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動物由来感染症を知っていますか?

 

 

 

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動物由来感染症とは?

この言葉を目にするのは初めての方もいらっしゃると思いますが、漢字からその意味を想像いただけるものと思います。おわかりのとおり「動物由来感染症」とは、動物から人間へうつる感染症をあらわす言葉です。
「人獣共通感染症」といった言葉もありますが、厚生労働省は人の健康問題という観点に立って、この「動物由来感染症」という言葉を使っています。
人への感染症については医学が対応し、動物の感染症については獣医学が対応していますが、動物から人へ伝播する動物由来感染症については、医学と獣医学が協力して対応することが大変重要です。

 

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動物由来感染症の伝播

動物由来感染症はどうやってうつるの?

次に動物由来感染症の拡がり方を理解してみましょう。感染症がうつることを「伝播」いいます。動物由来感染症における伝播 とは、病原体が動物から人間にうつるまでのすべての途中経過をあらわします。

病原体の伝播は 感染源である動物から直接人間にうつる直接伝播 と、感染源である動物と人間との間に何らかの媒介物が存在する間接伝播 の、大きく2つに分けることができます。さらに間接 伝播 は感染動物体内の病原体を節足動物等(ベクター)が運んで人間にうつすもの、動物の体から出た病原体が周囲の環境(水や土等)を介して人間にうつるもの、および畜産物等の食品が病原体で汚染されている場合に分けて考えることができます。

直接伝播

咬み傷や引っ掻き傷からの病原体の侵入が典型的なものです。
口の周りや傷口をなめられてうつる場合もあります。動物の咳やくしゃみを直接受けたりすることで感染する病気もあります。動物の体についている病原体も直接伝播の原因となります。特に子どもでは動物に触って糞などで汚染した手を口に持って行くことで感染するルートもあると考えられています。

 

間接伝播-ベクター媒介

ダニ、蚊などが感染動物から人間へと吸血などによって病原体を伝播することがあります。これらの外部寄生動物をベクターと呼びます。

 

間接伝播-環境媒介

病原体で汚染された水や土壌と接触したり飲んだりしてうつる動物由来感染症は多数知られています。また排泄された病原体が風で舞い上がって空気を吸い込むことで感染することもあります。この感染ルートの特徴は、環境が病原体で汚染されていることには通常気づかないことです。

 

間接伝播-動物性食品媒介

家畜や魚介類が病原体を持っている場合、熱を加えずに食べたりすることで動物由来感染症が伝播することがあります。

 

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動物由来感染症の保有動物

動物の各カテゴリーと動物由来感染症との関連

動物由来感染症の病原体の多くは本来は動物が持っているものです。このため動物を生活環境により分類した場合、それぞれの分類群と動物由来感染症との関連性を見いだすことができます。

ペット(伴侶動物)

人間とペットは非常に密着した距離で生活しているため、咬まれたり引っ掻かれたり、また気づかずに排泄物(糞や尿)に触れた手を口にもっていったりしてうつることがあります。
また、生活や価値観が多様化してきたのに伴い従来のイヌやネコとは異なる動物、いわゆるエキゾチックアニマルをペットとして飼育する人が増えています。しかしエキゾチックアニマルが、これまで知られていない未知の感染症も含めてどのような感染症をもっているのかあまり知られていません。

 

野生動物

野生動物は本来は人間とは異なる生活圏内で生きているため直接人間に感染症をうつす機会は少ないと思われがちです。しかし、タヌキ、イノシシ、サル、キジ、コウモリ、鳥類など、人間と近い距離で生きている野生動物もたくさんいます。また、レクリエーション等で野外活動をする場合に野生動物の世界に足を踏み入れる機会はよくあります。野生動物はどのような病原体を持っているか不明なことが多く、人にとって重篤な感染症の病原体を持っている可能性があります。

 

家畜・家きん等

人間は牛や豚などの様々な種類の家畜を食用目的などで畜産製品として利用していますが、肉、魚などが動物由来感染症の原因となる可能性があります。
衛生対策の徹底で予防可能な感染症が多いです。

 

展示動物

動物園や水族館などの施設で飼育されている動物のグループです。
イヌやネコなど身近な動物から世界の珍獣まで様々な種類の動物が飼育されていますが、施設では比較的健康管理に注意していることと、人間との直接接触が限られていることなどから動物由来感染症の感染源となることは少ないと思われます。
人と動物が触れ合える施設では、不特定多数の人が接触することから動物由来感染症に配慮した対策が重要です。

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動物由来感染症の病原体

 

動物由来感染症の原因となる病原体には、大きいものでは数センチ(時には数メートル)もある寄生虫から電子顕微鏡を用いなければ見ることのできないウイルスまで、様々な病原体があります。また最近では、従来の微生物の概念とは異なるプリオンという異常タンパク質までもが動物由来感染症の原因となることが分かっています。

 

 

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日本と世界の動物由来感染症

世界では、たくさんの新しい感染症が見つかっています

 

世界では従来知られていなかったたくさんの新しい感染症が今も次々と見つかっています。そしてその多くが動物由来感染症であることもわかってきました。それらの中には感染力が強く重症化する傾向のあるもの、特異的な治療法がないもの、ワクチンが実用化されていないものもあります(重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ出血熱、マールブルグ病、ハンタウイルス肺症候群等)

 

動物由来感染症は、世界保健機関(WHO)で把握されているだけでも200種類以上あります。また、近年問題になっている生物テロ兵器として、炭疽菌、ペスト菌、野兎病菌、ウイルス性出血熱のウイルス等の病原体があげられていますが、これらはいずれも動物由来感染症の病原体です。

 

世界中で数多くある動物由来感染症のすべてが日本に存在するわけではありません。日本には寄生虫による疾病を入れても数十種類程度と思われます。このように、日本では動物由来感染症は比較的少ないのですが、世界では多くの動物由来感染症が発生しています。従って、海外でむやみに野生動物や飼い主不詳の動物に触れることは止めましょう。

 

 

 

 

 

日本に動物由来感染症が比較的少ない理由

地理的要因(温帯で島国)

日本は全体として温帯に位置しているため、特に熱帯・亜熱帯地域に多い動物由来感染症がほとんどありません。また、島国であるため周囲の国々からの感染源となる動物の侵入が限られています。これらの地理的要因のため野生動物由来の感染症やマダニ・蚊等の節足動物(ベクター)が媒介する動物由来感染症が比較的少ないと思われます。

家畜衛生対策等の徹底

 

日本では獣医学分野が中心となって家畜衛生対策、狂犬病対策を徹底して行ってきました。その結果、家畜のブルセラ病や牛型結核のように、家畜から人に感染する病気でほとんど見られなくなったものや、狂犬病のように国内から一掃された動物由来感染症があります。

 

衛生観念の強い国民性

 

日本人は、日常的な衛生観念の強い国民であるといわれており、手洗いの励行やネズミ・ハエ等の対策を積極的に行ってきたこと等も関係があると思われます。

 

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これからの課題は?

動物由来感染症が問題となってきた背景には人間社会の変化と人間の行動の多様化があげられています。

例えば、交通手段のめざましい発展による膨大な人と物の移動、人口の都市集中化、絶え間ない土地開発と自然環境の変化、先進国では抵抗力の弱い高齢者等の感染を受けやすい人々の増加の影響や、野生動物のペット化等があげられています。

そのような中で今まで未知であった感染症が明らかになったり(新興感染症)、忘れられていた感染症がその勢いを取り戻しています(再興感染症)。人間は多くの生物と共存している事実を忘れないで、幅広い視野に立って感染症の対策を立てていく必要があります。

 

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注意することは?予防対策は?

動物由来感染症から身を守るために予防に関する正しい知識を持ちましょう

犬の予防注射と登録等

 

飼い主には狂犬病予防法で飼い犬の登録と飼い犬への狂犬病予防注射、鑑札と注射済票の装着が義務付けられています。ご相談は最寄りの市町村等の窓口へ。

 

 

過剰なふれあいは控えましょう

 

細菌やウイルス等が動物の口の中やつめにいる場合があるので、口移しでエサを与えたり、スプーンや箸 ( ) の共用は止めましょう。動物を布団に入れて寝ることも、濃厚に接触することになるので要注意です。

 

 

動物にさわったら、必ず手洗い等をしましょう

動物は、自身には病気を起こさなくても、ヒトに病気を起こす病原体を持っていたり、動物の毛にカビの菌糸や寄生虫の卵等がついていることがあります。また、知らないうちに動物の唾液や粘液に触れたり、傷口等にさわってしまうこともあるので、動物にさわったら必ず手洗い等をしましょう。

 

動物の身の回りは清潔にしましょう

 

飼っている動物はブラッシング、つめ切り等、こまめに手入れをするとともに寝床も清潔にしておきましょう。小屋や鳥かご等はよく掃除をして清潔に保ちましょう。タオルや敷物、水槽等は細菌が増殖しやすいので、こまめな洗浄が必要です。

 

 

糞尿は速やかに処理しましょう

 

糞尿が乾燥すると、その中の病原体が空気中を漂い、吸い込みやすくなります。糞尿に直接ふれたり病原体を吸い込んだりしないよう気をつけ、早く処理しましょう。

 

 

室内で鳥を飼育する時は換気を心がけましょう

 

羽毛や乾燥した排せつ物、塵埃等が室内に充満しやすくなります。ケージや室内のこまめな清掃のほか、定期的に換気に努めましょう。

 

 

砂場や公園で遊んだら、必ず手を洗いましょう

 

動物が排せつを行いがちな砂場や公園は注意が必要です。特に子供の砂遊び、ガーデニングで草むしりや土いじりをした後は、十分に手を洗いましょう。また、糞を見つけたら速やかに処理しましょう。

 

 

野生動物の家庭での飼育や野外での接触は避けましょう

 

野生動物はどのような病原体を保有しているか分かりません。野生動物にはむやみに触らないようにしましょう。また、野生動物保護の観点からも、野生動物の飼育は避けましょう。なお、野生動物の肉や内臓(ジビエ)を食べる場合は、生食をせず、中心部までしっかり加熱しましょう。

 

 

体に不調を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう

 

動物由来感染症に感染しても、かぜやインフルエンザ、ありふれた皮膚病等に似た症状がでる場合が多く、病気の発見が遅れがちです。特に小さな子供や高齢者は一旦発病すると重症化しやすいので要注意です。医療機関を受診する際は、ペットの飼育状況やペットの健康状態、また動物との接触状況についても医師に伝えましょう。

 

 

ペットの健康状態に注意しましょう

 

 

動物由来感染症の病原体に感染しても動物は軽い症状で終わったり、無症状のことがあるため、知らないうちに飼い主が感染してしまう場合があります。また、ペットに寄生するノミやマダニが病原体を媒介することがあるので、定期的な駆除とペットに定期検診を受けさせる等、日常の健康管理に注意し、病気を早めに見つけましょう。またペットが病気と診断された場合、人にうつる可能性があるか否かを獣医師に確認しましょう。

 

 

ペットのかかりつけ動物病院を持ち、相談できる関係づくりが大切です。飼い方、病気の予防や予防注射等の相談ができると安心です。まず自分の身近な動物から感染のおそれのある感染症について、知識を持つことが大切です。

 

 

 

 

 

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<コラム>

実際にあったこんな話!?

ペット用プレーリードッグが大量死(ペスト)

1998年4月下旬から5月上旬にかけて、テキサス州で約500頭のプレーリードッグが動物業者により捕獲され、そのうち356頭が同州の他地域のブローカーに送られました。到着3~4日後、若干のプレーリードッグが死亡しましたが、輸送によるストレスによるものと考えられました。ところが、到着後7日目(捕獲後12~17日後)には、相当数のプレーリードッグが死亡し、その状況は3~4日続き、抗菌剤が投与されようやく75頭が生き残りました。
CDCペスト研究部が死体を検査したところ、ペストであると確定診断され、ただちに残りのプレーリードッグ全てを安楽死させ焼却しました。

もし、ペスト菌に感染したプレーリードッグが発症して死ぬまでに、世界各国に輸出されていたとしたら、無数の人々とがペスト菌に暴露されるところでした。この事件は、安易に野生動物をペットの目的などで生息地と異なる場所に持ち込み、人間と近く接触する環境に置くことの危険性を示唆するものです。
なお、我が国では、平成15年3月より、外国からのプレーリードッグの輸入は、感染症法に基づき、禁止されています。

人の天然痘は根絶されても・・・(エムポックス)

天然痘という病気の名前をご存じの方も多いと思いますが、有史以来人類を悩ませてきたこの天然痘は、1980年に地球上から根絶されました。
ここで取り上げるエムポックスは、この根絶された天然痘によく似ているサルの病気で、人も感染します。

2003年5月、全米各地で天然痘に似た症状の患者が報告され、米国CDCの調査の結果、患者の病気は天然痘と同じオルソポックスウイルス属のエムポックスであることが判明しました。そして人にエムポックスウイルスを媒介したのは、ペットのプレーリードッグだったことがわかりました。米国CDCはプレーリードッグを始めとしたペットの追跡調査を行い、米国原産のプレーリードッグの感染源となったのは、事件の一月前の4月にアフリカから輸入された約800匹の野生齧歯類であることを突き止めました。アフリカからペット用に輸入されたこれらの野生齧歯類が、テキサス州のペット動物流通施設でプレーリードッグにエムポックスを感染させ、そのプレーリードッグの購入者もまたエムポックスウイルスに感染してしまったのです。
この事件によって、外国からペットとして輸入される野生齧歯類が病原体を持ち込む危険性と、持ち込まれた病原体が他のペット動物によって拡散される危険性が、改めて注意喚起されることとなりました。米国は、この事件を踏まえ、アフリカからの野生齧歯類の輸入を禁じるとともに、感染の疑いのあるアフリカ産齧歯類、プレーリードッグを殺処分するなど厳重な対策を行いました。

一方、我が国では平成15年3月よりプレーリードッグは全面輸入禁止とされており、またこの年はアフリカからの野生齧歯類の輸入実績がないことから、米国での事件が日本に波及することはないと思われていました。しかし、その後7月になってWHOより、米国で事件を起こしたアフリカ産齧歯類の一部が日本に再輸出されている旨の通報がありました。そこで、厚生労働省では自治体の協力を得て、米国と同様の緊急追跡調査を行い、調査の結果事なきを得ましたが、この事件によって、ペット動物の国際、国内流通経路の複雑さが浮き彫りとなり、輸入ペットについては個体の来歴を把握する必要性が認識されました。
なおこの事件を踏まえ、我が国への野生の齧歯類の輸入がないよう、措置が講じられています。また、EUもこの事件を踏まえ、アフリカ産齧歯類の輸入を禁止し、また米国産プレーリードッグの輸入も禁止しました。

コウモリにご用心(狂犬病)

 

米国に語学研修の生徒を引率して渡航した日本の高校の先生に起きたお話しです。
現地の宿泊先の大学学生寮に戻った先生が、洗面所の流しで手を洗う際、うずくまっていた小動物に右手拇指を咬まれていましました。その小動物とは弱ったコウモリで、指から出血はあったものの傷はたいしたこともなく、先生は医療機関に行くつもりはありませんでした。しかし、大学関係者に勧められて救急病院を受診しました。
先生は病院で狂犬病の発症を防ぐ予防ワクチン、免疫グロブリンの注射等を行いました。
問題のコウモリは、検査の結果、狂犬病であることが判明しましたが、適切な治療を受けた先生は、狂犬病を発症することはありませんでした。
なお、平成15年11月から我が国では外国からコウモリの輸入は感染症法で禁じられています。

米国では野生動物を中心に狂犬病が発生しています。
米国だけではなく、世界の多くの国でいまだ狂犬病の発生があります。
狂犬病は発症するとほぼ100%死亡します。
感染しないようにするためには、むやみに動物に近づかないことが重要です。動物に近寄ったり、医療機関のないような地域に行く場合については、事前に狂犬病の予防接種を受けることも検討してください。また、万が一渡航先で動物に咬まれた場合は、現地医療機関を受診し、傷の手当てと狂犬病ワクチンの接種を受 けて下さい。

 

冒険レースに参加して感染(レプトスピラ症)

 

日本人の男性が、ボルネオで開催された4人一組で約10日間かけて冒険レース(ジャングル、渓谷、洞窟探検)に参加しました。
レースを終えて帰国してから3日目、男性は悪寒とともに高い発熱(39度)を呈し、入院しました。
男性が入院した病院では病気の原因を調べるとともに、これらの情報を入手し、国立感染症研究所でレプトスピラの検査をしましたが、検査は陰性でした。しかし男性の高熱が続いたため、レプトスピラ症の治療薬であるミノサイクリンの投薬を始めたところ、高熱が下がり退院することができました。その後、国立感染症研究所で続行していたレプトスピラ症の検査結果が陽性となり、男性がレプトスピラ症に罹っていたことが確認されたのでした。

熱帯の河川での遊泳は、感染の危険性が高いことを知って行動することが大切です。
また病院を受診する際には、渡航歴等を詳しく述べましょう。
日本国内においても、感染ネズミの尿で汚染された池や川で水遊びをして感染した例が報告されています。大雨や洪水後、汚染水がうっ滞したり、ネズミと接近する機会が増えるなどにより、感染の危険性が高くなるため注意が必要です。
 

 

ペットの爬虫類が赤ちゃんの病気の原因(サルモネラ症)

英国でのお話しです。
生後3週間の赤ちゃんか発熱、嘔吐、痙攣の症状を示し亡くなりました。その赤ちゃんと赤ちゃんのお母さんから、サルモネラが分離されました。
この家族ではウォータードラゴン(トカゲの一種)とチンチラをペットとして飼っていましたが、ウォータードラゴンの飲み水と木製の飼育ケースからサルモネラが分離されました。赤ちゃんはウォータードラゴンの世話をした家族の手などからサルモネラに感染したものと考えられました。
この事例に限らず、ペットのカメからサルモネラに感染したという事例はたくさん報告されています。
日本でも、子どもがペットのミドリガメから感染し、重症となった事例があります。

小さな子どもやお年寄り、免疫機能の低下した人がいる家庭では爬虫類の飼育は控えましょう。
爬虫類などペットを触った後は手洗いを徹底しましょう。
飼育ケースなどの清掃はこまめに行いましょう。水を交換する時には排水により周囲が汚染されないように注意しましょう。

ハリネズミに触って病気になった男性(サルモネラ症)

ノルウェーに住む男性が仕事帰りの帰り道、自転車で走っていると、車にひかれたハリネズミが道路でうずくまっているのを見つけました。彼は、また車にひかれてしまうのはかわいそうだと思い、道路脇に移動してあげることにしました。あいにく周囲に道具になるようなものがなく、素手でつかみあげ移動させました。
次の日、彼は職場で腹痛におそわれ、ひどい下痢と嘔吐をしてしまいました。彼は病院を受診し、検査の結果、ネズミチフス菌が分離され、サルモネラ症と診断されました。

野生動物にむやみに触れないようにしましょう。
動物に触れた後は手洗いを徹底しましょう。

飼っていたインコの病気に罹って発熱(オウム病)

ある男性が、インコの雛を2羽買ってきて家の中で飼育していましたが、一月後にそのうちの1羽が死んでしまいました。その死を悲しんで3日後、今度は男性自らが体のだるさを感じ、微熱も出てきました。さらに数日するといよいよ息が苦しくなり、熱も40度を超えるという大変なことになってしまいました。
病院に行ったところ肺炎との診断で、即入院。病院で原因を調べて数日後男性の問診から「インコの飼育歴があること」、「雛が数日前に死んでいること」がわかったため、呼吸器科医がオウム病を疑って治療を開始したところ、男性は回復し、2週間後に退院できました。

鳥を飼う時は、羽毛や糞を除去し清潔にしましょう。
鳥への接し方は、口移しで餌をあげたりせず、節度ある接し方が大切です。
鳥を飼っていて、重い風邪の症状がある場合は、オウム病も疑いましょう。

動物展示施設で小鳥の病気に集団感染(オウム病)

2002年1月、動物展示施設で、飼育されていた鳥が原因となり、従業員と来園者の10名以上がオウム病に感染する大きな事件が発生しました。
事件は、施設従業員の4名が次々と突然の高熱、全身の倦怠感等に見舞われ、オウム病と診断されたことに始まり、そのうちに、一般の来園者にも感染者が出てしまいました。来園者が触れ合えるように展示されていたオウムなどの小鳥が感染源とされ、施設全体が病原体で汚染された可能性があることから、施設の全面閉鎖が決定されたのです。
この施設では開園して半年ながらもすでに30万人が来園する人気施設であったことから、展示されていた小鳥から来園者がオウム病に感染したことが公表されると、来園した多数の人たちの不安を招き、施設と関係の自治体に問合せが殺到しました。
今回の集団感染の事件では、鳥の展示施設の衛生管理体制が、動物由来感染症を防ぐには不十分であったとの指摘があり、その改善に取り組んでいくことが当該施設の今後の課題となりました。

動物展示施設は、動物由来感染症対策を十分に検討し、来園者をはじめ従業員の安全対策に万全に期することが大切です。
動物と接する人は、動物は人間とは違った病原体を持っていることを理解しておくことが大切です。

寄生虫の病気で外科手術(エキノコックス症)

北海道のとある都市近郊に住む女性は、肋骨の下に膨満感と痛みを訴え、病院を受診しました。実は4年ぐらい前から肋骨の下に膨満感を覚えていたのですが放っておいたそうで、だんだん症状が強くなり痛みも出てきたため受診したということでした。
検査の結果、女性はエキノコックス症と診断され、医者から、肝臓の5分の3を切除しなければならないと言われ、「なんとか手術せずに治る方法はないでしょうか」と尋ねたところ、「駆虫薬を投与する方法もあるが、寄生虫の発育を抑える程度であまり効果はなく、完治するには外科的に肝臓を切除するしかない」ということでした。
放っておけば重度の肝機能不全となり、黄疸・腹水などの症状を呈し、命を落としてしまうことになってしまうということでした。女性は手術を受ける決意をし、術後の経過は順調で退院することができました。

エキノコックス症の予防には、エキノコックスの卵を口から摂取しないようにすることが大切です。
・外出後はよく手を洗いましょう
・山菜などはよく洗い、十分加熱してから食べましょう
・沢や川などの生水は飲まないようにし、飲む場合は煮沸してから飲むようにしましょう
・キツネを人家周辺に近づけないよう、残飯や生ゴミを放置しないようにしましょう
・野生のキツネ等にエサを与えないようにしましょう
・イヌも感染した野ネズミを食べることにより寄生するので、放し飼いをせず、きちんと管理しましょう

ネコを飼ったらインフルエンザ様の病気に(Q熱)

ある小学校5年生の男の子のお話です。
2か月ほど前にインフルエンザ様の症状が出て、咳は減ってきたのですが微熱が続き全身倦怠感もありました。そのため学校も休みがちになり、いくつかの病院を受診しましたが、お医者さんは「よくあることでたいしたことはない」と言うことだけでした。
ところがある病院で、血清中の抗体測定などの検査によりQ熱と診断されたのです。抗生剤を投与したところ症状は改善し、以前のように元気に登校できるようになりました。また、インフルエンザ様の症状が出る直前に飼い始めた子猫と家族を検査したところ、子猫、祖母、母親も抗体陽性で、症状がない不顕性感染であることが判明しました。子猫も抗生剤を投与して治療されました。

ペットに定期検査を受けさせる等、日常の健康管理に注意し、病気を早めに見つけましょう。
ペットのかかりつけの病院をもち、飼い方、病気の予防や予防注射等の動物病院に相談しましょう。

ペットの口の中に普通にいる菌で飼い主が病気に(パスツレラ症)

いつも身近にいるイヌやネコなどの口の中に普通に見られる細菌で、飼い主が病気になる場合があります。
イヌやネコに咬まれたり、引っ掻かれたりした場合に、パスツレラと呼ばれている細菌が人に感染することがあります。通常は限局性の創傷感染で、咬まれたりした場所が赤く腫れたりするのみで一般には軽症です。傷が深かった場合は骨髄炎になったり、発症した後風邪のような症状を起こすことがありますが、普通予後は良好です。

イヌやネコから咬まれたり引っ掻かれたりしないように、動物の習性を知って飼育を行うことが大切です。
かわいい動物ですが、人間とは違った細菌を持っていることを理解し、動物とは節度ある接し方が大切です。

サルに咬まれて(Bウイルス病)

この病気の名前は、最初の患者である米国のB博士の名前にちなんだものです。博士は1932年にアカゲザルに咬まれてこのウイルス性の病気に罹患し、脳炎症状を呈して死亡しました。
原因ウイルスは、ニホンザルを含むアジア産のマカカ属サルが自然宿主として保有しているヘルペスウイルスで、感染したサルは健康のまま一生涯ウイルスを保有し、抵抗力が落ちた折々に唾液中などにウイルスを排出します。

熱帯雨林に潜む致死的な感染症(マールブルグ病)

 

ウイルス性出血熱の一つであるこの病気の発端となった事件は、1967年8月、ドイツのマールブルグ市にあるベーリング研究所で、原因不明の病気として発生しました。突然の高熱、頭痛、結膜炎、筋肉痛、喉の痛みに続き、皮膚に発疹が現れた後全身に出血斑が現れ、皮膚がはがれ落ちるという症状でした。続いてフランクフルトにある研究所でも患者が出て、そのうち何人かは死亡しました。死亡した患者の多くに激しい出血が見られました。また、ユーゴスラビアのベオグラードにある研究所でも患者が出ました。
これらの発生に共通する感染源は、実験動物としてウガンダから輸入されたアフリカミドリザルで、研究職員が感染して知られるようになったため、病名もマールブルグ病と名付けられました。
このアフリカミドリザルはウガンダのエンテベ空港から英国ロンドンに空輸され、ここで貨物の積み替えを行い、そこからマールブルグ、フランクフルト、ベオグラードに輸送されていました。ベオグラードやマールブルグに運ばれたアフリカミドリザルは、多くが死亡していたため、アフリカミドリザルは自然界におけるマールブルグウイルスの自然宿主ではなく、輸送中に自然界から感染を受けた被害者であると考えられました。
アフリカミドリザルは、ロンドン空港の動物保護室に長いもので36時間入れられており、約50種の動物と接触する機会があったので、ここで感染したものと考えられました。
その後アフリカの野生動物で数回行われた調査でも自然宿主は見つかっていません。

 

病院内のアウトブレイク(クリミア・コンゴ出血熱)

この病気の名前は、中央ロシアのクリミア地方で旧ソ連軍兵に流行した病気と、アフリカのコンゴで流行した病気が同じものであったことから付けられたものです。
1984年、アフリカに住む26歳のクリミア・コンゴ出血熱の男性患者が入院した病院で、医師や看護師など8人が感染し、最初の男性を含め2人の死者が出ました。この26歳の男性は、日常、家畜の世話をしており、発病当初はのどの痛み、筋肉痛、発熱の症状を示し、4日後に吐血し、5日後には下血しました。6日目、家の近くの病院からケープタウンにある病院に移送され、出血熱が疑われたので集中治療室に入れられました。そこで輸血などの治療を受けましたが治療の甲斐なく、発病後11日目に、多臓器不全のためになくなりました。

病院に移送されてきてから最初の数時間看病にあたった看護師3人は、彼と最初に接触してから5日後に発病しました。
彼と直接接触はしていなかったものの、彼の体液に汚染された物を処理した看護師2人は、処理の5日後に発病しました。
やはり彼と接触はなかったものの、防護服を着用せずに集中治療室に立ち入った医師は、5日後に発病し、発病の8日後に亡くなりました。
8人目の患者は、上述の患者全員の治療にあたった看護師で、患者に使った針を自分に刺してしまった人でした。
発病した8人のうち、亡くなった医師を除いた7名は、患者と接触する機会が多かった人達でした。

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