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2017年10月26日 第24回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会議事録

老健局老人保健課

○日時

平成29年10月26日(木) 15:00~16:00


○場所

ベルサール神保町 Room1+2


○出席者

   井口、田中、千葉、藤井、堀田

○議題

1.平成29年度介護事業経営実態調査の結果について
2.その他

○議事

 

 

 

○西嶋介護保険データ分析室長 それでは、定刻となりましたので、第24回「社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会」を開催させていただきます。

 初めに、本日の委員の出席状況でございますけれども、山本委員より御欠席の御連絡をいただいております。また、藤井委員が遅れて来られる見込みでございます。

 それでは、議事に入ります前に、お手元の資料について確認をさせていただければと思います。

 資料1「平成29年度介護事業経営実態調査結果の概要(案)」

 資料2「平成29年度介護事業経営実態調査結果(案) 各サービス別総括表」

 資料3「平成29年度介護事業経営実態調査結果(案) 参考表」

 そのほか、参考資料1もあわせて御用意させていただいてございます。

 資料の過不足がございましたら、事務局までお申しつけください。

 カメラの撮影等についてはここまでとさせていただければと思いますので、撤収方よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○西嶋介護保険データ分析室長 それでは、以降の進行につきまして、田中委員長にお願いいたします。

○田中委員長 早速ですが、議事次第に沿って進めてまいります。

 議題1「平成29年度介護事業経営実態調査の結果」について、事務局より資料の説明をお願いします。

○説明者 それでは、資料の御説明をさせていただきます。

 まず、平成29年度介護事業経営実態調査結果の概要でございます。資料1をご覧いただければと思います。

 最初に1ページですが、今回の平成 29 年度調査の概要ということで、まず、調査時期でございます。既に御承知のことかと思いますが、今回の調査につきましては、平成29年5月に実施し、平成28年度決算を調査したところです。

 その下ですが、調査対象等ということで、抽出方法としては、調査対象ごとに、層化無作為抽出法により1分の1から20分の1で抽出しているところでございます。

 調査客体数につきましては、合計で3万1,944施設・事業所、有効回答数は1万5,062施設・事業所でありまして、有効回答率にいたしますと47.2%ということでございます。

 各サービスの調査客体数等の状況につきましては、4ページに記載しており、サービスごとの客体数、有効回答数、有効回答率をお示ししております。今回の平成29年度調査の状況につきましては、左の太囲みの部分でお示ししております。一番下に、調査全体の有効回答率を記載しており、47.2%となっております。

 その右が昨年実施しました平成28年度概況調査の有効回答率で、こちらも同じく47.2%でございます。さらに、一番右が平成26年度の実態調査ということで、こちらは48.4%となっており、ほぼ横ばいであると考えているところでございます。

 次に、今回の平成29年度実態調査において見直しを行った点について改めて御説明いたします。参考資料1をご覧下さい。参考資料1は、昨年12月に御了承いただきました今回の平成29年度経営実態調査の実施に関する資料でございます。

 2ページでございますが、今回の調査の変更点を記載しております。この実態調査の見直しにつきましては、こちらの経営調査委員会、そして介護給付費分科会において御議論いただいたところでございまして、平成2712月の分科会で見直しの方向性が取りまとめられており、この提言に基づき、今回の実態調査につきましては、まず1つ目の○ですが、先ほども御説明しましたとおり、調査対象期間を単月分から1年分に変更するということで見直しをさせていただいたところでございます。なお、概況調査につきましては、既に平成28年度調査から改定前後の2年分ということで見直しをさせていただき、昨年末に調査結果を公表させていただいたところでございます。

 その下の○ですが、昨年度の概況調査において既に見直し済でございます長期借入金の返済支出の把握、それから、国庫補助金等特別積立金取崩額の記載項目の変更といった点については、今回の経営実態調査においても同様に見直しを行わせていただいたところでございます。

 以上が、前回の平成26年度実態調査からの変更点でございます。

 それでは、資料1にお戻りいただきまして、改めて1ページでございます。

 調査結果の概要ということで、真ん中から下に各サービスにおける収支差率を1つの表でまとめさせていただいております。

 太枠囲みの部分が平成28年度決算における各サービスの収支差率となっておりまして、その右側に昨年度の概況調査における平成27年度決算の収支差率からの増減を示しているところでございます。

 一番左上でございますが、介護老人福祉施設、いわゆる特養につきましては、平成28年度決算の収支差率が1.6%ということで、昨年度決算と比較しまして0.9%の縮小となっているところでございます。

 なお、下の注書きで、注1でございますが、通所介護につきましては、平成28年度から地域密着型通所介護と通常の通所介護に分かれておりますので、平成28年度概況調査の数値との比較を可能といたしますように、便宜上、平成28年度概況調査の数値を従前の通常規模型と大規模型の数値の合算値として再集計したものをこの表の中の通所介護の平成27年度決算に入れているところでございます。それから、地域密着型通所介護につきましては、従前の小規模型の数値を再集計した数値を入れさせていただいており、比較可能となるようにお示ししているところでございます。

 また、注2で、こちらは概況調査と同様ですが、収支差率に「※」があるサービスにつきましては、集計施設・対象数が若干少ないので、調査結果に個々のデータが大きく影響していると考えられるということで参考数値としておりますが、今回の実態調査につきましては、調査客体数が100を切っておりますのは右側の夜間対応型訪問介護、それから、一番右下の看護小規模多機能型居宅介護の2つのみで、それ以外は全て客体数100以上を確保しているところでございます。

 以下、各サービスの収支差率をお示ししておりますが、収支差率については、サービスごとに動きが異なっているという状況が見られるところでございます。

 それから、一番右下ですが、こちらには全サービス平均ということで数字をお示ししているところでございます。こちらの算出方法につきましては、注3に記載させていただいておりますが、全サービス平均の収支差率については、単純平均ではございませんで、総費用額に対するサービスごとの費用額の構成比に基づいて算出した加重平均値でございます。今回の平成28年度決算における全サービス平均の収支差率は3.3%であり、昨年度の平成27年度決算の3.8%と比較すると、マイナス0.5%という状況でございます。

 ちなみに、平成28年度概況調査における平成26年度決算の全サービス平均の収支差率は4.8%でありまして、収支差率は全体として低下傾向にあるということであると考えております。

 次に、2ページでございます。こちらにつきましては、各介護サービスの収支差率と収入に対する給与費の割合を1つの表にまとめております。

 平成28年度概況調査につきましては、平成26年度決算と平成27年度決算を併記しており、一番右に今回の実態調査における平成28年度決算の収支差率、それから、平成27年度決算からの増減を示しており、同じく給与費割合につきましても、平成28年度決算の給与費割合と平成27年度決算からの増減をお示ししております。例えば、一番上の介護老人福祉施設でございますが、こちらの数値について申し上げれば、平成28年度の給与費割合は64.6%で、平成27年度決算と比較して0.8%の増という状況になっているということでございます。

 以下、各サービスの給与費割合をお示ししておりますが、全般的な傾向としましては、収支差率が縮小しているサービスについては、給与費割合が上昇しているという傾向が見てとれると考えているところでございます。

 次に、3ページにつきましては、昨年度実施しました経営概況調査と今回の実態調査の比較表を掲載しております。

 概況調査と実態調査で異なる箇所につきましては、既に御説明しましたとおり、まず、真ん中ほどの調査対象期間ですが、こちらが概況調査は改定前後の2年分の収支状況で、今回の実態調査は改定後2年目の1年分の収支状況を把握しているというところが異なる点でございます。

 また、その2つ下の調査客体数につきましては、経営実態調査は概況調査よりも約2倍のサンプル数を確保しているといった違いがございます。

 なお、その下の図表につきましては、この調査対象期間の見直しについてまとめたものになっているところでございます。

 最後に、5ページにつきましては、サービスごとに1人当たりの収入と支出、サービスによっては1日当たりとか訪問1回当たりとなっておりますが、そういった指標と、収入に対する給与費の割合、それから収支差率を1つにまとめた表を参考として掲載させていただいているところでございます。

 以上が、資料1の説明でございます。

 続きまして、資料2をご覧下さい。資料2は今回の調査結果を詳しくお示ししているものでございまして、各サービスの総括表をまとめたものとして各サービスの収入・支出の金額を記載しているものでございます。

 3ページをご覧下さい。「第1表 介護老人福祉施設」でございます。こちらにつきましては、特養の集計表になります。

 この集計表の構成につきましては、基本的に前回の概況調査の集計表と同じものになっておりますが、平成26年度実態調査の集計表からの変更点として改めて申し上げますと、左に数字が振ってありますが、まず7行目の「(3)国庫補助金等特別積立金取崩額」につきまして、介護事業収益から介護事業費用の項目に移しております。

 それから、1920行目でございますが、新たに長期借入金返済支出として、設備資金借入金元金償還金支出と長期運営資金借入金元金償還金支出を記載しているところでございます。

 先ほど御説明しました収支差率につきましては、税引き前の収支差率を15行目に記載しております。また、こちらは特養ですので税は入りませんが、税引き後の収支差率を17行目に記載しております。

 また、収入に対する給与費の割合につきましては、5行目の(ローマ数字2)の「(1)給与費」の右側のパーセントの数字であり、介護老人福祉施設では64.6%となっております。

 この集計表につきましては、左からまず前回の概況調査の結果を平成26年度決算、平成27年度決算と置きまして、次に今回の実態調査の結果である平成28年度決算をその右に置いて比較するという構成としております。一番右に「(参考)」としまして、前回の平成26年度実態調査の数値を掲載しているところでございます。

 また、昨年度の概況調査から把握しております長期借入金の返済状況でございますが、こちらにつきましては、当該年度の経常活動によって手元に残る資金で借入金の返済が可能であるかどうかといったことを把握するための調査項目でございますが、これを分析するための指標として、21行目に「参考」ということで数値をお示ししております。

 具体的には、17行目の「4 税引き後の収支差額」と6行目ですが、こちらは見かけ上の費用ですので、手元に残るということで、「(ローマ数字2)(2)減価償却費」、それから、社会福祉法人会計基準の取り扱いであります「(ローマ数字2)(3)国庫補助金等特別積立金取崩額」、これらの合計額をもって、1920行目の借入金返済ができているかを把握するということで、この3つの合計額から1920行目の合計額を引いた数字を掲載しております。

 こちらの特養で申し上げますと412千円ということで、プラスになっているところでございます。今回の調査結果によりますと、この借入金返済支出を調査しているサービスについては、サービス全体としては、それぞれ返済が可能な状況になっているものと推察されるところでございます。

 それから、補足ですが、一番後ろの25ページをご覧いただければと思います。25ページは「参考表」ということで、通所介護及び地域密着型通所介護ということで、前回の概況調査におきましては、平成27年度決算までの把握であり、地域密着型通所介護はございませんでしたが、前回の概況調査のベースはこちらの数字ということで、便宜上、これを合算した場合の比較ができるようにするために、参考として、合算した数値を記載しているところでございます。

 以上が、資料2の説明でございます。

 続きまして、資料3ですが、こちらも少々厚い資料でございます。

 資料3も調査結果の詳細版ですが、資料2の集計とは別に、平成28年度決算の状況につきまして、この表紙に書いてありますとおり、地域区分別、経営主体別、定員規模、実利用者数、延べ利用者数、延べ訪問回数といった事業規模別の状況について、サービスごとに集計を行った集計表を掲載しております。

 1枚おめくりいただきまして、1ページに目次ということで、この資料3に掲載させていただいている集計表を一覧でお示ししております。

 第23表から第44表までが地域区分別、第45表から第66表までが経営主体別、第67表から第89表までがいわゆる事業規模別の集計となっておりまして、基本的に1つのサービスについて、それぞれ1表ずつ入っているという構成にさせていただいております。

 本日はお時間の関係もありますので、説明は省略させていただきたいと思います。

 事務局からの説明は以上でございます。

○田中委員長 ありがとうございました。

 ただいま説明のありました事項について、委員の皆様から御意見、御質問がありましたらお願いします。

 井口委員、どうぞ。

○井口委員 総括的にといいますか、ちょっと御意見をいただきたいと思います。

 まず各介護サービスにおける収支差率で、全サービス平均でいきますと、平成27年度決算が3.8%、平成28年度決算が3.3%ということで、平成26年度決算の4.8%から低下傾向にあるという御説明をいただいたのですが、これらの数字を厚生労働省としてはどう捉えているかということをひとつお聞かせいただきたいと思います。

 それと施設サービスですが、この数字について、これもどういうふうに評価しておられるのか。特に介護老人福祉施設はマイナスですが、老健施設はプラスだというように、多少、この中でもいろいろばらつきがあるわけですが、これらをどう捉えているか。総括的に伺いたいと思います。

○田中委員長 お答えください。お願いします。

○説明者 まず総括的な分析でございますが、全サービス平均の収支差率が3.8%から3.3%に下がっており、また、先ほど御説明しましたとおり、平成26年度決算では4.8%ということでありまして、そこからも下がっているところでございます。

 このように低下傾向となっている要因につきましては、1つは改定をまたいでおりますので、平成27年度の介護報酬改定において、マイナス2.27%の改定を行っている影響があると考えております。

 もう一つは、事業運営に必要な人材の確保に要する人件費の増という要因があるものと考えております。先ほど特別養護老人ホームの数値を御説明しましたけれども、収支差率が下がっている中で、給与費割合は上がっているところでございまして、この両者が相まってこのような傾向の数値になっているのではないかと考えております。

 平成27年度と平成28年度の間には改定はないわけでございますけれども、この間につきましても人件費の増というものはございますし、昨今、介護人材の有効求人倍率も3を超えるような状況になっておりますので、そういった状況を踏まえると、人材確保に必要な人件費の増が経営を圧迫している要因となっているのではないかと分析しているところでございます。

 それから、特養と老健の違いということで御指摘いただきました。これは数値の分析的なお話になりますが、資料2のサービス別総括表の3ページをご覧下さい。介護老人福祉施設については、1314行目を見ますと、平成27年度と平成28年度との比較において、収入、支出ともに増加しているといった状況にある中で、支出の増加の方が収入の増加より大きくなっております。その要因については、繰り返しになりますが、5行目の給与費割合が増加しており、こちらが収支差率が低下している主な要因になっているのではないかと考えております。

 1枚おめくりいただきまして、介護老人保健施設でございますが、収入と支出の関係で申しますと、「(ローマ数字2) 介護事業費用」の中の8行目、その他の諸経費ですが、この諸経費率が31.5%から31.0%ということで若干下がっております。こうした要因によって、最終的に収支差率の下げを押しとどめ、若干のプラスになっているのではないかと分析しているところでございます。以上でございます。

○田中委員長 井口委員、よろしゅうございますか。

 千葉委員、どうぞ、お願いいたします。

○千葉委員 質問というよりは感想めいたところを何点か申し述べたいと思います。

 まず今回の調査なのですが、冒頭御説明がありましたように、今回から初めて実態調査としても通年の決算のものをとってきたということです。今まで改定の直前に控えていつも一喜一憂していた収支差率の出方が、ある意味、単月ゆえに季節変動があるとか、統計的推計上問題があるとか、いろいろ指摘されていたわけですが、今回はもうそういうことのない、本当に年間これですという、掛け値も引け値もないものが出たのではないかと思っています。

 その結果もあるのでしょうけれども、例えば資料2の各グラフのところにもあるようなもので、大体かなりサンプル数が集まっているものについては、かなり正規分布というか、富士山型の、両側に裾野がきれいに広がったような分布に収束してきているのではないかなということが1つ。

 さらに言うと、年間決算になったということで、ある意味、大規模調査というものは接続性も統計的な比較可能性もより高まったということで、実際、つなげて分析することができるようになったのだなというのは改めて今回のデータの結果を見ても感じたところであります。

 その上で、では、実際の中身はというところで見ていきますと、回収ベースのところでは、奇しくも前回と同じような47.2%という回収率だったので、これは引き続き、悪化しているわけではないので、特に問題視するつもりはないですが、やはり統計的には回収は多いに越したことはないので、引き続き努力するというのは次回の調査以降も考えていかなければいけないことだろうとは思いました。

 それから、中身のほうについてなのですが、収支差率については、今、総括的な御説明というところでほぼ尽きてしまったのかなと思うのですが、感じているのは相対的に地域密着の幾つかのサービスを除くと結構、収支差のレベル感という意味ではかなりどのサービスも低いレベルに来てしまっているのかなと。介護老人福祉施設などは1%台。全国平均で1%ということは、かなりのウエートで赤字の施設は生じていることは想像に難くないということで、これは実際、分布を見てもそういうふうになっているわけであります。これを見ると事業を維持するために必要な最低限の利益水準を割り込んでいるのではないかというのは多少懸念されるところであります。

 それもこれも考えてみるに、先ほども事務局のほうからも御説明がありましたけれども、やはり基本的にはコストアップ要因による収支差率の圧迫ではないかと私も読んでいます。そういう意味では給与費との比較等はありますが、給与費が大きく伸びているところは収支差率はマイナスのほうに振れているという傾向が大体この中からも、例えば資料1の2ページ目のところからも読み取れますので、やはりコストアップ要因による収支差圧迫というものが今回の特徴ではないか。

 例にひもとくまでもなく、先ほども介護職員の有効求人倍率が3倍だということもありましたけれども、例えば一般産業の有効求人倍率を見ると、これもよくニュース報道されましたが、1973年、昭和48年のいわゆるオイルショックが起きる前の戦後の高度成長が終わる最後の年の一番ピークのときの、本当に人手が全く確保できないときのレベルとほぼ同じ。これはその後に起きた日本のバブル経済のころの人手不足感も相当深刻だというふうに当時も言われていたのですが、それを超える状態に今は差しかかっている。ある意味、労働市場全体が人の取り合い状態になっている。だからこそ、処遇としての労働コストというものが非常にコストアップ要因になっているのではないかなと私は読んでいます。

 これは単に感想めいたところよりは、私ども福祉医療機構でも毎年、貸付先の決算を見ていますが、まだ今のところ、実は同じ比較ベースの28年度のものは集計が完全にできていないのであくまで速報値ですが、今までの傾向というか、昨年度、前回の調査も含めて言うと、やはり人件費率の圧迫というものはかなり最近の、ここ1~2年の介護施設の収支状況に大きく影響している。老健も特養もグループホームもそのあたりはやはり同様の傾向が見られるのではないかなと思います。

 そういう意味では、確たることの支持という材料にはならないかもしれませんけれども、今回の調査というものは我々の調査と比較検証してみても、比較的妥当なところに落ちついたのではないかなと評価しているところでございます。

 あとは、最後になりますが、人件費とかコントロールの話になってきて、これが収支差に最後は影響するのだろうと思うのですが、これはより詳細に腰を据えて分析する必要はあろうかと思うのですが、総じて資料3を見ていくと、経営主体別で見ると、特養等を経営している社会福祉法人よりは、例えば営利企業とか医療法人のほうがどのサービスも大体、収支差率にレベル的にはちょっと高目に出ている傾向はある。

 そういうことで、ある意味、コスト管理というか、逆に言うと、コストをそれだけあげても不採算なところに事業をしなければいけないという社会福祉法人側の特殊性もあるのかもしれませんが、やはり主体的に多少、営利を目的とする企業については、ある意味、クールに人を切ったり、人件費をかなり抑制したりということができてしまう業態だということ。そういうことは余り考えたくはないのですけれども、何となく主体別に見ると、そういう区分が出てきているのかもしれないなという感じはしていました。

 一応、これは本当にまだ責任を持って発言できるような内容ではないので、感想めいたところということでとどめさせていただきます。

 以上です。

○田中委員長 分析をしていただきまして、ありがとうございました。

 特養については、利益率がマイナスのものが4割ぐらいありそうですね。御指摘いただきまして、ありがとうございます。

 そういうコメントでも結構ですし、感想でも結構です。読み方について、それぞれの委員の見解をお聞かせください。お願いします。

 藤井委員、お願いします。

○藤井委員 3点ほど申し上げます。

 まず第1点目については、全く千葉委員と私も同感でございまして、私のほうは具体的なデータを持ち合わせているわけではないのですけれども、さまざまな経営者と接点があり、あるいは勉強会とかいろんなところを通じまして、やはり人を採用するのは厳しい。介護報酬がこれまでのように下げられるというのは、今回は極めて特に厳しいという状況であります。

 大変卑近な話でありますが、福祉学科の教員をやっているのですが、ここ数年の一般就職の良さというものは抜きんでていまして、今回の内定先でも広告代理店とか金融とか、あるいはディベロッパーとか、かなり普通でも入れないような企業を複数の内定を軽々ととれる。それぐらい人が不足しているのだなということを実感するわけでございまして、かなり大卒で介護職に採るということが重要視されているようなところになりますと、非常に厳しい。当然、給料でも上げた数値を出さざるを得ないということになっているかと思います。

 逆に言いますと、時々聞きますのが、そういった給与水準を上げるというのは、給与テーブルそのものをどう変えていくかという話にもなるわけでございますが、なかなか全体を変えられない中で手前を上げていくものですから、生活相談員になると夜勤も減るせいもあって給料がダウンするという、例えば特養で、抜本的にやりたいのだけれども、とにかく少しでも給料を上げて確保しない限りといった話もございまして、千葉委員あるいは事務局の分析どおりで、かなり現状は厳しい様相があるということだろうと思います。

 2番目ですけれども、今回の分析で、キャッシュの部分を出されるようになったということなのですが、以前、この委員会でもキャッシュを出すことの意味という話があったと思うのですが、これは全般に出していただく必要があるということではないのですけれども、分析の際に、平均的な利益の状況で介護報酬の参考にするというのはよくわかるのですが、平均的なキャッシュの状況が参考になるといいますか、ここになりますと、キャッシュが回らない法人がどれぐらいになっているのか。これは破綻しかねないという状況でございますから、そういう本格的な、危機的なものが何割いるのか。

 今、お話がありましたように、赤字の法人が4割あるとはいえ、当面のキャッシュは回っているわけですから、介護報酬には手当をつける必要はあるかもしれませんけれども、その問題としては1年先、2年先の話はないと思うのですが、キャッシュが回らないということは、1年先、2年先でございますから、やはり何割の法人が厳しいのか。それはどういう法人なのか。どういう地域にあるのかといった分析をしなくてはならないぐらい、やはり厳しくなっているということだと思いますから、その点は介護報酬を算定される際にオープンにされるデータかどうかというのは別の話だと思いますが、ぜひ見ていただきたいと思います。

 3点目で、千葉委員がおっしゃったように、事務局から説明もあったようでございますけれども、実態調査ということで、年度の数字をとるようになりました。これは前回も申し上げたのですが、概況調査と実態調査が今後どういう形になっていくのかということで、概況調査のほうが数は少ないです。それで、今回の場合は2年とりましたということなのですが、数は少ないと申し上げても、施設系はかなり同じ数で、同じ手間が3年に2回来ているという状況でございますので、どういう位置づけにするかということを次回整理していただきたいという遠い話でございます。

 それから、すみません、もう一点ありました。資料1で、今回から全サービス平均という数字を出していただいておって、こういう数字は恐らくほかの社会保障全体とか財政を考える上では出していっていただくということなのだろうと思いますが、まず、この数字を出す上で、注3ということで、出し方は書いていただいているのですが、例えばサービスごとの費用額の構成費が何の調査に基づいているか。何の何年の調査に基づいているかということは、これが統計データとして出てまいりますので、それをお書きいただきたいことと、これは全数調査ではございませんので、やはりこれは全サービス平均と出した値はかなり参考値ということになるのだと思うのです。ですから、参考という示し方がいいのかなと思います。

 以上です。

○田中委員長 福祉系卒業生をめぐって介護事業者同士で求人を競い合うのではなくて、他産業との競い合いになってしまっている点も含めて言っていただきました。ありがとうございます。全サービス平均の意味の捉え方は多少、留保が必要であるという指摘です。

どうぞ。

○説明者 1点補足でございますが、只今の藤井委員からのご指摘で、費用額をどの調査で出しているのかというお話ですが、こちらにつきましては、平成27年度、平成28年度におけるそれぞれの介護給付費等実態調査における費用額を用いております。この調査は、レセプトの集計調査でございますが、こちらのサービスごとの費用額のシェアを用いているところでございます。注3には記載しておりませんが、事実関係としてはそのようになっているということでございます。

○田中委員長 昨日の改定検証委員会でも、老健の3つの機能の違いが議論になり、そこでは在宅支援強化型と従来型と療養型とでは、果たしている機能が違うことがわかりました。今回の統計では、それは区別されていないのですね。老健一般になってしまうのですね。

 同じ老健という名前だけれども、実は社会的機能が違うことが昨日の委員会の報告でわかったので、こちらの資料でもいずれは違いを見たいです。

○説明者 今、委員長がおっしゃったような分析につきましては、この経営実態調査のデータとレセプトのデータをつけ合わせた上で、クロスさせるという特別集計を行うことで把握することが可能かと思います。この調査の集計においてはそこまでの集計は行っていないですが、そういった集計を行うことは可能かと思います。

○田中委員長 報酬を考える上では、そういう違いが重要になりますからね。

○説明者 そういった分析を内部で行いながら報酬改定につなげていくということになると思います。

○田中委員長 お願いします。

 堀田委員、どうぞ。

○堀田委員 これは毎回、この経営実態調査の前後にお話があるような気がするのですが、今日出してくださっているところの範囲では恐らく入っていないような気がするのですけれども、今回のこの収支差率の分布を併設サービスの類型別みたいなもので検討することは、中ではもう既に作業を進めていらっしゃるのか、それとも、基本的には併設サービスの有無やら、あるいはその類型でこれをより分析してみるということはやっていらっしゃらないのか。それは今、どんな感じでしょうか。

○説明者 併設サービスの有無に関する分析でございますが、通常、こちらの集計表には掲載しておりませんが、例えば、居宅介護支援は毎回収支差率がマイナスということなのですが、併設型なのか、単独型なのかということによって、収支差率が変わってくるといったことがございまして、内部ではそういった分析をさせていただいているところです。

 全てのサービスでそのような分析を行っているかというと、そこまでは行っておりませんが、特徴的なサービスについてはそのような違いがあるかないかということは見ているところです。

○堀田委員 そうすると、これは基本的に事業所で見ていると思うのですが、この法人全体としてのどのような事業を組み合わせているのかとか規模みたいなことでは分析を十分にはなかなかすることができないところですね。

○説明者 いろいろ御意見があると思いますけれども、この調査は基本的にサービス単位で調査を行っているところでございまして、法人単位ということになりますと、例えば、特養の中でデイ、ショートを行っている場合、この3つのサービスについて、それぞれがどのような収支になっているかを把握した上で、全体としての分析を行うことが必要となりますが、現状では、この調査の目的である介護報酬改定に必要な基礎資料を得るということを踏まえて、サービスごとの調査とさせていただいておりますので、現段階ではちょっと難しいかなと思っております。また、法人に対して全てのサービスの収支を書かせるというのが記入者負担との関係でどうかという点も考慮に入れる必要があると思っております。

○田中委員長 お願いします。

○藤井委員 田中委員長がおっしゃった機能別というものを、特に老健の場合は制度上も機能を分けていくというのが明確な報酬になってきて、田中委員長が昨日おっしゃったように、従来型といいますか、その他という部分が機能を明確に考えているかという話は老健協会のほうもどう考えていらっしゃるかというのはありますが、そういうものも見てみたいということもあるのですが、例えば、定期巡回であれば併設施設にほとんどの割合を提供している場合と地域展開している場合といったものがありますので、やはり機能というものは今後見ていく必要があるのではないかと思います。

 それに類したことで、普段は大変小さいことなので気にしないでいたのですけれども、今回は気にしたほうがいいかなと思うのが資料3の50ページですが、介護老人福祉施設の規模別の収支というものが出ております。御案内のように、措置時代からのことで、30人のところがちょっと黒字に出ている。これは制度の流れからやむを得ない面があるというのは十分理解しているのですが、毎回、差があるのは気にしていたのですけれども、余りはねないので発言もしなかったのですが、今回計算してみると、0.2%ぐらいはねるのです。

 そうすると、特養の利益率が1.6%になってきているので、結構はねるということになっていまして、これは30人のところがあるがゆえに1.6%に見えているものが本当はもっと小さいのではないかというところがありますので、そこら辺は出すか出さないかは別として、この30人のところだけ常に、どうしても報酬が高いですから、利益率が上がっているというのは御案内のことだと思いますので、そういった部分は恐らく各所にあるのだろうと思います。

 利益率がこれだけ下がってまいりますと、多分はねが大きくなっていますので、改めて類型によっては黒字が出やすいものがあるがゆえに、全体で見ると1.数%か、ぎりぎりかなという見方をしてしまうけれども、そういう儲かっている類型を外した結果として実は0.数%になっているということもありますので、そのあたりはぜひ詳しく見ていただきたいなと思います。

○田中委員長 統計の見方ですね。ありがとうございます。

 今後、給付費分科会でも議論すると思うのですけれども、何級地であるかによる違いは何か趨勢はありましたか。

○説明者 級地別の分析でございますが、資料3の参考表の中に第23表から記載しております。2ページ以降に級地ごとに細かく記載しております。

 よく言われますのが、都市部ですと経営がちょっと厳しいとか、それとは逆に地方だと厳しいとか、いろいろな見解があるかと思うのですが、例えば、2ページの介護老人福祉施設でいいますと、1級地、2級地では収支差率が0.3%、0.6%という数字が並んでいて収支差率が低いという状況になっています。一方、3ページの介護老人保健施設ですと、1級地では2.1%、2級地では2.4%であり、3級地、4級地と徐々に上がっておりますが、5級地では2.5%、6級地では1.4%と低下しているなど、サービスによって結構ばらつきはあるものと思っております。

 一定の傾向が何かあるのかというとなかなか分析が難しいと考えており、また、基本的に級地につきましては、客体の大半が「その他」に入ってきますので、そうしたところをどのように見るのかということかと考えているところでございます。

○田中委員長 千葉委員、どうぞ。

○千葉委員 その関係の追加意見みたいなものですが、級地は確かに重要ですし、報酬を決定する際は非常に議論になるところなのですが、如何せん、今回の調査では例えば2ページ、3ページのほうの中段、18行目ですか。有効回答数という数を見ても、ほとんどのセルで大体2桁サンプルになっていて、おっしゃるように、今、その他の区分のところばかりにデータが寄っているところもありますから、結構、傾向を見るのは、このデータだけだと難しいかなという感じはしています。

 それと、我々もよく、うちのデータを使って地域別をやるのですが、やはり系統的要因が地域という区分以外にいろんな要素が絡んでくるので、単に地域でくくった、同じような単価の地域でくくっても、結構出方がサンプルによって違いがあり、意外に地域という切り口が何か全体傾向をうまく出しているのかというのは緻密に突っ込もうとすると難しい。大きな傾向でいうと都市部はコストが高くて、地方部はコストが安いぐらいのことは言えても、何級地と何級地との間のどれがどうだとかいう分析は、これだけのデータだとなかなか難しい部分はあるのではないかなという気がしています。

 以上です。

○田中委員長 御指摘ありがとうございます。

 お願いします。

○藤井委員 級地に関して、このデータということではないのですけれども、これも十分考慮されているお話だと思うのですが、東京、大阪当たりですと非常に介護職員のモビリティーも高い。それ以外の地方ですと、やはりかなり近所で就職される方が多いと思うのです。

 モビリティーが高いのだけれども、各市町村別にはかなり級地の違いが東京でも大阪でも一見納得しにくいような、恐らくこれは公表されていませんが、市町村、保険者側の要望等もあるのだと思いますけれども、何でこっちが高くて、何でこっちが安いのかなということがあったりする中で、実際に経営している側にとってみれば、それでかなり差が出ていて、人材の募集の上で有利と不利がかなりある。

 千葉委員がおっしゃるように、データでもってこの級地が正しいか正しくないのかというのは私もかなり難しいような気がしておりまして、これまでデータを根拠にということで級地決めをやってこられたのだと思うのですけれども、ここはデータをどう分析するかという部会でございますから、そういう意味で、こういったタイプのデータを積み上げて級地という議論はかなりしがたいのではないかということで、では、どうすればいいかというのは言う立場にはないと思うのですが、そういった点はちょっと御配慮いただければと。

 それから、人件費について申し上げましたので、ついでにという感じで言いますと、大体、前回と今回の間で、例えば資料2を見ますと、給与費の職種別の給料が出ておりまして、大ざっぱに言うと2%ぐらい人件費が上がっているということで、先ほど来出ております人件費のプッシュ要因で赤字になっているというのは明確に出ているのですが、これがまずベースとなる給与水準が各事業によって違う。

 例えばデイが結構安い。それから、看護師も特養が安くて老健が高くなっているとか、これはひょっとしたら期待している役割の違い、専門性みたいなものによっているのかもしれないなという仮説は立てられるかもしれないのです。例えば老健であれば看護師が2.1%上げられているけれども、特養は1%も上げられていないといった、職種別に、それから、サービス別に見ますと、それなりに大きな特徴が出ております。

 特にデイが全般に低いというのは、もちろん、介護職員であれば夜勤のあるなしということは大きいと思うのですけれども、看護師が例えば特養で夜勤はまずしているケースは少ないので、これだけ差が出ているのがわかりにくいとか、今回の場合は人件費がコストプッシュ要因であることが明確になっていますので、職種別で上がっている、上がっていない、それから、そもそもの水準というものも丁寧に見合わせた上で、報酬の参考にされるときには何かこのあたりは丁寧に見ていただきたいなと思います。

○田中委員長 ありがとうございます。

 この表をどう読んでいくかは、本委員会よりも介護給付費分科会の役割であり、この委員会の役割はこの表の統計のとり方とか、今後への示唆とか、ここはサンプル数が少ないから気をつけて読むことが必要とか、そういう読み方にかかわることが重要だと思うのですけれども、大体よろしゅうございますか。

 それぞれの委員から専門的なことを伺いました。報酬が高いか低いかに関する判断は本委員会ではなく、介護給付費分科会のほうで議論することになります。客観的な読み方を今日、皆さん、それぞれの立場から言っていただきました。共通していた点は、人件費が上がっていることによってトータルでは収支差率が下がっているという分析ですね。これは間違いない点だと感じます。

 よろしゅうございますか。

 予定していた議論はここまでとなります。

 本日の議題1については、提示させていただいた内容で当委員会としては了承し、明日開催される介護給付費分科会に報告させていただきます。その方向でよろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○田中委員長 御承認いただいたので、そのようにいたします。

 本日の審議の予定はここまででございます。次回の予定について、事務局より説明をお願いします。

○西嶋介護保険データ分析室長 本日はありがとうございました。

 次回の日程等につきましては、事務局より追って御連絡をさせていただきます。

○田中委員長 これにて閉会いたします。

 お忙しいところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

 

 

 


(了)

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