2019年11月25日 第156回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和元年11月25日(月) 10:00~12:00

場所

厚生労働省専用第22会議室(合同庁舎5号館18階)

出席者

公益代表委員
 荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員、水島委員、両角委員
労働者代表委員
 川野委員、北野委員、櫻田委員、津村委員、仁平委員、森口委員、世永委員
使用者代表委員
 池田委員、齋藤委員、早乙女委員、佐久間委員、佐藤委員、鳥澤委員、輪島委員
事務局
 坂口労働基準局長、吉永審議官、松本審議官、久知良総務課長、黒澤労働条件政策課長、石垣監督課長、長良労働関係法課長、井内労働衛生課長、手倉森労働条件確保改善対策室長

議題

  1. (1)賃金等請求権の消滅時効の在り方について
  2. (2)副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について
  3. (3)労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正等について
  4. (4)2018年度評価について

議事

議事内容
○荒木会長 それでは、定刻より若干前ですけれども、御出席予定の委員の皆様がおそろいということですので、ただいまから第156回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員としまして、公益代表の平野委員、労働者代表の八野委員、使用者代表の松永委員と承っております。
次に、事務局より定足数の報告をお願いいたします。
○労働条件政策課長 定足数について御報告いたします。
労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
○荒木会長 それではカメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
本日の議題に入りたいと思います。
お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題の「(1)賃金等請求権の消滅時効の在り方について」につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 労働関係法課の長良でございます。
議題1は私から資料の御説明をさせていただきます。
お手元の資料No.1、参考資料No.1をごらんいただければと思います。
資料No.1でございますが「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する労働条件分科会におけるこれまでの主な議論」と題した資料をまとめているところでございます。
こちらは、消滅時効の関係では7月1日に有識者検討会の御報告をさせていただきまして9月、10月と2回論点に沿って御議論をいただいたところでございますが、この労働条件分科会における、これまでの都合3回の議論を資料としてまとめたものでございます。
1から7まででございますが、これは以前お示しさせていただいた7つの論点に沿って、それぞれ委員の御意見について取りまとめた形にしているところでございます。
「1検討の前提」は、一言で申し上げると、改正民法と労基法との関係をどう考えるかというのが、主な論点でございます。
1つ目のポツですが、現行の労基法の規定は、賃金債権の特殊性を踏まえて、企業の取引の安全性、労働者保護の双方に配慮されて特別に定められたものであるため、民法とは独立してそのあり方を検討することが必要であるという御意見がある一方で、4つ目のポツでございますが、労基法の労働者保護という趣旨を踏まえれば、民法の定める一般債権の消滅時効期間を労基法が下回るということはあってはならない。大きく分けるとこの2つの考え方が、労働条件分科会において提示されたものと理解しております。
続きまして次のページは「2賃金等請求権の消滅時効の起算点について」でございます。
こちらは改正民法におきまして主観的起算点というものが新たに設けられたことを踏まえ、労働基準法、現在は客観的起算点1本の運用をしているところでございますが、どう考えるかというものでございます。
1つ目のポツでは主観的起算点を取り入れた場合、行政指導や裁判の際、個々人ごとに権利行使することができることを知ったときがいつなのかということを確認する必要があるが、それには大変な労力がかかり、訴訟の長期化を誘発するおそれがあるという御意見がある一方で、主観的起算点については、特にいわゆる「名ばかり管理職」の事例において、労働者が裁判などによってみずからが管理監督者でないことを、認識した場合などにつきまして、民法の取り扱いを踏まえて整理する必要があるのではないかというような御意見がございました。
「3賃金請求権の消滅時効期間について」でございます。こちらが一番の主な論点ということになろうかと思います。
まず1つ目のポツ、仮に民法どおりに改正する場合、使用者としては適法に賃金を支払っているつもりであっても、万が一紛争が起きてしまった場合に備えてリスク管理しなければならないという事情もあり、企業実務には非常に大きな影響がある。こうした企業の実態を踏まえ、現行の2年を維持すべきといった御意見。
それから3つ目のポツ、消滅時効期間が一挙に5年となると、中小企業、零細企業は、事務負担に耐えられないというような御意見がございました一方で、4つめのポツでございますが、これは1の議論とも連関しますけれども、労働者保護を目的とする労基法が民法の定める一般的な債権の権利保護の水準より下回るということは許されないとの認識であるため、改正民法と同様5年の消滅時効期間とすべき。
あるいは3ページのポツでございますが、会社の倒産や解雇があった際に、未払賃金の請求のために労働者側が資料を整理して労働審判や訴訟の準備をするが、その準備には数カ月から半年以上かかる場合もあり、現行の2年の消滅時効期間では短い。あるいはその次のポツ、賃金請求権の消滅時効は、そもそも適正に賃金の支払いがなされていれば問題とならないといった御意見がございました。
「4賃金請求権以外の消滅時効について」、年次有給休暇と災害補償請求権について論点を提示させていただいているところでございます。
これにつきましては、年休に関しましては、時効が仮に5年となった場合には、計80日間の休暇を一気に取得することが可能になってしまうというようなことになりますが、中小企業にはこれに対応するだけの体力がないというような御意見、あるいは年次有給休暇そもそもの制度趣旨を考えると、本来であれば年内に取得されるべきということでございますので、賃金債権とは異なって現行の2年を維持する方向もあり得ると。むしろ、より休暇を取得しやすい職場環境をつくるという方向で政策的に対応すべきといった御意見がございました。
災害補償請求権に関しましては、労基法と民法の消滅時効期間に差異がある場合、そのギャップの期間については使用者が損害賠償責任を負うというようなことでございまして、労災保険法に定める消滅時効期間についても、労基法と整合性のある統一的な改正を行うべきではないかというような御意見がございました。
4ページは「5記録の保存について」でございます。
1つ目のポツでございますが、賃金等請求権の消滅時効期間を延長した場合は、賃金台帳だけでなく、電子メールや入退館記録など、法律で求められるよりも多くの記録の保存期間も延長することになるため、それによるコストの増加が企業経営に非常に大きく影響する。特に中小企業でいまだに紙媒体の保存が多い。仮にデータ化したいと考えても人手不足で実行することができないといった問題についての御意見がございました。
異動や転勤、退職、組織再編などが激しく行われている中で、5年、10年さかのぼって業務指示の有無などの事実確認を行うというのは実務上非現実的ではないかというような御意見がある一方で、運送賃あるいは宿泊料、これは使用人の給料と同様にこれまで短期消滅時効として整理されていた債権でございますが、こうした債権に係る短期消滅時効廃止の際に、特段事業者側から文書の保存に係る意見はなく、労働に限って負担が重くなるというのはおかしいのではないか。
帳簿上の書類については、税法上の取り扱いとして、確定申告に関しまして7年間の保存というようなことがございまして、既に3年より長期にわたって記録を保存する例があることを踏まえれば、何らかの工夫の余地があるのではないかといった御意見がございました。
「6付加金の支払いについて」でございますが、付加金の規定、労基法114条については、消滅時効の規定、115条が改正されればあわせて自動的に改正されるものなのかという点も含めて検討すべきではないかというような御意見をいただいたところでございます。
5ページは「7見直しの時期、施行期日等について」でございます。
仮に見直す場合であっても、その時期については他の労働政策に関する改正やパワハラ防止などさまざまな労働政策への対応で、中小企業の現場負担が増大している現状も踏まえ、十分な配慮をお願いできないかと。
同様に2つ目のポツ、働き方改革の施行に伴い、人事労務管理担当者の負担が増大していることに留意してほしいという御意見がございます。
それから経過措置の関係での御意見が3つ目のポツでございますが、消滅時効が民法とパラレルで改正すべきという意見があるが、それを理由に改正するならば経過措置は労働契約の締結日を基準とするのが素直な考え方ではないかという御意見がございました。
一方で、見直しの時期に関しましては4つめのポツ、賃金債権の消滅時効期間が不明確なまま、民法改正の施行期日である令和2年、来年の4月を迎えるべきではないということで、早急に結論を出すべきというような御意見がございました。
経過措置に関しまして、2つばかり意見ございました。5つ目のポツ、民法の624条第1項において「労働者は、その約した労働が終わった後でなければ、報酬を請求することはできない」とされているように、賃金請求権とは労働の提供があって初めて生ずるものであるということを踏まえると、その消滅のあり方については、賃金債権の発生日を基準として考えるべきではないかというような御意見。あるいは、労働契約が複雑化・多様化し、採用内定等の取り扱いをどうするかといった問題が生じている現状において、労働契約の締結日を基準とすることは、新たな紛争の発生につながる恐れがあるのではないかというような御意見がございました。
本日はそういう意味で、以前お示しさせていただいた7つの論点につきまして、これまでの委員の御意見を再度御提示させていただきまして、全体的な御議論をいただければと思っているところでございます。
よろしくお願いいたします。
○荒木会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見等があればお願いいたします。
北野委員。
○北野委員 ありがとうございます。
1の検討の前提と3の賃金請求権の消滅時効期間について意見を申し上げたいと思います。
これまでも意見申し上げてきたことですが、労働基準法は労働の最低条件を定めたものであり、労働者にとって重要な賃金請求権が、一般的な債権の保護水準を下回るべきではなく、これは改正民法においても同様に労基法の基本的性格を踏まえて考えるべきであると思っております。この点、先に行われました有識者検討会の報告書においても、現行の労基法上の賃金請求権の消滅時効期間を将来にわたり2年のまま維持する合理性は乏しく、さらには労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要という方向性も示されていることからしますと、やはり改正民法と同様に、5年の消滅時効期間とすべきではないかと思っております。
さらに、これも前回申し上げましたが、近年、労働者性が曖昧で雇用と非常に近接した働き方がふえておりますし、さらには裁判もふえているということからしますと、曖昧な雇用においては労働者性の有無によって、労働者と判断されれば労基法が適用され、労働者でないと判断されれば民法が適用されることになります。つまり、労働者性の有無によって消滅時効期間が異なることになり、働く者に無用の混乱を引き起こす懸念があります。民法改正の趣旨、背景については、社会経済の変化への対応、さらには民法を国民一般にわかりやすいものとする観点から見直されたものでありますから、この観点からも、民法と労基法で消滅時効期間を異ならせるべきではなく、統一的に5年とすべきだと思っておりますので、再度、意見として申し上げておきたいと思います。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
本日の論点は7つありますけれども、区切る必要はなく、全体でよろしゅうございますか。
○荒木会長 全体、どの点からでも結構です。
○輪島委員 それでは、まず全体的なお話です。今、北野委員から御指摘がございましたけれども、これは使用者側も従来から申し上げているとおりでございまして、労基法は刑罰法規ということでございますので、民法が改正されたということをもって、連動して改正をする必要はないと考えておりますし、現状の2年で大きな問題が発生しているというような認識もないということでございます。
毎月それぞれの従業員に対して給与を支払っているということで、毎月大量に発生する債権だということを是非ご理解をいただきたいと思っております。企業規模が大きくなるほど、大変多くの方に月例給料を支払う必要性があるということでございます。この労働債権の特殊性を十分踏まえて議論するべきだと考えているところであります。
以上です。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
佐藤委員。
○佐藤委員 御指名ありがとうございます。
最初のご発言で北野委員から社会経済情勢の変化というお話がありましたけれども、3番目の論点の賃金請求権の消滅時効期間ということに関して議論する際にも、この時代背景といいますか、社会情勢の変化という点はやはりしっかり踏まえるべきだと考えてございます。
少し数字的なことを申し上げます。労基法が成立しましたのは1947年でございますけれども、資料としますとこの6年後の1953年の時代には、一番多かったのは農業従事者でありますが、次いで製造業や機械運転建設作業者といった方が25%を超える程度いらっしゃいまして、専門的・技術的な職業従事者であったり、あるいは事務従事者という方は、それぞれ10%にも満たないような状況だったということでございます。
一方で、これも少し古いのですけども、同じ職業分類でのデータを見ますと、9年ほど前になりますけれども、2010年のデータですと、前段で申し上げました製造業や機械運転建設作業従事者は20%まで低下していると。
一方で、後に申しました専門的・技術的職業の従事者や事務従事者が、合わせますと36%を超えるような状況になってございます。
そうしますと、工場労働者であれば工場が操業している、操業していないということなどにもちまして、比較的一律的に残業の有無、あるいは指示といったことも把握できるかと思いますけれども、今の状況ですと、専門的・技術的職業従事者ということになりますと、一人一人が多様な働き方をしているというところからして、残業命令がある場合、これをしっかりと把握するということが個別的になりますこと、また、北野委員から御指摘もありましたけれども、労働者性あるいは労働時間制についても、かなり多様な紛争といいますか争いが考えられる、問題になり得るという状況かと思います。
こういった状況を踏まえれば、今、輪島委員から申しましたとおり、企業実務としまして、大量に発生する債権として賃金を支払っているという中、こうした権利義務関係を早期に確定させるといったことの必要性、法的安定性といった点にはしっかりと、時代の変化を捉まえた留意が必要と考えております。
長くなりましたが以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
池田委員。
○池田委員 ありがとうございます。
時代ということの繋がりになるかどうかあれなのですけれども、賃金債権の消滅時効が仮に延長された場合の懸念について1点申し上げさせていただきたいと思います。
現在、多くの企業で、同一労働賃金の対応として、賃金各種手当などの見直しが進んでいるところでございます。ただ行政のガイドラインや幾つかの判例など、参考となる情報が非常に少なく、また解釈の部分においては、その多くが今後の訴訟やその判決によることとなってございます。それが現状でございます。
そのため、現時点で入手できる情報をもとに、賃金項目の内容や各種手当について、企業の労使で検討を重ねて、労使双方で合意をしながら、コストや時間をかけて見直しを行ったにもかかわらず、今後最高裁判決が出るなど新たな情報が出ることで、違法とされる可能性が残ってしまうという状況でございます。
もちろん企業は、裁判所の判決を真摯に受けとめて、さらなる制度見直しを検討することは必要と思いますけれども、一方でこうした判決が出る以前の、すなわち不合理性判断の予見可能性が低い状況の中で、しかも労使で合意されていた内容にもかかわらず、労働者から各種賃金の請求をされるということは違和感があります。
仮に時効期間が延長された場合は、こうしたケースでも現行法以上に何年もさかのぼって、労働者から賃金や手当を請求されるということが想定されますので、その点を非常に懸念しております。
ありがとうございます。以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
仁平委員。
○仁平委員 見直しの時期、施行期日等について、前回も申し上げたことなのですけど、再度申し上げたいと思います。
まず見直しの時期については、有識者会議においても早く方向性を示すべきとの意見が出されておりますが、我々労働側も同意見でございまして、改正民法が施行される2020年4月になっても労基法上の消滅時効がどうなるのか不透明なまま議論を長引かせるべきではないと考えております。
改正民法施行と同時に、5年の消滅時効期間の適用が受けられるようにすべきであって、早急に見直すべきであると考えております。
賃金については、民法の624条で規定されているように、約した労働が終わった後でなければ請求することができず、賃金請求権の発生時期については最高裁においても実体法上の賃金請求権は、労務の給付と対価的関係に立ち、一般的には労働者において現実に就労することによって初めて発生すると述べられております。
改めて、賃金請求権の労務の供給との対価性及び賃金が後払いの性格を持っているということを踏まえれば、経過措置については施行日以降に発生した賃金等から、新たな消滅時効期間が適用されるべきと考えております。
直近の動きということでは、さまざまな雇用形態、労働契約が存在して、複雑多様化しているところでございます。労働契約日を適用の基準として考えますと、多様な個々の契約一つ一つについて新たな労働契約の締結に当たるのか否かを改めて判断しなければならず、現場において、新たな紛争の原因となるのではないかと思っております。労基法の労働者保護という視点も踏まえて考えるべきです。
これまで申し上げてきたことですが、改めて意見を申し上げておきたいと思います。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
鳥澤委員。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
前回までの分科会の発言と一部重複しますが、賃金等請求権の消滅時効について、改めて意見を申し上げます。
日本商工会議所では、先月、全国の中小企業2,000社を対象に賃金債権の消滅時効に関する影響を調査いたしました。
その結果、消滅時効の延長について「経営への影響がある」と回答した企業は82%で、その理由として、77.5%の企業が「繰り越し分の有給休暇の一括取得への懸念」、次に48.4%が「賃金台帳等の管理負担やコストの増加」、26.1%が「訴訟・紛争リスク」を挙げております。
加えて、個別の企業へのヒアリングも実施しましたが、多くの企業はこれらの懸念をやはり申し上げていました。
たしか前回、帳簿書類等について、既に税法上7年間の保管義務が課せられている中、賃金の根拠となる書類を5年間保管することが、なぜ企業側に負担になるのかというご発言がありましたが、一つだけ企業経営側から言わせていただきますと、決算書というのはあくまでも最終的な「確定書類」でございます。
賃金の計算には、そういった「確定書類」だけではなく、勤怠記録や業務指示などの「経過書類」との照合が必要になります。特に、訴訟時には必ず「経過書類」が必要になるため、同類の書類の保管といっても、賃金の計算に関連する書類やデータは非常に多岐にわたります。また、「経過書類」は、その性質上、指示書などの紙ベースのものが多いということもあって、保管負担は非常に大きくなります。
さらに、賃金というのは私ども使用者側も同じように生活に直結する非常に重要なものだと考えております。だからこそ、民法を下回るということではなく、速やかに解決を図っていくことが労使ともに必要ではないかと思っております。
こうした事情を踏まえますと、私は賃金等の請求権の消滅時効は2年を維持すべきではないかと考えます。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
川野委員。
○川野委員 ありがとうございます。
記録の保存について、これまでもさまざま意見があったところですが、先日、私どもの組織の労使会議という会議体において、直接経営者の方々に話を聞く機会がございました。前置きしますと、私どもの組織の8割は中小企業で構成されており、集まった四十数社の方々もほぼ中小企業の経営者と労働組合の役員です。
そこの中で、先ほど時代の変化という発言もありましたけれども、直近で言いますと働き方改革関連法に基づき、時間外労働の上限規制が始まって、雇用形態間の不合理な待遇差の解消などの同一労働同一賃金の法整備もこれからスタートします。賃金台帳の話も先ほどありましたが、そうしたもろもろの労務管理を紙ベースで対応されているところがどれほどあるのですかと率直にお聞きしたところ、一社もありませんでした。
いま、社労士や労務管理士のアドバイスを受けて、安価に活用ができるようなものがあって、記録をCDやクラウドに預けて長期にわたって保管することを企業のリスク管理の一環としてやっています。中小企業の経営者の方々が言われていましたが、記録の管理に時間や手間をかけるということを軽減すべく、ITを導入してないと今、経営ができないのだというような素直な、率直な声があります。また、ヒアリングをしている中、紙で保存しているようなところは一部ありましたけれども、それも本当にごく一部のお話であって、その実態とのギャップを埋めることが今までの議論の中ではできていないということです。
また、既に資料に記載があるのですが、民法改正時の議論では、各団体のから記録の保存に関する意見は特になかったと私どもは承知しているわけでありますけれども、ここに来て、そうした帳票管理、記録の保存について、幾度にわたって負担であるという話があるわけです。先ほども申し上げましたけれども、企業におけるリスク管理の観点からは、企業運営に関するさまざまな情報を記録、保存せねばならず、そうしたことが労働債権に限って大変であるということには当たらないのではないかと思っておりますので、改めて意見を申し上げさせていただきました。
○荒木会長 ありがとうございました。
鳥澤委員。
○鳥澤委員 ただ今、川野委員よりご発言がありましたが、例えば、賃金台帳などの「確定書類」は確かに紙ベースで保管する企業は少ないかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、「経過書類」はその性質上、紙ベースで保管している企業がほとんどだと思いますので、やはりその差を考えていただきたいと存じます。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございます。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
川野委員御所属のJAMでは、紙でやっているところは1社もないということなので、大変立派なのだろうなと思います。私どもの聞いている範囲では、実態としては今、鳥澤委員が申し上げたとおりですが、それでは水かけ論になるので、監督課にお伺いしたいと思っておりますけども、実態としてどうなのか。特に臨検とか是正指導とかで企業に入るとき、例えば2年分の書類はダンボールで幾つ分ぐらいなのか、それが5年になると掛ける2.5倍ぐらいになるのか。特に紙でやっている実態がどうなのかということを、今日すぐに、というわけではないですけれども、この場で労使で言い合っていてもあまり建設的ではないと思うので、監督課から教えていただきたいと思います。
○荒木会長 きょうの時点でということではないということのようですけれども、現時点で事務局から何かお答えいただけますか。
監督課長。
○監督課長 監督課長でございます。
今、輪島委員から御指摘がございましたけれども、おっしゃっていただいたとおり手元に詳しい状況は持ち合わせておりませんので、どういった形で把握ができるのかということも含めまして、少し整理をさせていただければと考えております。
○荒木会長 そういうことで検討いただきたいと思います。
ほかにはいかがでしょうか。
津村委員。
○津村委員 ありがとうございます。
賃金請求権以外の消滅時効の関係で改めて意見を申し上げたいと思います。
きょうまとめていただいた資料の3ページの一番下のポツにも書いてありますが、労災保険法の関係で改めて申し上げたいと思います。
労基法では、負傷や疾病等の労働者の業務上災害については、その補償責任を使用者に負わせるということになっておりますが、そもそも使用者にその支払い能力がなければ、労働者は補償を受けることは当然できなくなるわけであります。
そういった意味で、労災保険法はこの使用者責任を担保していると。こうした観点で考えれば、労災保険法に定める消滅時効期間につきましても、当然ながら労基法と整合性のある改正を行うべきということについて、再度、労働側としての発言とさせていただきたいと思います。
ありがとうございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
川田委員。
○川田委員 ありがとうございます。
私は前回、この会を欠席していたということもあって、現在かなり具体性の高い議論になっていると思いますが、それと比べるとやや大ざっぱになってしまうところがありますけれども、この間の議論に関して考えたことを3点ほど述べたいと思います。
1点目が、民法との関係のような基本的な制度の枠組みのあり方についてです。
これはあくまでも私なりの理解ですが、今回民法が改正されて、短期消滅時効が廃止された点については、全体として、個別の領域、個別の事項に関する時効のあり方については、ある程度柔軟に特別法の規定に委ねていくというスタンスを、以前と比べると強く持っているということになるのではないかと考えております。
そうしますと、既にそのような議論が進展しているということかとは思いますが、労働関係における消滅時効については、まさに労働関係の状況を踏まえた議論が必要なのだろうと思います。
民法との関係を措くとしても、まさにこの分科会のような労使あるいは公益、それぞれの立場から雇用関係の実情を踏まえた議論ができる場があるということからすれば、ここではそのようなことをするということが大事だと考えております。
2点目として、その話の続きの部分もありますが、現在時効期間を検討すべき対象になっている問題としては、割増賃金を含む賃金が一番大きな問題だと思いますが、そのほか年休や災害補償、あるいはさらに細かいところまで見ていくと例えば労基法22条で定められている解雇理由とか退職日の証明書の交付など、いろいろなものがあり得るわけです。それらについては、今述べた具体的な状況を踏まえた議論という中で、関連する制度の趣旨であるとか、あるいは例えば災害補償であれば労災保険制度や民事の損害賠償といった隣接する制度との関係などを踏まえて、必ずしも時効期間を労基法全体で一律にする必要はなく、具体的な状況に応じて個別に決めていくということが、積極的に検討されてよいのではないかと考えています。
3点目として、賃金に関しては、具体的な内容すなわち時効の期間や起算点あるいは制度を変更する場合の経過措置等については、私自身、まだ十分考えがまとまり切っていないところもありますが、全体を考える上での基本になる考え方として、原則論としては労働者に払われるべき賃金は確実に全額払われるべきというところは出発点というか、議論のベースとして重要なのだろうと考えております。
例えば、時効制度のあり方を考えるときにあわせて、労働者の側で払われるべき賃金が適切に払われてないのではないかということについて疑義を感じたときに、苦情相談等を行うことが躊躇なくできるというような形で早期に問題を解決するような仕組みをあわせて整備していくのかどうか。あるいは、時効期間を例えば少し長目にすることで、使用者側に問題があればそれを早期に発見して解決することを促すというような考え方でいくのかなど、方向性は必ずしも一様ではないと思いますが、時効制度のあり方を考える上で、それが労働者に払われるべき賃金が確実に払われるということにどうつながっていくのかという視点が大事なのではないかと思っています。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
早乙女委員。
○早乙女委員 ありがとうございます。
私からは、先ほどの3の消滅時効期間について意見を述べたいと思います。
いただいております参考資料No.1の19ページから20ページを見ますと、諸外国では賃金の出訴期限が民法より短く設定されているケースが多く見受けられます。
例えばフランスでは、法的安定性の確保を理由に、消滅時効を3年に短縮しておりますし、イギリスでは、速やかな申し立てと契約関係訴訟の不確実性を排除するために、出訴期限を3カ月、また、絶対的遡及期間上限を2年としております。
このようなことも参考にしつつ、早期の権利義務関係の明確化の重要性についても考慮しながら議論を進めていくべきではないかと思っております。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
佐久間委員。
○佐久間委員 ありがとうございます。
事務局のほうで用意していただきましたこの資料No.1には、これまでの各労使双方の議論の意見が全部入っていると思います。労使双方の想い、意見がここに集約されているのではないかと思います。
先ほど輪島委員も言われていましたけれども、雇用の7割を支える中小企業の中で、中堅企業クラスというのは、それなりにコンピューター化が進んで、ICT化はもう十分進んでいると思います。
その中でどうしても100人以下になってきますと、例えばタイムカードがアナログ式の旧態依然のものが入ったり、あるいは入っていなかったりとか、労務の関係のソフトであっても、統合的な労務管理ソフトというのはまだ全部が入っているわけではございません。
一部会計とか、一部出退勤がもしかしたらあるかもしれませんけども、それが全部が全部入っているわけではないということを理解いただきたいと思います。
中小企業はどうしても負債比率というのが非常に高い中で、この適用というか、2年、5年の議論がありますけれども、これが長くなると、今、資金の融通というのはゆるくなっているとはいえ、設備投資に向けられる資金というのは比較的貸してくれそうなところがあるのですけども、運転資金的なものは金融機関も厳しい状況はあると思います。
そこの中で、賃金の不払いが生じたとかいうことで、払うことは当然なのですけども、そういうものの資金繰りが非常に厳しくなって、やはり中小企業がそのままで倒産をしてしまうということも十分考えられます。
大企業と違いまして、弱い立場の中小企業という状況もありますので、ぜひともこの辺の期限というのは、これからも慎重に検討していただいて、例えば特別法という性格を十分考慮していただくことは、必要なのではないかと考えております。
以上でございます。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
池田委員。
○池田委員 ありがとうございます。
議論というか皆さんの意見が、中小企業だと労働時間管理の手法がデータ化されていないので大変というような流れですけれども、もし労働時間に関する部分で、その管理面が問われる場になったときには、決して中小企業だけではなくて、仮に大企業と言われるような企業であっても、膨大な証明するための資料が求められることになりますので、紛争ですとかの場で、自らが適正だということを証明するために、紙であろうと何であろうと、非常に多くのデータが必要になり大変だということに変わりはありません。
その意味では、いろいろ保管期限とか、先ほどから鳥澤委員がおっしゃっているような定型的な決められたものというのはあるのかもしれませんが、それ以上に膨大に必要と考えられる資料等がふえてくるということでいうと、現状でもかなり負担感がございますが、さらに負担がふえることについてはぜひとも御理解をいただきたいと思っております。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございます。
齋藤委員。
○齋藤委員 ありがとうございます。
消滅時効の期間について、1つ御意見申し上げたいと思っております。
賃金債権の特殊性という観点からでございますが、先般からも御意見がありますように、賃金について後払いという性質を持っているものでありまして、特に時間外労働につきましては、上司からの明示または黙示の指示に基づいて仕事をして、賃金が発生をするという形になろうかと思っています。
一般的な債権につきましては、ある程度事前に契約書を交わしたりしておけば、権利義務関係の確定はできるとは思うのですけれども、後払いという性質がある以上、なかなかこの権利義務関係の確定が難しい債権が賃金債権ではなかろうかと考えております。
そのこともあって、何時間働くように指示があって何時間働いたかというようなところが争いになるケースは非常に多くあるというのがこの賃金債権ではなかろうかと思っております。
そういった点も踏まえて、権利義務関係の明確な確定、早期な確定をしていくことが、この案件については必要ではないかと考えております。
すなわち消滅時効の期間についても、そういった点をしっかり踏まえた上での議論を進めていけたらなと考えておりますので、意見として申し上げさせていただきます。
○荒木会長 ありがとうございました。
川野委員。
○川野委員 ありがとうございます。
重ねての意見ですが、この間の議論は労働基準法の議論であって、労働者保護の視点から我々は意見を主張してきたつもりでございます。記録の管理を煩雑さが伴うようなものにしたくないという使用者側の考えはわかりますけれども、負担の増加ばかりがクローズアップされて、労働者にとって重要な賃金債権の消滅時効の議論や、労基法の労働者の保護という観点が軽視されているように映って仕方ないので、改めて御意見を申し上げさせていただきました。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
安藤委員も御出席で、今の川野委員の御発言にも関係があるかもしれませんので、前回安藤委員からいただいていたご質問について、申し上げておきたいと思います。
安藤委員から、経過措置について契約日基準とした場合と債権日基準とした場合で、労務管理上どういう差があるのかというご質問だったと承知をしております。結論から言うと、経過措置の違いによって労務管理上の煩雑さに違いは生まれないと考えております。
委員御指摘のとおり、契約日基準とした場合でも債権日基準とした場合でも、仮に時効を延長するということであれば、延長後の時効に合わせて、さらなる記録の保存、労務管理を行うということになって、時効の延長に伴うコストがふえるということについては同じ。コストがふえるという点は同じだと考えております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
きょうも新たに、検討要するような点も提起されたと思いますので、さらに議論を深めてまいりたいと考えております。
それでは、次の議題に移りたいと思います。
「(2)副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について」であります。
事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 労働条件政策課の手倉森です。
資料No.2につきまして、私のほうから説明させていただきます。また、参考資料No.2、3、4も関連する資料ですので、適宜御参照いただければと思います。
資料No.2をごらんください。「副業・兼業の場合の労働時間管理について」でございます。
1枚おめくりいただきまして「労働時間通算の規定について」でございます。資料は大きく4つのパートに分かれておりまして、その1つ目になります。
労働時間の通算規定につきましては、前々回の審議会で輪島委員の方から、これまでの経緯について取りまとめて資料を出すようにといった御指摘をいただいておりまして、その関係の資料でもございます。
2ページは、工場法制定時ということでございます。
工場法3条1項のところで、工場主は16歳未満、あと女子については11時間を超えて就業をさせることができないといった規定がございます。
2項のほうでは、就業時間を延ばす場合は2時間だけということが規定されているのですが、その関連で3項でございます。就業時間は工場を異にする場合といえども通算するといった規定があったということでございます。
さらにその下、工場法の注釈本になりますが、なお数工場主の使用したる時間を合算し法規違反を構成する場合は云々と書いてあります。
これ自体は、法違反あるいは処罰に関する部分を解説しておりますが、その前提といたしまして、数工場主の使用したる時間を合算しということで、事業主が違う場合も合算するといった点が見てとれるといったものでございます。
3ページ目は、労働基準法の関係でございます。
38条で、事業場を異にする場合も通算するといった規定がございまして、通達で事業主を異にする場合も含むといったことが出されています。
さらにその下で注釈本ですが、事業場を異にする場合は使用者が同一の場合であっても別人であっても、労働時間制の適用についてはこれを通算するといったものがあるということでございます。
その下は、行政が出しております解説あるいは質疑応答でございますので、また御参照いただければと思います。
スライドの4ページをごらんいただければと思います。こういった規定や行政解釈がある一方で、有識者の検討会での指摘をまとめているのが4ページ以降になります。
1つ目ですが「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会報告書」というのが平成17年に取りまとめられております。
その中の(2)のア、兼業禁止義務という部分でございますが、兼業の制限を原則無効とする場合には、使用者の管理が及ばなくなることとの関係から、38条について適用しないこととすることが必要になると考えられるといった指摘があるところでございます。
その下は「柔軟な働き方に関する検討会」、平成29年12月に取りまとめられたものでございますが、その中で2の○のところで労働時間・健康管理(労働時間通算)につきまして、労働時間通算のあり方については、通達発出時と社会の状況、労働時間法制が異なっているという社会の変化を踏まえて見直すべき、別途検討を行うことが必要といった指摘がなされています。
一方「なお」というところで、ヒアリングにおいて、労働時間通算規定の現行の労働時間ルールを遵守すべきといった意見もあったということで、報告が取りまとめられているところでございます。
スライドの5ページは「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会報告書」、本年の8月に取りまとめられた検討会の報告書でございます。
その真ん中あたりの「2.労働時間通算の規定等について」でございますが、(1)で労働時間通算の歴史的経緯、1つ目の○で先ほど御紹介しました工場法の関係が書かれております。
工場法3条の規定と、当時の注釈書からはという部分がありますが、追加的な情報としては注の(5)になりますが、ただし、使用者が異なれば通算しないという説もあったという部分が、この報告書では指摘されております。
その下の○は基準法の関係でございます。
その下の○が検討会報告書でございまして、この部分は、先ほどありました2つの検討会報告書について指摘されているということでございます。
以上が、規定に関するこれまでの経緯でございます。
1枚おめくりいただきまして、兼業・副業の促進に関するガイドライン、Q&A、モデル就業規則でございますが、今まで公表されているものについて取りまとめているものでございます。これまでごらんになった部分もあるかと思いますが、御説明を簡単にさせていただければと思います。
スライドの8ページは「副業・兼業の促進に関するガイドライン」ということで平成30年1月に策定されております。
ガイドラインの中では、副業・兼業の現状と促進の方向性がありまして、3で企業の対応ということで、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが適当であると。
2つ目のポツで、労務提供上の支障等の観点から、労働者から申請・届出をさせることが考えられる。
3つ目のポツで、就業時間の把握ということで、自己申告で把握することが考えられるということ等が定められております。
4が労働者の対応ということで、労働者側も企業のルールを確認した上で、副業・兼業を選択する必要がある。あるいは、労働者みずから業務量、健康状態の管理等が必要といったことが指摘されております。
スライドの9ページは、副業・兼業における労働時間管理についてのQ&Aということで、先ほどのガイドラインの補足資料という位置づけで公表されているものでございます。
9ページが原則的な考え方でございます。自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合の時間の規定の適用はどうなるのかということでございます。
答えの1のところで、38条と通達について紹介されております。
2のところで、法定労働時間を超えて労働させる場合、使用者は自社で発生した法定時間外労働について36協定の締結あるいは割増賃金を払わなければならない。
3のところで、このとき、労働基準法上の義務を負うのは、それぞれの法定時間外労働が発生した使用者ということになる。
したがって、4でございますが、一般的には通算により法定時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約を時間的に後から契約した使用者が、契約に当たって、労働者の他の事業場での労働を確認した上で、契約締結する必要があるということで、同法上の義務を負うことになる。
加えまして、5なのですが、通算した所定労働時間が既に法定労働時間に達していることを知りながら、労働時間を延長するという場合には、先に契約を結んだ使用者も含めて、同法上の義務を負うということが示されております。
その後、Q&Aの2から5につきましては、1日単位あるいは1週間単位で事例を置いて説明している部分になりますので、また適宜御参照いただければと思います。
スライドの14ページは、同じく平成30年にモデル就業規則も改定されております。
14ページの下をごらんいただきますと、改定前につきましては、許可なく他の会社等の業務に従事してはならないとされていたところでございますが、改定後につきましては、真ん中でございます67条ということで、労働者は勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2項は、事前に会社に所定の届出を行うものとする。
3は裁判例を参考にしまして、禁止制限事項等をまとめている。
そういった形のモデル就業規則が示されているということでございます。
続きまして、「副業・兼業に関する企業の事例」をごらんいただければと思います。
16ページをごらんいただければと思いますが、この資料につきましては「副業・兼業による場合の労働時間の管理の在り方に関する検討会」の資料から抜粋したものでございまして、こちらの検討会のほうで企業11社からヒアリングを行っております。
参考資料No.4をごらんいただきますと、AからKまで11社につきまして、各企業単位でヒアリングの結果をまとめておるものでございますが、本日御提出しております資料は、会社単位ではなくて、それぞれのヒアリング項目について横串で整理したものでございます。
これを見ていきますと、各社さまざまな取り組み、工夫をされている点が読み取れますが、全般的な点につきましては参考資料No.4の一番最後の25ページをごらんいただければと思います。企業ヒアリング結果の概要でございます。
副業・兼業を認める企業の類型ということでありますが、例えば以下のような考え方が見られたということで、1つ目で、自社の人材の能力を高め、あるいは企業として生産性の向上やイノベーションを進めていきたいという考えで副業・兼業を認める企業があったという一方で、2でございますが、収入面、自己実現といった観点から「労働者の自由」を実現するといった観点、あるいは法令遵守、企業秩序に反しない範囲で認めようとする考え。あと、労働者に魅力を感じてもらい、人材確保に役立てたいという考えが見られたといったことがまとめられております。
その下ですが、副業・兼業の労務管理上の取り扱いということで、1つ目の○ですが、副業・兼業先にそもそも雇用を認めない、あるいは時間通算の問題が生じないように、通算して法定労働時間内の副業・兼業しか認めないといった取り扱いの企業が多かったということでございます。
2つ目の○ですが、こうした取り扱いをする理由としましては、労働基準法38条を遵守した制度運営ができない、コンプライアンス上、実施できないといったことがあった。具体的にはということで「日々の労働時間管理が実務上できない」「労働者の申告に信頼性がない」等々の御意見があったというところでございます。
3つ目の○ですが、こうした労働時間通算の問題の運用が可能な状況になれば、副業・兼業先に雇用を認めるといったことができるようになる企業も多かったということでございます。
一番下の○ですが、副業・兼業に関する現行制度への意見要望を聞いたところということで、下のポツですが、労働者の健康確保などの観点から、時間通算が必要ということは理解できる。しかし、実務の扱いが困難なため対応ができないと感じているといった御意見もあったというところでございます。
資料No.2にお戻りいただければと思います。
続きまして、労働条件分科会におけるこれまでの主な御意見と今後検討すべき事項のイメージをごらんいただければと思います。
まず、24ページでございます。労働条件分科会における主な御意見ということで、これまで委員の皆様方からいただいた御意見について、少しまとめさせていただいたものでございます。
1つ目の○ですが、事業主を異にする場合でも労働時間を通算するという解釈は維持すべき。上限規制、割増賃金の支払いについて労働時間を通算すべきといった御意見があったところでございます。
2つ目の○でございますが、副業・兼業を普及促進するということで、労働者の健康阻害ということでは本末転倒、労働者の健康確保が最も大事といった御意見もいただいております。
3つ目の○も、過重労働防止や健康確保に加えまして、安全配慮あるいは個人情報等、さまざまな問題や課題をバランスよく満たす方法について丁寧に検討すべきといった御意見をいただいているところでございます。
2つ目のブロックでございますが、企業が副業・兼業を認めない理由は、企業の実務の観点から労働時間通算への規定の対応が難しいと。企業実務に困難のない労働時間管理、労務管理ができる議論を進めるべきといった御意見があったところでございます。
その下の○でございますが、労働時間管理や働き過ぎ防止のための実効的な仕組みを考える必要がある。あと、労働安全衛生、あるいは労働者、企業にどこまで情報を求めるかといった問題を多角的に捉えて検討する必要があるといったご指摘もいただいております。
その下の3つ目の固まりですが、副業・兼業把握にかかる自己申告について、どのように把握すべきかといった点、さらに2つ目の○ですが、副業・兼業を認める場合に、どのような情報が必要なのかといった御意見、3つ目の○ですが、労働時間の把握は自己申告が現実的。4つ目の○ですが、時間通算した場合の時間外労働に関する企業による対応についても検討すべき。最後の○ですが、労働者の自己申告で労働時間把握は一つの選択肢、ただ時間管理、健康管理の責任は一義的に使用者が負うといった原則に戻って検討すべきといった御意見もいただいているところでございます。
さらに4つ目のブロックでございますが、副業・兼業の場合の労働契約の先後に応じた労働時間の捉え方について、一般的に理解されているのか。
2つ目の○ですが、学生時代のアルバイトを継続したまま就職した場合、要するに副業、本業の捉え方ということかと思いますが、そういった点についても整理が必要である。
3つ目の○ですが、就業先が3つになったらどう考えるのか。
さらに競業避止、情報漏えい等についても御指摘をいただいておるところでございます。
※で、この他ということで、健康確保についても御指摘をいただいているところでございます。
25ページは、先ほどの委員の皆様からいただいた主な意見をさらに要約したものでございまして、今般検討をすべき事項のイメージとしてまとめております。したがって、論点整理や今後の方向性を示した資料ではございませんでして、今後いろいろ議論していただく中で、変わっていくといった位置づけのもので考えております。
1つ目の○でございますが、総論的なものでございますけれども、労働者の健康確保に留意して、長時間労働・過重労働につながらないという観点を持ちながら、実効性ある労働時間管理のあり方といったものが一つあるのではなかろうかと考えております。
2つ目のブロックですが、副業・兼業の確認、あとその判断に必要となる情報。その下の○は労働時間の関係ですが、特に自己申告による労働時間の把握、3つ目の○ですが、その際に必要となる情報。
その下、3つ目のブロックですが、本業、副業の考え方あるいは3つ以上になった場合。3つ目の○ですが、月単位等、使用者の労務負担の軽減を図りながら簡便に労働時間を管理する方法。
最後の○ですが、副業・兼業の場合の競業避止・情報漏えい。
今までいただいた御意見からすると、こういったものが検討事項ではなかろうかということでまとめているものでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、御意見、御意見があればお願いいたします。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
1点、資料の補強といいますか、使用者側として申し上げていた点が抜けているのではないかということで改めて申し上げておきたいと思います。
今、御説明をいただいた24ページと25ページの最後のところですけれども、24ページの一番最後の○、競業避止・情報漏えいへの問題等ということですが、使用者側としては安全配慮義務についてどうなのかということについても意見として申し上げてきました。これは安全衛生分科会の所掌なので、最後の25ページの労働条件分科会におけるこれまでの主な意見ということにならないのかもしれませんが、私どもとしては安全配慮義務に重大な関心を持っていますので、24ページの下のところに、競業避止・情報漏えいへの問題等ということで、安全配慮義務を入れていただきたい。それと同じように、25ページの一番最後についても同じような文言を入れていただきたい、ということをお願いしておきます。
○荒木会長 ありがとうございました。
世永委員。
○世永委員 ありがとうございます。
副業・兼業の労働時間管理について発言させていただきます。
副業・兼業の場合の労働時間管理に関する議論の進め方につきまして、先ほど事務局から25ページのイメージも含めて内容が提案されました。基本的にこの方向で良いと思っています。
ただ、労働時間管理の具体的なあり方を議論するにあたっては、この間、議論してきました労働者の健康や安全を最優先するべきであり、副業・兼業を含めた労働時間管理や健康確保、安全配慮義務等を履行できない企業において、副業・兼業を認めることについては慎重に対応していかなければならないと考えております。
また、労基法第36条に基づく時間外労働は、あくまで例外的に許容されるものであり、労働側としましては、所定労働時間を合計すると、法定労働時間を超えるような副業・兼業については慎重であるべきと考えています。
資料No.2の16ページに企業の実例が記載されておりますけども、C社の関係でいきますと、本業と副業・兼業の実労働時間の合計が週40時間以下とする者のみ副業・兼業が可能とされています。このような歯どめを検討することが必要ではないかと考えております。
こうした課題もあることから、そもそもどのような場合に副業・兼業が認められないのかということについても、いま一度整理していく必要があると考えております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございます。
仁平委員。
○仁平委員 世永委員と同じような話になりますが、労働時間の通算に関しまして、労働側としては法規定や行政解釈を踏まえて、25ページに書いてある今後の検討すべき事項のイメージをもとに議論を進めるという趣旨だと受けとめたいと思っておりますし、そのような趣旨から、このイメージについて、このような形で進めていくということで、ぜひ丁寧な御議論をお願いしたいと思っております。
以上です。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
早乙女委員。
○早乙女委員 ありがとうございます。
私も感想になりますが、資料No.2の17ページ下段の各企業の事例について、各社とも健康管理の方法については、かなり留意をして取り組んでいるという印象を受けました。
例えばC社については、1カ月30時間を超える副業は禁止しており、これを超過した時点で副業の許可を取り消す規定を設けている、とあります。こうした、長時間労働とならないような取り組みは大切であると思います。
企業としても、いかに従業員の健康確保を行っていくかという点について気を配っておりますので、ぜひこのような取り組みを参考にしながら議論すべきであると考えます。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
両角委員。
○両角委員 ありがとうございます。
副業・兼業のルールについて議論する際に、具体的にどういう労働者をイメージするかという問題があるかと思います。今回の副業・兼業の促進という政策的なお話の中では、本業といえるものがあって、一定の収入を得ている労働者が、自分のキャリアをさらに磨きたいとか能力を発揮したいという理由で副業をするような場合が主としてイメージされており、そのような副業や兼業について余り妨げがあってはいけないということであるように思います。
他方で、副業・兼業には、生活に必要な収入や十分な収入を得るために幾つもの仕事をかけ持ちしているような、必ずしも本業が明確でない類型もあると思います。副業・兼業について新しいルールや制度について考える場合には、このようなタイプの副業・兼業をしている労働者に対してどういう影響があるのかということもあわせて考慮していく必要があると考えております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
安藤委員。
○安藤委員 これまでの議論を聞いていると、副業・兼業について、ここに御出席いただいている労使双方がいろいろな問題点を指摘していて、率直に言うと余り積極的ではないように感じております。
今、両角委員からあったとおり、さまざまな副業・兼業をやっている労働者がいて、またその人に仕事を発注している企業も実際あるわけです。
そのことを踏まえますと、今、ここに御出席の皆さんの企業では、労使双方にとって副業や兼業の必要性を感じていなかったとしても、ここに出席している労働政策審議会のメンバーというのは、全ての労働者と全ての企業の代表者ということをぜひ踏まえていただいて、そういう働き方を希望している労働者の意見であったり、また、そういう働き方を必要としている企業の視点からも、ぜひ御意見や情報提供をお願いしたいと思っています。
そう申しますのも、私も委員として参加した2016年の秋に開催された「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」において、そもそも労働政策審議会のメンバーが、きちんと労働者や企業の意見を代表しているのか。この人選で本当に正しいのか、三者構成というのがどの範囲でILOの条約で求められているのかという点をかなり議論したわけです。
そこでの議論も踏まえて、今の労働政策審議会労働条件分科会もメンバーが組織されているということを考えると、ここに出席されている企業とは異なる幅広い企業または労働者の意見についてもぜひ御議論に加えていただきたいと思っています。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
鳥澤委員。
○鳥澤委員 先ほど日商でアンケートしたと申し上げましたが、こちらのテーマについても調査をいたしました。
日商の調査では、副業・兼業を認めていない中小企業は73%で、その理由は、67%の企業が「社員の長時間労働、過重労働につながりかねない」、49%の企業が「社員の総労働時間の把握、管理が困難」ということを挙げております。
これについて、個別企業へのヒアリングをしたところ、「副業先または本業先の労働時間を正確に把握することは実務上困難である」、「政府が副業・兼業を推進するならば、労働者の健康確保への留意を前提に、労働時間を通算することなく、事業場ごとに管理・把握すべき」という声がありました。
もう一つ、特筆すべきだと思ったのが、「本業先の労働時間管理が曖昧であったため、過去の分にさかのぼって、相当額の割増賃金が後々発生した」という事例がございました。
こういった状況を踏まえますと、資料の中では認めているケースが出ていましたが、これはほとんどの場合、本業元が副業を認めるケースだと思割れます。一方で、副業先の許可状況等についても、調査をする必要があるのではないかと思っています。
副業・兼業の際の労働時間の管理は、労働者の自己申告を前提とした実効性のある仕組みを構築することが必要であると考えます。ただ、そうは言いつつも、先ほど安藤委員のご発言にあったように、高い技術やさまざまな能力のある人が1つの企業にしばられることなく、多くの企業でその能力を発揮するということ自体は、中小企業の活性化等にもつながることだと思いますので、今後、より密な議論ができればと思っています。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
水島委員。
○水島委員 ありがとうございます。
現在、ほかの検討会、分科会で、副業・兼業の場合の議論が同時並行的に行われておりますが、私が出席させていただいている検討会等では、労働条件分科会の動き、議論が大変注目されております。
特に、労働条件分科会が本業、副業・兼業をどのように定義するのかが注目され、質問されています。
さまざまな論点があることは承知しておりますが、今後検討すべき事項のうち、本業、副業・兼業先の考え方とか、3つ以上になった場合の定義は、労働条件分科会として、優先順位を早めて検討したほうがよいのではと考えます。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
昭和23年の通達に基づいて、使用者が異なっても通算するという解釈を行政はとってきておりますけれども、その後、労働基準法も改正されて、例えばフレックスタイムのような場合には本業における労働時間が日々変動するわけでありまして、先ほどの紹介の中で、週単位で労働時間のチェックをするという企業の事例もありましたけれども、労基法32条では、1日単位で8時間を超える労働禁止しております。
ヨーロッパは、時間外労働を含めて週48時間を超えてはいけないという週単位ですけれども、日本の労基法は1日単位です。この場合に、使用者が異なって、どう通算して、どうチェックをしていくのかという根本問題があるということもございます。
水島委員の御指摘は、そういう点も含めて、この労働条件分科会でどのように考えていくかということについて、さらに検討すべき課題を御指摘いただいたと思います。
それでは、このテーマもさらに議論を詰めていきたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。
事務局から。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
今の分科会長含めまして委員の皆様からいただいた御意見それぞれを考慮しながら、今後の御議論を進めていただけますように努力してまいりたいと存じます。
1点、先ほど副業として受け入れる側の視点といったところも必要だという御指摘もいただきました。若干御紹介をさせていただきますと、お配りしております資料No.2、企業の事例が載っておりますものの18ページをお開きいただきたいと存じます。
こちらのヒアリングに関しましては、厚生労働省の事務局におきまして、この11社を御訪問させていただいたというものでございます。
AからGでございますが、その11社のうちの7社に関しましては、みずから副業・兼業を前向きに取り組んでいらっしゃるということで報道などをされていた企業でございます。
一方、HからKの4社は小売や飲食・外食、前回この場で御報告申し上げました小売・飲食・外食では、副業・兼業をやっている方が多いということで、そういったところも訪問させていただきました。
18ページは「○副業・兼業に関する制度の概要【他社で副業・兼業を行う労働者の受入が可能な場合】」ということで、送り出すだけではなくて、ほかから受け入れる場合にどのようなお取り組みをされているのかを、ちょっと分量は少ないのですが18ページにあるように書かれているところでございます。
ごらんいただきますと、ほかの就業状況も確認しているということもあれば、確認をしていないということもあれば、あるいはI社にございますように、通算した労働時間の制限すなわち法定労働時間の枠の中だけで受け入れていらっしゃるというような場合もあるというところでございます。
いずれにいたしましても、先ほど日商さんにおけますデータなどもご紹介いただきましたし、そういったものもよくよく見ながら、今後、建設的な御議論ができるように努力してまいりたいと思います。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、きょうはほかに2つ議題ございますので、(3)の議題に移りたいと思います。「(3)労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正等について」です。
事務局から説明をお願いいたします。
○監督課長 監督課長でございます。
私からは「労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について」ということで、資料No.3に沿いまして御説明をさせていただきます。
まず、資料の1ページ目をごらんいただきたいと思います。「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」ということで、いわゆる改善基準告示についてでございます。
この改善基準告示につきましては、トラックやバス、ハイヤータクシーなどの自動車運転者につきまして、労働時間等の労働条件の向上を図るために、その業務の特性を踏まえまして、全ての産業に適用される労働基準法では規制が難しい拘束時間、休息時間、運転時間などの基準を平成元年に大臣告示として制定したものでございます。
1つ下の箱をごらんいただきまして、制定の経緯でございます。もともと労働時間等の改善を定めた局長の通達などが昭和42年にございまして、その後、長時間労働あるいは交通事故などの増加、それからILO条約、関連するものが国際的に定められてきたことなどを踏まえまして、労働基準局長の通達も改正をされてきておりましたが、その後、当時の中央労働基準審議会などでの関係労使の御議論に基づきまして、平成元年にこれが告示という形で定められまして、以後、法定労働時間が短くなってきたりすることに伴いまして見直しをされてきたという経緯がありまして、大きい改正につきましては平成9年が最後になっているところでございます。
続いて、その下の箱でございますけれども、内容につきましては拘束時間、休息時間、運転時間、連続運転時間などにつきまして、3業態に応じて事情などが異なるものですから、それぞれの状況に応じて、労使の方の御議論に基づきまして決められているということで、ごく概略ですが今は業態ごとに記載のとおりのような状況になっているところでございます。
こうしてつくられております改善基準告示につきましては、一番下の箱でございますが、施行に当たりまして、まず労働基準監督署におきましては、臨検監督などに際しまして、この改善基準告示に基づきまして指導しております。労働基準法などに基づくものと別に、改善基準告示による指導をしておりまして、平成30年における監督指導の状況については括弧書きのとおりでございます。
また、この点につきましては国土交通省とも連携しておりまして、監督署と地方運輸機関で合同での監査・監督などを実施しておりますほか、改善基準告示違反をした者については、一定の基準に基づきまして相互通報という形で地方運輸機関にも通報をさせていただいております。
一番下、国土交通省の取り組みでございますけれども、こちらは過労運転防止等の観点から、国土交通省のほうでもこうした状況に基づきまして、事業許可取り消し処分等の行政処分の基準として実施されている状況でございます。
こういったことで運営されている改善基準告示でございますが、1ページおめくりいただければと思います。スライドの2枚目でございますけれども、昨年改正されました働き方改革関連法の国会附帯決議事項、自動車運転者の関連の部分だけ抜粋させていただいております。
この中で、さらに参議院の厚生労働委員会の附帯決議におきましては、項目8番ということで少し太字にさせていただいております。自動車運転者につきましては過労死等防止の観点から、改善基準告示の総拘束時間等の改善について、関係省庁と連携し速やかに検討を開始することとされております。「また」以下ですが、その見直しに当たりましては、トラック運転者について、早朝・深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など、多様な勤務実態や危険物の配送など業務の特性を十分に踏まえて、労働政策審議会で検討し、基準を定めることと記載されております。
また、衆議院の厚生労働委員会におきましても下の箱の方でございますが、特に自動車運転業務につきましては、長時間労働の実態があることに留意し、改正法施行後5年後の特例適用の間、過労死の発生を防止する観点から改善基準告示の見直しを行うなど、必要な施策の検討を進めることとなっております。
このような形で、私どもは昨年の法改正時に国会から検討を早く始めるということで宿題をいただいておりまして、こういったことから検討が必要になっていると考えているところでございます。
続きまして、資料の3ページをごらんいただければと存じます。
こちらには、今の検討を始めなければいけないということを踏まえまして、検討の場の設置でございますが、平成の初めごろに改善基準告示の見直しをしたときの検討の形態なども参考にさせていただきまして、労働条件分科会の下に、仮称でございますけれども、自動車運転者労働時間等専門委員会ということで専門の検討の場を新設して、検討をさせていただくということで、本日このような形のお諮りをさせていただきたいということでございます。
3ページの一番下でございますが、トラック、バス、ハイヤータクシーそれぞれに労使同数で検討の方に入っていただきまして、また国土交通省とも関連が深いものですから、オブザーバーで参加をお願いしたいということで考えております。
次の4ページ、5ページ目をごらんいただきたいと思います。
こちらは労働政策審議会労働条件分科会の運営規程でございますが、改正案ということで赤字で線を引いてあるところが、改正の御検討をお願いしたいということでございまして、第9条のところに、特に専門的な調査を行う必要があるときには専門委員会を置くことができるということで、位置づけをお願いさせていただきたいということでございます。
続きまして、6ページ目をごらんいただければと思います。
もし、この労働条件分科会の運営規程の改正を御了承いただけましたならば、6ページ目にございますように、自動車運転者の労働時間等に係る専門委員会の設置についてもあわせてお願いさせていただきたいと思っております。
設置趣旨の下から5行目でございますけれども、自動車運転者の多様な勤務実態や業務の特性に応じ、産業・物流の状況も踏まえた検討を要するため、労働条件分科会の下に専門委員会ということで設置し、検討する必要があるということでございます。
2番の調査事項につきましては、今ほど経緯も含めてお話し申し上げましたいわゆる改善基準告示の見直しに関する事項、それから(2)ですが、その他、自動車運転者の健康確保や過労死防止、労働時間短縮等に関しまして、関連で必要となる事項といったものの調査、御議論をお願いしたいと思っております。
3番目の組織につきましてですが、所属すべき委員、臨時委員、専門委員などにつきましては、労働条件分科会長から御指名をお願いしたいと考えております。
(2)審議会、分科会に相当するものでございますので、労使同数で御議論をお願いしたいと思っております。
以上のような形で申し上げました通り、労働条件分科会の運営規程の改正案と、自動車運転者の専門委員会の設置案についてお諮りをしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○荒木会長 ただいま説明がありました事項につきまして、御意見、御意見があればお願いいたします。
森口委員。
○森口委員 ありがとうございます。
労働側より1点質問させていただきます。
先ほど事務局から御説明がありました、専門委員会を設置できるようにする分科会運営規程の改正と、自動車運転者労働時間の専門委員会の設置に、労働側としても賛成したいと思っております。
その上で、1点質問になりますけども、専門委員会の設置の後、新たな改善基準告示の施行までのスケジュールをどのように考えているのか確認させてください。
○荒木会長 質問の点について、事務局からお願いします。
○監督課長 ありがとうございます。
私どもといたしましては、先ほど資料の2ページ目で御説明を申し上げましたとおり、まず国会で附帯決議がついております。参議院のほうをまず申し上げますと、この改善基準告示の見直しにつきまして、具体的に国土交通省などが中心だと思いますが、関係省庁と連携した上で速やかに検討を開始するということですので、本日御了承がいただけましたら、まず速やかに検討を開始したいというのが1つ目でございます。
それから、衆議院の厚生労働委員会の附帯決議の中をごらんいただきますと、太字でないところも含めて3行目ですが、改正法施行後5年後の特例適用までの間に検討を進めることとなっております。
もちろん、今後労使の方々の御議論の進展の状況、問題点の整理の状況によるかと思いますけれども、私ども事務局といたしましては、まず速やかに御議論を始めさせていただきまして、早く合意が得られますように努力をしてまいりたい。現時点で申し上げられるのは以上でございます。
○荒木会長 よろしいですか。
森口委員。
○森口委員 ありがとうございます。
1点、意見になります。自動車運転業務につきましては、2024年に時間外労働の上限規制が適用となりますけれども、上限時間は年960時間ということで、一般則を大きく上回る高い水準で設定されておりまして、我々としましては、できるだけ早く一般則を適用すべきと考えております。
自動車運転業務につきましては、依然として長時間労働の実態があり、とても大変な働き方になっている実態がございます。
過労死等防止の観点から見ましても、労災補償の状況では輸送業はワーストワンということで、長時間労働の是正は喫緊の課題であると捉えております。
また、それを改善するための改善基準告示でありますけれども、資料No.3の記載のとおり、改善告示の違反率を見てみましても、61.3%と、実効性が問われる事態となっておりまして、履行確保の徹底が急務だと捉えております。
以上のことを踏まえまして、労働側としましては、労働時間の短縮に向けて、上限規制の適用を待たずに速やかに改善基準告示を見直し、施行していくことが必要だと考えておりますので、スピード感を持った対応をお願いしたいということを意見として伝えさせていただきます。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 私どもも、基本的に過労死等は、あってはならないと考えております。働き方改革関連法においてはさまざまな議論があり、このようなかたちで2019年から施行されていると認識しておりますし、法案の審議にあたって、国会から附帯決議という形で御指示をいただいている点について重く受けとめて、今後対応してまいりたいと思っております。
以上です。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
ほかに特段御意見がないということでございましたら、ただいま事務局から御説明がありました分科会の運営規程の改正案及び自動車運転者労働時間等に係る専門委員会の設置案について、提案のとおり御承認するということでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、この分科会では運営規程の改正案と専門委員会の設置については了承いただいたこととさせていただきます。
なお、先ほどの「専門委員会の設置について」にも書いてございましたけれども、専門委員会の委員は分科会長、私のほうで指名することとさせていただきます。
それでは、次の議題に移ります。「(4)2018年度評価について」です。
事務局から説明をお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
資料No.4をごらんいただきたいと思います。「2018年度年度評価 評価シート」とございますが、表紙をめくっていただきまして1ページ目をごらんいただきたいと存じます。労働政策の推進に当たりましては、労働政策審議会の各分科会におきまして、施策の実施状況について毎年中間評価及び年度評価を行うこととしてございます。
労働条件分科会におきましては、資料の1ページ目の上の方にございます1年次有給休暇の取得率を2020年までに70%にする、2週労働時間60時間以上の雇用者の割合を2020年までに5%まで減少させるというものでございます。
これらのうち、2週労働時間60時間以上の雇用者の割合に関しましては、本年3月のこの分科会、すなわちこの評価の対象になっております昨年度のほぼ終わりの段階で、一旦中間評価ということで評価をいただきました。
今般は1の年次有給休暇の取得率に関しましてデータがそろいましたので、本日改めてご報告をさせていただいて、それを踏まえてこの年度の最終評価としたいという御趣旨でございます。
したがいまして、記述に関しましては3月時点のものから余り変わってございませんが、変わった部分を御報告させていただきます。
まず、1ページ目の1年次有給休暇取得率、2018年度実績とありますが、52.4%ということでございます。
これに関しましては、厚生労働省の就労条件総合調査で出てございますが、対象となりますのが平成30年の1月から12月の1年間における年次有給休暇、あるいは平成29年の会計年度でもデータ上構わないということになってございます。そのデータで52.4%でございますので、年5日の確実な取得の施行前の段階のデータであるというところでございます。
続きまして、2ページの下のほうでございます。この施策の実施状況の分析でございます。1年次有給休暇取得率とございますが、今、申し上げましたように52.4%ということで、前回、18年ぶりに50%を上回りましたが、さらに上昇は続いているところでございますけれども、依然といたしまして70%という目標には乖離があるところでございます。
以降、3ページにかけましては、3月時点に評価いただきましたものに関しての時点修正などを主にしてございまして、内容的なところは最後の4ページをごらんいただきたいと存じます。
これはこの施策の達成状況を踏まえた評価及び今後の方針という欄でございますが、上から3行目から「また、働き方改革関連法の履行確保に加え」ということで、一つとして年次有給休暇については取得日数が5日以上の雇用者がより多くの日数を取得するための取組、それから2つ目として週労働時間60時間以上の雇用者の割合については、勤務間インターバル制度の導入促進等にも留意し、政府目標の達成に向けた各種施策の総合的な推進を図っていく。
今、読み上げました部分は、前回3月の中間評価の段階で労使それぞれからいただいた御意見を主に要約した部分でございます。これに関しまして今回年度の最終評価ということでございますので、この本体のほうに記載を加えさせていただきまして、厚生労働行政といたしましてこういった点もよく念頭に置きながら、施策の推進を図ってまいりたいというところでございます。
以上が資料No.4の年度評価の御説明でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、何か御意見、御意見があればお願いいたします。
川野委員。
○川野委員 ありがとうございます。
本年3月に行われました当分科会における我々労働側委員の発言を踏まえて、評価シート、特に今ほど説明ありました4ページの年次有給休暇については、取得日数が5日以上の雇用者がより多くの日数を取得するための取り組みにも留意して施策を推進する旨を加えていただきましたこと、心より感謝申し上げたいと思います。
今ほど御説明があったとおり、2018年度の実績は、改正労基法の施行前に行った調査の数値であるということもあってのことだとは思いますけれども、52.4%というのは目標設定の7割には遠く及ばない実態でございます。
目標の達成に向けては、今ほどありましたとおり、取得日数が5日以上の雇用者も含めた着実な取り組みが必要であるとともに、従来以上の周知広報活動が重要となってくることと思います。
働き方改革の施行に当たって、テレビCMやつり革広告、インターネットのサイトを運営されたり、多様な媒体を活用した周知広報活動が実施、展開されてきたところで、一定程度の効果をあげており、我々も目にする機会が多かったわけでございますし、労基法の改正をPRするということを初めて目にしたようなことでございます。パンフレットなど企業に配布されるようなものがありましたけれども、特に労働者がCMなどを見る機会というのは初めての経験だと記憶しているところでございます。
今後、中小企業における上限規制の適用開始など、いろいろな法律が段階的に施行されていきますので、折に触れて、効果的な周知広報活動をやっていただきたいというお願いの意見を申し上げたいと思います。
よろしくお願いします。
○荒木会長 ありがとうございました。
櫻田委員。
○櫻田委員 ありがとうございます。
3月の分科会のときに中間評価がありまして、その点で労働側のほうからは、今後の評価のあり方に関しまして、今ありました2つの指標、年次有給休暇の取得率と週労働時間60時間以上の雇用者の割合だけではなくて、働き方改革を確実に前進していただくという点でも、働き方全般にわたる指標で達成度を検証する必要があるのではないかということを御指摘申し上げたところであります。
現在の数値目標は、2020年度までの目標となっておりまして、今後2021年以降を見据えて進めていくことになろうかと思います。
ただ、働き方改革におきましては、速やかに職場に定着させていくことが重要な点であると思っておりまして、2021年の次なる目標設定を待たずに、まずは施行状況を検証していくことが大切だと考えます。
その一つとして、例えば36協定を締結している事業場の数や割合もその指標の一つになるのではないかと考えるところであります。そういったことも活用して、当分科会において、その施行状況を定期的に検証するということも検討していただければと思っているところであります。
もう一点、それに関連して、現時点でまだ改正労基法の施行からは1年経過しておりませんけれども、改正法の施行の前後で36協定を締結している事業場の数や割合にどのような変化が見られるのかということを把握していらっしゃるようでしたら、説明をしていただければと思っているところです。
以上でございます。
○荒木会長 お尋ねもありましたけれども、事務局からいかがでしょうか。
○監督課長 監督課でございます。
御指摘のとおり36協定は改正法に従って締結をしなければならない方々も出てきているところですが、その辺を本日整理して、数字などを持ち合わせているわけでもございませんので、またよく確認をさせていただきたいと思います。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
資料No.4の2ページ目ですけれども、働き方改革推進支援センターの全国の設置状況と活動状況を改めてお聞かせいただければと思っているところです。
2点目ですけれども、2ページ目の一番下の年次有給休暇の取得率の関係ですが、年休5日の取得の義務化の施行前ということなので、今後、数字が大幅にアップするのではないかと期待しておりますけれども、法律に頼るのではなくて、10月が年休取得促進のキャンペーン期間ですので、それで川野委員も「目にする機会がふえた」とおっしゃったのかもしれませんが、そういった機会を捉えて、着実に普及に努めていただきたいと思っております。
また、私ども手前みそで恐縮ですけども、経団連は年休取得率70%以上を目指す。年休取得率について各人50%以上を目指す。土日・祝日に年休をプラスして3日以上の連休をつくる。「有休 My plan 7!5!3!」というキャンペーンをしておりまして、微力ながら私どもも努力をしているという御紹介でございます。
3点目ですけども、今、この目標は2020年までということになっていますので、この先、また目標を設定するときについても、どのようなプロセスで目標設定をしていくのかということを気にしているところでございます。
その点で言うと、第13次労働災害防止計画や過労死対策過労死防止対策大綱法というようなところでも、勤務間インターバルの目標設定だとか、さまざまなものが数値目標ということで出てきています。
そのようなことも総合的に整合性がとれる、統一的な目標をつくるというプロセスがわかるような検討過程が大事ではないかと思っているところです。
以上です。
○荒木会長 質問がありましたが、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
まず冒頭、川野委員からいただきました効果的な周知広報は、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。よろしくお願い申し上げます。
それから今、輪島委員からあった働き方改革推進センターに関しましては、それぞれの使用者団体の皆様、さらには労働組合の皆様にも運営上さまざまな御協力をいただいておりまして、この場をおかりして感謝申し上げる次第でございます。
昨年、平成30年度におきましては、そういったセミナーなどで11万3000名ほどの方に御参加をいただきましたり、あるいは個別企業への相談対応も2万9000件ほど実施させていただいたところでございます。
今年度に関しましては、既に相談支援が1万4000件を超える、あるいはセミナーも2,000回を超えるようなところでございます。
そういった取り組み状況も、私どもも折に触れて分科会の場で御報告をしてまいりたいと考えてございますが、引き続き労使双方のお力添えもいただきながら取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
年次有給休暇に関しましては、御指摘いただきましたように10月を年次有給休暇取得促進期間という位置づけにしてございます。もちろんそれに加えまして、例えば連続休暇を取得しやすいような夏季あるいは年末年始、ゴールデンウィークといったときにも集中的な広報を行うということをしてございまして、年休取得の機運を高めまして、70%の達成に努めてまいりたいと考えているところでございます。
最後に、2020年以降に関しましてもまたこういった場で御議論いただくような機会があろうと思いますので、御指摘いただいた点も留意しながら検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
黒田委員
○黒田委員 ありがとうございます。
事務局からの今回の御提案については大きな異論はないのですが、将来的なことについて少し申し上げたいと思います。
今後、今回の労基法の改正の影響が意図した方向に進んでいるのかどうかを評価・確認するためには、まずはきちんとしたデータをとっていく必要があると思います。
今回の時季指定権の移動に関して、先ほど輪島委員からはキャンペーンもなさって有給休暇の取得促進に努めているという御意見がありましたように、そうした使用者側の努力により法改正が意図した方向に進んでいるとすれば、それは大変望ましいことといえるかと思います。ただその一方で、従来は休日だった日を一旦労働日に戻したうえで、またそれを有休に充てるというような方法で有給休暇の、取得日数を増やすという事例も聞こえてきているところであります。
そういった、きちんと有給休暇取得促進に取り組んでいる企業と、そうではない方法で有給休暇を数字上ふやしているような企業を識別するデータのとり方を今後していかない限りは、仮に数字上、有給休暇の取得率自体が上がったとしても、それが果たして本当に望ましい方向に進んでいるのかどうかということを把握することが難しいことになります。
有給休暇の取得状況などを把握するには、現行の公的統計の中では、就労条件総合調査が最も重大な調査の一つになると思います。次回以降の調査実施に際しては、先ほど述べた実態を把握できるような質問項目をあらかじめ織り込んでおくことが、法改正の評価を確認する上で非常に重要なことではないかと思いますので、調査項目の御検討をぜひお願いしたいと思います。
○荒木会長 ありがとうございました。
藤村委員。
○藤村委員 年次有給休暇については、なかなかとれないというのが現場の実態のようですが、きょうの資料の3ページの上3分の1ぐらいのところに参考とあります。こういった、なぜとれないのですかという調査結果で、病気になったときのためにとっておくというのも項目として出てきていると思います。
日本の場合、傷病休暇制度を持っている企業もあるのですが、そうではないところもあって、12月まで持ち越してインフルエンザになったときの対応、しかし12月は忙しくて休めない。結局残してしまったという、その辺の一つの制度的な検討というのも、恐らく必要になってくるのだろうと思います。
それから、ためらいを感じる理由というところに、みんなに迷惑がかかるというのがあるのですが、実は有給休暇を取得することは、企業にとっては一つのチャンスだと捉えることができるのではないか。つまり、職場の中で行われている仕事をお互いにカバーできるようになる。有給で休んだ人の仕事を誰かがかわりにやることによって、何かあった時にお互いに補完できるようなことが、実際、企業経営においては非常に有効ではないかと思います。
盛んに経営者の方々がリスク管理とおっしゃるのですが、殊職場運営においては、この人しかできないとかこの人しかわからないという仕事が割と多くあって、それはリスク管理上非常に問題ではないかと思ったりしております。
ですから、むしろ有給休暇を取得することが、企業の変化対応力を高めるきっかけになるのだということを、経営側の委員の方々がそれぞれの企業の経営者に対して発信していただけると、このとりにくさというものがもっと軽減されていくように思います。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
黒田先生の御指摘はごもっともで、私どもも年休の説明をしているときに、年休の起算日を4月1日とすることが多く、パンフレット等もよくそういったケースを想定して説明していると思うのですが、実態は、起算日は企業によってバラバラであるようですので、起算日がどうなっているのかについて、1回調べていただければと思います。
その点は今、藤村先生がおっしゃったところにも通じますが、起算点が4月1日ですと、やはり風邪を引くというのは冬なので、12月くらいから3月31日までにしわが寄る。仮に1月1日が起算日であれば、少なくとも風邪を引くためにとっておく、ということはなくなるのではないか。こういった仮説をたて、一つ一つ実態を把握する必要があるのではないか。というお願いでございます。
以上です。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
今回の法改正は計画年休を別とすると、これまで労働者が時季指定権を行使しなければ、企業は受け身の立場でよかったところ、発想を転換して、年5日については使用者が働きかけて労働者の希望を聞いて年休を付与する義務を設定しました。
ヨーロッパは、全員が年休を完全取得することを前提に、年休カレンダーを回して、どの時季に取得をするかについての労働者の希望を聞いて、それをもとに企業が要員体制を整えるということを年度当初にやるので、ほぼ完全取得できているということになります。
今回は年5日の付与義務ですけれども、年5日に限らず、労働者の希望を使用者のほうから聞いて完全取得に向けて働きかけるということも含まれた、受け身の立場からの大きな発想の転換をもたらす法改正だと考えておりますので、その点も含めて、周知の上でも留意いただければと考えております。
ほかによろしゅうございましょうか。
それでは、ほぼ定刻となりましたので、本日はここまでとさせていただきたいと思います。
最後に、次回の日程について、事務局よりお願いします。
○労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程・場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木会長 それでは、以上をもちまして第156回労働条件分科会は終了といたします。
なお、議事録の署名につきましては、労働者代表の仁平委員、使用者代表の佐藤委員にお願いいたします。
本日は以上といたします。どうもありがとうございました。