ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(指定薬物部会)> 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録(2017年12月18日)




2017年12月18日 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録

○日時

平成29年12月18日(月)16:00~


○場所

厚生労働省共用第6会議室


○出席者

出席委員(8名)五十音順

 池 田 和 隆、 遠 藤 容 子、 桐 井 義 則、◎鈴 木   勉、
 関 野 祐 子、○花 尻 瑠 理、 松 本 俊 彦、 宮 田 直 樹
注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(2名)

 青 山 久 美、 成 瀬 暢 也

行政機関出席者

宮 本 真 司 (医薬・生活衛生局長)
森   和 彦 (大臣官房審議官)
磯 部 総一郎 (監視指導・麻薬対策課長)
池 上 直 樹 (監視指導室長)

○議事


○監視指導・麻薬対策課長 定刻となりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会指定薬物部会を開催いたします。本日は年末の大変お忙しい中、委員の先生方には御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本日は、青山委員、成瀬委員から欠席の御連絡を頂いております。現在のところ、当部会の委員数10名のうち7名の御出席を頂いております。また、関野委員が若干遅れてお越しになると聞いております。

 部会の開催前に、事務局より、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告します。いわゆる利益相反の関係ですが、薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」ということです。前回は少し細かく説明しましたが、いわゆる企業の関係の役員、職員、定期的な報酬を取るアドバイザー、顧問に就任された場合には、薬食審の委員を辞任していただくという規定です。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨の御報告を頂いております。委員の皆様には、毎回、毎回、会議開催の都度、書面で御提出いただいており、大変御面倒をかけておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますようよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、本部会の公開・非公開の取扱いについて、説明いたします。薬食審の総会において、会議の公開により委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断された部会については、非公開にできるとなっておりますが、本部会については著しい支障を及ぼすおそれがあるということで、非公開とされております。

 また、会議の議事録の公開に関しては、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対し、外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされております。あらかじめ御了承いただければと思います。それでは、以後の議事進行は、鈴木部会長によろしくお願いします。

○鈴木部会長 最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○事務局 本日の資料ですが、資料1~3、参考文献が1~13、最後に参考資料として1~3となります。以上です。

○鈴木部会長 資料がお手元にない場合には、お知らせ願います。よろしいですか。本日の議題は、「指定薬物の指定について」です。審議物質について、事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 今回、御審議いただきたい5物質については、国内外で流通実態が認められた物質になります。資料1には、各物質の名称、通称名、構造式を記載しております。これらの物質について、指定薬物として指定し、規制対象とする必要があるか否かについて、御審議いただきたいと思っております。資料2は、御審議いただく物質のほか、その構造が類似する指定薬物や麻薬等について、一覧表にまとめたものとなっております。資料3は、国内外の基礎研究や動物実験の結果等について、中枢神経系への影響を中心に取りまとめたものとなっております。

 では物質1~3について御説明いたします。資料2-1ですが、カンナビノイド系の審議物質1のACBL()-018に構造が類似する指定薬物や麻薬について、自発運動への影響、カンナビノイド受容体に対するデータ等をまとめております。詳しくは後ほど資料3で説明いたしますが、マウスに投与した結果、立ち上がり動作の抑制や異常姿勢など、行動及び中枢・自律神経症状の観察において生体影響も確認されております。審議物質1は、ヒトカンナビノイド受容体への活性を有しており、過去に指定した指定薬物と同種の作用を有することを確認しております。

 資料2-2は、フェネチルアミン系の審議物質2の4-EA-NBOMeと3の25B-NBOHに構造が類似する指定薬物について、症状観察、自発運動への影響、セロトニン受容体やモノアミントランスポーターに対する影響、マイクロダイアリシスのデータ等をまとめております。審議物質2は、症状観察において、攻撃性、触反応等の亢進や立ち上がり動作の抑制、筋緊張度の低下、またセロトニン受容体に対するアゴニスト活性を有し、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、過去に指定した指定薬物と同種の作用を有することを確認しております。

 審議物質3は、症状観察において、立ち上がり動作の亢進、異常歩行や異常姿勢、異常行動、また眼裂の拡大が確認されております。さらに、セロトニン受容体に対するアゴニスト活性を有しており、マイクロダイアリシス試験ではドパミンを有意に減少させており、過去に指定した指定薬物と同種の作用を有していることを確認しております。なお、審議物質4のt-BOC-Methamphetamine、審議物質5のt-BOC-MDMAについては、構造類似物質としたMethamphetamine、MDMAと合わせて、後ほど資料3で御説明いたします。今回は資料2を作成しておりませんが、御了承いただければと思います。

 ここからは資料3を用いて御説明致します。資料3-1を御覧下さい。通称名はACBL()-018となっております。こちらは指定薬物であるAPINACA N-(-chloropentyl)誘導体や、APINACA N-(-fluoropentyl)誘導体と構造が類似する化合物となっております。

まず()の行動・中枢神経症状の観察ですが、マウスにACBL()-018(15mg)を添加したマーシュマローリーフをタバコ両切り、さや紙に充填したものを燃焼、マウスを薬物にばく露させて、燃焼終了15分、30分、60分後の行動及び中枢・自律神経症状を観察しております。

 2ページを御覧下さい。ACBL()-018をばく露したマウスは、陰性対照であるマーシュマローリーフをばく露したマウスと比較して、洗顔運動、立ち上がり動作の抑制、攻撃性や耳介反射、角膜反射のやや亢進、体が少し傾くなどの異常姿勢や眼裂の縮小が確認されたと報告を受けております。表1に、ACBL()-018の吸入ばく露時の行動及び中枢・自律神経症状の観察時の評価値の抜粋を載せております。数値は、各群マウス5匹のスコア平均値となっております。その下に観察された特徴的な症状を示した写真を二つ掲載しております。写真1ですが、ばく露終了後15分のマウスとなります。動きが鈍く、ほとんど静止の状態が確認されました。写真2は、ばく露終了50分後の別のマウスですが、右後肢指の指を咬むような異常行動、掻動作が確認されております。

 3ページ()にカタレプシー試験の結果を載せております。ACBL()-018ばく露後、15分、30分、1時間、全てにおいて陰性であったとの報告を受けております。

()にヒトカンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性EC50 を測定した結果を載せております。CB 1 受容体に対するアゴニスト活性、EC 50 の値ですが、1.44×10-7mol/L、CB 2 受容体に対しては5.28×10-7mol/Lとなっております。参考として、その下に麻薬であるJWH-018のヒトカンナビノイド受容体親和性及び受容体機能評価の値を載せております。

今回、カタレプシー試験は全て陰性であったものの、行動及び中枢・自立神経症状観察においては、「生体影響あり」の観察項目が複数確認されたこと、ヒトカンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性を有していることが確認されたことより、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有すると考えております。

以上から、ACBL()-018は、中枢神経に作用する物質と考えております。

最後に()の海外での流通状況ですが、2016年にスロベニアにおいて流通が確認されております。

 次に資料3-2、4ページを御覧下さい。通称名は4-EA-NBOMeですが、指定薬物である25-NBOMeや25-NBOMeに構造が類似する化合物となっております。

まず()行動・中枢神経症状の観察ですが、マウスに4-EA-NBOMeを1.111.027.5mg/kgの腹腔内投与をして、投与後30分、60分、120分の行動・神経症状を観察しております。1.1mg/kgの低用量群では、目立った変化は認められませんでした。11.0mg/kgの中用量群ですが、自発運動の抑制が確認されたと報告を受けております。27.5mg/kgの高用量群では、11.0mg/kgの投与群で観察された症状に加えて、攻撃性、触反応、痛反応、耳介反射及び払いのけ動作の亢進、立ち上がり動作や筋緊張度の抑制が確認されたと報告を受けております。

 5ページ上段の表2に、本物質に関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値の抜粋を載せております。こちらも数値は各群マウス5匹のスコア平均値となっております。その下に観察された特徴的な症状を示した写真を二つ掲載しております。写真3は27.5mg/kg投与群の投与後5分のマウスとなります。腹ばい姿勢、静止状態が確認されました。写真4も27.5mg/kgの投与群の投与後25分、こちらは別のマウスとなりますが、腰部と後肢が麻痺様の状態で摂餌するような異常姿勢が確認されております。

 5ページ下段の()には、自発運動における運動量を測定しております。マウスに4-EA-NBOMeを11.0mg/kg腹腔内投与して、投与後3時間まで10分ごとの自発運動量を測定しております。

 6ページのFig1のグラフとあわせて御覧いただければと思いますが、4-EA-NBOMe投与群と、対照として生理食塩水群、各群マウス4匹を使用し、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数と総移動距離について、Wilcoxon testを用いて有意差検定を行ったところ、いずれも投与60分後において、対照群と比べて有意な減少を示したと報告を受けております。

 6ページから7ページにかけて、()にマイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化の報告を載せております。コントロールの生理食塩水群に対する4-EA-NBOMe26mg/kg腹腔内投与群のモノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、7ページのFig2のグラフのとおり、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、いずれも有意に増加するとの報告を受けております。

 8ページ()には4-EA-NBOMeのセロトニン受容体に対するアゴニスト活性EC 50 を測定した結果を載せております。5-TH 2A 受容体に対しては、3.30×10-7mol/L、5-TH 2C 受容体に対しては5.71×10-7mol/Lとアゴニスト活性があるということが報告されております。

( )には4-EA-NBOMeのモノアミントランスポーターに対する機能影響評価の結果を載せております。ドパミントランスポーターに対するIC 50 を算出したところ、ドパミントランスポーターに対しては6.9×10-5mol/L、セロトニントランスポーターに対しては2.5×10-5mol/Lとの報告を受けております。

 今回、モノアミントランスポーター阻害作用は弱かったものの、行動・症状観察において、攻撃性、触反応、痛反応、耳介反射の亢進や立ち上がり動作、自発運動、筋緊張度の抑制といった異常な行動や症状が確認されたこと、自発運動量について有意な減少が認められたこと、マイクロダイアリシス試験においてモノアミンの有意な増加が確認されたこと、セロトニン受容体に対してアゴニスト活性が確認されたことより、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有すると考えております。

以上から、4-EA-NBOMeは、中枢神経に作用する物質と考えております。

最後に()海外の流通状況ですが、2014年にドイツにおいて流通が確認されております。

 次に資料3-3、9ページを御覧下さい。通称名は25B-NBOHほか、二つほどあります。こちらは指定薬物である25C-NBOHに構造が類似する化合物となっております。()の行動・中枢神経症状の観察ですが、マウスに25B-NBOHを1.111.027.5mg/kgの腹腔内投与をして、投与後、30分、60分、120分の行動及び神経症状を観察しております。低用量群1.1mg/kgの投与群では、立ち上がり動作、自発運動の亢進が確認されたと報告を受けております。中用量群の11.0mg/kgでは、自発運動の抑制、異常歩行、腹ばいの異常姿勢、頭部が震えるといった異常行動、眼裂の拡大が確認されたと報告を受けております。高用量群の27.5mg/kgでは、自発運動の抑制、腹ばいの異常姿勢が確認されたと報告を受けております。また、低・中・高、全ての投与量群で攻撃性のやや亢進が、中・高用量群で洗顔運動のやや抑制が確認されております。

10ページ上段の表3に、25C-NBOHに関する行動及び中枢・自立神経症状観察における評価値の抜粋を載せております。こちらも数値は各群、マウス5匹のスコアの平均値としております。その下に観察された特徴的な症状を示した写真を2枚載せております。写真5は11.0mg/kg投与群の投与後22分のマウスとなります。ライジングのほか、腹ばい姿勢での静止状態、眼裂の拡大が確認されております。写真6は27.5mg/kg投与群の投与後21分の別のマウスです。腹ばい姿勢、静止状態が確認されております。

10ページ下段の()には、自発運動における運動量を測定しております。マウスに25B-NBOHを11.0mg/kg腹腔内投与して、投与後3時間まで10分ごとの自発運動量を測定しております。

11ページのFig3のグラフとあわせて御覧いただければと思いますが、25B-NBOH投与群、対照として生理食塩水群、各群マウス4匹を使用し、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について、Wilcoxon testを用いて有意差検定を行ったところ、いずれも対照群と比べて有意な差は見られなかったとの報告を受けております。

11ページの下段から12ページにかけて、()にマイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時的変化の報告を載せております。コントロールの生理食塩水群に対する25B-NBOH、32mg/kg腹腔内投与群のモノアミンの増加率、減少率の有意差をウェルチのt検定で求めております。12ページのFig4のグラフのとおり、ドパミンに対して有意に減少するとの報告を受けております。また、セロトニンとノルアドレナリンについては、有意差は認められませんでした。

13ページ()には、25B-NBOHのセロトニン受容体に対するアゴニスト活性のEC 50 を測定した結果を載せております。5-TH 2A 受容体に対しては、5.83×10-10 、5-TH 2C 受容体に対しては6.41×10-10 と、非常に強いアゴニスト活性があることが報告されております。

()には25B-NBOHのモノアミントランスポーターに対する機能影響評価の結果を載せております。ドパミントランスポーターとセロトニントランスポーターに対するIC 50 を算出したところ、ドパミントランスポーターに対しては1×10-4 を上回り、セロトニントランスポーターに対しては1.7×10-5mol/Lとの報告を受けております。

今回、自発運動量について有意な差が認められなかったこと、モノアミントランスポーター阻害作用が弱かったものの、行動・症状観察において立ち上がり動作の亢進、自発運動の亢進や抑制、異常歩行、異常姿勢、異常行動、眼裂の拡大といった異常な行動や症状が多数確認されたこと、マイクロダイアリシス試験においてドパミンの有意な減少が確認されたこと、セロトニン受容体に対しても非常に強いアゴニスト活性が確認されたことより、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有すると考えております。

以上から、25B-NBOHは、中枢神経に作用する物質と考えております。

 最後に()海外での流通状況ですが、2013年と2016年にフィンランドにおいて流通が確認されております。

以上の3物質について、指定薬物として差し支えないと考えますが、御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 ありがとうございます。それでは、ただいま事務局より説明のありました3物質について、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがですか。

□□ 委員 セロトニントランスポーターにする阻害濃度のデータと実際に脳内でのマイクロダイアリシスの結果の乖離が少し気になっているのですが、データを見間違えていないかどうか。例えば7ページの一番上はセロトニンは非常に大きく上昇していて、脳内のモノアミン濃度を非常に上げているのはよく分かるのですが、このときの、8ページにあるモノアミントランスポーターに対するIC50 2.5×10-5 というデータです。そこに対して、次の検討物質、構造的には同じ骨格をしているということで、同じ効果が期待されるので、モノアミントランスポーターの阻害作用に対しては、8ページ、13ページのように1.7×10-5 で、同じような数字であると思われるのですが、マイクロダイアリシスの方での脳内の上昇がないということなので、これは実際になると、生体に入ったときの代謝でどこか切れて何か変わってくる可能性があるのかとは思います。invitroinvivoの試験の乖離が少し大きいかというのが気になっているところですが、その他行動の異常がありますので、指定することに関しては何ら異存ありませんが、こういうものもあるのだということは気にしておこうと思います。

○鈴木部会長 事務局からコメントをお願いできますか。

○事務局 □□先生、コメントをありがとうございます。いろいろな指定薬物がありますので、類似物質とはいえ、invitroinvivoにおいて作用が非常に違ってくるものがあるということですが、どういったことで影響を受けるかについては、今の時点、このデータだけでは分かりかねるところはあります。

□□委員 そうですね。これで何か判定することにおいて流通があるということなので、何らかの作用があるというふうに捉えるべきだと思います。

○事務局 生体に対して精神毒性を有する蓋然性は非常に高いと考えております。

□□委員 一つのinvitroのデータだけでは分からない部分があることに対するコメントということで、非常に乖離があったので気になって大丈夫かと思って一生懸命見たということですが。

○事務局 ありがとうございます。

□□委員 実験データにこういう乖離があっても、人での流通実績とか、行動の異常があるということで、蓋然性ということだと思っています。

○鈴木部会長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、発言が出尽くしたと思いますので、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質・有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、引き続き事務局より説明をお願いします。

○事務局 それでは、引き続き資料3の説明をさせていただきます。14ページを御覧下さい。資料3-4、こちらにt-BOC-メタンフェタミンがあります。また、16ページの資料3-5にt-BOC-,-MDMAについて載せております。これらは、いずれもターシャリーブトキシカルボニル基、いわゆるt-BOCというものが関係する物質ということで、この2物質については一緒に御説明させていただきます。

 その前にt-BOCに関して18ページに参考という形で簡単ではありますが情報を載せさせていただいておりますので、御覧下さい。

-BOCですが、ターシャリーブトキシカルボニル基、そちらに括弧書きでありますが、これの頭文字で「t-BOC」という略記でよく言われているものです。医薬品の合成や製造過程において、主にアミノ基の保護基という形で用いられているものです。有機合成において、反応性の高い官能基を反応において不活性な官能基に変換しておくことを「保護」と申しまして、その官能基を「保護基」と言います。また、適当な反応を行うことによって、保護を外すことを「脱保護」と言います。今回、御審議いただくt-BOC-メタンフェタミンは、メタンフェタミンの分子内にあるアミノ基の部分、下の方にマルで囲っておりますが、アミノ基の部分にターシャリーブトキシカルボニル基が付加されたものとなります。t-BOC-,-MDMAについても同様です。

 それでは資料3-4、14ページを御覧ください。

14 ページの()には、t-BOC-メタンフェタミンの酸性条件下におけるメタンフェタミンへの変換に関する報告を載せております。15ページのFig5のグラフとあわせて御覧ください。「人工胃液」組成に近いような37℃の塩酸水溶液中でのt-BOC-メタンフェタミンの経時変化を確認したところ、15分で約10%程度、1時間で40%、4時間で約80%程度がメタンフェタミンに変換したことが確認されております。この変化ですが、先ほどお話いたしました適当な反応を行うことで、保護を外す脱保護に当たります。

15ページ中段()には、t-BOCが外れたメタンフェタミンの自体の運動活性への影響に関する報告を載せております。マウスにメタンフェタミン5、10mg/kgを、対照群には生理食塩水を2時間ごとに4回腹腔内投与し、8時間後まで30分ごとの自発運動量を測定したところ、メタンフェタミン投与群では、全ての投与群で対照群に比べ自発運動量が増加、また、メタンフェタミン10mg/kgを投与したマウスにおいては、常同行動が誘発されたとの報告を確認しております。

以上から、t-BOC-メタンフェタミンは、中枢神経に作用する物質と考えております。

 最後に(3)の流通状況ですが、2017年に日本、フィンランドにおいて流通が確認されております。

 続いて16ページを御覧下さい。資料3-5について御説明致します。

( )には、t-BOC-MDMAの酸性条件下におけるMDMAの変換に関する報告を載せております。この報告は、t-BOC-メタンフェタミンと同じ文献10によるものとなります。よって、報告内容及び17ページのグラフについては、先ほどのものと同じとなっております。t-BOC-MDMAについても、酸性条件下で「脱保護」においてMDMAに変換したことが確認されております。なお、文献10において「t-BOC-MDMA」と記載されている物質と、16ページの上の通称名で示されている「t-BOC-,-MDMA」は、同物質となります。

17ページ中段()には、MDMAの運動活性への影響に関する報告を載せております。マウスにMDMAを102030mg/kg、対照群には生理食塩水を、2時間ごとに4回腹腔内投与し、8時間後まで30分ごとの自発運動量を測定したとろ、MDMA投与群では全ての投与量で対照群に比べ自発運動量が増加、また、MDMA30mg/kg、最高用量を投与したマウスにおいては、常同行動が誘発されたとの報告を確認しております。

 以上から、t-BOC-,-MDMAは、中枢神経に作用する物質と考えております。最後に()の海外での流通状況ですが、2015年にオーストラリアで、2017年にオランダにおいて流通が確認されております。

以上、2物質について指定薬物として差し支えないと考えますが、御審議の程、どうぞよろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 ありがとうございます。事務局より説明のありました物質について、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。初めに、事務局からでよろしいですか。参考資料を御説明いただけますか。

○事務局 配布資料の後ろの方に付けております参考資料1を御覧ください。t-BOC-メタンフェタミンが4番目にありますが、こちらについては、税関の方で発見されており、液体の状態であることが確認されております。以上です。

○鈴木部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがですか。

□□委員 この物質そのものに薬理効果があった、中枢神経性があるかどうかは、調べられていないのですか。

○事務局 物質そのものについては、試験等での確認はできてはおりません。ただ、今回の試験の目的としては、仮に経口投与した場合にどのように変化するかというところを確認するために、胃内の状況を再現した中にt-BOCの2物質を投与し変化を確認しました。実際にt-BOC化されたものが酸性条件下で、経時的にではありますが、元の物質に変わることが試験で確認できたこととなります。

□□委員 これが合成のための原料というカテゴリーではなくて、生態の中でそういう活性物質に変化することをデータとして証明したから、これはいい。指定薬物というよりも、これは既に覚せい剤になっているのですから、むしろそれは、どうなのですか。覚せい剤そのものになることは、また、指定薬物という今までのカテゴリーが少し違う感じがしているのです。今まで審査してきたカテゴリーとは少し違うカテゴリーだということなのです。

○事務局 これまでの物質についても、実際に生物に投与し、その症状、行動といったものを見ているわけですが、実際にその症状や行動を生じさせたものが、物質そのものによって生じた症状かまで、試験では確認はしておりません。薬機法において人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生する恐れがある物ということが指定薬物の要件の一つとして定まっておりますので、擬似的な胃酸条件下に入れたときに、変化が起きて保健衛生上の被害が発生する恐れが明らかだということを確認するために、今回試験をしていただきました。

○鈴木部会長 覚せい剤原料ではなくて、指定薬物とする、そこの説明だと思うのですが、

○事務局 覚せい剤取締法や麻向法といった別の法律がありますので、今後この物質の規制について考えを進めていく必要があると思いますが、まずは指定薬物、こういったものの流通が実際に確認、日本でも海外でも確認がされていて、実際に覚せい剤とかに変化することが分かりましたので、迅速な対応として、まずは指定薬物に指定をさせていただきたいというところで、今回議題に挙げさせていただいているところです。

○監視指導・麻薬対策課長 途中段階だと思っていただく。これまでのものについては、いろいろなデータがそろっておりましたので、最初から最終判断でということですが、今回のものは、正直我々も非常に気にしたのは、税関で見つかり、日本にも結構入ってくるかもしれないと。そのときに規制の対象としてどうするか、これは迅速な対応が必要だと私どもは思っております。そのときに今回のように限られたデータであっても、いわゆる蓋然性、先ほど事務局が申し上げたように、指定薬物の定義で申し上げますと、精神毒性を有する蓋然性が高いと考えられる、体内ではメタンフェタミンという毒性が生じる可能性が非常に高いと見てもいいだろうということで、第1段階としては指定薬物に指定し、今後データがそろってくれば、覚せい剤にするかなどといった議論もできると思っていますので、今回はそういう位置付けで見ていただきたいと思っています。

□□委員 今回、人口胃液を用いてt-BOC体から覚せい剤若しくはMDMAへの変換を調べております。実際にこのt-BOC体をラットに経口投与して調べたわけではありませんが、この条件で分解するということは、ヒトの胃液の中で分解する恐れもあると考えてはおります。また、ここのデータには示しておりませんが、実際に覚せい剤のあぶりのような状態でt-BOC体をあぶると、気化した成分から覚せい剤若しくはMDMAが一部検出されておりますので、あぶりのような形で乱用した場合に、覚せい剤、MDMAの作用が出る可能性も否定できないと考えております。したがって、通常乱用する形で摂取した場合に、何らかの精神毒性が出る可能性は否定できないと考えております。

○鈴木部会長 ありがとうございました。ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは、発言が出尽くしたと思いますので、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質・有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、引き続き事務局より説明をお願いします。

○事務局 今後のスケジュール等について、御説明をさせていただきます。本件の結果については、次回開催の薬事分科会で報告をさせていただく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、正規用途につきましては、今のところ確認されておりません。いずれに致しましても、可能な限り適正使用に支障を来さぬように対応する所存です。以上です。

○鈴木部会長 ありがとうございました。本日の議題は以上です。それでは、事務局からその他の連絡があれば、お願いします。

○事務局 次回の部会日程につきましては、正式に追って決まり次第、御連絡をさせていたただきます。また、本部会の資料は回収させていただきますので、そのまま机の上に置いていただけたらと思います。以上です。

○鈴木部会長 それでは、これで平成29年度第4回指定薬物部会を閉会いたします。委員の先生方、本日は御審議ありがとうございました。


(了)

備  考
 本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された

連絡先:医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐 佐々木
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