第1回 「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」議事録

日時

平成30年12月21日(金)18:00~20:00

場所

厚生労働省 専用第13会議室(21 階)

議題

(1)座長の選任について
(2)放射線による健康障害防止に係る法令と現状について
(3)最近の動向について
(4)本検討会における検討事項等について
(5)その他

議事

  
○川越放射線室長補佐 それでは定刻になりましたので、ただ今より「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」を開催いたします。本日は、大変お忙しい中、ご参集いただきまして誠にありがとうございます。私は座長が選出されるまでの間、進行させていただきます事務局の電離放射線労働者健康対策室の川越と申します。はじめに厚生労働省安全衛生部長の椎葉からご挨拶を申し上げます。
○椎葉安全衛生部長 皆様こんばんは。厚生労働省安全衛生部長の椎葉でございます。委員の皆様方には文字通り年末のお忙しいところ、更に遅い時間から眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。また、平素より労働衛生行政へのご理解とご協力を賜りまして、この場をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。さて電離放射線でございますけれども、医療における診断、治療、また工業用の非破壊検査などに利用されている他、原子力発電の燃料等から発生するなど、様々な産業分野に関係しているところでございます。国際放射線防護委員会ICRPが平成23年4月に発表しました組織反応に関する声明におきましては、計画被ばく状況にある職業被ばくに関する水晶体の等価線量限度につきまして、定められた5年間の平均で、年間20mSv、かついづれの1年におきましても50mSvを超えないことが勧告されたところでございます。また、その内容でございますが、国際原子力機関IAEAの放射線防護と放射線源の安全、国際基本安全基準に取り入れられたところでございます。そして、本年3月でございますが、放射線審議会「眼の水晶体の放射線防護検討部会」が報告書「眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について」という意見具申をとりまとめたことを受けまして、厚生労働省におきましても所要の措置を講じることが求められているところでございます。そこで、この本検討会でございますけれども、この意見具申で示されました眼の水晶体の被ばく限度や、測定、算定方法の見直しなどに伴う、電離則の改正などにつきましてご議論をいただくこととしておりまして、働く方、事業者、医療業、電力業や電離放射線に関する専門家等にお集まりいただくとともに、参考人といたしまして放射線診療、また眼科の関係学会の先生方にお集まりをいただいているところでございます。それぞれの視点、知見をもとに電離放射線による健康障害防止に向けた忌憚のないご意見、ご議論をいただくようお願いを申し上げます。以上、簡単ではございますが、検討会開催にあたってのご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 次に、出席者をご紹介いたします。資料1の2ページ目、裏でございますが、参集者名簿がございます。この名簿の順に紹介させていただきます。まず本日御欠席ですが、電気事業連合会 原子力部長の渥美様、日本労働組合総連合会 総合労働局 雇用対策局局長の漆原様。
○漆原参集者 お願いいたします。
○川越放射線室長補佐 (公社)日本看護協会看護労働・確保対策担当専門職の奥村様。
○奥村参集者 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 国立保健医療科学院 生活環境研究部部長の欅田様。
○欅田参集者 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 (公社)日本診療放射線技師会理事の富田様。
○富田参集者 どうぞよろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 自治医科大学学長の永井様。
○永井参集者 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 全国電力関連産業労働組合総連合産業政策局長の萩原様。
○萩原参集者 どうぞよろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 近畿大学高度先端総合医療センター教授の細野様。
○細野参集者 どうぞよろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 (公社)日本医師会常任理事の松本様。
○松本参集者 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 (公社)日本歯科医師会常務理事の三井様。
○三井参集者 よろしくお願いします。
○川越放射線室長補佐 (公財)労災保険情報センター理事長の山口様。
○山口参集者 どうぞよろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 藤田医科大学医療科学部准教授の横山様。
○横山参集者 よろしくお願いします。
○川越放射線室長補佐 次に、参考人の方々を紹介いたします。医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)実態調査ワーキンググループ及びSmartCardワーキンググループ主査の赤羽様
○赤羽参考人 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 まだ到着されておりませんが(一社)日本循環器学会理事の池田様。(公社)日本医学放射線学会監事の吉川様。
○吉川参考人 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 (公財)日本眼科学会の辻様。
○辻参考人 よろしくお願いします。
○川越放射線室長補佐 (公社)日本整形外科学会副理事長の三上様。
○三上参考人 どうぞよろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 (一財)日本消化器病学会理事の持田様。
○持田参考人 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 次にオブザーバーを紹介いたします。医政局地域医療計画課長補佐の稲木様。
○稲木医政局地域医療計画課長補佐 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 原子力規制庁放射線防護企画課企画官の吉住様。
○吉住原子力規制庁放射線防護企画課企画官 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 事務局のメンバーも紹介させていただきます。椎葉安全衛生部長。
○椎葉安全衛生部長 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 神ノ田労働衛生課長。
○神ノ田労働衛生課長 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 高山電離放射線労働者健康対策室長。
○高山電離放射線労働者健康対策室長 よろしくお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 室長補佐の川越でございます。どうぞ宜しくお願いいたします。それでは、本検討会には座長を置くことになっております。座長は社会保障審議会医療部会の部会長でもあります自治医科大学学長の永井先生にお願いしています。よろしくお願いいたします。
○永井座長 それでは座長を務めさせていただきます。私のバックグラウンドは循環器医療学でありまして、以前患者さんの放射線被ばく、医療被ばくに関するガイドラインを作成したことがございますが、今回は医療従事者の被ばくの問題ということで、皆様方のお力をいただきまして円滑に議事を進めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。まず、開催要項に基づきまして、座長代理を指名できることとなっております。労働政策審議会安全衛生分科会委員でもあられます労災保険情報センター理事長の山口先生を座長代理に指名させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○山口座長代理 よろしく願いいたします。
○永井座長 では、議事に入ります前に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 はい。お手元に資料がございますが、まず1枚目に議事次第がございます。一枚めくっていただいて、配布資料がございます。資料1、開催要項、資料2、放射線による健康障害防止に係る法令と現状について、資料3、横山委員提出資料「眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について」、資料4、本検討会における検討事項等について、です。また、メインテーブルに座っている方々には参考資料もお配りしております。参考資料1、関係参照条文、参考資料2、電離放射線障害防止規則等の対象業務別実施項目一覧、参考資料3、労働安全衛生法等適用事業場数・労働者数、定期監督等実施状況・法違反状況及び業務上疾病発生状況、参考資料4、放射線業務における眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策について、参考資料5、眼の水晶体にかかる放射線防護の在り方について(意見具申)、以上です。
○永井座長 はい、よろしいでしょうか。不足等ございませんでしょうか。それでは議題に入ります。まず、放射線による健康障害防止に係る法令と現状について、事務局の用意されている資料について説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 それでは、資料を説明させていただきます。資料2をご覧ください。一枚めくっていただきまして、まず、厚生労働省が所掌する放射線関係法令について説明しております。放射線の管理などにつきましては厚生労働省が所掌する労働安全衛生法などの3つの法令が関係しております。今回ご議論いただきますのは左下の労働安全衛生法に関する部分でございます。次のページをご覧ください。労働安全衛生法につきましては、まず目的としまして危害防止基準の確立及び責任体制の明確化などにより、労働者の安全と健康を確保するということとなっております。この目的に対しまして主に事業者に対しまして、措置義務を規定しております。また、これによって保護されるのは労働者という考え方になっております。講ずべき措置といたしましては、危険防止措置、健康障害防止措置がございますが、これらは労働安全衛生規則などの省令において具体的に規定がございます。また、労働安全衛生管理体制の確立として、衛生管理者などの選任や、衛生委員会の開催などの規定がございます。また労働者の就業にあたっての措置については安全衛生教育や、就業制限などが定められております。健康保持増進のための措置としまして、作業環境測定や、特殊健康診断の実施などがございます。これらの規定に違反した場合には6月以下の懲役または50万円以下の罰金などが科されるといった規定になっております。こうした労働安全衛生法の法令順守のための仕組みとして、ご紹介した罰則をもって実施を担保しているという面と、司法警察権を有する労働基準監督官による取り締まりを行うこととなっているという特徴がございます。この法令に基づきまして、具体的な措置内容につきましては、右上にあります特別規則で規定されております。今回ご議論いただきます電離放射線の関係では、電離則や除染電離則がございます。次のページをご覧ください。労働者の放射線障害防止対策の法体系としまして、まず、電離則の特徴ですけれども、適用場所としまして、放射線源が一定の場所に管理された状態で存在するという特徴があり、主に屋内作業を対象としているということでございます。このため管理区域を設定するという規定や、作業環境測定などの義務がございます。また、被ばく限度につきましては実効線量限度や、等価線量限度を規定しております。一方、除染電離則ですけれども、こちらは放射線源が点在しており管理不能な場所、主に屋外作業を対象としております。そういった意味で管理区域という考え方はありません。それを受けて、被ばく限度につきましても実効線量限度の規定はございますが、等価線量限度に関する規定がないといった特徴がございます。次のページをご覧ください。電離則の概要でございます。まず、法的位置づけとしまして、労働安全衛生法に基づく委任省令であり、放射線業務を行う事業者に対する規制となっております。放射線障害防止の基本原則が第1条に規定されておりまして、事業者は労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするよう努めなければならないとされております。また、第2条において規制の対象となります電離放射線と放射性物質が定義されております。次に規制の内容でございますが、今回、議論になると思われるところを重点的にご説明したいと思います。まず、(1)の管理区域と線量限度につきましてご説明します。実効線量が3月当たり1.3mSvを超える区域を管理区域に設定するということになっております。また必要のある者以外の者の立入禁止、放射線測定器の装着に関する注意事項の掲示などが義務になっております。実効線量限度につきましては1年あたり50mSvかつ5年あたり100mSvとなっております。等価線量限度につきましては、眼の水晶体で1年あたり150mSv、皮膚については1年あたり500mSvとなっております。緊急作業においては緊急作業期間中に実効線量限度が100mSv、等価線量限度の眼の水晶体で300mSv、皮膚で1000mSvとなっております。次のページをご覧ください。線量測定に関する部分です。まずアのところに書いてありますとおり、管理区域に立ち入る労働者の外部被ばく線量と内部被ばく線量を測定することとされており、具体的には外部被ばくによる線量測定につきましては放射線測定器を装着させる部位を定めております。一つ目として、男性などは胸部、一定の女性の場合は腹部に装着することになっており、そのほかにも体幹部のうち被ばく線量が最大となる部位があればもう一つ、さらに末端部のうち、被ばく線量が最大となる部位があればそこにももう一つ装着して測定することになっております。また、この測定は1cm及び70μm線量当量を測ることとされております。続いてイの線量の測定結果の確認、記録等につきましては(イ)にありますようにアの測定の結果に基づきまして、放射線業務従事者の実効線量及び等価線量の一定の期間ごとの合計を厚生労働大臣が定める方法により算定し、記録し、30年間保存することとなっております。ここでいう厚生労働大臣が定める方法ですが、眼の水晶体の等価線量の算定につきましては1cmまたは70μm線量当量の適切なものとされております。続いて関係する部分としまして(8)の作業環境測定でございます。こちらは、放射線業務を行う作業場のうちの管理区域について、1月以内、一定の場合には6月以内ごとに1回測ることになっておりまして、外部放射線による線量当量率または線量当量を測定し、記録、5年間保存することとなっております。(9)の健康診断でございますが、こちらは放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者に対しまして、雇入れ時、当該業務に配置替えの際、及び6月以内ごとに1回の健康診断の実施がございます。またこの結果の記録については30年間保存することになっており、健診項目としましては眼の水晶体に関係するところでは、白内障に関する眼の検査が健診項目となっているところでございます。次のページをご覧ください。放射線業務を行う事業所数及び労働者数でございます。下に表がございますが、左半分が労働安全衛生法などの適用事業場数及び労働者数で、右側半分が電離健診の実施事業所数及び受診労働者数でございます。これによると労働安全衛生法などが適用される事業所数と労働者数を業種別に見ますと、多い順に商業、製造業となっており、放射線業務を行う事業所数を電離健診の実施状況で見ますと、多い順に保健衛生業、建設業、製造業となっております。また、放射線業務を行う労働者数というところで見ますと、多い順に保健衛生業、製造業、教育・研究業となっております。次のページをご覧ください。定期監督などの実施・違反状況でございます。左側、表の左側に定期監督の実施事業所数がございますが、定期監督等の実施件数を多い順に、建設業、製造業、商業、運輸・交通業、保健衛生業となっております。また、下の表の右側に労働安全衛生法に基づく根拠条文がございますが、この中で、20条から25条等のところに電離則の措置義務違反の件数などが記載してございます。これを見ますと電離放射線障害防止規則関係の違反を指摘されている業種としましては製造業、建設業、保健衛生業などがございます。次のページをご覧ください。眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策としまして、現行で真ん中、中ほどの当面の対応としてというところに書かれておりますように、厚生労働省としましては関係団体などに対しまして「放射線業務における眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策について」という文書を発出して、予防的観点から対応を行うように通知をしているところでございます。この中で通知の趣旨として5項目ございますけれども放射線防止の基本原則である「遮蔽する。放射線源から距離を取る。作業時間を短くする。」ということに則って、作業方法の再確認を行うことなどの管理を求めているところでございます。以上でご説明を終わります。
○永井座長 はい、ありがとうございました。それではただ今のご説明にご質問、ご意見等お願いいたします。
○漆原参集者 ただ今ご説明いただいた、8ページの定期監督等実施違反状況についてお伺いします。先ほど説明がございました9条の30年間の保管というところとの関係ですが、ここで見ると、電離則の9条違反のところのチェックはしていないということかと思いますが、実際にこの対象業務については、30年間の保管が義務だと思うのですが、それがどうなっているのかということと、9条には線量について事業者が従事者に遅滞なく知らせる規定があったかと思いますが、そこを含めた違反状況や保存状況は、どういう形になっているのでしょうか。
○川越放射線室長補佐 はい、お答えします。資料としまして、今回より細かいものを参考資料3にお付けしております。こちらを見ていただきますと、3の定期監督等実施状況・法違反状況(平成28年)という表がございます。こちらがより細かいものを表しておりまして、これを見ていただくと条文が書かれておりますが、先ほど漆原委員からご指摘のありました件について、ページ数でいきますと3ページから、定期監督等実施状況・法違反状況の表がございます。こちら、いろいろな法令条文ごとに、違反を集計しているものでございますが、漆原委員から話のありました、線量の記録の保存につきましては労働安全衛生法第103条に根拠を持つ法令になっておりまして、こちらの集計は残念ながら行っていないということでございます。ただ、私ども定期監督等で監督官が立ち入って、メモを見させていただいておりますけれども、その中では法令違反を確認して、問題があれば指摘するということは行っているところでございます。ただ、集計したものがないということでご理解いただければと思います。また、電離則9条第3項に基づく労働者への線量測定結果の通知については、労働安全衛生法第22条に基づくものとして、資料2の8ページに集計したものがございますが、電離則第9条第3項の違反を単独で集計したものはございません。
○永井座長 よろしいでしょうか。他にいかがでしょうか。また後からご質問いただいても結構でございますので、それでは、次の議題にまいります。最近の動向についてでありますが、これは内容が多いために説明を区切ってご質問の時間を取ろうと思います。では、最初に放射線審議会、眼の水晶体の放射線防護検討部会長であられます、横山委員から説明をお願いいたします。
○横山参集者 ありがとうございます。それでは、資料3に基づきましてご説明をさせていただきたいと思います。非常に厚い資料でございますけれども、先ほどお話がございましたように3つぐらいに分けてお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。それではまず一枚おめくりいただきまして、先ほど事務局の方からもご説明がございましたけれども、まず国際動向ということでお話を進めさせていただきます。2011年ですね、4月にICRP、国際放射線防護委員会になりますけれども、組織反応に関する声明を発表し、その中で計画被ばく状況における職業被ばくに関する水晶体の等価線量限度について定められた5年間の平均で20mSv/年、かついずれの1年においても50mSvを超えないということを勧告しております。その勧告に基づきまして、これも先ほど説明ございましたように、IAEAが国際基本安全基準の方に取り入れたと。日本もこちらに加盟しておりますので、これに基づきまして日本の法令への取り入れというような議論に進んできたということになります。それから、欧州の方ではということで、EURATOMの指令ということで2013年に出されておりまして、2018年2月までに加盟国に国内法令に新たな水晶体の等価線量限度、これはICRPの線量限度となりますけれども、それを取り入れるように指令がなされたところでございます。2018年2月ということになりますので、もうすでに期間が過ぎておりますけれども、すべての国がまだ取り入れているわけではなく、いくつかの国が取り入れているということになります。その国々なのですけれども、こちらの下のところにEUに関する国以外の国もすでに取り入れている国もございますけれども、いくつかの国がそちらに書かれているようなところで、法令への取入れを決定しています。ただし、施行というところでは、まだ法令には取り入れたのですが、それを施行するというところに至っていない国もいくつかあるというような状況でございます。それから、米国の放射線審議会でございますけれども、こちらもICRPの組織反応に関する声明を受けまして独自に自分たちも検討をするということでガイドラインを刊行したというところでございます。しかしながら、ステークホルダーからの強い反対がございまして、米国原子力規制委員会の方は法令改正には至っていないという状況でございます。続きまして次のページをご覧ください。3ページ目になります。それで放射線審議会での検討ということでございますけれども、先ほどご説明させていただきましたようにICRP、それからIAEA等で国際的に合意された放射線防護体系の考え方を尊重し、それを取り入れるということで検討を開始いたしました。昨年7月に第1回を開催いたしまして、設置、開催ということになります。で、7回ほどの検討を行いまして、2018年の、翌年3月に先ほどお話のございました眼の水晶体に係る放射線防護の在り方についてという報告書の方を意見具申させていただいたところでございます。続きまして次のページをご覧ください。ICRPの水晶体の等価線量限度の経緯というか、変遷をこちらの方にご説明させていただいております。こちらの資料でございますけれども、第1回の部会の時に電力中央研究所の浜田氏に説明いただいたものをリバイスして使わせていただいております。1949年に白内障、放射線に関するもの、それから原爆被ばく者に関するもので、白内障が報告されております。人に関する白内障の初の報告というのは1903年ということになります。放射線が使われ始めましてかなり早い段階で白内障というところがわかったというところでございます。それから1950年、これはICRPが立ち上がった年と同じくしてということになりますけれども、放射線白内障を「考慮すべき影響」の中に含めるということになりました。それから1954年に初めて水晶体の線量限度、最大許容線量という形で勧告されまして、この時に水晶体の線量のための実効深度を3mmとし、現在の水晶体の測定におきましても3mm線量当量を使うということになっております。それから1977年、こちらの方はICRPのPublicationの26になりますけれども、この時に放射線白内障を非確率的影響、現在では確定的影響というふうに言われておりますけれども、更にICRPの方では組織反応という言葉に変わっておりますが、そちらの方に白内障を区分したということになります。水晶体の線量限度といたしましては、視覚障害の白内障の発症を防ぐことが目的というふうにしております。白内障につきましては手術により治療可能でありますけれども、視覚障害により支障をきたすということがこちらの方に含められた理由でございます。続きまして5ページ目、2003年になります。こちらのPublication92で白内障のしきい線量が従来考えてきたよりも低い可能性があるというふうに指摘されました。1954年からずっと線量限度、実は水晶体の場合は変わっておりません。一時的に300mSvというときがあったのですけれども、すぐに引き下げられて現行法令でも用いられています150mSv/年というものがずっと使われ続けてきたというところでございますけれども、この2003年で指摘があったということでタスクグループが立ち上がりました。それから2006年になりますけれども、ICRPの第1専門委員会においてタスクグループの63というものが立ち上がりまして2011年の報告書案で公開意見公募が行われ、このあと4月1日というふうになっておりますけれども、この時に声明が出されるということになります。続きましてその次のページ、6ページの方をご覧ください。今申し上げましたように、2011年の4月にソウルで開催されたICRPの主委員会の会合で声明が発表されたということでソウル声明というふうに言われております。それから2012年に、この声明文は非常に短いものでございますけれども、報告書ということでPublicationの118、組織反応に関するICRP声明、それから正常な組織・臓器における放射線の早期影響と晩発影響、放射線防護の視点から見た組織反応のしきい線量ということで、こちらの方に詳しい文献等、水晶体のみならず、それ以外のしきい線量等につきましてもこちらの方に記載がございます。 7ページ目の方をご覧ください。もうよくご存知かと思いますけれども、水晶体、白内障の確定的影響、組織反応とはどういうものかというところで、こちらの方に記載させていただいております。しきい線量と線量の増加に伴う反応の重篤度の増加によって特徴づけられる細胞集団の損傷のことというようにICRPのPublicationの103、2007年勧告の方に記載がございます。場合によっては生物反応修飾物質を含む照射後の手順により変化しうるというふうになっております。しきい線量がある障害ということになります。そのしきい線量でございますけれども、組織反応が1%発症すると推定される線量ということがICRPの中で定義づけられているということになります。続きまして次のページをご覧ください。8ページ目になりますけれども、2007年勧告、一番新しい基本勧告ということになりますけれども、すでにもう10年経っております。こちらの方にこの線量限度、水晶体だけではなく実効線量、それから皮膚、手足といったような線量限度が示されています。こちらの線量限度につきましては1990年勧告と同様でございます。ただし、眼の水晶体のところの肩のところに注意書きがございまして、注意書きBのところをご覧いただきますと、ICRPの課題グループで現在検討中とされています、2007年勧告の時に示してあったということでございます。先ほど経緯をご覧いただいてお分かりのように、すでに2007年勧告が出る前に検討が始まっていました。ただ、この時にはまだ間に合っていなかったのでこのまま150mSvという線量限度がこちらの方に記載されているということになります。続きまして9ページ目をご覧ください。旧勧告まで、2011年までということになりますけれども、水晶体の等価線量限度の科学的根拠につきまして、これはPublicationの103、2007年勧告に記載されているものでございます。表のA.3.1、成人のこれらのしきい値の推定値というふうになっておりまして、その水晶体部分を抜き出してきたものでございます。水晶体の場合には検出可能な混濁と視力障害、白内障と二つに分けられておりまして、1回で受けた総線量、短時間1回、短時間ということで原爆の被ばく生存者の障害等に関しましてはこちらになります。またその次の多分割又は遷延被ばくで受けた総線量ということで、慢性的に受けるような場合ということで、その総線量につきましてこちらに書かれています。更に今の欄の1年あたり、これを50で割った数、50年間ずっと受け続けるという考え方をしておりますけれども、それを50で割った値が年間の値として示されています。下の欄の視力障害の方の多年に渡り多分割又は遷延被ばくで毎年受けた場合の年間線量というところをご覧いただきますと、0.15というふうになってございまして、これ、150mGyとういことになりますけれども、この線量につきましては低LET放射線ということで、γ線とかX線によって得られた値ということで、今の線量限度の値がこちらから導き出されているということになります。続きまして10ページの方をご覧ください。声明文なのですけれども、それがどういうふうに変わってきたかということをこれからご説明させていただきます。委員会は組織反応のいくつかに非常に遅く発症するものについてしきい線量がこれまで考えられてきたものよりも低い、あるいは低いかもしれないことを示唆する最近の疫学証拠を検討したということで、疫学的なもの、最新の疫学研究を基に眼の水晶体のしきい線量としては0.5Gyと考えられるというふうにこちらに記載があります。それから、それに基づきまして計画被ばく状況での職業被ばくについて、線量限度としては先ほど申し上げた線量限度を勧告しているということになります。それから、これをご覧いただきまして、少し計算していただければお分かりになるかと思いますけれども、20mSv/年で50年間被ばくし続けますと、1Gyということになります。そうするとしきい線量を超えるということになります。そこでICRPの方は全身被ばくだけでなく、特定の組織、特に眼の水晶体、心臓及び脳血管系についてもというふうにありますけれども、防護が最適化されるべきであることをさらに強調するというような書かれ方をしています。今までICRPの考え方としましては組織反応、確定的影響に関しましてはしきい線量以下に抑えていれば障害を防止することができるということでありましたけれども、今、ちょうど端境期というか、ICRPの方もこれから新しい勧告を出すのに向けていろいろな考えがございまして、現在のところはこの水晶体に関しましては確定的影響、組織反応ではございますけれども、このように最適化が必要であると、最適化を行うことによって担保できる、しきい線量を担保できるものであるというふうに示してございます。続きまして11ページになりますけれども、こちらが科学的根拠とういことでお示しさせていただいたものです。Publicationの118の方にもございますけれども、どのような考え方でこのしきい線量が出てきたかと言いますと、ここにございますように2つの仮定をおいているということになります。この仮定につきましては、妥当性につきましては今後も検証が必要であろうということでございます。どのような仮定かと申し上げますと、生物影響は急性被ばく、多分割・遷延被ばく、慢性被ばくで同じというふうな仮定を立てています。それから、全ての微小混濁が被ばく後、20年以上で視覚障害性白内障に進行するというような仮定でございます。ですから、微小混濁が消えてなくならないというような仮定に立ってこちらの方のしきい線量というものを導き出したということになります。その根拠になります論文でございますけれども、以下3報が主に疫学的知見を、この3報の疫学的知見を基にしているということになります。急性被ばくのしきい線量につきましては原爆被ばく者の被ばく後55年から57年の白内障の有病率、それからもう一つは白内障の手術ということで、手術件数ということで線量との関係がなされている。それから、分割・遷延被ばくのしきい線量につきましてはチェルノブイリの事故清掃員における被ばく後12年から14年の白内障有病率というところから導き出されていると。こちらの方、後嚢下白内障と皮質白内障が有意に増加しているといったことから、この線量限度が出てきているということになります。慢性被ばく、チェルノブイリの方は分割・遷延というふうになっておりますが、この長い、長期間の慢性被ばくというようなデータはまだありませんので、こちらの3つのものから特に挙げられています。ただ、Publicationの118にはこの他20報、19報だったと思いますけれども論文が挙げられていまして、その中には放射線科医のIVRに携わる医師の白内障等の有病率というか、発症というようなものも併せて記載がございます。続きまして次の12ページの方をご覧ください。先ほども申し上げたように、旧勧告と新勧告の違いということになりますけれども、視覚障害性白内障と微小混濁の関係と。先ほども申し上げた通り、新勧告の場合には微小混濁が視覚障害性の白内障に進行するという仮定をおいております。ただ、旧勧告の方では微小混濁は必ずしも視覚障害性白内障に進行しないとして、しきい線量を視覚障害性白内障と微小混濁に分けている。その視覚障害性白内障の方の値を取りましてしきい線量に充てているというところが、違いがございます。それから線量率の依存性ということでございますけれども、旧勧告におきましては線量率効果があるとしてしきい線量を急性被ばくと多分割・遷延被ばくに分けて勧告しておりますけれども、新勧告につきましては線量率効果はないというふうにしております。こちらは先ほどお示ししました原爆被ばく生存者の疫学調査、それからチェルノブイリの結果からということになります。それからしきい線量の意味でございますけれども、被ばく集団の1%に視覚障害性白内障が生じる線量と。先ほども申し上げたように旧勧告ではこのように充てていますけれども、新勧告につきましては被ばく後20年以上経過した時に被ばく集団に1%の視覚障害性白内障が生じる線量というふうに定義されているというところの違いがございます。続きまして13ページをご覧ください。こちらの方に水晶体の構造と放射線白内障の標的細胞ということで記載をさせていただいてございます。眼の眼球をこちらに記載させていただきました図でございますけれども、眼球の断面から見た図になります。それから、右側の図に関しましては水晶体の断面図ということになります。前面一層の水晶体上皮、水晶体核、水晶体皮質が水晶体嚢に覆われた構造をしているということになります。そちらの水晶体、右側の図の水晶体の図をご覧いただきますとお分かりのように、水晶体上皮細胞のところが一層ございますけれども、そこに増殖帯があるというようなことでございます。それから赤道面、赤く丸を打たせていただきました端になりますけれども、この赤道面で水晶体線維に分化します。そして、分化しますと水晶体の細胞内の小器官を、核それから、その他のミトコンドリア等の小器官を全て喪失して、核・水晶体皮質を構成していき、線維化するということになります。ですから、細胞分裂の盛んな部分というのはそこの水晶体上皮細胞の部分ということになります。このような観点から増殖帯の実効深度というのが3mmということで水晶体の線量を評価する深さとして3mm線量当量を使うということになっています。続きまして次のページに移らせていただきます。ここから報告書、部会の報告書の内容に入っていきたいと思いますけれども、部会の報告の中に、どういう作業をする職業の人たち、つまり水晶体の白内障の影響について高線量になる作業者というのを考えなければいけないかということでIAEAのTECDOCの1731というのを参考にしております。このTECDOCの1731におきましては、医療従事者、インターベンショナルラジオロジーのカテーテル検査を行うような医師それから核医学、β線の線源取扱い、それからCTガイド下穿刺術、それからサイクロトロンの取扱者などが高線量、不均等被ばくを伴うであろうというふうに記載がございます。それから、原子力施設の作業者といたしましては、グローブボックス取扱作業者や廃炉従事者、それからPu、劣化ウランなどの取扱従事者などが取り上げられています。それからその他の労働者といたしましては、工業用のX線撮影を行う従事者、日本で言いますと非破壊検査等を行う従事者に対応するかと思いますけれども、このような記載がございましたので、これらを参考に、部会において放射線業務従事者、学会、事業者、職能団体等へヒアリングを実施することといたしました。続きまして我が国の規制制度ということになりますけれども、こちらの方、先ほどすでに事務局の方からご説明がございましたのでよろしいかと思いますけれども、現在の線量限度、水晶体の等価線量限度につきましては年間150mSv、それから水晶体の線量の算定・記録などの種々の義務を負っているということ。それから、緊急時の線量限度につきましては300mSvという規定がございます。これらの考え方というのは放射線審議会が平成11年、放射線審議会の基本部会になりますけれども、平成11年4月に示されました「外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針」、技術指針と我々呼んでおりますが、こちらの方に示されたものを基に定められたということになります。続きまして次のページをご覧ください。こちらで一旦締めさせていただきますけれども、まとめということで、これまでの経緯としましてICRPの勧告、それから我が国においては放射線審議会において検討を始めた、それからその取りまとめを行いました。更にその取りまとめを行いまして所要の措置を講ずるよう関係行政機関に対し意見具申をしたというところでございます。それから水晶体の等価線量限度の科学的根拠につきましては、基本的にはICRPのPublicationの118に記載された内容を基に検討を行いました。それでこちらの方を水晶体のしきい線量、0.5Gyというものと、あと線量限度、ICRPが声明として勧告しましたその値を用いるということが妥当というふうに考えているということで放射線審議会の方では結論が出たということになります。それから、特に防護を要する職業といたしましては先ほど申し上げましたように、医療従事者、それから原子力施設の従事者、それから工業用の撮影を行う従事者等が考えられるだろうと。それから我が国の規制制度におきましては、線量限度とそれから通常の業務を行う計画被ばく状況ということになりますけれども150mSv/年、それから緊急時につきましては300mSvですけれども、こちらの方が規定されているようなことを、前半部分になりますけれども部会の報告書の方にもこちらの方まとめさせていただいております。こちらで一度ご質問を受けたいというふうに思っております。
○永井座長 はい。ありがとうございます。いかがでしょうか。
○山口参集者 11ページの科学的根拠のところで、疫学のデータを基にというようなことはわかりましたが、そのエビデンスのところにはその微小混濁ということについては特に記載がありませんがこの微小混濁を測定をしているということでよろしいでしょうか。
○横山参集者 こちらの方が微小混濁ではなくて白内障、この3報につきましてはということになりますけれども、第1報目に関しては後嚢下白内障と皮質白内障が増加するかどうかということ。それから、第2報目に関しては白内障手術、実際に白内障か、白内障になったから手術を行うということになりますので手術との関係ということで有病率というようなこと、それからチェルノブイリに関しましては後嚢下白内障と皮質白内障が有意に増加しているかというところを見ていると。それ以外にも先ほども申し上げましたようにPublicationの118の中にはこれ以外の論文、他に十何報ございますけれども、その中には動物実験、それから先ほど申し上げたような混濁に関するようなものも入っているということになります。
○山口参集者 ありがとうございます。
○永井座長 はい。他にいかがでしょうか。緊急事態の定義というのはあるのですか。300mSvまでとか、緊急事態あるいは緊急時作業とはどういう状況か。
○横山参集者 法令の方で定められた緊急事態が発令された場合、原子力の場合には緊急事態の発令ということになると思うのですけれども、それ以外にも省庁の方でどういうふうにされているとかあるのでしょうか。
○川越放射線室長補佐 電離則の中で緊急事態の定義としまして、100mSvに引き上がる、300mSvに引き上がるところの状況としましては電離則の第42条に定める退避が必要な事態が生じた事故があった時になりまして、具体的には、放射性物質の取扱中に破損した場合等で、直ちにそれを回収することが困難な時、破損した場合や、放射線の照射中に破損しかつその照射を直ちに停止することが困難な場合等が例示されておりまして、この事故によって受ける実効線量が15mSvを超えるおそれのある区域については労働者を退避させなければならないとなっております。こうした事故が起きた時が、緊急作業が生じる事態ということになっております。
○永井座長 はい。ありがとうございます。
○欅田参集者 すみません、今の緊急事態の作業と、ここで言っている緊急作業者の定義が同じものですかね。ちょっともう一度確認いただければ。
○永井座長 すぐに分からないようであればまた次回お願いします。
○川越放射線室長補佐 はい。
○永井座長 この件はいろいろこれからも議論になるだろうと思います。
○横山参集者 よろしいですか。お配りいただいております参考資料の12ページですけれども、緊急作業における被ばく限度という12ページの一番下にございますように、7条のところにございますけれども、「事業者は、第42条第1項各号のいずれかに該当する事故が発生し、同項の区域が生じた場合における放射線による労働者の健康障害を防止するための緊急作業」というふうになっておりまして、そこに線量限度が記載されているということになりますので、今の同じカテゴリーになるのではないかと思います。
○永井座長 よろしいでしょうか。
○欅田参集者 はい。
○永井座長 それでは続けて、ご説明をお願いいたします。
○横山参集者 はい。それでは引き続きご説明をさせていただきます。17ページからになります。こちらの方は線量の測定ということで、先ほども線量の測定ということでお話いただいております。70μmか1cm線量当量の適切な方を水晶体の線量にするというような現行法令でございます。その時に、現行法令におきましては場所に係る測定とそれから個人の外部被ばくに係る測定と二つに分けてございます。こちらの細かいことにつきましてはその後のページにもございますけれども、少しその定義が違うということになりますが、次の18ページの方をご覧いただきますとお分かりになるかと思いますけれども、一覧にさせていただいております。場所に係る測定に用いる線量といたしましては、どちらもICRUの実用量を基に測定をしなさいということになりますけれども、場所におきましては周辺線量当量、方向性線量当量というものを使います。それから個人につきましては、個人線量当量というものを使います。ただし、どちらも言葉としては、名称としては1cm線量当量、3mm、70μmというような言葉を使うということになっております。水晶体の等価線量につきましては、3mm線量当量をもって水晶体の等価線量とするとしておりますけれども、実際には現行法令におきましては、17ページの方に戻らせていただきますけれども、赤字で書かせていただいた、場所に係る測定の方に書かせていただいておりますように、3mm線量当量率については1cm線量当量率と70μm線量当量率の測定を行うことにより防護のために必要な情報を得られる、と考えられることから測定の義務を原則として課さないことが適当であるというふうに、これは先ほどの技術的指針の方に記載のある事項でございます。こちらの方が現行法令の方に入れられているということになります。個人線量につきましても、省略をしておりますけれども、同じ記載がございまして3mm線量当量率については前述と同様の理由から測定の義務を原則として課さないことが適当というふうに言っております。ただ、こちらの方は、あくまでもこの時の線量限度が水晶体の等価線量限度が年間150mSvを基にこのような記載になっていたということになります。ですからこれから線量限度、その新しいICRPの線量限度を取り入れるにあたっては、このようなことのみならず、この部分が検討の対象となったということになります。あと19ページに関しましてはご覧いただいて場所と個人とは違う考え方で、同じ名前ですけれども違う考え方になっておりますよというところをご説明させていただいたものです。次の20ページ、21ページになりますけれども、少しどのような線量計を使って測定をしているのかということで、こちらの方に書かせていただきました。場所に係る測定といたしましては、電離箱サーベイメータで測定されている施設が多いかと思います。大抵は右側の1cm線量当量率の測定用の電離箱を使って測定されています。こちらの左の方は1cm、70μm、3mmと前のキャップを変えて、厚さを変えて測定できるような線量サーベイメータもございますけれども、このようなサーベイメータというのは一般になかなか出回っておりませんで、研究用に使われているというのが現状でございます。それから、個人の線量、外部被ばくに係る測定につきましては、21ページの方にまとめさせていただいておりますけれども、皆様もお使いになられているかと思いますけれども、TLD、それから蛍光ガラス線量計、OSL線量計等が今、現状としてはお使いになられていて、1cm線量当量、70μm線量当量が報告として上がってきていると思います。それから、局所の被ばくという、線量が高くなるところ、最も高くなるところに着用するということで指、手の線量が高くなることが予想される場合には、こちらにあるような指リングをプラスアルファで着用するといったようなこともなさっているかと思います。続きまして22ページになりますけれども、部会における検討課題、どういうことを検討すべきなのかということで、この3点を取り上げてございます。まず、先ほども申し上げたように、科学的根拠ということにつきましてはICRPの考え方というところを覆すほどの、我々から何か出てくるというものではございませんでしたので、こちらの方の考え方というのを取入れつつ、更に実際に各分野におきまして、この線量限度を取入れることが可能かどうかというところをヒアリングしておくということで、こちらに書かせていただいたような医療分野、それから他には例のないような東京電力の福島第一原子力発電所の廃炉作業、その他の分野ということでヒアリングを実施させていただきました。それから除染作業につきまして先ほど除染電離則、別にございますので、除染業務につきましてもヒアリングを行いましてこちらのご意見をお伺いしたところでございます。それから、測定・評価の在り方、やはりどういう線量を測るのかというところにつきましては課題となる、現在1cmまたは70μmのどちらか適切な方というふうな書かれ方をされておりますけれども、3mm線量当量という、3mmを測定することについてどのように考えていけばいいのかというところで検討をすべきということになりました。少し、結果につきましてもこちらに書かせていただいておりますけれどもまた後程ご説明させていただきたいと思います。それから緊急時の作業者に係る水晶体の等価線量限度についてということで、こちらの方はICRPの組織反応に関する声明の中では、緊急時の作業者の線量限度、参考レベルといったようなものに関しての値等は示されておりません。あくまでも計画被ばく状況における作業者の線量限度ということで示されておりましたけれども、併せて検討しておく必要があろうということで部会において検討を行いました。23ページになりますけれども、そのヒアリングを行った際に、まず基本とさせていただきました資料になります。実際の部会の報告書では平成28年の個線協のデータを載せさせていただいておりますけれども、こちらの方は最新情報ということで2017年度のガラスバッジのサービス事業に基づいたもので、1社のみのデータとなっております。ですから、報告書の値と若干異なりますけれどもパーセンテージ、医療分野の全体の何パーセントくらいが20mSvを超えるのだろうか、というところのパーセンテージはほぼ変わらないというふうに考えていただいて結構かと思います。この数字の大体倍くらいの、もう1社大きなガラスバッジサービスがございますので、それを足し合わせますと大体これの倍くらいというふうに思っていただければ結構かと思います。これを見ていただいてお分かりのとおり、医療に関する従事者の数が非常に多く、全体の従事者の中で多いということ。それから、20mSvを超える従事者の数も多いということがよくお分かりになるかと思います。続きまして次のページをご覧ください。24ページになりますけれども、部会の報告書の方に取りまとめさせていただいております内容についてご説明させていただきたいと思いますけれども、医療分野におきましては現場の特性といたしまして、いろいろな手技がございますので、手技、職種、防護策の実施状況によって被ばくの実態が大きく異なるであろうということが挙げられました。例えばIVRにおきましては、他の分野より相対的に高線量の水晶体被ばくが発生しているというのがICRPの Publication 85の時から言われております。それから最近ではICRPの Publication 139、これは2018年に出されたものでございますけれども、こちらの方でもIVRの手技とその被ばく線量につきまして取り上げられているところでございます。こちらの方は、今までにも研究対象となっている部分でございます。それから一般撮影、CT検査といったようなものに対してはどうなのかということなのですけれども、こちらにつきましても、日本放射線技術学会様の方にお越しいただきまして情報を提供していただきましたけれども、患者の介助による被ばくというものが発生します。その介助回数が多い場合に水晶体の線量が高くなりやすいといったような情報もいただいております。それから核医学検査・治療、小密封線源というものにつきましては、IVRほどではないですけれども、またこれはX線ではなくγ線、それからβ線といった水晶体の被ばく、β線につきましてはかなり高い、高エネルギーのβ線700keV以上のβ線でないと水晶体の被ばく線量に寄与しないということがございますので、核医学の方はγ線の被ばくということになりますけれども、こういう被ばくも発生しているというようなことをヒアリングでお聞きすることができました。また報告書の中でもそのように取りまとめさせていただいております。それから防護及び測定の現状ということでございますけれども、IVR分野におきましては先ほどもお話させていただきましたように、ICRP等でもかなり取り上げられているということで、防護板、それから防護眼鏡の活用というのが相当程度普及しているというふうなご意見をいただきました。しかしながらそれ以外の新規参入分野といったような分野では導入が十分ではないといったような指摘もございました。それから防護策や測定・評価等につきましては、一律に定めることは困難であり、手技によって、先ほど現場の特性をご覧いただきましたように、職種も違う医師、それから技師、看護師といったような職種、それから手技におきましても、IVRなのか、一般撮影なのかといったようなものでもずいぶん、その発生源との関係、立ち位置等についてもずいぶん違うということで、一律に定めることが困難であろうというようなご意見をいただいています。それから医療行為の妨げにならないよう配慮が求められます。これは一番大きな点かと思いますけれども、医療の場合には目の前に患者さんがいらっしゃるというような状況、その中で時間に追われながら手技をされるということもございますので、そのような配慮が必要であるといったご意見もいただきましたので報告書の方に取りまとめさせていただいております。それから適切な防護策を組み合わせるとともに、適切な測定方法を採用することで、新たな線量限度に対応可能といったようなご意見もいただいております。防護具も特別なものでなく、現存している、現在ある防護具でも十分、組み合わせによっては被ばく低減が可能というようなご意見でございました。続きまして、もう一つ大きな高線量の被ばくを伴う作業ということで、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業というのを取り上げさせていただいております。こちらの方は平成28年度のデータということになりますけれども、約16000人のうち401人が年間20mSvを超え、21人が50mSvを超えるというような状況でございます。平成29年度の方、こちら調べましたところ、14000人ほどのうち315人が20mSvを超えているというような状況でございます。これは水晶体の等価線量ということになりますけれども。それでどんな場なのかということでございますが、γ線量率の高い作業場、3号機周辺の、ここでは3号機周辺というふうになっておりますが、原子炉周辺になります。かなり発電所内のサイト内も被ばく低減をされておりまして、ほとんどの場所では線量が下がってきているのですけれども、やはりこの原子炉周辺の作業につきましては高い線量の場ということになります。それからもう一つは、90Sr/90Yの汚染水を溜めたフランジタンクの解体作業、タンクの水を移し替えるという作業がございまして、β線の高い作業場ということになります。90Yのエネルギーが高いということから、こちらのβ線の被ばく、水晶体の被ばくというところを考えなければいけないという。このような作業は他の発電所では類のないものということになります。今後につきましてもこの部会を開催させていただいた際には、まだγ線の場、β線の場というのが分かれているような状態でございましたけれども、今後γ線とβ線の両方が高いような環境下での作業が生じる可能性もあるであろうということでやはり注意が必要な作業ということになります。それから防護策、測定の評価の現状といたしましては、β線が支配的な区域では主として内部被ばくの防護、これはβ線の眼の被ばくを避けるためにしているわけではないのですけれども、内部被ばくの防護のために全面マスクを使用している。これによりまして全面マスクによる遮蔽効果というのがかなり、β線の被ばくにつきましては大きいので、それを含めずに保守的に評価しているというところで実際の線量とはずいぶん食い違いがあるのではないかといったようなところが挙がっておりました。それから、γ線の高い場所というところでは遮蔽ベストを着用しています。こちらの方は実際には体幹部につきましてはベスト、水晶体につきましてはその外側ということで、ベストの外側の線量を採用して、外側にも線量計を付けて、その線量を水晶体の線量というふうにしているということでございました。それから、平成30年度から自主的に管理を行う、管理値を設けて段階的にそれを導入していくこととされていまして、それ以降につきましても、管理方法の検討後には5年間で100mSvというICRPの線量限度ですね、こちらの方を採用していく予定というようなことを伺っております。続きまして、それ以外の作業者につきましてということで、一つ、除染等の業務従事者の水晶体に係る現状ということを、こちらの検討会では取り上げさせていただきました。特に厚労省の除染電離則に係るところになります。この除染等の業務従事者につきまして、線源は主に放射性Cs、137Cs、134Csということになりまして、β線も発生、放出いたしますけれども、こちらのβ線は700keV以下ということで、先ほども申し上げましたように水晶体の等価線量に寄与しないものということになります。したがってCsのγ線だけを考えればよろしいだろうということでございます。除染の対象が面上である、スポット的に発生するような場合であっても、少し離れれば、こちらに書かせていただいておりますけれども、70cmも離れれば均等被ばくになろうということで、その不均等な被ばくということはほとんど発生しないであろうというような結論を得ております。過去の2012年から2016年の実効線量をご覧いただいても、ここに小さくその部会の時に報告いただいた資料を添付しておりますけれども、20mSvを超えるようなことはないだろうと。年々下がってきておりますし、今後20mSvを超えることがないということを考え併せますと、先ほど事務局の方からお話がございましたけれども、等価線量限度については規定しておりませんけれども、この部会におきましても水晶体等価線量限度を規制に取り入れなければならないという状況にないと考えられるというような結論が得られております。続きまして、これでまた一区切りにさせていただきたいと思いますけれども、ここまでのお話といたしましては水晶体の等価線量測定につきまして、先ほども申し上げたように、現行法令では3mm線量当量という形では義務を課していないというところでございます。それから線量の高い分野といたしましては医療分野、それから東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業というものが取り上げられ、それから除染作業も含めてということになりますけれども、それ以外の従事者の水晶体に係る被ばくの現状といたしましては、均等被ばくであるということと、除染作業者につきましては20mSvを超えるようなことはない、それからそれ以外の発電所の従事者につきましてもほとんど20mSvを超えるようなことがないというようなことが、部会のヒアリングにおきまして得られた情報でございます。
○永井座長 はい。ありがとうございます。それではここまでのところでご質問はいかがでしょうか。
○松本参集者 23ページの医療の従事者ですけど、先ほど職種とか手技によっても違うとご発言がありました。この医療の従事者の内訳みたいなものはあるのでしょうか。
○横山参集者 こちらには記載させていただいておりませんが、線量計のサービスメーカーの方でも出していると思います。内訳で医師、看護師、放射線技師といったような。
○松本参集者 どの職種が多いとか何か傾向があるのでしょうか。あまり変わらないのですか。
○横山参集者 医師と技師が多かったかと思います。それ以外にもいろいろな報告書もございますので。ただ、看護師さんの場合には比較的低い線量だったと思います。
○川越放射線室長補佐 事務局から補足します。参考資料の5に今ご説明があった眼の水晶体部会の意見具申の報告書をそのままつけておりまして、その中の報告書の6ページの表1をご覧いただきたいのですけれども。もう少し大きな話でございますが、一般医療と歯科医療、獣医療という形で分けた数字はこちらにございます。職種別については部会の中のヒアリングの資料。
○横山参集者 資料があったかと思いますけれどもちょっとこちらの方には今は示してございません。
○永井座長 他にいかがでしょうか。
○松本参集者 20mSv/年を超える方が0.5%いるということなのですよね。結局我々からすると、あまり厳しい数字にした時に地域医療に影響を及ぼさないかということになろうかと思うのですけれども。この0.5%というのは、努力をすれば、医療現場としてそんなに困らないという捉え方でよろしいのかどうか。何かございますか。
○横山参集者 私の方からお答えさせていただいてよろしいでしょうか。私も実際に医療現場で測定をさせていただいております。その状況を拝見させていただく限りでございますけれども、部会の報告書の中にもございますけれども、施設によって防護の仕方というのが違っているというような現状でございます。しっかりと防護対策を取られているような施設では20mSvを超えることはないというふうにおっしゃっております。ですから、医療従事者の方というのは非常にこの割合、占める人数も多いですので、たとえ0.5%といえども人数的にはかなりの人数になりますので、そちらの方、やはりどういうふうに防護をするのかといったようなところを十分に考えていただいて、それを講じていただければ線量限度を超えることはないであろうと考えております。
○欅田参集者 よろしいでしょうか。今のことに関してちょっと補足させていただきますと、ちょうど今私たちの方で研究班としても実態調査をさせていただいているところですけれども、今日は資料を準備していませんけど、これから先の中で、先ほどの質問がありました医療の中でも職種、あるいは技術別なもの、あるいは防護をいろいろ組み合わせた場合にどの程度できるのかといったことに関しては今後また提示していきたいと思っております。
○永井座長 はい。他にいかがでしょうか。あの、3mmの測定ですが、これは理論的には3mmが理想的でしょうけれども、これは実用的に現場でも3mm測定を行うべきという意見具申なのでしょうか。
○横山参集者 はい。この後ご説明させていただくことになるかと思いますけれども、審議会の方では3mm線量当量での測定を可能にすべきと申し上げているので、1cm線量当量、70μm線量当量で管理ができるというのであればそれでも構わないというところです。ただ、やはり現場によっては線量限度ぎりぎりまで被ばくする、それから先ほど申し上げたようなβ線の被ばく、それから低エネルギーのγ線の被ばくというようなことがありますと、かなり正確に測る必要があるということで3mm線量当量も定義をしておく必要があるのではないかという考え方です。
○永井座長 よろしいでしょうか。
○松本参集者 私としては、例えばこのインターベンションの名手とか、非常にたくさんやられている方が、命を救える患者さんの命も救えなくなるような状態があっては困るというのが実際的なことだと思うので、そこのところがきちんと防護策によって担保できるのであればいいのかなと思います。そこが、とても心配な面だということです。
○横山参集者 ありがとうございます。
○永井座長 そうしましたら、最後まで説明していただけますでしょうか。
○横山参集者 それでは、28ページからになるかと思います。新たな水晶体等価線量限度の取り入れということで、さきほどお話しした医療分野、廃炉作業、その他の分野ということを踏まえまして放射線審議会の部会といたしましては、水晶体の等価線量限度を5年間の平均で20mSv/年かついずれの1年においても50mSvを超えないこととすることが適当であろうと、科学的根拠も含めてということになりますけれども、この部会の報告書では結論付けました。さきほどご質問のございました実用量の測定に関しましてお話させていただきたいと思います。場所に係る測定でございますけれども、やはり場所と個人の外部被ばくに係る測定というのを分けて記載されておりますので、それぞれについて検討を行いました。場所につきましては、さきほどサーベイメータのお話をさせていただきましたけれども、3mm線量当量を測るといった測定器も今のところ十分にないといったところもございます。それから、個人の線量というのはバッジを付けていらっしゃるかと思いますので、そこで適切に測定されていれば、場に係る測定につきましては3mm線量当量につきまして法令に必ずしも取り入れなければいけないというようなことはない、必要性は薄いと、いうように判断させていただきました。ただし、事業者のほうで測られるということに関しては、それを排除するものではないということになります。それから個人の外部被ばくに係る測定、水晶体の等価線量の算定ということにつきましては、今後事業者等が簡易に測定できる環境が整う見込みということでございます。線量計メーカーの方々にもお越しいただきましたし、この部会の中にもメンバーとして入っていただきましてご意見をいただいたところでございます。次のページにございますように30ページをご覧いただきますと、これは3mm線量当量、水晶体の線量を測定するための専用の線量計ということになりますけれども、すでに上の線量計は配布を開始しているという状況で、下の線量計につきましては現在開発中でそのうち提供ができるということになっております。また、現在ご利用いただいておりますバッジにつきましても、それで3mmの線量というのはガンマ線につきましては評価できるというような環境を整備していくというようなことを聞いております。というような状況を踏まえまして現行規定を見直し個人の外部被ばく線量の測定方法として3mm線量当量を位置付けるとともに、3mm線量当量で水晶体の等価線量を算定することを可能にするべきであるというふうに結論づけております。ただしというところに記載させていただいておりますけれども、適切に評価できることを示せる場合には従前の1cm線量当量又は70μm線量当量の測定による水晶体の等価線量の算定も認めるべきであるということで、3mmで測ることもあわせて定義付けていただければというような書きぶりになっております。続きまして31ページのほうになります。こちらのほうは部会の報告書に詳細は記載しておりませんが、安全研究等で進められているもの、それから現行でわかっているものということで少し上げさせていただきました。線量計はありますけれど校正施設はどうなのだというところでございますけれども、γ線については3mm線量当量への換算係数というのがあれば、2次標準施設においても線量計の校正は可能ということを聞いております。JISのほうには換算係数というのが与えられておりますし、ICRPのPublication74というのがございまして2007年勧告導入の時にこちらのほうを使っておりますが、こちらのほうには1cmと70μm線量当量換算係数のみが記載されているような状況でございますけれども、ICRUのほうが線量測定に関することは所掌しており、ICRU57にどのように考えて数値を算出するのかという記載がございますので、そちらのほうから算出することは可能です。先ほども申し上げたようにγ線につきましてはすでにJISが発行されておりまして、そちらのほうに記載がございます。それから電子につきましては90Sr/90YのみJISのほうに記載がございます。それ以外の核種につきましては原子力発電所等では58Co、60Coといったようなものがございます。それ以外にも色々な核種がございましてβ線を出すような核種がございますけれども、いずれも700keV以下ということで3mmの線量の評価には寄与しない、そこまで透過してこないというようなものですので評価に関係ないようなものです。今一番重要になってくるのは、β線としましては90Sr/90Yというところでございますので、これが変わりましたらβ線、γ線につきましては概ね評価することができるというような状況でございます。続きまして32ページに移らせていただきます。実用量につきまして、ということですけれども先ほども取り上げましたけれども技術的指針のほうに記載されていますが、今の技術的指針との整合性につきましては、技術的指針のなかでも3mm線量当量を測定することの義務を課さないと言っているのであって排除しているものではない。今までも3mm線量当量を測定する必要があるような場、先ほど申し上げたように、次の33ページのところにございます、これは技術的指針の中では150mSvという線量限度で書かれておりますのでこの図とは少し違っております。1cm線量当量、Hp(10)というように書かれているところに3倍の量がかかっておりますので、もう少し分母が低くなるのですけれども、そういうようなものの図をご覧いただきますと、今この図の赤で囲んである部分、これは今後線量限度を引き下げた場合、ICRPの新しい線量限度を取り入れた場合について図を書かせていただいたものですが、この低エネルギー側の急に上がっていく部分と急に下がっていく部分、過大評価、過小評価が非常に大きくなる部分というのは以前の技術的指針でも同じようなことが言えます。こういう部分に関しましては、やはり3mmを測定することが望ましい場合には3mmを使うべしということになりますので、このあたりの技術的指針に関しましては今回改訂を含めておりませんけれども、まったく違うことになるというわけではございません。
続きまして34ページになりましたけれども、33ページと34ページにつきましては水晶体の新しい線量限度を導入した場合にどういうことを考えなければいけないのかということですけれども、先ほども申し上げたように線量限度が150mSv/年から5年平均で20mSv/年に、かついずれの1年においても50mSvを超えないように7.5分の1なり3分の1になるということを考えますと、さらに光子に関しては低エネルギー部分の評価に関しましては1cm線量当量や70μm線量当量で評価しますと過小評価になってしまい、それが大幅になってしまうと、従事者にとっては労働の制限をかけられることになる、ということを考えますと3mm線量当量というものを導入することが望ましいのではないかというふうに考えております。それから34ページの電子・β線のほうにつきましても90Sr/90Yの3mm線量当量と70μm線量当量の換算係数を比較したものですが、3mm線量当量に関しましては70μm線量当量の約半分になります。ですから70μm線量当量で評価すると2倍高い値になってしまいます。線量の低い場合は70μm線量当量で評価していただいても十分かと思いますが、線量の高い線量限度に近い作業をされるような方は、やはり3mm線量当量で評価するというほうが望ましいのではないかというふうに考えております。35ページに移ります。防護策及び測定の在り方ということで、最初に申し上げましたようにICRPの組織反応に関する声明では、線量限度を引き下げるとともに防護の最適化についても勧告がなされているということについて、この防護の最適化というのは特に水晶体に限らず従事者においてはなされるべき防護の基本的な原則であるということで水晶体のほうにもその最適化がなされる必要があるということになります。それから、審議会の意見具申を踏まえた防護の最適化に取り組んでいただきたいというふうに考えております。それから長期にわたり被ばくを受け続けるとしきい線量を超える可能性があることに留意すべきと書かせていただいておりますけれども、しきい線量に関しましては、まだ検討すべき部分も基礎的研究が必要な部分も多く存在するというところがございますので、こちらにあまりにもとらわれすぎてしまうことはしなくて良いというのがICRPの考え方かと思います。これにあわせるということになりますと、水晶体が一番厳しい感受性の高い臓器というような考え方になってしまいますので、遺伝的影響とあわせて柔軟に対応していくということが重要ということになるかと思います。それから、特に医療分野におかれましては手技、機器等によって被ばくの状況が大きく異なることから、やはり先ほども申し上げたように適切に防護すれば線量限度を超えることがないと申し上げましたけれども、どういう状況でどういうふうに被ばく低減を行うべきなのかというのは、ガイドラインが必要と考えておりまして関連学会等によってガイドラインが作成されることが期待されるということを書かせていただきました。最後整理させていただきますけれども、医療分野それから福島第一原子力発電所の廃炉作業というところが大きな防護測定の課題かと思います。医療分野と福島第一原子力発電所の考え方につきましては、37ページのほうにどうやって考えるべきか、ガイドラインではないですけれども考え方として整理したこういうものを参考にして、ガイドライン化という形になるかと思いますけれども、個別に個々の事象に対応していくことになるかと思いますけれども、こういう考え方の整理をしていただくといいのではないかなという考えで表を付けさせていただいております。医療分野につきましては防護衣を着用しているということから不均等の被ばくというふうに考えられますので体幹部の基本部位に加えて頭頸部での測定が必要と考えております。ただし、核医学等におきましては防護衣等を着用しておりませんのでそういう場合は均等被ばくですので、その状況に応じて不均等の被ばく管理をするのか体幹部だけで良いのかということを考えていただければ、というふうに考えております。それから福島第一原子力発電所のほうにつきましては、β線・γ線の高い線量の場所が存在しますので、そういう場所につきましてそれぞれ検討していただきたいというふうに考えております。それから、最後に緊急作業者における水晶体の線量限度というところで取りまとめさせていただいております。この線量限度でございますけれど、ICRPやIAEAの関連文書におきましては、計画被ばく状況におきまして水晶体の等価線量限度について5年間の平均で20mSvといったような記載がございますけれども、緊急時につきましては特に勧告等は2011年以降なされていないということでございます。それから海外においての調査もさせていただきました。色々な国がございまして日本と同じように300mSvという線量限度を入れている国もございますし、参考レベルということで入れている国もございます。あと、そもそも緊急時においては水晶体の等価線量限度などを入れていないという国もございました。それらの国においてもこの勧告が出た以降に新しい線量限度を規定したということはございませんでした。そういうことを考えあわせますと、直ちに対応する必要はないと考えられますけれども、今後国際動向に注視して必要に応じて検討を行うことが適当であろうというようにこの報告書の中では取りまとめてございます。以上、国際機関の基準、それからICRP、その他の国の規制という面でも、ICRPの新しい線量限度が取り入れられているということ、最適化の原則の一つとして取り込む必要があるということと、我が国で特に注視すべき従事者は、医療と福島第一原子力発電所での従事者であるということ。それから国内外で換算係数や測定器の整備も進められていること、個人線量に関しては適切に評価することも可能であるということから3mm線量当量の算定をすることを可能とするべきであるというふうに考えております。それから緊急時の線量限度につきましては直ちに対応する必要はないということを考えており、このようなことが報告書の中に取りまとめられております。最後に付けております資料は原子力規制庁のホームページにございます概要ということで、今お話させていただいた内容が1枚ものに取りまとめられておりますので付けさせていただきました。以上になります。
○永井座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○細野参集者 近畿大学の細野でございます。大変詳細な横山先生からのご説明ありがとうございます。33ページの光子に対する換算係数の比に関して、若干ミスリーディングな点があるのではないかと思いました。横軸に光子エネルギーをとって赤い枠のところで比較的低いエネルギーの換算係数の比を書いていただいておりますけれども、例えば医療現場、特にX線透視化手技に係る術者の水晶体の被ばくということを考える際に、透視台から出る直接線、例えば100keVとしまして、そこから患者さんに当たった散乱線を考えますと、この散乱線の大部分は30keV以上でございまして、それほど換算係数が例えば10倍過大・過小ということはないのでございます。何を言いたいのかといいますと、現行法令の規制の在り方も妥当であるということも押さえておきたいと思いコメントさせていただいております。ですから医療の現場でも換算係数の比が1であることと、事務局からご説明いただきましたように現行法令で1cm線量当量又は70μm線量当量の適切なほうを使うということをもって、現行では妥当であるということを思っております。横山先生のご趣旨もそのようなことであったかと思います。ここで問題となりますのは、今後水晶体を考えていく際に33ページのグラフから考えると過大に評価してしまうことが確かにあり得るわけで、現行法令ですと70μm線量当量を使うことになるわけで過大に評価してしまうことが生じまして、例えばIVR術者の方が水晶体線量を過大に評価されたばかりに従事されなくなるといった事態が起こり得るということを想定して、今回の議論をされたと思っております。それから実際に医療現場で30keV以下のγ線というのは125Iの前立腺がんのシード治療、あれは30keVの特性X線でございます、その際はこのようなエネルギーが低い領域の換算係数が生きてくるのかなと思います。まとめて言いますと、個別に被ばく状況にふさわしい適切な管理を考えていくという方向性をお示しいただいたのであると考えております。
○永井座長 ようするに、どういうエネルギーの放射線を使うかということが一番大事だということですね。
○横山参集者 はい。
○永井座長 よろしいでしょうか。だいぶ難しい話を勉強させていただいたと思います。我々もよく復習して理解したいと思います。それでは、時間が迫っておりますので、本検討会における検討事項について事務局からよろしくお願いします。
○川越放射線室長補佐 それでは資料4をご覧ください。冒頭、私のほうから現行の規定についてご紹介し、資料3について横山委員からご説明いただいた放射線審議会からの意見具申、これを比較しまして電離則の現行規定と放射線審議会の意見具申で提案されている内容とが異なる部分につきまして、主な検討事項(案)に記載しております。まず、眼の水晶体の等価線量限度につきましては違いがあります。また、測定・算定についても同様に意見具申の内容と若干異なる部分がございますので、この2つについてはこの検討会において電離則の改正についてご検討いただくことになるのではと考えております。また、次のページをご覧いただくと、その他の検討事項ということで、現行規定と意見具申の内容をまとめておりますが、現時点で変更する必要性が薄い、新たに規制に取り入れなければならない状況にはないと考えられる、しきい線量0.5Gyについてもそういったことに留意すべきであるという表現になっておりますので、こちらにつきましては検討会におきまして取り扱いを検討いただくことになるのではと考えております。これ以外に論点があるかどうかということでご議論をお願いいたします。
○永井座長 いかがでしょうか。横山委員いかがでしょうか。
○横山参集者 この3つということでございますけれど、1つはしきい線量の話ですけれども、さきほど申し上げたとおり、しきい線量として必ずこの0.5Gyが正しいのかというところで国際的に色々な知見がこれから集まってくる、ただ、今の線量限度よりも引き下げる必要があるというところがポイントになるかと思いますので、こちらのほうをギシギシとやるとなかなか難しいところがあるかなというふうに感じております。
○永井座長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。松本委員いかがでしょうか、さきほどの患者さんを前にした医療従事者をどのように考えるかという点について。
○松本参集者 繰り返しになりますが、私が心配しているのは、非常に多くの被ばくをされている方がいて、その方が防護をちゃんとしていないから多くの被ばくをされているのか、防護をちゃんとしていても数が多い、ある地域でインターベンションをやる方が非常に少ない地域、一人とか二人とかしかいらっしゃらない地域があるので、そういったところで防護をちゃんとしていても回数が多いためにこういったことになるのであれば、そういった方がどの程度いらっしゃるのかということと、その方々に対する配慮がどうなのかといったことを心配しております、そういった数値を何かつかんでいらっしゃるのであればどうなのかなと思います。
○横山参集者 少しだけその事で補足させていただきたいと思います。実際に部会の中で来ていただいた放射線技師会、技術学会の報告の中でも、かなりの数をこなしている病院で、かつ被ばく対策を整えた良好事例というのがございます。そういう所の事例を参照していただければ、その施設の回避係数が少ないから線量限度を超えないとか超えるという問題を解決できるのかなと、ちょっとまとまりが悪くて申し訳ございません。
○富田参集者 実際の医療現場では横山先生もおっしゃったように、僕も回避できるというふうに思っています。我々が放射線を使ったX線診断に関しては、X線を使っております、そのエネルギーというのは透視高、厚みによって自動的にエネルギーも変わってきたりするのですけれども、さきほどおっしゃられた散乱線というのが一番の問題になってくると思っております。散乱線はX線CT120kVピークで散乱線におきますと我々の施設では先ほどコメントいただいたように20keV中盤後半から30keVぐらいが実測の実効エネルギーでした。さらに透視におきましても直接線に関しましては、直接線が眼の水晶体に入るということは、基本的にはシーアームを使っておられるのでまずあり得ないと思います。ですからそれほどエネルギーの高くない散乱線に対する防護をしっかりすれば、例えば眼鏡をかけるといった行為をひとつだけとれば散乱線に対してはかなり削減できる、実際の測定データも出ておりますのでそこをしっかりと現場のほうで周知あるいは教育といったことを技師会、学会等々では考えており、現場でも周知すれば大丈夫ではないかなと、実際の現場で働く我々診療放射線技士としてはそう考えます。
○永井座長 今日は対応策を考えるときりが無いので、どういうことを検討すべきか、という課題をあげていただきたい。例えば教育の課題なんかあるはずなのですよ、放射線の出し方をどうやって教育しているのかなど、そういうこともきっちと調べるべきではないかと思うのですが。いかがでしょうか、まだ時間ございますので検討課題を思いつかれましたら、ぜひメール等で事務局にお寄せいただければと思います。
○横山参集者 一つだけよろしいでしょうか、今の教育のことなのですが審議会の中でも教育というお話が出たのですが、非常に長い目で見ていかなくてはならないということで、今回の電離則の改訂というところに直接つながるかどうかということはよく考えて、この検討会の中で審議をすべきと考えております。
○細野参集者 検討事項についてですが、今回改正していただく眼の水晶体についてなんですけど、当然従前から実効線量ですとか皮膚の等価線量とかもございますのでそこを含めて全体像をどう扱うかということも大事な検討課題ではないかと思います。
○永井座長 よろしいでしょうか、時間がだいぶ押して参りましたので、また思いつかれましたら事務局へ教えていただければと思います。それでは、次回の予定等について事務局からご説明お願い致します。
○川越放射線室長補佐 本検討会のスケジュール案というのがさきほどの資料4の最後のページにございます。本日以降、4回程度で平成31年半ばまでの取りまとめを目指して進めていきたいと考えております。また、提示した検討事項など皆様からお寄せいただいたご意見等も踏まえて、まずは眼の水晶体の等価線量の見直しについて次回議論をいただきたいと考えております。
○永井座長 よろしいでしょうか。これで第1回検討会を終了致します、どうもありがとうございました。
○川越放射線室長補佐 すいません補足させていただきます。第2回の検討会の予定でございますが、事務局から調整させていただきたいと考えております。また、本日の議事録につきましても各委員の方々にご確認いただいた上で公開をさせていただきたいと思いますのでご承知おき願います。