ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会> 第1回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」議事録(2017年12月26日)




2017年12月26日 第1回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」議事録

○日時

平成29年12月26日(火)16:00~18:00


○場所

中央労働委員会 612会議室


○議題

賃金等請求権の消滅時効の在り方について(意見交換)

○議事

○猪俣課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより、第1回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。本検討会の進行について、座長が選出されるまでの間、事務局にて議事進行を務めさせていただきます。私は、労働基準局労働条件政策課の課長補佐をしております猪俣と申します。よろしくお願いいたします。

 まず、本検討会の開催に当たりまして、労働基準局長の山越から御挨拶申し上げます。

○山越局長 労働基準局長の山越でございます。

 委員の皆様方には、この年末の大変お忙しい時期にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げさせていただきたいと思います。

 一般債権の消滅時効でございますけれども、これは民法におきまして、10年間の消滅時効期間が定められておりますし、それから、使用人の給料に係る債権等の短期消滅時効についても定められているところでございますけれども、御高承のとおり、この規定につきましては、先般の民法の一部を改正する法律によりまして、この消滅時効の期間の統一化と短期消滅時効の廃止等、この改正が行われたところでございます。

 他方で、現行の労働基準法でございますけれども、労働者の保護と取引の安全という観点から、この民法に定められております消滅時効の特則といたしまして、賃金等請求権につきまして、消滅時効期間の特例が定められているところでございます。したがいまして、今般、この行われました民法の改正を踏まえまして、その在り方を検討していく必要があるところでございます。

 この賃金の中の請求権の消滅時効の在り方につきましては、多面的な観点からの検証を行った上で、労政審において議論を行う必要があると考えております。ぜひ、委員の皆様方には、闊達な御議論をここの検討会でいただけますよう、お願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。

 では、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○猪俣課長補佐 続きまして、御出席いただいております委員の皆様を御紹介いたします。

御参集者名簿順に御紹介させていただきます。

 まず、日本大学総合科学研究所准教授の安藤至大様。

○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。

○猪俣課長補佐 東京大学法学部教授の岩村正彦様。

○岩村委員 岩村でございます。どうぞよろしくお願いします。

○猪俣課長補佐 慶應義塾大学法務研究科教授の鹿野菜穂子様。

○鹿野委員 鹿野でございます。よろしくお願いします。

○猪俣課長補佐 すみません。参集者名簿が間違っておりますけれども、法政大学キャリアデザイン学部の教授でいらっしゃいます佐藤厚様。

○佐藤委員 佐藤と申します。よろしくお願いいたします。

○猪俣課長補佐 大阪大学大学院高等司法研究科教授の水島郁子様。

○水島委員 水島でございます。よろしくお願いします。

○猪俣課長補佐 慶應義塾大学法務研究科教授の森戸英幸様。

○森戸委員 森戸です。よろしくお願いいたします。

○猪俣課長補佐 以上の6名となります。

 続きまして、事務局を紹介いたします。

 ただいま挨拶いたしました労働基準局長の山越でございます。

○山越局長 どうぞよろしくお願いいたします。

○猪俣課長補佐 大臣官房審議官(労働条件政策担当)の土屋です。

○土屋審議官 よろしくお願いいたします。

○猪俣課長補佐 総務課長の村山です。

○村山課長 よろしくお願い申し上げます。

○猪俣課長補佐 労働条件政策課長の藤枝です。

○藤枝課長 藤枝です。よろしくお願いします。

○猪俣課長補佐 監督課長の増田です。

○増田課長 どうぞよろしくお願いいたします。

○猪俣課長補佐 労働条件政策課調査官の中嶋です。

○中嶋調査官 よろしくお願いします。

○猪俣課長補佐 労災管理課課長補佐の尾崎です。

○尾崎課長補佐 よろしくお願いいたします。

○猪俣課長補佐 どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、お配りいたしました資料の御確認をお願いいたします。

 資料といたしまして、

資料1:賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会 開催要綱

資料2:参集者名簿

資料3:検討会の公開の取扱いについて(案)

資料4:今後の進め方について(案)

資料5:消滅時効の在り方に関する検討資料

でございます。そのほか、座席表をお配りいたしております。

 不足などございましたら、事務局までお申しつけください。

 次に、お配りいたしました資料にございます、本検討会の開催要綱について御説明いたします。資料1をごらんいただければと思います。

 資料1でございますけれども、「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会 開催要綱」でございます。

 「1.趣旨・目的」です。

 一般債権の消滅時効については、民法において10年間の消滅時効期間及び使用人の給料に係る債権等の短期消滅時効期間が定められているところでございます。この規定については、今般、民法の一部を改正する法律(先の通常国会において成立)によって、消滅時効の期間の統一化や短期消滅時効の廃止等が行われました。

 現行の労働基準法においては、労働者の保護と取引の安全の観点から、この民法に定められている消滅時効の特則として賃金等請求権の消滅時効期間の特例が定められており、今般の民法改正を踏まえてその在り方を検討する必要がある。

 このため、「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を開催し、法技術的・実務的な論点整理を行う。

 2番「検討事項」でございます。

 本検討会においては、労働基準法115条における賃金等請求権の消滅時効の在り方について、法技術的・実務的な論点整理を行う、とさせていただいております。

 最後、3番「運営」でございます。

(1) 本検討会は、厚生労働省労働基準局長が学識経験者及び実務経験者の参集を求めて開催する。

(2) 本検討会においては、必要に応じ、参集者以外の学識経験者及び実務経験者等の出席を求めることがある。

(3) 本検討会の議事については、別に本検討会において申し合わせた場合を除き、公開とする。

(4) 本検討会の座長は、参集者の互選により選出する。

(5) 本検討会の庶務は、厚生労働省労働基準局労働条件政策課において行う。

とさせていただいております。

 資料1については、以上でございます。

 まず初めに、本検討会の座長についてお諮りいたします。

 ただいま説明いたしました開催要綱の「3.運営」の(4)において、「検討会の座長は、参集者の互選により選出する。」としており、これに従い座長の選出を行いたいと思います。

 座長の選出については、事前に事務局より各委員に御相談させていただいたとおり、岩村委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○猪俣課長補佐 ありがとうございます。

 御賛同いただきましたので、岩村委員に座長をお願い申し上げます。

 それでは、座長に御就任いただきます岩村委員より御挨拶をいただきたく思います。よろしくお願いいたします。

○岩村座長 ただいま座長の役を仰せつかりました岩村でございます。

 委員の皆様、そして、事務局の皆様の御協力を得ながら、この検討会を運営してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

○猪俣課長補佐 ありがとうございました。

 カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。

(カメラ退出)

○猪俣課長補佐 では、これ以降の進行は、岩村座長にお願いいたします。

○岩村座長 それでは、早速本日の議題に入りたいと存じます。

 お手元の議事次第をごらんいただきたいと思います。

 まず、本日の進め方でございますけれども、最初に事務局から、この検討会の持ち方や今後の進め方、消滅時効の在り方に関する検討を行うに当たりまして御用意いただいております資料の御説明をいただいた後に議論に入りたいと存じます。

 そこで、まず、今日御用意いただいております資料3、資料4について、事務局からの御説明をお願いいたします。

○猪俣課長補佐 資料3と資料4について御説明いたします。

 まず、資料3でございます。「検討会の公開の取扱いについて(案)」というものでございます。

検討会は、原則公開とする。

ただし、以下に該当する場合であって、座長が非公開が妥当であると判断した場合には、非公開とするというものです。

1 個人に関する情報を保護する必要がある。

2 特定の個人等にかかわる専門的事項を審議するため、公開すると外部からの圧力や干渉等の影響を受けること等により、率直な意見の交換または意思決定の中立性が不当に損なわれるとともに、委員の適切な選考が困難となるおそれがある。

3 公開することにより、市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある。

4 公開することにより、特定の者に不当な利益を与えまたは不利益を及ぼすおそれがある。

とさせていただいております。

 注でございますけれども、上記の1~4は、厚生労働省が定める「審議会等会合の公開に関する指針」における審議会等会合の公開に関する考え方に準拠するものでございます。

 続きまして、資料4でございます。「今後の進め方について(案)」でございます。

 第1回(本日)

 ・消滅時効に関する現状の整理と主な論点

 第2回・第3回

 ・関係団体等からのヒアリング

 第4回以降

 ・賃金等請求権の消滅時効期間の在り方

 ・年次有給休暇請求権の消滅時効期間の在り方

 ・その他(書類保存期間、付加金等)の関連規定の在り方

について御議論いただきまして、平成30年(来年)夏を目途にとりまとめを行っていくということでどうでしょうかというものでございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 では、今、御説明いただきました資料3、資料4につきまして、何か御意見あるいは御質問等がありましたら、お出しいただきたいと思います。

 いかがでございましょうか。

 よろしゅうございますか。

 ありがとうございました。

 それでは、今、御説明いただきました資料3、資料4に沿いまして、今後、検討会を進めさせていただきたいと思います。

 それでは、お手元の議事次第にあります、本日の議題であります、「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」に入ってまいりたいと思います。

 これについては、事務局で資料5を用意いただいておりますので、まず、その説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○猪俣課長補佐 資料5は、「消滅時効の在り方に関する検討資料」をごらんいただければと思います。

 1枚おめくりいただきまして、ページ1ですけれども、「目次」として、

 ○ 民法改正について

 ○ 賃金等請求権に関する消滅時効について

 ○ 賃金について

 ○ 年次有給休暇について

 ○ 賃金台帳等の保存について

 ○ 付加金について

 最後に、

 ○ 主な論点

を掲げさせていただいております。

 最後に、

 ○ 参考資料

 ○ 参照条文

がついております。

 2ページ目ですけれども、今回、議論の出発点となっております民法改正について説明した図でございます。

 民法改正ですけれども、今回、社会経済情勢の変化に鑑みまして、民法の一部を改正する法律(平成29年6月2日公布)により、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備、法定利率を変動させる規定の新設等が行われたということでございます。120年ぶりの債権法改正ということで、かなり大きな改正だったということでございます。

 施行日でございますけれども、ちょうど今月ですけれども、平成32年4月1日ということで、政令の施行日が閣議決定されておりまして、4月1日と決まっております。

 今回の議論に関係する部分でございますが、<民法における消滅時効>の「改正前」のところですが、

 1 職業別の短期消滅時効(1年の消滅時効とされる「月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」も含む)

ですが、短期消滅時効と、

 2 一般債権については、

 ・権利を行使することができる時から進行

 ・10年間行使しないときは消滅

という形の現行の規定がありますが、これが改正後は、短期消滅時効がまず廃止されまして、

 2 一般債権については、

 1)債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき

または、

 2)権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

に時効によって消滅すると整理されたということでございます。

 これは参考ですけれども、下の注に、「民事における時効制度の意義」とは何かということを記載させていただいております。

 1本来の権利関係よりも、これと異なって永続している事実状態を尊重する必要があること(取引の安全、秩序維持)

 2長い年月を経た場合には、真実の権利関係の証明が困難となること

 3権利の上に眠る者は保護に値しないこと

でございます。

 ページをおめくりいただきまして、3ページ目でございます。

 今回、廃止されました短期消滅時効ですけれども、そもそもなぜ民法にこのような短期消滅時効が定められていたかというものでございます。日常頻繁に生ずるとか、通常、額も多くない。あるいは受取証書を交付されないことが多い等の債権については、短期消滅時効というものを設けて、法律関係を確定しまして、紛争の発生を防ぐ必要があるということで設けられていたと。

 特に、今回、賃金の関係で一番関係する1年のところについては、その中で最も頻繁に生じて、偶発的で、受領証書などの保存がおろそかになることが多いということで、本則の10年からは相当短い期間が設けられたというものでございます。

 今回の改正民法において短期消滅時効が廃止されて、主観的起算点から5年の消滅時効期間が新設されたわけですけれども、この趣旨ですけれども、1つ目ですが、現代では合理性に乏しい短期消滅時効の規定を廃止いたしまして、時効期間の統一化、簡素化を図るのが主目的でございます。

 ただ、短期消滅時効を単純に廃止した結果、単純に消滅時効期間が10年となるわけでありますが、これだと、弁済の証拠保存のための費用が増加するといった懸念が示されたこと等を踏まえて、主観的起算点からの5年の消滅時効期間を新設したということでございます。

 債権については、債権が発生した段階で、権利を行使できることを知っているという場合はかなり多い状態ですので、そういう場合については、基本的には、10年ではなく、5年が適用されることになります。ある種、短期消滅時効のかわりのような位置づけになっているのかなと思います。

 4ページ目でございます。

 今般の民法の改正に併せて同時に成立したのが、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」でございます。この整備法の中で、民法の改正に伴って改正しなければいけない特別法ですね。下には、国民年金法とか出ていますが、労働基準法もその対象にはなっておりますが、特別法について一括して改正しているということです。

 消滅時効の関係については、かなり多くの法律が一括して改正されているのですが、1つ目の○ですけれども、起算点の表現を統一するための改正が行われております。大概の消滅時効期間は変更せずに、起算点だけを書いたものが主であるということです。

 例ですけれども、国民年金法の102条に、年金の消滅時効が定められているのですが、現行だと、「権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する」となっておりますが、これに改正を加えまして、「権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅する」となっております。

 あまり多くはないですが、消滅時効の期間を変更した法律がございまして、代表的なものに商法がございます。商法はもともと5年間の消滅時効が定まっておったのですが、今回のこの整備法の中で、単純に削除いたしまして、削除すると、特別法の規定の適用がなくなりますので、民法の原則のほうに戻っていくということで、民法のほうの先ほど言った「知った時から5年」と「行使することができる時から10年」という規定が適用されるようになるという改正をしております。

 ページをおめくりいただきまして、5ページ目でございます。これは今回、最大の論点でございます、労働基準法の115条でございます。

115条は、「この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する」となっておりまして、民法の消滅時効の特則として定められておりますので、賃金関係とか労基法に書いてあるものについては、こちらが優先適用されるという関係になります。

 下の図ですけれども、そもそも年数の根拠は何だったのかということを整理させていただいております。

 一番左の欄に「請求権の種類」ということで、賃金、災害補償、その他、退職手当について書いてあります。労基法上の消滅時効期間は、基本、原則2年です。退職手当だけは5年間という形になっております。

 民法上は一体何が適用されていたのかというと、賃金については、先ほど申し上げた短期消滅時効の1年が適用されていた。ただ、ほかの災害補償とか、その他という形で、6ページ以降に出てきますけれども、その他のたくさんある請求権と退職手当については、仮に、労基法がなかりせば、民法上で何の規定が適用されていたかというと、恐らくは原則の10年とかそういったものが適用されていたと考えておりまして、10年と書いております。

 一番右側に年数の設定根拠ですけれども、賃金については、民法上、一般債権の消滅時効は10年となっておりまして、月またはこれより短い期間によって定めた使用人の給料に係る債権については1年の短期消滅時効とされたいた。ただ、労基法の制定時に議論がありまして、労働者にとって重要な請求権の消滅時効が1年ではその保護に欠ける。10年にしてしまうと使用者には酷過ぎて、取引の安全に及ぼす影響も少ないないため、労働基準法115条においては、2年間にしようということで、労働基準法が定められたということでございます。

 この2年間ですけれども、参考とされたのは、労基法ができる前にあった工場法という法律でございまして。そこの第115条で災害扶助の請求権については2年間の短期消滅時効を定めることになっていたようでございまして、これを参考にしたことになっております。

 その他のものですが、文献とかはちょっとなかったのですけれども、恐らくは、賃金の2年のほうに併せて一律で2年にしたという整理をしたのではないかと考えております。

 退職手当については、労基法制定時には2年だったのですが、昭和63年4月から5年に延長されております。その理由ですけれども、高額になる場合が通常であり、資金の調達ができないこと等を理由にその支払に時間がかかることがあること。あるいは、労使間において退職手当の受給に関し争いが生じやすいこと。3番の退職労働者の権利行使は、定期賃金の支払を求める場合に比べ、必ずしも容易であるとはいえないこと、ということで、退職手当のある特殊性を考慮して、賃金とは別に、5年間に延ばしたということでございます。

 6ページをおめくりいただきまして、労基法第115条の対象となる請求権はどんなものがあるかということを整理いたしております。

 まず、規定ですけれども、115条を分解すると、この法律の規定による賃金等というものと、この法律の規定による災害補償の請求権と、あと、そのほかの請求権、退職手当という4つに分けられます。

 時効期間は2年と5年です。

 対象となる請求権ですが、7ページ以降に解説が書いてありますけれども、非常に多くあります。賃金とか年次有給休暇請求権だけではなくて、例えば、23条「金品の返還」とか、24条は今回の賃金の関係ですが、そのほかに、非常時払、休業手当、出来高払の保障給とか、あとは、時間外・休日労働に対する割増賃金、まさに今回の賃金の対象ですけれども、あとは、有給休暇期間中の賃金や未成年者の賃金請求権。

 災害補償の関係も、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料、打切補償、分轄補償と、かなり多岐にわたります。

 最後、その他の請求権でも、帰郷旅費や解雇予告手当請求権、退職時の証明。退職時の証明はお金にかかわるものではないですけれども、これも一応請求権にかかわっているのではないかということで掲げさせていただいております。あと、最後に年次有給休暇請求権ですね。

 ここで1点、解雇予告手当請求権でございますけれども、労働基準法のコンメンタールによると、115条の対象ではないと一応整理されておるようなのですけれども、裁判例上、これが実際に115条の対象になっているのかなってないのかというのはちょっとわからないところがあって、念のため、ここに掲げさせていただいております。コンメンタール上は、一応対象外ということで整理されているようですが、一応掲げさせていただいておるというところです。

 後ほど、114条の付加金のことを御説明いたしますけれども、付加金は、解雇予告手当請求権にはかかわっておりまして、付加金の対象にはなるけれども、115条の対象にはならないという、なかなか整理が難しいような状況に法律上はなっているので、単純に115条の対象にならないのかどうかというのは、少し議論のあるところかなと思いまして、一応ここに掲げさせていただいております。

 7ページ目ですけれども、今、掲げさせていただいた各請求権について、条文に即して簡単に解説させていただいております。お読みいただければいいかなとは思うのですけれども、例えば、「金品の返還」ですが、退職労働者等の権利者の請求があった日から7日以内に、使用者は賃金その他の金品を返還しなければならないことを規定する。これは、例えば、遺族とか、対象者が死亡した後に、まだ払われてないものがある場合について、遺族が請求したりとかというときに使ったりするということでございます。

 その他、「賃金の支払」は、賃金の支払そのままでございます。

 非常時払、休業手当、出来高払制の保障給は、書いてあるとおりでございます。

 おめくりいただきまして、8ページ目でございます。「時間外・休日労働に対する割増賃金」は、恐らくこの割増賃金が、今回議論になります未払賃金の中では一番多いのかなと思います。

 あとは、有給休暇期間中の賃金。有給休暇期間中については、有給休暇というものですので、当然、賃金は払わなければならないのですが、それについての請求権が書いてあるというところです。

 下のほうですが、災害補償請求権ですけれども、労働基準法上にも災害補償関係の規定がございまして、これについて、例えば療養補償で、労働者が業務上負傷したり、病院にかかったりする場合の、使用者の療養に関する補償責任について規定していたりとか、休業補償について規定していたりとか、そういったものが書いてあります。

10ページ目にいっていただいて、1つは帰郷旅費ですけれども、実際、それほど使われているのかどうかは不明ですけれども、労働基準法115条に帰郷旅費というものがございまして、これは使用者が契約締結のときに提示した労働条件と実際の労働条件が相違するために労働者が即時契約を解除する場合や満18歳未満の者が解雇された場合に、契約解除・解雇の日から14日以内に帰郷する場合において、使用者は必要な旅費を負担しなければならないということが規定されております。

 また、解雇予告手当請求権ですけれども、使用者が労働者を解雇する場合には、30日前に解雇の予告を行わなければならず、30日前に解雇予告をすれば手当は払わなくていいのですけれども、30日前に解雇予告をしない使用者は、予告にかえて30日分以上の平均賃金を支払わなければならないと規定しております。

 退職時の証明ですが、労働者から請求があった場合は、使用者は退職時の証明書を交付しなければならないという規定です。

 次に、年次有給休暇ですけれども、これは後ほど説明いたしますけれども、年次有給休暇請求権について書いてあります。

 最後の退職金請求権は、「賃金の支払(24条)」で規定しているというところでございます。

11ページ目をおめくりいただければと思います。

 賃金ですけれども、今回、まさに消滅時効の関係で論点になるのは、未払賃金の関係かと思うのですが、政府としては、未払賃金の総額が世の中にどれぐらいあるのかというのが総量としては把握しておりませんで、間接的には、例えば未払賃金は労働基準法の違反になりますので、監督・指導をしているという、一応そういう是正結果の公表をしておりまして、間接的には、一定程度の未払賃金は世の中に眠っているというのがわかるのかなということで、この図を資料として示させていただきました。

 下の図ですけれども、対象には、労基署が定期監督及び申告に基づく監督を実施して、割増賃金の不払いに係る指導を行った結果、各年度の間に1企業で合計100万円以上の支払いがなされたものということで、ここは下の図は、割増賃金の不払いにかかわるもので、ある種、賃金の本体(基本給)についての不払いは含まれてないということを御留意いただければと思います。

 是正企業数とか割増賃金の是正額金額とか対象労働者とかというのは、平成22年度から示しておりますけれども、それなりに大きい金額で一定数推移していて、圏域の変動とかそういうのとは関係なく、100億から最大で145億ぐらいのものを指摘をしているということで、恐らくこれは氷山の一角中の一角だと思いますので、世の中それなりに未払賃金は眠っているのではないかと思われます。

12ページ目でございますけれども、これは訴訟の関係ですね。未払賃金に関する訴訟は多いわけですが、実際、労働訴訟、労働審判は、民事訴訟には至らないような簡易な方法で、ある種の和解を促すような仕組みですけれども、労働審判や労働訴訟で、どういう労働関係の訴訟が行われているかというようなデータがあります。そのうち、見てみると、金銭目的のものが大半を占めておりまして、未払賃金等の関係がメインになっているのかなと思います。

 また、左側の図は、色が濃くなっているのが金銭目的ですが、色が薄いほうは、例えば労働審判で色が薄いほうが多いのは、いわゆる解雇無効訴訟ですね。地位確認訴訟が多いのですけれども、地位確認訴訟も、実際は未払賃金とかバックペイとかという形で賃金関係のものが伴うものが多いので、そう考えると、労働審判なんかは大半が金銭目的なのではないかなとも言えますし、労働訴訟のほうも、先ほど言った解雇無効の訴訟が多くて、それなりの数がありますので、全体として見ると、金銭目的が相当な数に上っているのではないかなと思います。

13ページ目をおめくりいただきたいと思います。年次有給休暇でございます。制度内容は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えなければならないというものでございます。

 要件と効果ですけれども、雇い入れの日から起算して6カ月継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10労働日の年次有給休暇が与えられるというものでございます。その後、継続勤務年数1年ごとに右表の日数の年次有給休暇を与えられるということで、勤続年数が上がるごとに付与日数がふえていって、最大で年間20日付与されるようになるということですね。この年次有給休暇については、発生してから起算して2年間の消滅時効に服するということで、まさに、年休を取得しない場合に、繰り越される2年分は、この消滅時効の期間にかかっているかなということでございます。

 年次有給休暇の取得ですけれども、原則ですから、労働者が有する休暇日数の範囲内で、その具体的な休暇の時季を特定する「時季指定」を行うことによって、年次有給休暇が成立いたしまして、当該労働日における就労義務が消滅する。つまり、労働者の具体的な「時季指定」がない限りは、使用者は年次有給休暇を与えなくても法違反とならない。年休が付与されて、その付与された年休をどこに使いますという請求をすることによって、ある種年休を取得していくというものでございます。例外で、時季変更権という形で労働者が指定する時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合については、時季変更権を行使して別な時季にするとか、そういうことをやるというところでございます。

 一番下ですけれども、法的性質として、少し争いがありまして、最高裁の判例で、二分説という形でこれについては定義されております。

 二分説というのは、年次有給休暇の権利は、以下の2つの権利から構成されるという考え方でございます。1つは労基法の要件を満たすことで当然に発生する権利。付与されているということだと思います。さらに、その付与された年休について、労働者が年休を取得する時季を特定することによって初めて年休が取得されるというような考え方が、いわゆる二分説ということでございます。

14ページ目をおめくりいただければと思います。今回、年休について、繰越の期間が論点になるわけですが、まず、年次有給休暇の取得率ですけれども、直近の平成27年ですと、日本の取得率が48.7%、年間平均して18.1日付与されて、8.8日使うということになっております。

 このデータで御注意いただきたいのが、一番下の(注)の2)に書いてありますが、付与日数には、繰越日数は含まれておりませんので、毎年新規に付与された、要するに、最大で20日ですけれども、新規に付与された日数が分母になっておりまして、単純に、取得した日数というので割っているというものでございます。なので、繰越日数はほとんど出ませんので、実態としては、恐らく取得率が48.7%で、毎年相当数が繰り越されている状況ですので、それなりに繰越日数を持っている方が多いと思いますので、繰越日数を含むと取得率はもうちょっと低いのかなと思われます。

15ページ目でございますが、年次有給休暇が繰り越されるというのはどういうイメージかということを示した図でございます。ある年に20日間付与されて、8日間使うという労働者をイメージしております。a年で20日付与されて8日間使いましたと。繰越分が12日分ですけれども、さらに、その人はa+1年で20日付与される。また、同じに8日間使うと、繰り越された古いほうから消費していきますので、12日のうちの8日間を使いますので、4日間残りました。そのまま使わずに、a+2年にいくと、この4日間が消滅してしまっているという考え方です。さらに、a+2年になると、また繰り越された分が20日ありまして、8日間使って、そうすると、12日消滅していって、それがずっと続くというような形になっておりまして、毎年12日分を消滅してしまっているという例でございます。

16ページをおめくりいただければと思います。左側の図ですけれども、年次有給休暇を取り残す理由ですけれども、一番多いのは、「病気や急な用事のために残しておく必要があるから」ということで、病気休暇というのは法律上は付与せよというような規定にはなっておりませんので、病気とか急な用事のために念のため残しておいて、そういうときのために使うというような労働者が多いということでございます。

 その下からは、「休むと職場の他の人の迷惑になるから」とか、「仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないから」とか、「上司がいい顔をしないから」とか、「勤務評価等への影響が心配だから」ということで、いわゆる日本人が年休が取得しづらいといわれるような理由が並んでいるというもので、大きく分けると、「病気とか急な用事のために残しておく」のと、「職場でとりづらい」ということが、年休を残していく理由なのかなというように思われます。

17ページをおめくりいただければと思います。年休についての諸外国の制度でございまして、EU、カナダ、日本、韓国について、付与日数とか、または、付与方法について書いております。付与日数はごらんいただければと思いますけれども、付与方法のところで、フランスとドイツのところをごらんいただければと思いますけれども、括弧内ですね。「労使合意が優先したり、労働者等の意見を聴く手続を要したりするが、基本的には使用者によって付与時期が決定される」ということで、日本の場合は、先ほど御説明いたしましたように、付与されて、労働者のほうが時季を指定するというような構造になっておりますので、少し構造が違うというふうに考えていただければと思います。基本的には、事前に、この日に使いなさいということで決めて、そのときに使っていって、実際に、フランスとかドイツとかだと、取得率はほぼ100%といわれておりますので、使っているというものでございます。

 今回の議論に関係する、一番下の欄の「未消化年休の取扱い」でございますけれども、イギリスは「法令上の規定なし」ということですね。フランスとドイツですけれども、フランスは、一部の企業では、日数を限定して持ち越しを認めているけれども、原則として繰越はないということです。ドイツは、繰越は原則として認められてないということでございます。日本は、先ほど御説明したように、2年間は繰越を認められているということでございます。韓国ですけれども、1年間取得しないときは消滅するということで、基本的には繰越はないのですけれども、使用者の責めに帰する事由により取得できなかった場合はこの限りではないという規定でございます。いわゆる繰越ですけれども、一般的に繰越を行っているような国は、主要国だと日本ぐらいだなというような感じがいたします。

18ページ目をおめくりいただければと思います。今回、労働基準法115条の賃金等請求権の議論がメインでございますけれども、これに関連して、労働基準法109条に、「記録の保存」という規定がございます。内容ですけれども、「使用者は労働者名簿、賃金台帳その他の労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」となっております。

 趣旨ですけれども、「労働者の権利関係、労働関係に関する紛争を解決するため、それと、監督上の必要から、その証拠を保存する意味で、労働者名簿とか賃金台帳その他の労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」という義務を労働基準法に書いてあるということですね。

 年数ですけれども、下の注を見ていただければいいと思いますけれども、工場法に、「また、」以下ですけれども、「職工の雇入れ、解雇に関する書類は職工の解雇または死亡の日より3年間」といった形で、3年という規定がございまして、どうも、これを参考にしたようであるということで、整理されたものだと、労働基準法115条に書いてある2年と直接リンクさせて3年という形にしたものではないようですけれども、結果として、消滅時効については2年、書類の保存期間については3年で、1年多めに書類を保存せよという形になっておりますので、まさに、紛争の解決とかといった点については、問題なく、労働基準法制定以降来たのかなと思います。まさに、今回、労働基準法115条の消滅時効期間について御議論いただくわけですけれども、併せて、その年数とともに、この保存期間の年数についてどう考えるのかというのも一つの論点かと思います。

 参考ですけれども、保存の必要な書類ですけれども、労働者名簿とか賃金台帳以外にも、ありとあらゆる書類は、基本的にこの3年間の保存義務にかかっていると考えていただいていいと思います。タイムカードの記録とか、労使協定の協定書とか、こういったものも全部3年間の保存義務にかかっているということでございます。

 おめくりいただきまして、19ページ目でございます。「付加金について」でございます。

 労働基準法の114条に「付加金」という規定がございまして、これは、「裁判所は、労働者の請求により、一定の使用者に対して、使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる」という規定でございます。対象となる、要するに、未払となった場合に、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる対象となる手当とかそういったものは何かというと、下の<本条の対象となる規定>の4つが対象になっております。1つは、私が先ほど言及した解雇予告手当ですね。それと、休業手当、割増賃金、年次有給休暇の賃金という、この4つについては、裁判所の命令によって、ある種倍額ですね、2倍の金額を使用者に対して支払を命ずることができるということでございます。

 ただし書きのところで、裁判所に対する請求については、違反があっときから2年以内にしなければならないという形で、ある種、予定期間みたいな期間も設けられておるわけですけれども、この2年間が、労働基準法115条の2年とあわせたものというふうにされております。

 この規定の趣旨ですけれども、労働基準法における義務の中で、「本法によって特別に定められたものであって、労働者にとって重要であり、かつ、保護を要するものについて、所定の違反に対する一種の制裁たる性質を有し、これによって所定の未払金の支払を確保するために設けられたもの」ということで、労働基準法上の割増賃金とかを払わない場合は、別途、罰則とかはかかっているわけですけれども、それとは別に、民事上の制裁みたいな規定として、この付加金の規定は機能しているというものでございます。

 今回、一つ「2年間」の請求というのが労基法115条の議論と併せて、この2年間でいいのかどうかというのが一つの論点になるのかなと思っております。

20ページ目をおめくりいただければと思います。

 以上が、今回関連する資料でございます。ここでつけ加えさせておいていただければと思うのですが、今回、年次有給休暇の外国の関係の資料についてはつけているのですけれども、一般債権と賃金債権について、どのような消滅時効とかそういったものが定められているかという資料については、今回はつけてないのですけれども、最初はつけようかと思ったのですけれども、もう少し精査が必要だということがわかりまして、今調べている最中ということと、あとは、今回は、この検討会の第3回で、外国法制についてのヒアリングをちょっと考えておりまして、その段階で、主要な外国の賃金等請求権についての消滅時効等について資料が出せればいいかなと、今のところ考えておるところでございます。

20ページ目ですけれども、「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する主な論点」で、4つ掲げさせていただいております。

 1つ目ですけれども、「現代の社会経済情勢を踏まえ、労働基準法第115条の対象となる賃金等請求権の消滅時効の期間について、労働者の保護や取引の安全等の観点を踏まえつつ、どのように考えるか」というものでございます。

 2つ目ですけれども、「労働基準法第115条の消滅時効の起算点について、同規定はこれまで『権利を行使できるときから』と解釈・運用されてきたと考えられるが、今般の民法の改正を踏まえ、どのように考えるか」というところでございます。まさに、先ほど最初のほうで説明いたしました、民法の整備法の中で、特別法については、少なくとも起算点を書き込むというような改正をやられておりますので、労働基準法についても、少なくとも起算点は書き込むという改正は必要なのかなと思っております。

 3つ目ですけれども、「年次有給休暇請求権の消滅時効(繰越期間)について、年次有給休暇の取得促進の観点を踏まえつつ、どのように考えるか」ということでございます。

 最後4つ目ですけれども、「その他の関連規定(書類の保存期間や付加金等)について、賃金等請求権の消滅時効期間の在り方を踏まえて、どのように考えるか」というものでございます。

21ページ以降は、今回、資料をつくるのに参考にいたしましたコンメンタールの記載の抜粋とか、あるいは、関連条文の労働基準法とか民法の規定と、その関連をつけておりますので、適宜、参考にしていただければと思います。

 長くなりましたが、私からは以上でございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、今、御説明いただきました資料5をベースとしながら、皆様から御意見あるいは御質問などをいただければと思います。

 どなたからでも、御遠慮なくどうぞ。

 どうぞ、水島委員。

○水島委員 今回、御報告をいただいたところではないことで、一つ教えていただきたいのですけれども、もし、労基法が改正されて施行された後、どのような債権にどの段階から新しい時効が適用されるのかを教えていただけますか。

○猪俣課長補佐 すみません。確認してから、正確なことをお答えいたしますけれども、私が覚えている限りですけれども、民法の改正に伴って、経過措置が多分行われておりまして、施行前に発生した債権については、施行前の消滅時効の規定が適用されて、施行後ですね、まさに平成32年(2020年)4月1日以降に発生した債権については、今回の新しい消滅時効の規定が適用されるという形で整理されているのかなと思います。

 恐らく、今回、労働基準法の115条で消滅時効を仮に改正するということになる場合についても、同じような経過措置を置くのかなと思っております。

○水島委員 ありがとうございます。

○岩村座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 きょうは初回ということで、なかなか意見等も出にくいと思いますが、皆様にお考えいただいている間に、ちょっと私のほうから若干質問をさせていただきたいと思います。

 きょう、基本的に、議題として取り上げていただいたのは、基準法関係のものに限定されていたのですけれども、例えば、災害補償のところであれば、基準法の災害補償の規定の消滅時効とは別に、それに連動するものとしては労災保険法の災害補償関係の給付の消滅時効の問題もあるのですが、それはもちろん仮に労基法の災害補償の消滅時効が動けばという話ですが、仮にそうなった場合に、そちらも連動してこの検討会で考えることになるのか。それはそれで、また、労災保険部会なら労災保険部会で別途検討することになるのかというのが1点。

 それから、基準法以外のところに、例えば、昔、基準法にあったけれども、そこから分かれて出ていったものとか何かで、個別の法律の中で消滅時効の規定があるとか、そういったものはないのかということであります。

 例えば、これは恐らく違うだろうなと思っていますが、賃金支払確保法で支払保証事業があって、未払賃金が発生した場合に請求できますが、その請求権についての消滅時効は、さっき法律を見たら、特に書いてないので、恐らくこれは政府が行っているから、会計法の規定で消滅時効を考えるということだとすると、これは多分ここでは考えないということになるのかと思いますが、そうではないような部類のものというのがあるのかないのか、その辺のところについて、ちょっと確認的に質問をさせていただければと思います。

○尾崎課長補佐 1点目の労災保険法の話ですけれども、私どもの理解としては、こちらの検討会での議論の状況を踏まえて、追って、労災保険部会のほうで、また、御議論いただくと。こちらの議論との整合性というか、そういうのも勘案しながら、別途、労災保険部会で御議論いただくと考えております。

○猪俣課長補佐 2点目でございますけれども、基準法以外で、労基法の115条と連動しているとか関連しているものについて、各局に一応照会はかけている状態で、「整理中」というような形でございますけれども、基本的には、労働基準法115条の改正を受けて、各法律においてどうしようかなというふうに、まさに、今の労災と同じような状態だと思いますけれども、考えていくようになるのかなと思っております。

 1つ関連する時効というお話ですけれども、資料5の中の4ページ目で、整備法のお話をさせていただきましたけれども、整備法の中で、特別法が一括して改正されておりますけれども、日本にある法律で、消滅時効の特則を定めているものについては、基本的に、既に全て改正はされております。

 ただ、一個だけ入ってないのがあって、これが労働基準法だといわれております。入ってない経緯は、労働条件分科会などでの経緯があるのでございますけれども、事実としては、労働基準法だけが入ってないということでございますので、ほかの関連する法律というか、厚労省関係の法律についても、基本的には、起算点を記載した上で、年数を変えないで、改正自体は行っているというところでございます。

 あとは、労働基準法115条は、仮に、何か年数を変えるとかそういった改正をやるということになれば、ちょっとそれを踏まえて、各法律についてどう考えるか。特に、書類の保存期間とかこういったものについては、かなり参考にしているのではないかと思われるところもありますので、恐らく各法律において、労働基準法115条の改正を受けて、検討するということになるのかなと思っております。

○岩村座長 ありがとうございました。この検討会で全部を検討するというのではないということで、少し安心をいたしました。

 ほかにはいかがでございましょうか。

 では、森戸委員どうぞ。

○森戸委員 主要な話ではないのかもしれませんが、幾つかちょっと確認したいのですけれども、2つぐらいですかね。

 1つはまさに民法改正の話ですかね、資料4ページで、国民年金法なんかが改正されたという例が載っていますけれども、これは国民年金法の改正の話になってしまうのですけれども、これは「行使することができる時から」に改正されたということですが、これが知った時からではなくて、「行使することができる」となったのは、国民年金では、知ったか知らないかとかいう必要は余りない、ということでこういうことになったのか。つまり、民法のほうの改正だと、そもそも権利を行使することができることを「知った時から」というのを入れていますので、そうはしなかったのはどういうことかというのを聞きたいです。余り関係ないのかもしれませんが、労基法のほうでも、恐らく主観的起算点的なものを書き込むのはしなければいけないと思いますが、そのとき、賃金に関しては、その点国民年金よりもわかりづらいところもあるような気もするので。一点これについて確認です。

 それから、もう一点は、20ページで、まさに論点ですね。今回、この検討会でこういう話をしようということで、取引の安全の観点というのも、実はどういう意味かとかそういうのも思うのですけれども、ここでお聞きしたいのは、年休のところで、「年次有給休暇の取得促進の観点を踏まえつつ」と書かれているのは、これは、原則、発生した年にちゃんととってもらうべきものだから、余り長く繰り越せるのはおかしいのではないかという趣旨なのか。それとも、取得促進なのだから、繰り越せたほうがいっぱいとれるだろうという趣旨なのか。それとも、それがどういう趣旨なのかも含めて、ここで議論しようということなのか。それをちょっとお聞きしたいのですけれども、以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

○猪俣課長補佐 1つ目ですけれども、国民年金法の例を挙げさせていただきましたが、先ほど、私は、その前の3ページ目の下のところで解説のところで簡単に説明いたしましたけれども、およそ多くの債権は、債権が発生した瞬間に、同時に知っているだろうという解釈で運用されているらしいというところで、基本的には主観と客観のところは一致するという形で、5年のところが適用されると解釈されていると申し上げました。

 国民年金についても恐らくそのような解釈で、債権が発生した瞬間に、要するに、年金権が発生した瞬間に給付を受けることができるのを自分は知っているので、これは客観的に言ったわけですね。基本的には、権利を行使できる時から2年間という形の規定を入れているのかなというところですね。

 厚労省だけに限らず各省庁が所管している法律についても、基本的に、このような客観的起算点を入れ込んでいる改正をやっているわけですけれども、各省庁でそこまで厳密に考えてやったかどうかというのは、我々にはちょっとはかり知れないところでございますけれども、基本的には、主観的起算点と客観的起算点というか、客観と主観が一致しているという形で解釈した上で、一本化ということでこれらを行使できる時からということで改正したのかなということだと思います。

 先ほど申し上げた労働基準法115条についても、私が調べた限りであると、客観的起算点なのだ、要するに、主観と客観が完全に一致しているのだということを断言しているような資料はなかったのですけれども、裁判例とかを見ていくと、恐らくそのように運用されてきたのかなということで、論点のところでは掲げさせていただいているというところでございます。

 2つ目の御質問でございますけれども、年休についての論点のところで、1つ目の論点は労働者保護や取引の安全などの観点を踏まえつつということで、バランスよく書いているのですけれども、確かに先生がおっしゃるように、3つ目は、年次有給休暇取得促進の観点を踏まえつつということで、ある種ちょっと一方的な観点を入れ込んでしまったなとは思っているのですけれども、基本的には、今、政府の政策としては、日本人は先ほど見ていただいたように取得率がかなり低いという状況ですので、年休をいかに取得してもらうかということでいろいろな事業もやっていますし、尽力しているようなところでございますので、そういった観点を踏まえつつ、今回、繰越期間についてどういうふうに考えるかというところを書かせていただいていると。

 ただ、確かに、先ほど、取得したい理由のところで、病気休暇とか、わざわざ自分で意図的にちゃんと取得しないで保存しているのだという労働者の方がたくさんいらっしゃるということでございますので、必ずしも取得促進だけではなくて、それぞれの御事情に応じたものもあったりもしますので、そういった観点も踏まえながら御議論いただければいいかなとは思っております。

 以上です。

○岩村座長 では、藤枝課長お願いします。

○藤枝課長 ちょっと補足させていただきます。

 年休の関係でございますけれども、厚生労働行政として政策的にどういう方向を目指すかというところも絡んでまいりますので、そういう意味では、表現が先生方に丸投げするような書き方になって、恐縮でございました。

 政策の方向性としては、まさに今、猪俣が申し上げたように、年休の取得率をどう上げていくかということが最大の課題でございまして、今、御案内のように「働き方改革」の法案を準備中で、次期通常国会に出そうというところですけれども、その中でも、年休については、これまでは労働者が時季を指定して請求した場合に発生するという仕組みになっていたのですけれども、これを一歩進めまして、使用者のほうから、最低5日は時季を決めて、使用者に付与義務を課すと。もちろん労働者の意向を聞いた上でですけれども、使用者の責務として5日指定させるという、ある意味ヨーロッパ型に少し変えていくような、一歩踏み込んだ改正をしようとしております。政策的には、できるだけしっかりと休む、年休をとっていただくということを指向しておりますので、それと今回の請求権の消滅時効の関係をどう考えていくかということで、論点の1つに挙げさせていただいているところでございます。

○岩村座長 ありがとうございます。

 森戸委員、いかがでしょうか。

○森戸委員 ちょっと一言いいですか。

 国民年金法のところはよくわかりました。さっきも言いましたけれども、賃金関係のいろいろな賃金債権が国民年金の給付と同じように、つまり、これらを行使することができる時から、だけでいいかどうかも検討はしなければいけないのかなとは思いました。

 それから、年休のほうは、これでいくと、賃金のほうも、時効が短いほうが、そのかわりちゃんと払ってくれるのだとか、どっちも言えるような気がしますが、年休取得促進というのがここでは割と正面に出ているから、これは今の説明だと、取得促進は厚労省の今の施策としてやっているのはわかるのですけれども、それは突き詰めると、時効には余り関係ないような気もしたので、議論するときに、これからですけれども、また、どういうふうにこの観点を考えていくのか、私も検討をしたいと思います。

○岩村座長 ありがとうございました。

時効の起算点の関係では、例えば資料5の4ページの国民年金法の場合は、昔は、時効の起算点については規定がなくて、結局、御承知のように、一般法である民法の時効の起算点の規定に投げて、それでやっていた。そのときは、「権利を行使することができる時から」というのが起算点として定められていたので、もちろん解釈上の問題はあるけれども、異論の余地はありませんでした。ところが、今度は起算点が2つになってしまったので、それを明確化することから、この改正でもって客観的起算点のほうだけを採用するということになったと、私は条文を見るとそういう理解をしました。

 ですから、おっしゃるとおり、賃金債権等について、時効の起算点をどうするかという話になったときには、今回の民法の規定のように2つを考えるのか、それとも、2つではなくて1つだけにしてしまうのかという、その議論の余地の可能性は理論的には当然あるだろうと思います。

 では、鹿野委員。民法の専門家がいらっしゃるので。

○鹿野委員 私も、民法をやっておりますので、今の起算点のところについてはちょっと気になったのですけれども、今、岩村座長から御説明がありましたように、従来、客観的起算点からだと当然のように考えられていたのは、恐らくは民法166条で、「権利を行使することができる時から進行する」として客観的起算点がとられていて、それがいろいろなほかの法律の時効を考える上でも、一般的なスタンダードとされてきたからだろうと思います。

 今回、民法で一般の債権につき主観的起算点と客観的起算点の二重の期間を定めることになったわけですが、それでも、契約の主たる給付に係る債権については、恐らくは客観的起算点と主観的起算点は一致するのだろうと考えられていて、だから、その限りでは、特別法でも客観的起算点を定めておけば、それで足りるということなのかもしれません。けれども、契約に基づく債権であっても、客観的に権利行使が可能になった時であっても、主観的にそれを知ることが遅れる場合もあるのであって、そのときにどうするのかという問題は出てくるものと思います。

 今回検討しているような債権について、果たして、そういう事態はあり得るのかどうかということも問題ですけれども、そういう点も含めて考えていかなければならないと思っているところです。

 それから、もう一つ、これは質問というより意見ないしコメントですけれども、今回の検討は、民法の時効制度が改正されたということを契機として、それでは労基法の115条の規定をどうするのかということで、開始されたということだと認識しております。民法の短期消滅時効の規定が廃止されたことの趣旨等についても、既に、この資料を使って御説明があったところですが、私なりに整理しますと、その理由は大きく3つあったものと思います。1つは、これが一番大きい理由だと思いますけれども、民法170条以下に、従来、かなり多様な債権がここに3年、2年、ないし1年という短期消滅時効の適用を受けるものとして規定が置かれていたわけですけれども、少なくとも今日の取引社会においてこのような区別を設けるということにつき合理的な説明がもはやできなくなっているのではないかということであり,これが第1の大きな理由だったのだろうと思います。

 それに加えて、第2の理由は、各規定の射程が実は曖昧であって、予測可能性を害するというところであり、それから、第3には、非常に複雑であるということです。今回の民法改正は、国民にできるだけわかりやすい民法をということを標榜してまいりました。それがどこまで達成できたかはちょっと自信を持っては言えないところもあるのですが、それでも、少なくとも時効に関して言うと、このような複雑な時効の規定が設けられていて、しかも、合理性も疑わしくわかりにくいという状態に対し、国民にわかりやすい民法という観点から言っても、この複雑な短期消滅時効は廃止しようということで、廃止されたということだと思います。

 また、これについて先ほども御説明があったように、賃金の債権に関しては従来の民法の174条1号のいわば特則として置かれていたということです。この規定を民法では廃止したということなので、そうすると一般的には、一般の債権の消滅時効であるところの、主観的起算点から5年、客観的起算点から10年というふうになりそうなところですが、これについてあえて特則を設けあるいは維持するということであれば、それなりに、その特則を設けるところの合理性がきちんと検討されなければならないと認識しているところでございます。

 従来は2年だったから、これを維持するというだけでは足りないのではないかと思います。先ほども申しましたように、従来の170条以下には多様な債権が掲げられていましたが、これらも含め一律にこのような短期消滅時効規定は廃止するということになったわけですから、そのような他の債権との関係も踏まえて、この賃金等の債権についてだけそれより短い特則を置くことにどれだけ合理性があるのかが問題となりましょう。あるいは、短いといっても2年とは限らず幅があるかもしれませんけれども、これぐらいの時効期間という形で期間を特別に設けることの合理性が問題になってくるのだろうと思います。

 ついでに言うと、時効制度の趣旨についても、今回、資料に基づき改めて御説明があったところです。これは一般的に、取得時効と消滅時効と併せて時効制度とはこういうものだということで、この資料に示されたような根拠が示されてきたということだと思いますし、その限りではそのとおりだと思います。しかし、あえて債権の消滅時効に関して言うと、時の経過による事実関係の曖昧化による負担から関係者を解放して、取引社会の安定を図るというところが、基本的には債権の消滅時効の趣旨なのではないかと私はとらえております。消滅時効は、権利の消滅という効果をもたらすのですけれども、権利を消滅させるための制度ではありません。今言ったような曖昧化による負担から解放し、そして、取引社会の安定を図ろうという目的を図ったときのいわば反射的な効果として、権利者の権利が消滅してもやむを得ないという場合に、権利消滅という効果をもたらす制度だと思われます。

 そして、権利者の権利が消滅してもやむを得ないというのは、原則として、権利を現実的に行使できるような状態から一定期間は権利行使の機会が確保されたということを前提にしていえるのではないかと思います。

 この資料にも書かれていたのですけれども、「権利の上に眠る者は保護に値しない」ということが従来から一般に書かれていて、これだけをとらえると、権利行使者に対する非難のような意味としてとらえられかねないのですが、非難的な色彩はそれほどなくて、むしろ、ここは機会を与えたから、権利が消滅するという不利益を受けてもやむを得ない、もう一つの大きな利益との兼ね合いにおいてはやむを得ないと、そういう趣旨なのではないかなと思っているところです。

 何か雑駁な話となってしまいました。

○岩村座長 事務局のほうで、何かリアクションがあればと思いますけれども、よろしいですね。

 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 では、安藤委員どうぞ。

○安藤委員 安藤でございます。私は経済学が専門でして、法律は勉強をさせていただいている立場ですので、的を射てない質問もあるかもしれませんが、よろしくお願いします。

 まず、20ページ目のところで、論点が4つ挙げられておりますが、この1つ目、消滅時効の期間をどのように考えるかという点ですけれども、これについて、選択肢としては、特に2年にするか、5年にするかだけではなくて、より幅広に考えるということでまずいいのかということと、あとは、いつから。例えば5年にするとしたら、それがいつからになるのかというのが少し気になっております。民法のこの改正の施行日は2020年4月1日だと思うのですが、これに合わせるということが前提なのか。それとも、これからおくれることもあり得るのか、その辺りのタイミングについて、どのような選択肢があり得るのかを教えていただきたいと思います。

 2点目が、2ページ目のところで、改正民法の話のところですけれども、一般債権について、「知った時から5年間」というところの、この「知った時」という言葉の意味を非専門家にわかるように教えていただきたいと思いました。といいますのも、例えば割増賃金について、自分の労働時間をきちんと把握していなかった。しかし、職場の建物の入退館の記録などから、そういう割増賃金が発生するということを後から知ったとか、または、自分は時間外労働をしていたのだけれども、割増賃金という仕組み自体を知らなかった。先ほど鹿野先生から、権利の上に眠る者は保護しないというのは、別に非難的な意味はないというお話がございましたが、知らなかったときに、後々、例えば弁護士さんから「あなたはこういう時間外の賃金をもらえるんだよ」ということを教えられたとします。このときには、「知った時から5年」というのは、「知ることができた時から5年」と考えるのか、それとも、本当に私はそういう権利があることを知った時から5年なのか。それとも、こういう場合には、「行使することができる時から10年」という話が引っかかるのか。この辺りについても教えていただきたいと思いました。

 あと、細かい点ですけれども、これも完全に興味で伺いますが、6ページ目のところで、対象となる請求権がたくさん並べられておりますけれども、「金品の返還」という23条が2回出ているのですが、これはどういう意味なのか。ただの書き間違えなのか、それとも、一番最初の項目と3つ目の「その他の請求権」のところでも出てくるのですが、どういうものがその中に入っているのかを教えていただきたいと思います。書き間違えだったら、それで結構です。

 よろしくお願いします。

○岩村座長 では、事務局のほうでおわかりになる範囲内でお願いします。多分、新民法の解釈がどうとかというその問題が絡んでしまうので、ちょっと難しいところがあるかなという気もしますが、よろしくお願いします。

 あと、もし、必要であれば、鹿野先生御意見あればお願いします。

○猪俣課長補佐 1つ目の時効期間でございますけれども、それは特に幅については限定はないということだと思います。民法の一応今回の改正がありまして、5年と10年という言葉がありますので、ある種、それが一つの出発点としてはあるとは思うのですけれども、まさに、鹿野先生が先ほどおっしゃっていただいたことと関連するとは思うのですけれども、現行の労使間の賃金の関係とかについて、新たにどういうような消滅時効がいいのかという観点で検討をした結果、短いとか、あるいは長いとかというのが、どちらもあり得るのかなということですし、年数についても、およそ常識的な範囲であるとは思うのですけれども、特に法律上の制限はないということだと思います。

 もう一つはタイミングでございますけれども、先ほど私が申し上げたように、整備法の中に労働基準法はさまざまな経緯があって入らなかったわけですね。要はおくれてしまったというものですね。なので、労働基準法以外の特別法については、民法の施行の平成32年4月1日と同時に施行されます。先ほど言った、国民年金法の起算日を書いたものも4月1日に施行されるわけなので、できれば、平成32年4月1日に合わせるのが一番いいのではないかなとは思いますけれども、では、それでなかったらだめなのかというと、必ずしもそういうわけでもありませんので、そこは必ずそうでなければいけないというわけではないのですが、できればそうしたほうがいいのではないかなとは考えております。仮に、例えば民法が施行されて、労基法はそのままという状態であっても、法律上は労働基準法115条は特別法として一応生きているという状況になりますので、それはそれでそのまま労基法115条は現行2年のままでいくのかなとは思っております。

 2つ目でございますけれども、これは、すみません、ちょっと整理をさせていただいて、鹿野先生からの補足があれば、補足をしていただいて、整理をさせていただきたいと思います。

○中嶋調査官 23条の関係でございますけれども、条文をごらんいただいたほうが簡便かと思いますが、資料の23ページの中ほどに、第23条としまして、「使用者は、」と始まりまして、「七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金云々」と続いておりまして、賃金請求権として整備をした23条が「賃金に限る」というのは、ここであります賃金の部分でありまして。

 それから、「その他の請求権」として書かせていただきました23条につきましては、賃金以外のここにございます積立金その他の金品ということで考えてございます。そういう整理でございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 まだ解釈論の話ですが、もし、鹿野委員のほうから起算点について何か補足があれば。

鹿野委員 そうですね。今後の解釈論なので、断定は避けたいとは思いますけれども、従来のほかの規定の解釈などに照らすと、「知った」というのは、法的な知識をもって法律上請求権があるということまでの認識が必要というわけではなく、その請求の基礎となる事実を認識したときとして考えるのではないかと思います。

 ちなみに、誰に対して請求できるのかということも、これを知らないと請求できないので、これも含めて知ったことを意味するものと思います。その点では、従来から、不法行為による損害賠償請求権については3年と20年の二重の期間が設けられていたのですが、その3年のほうの主観的起算点とかなり似た考え方になるのではないかと思っております。

○岩村座長 ありがとうございます。

 起算点をどう解釈するかというのをここで整理するのですか。

○猪俣課長補佐 多分、します。

○岩村座長 ありがとうございます。何か仕事がどっとふえた気がしますが、ほかはいかがでしょうか。

 では、佐藤委員。

○佐藤委員 私は法律外でございますので、勉強させていただいているというのが正直なところです。

 今までの議論で大分わかってきたのですが、先ほど、鹿野委員のほうから、民法改正のことについて、特に時効についての御説明があって、非常にわかりやすく伺ったところですが、そもそものこの検討会の消滅時効に関する検討というのは、これは民法改正がきっかけになっているということであれば、民法改正がそもそも改正された、そして、その改正の姿になった趣旨というものがございますね。例えば時効制度がもともと2ページのところに3点ございます。取引の安全、あるいは秩序の維持、権利関係の証明のため、こういう中で、社会経済情勢に合わせた形で改正だということで、途中は省きますけれども、そういう趣旨というものをできるだけ受けとめた形で、労働法に関わる、賃金に関わる、あるいは年金に関わることを検討するのがよいのかどうか。それとも、それは関係なく、いわゆる労働法は労働法なのだ、例えば賃金に関しても115条があるのだ、だから民法は改正されたではないかと。しかし、それはそれだけれども、労働法は労働法という考え方で議論してもいいのかどうか。つまり、そういう議論が可能であるのかどうか。あるいは、民法改正の趣旨というものはできるだけ重く受けとめた形で展開し、着地させるという考え方なのか。

 その辺りについて、今の段階でお答えになるのは大変困難かとは思うのですけれども、議論が非常にシンプルなように見えて、一個一個取り上げていくと難しいように思うのですね。そのときに、もともとの起点となっているきっかけは民法改正ですから、その趣旨というものに立ち返ることがある程度合理性を持つという考え方を強くにじませるのか。それとも、それから自由になって労働は労働のこういう議論で展開してもいいのかどうか。その辺り、ちょっと御教示、御示唆いただければと思います。

○岩村座長 ありがとうございます。

 事務局のほうでお願いいたします。

○猪俣課長補佐 お答えさせていただきます。

 今回、議論の出発点としては民法の改正がありまして、消滅時効については先ほど御説明したような改正の流れだということでございます。

 労基法115条については、まさに民法の消滅時効の特則として規定されているものでございますし、現行の2年についても、あくまで民法の規定を前提に、さらに、当時は労働者の保護と、あるいは使用者に酷過ぎるというような観点を踏まえて何年にするかと決めたわけですけれども、民法がベースにあったことだけは間違いないということであると思います。

 つまり、はっきりとしたお答えになっているかどうかはわからないのですけれども、やはり民法は踏まえなければならないと。その上で、例えば賃金とか年金の関係について、労働関係については特別的なものだということもありますので、労働法の観点から、あるいは労働政策の観点からどういう特則を定めるのがいいのかという観点で検討していくのがよいのではないかなということで、済みません、若干曖昧な答えで大変恐縮でございますけれども、以上のような形になるのかなと思います。

○岩村座長 いかがでしょうか。

○佐藤委員 そうしますと、具体的に言いますと、5ページ、6ページで、賃金が基本だけれども、幾つか退職手当等も含めていろいろ規定がございますね。それぞれについて微妙にあり、つまり、簡単に言うと、複雑なわけですね。民法の趣旨というのは、その複雑化したものをもっとシンプリフィケーションしようではないかというのが大もとだと思うのですけれども、もし、解釈が間違ったら、後で直していただきたいのですが、と理解しています。

 そうすると、基本的には、これも一括でとか、例えば技術的にあるいは書き方として、シンプリフィケーションということを目指すのか。それとも、一個一個こういうものがあるし、引きずってきているものがあるから、実態と合わせて、そういうものも一個一個丁寧に検討すべきなのか。これは、これからの検討会の持っていき方として随分大きな問題かなと思うのですね。その辺りでちょっと感触的につかんでおきたいと思ったものですから、御示唆をいただければと思います。

○岩村座長 では、藤枝課長お願いします。

○藤枝課長 御質問ありがとうございます。

 我々も資料上、考えられる で全てお示ししたところではございますけれども、当然、それぞれの規定について一つ一つこの検討会で御議論いただくということまではお願いするつもりはありませんが、当然、基本となる部分、賃金の部分、あるいは、賃金と少し性格が違うであろうと我々も思っているところで、きょうも説明しております年次有給休暇の辺り、この辺りの基本となるところを、考え方をこの検討会で整理していただければ、その示唆をもとに政府としても考え方あるいは審議会の場で議論いただくことになろうかと思いますので、それは基本となる賃金の部分をどう考えるか。派生して、この辺りは同じように考えればいいだろうというぐらいまで御示唆いただければ、さらに、ありがたいとは思っているところでございます。

○岩村座長 よろしいでしょうか。

○佐藤委員 はい。

○岩村座長 ほかにはいかがでございましょうか。

 では、安藤委員どうぞ。

○安藤委員 もう一点教えていただきたいことがございます。

16ページで、「年次有給休暇を取り残す理由」の2011年の調査結果が挙げられているのですけれども、ここで聞いているのは、正社員の調査だけが今挙げられているわけですが、それ以外の非正規でも、有期雇用だろうがパートだろうが、年次有給休暇は発生すると理解しております。こういう正社員ではない人が年次有給休暇をとってないことが多々あると思うのですが、それがなぜなのかということの調査結果はあるのでしょうか。もし、あるのだったら、また、今度見せていただきたいと思います。もしかしたら、その中では、多くの理由が、そもそもそれを知らないというケースがあるのではないか。となると、先ほど質問して、今回のこの検討会の最初に入るというというお話のあった、「知った時から」みたいな話にも関連してくるのかなと思ったので、有給休暇についてそもそも知っているかどうかの辺りも、もしデータがあれば、教えていただきたいと思いました。お願いします。

○岩村座長 すぐにわかりますか。

○猪俣課長補佐 私の記憶では、見たことがないような気がするのですが、確認をいたします。

○岩村座長 では、後日確認をしてということで、お願いをしたいと思います。パートとか有期になると、特に、年休取得の要件がかかってしまうので、状況によっては、年休がそもそも取得できないということがあるものですから、ちょっと調査の難しいところがあるかもしれませんが、そこは御確認をいただいてということでお願いをしたいと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。

 大体きょうのところは、導入の議論というところであって、この辺りでということでよろしいでしょうか。

 ここは確認しておきたいとかそういうことがあれば。

 森戸委員、どうぞ。

○森戸委員 済みません、大したことではないのですけれども、先ほどの事務局の整理だと、要は、この資料はすごい詳細にまとめていただいたように、この話は実はいろいろな制度に関わるけれども、基本は、核になる115条の2年を、民法改正に応じてどうするかということがメインで、そこをメインでやってくれと。起算点の話はもしかしたら、少し議論しなければいけないかもしれないけれども、ほかのところは、あとは事務局がやりますと、そういうふうに言ってくれたという。だから、基本のところを、それこそ全部議論していたら、いろいろ関わってしまうと思うのですけれども、基本はその2年をどうするかというところが核ですよという、そういう理解でいいのですかね。つまり、いろいろ話をし出すと、おもしろいネタはいっぱいあるのだけれども、ちゃんと議論をしなければいけないとすると、ある程度焦点はそこなのかなという確認です。

○岩村座長 事務局、いかがでしょうか。

○藤枝課長 できるだけ様々な観点から 御議論いただきたいという思いもありますけれども、基本的にはそういうことでございます。

○岩村座長 多くが、結局、賃金債権の2年に連動する形でその他のものも規定されているということですから、もしも、仮に、賃金債権の2年を動かすという話になると、ほかのも連動する可能性は高く、逆に言うと、連動させないのだったら、なぜ連動させないのかという説明が必要になるということだと思いますので、もし、そういうことになれば、そこは別途検討ということですが、そこまで特別の理由がないということであれば、恐らくは、この場合、連動するでしょうねということかなというようには思います。

 いずれにしろ、そこは基本的な問題である賃金の時効の起算点と、場合によってはその起算点をどうするかというところについての議論を少し深めて、それから、その他の場合について検討をし、あと、もう一つ、ちょっとやや特殊な考慮があるかもしれない年休の請求権について、もう一つの大きなテーマとして考えるということかなというふうに、座長としては、ざっとそういう理解ではおります。事務局もそれでよろしいですね。

 事務局のほうもそういうことだということですので、ありがとうございます。

 ほかにはよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。

 それでは、定刻よりはかなり早いのですけれども、本日の議論はここまでということにさせていただきたいと思います。

 次回ですけれども、賃金等の請求権の実務に知見をお持ちでいらっしゃる法曹関係者の皆さんからヒアリングをしたいと考えておりますけれども、具体的な日程につきまして、事務局からお願いをしたいと思います。

○猪俣課長補佐 次回の日程でございますけれども、来年2月上旬を目途に調整中でございます。確定次第、開催場所と併せまして、追って、御連絡させていただきます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、これで第1回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を終了させていただきたいと思います。

 年末のお忙しい中に御参集をいただきまして、まことにありがとうございました。

 皆様、どうぞよい新年をお迎えください。

 

 

 


(了)

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