際に、私は一番最初のこのHTLV-1が発見された時代から、臨床に携わってきたわけなのですが、当初はこのウイルスに対する知識がなかったために、非常に大きな家族的な問題が発生しました。離婚した症例もありますし、いわゆるこのウイルスがどこから来たのだというような、ウイルスの犯人探しが行われまして、一部はやはり性行為感染で感染しますので、過去の性歴等が妊娠中に問題になるわけです。そうなりますと、非常に家族内でのトラブルの原因になってしまうということがあったということを経験しています。
内丸先生がやられた患者さんの会のアンケートにおいても、どうしてキャリアになったということを分かりましたかという質問に対して、3分の1がいわゆる妊婦検診、3分の1が献血、3分の1がその他ぐらいだったと思いますが、現在、全例妊娠時に測定するようになりましたので、恐らく妊娠時にたまたまキャリアとなった方というのは、かなりの割合、4割以上を占めているのではないかと思っています。
そのような中で、この5類感染症というと本人には告知しなくても、HTLV-1感染症ですとお話しますと、インターネット等の情報で非常に怖いウイルスではないかというように誤解をされてしまう。それから、性行為で感染するということからして、妊娠というお子さんをはらんだ状態で、精神的な非常に不安定な時期にそういうことを知ってしまうことについては、産婦人科的には非常に危惧を得ています。ですから、これは是非とも産婦人科の学会ともよく相談された上で、どのようにされるのかということを是非ともお願いしたいと思います。
○渡邉座長 どうもありがとうございました。情報が一人歩きをしてしまう可能性があるということですが、内丸参考人からお願いします。
○内丸参考人 齋藤先生、ありがとうございます。産婦人科の領域で大きな問題が起こり得るということは、私どももその懸念は十分共有するものです。そういった意味で、日本産科婦人科学会、産婦人科医会、そういった学会とも十分な協議をしていかなければいけないのではないかと考えるところです。
○渡邉座長 ほかに御発言は。
○木下構成員 私も産婦人科の者です。産婦人科医会と学会とありますが、医会という診療をやっている勤務医ですが、この問題は非常に深刻に受け止めました。5類に分類されるということによっての問題というのは、ただいま齋藤構成員からお話いただいたような基本的にはそういう考え方です。
そういうことから、私たち全体、キャリアをチェックするような検査を妊婦検診のときにしていますが、そういうことでポジティブになったときに、全て届出をしていくということ自体、大きな問題になるということと、先ほど、お話があるような症状がないようないわゆる感染症としてATLやHAM、HUなど、そういったような段階で明らかな症状で本当に難しい疾患に対しての調査とはまた違って、キャリアとして全体が分からなければ、この疾患に関する様々なその後の対策に関してできないということは、確かによく分かるのです。この5類分類にしなくてもできる範囲のところでやるということが、まず基本的ではないかなと思っています。
そのような意味で、妊婦に関しては、私たち動向としては、母から子供に対する母乳を介しての感染ということを中心に考えていったときに、毎年もう少し詳細な調査をするということから、その問題はクリアできる。一方、今度は私もびっくりしたのですが、献血された方たちのデータでは、大変数の多い方がポジティブになる。それから性感染が思われる可能性というのも、調査されている。その辺のところをもうちょっと詳細に、あれだけを見ますと今まで母乳感染というのが非常に注目されていましたが、それはもう本当に影にかすんでしまって、あたかも何かそれ以外の性感染的なことが、中心になってくるような疾患になってくるということにもなりかねないようなデータなので、一体どう読むのかというのがよく分からなかったのです。
そのようなところから本来、総数が分かれば全てが分かるというわけではありませんので、もうちょっときめ細かな調査をしていくということで、この5類にしなくても意図するような、総合的に全体を把握していくという方法論があるのではないかと思いますだけに、今の段階では、是非、御配慮を願いたい。特に5類に分類にして進めていくということでなくても、できる範囲のことでやっていただきたいというのが我々の基本的な考え方です。
○渡邉座長 どうもありがとうございました。それに関しては、ほかに御意見は。
○山野構成員 現場に混乱が生じるというところで、もちろんそういうところは非常に起こり得る可能性というのは十分理解できるのですが、私も今、結構キャリアのママさんを御紹介いただいて、診察しております。その場で御主人も一緒に診察室に入ってくることも多く、そこでしっかりと説明をするということを心がけてやっているのですが、5類になっているのでそれを報告しますねというのを、妊婦さんや当人に言う必要は、これはないはずと思います。5類に指定されたということで、その本人にそれを届出をしますねなど、あるいはそういう話題として出す必要もその場ではないのではないかなと思うのです、この指定感染症という制度そのものは。
ですから恐らく先生方が大きな問題になるのではないかなと懸念されているのは、5類という感染症に指定されていることと、指定されていないということで、感染症としての何か重篤さが違う、それが何らかの風評被害を生むのではないかというような懸念を持っていらっしゃるという理解でよろしいでしょうか。
○齋藤構成員 通常は、5類感染症で届出しているものは、代表的なのは梅毒なのです。梅毒の場合は、御主人も呼んできて、実際に夫婦間で感染が起こっていないかどうかというのを詳しく調べます。このHTLV-1の感染症というのは母乳を選択しますので、通常は御主人さんと同席をしていただいて、どのような形でお母さんのキャリアである方のウイルスを赤ちゃんにうつさないようにしますかということを、御説明します。ですから、その段階で、今、自動的にですが、御主人も奥さんがキャリアであるということを知ることになります。
恐らく今の若い世代の方というのは、御自身でインターネット等で病気のこと、それからウイルスのことをお調べになられますので、第5類感染症となると、梅毒と同じようなウイルスなのかと、病原体なのかという形になってしまうと、ちょっと母乳の選択どころではなくて、いわゆる性行為感染症といったイメージが強くなってしまうのではないかなということを、非常に心配しているのです。これは本人さんだけに告知するのだったらいいのですが、そうではなくて、ちょっと母乳を選択するという立場上、御主人にもやはり同席していただくことがほとんどですので、そういった特殊性があるということも御理解いただきたいなと思うのです。
○山野構成員 5類ですと、当然、梅毒なども入っているのですが、ほかにもたくさんの性行為感染症ではない感染症もいっぱい入っていると思うのです。ですから、今、先生がおっしゃったようにHTLV-1イコール性行為感染症だということを、大きくキャンペーンしていくというのはかなり現場に混乱を来たすのではないかなということは、私も感じるのですが、それとまた5類に指定するというのは、切り離して考えられなくもないのではかなと思うのです。それは性行為感染症しか入っていなければ、そうですが、5類というのはあくまでも、きちんと対策を取りましょうねと、感染症としてしっかりと対策を取りましょうねと国が指定した感染症という理解なのです。
ですから、そういう意味できちんと対策を取るために指定した感染症で、むしろその5類に指定されていますが、ものすごく危険な感染症のですかと万が一、私が言われたとしたら、いやこれは非常に重要な、昔から日本にある重大な感染症なので、これはしっかりと国が対策を取ると決めてくださった感染症なので、むしろ皆さんにとっていいような形で対策が取れるために指定されている感染症ですという言い方もあると思うのです。
ですから、その水平感染症との議論とは分けて考えたほうがいいのではないかなと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。
○木下構成員 山野構成員がお話くださいましたような、別に患者にも知らしめないでもいいではないかということで、届出のときの届出用紙がありますが、どのようなことの内容を記載して届けるのかということも全部調べてみたところ、大変細かいことを聞いているわけです。どのような経緯で感染したかについての推定ではありますが、それも記載すると。やはり、そのような調査を要し、個々についてやらなければならないということは、それだけのことなのであります。
別に性感染症がどうだこうだということよりも、もっと本質的にいわゆるポジティブで、しかもこれは多くのものはハイリスクではないのですが、ハイリスクかどうか分けられるのであるなら、また話は別ですが、そうでないものでこのようなことをしていきますと、当然のことながら自分は家庭にとって大きなハイリスク因子を持っているような、可能性のあるウイルスを持っているのだということになるということと、そのどのような経緯でもってそこまで自分の所に来たのかということの、今まではつい母親から子供へということしか中心に考えていませんでしたが、その母親のポジティブになった理由は一体なぜかと遡って見るような調査もあるわけです。
それを全部、報告しなくていけないということは、1枚の調査票を全部見ましたが、ここまでやるのであるならば、これは全部本人にも相談しながら、話を聞きながらということになりますので、そう簡単ではないということです。これは難しいと思います。
○渡邉座長 ありがとうございます。ちょっと今の件に関して、私ども理事会での議論の際の認識とかなり食い違うところがあるので、正確なところを厚生労働省からもお答えを頂きたいのですが。報告の内容ということに関しては、非常に個人情報を全て明らかにして報告するようなスタイルもあれば、単純にある施設における数だけを把握する、件数が何件というだけの報告もあり得ると。非常に幅が広くてその辺は行政的にいろいろ決めておられるはずであるというのが、理事会の場での議論でした。ですから、どういう内容を報告するかについては、今後とも実際に厚生労働省の担当者と相談をしていく中で、決まってくるであろうというのが、理事会の議論のときの理解でしたが、そういう理解でよろしいのでしょうか。
○日下結核感染症課長 どうもありがとうございます。座長ご説明のとおり、現時点でHTLV-1が仮に5類感染症に指定されたとしても、何を報告するかは現時点では何ら決まったものはございません。先ほどご議論があったとおり感染症の種類によっては、かなりプライバシーに踏み込む必要のあるものもございますし、そうでないケースも、もちろんございます。今後、5類指定によって報告すべき事項については、そのときの状況によってこれは含めるべき、含めるべきではないというような判断がなされると理解しております。また、当初の方向に含まれていない場合であっても、必要なものがあれば後で追加するというようなことも、疾患によってはやっています。繰り返し申し上げたいのは、現時点は報告すべき事項は何ら決まっていないということです。
○渡邉座長 つまり報告の内容に関しては、単なる件数N件というだけの報告から、全て出生時から何から全ての個人情報を報告するという方法まで、バラエティがあるということです。それは、今後、議論をして決めていくものであろうと学会の理事会の場では、そういう認識の下で議論をさせていただきました。
○木下構成員 くどいようですが、今までほかの第5類の感染症に関しては、その個々の疾患についての調整するということよりは、むしろ1つのパターンがあります。それにのっとったことをする。報告はとにかくある限られたものかもしれませんが、患者からの聴取りという段階においては、かなり細かいところまで聴いているのが実情です。そうでもしなければ、本来の趣旨としての全体の動向や感染経路の可能性などということに対しての評価も、ただ数値だけ数が何例あっただけでは、なかなか本来意図するようなものにはならないだろうと思います。それだけかなり詳しいこと、今まで踏み込まなければ、本来の意図を考えるということには難しいのではないかと思います。
○渡邉座長 その点は、私が座長として余り発言してもしょうがないのですが、今おっしゃったのは恐らくある研究的な目的であれば、そういう設定の仕方、考え方もあるかと思うのですが、法律の趣旨で考えると、いろいろな場合があり得るというのが前提ではないかと思います。例えば、マイコプラズマやクラミジアなど、そういったものが報告対象になっている、第5類になっています。それでマイコプラズマ肺炎を診断しても、私どもそのような調査をした記憶はないので、やはりそれぞれの場合に応じて決められているのではないかと私は理解しています。山野先生、何か追加発言はありますか。
○山野構成員 今、厚労省の方が、私もそのように認識していたので、基本的にはどういう報告の仕方にするのかということは決まっていないという理解でいます。先ほど齋藤構成員からお話があったような形で、例えば病気を発病した方だけというやり方もあるのではないかなと思います。木下構成員がおっしゃったように、ハイリスクの方を最低限拾っていくというやり方もあると思います。あるいはキャリア全部というやり方もあると思います。
キャリア全部だったときに、本当にN数だけ、今はとにかく感染している方が何人いるかということすら分かっていないということが、大きなHTLV-1の問題であると思うのです。ですから、本当にN数だけを拾い上げるというようなやり方も恐らく逆にそういう部分を含めて、平たくいろいろ議論をしていったほうがいいのではないのかなと思って、先ほどの発言をさせていただきました。
○永井構成員 1つの観点として、第5類感染症に指定したら何が分かるのかということを、確認されるのがいいと思います。例えば、今、全国に感染者がどれだけいるかということを知りたいといっても、それは全部届け出られるはずがないのです。今、要望書の中に約80万人いるという話があるのは、これは献血者や妊婦の中の割合がこうだからという話で、こういう推定をしている。これをしなければ、できないはずです。つまり5類感染症に指定して、何人の陽性者がいましたという報告が幾らあっても、全国に何人の感染症がいるかなんて分かりません。分からないはずです。
あともう1つ、内丸先生が現状の問題点を挙げられましたが、例えば授乳方法によって感染リスクが変わるかどうかということを、5類感染症にしても分かるはずがないと思います。水平感染がどれだけ起こるかというのも、御発表で教えていただきましたが、これは献血者をフォローアップしたから分かったのですよね。5類感染症にしても、このようなことが分かるはずがない。したがって、こういう問題点は5類感染症にしたから解決する問題では決してなく、今のような班研究をより積極的に進めることによって初めて分かるということなのだと思います。
○渡邉座長 それに関して。
○平川構成員 私の意見は、今、永井先生におっしゃっていただいたので、少し私も質問も含めてよろしいでしょうか。内丸先生にお伺いしたいのですが、現在、学会で予防されているのはHTLV-1に無症候性感染、キャリアといいますか、症状が出ていないけれどもウイルスが陽性の方の調査なのか、それとも発症した方々も含めて全体を把握したいと思ってやるのか、どのように今、我々が求められているのは何でしょうか。
○内丸参考人 発症者を把握するというやり方は、もちろんあると思うのですが、今回、私どもが想定しているのは無症候性キャリアということです。
○平川構成員 厚労省の方に伺いたいのですが、現在の体制で無症候性のキャリアの数はどうやって把握しているのですか。どれぐらい把握できているのでしょうか。
○日下結核感染症課長 厚生労働省で把握できるのは、研究班による調査結果や献血のデータしかありません。現時点で厚労省が入手可能なデータはそれだけです。先ほど先生方がおっしゃっておられたとおりですが、仮にHTLV-1が5類感染症に指定されたとしても、報告が上がってくるのは医療機関からですので、それ以外から上がってきたデータ、例えば献血のデータというのは報告の対象とはなりません。つまり、医療機関から保健所への報告のみがデータとして上がりますので、先生がおっしゃるようにそれで100%把握できるかと言われると、それは全く違うと思います。
○平川構成員 今、永井先生がおっしゃったことなのですが、そうなると現在は厚労省としては、把握する体制は全くなく、僅かに研究班の研究成果が上がってきているだけだと、こういうことですね。分かりました。
内丸先生がお示しになった資料8ページ目に、九州におけるHTLV-1水平感染の発生状況があります。これは確か前回のこの会議で、日赤の研究員の方が発表になったことで、黄色が第2次の調査で、これを見ると黄色のバーで男性が非常に増えてきていて、女性は高止まりだということです。ただ男性が低かったのが増えてきて、それも若い世代に増えてきているということをおっしゃって、これが水平感染の実態だということで、新しく変化が出ているということでした。このことがあるので、現在の妊婦健診でスクリーニングをしている検査だけでは、この新しい感染の実態が把握できないので何らかの体制が必要だというお話だったと思います。
それでこの会議のミッションとしては、新しい水平感染を把握する方法を見つけだすこと、それを施策として反映することだと思うのです。そのときにその先生がおっしゃったのは、確か性感染症でしょうかという質問が出て、性感染症であるとすればHBウイルスB型肝炎のウイルスも性行為で感染しているので、それが一緒に動くはずだけれども、その動きと違う動きをしているので、その先生は性感染症とは断言できないと、それは言えませんとおっしゃっておられました。そのことが非常に私は印象にありました。
ですから、ここで今、性行為感染症という話が進んでいますが、そのこと自体もまだしっかり研究しないといけない対象、安易にここで性行為感染症だからどうだというそういう前提にした話も、ちょっとまだできない。その可能性はかなり高いけれども、実証しないといけない。そういうことで、いわばこのこと自体はまだ研究段階のことではないかと私は推察します。何かもう結論が出て、その結論をもとに施策を始めるというよりは、まだその実態を解明する必要があるかと思います。
その実態を解明する上で、この5類感染症に当てるのが最も適当かどうか、最もベストなやり方なのかどうかということを、今、考えているわけですが、永井先生がおっしゃいましたように、5類感染症ということに指定することで、これが解明できるかと私はそこを専門の先生方に伺いたいところなのです。
今、お話がありましたようにこれは医療機関からの報告が上がってくるもので、献血からの報告は上がってこないということでした。先生の資料の一番最後に、全数把握にせよ定点把握にせよ、これは診断した医師が届け出るということですので、妊婦検診については医師が妊婦さんを診ますので診断しますが、これは女性だけですので男性のデータは出てこないです。この先生方は、献血だと男性も女性も受けますので、献血のデータをもとにした研究班のデータで上がってきたということです。
今、HTLV-1の何も症状がない人で、その検査をするとなりますと医療機関では、妊婦検診以外では、なかなか検査をたくさんするということがないのではないかと思うのです。ですから、この5類感染症に当てて医療機関からの情報が出てくるということを、把握することで、この男性の若い層に増えてきている水平感染を把握できるのかどうなのかが、私は非常に疑問です。むしろこの献血の担当の研究員の方が発見されたような、この方法をもっと全国的に広めて、確かこれは九州の中だけのデータだとおっしゃっていました。
○渡邉座長 最初のデータは全国です。追加検査は九州です。
○平川構成員 そうですね。増加が見つかったのは、九州のデータで初めて見つかったのでしたよね。確か検査法の何か制限があって。
○渡邉座長 制限は、同じ確認検査法で感染を判断しているという事ですね。
○平川構成員 ですから、これは九州だけではなく、これを全国に広げて献血のデータから全例を持ってきて、検査法をそろえて、そういった調査のほうが私は実態が把握できるのではないかと思うのです。ただ、その症例を経過観察をするということになりますと、新たな仕組みが必要かもしれませんが、少なくとも全国の状態を把握するという意味では、献血データをもっと進めるほうがいいのではないか、5類に指定して本当の実体が分かるのかという永井先生の御意見が、私はとても賛同するところです。
○内丸参考人 多数の御指摘ありがとうございます。今、たくさん御指摘いただきましたので、全てに答えられるか自信がないのですが、私からの先生の御質問に対する回答をさせていただきたいと思います。
まず、私は前回の対策協議会も参考人としてお招きいただいていましたので、これを報告したのは相良先生だと思いますが、聞いていました。また、この研究班の分担研究者であるので、この経緯は詳細に把握しているところです。ただいま、先生が前回の協議会で相良参考人が御説明した内容を非常に正確に覚えていらっしゃって、大変驚いたのですが、それはともかくとしまして、まずこれが本当に水平感染なのかどうかということについて、B型肝炎のデータは動いていないことから、必ずしも断定はできないということを相良参考人が申し上げていたと、そのとおりです。
私もそこは、慎重によく見ていただければ、私の資料にはこれを水平感染と書いているだけであって、性感染という言葉は慎重に先ほどの説明でも控えていたと思います。そういった意味で、これが果たして性感染かどうかということについては、先生の御指摘のとおり、あるいは永井先生も御指摘のとおり、別途やはり研究をしていかなくてはいけない。これは5類感染症に指定したから、こういったものが本当に性感染なのかどうか分かるかと言われると、やはりそれはなかなか難しい研究テーマだと思います。
それから、こういった若年層の変化というのが5類感染症に指定することによって、把握できるのかと、これも確かに難しいかと思います。そういった意味から言いますと、5類感染症に指定されたからといって、こういった研究活動をやらなくなるということとは、また別の話かなと思いますので、そういった研究を進めながらということで、一方で、先ほど厚生労働省からもお話があった、現時点で厚生労働省としても、もちろん研究データを厚生労働省が把握されることによって、いろいろな施策を考えていくという、非常に重要な方策がありますが、やはり国として、5類感染症の理念と申しますか、性格の所に書かれているとおり、やはり実態を把握をしていこうというような体制は必要なのではないか、そういったことによって、様々な、それに伴う関連する例えば相談体制の整備など、そういったほうにも寄与していくのではないかということを考えるところです。
永井先生の御質問にも、合わせてお答えするということで、この5類感染症に指定することで実際に全部が上がってくるわけではない、実際の数がどうかということについて本当に分かるかと、それは御指摘のとおり十分でないかもしれないと思うのですが、通常の研究と合わせて、こういった法的な根拠を持つ調査というものも、やはり必要なのではないのかと思っているところです。
参考人ですが、議論に加わってもよろしいのでしょうか。
○渡邉座長 どうぞ御発言ください。
○内丸参考人 ……、先ほど齋藤先生から御指摘があった点等も含めて、私からちょっと考えを述べさせていただきます。先生方、御存じのとおり、私も臨床医でもありますので、多数のHTLV-1キャリアの方に対応した経験があり、現在も経験をしています。ただ、齋藤先生、木下先生、あるいは医会の先生方が対応されるような妊婦さんは少ないですので、そういった意味では同じHTLV-1キャリアであったとしても、診ている対象は違うということはある程度認識した上で、考えなくてはいけないと思っていますが、例えば先ほど来、問題に上がっている点の中で、これが性感染を起こし得るものであるからということで、妊娠中に問題になって家庭内不和を起こすなど、いろいろな事例を見てきたという御指摘がありました。ただ、その問題はHTLV-1感染が性感染ルートを持っているということは、既に明らかですので、強く疑われますので、5類感染症に指定されるかどうかというのは、また別の次元の話かなと。そういった意味から言うと、こういった感染症によって家庭内の不和うんぬんについての議論は、ちょっと分けて考えるべきなのかなと、実際に現場で対応していても、私はそういう印象を持っています。以上です。
○渡邉座長 ありがとうございました。菅付委員、どうぞ。
○菅付構成員 患者の立場から発言します。患者は、このHTLV-1総合対策が、母子感染予防対策だけをすればキャリア数は減っていくし、研究の必要はもうないだろう。だから、この対策は母子感染予防対策で終わりだとなってしまうことを恐れています。
未だ患者は、特にATL(成人T細胞白血病)の患者は、急性になると亡くなっていくし、依然、治療法はない。HAMの場合もですが、4月に大腿骨を骨折して4か月入院して、その後、悪化して、白血球が10倍ぐらいに上がって検査したところ、ATLになって、10月6日に亡くなりました、という電話を受けたところです。
私たち患者にしたら、薬の開発やキャリアの予防薬のワクチンを開発する、それを推進していただかないと困ります。子供たち、その子たちが大人になって発症をしないように、早く無くして欲しいという思いで対策を作ったのに、これから先、何をしたら前に進むかを考えなければいけない時ではないでしょうか。
3年ぐらい前にHTLV1を感染症法の中に入れて欲しいという要望書を提出したことがあります。その時に厚労省から聞かれました。法律に入れて、感染症法に入れたからといってどうなるのかと。
17ページに書いてある、「感染症法の主な対応・措置」という所に、発生状況の収集と分析と結果と公開と提供、これがとても重要だと思います。水平感染が出ているという日赤の結果にしても、これを裏付けるためにも、正確なキャリアの数と患者の数を把握することが大事だと思います。ほかに方法があるのだったら感染症法に入れなくてもいいと思いますが、ほかにあるのだったら教えて欲しいです。しかし、今まで10年近くこのHTLV-1の対策をやってきて、主に母子感染予防対策を重点的にやってきて、これから先に前へ進もうとするとき、ほかに何があるのだろうかと思います。
それから、HTLV1が第5類感染症に入ったからと言って、一般の方は感染症法を余り知りません。梅毒や肝炎が入っていることも多くの人は知りません。反面、先生方はその辺をよく御存じだから、恐れておられるのではないかというような気もします。
○渡邉座長 どうもありがとうございます。それでは私、座長の立場をちょっと離れて、HTLV-1学会の理事長として、意見書というか要望書を提出する際にいろいろと議論があったことを、もう1回ポイントを整理してみたいと思います。
まず、感染症法で指定するということで、何を求めるか、何を期待するかということですが、基本的には、まず感染の実態を正確に把握すること。研究をする側の人間から言うとそれが非常に有益であろうと考えました。それは、これまでの感染実態の把握がはなはだ不十分であると考えられるからです。国際学会等で発表しても、献血者のデータに基づいてと言うと、それの5倍はいるだろうと、海外の疫学者はそう言います。実態を分かっていないのかという格好で反応されます。つまり、ほかの情報がないわけです。あなたの国はそういうことは何もやっていないのですかという感じで言われてしまう。
ですから、我々はできるだけ、実態を正確に把握できるものは、いろいろな研究のインフラとして非常に重要だろうとは考えておりました。ですから、感染症法で指定する上での、いわゆる学術的な意味での1つの意義だろうと考えます。指定することが何かにつながることではないのですが、そういったことをベースにいろいろな研究をしていくことが必要だろうというのが考え方の1つです。
もう一方は、感染者あるいはキャリア対策ということに対しては、現状、約9年にわたって総合対策を進めてきたけれども、未だに不十分であるという認識が前提になります。なぜ不十分か。例えば、いろいろな問題を抱えている方がどこに行って相談をする、あるいは、どこに行って感染を診断してもらうことができるのかと言う情報提供が十分されていない、ということが1つ。その原因の1つは、保健所が全然機能していないということがあります。
2番目は、情報提供です。キャリアとして感染が診断された後に、その人が、自分は一体どうなるんだということで、いろいろなことを相談したい。ところが、どこに行けばいいか分からない。つまり、相談体制が不十分である。患者対応の体制が不十分である。それから、診断も地域によって大変不十分である。つまり、医療レベルでも、患者がたらい回しになって、何箇月も診断されずに、故郷の九州に入ってすぐにATLと診断されて、2、3か月で死んでしまうと。実はこれは関東の例ですが、3か月以上たらい回しにされてATLが診断されない状況もあるわけです。でも、診断されたときにはもう手遅れで、すぐ死んでしまう。これは今年の例です。ですから、昔の話ではなくて、そういう例がある。
つまり、そういったことで、相談体制とか医療の均てん化をきちっとやっていく上で、様々な対策が必要であるけれども、例えば、保健所の活動を考えたとき、法律上何の規定もない感染症に対する活動は、現場の、保健所の方々の活動の優先順位としてははなはだ低い。つまり、活動対象にならない。やはり何らかの法的な裏付けがあることが、先ほど言った、感染者を診断し、感染者の相談の窓口になるという、法的な裏付けのある施設がきちっと活動するためのインフラとして必要なのではないかと言う事です。これが1つの議論でした。感染症法があることで、そのことでみんな解決するわけではないのですが、1つの基盤が整備されるであろう、ということに関しては、理事会の中では大体基本的な合意が得られました。
ただし、先ほどから、斎藤構成員、木下構成員からも議論がありましたように、キャリアであることを知ることによって、本人あるいはその家族に対して、様々な社会的あるいは人間関係の面でマイナスの問題は起こり得ることも、皆さん経験していますので、十分に議論の対象になりました。
結論は、前向きのところで合意したいという事です。つまり、問題があるから引くのではなくて、その問題を解決するために一歩踏み出そうと言う事です。そのためには法律のようなものでまず基盤を固める必要があるのではないかと考えました。だから、無知のままで放置してはいけない。前向きに立ち向かっていくための1つの基盤として捉えて、それを法律化することと、それと、実際に厚生労働省と相談しながら、相談支援体制とか診断の体制、保健行政の対応を更に前向きに働きかけていく、その1つの手がかりにするという方向で80%の理事の賛成を得たというのが、理事会での議論の流れです。
様々な問題があって、法律で指定すること自体が何かの解決になると考えている理事はおりません。ただ、それを基にいろいろなことを主張し、活動を高めていこうというような議論であったというように、学会理事長としての追加コメントとしてお話をさせていただきます。
座長に戻ります。皆様、構成員の方、それから、参考人の方からの御発言について、追加発言がありましたら。
○塚崎構成員 渡邉座長から、最初にHTLV-1学会からの要望書、そして、菅付構成員から、患者会、キャリアの会からの意見書を頂いて、今、菅付構成員、そして、渡邉座長からお話を頂くと、学会のお話と、それと、患者、キャリアの方々のお話はすごく相通ずるところがあると、私はまず感じました。実際、理事会のときに、それがどうなのかと私は懸念していたところがあったのですが、今日、そこが本当に同じ方向に向いていると思いました。
そして、この法律によって、メリット、そして、デメリットと、懸念されるところがたくさんあることは、今日お話をお聞きして、また、理事会のときもそうで、よく分かりましたが、この法律にATLを含めることの基盤として、普及啓発活動をより進めてほしいという菅付構成員のお考え、私はそれに全く賛同いたします。ですから、そういうことをしていくために、HTLV-1キャリアの方、そして、そのキャリアの方の一部から起こってくる難病のHAMとATLの対策をしていくためには、普及啓発活動、それからいろいろなリアルデータというものを、キャリアの方だけではなくて、HTLV-1関連疾患、重い病気の方にもつなげて、この法律が活用されていく形になるように、是非皆さんと努力していく必要があると思います。
○渡邉座長 ありがとうございます。
○石母田構成員 アトムの会の石母田と申します。私自身はHAM患者です。HAMを患ってもう20年近くになりますが、その前に、HAMと診断されるまでに7年かかっています。そのHAMと診断される数年前に、弟がATLを発症して亡くなっています。これはもう20年近く前の話です。ところが、現実にまだここ数年前でも、弟さんがATLで亡くなったので、家族も検査しなさいと、近くの保健所へ相談に行ったけれども、そのATLやHTLV-1というのが分からないのですね。それはなぜなのか。総合対策でずっとやられてきたことが母子感染を主体とした形で、なかなかキャリアだとか、妊婦にしても、妊婦はキャリアだと分かっても、その先の相談先が未だに整備されていない。これは患者にとってもショックですが、新たに診断されていくキャリアの方もどうしたらいいのだろうというのがまず、すごく悩んでいると思います。
今回、これが5類感染症に取り上げられるということだったので、私も患者会の人たちと、知合いのキャリアの方、ATLの方などにも電話をして聞いたりしたのですね。まず病気の診断を受けて、難病だ、治療法がないと言われ、一番大きなショックを受けるのですね。周りに聞いても、ほとんど分からない。1人悶々と悩み、苦しむ日々が続いた。ある日、友人が、患者会があるのをネットで見つけて教えてくれた。迷わず、すぐに電話をした。患者会の方に悩みを聞いてもらい、病気について詳しく教えてもらい、ホッとし、自分を取り戻せたと。5類感染症に指定され、このウイルス、この病気を広く正しく知ってもらい、私のように苦しむ人が減ることを期待する。こういう方がいらっしゃいました。
5類感染症で皆さんが心配されるのは言われなき差別です。私が思うのには、5類感染症に指定されようが指定されまいが、差別する人は差別するのです。現実に、私などもHTLV-1やHAMというのが分かってから、誰一人隠すことなく、ずうっと言っていますが、未だ差別を受けたことはありません。ですから、それをそんなに心配することはないのかと、個人的には思います。以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。ほかに御発言はございますか。
○平川構成員 お話を伺っておりますと、水平感染の原因究明以外に、現状のHTLV-1の総合対策が果たしてこれでいいのかと、十分なのかと、根本的な問題のように拝聴いたしました。相談や支援の体制が十分でないと。そして、医療の体制も連携が取れていないと。特に地域での保健所機能、保健所にもっと機能を担ってほしいというふうな御意見だと思いましたので、このことは、我々が推進してきた対策自体を見直さなければいけないのではないかというふうに受け止めました。この点については、今後、しっかりと議論が必要と思いますので、厚労省の担当の方もそういう認識で、今の体制が決して十分でないことをまず認識していただきたいと思います。
○渡邉座長 ありがとうございます。永井構成員、追加の御発言はございますか。大丈夫ですか。
○菅付構成員 鹿児島では保健所と連携して県と市が「ママと未来を守るミルクサポート事業」を進めていこうという動きがあります。これは最初、2年ぐらい前にカランコエの池上さんが、霧島市で、母乳をあげられないママに対してミルクの支給をして欲しいと声を上げたことがきっかけでした。当初、市議へ相談しても男性の議員は「それって女性だけの問題でしょ。母乳をあげないようにする対策事業は、男は関係ないでしょ。」といった反対意見がほとんどで耳を貸さなかったそうです。それを女性議員が、これは家族の問題です。これは夫婦でも考えていかなければいけないし、キャリアママだけに責任のある話ではない。まして、キャリアであるということは、誰の責任でもなく、日本国民の問題でもあるから、それをママが母乳をあげないで我慢してミルクをあげることに対する精神的なサポートでもあると、コツコツと説明して、ようやく、最終的には議会全員一致で決まりました。
その後、鹿児島市でスタートしたのがミルクの実物配布です。各保健所、保健センター、市町村で顔の見える、ミルクを取りに来るときにママが直接に顔を見せてお話ができる。産婦人科では妊娠時における相談をすると思いますが、それ以降、お母さんたちは、子供が大きくなると自分たちの生活が忙しくて、でも、ある一定の時期になると今度は自分が発症するのではないかと心配します。どこに相談したらいいかと思ったときに、あのとき、顔を合わせてお話した保健師さんの所にもう一度行ってみようという気持ちになればということで、そのママを更にずっとサポートしていこうというのが「ママと未来を守るサポート事業」です。これを全国に広げていきたいという思いです。
一方、保健所での相談体制を取ろうと県が要請しても、市にはそれだけの要員と、思いはあるのだけれども、なかなか進まない。国の条例や法令などがあれば、少し動きやすいということも聞きました。もし、HTLV1が第5類感染症になったらどうなるのかという思いもあり、とにかく、前に進むことが大事だと思います。
それと、偏見に関する話をさせてください。ハンセン病というものがあります。これも奄美や鹿児島県に多い風土病ともいえる大変な病気ですが、治療薬もできて感染しないことを私たち国民は何も知らされていませんでした。私が知ったのは「砂の器」という映画と、最近、樹木希林さんが出られた「あん」という映画です。ハンセン病の政策で病人を国が隔離して、そして世間にも病気の存在を知らせないで来たのです。世間にも知らせないで来たから、私たちは知らない間に偏見という差別を自分たちの中で作ってしまいました。そして、ずっと、人の一生が何世代にもわたり、人間として扱われない人権侵害が行われて来ました。
偏見というのは周りが作り出すものです。これをHTLV-1に置き換えて、もし、感染症法に入ったらどうなるのだろうと想像するのです。まず、医療機関でも行政機関でも、ウイルスについて、病気について理解していただけるのではないかと期待します。今の状況だと死亡者数で把握しているATLは正確に診断できているのか、HAMという病名で数えられるのだろうかという疑問が否めません。
何かをやるとすればデメリットも必ずあると思うので、デメリットは今からそれを想定して、解決するように協議会が案を練って努力をすればいいのではないかと思ったりはします。以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。様々な立場から御発言がありましたが、まず、感染症法の5類に指定することの目的、あるいは、そのことによるメリットは一体どこにあるのかという問題と、実際に指定した場合に起こり得る社会的な問題です。それから、5類に指定することによって波及効果といいますか、得られるいろいろな行政上あるいは医療上にどのようなことが期待できるかということも議論があったかとは思います。
これらも、基本的に私の理解する範囲では、皆さんの御発言を頂いている中で、やはり、HTLV-1のウイルスに感染した方々が、今、議論しているような法律で何か規定することによって、不利益が生じないようにすることが非常に大事であるということ、それと同時に、HTLV-1対策を更に進めていって感染を防ぎ、疾患を防ぎ、いろいろな相談体制を進めると。なおかつ、法律で云々かんぬんするしないは別として、患者さんの不利益が生じないように、行政あるいは、いろいろな施策を進めるにはどうしたらいいかということが、基本的な考え方、立場だろうと思います。
恐らく、学会の理事会の際の議論でもそうでしたが、はっきり申して、HTLV-1の学会の専門家で最初から賛成の理事はおりませんでした。実はゼロだったのです。それはなぜかというと、やはり皆さん、現場で様々なケースを知っていて、5類に法律で決めるべきだということを最初に無条件に言う理事は誰一人としていなかったのです。基本は齋藤先生や木下先生から御指摘があったように、5類という形で法律で決めることによって、どのような不利益といいますか、ネガティブな影響が起こり得るか、そのことに対して皆さん一様に懸念を示しておりました。つまり、その上でいろいろと議論を進めて、その現状を乗り越えるためにどうあるべきかという、その新しいところにHTLV-1対策を前に進めるにはどうしたらいいか、そのときに法律で決めるということはどのような意味があるかという議論を繰り返したということです。
最終的な合意点が、私どもの学会の要望書を見ていただくと分かるように、要望書プラス付帯文書になっています。つまり、要望するだけでは駄目だと、条件を付けてきちっと対策をするという付帯文書を付けるのであれば合意できるというのが、理事会での8割の理事の先生の御意見であったというのが実際の流れです。
ということは、何を申し上げたいかというと、いろいろな施策を動かす上で、当事者に対して不利益を生じるようなことはとにかく避けたいと言う事です。これまでも様々な事例を現場の先生方はよく承知しております。離婚どころか自殺まで実際の例が幾つもあることは、よく承知しておりますので、そういったことを踏まえて不利益にならない方法で前に進めるにはどうしたらいいかという議論、それから、そういった法律を作ることにより、将来に向けてどのようなことを主張する、あるいは、要求していくということを、これからどんどん議論していきましょうという理解の下で要望書が作られ、付帯文書が作られたというのが学会内での議論の実態です。
ということで、本日は皆様にいろいろな立場から、いろいろな御意見を頂きましたが、これは、本日、結論を出すような問題ではありません。皆様から御意見を頂き、例えば、我々HTLV-1学会という立場と、産婦人科学会あるいは産婦人科医会、それから小児科の先生方ともコミュニケーションをしながら、だんだん合意点を見つけ、あるいは解決策を見つけていくという方向で話を煮詰めていくつもりでおります。
これは、その間、途中で厚生労働省の担当の部局の方々ともよく相談をして、どのような道が最終的に望ましいか相談をしていきたいと、対策推進協議会座長の私としては、そのような形で最終的に議論を進めるというか作業を進めていきたいと思っております。いろいろと私から発言いたしましたが、ほかの構成員あるいは参考人からのご発言はありませんか?山野先生どうぞ。
○山野構成員 1つ、本日の議論の繰り返しになりますが、やはり性行為感染、水平感染が非常にクローズアップされて、そのような部分が分かってきたので、その対策のために指定感染症というのではなく、しっかりとHTLV-1対策をとるために啓発活動や様々な態勢も含めて整備していくために指定感染症にしていくのであるというところを明確に皆さんに伝えていくようにしないと、本日の議論のような大きな混乱になると思います。
ですから、そのようなところには十分に配慮して、今後進めていくに当たっても、これを5類感染症にする理由は何なのかということを明確に整理して公開していくところは非常に重要なポイントなので、是非、今後、皆さんで気を付けてやっていくのは重要だと改めて発言させていただきます。
○渡邉座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の方から御発言はありますか。木下構成員どうぞ。
○木下構成員 ただいま御意見を賜り、誠に有難いと思います。会員様方の御意見も含め、学会の意見も含め、大変これは大事なことだと思っており、法的な対応をすることによってしかできないものが本当にあるのかということが、いつまでも残ってしまいます。やはり、私たちも気持ちとしては全く変わりませんので、何とか、最初から先生方が意図されたような、キャリアの実態の把握を何とかしたいのだということに対して、どのようにしたらできるかということについて具体的なことを考えていきませんと、ただ、この感染症はこのようになったのだということ以上に出て来ない可能性があるわけです。具体的に本格的なストラテジーがありませんと。
妊婦の場合に関しては、私どもが毎年どのような視点でということも含めて、調査してデータを出していくことは可能ですが、それ以外に、一般の方たちの中で症状があっても、なおかつ、診断が難しいというお話がありましたとおり、健康な人たちの中からキャリアをどのようにして見つけるかというのは、健診の項目に入れるなど、何かしなければ、理屈からいったらできないはずです。
ですから、いろいろな御議論がありましたように、献血の方たちは非常に限られているだけに、このデータが全国にそれをベースにして推計することも、かなりの無理があると想像できますし、そのようなことで全数を把握することに対して具体的に何ができるかということも、厚労省の、行政的な視点からも何とか考えていくことをしないと、法律ができてもなかなか進まないのではないかと思います。
もう1つは、保健所の問題や様々なポジティプになった後の対応が非常に不十分であるということは、これは、いつの場合でもそうですが、非常に希少で大事な疾患であるにもかかわらず、保健所等の施設ではそういったものに対して真剣に対応できるだけの、最初の半年、1年はいいかもしれませんが、その後、そこに来る人たちも少ないとなると、そんなに機能しないと。対策協議会というのは都道府県の中によくありますが、これもなかなか難しいというのが実態であります。機能的にどのようにやっていくかというのは、これはまた皆様方の知恵を出し合ってやっていくということなのだろうと思います。
今、学会で御指摘をいただいたような様々な問題は、この法律なしにどこまでできるのか、本当に法律がなければできないのかという所まで来た段階で、私どもも、本当にまた真剣に考えなければならない時期が来ると思います。前向きに私たちも考えているということは御理解賜りたいと思います。是非、この状況の中で、いろいろな議論をし、進めて総合対策として利することになっていただきたいと思います。
○渡邉座長 ありがとうございます。あと、御発言はありますか?齋藤先生、よろしいでしょうか。
○齋藤構成員 産婦人科と一緒になって、また御議論いただきたいと思います。
○渡邉座長 学会同士のコミュニケーションも含めて、あるいは厚生労働省とも一緒に話をしながら、良い方向を考えていくというような考え方で進めたいとは思っております。そろそろ、時間になりましたが、いろいろな御意見をいただき、本当に本日はありがとうございました。それぞれの立場や考え方の違いもあり、簡単に結論が出ない問題でもあります。
ただ、最初に少し申しましたように、基本的には感染者あるいは患者の方々にとって、どのような形が本当は望ましいのか、あるいは、その方たちに迷惑にならない、不利益にならないようにするにはどうしたら良いかということを前提に議論しておりますので、恐らく、コミュニケーションを深めていくことで適切な方針が得られると私は期待しております。本当に本日はありがとうございました。
それでは、ここから先ですが、本日はこれで協議会の議事は終了です。次の開催について事務局よりお願いいたします。
○加藤結核感染症課長補佐 本日はどうも御議論いただき、ありがとうございました。次回の開催については調整の上、事務局より御連絡させていただきます。
○渡邉座長 それでは、本日は以上で終了といたします。どうもありがとうございました。