2019年6月10日 第10回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会 議事録

政策統括官付参事官付雇用・賃金福祉統計室 政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和元年6月10日(月)8:00~10:00

場所

厚生労働省共用第8会議室
(中央合同庁舎第5号館11階1101号室)

出席者

構成員(五十音順、敬称略、○:座長)

  稲葉 由之
 ○今野 浩一郎
  神林 龍
  樋田 勉
  野口 晴子
  山田 久

事務局

  藤澤政策統括官
  吉永審議官  
  瀧原統計管理官
  細井統計企画調整官
  田中審査解析官
  井嶋労働施策情報分析官
  村木雇用・賃金福祉統計室長補佐

議題

(1)「共通事業所」及びその集計値に係る分析等について
(2)その他
 

議事

 


○細井統計企画調整官 
 おはようございます。本日は早くからお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第10回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会を開催いたします。
 本日は、石原構成員から御欠席の御連絡をいただいております。
 また、神林構成員におかれましては、所用のため、途中退席される予定と伺っております。
 そして、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。
 労働施策情報分析官の井嶋でございます。
 それでは、早速でございますが、以後の進行については、座長にお願いしたいと存じます。
 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○今野座長 
 それでは、お手元に議事次第がございますので、今日は「共通事業所」及びその集計値に係る分析等についてということで議論をしていただければと思います。
 まず最初ですけれども、神林さんから提案していただいていた分析について、追加分析を行いましたので、その結果を報告していただいて、議論をしたいと思います。配付資料でいくと、資料1になります。それ以降については、配付資料にあります資料2、資料3、資料4という順番にやっていきたいと思います。
 では、説明をお願いします。

○瀧原統計管理官 
 では、資料1を御説明させていただきます。そこにありますように、第8回の検討会のときに神林先生に分析いただいたものを、あのときはデータの制約上、5から29についてのローテーションが行われている部分について分析をいただきましたけれども、今回は全データ、30人以上の部分がメインになるかと思いますが、そこの部分の分析をさせていただきました。
 考え方としましては、推計モデル、そこの資料1のところにありますけれども、ダミー変数を使って、その月とその月の12カ月前、1年前に観測された場合を1として、そうでない場合を0としたダミー変数を入れた上で、回帰分析を行うという形でやっております。
 前回、ここに説明変数として、都道府県あるいは産業中分類というものを入れていただいたわけですけれども、今回はそこを少し神林先生と御相談させていただいて、変えております。実際、説明変数でそこを入れた場合に、課題としては、各個票データのウェイトをどうするかというところで、この場合、普通に回帰分析しますと各個票データのウェイトが全部同じになりますので、そこの部分が一つ課題として残るわけですけれども、今回はそこの単位集計区分ごとに回帰分析をかける、βを計算するという形で、βに添数がpijtという形でついております。そのものは、結局、単位集計区分でやりますと、中のウェイトは同じになるというところで、そこの課題部分はクリアできるのかなということで今回はやったものでございます。
 ちなみに、このβ自身、具体的には非共通事業所と共通事業所の集計値の比率というものになるものですので、一番下のところで注釈で書いておりますけれども、今回のβは、実際にβ=1、非共通事業所に掛ける比率というのを全部1でやれば、それは本系列の集計値に当たるものになりますし、実際にβ=0だとすると、非共通事業所の部分のデータが全部なくなりますので、集計値自身は共通事業所の集計値、当月分のものになるというものでございますけれども、実際、β比率というのを補正比のようなものですが、どうなるかを計算したのが、以下の2ページ以降になります。
 2ページ、これ自身、月々で1カ月ごとでβを計算しているわけですけれども、一番最初は総括表で平均です。これは見ていただくとわかりますように、産業規模区分ごとになっておりますので、今まで産業ごとの非共通事業所と共通事業所の差というものを余り見てこなかったので、今回、そこは改めて提示させていただいたものにはなるのかなと思っております。
 比率がないところというのは、全部共通事業所か、全部非共通事業所か、あるいはそこにデータがないということも含めてあるわけですけれども、どうしても500人以上のところは発生するケースがありますので、そこの部分は「-」としております。
 499人以下のところでは、全てデータが埋まるという形になっておりまして、データが多くありますので、目安として、2ページの一番右下のところに「平均」と書いております。この平均は、ここにある表の数字の「-」のところを除いた単純平均と思っていただければと思います。
 それで見ますと、全体的に1を少し超えたぐらい。非共通事業所に対する共通事業所の比率ですので、これはきまって支給する給与でやっていますけれども、共通事業所の給与のほうが若干高く出ているというものが読めるのかなと。「100-499人」のところだけが1を若干切ったというのが、今回の数字では出てきております。これが平均値でございます。
 3ページ、これについては、一つの目安として標準偏差、ぶれぐあいはどれぐらいかというのを並べております。これも比べてみる必要があるので、ここも標準偏差の平均値を右下に用意していただきました。ここをどう見るかということはあるのですけれども、標準偏差の平均で見ますと、右下のところですと、500人以上のところは少しぶれが大きいのかなというもので、0.07とか、それ以上という形で数字がぶれるのに対して、500人未満のところは0.04前後というもので、少し抑えられている部分があるのかなと思います。
 ただ、単純に、この2ページと3ページを見ていただきますと、この標準偏差ですね。σ1だけずらすと、上の平均でいきますと、マイナスをすると1を超えているものが1を切ってしまう形になるということで、少し安定的にβがこれぐらいというのはなかなか言いにくいのかなという感じはしますが、大体今回の集計でいくと、これぐらいの数字が出ていたというものでございます。
 4ページ以降は、月々の数字で示しております。月々でどれぐらいの数字になっているかということで見ていただきますが、ずっと最後のページまで、15ページまであります。
 ただ、これは月々で各産業なりがどう動いているのかというのを見るほうがいいのかなと思いまして、もう一つの別の縦型の「資料1(続き)」と書いてありますけれども、これは同じデータを12カ月間並べたものでございます。ページごとに規模が書いておりますけれども、小さいのですが、一番上のところに「東京以外1000人以上」、次のページが「東京1000人以上」、次が「東京以外500-999人」という形で規模別になっておりまして、それの産業ごとの月々の動きをこの資料1で書いております。
 これで見る限りは、一つの産業においては、もちろん調査対象が基本的に近い調査対象ですので、比較的近い値になっているようにも見えますけれども、一方で、1を超えたり、超えなかったりという形で、ぶれがあるのも見受けられるというものでございます。
 これはそのときに、1年前に共通事業所としての調査票を提出しているかどうかということが判断なので、月々で見た場合に、ある月は共通事業所になっていて、翌月は共通事業所でないほうに入るケースもありますので、そういう部分も少し変動させている要因なのかもしれません。
 そのときの対象事業所によるのかもしれませんけれども、例えば、この資料1(続き)の1ページ目の真ん中より少し下の「I-2小売業」というところは、補正が2倍を超えていまして、ずっと超えているという形で、かなり補正比が高くなっているというものもありまして、このあたりはどう見るべきか、極端な話にはなっているのかなとは思います。その辺の超え方というところも、単純にβを実際に実物として見た場合に、産業規模、単位集計区分で見た場合には、そういう動きが出ているというものでございます。
 以上、特徴的な感じですけれども、一つの試算として、このβを見て、引き続き御意見をいただければと思います。
 資料1の説明は以上でございます。

○今野座長 
 ありがとうございました。
 神林さんから何か追加はある。

○神林構成員 
 これを使って、参考系列、あるいは本系列に類似した給与額を、ウェイトを使って算出しましょうという話をしたと思うのですけれども、それはまだできていないのですか。

○瀧原統計管理官 
 このβを非共通事業所に掛けて、非共通事業所を共通事業所に補正した形で平均を出して、ウェイトをかけるというものですね。そこまではできていないのですけれども、イメージとして、それは数値としては、現在共通事業所の集計値というのが、共通事業所の平均値に全体のウェイトをかけて戻すという作業をしているのですけれども、それと結果的にはほぼ同じになるという考え方でよろしいのでしょうか。

○神林構成員 
 ではないかとは思うのですけれども、継続事業所と非継続事業所の割合ですね。各セルの中の割合と、それがどう膨らむかというウェイトとの相関関係というのがありますので、共通事業所が多いところでウェイトが多いという関係があったら、今の参考系列の計算の仕方とほとんど変わらないと思うのですけれども。

○瀧原統計管理官 
 実際の全体の膨らませ方としては、各セルの平均値を復元するという形になりますけれども、そのときに、今出ている共通事業所の集計値というのは、一つのセルの中の共通事業所のみの平均値で出しています。それを共通事業所ではないところも含めてやるときに、共通事業所ではないところにのみβを掛ける形になるわけですね。

○神林構成員 
 そうです。

○瀧原統計管理官 
 そうすると、平均値としては、共通事業所の平均値と同じなるのかなと。

○今野座長 
 直感的にはそうなるな。どうですかね。直感的には同じになる。

○樋田構成員 
 そう思います。

○今野座長 
 共通と非共通の違いをβで表現をしているのだね。違いを表現したβで、非共通を共通にするのだから、直感的には同じになる。

○瀧原統計管理官 
 今回のやり方が、単位集計区分で区切ってやっているからなのかなと。βをもう少し大ぐくりでつくると、当然少し、前回の5から29のときもそうですけれども、産業とかをコントロールしていますので、産業とかの個別の影響を除いた純粋なというのがあるのかどうかわかりませんが、共通事業所がゆえに出る補正比というものを網羅的につくると多分変わってくるのですけれども、ただ、今度はその網羅的なものが存在するのか、共通事業所の補正比というのは産業規模によるものというところが実際的には大きいのかというところの考え方なのかなという気はするのです。補正の仕方の考え方をどう整理するのかということなのかなと。
 これはもう究極に、補正というのは産業規模の区分ごとで捉えるべきという形での分析になろうかと思うのです。

○今野座長 
 従来の方法も、共通事業所の平均値を全体の母集団でそのまま戻してしまっているということは、結局、非共通事業所は共通事業所だとみなしているわけですね。

○瀧原統計管理官 
 そういう考え方ですね。今のやり方はそのようにみなしているのだけれども、そうみなしている考え方というのは、ずっとこれまで議論していたように、共通事業所というのは何を代表しているかというところで、オールジャパンを代表するものになり得るのであれば、何らかの形で非共通事業所に出ている、逆に言うと、非共通事業所のほうにバイアスがあって、それを補正することによって、正しい共通事業所の数字にするということなのかなと思うのです。

○神林構成員 
 確認なのですけれども、今の参考系列の場合、0のセルというのはどういうふうに計算しているのでしたか。0というのは、全部共通事業所ですね。どちらかわからないのか。

○瀧原統計管理官 
 0のセルは、結局、もとに戻すときと同じなのですけれども、そこの部分が復元できないので。

○神林構成員 
 欠けたまま。

○瀧原統計管理官 
 欠けたままなのですけれども、実際に全体には戻していますので、そこのセルを除いた部分の平均値と同じ平均の値になっているという考え方ですね。抜けたところは、抜けた部分で値が上がりも下がりもしない。だから、本来、そこのセルが平均より高ければ低目ですし、平均より低ければ高目に出ているという形です。いずれにしても、全部の平均と同じ数字と置いて復元しているという考え方です。

○神林構成員 
 他の平均というのは、他の非共通事業所の平均ですか。

○瀧原統計管理官 
 他のセルの共通事業所の平均値です。

○今野座長 
 その場合の他のセルの他とは何ですか。

○瀧原統計管理官 
 全部ですね。セルがあるところ全ての加重平均です。端的に言うと、4つセルがあって1つだけセルがないと、残りの3つの平均値が4つあるという形になると。

○今野座長 
 少なくとも今の方法だと、何も考えずに全ての事業所は共通事業所だという前提で復元しているわけでしょう。でも、そのときに全ての事業所は共通事業所だと言っているのだけれども、その中には実際には非共通事業所もあって、そこは共通事業所と違う値を持っているにもかかわらず、共通事業所としてみなしてしまって、オールジャパンに出してしまっていると。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○今野座長 
 そうすると、こういう計算をしておくと、非共通を共通にみなしてしまったときの誤差みたいなものは、この程度発生しているみたいなことは、これで見られるということなのだ。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○今野座長 
 ただ、それは見られるけれども、先ほど神林さんが言っていたように、この方式で母集団に戻すと、これまでやっていた数字とほとんど同じ数字になるということだね。

○瀧原統計管理官 
 はい。

○今野座長 
 なるほど。そうすると、この数字は従来の方式のやり方で出ている数字はこの程度いいかげんというか、結果的にこの程度の問題があるぞということに使う分析になるのかな。今まで私の言っていたイメージは、従来の厚生労働省方式でやっていた系列が出て、今度は神林さんがやっていた系列が別に出て、どちらを使うかは別にして、両系列が出るかなと思っていたのだけれども、もしかしたら厚生労働省がやっていたものと同じことを違う方式でやったということ。

○神林構成員 
 そうですね。比率に関しましては、それぞれの比率の標準誤差が計算できているはずだと思いますので、それを足し上げるとき、参考資料2の2ページ目、これが計算式になっているはずなのです。これでaがターゲットになっている変数ですね。aのijというものですね。これに関する標準誤差というのが計算できているはずです。なので、この算式を使って、()に関する標準誤差も計算してあげるということを試行できるのではないかと思います。

○今野座長 
 どうぞ。

○山田構成員 
 ずれているかもしれないですけれども、私は今おっしゃったことと逆のことを考えたのです。今回、非共通事業所と共通事業所の間の値の関係をずっと推計していったわけですね。今はもとに戻すときというのは、全体のウェイトの共通事業所だけをそれぞれ掛けていって戻しているのだけれども、もともと知りたいものというのが全本系列。要は、共通事業所というのが本系列を知るためのあくまで一つのツールだと考えるのであれば、今回の分析によって、非共通事業所の値が共通事業所に対してどれぐらいかというのはわかるわけですね。これでデータが出てきたと。
 その係数と、毎回毎回の非共通事業所と共通事業所の数字の割合というのもわかるわけですね。だから、それらの数字を使って、そもそも本系列を知りたいわけですから、共通事業所の値に…。
 済みません。書いたほうがいいですね。
 全然違うことを言っているのかもしれないのですけれども、共通事業所と非共通事業所で値があって、単純に数というか、これが賃金ですから、例えばWで、今回係数が出てきて、βがこうやってわかるのですね。例えば数がNがあって、これがnだとしたときに、全体を出すときに、Wにこれをやると、全体の平均値が出るわけですね。こういう考え方で全体を戻すという集計の式を、今の集計の式はこういうやり方はやっていないと思うのですけれども。

○今野座長 
 でも、このときの問題は、共通事業所と非共通事業所を合わせると、オールジャパンの母集団なので、だから、別にそんなことをしないで、単に平均すれば真の値は出るわけで、それだけだったら、そこのβみたいな推計はしなくていいよな。

○神林構成員 
 それで、今推計してもらったのが、こういう推計値ですかね。逆ですか。

○瀧原統計管理官 
 反対ですね。すみません。

○今野座長 
 βが1以上で、Wのほうが大きいのだよな。

○瀧原統計管理官 
 はい。ですので、共通事業所のほうが。

○神林構成員 
 なるほど。こうなるわけですね。なので、これを代入してしまえばいいのですね。そうすると、こちらを代入すると、単純にこれの倍になってしまうので、2倍の。

○今野座長 
 私が言いたいのは、そういうことをしなくても別にいいではないかと。だって、今、山田さんが言ったのは、日本のオールジャパンの平均値を得たいということでしょう。でも、Nプラスnの集団は母集団だから、母集団からサンプルしたものでしょう。

○神林構成員 
 こちらはこれですね。

○今野座長 
 だから、別に推定しなくても、その平均を出せばいいだけではないかと。わざわざ推定して、こういう計算式で平均値を出す必要はないではないかと。

○神林構成員 
 もともとのモチベーションは、本当はこうなっているわけですね。ウェイトがかかっている。例えばセルをJと置いておくと、こういう格好になっているのですね。それで、これとウェイトが対応関係にあって、本系列というのは。

○今野座長 
 そうしたら、そのウェイトなしのかぎ括弧は、特定セルの平均値でしょう。

○神林構成員 
 そうですね。こんな感じにしておきましょうか。

○今野座長 
 でも、その特定セルの平均値を計算するときに、Nとnは母集団からきちんとサンプリングしてとってきたサンプルだよね。特定のセルだよ。

○神林構成員 
 はい。

○今野座長 
 そのときに、ちゃんとサンプリングで持ってきたのだから、単に推計をしなくても、平均をすればいいだけだろうと。だめ。

○神林構成員 
 平均して出すというのは本系列の話。

○今野座長 
 だから、これのターゲットが、本系列の真の値を求めたいということがターゲットのように山田さんの話は聞こえたので。

○山田構成員 
 今の話はそう想定しているのだけれども、そこは議論があるのですけれども。

○今野座長 
 それがターゲットだからね。それでいいのだったら、別にそんなことをしなくて、平均にすればいいだけ。

○神林構成員 
 本系列をつくるということですね。

○今野座長 
 だから、これは本系列をつくる代理変数と思っていないのだね。そうしたら、違う議論ができる。
 言っている意味がわかったかな。

○神林構成員 
 お話の筋がわからないです。言っている意味がわからないです。

○今野座長 
 山田さんが言っているのは、本系列の値を出す方法として、こういう方式がどうかということでしょう。

○山田構成員 
 そうです。

○今野座長 
 だけれども、単に本系列の値を出すのだったら、Nとnのサンプルというのは、母集団からきちんとサンプリングしたものなのだから、推定しなくても、普通に平均を出せばいいわけでしょう。

○山田構成員 
 でも、計測されているのは…。

○神林構成員 
 これは本系列の計算の仕方そのものですよね。

○今野座長 
 そうだ。

○神林構成員 
 これは本系列。

○今野座長 
 違う。そこがW′になっているのでしょう。

○神林構成員 
 W′になっています。

○今野座長 
 そうか。それでいいね。

○神林構成員 
 とりあえずこうしておきましょう。これは本系列の計算の仕方そのものですよね。

○今野座長 
 そうだな。ごめん。

○神林構成員 
 今、考えているのは、WとここはβW、W′、このようにする。こういう格好になるわけですね。

○今野座長 
 そうなるな。

○神林構成員 
 あれ、本当。

○今野座長 
 違う。待って。

○野口構成員 
 逆。

○神林構成員 
 逆。こうか。

○今野座長 
 そうだな。だから、Nのほうを、推定値を入れるということだね。

○神林構成員 
 それで、こうすると、それぞれ代入するとこうなりますという話を先ほどしたわけですね。

○今野座長 
 そうすると、下の式のかぎ括弧の中にある特定セルの平均値は、何をあらわす。本系列ではないな。本系列だったら上でいいのだものな。

○神林構成員 
 本系列ではないです。それが今の共通事業所の計算の仕方と等しいという話をしたわけですね。そこについては。

○今野座長 
 だから、これまでのこの議論は、いわゆる共通系列で本系列の代替などをしようなどというのはやめましょうと。意味がないので。

○山田構成員 
 その議論はあります。

○今野座長 
 そうすると、共通系列は共通系列で意味があるとすると、山田さんの言葉で言うと、既存店がどうなっているかということを見ましょうと。そのときの一つの方式としてこれがある。
 そのときに、問題は、復元するときに単純に全体の母集団で戻してしまっているとか、そういう問題があるけれども、考え方としては、既存店の 
 日本全体の状況をあらわす一つの指標として使うということでいいのだよな。

○瀧原統計管理官 
 ただ、先ほど神林先生がおっしゃっていたのは、下の式の2項目のW′にβを掛けるというお話ですね。

○神林構成員 
 そちらかなというのを想定していたのですけれども。

○瀧原統計管理官 
 そうすると、全体がβW′というのはWですから、Wを全体的に復元すると。
 今の共通事業所の推計値というのは、下の式の2項目のW′にβを掛けたのと同じ形になっているということですね。結果的に、それは右も左も同じになる。だから、今の共通事業所の数値はそうなってしまっているということで、それは復元元が違うのではないかという議論ではあったというところです。

○今野座長 
 今の方式というのは、共通事業所の値Wを、非共通事業所もWだと置いてしまっているのだよな。

○瀧原統計管理官 
 そうです。ですので、下の式の2項目のW′にβを掛けてしまうとWになってしまうので、今はそういうふうにやっているということですね。

○山田構成員 
 今の方式の集計するときというのは、非共通事業所も計測すると想定しているので、私が申し上げたのは、それであるのであれば、今回βが出てきているので、共通事業所のWがわかれば、そこに今度はβを掛けてやると、非共通の数字が一応出てくるので、そのデータを使って、非共通事業所も全部含めた本系列を復元してあげるというやり方はあるのではないかということを申し上げたかったのです。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。だから、山田先生のおっしゃっているのは、今はWもW′も計測されているので、WとW′だけやればちゃんとオールジャパンのものが出るのですけれども、何らかの理由でW′が十分把握されないと。だけれども、Wが十分把握できるのであればβを使って、βとWで全体が復元できるのではないかというお話ですね。

○山田構成員 
 まさにそういうことを言っています。

○瀧原統計管理官 
 だから、W′が計測されている場合には、同じことになるということだと思います。

○今野座長 
 そのときの前提は、βは。

○瀧原統計管理官 
 βのほうはより安定した。

○今野座長 
 安定してわかっているということだな。

○山田構成員 
 これを見ていると、安定かというのはあるのですけれども。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○山田構成員 
 でも、あえて今の共通事業所を使った全体の数字の戻し方の部分を尊重するのであれば、今回の分析に使うと使えるのではないかということです。だから、数字が、これを見ているとβが不安定なので、それに対して意味があるかというのはあるのですけれども、でも、今のやり方よりも論理的には整合的につくられるのではないかということですね。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○山田構成員 
 だから、もともと問題として共通事業所というのを全く違う概念として考えてそれをつくったほうがいいのかというのは昔から私も申し上げて、それは今野先生におっしゃっていただいていることなのですけれども、でも、あえて今回のデータを使うとすると、そういうこともあるのではないかということを申し上げたかったということです。

○瀧原統計管理官 
 共通事業所のWというのが計測されて、それから推測される何か日本の指標というものがあって、それをどう復元するかという議論をずっとしていただいていたわけですけれども、そうではなくて、Wをもってオールジャパンの数字を推測するというふうな立場に立てば、βというものを十分捉えることができたら、この方式でできるという整理なのかなと。

○今野座長 
 だけれども、実際にはnもわかっているのだから、オールジャパンはそんなことをしなくてもいいのだけれども。それが本系列なのだから。

○山田構成員 
 おっしゃるとおりです。

○今野座長 
 だから、ここであったように、本系列を代替する指標というようには全く捉えないほうがいいというのが基本だと思います。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。βがすごく不変的なものとして計測されれば別だとは思いますけれども。

○今野座長 
 もしデータが不変的だったら、技術的には別にして、一部の共通事業所だけ調査すればいいのですよ。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。そうなると思います。

○今野座長 
 非常にコストは少なくなるとか。

○瀧原統計管理官 
 そうなると思います。

○今野座長 
 いかがですか。

○樋田構成員 
 おおむね仕組みは理解できたと思いますが、これは従来の共通事業所が目指していた数字とはコンセプトが違っているように見えます。共通事業所の動きを使って、本系列の代替に近い数字になっているのではないですか。

○今野座長 
 私の理解は、本系列の代替などというのはとっくに話は終わって、そんなことはないと私は決めてしまっているので、そうすると、今の問題は、オールジャパンの既存店が、対前年で賃金がどう変化するのか見たいというふうに、私はもう決めてしまっているのです。
 そうすると、そういう観点から話すと、これはオールジャパンの既存店の母集団がわからないので、復元するのにわからないから、しようがなくて、とりあえずこういう形で復元したというふうに捉えているのです。

○樋田構成員 
 オールジャパンの既存店の推計を目指すということですね。

○今野座長 
 そう。したがって、オールジャパンの既存店の母集団がわかれば、これは母集団に沿って復元する。でもわからないので、しようがなくやっていると捉えています。だめかな。そのように私は決めてしまおうと思っているのですが。
 言い直しますと、オールジャパンの既存店の母集団さえわかれば、もっと正確な数値は出ると。

○神林構成員 
 多分、ここのウェイトの部分、これがわかればいいと。

○今野座長 
 そうです。

○神林構成員 
 それがわからないという前提になると、ウェイトはこれを使うしかないのです。

○今野座長 
 だから、私は、あとはどうにかしてWnのほうのウェイトを、もう少し推計か何かで出ないのと。あるいは、違う代替的な方法で出ないのというのは、検討課題だと思います。

○山田構成員 
 その流れでいくと、Wnで言うと、前のアメリカのやり方を見ていると、日本は経済センサスでベンチマークに置いてやっていますけれども、アメリカは雇用保険の事業所の統計を使っているわけですね。あれだとずっととれるのですね。ただ、バイアスがあるという議論はあるのですけれども、そこはもうやり方を雇用保険の統計に変えてしまえば、一応既存店というのは出るのだと思うのです。そのように変えるのも一つのやり方だと私は思います。

○瀧原統計管理官 
 そういう意味では、今回の分析の位置づけだと思うのですけれども、もともと厚生労働省として共通事業所のデータを参考値で出しているのは、ウェイトを本系列と同じで計算しています。それは便宜上というのももちろんあるのですけれども、ただ、本系列で戻す限りは、共通事業所というのは基本的には本系列と同じ母集団を代表するものだという仮定に立って出しているものだと思っています。
 もしその仮定に立てば、本系列と共通事業所には一定程度バイアスなり何かがあるとすれば、それはβという形で今回出たものになるのだと思うのですけれども、ただ、それが今日の数字を見ていただいて、仮にβというのがどうもそんなに確定的な安定的なものではないということであれば、共通事業所が代表すべき数値は、本系列なり母集団の代表する数値とは違うのではないかという方向性になって、それは多分、今までこちらで議論いただいていたものと合うのだと思うのです。
 ただし、今回の分析で、βというのが、これは単に本系列を少しずらせば共通事業所系列になるのだということであれば、戻し方は同じ戻し方でいいと思うのですけれども、そこをこういう数値なり御議論の上で検討会の先生方はどうお考えになるかというところをお聞きできればということだと思います。
 ですから、共通事業所は違うものを代表しているのだということであれば、それはこんな単純なβの補正ではいかないということなのではないかと思うのです。

○今野座長 
 本系列の代替だと考えたときに、まず、今みたいな調査方法だと、母集団からきちんとサンプリングしたデータがあるので、それ以外のデータを使って何で本系列を推定しなければいけないのかということになる。今回の共通系列からβが安定したとしても、戻したとしても、そういう問題はあって、わざわざ何でそんなことをするのと。しかも、サンプル数は落ちるので、当然誤差は大きくなっているだろうということも含めて、そんなことをする必要はないでしょうと。
 そのように考えると、もしβを使って本系列に代替する指標をつくる意味があるとすると、βが安定していれば、共通系列さえ把握しておけば本系列がわかるので、そうすると、調査をするときに、サンプル数をぐっと落とせて効率がいいとかということでしか意味がない。そうやって使えるのだったら、そうやって使って、本系列に代替。そうでなければ意味がないので、やはりこれは別の系列であると考えています。
 そうすると、こういうことをやっているというのは、また繰り返しですけれども、オールジャパンの既存店の母集団がわからないので、今のところ、やむを得ずこうしているというのが、論理的には非常にすっきりするのではないかと思います。

○山田構成員 
 そのとおりだと思います。

○今野座長 
 だから、これはオールジャパンの既存店の母集団を誰か持ってきてくれると一番いいのですよ。そうすると、そういうデータはユーザーとしてもあってもいいものな。欲しいよね。というふうに、大体、もう収束しているのではないかと思うのだけれども。

○神林構成員 
 あとは、説明変数を加えることで、このβの精度を上げられないかというのはあると思います。今あるのは従業員数と時間数だと思いますけれども、男女比率、パートタイマー比率があると思いますので、そういう説明変数を加えることによって、1カ月掛ける産業レベルでのβというのは、単に平均値の差だけをとっているのではなくて、コントロール変数を加えて、そのβが、多分、説明力が大きくなってくれるのだろうと思うのですけれども。そうすれば、期待としては、もうちょっと安定したβが計算できるのかなと思います。

○今野座長 
 そうすると、そのときの前提というのは、例えば同規模同業種でセルができているわけですね。それというのは、業種と規模を実質上コントロールしているわけだね。それだけではなくて、例えばパート比率とか女性比率のようなほかの変数で全部コントロールしたほうが、純粋な賃金変化が見られるのではないかという位置づけにするということだね。

○神林構成員 
 そうですね。

○今野座長 
 そうすると、このβが使えると。
 ということは、今、厚生労働省がやっているのは、一種のラスパイレスでやっているわけですけれども、あれは気持ちとして労働力構成をコントロールしたいということですね。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○今野座長 
 そうすると、それを。

○神林構成員 
 セルの間の。

○今野座長 
 そうすると、ロジックで使えるかな。
 でも、これ自身、データはおもしろいよね。

○瀧原統計管理官 
 はい。

○神林構成員 
 そうですね。この給与比率と、もう一つは事業所の比率、ここで言う∩Nとnの比率を同時に出せば、各セルごとにどんな感じで共通事業所が位置づけられるのか、かなり豊富な情報になると思います。
 それを総計しているのが、共通事業所の指標だというふうに説明しておいて、各セルの比率を同時に見てみると、例えば時系列的に見て、同じ産業掛ける規模でもばらついている、あるいは、∩Nとnの比率がばらついているということであれば、それを実態として解釈する。ただの誤差と見るのであれば、このβが、統計的にどこまで信頼できるのかというのに疑問符がつくということを示唆するのではないかと思います。

○今野座長 
 あと、直感的にこのいただいたデータを見ると、この標準偏差もそうですし、βの平均値もそうですけれども、大規模のほうが心配という感じがしないですか。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○今野座長 
 小さいほうは比較的安定している。ということは、全数調査よりサンプリングにしたほうがいいのですかね。

○神林構成員 
 多分、大規模は全数調査であるがゆえに、継続サンプルが多いのですね。非継続サンプルが非常に小さいので、∩Nとnの間の差が大きいのだと思います。それで、βが余り正確に推定できなくなってしまっているのかなと思います。

○今野座長 
 そういうことね。

○神林構成員 
 振れが大きいですからね。

○今野座長 
 ということは、βを安定させようとすると、大規模も全数をやめて、3分の1ずつでもサンプリングするほうが、βだけ見ると安定するかなと。

○山田構成員 
 本来、W自体がすごく不安定なわけですね。

○今野座長 
 では、この議論はよろしいですか。稲葉さん、何かありますか。

○稲葉構成員 
 1点だけ。先ほどの議論とは違う系統になるのですけれども、資料1の2ページで、平成30年の平均を産業ごとに出しているわけですが、この結果、非常に興味深いのは、産業別に傾向があるのかなということが値で見てとれると思います。
 例えば、右側の「H運輸業、郵便業」といったところを見ますと、全て1より大きな値になっております。一方、左側のところですと、500人未満のところですと、全て1より小さいといった産業も出てきています。産業によってこれぐらい違いがあるということは、現在、共通事業所は産業別に公表値を出していると以前も申し上げましたけれども、産業別に共通事業所の系列の数値を出すといったところが、果たして適切なのかどうかといった検討材料の一つになるかと思います。
 以上です。

○今野座長 
 確かに。
 特に、先ほど瀧原さんが言っていましたけれども、右側のページの「I-2小売業」の東京以外は2.4とか、これはすごいよね。これは小売だからサンプル数がすごく小さいということもないでしょう。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。ただ、小売業の事業所で1,000人以上なので。

○今野座長 
 1,000人以上だから少ないか。

○瀧原統計管理官 
 非常に限定的なところですね。ですから、それで共通事業所になっていない事業所というのは、どういうところが出したり出さなかったりしているかというところにはなろうかと思いますけれども。
 これは、こちらの縦の資料1(続き)のほうを見ていただくと、本当に「I-2小売業」はずっと12カ月、2を超える。

○今野座長 
 これはすごいよね。こんなに共通事業所と非共通事業所が違うのに、非共通事業所を共通事業所とみなして、現在は共通系列を出しているということだね。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○今野座長 
 それでは、ほかに資料を用意していただいていますので、そちらの議論に移りたいと思います。
 最初、資料2について、行きましょうか。

○瀧原統計管理官 
 資料2は、前回の第9回のときに時間相関という話が、西村統計委員長から出ていたこともありまして、前回は事務局でセル単位で比較することをやったわけですけれども、そのときの御指摘で、これは事業所単位でやるべきだというお話がありましたので、事業所単位でやったものでございます。
 あわせまして、今回、参考資料1を御提示させていただいております。青山学院大学の美添教授の書かれている論文、先生にも御了解を得て、今回示させていただいたものでございます。これは、美添先生が、基本的には世帯調査でローテーション・サンプリングが広く使われているのですけれども、そのところでの特性と、それを事業所、企業を対象とした調査でのローテーション・サンプリングの状況をご覧になっているものでございます。
 全体的な概略、要約のほうは上に書いてあるのですけれども、その中で1ということで、基本的なモデルというのを示していただいております。ここで継続標本とそれ以外の標本で見た場合の捉え方というものでやっているのですけれども、この継続標本をとった場合に、最初の基本的モデルの1行目にありますが、前期の値のXと今期の値のXを推定するという形をとったときに、前期と今期の値をとるときに、このA.4の値ですけれども、それぞれのx0iとx1iというものの平均は、全体のもとの母集団の値になるという前提のもとでやるわけですが、それをそうでない部分とのyを持ってきて、そこの部分のもので考えるという形でやったものです。下から6行目あたりで、Δというのと、Δ′という場合のそれぞれの値を計算するというもので、これが両方とも平均は同じになるときに、分散がどうなるのかというのをその前提のもとで計算していくというものでございます。
 その前提のもとで、2ページ目で、これは機械的な計算した場合に、下の真ん中あたりの表にございますけれども、ΔとΔ′の分散の比というのが、ここで言うとRなのですが、R自身は1ページの真ん中のところに式で書いてありますが、こういう定義でRを置いたときに、相関がどれぐらいあるかというところ、前期と今期でどれぐらいあるかというところで見た場合に、Rの値が高いと分散の比率というのはどんどん小さく抑えることができるというもので、前期と今期での分散が小さいと、かなり分散を抑えた形での継続標本での数字を見ることができるということを示しておられます。
 これは実際に、家計調査の場合、ここに書いてありますけれども、相関係数がRが0.2から0.5程度で、それぐらいであれば、一定程度ほとんど分散は変わらないというものになりますし、それより高い相関係数を持っていると、分散の比は1より抑えることができるということが理論的には計算できるというものでございます。これは継続標本が全体をあらわしているものだという前提のもとで計算することになります。
 こういう形で、いわゆる前期と今期での相関というのを毎月勤労統計の共通事業所で見るとどうなるかというところの計算をしたものが、今回お示ししている資料2でございます。
 規模ごとに書いておりますのと、計算を月ごとに29年1月と30年1月の比較、2月同士、3月同士でやっておりますけれども、基本的には1ページ目を見ていただければわかるとおり、非常に高い相関を持っております。R二乗で計算した場合に、0.9を超える、0.95ぐらいまでいくような形、小さい規模になると、5から29ですと0.86となっておりますけれども、毎勤統計自身は、この共通事業所の前期と今期の賃金というのは、非常に相関性の高いものになっているというところは見てとれるのかなというものでございます。
 ただし、共通事業所自身が全体を代表する指標になるかという先ほどの議論と同じことに戻りますけれども、そこはどう捉えるかというところと、実際にこの美添先生の論文は、3のところで、家計調査ではこういう形で捉えられるのだけれども、事業所企業調査の場合にはどうかということで、結論的には最終的に4ページの5の断層の問題に書いてあるところになります。世帯系の調査ですと、標本の入替というのもある程度現実に即した形でできているのですが、事業所とか企業の場合は、経済センサスを使ってやると、どうしても時期的なずれがあるということで、その場合の適切な表現にならない、その時点での事業所を明確に反映した母集団情報になっていないというところが一番の課題だろうとおっしゃっておられます。
 そういう意味では、下の最後のパラグラフですね。下の7行のパラグラフのところの真ん中あたりに、前回御説明させていただきましたアメリカの賃金統計の話が出ておりますけれども、これが失業保険の加入事業所名簿からやっていて、60万事業所を対象にしているというものなので、母集団名簿の不備を原因とする断層というのは、これでやればそんなに大きくないだろうということはありますし、その中で、前回お示ししました継続標本を使ってのWDLTという手法も、母集団情報が劣化していないことを想定しているので有効に機能しているのだろうけれども、日本の場合には、今の母集団情報、経済センサスをベースにしたものではなかなか難しいのではないかと主張されておられます。
 そういう意味でも、今回、共通事業所を母集団を入れ替えて断層を見るための一つの指標として、我々として活用させていただいております。ただ、この共通事業所をもって、美添先生の論文に沿っていくと、相関性は高い数値として捉えることはできるのですけれども、母集団を適切に反映しているかどうかというところの課題は、今の日本の母集団のデータベースのつくりからいくと、今後の課題になり得るのかなと。実際、総務省のほうで母集団データベースをできるだけ逐次その場を反映した形に改善していこうという動きがありますけれども、そういうものが改善されると、ここの部分も精度が上がっていくものなのかなと思いますが、今回御紹介させていただきました。

○今野座長 
 ありがとうございました。
 何か御質問はありますか。
 資料2で、ちょっと問題になったのは、時間相関があるからということですね。そのときに、この共通系列の指標でもともと欲しいのは、対前年変化ですね。

○瀧原統計管理官 
 はい。

○今野座長 
 そうすると、1年前の対前年変化が大きいところは、1年後に対前年変化が大きいかどうかということが、時間相関ということのターゲットではないのかな。

○瀧原統計管理官 
 変化の比較ですので。

○今野座長 
 これはいいですね。賃金の高い事業所は、1年後も賃金が高いかどうかと見ているわけですね。それはもうこのとおりだと思うよね。

○瀧原統計管理官 
 はい。前年同月比を。

○今野座長 
 そうすると、多分ばらばらかもしれないね。
 統計委員会でそういう意見が出たときに、どちらを考えているのですかね。

○瀧原統計管理官 
 確かに、こちらの検討会でも議論がありましたけれども、値の変化を見るのか、変化の絶対数値を見るかというところの話がありましたので、西村委員長の発言は、そこまで明確に読み取ることはできていなかったのですけれども、ただ、この後のところでも触れてはいるのですが、まさにその変化をどう考えるかを見るときに、おっしゃるとおり、そういう相関はまだ考えていなかったですね。そこは確かにやる必要があるのかもしれないです。
 何分、変化をどう分析するかというところになれておりませんというのがありまして、ぜひ先生方から御意見をいただけるとありがたいです。

○今野座長 
 山田さん、直感的にはどうですかね。1年前に賃上げをいっぱいした事業所は、1年後にもいっぱい賃上げをする。あるいは、1年前いっぱい賃上げすることと、1年後いっぱい賃上げすることは、無関係か。どうだろう。

○山田構成員 
 ある程度相関があるのかなという感じもしないでもない。というのは、どういう状況で賃上げが行われているかというと、例えば、企業業績が基本的にいいところとか、あるいは労使関係で見て、ある程度労使のバランスがとれているというと、それなりに賃金に対する上昇圧力というものがかかるわけですね。
 実際、過去20年、30年で見たときに、企業間の賃金格差というのは、ざっくりですけれども、大手・中小間で言うと格差が開いている。ということは、上げるところは上げていくし、上げないところは上げないと。でも、これはある意味、これぐらい強い相関が出てくるのは当然だと思うのです。こんなものは出てこなくて、もっと相関は低いのでしょうけれども、一定のプラスの相関ぐらいは出てくるのではないかと。
 ただ、恐らく業種などによっても当然違ってくるのだろうなと。だから、マクロで見たときには、何となくプラスの相関があるのだけれども、例えば毎月とっていくと不安定な関係になるのではないかというのが、直感的なイメージです。
 だから、それが何を意味しているのかというかは別にして、少なくともそういうものだというファクトは確認できると。

○今野座長 
 そうすると、もしかしたら、相関係数は高いけれども、この回帰式の傾きがすごく動く可能性はあるね。

○山田構成員 
 そうだと思います。

○今野座長 
 景気が1年後悪くなれば、すごく傾きが下がるし、よくなれば上がる。それは全産業共通して影響するので、したがって、相関係数は余りかかわらないということはあり得るかなと。違うか。

○山田構成員 
 だから、確かに局面によって違うでしょうね。景気の局面によってこの傾きというのは大きく変わってくる。おっしゃるように、傾きが不安定だと思います。

○今野座長 
 これは個別の事業所は手間がかかるでしょう。前回の産業別のセルのほうが手間がかからないですね。

○瀧原統計管理官 
 ただ、伸び率をとるだけなので、多分、意味があるのは事業所ですよね。事業所でやるべきものだと。

○今野座長 
 そうですけれども、最初から手間がかかるのだったら、そんな大変なことをやらないで、簡単な方法でやって、意味がありそうだったらさらにやってもらったほうが、効率がいいですね。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。ただ、そこは伸び率の分析というのが一つポイントではあるかと思います。

○今野座長 
 どうですか。

○樋田構成員 
 この散布図に示される相関関係が時間相関だと思うのです。そうすると、賃金の変化の推定精度が時間相関によって変わるというのは、この相関関係が強ければ、共通事業所で精度良く賃金の変化の推定ができるだろうというお話だと思います。
 確かに共通事業所の時間相関を利用して推定精度を高められる可能性はありますが、美添先生の資料の2ページの最後の2行にあるように、標本の入替に伴う問題に対応するために継続して回答した個体だけを用いると偏りが生じる可能性があり、特に事業所の場合には、余り適切ではないかもしれないという御指摘ももっともだと思います。
 時間相関が高いことは非常に重要な情報だと思うのです。ですが、美添先生の資料をふまえると、その情報をそのまま使うことはできないわけですので、ここの情報をどう使っていくのかというのは、今後の課題の一つなのかなという気がいたします。

○今野座長 
 ということは、計算の作業はこのぐらいでいいですかね。

○樋田構成員 
 そうですね。

○今野座長 
 でも、直感的にはこうなるよな。

○樋田構成員 
 前回私が申し上げたことの補足になりますが、時間相関が高ければ回帰直線の当てはまりも高いので、回帰的な方法で脱落部分を推計し、前期と今期の共通部分と共に使うことで推定精度を高めるという方法があります。もし、ここからさらに計算をするというのであれば、バイアスの問題は解決できませんけれども、そういった方法も検討する価値はあるのではないかと思います。

○瀧原統計管理官 
 それはアメリカの推計方法なども近いのかもしれませんけれども、水準は前期のを生かしつつ、伸びの部分については、こういう継続サンプルを生かしていく。そういう考えというわけではないですか。

○樋田構成員 
 今期の水準を推定するときに、今期のサンプルに含まれる事業所と、前期のサンプルには含まれるが、今期のサンプルには含まれない事業所がある。今期と前期は相関が高いので、両方に含まれる事業所のデータを使って、もしも前期にサンプルに含まれた事業所が今期にも含まれていたとするならば、どのぐらいの数字になり得るのかを推定して推計に利用することで、推定精度の改善を目指す方法があるということです。

○今野座長 
 なるほど。そういう方法ね。

○稲葉構成員 
 今のお話につけ加えて、そういった方法もあるし、また、別の方法も考えられるかと思います。資料2の1ページ目を見ますと、平成30年1月と29年1月になっているわけですが、ここですと、平成29年12月に回答して、1月に回答していなかったら、これからはとられるわけでして、12月のものをそのまま入れるとか、そのようなやり方もあります。補完する方法はさまざまであると思います。

○瀧原統計管理官 
 12月と1月を比べるということですか。

○稲葉構成員 
 そうではなくて、これですと、30年の1月がなければ、脱落あるいは回収がされなかったという形で、もうデータとして使わないということになってしまうと思うのですけれども、近いところで、例えば2月に回答したのもそのまま使ってもいいですし、12月、近いところのを使うやり方も一つの方法ではあると思います。

○今野座長 
 なるほど。それはそうだな。

○樋田構成員 
 その方法も2時点間の時間相関を使って補正するということですね。

○稲葉構成員 
 そうですね。

○今野座長 
 そうすると、その延長ですけれども、拡張ですが、今、厚生労働省がやっている共通系列の出し方がありますね。そのときに、特定のセルで平均値を出すときに、その中の平均値は脱落したもののデータは入っていないわけですね。これを今言ったような方法で少し補正をして、それで従来どおりで復元する。そういうふうに使えるということだ。

○稲葉構成員 
 そうです。

○今野座長 
 それは考えられますね。そうすると、今の厚生労働省のやり方より、計算対象の共通事業所がふえるわけだ。

○稲葉構成員 
 そうです。

○今野座長 
 それは考えられる方法ですね。
 瀧原さん、いい。やる、やらないは別にして、そういう一つのアイデア。

○瀧原統計管理官 
 それと、先ほどの議論の。

○今野座長 
 別。

○瀧原統計管理官 
 全く別なのですか。要は、脱落した。

○今野座長 
 この神林モデルは、脱落の事業所と完全に非共通事業所を同じに扱っているのですね。

○瀧原統計管理官 
 それで、今のお話の部分は、例えば30年1月には脱落してしまったものを復活させる話なのですか。

○今野座長 
 そういうことですね。
 そうすると、29年1月に少なくとも答えていて、30年1月に答えていないところは、復活できる。

○稲葉構成員 
 少し説明が不足していたかもしれないのですが、共通事業所に該当していた場合という条件がついていると思うのですけれども。

○瀧原統計管理官 
 ですので、29年1月に答えています。それで、サンプル入替などの影響なく、30年1月も調査対象にはなっているのだけれども、回答をいただけなかったという事業所に対して、何らかの調整、追記をする。それを入れて、ただ、それも使ってトータルを出すのですね。共通事業所の数字を出すのではなくて、オールジャパンの数字を推計する一つの補完ですか。

○今野座長 
 特定セル内の平均値を出すときの補正のやり方。

○瀧原統計管理官 
 それは、本系列の数字の補正をすると思っていいのですか。

○稲葉構成員 
 今は共通事業所のみということで。

○今野座長 
 考えたら、本系列もあり得るのだな。

○稲葉構成員 
 あり得ると思います。

○樋田構成員 
 本系列の推計に利用することも可能と思います。

○瀧原統計管理官 
 だから、今のやり方ですと、前年同月比という伸び率は維持されるのだと思うのです。前年、29年1月には存在していたものに対して、そんな単純ではないかもしれないですけれども、基本的に共通事業所の伸び率で補正しますので、トータルとして新しく加わったデータも含めての前年同月比は、ほぼ同じになると思うのです。
 ただ、30年1月のデータ数がふえますので、本系列も含めて、もう少し確度の高いものになる可能性があるということですね。それは一つの方法ではありますね。

○今野座長 
 ただ、本系列は我々の役割ではないから、横に置いておいて、稲葉さんが言われたのは共通系列の範囲の話だから、そういう補正はあってもいいよなと。

○瀧原統計管理官 
 ただ、共通事業所系列のほうは、伸び率は変わらず、水準がもう少しデータ数が多くなる。そういう考え方でしょうか。

○稲葉構成員 
 そうですね。今、議論になっているのは、バイアスがどのぐらいあるかで、結構バイアスのあることがだんだんわかってきて、そのバイアスをなくす方法の一つとして補完という方法があるということで、近くのデータがもしあったならば、それをもって埋める方法も一つの方法であるということです。

○瀧原統計管理官 
 確かに、データが落ちることのバイアスは少し防げますね。そういうことですね。

○今野座長 
 これも直感ですけれども、率には影響を及ぼさないけれども、水準には影響を及ぼしそうだね。率にも影響するかは、ちょっと待っていてくださいね。

○樋田構成員 
 補完の仕方によっては、率にも影響しますね。

○瀧原統計管理官 
 ですから、2月とか12月とかを使うのであれば、率にも影響は出てくると思います。
 悩ましいのは、賃金は月々でちょっとずれますので、近いものをうまく使えるかどうかという問題はあるかと思います。

○今野座長 
 それと、バイアスを補正する作業をする、しないは横に置いておいて、いいアイデアですので、必ずメモしておいてください。将来考えなければいけない課題の一つだと思いますので、必ず忘れないように書いておいてください。

○瀧原統計管理官 
 テークノートします。おっしゃるとおり、そもそも議論のときに、共通事業所系列をどう生かすか、本系列のものにどう生かすことができるかという意味では、まさにそういうお話かと思います。今回の共通事業所でこういう時間相関があって、ある程度安定度の高い数値がとれる部分があれば、それをどう本系列と組み合わせることによって全体の精度を上げていくことができるかという意味では、おっしゃるところは一つのポイントだとは思います。

○今野座長 
 本系列を組み合わせて、全体をね。本系列に代替するのではないですからね。よく言っておかないと。
 では、次に資料3に行きましょうか。

○瀧原統計管理官 
 資料3は補足的なものかと思いますけれども、前回の検討会のときに、稲葉先生から、神林先生の分析についての資料を御提出いただいた中で、3つ目のところだったと思うのですが、共通事業所が基本的には個人単位の賃金の動向を見るという念頭で集計しているとしたときに、とはいえ、共通事業所も1年間経つと人が入れ替わっていくという形がありますので、そこをどれぐらい変わっているのかという実態を把握しておくことも大事ではないかというお話がありましたので、残留率という言葉で資料3をつくっておりますけれども、1年後にどれぐらい人が入れ替わってしまうかというところを少し分析させていただきました。
 ただし、毎月勤労統計は月々の調査ですので、各月においてどれだけ労働者が減少したか、労働者が減ってしまったかというところは捉えることができるのですけれども、月単位ですので、次の月の減少数を出すときには、その前月末の労働者に対してどれだけやめていったかということしか捉えられないので、残っている人がやめるのか、新たに入ってきた人がやめるのかというところは、捉えることができないという前提があります。
 今回、大前提に置いたのは、以前からいる人と、新たに入った人も、どちらも率は同じだということです。これは実際にどちらなのかよくわかりません。残っている人はずっと残るのか、それとも、新しく入ってきた人のほうが残る確率が高いのかというのは、どちらもあるかなと思いますので、それはもう均等に、どちらも残留率が等しいということで、月々の残留率を1月から2月、3月というふうに12回掛け算をしています。その場合で、年間の残留率がどうなるかを計算したものです。
 ちなみに、次のページを先に見ていただきますと、入職率、離職率というのは、毎月勤労統計で公表しているデータではありますので、その数字をまず示しております。1月から12月までの入職率と離職率という形でパーセントで示していますけれども、これで見ていきますと、本系列と共通事業所で、少し数字の上下はありますが、そこはそんなに大きな差がないのかなと思っていますので、共通事業所の特性としての人が雇いやすいとか離職しやすいということは、それほどないのではないかというのが、この2ページ以降の数値でございます。規模ごとに出しておりますけれども、小さいところ、一番最後の5ページあたりは、5から29でグラフに差が出るところもありますけれども、比較的同じような動き、4月の入離職が高いとか、そういうのが見てとれるのかなと思います。
 そのような状況のもとで、1ページに戻っていただきまして、共通事業所のみで今回は分析させていただいております。残留率は2つ出しております。真ん中の表、年間残留率○1というのは、これは各月において共通事業所となっている事業所の1カ月間の残留率というのを平均しまして、それを単純に12回掛けたらどれぐらい残るかというものでございます。実際に計算をしますと、就業形態計で、規模によって少し動きますが、規模の大きいほうが残りやすいというところはありますけれども、就業形態計で8割強という程度、一般労働者はそれより少し高くて、パートタイムのほうは低目になるというもので、パートタイムでいきますと7割弱、62%から70%という数字になったというのが単純な計算のものです。
 もう少し共通事業所的な感覚で違いが出るかということで、残留率○2というのも計算しております。これは、サンプルは減るのですけれども、1月から12月まで、全てにわたって回答した事業所というところを追いかけました。これは事業所単位で追いかけていますので、1つの事業所について1月、2月、3月、4月の残留率を掛けていくという数字を計算した上で、それの最終的な対象となった事業所数の平均値という形を出しました。
 実際、見ていただくと、○1と○2はそれほど大きな差はないのですけれども、一つの事業所で追いかけたほうが、やや残留する率は高いのかなと。一般労働者は、実は若干○2のほうが低いのですけれども、パートのほうが73~74%という形で少し高くなったということがありますので、就業形態計も少し高くなったという形でございます。
 ただ、全体的に見ると2割ぐらいが残るという形でありますので、共通事業所であっても、毎勤統計でやる限りは、同じ労働者を追いかけるというよりは、人の入れ替わりが反映されたものにならざるを得ないのかなという結果かと思います。
 以上でございます。

○今野座長 
 御質問は。
 どうぞ。

○稲葉構成員 
 ありがとうございました。
 入職についてはわからないかもしれないのですけれども、同等レベルの規模であると判断するならば、約2割と考えていいですね。

○瀧原統計管理官 
 そうですね。

○稲葉構成員 
 ですから、かなり入れ替わりはあると解釈される。

○瀧原統計管理官 
 結構変わっているのかなと。

○稲葉構成員 
 以前、神林先生は1割ぐらいと言われていたと思うのですけれども、それよりも。

○今野座長 
 彼は2割と言っていなかったかな。ほかの調査も大体2割というのが私の感覚なのですけれども。

○稲葉構成員 
 随分多いなという印象を受けました。

○今野座長 
 こんな感じかなと思ったのですけれども、どうでしたかね。彼も2割と言っていたような。1割と言っていた。

○山田構成員 
 マクロをとっている雇用動向調査かな。あれで見ると17~18%ぐらいだったと思いますので、こんなものかなと。

○今野座長 
 事業所ベースだと、雇用動向がそうかな。雇用動向もたしか2割ぐらいですね。

○瀧原統計管理官 
 そうです。

○今野座長 
 だから、いずれにしても、かなり入れ替わるのですね。

○瀧原統計管理官 
 前回、あくまでも毎勤でやると、事業所単位の調査にならざるを得ない。ですので、共通事業所を使って、もう少し個人なりに近づけるような数値を出す感じにはなっているかと思いますが、現実的にはあくまでも事業所統計のエリアを出ないといいますか、なかなかこれで個人を追うところまでの数字にはなっていないと。

○今野座長 
 何かありますか。

○樋田構成員 
 労働者の入れ替わりと、そのほかの事業所の属性の変化の関係を見ることは可能でしょうか。
 2割の人が入れ替わるに伴って、事業所の属性がどのように変化しているのかを見ることができれば、共通事業所内部の変化の様子がわかるのではないでしょうか。

○瀧原統計管理官 
 それは例えば、入れ替わりの割合が高いところと低いところで賃金の動きに差があるかとか、そういう感じでしょうか。その毎勤の集計値にかかわる部分のところは、ある程度は捉えられると思います。年齢とかは、個別のものはないので、可能だとすれば、トータルの労働者に対してのトータルの賃金とか、トータルの労働時間というところのみでしょうか。

○今野座長 
 企業は、大体長くいても25年ぐらいしかいない。非常に安定を考える人も、25年ということは、年間4%やめて4%入ってくるのですね。だから、それだけでもまあまあな数字なのですね。あとは転職とか中途とかを入れると、このぐらいはいくかなと思いますけれどもね。もちろんパートとか、そういう人たちもいるから。だから、意外に放っておくと入れ替わる。したがって、放っておくと雇用調整が意外にできるという構造になっている。余計なことを言いました。

○山田構成員 
 これについて、余り本質的ではないかもしれませんけれども、残留率○1のほうは、単純に各月ですね。○2のほうは、ずっと安定して共通事業所であり続けたということですね。この違いは、パートタイマーの定着率がそこそこ違うのです。1割ぐらい違うということで、そうすると、これまでの分析で共通事業所は賃金のほうが、大体全体のサンプルより高いということがこれまでデータでも示されているわけで、そこの一つの理由にはなると思うのです。共通事業所になるところというのは、○1のほうは毎回変わっている事業所ですけれども、○2のほうはずっと安定しているということですから、共通事業所のほうは、パートタイムの入替が少ないと。そうすると、パートタイムの賃金カーブはかなりフラットなのですけれども、そうは言うものの、少しずつ熟練があると若干カーブが上がりますので、そこのパートタイムの賃金の水準の違いみたいなところが反映されているのではないかという推察ができるかと。

○今野座長 
 どうぞ。

○樋田構成員 
 そのような変化や様子を捉えるために、入れ替わり状況と平均賃金等の変化を見たらいいのではないかということです。

○今野座長 
 入れ替わりが大きい、小さいは勤続年数や年齢構成に影響を与えて、賃金に影響を及ぼす。多分そういうロジックですね。そのときに、年齢、勤続のデータはないから、考えられるとすると、残留率が高いと、パート比率と女性比率に影響を及ぼして、賃金に影響を及ぼすというロジックで分析ができるかどうかという話になりますね。
 残留率と賃金をダイレクトに比較してもいいですけれども、では、何でという話が出てくるので、そうすると、一般的に考えると、入れ替わりが大きいところはパート比率が高くて賃金が低いか。

○山田構成員 
 平均賃金が。

○今野座長 
 平均賃金が低い。あるいは、入替が激しいところはパート比率が高いから。

○山田構成員 
 ここから言えるのは、パートの異動率が高いということですね。パート比率そのものではないですね。
 もうちょっと直感的に言うと、非常に経営が不安定であれば、当然雇用調整も頻繁にせざるを得なくなってくるので、特にパートのところの異動率が高くなる。そうすると、経営が不安定であれば賃金も低い。そういうロジックかもしれません。

○今野座長 
 とにかく、いろいろなことが考えられそうだと思います。
 それでは、もう一つ、今日は資料があるので、その御説明をお伺いして、また自由に議論したいと思います。

○瀧原統計管理官 
 資料4は、これは分析ということではなくて、西村統計委員長から、総務委員会での国会の発言、前回のときにも少し御紹介させていただきましたけれども、そこで誤差の話をいろいろ発言されています。そこの上の四角のところが、4月9日の総務委員会での議事録なのですけれども、標本調査であるので、標本誤差があるということで、あとはサンプル脱落、サバイバルバイアスというものがある、そういう非標本誤差もあるということで、そういうものについて、一定の分析をしていく必要があるだろうと、特に定量的にやるということが大事だということをおっしゃっておられまして、最後のところになりますけれども、実際に誤差を捉える中で、個人の賃金の変化という話をされています。水準の話は、賃金が共通事業所と本系列のほうでの差といいますか、バイアスみたいな話の分析というのはいろいろこれまでもさせていただいていたわけですけれども、この変化の部分が、実はどういう形で見ることが可能かというところがあります。
 それ以外にも、共通事業所自身の母集団が明確でない部分がありますので、その標本誤差もいかなるものかというところもありますので、ここでは下の2つ、こういう西村統計委員長の御発言もあり、標本誤差について、我々として、どういう観点から分析ができるかというところを少し先生方に御示唆いただければと思い、この資料を用意いたしました。
 端的には、標本誤差については、共通事業所の標本誤差はどのような評価の仕方があり得るのかというところと、変化の標本誤差というのはどう評価したらいいのか。ここが非常に難しいというか、課題なのかなと思っております。
 非標本誤差のほうも、共通事業所特有のものがあり得るのか。あるいは、偏りというものですね。この辺は少し今回のβなどの分析で出てきたものなのかなと思いますけれども、それも含めて、大分議論自身は集約してきたのかと思いますが、今の時点で少し不足しているような分析等、あるいは御示唆等をいただければと思い、このペーパーを用意いたしました。
 以上、よろしくお願いいたします。

○今野座長 
 方法はAとBとCがあると出していただけると、一番いいのですけれども。

○山田構成員 
 水準のほうはいろいろこれまでされてきているので、これをどう整理して見せていくかだと思うのですけれども、確かに変化というのがほとんど分析がされていないので、それをこれまでやってきたやり方、全部とは言わないのですけれども、例えば非共通事業所と共通事業所で変化の違いを見てみるとかというのをできる範囲でやっていく。
 それは瀧原さんがおっしゃった、アメリカのやり方を見ていると、水準をどこかで固定して、伸び率をずっと伸ばしてしていったらいいのではないかということなのだと思うのです。直感的には、これは仮説ですけれども、日本の場合には、余りうまくいかないのではないかと。そうすると、今後出す手法で、変化率を使うというのは限界があるという仮説を立てるのであれば、その結果、変化を見てみると、極めて不安定だと。そういうものが出てくると、そういうことの補強材料になるのではないかと。
 あるいは、実は意外に安定というと、違うやり方を考えるということかもしれませんけれども、これに関しては、私はそういうイメージだと思いました。

○瀧原統計管理官 
 ありがとうございます。

○今野座長 
 これは左側の標本誤差で、共通事業所の平均給与の標本誤差というのが出れば、下の平均給与の変化の標本誤差は前年と今年の割り算でしょう。分子と分母の標本誤差はわかっているのだよね。そうしたら、割り算した新しい標本誤差などは計算できるのではないの。できないの。

○稲葉構成員 
 難しいと思います。

○今野座長 
 難しいの。足し算は平気なの。一般論ですけれども、二変数の足し算だったら。

○稲葉構成員 
 独立でしたら。ただ、独立ではないので。

○今野座長 
 そうか。独立ではないということか。そういうことな。それは確かに。

○瀧原統計管理官 
 そうすると、先ほどみたいに相関が高いとより難しくなると。

○稲葉構成員 
 難しいと思います。

○今野座長 
 そうだな。

○稲葉構成員 
 理論式で出すのは難しいと思います。

○今野座長 
 そうすると。

○稲葉構成員 
 リサンプリング法を利用するということになるのですが、厚生労働省では実施していないと思いますので、新たなことにチャレンジすることになると思うのですが。

○今野座長 
 やるかやらないかは別にして、リサンプリング法はこういうものがあって、そのときにはこういう手順でやってというのを整理しておくことでもこの検討会としては非常に重要なのです。
 それでは、ちょっと一度聞いていただいて。

○瀧原統計管理官 
 リサンプリング法でどのようにやればどう出せるかというのを、次回までに教えていただければと思います。

○樋田構成員 
 副標本法は賃金構造などで利用していると思います。

○稲葉構成員 
 やっているのですか。

○樋田構成員 
 はい。ほかにも副標本法を利用している厚生労働統計はあると思います。

○稲葉構成員 
 基本的に副標本法を使えば、ある程度は対応できると思いますので、もし実施している調査がありましたら、それと同様にすればよいかと思います。

○今野座長 
 そうすると、2つは挙がったね。まだ3つ、4つ、5つくらいあると。
 この標本誤差ではないのですけれども、先ほどの神林さんのβの推定誤差はあれでいいの。標準偏差を出していましたけれども。これとは違う話なのですけれども、誤差の問題は標本誤差の評価と推定誤差の評価、両方やらなければいけないものね。
 もう一つ、いずれにしても、私、全体の司会者としては、この誤差の問題をどうするかということを、余り時間を割いて議論してこなかったので、比較的平均値の値をどうしていこうかという議論は大分煮詰まってきたので、誤差をどうするかということについて、皆さんのアイデアを集中的に得たいなと。
 これまでの神林さんの発言だと、その仕事は樋田さんと稲葉さんだと何度も言っていた。反論しないと、仕事が行くよ。

○樋田構成員 
 稲葉先生と意見は違うかもしれませんが、誤差の問題は、なにをどのように推計をするかに依存するので、推計対象と推計方法を固めた上で、どういった誤差計算の方法が可能か検討するというのが手順だと思います。
 ですが、現状では母集団が何かということも固まっているわけではないので、まずはこの点を検討する必要があるのかなと思います。

○今野座長 
 そういう点からすると、まず、母集団がわかるかわからないかの前に、何を母集団として考えるかということを決めなければいけないので、それについては、オールジャパンの共通事業所というのを母集団、そこから全て議論を始める。それを前提にして、誤差。
 そのときに、計算できなくてもいいと思うのです。こういうことが前提で、これがわかればこういうことで、誤差の計算ができますとか、そういうもので私はいいと思っているのです。
 前からここでも議論になっていますけれども、ここでいろいろ計算したとしても、現在のデータは暫定的なデータなので、ちゃんとしたデータは2年後か3年後しか入らないので、そのときに、もう一度きちんとそのデータでやっていただけるような手順の方向をきちんとここで提示していくことも重要かなと思うのです。
 ですから、計算できなくても結構ですので、こういう前提が、条件があれば、こういうものがあるという整理の仕方でいいのです。

○樋田構成員 
 稲葉先生は、先ほどの件は。

○稲葉構成員 
 同意見です。基本的には母集団さえわかれば、さまざまな仮定を置きながらではあると思いますけれども、標本誤差については計算可能であると思います。どのぐらい近いかという話になってくると思いますが。
 ただ、もう一方の非標本誤差を評価するというのは極めて難しい問題でして、例えば、新たに調査が必要になるであるとか、そういったものが出てくる可能性があるので、こちらの非標本誤差を評価するというところは、すぐにはできない話だと思います。

○瀧原統計管理官 
 先ほど樋田先生がおっしゃった話が、私もお聞きしたいことのポイントでして、この誤差の話というのは、私の頭の中のイメージでは、スタートは、母集団が、今毎勤でやっているオールジャパンの母集団に対して、本系列と共通事業所という2つの数値があって、それぞれが母集団を同じにしているので、それぞれの誤差が評価できるのではないかという議論ではなかったのかなと。
 なので、非常にシンプルには、共通事業所のほうはデータが少ないから、もしかしたら誤差は大きいかもしれない。ただ、もしかしたら、一定の時間相関なりがあるから、そこは一定程度抑えられているかもしれない。そこは漠然とした話で言っていたわけです。
 ただ、母集団が、実は共通事業所は違うのだという話になれば、誤差比較は余り意味がないのかなと。単純な分析とは違う、一つの事業所に対して共通事業所の誤差はこうだ、本系列はこうだという話にはならないのかなというイメージも、こちらの議論を聞きながら思ったのです。何を推計するかということは、そういうことになるということでしょうか。

○樋田構成員 
 そうですね。私はそう考えます。

○今野座長 
 これが始まった当初との決定的な違いは、共通系列は、本系列の代替ではないというのが、非常に決定的に違うところで、ということは、母集団は共通系列とは違うということが、全ての議論の非常に重要な出発点で、そうすると、それを前提にしたときの共通系列の母集団はどうするかと。
 これは根っこなので、ここがまた違うとなると、また全然根っこから議論が変わるのですけれども、でも、我々この研究会の全委員としては、共通系列は別系列だと捉えるべきだと思っているので、そうすると、母集団は共通系列とは違う母集団が存在して、それに対して標本誤差がどうだという評価をするということになる。
 ということで、ロジックとしては、非常にはっきりしたということだと思います。ただ、あとは技術的に可能かどうかという問題はあると。現実的に可能かどうか。

○瀧原統計管理官 
 そうなると、母集団を仮定なり何かで設定しない限りは、誤差計算は現実的には難しいということですね。

○稲葉構成員 
 難しいと思います。

○今野座長 
 そうなのですけれども、そこが何とかならないのかというのが、私のお二人への。

○瀧原統計管理官 
 そこはあります。

○今野座長 
 あるいはほかのもので、よくわからないですけれども、例えば3年に1回ぐらいはセンサスの調査をやっているのだから、それを使って大体母集団はこのぐらいと推定してつくってしまうとか、あるいは、1回別で調査をやってみて母集団をつくってしまうとか、すぐできるかどうかは別にして、そういうアイデアがいろいろあるということを整理することが重要かなと思うのです。

○稲葉構成員 
 とても単純なことでいえば、途中で行っている補正をしないで、一番初めに変えたときのものに戻すやり方で実施すれば、非常に単純に計算はできると思います。

○今野座長 
 変えたとき。

○稲葉構成員 
 経済センサスでベンチマークを変えたときのものを使うというやり方は、一つの方法だと思います。

○今野座長 
 なるほど。それを共通事業所と。

○稲葉構成員 
 定義するということです。

○山田構成員 
 私の意見は、今日、申し上げましたけれども、雇用保険事業の統計を使うとどうかというもの。そのように新しいものとして定義してしまうのがいいのではないかと。だから、それは幾つかの選択肢の中の一つではないかと思います。

○今野座長 
 そうやると、本系列も全部そうしろということだね。

○山田構成員 
 本系列はこれまでの連続性がありますから、だから、今回はあくまで共通事業所というのは全く違うものだという出発点に立てば、そういう議論はあるのではないかと。そのほうが、母集団に戻すときは明確になるのではないかと思います。

○今野座長 
 それでは、そろそろ時間ですので、いずれにしても、残された非常に大きなテーマは誤差をどうするかという問題です。先ほどから出ていますけれども、実際に誤差の計算が具体的にどの程度できるかという問題がありますが、それは横に置いておいても、こういう手があるぞリストみたいなものを整理するのが非常に重要だということにさせていただいて、終わりにしようかと思います。
 今日はその他、ありますか。

○瀧原統計管理官 
 特にはございません。

○今野座長 
 皆さんから何かありますか。よろしいですか。
 それでは、私が言うのも何ですけれども、今日は朝早くからお疲れさまでした。二度とこういうことがないようにお願いをして、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

○細井統計企画調整官 
 ありがとうございました。
 長時間にわたりまして、御審議いただき、ありがとうございました。
 次回の開催につきましては、調整の上、改めて御案内させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、これをもちまして、第10回の検討会を閉会させていただきます。
 本日は御多忙のところ、御出席を賜り、ありがとうございました。




                                                                                                                                                                                       (了)

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