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2017年3月29日 2017年3月29日 第10回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成29年3月29日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎5号館 9階)


○出席者

(委員)

大野部会長 倉根委員 明石委員 五十君委員 石川委員 大友委員 大曲委員 加茂委員 黒木委員 倉橋委員 黒木委員 倉橋委員

○議題

1.部会長選出及び部会長代理の指名について
2.健康危機管理調整会議の開催状況について
3.国際保健規則(IHR2005)に基づく活動について
4.世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)について
5.伊勢志摩サミットにおける対応について
6.熊本地震に関する対応について
7.2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組について
8.その他

○配布資料

資料1 健康危機管理調整会議の主な議題について(平成28年4月~29年3月)
資料2 IHR(国際保健規則)に基づく我が国の連絡窓口の平成28年度の活動内容について
資料3 「第17回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合」の概要
資料4 伊勢志摩サミットにおける医療体制について
資料5 熊本地震に関する厚生労働省の対応について
資料6 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた厚生労働省の取組について
参考資料1 国際保健規則(IHR2005)について
参考資料2 世界健康安全保障イニシアティブ(Global Health SecurityInitiative:GHSI)について
参考資料3 第17回世界健康安全保障閣僚級会合共同声明(英文・仮訳)
参考資料4 テロ対策の強化に向けた主な取組
参考資料5 主なテロの未然防止対策の現状
参考資料6 厚生科学審議会令

○議事

 

 

○日野健康危機管理・災害対策室長 それでは定刻になりましたので、ただいまから第 10 回厚生科学審議会健康危機管理部会を開催いたします。私は厚生労働省大臣官房厚生科学課健康危機管理・災害対策室長の日野です。委員の皆様には本日御多忙のところ、お集まりいただき御礼を申し上げます。

 本日は吉川臨時委員、野村臨時委員、古米臨時委員から欠席の御連絡を頂いております。また、大野委員、加茂臨時委員からは少し遅れるという御連絡を頂いております。委員 13 名のうち現段階で出席が 8 名ということで、過半数を超えておりまして、会議が成立していることを御報告申し上げます。

 まず最初に新任の委員の方を御紹介させていただきます。国立感染症研究所の倉根委員です。次に東京農業大学の五十君臨時委員です。日本医師会の石川臨時委員です。国立国際医療研究センター国際感染症センターの大曲臨時委員です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 また、前回 ( 9 ) の開催から、事務局に人事異動がありましたので御紹介いたします。宮嵜審議官です。次に古田原子力災害対策調整官です。次に吉本国際健康危機管理調整官です。また、福田技術・国際保健総括審議官が別用務のため、本日は欠席をさせていただきます。また、佐原厚生科学課長につきましては、別用務で遅れて参加をいたします。事務局を代表して宮嵜審議官から一言御挨拶を申し上げます。

○宮嵜審議官 改めまして、皆さんおはようございます。第 10 回の健康危機管理部会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。まず、委員の先生の皆様方におかれましては、御多用のところ、お集まりくださいまして誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げる次第でございます。

 本部会は原因の明らかでない公衆衛生上の緊急事態に際しまして、臨時に会議を開催し、事態への対処について御議論いただくこととしておりますけれども、特段の事態がない場合でも定期的に会議を開催することとしております。本日は定期の会議でございますので、昨年の 3 月の会議以降に生じた健康危機管理上のトピックスについて事務局から御報告させていただきまして、健康危機への対処の適切な在り方について御議論を賜りたいと考えている次第でございます。

 昨年以降、熊本地震をはじめとする自然災害、それからジカウイルス感染症や結核などの感染症の発生、それから食中毒等、国民の生命、健康の安全を脅かす事例は、度々発生しているところでございます。また、 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えまして、テロ対策等の検討を進めていく必要がございます。

 こうした点も含めまして、健康危機発生時における適切な対応につきまして、委員の先生方の御意見を頂きたいと考えているところでございます。今後とも本部会で頂いた御意見を健康危機管理対応に生かしてまいりたいと考えておりますので、本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

○日野健康危機管理・災害対策室長 それでは、頭撮りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 続いて、本日の会議資料の確認をお願いします。座席表、委員名簿、それから議事次第、資料 1 から 6 まで、参考資料 1 から 6 までがお手元に配布されていると思いますが、落丁等ありましたら事務局にお知らせいただきたいと思います。よろしいでしょうか。

 それでは、これより議事に入らせていただきます。まず議題 1 部会長の選任です。部会長については厚生科学審議会令第 6 条に定められており、厚生科学審議会委員の互選によって選任することになっております。この厚生科学審議会の委員については、本部会では大野委員と倉根委員が該当しますが、大野委員が遅れておりますので、大野委員が到着次第、議題 1 に戻り、部会長の選任をさせていただきます。それまでの間は事務局のほうで進行をさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。

○各委員  ( 異議なし )

○日野健康危機管理・災害対策室長 それでは、議題 1 は後に回して、議題 2 健康危機管理調整会議の開催報告になります。まず、資料 1 を御覧ください。「健康危機管理調整会議の主な議題について」 ( 平成 28 4 月~平成 29 3 ) という資料です。健康危機管理調整会議については、薬害エイズの問題等を踏まえ、厚生労働省内で組織の壁を越えて情報共有を迅速にし、対応を検討していくという位置付けで、定例的に月に 2 回、会議を開催し、必要に応じて臨時会を開催して、健康危機情報の共有と対応策の検討を行っている会議です。

 こちらの会議ですが、今年度 1 年間の主な議題について報告をいたします。 4 つの分野に分かれておりますが、まず食品関係です。食中毒事例について、今年、特に年明けになってからの和歌山や立川でノロウイルスが流行りましたが、その情報共有と対応策の共有を行っております。

2 番目の感染症関係ですが、まずジカウイルスの関係です。昨年 2 月に WHO から PHEIC が出ましたが、こちらの国内への輸入症例の状況のみならず、海外への動向も含め、情報共有を行いました。 2 番目のエボラ出血熱ですが、こちらは昨年の 3 月だったと思いますけれども、 PHEIC が解除されたので、その件についての情報共有を行っております。

1 つ飛ばして鳥インフルの関係ですが、鳥インフル (H7N9) については、特に中国において今年度、患者がやや多くなっているという状況があります。こちらの発生状況と対応について、省内で情報共有を行いました。また 1 つ飛ばして麻疹の関係ですが、昨年は松戸、関空、兵庫県で麻疹が発生いたしました。それの状況についての情報共有を行っております。

3 番の通報のあった健康危険情報については、腹腔鏡手術における副作用の問題などの情報を共有しております。

4 番目のその他ですが、まず 1 つ目の染料・顔料の中間体の製造工場における膀胱がんの発生事案ということですけれども、これはオルト - トルイジンの問題であり、こちらはオルト - トルイジンを規制の対象に加えるという省令改正を行い、今年の 1 月から施行しております。また、 4 月から検診の対象に加えます。以上のことなどの情報共有を行っております。

2 つ飛ばして、 C 型肝炎薬「ハーボニー配合錠」の偽造品問題、今年の年明けに出ましたが、これの状況について関係部局と情報共有を行い、対応策を検討したところです。

 資料 1 の説明は以上です。ただいまの説明について、御意見、御質問等ありましたら、よろしくお願いいたします。

○石川委員 その他の医療機器の回収事案とは血圧計の話ですか。水銀の関係。

○日野健康危機管理・災害対策室長 半自動除細動器と脊椎手術用の医療機器の関係です。

○石川委員 それを広範に回収したということですか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 そうですね。

○石川委員 分かりました。

○日野健康危機管理・災害対策室長 詳しく申し上げますと、まず脊椎の手術用の医療機器関係は、筋肉内刺激電極の部品につきまして、未承認の医療機器が含まれていたという事案が 6 月にありまして、それの回収を製造販売業者が行ったという報告です。もう 1 つが、今年の 2 月ですけれども、半自動除細動器につきまして、ケーブルのコネクターの固定が不十分だったという事案がありまして、それで回収を行ったと。その報告を行ったところです。そのほかにありますか。よろしいですか。それでは議題 2 については以上です。

 続いて議題 3 、国際保健規則の関係について御報告いたします。それでは資料 2 「国際保健規則に基づく我が国の連絡窓口の平成 28 年度の活動内容について」という資料と、参考資料 1 「国際保健規則 (IHR2005) について」という資料を、参照しながら御説明いたします。

 まず、参考資料 1 のほうを御覧ください。もともと IHR は国際保健規則、 International Health Regulations というものですけれども、これは疾病の国際的伝播を最大限防止するために作られた規則ですが、 2005 年の改正前は黄熱とコレラとペストの 3 種類を対象にしていました。ただ、最近の SARS や鳥インフルなどの新興・再興感染症の対応ができなかったということと、テロリズムへの対応を強化する必要があるということで、 2005 年に IHR が改正されて、 2007 年から発効しているという状況です。

 真ん中ぐらいにポツが 2 つありますが、「原因を問わず、国際的な公衆衛生上の緊急事態を構成する恐れのあるあらゆる事象」を、 WHO に報告することを参加国に義務付けすること。それと、各国ごとに、 IHR 担当窓口を常時確保することを参加国に義務付けております。日本では厚生労働省と感染研などが、この National Focal Point に登録されております。

 参考までに過去に PHEIC と認定された事例は 4 例あり、豚インフル (H1N1) の関係、野生型ポリオウイルス、 2014 年のエボラ出血熱、昨年のジカウイルス、この 4 つが PHEIC に該当するものです。

 今度は資料 2 のほうに移行し、今年度の活動内容について報告します。まず、 WHO との情報共有ですが、 WHO では何らかのイベントが発生した場合、 EIS というイベント・インフォメーション・サイト (Event Information Site) と呼ばれるウェブサイト上に掲載された情報が関係各国に伝達をされるという仕組みになっております。我が国からは平成 28 年度において関西国際空港の利用者と従業員の麻疹の発生について、日本から WHO に報告を行って、 EIS 上で各国に情報共有が行われたという事案がありました。

2 番目の、他の IHR 参加国連絡窓口の National Focal Point(NFP) との個別情報交換、要するに 2 国間の情報交換ですけれども、こちらは結核、麻疹、ジカ熱等の感染者の患者が国際的に移動している情報について情報交換を個別に行ったというところです。

3 番目、訓練への参加ということですが、 WHO の西太平洋地域事務所である WPRO は毎年、加盟国の連絡窓口を対象にコミュニケーション訓練を実施しております。こちらについて我が国でも 12 9 日に開催されたものに参加いたしました。 WPRO の仮想国において未知の感染症が発生して、その人が各国内に入国したというシナリオの下に、 WHO とどうやって連絡調整するのか、 IHR 通報を行う訓練が行われたところです。議題 3 についての説明は以上です。こちらについての御意見、御質問等ありますでしょうか。よろしいですか。それでは議題 3 については以上です。

 続いて、議題 4 世界健康安全保障イニシアティブ (GHSI) の関係です。資料 3 と参考資料 2 から 3 を御覧ください。まず、参考資料 2 を御覧ください。こちらは GHSI 世界健康安全保障イニシアティブの概要資料です。この GHSI の経緯ですけれども、 2001 年に発生した 9.11 の同時多発テロを受けまして、アメリカ、カナダ政府の呼び掛けで、世界的な健康危機管理とテロリズム対策に各国の連携を話し合うことを目的に各国保健担当大臣会合として発足したものです。構成メンバーですが、 G7 とメキシコ、あとは EC です。オブザーバーとして WHO も参加しております。

GHSI の構造と活動ですが、図にあるとおり、閣僚レベルの会合があり、その下に局長級の実務者レベルに基づく、いわゆる GHSAG と呼ばれている世界健康安全保障行動グループがあります。その下に専門家レベルでワーキンググループが 5 つほど設置されております。我が国はこのワーキンググループで言いますと、化学イベントのワーキンググループの議長国となっております。各ワーキンググループは年 1 2 回開催されており、日本としても可能な限り出席しております。

 資料 3 に戻ってください。 GHSI の閣僚級会合の報告です。今年の 2 24 日にベルギーのブリュッセルにおいて、 GHSI の閣僚級会合が開催されました。参加は先ほども申し上げたとおり、 G7 とメキシコ、 EC 、オブザーバーとして WHO が参加しております。会議の概要ですが、今回の第 17 回の GHSI の閣僚級会合ですが、大きなテーマとしては、テロ対策における保健セクターとセキュリティセクターの連携というものです。ゲストスピーカーとしてユーロポールの副長官が出席いただいて、その連携についての基調講演が行われました。

 その後、実際にパリやブリュッセルでテロが起きましたが、パリ及びブリュッセルで爆弾や銃、炭疽菌によるテロが発生したという仮想シナリオに基づき、様々なセクターが連携した対応について議論を行ったところです。また、 WHO のプログラム責任者であるピーター・サラマ博士からプログラムの状況を聴取し、感染症パンデミック等に対する GHSI WHO の連携について、活動報告を行ったところです。

 各国の代表は真ん中から下に書いておりますが、我が国は厚生労働省の山本審議官が参加しました。昨年ぐらいから 2 月の開催になっており、ちょうど予算の審議を行っており、なかなか政務の参加が難しい状況ですので、事務方が参加しております。議題 4 の報告については以上です。ただいまの説明について、御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。

○倉根委員 追加と言いますか、私のほうから 1 つ、世界検査ラボネットワークというものが、この下にあるのですが、感染研からも年 2 回、ほぼコンスタントに参加しております。感染研からはウイルス第一部の西條部長がコンスタントに参加しまして、情報の共有を行っております。参加メンバーがほぼ固定していますので、非常にお互いが顔見知りになって、グループとして迅速に動けるという体制ができていると理解しております。

○日野健康危機管理・災害対策室長 ありがとうございます。

○大友委員 医科歯科の大友です。 2 つ質問です。 1 点目は細かい話ですが、この仮想シナリオの内容ですけれども、爆弾・銃によるテロ、これは同時にたくさんの怪我人が発生するということなのですが、一方で炭疽菌のテロというのは、全く異質なものだと思って見ておりました。つまり爆弾・銃によるテロの 1 週間ぐらい前に、炭疽菌の芽胞か何かをまいた。それで 1 週間後にいろいろな人に感染が発生する時期を見計って、爆弾と銃のテロを被せたということなのでしょうか。それが 1 点目です。

○吉本国際健康危機管理調整官 シナリオについてですけれども、まず爆弾テロ、銃のテロと、あとは炭疽菌のテロは場所が違った設定となっていまして、爆弾・銃については実際にパリでありましたテロをモデルとして、パリで起こったという設定になっています。その後、場所を変えてブリュッセルにおいて地下鉄で炭疽菌をまかれたという設定です。

○大友委員 全く別のものですね。

○吉本国際健康危機管理調整官 はい。

○大友委員 了解しました。

○吉本国際健康危機管理調整官 同じテロリストが起こしたという設定だと思います。

○大友委員 もう 1 点が、健康危機管理プログラムと共同していくということですけれども、 2014 年ですか、 WHO のエボラ感染症の対応がまずかったことが批判されました。 1 月に発生し、 3 月に小さなアウトブレイクがあったのにもかかわらず、 PHEIC の発令が 8 月ということは、非常に対応が遅れたという反省の下に、 2015 年に新しくヘルスエマージェンシーレスポンスに軸足を置くという宣言が WHO の総会であったと思うのです。

 それに基づいて私は JICA 、外務省の国際救助隊医療チームの総合調整部会長を昨年までやっておりましたので、深く関わっているのですが、その新しい枠組み、ヘルスエマージェンシーワークフォースという言い方をしていましたけれども、そのことがこの健康危機管理プログラムのことを指しているのかなと思うのですが、この GHSI 若しくは IHR の枠組みの中での対応と、このヘルスエマージェンシーレスポンスとの協働と書いてあるので、具体的にどのような協働をしていかれるのか。共同声明に採択したということなので、どういう内容だったのかを教えていただければと思います。

○吉本国際健康危機管理調整官 こちらの WHO のプログラムは、 WHO のヘルスエマージェンシーズプログラムであり、これまでも GHSI WHO は協力をして、例えば健康危機用医薬品の世界的な共有枠組みの策定等を行ってきていまして、 GHSI 側の専門家グループが WHO に対して技術的な支援というものを行ってきたと。

 今回の閣僚級会合でも、そうしたこれまでの支援を確認するとともに、今後も協力をして、技術的支援を提供していくということが確認されております。

○日野健康危機管理・災害対策室長 そのほかはありますか。それでは、議題 4 は以上です。

 続いて議題 5 、伊勢志摩サミットにおける対応について御説明します。資料 4 を御覧ください。昨年、この会議で伊勢志摩サミットの方針について御報告しました。昨年の 5 月に実際、伊勢志摩サミットがありましたので、その対応状況について御報告をさせていただきます。

 まず伊勢志摩サミットの概要ですが、平成 28 5 26 日から 27 日にかけて行われました。開催地は三重県の伊勢地域と志摩地域です。参加者は G7 の首脳、 EU 議長、 EU 委員長、アウトリーチ国代表、配偶者などの VIP の方々が大体 100 名ぐらい。その次に各国の政府代表団などが 2,000 人ぐらい、マスコミの関係者が大体 5,000 人ぐらい、警備・警察の関係者が 2 万人ぐらいということで、大体併せると 2 7,000 人ぐらいが参加するイベントでした。特に VIP の出入国経路ですが、こちらは伊勢志摩地域には特に大きな飛行場がないということで、愛知県の中部国際空港を使ったというところに特徴があります。

 続いて 2 ページです。ここには、まず救急医療体制の基本方針が書いてあります。この基本方針ですが、 VIP の首脳等に対する救急・災害医療体制をどうやって確保するか。 2 番目としてメディアに対する、同じく救急・災害医療体制の確保。 3 番目に、その他の関係者に対する救急・災害医療体制の確保ということで、この場合、サミット期間中に、急にその地域の人口が増えることになりますので、それに伴う地元住民に対する医療の影響も考慮する必要があるということが、基本方針とされていました。

3 ページは、その救急医療体制です。体制としてはまず現地に医療対策本部を設置させていただきました。あと、それぞれ個別の対応として、 VIP に対応する首脳対応班を設置しました。次に救護・災害班を設置し、その中でメディアの対応、メディアセンターと関係者の対応班という形で、班を 2 つに分けていました。それと、出入国経路におきます、中部国際空港に対応する班を設置したということ。それと最後に、個別に事案が発生した場合に備えてということですが、 NBC 、核とバイオとケミカル、核と生物と化学、こちらのテロが起こった場合の専門家の対応班を設置しました。それぞれの本部であったり対応班は、 5 25 日から 28 日の間、現地を中心に設置をさせていただいたところです。

 これは非常に粗い資料なので、ここには書いていませんが、例えば首脳を受け入れる医療機関においては、専門家を配置させていただいたり、また、このほかにも現地に診療所を設置しましたが、医薬品、医療機器、こういったものを確保させていただいたり、それと、直接医療の関係ではないのですが、例えば水道法に基づく会場等の立入検査を行ったということ。それと、外国人宿泊客の本人確認を徹底させていただいたということ。それと、感染症のサーベイランスについて、通常のサーベイランスのみならず、実際に現地の医療機関を 1 日に 2 回回って、リアルタイムのサーベイランスを行ったり、それと検疫体制の強化を行ったりということ。それと毒劇物、病原体の適正管理の徹底だったり、食品衛生監視の体制の強化、こういったことを全体としてはさせていただいたところです。

 次に 4 ページです。実際の本番の前には、訓練を行わせていただきました。実動訓練ということで、現地で実際に首脳対応班を中心に、シナリオを用いた訓練を実施したということ。また、行政職員との情報連携、搬送方法等の確認を行わせていただいたところです。

 また、机上訓練ということで、省内において机上訓練を実施した。また、電話の連絡体系であったり、連絡事項の内容確認などを行わせていただいたところです。

 伊勢志摩サミットの対応の結果ですが、診療所などを受診した方は、大体 50 名強でした。その受診した方ですが、ホテルの従業員の方であったり、警備の職員であったり、あとはアメリカのセキュリティスタッフの方、マスコミの方々など、 50 名余りが受診されました。基本的には体調不良という方が多かったのですが、ちょっと重めといいますか、そういった感じだったのが、インフルの方が 1 名出たということと、あとは一過性の意識障害を起こした方が 1 名ずついらっしゃったということです。全体としては、大きな問題は本番では起きなかったということです。

 ただ、いろいろ課題はありまして、特に準備段階での課題が大きかったと考えています。例えば VIP の方々がどうやって動くのかという情報が、やはり医療側では必要になってくるのですが、そこは警備上の問題、情報がなかなかこちら側に共有されないというのがありまして、その辺りで苦慮したということがあります。また、実際にホテルの中に診療所を設置したのですが、そのホテルが 4 月には、まだサミットに備えて改装を行っていて、診療所が実際に出来る場所の確認、現地確認がなかなかできなかった。それで、本番の直前になってできたのですが、実を言うと想定していたより少し面積が狭くて、別に更に部屋を確保したり、そういったことが起こったりしました。

 それと、あとは診療所を設置しましたが、そこでの医薬品の確保をどうやってやるかというのが問題になりました。買い取ってしまうと、余ったら破棄しなければいけないとか、そういった問題がありますので、結局は薬剤師会さんに御協力いただいて、医薬品を準備していただいたということになりますが、そういったところの事前調整をどれだけしっかりできるのかというのが、大きな課題だったかなと思っています。

 これから 2020 年に東京オリンピック、パラリンピックがありますので、そういったところでも恐らく VIP 対応というのが、当然また出てくるはずですので、こういった伊勢志摩サミットの知見を踏まえながら、あらかじめ対応策を十分検討する必要があるかなと思っています。資料 4 の説明は以上です。こちらの件について、御意見、御質問等がありましたらお願いします。

○黒木委員 伊勢志摩サミットの NBC 対応班で、現地に派遣させていただきました。準備段階からいろいろな化学テロに対する、解毒剤等を準備させていただいたのですが、 VIP に対する化学テロの解毒剤というのは予算をいただいて、前回、前々回と同様、準備をしました。

 しかしながら今回、メディアセンターに対する救急・災害医療体制ということでは、当初、こちらには VIP は行かないということで、解毒剤の配備は考えていなかったのです。後で VIP も寄るかもしれないといったことで、 VIP 用のものを少しメディアセンターに置くことになるのですが、実はメディアセンターというのは各国のいろいろなメディアの方々が大勢いらっしゃいますので、ソフトターゲットになりやすいと思います。予算的にはそういった所での解毒剤の確保もしておかないといけなかったと、反省点として上げられると思います。 VIP 用は VIP 用で、 VIP を守るための予算で数量を準備しているわけですので、メディアセンターのほうは別予算が必要であると。

 国家備蓄として解毒剤を配備しましたので、それをこういった国際会議向けに動かしていくのかなと思っていたのですが、なかなかそれも難しかったということを後で聞きまして、三重県は三重県のほうで、診療に対しては薬剤師会のお力をお借りしたけれども、メディアセンター分の大量の解毒剤までは、薬剤師会にはないということでした。オリ・パラでの VIP 対応もあるということであれば、そちらも考慮していただければと思います。

○日野健康危機管理・災害対策室長 ありがとうございます。そのほかはありますか。

○大友委員 私も首脳対応ということで詰めていましたが、毎回、サミットの医療体制はどんどん進化していて、前回、洞爺湖のときには、実際にアフリカ連合の議長が航空搬送され、しかもそれがしっかり対応できたということで、よかったと思っています。今回は軽症ばかりでしたのでいいのですが、あれだけ警備が厳しい所で、しかも今回はオペ室まで準備したという、また進化したなと思っているのですが、あれだけ警備がすごい所で、本当に首脳がテロに遭うのかなということを考えながら、あそこにいました。

 一方でロンドンの同時多発テロは、イギリスでグレンイーグルという、観光地で行われていたサミットのときに、首都のロンドンが狙われたわけです。ですからむしろ伊勢志摩で何か起こることよりは、名古屋、東京、大阪のほうが絶対リスクが高いと思っております。前回のこの会議でも申し上げたのですが、そこのところの補強というのを、また今後、是非検討いただいたほうがいいと思います。

○日野健康危機管理・災害対策室長 ありがとうございます。またテロのところで、少しお話をしますが、関係省庁と会議が立ち上がったりしていますので、連携しながら検討していきたいと思っています。そのほかはありますか。よろしいですか。それでは、議題 5 については以上です。

 ここで議題 1 に戻らせていただきます。先ほども申し上げましたが、部会長の選出と部会長代理の指名です。部会長については審議会令 6 条において、厚生科学審議会の委員の互選で選任することとなっています。本部会の委員は大野委員と倉根委員ですが、いかがでしょうか。

○倉根委員 この分野に非常に造詣の深い大野先生が最適ではないかと推薦します。

○日野健康危機管理・災害対策室長 大野委員、いかがですか。

○大野部会長 未熟者ですが、皆さんの御協力を頂ければ、何とかやっていけるのではないかと思います。よろしくお願いします。

○日野健康危機管理・災害対策室長 それでは、今後の議事進行については、ただいま選任された大野部会長にお願いしたいと思います。それでは、部会長の席に移動いただけますか。よろしくお願いします。

○大野部会長 それでは、会議を継続させていただきたいと思いますが、その前に一言お詫び申し上げます。今日は交通の事情で大分遅れてしまいまして、申し訳ありませんでした。危機管理のための場なのに遅れてしまって、問題点が一つ出てきたかなと思いました。どうも失礼いたしました。先ほど申し上げたように、委員の皆様、そして事務局の皆様の御協力を得て、何とか運営していきたいと思いますので、御協力、よろしくお願いします。

 それでは、部会長代理の指名が必要なわけですね。

○日野健康危機管理・災害対策室長 そうです。

○大野部会長 では、今日のように事故が起こることが十分考えられますので、そういう場合の代理として、倉根先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○倉根委員 承知しました。

○大野部会長 どうもありがとうございます。倉根先生、よろしくお願いします。それでは、会議を継続させていただきます。議題 5 の伊勢志摩サミットにおける対応についてまで終了しましたので、次は議題 6 の熊本地震に関する対応について、事務局から説明をお願いします。

○日野健康危機管理・災害対策室長 それでは、資料 5 の熊本地震について報告します。まず昨年 4 月に発生した熊本地震の概要です。熊本地震は前震が 4 14 21 26 分に発生しました。下に震度分布がありますが、まず 4 14 日の夜に起きまして、その右下、 4 16 1 25 分にいわゆる本震が起こったところです。全体としては 6 弱以上を観測する地震が 7 回発生しました。震度 1 以上の地震が 4,000 回を超えています。最近では大分、活動は減衰してきてはいるものの、まだ活動は継続しているという状況です。

 この地震の特徴としては、やはり前震の後に大きな本震が来たということで、前震の段階で耐えていた建物が、本震で倒れたりということがありました。それと、両方とも夜に起こったということで、なかなか被害状況の把握が、朝まで分からなかったというのが、 1 つの特徴と言えると思います。

 続いて 2 ページの熊本地震の被害状況です。まず人的被害ですが、死者は現段階で 161 名とされています。この 161 名のうち、警察が検死で確認している死者、いわゆる直接地震の被害で亡くなった方は 50 名で、残りの 111 名の方は、いわゆる震災関連死と呼ばれる方々です。例えばストレスによる病気になったり、エコノミークラス症候群とか、自殺であったりとか、被災生活でアルコールを大量に飲んで病気になられる方、そういった方々を含めて、全体として 161 名ということです。重軽傷の方は 2,692 名です。

2 つ目、避難所の状況ですが、県内の避難所が閉鎖されたのは、大分は 5 16 日でしたが、熊本は 11 18 日でした。最大の避難者数は、熊本は 18 4,000 人弱、大分は 1 2,400 人余りです。ただ、こちらは避難所に避難された方ですので、例えば車中で泊まっていた方、そういった方々を含めた数字は、まだ弾き出されていません。最大の避難箇所数ですが、熊本は 855 箇所、大分は 311 箇所でした。

 住家の被害です。住宅被害は全壊が 8,369 戸、半壊が 3 2,478 戸、一部破損が 14 6,000 戸余りです。あと、火災が 15 件で、そんなに多くなかったかなと思います。それは不幸中の幸いだったと考えています。

 ライフラインの被害状況ですが、電力・ガス・水道の最大戸数は御覧のとおりです。水道については 44 万戸余り、復旧は 7 28 日です。

 次に 3 ページを御覧ください。熊本地震における厚生労働省の対応について、簡単に御説明します。まず現地対策本部に職員を派遣して、現地のニーズを細かく把握しました。今回の特徴としては、これは政府全体もそうなのですが、各省の幹部クラスを派遣させていただいて、現地対策本部での意思決定を素早く行ったというのが、 1 つの大きな特徴です。

 もう 1 つは、今回の地震は熊本市内もかなり大きな被害を受けたということで、熊本県庁と熊本市役所もかなりやられてしまったということがあります。この結果、医療機関、福祉施設などの被害状況の把握、県庁や市役所を通じた情報の把握がなかなか難しかったということもあって、厚労省からかなり現地対策本部に人数を送って、直接情報収集をしたり、そういったこともさせていただいたのが大きな特徴です。

2 つ目の対応ですが、発災直後は DMAT であったり、あと、熊本地震で初めて送りましたが、 DPAT を送りました。 DPAT は心のケアを行うチームです。急性期が終わった後は、 JMAT 、日赤医療チーム、そういった様々な医療救護チームの現地の派遣調整に協力したところです。

3 点目ですが、避難所においてエコノミークラス症候群対策などの衛生管理・健康対策を推進させていただいたところです。今回の震災では、エコノミークラス症候群がかなりプレイアップされましたが、その背景としては、例えば避難所のトイレが非常に汚くて、特に女性を中心に、余りトイレに行きたがらない、そのために余り水分を取らないようにしたということで、エコノミークラス症候群が結構発生したという背景がありました。

4 点目、水道の関係です。水道の関係は、全国の事業者から応援の職員を派遣して、水道の復旧を支援したところです。

5 点目としては、福祉施設の介護職員の派遣、応援派遣の調整を行いました。これは、特に福祉施設は、福祉避難所になっているケースが多いという特徴がありますので、かなり福祉施設の職員に負担がかかるということもあって、全国からの派遣調整を行わせていただいたところです。

 また、被災地におきましては、 1 か月ぐらいたちますと、やはり雇用の問題が出てきますので、雇用の維持の要請であったり、雇用調整助成金の対応であったりということで、そういった県民の方々の生活の安定のための取組を行うなど、息の長い支援を行ったというのが厚生労働省の対応です。

 次に財政的なお話ですが、平成 28 年度の 1 次補正と 2 次補正におきまして、様々な事業を計上させていただきました。例えば医療施設や社会福祉施設の災害復旧、水道の災害復旧、被災者の見守り相談支援事業、心のケアの事業などです。それと、先日成立した平成 29 年度予算においては、見守り相談支援であったり、心のケアの支援体制整備であったり、こういった予算を計上させていただいたところです。

 続いて 4 ページ、熊本地震への対応を踏まえた政府と厚労省の動きです。 4 14 日と 16 日に発生して、その地震を踏まえて、今後の対応にどうやってつなげていくのかということを行いました。まず政府全体の動きですが、 6 6 日から熊本地震の初動対応の検証チームを開催しました。こちらは検証レポートが 7 20 日に公表されているところです。

7 29 日からは、もう少しメンバーを拡大して、現地の方々なども含めた、熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援検討ワーキンググループが開催され、厚労省からも参加し、検証作業を行ったところです。

 この 7 回の議論を通して主な論点になりましたのは、まず今回の熊本地震では、プッシュ型支援というものが行われました。これまでは、いわゆるプル型といって、地元からの要請に基づいて支援物品を届けるというのが基本だったのですが、今回は県庁や市町村がかなりやられてしまって、機能がかなり落ちていたということもあって、要請がある前に国のほうから物資を送るといったことをさせていただきました。

 ここに「自己完結の徹底」と書いていますが、こちらは実際に佐賀や福岡の物資集積拠点に送って、そこからまた小分けして現地の近い所まで送るのですが、現地の近い所までは行くのですが、では、どこどこの避難所までという、いわゆるラスト 1 マイルという言い方をしますが、そこの所までの物資の輸送というのが、なかなか難しかったと。情報がちゃんと整理できずに、混乱してしまっていたという課題があります。地元自治体が非常に被害を受けている場合については、やはり自己完結、ちゃんとそういった所まで輸送できるようにしなければいけないということが確認されました。一方で支援を受ける側の地方公共団体の、支援を受ける体制の構築も必要ではないかという御指摘が出たところです。

2 番目として、被災者の速やかな状況の把握と支援体制の強化ということですが、今回の熊本地震では、避難所だけではなくて、やはり車中泊という問題がかなり出たということです。なかなかそこの把握ができず、保健師さんが足で稼いで情報を取ってきたりといったことがありました。ですので、そういったところを例えば ICT などを駆使して、情報共有できる仕組みを構築すべきではないかと、そういう声が出ていました。こういった報告書が 12 20 日に出ていまして、この報告書の内容を踏まえて、今、政府全体の防災の基本計画の見直し作業に着手しているところです。

 厚労省における対応ですが、こうした政府全体の検証報告や、省内における検証などを踏まえて、今年の 2 月に防災業務計画の改正を行ったところです。主な内容については次のページ、今年の 2 月に改正した防災業務計画の修正ですが、まず 1 つ目、省内の防災体制ということで、平常時の取組として、各部局において防災のマニュアルであったり、過去の災害での対応した記録をしっかり整備するということ。それと、省内の災害対策本部に従事する災害対策の幹部職員であったり、あとは防災にすぐに従事する予備役職員を設定したり、そういったことの見直しを行ったところです。

 次に災害時の取組としては、本省職員の参集基準の明確化を行ったり、あとは被災地に厚労省から職員を派遣すると、やはり時間がかかりますので、出先の労働局や厚生局に協力をいただき、被災地の状況をいち早く把握できる体制を構築するということを作ったところです。

 次に 2 番目の医療・保健ですが、まず関係職員に EMIS の研修を実施するということです。これは EMIS の仕組みがありますが、それの情報を、ちゃんと関係する職員全員が熟知して、操作方法を分かるようにしておく必要があったということです。

 災害時の取組ですが、今回、熊本地震におきましては、保健所機能がかなり落ちてしまって、被災者の健康管理に関する情報収集と、それの分析、そういったところがしっかりとできていなかった部分もありました。そこをしっかりとできるように、取組を進めていくということを書かせていただいています。それと、エコノミークラス症候群であったり、そういったところの対応についても、対応方法を周知するということを、防災業務計画に書かせていただきました。また、透析医療機関の関係ですが、しっかりと状況把握ができるように、都道府県に連絡窓口を設置するということを決めさせていただいたところです。

3 番目は水道です。こちらは都道府県や市町村、公益業態の水道事業者について、危機管理対策マニュアルを整備するということを書かせていただいております。また、私有地内の水道管の破損時の対応方法を、しっかりと周知していくということを書かせていただいております。

 最後に雇用・労働の関係ですが、特に問題になってくるのは解雇・雇い止めの情報です。それをしっかりと、本省を含めて一括管理ができるようにして、必要な対応をとれる体制をとっていこうということを、見直しをさせていただいたところです。

 以下、 6 ページ以降は参考資料です。 6 7 ページについてはもう少し詳しい、熊本地震においてこういう対応をしましたということを書かせていただいております。 8 9 10 ページは DMAT と、 DMAT のロジスティックチームや、災害医療コーディネーターの資料です。 11 12 ページは DPAT の概要と、活動状況についての資料を書かせていただいております。 13 ページは保健師の派遣調整のスキーム図です。

 最後に 14 ページは水道の関係です。水道の関係については、これは過去の自然災害における断水率 100 %から、どのくらいの期間で復旧していったかという数字を書かせていただいたものです。今回の熊本地震は青のラインで書かせていただいていますが、見ていただいて分かるとおり、かなり低い所を行っているので、過去の災害に比べると、復旧は早いほうではあったということが言えると思います。ただ、一方で電気やガスが、もう少し早めに復旧していたので、少し水道が遅いのではないかという議論が起こったのは事実です。

 ただ、今回の熊本におきましては、例えばすごく大きな水道管、地下 10m の所にある太い管が破損してしまったということで、かなり工事が大変で時間がかかったケースであったり、あとは橋が落ちてしまって、それにくっついていた水道管が破損してしまって、水道が通らなくなったりとか、それと、あそこは水がかなり豊富に湧き出る地域でして、水道事業者以外の住民の方々が独自に作られた水道などがありまして、管路がどこにあるかという図面がなかったり、そういったいろいろな要因があって、こんな感じになっていたということです。説明は以上です。

○大野部会長 ただいまの説明について御意見、御質問はございますでしょうか。お願いいたします。

○倉橋委員 保健所長会の倉橋でございます。熊本地震につきましては、 DMAT DPAT JMAT 、日赤等々、多様な救護支援チームが活動するようになって本当に心強い限りです。

 先ほど保健所機能が落ちたという話がございましたが、保健所長会としましても、そのような支援に緊急に対応していたところです。これは、実は DHEAT という名称を付けておりまして、災害時健康危機管理支援チーム (Disaster Health Emergency Assistance Team) ということで用意していたのです。ところが、実は平成 28 年度に人材育成登録を始めたところで、それがまだ正式に発足しておりませんで研修を始めたところなのですが、実際には動くところまで組織化されていなかったという状況でした。といっても、この間に起こりましたので緊急に、前倒しといいますか、組織を動かしまして支援チームを、十分ではありませんが対応したところです。今、説明の中にもございましたとおり、短期的には非常に多くの方々が来られるのですが、長期にわたりますと、なかなか支援が継続しづらいということ、それから、ニーズとリソース、要求されるものと支援できるもののミスマッチが多数起こったということ、それから、支援側と受援側に情報の錯綜などがありまして、なかなかマッチングがうまくいかなかったというような反省がございます。

 そこで、情報収集まではできたとしても、いわゆるマネジメントの部分が必要であろうと。これは、受援側の保健所が通常の人材ではマネジメントしきれないという状況になったということがありますので、これに対して公衆衛生チーム、医師を中心とした保健所長会が中心となって派遣するための組織を作っているところです。これにつきましては、東日本大震災の反省を経まして、標準化検討委員会等を経まして、健康局のほうですが、平成 28 年に報告をし、活動要領案を作成し、現在、人材育成登録を先行実施しているところです。平成 29 年度に向けてこの活動ができるように、十分に対応していきたいと考えているところです。以上、補足です。

○大野部会長 ありがとうございました。そういう体制を準備していたけれども、正式な発足が少し間に合わなかったけれども十分対応できたということで。

○倉橋委員 はい。

○大野部会長 どうもありがとうございました。今のことについて。よろしいですか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 私の説明の中で保健所機能が落ちたと言ってしまいましたが、正確に言いますと、保健所の業務がものすごく増えてしまったというのが実際のところで、すみません、表現ぶりが非常に不適切でした。

○大野部会長 それでは大友先生、お願いします。

○大友委員 今の DHEAT に関連いたしますが。今回の死者数、直接死が 50 人で間接死が 111 人ですが、東日本大震災避難生活者が 42 万人、今回はこれが 20 万人ということで、数からいくと半分もいるのに、東日本大震災の間接死は 3,200 人を超えている状況で、それに比べて 111 人というのは、非常にうまく対応したのだろうということだと思うのです。

 どうしてそうなったかというと。 DMAT に例えてみますと、東北の震災では派遣されたチーム数が 383 チームだったのですが、今回は 466 ということで、広域、広範な東日本大震災よりも多い数の DMAT が被災地に入っている。なおかつ、けが人の数も非常に少ない。死者数も、直接死は 50 人ということで、急性期医療のニーズが非常に少なかったということです。それだけ多くの DMAT が入って何をやったかというと、むしろ保健医療というか、避難所の方々のケアとか、そういったところに DMAT 、それから、 JMAT さんもそうですし、医療として入ったチームが医療をやるニーズがほとんどなかったので、どちらかというと、保健医療をカバーしたことによって、こういう少ない間接死にとどまったということです。本当に医療のニーズが高ければそちらに力を注がなければいけないので、そうすると今後、保健医療を担う保健所を中心として、 DHEAT 、支援に入る保健師の皆さんの力がもう少し組織的に対応できるようになっていかないといけないのだろうと思っております。 DHEAT は、これから体制を整えられるということなので、是非お願いしたいと思います。

○大野部会長 ありがとうございます。ほかに。石川先生、お願いします。

○石川委員 日本医師会の石川でございます。私は、今回、災害関連死が 110 名ということで、直接亡くなった方の倍以上ということになっているのですが、これは、 1 年目にしてみるとちょっと多いと思うのです。今回の熊本の場合には気候的に、あそこはそんなに寒くないとか、 3 11 のときは非常に寒かったということがあって。 3 11 1 年目で 1,600 人の方が震災関連死で亡くなっているのです、直接死というか、溺水が多かったわけですが。溺水の方たちから比べるとやはり、そういう比率でいきますと、熊本の場合には何で多いのかなということをきちんと追及するべきだと思います。

 それで、 3 11 のときには総務省か何かが、恐らく、震災関連死の方がどういう形で亡くなったのかということについて、直接の死因かどうかは分からないのですが、例えば搬送中に搬送が十分できないで床みたいな所で寝ていたとか、実際には、福島などでは医療従事者がいなくて 2 日間ぐらい放置されていたとか、直接の死因ではないけれどもそれによってかなり体が弱ったとか、そのようなことが一応、調査で出ているのです。私は、熊本のところもきちんとそれをやるべきだと、それは厚労省がやるのか総務省がやるのか分かりませんが。それをやらないと、意外に直接死よりもこういう災害関連死のほうが多いという、我々は、やはり災害関連死は何としてでも防ぎたいので。そういうことがなかなか克服できないのではないかと思うので、是非、そこのところはどこかが調査しなければいけない、それは厚労なのか総務なのか分かりませんが、やっていただいたほうがいいと思います。

 それから、 DHEAT のお話がありましたが、実は熊本のところで一番困ったことは、命令・指揮系統にちょっと混乱があったのです。それは、私たちは現地に派遣するだけなのですが、私なども「行ってくれ」と言って派遣するだけでずっと司令部にいたわけですが、 DMAT の司令をしていたのですが、実際に行った方のお話を聞きますと、最大、 30 団体といいますか、何だか訳の分からないものを含めて 30 団体ありまして、どこがどのような命令系統で来ているのか分からないと。特に困ったのは、県の知事さんたちから派遣された方たちが結構、縦横無尽におやりになっていたりするというようなこともありました。これはちょっと困ったことで、今後の南海トラフとか首都直下型、私たちはこの 2 つを想定しているのですが、このときまでに、あと 1 年半ぐらいの間に被災県の中での命令・指揮系統をきちんと中央防災会議のところから、このようにやるというような形で、誰が一番トップで、その次、どうなのかというようなことで、そういう図式をきちんと作りたいと思っています。 DHEAT のほうも、どういう役割を持ってやるのかということで、中央防災会議で出てくるそういう命令・指揮系統の中できちんと、その位置付けをはっきりしていただきたいと思っています。

 それから、今回、ノロウイルスが非常に危なかった。インフルエンザもチラッと出てきたりしたのですが、ノロウイルスが実は極めて劣悪なトイレの状況からノロウイルスが発生しそうになったのです。ところがそのときに、厚労の中谷さんだと思うのです、中谷さんの所に言って、すぐ国立感染症研究所の方に実際に行ってもらって、写真とか、そういうもので現地でかなり指示をしていただいた。そこがすごくノロの大流行にはならなかったと思っているのです。特に体育館などで、体育館とトイレの周りで土足をここの所まで、直線の所まで来ていて、それで水がないという状態でした。それを国立感染症研究所の視察の方たちがきちんと指摘していただいて、こういうのはちゃんとしなさいというようなことをやったというのが 1 つ良かったかなと思っています。

 ただ、それは、熊本の地震はやはり範囲が狭いのです、だから良かったのです。 3 11 みたいに大きくなったり、南海トラフ、大体、全壊数も全然違いますし、実際に避難民の数も膨大な数になりますので、そういう所ではもっといろいろな対策が必要かなと思います。ちょっとそれがうまくいったかなと思います。

○大野部会長 ありがとうございます。幾つかの指摘がございました。まず、災害関連死は 3 11 と比べれば多いのではないかというような御指摘がありましたが、それについて、事務局からいかがでしょうか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 災害関連死の関係ですが、災関連死というように数字として出てくるのは、例えば、災害弔慰金の関係で震災関連死と認められると弔慰金が出るという仕組みがありまして、その関連で恐らく総務省さんとかが出てきているのだと思います。同じような指摘は、実を言うと、国会でも受けております。基本、今、災害関連死の関係は内閣府になっていますが、厚労省としても、必要に応じて内閣府と連携しながらそういった研究は進めていくべきだろうと思っております。そこは適宜、連携しながらやっていきたいと思っております。

○大野部会長 指揮・命令系統の明確化が必要、ということは。

○日野健康危機管理・災害対策室長 そちらの指揮・命令系統につきましても、石川委員が御指摘いただいた点は、厚労省としても同じ問題意識を持っております。いかにマネジメントをしっかりやっていくのかというのが大きな課題だと思っています。厚労省としても検討したいと考えていますので、また、いろいろ、意見交換をさせていただければと思います。

○大友委員 石川先生と見解の相違かもしれませんが、関連死のほうは避難生活者当たりで考えるべきだと、対死者数ではなくて。ですので、東北では初年度で 42 万人中 1,700 人だった、熊本は 20 万人中 100 人だったということなので、それで見ると、かなり善戦していると思います。実際、行きましたが、避難生活者に対して、感染症のこともそうですし、エコノミークラス症候群の話もそうですし、熱中症対策もそうですし、様々に、かなりきめ細かくサポートしていると私は思っておりました。そこはまた、考え方の違いかもしれません。

 あと、指揮系統の話は、本当は御船保健所が益城町を含む上益城圏域を管轄するべきだったのですが、そこがうまくリードを取らなかったためにお見合い状態になってしまって、誰がそこの責任を取るのかというところが、なかなかうまくいかなかったというのが大きな問題点ではないかと思います。一方で阿蘇のほうは非常にうまくいって、 ADRO という組織も出来上がって、医療も保健医療も全部、一体となって対応できたと思います。今回、熊本の中でもうまくいった所と、ちょっと混乱が起きた所があるのだろうと思います。

○大野部会長 ありがとうございます。石川先生、いかがですか。

○石川委員 私は、気候の問題とか災害の範囲とかから言うと、やはり、それにしては 110 人というのはちょっと残念だなとは思っております。私は、統計的に震災関連死とやるとその補助がどうのこうのという問題ではなくて、やはり厚生労働省は、健康と命の問題ですから、何で亡くなったのかということについてもう少し詳しく分析していただいたほうが私たちの医療支援がうまくできるのではないかと思うので、そこをちょっと指摘したいと思います。

○大野部会長 ありがとうございます。では大友先生。

○大友委員 賛成です。あれは復興庁がまとめたデータで、移動中にというのは、福島原発事故のときに行き先が決まらずに無理矢理移動させたので、例の、双葉病院でしたか、搬送先の病院で汚染患者は受け入れられないということでたらい回しになってしまって、その間にどんどん亡くなってしまったという話です。復興庁がデータを持っていらっしゃると思いますので、その死因に関しては、またきちんと整理いただくのは大事だと思います。

○大野部会長 ありがとうございます。倉根先生、お願いします。

○倉根委員  2 つあります。 1 つは、日時は忘れましたが昨年もすぐ送りまして、実は、東日本大震災のときのトイレの状況とかは、経験と言うと変ですが、そういう、どこが問題になるかというのは、ある程度分かっておりましたので、担当者もそこをかなり中心的に見たと。それから、どういう感染症が出る可能性があると考えられるかというフォーカスがありましたので、そこをきちんと対策したということで、お役に立てたとすれば、非常に良かったと思います。

 それからもう 1 つ。熊本には熊本県の衛生研究所と熊本市の衛生研究所と別個にありまして、そこに対してどういうお手伝いができるかということでありました。地方衛生研究所全国協議会と我々とで、どういうものが必要かということを伺いました。実は、恐らく最初は、例えば検査をするにしてもキットがないとか、みんな壊れた、あるいは無くなってしまったというような状況かと思って伺ったのですが、最初の頃は、職員が通常業務ではない業務で忙しいといいますか、駆り出されてやるということが多いので、まだ検査そのものをやるという状態になっていないということでした。それは、電気の問題もあるでしょうし、水の問題もあるでしょうしということでした。ですので最初のところは特に。それから少しすると、例えば、この機器が壊れたのが明らかになってということなのですが、例えば国のものを地方に移すというのは、これまたいろいろな手続が必要だということです。私たちが行ったときには川崎市から熊本市に機器を貸出しということで、川崎から来ているのですというのを見せていただきました。そういうことで、ああいう機械を国なり、あるいは県から他の県に移す、市に移すというのはなかなか、いろいろな手続もあるでしょうし。そこがもう少し簡単にできるようになるといいのかなと思いました。

 それから、長期には通常の業務として必要な、我々で言うと、病原体が溶けて死んでしまいましたとか、そういうことがありましたら、これは後々になりますが、言っていただければ出しますということでしたが、特にそういう大きな要請は、実は、そこについてはありませんでした。ですので、近県で比較的少量の種ウイルス等、あるいは細菌等を移したのだろうとは思いますが、特にリストとして我々のほうに来ていたものはありませんでした。そういう状況です。

○大野部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○大友委員  DMAT の検証の会議の中で出てきた中で、この説明の中で 2 点意見を述べさせていただきたいのですが。

1 つはエコノミークラス症候群の話です。これは、見てみると、実は発災 3 日目に亡くなった方がピークになっています。ですから、 1 週間後ぐらいからゆっくり始めるということではなくて、発災直後から対策を打たないと、これは予防できないということだと思います。これは、かなり迅速性を求められるということが分かります。また、緊急入院が必要だった 54 人の方のうち 46 人が車中泊だったということで、やはりその対策をしっかりやらなければと、余震が続いているのでその気持ちは分からないではないのですが。そういうことで、圧倒的に車中泊が原因だったということを聞いております。

 あともう 1 点、プッシュ型支援の話で。是非、被災地内の医療機関に対して支援を優先的にやらないといけないのではないかと思って聞いておりました。それは、本震が起きたときに真夜中だったので、通常の電力が止まりました。一方で、病院というのは自家発電装置があるので、真っ暗な中で病院だけがポーッと明るくなっているのだそうです。そうすると、余震が続くので怖くて自分の家にいられないので、みんな病院に来てしまった。職員と患者のために 3 日分の食料、水を備蓄していたのですが、水を欲しいという避難してきた方に出さなければいけないので、 1 日で無くなってしまったということです。なので、熊本県に水と食料の支援をお願いしたいと言ったら、病院だけを優先できませんというようなことで駄目ですと。しかも、アリーナでしたか、そこにたくさんあったというのが後で分かったということで、そこのところを何とかしてほしいと。

 プッシュ型支援の問題点は、被災地の大きな倉庫に水と食料をバーンと送り込むのですが、それを県の役人若しくは市の役人が仕分けをして配送するという、ふだんやっていないような業務をやらなければいけないので、不眠不休でやっても全然回らなかったということです、途中から佐賀の集積所に集めて、そこから専門の業者が配送するようになったので大分良くなりましたが。それでも、ラスト 1 マイルの問題があるということでした。やはり、プッシュ型でやるに当たっては、被災地内の行政職員が仕分けをするようなことにならないようにするべきです。医療機関のそういう支援物資の優先的な配備をお願いしたいと思います。

○大野部会長 ありがとうございました。事務局から何かありますか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 まず今の話ですが、エコノミークラス症候群の対策は、おっしゃるとおり素早く動かなければいけないということで、防災業務計画にも、発災したらすぐやるという形で書かせていただいています。ありがとうございます。

 あと、プッシュ型支援の話ですが。おっしゃるとおり、最初、県庁職員なり市役所の職員の方がやってということで、それがだんだん民間のほうに移ってきてある程度機能するようになってきたということもありますので、そこは、今、政府で見直しを検討中の業務計画の中でも、民間の力を活用してやっていこうという方向性がある程度出ていますので、先生がおっしゃるような方向になっているかと思っています。

 あと、病院のところにつきましては、熊本市の事例が、どういう状況だったか分からない部分はありますが、基本的には、ほかに比べると、やはり病院はある程度優先していただいて、物資は届けていただけるようにはなっているはずなのですが、最初の混乱でそうなってしまったのかもしれないですが、基本は、病院はできるだけやることになっています。逆に福祉施設のほうから、私たちもそうしてほしいというような声が出るような感じですので。

○大友委員 非常に困ったという話を聞きましたので。では、もう優先になっているのですね。分かりました。

○日野健康危機管理・災害対策室長 一応、優先にはなっているのですが、多分、最初の頃は、本当に情報が錯綜して、言っても届かないというような状況だったのではないかと思っています。

○大野部会長 避難民がいっぱい集まるということは予想していなかったのかもしれませんね。ほかにいかがでしょうか。

 では私から 1 つ。先ほど倉橋先生から、短期的には何とか対応できたところもあるけれども長期的な対応は、外から支援した人が難しいというようなお話がありましたが、こういう災害のときにそういう人たちが出ていった後の業務に支障があったとか、そういうことはないのでしょうか、そういうことについての反省とか。私が今、一番気になっているのは、今、どこも人員削減で非常に忙しいですよね、現在はよく分かりませんが本省は夜遅くまで働いているというような話も聞いていますし。そうなると、ふだんから目一杯働いているのに、そういう災害で出張したら本来の仕事はほとんどできなくなってしまうのではないかと。それが本省だけではなくて、いろいろな行政の所であるのではないかと思ってお聞きしたのですが。

○日野健康危機管理・災害対策室長 まず厚労省のお話をさせていただきますと、今、働き方改革をやっていますので、できるだけ残業をしないようにしています。基本的には、そういう災害が起こったときは業務の優先順位を付けて、まず、その災害を一生懸命やらなければいけない。それ以外で優先順位の低いものは、その対応が終わってからやらせていただくという形で業務をやり繰りしながらやっていくという形になると思っています。それで一応、本省の業務をやりながら現地対策本部の業務をやりつつ震災対応をするということで、業務全体としては回っていたとは思っています。

○大野部会長 ありがとうございます。では倉橋先生、お願いします。

○倉橋委員 今、御指摘のような点につきましては私どもも、反省といいますか、振り返りの研修会などをしておりまして、受援が大切であるということ、そして、マネジメントをする人間を確保しなければいけない、その人間に対して支援しなければいけないということが大切だということが議論されております。やはり、地元の事情をよく知る人間が差配しませんとなかなか、地理的な問題もありますし、その地域の医療機関などの状況もよく分かっている人間がしたほうが効率的であるということがありますので。そのマネジメントを効果的に行うために、標準化といいますか、マネジメントの組織体制を事前に整備しておく、受援体制を整備しておくということで、マネジメントプロセスの標準化をするということ、受入体制を標準化するということ、そして、特に ICS(Incident Command System) というものが導入の手法として活用できるのではないかということで、内閣府のほうでも検討していると聞いておりますが、そのような検討を現在、しているところです。

○大野部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。それでは熊本地震への対応についての説明と、皆さんから意見を伺うことについては、この辺でよろしいでしょうか。

 次に議題 7 2020 年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、厚生労働省の取組についての説明をお願いいたします。

○日野健康危機管理・災害対策室長 お手元の資料 6 を御覧いただければと思います。 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた厚労省の取組です。 1 枚目の資料ですが、東京オリンピック・パラリンピックについての政府の推進体制としては、一番上にありますとおり安倍総理が本部長で、関係大臣が本部員である東京オリ・パラ協議大会推進本部というものが設置されており、これがヘッドクォーターになります。その下に杉田内閣官房副長官が議長となっている関係省庁連絡会議があります。これは事務次官クラスが構成員です。その下にセキュリティ幹事会というのがあり、サイバーセキュリティであったり、テロ対策であったりといったところを議論いたします。こちらが今、ちょうど本格的に動き始めているという段階になっております。その受皿として厚労省は、東京オリンピック・パラリンピック健康危機管理連絡会議を今年の 2 月から立ち上げて、テロの関係や外国人患者の受入体制等々、オリンピック・パラリンピックにおける保健医療分野で対応が必要なものについて、議論をする体制を取っているという状況です。

 次のページが 2020 年のオリ・パラに向けた厚労省の取組内容で、現時点で行っているもの、これから行うことが決まっているものについて、幾つか御紹介させていただきたいと思っています。 1 つ目が救急医療体制の整備・拡充です。先日成立した平成 29 年度予算に盛り込んでいますが、爆発物、銃器、刃物などの外傷治療を担う外科医の育成を行う研修事業を、平成 29 年度から実施することとしております。次に、これは普段からやっている話ですが、毒物、劇物、病原体の適正管理の徹底を行っております。 3 点目が感染症の発生動向調査及び疑似症の届出の徹底を行っています。 4 点目が NBC テロ対策の強化です。こちらは平成 26 年にこの部会で、「化学テロリズム対策についての提言」を頂き、化学テロ対応の医薬品の備蓄を行っています。これは平成 26 年度の補正予算で購入しました。また、天然痘のワクチンの備蓄も政府として行っているところです。

 次のページです。まず、旅館等における外国人宿泊客の本人確認の徹底です。こちらは省令改正をして、国籍と旅券番号の記載を宿泊者名簿に義務付けるという規制を行っております。あと、水道施設に対する警備強化を行っています。それから、検疫の体制整備拡充ということで、臨時も含めて今、検疫所の体制を強化しています。 4 点目は国際的な話ですが、先ほど御説明した GHSI を通じて、関係諸国とのテロ対策に関する情報の共有を進めているところです。こちらが現在行われている主なテロ対策関係の事業ですが、今後 1 ページにあるセキュリティ幹事会が本格的に動いていくことに伴い、厚生労働省としても内閣官房を含め、関係省庁と連携しながら、どういった対策が必要なのか、今後検討を進めていきたいと考えております。

○大野部会長 ただいまの説明について御意見、御質問はありますか。

○黒木委員 事務局に事前に御質問させていただいて、ある程度の御回答はいただいているのですが。本部会の提言により補正予算として、化学テロに対する解毒剤の国家備蓄を行っていると思います。しかしながら、医薬品というのは使用期限が来て備蓄がなくなっていったりしますので、できれば補正予算とかオリンピック・パラリンピックの特別予算ではなく、本予算できちんと整備できるような体制が望ましいと思います。オリ・パラに対する特別予算であっても、会場周辺や配備の仕方、搬送の仕方なども変わりますので、再度検討が必要だと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 もう 1 点は、日本中毒情報センターと日本中毒学会が合同して、医療従事者に対する化学テロ関連の中毒情報の再整備、初動対応の再整備をする予定です。一番懸念しているのは、一般市民やボランティアの方です。今度はたくさん参加されると思います。その方々への教育もビデオにしたり、何かしていかなくてはいけないということで、来月にも中毒センターと中毒学会の会議があります。しかしながら、そちらもなかなか予算の付くものでもありませんし、実現できるかどうかといったところでもありますので、是非オリンピックのテロ対策を支援していくような予算付けなども、厚生科学課のほうで検討していただければと思います。特に今考えていることとか、コメントなどがありましたらお願いいたします。

○大野部会長 事務局、いかがでしょうか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 まず、 1 点目の医薬品の備蓄についてです。こちらは御指摘のとおり、平成 26 年度から備蓄しております。その品目であったり、量であったり、配備場所であったりというのは、テロ対策上公表できないのです。ただ、今まで想定していたものと比べて、オリンピック・パラリンピックとなると規模もかなり違いますので、やはりもう一度再検討が必要かと思っています。その検討結果に基づき、どういった対応が必要なのかを考えさせていただければと思っております。

 もう 1 つ御指摘のあった、一般市民ボランティアへの教育の話についても、テロ対策全体として、今後検討させていただこうと思っています。

○大友委員  NBC テロ対策の備蓄に結び付いた化学テロ対策についての提言は、備蓄すべきということをメインに書いてあります。備蓄をした医薬品がきちんと被災者に投与できるような体制を、同時に構築していかなければいけないということも、提言に盛り込んでいるのですが、実際に私も厚生科学研究の平成 26 年度の研究でこの提言に結び付いた、大阪の某ホールで 4,000 人がサリンで被害を受けて、 1,000 人に拮抗剤を打つ必要があるということで、 1,000 人の人に拮抗剤を打つ状況の中で、その方々が本当に病院に来られるのかということを検証いたしました。

 実際に大阪の消防の方々が、彼らが持っている若しくは、こういうようにしますという計画どおりに傷病者の対応をしていただいたのですけれども、残念ながら 875 人が死亡、病院に来られないと。現場ではまず防護服を着てから、除染の設備を立ち上げます。しかも汚染している人は全員水で洗う。それから、倒れている人の周りは全部ホットゾーンなので、レベル A でやるということで対応しました。ですから、せっかく 1,000 人分備蓄してもほとんど使えない、病院に来られないという現状が分かりました。そこに関しては、もっとしっかり対応しないといけないだろうと思っております。

○黒木委員 大友先生の御研究と御指摘はごもっともです。実は初動体制についても、化学物質の種類によって変わっていきます。すべてレベル A の防護服を着なくてはいけないかというと、化学物質の散布状況でも変わっていきます。気体なのか、液体なのか、どの程度撒かれたのか、ホットゾーンを縮めていくこともできるわけです。それに基づいた初動対応として、消防の方と医療の方の連携も含めて、今回、消防のほうでもマニュアルの見直しをしたいということで、もう動き出しております。初動対応と備蓄が有効に生かせる状態について、正に今研究途中ということもありますので、是非またその検討も考えていただければと思います。

○大友委員 平成 25 年の総務省消防庁の検討会の報告書で気体によるものは服を脱ぐだけでいい、液体のもの、主にびらん剤ですが、だけ水で洗うというように、除染の方法に関して明確に基準を決めて示しています。しかし全国の消防の方々は、サリンは気体ですから服を脱ぐだけでいいはずなのに、被害者は全員水で洗うという誤解が解けていないのです。しかも毎年、全国各地で国民保護訓練をやって、対応に関しても事前に計画をして訓練をやっているはずなのに、いまだに誤解が解けていない。そこにはやはり何か問題があるのだろうと私は思います。

○黒木委員 消防のマニュアルは、平成 28 年度に再見直しをしておりますので、そういった問題点も出ていると聞いております。拭き取りだけでいい、拭い取り除染といった考え方も出ておりますから、是非一緒に検討していただければと思います。

○倉根委員 ここに書いてある天然痘ワクチンの備蓄の部分ですが、天然痘ワクチンの有効期間は、恐らく今は 4 年で設定されています。 4 年を過ぎたもの、つまり期間を過ぎたものを使うときのルールが、どうもはっきりしていないようだと聞いております。効果はあるかと言われれば、 4 年を過ぎても十分マルだと思います。それは確認しているのですが、規則として有効期間 4 年を過ぎたものをどうやって使うかというとき、いざというときのルールを決めておく必要があるのではないかと思っております。

○明石委員 量子技研機構の明石です。医薬品の備蓄ですが、他の省庁ということもあって、 NBC の中でも N は取り残されることが多いのです。例えば医薬品等を買う場合も、 N の場合はそう簡単に買えない医薬品が多いのです。というのは毎年というか、ドイツの会社で常に作っているわけではなくて、買いたい場合は 1 年後とか、少なくとも何箇月以降しか買えないものがほとんどなので、是非 N の薬も含めて備蓄をお考えいただければと思います。ヨウ素剤というのもありますが、ヨウ素剤というのは関東では、恐らく茨城県しか持っていないと思います。ヨウ素剤は国内でも買えるのですけれども、外国でしか買えない医薬品が多いということもあるので、是非 N についても御考慮いただけたらと思います。

○大野部会長 ただいまの倉根先生からの御意見で、ワクチンの有効期限についてのお話がありました。それが過ぎた場合については前にも医薬品の有効期限についての話が出たと思うのです。それについてはいかがでしょうか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 まだ本格的に検討が進んでない状況ですので、関係部局と連携しながらやらせていただきたいと思います。

○大野部会長 ありがとうございます。倉根先生、何かありますか。

○倉根委員 有効期限内のものだけで間に合うときはいいと思うのですが、どうしても期限切れを使わざるを得ないというときのルールだけは決めておかないと、そこでまた大きな問題になるかと思いました。

○大友委員 「外傷治療を担う外科医育成」とありますね。私は専門が外傷外科なので、これはどんな研修になるのか興味があるのです。どのような計画なのでしょうか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 細かい資料がありませんので、担当部局から取り寄せて、また先生にお知らせさせていただければと思います。

○大友委員 爆弾テロの対応に関しては、日本でも三菱重工本社ビル爆破以降起きていないので経験も乏しく、海外の事案などを検証して今、集団災害医学会においてディスカッションをしています。マドリッド、パリ、ブリュッセルはどれも近くの病院に大量に重症患者を送っているのです。今の日本の災害対応の常識は、重症患者は分散搬送しようとなっています。ですから重症な人はある特定の病院に運ぶのではなく、広く多くの病院に運ぶべきだということにしているのですが、どうも爆弾のときにそれをやると、うまくいかないようだと。

 これには理由が 2 つあります。 1 つは、現場のトリアージがなかなか難しく、正しくできないということがあります。それから、現場の危険度が高いので、そこにとどまっていると危ないということがあります。ボストンマラソンも現場に非常にいい医療救護所があったのですが、そこがまた爆弾で狙われるかもしれないので、あえて使わないで片っぱしから病院に運んだのです。ですから医療機関の受入体制に関しても、今までの通常の災害とは違う考え方でやっていく必要があるのだろうと思いました。秋葉原の事件のときも、結局行き先が決まらずに僅か 13 人の患者なのに、現場で 50 分以上とどまったということがあります。あれだと爆弾のときにはうまくいかないのではないかと思いますので、その辺の検討も必要ではないかと思います。

○大野部会長 御意見ありがとうございます。それでは私から、どうなっているのかということをお聞きしたいのです。 BSL-4 の施設とか運用状況というのは、今はどうなっているのでしょうか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 国立感染症研究所の武蔵村山の BSL-4 施設は、平成 27 8 月に BSL-4 施設として指定いたしました。その後に例えば SFTS 、これは本当は BSL-3 でも可能ですけれども、 BSL-4 施設で検査を行うなど、活用させていただいているという状況です。

○大野部会長 長崎大学でその整備を計画しているという話を聞いているのですが、その辺が今はどうなっているのでしょうか。

○日野健康危機管理・災害対策室長 長崎大学については昨年 12 月だったと思いますが、 BSL-4 施設の設置方針が正式に決まり、これから正式に設計をしたり、工事を進めていくという段階になると考えています。ただ、実際に稼働するというか、施設が出来上がるのはこれからまだ数年先、平成 32 年とか、そういった段階にならないと、実際にワークするという状況にはならないかと思っています。

○倉根委員 国立感染症研究所にある BSL-4 施設と、長崎に建設が進んでいるものは、本来の目的が違うはずです。我々はあくまでも厚生労働省の機関ですので、やはり公衆衛生なり、検査診断あるいは患者に関することを業務として行うための施設だと考えています。一方、長崎の設立の主たる目的は、恐らく研究をするということですので、そこでの住み分けは当然あるだろうと思います。もちろん補完機能と言いますか、我々も患者発生に伴う必要な業務、それを研究と呼ぶか業務と呼ぶかは別ですけれども、それは当然行います。補完は当然必要だと思いますが、本来主たる目的が違うと理解しております。

○大野部会長 ほかにいかがでしょうか。それでは、東京オリンピック・パラリンピックに向けた厚生労働省の取組についての説明を頂いて、皆さんの御意見もいただいたということで、次にいきたいと思います。次は議題 8 のその他です。何か報告事項はありますか。

 特にありませんか。事務局もありませんか。それでは、これで全ての議事が終了いたしました。次回の開催について、事務局からお願いいたします。

○日野健康危機管理・災害対策室長 次回の開催は、緊急に開催を要することがなければ、年 1 回程度、定例で開催していきたいと考えております。その際はまた追って日程調整等の御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○大野部会長 先生方におかれましては忙しいところ出席していただいて、いろいろな御意見をいただき、ありがとうございました。また、日常的に危機管理について御協力を頂いているようで、どうもありがとうございます。最後に、私が会議に遅れましたこと、もう一度おわび申し上げます。今日は御協力、どうもありがとうございました。

 

 


(了)

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