第2回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会議事録

日時

平成31年2月25日(月)16:00~18:00

場所

全国都市会館第1会議室

議題

1.精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討について
2.精神保健福祉士の養成課程における教育内容等の見直しについて
3.その他

議事


○溝口室長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
なお、本検討会は公開ですが、撮影は審議の前の頭撮りまでとさせていただきます。
また、傍聴される方につきましては、留意事項の遵守をお願いいたします。
始めに、委員の出欠状況につきまして御報告申し上げます。本日は、岩上構成員が欠席との連絡をいただいております。
また、関係省庁及び関係部局からは、文部科学省高等教育局医学教育課、少し遅れておりますが、社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室がオブザーバー参加となっております。
では、撮影についてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
(カメラ退室)
○溝口室長補佐 それでは、以降の進行は、樋口座長にお願いしたいと思います。
○樋口座長 それでは、早速、本日の議題に入りたいと思います。
初めに、事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。
○溝口室長補佐 それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。
まず、議事次第がございまして、
資料1 精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討及び作業について
資料2 精神保健福祉士の養成の在り方等に関する主な意見を踏まえた課題や論点について
資料3 精神保健福祉士に求められる役割について
資料4 精神保健福祉士の養成課程における教育内容等の見直しについて(報告)
参考資料1 精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会ワーキンググループ
開催要項
参考資料2 「平成27年度精神保健福祉士就労状況調査結果」
参考資料3 柏木構成員提出資料「精神保健福祉士に求められる役割について」
でございます。
また、机上資料といたしまして、精神保健福祉士関係法令等をまとめたファイル資料と、本日、岡崎構成員より配付資料がありましたA3のこの紙になりますので、御確認ください。
あと、委員のみですが、本日の大まかな日程表のタイムスケジュールを付けつけさせていただいておりますので、議事の内容につきまして、多少時間の前後はあるかと思います。あわせて御参照ください。
過不足等がございましたら、事務局にお申し付けください。
以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
今、説明がありましたように、本日のタイムテーブルが付いておりますので、おおよそのところでございますが、本日2時間を予定しているということで、このタイムテーブルに沿って進行させていただきたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
それでは、議題1「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討について」に入ってまいります。
議事の進め方でございますが、前回と同様で、まず事務局から、本日、先ほどありました資料の中の議題1に関する資料の説明をいただいた後に、各構成員から意見をいただいて、議論を進めていくという形でお願いしたいと思います。
では、資料1「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討及び作業について」及び参考資料1「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会ワーキンググループ 開催要項」、資料2「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する主な意見を踏まえた課題や論点について」について、事務局から説明をお願いします。
○御子柴主査 事務局でございます。
お手元に、資料1と参考資料1を御用意ください。
まず、資料1をめくっていただきまして、検討後の主なスケジュール、検討中も含めてですが、本件に関するスケジュールのイメージということで前回お示ししたものに、左側の点線の矢印囲みがありますところのとおり、障害者総合福祉推進事業の調査を並行して行っている旨を追記しております。
現段階といたしましては、ワーキンググループが設置されて検討を開始いたしましたので、本日は、議事1の中でワーキンググループの検討状況のスケジュール等を御紹介するような形としております。
また、議事2の「精神保健福祉士の養成課程における教育内容等の見直しについて」について、座長からワーキンググループでの検討状況の詳細を御報告いただくような形を予定しております。
今回の検討会では、ワーキンググループでのそういった検討や作業の状況を共有しまして、また追加の御意見や御議論をいただき、次回、第3回においては、中間報告書の取りまとめに向けて、さらに意見を集約し、検討を進めていただくこととなりますので、そのイメージの確認でございます。
2ページ目でございますが、ワーキンググループについてということで、別添の参考資料で開催要項をお示ししております。そちらについては、後ほど御参照いただければと思います。
こちらに記載しておりますとおり、13名の先生方に御就任いただきまして、検討を開始しております。座長については、検討会の構成員も御兼務いただいておりますが、田村綾子先生に座長をお務めいただいておりまして、また、伊東先生、岩本先生には、こちらの検討会とワーキングを御兼務いただいている状況でございます。
ワーキンググループについては、現状は教育に携わっている先生方や多職種の先生が中心となって御検討いただいておりまして、このほか、必要に応じて有識者を招致したり、現場の方々からの御意見については、検討会を通じて御意見をいただきながら進めていくという形をとっております。
続きまして、3ページ目でございますが「ワーキンググループのこれまでの検討及び作業」の状況でございます。
過去3回ワーキンググループが開催されておりまして、第1回は、設置についての確認と検討会での御意見を御紹介したような形で、検討事項に対する追加の御意見をいただきました。
第2回からは、詳細な教育内容等の見直しについて、実際の現行のカリキュラムをみんなで共有し、追加・修正すべき点や、具体的な作業を進めていただいている状況でございます。
第3回の時点で検討・作業いただいたところについて、本日、共有させていただく状況でございます。
補足といたしまして、下段にありますとおり、現状3回までのワーキンググループにおいて招致した参考人をお二人御紹介している状況です。北海道医療大学看護福祉学部の志水先生と日本福祉大学の原田先生にこれまで参考人としてお越しいただき、御意見をいただいています。御紹介となります。
次に、4ページ目でございますが、ワーキンググループでの検討事項の具体的な内容について御紹介しております。
こちらの1~5までは検討会での検討事項とリンクしておりますけれども、そのほか詳細といたしまして、こういったものを検討しております。赤字でお示ししている部分がこれまで主に検討を進めてきたものでございまして、そのほか黒字の部分についても、引き続き検討を進めていく状況となっております。
5ページ目からでございますが、こちらは前回も多少お示ししておりますけれども、前回までの見直しの内容やその後の状況を評価・確認しながら、今後の見直しを進めていこうという御意見がございまして、改めて書いているものでございます。
1つ目が「今後の精神保健福祉士に求められる役割」ということで、前回、4つの役割が示されたところです。こちらについては、入院医療中心から地域生活中心へという施策の転換や、法律など取り巻く環境の変化に応じて、見直しが既にされていたという状況でございまして、今回の見直しにおいては、これに追加して加えられるような新たな役割ですとか、こういった役割の整理の仕方とまた別途、広義の役割と業務という意味での狭義の役割とありますので、そういったところについて、今回の検討会で新たにまた御検討をいただくというような状況を想定しております。
2番の「今後の精神保健福祉士に必要とされる知識及び技術」ということで、前回の報告書では1~7で整理された形になっております。1~5の実践的な教育と、6と7については、これらに関する基礎的な知識を教育するということで、大きく分類されております。これらの役割というか、知識及び技術についても、今般の状況を踏まえて、新たに求められている知識や技術がないかということを、ワーキングでも検討しているところでございます。
6ページでございますけれども、こちらは「教育カリキュラムの見直し」の前回の状況です。
【時間数】については、一般養成施設は1200時間まで拡充され、短期養成施設については720時間まで充実されたということで、見直しが行われたと報告書に記載がありました。
【教育カリキュラムの構成】につきましては、前回の見直しにおいては、共通科目(社会福祉士)の見直しが先行して行われておりましたので、そこで既に整理された枠組みに準拠しつつ、精神保健福祉士に特化する知識と技術ということで科目群の3が加えられております。
こちらについては、前回の検討会でも確認させていただきましたとおり、今回の見直しにおいては、並行して社会福祉士とあわせて見直しを進めているところですので、社会福祉士の枠組みにかかわらず、まずは精神保健福祉士にとって必要な教育内容とは何かということで、見直しを行っているところでございます。
そのほか【大学等における指定科目・基礎科目】については、下に記載のとおりでございます。
続きまして、7ページからは念のための確認としての情報提供でございまして、こちらは、前回の見直しにおいて、もともと9科目であったものがどういう科目に見直されたのかという新旧対照表でございます。
7ページは主に専門科目を記載しておりまして、上段が座学中心の科目、下段が演習・実習の科目ということになっております。例えば、前回の「精神医学」「精神保健学」等がこういった科目名に変更されたり、技術総論が「相談援助の基盤」といった科目になったり、そういったところの統廃合の状況等を御確認いただければと思います。
続いて、8ページは共通科目についての見直しです。こちらは新旧対照表のとおりでございまして、統合された科目といたしまして「社会福祉援助技術論」と「社会福祉原論」にあった内容が「福祉行財政と福祉計画」という科目に統合されたところです。
あと、米印で注釈を記載しておりますとおり「権利擁護と成年後見制度」という科目はこちらの一覧にはございませんが、新規科目ということで整理されて、設置された科目です。
一方「法学」という科目は廃止されたということで、社会福祉士で見直しが既にされておりまして、法学については「権利擁護と成年後見制度」の科目の中でこれらに関する内容を学ぶということで整理されたと記載されております。
続いて、9ページでございますが、こちらは参考としまして社会福祉士の養成課程における専門科目の新旧対照表です。
こちらについては、こちらに記載のほか「就労支援サービス」「更生保護制度」という新規の科目が設置されたという経緯があります。
一方で「介護概論」という科目については廃止されて「高齢者に対する支援と介護保険制度」という科目の中に内容が盛り込まれるという整理がされたということでございました。
こちらについては、今回、例えば、児童や高齢者に関する内容を強化すべきだという御意見ですとか、社会調査、根拠に基づいた活動が必要だという御意見などを前回いただいておりますので、こういったところを踏まえまして、社会福祉士にある科目の中で精神保健福祉士に盛り込むべき内容があるかとか、また、共通科目化する必要なものがあるか、そういったところを御議論いただくこととなりますので、その参考でございます。
10ページは、共通科目の設定に関する前回同意いただいた内容の確認でございますので、説明は割愛いたします。
11ページからがワーキンググループでの主な方針ということになりまして、既にお伝えしているところが多いので、簡単に御紹介となりますが、まずは、カリキュラムの見直しの前に役割の整理やコアコンピテンシーの明確化を行った上で、養成課程において基軸となる教育目標を明確にしていこうといった御意見が主となっております。
3つ目、4つ目のところで、制度、サービス中心の現行の教育内容から、理念や概論などの基盤となる内容を基軸とした見直しを行っていこうという御意見が主なものでございます。
多職種連携については、多々御意見をいただいておりますけれども、まずは、ほかの職種の役割を理解するとともに、自らの役割も整理していこうというお話があったかと思っております。
ただ、多職種に関連する連携のところについては、全てを養成課程で教えるのはなかなか困難もあるということですので、養成課程でどこまで教えられて、卒後にどういった教育が必要かという御意見をその後いただくことを想定しております。
12ページは先ほどお伝えしたようなところでございますけれども、まず、共通科目、専門科目という概念を取り払って、精神保健福祉士の教育内容として何が必要かという議論をしているという状況でございまして、3段階をとっております。
その上で、ソーシャルワークの専門職として基盤となる内容が何かという確認を行い、逆にそれらをどこの科目に盛り込むのかという検討をするという段階をワーキンググループでは行っている状況です。
そのほか、真ん中は実習等に関するところでございますが、下から2つ目の○にありますとおり、前回検討会でも、ソーシャルワークのグローバル定義にあるとおり「専門職であり学問である」という形で、学問体系をきちんと整理していこうという御意見が主にありましたので、そういったところに注意して検討をいただいているところでございます。
13ページ目でございます。こちらはワーキンググループで気をつけている留意点ということですので、御参考に御確認いただければというところでございます。
最後、14ページでございますけれども、こちらに書いてありますのが、ワーキンググループで検討いただきました精神保健福祉士の目指すべき姿(全体像)のイメージを御議論いただきながら、その中で、養成課程ではどういったところを盛り込むべきか、見直すべきかという話を順序立ててしていたところです。それを簡単に図示して御紹介しているところでして、現状、まだ議論いただいている観点として、黄色い枠で囲っておりますところに主な論点をお示ししております。
例えば「原論」という基軸になる科目が必要ではないかといった御意見が出ておりますので、そういった観点で、基盤となる科目は何なのか、社会福祉士との共通はどうあるべきか、あとは、各具体科目についてですけれども、下の段にありますとおり、学問体系ということですが、何々学、何々論といった整理が必要なのか、ほかの科目について、どういった群分けが必要かという検討をしているところです。
そのほか、政策論、制度論、システム論、行政論といったものがいろいろあると思うのですけれども、そういったところの整理をどのようにしていくべきかということを、現状、検討しております。
そのほか右上の吹き出しにありますとおり、今回、役割についていろいろ議論をいただいている中で、対象や課題がかなり拡大しているというところはありますが、これらをどのように整理・網羅するのかという検討をいただいている状況です。
最後に、15枚目にありますのが、役割を整理していく中で、今後、中間報告書を取りまとめていく中で、どういった柱立てができるのかというのを、ワーキンググループで作業・検討いただいたものを参考に、事務局としてイメージを記載したものでございます。
16枚目にありますとおり、今後の検討会では、2つ目の○にありますとおり、中間報告の取りまとめに向けて、次回、議論を詰めていっていただく予定でおりますということと、次回においては、推進事業で調査いただいた結果も、中間報告ということで結果を共有できればと考えております。
今後は、本日の検討等を踏まえて、必要に応じて参考人を招聘することがありますということと、社会福祉士の見直しにおいての検討状況については、現状はまだ非公開でございますけれども、今後、調整をしていくといったところになっているかと思います。
以上でございます。
続きまして、資料2でございますが、こちらは前回の第1回の検討会でいただきました御意見と、加えて、第1回のワーキンググループで同じような検討事項に対して御意見をいただきましたものを集約したものでございます。個別の紹介は割愛させていただきますが、先ほどの資料1に必要なものは盛り込んでおりますので、そちらで御確認いただけるかと思っております。
分け方といたしましては、検討事項1~4に対して分けておりまして、「1)精神保健福祉士に求められる役割」については、1つ目として、求められている主な役割、新たな役割は何かということを見える化する。2つ目といたしましては、多職種連携の中で精神保健福祉士の役割を明確化するということが課題になっているかと思います。
「2)精神保健福祉士の養成の在り方について」は、本日御紹介した上で御検討いただくところでございますが、課題(1)としては、カリキュラムの構造や科目体系に関する課題。
(2)としては、具体的な必要となる教育内容は何かという課題。
(3)が、多職種連携・協働を踏まえた教育内容とは何かという課題。
(4)としましては、前回の検討会で御意見をいただいていますとおり、用語の統一、定義の明確化という課題。
(5)としましては、具体的な科目内容に関する課題といったところを挙げております。
「3)演習・実習及び教員等の在り方について」は、主に次回以降の検討になるかと思いますので、説明は割愛いたします。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、ただいま説明いただいた資料1及び資料2につきまして、ここで御質問、あるいは追加の御意見がありましたら、お願いいたします。どなたからでも結構です。
どうぞ。
○中島構成員 日本社会福祉士会の中島と申します。
前回、欠席させていただいた関係があるのですけれども、大きくは2つありまして、1つは、精神保健福祉士及び社会福祉士はソーシャルワーカーの国家資格であるということは、当然、共通理解がなされているはずなのです。
であるにもかかわらず、科目の中身、カリキュラムの中身に「ソーシャルワーク」という言葉が余り出てこない。それが「相談援助」に置きかえられているというところはすごく問題ではないかと私は思っていまして、というのは、相談援助、イコール、ソーシャルワークではないということです。
相談援助に含まれていないソーシャルワークで最も重要なことは、ネットワーキングやコーディネーションとか、社会資源の開発・発掘・創出というところが入ってきます。つまり、社会環境に対して介入をしていくといいますか、かなり動的な作業・仕事がそこに含まれているのですけれども、相談援助の中にはそういったものが含まれていない。
今、地域包括ケアや地域共生社会が求められている現状の中で、相談援助だけでは恐らく対応できないというのは誰もがわかっていることですので、相談援助職を育てるのではなく、ソーシャルワークを育てるという形で、しっかりとそこのところを情報発信していただきたいというのが1つ目になります。
2つ目は、先ほど事務局の方からも御説明がありましたけれども、精神保健福祉士と社会福祉士の領域が広がっていて、かなりかぶっているところがあります。一例を挙げると、スクールソーシャルワーカーとか、昨今の児童福祉士に関してもかぶってきているわけです。
これは先ほどの事務局の御説明にありましたように、対象者を選別していかないといいますか、旧来のような選別主義や制限主義のようなサービスの提供方法ではなくて、全ての人間に共通するニーズに対応していくという普遍主義や必要主義という形にかじが切られていると捉えていいと思いますけれども、そういった状況の中で、社会福祉士と精神保健福祉士の対象領域がかなりかぶってきているところがあります。
何が言いたいのかというと、共通科目をかなり幅広く充足させて、それぞれの専門科目を縮小していくというような捉え方をしてはどうかと考えています。
例えば司法の領域、児童の領域、あと、実は障害の領域も、障害者の高齢化に伴って対象領域がかなりかぶってきている。その代表例が認知症の人に対する支援になります。そういったところが考えられるので、共通科目の分野を拡大していくというところを御提案しておきたいと思います。
とりあえずこの2点です。
○樋口座長 ありがとうございました。
そのほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
○中島構成員 このカリキュラムの中に「地域移行」という言葉があるのですけれども、物すごくひっかかるのです。つまり「地域移行」という言葉の意味は何かというと、恐らく病院や施設から地域に移行するという意味ですよね。
では、私は聞きたいのですけれども、病院や施設は地域にないのか。地域の中に存在しますよね。ですので、仮に病院や施設に勤めているレジデンシャルとか、そういったソーシャルワーカーの人たちにも、自分たちが所属している施設や病院が地域に根ざしたものでなければならないということをしっかりと教育していく必要性があると思いますので、「地域移行」というのは実態にそぐわないといいますか、むしろ違った教育に誘導してしまいかねないので、私は「地域生活支援」でいいと思います。この言葉はすごく違和感を覚えますので、御検討いただければと思います。
○樋口座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。もし追加の御意見、後でまたお気づきになったところがございましたら、その都度出していただきたいと思いますし、次の資料3の説明が終わった後に、全体についても、また御質疑いただきますので、そのときでも結構でございます。
それでは、とりあえず次の資料3の説明をしていただくところへ進んでいきたいと思います。資料3「精神保健福祉士に求められる役割について」及び参考資料2「平成27年度精神保健福祉士就労状況調査結果」に進みます。
ここでは、事務局からの資料とあわせて、柏木構成員に御協力をいただいて、参考資料3の日本精神保健福祉士協会の「精神保健福祉士に求められる役割について」を情報提供いただくことになっております。
資料3と参考資料2を事務局から説明していただいた後に、参考資料3について、柏木構成員から説明をいただきたいと思いますので、まず、事務局からお願いいたします。
○御子柴主査 事務局でございます。
では、お手元に資料3を御用意ください。
「精神保健福祉士に求められる役割について」ということで、用語が確定的な形になっておりますが、本検討会の検討事項の表記だということで御理解いただきまして、この資料の趣旨といたしましては、ワーキンググループでの検討や作業の中で出てきた情報を共有しながら、本日、役割とは何かということとか、多職種連携でどういった役割があるかということを御意見いただく中で、事前の参考ということで情報を共有したいという趣旨の資料でございます。内容が確定したものということではございませんので、誤解のないようによろしくお願いいたします。
下段に「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討の取りまとめに向けた中間報告書の主な項目(イメージ)(再掲)」ということで、この後の目次の代わりに記載しておりますので、こういった形でワーキンググループで出てきた御意見や共有した情報を今回御紹介しております。
まず、真ん中の「3)求められるもの(役割)」については、先ほど御紹介したとおりですけれども、補足といたしまして「2」変化してきたもの(役割)」という記載がありますが、これは変化し得るもの、あるいはしてきたものということで、表現が固まっているものではございませんけれども、簡単に申し上げると、そういったところかなということで、対象や課題、それらに対する目的・目標、業務を検討したり、今後、御意見をいただきたいという趣旨でございます。
下段の「3.求められる役割を踏まえた対応について」ということで、前回の中間報告書でも、こういう役割が求められているから、こういった対応が必要といった項目が「2)具体的な対応」ということで示されておりました。
その中で、例えば、カリキュラムの見直しや資質向上のために何が必要かといった提言を10年前の見直しのときにいただいておりまして、今回、どういう対応が必要かということをまた御意見をいただきたいということでございます。
では、中身の説明をさせていただきますが、2枚目のスライドでございますが、こちらの記載は、前回の検討会でお示しした開催要項にも記載しておりますとおり、10年前の見直しの検討、また、前回のカリキュラム改正が平成24年に行われましたが、それ以降に取り巻く状況が変わってきています。こういった状況を踏まえて、今回、検討を行っていくということの確認です。
配置状況につきましては、今後、また補足の資料等でお示しいたしますが、既存の調査の中でわかる配置の状況が、前回お示ししたとおり、医療、福祉、保健、司法の分野等々になってくるということで、こういった表記をして御紹介しております。こういった中で、精神保健福祉士がどういった役割を果たしていくのかということを、また今回、先生方から御意見もいただきたいというところです。
4枚目は、前回の検討会の資料2でお示しした「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築(イメージ)」でございます。
こういった各分野の連携や包括的な支援を行っていく中で、精神保健福祉士がどういった役割を果たせるのかというところについても、また具体的に御意見をいただきたいと思っております。
5枚目のスライドは、前回も御紹介いたしましたけれども、依存症対策の話があるかと思います。こういった支援体制を構築していく中で、精神保健福祉士の皆様にどういった役割を果たしていただくかということ、また、これまで実際に支援を行ってきていただいていると思いますので、そういったところの情報がもし共有いただけるようであれば、こちらにも御意見をいただきたいと思っております。
6枚目でございますが、こちらは地域共生社会の実現というビジョンがある中で、包括的な支援体制とは何かということを図示したもので、イメージでございます。ここにおいても同じように、精神保健福祉士がどういったところにかかわって、どういった支援を行っていただけるのかということを御議論いただきたいという御紹介です。
7枚目は「精神保健福祉法における精神保健福祉士に関する規定」の御紹介でございますので、そのほか、任用資格について、いろいろと前回も御意見をいただいておりますが、今後、そういったところも整理・確認しながら、教育内容の中で漏れがないように盛り込んでいくことを想定しております。
続きまして、8枚目、9枚目以降のスライドでございます。こちらのワーキンググループで出た御意見を御紹介しておりますので、後ほどのスライドと関連してきますので、ここでの説明は割愛いたします。
11枚目のスライドから御説明させていただきます。
ワーキンググループでは、検討会での御意見を踏まえて、こういった精神保健福祉士の変遷や歴史といったことも教育の中では重要だというお話がありました。また、求められる役割の整理や学問体系の整理の話の中で、こういったところの概念や倫理綱領等を確認してきました。
1つ目が、変遷ということで、日本精神医学ソーシャルワーカー協会が設立されたときの趣意書の中でも、やはり学問体系を社会福祉学に置くということが記載されております。
倫理綱領の中では、社会福祉学に依拠した専門職であって、ソーシャルワークの価値と理念、そして、理論に基づいた専門職であるということが記載されております。
最後のポツのところはグローバル定義の引用でございますけれども、先ほど御意見がありましたとおりですが、社会変革と社会開発、結束及び人々のエンパワーメントと解放を促進すること、実践に基づいた専門職であり、学問であるということが記載されております。
さらに、中段以降に書いてありますとおり、ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学及び地域・民族固有の知を基盤とした専門職であるということが書かれております。
こういったことを確認しながら、検討していただいておりました。
12枚目は「精神保健福祉士法における精神保健福祉士の定義」でございます。
先ほど「ソーシャルワーク」「相談援助」という言葉についての御意見がありましたけれども、ワーキンググループの中では、現行の法律では、真ん中のところにあります「地域相談支援」、その下段にあります「必要な訓練その他の援助」、その他の援助といったところに、どういったことが今行われているのかということで、広義の「相談援助」等を捉えながら議論を進めてきたところです。
今回の検討会では、法の目的と理念に照らして精神保健の向上及び障害者の福祉の増進に寄与するということで、対象者は精神障害者だけでなく国民や社会全体であろうということは、前回の検討会で御確認いただいたところでございますので、そういったことを前提にワーキンググループでも議論をしてまいりました。
13ページには「精神保健福祉士に求められる役割の整理」と書いておりますが、ワーキンググループでは、狭義の「役割」という単なる業務ではなくて、コアコンピテンシーや専門性ということを整理していこうということで、広義の「役割」とは何だということを皆さんで御議論をいただいてまいりました。
まず、先ほどの目次にありましたとおり、上段の「価値・理念」「倫理原則、責務」「視点」といった普遍的であろうものについて、整理をしていくということが1つ。
中段のところに矢印書きでお示ししておりますとおり、対象・課題、レベルに応じた目的、目標、業務とは何があるかということを2つ目として整理していこうということにしております。
それらを支える基盤として、機能、技能・技術、理論・知識とは具体的にどういったものかということを3つ目として整理していく。こういった形でイメージしながら、ワーキンググループでディスカッションをいただいているところでございます。
ただ、これについては、検討会の先生方からもぜひ御意見をいただきたいところですので、こういった整理がよいのかというところも含めて、今回、御意見をいただきたいという趣旨です。
14枚目からが先ほどの1)、2)、3)に分けた形でお示ししているもので、ここはワーキンググループで確認した情報の共有ということでございますので、参考情報が多いことは御容赦ください。
まず、1つ目が、前回、第1回の検討会で精神保健福祉士協会から御提供いただきました業務指針があったかと思います。その中で示されている、ソーシャルワーク業務を展開するに当たって共通して貫くべき価値や理念は何かということで、こういった形で整理されているということの御紹介です。
また、本検討会では、これらに加えたり、表現についてもいろいろと御意見をいただきながら、中間報告書にどういった価値や理念が基盤になるのかということを言語化いただければというところでございます。
16枚目は「倫理原則に基づく精神保健福祉士の責務」がどう書かれているのかということの御紹介、17枚目は「ソーシャルワークに共通する視点」ということで、業務指針に書かれているものを少し引用して、みんなで共有したというところです。
18枚目のスライドでございますが、こちらはワーキンググループで、取り急ぎ今までの検討や作業の中から見出してきた主な視点とはどういうものかを12個ほどに整理したところでございます。
先ほどまでにお示ししていた参考情報なども引用しながら、取り急ぎの整理として主な視点を列記したものでございますので、こういったところについても、こういう視点がほかにあるのではないかとか、別の見方があれば御意見等をいただきたいと思っているところです。
次に、先ほどお伝えした「2)変化してきたもの(役割)」、変化し得るものということで、どういった課題、目的、業務があるかということを検討したところです。
20枚目のスライドでございますが、こちらは業務指針で業務をどのように定義しているのかという御紹介でございます。
下線のとおり、場面や状況があり、価値や理念があり、それに対して機能や技術といった具体的行為や表現内容を業務ということで定義されているところです。
また、業務については、人と環境の相互作用を視点に置いた包括的アプローチを実践上の特性としていることから「ミクロ-メゾ-マクロ」の連続性の中で展開するものであるということが記載されております。これが先ほどのイメージ図に生かされているところでございます。
21枚目のスライドは、実践において関わる課題や対象は何かということについて、こちらは網羅しているということではないのですが、前回の検討会で出た御意見を少し集約したり、ワーキンググループで出たものを追記したりしているものでございまして、特に近年の変化等を踏まえて追加すべきものは何かということで、カリキュラムの内容を見直すに当たって事前に整理したものでございます。
ここで下の<対象>のところについては、先ほど法の理念や目的に照らしてということで、精神保健の増進といったところで発生予防という観点も少し加えているところでございます。
22枚目のスライドは、前回の検討会で御意見をいただきました、多職種連携を踏まえたときの狭義の「役割」としての業務内容の例示でございます。主に柏木先生等から御意見をいただいたところもありますけれども、そこに加えてワーキンググループ等で出たものを追加しております。
これも抽象度や階層はさまざまなところもありますので、これを並列に並べるというよりは、例示してイメージしていく中で列記したものでございます。このように、業務については、広義と狭義、いろいろありますので、平坦に整理するのがすごく難しいというところでございます。
その参考として、先ほどお示しした日本精神保健福祉士協会で作成されている、業務特性を図示されているものを参考に引用しておりますので、こういったところも参考にしていただきながら、後ほど御意見をいただきたいというところです。
続きまして、24枚目以降でございますが「3」求められるもの」としての機能や技術・技能、理論や知識とはどんなものなのかということを、ワーキンググループで先生方に意見を出し合っていただいたものでございます。
「ソーシャルワーカーの機能」については、第1回検討会でもさまざまな御意見をいただきまして、先ほどのコーディネーションやワーキングの話などもありました。そういったものも含めて、どういったものがあるかというのを列記してみようということで整理したものでございます。
そのほかに、下にあるようなものが参考として追加で挙げられたものでございます。こういったものがどういった形で教育内容に落とし込めるのか、あるいは養成の段階でどこまで教育できるのかということを御議論いただきたいというところです。
続きまして、26枚目ですが、こちらは簡単なメモのような形で申し訳ありませんが「ソーシャルワーカーの技能/技術」とは何かというところについては、まだワーキンググループでも検討が十分にできていないのですけれども、業務指針で書かれているものをピックアップさせていただきながら、例えば、これらを援助論の中でどういった形で教えていくのかということも今検討をしていただいている最中でございます。
27ページの参考として記載しているものですけれども「ソーシャルワークにおいて活用する知識」ということで、業務指針の中で整理されているものを、今後の科目群の整理や学問の体系整理の中でどうやって分類していくのかというところに少し活用できるかと思って御紹介しているところです。
長い説明で申し訳ありませんが、次の28枚目以降が、知識の内容や、理論にはどういうものがあるかというものを洗い出したものの例でございます。説明は割愛いたします。
30枚目のスライドが、先ほど御紹介したとおりで、御存じのとおりだと思いますが、グローバル定義の記載を図示するとこういったところかと思っておりまして、科学のところについては、先ほど社会科学と人文科学とありましたけれども、一般的な形で「社会科学」「人文科学」「自然科学」と分類されることが多いと聞いておりますので、そういった形で少し記載を変更させていただいているところがあります。
それに対して、今、どういった学問が当たるかということを、仮置きですけれども、社会学から医学までを列記しているところです。これらは、どちらに分類されるかは場面や内容によって変わってくるということも聞いておりますので、仮置きのイメージということで、今後の学問体系の整理の御参考ということで御了承ください。
最後が「これまでのワーキンググループでの検討や作業における意見や整理」ということで、今まで記載したものをまとめて文章化したものでございますので、今後、中間報告書を取りまとめていくに当たって、あと、本日、御意見をいただくに当たって、こういったところに加えたり、変更したりしていただければと思っているところでございます。
今までのところは、まだワーキンググループでも検討・作業をしている途中でございますし、今回、先生方に御議論いただいたものを集約して、次回以降、中間報告書の取りまとめに向けて、事務局で案の調整作業をしていきますので、今回、追加で御意見をいただきたいところです。
最後は「3.求められる役割を踏まえた対応について」というのが次回また御議論いただくところでございますけれども、現段階で今までの御意見の中から挙げるとするとということで、36枚目のスライドに案ということでお示ししております。
役割の明確化というのはもともと前提として言われていましたので、それを踏まえた形で、今後、何が必要になってくるかというところで、職種の魅力や自分たちの役割を周りに理解してもらう必要があるという御意見を前回いただいておりましたので、役割の周知・普及。
あと、多職種との連携においては、まず、役割をそれぞれ明示する必要があろうという御意見がありましたので、それが2つ目です。
3つ目が、コアコンピテンシーやアイデンティティーに基づいて学問体系を整理していこうということがありましたので、それが3つ目の課題です。この辺からカリキュラムの話になろうかと思います。
4つ目も同じくカリキュラムの話です。
その後、次回にまた御議論いただきますが、演習・実習や教員のあり方についても、見直しが必要であれば、検討していただくような予定かと思います。
あと、本検討会での主な検討事項として下の2つがあるかと思いますが、どこまでが基礎教育で、どこからが卒後教育、あるいはボーダーレスのところもあるかと思いますが、そういったところの明確化、あとは、資質向上のあり方について対応していく必要があろうということが、今までの意見をまとめたものでございます。
37枚目からは、「学問体系の整理」ということが36枚目の3つ目にありますが、そのイメージで、先ほどグローバル定義があったかと思うのですけれども、そういったソーシャルワークの原理をどこの学問で教えるのかということを、ワーキンググループで現在検討いただいているところですので、まだ検討途中ということで「など」ということでお示ししております。
38枚目についても「ソーシャルワークの基盤」ということで、グローバル定義に挙げられている理論、固有の知、科学関係、こういったものが具体的にどういうものがあるのかを例示しているものでございます。
この例示の中身は、先ほどワーキンググループで洗い出したものをプロットしているものですので、適切なプロットではないところがあるかもしれませんが、仮にこのようなイメージで、どういう学問が必要かということを検討しているというイメージでございます。
そういった体系整理を踏まえると、科目群をある程度整理していく必要があろうということは既に御意見をいただいておりますので、そういったものがどういう科目群に体系整理できるかということの例ということで現状のものをお示ししております。これは確定したものではございませんので、単純にグローバル定義をそのまま引用しているところでございます。
参考情報については、精神保健福祉士の役割という意味で、単純な狭義の役割、業務あるいは配置といったところについての参考情報ということで、日本精神保健福祉士協会より御提供いただいた就業先の例を掲載しておりますのと、本省のほうで診療報酬上の算定の例ということでお示ししているものでございます。
長くなりましたが、最後に、46枚目、47枚目のスライドについては「障害福祉施策等について」ということで参考情報を御紹介しております。先ほどの共生社会や包括ケアといったところについて、具体的に情報提供ということで補足の資料でございます。
こちらからは以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
参考資料はいいですか。
○御子柴主査 参考資料2につきましては、少し年数が過去のものにはなりますけれども、平成27年度に行われました精神保健福祉士就労状況調査というものがありまして、社会福祉振興・試験センターで行っていただいた調査の結果を、参考ということで今回提供させていただきます。詳細な説明は割愛させていただきますけれども、数年前の調査にはなりますが、現在行っている推進事業の結果等を踏まえて、次回、必要があればこちらも参考にしていただきながら、御意見をいただければということで提供させていただきます。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、先ほど申し上げましたように、続きまして、参考資料3について、柏木構成員から御説明をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○柏木構成員 貴重なお時間を頂戴して、感謝申し上げます。
それでは、大変雑駁な資料でございますが、日本精神保健福祉士協会が整理いたしました「精神保健福祉士に求められる役割について」について、お話しさせていただきます。
私どもの資格は、社会福祉士及び介護福祉士法に遅れること10年、1997年12月に成立いたしました。精神障害者の人権擁護、地域生活支援の推進、殊に社会的入院の解消を医療とは異なる視点で支援する人材としての期待がございました。
私たちは、精神保健福祉士という国家資格ができるまでPsychiatric Social Worker、略して「PSW」でございますが、と名乗っており、自分たちがソーシャルワーカーであることを強く意識して実践を展開してまいりました。
その私たちにとって、精神科病院に病状以外の理由で長く留め置かれ、地域や当たり前の暮らしから遠ざけられた人々の社会的復権を図らずして、そもそもの存在意義はなく、それが精神保健福祉士の最大の役割と長年考えてきました。
しかしながら、精神科医療の変化にあわせて、精神保健福祉士がカバーする領域も、予防を含め、広く国民全般のメンタルヘルスに対応を求められるようになってきました。
今、精神科病棟における精神保健福祉士配置のもっと詳しい説明は、先ほどの御子柴さんの御説明にありましたけれども、一方では、精神科の病院では、さまざまな形態で、常勤専従であるとか、診療報酬に加算されるといったような必置が進んできたということを申し上げたいと思います。
医療機関においては、精神保健福祉士の役割は極めて多様になっておりまして、まず、医療機関内部、それから、地域との連携においても、我々がチーム医療において福祉的支援の立場から参画を果たせるようになってきたというような図でございます。
精神科チーム医療の具体例といたしましては、精神科の病院におけるチーム医療の中では、急性期の入院医療、あるいは地域移行支援、そして、認知症医療等について、チーム医療の中での重要な役割を果たしてきていると自負しております。
あとは、虐待防止に関するもの、自殺未遂者に関するもの、依存症への取り組みに関するチーム医療、そして、医療観察法における役割と、精神科医療のさまざまなチーム医療において、精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)はチーム構成員としてのかかわりを求められております。
先ほど中島さんから地域移行に関してのお話がございましたが、私は「地域移行・地域定着」という言葉の中には、これまで精神科の病院が背負ってきた宿命と、精神障害者が背負わされてきた、地域から遠ざけられたというところに、実は大きな意味合いを持っていまして、この言葉が適切かどうかはわかりませんし、これから精神科病院は地域の中の一つの資源として機能していくということは間違いないと思いますけれども、今もなお続く地域から遠ざけられた生活をされている方たちがいるという意味を含めて「地域移行・地域定着」という言葉を使わせていただきたいと思います。
その中で精神保健福祉士は、病院の中においては、当然のことながら、まず、地域に送り出していく。地域においては、支える力として地域生活を支えていく。そして、その中で、送り出すほうと支えるほうの真ん中につなぐ力を持った。これはいずれも、どの場面を切り取っても、精神保健福祉士の働きが鍵となっているのではないかと考えております。
次の図は、まず、地域移行がとにかく我々の今までの業務の核でありましたので、地域移行・地域定着の体制づくりや流れといったようなことを詳細に書かせていただいております。
この図の鍵は、多職種連携の中での精神保健福祉士の役割と、それから「ミクロ-メゾ-マクロへ」と、地続きのかかわりをどの段階でも担って、個別支援から地域づくりまでPSWがそれを担っていく役割があると思っております。
そういいながらも、精神保健福祉士の就労分野の広がりは、実は精神科医療機関の中よりも、今後、地域生活支援を支える側に多分シフトしていかれるのではないかというほど、少しずつの変化ではございますが、精神科の病院や診療所で働くソーシャルワーカーの数が半分を割って、地域で働く人たちが増えてきているというのが12ページの図でございます。
「ライフサイクルにおけるメンタルヘルス課題」ですが、胎生期から老年期に至るまで、さまざまなメンタルヘルス課題を人は抱えており、そしてさまざまな問題が起こり、それに対応して諸機関の中で精神保健福祉士もこれらの人たちに、これまでもずっと対応してきているのですけれども、今後、さらにこの活躍が期待されるところではないかと思います。
「新たなメンタルヘルス課題に対応する精神保健福祉士」としては、発達障害、鬱、認知症、災害あるいはいろいろな犯罪によるPTSD、依存症など、精神科医療は本当に今、拡大する国民のメンタルヘルス課題への対応を迫られていると考えています。そして、これらは、医療だけでは解決できない多様で複雑な問題を包含しておりまして、多様な制度の利用とか、多職種あるいは異業種との連携などが必須になってくるのではないか。そういった意味では、精神保健福祉士のこれからのまさに働きどころではないかと思っております。
メンタルヘルス課題に精神保健福祉士が向き合う訳は、何度も言いますけれども、地域生活を支えることを私たちは主眼としてきたわけですが、これからは今までよりもさらに軸足がそちらに行くのではないかと思っております。
メンタルヘルスの課題は、個々の人のライフステージごとの問題にはとどまりません。表れ方は違っても、例えば子供なら不登校やいじめ、青年期だったらひきこもりであるとか、親が高齢化すれば8050問題につながり、高齢になって単身になれば、社会的孤立とその同一線上にある孤独死というように連続していくものだと思います。
また、家族の問題では、夫婦間のDVが子供の面前虐待となって、長きにわたって子供の心や人生そのものに大きな影を落としていく連環もあれば、虐待する親がかつて虐待を受けてきたという事例が多いという世代間連鎖の問題があると思います。
表面化する問題の底に多様な社会的課題を把握すること、顕在化した一部の問題ではなく、全体像を俯瞰すること、これこそが精神保健福祉士のソーシャルワーカーとしての真骨頂を発揮するところではないかと思います。
例に挙げさせていただいておりますのは「子どもと精神保健福祉士」、主にスクールソーシャルワーカー領域のことを書かせていただいておりますのと、次のページの「依存症と精神保健福祉士(薬物依存症)」について書かせていただいているのですが、子供と依存症の2つの例を挙げさせていただいておりますけれども、いずれも子供の不登校や、薬物依存といった表面化・顕在化した問題だけではなくて、その背景に家族や地域社会等の多様な社会的課題を抱えていることを見た上での、ソーシャルワーカーのかかわりが必要なのではないかと思っております。
ただし、子供と依存症と2つに分けて書いたのにはある意味があって、この2つの事例も実は連続線上にあると考えております。
これは大阪の公立病院の先生のお話の又聞きなのですけれども、薬物依存で医療観察法の対象になる人の100%に近い人たちが児童虐待のサバイバーだそうです。親によるネグレクトや暴力から生き抜いた先に、薬物依存、触法行為、社会的排除があると。このような負のスパイラルを断ち切るために、ソーシャルワーカーがもっと有効に機能する仕組みと、専門職としての質の向上を日本精神保健福祉士協会としては目指す必要性を今、痛感しております。
続きまして「職能団体としての社会的責務 日本精神保健福祉士協会の存在意義と役割」という協会が大切にしてきたことをお話しさせていただきたいと思います。
精神保健福祉士の倫理綱領でございます。
専門職能団体として本協会の役割期待は、ソーシャルワーカーとして限られたクライアントの問題解決が私たちの責任範囲ではありますけれども、国民の幸せを具現化するためには、1番目は、個人の力では解決できない現場の問題を持ち寄る場として、2番目は、個人ではなし得ない社会環境、社会制度、政策などへの働きかけの場として、3番目として、構成員の資質向上を果たし得る場としての期待というのを本協会は担わなければならないと思っております。
これは有名な呉先生のお言葉でございますが「我が国十何万の精神病者は実に此の病を受けたるの不幸のほかに、この邦に生れたるの不幸を重ぬるものと云うべし」という文言の中で、この国の人とその生活にかかわる専門職として、この国に生まれたる不幸を解決していく役割というのを私たちは社会から期待されているのではないかと思っておりますし、この人に出会えてよかったと思われる専門職の育成が協会の役割だと考えております。
「専門職能団体としての本協会の『今』」ですが、簡単に言いますと、政策提言、人材育成、組織強化を3本柱として活動を展開しております。現在の2016年~2020年度の「中期ビジョン2020」では、政策提言、人材育成、組織強化を3本柱といたしまして、委員会や分野別プロジェクトにおきまして、これを具現化しているという図でございます。
本協会の活動の3本柱のうち、人材育成につきましては、2008年に生涯研修制度というものを創設いたしまして、国家資格の質の担保に対して、専門職能団体としての責任を果たすべく、創設を決定いたしました。
ただし、現在の組織率は、とても恥ずかしいのですけれども、2019年1月末日現在でもう既に8万2000人の精神保健福祉士の有資格者がいらっしゃいます。そのうち、私どもの協会は1万2000人の組織率でございますので、公益財団法人の責務といたしましては、1万2000人の構成員だけではなく、その他の非構成員である精神保健福祉士の質の担保も、当然、担わなければならないのかと思っております。
まず、生涯研修制度の最終目的は、研修しなくても実践家として現場にい続けることを可能にするというのは、おかしな話だと思います。これからは、国家資格のカリキュラムが改正された後は、卒後教育の重要性をぜひカリキュラムの中で教えていただきたいなと思っております。
日本精神保健福祉士協会の生涯研修制度の体系であるとか、認定スーパーバイザー、あるいは実習指導者の研修をご覧になっていただきたいと思います。今後は、養成と卒後の研さんを教育機関と専門職能団体の協働でぜひ実施していきたいと考えております。
そして、お時間がぎりぎりでございますが、一つだけ皆さんにお伝えしたいことがあります。
今、子ども家庭福祉士という新たな資格の問題が出てきて、児童虐待の問題が大きくクローズアップされてきております。本協会でも、資格ができること云々ではなくて、児童虐待に対して何らかの我々の働きかけが必要なのではないかという、その第一歩といたしまして、3月14日に、衆議院の第二議員会館におきまして緊急シンポジウム「子どもの虐待防止に多職種で取り組むために~多問題家庭から見えるメンタルヘルスの課題とその支援方法~」を開催させていただきたいと思います。チラシが間に合いませんでしたので、ぜひ当協会のホームページ等にアクセスしていただきまして、確認していただいて御参加いただきたいと思います。
以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、先ほど事務局から説明いただいた資料3と参考資料2、そして、ただいま御説明いただきました参考資料3につきまして、御質問あるいは追加の御意見等がございましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。
どうぞ。
○中島構成員 1点だけ。
先ほど事務局の御説明の中で、多職種連携において役割分担がかなり重要だというお話がありましたが、私はちょっと認識が違っていまして、当然、役割分担は大事なのですけれども、その前にその視点ですよね。着眼点といいますか、問題の捉え方といいますか。
多職種連携という場は、それぞれの専門性によって問題の捉え方、着眼点が違うというところが多職種連携のいいところであって、それが全く一緒であるならば、多職種連携なんて意味がないと私は思うのです。では、その視点の違いはどこから来るのかというと、先ほど御説明がありましたように、ソーシャルワークの原理もしくは価値といったところになると思います。
ですので、多職種連携の大前提として、それが有効に機能するためには、専門職としての価値の確立、もしくは共通基盤の確立と言ってもいいのかもしれませんが、というところが非常に大事だと思います。
あと、もう一つ言うと、社会福祉士もそうなのですけれども、精神保健福祉士は98%が組織に雇われているわけです。つまり、組織の価値とソーシャルワークの価値のジレンマの中で皆さんお仕事をされているわけですけれども、その状況の中で、ちゃんとソーシャルワークの価値に依拠した実践が組織の中でできるようにするためにも、ソーシャルワークの価値の基盤をしっかりと一人一人が持っておかないと、何をやっているかわからないという話になりますので、そこら辺のところが重要であると。
つまり、多職種連携においてはソーシャルワークの原理や価値というのが非常に大事だというところで、先ほどソーシャルワークの原理をどこの科目に持っていくのかというお話がありましたが、私はかなり重要なところになってきていると思うので、1つの科目として「ソーシャルワークの価値と倫理」でもいいですし、「ソーシャルワークの原理と価値」でも何でもいいですけれども、そういったものを立てる必要性があるのではないかと思いました。
○樋口座長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょう。どうぞ。
○和気構成員 2点だけ気になったところをコメントさせていただきたいと思います。
1つは、資料3の1枚目のところなのですが「普遍的な、基盤となるもの」というのがあって、基本的には価値とか理念が普遍的でずっと変わらないものというよりは、その下に、変化してきたものや求められるものというのがあって、私は相互作用があると思っているので、価値や理念も当然、変化するのだろうと思っています。
したがって、普遍的な価値があって、その下にある「対象や課題、目的・目標、業務」だけが変化してきているということではないと思いますので、そこのところはやはりもう一回検討してみたほうがいいだろうと思っています。
それから、もう一つは、学問という概念というか、考え方なのですけれども、グローバル定義の中で使っている「学問」というのは、多分、私の記憶に間違いがなければ「ディシプリン」という言葉を使っていて、これは我々が言っている「学問」というと、象牙の塔があって、法学や経済学などのように非常にきちんとした学的体系があり、しかもそれは何百年もの歴史の中で形成されてきたというような意味での学問ではなくて、むしろかなり「実学」に近いものなのではないだろうか。
したがって「学問」という言葉を使うと、我々はどうしても法学、経済学のような学問をどうしても想像してしまうのですが、むしろかなり実学に近いもの、英語で言いますと「インターディシプリナリー(interdisciplinary)」や「マルチディシプリナリー(multidisciplinary)」という言葉がありますけれども、そういうディシプリンというような意味でもう少し柔軟に使っているので、「学問」という言葉にあまり振り回されないように気をつけないといけないと思っています。
それから、もう一つ、それとの関連で言うと、後ろのほうの38枚目のスライドに「社会科学」「人文科学」「自然科学」とあって「社会学」「法学」「心理学」「医学」というのが一応仮の形で分類されていると思うのです。これは今の国家試験の教育のカリキュラムの中にこういうものが入っているということで、では、ソーシャルワークとか、精神保健福祉領域の関連学問というのは、この4つだけなのかということも改めて考えてみたほうがいいと思います。今の制度の中で入っている基礎科学は、確かにこの4つであるけれども、ほかにもあるのではないかと思います。
長くなりますからやめますけれども、例えば経済学や経営学はどうして入っていないのだろうかというようなことも改めて考えてみる必要があります。
なぜかといいますと、例えば社会福祉士のほうには「社会保障」が科目として入っています。近年の「税と社会保障の一体改革」の例を引くまでもなく、社会保障制度を考える上で、経済学というのは非常に重要なものですから、なぜ経済学が入っていないのかということになります。また同じく社会福祉士のほうには「福祉サービスの組織と経営」という科目が入っていますから、経営学も関連科学になっています。さらに、地域包括ケアシステムであれば、住宅も入ってきますから、建築学や居住学なども含め、工学、すなわちエンジニアリングなども関連科目に入ってくると、私は思います。
したがって、この4つ、つまり今の既存のものに余りこだわる必要はなくて、もう少し幅広く基礎的な学問とは一体何なのだろうかということを考えてみてもいいのではないかと思っています。
その2点です。
○樋口座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
もし特に追加の御発言がなければ、まだ後ほど追加していただいて一向に構いませんので、これから15分ぐらいの時間でしょうか。本日の議事1の「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討について」、特にこの中では精神保健福祉士に求められる役割についてというところに中心を置いて、皆様からの御意見、御議論をいただければと思っております。どなたからでも結構でございます。そのあたりについて、御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょう。
どうぞ。
○岡本構成員 柏木さんが書いてくださったいろいろなPSWの図や何かを見ても、ほとんどが地域に出すという一方向に見えてしまうのです。私たちは病院の団体なものですから、中島先生がおっしゃったように、社会資源という考え方でいいと思うのですが、最近の実体験として、出すほうは割といろいろ充実してくるのですけれども、入ってこられるところ、いかに最初の相談を受けて医療につなげるかというところが非常に大事で、ここでPSWの力量が分かれてくるような部分があるのです。一目見てこれは非常に重要と見て、私たちもぱっと行動しやすいような報告を上げてくる方と、何を言っているのかよくわからないという方がはっきりと分かれてくるのです。
しかも、すごくさまざまなところからいろいろな情報がケースワーカーのところには全部上がってくるものですから、大体地域包括というのは私が抗議文を出しているぐらいなので、そこら辺をもう少しぐるっと回るというか、方々から入ってくるような方向性をもう少しやってくれないと、これを見ていると、PSWで全部終わるような印象さえ受けるのですが、しようがないのですけれども、その辺をもう少し双方向で、出すだけではなくて入るものも、それから、ケアもするのだというようなところもわかりやすくしてくださるといいかと思うのです。
○柏木構成員 ありがとうございます。
とても雑駁な資料でしたので、時間がないので割愛しておりますが、実は急性期病棟でとか認知症の分野も、PSWのアセスメント能力が非常に問われているところで、それがいかに医療に貢献しているというか、失礼ですけれども、貢献していない者もいますよね。
そういうことをきちんとできるというのが、はっきり言えば、本当はソーシャルワーカーとしての基本とはいえ、現実にはアセスメント能力というのは非常に高度なものを問われてくるので、そこをカリキュラムのところでやれるのはどうなのかなとは思うのですけれども、先生のおっしゃることはよくわかっていて、重要性は本当によくわかっているのですが、カリキュラムに落とし込むときに、どのようにすればいいのかというのが悩ましいところで、申し訳ございません。
○樋口座長 ほかにいかがでしょう。
どうぞ。
○萱間構成員 萱間でございます。前回、欠席いたしまして失礼しました。
私は看護でございまして、最初のころは病院で急性期の病棟で勤務していて、今は主に精神科の訪問看護にかかわっています。
PSWの方の就業場所なのですけれども、病院が半分を切ってきていて、地域で多様にというのも肌で感じております。地域のNPOの理事長をPSWの方が、看護と精神科医で理事というような場にもおりますので、本当に変わってきていると思いました。
その中で、今の整理を聞いていますと、業務で整理しているものと、機能で整理しているものと、原理で整理しているものが混在しているように思います。最初のこの職種の発祥というのは、地域に移行していただくにはどうしたらいいかみたいな問題意識で機能から始まって、拡大していろいろな役割を求められるようになって、御自分たちでも自覚を高めていかれて、変わっていかないといけないと言われて、またこのカリキュラムの検討をされているということだと思うのです。
何が言いたいかというと、看護にとってはPSWの方はなくてはならない存在で、病棟でもそうで、地域でもそうです。そうなのですけれども、ただ、整理の仕方を業務でやると、やはり抜け落ちるところがすごく出てくるのだろうなと。カリキュラムですので、機能として何が求められるか。「コンピテンシー」という言葉がありますけれども、その整理はどの切り口でやるのかということが必要なのかなと思っております。
○樋口座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ。
○岩本構成員 岩本です。
今の御発言についてなのですが、御子柴さんからも御説明いただいたのですが、資料3の23ページの図を入れていただいているのですけれども、「業務」とか「機能」という用語の整理自体が非常に難しくて。業務と言えるところに機能の要素が入っていたり、この整理は非常に難しいなと思っているのですが、この23ページの図は、そうしたものが一体化したような精神保健福祉士の動きというものを説明したくて整理したものです。
今、先生がおっしゃったのは、実際に何をやっているかという、この図で言う狭義の業務というか、動きの部分だと思うのですけれども、一見、精神保健福祉士の動きだけだと、ほかの人でもできるような日常的な活動だったりするのですが、その動きも、精神保健福祉士の価値や理念や視点、アセスメントに基づいて状況分析をして、実際、働きかける動きにも目に見えないいろいろな知識や技術を使っているという一体的なものということで整理をしたものなのです。
なので、例えば「業務」というときに、本当に動きのことだけを言っているのか、精神保健福祉士は何をしているのかという全体的な動きというものを説明するのかというところで、少し用語の整理が必要かと思っています。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ。
○中島構成員 先ほど柏木会長から地域移行の話がありまして、なるほどなと勉強させていただきましたが、では、私は「地域移行」と鍵括弧をつけて使わせていただきたいと思うのですけれども、そのことを前提に「地域移行」を妨げている直接的なといいますか、眼前にある問題の1つは、地域住民の障害のある方に対する理解とか、もしくはそこに偏見や排除の意識がそこにあるというのが一つ大きな問題としてあるのではないのかと私は思っていて、つまり、地域住民のアイデンティティーを変えていくといいますか、それこそ多様性の尊重とか、障害者に対する理解、障害者に対するアイデンティティーを変えていくということをやっていかないといけないと思っています。
そのために必要なことは、実は今回はグローバル定義が載っているわけですけれども、その前の2000年のソーシャルワークの国際定義には「人間関係の問題解決を図る」というのが入っていました。国際的には人間関係の問題解決を図るというのがかなり重要視されていて、アメリカの全米ソーシャルワーカー協会の倫理綱領にも人間関係の重要性というのがかなり出ているわけです。
ことしの3月、国際的に位置づけられているソーシャルワークデーという、毎年、世界中でイベントをするというものがありますけれども、これのテーマも「人間関係の重要性」となっています。
何が言いたいかというと、関係構造を変えればアイデンティティーが変わるというのは、社会学的には結構オーソドックスな考え方だと思っていて、つまり、障害者に対する度外視や無理解、無関心、排除の形をとっている地域住民と障害者の関係を、対話の関係、相互理解の関係、包摂の関係に関係構造を変えていく。障害のある方と地域住民とのかかわりのあり方を変えていくといいますか、そこら辺のところに私は実はソーシャルワーカーの役割があると考えています。
ここら辺、学問的にはどこなのかというのは私もよくわかりませんけれども、一つ言えるのは、社会学の知見や、先ほど和気先生がおっしゃられたように、教育学、例えば成人教育、住民学習の領域では、地域住民に対する働きかけが理論的にも実践的にもなされているものがあるので、そういったものを拝借するとか、人間関係の問題解決を図ることの重要性というのは、今回のグローバル定義では捨象されているので、もう一回そこは押さえておいたほうがいいのかと考えました。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。よろしいですか。
事務局、どうぞ。
○御子柴主査 さまざま貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
先ほどの御発言で確認と訂正なのですが、事務局といたしましては、特段、役割分担は強調しておりませんで、前回の検討会で、まず、それぞれの職種が行う行為というか、持っている役割を分かりやすくしておかないと、どう連携するのかがそれぞれ分かりにくいというお話があったかと思っておりまして、そういった意味合いで、自分たちができることを明示していこうという話があったことの代弁をさせていただいたところです。
あとは、ボーダーレスになってきているので、業務という観点では特になかなか線引きも難しいですし、中島先生からお話しいただきましたように、対象とかで区切れるものでもないということは、ごもっともだと思っているところです。
あとは、先ほどまでいただいた御意見の中で、前回、見える化というお話があったかと思うのですけれども、いろいろ御意見を頂戴していますと、見えないところで努めていたり、心がけていたり、行っている行為と、実際に見えるところで行っているものがあるのかと思っております。
いずれにしても、今回の中間報告書では、それを具体的に言語化して、ある程度記述していくことで伝えていかなければいけないなと思っておりまして、そこにおいては、やはり概念や理念だけですと、誰でもできるもの、誰にも必要なものになってしまいがちというところを事務局として整理に困っているところがありますので、今後、教育内容のまた次の議題に移ると思うのですが、その辺も通じて、具体的にどのように表現できるのかということも御指導いただきたいなと思っております。
以上です。
○樋口座長 よろしいでしょうか。
それでは、時間の関係もございますので、議事1につきましては、一応、ここまでということにさせていただきます。
そして、議事2ということでこれから残りの時間をそれに充てていきたいと思うのですが「精神保健福祉士の養成課程における教育内容等の見直しについて」ということで、前回の検討会でお認めいただいたワーキンググループが設置されて、具体的な作業をお願いしております。これまでに3回のワーキンググループが開催されたと伺っております。
本日は、これまでにワーキングチームで検討された途中経過ということになろうと思いますが、それについて報告をしていただきたいと思います。
それでは、資料4「精神保健福祉士の養成課程における教育内容等の見直しについて(報告)」という資料について、ワーキンググループの座長をしていただいている田村構成員からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田村構成員 資料4に基づきまして、ワーキンググループでのこれまでの議論について御報告と、検討会への幾つかの御相談事項について述べさせていただきます。
資料1で、ワーキンググループの設置とこれまでの検討及び作業経過を記していただいておりますけれども、実際にはこの3回の議論だけではし尽くせないものが多々ございまして、ワーキングには参考人にお越しいただいたり、また、福祉基盤課にも御協力いただきながらまとめてきております。本日はその中間報告となります。
資料4のスライド番号3番に書かれている3つの課題について、この間、協議をしてきております。
スライド番号4「各科目の課題と論点を踏まえた対応(現時点での提案とご相談)」に記述のとおり大きく7点の相談と提案がございます。
1つ目としては、ソーシャルワーカーに必要な教育カリキュラムの内容を整理した上で、基盤となる部分について、基礎的な学問をどのようにするかということ。
2つ目として「地域福祉の理論と方法」という科目を「社会福祉原論」のような科目、または方法の部分については、リハビリのような科目等に移行してもよいかどうかということ。一方で、地域福祉の理念を学ぶという意義を重視すると、この科目を残すべきか、意見をお伺いしたいと考えております。
次に、先ほどもお話が少し出ていましたように三障害一元化ですとか、障害のある方々がどの障害も種別なく同じ法律・制度の中で支援されている現状に鑑みて「障害者福祉論」といったような社会福祉士との共通の科目を持つ必要があるかどうかということ。
また、「社会保障」という科目の中で、先ほど経済学等も入ってくるという御指摘も頂戴していますけれども、それ以外に公的扶助、生活保護制度、各種保険制度などと一体的に学ぶことが可能かどうか。
5点目としては、先ほど柏木構成員からもありましたが、生活上のメンタルヘルス課題を背景として生じる多様な支援課題について、どのように学ぶとよいかということ。
6点目としては、実習時間や期間、実習先の拡充、あるいは実習指導者の要件等について、見直す必要があるかどうかということ。
最後に、社会福祉士との共通化が想定される科目に関して、今後、どのように内容を検討していくかということがございます。
今後も必要に応じて参考人等も招致して、また御意見をいただきたいと思っております。
次に、スライド番号5ですが。ワーキングでは養成カリキュラムの見直しの方針をおおむねこのように合意したということをあらかじめお伝えします。
まず、精神保健福祉士の養成にとって必要な教育内容について、獲得目標、これは最終的に精神保健福祉士はどうなれたらいいのかということと、それを目指しつつも、養成段階ではどこまでを仕上げる必要があるのかを検討することにいたしました。
2番目として、現行カリキュラムを素材にしますが、それらの科目が社会福祉士と共通なのか、精神保健福祉士の専門科目なのかという別にはこだわらず、精神保健福祉士の養成として必要な教育内容を検討することにいたしました。
3番目として、精神保健福祉士の養成において中心的な科目を明確にして、今回の改正の目玉としてはどうかということがあります。
また、それを取り巻く全ての科目を各学問として構成することには、それぞれの学問の背景等も考え、また、網羅する内容を考えますと、膨大になって無理があるので、精神保健福祉士として必要なものについて、例えば社会学、心理学等ありますが、その中から精神保健福祉士に必要な部分を取り集めて、科目として設けてはどうかということです。
それから、今般のカリキュラムの見直しの中では、さまざまな科目間で内容の重複が指摘されておりますが、一方で、各科目の文脈において意味がある重複もあるだろうと考えます。重複を削除し過ぎ、スリム化し過ぎることによって、一つの科目として学びづらくなることを避け、また、大事なことは繰り返し学ぶ必要があるため、必要な重複は積極的に取り入れるという考えも設けております。
スライド6で「科目編成の提案」として協議途中のものを網羅的に並べていますが、この後、詳細に後ろのページで御説明をします。
スライド10の「人体の構造と機能及び疾病」に関しては、ソーシャルワーカーにとって必要な部分に、人体の細かい解剖学的なものなどを学ぶよりは、健康とはどういうことなのか、そこに対して医学はどのように必要であって、医療はどう施されるのかということを学ぶ科目にしてはどうかという提案です。
スライド11の「心理学理論と心理的支援」についても、かなりたくさんの検討をしているのですけれども、スライド13にありますように、仮に例えば「心理学と行動科学」ということで、ソーシャルワーカーがかかわる対象となる方々の言動や行動を解釈する枠組みを理解でき、また、それに合わせてかかわっていくことができるために必要な部分を学ぶとよいのではないかという提案です。
スライド15の「社会理論と社会システム」です。社会学は非常に幅の広い学問だということですが、それらを全て学ぶというよりも、精神保健福祉士やソーシャルワーカーが支援する人やその環境を理解するために、背景となる部分をわかるようにしていくことを目的とした「現代社会学」という提案です。
次に、社会福祉士との共通科目、あるいは社会福祉士の専門科目も含んでいますが「現代社会と福祉」「地域福祉の理論と方法」「福祉行財政と福祉計画」「福祉サービスの組織と経営」の4科目を見直して、2科目に統合する提案で、詳細はスライド19と20番に示しています。
社会福祉の原論のような科目を1つ設けるということと、社会福祉制度とその運用について学ぶ科目という組み分けにしております。
ただ、ここに関しては、もう少し参考人の先生に御意見をお伺いし、御指導いただくことが必要だと思っておりますので、現段階では一案として提示しております。また、冒頭申し上げましたように、ここに地域福祉論を溶け込ませてしまっていいのかどうかは異論があるところです。
スライド24は、現在の「保健医療サービス」を「医療ソーシャルワーク概論」というようなものにして、つまり、社会福祉士の科目にしたらいいのではないかと。精神保健福祉士としては、他の科目の中で現在ある保健医療サービスの内容はおおよそ学ぶことが可能ですので、こちらに関しては、仮に提案するとしたら、むしろ医療ソーシャルワークのようなものを学ぶ科目にされたほうがいいのではないかという提案です。
スライド25「権利擁護と成年後見制度」に関しては、憲法や民法も含み、その中で成年後見制度が取り沙汰されて科目名になっていますが、ソーシャルワーカーに必要な法学の基本を学ぶ科目にしたほうがいいのではないかという提案です。
内容は、スライド26の真ん中より下の【主な含まれるべき事項(案)】にありますが、法学入門、憲法、民法、刑法、行政法、それから、権利擁護活動の中で直面し得る法的諸問題などを学ぶという御提案です。
スライド28の「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」という科目は、冒頭でもお伝えしましたように「障害者福祉論」といったような科目にすることも考えられるのではないかということです。
一方で、もし精神の専門で学ぶとすれば、精神保健福祉の制度を学ぶ科目や精神保健福祉の原論の科目等で扱うことが可能とも考えております。
スライド30の「精神疾患とその治療」ですが、ここは医学と医療というように先ほどお伝えしたのと同様で「精神医学と精神医療」の科目にしてはどうかという提案です。詳細はまだ詰め切れておりませんので、次回にさせていただきたいと思います。
スライド31の「精神保健の課題と支援」についてもいろいろと議論をしていますが、精神保健の課題について、先ほど柏木構成員の資料にもありましたように、ライフステージごとのメンタルヘルス課題がありますが、その中でも特に現代の課題、これは時代と共に変化する課題もたくさんありますので、そのとき、そのときに応じて扱うようにして学んではどうかと考えております。
スライド34の「精神保健福祉相談援助の基盤」についてですが、仮に「精神保健福祉相談援助論」としてはどうかという提案です。これに関しては、スライド38を先に見ていただきますと、現在の科目でいう「精神保健福祉相談援助の基盤」「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」「精神保健福祉の制度とサービス」などを合わせて、精神保健福祉の原論となるような科目を設けてはどうかという提案になります。
これは先ほどからの御議論にもいろいろと含まれている要素がありますが、精神保健福祉士ができてきた歴史を振り返りますと、日本における精神科医療の歴史と、精神障害のある方々への処遇の歴史、それは、どちらかというと、隔離収容政策の中で社会から排除された方々を、精神科医療の中で生活支援までを全部担ってきた歴史です。
一方で、それは地域からは排除、隔絶された形であって、その中で精神障害のある方の人権が侵害されていることも少なくなく、のことに対してソーシャルワーカーとして課題意識を持って実際の業務をしてきたのが、精神医学ソーシャルワーカーという精神保健福祉士の前身となる職業です。
そこに私たちの職業アイデンティティーの基盤があると考えますと、精神医療や福祉の歴史、精神障害というものの理解、その方々に対する社会からの扱われ方に対しての問題意識、そうした状況を踏まえた上での精神障害のある当事者の方々へのかかわりの原理原則、これを私たち精神科ソーシャルワーカーは培ってきましたが、これらを一体的に学ぶ必要があると考えております。
一方で、ソーシャルワークの理論モデルは、その時代、時代で欧米からも入ってきているものがあって、それを融合させながら、精神保健福祉の援助論、あるいはソーシャルワーク論というものが打ち立てられてきているかと思います。それをどういう科目名にするといいのかは、まだワーキングの中でも検討の途上にあります。
例えば「精神保健福祉原論」みたいなものがいいのか、「精神保健福祉学」とするのか、旧カリでありました「精神保健福祉論」に戻すのか、まだ意見は割れているところですが、このような内容を網羅する科目を立てるということを提案させていただきます。
スライド39は、現在の制度とサービス、生活支援システムですが、これらを一体的にして「精神保健福祉の制度論」のような科目を一つ立てるものです。
このあたりについては、もしかすると、例えば「障害者福祉論」ができることによって、もう少し違う形もあり得ますが、いずれにしても、単に制度を学ぶというよりも、それらの制度ができてきた背景を理解することと、制度の中に位置づけられた精神保健福祉士の役割を学ぶことに加え、制度の限界を知り、また、制度だけでは解決できない課題に対して新たな制度を生み出すこと、そういった発想も持てるようにするような学びがこの科目の目的であるということです。
その次の「援助技術論」と「リハビリテーション論」に関しても、多少名称と中身の見直しをしているのですけれども、特に「精神障害リハビリテーション論」に関しては、医療機関、または医学的なリハビリテーションに限定しない精神障害リハビリテーションのプログラムや方法について学べるような科目として置いてはどうかということです。
現在「社会調査の基礎」という科目が社会福祉士のカリキュラムにありまして、これに該当する内容は、精神保健福祉士のカリキュラムでは「精神保健福祉の制度とサービス」の中に入っていまが、スライド43の「社会福祉調査の基礎」といったような科目にして、ソーシャルワーカーが対象や関連する現象を分析的に理解するために必要な社会調査の基礎的な知識を学ぶ。統計資料を読みこなせること、質的調査の基礎として問いを立てることができ、一人一人の利用者、クライエントに尋ねて理解を深めることができるような力の基礎をつくる科目にしてはどうかという提案です。
「更生保護制度」現在の科目にありますが、これについては、スライド49で、例えば、刑事司法制度を学ぶような科目立てにしてはどうかという提案です。
更生保護という狭い領域だけではなく、刑事司法制度全体を体系的に学ぶような内容にして、そこの中で、ソーシャルワーカーが果たす役割の理解や、制度の網の目からこぼれてしまう方々に対しての支援もあわせて考えられるように育てていくために、こういう科目が必要ではないかと考えています。
最後に「科目群のイメージ」の一つの案です。これは学問体系というよりも、養成する学びの段階を想定し、このように科目群がつくれるのではないかとイメージしたもので、1つは、ソーシャルワーカーとして人や社会に働きかけるために、対象や事象及びその背景を分析・理解するための基盤的な科目を置く。
その次に、社会福祉を学問的基盤とする専門職の基礎として、目のつけどころですとか、考え方として据えるべきもの、また、自分の中に確立すべき価値、そういったものを構築するための科目。
それから、ソーシャルワーク、あるいは精神保健福祉の領域におけるソーシャルワークとも言える、「相談援助」と現在の法律にはあるものを実践する上で必要な知識や技能に関する科目。
4番目として、精神保健福祉士として機能するための専門的な基礎を習得するための科目。
5番目として、学習内容を統合させて、精神保健福祉士として考え、行動できる力を習得し、専門職としての研さん課題を認識するための科目というような分類の仕方にしてはどうかと考えました。
5番点目には、実習・演習が入ってきますが、実習の中で実践力を養うというよりは、むしろ専門職として、今後、自分がどのような研さんを特に積む必要があるのかという、課題を認識するためのものとして実習を捉えることが必要ではないかと考え、このような提案をさせていただいております。
以上となりますが、精神保健福祉士のカリキュラムだけで検討していても、実際にもう一つ、同じソーシャルワーク専門職である社会福祉士の方と、幾つかの科目、または教育機関によっては、教え方に関しても共通しているところがありますので、どこかの段階ですり合わせが必要だと考えております。
また、2回目のワーキングのときに、ソーシャルワーク教育学校連盟の副会長で連盟から参加していただいている伊東構成員より、各養成校が社会福祉士と精神保健福祉士の両者をどのような仕組みで養成しているかということについて、現状を数字で御報告をしていただいておりましたので、それに関して改めて御紹介いただければと思います。
私からの説明は以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、これから残った時間で、今の議事2についての御議論、意見をいただきたいと思います。
ただいま田村構成員から報告いただいた内容について、皆様の御意見、御認識を伺いたいと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
それでは、どうぞお願いします。
○伊東構成員 ただいま田村構成員からお話がありました、ワーキンググループで日本ソーシャルワーク教育学校連盟の現状をお伝えさせていただきました。本来であれば数字をプリントしてお渡しすべきところだったのですが、ちょっと間に合わない部分もございましたので、口頭でお伝えさせていただければと思います。
現在、ソーシャルワーク教育学校連盟は、ソ教連と簡単に言っておりますけれども、会員校が274校ございます。そのうち、精神保健福祉士のみを養成している養成校が17でございます。社会福祉士と精神保健福祉士の両方を養成している養成校、会員校が126になります。
そうしますと、今、述べました17と126を足した143を母数にして、両方を養成している126を分子にしますと、精神保健福祉士を養成している養成校の9割近いところが、ダブルで精神保健福祉士と社会福祉士を養成しているという形になっております。
ここからはちょっと私の意見を述べさせていただきます。
先ほどの田村構成員の発表にありますように、現在、ワーキンググループでは、専門科目とか共通科目とかを関係なしに、どういうものが精神保健福祉士に必要かという議論をしているところでありますけれども、ソ教連という養成校の団体の立場からしますと、このように両方を養成している養成校が多いという点からは、共通科目をできるだけ多くしていただけると、学生の負担も少なくなる、そして、会員校としてもやりやすくなるという要望がございます。
また、先ほど中島構成員に言っていただいたように、ソーシャルワーカーという共通の資格というところでは、ソーシャルワーカーとしての基盤の科目要素は共通になるのではないかと思っております。
以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、ほかに御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ、鹿島構成員。
○鹿島構成員 覚えるべき知識はますます増えるわけですから、何かを削るか、濃淡をつけなくてはならなくなると思います。ただ、今おっしゃられた重複や繰り返しというものは、重要なことについては多少、重複しても、繰り返してもよいと思います。繰り返すといっても、学年が進むと加わった知識や実習体験があり、単なる繰り返しではなく、いわば螺旋状に上昇しつつ繰り返す学習となります。抽象的な言い方になりますが、精神保健福祉士のプロフェッショナリズムはこの様にして醸成していくことも考えてはと思います。例えば「精神保健福祉士のプロフェッショナリズム」などという科目が4年間にまたがる縦断的な科目としてあってもよいかとも考えます。新しく覚えるべきものは、その概要を座学の形で学ぶことがよいと思います。将来、それらの精神障害に対応する際に、座学で一度学んでおくと理解が早まります。
○樋口座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ。
○中島構成員 事前に準備していたので、先ほどの鹿島構成員とちょっと違うことを言ってしまうのですが、学生の限られている時間を考えたときに、重複を積極的に承認するみたいなお話もあったのですけれども、重複は極力ないほうがいいという意見を持っています。
科目に対する学生の集中力を考えても、重複ばかり出てくると、よそでも出てくるからみたいな話にもなりかねませんし、時間が限られているので、やはり必要なことをちゃんと盛り込んだカリキュラムにするべきではないかと考えています。
その上で、1つ、社会福祉原論に関して、この資料を見させていただいていますと、当然、私も原論は非常に大事だと思っていますので、これを盛り込んでいただきたいと思いますが、歴史を学ぶというところは結構網羅されているのですけれども、グローバルに見るというのはないような、私が見落としていたら申しわけないのですが、つまり、世界基準で社会福祉を捉える。グローバルに社会福祉を捉え、そして、歴史も捉えるというような形の科目にするべきではないかと思っています。
それは、先ほど鹿島構成員がおっしゃられていたように、やはり学問というか、知識や技術というのは、即効性のあるものも当然あるわけですが、遅効性が必要なものも当然あるのですけれども、現場に一旦出てしまうと、即効性のある知識や技術にみんなからめとられてしまうといいますか、そちらにしか興味が行かないというところがありますから、学校で学んでいる期間の中で、遅効性になるかもしれませんが、学校でしかなかなか取り組まないような、グローバルに捉え、なおかつ、歴史を踏まえるという科目があるほうがいいと思っています。
あと、現代社会学に関しても、実は先ほど私が言ったような関係構造の変容が、人間のアイデンティティーの変化につながるとか、そういったものというのは、どちらかというと社会学の古典の中にかなり描かれていて、私自身の経験則ですけれども、社会学の古典の中から私は今の実践のヒントを得ていますので、そういった意味では「現代社会学」というよりも、社会学というからには、当然、アメリカやヨーロッパを中心とした社会学の過去の古典や理論をちゃんと踏まえたような形にしていただきたいと思いました。
最後になりますが、法学ですけれども、社会学もそうかもしれませんが、実践に役立つという形が必要かと思っていまして、つまり、総花的な法学というのは必要かと思っています。
ソーシャルワーカーにとって必要な法学というのは恐らく人権尊重ですから、基本的人権と法体系とか、そういった形になるのかと。基本的人権に絞って社会権や自由権を踏まえたところを、焦点を絞って学ぶみたいな形になってもいいかと思いました。
○樋口座長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょう。
どうぞ。
○岩本構成員 今の中島先生の御発言に対してなのですけれども、私もワーキングのメンバーなので、重複をしないようにとすごく意識してやっていたのです。ただ、内容の重複と、ソーシャルワーカーとして1本筋を通すべき価値や理念というところはまたちょっと違っていて、価値や理念、視点とか、基礎となるところを重複しないようにとなると、かなり科目の中身が薄いものになるようなものもあって。価値や理念というのは、この検討会でも教育の時点でも重要だというような御意見もいただいていたので、やはり毎回確認すべき重要な点と、内容は重複させないというような、2つで考えるほうがいいかと思った次第です。
○樋口座長 どうぞ。
○鹿島構成員 中島先生がおっしゃったことには、反対ではなく賛成なのですけれども、確かに同じことを繰り返すのは意味がないと思いますが、学年が進み知識を得、実習体験をし、その上で同じようなことを学ぶというのは重複ではありますが、先程述べた螺旋状の重複のようなものとも考えられます。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。
どうぞ。
○萱間構成員 52枚目のスライドで「科目群に対する科目構成の案(イメージ)」の全体像を示していただいていると思うのですが、3番目が「ソーシャルワーク及び精神保健福祉の相談援助を実践する上で必要な知識や技能に関する課目」となっていると思うのですけれども、例えば、PSWの方と看護でチームを組んでアウトリーチケア、訪問に行ったとします。それで、カンファレンスをやって、対象者の方と関係を構築してやっていくわけですよね。
そうすると、訪問に関すること、ジョイニングに関すること、それから、グループダイナミズムに関することとか、幾つかの能力が必要になると思うのですけれども、この科目群で拝見すると、制度のところがすごく多くて、そういった技術みたいなところはどこで学ぶのかというのが私はちょっとわからなかったので、教えていただけますでしょうか。
○樋口座長 どうぞ、田村構成員。
○田村構成員 御質問ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、先ほども申し上げたように、科目群については未整理で、なまま学ぶ順番を考えていったときに、このような積み上げかなということで一旦置いているものです。技能に関しては、どちらかというと、精神保健福祉士として実際にどのように行為をするかとか、そのときにどういう発想を持って行うかといったことは4番に入れています。
ですので、ソーシャルワーカーとしては基盤の部分を押さえておいて、その上で、精神保健福祉士として現場で働くときに、といった分け方にしていますが、3段目と4段目番は、実際、整理がなかなかつきにくいところでもありまして、この科目群のイメージ自体も、一旦こういう案をお出しすることで、ほかの御意見も頂戴してワーキングに持ち帰らせていただければと思っております。
○萱間構成員 もう一つ教えていただきたいのは、演習・実習科目なのですが、課題を認識するために実習をするのであって、余り完成度を求めるものではないというのは、なるほどと思ったのですけれども、例えば看護の領域だと、卒業時までに獲得しておくべき項目があります。それをコンピテンシーとしてって、もっと包括的に見ていくべきだと言われています。PSWの場合は場所が多様なので、いろいろなところを経験して、課題を見つけるだけでも大変とは思うのですけれども、ただ、対人サービスなので、ある程度ここまではというものも必要なのかと思ったのですが、それについてはいかがでしょうか。
○樋口座長 どうぞ。
○田村構成員 おっしゃるとおりで、そこの整理が非常に難しいところです。これも今、先生がおっしゃったように、現場がかなり多様化していることもあって、実際にやることとなると、それはその職場で教育していただくことを前提にして、ただし、教育されたときにすぐその意味が理解できて、自分は精神保健福祉士としてこういう役割を果たさなければいけないのだなとか、ここに目をつけて、特に自分はこういうことを注意して技術を使うのだなということがわかるようには育てておきたいということなのです。
そういう意味で、実習に行くことによって、今後の研さん課題を自分の中で明らかにすることが必要ではないかと考えております。
一方で、もちろん、これだけはできなければいけないという部分はあると思いますので、その点に関しては、次回のワーキングで詰めていければと思います。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。
どうぞ。
○岡崎構成員 先ほどお配りさせていただきました依存症のまとめに関して発言させていただきたいのですけれども、まず、A4の横長のほうはシラバスの前回のものです。
この中に依存症に関連するものがあるか、ないかを調べまして、最初の「精神疾患とその治療」の代表的な疾患に依存症が入っていなくて、私、医学についてはそれほど詳しくないのですが、この中には入れなくてもいいのかぐらいの感じなのか、それとも、ストレス関連障害の中に入っているのか、ちょっとそこがわからなかったのですが、そこは入っていないということ。
その次の「精神保健の課題と支援」の中の「精神保健の視点から見た家族の課題とアプローチ」、こちらにも依存症の関連がなかったということがありました。
それ以後は、セルフヘルプグループなども含めて少し書いてありますが、あと、共通科目の3番の「社会理論と社会システム」の中にも、社会問題というところの右にいろいろ列挙してあるのですが、この中にも依存症の関連の問題がなくて、ちょっとあってもいいのかと考えました。
また、こちらのちょっと見にくい本当に小さい字で皆さんには申し訳ないのですけれども、教科書の3社の中で、こちらの「精神医学とその治療」の中にはアルコールのことがちゃんと書いてありますし、それから「精神保健の課題と支援」の中にも項目としてはたくさん出てきております。
その後の援助になりますと、ソーシャルワークの基礎的なものは共通の基盤に立つと思いますので、さらに、実習のところなどでは、そういう具体例として少し出てきているのですが、幾つか考えるのは、依存症の歴史というのも非常に大事なところがある。
禁酒法から始まって、ちょうどメアリー・リッチモンドなどが活躍していた時代というソーシャルワークの背景もあったり、「AA」が出てきたり、それから、戦後のヒロポンの乱用から最近の危険ドラッグまでの薬物の歴史とか、高度経済成長期のアルコールの消費の増加と酩酊者規制法と久里浜のアルコールの治療の開始とか、あと、最近、基本法ができて今いろいろ動いているのですけれども、それに至るまでの歴史が教科書の中には余り書かれていなかったので、それはちょっと書いていただく必要があるのかと思います。
それから、アルコールの場合、例えばアルコール依存症ですと、身体疾患との関連が非常に強いですし、今、そこが余りうまくなされていないということが強調されていますので、その連携を進めていくために、また、薬物ですと今度は法的な問題もいっぱいありますし、先ほどの更生保護のことも大事ですし、それから、ギャンブルの依存になると、今度は借金の問題が大きくて、こちらは民法的な話もある程度知識が必要なのかと思います。
あと2点だけなのですが、1つは、どうしても薬物の場合に特に強いのですけれども、自己責任論による排除というのがすごく強いですよね。結局、アルコールや薬物、ギャンブルの人は、好きでやっていたもので自業自得でこうなったのだということで排除されることが非常に多いので、障害福祉論になるのでしょうか、それを乗り越えるものはぜひ入れていただきたいなと私は思っております。
もう一つは、依存症の世界では「回復」という言葉を非常に使いまして、「回復者」「回復者カウンセラー」「回復支援施設」という言い方をしておりまして、この辺とリカバリーとのもう一ついい形での整理・統合といいますか、アメリカでは少しそういう例もあるのですけれども、日本でも、そういう部分は、最近、依存症の中で合併症、発達障害、後遺症的な認知症、覚せい剤の後遺症とか、さまざまなそういう重複障害の方がふえてきているということもありまして、「連携」「回復」というキーワードがすごく大事になっているということもぜひ盛り込んでいただけたらと思っております。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょう。
どうぞ。
○和気構成員 これは社会福祉士のほうにも踏み込むことになると思うのですが、やはり「現代社会と福祉」「地域福祉の理論と方法」「福祉行財政と福祉計画」「福祉サービスの組織と経営」というところは、一度きちんと整理をしたほうがいいかと個人的には思っています。
最初に社会福祉士の制度ができた時に「社会福祉原論」という科目ができて、前回の改正でそれがなくなって「現代社会と福祉」ということになりましたが、科目全体の布置連関を見ても「現代社会と福祉」というのはどういう狙いがあって、どういう立ち位置の科目なのかというのがいま一つよくわからなかったということがあります。私は個人的には大学でこの関連の科目を教えているのですけれども、かなり重複している部分が多いように思います。
それから、例えば国家試験の出題を見ても、出ている問題が実は「地域福祉」で出ている問題が「原論」の問題なのではないかと思わざるを得ないような出題があったりしますので、この辺のところはきちんと整理をして「社会福祉原論」という科目、科目名をどうするかという問題はとりあえず置いておいたとしても、社会福祉士と精神保健福祉士を社会福祉学を基盤とした専門職として考えるのであれば、そういう科目をやはりコア科目として位置づけるべきだというのが私の意見です。
それから、御相談の中に地域福祉をどう考えるかというのがあったと思うのですが、これはかなり難しい問題で、社会福祉学の学問の歴史を振り返ってみると、もともと地域福祉論というのはどこから出てきたかというと、岡村重夫先生が『社会福祉学(総論)』『社会福祉学(各論)』をお書きになって、いわゆる岡村理論と言われるものが成立します。地域福祉論は、その理論を地域で展開するとどうなるのかということで、いまの「地域福祉論」が出てきたわけです。
恐らく学問的にはそこが最初の発端になって、そこから数えると50年ぐらいの歴史があります。しかも、地域福祉学会みたいな学会もあり、社会福祉協議会などで地域福祉の実践をされている方も多いので、この科目を名称として完全に削除してしまうというのはかなり勇気ある決断かと思います。したがって、この科目をどうするかについては、科目名だけでなく、その内容も含めて少し御検討いただいたほうがいいのではないでしょうか。
きょう提案されている原論の科目と運用の科目という方向性は基本的によくて、その4つの科目をうまく整理していただけると、学生にとっては非常にわかりやすいものになるだろうと思っています。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、柏木構成員。
○柏木構成員 幾つもあるのですけれども、時間がないので1つだけ。
保健医療サービスのところを「医療ソーシャルワーク」とされていて、これは社会福祉士の専門科目にという御提案だったと思うのですけれども、私は総合病院にいますので、先ほど岡崎委員がおっしゃったような、精神科領域の依存症の問題も、それから、終末期やがんなど、さまざまなメンタルヘルスの課題を持った人たちが実は一般科の病院にたくさん来られています。
救急で運ばれるのもほとんど精神科のオーバードラッグの人ということも考えると、医療ソーシャルワークというのを、精神科のソーシャルワーカーとはまた違うという考え方ではなくて、またボーダーレスになってきているので、保健医療サービスという制度の問題だけを取り上げた以前のカリキュラムについては、反対なので要らないなとは確かに思っていたのですけれども「医療ソーシャルワーク」と提示していただいたので、それはそれで精神のほうにも学んでいただきたいなと思いました。感想です。
○樋口座長 ありがとうございました。
時間が来てしまいましたが、どうしてもこれだけは発言しておきたいという方がいらっしゃいましたら。
事務局、どうぞ。
○御子柴主査 この後、資料に御意見をまとめさせていただく立場としてちょっと質問ですが、先ほど中島構成員から御発言があった、実践的な科目にすべきということで社会学と法学について触れられたかと思うのですけれども、社会学は古典の部分を踏まえたほうがいいということで、それは実践的という意味なのか、それとも、原理的というか、基礎的なところを科目にすべきという御指摘なのか、どちらなのかがわからなかったというのがありました。
法学のほうは、絞るというお話で、基本的人権にということだったのですが、一応、現状のものですと、そもそも権利擁護のことしか書かれていないように見える内容なので、全般的なものをということで今の提案がワーキングで出たところなのですが、基本的人権のところも一応入ってはいるのですが、そこだけに絞るとなると、実際、どういう教育内容の科目になるのかというのが、正直、イメージできなかったというのが1点です。
あとは、グローバルという御指摘があったのですけれども、具体的にどういうことなのかというのを御発言いただきたいと思っていまして、「グローバル」というのはすごく抽象的な言葉ですので、他国のソーシャルワークの状況を学べということなのか、日本のソーシャルワーカーが世界で果たしている役割について学べということなのか。
課題と支援のところでは、国内にいる外国人、あるいは外国にいる日本人とか、そういった意味で、国際的な問題を取り上げようということは前回の検討会でも出ていたと思いますので、実際に盛り込んでいる案をつくっているところですので、その「グローバル」という意味はどのようにカリキュラムに落とし込むのかということを御発言いただきたいというのが2つ目です。
最後、3点目は伊東委員と中島先生の両方にお伺いしたいのですが、共通科目の拡大という御意見があったのですけれども、ワーキングでは、まず専門・共通という概念を1回外して、PSWに必要なものということで検討しております。
何が基盤となるのかということについて御発言いただかないと、正直、何を拡大するのかがわからないので、単純に拡大ということで時間数をふやしたり、科目を全て共通にしたりということ以前に、そもそも何が共通なのかという内容についての具体的な御発言をできればいただきたいというのがお二方への質問です。
○樋口座長 それでは、中島構成員から。
○中島構成員 私の説明の仕方が悪かったかもしれませんけれども、社会学と法学というのは、いわゆる共通科目のところですね。それに関しては、実践に基づくという認識ではなくて、当然、実践にリンクしていかないといけないわけです。
つまり、1つは、社会学に関しては、世界のいろいろな研究者の方々が、特に過去の歴史の中でいろいろな古典を編さんされていますが、そういったものに全く触れないというのは、先ほどの遅効性の関係ではないですけれども、長く実践現場で働いていくにはちょっと難しいのかというところがあったので、そのような発言をさせていただいたと。
法学に関しては、総花的になってしまうと、かなり範囲が広くなってしまうので、例えば基本的人権というところに焦点を当てて、基本的人権に関連するところを重点的にカリキュラムの中に入れたらどうかと考えて、そこに基づいて発言したということです。
あと、グローバルというのは、おっしゃられるように、世界の社会福祉や世界のソーシャルワーク、つまり「ソーシャルワーク」という言葉自体が日本語になかなか置きかえられないというところがあるので、世界の歴史からソーシャルワークを学ぶということがすごく大事ではないのかという意味で、世界のソーシャルワークについて理解をする、認識を深めていく機会を提供するという意味合いで「グローバル」というのを使わせていただいたところです。
共通科目に関しては、例えば児童の虐待の問題もかなり社会的要請があるわけで、そういったものを精神保健福祉士と社会福祉士の共通のカリキュラムの中に入れていくとか、科目として考えているわけではありませんけれども、今、かなり重複しているのは、司法の領域、児童の領域、認知症の領域とか、先ほど言った障害の領域に関しては、障害者の高齢化に伴って知的障害の方が介護保険の施設を利用しているとか、そういったところがあるので、具体的な話にはなっていないかもしれませんけれども、そういう意味合いで発言させていただいたというところです。
○樋口座長 どうぞ。
○伊東構成員 私のほうですが、1つには、先ほどからありますように、ワーキングでは共通科目、専門科目の関係なしに議論をしているところなので、これからの話になるかと思うのですが、現在の議論の中でもあるのが社会調査法のことです。現在、社会調査は社会福祉士の専門科目としてあるので、それを共通科目化するという案もあるのかというところです。
それから、ソーシャルワークに対する基本的なもの、例えばアプローチというようなところは共通科目化してもいいのかと思っております。
以上です。
○樋口座長 事務局、よろしいですか。
○御子柴主査 ありがとうございます。
アプローチというのはどういうことでしょうか。
○伊東構成員 いろいろなアプローチがありますよね。エコロジカルアプローチとか、問題解決理論のアプローチとか。実践の理論というところは精神保健福祉士も社会福祉士も学ぶところだと思うので、そこが共通科目化できるのかと思います。
○樋口座長 よろしいですか。
○御子柴主査 はい。
○樋口座長 では、どうぞ、田村構成員。
○田村構成員 今、御指摘あるいは御議論いただいているような話は、ワーキングでも結構出ているところなのですけれども、まず、グローバルにというよりも、世界の社会福祉の歴史であれば、世界というと表現は幅が広過ぎますが、社会福祉の原論的な科目の中でも、日本のことだけを学ぶということではなくて、例えばイギリスの救貧法なども当然歴史の中で触れるでしょうし、今、伊東構成員が言われたように「精神保健福祉援助論」の中では、ソーシャルワークの理論モデルをイギリスやアメリカの歴史も踏まえて学ぶことになりますので、決して日本だけにはなっていないかと思います。ただ、ここに御提示している資料中からは、そこまで詳細に読み取っていただくことは難しかったかと思います。
また、法学について御意見をいただいたのですけれども、ここはソーシャルワーカーに詳しい法学の先生の御意見をかなりいただきながら組み立てていまして、総花的にというよりも、支援の対象になる方々が法的な課題を抱えていることも多いのに対して、ソーシャルワーカーがそれぞれの法についてわかっていないと、支援のときに実際に支障があるのではないかということで、必要最低限の知識を入れています。
特に権利擁護を中心に据えていますので、恐らく中島構成員がおっしゃっていることとそう遠くない内容が網羅されているのではないかと思います。
それから、社会学に関して古典という御意見もあったのですけれども、古典的な社会学は旧カリキュラムのときにあったと記憶しますが、国家試験でも人名の暗記みたいなものになってしまうとか、それを実際に実践に落とし込んでいくのは非常に難しかったという声も踏まえて、むしろ今起こっている事象を捉えるときに、周辺事情をきちんと見るような、そういうことが理解できるような目線を養うことに中心を置いた提案となっています。
ただ、これらは、社会福祉士との共通科目ですので、精神保健福祉士はこうやります、社会福祉士はこうやりますとなってしまうと、今まで共通科目だったものがばらばらになることは、現実的ではありませんので、やはりどこかで調整をする必要は出てくると思います。検討会としてどのようにするのかという方針を立てていただけるとありがたいです。
以上です。
○樋口座長 どうぞ。
○岩本構成員 ちょっと確認なのですけれども、先ほど中島構成員がグローバルとおっしゃったとき、この原論のような科目の中で、今日のグローバル時代にあって日本の中だけ見ていた社会福祉のあり方というのが変わってくるというようなことを盛り込むということなのかと最初は理解したのですけれども、歴史なのですか。いろいろな世界の社会福祉の成り立ちというか、発展というか、そういう歴史のことをもって「グローバル」とおっしゃったのか、その点だけ確認させていただきたいのですが。
○中島構成員 御質問をちゃんと捉えていなくてすみません。
○岩本構成員 グローバルとおっしゃったときに、今のグローバルな時代にあって、社会福祉の新たな考え方とか、そういうものが出てきていておっしゃっているのかと思ったのですけれども、その点だけお願いします。
○中島構成員 先ほど世界が網羅されていないとおっしゃられましたけれども、私は、世界が網羅できるところまでするべきだというか、最近、アジアのソーシャルワーカーもかなり国際ソーシャルワーカーが連盟に加入してきているので、そういったところも踏まえて、グローバルな知識や見識を持った上で、面前の人の支援をしていくということが重要なのかと思っていますので、世界的にという意味です。
○樋口座長 よろしいでしょうか。
それでは、少し時間が過ぎました。大変多くの御意見、御議論をいただきまして、ありがとうございました。
本日いただいた意見、議論については、この後、事務局で取りまとめていただいて、検討会からの意見という形でワーキンググループに戻すという流れでよろしゅうございますでしょうか。
○田村構成員 そのようにお願いしたいと思いますし、今日お示しした御相談事について、時間も少ないので、全部に御意見いただけていませんけれども、先ほど御意見のあったような、高齢者、児童、虐待、災害とか課題を挙げたら切りがないのです。課題ごとに学ぶことがいいことなのかどうかも、ワーキングの中では協議しているところです。そのあたりも含めて、メールでも結構ですので、御意見をお聞かせいただけたらと思います。来週もワーキングがまたありますので、早目にいただければありがたいです。
○樋口座長 わかりました。
では、事務局、どうぞ。
○御子柴主査 今、ワーキンググループの田村座長からお話があったとおりでございますので、次回の検討会までには、そういったことのお願いを改めて本日以降にメールで御連絡いたしますので、そちらに御返信いただきたいということ。
それから、先ほど共通科目の拡大というお話があったのですが、ここは実はそれぞれの科目を考えるときに、すごく前提になってしまうところでして、御指摘の児童や高齢者、障害については、既に精神保健福祉士は専門科目の中でも対応して、網羅しているところではあるのです。
それを縦割りにしている社会福祉士の科目を全部共通にしたときには、精神保健福祉士の学生はどれだけ膨大な時間を勉強しなければいけないのかのような状況になりますので、社会福祉士のほうがどのように整理をされるのかによっては、やはり単に共通科目にするというのは難しいところがあるので、逆に社会福祉士のほうの方々にそういったところの考え方をきちんと明示していただいた上で、精神保健福祉士の検討ではどうするのかということをあわせて検討しないと、単純に拡大するのは難しいなと事務局としては考えております。
○樋口座長 では、以上で本日の議論は終わらせていただきますけれども、今後については、先ほど事務局からも説明がございましたように、これまでの意見、議論について、一旦、検討会としての中間取りまとめに向けた準備を進めていくということになろうかと思いますが、そういうやり方でよろしゅうございましょうか。
(首肯する委員あり)
○樋口座長 御異議がないと理解させていただきまして、それでは、次回以降、そのような形で進めさせていただきたいと思います。
事務局、ちょっと大変だと思いますけれども、その準備もあわせて調整をよろしくお願いしたいと思います。
そのほか事務局から連絡事項がございましたら、お願いします。
○溝口室長補佐 長時間の御議論、お疲れさまでした。
次回の開催につきましては、3月15日の予定でございます。詳細の御案内につきましては、事務局より追って御連絡いたします。
○樋口座長 それでは、司会の不手際で少し予定の時刻をオーバーしてしまいましたけれども、本日の検討会はこれで終了させていただきたいと思います。
どうもお疲れさまでございました。