2019年11月11日 第23回社会保障審議会福祉部会
1.日時
令和元年11月11日(月)16:00~18:00
2.場所
TKP新橋カンファレンスセンター ホール15D
3.出席者(五十音順)
- 石本委員
- 井手之上委員
- 井上委員
- 奥山委員
- 黒岩委員
- 鴻江委員
- 小林委員
- 佐保委員
- 新保委員
- 高橋委員
- 田中部会長
- 対馬委員
- 西島委員
- 平田委員
- 藤井委員
- 松原委員
- 松山委員
- 宮本部会長代理
- 三好委員
- 安河内委員
- 和気委員(代理出席:中村参考人)
4.議題
- (1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
- (2)介護福祉士養成施設卒業生に対する国家試験の義務付けについて
- (3)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
- (4)その他
5.議事
- (以下、各委員等発言内容)
○田中部会長 定刻になりましたので、ただいまより第23回「社会保障審議会福祉部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただき、どうもありがとうございます。
事務局より、新たに就任された委員の御紹介と、本日の委員の出欠状況について、説明をお願いします。
○高橋総務課長 事務局でございます。
私から、新たに就任された委員の御紹介をさせていただきます。
役員改選等を踏まえまして、内田芳明委員の後任として、鴻江圭子委員に、平川則男委員の後任として、佐保昌一委員に新たに当部会に御就任をいただいております。
鴻江委員、佐保委員におかれましては、それぞれ一言御挨拶をお願いいたします。
○鴻江委員 皆様、こんにちは。全国老施協の鴻江でございます。
昔、福祉部会におりましたけれども、社会状況が違ってきておりますので、私もしっかりと勉強させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○高橋総務課長 佐保委員、お願いします。
○佐保委員 連合で総合政策推進局長をしております、佐保といいます。どうぞよろしくお願いいたします。
○高橋総務課長 ありがとうございました。
続きまして、本日の委員の出欠状況について、申し上げます。
本日は、荒井委員、川井委員、沼尾委員、堀田委員、保井委員、和気委員より、御欠席の御連絡をいただいております。
なお、和気委員の代理といたしまして、一般社団法人日本ソーシャルワーク教育連盟副会長の中村参考人に御出席をいただいております。
また、松原委員からは、遅れて御出席されるとの御連絡をいただいております。
黒岩委員におかれましては、御公務の都合により、途中で御退席される予定です。
以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
カメラの方は、ここまでとしてください。
(報道関係者退室)
○田中部会長 続いて、議事に入る前に、資料の確認を行います。
事務局から、確認の説明をお願いします。
○高橋総務課長 資料の確認です。
お手元のタブレットに、事務局からの提出資料3点、資料1「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会の検討状況について」です。
資料2「介護福祉養成施設卒業生に対する国家試験の義務付けについて」です。
資料3「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会の検討状況について」の3種類を御用意させていただいております。
併せまして、委員から3種類の資料の提出をいただいております。
石本委員提出資料、黒岩委員提出資料、平田委員提出資料を保存させていただいております。
また、別フォルダに、前回の福祉部会の資料も格納されておりますので、必要に応じて御参照ください。
タブレットに御不備はございませんでしょうか。
以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
早速、議事に入ります。
資料1について、事務局より説明をお願いします。
○吉田生活困窮者自立支援室長 生活困窮者自立支援室長でございます。
資料1「地域共生社会推進検討会の検討状況」をご覧いただければと思います。
この検討会につきましては、前回の福祉部会で、7月の中間取りまとめの状況を御報告させていただきました。その後、2回ほど検討会を新たに開催しておりますので、そこでの資料等も使いながら、検討状況の御説明をさせていただきます。
資料1の1ページをご覧ください。検討会の設置の概要を記した資料でございます。
おさらいになりますが、「1 設置の趣旨」の2行目から3行目、当面の課題として、平成29年の介護保険法等改正法の附則に規定された、公布後3年後の見直し規定がございます。前回の介護保険法改正の中で、市町村には包括的な支援体制を構築していくという努力義務が課されてございます。それに係る見直し規定に基づきまして、包括的な支援体制の全国的な整備方策を検討することで、検討会を開催していただいております。
「2 主な検討項目」でございますが、次期社会福祉法改正に向けた、市町村における包括的な支援体制の整備のあり方などを、御議論いただいているところです。
2ページ目をご覧ください。7月に中間まとめをさせていただいたところで、福祉部会でも御報告をさせていただきました。中間取りまとめの概要が2ページ目にまとまってございます。
「1 福祉政策の新たなアプローチ」で、基本的な考え方を整理させていただいていますが、社会的な孤立や、関係性の貧困、リスクが言われる中で、1つ目の○でございますが、一人一人の生きるということが尊重され、複雑かつ多様な問題を抱えながらも、社会との多様なかかわりを基礎として、自立的に生きるということを継続していく、そういう支援の機能の強化が求められていることを御指摘いただいています。
そういう状況の中で、2つ目の○ですけれども、専門職の伴走型支援により、地域に個人をつなぎ戻していく包摂の視点が重要であろうということや、2つ目の・で、地域づくりが重要だということを言っていただいてございます。
3つ目の○で、従来、課題解決を目的とするアプローチということで、専門職の皆さんのお一人お一人に、課題解決に向けた取り組みを進めていただいていまして、それはすごく重要なことですが、一方で、関係性の貧困、社会的な孤立ということも言われていますので、それに加えて、つながり続けることを目的とするアプローチという機能の充実も求められるのではないかというまとめもいただいているところです。
こういう考え方に基づきまして、より詳細に仕組み、枠組みの検討を7月以降にしていただいているところです。
3ページをご覧ください。新たな包括的支援体制の全体像を整理した資料でございます。基本的には市町村が地域の実情に応じて、包括的な支援体制を整備していくという前提のもとで、3つの機能、断らない相談支援、参加支援、地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援、この3つを一体的に実施していく事業を創設していってはどうかという御議論をいただいています。
具体的には、図のところにも書いていますが、左下の①断らない相談支援で、属性にかかわらず、地域の様々な相談を受けとめ、みずから対応していくケース、また、必要な機関につないでいく、そういう機能を充実させていくということや、多機関協働の中核として、多機関の連携を強めていくような機能、そういうものを充実していこうということです。
②は右の方ですけれども、今、申し上げた、断らない相談支援と密接にかかわるところですが、社会とのつながりをしっかりと応援していく、支援していく、そういう機能が重要ですということです。
③は上側ですけれども、個別支援の前提としての地域づくりとして、地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援ということで、場の機能を充実させていこうということと、地域づくりをコーディネートする機能を強化していこう、そういう御議論をいただいているところです。
上の2つ目の◆のところで、全体の理念を整理させていただいていますが、相談になかなか来られない方もいらっしゃいます。そういう方に対しては、アウトリーチを含む早期の支援をしていこうということや、家族全体で問題を抱えられているケースもありますので、包括的に受けとめる支援をしていこう、また、本人の力を引き出す支援や、地域とのつながり、関係性をしっかりとつくっていく支援に取り組んでいこうという御議論をいただいているところです。
4ページ目でございます。具体的な事業の枠組みを整理させていただいております。
1つ目は、今、申し上げたとおり、市町村において、取り組んでいただく新たな事業を創設していこうということです。
2つ目で、この事業は、市町村の手挙げに基づく任意事業、実施を希望する自治体にやっていただく事業にしていくべきではないかということを、御指摘いただいています。
3つ目でございます。法的な措置でございますが、新たな事業の実施に要する費用に係る市町村の支弁の規定や、国による補助の規定を新設いたします。
4つ目ですけれども、その国の補助は、1本の補助要綱に基づいて、申請により実施していく。このことを通じて、制度別に設けられた各種支援を一体的に実施、あるいは一体的な実施を促進していこうという枠組みでどうかという御議論をいただいています。
具体的な一体的に実施する3つの事業の中身については、①②③と書いていますが、例えば断らない相談支援については、ここに掲げている介護、障害、子供困窮の相談支援に係る事業を一体的に実施していくことで、断らない相談支援として進めていくことになってございます。
下の方で、市町村が取り組みを進めるに当たって留意すべき点として、市町村の体制をしっかりと構築していただくための事業という観点もございますので、大きく3つの要素で整理をさせていただいています。
具体的には、新たな事業を行うに当たっては、市町村は、ニーズや資源の状況にあわせて、自分たちに合った包括的な支援体制の整備方針を検討し、事業を展開していただくということです。
2つ目でございますが、地域づくりの部分につきましては、既存の地域のつながりでありますとか、支え合う関係性を十分に理解した上で、行政からのお仕着せにならないように、住民の主体性、そういうものを中心において、活動を応援することを基本にするということです。
3つ目でございますが、一度整備した体制につきましても、関係者で振り返りや議論を行うことを通じて、柔軟に見直し、試行錯誤しながら改善していくことが重要ではないかという御指摘をいただいています。
5ページ目でございます。新たな事業について、個別具体的にイメージ図という形で整理をさせていただいています。
ご覧いただければと思いますが、例えば2つ目の○でございます。複雑・複合化している課題が存在している場合は、真ん中の青い人のマークで新と書いていますが、多機関協働の中核の機能を新たに充実させて、複数の支援者間を調整したり、地域とのつながりを構築する参加支援につなげていったりという機能を強化していくということです。
3つ目の○ですが、先ほど申し上げたとおり、相談になかなか来られない方もいらっしゃいます。アウトリーチの機能などもあわせ持ちつつ、継続的につながりながら伴走していく、そういう関係性を保ちながら、地域につなぎ戻していくことも考えています。これらを通じて、特定の窓口で捉えるということだけではなくて、市町村全体でしっかりと体制を組んでいただくことを考えてございます。
一番最後の○で、地域づくりにつきましては、地域づくりを通じまして、地域の中で誰もが多様な経路でつながって参加することができる環境を、しっかりと広げていくこともあわせて行っていく考えです。
6ページ目です。今、申し上げた新たな事業の機能を、既存との比較という形で整理をさせていただいています。
左上の断らない相談でございますが、今、申し上げたとおり、各分野の相談を一体的に実施していくことで、属性や世代を問わない相談をしていくということと、新を2つ付けていますが、多機関連携強化、専門職による伴走支援については、現在よりも機能を強化していく必要があるのだろうという御議論をいただいています。
右側の参加支援につきましては、断らない相談と一体的にしていく必要がありますが、各分野の事業で、介護保険の給付でありますとか、様々なメニューが整備されています。基本的には課題を解きほぐして、そういうメニューにつないでいくことですが、どうしても狭間の部分が出てきます。下の※の部分に書いていますが、既存制度を利用できる資源が存在しない狭間のニーズに対して、事業を柔軟に組み立てて、市町村が色々と事業を実施していく、そういうスキームにするべきではないかというお話しをいただいているところです。
左側で、地域やコミュニティによるケア・支え合う関係性の育成支援については、断らない相談と同様に、現状、補助制度が様々に分立していますが、高齢、障害、子供、困窮の分野の支援を一体的に実施し、多世代の場でありますとか、交流参加の場をつくり出しやすいような制度設計にしていくべきという御議論をいただいています。
7ページ目でございます。少し細かいですが、今、申し上げた高齢、障害、子供、困窮分野の事業を包括化していくということが、断らない相談支援と地域づくりの部分でございます。これについて、どういう考え方で各制度から財源を拠出していただくかということを大まかに整理している資料でございます。
1つ目の○ですが、市町村が地域住民のニーズや資源の状況に併せて、柔軟かつ円滑に支援を提供できる仕組みにしていくということです。
具体的には、2つ目の○ですが、属性を越えた支援を可能とするために、国の財政支援については、高齢、障害、子供、困窮等の各制度における関連事業の補助について、一体的な執行を行うことができる仕組みを検討していくべきではないかということです。
3つ目の○ですが、一方で、既存の各制度の基準額でありますとか、補助率が異なる現状がございます。事業費を積み上げていったり、配分していったりということが必要になりますので、その詳細は、今後、しっかりと検討していくべきというところです。その際と書いていますが、既存の制度からの拠出については、一定のルールに基づく機械的な方法による按分という形で、機械的な方法が重要ではないかという御議論をいただいています。
最後、4つ目の○のなお書きですけれども、国による財政保障のあり方ということにも、十分に配慮していくことが必要です。シーリング上、現在、義務的経費とされているものとしては、義務的経費として整理してはどうかということも御指摘いただいています。
8ページ目をご覧ください。ここは地域共生に資する取り組みの推進ということで、多様な主体が色々と参加いただきまして、プラットフォームを形成していくことが重要ではないかということを御指摘いただいています。地域共生に資する地域活動をプラットフォームの中でつくり出していく。住民はもちろんのこと、NPO、社会福祉法人、福祉関係事業者、自治体、また、福祉だけではなくて、経済、教育分野、多分野の連携の促進が必要だろうということで、多様な主体に参画していただくプラットフォームをつくっていくべきではないかという御議論もいただいているところです。
9ページ目でございます。今、申し上げたプラットフォームについて、福祉サイドとまちづくり、地域共生からのアプローチという形で、それぞれの立場から整理をさせていただいています。
福祉サイドからいうと、個別支援、相談支援の中から浮かび上がってくる地域課題などの解決を目指した地域づくりが、今でも取り組まれておりますし、まちづくり、地方創生からいうと、興味・関心から始まるまちづくりという観点、これを大きく見取り図的に整理しているものでございますが、そういう方々、今まで余り出会わなかった方々が出会い、学びのプラットフォームを通じて、出会い、学び合っていく。そして、地域に働きかけをしていくことが必要になってくるのではないかという御議論も、併せていただいているところです。
10ページ目をご覧ください。少し細かいですが、実施方法の詳細として、今、申し上げた大きなスキームを前提としつつ、こういうことに留意して取り組むべきではないかということで、御議論をいただいているものです。
1つ目の○につきましては、これまでのご説明のとおり、市町村が3つの事業を一体的に実施していく。それに対する国の財政支援の仕組みを見直すところです。
2つ目の○につきましては、市町村が新たな事業を実施するに当たっては、既存の取り組みや機関をしっかりと生かしていく、その前提で進めていくということですが、地域ごとに住民のニーズや資源の状況が異なることがございますので、圏域の設定や、会議体の設置は、できるだけ市町村が裁量を発揮しやすい仕組みとする必要があるのではないかということです。
3つ目の○ですが、プロセスを重視していくべきという御議論をいただいています。地域福祉計画の策定の枠組み等も有効に活用しながら、地域住民などとの意見交換を通じて、プロセスを重視していく。そういうことを通じて、包括的支援体制の構築を進めることが求められていると考えています。
併せて、国としてモデル事業を実施しておりまして、今、200自治体ぐらいに手を挙げて、実施していただいているところです。こういう取り組みについては、その内容を参考にするのはもちろんのこと、プロセス等も参考にすることが必要です。国としても、念頭に置くべき基本的な考え方とか、踏むべきプロセス等を示す必要があるという御指摘もいただいています。
最後の○でございますが、今、申し上げたような市町村の取り組みを後押しする観点から、様々な対人支援、自殺対策、居住支援、権利擁護など、色々と関係者のネットワークを構築して取り組んでいただいている対人支援がございます。そういうものとの連携ですとか、隣接の政策領域、地方創生、まちづくり、環境、教育など、地域に着眼した取り組みをしていただいています。そういうところとの連携が進むような方策を新たな事業において、位置づけることが必要ではないかといったことです。
2つ目の・で、地域福祉計画の記載事項として位置づけるといったことや、都道府県の役割が重要です。市町村の取り組みの支援、人材育成、ネットワークづくり、広域での支援や調整が求められる課題の対応、こういうものをしっかりと明確にするべきではないかという御議論をいただいているところです。
簡単ではございますが、検討状況を御報告させていただきました。
以上でございます。
○田中部会長 説明をありがとうございました。
資料1について、御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。井上委員、お願いします。
○井上委員 御説明をありがとうございます。
私は、基本的にはソーシャルワークの考え方に基づいた具体的な提案があって、大変すばらしいという思いで見させていただきました。
懸念される点は、専門性というか、高いレベルの担い手が求められると思いますけれども、今、障害分野で問題になっているのは、相談支援専門員なりの精神的な負担とか、いわゆる過重ではないかみたいなところが課題になっているところもありますので、その辺は、実施に当たって、担い手の人のメンタルの部分であるとか、そういうところを十分に配慮した制度設計であっていただきたいと思っているところでございます。どうぞよろしくお願いします。
○田中部会長 御指摘をありがとうございました。
西島委員、どうぞ。
○西島委員 日本社会福祉士会の西島と申します。
今、ソーシャルワークにかかわるスタッフの話も出たのですが、私どもも先に行われた人材確保専門委員会の答申を受けまして、社会福祉士養成カリキュラムの見直しもされたところであります。また、私たちは、職能自身として、現任の研修であるとか、ミクロのところは、実践できていると言われているのですけれども、地域社会というところがまだまだ弱いという声もいただいていますので、そういうところについての学び、また、その際のスーパービジョン体制を地域に構築するような取り組みをしているところであります。
何とかその取り組みを進める中で、しっかり社会福祉士の職能団体として、今、求められている役割等に対して、きちっと答えられるような人材育成に取り組んでいきたいと思っているところでございます。よろしくお願いいたします。
○田中部会長 決意表明をありがとうございました。
井手之上委員、お願いします。
○井手之上委員 大阪府社会福祉協議会の井手之上でございます。
今回、掲げられています、断らない相談支援、参加の支援、地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援、この3つの機能を一体的に実施するということですが、まずは市町村の積極的な支援をぜひともお願いしたいと思います。
総論的な問題と今回の制度設計に当たっての幾つかの御意見を申し上げたいと思います。総論的な点ですけれども、今日の議論とは離れてしまうのかわかりませんが、地域共生社会を考えるに当たりまして、災害支援が非常に大きな問題だと感じております。特に今年も豪雨災害等によって、多くの自治体で甚大な被害が生じましたが、高齢者や障害者、いわゆる災害弱者への避難行動、避難生活支援、これらが課題になると思っています。
地域共生社会の基盤が住民の支え合いとか、地域力の強化を図る上で、防災、減災、被災者への寄り添う支援のあり方、これらを一体的に考えることが重要だと思っています。そういった意味から、平時から緊急支援、生活再建まで、切れ目のない包括支援体制の確立が重要だと思っています。そのため、平時から住民の意識参加を高めるとか、身近な地域での支え合い、助け合い、支援体制づくりを進めることについて、何らかの形で明記していただくとありがたいということが1つです。
制度設計に当たりまして、1つは、4ページにあります、「市町村の包括的支援体制の構築」に書かれておりますが、新たな事業は市町村の任意事業として位置づけると整理していただいております。市町村で実施するところと実施しないところが出てくると思いますので、市町村格差が生まれないかという懸念がございます。どこの市町村でも、非常に重要で必要な事業であると思いますので、できたら必須事業、そういう位置づけができないのかという感想を持ちました。
断らない相談支援ですけれども、相談窓口が市町村にどの程度必要かという点です。圏域をどう考えるのかということが問題だと思います。市町村1カ所では、到底足らないと思いますし、住民の身近なところに設置されることが望ましいと考えます。例えばできるかわかりませんが、中学校区1カ所程度あってもいいのかと感じております。
実際に誰が相談に対応するかという点でございますけれども、的確に対応できる人材をいかに配置できるかということがポイントになると思います。総合的な相談への対応ということになると思いますので、かなり豊富な知識なり、経験をお持ちの方が必要になると思います。そういう意味では、相談員の位置づけを明確にするということと、きめ細かな研修、こういったものも必要だと感じます。
また、安定的な人員配置ということが大事でございますので、ぜひとも正規職員が採用できるような補助基準が設定されることが望ましいと思います。
規模の小さな町村レベルでは、取り組みが難しいということも起こると思っております。そういった意味で、複数の市町村によっての広域連携の取り組みが可能となるような仕組みなり、財政支援といったものを考えていただくことが必要だと感じました。
以上でございます。
○田中部会長 御提案をありがとうございました。
黒岩委員、お願いします。
○黒岩委員 ありがとうございます。
私の提出資料をご覧いただきたいと思います。
笑いあふれる100歳コミュニティの構築ということで、神奈川県の取り組みを御説明したいと思います。
「いのち輝く神奈川」とずっと言ってまいりましたけれども、命がかがやくために何が大事か、医療だけを充実するのではなくて、エネルギーから、まちづくりから、様々な連携をしなければならない、これが神奈川県の進める「いのち輝く」という政策であります。
国連のSDGs、これも全く同じような概念でありまして、神奈川県は、今、SDGs最先端の自治体として選ばれています。その中で、SDGsの流れをくむような政策を進めていることについて、御説明したいと思います。
超高齢社会の到来です。1970年、きれいなピラミッド型の人口構成でしたけれども、2050年は全く逆になります。1970年の前提のままいると、2050年には全てが崩壊するという危機感を我々は持っています。
そのために解決するキーワード、これが「未病」ということです。もともと中国の漢方の言葉でしたけれども、我々は現代風にアレンジをしました。
5ページをご覧ください。健康か病気か、白か赤かということで、我々は考えがちでありますけれども、健康と病気の間にこんなに明確な線があるわけではありません。
6ページをご覧ください。「未病」とは、白から赤、グラデーション、連続的に変化するものだということです。グラデーションの部分が未病です。真っ赤な病気になってから治すのではなくて、「未病」の状態は、どこにあっても少しでも白い方に持っていくことが重要です。予防と同じではないかと言われますけれども、予防は白赤概念でありまして、あらかじめ防ぐ、赤いほうに来るなということが予防でありますが、「未病」は全部つながっている、この点に大きな違いがあります。未病コンセプトを世界中に広げているところであります。
7ページをご覧いただきますと、「未病」を改善するために何が大事か、食、運動、社会参加ということが大事です。社会参加は非常に大事です。今日の議論にもありますけれども、我々がこの政策を進めるに当たって、この重要性を感じているところであります。SDGsのカードを当てはめると、まさにこれそのものがSDGsだということで、我々は、7月に国連のニューヨーク本部に行って、説明をしてまいりました。
8ページをご覧ください。横浜に若葉台団地という団地があります。1万5000人のマンモス団地です。ここの高齢化率の進み方が半端ではないです。47.8%です。ところが、要介護認定率を見ていただきますと、全国平均を大きく下回っております。しかも、10年間を見てみると、むしろ下がっているのです。
9ページをご覧ください。何故そんなことになっているのかというと、自治会活動が非常に盛んなのです。多世代交流の場を作ったり、子育てママさんを支援する会を作ったり、スポーツイベント、文化イベントなどの様々な企画を行っております。住みやすい団地、楽しい団地を作ろうとやってきたことによって、要介護認定率は下がっているという奇跡的なことが起きているということです。社会参加、コミュニティといったものがどれだけ大事かということを物語っているのが、若葉台団地だと思います。
10ページをご覧いただきますと、ME-BYOサミット神奈川といったものを2年ごとに行っておりまして、今度の水曜、木曜、これが3回目のME-BYOサミットになります。そんな中で、2年前のME-BYOサミット、2回目のところで大きく話題になったのは、グラデーションが「未病」、これはわかったが、そのグラデーションのどこにいるのかという指標ができないのか、ということが問題提起されました。
11ページをご覧ください。そのことによって、WHOと神奈川県、そして、神奈川県は、東京大学とも連携しているのですが、ここで2年間かけて、行ったり来たりしながら、未病指標の構築を目指して、頑張ってやってまいりました。それが今度の水曜、木曜に発表される予定になっております。それを先出しで御説明いたします。
12ページをご覧ください。未病指標のイメージです。健康から病気、100から0といったときに、WHOそのものが決めている人間の内外的な5つの要因があります。活力、認知能力等々です。これを4つの分類に分けます。生活習慣関連、認知機能関連、生活機能関連等々に分けて、それぞれのグラデーション、どの辺にいるのかということを簡単に調べるような数値目標を出してまいります。
それを総合的に未病指標の計算式がありまして、コホート研究に基づくそれぞれの要因がどのように働くかということの係数を掛けて、こういう計算式によって、最終的には非常に簡単な数字、あなたの未病指標は48ですと、明確に出てくるわけです。これで頑張ったら、例えばライフスタイルを改善した場合には、あなたの未病指標が48から70になりましたとか、それがだめだった場合には、35になってしまいましたとか、見える化をしてくるということで、こういうことがWHOと東京大学が連合した形で、今度、発表されます。非常に画期的なことになると思っているところであります。
今回、おまとめいただいている様々な政策はすばらしいと思いますけれども、指標をどのように設定するのか、あらゆる政策をやってきたときに、指標がどう動くかということ、それがあると、政策が一気に前へ進んでいくのではないかと思います。今まで確たる指標がなかったわけですが、今回出てくる未病指標は、完成形ではありませんけれども、第一歩になる重要な要素になってくるのではないかと、私たちは信じているところであります。
13ページをご覧ください。我々は一体何をゴールにしているのかといつも気にしています。医療のゴールは何なのか、福祉のゴールは何なのか、SDGsのゴールは何なのか。我々は、「いのち輝く」だと思っておりまして、これを海外にも発信しようということで、今は「Vibrant“inochi”」という発信をしています。普通、命はLifeと訳します。Vibrantは、Lifeとはちょっと違うのです。
14ページですけれども「Vibrant“inochi”」は、Well-being、Positive Spirit、Purpose in Life、Good Community&Environment、Full of Laughter、Healthy Longevity、こういうイメージが重なって、そして、それがダイバーシティーの上に乗っている木のようなものです。そして、みんなが笑いあふれて、100歳になってもみんな「Vibrant“inochi”」で笑いがあふれている、こういうものを我々がゴールとしているのですと、うたっています。
死なない社会、病気がない社会を作るのは無理ですが、「Vibrant“inochi”」の社会を目指していく、そのために福祉もあり、医療もあるということの位置づけをしていきたいと考えているところであります。
以上です。ありがとうございました。
○田中部会長 御紹介をありがとうございました。
中村参考人、どうぞ。
○中村参考人 失礼いたします。参考人ですが、御発言の機会をいただき、ありがとうございます。
私どもはソ教連と申しまして、社会福祉士、精神保健福祉士の養成校の集まりで、全国の9割の学校が加盟しております。その中で、6月の末ですけれども、厚生労働省から、新しいカリキュラム案が示されております。今日、中間まとめの内容をお聞きして、地域共生社会の実現とか、包括的な支援体制ということが、今回のカリキュラムの改定の柱になっているように考えております。1年半後の実施ということで、準備が進んでいると伺っております。
中間取りまとめには、社会福祉士、ソーシャルワーカーとかという名称がそこに出ているわけではありませんけれども、今後の教育を考えたときに、新しい養成教育、人材教育ということで、重要な点だとお聞きしております。
1点だけなのですけれども、「断らない相談支援」という、非常に重要な言葉だと思ってお聞きしましたが、さらにこのあたりを具体的に誰がどこでどんなふうにするのかということをお示しいただくと、新しい養成教育、あるいは今後の人材養成に生かせると思っております。
加えて、黒岩委員のお話を伺って、委員がおっしゃったようなSDGsのことも含めて、新しい福祉教育の在り方として、若い人たちに教えることができたら、またいい人材ができるのではないかと思っております。そういうことも含めて、参考人で本当に失礼ですけれども、御発言させていただきました。ありがとうございました。
○田中部会長 今後の検討への課題を提起していただいたと思っております。ありがとうございます。
藤井委員、お願いします。
○藤井委員 1つの柱になっております参加支援ということで、先ほど議論がございましたけれども、この中では、ICFのパーティシペーションに当たるような、生きがい、あるいはその人が参加することに意味があるという部分と、参加支援をして、資源として有効に使うという協調があると思うのですが、災害という話があったときに、先般の台風で代表されますように、非常に日常化しているということと、広がりが大きくなってきている中で、私どもも授業を弾力的に活用して、どんどん学生を参加させるようにということで、先生が引率して行かれているようなケースもあるのですけれども、市町村では、町村限りという参加、あるいは県内限りという参加があるようです。
県外から行ってみると、やることが余りなくて、ジュースをもらって飲んだりしています。ところが、ちょっと手伝っていると、前のうちは支援が必要ではないかと見えて、そこを通っている方に聞いたり、民生委員さんに聞いたりすると、あそこには老夫婦がいるはずみたいな、そういうケースがあったことを現に聞きました。
何が申し上げたいかというと、1つは、外から入ってくる方、ボランティアは、非常に機運が高まっているのですけれども、こういった方々を地域内で活用するのは、まだ抵抗があります。これをいかに活用するか、参加支援するかというのは、非常に重要なテーマではないかと思うのです。それがボランティアセンターの設置でも、市内限り、町内限り、あるいは県内限りが目立つという現状を何とかできないか。
現に足りているのだというお話しもあったりするのですが、どうもそうではない面もあるので、参加支援は、外部からを含めますと、内部のニーズをきちんと拾えているかということにもつながるのだろうと思います。
災害だけではなくして、興味から広がる支援もあったと思うのですけれども、この中でいうと、地域創生ということで、色々な補助金がついているせいで、うちのゼミでも半年、1年、休学をとって、田舎に飛び込むという学生がおります。話を聞きますと、地域の中でどのように受け入れられるかというと、色々な形があるようでございます。いずれにせよ、今の中では、地域内の参加支援ということも、地域外の参加支援も両方読めるようにはなっているのですけれども、地域外の参加支援と地域内の参加支援は、ちょっと意味合いが違い、現在の多くの地域での地域外の参加支援は、まだまだ発展の余地があるのではないかと思います。
その際に、地域外の参加支援を促すような事業のあり方という面で、少し御検討をいただければと思います。特に地域創生とか、日常化する災害といったような面では、重要ではないかと思います。
以上です。
○田中部会長 御指摘に感謝します。
ここまでのところで、事務局からまとめて発言があれば、お願いします。
○吉田生活困窮者自立支援室長 色々とありがとうございます。今後の議論の参考にさせていただきたいと思います。
1点、断らない相談の部分で、支援員の専門性や、職員の方々、専門職の方々のメンタル、研修についての御指摘を複数の方からいただきました。資料の20ページ目に、断らない相談支援をもう少し明確化したほうがいいのではないかという御指摘もいただいていますが、我々のやっていただいている検討会の中でもそういう御議論がありまして、20ページ目のスライドのような形で、事業スキームと基本的な考え方というものを示させていただいてございます。
今日の御指摘等を申し上げれば、基本的な考え方の下の○の2つ目などに、もちろん○の1つ目で、事業を一体的に実施し、属性にかかわらず、制度の狭間とか、世帯の課題などの複合的、分野横断的な課題も包括的に受けとめていく、これは市町村としてということでございます。
各相談機関で見たときには2つ目の○で、しっかりと相談を受けとめていただくことは必要ですけれども、自ら対応できない場合は関係機関につなぐ、そういう役割を有していくことが前提でございます。
したがいまして、特定の相談機関や窓口が全てを丸抱えするということではなくて、多機関協働のところも強化していくというお話しもさせていただきました。適切に多機関協働を進めて、市町村全体でチームによる支援をしていくことが極めて重要だという御指摘もいただいておりまして、そういう方向性で議論が進んでいることでございます。
これに加えまして、もちろん研修でありますとか、ネットワーク、支援員の方々の負担軽減のような話は併せてございまして、総合的な形でより議論をさらに進めていただくような形になってございます。
以上でございます。
○田中部会長 ここで検討会の座長でもある、宮本部会長代理に御発言をお願いします。
○宮本部会長代理 6人の委員、あるいは参考人の皆さんから、大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。
吉田室長からも御紹介があったように、今、議論はまさに佳境に入りつつある段階でございまして、前回、中間報告についての御報告をしたところですが、早いものでそろそろ最終まとめの段階に入ってございます。そういう意味で、各委員の御指摘は、大変示唆的でございまして、井上委員からは、まさに地域共生社会は、ソーシャルワークの原点であるというお話しがございました。
同時にいわば過剰な負担を強いるものではあってはならない、そのとおりだと思っていまして、「断らない相談」という言葉ですけれども、業務が過大なのに断ってはいけない、こういう形になってはいけないと思っております。断る必要のない、つまり手元に一通りのツールがあって、制度に横串が刺さっているということで、色々な課題について、断る必要のない、そういう意味では、支援者が達成感を味わうこともできる、そして、確実にその成果につながっていくような支援、そこがポイントなのだと思います。
西島委員からも、まさに地域社会についての学びのきっかけになる、そのとおりだと思います。言ってみれば、ソーシャルワークでまちづくりといいますか、まさにソーシャルワークが地域の活性化、まちづくりにダイレクトにつながっていくという回路をつくっていくことが、今度のビジョンなのだろうと思っております。
井手之上委員からも、非常にたくさんの有益な御指摘がございまして、まさに災害社会に日本が突入してきた中で、障害者福祉、高齢者福祉と並んで、いわば被災者福祉というべきものが非常に重要な視点になってきていると思います。まさに被災者が旧来の縦割りでは対処できませんし、復興までつながる切れ目のない継続的な支援が必要とされる中で、地域共生社会のビジョンと被災者福祉は、まさにぴったり重なり合うということだと思っております。
私も最終的には井手之上委員がおっしゃるように、必須事業にしていく必要があると思うのですけれども、当面は、任意事業で色々な試行錯誤を重ねて、どの自治体で行っても間違いのないフレームができ上がってから、必須事業に移行していくということになると思っております。
窓口は色々あり、それはそのとおりであって、断れない相談支援は究極のワンストップみたいな、上からの号令でどこかに作って、そこで引き受けるとか、そういうことでは決してないと思うのです。まさにケアマネジメントの考え方がそうだったと思いますけれども、ケアマネジャーはたくさんいて、それぞれのケアプラン、当事者がこれとは相性がいいというところに行っていいという、それと同じような考え方で、窓口もたくさんあって、相性のいい窓口、どちらかというと、余り相性がよろしくない窓口は当然出てくるだろうと思いますので、どこへ行っても背後ではつながっているという形こそが求められてしかるべきなのだろうと思っています。
黒岩委員からも、未病について、大変示唆的な御指摘がございまして、まさに健康か、病気か、同じように健常か、障害者か、あるいは老いているか、若いか、そういう二分法が終わった時代に入りつつあると思うのです。大多数が中間ゾーンに属している時代の中で、健康、健常、若い人が病気、障害、老いた人を支えるという時代ではなくて、中間ゾーンでみんなが力を発揮できるという、そこを支え切るのが、地域共生社会の考え方なのではないかと思ってございます。
平均寿命、健康寿命といいますけれども、さらにその先に黒岩委員の御指摘を少し触れさせていただくと、活動寿命とでも言うべきものがあって、平均寿命の中で健康寿命を決め、健康寿命の中で活動寿命を決めるのではなく、これは逆であって、活動寿命の長さが健康寿命を決め、健康寿命の長さが平均寿命を決めていくという回路をきちっと確立していくということなのだろうと思います。
中村参考人からの御指摘、断らない相談支援についての御指摘は、先ほども申し上げたとおりであります。
藤井委員からの参加支援についてですが、外部からの参加支援というお話しがございまして、まさにそこも大事な視点だと思います。今、災害が起きると、社協が災害ボランティアセンターを運営して、それでてんてこ舞いになっている現状があります。そういう状況では、ボランティアの側も納得し切れないし、いわばそれを受け入れる側もボランティアを生かし切れていないと思ってしまう。ただ、社協任せにするのではなくて、そこできちっといかにニーズを把握して、適切な活動の機会が提供されるかというところも、地域共生社会づくりの中から編み出していかなければいけない手法なのだと思います。
引き続き、皆様からの御指導、御意見を伺いながら、最終報告に向けて、座長なりに尽力していきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いをいたします。
○田中部会長 地域共生の今後のあり方についてのご発言、ありがとうございました。
議題1については、ここまでといたします。
続いて、資料2について、事務局から説明をお願いします。
○川端福祉人材確保対策室長 福祉人材確保対策室長の川端でございます。
私からは、資料2の介護福祉士養成施設卒業生に対する国家試験の義務付けについて、御説明申し上げます。
本体資料は1ページから6ページまで、参考資料は8ページから14ページとなってございまして、参考資料で適宜補いながら説明申し上げます。
1ページ目をお開きください。今回、議題となっております、介護福祉士国家試験の義務化に関する経過措置導入の背景の資料でございます。介護福祉士の資格取得につきましては、大きく3つのルートがございます。下段の図をご覧いただければと思いますが、実務経験ルート、養成施設ルート、福祉系高校ルートがございます。
このうち養成施設ルートにつきましては、従来、養成施設を卒業した方につきましては、卒業と同時に介護福祉士の資格が付与されるという取り扱いでしたけれども、平成19年の法律改正において、介護ニーズの多様化、高度化に対応できる質を担保し、社会的な信頼と評価を高める観点から、資格取得方法を一元化し、平成24年度より、全てのルートにおいて、国家試験の義務付けがなされることとされました。
一方、施行までの間、新たに医療的なケアなどの教育内容の追加や、介護人材確保の困難な状況等を踏まえ、養成施設卒業者に対する国家試験義務付けの施行が延期されてきたところでございます。
その後、平成28年の法律改正において、平成29年度から養成施設卒業者に受験資格を付与し、5年間をかけて漸進的に国家試験義務付けの導入が図られることとされたところでございます。現行規定によりますと、令和4年度から完全施行の予定となってございます。
2ページ目をお開きください。養成施設ルートの国家試験義務付けの完全導入に向けたスケジュールになります。平成29年度卒業者から国家試験の義務づけの手当てがなされましたけれども、平成29年度卒業者から数えて5年間、すなわち、令和3年度卒業者の方々まで、仮に国家試験に未受験、あるいは不合格であったとしましても、その後、5年間は、介護福祉士の資格を付与するという経過措置が手当てされてございます。
5年の間に国家試験に合格する、あるいは原則卒業後5年間、連続して実務に従事されている方につきましては、介護福祉士の資格がその後も付与されることになります。
令和4年度卒以降の方々は、こうした経過措置の対象とはなりません。
参考資料の8ページ目をご覧ください。本スライドは、養成施設卒業者への国家試験義務付けの効果等に関する調査研究をまとめたものでございます。
スライド下段の左側の養成施設ルートを卒業されて、介護福祉士になった方々への調査では、8割以上の方が国家試験受験によって、介護に関する幅広い知識が身についた、専門職としての自覚・心構えが高まったといった回答、また、右側ですけれども、養成施設の教員への調査では、7割以上の方が国家試験の導入によって、学生の自信、資質の向上、よいプレッシャー、地位の向上に効果があるといった回答など、おおむね義務化への好意的な回答が寄せられております。
参考資料の9ページ目をご覧ください。このスライドは、介護分野における人材確保の状況と労働市場の動向になります。
左側の図の有効求人倍率をご覧ください。少子高齢化も相まって、緑色の全産業の有効求人倍率は、平成30年で1.45倍、介護分野におきましては、青線ですけれども、3.90倍となってございます。
10ページ目をご覧いただければと思いますけれども、都道府県別の有効求人倍率を見たものでございます。東京都における本年8月現在の7.70倍を初めといたしまして、大都市圏を中心に極めて高い倍率、あるいは全国で見ても軒並み2倍を超えております。裏を返せば、人手不足の状況がうかがえるところでございます。
関連資料として、資料の11ページが今後の介護人材の必要数の推計、12ページがこれまでの介護職員数の推移となってございます。説明は割愛させていただきますので、適宜御参照いただければと思います。
本体資料に戻りまして、3ページ目をご覧いただければと思います。こうした中、ここ数年で介護人材の受け入れの仕組みが変わってございます。国内における介護人材の確保に加えまして、現在では、4つのルートにより、外国人介護人材の受け入れの仕組みが整備されております。
1つ目は、平成20年より順次導入されております、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定、EPAに基づくルートです。
2つ目は、左から2番目ですけれども、平成29年9月より導入されております、専門的・技術的分野の外国人の受け入れを目的とする在留資格「介護」の創設です。
3つ目は、同じく平成29年、これは11月からでございますけれども、技能実習による受け入れ制度の創設です。
最後に、本年4月より導入された、人手不足対応のための一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れの仕組みである、特定技能制度の創設が行われてございます。介護分野における外国人材の受け入れの仕組みが、ここ数年で大きく変化しているところでございます。
資料の4ページ目をご覧いただければと思います。介護福祉士養成施設の定員の推移になります。少子高齢化の影響も相まって、養成施設の定員及び定員充足率は減少傾向となっている一方で、ここ数年で入学者に占める外国人留学生の人数、割合ともに急増していることがうかがえます。平成19年度591名、平成30年度1,142名、令和元年度2,037名となってございます。
5ページをご覧ください。これは介護福祉士国家試験の実施状況になります。合格率の推移を見てみますと、足元、平成30年度で合格率が73.7%と、全体の傾向として、合格率が上昇傾向と捉えることができると思います。
6ページ目をご覧ください。他方、養成施設卒業生の合格率の日本人と外国人別の状況をお示ししたものが、このスライドになります。養成施設卒業生への国家試験義務づけがなされて以来、平成30年と平成31年の2回の試験が実施されておりますけれども、その状況を見ますと、日本人につきましては、平成30年で89.4%、平成31年で90.9%と、平均と比べても高い合格率となっている一方で、外国人につきましては、平成30年で41.4%、平成31年で24.7%と低い状況となっております。
最後に、参考資料の13ページと14ページをご覧いただければと思います。介護人材につきましては、これまで専門性が不明確で、役割が混在し、将来展望が見づらく、早期離職につながる面積も小さいまんじゅう型から、専門性の高い人材を育て、かつ人手不足が極めて深刻化をする中で、潜在介護福祉士の方々、さらには新たな受け入れ制度が整備された外国人の方々など、多様な方々に参入していただく、面積も大きい富士山型を目指して、総合的な介護人材の確保対策を進めております。
こういった中での専門性の向上を図りつつ、人手不足状況下への対応を行うといった状況を踏まえ、本議題となっております経過措置のあり方について、御議論いただければと存じます。
事務局からは以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
それでは、資料2について、御意見、御質問をお願いいたします。鴻江委員、お願いします。
○鴻江委員 全国老施協でございますけれども、老人福祉施設は、2015年、介護保険制度改正の中で、非常に重篤な方、要介護3以上の原則入所となりましたので、非常に医療ニーズの高い、あるいは認知症でも、BPSDの大変に顕著な方たちが入所してきております。当然その延長上に看取りがあるわけですけれども、看取りについても、全老は推進をしております。
そうした中で、看取りになりますと、医行為ができなければならない状況になるわけですけれども、医行為については、今、50時間の座学に出すのですが、施設が出せない状況になってきております。そうした中で、養成校自体は、50時間の座学を経て、現場の中で実技をやっていくことになっていると思いますが、こういったところで、できたら養成校の現状維持、できるだけ狭くしないでいただきたいというのが、全国老施協の意見です。
確かに介護福祉の資格そのものの評価価値を高めていく必要は十分にあると、私個人も思うのですけれども、現状を見ますと、そういった事情であったり、それから、地域包括ケアシステムの推進といいながら、ショートステイのベッドを減らさざるを得ない状況であったり、あるいは訪問看護師とはまた違うのですけれども、地域の中で認知症の方たちが大変増えていく、その困難事例を解きほぐすというのですか、ほぐしていく役割を担っているヘルパーさんみたいな、訪問看護師だけ非常に増やしてくださいということを盛んに言われるのですけれども、生活そのものは、介護士がいなければ、介護士でなければ突破できないところを我々はたくさん見てきております。少しでも困難事例の介入をしながら、色々なサービスにつないでいける役割を持っていると思いますので、そういった中で、できましたら、介護養成校の資格等については、もう少し経過措置を延ばしていただければ、大変ありがたいと思っております。
それと、外国人の人材の在留資格等にも影響すると思いますので、要望として上げたいと思います。
以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございます。
佐保委員、お願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。
1点、事務局にお伺いしたいのですけれども、准介護福祉士の数というのは、例えば日本人、外国人、一体どれぐらいおるのかということをお伺いしたいと思います。
○川端福祉人材確保対策室長 准介護福祉士につきましては、まだ発生しておりませんで、今、人数として、どれぐらいいるかどうかというデータはございません。
○佐保委員 すみません。私の質問がずれていました。ありがとうございます。
准介護福祉士につきましては、介護人材の確保とその資質向上を目指すという、当時の社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正の趣旨と若干違うのではないか、沿っていないのではないかと思っております。資格格差とか、介護現場に混乱が起きかねないということから、連合はこれまで一貫して反対の立場をとってまいりました。
私も国家資格を持っておりますが、個人的には、落ちたことをもって資格を付与するというのはいかがなものかと、正直思っております。介護サービスの質の向上のためにも、介護労働者の専門職としての地位の向上、労働条件の向上のためにも、介護福祉士の資格取得の早期一元化を求めたいと思っております。
以上です。
○田中部会長 西島委員、どうぞ。
○西島委員 日本社会福祉士会の西島です。
資格は違うのですけれども、私どもも社会福祉士という、国家資格の職能団体であります。例えば事務局からも説明がありましたが、8ページのところで、資格取得方法の見直しによる効果というところで、調査の結果、国家試験義務付けの効果があるということが出ております。先ほど富士山型を目指すというお話しがあったと思うのですが、あの頂点を目指すモチベーションをどう維持していくのかということも、とても大事なことだと思います。
私も介護事業の経営をさせていただいていますし、人材確保が難しいということは本当によくわかっていて、困っているのですけれども、ただ、人材確保の問題と専門職の資質の向上の問題というのは、可能な範囲で少し切り離した形でできないかということです。
准介護福祉士はまだ誕生しておりませんが、今後、誕生してきたときに、どうなのでしょうか。今、頑張って介護福祉士をとった方、現場でリーダー職を目指して頑張っている方、リーダー職をされている方が、試験を落ちても国家資格が取得できるというところについて、何か明確な区分けをしないといけないと思います。
介護現場は、今、まさにこの国を支えるために、外国人だけではだめだと思います。やはり日本人のリーダー格が必要だと思いますので、そのためには、ここのところは非常に大事ですので、色々な事情があるとは思いますが、ずっと延ばしてきていますけれども、できるだけ早く本来の形ができることが望ましいのではないかと思って、発言させていただきました。
以上です。
○田中部会長 御意見ありがとうございます。
小林委員、お願いします。
○小林委員 介養協の小林です。よろしくお願いします。
経過措置について、私ども介養協の意見を少し述べさせてください。
経過措置が平成28年3月に設立しました後、平成29年9月に在留資格「介護」が創設されたことによって、資料2の4ページに外国人留学生の入学者数が急激に増加しました。今年の入学者数は、2,037人です。入学者全体の29.2%を占めています。貴重な外国人留学生の人材育成に、教員は日々奮闘しています。また、介護福祉士養成施設の運営においても、外国人留学生は貴重な存在になってきております。
一方、外国人留学生の介護福祉士国家試験合格率は、資料2の6ページにありますように、日本人の合格率が約9割であるのに対して、外国人の合格率は3割または4割程度と低い状況になっています。そのため、多数の不合格者がいる状況です。現在の制度では、経過措置が終了した後、国家試験で不合格となった外国人留学生の場合、在留資格「介護」を取得できませんので、母国へ帰るなどしなければならなくなります。
その人数ですが、入学者や不合格者率などから推定すると、日本の介護施設で介護業務に従事できない留学生は、毎年1,000人以上となって、職場においても、これだけの人材不足が累積していくと想定しております。
経過措置を延長するかどうかについての意見を述べさせていただきますと、介護福祉士の質の向上と維持は、もちろん養成する側にとっては、一番重要な使命だと考えております。
一方、経過措置ができた後に、外国人留学生が急激に増加した点、施設の方からは、卒業した外国人留学生は、福祉人材として重要な存在であり、ぜひとも確保しておきたいという希望をお寄せいただいている点、また、介護福祉士養成施設は、入学者が減少し、経営的に厳しい点など、現在の状況を総合的に勘案し、介養協としては、経過措置の延長をお願いしたいという立場です。
また、経過措置を延長する、しないにかかわらず、外国人留学生の国家試験合格率を上げることは、重要だと考えております。そのためには、原因の分析や日本語学習の充実など、対策や方法を立てていくことが必要です。そこで、合格率を上げるための対策への支援をぜひお願いしたいと考えております。よろしくお願いします。
○田中部会長 石本委員、お願いします。
○石本委員 ありがとうございます。
介護福祉士会の石本でございます。
提出しております資料に基づいて、発言をさせていただきます。
質の高い人材養成の必要性、質の高い介護サービスをいかに担保していくか。いわゆる労働人口が減っていく中においても、介護サービスの質は落とさない、むしろ上げていくということを考えていくべきだと思います。私ども職能団体としましては、平成19年の社会福祉士及び介護福祉士法改正のとき以来、一元化の延期が続いておりますが、国家資格の一元化、これは予定どおり行われるべきというスタンスでございます。
国家資格というのは、国民に寄与するための資格だということを、常々思っているところでございます。介護を必要とする国民のために、貢献していくスキルを身につけていくのが介護福祉士であり、そのためには、合格してもしなくてももらえる資格では、質の平準化は図られないと思います。先ほどの御説明の中でも出てきた言葉ですが、資格に対する社会的信用や価値は伴わず、また、国家資格を軽々に扱うというのは、正しい姿ではないと思っております。
当然現場で人手が足りないということ、外国人の方々の現状が以前と変わってきているということは、重々理解していますが、本質的な議論、資格に対する価値をどうつけていくのかということが議論されない中で、経過措置期間を延期する、しないを議論するのは、いささかどうかと思います。国家資格である介護福祉士に責任と役割を明確に位置づけていくことが、介護福祉士や介護職という職業に対して、人が集まってくる流れにつながるのではないかと思っております。
事務局からの提出資料にもございます、富士山型のイラストの中では、福祉部会で最終的に御報告させていただいた、中核的かつリーダー的役割を介護福祉士が担うという方向が示されているところでございます。実際、現場においては、多くの介護福祉士がユニットリーダーであったり、主任であったりとか、実行上の役割を担っていらっしゃると認識しております。しかしながら、制度上、役割が明確に位置づいていないが故に、実行上は担保していても、残念ながら、本質的な価値がまだついていないところが、現状としてあるのではないかと思いますので、ぜひともそういった本質的な議論を具体的に進めていただくということを、我々は望みたいということが1点です。
それと、資料の最後につけております、准介護福祉士についてです。経過措置の問題と准介護福祉士というのは、セットで考えなければいけないところだと思いますが、職能団体としては、准介護福祉士というものが仮に発動された暁には、現場の混乱は免れないと思っております。
ただ、他方で、これはEPAという二国間協定の中で、外交も関係する話でございますので、簡単な話ではないというのも重々理解しておりますが、介護福祉士と、准介護福祉士というのは、何がどう違うのかなど、具体的な議論が、准介護福祉士が位置付けられてから、宙ぶらりんの状態で来ているような気もしますので、しっかりと議論を進めていく必要があるのではないかと思います。
以上です。
○田中部会長 ありがとうございます。
対馬委員、どうぞ。
○対馬委員 私は日本の介護福祉士が不人気なのは、社会にその専門性が認められていないからではないかと思います。養成校を出た後、国家試験を受けずに資格が付与される仕組みが、30年以上経った今も現存していることが、介護福祉士の地位が上がらないことに大きく影響していると考えます。
現在、私どもの法人には39名の外国人の技能実習生が働いています。そのうち、中国から来ている実習生は母国の看護師資格を持っています。むろん、中国でも看護師として就職し、それなりの給料をもらえるのですが、彼女達は、アジアで最も質の高い日本の介護技術を学んで、3年後、5年後、中国に帰って、介護のリーダーとして活躍をしたい、その証として、日本の国家資格の介護福祉士をとりたいと願っています。中国の技能実習生は、日本の介護福祉士の国家資格は中国の看護師資格と同等のものだと考えています。国家試験を受けずに安易にこの資格を付与することはやめるべきであり、計画どおり、令和4年から国家試験を義務付けし、一本化するべきと考えます。
それから、准介護福祉士については、当時私は介護福祉士の見直し検討委員会のメンバーの1人でありまして、フィリピンとの経済連携協定という外交的要素も含んだ中で制度設計せざるを得なかったことは承知をしています。現在、准介護福祉士がゼロだということであれば、将来廃止するべきだと考えます。日本の介護の国家資格は1つ、「介護福祉士」のみにするべきだと考えます。
以上です。
○田中部会長 ありがとうございました。
藤井委員、どうぞ。
○藤井委員 本年10月から特定処遇改善加算が始まりまして、経験・技能のある介護職員にきちんとお金をつけるという政策が始まりました。国家資格と10年の経験というもので、給与面の裏づけのあるキャリアをつくっていこう。処遇改善加算というのは、経営の自立性を阻害するもので、基本的には賛成ではないのですけれども、現状ではそういったものができていかないという意味では、過渡的にこういった介護職員のキャリアを給与面から保障するという仕組みは、必要だと思っております。
午前中、田中部会長が委員長の介護事業経営調査委員会で、そういった議論をしてきたのでございますけれども、頂を高くして裾野を広げるというのは、厚労省が言う前に私が言っておりまして、文献にも書いてありますので、私が言った責任もあると思って言うのですが、介護福祉士を頂の高いどの位置に位置づけるのか、麓の広いところに位置づけるのか、結局、そういう議論なのだろうと思います。介護福祉士で終わりではございません。国家資格というのは、それをとって、何か優遇な措置があるということではなくて、とって以降、将来をかけて勉強していただく、実務を積んでいただくということなのだろうと思います。
その点で、参考になりますのが、今日の資料の5ページなのですけれども、これは実務者ルートの話でございます。御案内のように、実務者ルートというのも、実務研修で始まりまして、大変な勢いで受験者が減ったということが、平成28年度に示されております。非常に大きな問題で、制度改定が問題なのではないかという意見があったぐらいでございますが、それ以降を見ますと、合格率が10ポイントぐらい上がっている。これは実務研修の効果ということもございますし、それだけきちんと勉強しようと思う人たちが受けたということで、10ポイント上がったということがあろうかと思います。
もう一つは、じわじわと受験者数及び合格者数が増えている。平成30年度の合格者は、平成20年度を超える水準で、ちょうどサブプライムローン、リーマン・ショックということで、介護に関して、少し人気が高まるといいますか、相対的に介護に入ってきた時代の7万人には至りませんけれども、7万人弱に来ているということでございます。これはハードルが高いということで、一旦は落ちますけれども、むしろそれを目指す人が増えていると見えるのではないかと思っております。
養成校ルートというのは、先ほど介養協さんからお話しがありましたように、養成校及び教員のインフラをいかに維持するか、これは非常に重要なことだろうと思います。現状では、外国人の方々の在留資格「介護」というものの入り口という意味でも、非常に重要な存在なのだと思いますけれども、今年、特定技能ということで、介護が設置されました。まだ始まったばかりなので、どう運用されるかという点はあるのですけれども、今の時点で見ておりますと、養成校を卒業された外国人の方が、特定技能の介護を得るということは、ほとんど抵抗がないのではないかと思います。先ほどの准介護福祉士の議論にも通じるのですけれども、特定技能の介護というところにスムーズにいけるということであれば、御心配なさっておられる卒業生が帰らなくてはいけないということがなくなる。むしろ介護福祉士という資格をとれる、資格の位置づけの意味がある。
私は、厚労省の別の研究委員会で、技能実習生の方が勤めていらっしゃるところにインタビューに行ったことがあります。今年に入ってからでございますけれども、中国人の方でございます。何故日本に来たかというと、日本の介護技術が高いので、勉強したいので来たという、大変真面目な方でいらっしゃいまして、3年後、もう少しいたい。何が夢かというと、日本の介護福祉士をとりたいと答えていただきまして、そんなこと、雇った側は全く考えていなかったものですから、その場で雇っていた側が、実務者研修、中国人の方に対応するのは難しいから、我々でどうやって組むかといった話が出るぐらい、技能実習の介護で入っていらっしゃる方々が、全員とは言いませんけれども、かなりの割合で、日本の介護技術が高い、そして、介護福祉士という資格にチャレンジしたいということで、入ってきておられます。こういった方々に一定レベルのハードルの高さというものが、魅力を持って、日本の介護というものが広がるのではないかと考えますと、確かに介養協の方の御心配というのは、ごもっともだと思うのですけれども、ここで歯を食いしばってやるということは、重要ではないかと思います。
以上です。
○田中部会長 奥山委員、井上委員、お願いします。
○奥山委員 全国福祉高等学校長会の奥山でございます。
この会には、団体を代表して出席させていただいておりますので、議題に対しては、団体の考えを集約して発言したいところでございますが、今回のこの件につきましては、急に追加された議題でもございますので、意見をお伝えすることはできませんでした。しかしながら、介護福祉士養成施設の卒業生に対する国家試験の義務付けというのが、唐突に出された理由につきまして、後ほどお知らせいただければ、ありがたいと思います。
さて、この件につきましてですけれども、高等学校側としましては、介護福祉士資格取得の一元化を支持いたします。つきまして、経過措置を延長することについては、反対したいと考えております。
日本にとって、外国人人材というのは、大変大切だというのは、私どももわかっているところです。また、ますます重要性は増してくるだろうと考えています。そのために、養成施設ルートの留学生に対しては、介護福祉士等修学資金貸付制度の対象となるなど、国を挙げて手厚く支援をしていただいていると承知をしています。
また、資料の8ページ、先ほど西島委員からもありましたけれども、養成施設ルートの調査では、8割以上が国家試験の受験によって、介護に関する幅広い知識が身についた、専門職の自覚・心構えが高まった、また、指導する教員側からは、7割以上が国家試験の導入によって、学生の自信、資質の向上、よいプレッシャーになったとか、地位の向上に効果があると回答がありました。国家試験があることによって、学生には介護福祉士国家資格を取得するという明確な目標が掲げられて、意欲的に学習に取り組むことができています。
養成施設は、国家試験受験資格の義務化を進めている中で、現行制度を理解した上で、留学生を受け入れていると理解をしています。養成施設ルートの留学生が減少する中で、留学生の増加が顕著であること、また、外国人の試験合格率が低いことを理由にして、受験義務を延長するということは、どうかと考えています。介護サービスを受ける国民の視点に立って考えているとは、思えないところがある。養成施設の運営が厳しいから延長を求めるというのも、国民に対してどうであろうかと考えてしまうところでございます。外国人材の地位を向上させるためにも、国家試験受験の義務化というのは、一元化するべきだと思いますし、また、合格できるためのサポート、手立ての方が必要ではないかと考えております。
さらに高齢化を見据えて、介護に関する世界初の国家資格として創設されたのが、介護福祉士です。現在、登録者数が約170万人となっていますけれども、誕生から30年たつにもかかわらず、資格の取得のルートというのは、国家試験の合格、また卒業時の付与というダブルスタンダードがそのまま続いているところでございます。このままでは、国家資格としての評価を確立することは難しく、さらに延長は介護福祉士資格への不信感を助長しかねないと思っているところです。将来、介護を目指す者の減少に拍車をかけることにもつながりかねない、今に対応しなければということも、やはり大切なところではあるのですけれども、その影響が将来につながらないように、慎重に検討していただくように、お願いしたいと思います。
高等学校としましては、平成19年の改正によりまして、福祉系高等学校は、養成施設ルートと同等の条件を満たすことが求められました。そこで、教員要件の高度化、指導時間数の大幅増、また、施設設備の充実に努めてまいりました。また、条件整備ができない高等学校というのは、福祉科を閉じることを余儀なくされております。当時、232校あった福祉系の高等学校ですが、その影響もありまして、現在、107校に減少しているところです。
国家試験の受験者数も9,000人台から、現在、3,000人台と減少しております。
厳しい状況の中、地域からの要請もありますので、教材の開発、教員の研修、授業力の向上、こういったところに教育の充実を求めて、当時、50%台であった国家試験の合格率も、現在、新卒者80%の後半、ここまで向上しているところです。
また、卒業した生徒たちですけれども、進路は8割以上が福祉、また、介護の道に進んでいる。出身の都道府県にとどまる生徒たちが9割いる。また、離職率は約1割程度にとどまっているということでございます。
今ではそれぞれの地域の福祉や介護を担う貴重な担い手となっていることは、皆さんも御存じのところだと思いますし、以前にも述べさせていただきましたが、14~15歳の中学生が、将来、福祉介護の道のプロフェショナルを目指そうとして進んでくるのが、福祉科の高校です。貴重な存在でございますし、制度の見直しに、各福祉系の高等学校が真摯に対応してきた結果だと考えておりますので、慎重な御審議をお願いしたいと思います。
介護福祉士の養成、資格取得は、先ほど示された全ルートの教育内容等を考慮してつくられたものであることも含めまして、養成施設のルートのみを単体で検討するのは、バランスに欠けるのではないか。また、介護福祉士のあり方、養成取得について検討してきた、これまでの報告、経緯を尊重していただいて、慎重な検討をお願いしたいと思います。
今やるべきことは、誰もが認める国家資格としての介護福祉士の確立、2つ目としては、世界の介護をリードする介護福祉士の養成、3つ目として、介護の重要性と魅力の発信ではないかと考えています。
繰り返しになりますけれども、養成施設ルートの受験義務付けの延長については、反対させていただき、早期の一元化を支持していきたいと思います。
今回は急だったので、全国の福祉高等学校長会からは、意見書を提出しておりませんけれども、その辺は御了承いただければと思います。
私からは、以上です。
○井上委員 日本知的障害者福祉協会の井上です。
障害分野の場合ですと、非常に多様なのです。社会福祉士もおられますし、精神保健福祉士もおられますし、介護の方もおられますし、非常に多様な構成になっているので、13ページに示された、まんじゅう型から富士山型へというのは、基本的にはいいのではないかと思うわけです。
私たちは、生活を支援させていただいているわけなので、非常に多様な人たちが障害福祉という分野に入ってきているというのは、事実でございますので、2階建ての考え方が必要だと思います。国家資格でリーダーとして進めていただく方と、より幅広い方々に参入いただくような、2階建ての議論を期待したいと思っております。
障害分野から見て、そのような感想を持ちました。よろしくお願いします。
○田中部会長 まだあるかもしれませんが、もう一つ議題がございますので、ここまでとさせていただきます。
最後に、小林委員、どうぞ。
○小林委員 介養協の小林です。
資料の3ページをご覧いただきたいのですけれども、先ほど養成校のところで、留学生が在留資格「介護」ということで、在留資格「介護」で入ってきた留学生が国家試験を受けて、不合格になった場合、ほとんどの方たちが、結局は母国に帰らざるを得ないということがあるわけです。例えば先ほどの御意見のように、特定技能ができたからということで、こういう制度はないわけです。介護から特定技能に行けるという制度は、まだできていないです。矢印が特定技能から介護には来ているのですけれども、まだありません。
そうすると、在留資格「介護」で留学してきた学生さんたちについては、私たち養成校の教員が、国家試験に合格していただくということを命題として頑張っていかなければいけないのですけれども、二千何人もいらっしゃる中では、日本語学習のN3とか、N4の方たちも入ってきて、その方たちを2年間なりでN2に上げて、そして、国家試験も合格というところは、私たちもかなり努力はしているのですが、難しい部分がございます。留学生の方たちがせっかく目指してくださった介護というところ、福祉の職場にとどまっていただきたいという気持ちがすごくありまして、延長をお願いしたいということを申し上げました。
そういう意味では、留学生の方たちを立派に介護福祉士にしていくという、その1点だけが、私たちの一番の気持ちで、今の国家試験の一本化ということは、重々承知しております。もちろん一本化にしたほうがいいという考え方があるところもあります。介養協としての意見としては、毎年、出させていただいている意見書の中、そして、今回、意見を出してくださいという中から、今回の経過措置の延長を何としてもお願いできないかというところになります。でも、議論はしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○田中部会長 ありがとうございました。
それでは、ここまでのところで、何かお答えがあれば、お願いします。
○川端福祉人材確保対策室長 事務局の福祉人材確保対策室長です。
御議論の中で、専門性を高めるということで、一元化を速やかにすべしという御議論と、人手不足の中、人材確保、特に養成施設で外国人留学生が増えていて、とはいってもなかなか難しいといった、それぞれの御意見をいただきましたので、事務局としての考え方について、詰めていきたいと思っております。
1点、養成施設ルートから特定技能への話がありましたけれども、事実関係として、養成施設を出てから特定技能に行くことは可能です。ただ、在留資格の介護と特定技能で、家族の同伴の有無ですとか、あるいは上限ですとか、そういったものは変わってきますので、そこは扱いが違うことについて、補足で説明させていただきました。
以上でございます。
○田中部会長 補足ありがとうございます。
それでは、福祉基盤課長から、資料3の説明をお願いします。
○宇野福祉基盤課長 福祉基盤課長でございます。
私から、資料3の「『社会福祉法人の事業展開等に関する検討会』の検討状況について」御報告させていただきます。
1ページをご覧下さい。田中部会長に座長をやっていただいております、社会福祉法人の事業展開等に関する検討会ですが、第3回までの議論の成果につきましては、2ページに議論の整理がございます。
概略を御説明申し上げますと、連携や協働化、大規模化については、あくまでも希望する法人の自主的な判断のもとに進められるべきという中では、一定の意義があるだろう。
具体的にどういう対応の方向性があるかにつきましては、大きく3つの選択肢がある。1つは、社会福祉協議会の活用を初めとした、社会福祉法人の連携・協働化、あとは、社会福祉法人が主体となった連携法人制度の創設の検討、3番目としまして、希望する法人が大規模化・連携に円滑に取り組めるように、合併とか、事業譲渡に関します好事例の収集や、ガイドラインの策定、会計基準の明確化といったものが必要だということを、第3回までで御議論いただいています。
第4回は、10月29日に開かれまして、その中で、今の3つの選択肢のうち、新しい制度であります、2つ目の連携法人についての制度のイメージについて、御議論いただいたところでございます。
3ページ以降に、当日の会議の資料をそのままお付けしております。
1つ目、ニーズという形で書いてありますけれども、今、申し上げたように、自主的な連携ですとか、社協を通じた連携、合併とか、事業譲渡、いずれかの方法しか、今のところない中で、中間的な選択肢を用意してはどうかというのが、今回の御提案でございます。当然、社会福祉法人の自主性を確保しつつ、連携を強化できる法的ルールにのっとった選択肢を整備すべきではないかということでございます。
社会福祉法人のニーズといたしまして、私どもが伺ったところによると、例えば人材確保・育成で連携の仕組みをつくったらどうかとか、生産性向上の横展開として、こういった連携法人を使ったらどうかとか、経営支援という形で、連携法人を使ったらどうかというニーズがございました。
それにつきましては、4ページ目以降で、似たような制度、医療の世界では、既に「地域医療連携推進法人」というものがございます。社会福祉分野の実情に合った形で、目的等を項目ごとに地域医療連携推進法人と似せたところ、社会福祉法人の独自性に即して変えたところを整理したのが、4ページ目、5ページ目、6ページ目になっております。
7ページ目で、社会福祉法人が貸付け等を行う場合の取り扱いがございます。これは医療法人と違いまして、社会福祉法人は、収入・収益について、法人外への支出が認められてございませんので、そこに配慮した仕組みということで、論点を整理させていただいています。
それらを踏まえまして、8ページ目以降が、連携法人の活用例ということで、地域共生社会で、実際、種別ごとに異なる方々が地域の多様な福祉のニーズに対応するような形として、連携法人が使えないか。これは、今、社協がありますし、合併とか、事業譲渡もありますけれども、別の選択肢として、こういった仕組みはどうか。これは例えば、NPOの方々も含めて、一緒に連携してはどうか。この場合、社会福祉法人は、今でも地域における公益的な取り組みの実施が責務になっておりますので、その責務の取り扱いとしても、連携法人を活用して取組ができないかという図が8ページ目になります。
9ページ目は災害関係でございまして、これは今でも社協を中心にやっていただいている部分もあるのですが、圏域も超えまして、災害時の体制整備に資する連携として、こういった連携が可能ではないかということを9ページに示しております。
10ページ目は、人材確保でございます。先ほどの議題(2)でもありましたけれども、人材確保は非常に重要なテーマであり、特に社会福祉法人も含めて、福祉人材の確保については、福祉の専門家であっても、人材確保の専門家ではないものですから、例えば、ある程度地域で集まって共同での研修を実施するとか、参加している法人の職員のリクルートとして、連携法人が活用できないか、これは外国人のリクルートでも使えるのではないかと思っております。
11ページは、特別養護老人ホームの生産性向上の仕組みです。生産性向上の仕組みのときには、当然センサーとか、色々な機器等を購入する場合があります。そういう場合の共同購入ですとか、ビッグデータを提供する、お互いに交換していく、そういった中で、社会福祉法人ないし社会福祉事業を行っている法人が、連携して行えるのではないかという絵をお示ししています。
社会福祉法人の貸付けについては、12ページに示しておりますが、これは山間地にある社会福祉法人を支援する形ですが、これは後ほど図の方で説明させていただきたいと思います。
13ページは、連携・結合の選択肢の中身について、違いを整理したものでございます。似たものとしては、社会福祉協議会を通じた連携があるのですが、地域の部分になりますと、社会福祉協議会自体は、圏域がありますけれども、今回の連携法人は、活動区域は指定させていただきますが、圏域は限定なしでやってはどうかと考えております。
合併、事業譲渡ですと、経営面、資金面も一体となりますけれども、そこは一定のルールのもとで、限定的に資金融通を認める形にしまして、いずれにしても、法人の自主性を確保しつつ、法的ルールの整った、一段深い連携・協働化の在り方として、連携法人を位置付けてはどうかと考えております。
14ページ、15ページは、先ほどの論点に沿ったものとした場合に、こういう図になりますということをお示ししたもので、こちらを詳しく説明させていただきたいと思います。
ここにありますとおり、「社会福祉連携推進法人」のイメージは、一般社団法人のうち、所轄庁が認定したものをイメージしております。これは地域医療連携推進法人と同じでございます。各法人は社員となり、社員は社会福祉事業を行っている法人、関係自治体、その地連携業務に関する業務を行う者として、社会福祉事業を行っている法人が2以上、うち社会福祉法人が1以上ということで、論点ではお示ししております。
この点、地域医療連携推進法人では、参加法人と社員で分かれていまして、医療を持っているところは参加法人、そうでないところは社員という形で分かれていますけれども、こちらは一体という形で整理をしているものでございます。
業務につきましては、先ほどお示ししたような地域共生、災害、人材関係、共同購入、貸付け等をイメージしています。
経費につきましては、社員からの会費、業務委託費、これは地域医療連携推進法人と同じようなイメージです。
議決権も一社につき、一議決権が原則だということも、地域医療連携推進法人と同じイメージです。
代表理事は、所轄庁の認可が必要であるとか、連携法人の合併を認めないということも、地域医療連携推進法人と同じです。
また、社員総会が一番の最高決定機関でございます。各法人が社員として、法人として参加できるような形のものを社団法人と整理しまして、実際の業務執行は、理事会が行います。理事会が必置です。
実際に地域の意見を酌み入れるために、地域関係者の意見の集約の場として評議会、これも地域医療連携推進法人で同じような仕組みがありまして、そこに対して、意見具申を行うようなイメージとしています。
資金の貸付けにつきましては、15ページにあるとおり、社会福祉法人は、法人外の融資は禁止されていますが、この連携法人の仕組みだけにつきましては、例外的に社会福祉法人、A、Bが資金を貸し付ける、原資を持つ社会福祉法人ですが、こちらが連携法人に貸付けが可能な形です。それがいわゆる連携法人から貸付対象、社会福祉法人の支援に対して、貸し付けるための原資として使う。その代わり、この原資自体を他の資金と区分経理しまして、社会福祉法人への貸付け以外の使用は禁止するというイメージです。
貸付対象の社会福祉法人自体は、その重要事項を決める際には、連携法人の承認が必要ですし、自法人への貸付業務に係る議決権は、保有しないという形です。
地域医療連携推進法人の貸付業務も同じような仕組みがございますけれども、医療と違って、社会福祉法人は、先ほど来から申し上げておりますとおり、法人外流出は、原則禁止ですので、そこをお示ししたものでございます。
16ページは、地域医療連携推進法人の概要でございまして、実際の例を17ページから21ページまででお示ししていますが、今、14の法人ができております。特に今年度、平成31年4月以降に7つできましたので、倍増になっているというイメージです。
22ページ、23ページは、昨年度に既に設立されていた地域医療連携推進法人7法人の方に、当省の医政局からヒアリングして、アンケート調査を行った結果の抜粋でございます。
この中で、実際に参加されている法人さんが参加してよかった点、期待を上回った点をお示ししておりますけれども、ここにありますとおり、「連携法人参加施設同士の意見交換など、一施設では得ることのできなかった情報を得ることができるようになった」とか、あとは「他施設の御担当者様と顔の見える関係が得られ、様々な情報交換ができる点があった」、2つ目の○ですけれども、人材確保の部分について、「派遣とか、スキルアップ研修を行うことができた」とあります。
23ページですが、「共同の研修」や、「医薬品の共同購入等のメリット」、「知名度が上がった」、「ステークホルダーの考え方が合った」など、そういったアンケート調査結果が集まっているところでございます。
以上を第4回で御説明させていただきました。
第4回でこの資料をお示ししたところ、幾つか御意見がございました。簡単に御意見だけ紹介させていただきたいと思います。
1つは、連携法人の目的について、14ページを見ていただきますと、先ほど申し上げたとおり、新たな選択肢の1つとしてつくるという整理にしているのですが、より格調が高いものにしたらどうかという御意見もありまして、例えば、公益的な取り組みが非営利セクターの中で必要とされた中で、社会福祉法人、NPOなど、地域の非営利セクターの中で取りまとめができるようなイメージが必要だということで、先ほど来、地域共生社会を意識した、もっと格調の高い目的にしたらどうかという御意見がございました。
評議会について、少し強化すべきではないか。公益性を担保するような形で、地域の声が届くようにした方がいいですとか、地域の利用者の抑制などのことが懸念されるので、地域のニーズが反映化される仕組みとか、透明化を検討すべきではないか。もっと民主的な仕組みをするべきではないか。評議会について、実効性を高めるべきではないか。この図ですと、総会だけにしか意見具申ができないようですけれども、理事会にも意見具申ができるようにしたらどうか、といった御意見をいただいております。
業務につきましては、社会福祉連携推進法人自体は、社会福祉連携業務に限定した形で、14ページにお示ししていますけれども、社会福祉事業の中で、例えば相談事業については、連携法人がやってもいいのではないかという御意見がございました。
貸付制度につきましても、どういったような貸付けについてイメージがあるのか。例えば焦げついたときどうするのだとか、あとは、社員の中で、地方自治体も認めていますけれども、地方自治体が入ったときに、どういうふうに責任をとるのか。融資との関係はどう整理するのかという御意見がありました。
災害につきましても、先ほど災害業務を示しましたが、既存の地域全体の災害業務とはどういうふうに整理していくのかという御意見です。
今、法人外に貸付制度を認めるという話なのですが、法人内の資金移動の規制はあるので、そういったものを緩和すべきではないか。
県の退職金共済制度、これはいわゆる合併とか、事業譲渡を進めるに当たっては、退職金のポータプル化が重要だという御指摘だったのですが、そうした中でも、退職金共済制度のポータプル化を進めるべきではないかとか、連携法人の退職金共済をやらせるのか、やらせないのか。
税制優遇について、公益認定に向けて手続を簡略化してはどうか。
人事交流について、地域医療連携推進法人ではどんなふうに実際に行われているのか。
スムーズに合併できるような観点から、社会福祉法人版のガバナンス・コードとか、ソフトローをつくって、要するに民間企業でいうところのハードローではなくて、ガバナンスを置くような、もう少しソフトな形のルールですけれども、自主的なガバナンスルールをつくって、社会福祉法人の役員の意識を高めるべきではないか。
こうした様々な御意見をいただきましたけれども、そういったところも含めて、御意見をいただいたところでございます。引き続き、田中部会長の御指導のもとに検討会を開催し、今日の御意見も踏まえまして、検討してみたいと思います。
次回は、地域医療連携推進法人のヒアリングも予定しているところでございます。
長くなりましたが、以上でございます。
○田中部会長 説明をありがとうございました。
それでは、資料3についての御意見、御質問をお願いいたします。平田委員、どうぞ。
○平田委員 全国経営協の平田でございます。
時間の関係もありますので、提出資料をお開きいただければと思います。
1ページ、2ページは、全国経営協の趣旨です。
2ページになりますけれども、基本的に人口減少社会においても、各地方都市を含めて、個々の社会福祉法人が事業を維持・存続し、連携をして、地域の多様な福祉ニーズに対して、セーフティーネット機能としての役割を果たさなければなりません。その意味では、連携法人も選択肢の1つとして重要だろうと思います。
各論に入りますが、社員について、「社員は2以上とし、そのうち社会福祉法人が1以上」とありますが、目的が社会福祉法人を主体とする連携法人であり、社会福祉法人の経営基盤の強化に向けた連携を促進するということであれば、地域医療連携推進法人とは目的と方法論が違うと思います。
例えば、2割が社会福祉法人、8割が他の社会福祉事業を行う事業者で構成される連携法人では、本来の目的に沿うものかどうか疑問です。目的に沿った構成とするには、社会福祉法人が過半数という組織構成の方が、所轄庁の認定もございますので、その趣旨に合うのではないか、これが1点です。
検討会での税制の取扱いの概要が課長から御説明がありましたけれども、連携法人の業務にもよると思うのですけれども、一定の要件を満たせば非営利法人として非課税とありますが、要件がこういうことであれば非課税になりますということを、事前に詰めていただきたいと思います。
3番目なのですけれども、連携法人で、他法人に資金を貸し付けることになりますが、現在、社会福祉法人は、同一法人の中で他事業所、他施設に単年度しか貸付けが認められておらず、年度を超えての貸付けが同じ法人内でも認められていません。繰り入れは可能なのに、何故貸付けが認められないのか。
各施設、各事業所の経営の指標として、毎年、法人が繰り入れていますと、単年度の支出に使用され、あるいは剰余金として残っていきます。貸付けが会計上明確に表示されていないと、事業所単位の正確な経営指標とはなりません。外部の法人に長期貸付けができるのに、自分の法人では長期貸付けができないということは矛盾していますので、この連携法人制度で貸付システムをつくられるときには、法人内での貸付けも、当然同一に緩和をしていただければと思います。
措置費、あるいは介護報酬、保育所運営費もそうなのですけれども、法人本部繰り入れの制限がございます。財務当局と過去からの課題ではありますが、これを契機に法人経費として、本部経費への繰り入れの拡充・規制緩和をこの機会に財務当局とも議論していただけたらと思います。
社会福祉法人は、前回も申しましたけれども、ガバナンスの強化が法的に明確に位置づけられました。今回、連携法人制度の創設が社団としての性格ですので、社会福祉法人本体の既存制度を損なわないような連携推進法人のガバナンスを是非お作りいただきたいと思います。
以上でございます。
○田中部会長 より良い制度設計のための御意見をありがとうございました。
高橋委員、お願いします。
○高橋委員 日本保育協会の高橋でございます。
平田委員のおっしゃったこととほとんどダブる部分もあると思いますけれども、連携法人について、税制のことはこれからということでございますが、一般社団と社会福祉法人では、税制における優遇措置でありますとか、寄附金に係る税制などのことが随分違う部分があると思いますので、十分に検討をしていただければと思っております。
特に保育所は、1法人1施設の小さな法人が非常に多くございますので、今後の少子化のことを考えますと、この連携推進法人につきましては、大変興味深く考えております。社会福祉法人を中核とする連携法人につきましては、社会福祉法人にとってメリットがあって、真に連携しやすい制度になることを望みたいと思います。
以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
井手之上委員、どうぞ。
○井手之上委員 大阪府社会福祉協議会の井手之上です。
社会福祉協議会の立場から、御意見を述べさせていただきたいと思います。社会福祉協議会と法人間の緩やかな連携が掲げられていますが、このことを積極的に我々としては進めるべきだと思っています。
社会福祉法人の連携の中核として、社会福祉協議会は、大きな役割を果たすと位置づけていただいていますけれども、まず社会福祉協議会が事務局的機能を持ちながら、社会福祉法人・施設に働きかけて、まず体制を整備することが大事だと思っておりますし、都道府県単位では、かなりできております。これからは市町村単位でどうできるかということが、非常に大きな課題だと認識しております。
例えば大阪府の例で言いますと、市町村社会福祉協議会の多くのところでは、名称は色々ですけれども、施設連絡会であるとか、地域貢献委員会とか、そういう名称ですが、ほとんどの市町村社会福祉協議会で立ち上がっているところでございまして、それぞれの地域のニーズに沿って、今、色々な事業を展開しております。こども食堂を展開したり、あるいは災害の対応ということで、福祉マップを作成して、避難の共同訓練を行うこともしています。そういった緩やかな連携がこれから進むべきだと思っています
今回、御提案のありました社会福祉連携推進法人についてでございますけれども、法人を設立する意義なり、必要性について、きっちり押さえる必要があると思いますし、法人の共通課題を解決するために有効な方法であるということをきっちりと理解できるように整理していただきたいと思います。そうでなければ、設置が進まないと思います。
実施する事業として幾つかありますけれども、1つ目にある地域共生社会関係ですが、今、申し上げました緩やかな連携協働下でも取り組むことも可能でございますし、地域の状況を見ながら選択する方法もありますし、両方やるということもあろうかと思います。そういう方法で進めるべきだと思っています。
災害関係ですが、これは非常に重要な視点であろうと思います。全国社会福祉協議会で「災害時福祉支援活動に関する検討会」を設置しました。この検討会の提言ということで、9月30日にまとめられております。その中では、総合的な拠点ということで、災害福祉支援センターの設置を掲げております。このセンターは、災害に関する人材養成ですとか、関係機関の連携促進など、災害時はもちろん、平時からの取り組みも行うセンターという位置づけで、都道府県社会福祉協議会に設置するという提言をしているところです。
社会福祉連携推進法人でも取り組むということであれば、それとの役割分担について整理することも必要だと思っていますし、その際には、都道府県社協が調整役を果たすべきだと思います。
ほかにも社会福祉法人の貸付けがありますけれども、非常に難しい事業だという印象を持ちました。先ほど事務局から、検討会でも、色々な意見があったとお話しがありましたが、例えば福祉医療機構との関係など、きちっと整理する必要があると思います。色々難しい課題があると思っています。
医療法の改正で、数年前に地域医療連携推進法人が制度化されていますけれども、現在、14カ所あるとのお話しをお聞きしました。その数が多いのか、少ないのか意見があると思いますけれども、私は少ないのではないかと思います。増えない原因は何なのか、きちっと分析整理した上で、新たな法人について検討することが必要だと思いました。
以上です。
○田中部会長 対馬委員、お願いします。
○対馬委員 社会福祉連携推進法人の創設については、基本的に私は賛成です。
お伺いしたいのが、この案で言うと、連携法人の合併は認めないとなっています。その理由を教えていただけますか。
○田中部会長 今の点、お答えください。
○宇野福祉基盤課長 わかりました。
これは検討会での議論ですので、決まったわけではございませんけれども、こういうふうに提案した内容は、1つは合併自体が社会福祉法人も進んでいない状況でございます。今回、検討会の中で、先ほど来から話が出ていますとおり、社協も含めて、色々な選択肢の中で、そういったものが進んでいます。
その中で、今回は、連携業務を行う法人ということで意識をしていますので、連携業務同士が行う法人が合併という話になってきますと、そこは色々な議論としては、重複ないし混乱する部分も出てくるのではないか。参考としている地域医療連携推進法人も合併は認めていないのです。
そういう意味では、むしろ我々としまして、社会福祉法人の事業展開なものですから、あえてここは少なくとも今のこの段階では、連携法人の合併までは認める必要はなくて、緩やかないし選択肢としての連携として、この法人を位置づけてはどうかということで、御提案しているものでございます
○対馬委員 株式会社の買収の場合、いきなり合併をするのではなくて、株式会社をホールディングスの下に位置付け、ホールディングスとの就業規則や給与規定に違いがありますので、年数かけながら調整をして合併をするのが一般的です。私は連携より合併の方が組織的にはより強固になるのだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
○宇野福祉基盤課長 私が申し上げた合併は、連携法人同士の合併です。ですから、当然連携法人にぶら下がっている社会福祉法人同士の合併自体は、今でも可能ですので、それを否定するものではございません。民間でいうホールディングス同士の合併は、今回は認めません、そういう趣旨でございます。
○田中部会長 三好委員、どうぞ。
○三好委員 江別市長でございます。
市町村では、福祉計画をつくり、施設整備をし、地域の需要に応じて、ベッド数とか、入所者数、さらには定数などを決めて、福祉の確保を努めております。
人材が非常に確保しづらいこともございまして、地方においては、入所を制限せざるを得ないところもございますので、私は連携法人が、人材の流れ、さらにはせっかくまとめた様々な情報を共有できるよう、データ化をすることは、基本的に賛成でございます。また、IT、IoTを使ったもので施設を進化させる、福祉事業を進化させることも、非常に重要なことだと思ってございます。
しかしながら、一方で、そういう形でどんどん効率的なところに進んでいきますと、地方から福祉事業がなくなる可能性は出てくるのではないかと思っております。需要はありながらも、人材がなくて、効率が悪いがために、施設を都市部に集約できるような、そんな仕組みになるということも、我々の思いからしますと、逆行してまいります。
そのためには、連携法人を進める上では、市町村の意見とか、そういう地域の意見を聞ける、話ができる立場、様々な事情があろうと思いますので、そういう意見を聞けるような仕組みを、この中にぜひ組み込んでいただきたいと思っております。
以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございます。
時間になってきましたけれども、西島委員、どうぞ。
○西島委員 お時間もないので、手短にと思いますが、社員のところについて、これは平田委員がおっしゃった意見と同じ意見なのですけれども、そもそも連携法人が社会福祉法人を主体とするということであるとか、目的の中で、これから地域共生社会の中で、社会福祉法人がしっかり応えていく経営基盤の強化ということがうたわれておりますので、そう考えると、ここについては、御提案いただいている意見、資料を提出していただいている過半数が、考え方として妥当ではないかと感じましたので、意見として述べさせていただきました。
以上です。
○田中部会長 宇野課長、ここまでの御意見に対して、回答をお願いします。
○宇野福祉基盤課長 皆様、貴重な御意見をありがとうございました。
今日、いただいた意見をきちんと検討会に御報告しまして、検討会できちんと御議論をいただきたいと思います。平田委員から提出していただいた資料にある、社会福祉法人を社員の過半数とするかどうかの問題もそうです。
法人内の規制の問題につきましても、非常に難しい問題なのですけれども、そういった課題もあることも含めて、検討会でも実際にそういう御意見が出ていますので、やっていきたいと思います。
税につきましては、今、税務当局とも調整中ですので、そこはある程度のところで、検討会なり、ここの部会でも御報告したいと思いますけれども、少なくとも一般社団法人は、御存じのとおり、非営利型と営利型がございまして、非営利型になるためには、税務署の色々な認定が必要です。そういった場合に、社会福祉連携推進法人の場合は、所轄庁による認可の仕組みがありますので、税務署の認定の仕組みとどう調和していくか。調和の中で、例えば非営利型にも該当するのであれば、そこはちゃんとそういう形でお示しできるようにすることも含めて、税務当局とも御相談したいと思っております。
高橋委員、平田委員も同じような御意見だと思いますし、西島委員も同じような御意見だと思います。
井手之上委員からの御指摘をいただいたとおり、我々としましては、選択肢の1つだということでございます。中間取りまとめにありましたとおり、あくまでも3つの選択肢があって、そのうちの連携法人だけが詳しくやっておりますけれども、当然社協も重要ですし、合併・事業譲渡も重要です。どれを選択するかは、地域ないし各法人の自主的な判断という理解でございます。
そういう意味では、14という数が地域の場合に多いのか、少ないのか、私は必ずしも判断できない問題だと思いますし、逆にここは色々な事情によって変わってくる部分があると思います。我々としましても、できるだけ皆さんの御意見を踏まえながら、より使いやすい制度にしていきたいと思いますので、引き続き、御指導をいただければと思っております。
対馬委員の御指摘には、先ほどお答えさせていただきました。
三好委員の御指摘につきましては、まさに地域共生検討会の中でも出てきた、地域の意見をどう反映するのか、また、実際に起きるかどうかはわかりませんけれども、都市部も含めた、もし連携の大きい法人ができたときに、どう地域の意見を反映させるかということは、繰り返し御指摘いただいた点でございますので、今日の御意見を踏まえまして、きちんと検討会で検討させていただきたいと思います。
以上です。
○田中部会長 ありがとうございました。
まだ御意見があるかもしれませんが、今日は、3つの議題があって、時間を少し超過してしまいました。
そういうことで、本日の審議については、ここまでといたします。
最後に、事務局から次回の日程について、報告をしてください。
○高橋総務課長 次回でございますけれども、12月16日の16時からを予定しております。
開催場所等の詳細については、追って連絡をさせていただきます。
○田中部会長 それでは、本日は、御多忙のところ、お集まりいただき、かつ活発な議論を頂戴しました。どうもありがとうございました。