ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国立研究開発法人審議会(高度専門医療研究評価部会)> 第11回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会(2017年8月8日)




2017年8月8日 第11回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

医政局医療経営支援課

○日時

平成29年8月8日(火)


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

委員

永井部会長 内山部会長代理 大西委員 斎藤委員 祖父江委員 花井委員 深見委員 福井委員 藤川委員 本田委員

○議題

(1)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの平成28事業年度業務実績評価について
(2)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの平成28事業年度業務実績評価について
(3)その他

○配布資料

【国立長寿医療研究センター】
資料1-1 平成28事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 平成28事業年度 業務実績評価説明資料
資料1-3 平成28年度 財務諸表等
資料1-4 平成28年度 監査報告書
【国立成育医療研究センター】
資料2-1 平成28事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 平成28事業年度 業務実績評価説明資料
資料2-3 平成28年度 財務諸表等
資料2-4 平成28年度 監査報告書
【参考資料】
参考資料1 国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 委員名簿

○議事

 

○医政局医療経営支援課課長補佐

 委員の先生が全員おそろいですので、ただ今から「第11回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。委員の皆様には、大変お忙しい中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。

 本日は10名全員の先生方に御出席いただいており、会議が成立することを御報告いたします。なお、祖父江委員並びに本田委員におきましては、議題(1)が終わりましたら途中退席の報告を受けております。よろしくお願いいたします。また、佐原大臣官房審議官につきましても公務の都合で議題(1)が終わりましたら中座させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

 続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。まず机上に委員名簿と座席表、資料1-2として国立長寿医療研究センターの業務実績評価説明資料です。また議題(2)、資料2-2になりますが、成育医療研究センターの業務実績評価説明資料です。委員のお手元には、評価を御記入いただく用紙と永井部会長から事前に依頼のありました資料を参考に置かせていただいております。資料の不足・乱丁等ありましたら事務局までお申し出いただければと思います。

 また、タブレットのほうには14まで、長寿医療研究センター、成育医療研究センター各々の業務実績評価書、業務実績評価説明資料、財務諸表、監査報告書がいつものように入っております。

 それでは永井部会長、以降の進行につきましてよろしくお願いします。

 

○永井部会長

 それでは、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの平成28年度業務実績評価について御議論いただきます。最初に、1-1及び1-2に係る業務実績と自己評価について御説明いただきたいと思います。先生、何か一言ありますか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 毎年ありがとうございます。実績資料の扉、1ページ目を見ながら簡単に御挨拶だけ申し上げます。

 毎年のように、心と身体の自立を促進して、健康長寿社会に貢献するためにセンター内センターを8つ設けて、病院と研究所だけでなく、創出したものを社会実装、創薬だけではなくロボット、またシステムや教育などにいかすために組織を整備してきたわけです。

 毎年、私たちはこれこれをやったということで評価を受けるように資料を用意しております。昨年まで長寿の課題として指摘されたことがたくさんございます。それは研究成果のことだけではなく専修医の問題、様々なことを指摘されたと思います。毎年、課題について厳しく御指摘いただいて、それを基にまた1年、センターの中で課題を実現すべく頑張っていくということですので、本年もよろしく厳しい御評価をお願いしたいところでございます。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます、それでは説明をよろしくお願いします。

 

○国立長寿医療研究センター研究所長

 研究所長の柳澤です、よろしくお願いいたします。業務実績概要説明資料の5ページを御覧ください。

 評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進について、御説明申し上げます。加齢に伴う疾患に対する予防、診断、治療法の開発におきましては、まずアルツハイマー病先制治療薬の開発におきまして、アミロイドβ蛋白、「Aβ」と略させていただきますが、その阻害剤開発に向けた低分子化合物の創出を鋭意継続し、平成28年度においては最適化リード化合物を4種類獲得し、Proof of Concept(POC)検証試験を開始いたしました。結果が得られ次第、前臨床試験への展開を図りたいと考えます。また、併せてタウを標的とする低分子化合物の開発も継続いたしました。

 アルツハイマー病早期診断法の開発におきましては、島津製作所と共同開発いたしました世界初となるアルツハイマー病発症前血液バイオマーカーについて、海外の研究機関とも連携し、大規模の国際的なvalidationを実施いたしました。また、アルツハイマー病発症前の脳磁図検査によって特異な所見を確認し、アルツハイマー病の早期診断が脳機能画像検査によっても可能であることを見いだしました。これらの発症前診断は世界的に未だ成功していないアルツハイマー病の根治的な治療薬、あるいは本質的な予防薬の開発に大きく貢献するものと期待しております。

 アルツハイマー病の発症病態解明に関しましては、神経細胞に傷害が及んだ際に生じる細胞ストレス応答蛋白の一つでありますEDEMという蛋白質が神経細胞を保護し、驚くべきことに個体の寿命延長をも誘導することを発見いたしました。EDEMの発現誘導はこれまでに報告されたほかのストレス応答蛋白、例えばBiPやヒートショック蛋白といったものが知られておりますが、それらと異なり、神経細胞死誘導等副作用を生じないということからアルツハイマー病を含めた、老化に伴う様々な神経変性疾患の治療法開発への道を開くものと期待しております。本成果につきましては、614日にプレス発表いたしました。

 一方、高齢者のQOLを損なう重大な要因であるところの歯周病の克服に関しまして、新たな成果を得ることができました。すなわち、口腔粘膜バリアの歯周病菌による破綻機序を解明しこれを阻止し得る分子を見いだしました。

 右側を御覧ください。加齢に伴う疾患の本態解明及び実態把握におきましては、認知症のオールジャパンコホート研究、私どもはこれをオレンジレジストリと呼んでおりますが、その国内研究体制を更に整備・充実させ、海外の主要な研究組織とも連携を構築いたしました。数値目標といたしましては、原著論文数を含め、お示ししたとおりの成果を出すことができました。

 以上、御紹介いたしましたように、アルツハイマー病の制圧に向けた先制治療薬の開発並びに早期診断法の開発、そしてそれらの実践基盤となるコホート研究において世界に類をみない展開を果たすことができたことにより、自己評価を「S」とさせていただきました。

 重複いたしますが、6ページから8ページにはポンチ絵でも成果をお示ししております。6ページの右下を御覧ください。先制治療薬開発において最適化リード化合物のPOC検証試験を開始いたしました。左下を御覧ください、島津製作所と共同で世界初となる発症前血液バイオマーカーの大規模なvalidationを実施いたしました。また、アルツハイマー病発症前に脳磁図検査で特異な所見を確認いたしました。先ほど申し上げましたように、これらのバイオマーカーはアルツハイマー病治療薬・予防薬の開発を目指した臨床試験の効率を大きく高めるものと期待しております。上を御覧ください。EDEMという蛋白質に注目し、老化に伴う神経細胞機能障害を副作用なく改善し、寿命を延ばすことに成功いたしました。

7ページを御覧ください。健康長寿の基盤として重要な高齢者の歯周病克服に向けた研究を推進し、歯周病菌による口腔粘膜バリアの破綻機序を明らかにし、更に臨床使用可能な薬剤、実はブドウ糖ですが、その塗布により、これが阻止可能であることを見いだしました。本成果は、科学情報研究サイトのWorld Biomedical Frontiersで紹介されております。

8ページを御覧ください。国の「新オレンジプラン」に対応するべく、認知症のオールジャパンコホート研究(オレンジレジストリ)を構築し、平成28年度におきましては、当センターを中心に国内33カ所の医療機関と連携し、既に760名の皆様から臨床試験参加の御同意を頂戴いたしました。同時に、早期診断バイオマーカーや治療薬の開発の促進を目指した国際連携を構築するべく、昨年7月には、カナダ・トロント市で開催されましたGlobal Alzheimer's Platformに鳥羽代表ほか関係者が参加し、議論してまいりました。

9ページを御覧ください。評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について説明申し上げます。まず、健康長寿支援ロボットセンターにおきましては、企業との密接な連携構築を目指し、1年間に80回を超える協議を行い、このあとポンチ絵で御紹介いたしますように、22のロボット開発プロジェクトを具体的に推進いたしました。同時に、これらのロボットの有効性・安全性を検証する場を介護付き老人ホーム等に協力を求め、整備いたしました。併せて、AMEDのコミュニケーションロボット普及事業に参加し、近未来におけるロボットの家庭への導入に伴う問題点の先行的な洗い出しに着手いたしました。当ロボットセンターは経済産業省の御指導もいただき、医療・介護ロボットの有用性・安全性の検証拠点の役割を果たすものであり、今後更に研究開発を拡大・加速してまいりたいと考えます。

 メディカルゲノムセンターの機能整備とバイオバンクの充実に向けましては、収集試料のゲノム解析等を鋭意進めるとともに、研究者によるバイオバンク資試料の利活用促進に向けたインターフェースの構築、また広報活動を推進いたしました。本年度の実績の具体的な数値は後ほどポンチ絵でお示しいたします。

 治験及び臨床研究の推進に関しましては、医師主導治験並びに先進医療Bを含む臨床研究を推進し、また当センター内の臨床研究を更に充実させるべく臨床研究相談、CRC業務及びモニタリング等の整備を進めました。また、企業との共同研究におけるマッチングの最適化のための産官学連携支援体制の充実を図りました。

 認知機能低下予防に向けた運動会議の効果についてのエビデンスの検証を開始いたしました。また、認知症早期発見データベースの構築を進め、更に高齢者の自動車運転能力の維持あるいは向上を目指した運転寿命延伸プロジェクトを地域の自動車教習所あるいは自動車学校と共同で推進いたしました。

 数値目標の達成度に関して御説明申し上げます。平成28年度におきましては新たに開始した医師主導治験はございませんが、眼科領域での再生医療、すなわち培養角膜内皮細胞の移植研究に係る医師主導治験に向けたヒアリング手順書の準備を始めました。臨床研究及び治験の実績並びに臨床ガイドライン策定への参画についてはお示ししたとおりです。自己評価は、我が国の成長産業の一つとして期待を集めるロボット開発の中で、人口の高齢化に貢献し得る、世界的にも類を見ない健康長寿支援ロボットセンターを充実させ、顕著な成果を挙げつつあること等を踏まえ、「S」とさせていただきました。

10ページ~14ページにはポンチ絵でも成果をお示ししております。10ページを御覧ください。健康長寿支援ロボットセンターの成果をお示ししています。右側の枠内を御覧ください。共同開発の相手方のお名前を含めお示ししております。移乗介助、移動支援、見守りシステム、バランス訓練・歩行訓練、コミュニケーション・傾聴・回想法支援、その他都合22のロボット開発プロジェクトが進行中であり、それらの幾つかは既に実証試験の段階にあります。

11ページを御覧ください。メディカルゲノムセンターにおけるバイオバンク事業の実績をお示ししています。平成28年度におきましては、新たに941名の新規登録があり、開設以来の総登録者数は6,000名を超える大規模なものとなりました。平成28年度におきましては、簡便な遺伝子パネルを用いたターゲット・シークエンスを開始し、今後は認知症をはじめとした高齢者疾患の遺伝的危険因子の情報を効率よく臨床にフィードバックするシステムの充実を図ってまいりたいと考えます。

12ページを御覧ください。メディカルゲノムセンターにおける、私ども独自の基礎研究あるいは基礎開発を御紹介いたします。平成28年度におきましては、認知症の全エクソーム解析を継続実施し、ゲノム情報データベース191例の情報を追加し、累計で758例となりました。今後は日本人の認知症発症に関わる遺伝的検証を明らかにするべく、病因論的検討、アノテーションを進め、創薬シーズの開発等に活用したいと考えております。

13ページを御覧ください。治験・臨床研究推進研究センターにおける平成28年度の実績をお示ししております。時間の関係で説明は割愛させていただきます。

 最後に14ページを御覧ください。認知症予防に向けた運動介入等の効果検証、エビデンス構築と社会実装に向けた展開を御紹介いたします。まず、認知症早期発見のためのデータベースの構築を目指し、地域高齢者2万人の参加を求め、データの収集作業を推進いたしました。

 次に、認知機能低下予防に向けた運動介入の効果に関するランダム化比較試験による検証に着手いたしました。高齢者の自動車運転能力の維持、あるいは向上を目指した運転寿命延伸プロジェクトを推進いたしました。これらの取組につきましては幸いなことに広くメディアで御紹介いただき、全国の自治体等への普及・啓発をも積極的に進めてまいりました。以上で説明を終わります。

○永井部会長

 ありがとうございます。ただ今の御説明に対して御質問をお願いいたします、いかがでしょうか。

○花井委員

 ありがとうございます。本当に様々な取組をされていて感心するところです。評価するほうとすると、Sを付けるためには世界初だけではなく、何かしらその分野でブレイクスルーということを強く言われています。

 質問なのですが、5ページにあるいわゆるアルツハイマーの発症前診断というところ、1つは血液のマーカー、1つは画像診断、両方組み合わせてかなり精度が上がるということになっています。これは例えば、こういう診断が世界的標準になって、ブレイクスルーになるという期待度はどのぐらいと考えたらよろしいのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 今、世界的にアルツハイマー病の治療あるいは予防で一番問題になっていることは、やはりお薬を作るということだと思います、本当に効く薬を作るということ。ここ10年、15年、世界の名だたる製薬企業は、ほとんどそこに相当のお金と人を投じてやってまいりました。残念ながら、今日、この時点においても成功しておりません。

 その一番の理由、一つの理由と言うべきかもしれませんが、その臨床試験に参加してくださった方の中に、アルツハイマー病の治験でありながら、アルツハイマー病以外の原因による認知症の方が、少なく見積って3割あるいは4割も含まれていた可能性があるということです。しかし、御案内のように、臨床研究というのは大多数の方を対象としなければいけないため、非常にお金の掛かる、あるいは身体的に負担となるような、アミロイドのイメージングや脳脊髄液検査というのはなかなか実際的には難しい。

 今、世界の製薬企業が一番求めていることは、安全に廉価で、そして精度が良く、発症前の方、発症していないけれどもアミロイド等の蓄積による病理学的な変化がある方を見つけるということです。そういった意味で、私たちが生化学と生理学、たまたまですが2つのものでほぼ同時に成果が出つつあるということなのですが、これは大きく貢献できると私たちは考えています。

○花井委員

 ということは、今のお話だと今後メーカー等が開発するに当たって、ここで開発されたマーカーによってプロトコルの中のエントリーのリストを作るという可能性、近々可能性は高いということですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 はい、そう考えています。それと同時に、日本で言えばPMDA、アメリカで言えばFDAにきちんとそれを承認していただいて、一気に世界的な標準にする努力をしていきたいと考えています。

 仮に近い将来、その結果としてお薬ができたとしましょう。そうすると、それは認知症を発症していない方に飲んでいただくお薬ですので、その使用に当たってもこういうバイオマーカーは必須であるように考えます。

○内山部会長代理

 今の花井委員の質問に関連します。となりますと、早期診断法の開発というのは先制治療薬の開発が目的であって、早期診断したからといってそれが患者さんにとってメリットがあるということは今のところないわけですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 早期診断というのはやはり早期治療の手立てがあって初めて一般論としては意味をもつと思います。早期治療の手法を開発するために今必要なのは何としても発症前診断だと思います。それに貢献したいということです。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。いつもながら非常に広範に、かつ新しいコンセプトも出していて素晴らしいと思います。

2つ、ちょっとお聞きしたいと思います。1つは、ほかのナショナルセンターもみんな同じだと思うのですが、例えばここで言う認知症なら認知症の日本全国での動向とか予後、病型、患者さんのリクルートということももちろんあると思います。そういうことを中心的に把握するというのがナショナルセンターの非常に大きなミッションだと思っています。

 今、ここでお話になったオレンジレジストリという、これは非常に期待できると思っています。MCIでどこまで悉皆性をもってやるのかというのは大変難しいと思うのですが、病型や予後をきちんと見ようと思うとある形を取らないとそれが出てこないと思います。フォローアップ率とかデータの信頼性とか、いろいろな問題が取りまとっている可能性があると思います。例えば、目標によっては定点観測で見ていくとかフォローアップをきちんと取るとか、そういうデザイン的なものはお考えになっておられるかどうか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 ありがとうございます。おっしゃることは誠にもっともで、限られた研究費や人員をいろいろな大学やグループで別々にやっていても全然無駄だと思います。東大やプレクリニカルのグループ、あるいは疫学でもうちでやっているものと久山町のグループ、それら全体としてオールジャパン体制ということでカナダの国際学会で発表させていただきました。主だった中心的な人には、第一にコホートは協調してやろうと。それから、今、先生が言われた一番大切な診断の精度や管理などもお金が掛かりますので、これらについても一緒にやっていこうと。これはオレンジレジストリという我々のコホートに、ほかのコホートの人も運営委員に入っていただいており、近々名古屋に来ていただいてほかのコホートの人と一緒にやっていくことを目指しております。

 また、アルツハイマーだけではなくレビー小体型に関しましては、名古屋大学グループとの連携なども始まっているところです。全ての認知症に関して無駄がないように、限られた資源と人を有効利用して最低でもオールジャパン体制でやっていきたい。それでないと、国際的にとても太刀打ちできないと指摘されております。御指導、よろしくお願いいたします。

○祖父江委員

 それぞれ得意コホートが今までにもあるので、そこと連携しながら役割分担をやっていくという構想だという理解でよろしいでしょうか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 このオレンジレジストリの中には実はもう2万人から6万人規模、最終的なプレクリニカルのコホートがあり、実は、AMEDプレクリニカルよりもこちらのほうが患者さんのリクルートがものすごく順調です。もう3,000人の発症前の方が登録されております。それをアミロイドイメージングで一部抜き出し、診断の精度を上げていくという研究活動も実は始まっております。

○祖父江委員

 今の関連でもう1つ、先ほどロボットのことをちょっとおっしゃったと思います。これは、私も非常に重要だろうと思います。なぜ重要かというと、もちろんサイエンティフィック、あるいは社会的なインパクトで重要だと思うのですが、1つは、ここに企業や大学との共同研究というようにうたっています。ほかのところでも同じことをディスカッションさせていただいているのですが、外部資金、企業との連携開発というか、そういうことが今後非常に重要になってくると思います。

 非常にたくさんあります。中には大学との連携も入っているのですが、実際、外部資金的に見るとどのぐらいのインカムになっているのかをちょっと教えていただけますか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 相当大きいというようにしか申し上げられないのですが、こういうロボット開発というのはなかなか競争的な、例えば文部科学省や厚生労働省の科研費にはちょっとなじまないところがあろうかと思います。そういった意味ではどことは申しませんが、ここにも名前のあるような大手の企業というのは非常にロボットの重要性を認識されて、今後の日本の高齢化社会に早くからそこにコミットしましょうと、本当にありがたいことに研究開発費という点でも長寿をご支援下さっております。

○祖父江委員

 そこのところ、非常に大事だと思います。

○永井部会長

 ほかにいかがでしょうか。

○福井委員

 ロボットとも関係しますけれども、多くのところでAIを用いた研究がいろいろな分野で行われています。長寿医療センターでは、何かそういうようなプロジェクトは立ち上がっているのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター理事長

3つぐらいのプロジェクトが実は進んでおります。1つは既に入っている傾聴ロボット(お話を聞くロボット)、最初は会話が2分ぐらいしか続かなかったのですが、今は20分ぐらい会話がやり取りできるようになってきています。だんだん学習効果があります。

 もう1つは、教師ありのAIの開発に向けて、看護の方あるいは医療関係者が今までこのような方はこのような、例えば転倒なら転びやすいのが危ないとされているノウハウを様々なところでAIとまず共有して、それからまたAIに論文を学習してもらう。このような医療介護の学習を今後していくようなロボットについて、3つぐらいのテーマがもう既に某社と進行中です。

○本田委員

 オレンジレジストリの所なのですが、先ほど質問のあったところと重複するかもしれません。今、これだけの人たちが登録されてきて、他のコホートとも連携されるということですが、既にここに登録されたような方々に御協力いただいて、どのような研究が始まっているのか、始まっていないのか、具体的に教えてもらいたい。

 あと、プレクリニカルの方々というのを、被験者を集めること自体が大変難しいと伺っているのですが、こういうコホートがあると様々な研究がしやすくなると伺っています。ここの部分での、産官学のような、オレンジレジストリを企業とも連携して使ってもらうなど、そういう考えがあるのかを教えてください。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 まず御質問の第1点目ですが、メディカルゲノムセンターというものがあり、そこで実際に今回のオレンジレジストリに登録、しかも研究に参加していただけるという御同意がいただけた方の例えば血漿、マイクロRNAの解析などに既にどんどん活用させていただいています。

 先ほど、ちょっと強調させていただいたのですが、世界的にはアルツハイマー病ひとつをとりましても、遺伝的なバックグラウンドというのはこういうものだろうということは大体分かっているわけです。でも、それが果たして、日本人のアルツハイマー病の危険因子かどうかというのは別かもしれない、あるいは全く新しいものがあるかもしれないということで、今、メディカルゲノムセンターを中心にデータが出始めているというのが1つです。

 企業との関係ですが、何万人というレジストリに参加してくださった方たちを私たちだけが抱え込んで、アカデミアとしての研究の対象だけに活用させていただくことはもちろん考えていません。これらの貴重な試料は企業の方との共同研究という形で、先ほどの発症前を早く見つけて、そこをきちんと抑えるようなお薬の開発が重要になってくると思います。そういった意味で、厚生労働省が中心となったCIN(Clinical Innovation Network)というものがあります。そこに海外の大手の製薬企業も含めて56社にもう既に入っていただいて、そことのコンソーシアムでこれからどうしようか、どのタイミングでどういうバイオマーカーの検証をしましょうかといった議論が具体的に始まっております。

○深見委員

 研究の中心になっているのはアルツハイマーなのだと思いますけれども、歯周病のお話をちょっとしていただきました。歯周病は最近、特に口の中だけの話だけでなく、いろいろな疾患、アルツハイマーに絡んでくるかもしれませんが、ほかの疾患にも非常に絡むということで、恐らく非常に注目されている分野であるかと思います。

7ページ、上皮バリアがグルコースで修復するというのは余りにも単純過ぎる図かと思います。上皮バリアの修復法開発というのは、これは例えば一般的、社会的に簡単にできることなのか。簡単にできることというのは、例えば上皮バリアの破綻に基づくような、いろいろな疾患を少し予防できるようなことは社会的に啓蒙できることなのか、それとももうちょっと複雑なメカニズムに基づいた治療が必要なのか、そのあたりはいかがでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 歯周病は先生がおっしゃったように、例えば全身の血管障害などがリスクファクターになるとか、あるいは糖尿病も1つの結果なのかもしれませんが、そういう可能性は様々指摘されているところです。

 私もこの成果を最初に知ったとき、そうか、グルコースを塗ればいいのかという単純な話かと、物理的な保護かなと思いました。ところが、ちょっと説明させていただきますと、ここに3つの黒い絵があって、上に歯周病菌というものがあります。それが歯周病菌の粘膜そのものに、あるいは粘膜にあるマスト細胞というものに働いて、それによって例えばIL-31であるとかIL-33というサイトカインが出てきます。

 今回、これが何をしているかということが分かったのです。要するに口腔粘膜の上皮というのはきちんと敷石状に、透き間が生じないように、クロジンという蛋白があって、セロテープのようにきっちり貼られているわけです。ところが、そのクロジンの発現を先ほど申し上げたサイトカインが抑えてしまうということが分かりました。例えば経験的にキシリトールなど、アルコール性の糖というのはチューインガムにも入って販売されていますが、今回、2糖から単糖と様々なものを検証しました。何を目指したかというと、先ほど申し上げたクロジンの発現をもう一度上昇させ得る効果のあるものは一体何だろうかとやったところが、非常にありふれたD-glucose、それも20%の濃度だったということです。

 ですから、歯周病の予防という点ではまずやはり歯を磨くということだと思いますが、それに加えて、グルコースですので危険はありませんので、そういったものを補助的に塗布できたら更に効果は強まるのかなと期待しているところです。

○深見委員

 実際にグルコースなのですね。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 グルコースです。

 

○深見委員

 分かりました。

○斎藤委員

 ロボットのことで教えていただきたいのですが、異なる用途の22のプロジェクトが進行中というのは、驚異的な数字だと思います。人の手間もかかることで、大変だと思うのですが、その左を拝見しますと、既に実証をして導入ということが書いてございます。ということは、この22のプロジェクト以外に、既にもう実用に供されているロボットがあるということでしょうか。もしそうであれば幾つか教えてください。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 左側にある、女の方が吊革のようなものにぶら下がっているような図というのも、実は22の中に入っています。ですから、22の中に、御紹介したもの以外には特にありません。22のプロジェクトも、計画段階のものから、先ほど申し上げた実証試験の段階にあるものまでいろいろな段階があるということです。

○祖父江委員

 この日本人、ジャポニカアレイの1万人は、東北メディカル・メガバンクのものではないかと思います。これと5,500例の認知症のアソシエーションスタディをやって、たくさん遺伝子が見つかってきていますね。私も同じジャポニカアレイの東北とやっているものですから、非常に興味を持ったのですが、これ、アソシエーションスタディですよね。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 はい、そうです。

○祖父江委員

 オレンジプランとか、ああいうもので、先ほどのお話ですと、経過とかサブタイプとか予後とか、いろいろな発症に関わるもの以外、case-control studyで見えてくるものははどちらかというと疾患の発症に関わるものなのですが、モディファイア遺伝子みたいなものが、ここから出てくる可能性があるかなと思って拝聴していたのですが、それについては何かやられているかということと、そういうものをやっていくことにやはりバリデーションが非常に大事になると思うのですが、バリデーションはどこのコホートでおやりになっているかお聞きしたいのですが。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 アルツハイマー病と申しましても、先生が多分御指摘されたかと思うのですが、非常にヘテロなものだと思うのですね。進み具合、期間、様々な症状の重篤等々。非常に多様であると。そのような病状を修飾する要因としては環境因子もあれば、遺伝的なものもあるだろうと思われます。今の段階では、5,500例というのは、まずアルツハイマー病とか、そうでないというような、大まかな臨床診断ということで、これからもう少しサブグループをきちっと整理をして解析していく必要があります。理事長からも説明させていただきましたが、そういう段階に入りますと、これは長寿医療センターが中心としてさせていただきたいと思うのですが、私たちだけではできないと思うのです。これは少なくとも日本の中できちっとしたネットワークを作ってやっていきたいと考えています。

○藤川委員

 私もちょっとロボットのことについてお聞きしたいのですけれども、22個進行中ということで、ここはSを付けておられるのですけれども、22というのは今期に始まったものではなくて、何年か掛けてのものが22進行中ということで、その今期のSというものがどのぐらい進捗したのかということが、ちょっとよく分からないなというのが1点です。

 それから、ロボット分野というのは非常に今後ポテンシャリティーがある分野だと思っておりまして、6NCの中でもロボットというものに、信用性が高いというか、非常にそこが伸びる可能性があると思うのですけれども、これだけ一般企業と提携をしていて稼ぐことが今後これによってどれぐらい可能というか、これは資金源としてはなればいいなと思うのですが、どんな感じなのかという点。

 それから、6分野にわたっているのだけれども、これがどのぐらいの進捗というか、もっと分野が広がるのか、それとも進度を深めるということなのか、イメージが沸かなかったので、進捗の割合のようなところを教えていただきたいと思います。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 御指摘を最初に頂きましたように、今回の22のプロジェクトはセンターが立ち上がって以来3年間の積み重ねではありますが、少なくとも1年前にこれほどの成果を出すことはできませんでした。大方のものは28年度で具体的な進捗があったということです。

 それから、稼ぐといいましょうか、収益にもし展開ができればそれは本当に長寿医療センターとしては大事なことなのですけれども、一番大事なことは、やはり先ほど申し上げたように、日本から高齢者を対象とした、あるいはそれに特化したロボットの安全性、有効性をきちっと確認した形で出していくということだと思います。もちろん、実用化の段階に至れば、それなりの収益が長寿医療センターにもたらされると期待されますが、必ずしもそれが第一の目的ではありません。

 それから、開発プロジェクトの分野は非常に多様であり非常に大きなロボットから非常に小さな小型なものからまちまちというような印象を持たれるのは当然のことだと思うのです。ですから、最終的には、例えばコミュニケーションであるとか、移動であるとか、あるいはフレイルの予防といったような、リハビリ的なものとかといったようなグループ分けをして、それにマッチした企業ともきちっと整理をしていくということが、将来的には必要かもしれません。

○大西委員

 今のロボットセンターの所のお話で、昨年もちょっとお尋ねしたような記憶があるのですが、非常に広範なプロジェクトは素晴らしいと思うのですが、中にはこの開発のステージの中で、将来的には、例えば医療上、若しくは介護上で有用性とか有効性をきちんと検証していかなければならないというようなことも出てくると思いますが、そういったプロジェクトのステージにあるものもおありになるのでしょうか。それを長寿医療センターとして、いろいろなデータの取得ですとか、プロトコルの開発ですとか、そういったことに御協力されているものもあるということですか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 まず企業が、この倍ぐらいの方が相談に見えるのです。それで、実用化や実証試験に移れないものですから、無料で相談を受けるわけです。ここに書いてあるものは、治験と同じで、一例幾らという形で、有料で実施をしているものがほとんどです。あとは共同研究です。認知症も含めて、中のリハビリテーションセンターでできるものはそこでやっております。ただ、介護施設の介護ロボットに関しては、神奈川や近隣の介護老人保健施設や特養などでの実証実験もしておりまして、これは実証ですから、臨床で、実際に単に試しているのではなくて、既にベッドサイドや介護現場で実証中のものというように御理解いただければいいと思います。先ほどもありましたが、昨年は恐らくこれの3分の1もなかったと思います。ですから、28年度に3分の2以上の新しく実証が始まったと。大変な増え方で、知らない間に月に23つ増えているような状況です。

○永井部会長

 そのほかよろしいでしょうか。論文は大分増えてきました。ただ、ほかのナショセンに比べると数は少ないのですが、職員とか研究者の数で割ったときはどうなるのですか。がんセンターは非常に人が多い。でもちゃんとこの法人化後1.5倍ぐらいに論文が増えている。これは御努力の成果だと思うのですが、各研究者当たりの論文数は、どうでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 若干少ないと思います。まず職員数は一番長寿医療センターが少ないと思いますね。その人数が少ないということを考慮しても、1人当たりのという意味では、まだまだ努力が足りないと思います。

 一つは、私ども、例えば御質問いただいたロボットとか、あるいは社会系の研究とか、必ずしも研究開発が論文になりにくいものということで、これは完全に言い訳なのですが、そういったようなことです。

○永井部会長

 全部自分の所で完結させなくても、共同研究すれば若い人は活性化しますので。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 そういうところも更に努力していきたいと思います。

○永井部会長

 ありがとうございます。それでは、続きまして、1-3から1-5について、医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項です。よろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

15ページを御覧ください。評価項目1-3、医療の提供に関する事項は、自己評価を「A」としております。超高齢社会の進行から、認知症とフレイルが最も重要な病態であることは明らかで、その取組を重点的に進めました。その成果に関しましては別のページで説明いたします。ここでは、右の2つ目の下線部を御覧ください。多職種チームによるカンファレンス、ラウンド281件のうち、認知症の専門医、認定看護師など、多職種からなる認知症サポートチームは、認知症患者を扱うスタッフのサポートを87件行いました。これによりまして、大声、ルートトラブルなどに良い改善効果が認められました。

16ページを御覧ください。国内最大級のもの忘れセンターでは、昨年度に引き続き、上に記載しました、新オレンジプランの7つの柱を実現させつつ、新たな医療開発を行いました。青色の部分が、28年度の成果です。認知症の予防に関しましては、日本初の認知症レジストリを継続し、発症前、軽度認知障害、MCI、発症後のレジストリに登録いたしました。診断に関しましては、タウPETが加わり、βアミロイド蓄積や、タウタンパクリン酸化、FDG-PETによるアルツハイマー病診断による先進医療も継続しております。ホスホジエステラーゼ3阻害薬の医師主導治験は11例登録され、心房細動への抗凝固剤による認知症との関連を調べる研究も開始されました。

 治療とケアに関しましては、右を御覧ください。新オレンジプランの重要な観点である本人参加と家族重視です。家族介護者教室は、無作為比較試験で、ストレス関連の改善を得られたので、病期に応じた家族教室テキスト・DVD「あした晴れますように」を完成し、更に教室運営マニュアルを編集中です。このような家族教室の普及・啓発に加えて、認知症本人、家族の心理的ニーズを調査いたしました。また、新しい介護負担尺度の開発を進め、上記DVDを配信しながら、家族教室を地域で進めました。

 右下ですが、認知症カフェ・家族教室の調査を家族介護者で行い、家族介護者支援プログラムを配布いたしました。

 左の徘徊に関しましては、もの忘れセンターで前向きに調査した結果、円グラフのように、13%で「捜したことがある」という結果で、徘徊対応マニュアルを作成いたしました。さらに、認知症とフレイルの合併に関しましては、左の棒グラフで両者の合併は26%と高いことが明らかになり、認知機能に反比例して増加するという結果でした。フレイルは可逆性ですので、MCIからのリハビリの重要性が改めて示されました。

17ページです。当センターは、フレイル・サルコペニアの研究において、日本をリードしております。上の図のように、壮健から年齢を重ねますと、筋力など身体機能が低下し、フレイルやロコモティブ・シンドロームになり、要介護、更に介護度悪化の悪循環をたどりますが、フレイル・ロコモの段階では可逆的で、予防と治療によって改善いたします。最大の成果は、応用の四角にありますように、平成283月に、世界で初めて開設された、フレイル・ロコモ・サルコペニアを専門的に扱う外来を発展させたことです。そこでは、フレイル33%、サルコペニア30%、ロコモ96%と、円グラフのように診断がなされ、多科の医師と多職種によって介入や医療決定を行い、ロボットを含む運動指導、栄養指導、5種類以上の多剤処方での対策などを実施しています。そこには、CRチームも参加し、マイオスタチン受容体抗体の治験候補の選定も進めました。

 一番下の棒グラフを御覧ください。フレイルとロコモの改善プログラムを入院中の医療に提供することで、在宅支援、地域包括ケア、回復リハビリの各病棟で、日常生活機能の好ましい改善事例が得られました。さらに、危惧されます退院後の悪化リスクには、退院後訪問にて対処しました。以上、フレイル・ロコモの医療体制を、我が国で最も早く構築し、今後の基盤を固めました。

 また、運動器疾患の先進的治療研究も発展しました。その例を次にお示しいたします。18ページを御覧ください。脊柱管狭窄症の発生機序解明と新しい治療法の開発に関しまして、病院、研究所、メディカルゲノムセンターの循環型連携によって得られた成果です。この疾患は、真ん中のMRIのように、腰で神経が圧迫されて発症し、右の上のように黄色い矢印の靱帯が分厚くなるタイプと、骨の穴そのものが狭いときに分けた分類を作成し、自動診断ツールも開発し、保存治療成績は靱帯性が優れることを論文化いたしました。

 一方、靱帯が分厚くなる機序に関しまして、タンパク、代謝、転写因子、遺伝子の探索研究の解析が進み、変性マーカー、肥厚関連代謝物、肥厚の分子経路が同定され、論文化され、病型分類がエピゲノム解析結果とよく符合することも確認されました。また、ある企業の酵素処理することで、靱帯の縮小が見いだされ、新規治療開発を進めました。さらに、脊柱管狭窄の新規関連変異の同定がなされました。

 以上のような成果から、高齢で手術を好まない靱帯性狭窄に対する非手術的治療の発展が期待されます。

19ページを御覧ください。地域包括ケアシステムに対応した医療モデルは、退院後に不安定な移行期にトランジショナル・ケア・チームがアウトリーチを85件展開し、認知症などの疾患を合併する患者に退院直後の在宅療養を多職種訪問でサポートいたしました。地域の主治医も実質的に共同診療の形となり、自宅での看取り率は59%と、全国平均12.7%、在宅医療支援病棟33%よりも高い数値を実現できました。

 また、ICTを用いた在宅多職種情報共有ツールを作成し、地域医療・介護ネットワーク上に導入する要件を整備いたしました。また、人生の最終段階における自己決定の支援モデル医療は、前年のアドバンス・ケア・プランニング、最後に向けて大切なことを話し合って伝えておくプロセスを支援する担当者育成プログラムをe-ラーニングシステムに発展させ、受講生は、死に行く患者への態度の前向きさが改善しておりました。

 右のエンド・オブ・ライフケアです。最後までその人らしく生きることができるように支援するチーム活動は、依頼されたうち非がん疾患が52%と全国平均の3%より相当高く、しかも、非がん疾患依頼のうち80%以上が倫理判断支援でした。このように非がん疾患の倫理サポートを主要活動とした、長寿型エンド・オブ・ライフケアチームモデルが構築されました。以上です。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 続きまして、評価項目1-4、人材育成に関する事項について御説明いたします。資料は20ページです。本事項につきましては、目標として長寿医療の研究の推進に当たり、リーダーとして活躍できる人材の育成、モデル的な研修、講習の実施及び普及を掲げております。年度計画におきましては、新オレンジプランの内容、過去の実績なども踏まえ、妥当性を検討し、数値目標などを設定しております。

20ページに実績として主な項目、21ページのほうに、経年の推移などを掲げておりますが、ここでは20ページを中心に御説明いたします。最初に、認知症サポート医研修ですけれども、修了者数は、年度計画の目標の倍以上である1,651名になります。地域における専門医療機関、地域包括支援センターとの連携推進役となる医師養成に役立つとの評価も得ており、新オレンジプラン及び中長期目標で示されている数値目標を大きく上回り、1年前倒しで達成していることもあり、32年度末までに1万人に数値目標を引き上げることとしたところです。これは、国の認知症施策の推進加速化に大きく貢献する成果であると考えております。

 次に、認知症初期集中支援チーム員の研修ですが、支援チームにつきましては、その活動により、介護者の負担が軽減されていることを示す論文もありまして、修了者数は年度計画の目標の倍以上である2,443名となっています。これで、全国の全市町村の66.3%が受講済みとなり、平成29年度末までに全市町村にチームを設置するという新オレンジプランの目標の達成に向け、大きく前進したものと考えております。

 次に、コグニサイズ指導者・実践者研修ですが、当センターの開発した予防プログラムの指導者・実践者養成の研修を実施しています。実績はそこに記載のとおりです。

 次に、高齢者医療・在宅医療総合看護研修ですけれども、そこにありますように、講座修了者は345名となっており、これにつきましても、中長期計画、年度計画の数値目標を上回っております。提携大学院における研究者養成ですが、17の大学との間で協定を提携しており、3名が博士課程、2名が修士課程を修了しています。24名が協定に基づく客員教授などとして、専門知識の人材の養成に当たっております。

 最後に、レジデント及び専門修練医の養成ですが、養成プログラムを策定し募集を行い、専門修練医について、1名を採用したところです。引き続き募集を行う予定でございます。

 以上、御説明した内容から、所期の目標を量的及び質的に上回る顕著な成果が得られているとして、自己評価のほうは「S」とさせていただいております。

 次に、22ページにつきまして、評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項です。本事項につきましては、科学的見地からの専門的提言、医療機関間のネットワークの構築、治験の収集、整備、評価、情報の積極的配信、各地における地域包括ケアシステムの推進に協力といった目標を掲げております。この目標のラインに沿った、事業実施の主なものについて22ページに沿って御説明をいたします。

 まず、国への施策提言に関する事項です。厚労省のワーキンググループに参加をいたしまして、昨年度、当センターが提言したガイドライン試案に基づく3月のガイドライン暫定版、保健事業ガイドラインの暫定版ですが、取りまとめに参画したところです。

 高齢者運転の安全対策への提言につきましては、改正道交法の本年3月の施行もありまして、支援マニュアルの策定・公表、291月に警察庁が設置した有識者会議に参画し、高齢者の運転寿命延伸について提言などを行ったところです。このほか、37日、名古屋市でシンポジウム、「認知症サポーターと高齢者運転」を開催しています。

 また、全国在宅医療会議「重点分野」への提言。厚労省の全国在宅医療会議に参画いたしまして、同提言を踏まえて、同会議が取りまとめた重点分野に反映されているところでございます。

 また、「認知症サミットin Mie」、How to Build up Dementia Friendly Communityへの参画を行っております。この国際シンポジウムにおきましては、認知症の人と共存できる町づくりの在り方をテーマとし、成果を報告書にまとめております。このほか、認知症医療介護推進会議等の開催などを行っています。

 次に、医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項について御説明申し上げます。ネットワーク構築・運用につきましては、関係6学会、神経学会、日本認知症学会等の6学会ですが、「認知症疾患診療ガイドライン」の作成に協力しております。本ガイドラインにつきましては、本年中の完成予定と聞いています。また、東京都健康長寿医療センターとの間の連携に基づきまして、28年度は15の研究課題で連携・協力いたしまして、ネットワーク形成につなげたところです。

 国際的な連携強化という観点からは、包括協定に基づく台湾のICAHとの連携として、第2回シンポジウムを開催しています。日ロ医療協力について、ロシアの保健省・高齢者科学クリニックセンターを視察し、交流会議を実施しています。その他、人材交流で同志社大学との連携協定を締結、中部先端医療開発円環コンソーシアムに参加しております。

 情報の収集・発信という観点からは、第12回当センターの国際シンポジウムを34日に開催しております。テーマといたしましては、「フレイルと認知症メカニズムから予防・治療へ」、28年度は178名の参加を頂いたところでございます。このほか、12月には大府市等の後援の下、市民公開講座を開催いたしまして、200名の方に来場いただいたところです。

 このほか、22ページの最後に書いてありますが、地方自治体との協力として、愛知県等との協力を実施しております。以上、御説明した内容から、所期の目標を上回る成果が得られたといたしまして、自己評価を「A」としているところでございます。説明は以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございました。それでは御質問、御意見をお願いしたいと思います。

 

○大西委員

 どうもありがとうございます。人材育成のところでは、大変な成果を上げておられると思いますが、例えばここで研修を受けられたサポート医の先生方、若しくは支援チーム員の研修を受けられた方々、更に自治体の中で、リーダーシップを取るような方々も、全国の自治体の6割を超えた方々が研修を受けられる。こういった方々の間のネットワークといいますか、こういった方々を結んでいろいろな情報共有をしていく又は情報交換をしていく、更には新しい政策提言につなげていくといったような構想なども含めて進めておられるというように理解してよろしいですか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 サポート医研修後の、いわゆるホームページとかグループ化して後期の継続研修と、情報交換をやっているところですが、様々な機会で、今おっしゃったサポート医と初期集中支援チームと、例えばサポーターや行政が、その地域でどのような有機的なものを作れるかということに対して、大分市とか、様々なモデルの方をお呼びして、学会や研究会などで、こうやっていけば、育成したものが地域の中で有機的に認知症の方や家族の方に役に立つよということを、いろいろな学会や研究会で紹介しています。これをもう少し有機的に各県でどんどん広めていくような活動につなげていく必要があると考えておりますし、本年度の目標も、点から面へということを考えているところでございます。

○大西委員

 どうもありがとうございます。大変大きな基盤ではないかなと思います。

 

○福井委員

 今の御質問と一部オーバーラップするのですけれども、人材育成がややもすると何人研修受けてもらった、で終わってしまうものですから、ネットワークだけではなくて、どれくらい実際に役に立ったかという、正に鳥羽先生がおっしゃった視点から、患者さんにとってどれくらいより良いケアが行われているかといった、何か教育のアウトカムについてのフォローアップ評価ができるといいと思います。

○国立長寿医療研究センター理事長

 ありがとうございます。初期集中支援チームに関しては、本人ではなくて御家族の介護負担、それから、御本人の周辺症状、BPSDの軽減ということは論文化してあります。ただ、サポート医に関しては、一般の非研修の方と比べて、連携力とかサーピス力がいいという比較を第3者にやって、評価はされておりますが、本人と御家族がサポート医でどのぐらい役に立ったというのは、まだ検証しておりません。今後の課題とさせていただきたいと思います。

○本田委員

 同じ20ページなのですが、先ほど先生方がおっしゃっていたように、サポート医についても、サポート医と掲げられるだけでというような批判の声なども実際現場で聞こえてくるようなこともありますので、是非有機的な例ができているのかというのが今後検証いただきたいと思うのと、1つ質問なのですが、初期集中支援チームの研修なのですが、これは検証を修了した市町村ということで、検証を修了したところは全部初期集中支援チームを導入しているという理解でよろしいのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 広域の所もありますので、全部というか、広域で受講して、その中の全てがやっているかというところまで、まだ調べていないのですが、ほぼ、修了した所は、少なくとも初期集中支援チームを設立できるというように考えて結構だと思います。

○花井委員

 これも毎年、今の質問とも関係するのですが、国が旗振る地域包括ケアシステムという、いろいろうまくいくかどうかよく分からない話かもしれないのですが、一生懸命進めていて、今、例えばアウトリーチについて、退院後訪問85件とか行なって、自宅看取り率は、これは実数ですよね。大府市周辺だけ高いことになっても、これは効果がないわけで、サポート医というのは別に認知症という疾病専門医ではなくて、そこで重要な役割を果たしていくことになると、先ほどのアウトカムですが、例えば検証を受けて、サポート医になった先生が在籍している在支病の看取り率はどうかとか、そういう比較があると、何かすごくいいかと。

 今、不安に思うのは、かなり余力がある、ナショセンだからいろいろアウトリーチにも人を割けるから、何とか看取りをサポートできているとも言えるわけです。ありがちなのは、ある種人材豊富で、ある程度リソースに余裕がある所だけが可能な標準化を全国に広めようとしても、全国のプアな所では結局できないということで、モデルでは困るわけです。そこのところのナショセンで開発されたモデルを、よりリソースの少ない所でも同様の成果が上がるような形で、かつ、その成果が先ほど言った看取り率が上がっているとか、そういうことで分かると、これはかなり、今、ある種日本の医療全体において極めて重要なミッションだし、その結果だと思うのですが、その辺の評価の方法は考えておられないのでしょうか。それと、サポート医という先生方の活躍ぶりは、何か定量的に分かる、今みたいな方法論とかはいかがですか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 アウトリーチを行なったことですね。自宅の看取り率が上がったのが、私どもも期待していたより、うんと高い数字が出たので、びっくりしたわけですが、最初に退院直後のアウトリーチが始まるというわけではなくて、退院の前に家族やケアマネージャーを含めたいろいろな健康観とか、そういうことをエンド・オブ・ライフケアチームで行って、その方々で退院した方の中に、そういう自宅の看取りを希望されている方がありますと、引き継ぎながら、4週間の間に12回アウトリーチするわけですが、病院からは。その時点でその地域の担当医の先生や訪問ケア看護ステーションであったり、ケアマネージャーが二重の形で共同診療の支援を行うということですね、非常に高い値になったと思うのです。

 おっしゃいますように、それを他の地域にどこまで当てはめるかは、まだ課題があるかもしれません。在宅看取りをいきなり家族が受けるのはなかなか難しいわけですが、こういう形にしていけば、そういうところは改善できる可能性はある。というわけで、では、後どこがもう実際的にはこういう時間にしても、労力にしても、人材の数にしても、少なくしていけるかというところは、今後の課題だと思いますが、取りあえず今回、退院後の2週間、4週間の訪問で12回ですが、そういうことで担当医の方を含めて十分に意思疎通ができて、家族を励ますことができたという結果、こうなったと思います。

○花井委員

 是非そこをやっていただきたい理由は、結局、今、保険局がいろいろ誘導していることが、本当に妥当な誘導かは、実は誰も分かっていないという現状があって、現実、現場では、例えば今まで急性期医療機関なんて持っていたところに、訪問看護ステーションをもう1つ作ってほしいという要望が上がってきたりとか、事実上、国が描くところの機能別病床の分け方が、実際、地域包括ケアシステムがそれで成功するかどうかが、結局分からないです。だから、それを正しい政策誘導にするためにも、是非、ここのセンターにモデルを作っていただきたいと思いました。ですから、それを説得するいろいろ数値的なデータを作っていただけると、こちらもより評価しやすいし、政策にも反映しやすいかと思います。

○祖父江委員

 私も全く同じで、去年も同じようなことを聞かせていただいたのですが、皆さん、結局は同じことをおっしゃっているのではないかと思うのです。こういう人的、人材育成を全国的に展開することによって、何が変わったかを見たいと皆さんは思っていると思うのです。ですから、これを研究の中に取り込んで、研究プロジェクトとして立ち上げていただく必要があるだろうということで、先ほど新オレンジレジストリがありましたね。その中に、例えばケアレジストリとか、そういうのは非常に世界的にも高く評価されておられるのではないかと思うのです。

 そうしますと、例えば、そういうもののリンクした考え方の中で今のような各、全国津々浦々、全部見るのは難しいと思うのですが、確か去年か一昨年、日本地図があって、そこでどういう指標がどう変わったかというのが少し出ていました。私はあれを非常に期待していたのですが、今年はそれがなくなってしまっているのですが、そういう目で見える変化があったのか、なかったのかを、随意、今後、研究していただけると有り難いと思います。皆さんも、恐らく同じことをおっしゃっているのだと思いますが。

○福井委員

 エンド・オブ・ライフケアについて伺いたいのですが、これは高齢者のケアでは、今後ますます重要度を増してくると思いますが、2点ほど。1つは、非がん疾患の依頼件数割合が非常に高いということ。具体的にどういうケースでしょうか。それから、このことについて、全国への発信を今まで以上に是非お願いしたいと思っています。いろいろな病院で悩みが更に深くなってきていて、生命維持療法を高齢者でどうするのかについて、今まで以上に頻回に情報を発信していただければ有り難いです。

 

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 非がんの疾患の内容は、大体が高齢者でがん以外の疾患で相当な最後のステージに近づいていると。そういう方々が入院している段階で、例えば退院後、先ほどの最後の場所をどこで迎えるかとか、そういういろいろな患者さん、家族の悩みがあるというのがこちらに届きますと、そこへチームが行って、家族や医療者を含めて対応するという形で、緩和ケアとは全く違う支援を行なっているのが実態です。こういう形のものは、今は医療の中で行うためには、いまだ保険医療の中には入っておりませんが、高齢者では最後のステージを迎える段階になってきますと、それが主体になってくるというように感じておりまして、おっしゃいましたように全国発信でこれを広げていく形に、また努力をしっかり重ねたいと思います。

○永井部会長

 ありがとうございます。よろしいでしょうか。最後の、業務運営の効率化、財務内容の改善、その他業務運営に関すること、2-1から4-1まで御説明をお願いします。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 評価項目2-1から御説明します。23ページを御覧ください。業務運営の効率化に関する事項です。最初に、効率的な業務運営に関する事項について御説明します。目標としては、6年間を累計した損益計算において経常収支率が100%以上となるよう、経営改善に取り組むことなどを掲げております。実績としては、次に述べるような取組を行い、経常収支率を98.2%と、100%近い水準としているところです。

 具体的な取組としては、そこに掲げているように、まず給与制度の適正化ということで、人事院勧告に準ずることなく現状の給与制度の維持、超過勤務手当の縮減、非常勤職員の勤務時間数等についての見直しを行っております。また、材料費等の削減ということで、そこに掲げている共同購入の実施、適正な在庫管理、調達等合理化計画の取組の推進などを行っております。

 後発医薬品の促進については、目標を中長期目標最終年度までに数量シェアで60%以上目指すという目標を掲げておりますが、平成28年度実績は65.9%と、中長期目標を超える水準となっております。そこで、平成276月の閣議決定にも鑑みまして、更に平成29年度計画では70%以上とする数値目標を設定しているところです。

 収入の確保という点については、レセプト点検体制の強化、入院・外来患者数の動向の共有化による患者数増への職員の意識改革、また、医業未収金の低減については、平成27年度の0.018%に比して0.005%と縮減をしております。

 一般管理費(人件費、公租公課を除く)ですが、目標として平成26年度に比して最終年度、中長期目標の最終年度において15%以上の削減を図るという目標を立てておりますが、平成28年度実績は8,878万円と削減目標に対して10.4%増という結果となっております。

 財務状況全般については24ページ、運営状況については25ページに掲げております。25ページで簡単に運営状況について御説明をしますので、25ページを御覧ください。医業収支ですが、収益としては対前年度8,400万円増に対して、費用は1,300万円増、収支差は、44,300万円のプラスとなっておりますが、医療外収支については、収益は対前年度2,700万円増に対して、費用も15,300万円増となって、収支差61,400万円のマイナス。総収支差を見ますと、トータルとして17,000万円のマイナスという状況でした。

23ページにお戻りください。電子化の推進ですが、情報システムの整備という観点から、不正通信監視サービスを平成28年度に導入したところです。また、個人情報保護研修、あるいは情報セキュリティ研修なども実施をしてきているところです。以上から、所期の目標を達成しているとして、評価項目2-1については、自己評価を「B」としているところです。

 評価項目3-1、同じページの下段ですが、財務内容の改善に関する事項について御説明します。外部資金の獲得状況ですが、対平成27年度、2.2億円増の125,464万円となっております。寄附金の受入れについては、そこに書いているように1,127万円の受入額となっております。右側の資産及び負債の管理に関する状況ですが、病院施設の新築建替整備について、財投融資について資金調達を行い、期末残高275,622万円という状況になっております。以上から、所期の目標を達成しているとして、自己評価を「B」としているところです。

 最後に26ページ、評価項目4-1です。最初に、法令遵守等内部統制の適正な構築についてですが、内部監査の実施状況等については、左の上に書いてあるとおりです。また、昨年度、外来管理治療棟の建設整備に係る契約のうち、整備を急ぐ必要のないシステムについて一部契約の解除を行いました。このようなシステムを仕様に含めたことは、精査が十分でなかったと考えることから、文書決裁規程の精緻化など内部統制を徹底したところです。

 研究不正の防止については、不正防止事案が発生しましたが、調査、公表、防止対策を行い、厳正に対処しました。具体的に防止対策としては、ソフトウエアや外部業者の活用により、チェックの義務付け、あるいは研修を実施したところです。

 調達等合理化の取組についても、一括調達業務などを開始し、1,055万円の年間削減効果を挙げております。その他、人事についても、関係機関、大学等の人材交流、また、クロス・アポイントメント制度についても、そこに書いているような取組状況です。

 最後に、職場環境の整備については、規程を改正して育児時間に準じた介護時間の新設、院内保育の設置、週1回の夜間保育などを行うようにしています。以上から、所期の目標を達成しているとして、自己評価を「B」としているところです。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。それでは、御質問をお願いします。

○斎藤委員

 後発医薬品のことでお伺いしたいのですが、目標を超えていることは確かですが、ほかのナショセンから比べるとかなり低い数字なのです。これは病気というか、特徴によってなのでしょうか。後発医薬品を使いづらい医療を施していらっしゃるからなのでしょうか、それとも何か理由があるのでしょうか。それが1つお伺いしたい点です。

 もう1つ、電子化の推進ということでお書きになっているのは、どちらかと言うとサイバーセキュリティに対する防御のことが多くて、新たに電子化の試みとして、例えば電子カルテをもっと多く取り入れるとか、何かそういう前向きな積極的なものがもしあるのでしたら、それもコメントを頂ければと思います。以上です。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 後発医薬品の数値がほかのナショセンより低いという御指摘を頂きまして、特に私どもの長寿の医療事情が大きく関係している要因があるかというと、必ずしもそうではないと思いますので、目標値を更に上げていく、スピードアップしていくことは可能ですから、今日の御指摘を基にもう少し頑張ろうと思います。

○永井部会長

 今、大学病院でも後発品が80%ぐらい入ってきて、かつて想定された以上のスピードで動いていますので、御検討をお願いします。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 電子化のことに関しては、研究とも関係するのですが、先ほどバイオバンクで収集した資料の利活用を促進するという意味で、そのバイオバンクのデータベース等、例えば電子カルテを直結させるとか、あるいはセンター内の職員の利活用の前提となる、様々どういう症例が何検体ぐらい必要というのも、情報を入れますと、自動的に何検体ありますというのも出るという整備を、この1年間、かなり進めたところです。

○国立長寿医療研究センター理事長

 少し追加させていただきますと、電子カルテの更新に係る費用は、小さな病院なものですから病院の売上の年間の23割になり、今の財務状況では残念ながら当分できない。非常に苦しいです。電子カルテを更新すると、倒産してしまう状態です。

○内山部会長代理

業務運営を改善するために、給与制度にも踏み込まれたという件について、超過勤務手当の縮減ということで、最初、時間で調整されたかと思いました。しかし、手当そのものに手を付けられて、結果的にそれを含めて人件費が2,000数百万円減少したと伺いました。職員のモチベーションを落とさないで、人件費を落とすことは非常に難しいと思うのですが、どのような工夫をされたのでしょうか。 

○国立長寿医療研究センター理事長

 一方では、病院のほうですが、例えば手術、緊急入院に対する手当を増額したりしておりますが、医療と研究、あるいは時間が自分の裁量時間で勉強の時間なのか勤務時間なのかをはっきり分けていただいて、勤務に必要なものは救急ならしっかり払うけれども、自分の研さんのものはしっかり分けて、仕事の効率を分けてくださいということで、私は、モチベーションはそれほど大きくないと考えております。

○内山部会長代理

分かりました。自己研修と具体的な現場での労働をきちんと分けたということですね。とても大切で、よい取組だと思います。

○永井部会長

 机上に非公開資料が配布されていると思いますが、各ナショナルセンターでのいろいろな指標を比較しています。特に私は24ページの外来待ち時間が気になるのですが、ナショセンによっては90%以上の人が30分以内の外来待ち時間で診察を受けているのですが、幾つかのナショセンでは1時間以上の待ち時間が40%とか、50%とかですね。これは恐らく外来の予約のシステムが悪いのだと思うのですが、そこの調査はされましたか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 長寿も2時間待ちがまだかなりいるという御指摘を受けておりますが、高齢者であると、小児も同じだと思うのですが、親なり、息子さんとか家族が連れてこなければいけない、外来も。そういう方がかなり多いとなりますと、そういう連れていく方の都合で朝早くまず受付してしまうと。その後待っていただく時間がその分長くなったりするという部分は、長寿に関しては。

○永井部会長

 でも予約制をとっているわけですね。受付したときからではなくて、予定した時間からどのぐらい待たされているのかをきっちり調べるべきなのです。早く来るのは待たされたわけではありません。しかし、1時の予約が3時になっては困るわけです。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 今回のデータは、そこをしっかり調べられるようにデータの取り方を改善したいと思います。

○永井部会長

 そこをよく調べて、予定した時間からどのぐらい遅れているかを調べられたらよいと思います。

 もう1つ、ICUの看護師の勤務体制について調べていただいたベージがあるのですが、18ページでしょうか。長寿はHCUを設けておられて、4床あります。本当は41なのでしょうが、2人夜勤ですから、2人の夜勤でニッパチをしないといけないわけですが、そうすると、1日平均患者が2人なのに、日勤帯8人の看護師が勤務する状況があります。これは恐らく応援に行っているのだと思いますが、そこの実態はどうなのですか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 残念ながらHCUの病床稼働率は50%前後、非常に低い状態であり、これが満杯近くになるような、しかも重度の高い方がたくさん入る状況になりますと、そういう部分が大きくなりますが。

○永井部会長

 でも仮に4人満床になっても、日勤帯8人は多いと思うのです。1ベッドに2人の看護師さん。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 課題としては、やはりこれは見直しをしなくてはいけないと認識をしておりますが。

○永井部会長

 配置はこれだけ必要なのです。28体制でニッパチできちんと4週に8日以内の夜勤回数にするには、2人の夜勤で15人の配置は最低限必要です。そうすると、日勤帯にどこで勤務するかがマネジメントで重要になります。別にHCUで勤務する必要はないのです。ほかの病棟へ行って忙しい所を手伝ってくればよいのです。あるいは、場合によっては土・日に来ていただいて、土・日の入退院を増やすとか、そういうことまで考えないといけないわけですね。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 御指摘を、また検討させていただきます。

○永井部会長

 分かりました。

○藤川委員

 一般管理費に関して目標があると思うのですが、縮減をしなければいけない所が年々増えてしまっている部分があるように思われます。これはもともとコンパクトであるので、金額を減らすのが難しいところに来ているのかもしれないのですが、見通しとしてできるのかどうかというところです。

2点目は、運営費交付金の割合がNCの中で比較的高いセンターだということは、前から認識しているのですが、だんだん減ってきてしまっているということで、これはどこも厳しいことは承知しているのですが、先々まである程度シミュレーションとかができているのかどうかを教えてください。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 一般管理費の削減については、平成28年度は、増加においては、委託費の増が主な要因として挙げられまして、その他消耗品は削減に取り組んでおりますので、引き続き経営の合理化に進めつつ、一般管理費の削減等を図っていきたいと思っています。

○藤川委員

 委託費は、今期、特殊要因で増えてしまったということですか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 はい、そういうことです。

○福井委員

 研究不正についてのコンプライアンス研修とかは具体的にどういうことをされているのでしょうか。それから、少し遡って恐縮ですが、病院の医療安全管理もどういう状況か教えていただければと思います。

 

○国立長寿医療研究センター研究所長

 まずは研究不正に関するコンプライアンスの研修ですが、少なくとも1年に2回は外部の専門の講師の方をお呼びして、全員出席ということで。そのときたまたま出張等のある方はビデオで見ていただく形で徹底をしております。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 医療安全の研修は年4回やり、そこも必ず私も含めて年1回は出席することを、出欠もチェックしてやっております。

○祖父江委員

 研究費は今年というか去年、2億ぐらい増えていますよね。これは先ほど言われた、例えばロボットなどを中心にした企業との共同研究による収益が結構増えているのではないですかね。その辺の内訳を教えていただけたらということですが。

○国立長寿医療研究センター理事長

 私が知るところでは共同研究も増えていますが、主にAMEDを中心とした競争的研究資金の獲得だと思います。

○祖父江委員

 そうすると、企業との共同研究はどのぐらいの額になりますか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 今、手元にある資料ですと、企業からの1年間、8,200万円です。

 

○祖父江委員

 これはどのぐらいの規模で。

○祖父江委員

 もう1点だけ。今と少し関連するのですが、先ほども少し電子カルテのところで話題になったのですが、そのときにバイオバンクの話を少しされたと思うのですが、バイオバンクとか。これは今の収支の問題とはずれるのですが、ゲノム解析とか、前から6ナショナルセンターで共通化できるミッションがありました。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 ナショナルセンター・バイオバンクネットワークみたいな。

○祖父江委員

 はい、そういうものですね。だけど、現実にはなかなか進展していない面もあるのではないかと思っているのですが、その辺は何か今後、費用節約も含めてですが考えられているのかどうかですが。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN)というもので、今の委員のお言葉でしたけれども、私は、時間が掛かっていますが、NCBNの連携は非常にうまく展開していると感じております。例えば、3年前に比べると、非常に有機的にいろいろな倫理の問題とか、先生がおっしゃった、いかにコストを抑えていくかと、そういったことに対しての協力体制、今、それも含めて非常に議論が進んでいるところだと思います。

○祖父江委員

 それも是非書き込んでいただけるといいですね。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 ありがとうございます。

○国立長寿医療研究センター理事長

 先ほどの将来的な運営交付金の、当センターの外部競争資金は、がんに比べてまだまだ少ないので、毎年、お金をもっと倍ぐらい取れとは言っております。一方、これの運営交付金比率を一番下げるには、長寿医療研究センターが1,000ベッドとか、1,500ベッドの病院を持ってやるのが一番近道であり、一番小さな病院なものですから、当然、運営交付金の比率は高くなるわけです。ですから、この比率というよりは、ナショナルセンターで、例えば長寿でどのぐらいの研究規模を国民が要求して、外部のセンターの方がどのぐらいのことを期待されているかと、まず基礎的な研究に係る経費を横に置いていただいて、その上で病院がどのぐらい必要だから、小さな病院でよければ、交付金比率は50%にもなりますし、もっと1,000ベッドにしてモデル医療をやれということになれば、将来的にはこれは1割にもなってきますが、そういう話だと思うのです。

 ですから、比率、苦しいことは苦しいのですが、病院は独立採算制なものですから、これは運営交付金ではやっておりませんので、別途増やせば大丈夫というわけにもいきません。現状のベッドの一番限界だと思っており、増やせることはできませんので、徐々に労働効率を高めて運営交付金が更に比率を下げるようには努力したいと思いますが、これが1割になることはまずなくて、25%ぐらいをまずは目標にやっていくのかと考えています。

○永井部会長

25ページの右下にある総収支差の推移を見ますと、平成23242526年度は黒字になっています。この後に赤になってきているのですが、人件費の増加、これは机上配布資料の15ページを見ますと、黒になった頃は人件費率が4546%で、余裕ができたのか、それでその後人件費を増やしたのですか。それで人件費率が46%から54%まで増えているのですね。それで今赤になってきました。この関係で理解してよいのですか。もし、そうだとしたら、今後どうするかですね。より戦略的に働いてもらうのか、あるいは人件費率を落とすのか、どちらかしかないと思うのですが、そこはどう考えていらっしゃるのですか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 一時は病棟閉鎖をしなければいけないほど看護師が足りなくて、人件費が少ない時期もありました。そこで黒字になったということで、医師、看護師、研究者も増やして、攻めの姿勢に転じて、平成25年度まではよくなったのですが、やはり一定の人を多く雇ったということで、それから71看護が101にならざるを得なかったことを含めて、経営基盤が悪くなったことも大きな原因だと。現在、最適な人数といったものを、運営交付金が減らされていく中での組織の定員の人数も含めて、昔の人数ではできないということで、もう少し一定の縮小をしなければいけないところも実は考えています。ですから、今はセンターの身の丈に合った定員の数といったことを考えているところです。

○永井部会長

 あと、先ほどのHCUのように、せっかく4床あるのに、また看護師もいるのに、稼働が50%ということになれば、そこはいかにして埋めるかということが問題になります。また、それに必要な人員はしっかり確保することではないかと思いますが。

○祖父江委員

 最後に1点だけ。今、病院、病棟のことをおっしゃったのですが、これは新築、これは外来ですか。外来ですね。先ほど来のクリニカル・トライアルの話も出ていたのですが、これはどのぐらい機能を盛り込んであるのか、治験とか創薬関連の部分ですね。それを最後に少しお聞かせ願いたいと思いますが。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 これは治験などが、ロコモフレイルセンターとか感覚器センターという非常に新しい医療に見合う外来棟では、立ち上げたときに本格スタートするわけですから、そこに関連する治験は、新しく増えてくると思います。ただ、外来棟の中に治験や臨床研究を専門で扱う建物とか部屋は、既に設けてあり、既存のものを来年度以降も使います。

○永井部会長

 よろしいですか。ありがとうございます。それでは、続いて法人の監事から業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について、御説明いただき、その他、改善方針等についてコメントをお願いします。

○国立長寿医療研究センター監事(橋本)

 私ども監事は、監査報告書のとおり、限定付き適正意見を表明しております。監査報告書で除外した点については、先ほど戦略局長のほうから、内部統制に関して報告がありましたとおりです。ページでいきますと、26ページの左側の中段の外来管理棟に関する点です。監事としては、文書決裁規程の精緻化のみにとどまらず、充実した内部統制制度の構築をするべく見直し作業をしっかりと注視していきたいと考えております。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。続いて、理事長からコメントをお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 ありがとうございました。実際はここ数年、経営が非常に苦しく、昨年以降、昨年末までほかの研究開発法人や大学などに比べて、3割くらいの運営交付金が減らされた中で営業努力をしてきたものの、やはり赤字転落をせざるを得なかったわけですが、もう限界だということで、昨年度、理事長全員でお願いしたところです。申しますように、国から与えられた高齢者の医療や福祉を返していくために、最低限の運営交付金はまだ当センターにも必要だということで、経営状況も運営交付金の内容が当センターにちゃんと役に立っているかを是非調べていただきまして、ちゃんと役立っているということであれば、毎年減らしていくことは、本当に死んでしまいますので、是非その辺を考慮していただきたいと思います。

 ただ、部会長から指摘がありました、より一層経営の効率化や収入の増加に伴う案に関しては、いろいろ含めて更に努力をする必要があると存じております。今後も頂いた御意見を基に、より一層経営の効率化及び研究と臨床の励みになるように頑張っていきたいと思います。本日は大変ありがとうございました。

○永井部会長

 どうもありがとうございました。委員の皆様から何か御発言はありませんか。よろしいですか。そういたしますと、以上で、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの業務実績評価(平成28年度)について終了します。どうもありがとうございました。そうしたら、5分ほど休憩して、再開します。

 

(休憩)

 

○永井部会長

 それでは、再開させていただきます。平成28年度の国立研究開発法人国立成育医療研究センター業務実績評価について、御議論を頂きます。最初に評価項目1-11-2、研究開発の成果の最大化に関する事項の説明について、センターから御説明をお願いします。あるいは理事長さん、最初に一言ございますでしょうか。

 

○国立成育医療研究センター理事長

 それでは、一言だけ御挨拶させていただきます。本日は評価部会で当センターの説明をする機会を頂きまして、誠にありがとうございます。もう既に何回か評価を頂いている先生方がいらっしゃいますけれども、当センターは胎児、新生児、乳児、小児、思春期を経て、成人に至る過程で生じる心と体の健康問題について、診療あるいは研究を推進することを使命としている機関です。

 我が国は超少子高齢化の中で、健やかな子供を育成することを目指す役割が、以前よりも非常に高くなっているのではないかと思います。特に高度先進医療の推進が強く求められておりますけれども、高度先進医療をすればするほど、障害を持って長期生存するお子さんが増えているという問題もあります。病気あるいは障害の有無に関わらず、我が国の子供を「バイオ・サイコ・ソーシャル」に捉えて支援していくということが、これから私どもに与えられた大きなミッションではないかと考えている次第です。

 それでは、これから当センターの活動について、4つに分けて御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

○永井部会長

 では、お願いいたします。

○国立成育医療研究センター研究所長

 では、この実績評価説明資料に沿って御説明させていただきます。まず、評価項目1-1につきましては、研究所長の私、松原から御説明させていただきます。5ページを御覧ください。評価項目1-1に「独創的な研究及び基盤的・重点的研究の推進」があります。そのページの左側「有機的な連携による独創的な研究の展開」として、最初に原因や診断が不明な小児患者について、最先端の遺伝子解析技術を駆使して診断を付けるという、全国規模の研究プロジェクト(IRUD-P:小児未診断疾患イニシアチブ)というものがありますけれども、この拠点として、全国の施設から検体を寄せられ、それについて、次世代シークエンサーを用いて臨床検体の解析を実施いたしました。当該年度はもう1,500例以上解析し、30%以上の診断をしております。

 次に、右下を御覧ください。ES細胞から1cm程度のミニ小腸を作成することに成功しました。これは世界初の業績ということで、マスコミ等でも大きく取り上げられましたが、企業からもかなり引き合いが多く来ております。これが1つ、業績としてあります。

 次に6ページの左側を御覧ください。「食物アレルギーの発症予防方法を開発」です。最近は、食物アレルギーが我が国でも非常に高い頻度で出てくるということが問題になっております。その中でも特にアレルギーの多い鶏卵アレルギーの発症を、効率的に約80%抑制する方法を、世界で初めて開発したということで、これは英国の雑誌「Lancet」に掲載されました。これもマスコミ等にもかなり報道されておりますが、非常に大きな成果ではないかと、私たちは考えております。

 それから、その下、小児急性リンパ性白血病に見られる新たなDNAや構造異常を、幾つか解明しました。これは分子標的治療にも結び付くような研究成果ではないかと考えております。同じページの右側の下を御覧ください。そこに「エコチル調査事業」と書いておりますが、これは環境省中心に行われているコホート事業です。この中でメディカルサポートセンターとして中心的役割を担って、10万人の子供に対する調査を行っております。その下にありますが、妊産婦とそのパートナーのメンタルヘルスに関しての系統的レビューを行うということもやっております。

 次の7ページを御覧ください。左側の上、原著論文発表数は、平成28年度実績として、385本あります。このほとんどは基本的には英文で発表するということで、順調に論文数としては伸びてきております。そのすぐ下に、バイオバンク事業の推進があります。成育では、ナショセンのバイオバンクの一環として、小児周産期の貴重な検体を、バイオバンクとして保管しておく事業をずっと続けております。こういった材料を用いまして、幾つかの新しい発見をするという研究の発展もありました。

 同じページの一番右下、「成育コホートの研究の実施」と赤字で書いております。最近、成人のメタボリック症候群や認知症、うつ病などの病因が、胎生期と小児期の環境にあるということが明らかとなりつつありますので、こういった成育コホート研究を長年にわたって追い続けることによって、大きな研究成果が得られるのではないかと考えております。

8ページの左下を御覧ください。「患者データベースの構築及び成育疾患の実態把握」です。私たち成育では、疾患登録システムの構築をすると同時に、もう1つ、非常に大きな厚生労働省の研究事業である、小児慢性特定疾患治療研究事業、このデータベース化、データクリーニング、この拠点として、私たちはいろいろと研究を行っております。

 同じ8ページの右側ですが、赤字で幾つか書いております。高度先駆的な診断治療の開発ということで、まず先天性免疫不全症に対する遺伝子治療の体制整備ということを、順調に進めてきております。それから、先ほど申し上げた鶏卵アレルギーの発症予防、そしてその下3つ、先天性横隔膜ヘルニア、無心体双胎、あるいは胎児心臓病、こういった胎児の治療に関しても、私たちは積極的に臨床試験、あるいは先進医療を行ってきております。我が国でこれに匹敵する施設はありません。これも成育の大きな特徴かと考えております。

9ページを御覧ください。左側の真ん中に「小児がん中央診断業務体制の整備」があります。私たち成育医療センターでは、小児がんの診断の拠点として活動しております。小児白血病に関しては、日本全体の症例の100%を補足しております。固形腫瘍に関しては、50%を補足しております。それとともに、そういった中央診断、各施設ではなかなか行えないような病理診断、あるいは特殊な検査を含めて、そういったものを支援する体制を続けております。こういった中で小児白血病に関する遺伝子の様々な新しい仕事も出てきております。

 次に10ページを御覧ください。左下に「医療の均てん化手法の開発の推進」のところに「小児診療部門のガイドライン作成の推進等」と書いております。私たち成育は中心になり、国内の学会と協力しながら、小児白血病、リンパ腫の診療ガイドライン、小児がん診療ガイドライン、その他たくさんのガイドラインが書いておりますが、こういったものを作成して、小児医療の均てん化に尽力しております。それと同時に、WHOと協力しての診療ガイドラインも3種類作成しており、国際的に、国内支部としても活躍しておりますが、こういったものを成果の研究として行っております。

 次の11ページを御覧ください。左上に「成育医療に係る各種相談事業などの展開推進」とあります。1つは以前からずっと続いております「妊娠と薬情報センター」、これも全国の拠点として引き続き活動しております。高い評価を受けていると、私たちは自負しております。それから、日本で初めてのプレコンセプションケアです。出産前から妊娠を希望する方へ向けてのセンターを立ち上げる準備を行いました。

 その下、「重い病気を持つ子どもへの生活・教育支援」としてのトランジション外来を、平成27年度から開始しております。これも順調に進んでおります。そして、これに関連するものとして、その下に書いておりますが、医療型短期滞在施設「もみじの家」というものを設置して、これをオープンしました。非常に多くの利用者があり、その右側に写真がありますが、今は内外からいろいろと注目されているところです。1-1につきまして、以上、御説明申し上げました。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究開発センター長

 それでは引き続き、評価項目1-2「実用化を目指した研究・開発の推進及び基礎整備」について、臨床研究開発センターの斉藤から、御説明をさせていただきます。12ページ、左側です。「基礎研究成果の臨床での実用化及び研究所と病院との連携強化並びに共同研究の推進」として、ただいま御説明したように、ゲノム医療の実現のための体制として、メディカルゲノムセンターを開設し、全国から資料を集め、また当病院各科からも、検体の提供を受けて、遺伝子診断を開始したところです。

 また、左下3番ですが、「治験・臨床研究における研究所と病院の連携推進」として、理事長以下、病院長、研究所長をメンバーとした会議を毎月開催し、実施しております。また、臨床検査室においては、ISOの品質基準適合の認定を受け、データの質の確保を行っているところです。

 その右側、「研究・開発の企画及び評価のための体制の構築」として、戦略的に研究開発を推進するために、成育医療研究開発費については、運営委員会による適正な評価を行い、研究課題の採択、進捗管理を実施しております。また、倫理委員会に申請された臨床研究に対しては、シーズとしての候補ヒアリングを毎回行い、臨床研究開発センターが中心となり、サポートを行う体制を構築する等、戦略的な開発を推進しております。続いて下側ですが、企業との連携ということで、知財・産学連携室を中心にして、企業等の産業界、あるいは大学などの研究機関と当センターの病院や研究所との連携を強化しております。

 続いて13ページの左側です。こういったことを行った結果の共同研究あるいは受託研究数については、平成28年度が132件となり、平成26年度に比べて74件増加しました。さらに下側ですが、「知的財産の管理強化及び活用推進」については、右側の上にあるように、平成28年度は職務発明委員会の審査件数が11件となり、こちらのほうも平成26年度に比べ、38%の増加となっております。さらに倫理委員会については、倫理審査委員会の運営の適正化として、「倫理審査委員会認定構築事業」による倫理委員会の外部評価を受け、平成2812月に認定を得ているところです。

 次の14ページの左側、研究倫理に関する意識・知識の向上として、平成28年度には、研究倫理に関する講習会を毎月1回以上、13回実施し、倫理委員会への申請にはこの講習の受講を必須ということにしております。治験については、治験責任、あるいは分担医師を対象としたGCP教育といったものの手順書を作成し、それに沿っての施行を開始したというところです。臨床研究の実施に関する患者及び家族の理解も重要であり、小児を対象とする臨床研究の実施に当たっては、インフォームド・コンセントだけではなくて、インフォームド・アセントというものを作成する必要があります。こういったものを作成し、説明文書や同意文書の内容について、倫理審査委員会で適正に審査し、参加者の理解を得るよう、子供に対しても理解を得るよう配慮に努めております。

 さらに下ですが、競争的資金について、外部資金獲得を目的としたセミナーを研究者のみならず、病院の医師に対しても積極的に実施しております。その成果で、平成28年度の外部競争的資金は、237,700万円ということでした。右側、First in Humanについての治験の実施体制です。下の方ですが、First in Humanにおいては、緊急事態への対応が必要ですので、こういったもののSOPを作成し、本年度に開始予定の治験に対しての準備を実施したところです。

 次の15ページ、左側です。こういったことを行い、その結果、医師主導治験は、平成28年度が実績5件ということで、目標5件のところを、既に十分クリアしているという状況です。さらに先進医療についても、平成28年度は2件の申請承認を得ました。右側ですが、臨床研究の実施について、平成28年度は246件実施し、平成26年度に比べ59件の増加、32%増加となっております。さらに治験については、平成28年度は39件実施し、こちらのほうも平成26年度に比べ5%以上の増加となっております。さらに診療ガイドラインへの論文の採用ですけれども、平成28年度は21件の論文が採用されております。

 続いて16ページです。左側ですが、臨床研究体制の整備として、主に教育・研修に力を入れた年としました。臨床研究の基本的な知識を学ぶセミナーには、延べ487名、外部講師を委託・招聘して行うセミナーには、全5回延べ144名が参加しております。さらに倫理指針あるいは倫理審査に関する研修会、先ほど説明した13回開催で延べ847名が受講しております。

 こういった演習あるいは臨床研究の実施を通して、更に臨床研究の技術を身に付けるハンズオントレーニング等といったものを5コース行い、288名が受講している状況です。さらに、臨床研究支援組織の職員に対しても教育研修をしており、自前の研修のほか、他の組織が実施している研修会の機会を利用して、スキルアップを行っております。さらに、他の小児医療施設のこういった支援組織の職員に対しても、当センターにおいて、オンザジョブトレーニングの機会を提供するプログラムを開始し、2施設から3名の研修を受け入れております。これらについては、全て外部からも研修に来ていただいており、延べ148名の受講がありました。

 治験薬提供者ですが、企業が当センターの製剤ラボを利用して、酢酸亜鉛の顆粒剤を治験薬として製造する事業も実施しております。その他の小児用製剤についても、病院の薬剤部でリスト化を行い、数社の企業と小児用開発の契約の機会を設け、協議を開始し、1社と共同契約を締結しました。さらに関連して、富山県あるいは富山大学、富山製薬連合などの関連する機関と、小児用医薬品開発の提携協定を結んでおります。

 右側ですが、シンポジウムの開催についても積極的に開始しました。日本小児科学会においては、研究活性化ワークショップを開催、また関連する小児科学会について臨床研究相談窓口を出展し、81件の相談を受けております。これらを行ったことにより、平成28年度は148件の外部からの臨床研究に関する相談を受けました。

 さらに下ですが、小児治験ネットワークを介した多施設共同推進も実施しております。「小児医療情報収集システム」を稼働して、小児施設11、クリニック34からの電子カルテ情報を収集するというシステムを立ち上げました。本年度からは安全対策において利用する予定です。さらに小児治験ネットワーク加盟施設(37施設)において、平成28年度は新規治験として5件の治験を開始したところです。さらにこの治験ネットワークでは、中央治験審査委員会の資料の電子化を行い、治験の手続の簡素化を行っております。

 最後に17ページですが、こういった治験に関する情報については、当センターのホームページで情報の公開をしている状況です。以上です。

○永井部会長

 それでは、御質問、御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○斎藤委員

 すみません、先ほど聞き取れなかったのですが、インフォームド・コンセント以上にインフォームド何とかとおっしゃったのですけれども、言葉はともかく、そういうことをきちんとやっていらっしゃるからだと思うのですが、特に小さいお子さん、乳幼児のときには親御さんからの訴訟があるなどの問題を抱える病院が多いのにもかかわらず、そのような例が全くないと考えてよろしいのでしょうか。

○国立成育医療研究センター臨床研究開発センター長

 まず、治験のほうでお答えします。治験に限っては今のところ、そういった後から患者さんの親御さんのほうからの申立てや苦情については、特に聞いておりません。もし苦情があったとする場合は、外来に設けております患者相談窓口のほうから担当者のほうに連絡を頂くという形を取っております。子供については、3歳ぐらいからきちんと説明してあげると、自分の受ける治療あるいは治験について、ある程度の意思表示ができるというところもありますので、親御さんへのインフォームド・コンセントだけではなく、そういった子供に対する説明は、しっかり実施していかなければいけないと考えております。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

○花井委員

 実はSを付けるためには、いろいろと条件を付けられておりまして、目標値を上回るのは当たり前で、大きく上回った上で世界初だけでも駄目ですね、世界初以外の論文は論文ではないわけですから。世界初で、かつその領域におけるブレイクにつながるみたいなすばらしい成果といわれていて、私は素人なので、よく分からないのですが、例えばES細胞が樹立というのは、これは世界初と書いてあって、どちらかというと、何となく基礎的な研究に今後、使っていくのかなみたいなイメージでもあるのですが、この世界初ということのすごさをもう少し言っていただくと助かります。助かりますと言うと変ですが、ちょっと教えてもらえたらと思います。

 ほかにも幾つか重要な論文を抱えているのですが、その領域における活気性というものを、もう少し御説明いただくと有り難いのですが。

○国立成育医療研究センター研究所長

 まず御質問にありました、ES細胞からの腸の作成ということですが、これはもちろん世界初めてですけれども、1つ臨床応用として、これはまだ先になると思いますが、子供の疾患として生まれつき腸がほとんどない子供、あるいはヒルシュスプルング病という、腸が動いて排泄することができないといった病気があります。そういった治療にも将来的には使えるだろうと考えております。現在のところ、このミニ腸の一番使われる先は、腸管に作用するいろいろな薬を、体外でテストするためのスクリーニング法として使われております。実際にいろいろな製薬会社から引き合いも来ております。

 それから、例えばノロウイルスなどは腸に感染しますけれども、そういったものを体外できちっといろいろな実験をして研究する、薬を研究するというシステムが今まではなかったのです。そういったものにも既に使われ始めております。それらが1つ、大きいところかと思います。

 それから、ほかに世界初ということに関して、5ページの左側の「IRUD-P」と書いてあります。これは1,000例以上の症例をいろいろ解析する中で、世界で初めての病因を明らかにしたというものが10近くあります。これは現在論文をまとめているところですが、今まで知られていなかった新しい病気がある。そしてそれが今まで分からなかった新しい遺伝子によって起こっているということが、幾つも見付かってきております。これはその病気に悩む子供たちにとっての、まずは一里塚を達成できたのではないかと思っております。

 それから、鶏卵アレルギーに関しては、非常に困っている方が日本中におられます。そういった中で、その予防法につながる介入研究ができたというのは、これは本当に世界で初めてですので、これも非常に企業からの問合せも多いところです。そういった重症な食物アレルギーに悩むお子さんにとっては、あるいは御家族にとっては、非常に大きな研究成果ではないかと自負しております。

○花井委員

 ありがとうございます。これも素人っぽい質問で申し訳ないのですが、成育という領域で、あえて、まず、この小腸という問いにトライアルしたということには、何か経緯があるのですか。やはり今、おっしゃられたような小児領域で、その重篤性からして、これがいいだろうということだったのでしょうか。なぜ腸なのかというところがよく分からない。何か基盤研などで、やはり同じような肝臓の試験に引き合いがあってという話がありますが、なぜ腸が選ばれたのか、成育でなぜ腸がというのが、素人的には相当分かりにくいのですが。

○国立成育医療研究センター研究所長

 やはり先天的な腸の疾患というものは、小児医療の中で非常に大きな位置を占めております。基本的には大人ではそういう病気はないのです。子供の患者さんが、やはり非常に多く、手術を受ける方も多い。そういった中でこのように人工的に腸を作ることができるということは、非常に大きな意味があると、小児医療の中では意味があると考えております。

○花井委員

 ありがとうございます。

○深見委員

 鶏卵アレルギーとかES細胞からの腸の作成とか、トピックスになるような本当に面白い研究だったと思います。これと関係しているのか、関連ということでお伺いしたいのですが、受託研究が平成28年度は非常に大きかったということは、論文が出てすぐその影響なのか、それとも何か別の意味合い、やはり、いろいろな時間差というものがあるような気がするので、直接この論文ではないのではないかと思うところもあるのですけれども、一気に受託研究が多くなった一番の要因があったら教えていただきたいです。

○国立成育医療研究センター臨床研究開発センター長

 直接的かどうか分かりませんが、まずはこういった画期的な研究が報道されるという事実、これが大事だと思います。その報道により、成育医療研究センターがいろいろなことをやっているという情報が、やはり会社の中に出てきます。それで、この132件の中で、恐らく企業からの問合せが7割ぐらいを占めているのではないかと考えております。そのうち、こういった特許関係、あるいはこれから世界初めてといいますか、これからいろいろと応用が効くようなことに関しては、最近、注目を浴びて、受託件数は非常に大きくなってきたというところです。

 それから、先ほど来、うちの研究センターのほうでも、いろいろなことをさせていただいている、知財の専門の担当者を置いたことなどによる掘り起こしも関係して、相談件数も増えるなど、そういったことから受託研究や共同研究数が増えていると考えております。

○大西委員

 非常に多面的にいろいろな研究活動、又は基盤整備を進められていることはよく分かりましたが、この成育医療センターというのは、疾患領域としては小児の医療のほぼ全部を診ておられます。かつ疾患の特異性に合った、患者の基調疾病などもそうでしょうけれども、この疾病を多分100%を診ておられているというようなこともあります。そういった中で、非常にリーダーシップを持って、またイニシアチブを取って、いろいろな研究に邁進しておられると思うのです。国内ではこういったネットワークが十分立ち上がっていると感じるのですが、世界的な視野で見たときにも、そういったネットワーキング、若しくは共同研究を進めていくという構想もお持ちなのでしょうか。

○国立成育医療研究センター理事長

 大変重要な御指摘だと思います。現実に世界には有名な、私どもよりももっと先を行っている、欧米の幾つかの小児病院があります。まず、そことコラボレーションを結んでおり、人的交流もしております。ただ、患者さんのことになりますと、なかなか共同研究をするというレベルまでは行っておりません。ただ、例えばロシアと一緒にやろうとか、幾つかの共同研究の話が出ております。この数年以内には幾つかの分野で、共同研究は進んでいくのではないかと思います。人的なレベルでの交流あるいは教育は、既に行っております。

 

○大西委員

 是非、その辺りも強調して書いていただくといいかなと思いました。ありがとうございます。

○福井委員

 先ほどの鶏卵アレルギーの件ですけれども、例えばこれなどはパーセンテージや図で示すだけではなくて、日本全国でこれがもし適用されたら、何万人の小児のアレルギーを軽減するとか、何かもう一歩アピールできるようなプレゼンテーションにできないかなというのが1つです。

 それから、何週間か前の説明会でも私は申し上げたのですが、70歳の人の命を救うのと、23歳の子の命を救うのとでは、その後、生きる期間が全然違いますので、何かクオリティ・アジャステッド・ライフイヤーズみたいな、そういう指標でもって、これだけのクオリティを生産したという指標で、小児の医療というものはアウトカムをプレゼンテーションできるようになると、大人とはまた違った貢献度をアピールできるのではないかと、何となく思っています。もしそのようなことに興味を持っている方がおられましたら、是非そういうプレゼンテーションの仕方も考えられるといいと思います。

 それからもう1つは、全般的にはすばらしい仕事をされていると思いますし、外国のトップクラスのチルドレンホスピタルと比べると、こんなに少ないスタッフで、これだけのものを出しているというのは、私は個人的にはすばらしいことだと思っています。 

 

○内山部会長代理

 私も、これまでの各委員の御発言と似たところがあります。小児科領域は横断的、あるいは縦断的な医療の展開で、ものすごく幅広い領域の中でよくやっていらっしゃると思います。特に英文論文数が、常にこの8年間で右肩上がりで伸びているのは、ナショナルセンターは成育医療研究センターだけです。研究者の数は循環器病研究センターより25人ほど少ないのですけれども、常勤医と研究者の数で割った論文数というのは、国がんに次いで、国循とほぼ同じで2番目ということで、素晴らしい活躍を毎年続けておられると思います。

 その中で新たにメディカルゲノムセンターを開設されたということです。これは、既に開設されている他のナショナルセンターがあります。説明の中で、研究所と病院内の連携、それから国内の大学病院や施設からの検体受け入れとあります。せっかく、先に走っているナショナルセンターもあることですし、小児科も行く着く所は成人ですので、ゲノム領域でも、是非ナショナルセンターの中で情報の交換、あるいは共有化を図ってもらいたいと思います。

○深見委員

 もう1つ、コホートとの関係でお伺いというか、コメントというかなのです。胎生期の環境要因というものが、将来のメタボリックであり、うつであり、こういうことの概念というのが割と認知されてきていると思うのです。高度医療ができるようになって、先ほど理事長から、救える命も増えたけれども、障害もいろいろ残る可能性も出てきていると。そういう意味で、低体重又は早産を予防するという意味の啓蒙活動というのか、ダイエット等との関係というのが言われて、低体重でメタボリックということもちょっと言われていると思うのです。

 社会的には妊娠中のそういう生活と、そういうことの病気が結び付くということの周知というのが余りないような気がするのです。それが成育医療センターの役割なのか、それとも別な所の役割なのか、そういうことはどこが責任を持って社会でやっていくべきなのかをお伺いします。

○国立成育医療研究センター理事長

 大変貴重な御指摘だと思います。昭和50年の頃は、生まれてくるお子さんたちの男女を合わせた全子供たちの出生時の体重が3,200グラムでした。今から8年ぐらい前から、それが2,950グラムに減ったままなのです。栄養状況の良い先進諸国の中で、生まれてくる子供の体重が減っている国は日本だけです。その理由は、産婦人科学会や、産婦人科医会が中心になって頑張って解明しておりますが、まだ明らかではありません。1つは出産するお母さんの年齢が高くなっている。今は30歳ぐらいが初産年齢になっていますので、当然胎盤の機能が落ち始めます。2つ目は、女性がスリム化というか、それを目指しているというか、その2つが原因だろうと。どちらかというと82ぐらいだろうと産婦人科の先生はおっしゃっていますが、まだ結論は出ておりません。

 もう1つは妊孕性と言って、普通に妊娠して、普通に10か月体内で赤ちゃんを育てて、普通に育てるというのを妊孕性と言います。20代に比べると、40歳になると妊孕性が10分の1に下がります。こうした教育は、保健体育を含めて文部科学省領域が一番中心なわけですが、こうした教育が全然なされていないのです。40歳になってから、皆さんあわててお子さんを欲しいと思うのです。いろいろな苦労をして、しかも効率も10分の1に下がります。そういうことを、御指摘のように啓発していくことは非常に重要です。私も、いろいろな所で、事あるごとにお話をしておりますけれども、国レベルでそういうことをちゃんと教えるシステムができていないというのも非常に大きな問題ではないかと思います。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

○深見委員

 はい。

○永井部会長

 次は、評価項目1-3から1-5「医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項」をお願いします。

○国立成育医療研究センター病院長

1-3からは、病院長の加藤が説明させていただきます。18ページからです。1-3は「医療の提供に関する事項」ということで、顕著なところだけ説明させていただきます。高度専門的な医療の提供です。最初に挙げたのは、大学病院からの紹介患者数が多いということです。昨年度は1,710人、グラフ左側の下のように、直接搬送入院が182名と書いてありますが、いわゆる2日に一遍どこかからの大学病院から必ず1人が入院して、直接搬送しているという病院です。あとは全国の小児病院からの紹介患者総数が273人で、内訳はこのようなグラフになっています。やっとここ34年で、他の高度な医療をやっている大学から小児と、何か困ったら成育という形の流れにはなりつつあるのだろうと自負しています。

 次は右側で、最近海外からの患者受入れを始めました。このグラフの紫色が昨年です。問合せ件数は135件で、前々の約2倍になっております。入院は8名ですが、今年は既に多くなっていますので、これは次第に増えてくるのだろうと思います。中国、ロシアからの患者さんが次第に増えております。

 もう1つ今回挙げさせていただきましたのは、成人の病気と思われていたクローン病、潰瘍性大腸炎、いわゆる慢性炎症性腸疾患と言われるものが子供で増えつつある、という現象がやっとはっきりしてきました。右側のグラフで、これが少しずつ増えています。この病気を今は内視鏡で診断して見ているのは、日本では2か所だけで、その8割をうちで見ています。これは今後増えていくので、これを何とかしていかなくてはいけないというのを、今後はきちんとやっていかなければならないと思います。

19ページです。その他医療の提供に関する事項において、左側は前年度に御説明していることですので、これは省かせていただきます。

 右側です。今までも胎児治療はやっておりましたけれども、また新たに2つほど開始しました。1つを開始して、1つは倫理委員会を通したということになりました。1つは、先天性横隔膜ヘルニアの胎児治療を開始しました。詳しい手技は御説明しませんけれども、こういうことを行うことによって先天性横隔膜ヘルニアの紹介回数が、いわゆる生まれた後の紹介が大分増えてきております。倫理委員会を通したのは、先天性重症大動脈弁狭窄です。胎児期にバルーンで治療を行うことを、倫理委員会の承認が得られましたので、今は準備中で、2か月後ぐらいには開始できる可能性になっています。

20ページで、やはり一番顕著なのは、小児がんセンターを厚生労働省の事業で開始させていただきました。そのおかげをもって、うちが中心のまとめ役と、あとは拠点病院になっています。事業開始前と比べて、昨年度は入院患者数が2.5倍に増えました。開始前は22人弱だったのが50人少しまで増えています。その影響で造血幹細胞移植数が昨年度は30件でした。今現在2つある無菌治療室が少し満杯になってきて、今後どうしようかということを考えざるを得ないほど増えてきています。

 新生児外科、特に新生児の心臓手術は46件ですが、これは重症なものしか今はやっておりません。ここには出しませんでしたけれども、1,500グラム未満、1,000グラム未満という手術が増えています。

 右側は聞き慣れない手術ですが、EXITという先天性上気道閉塞、生まれてきて上気道、特に口頭が閉鎖している赤ちゃんが時々います。これは生まれてきても息ができないものですから、そのままにしておくと死んでしまいます。それを通称EXITというex-utero intrapartum treatmentということで、これに日本語はありません。この手術は、帝王切開をして、赤ちゃんを取り上げて、それで臍帯をつなげたまま、その状態において気管切開をしていくものです。EXITは産科と麻酔科が大変なのですけれども、こういう手術を少し前から開始したのですが、これが増えてきて、昨年は3例で、みんな順調に育っております。

 うちは臓器移植センターがありますので、生体肝移植は世界で一番の数をやっております。昨年度は前年度と比べて数は減りましたけれども、死亡数はゼロ、ということはやはり誇るべきだろうと思います。こういうことがありますので、脳死移植を認めていないイスラム諸国からの患者さんにも、紹介患者数がちょっと増えています。

21ページです。うちはまだ心臓移植施設ではありませんが、小児病院としては初めてBerlin Heart(体外式の補助人工心臓)の承認を得ましたので、今1人、これを付けている治療が始まりました。

 臨床に向けた研究成果のところでは、シーズに対する支援のところで、経胎盤的抗不整脈投与療法というのが書いてありますが、これは国立循環器病研究センターとうちの産科が協力してやっていることで、やっと結果が出ました。これは今年度なのであれなのですが、7月にブリティッシュ・メディカル・ジャーナル・オープンにアクセプトされました。EBウイルス感染症の迅速診断、これ自体はなんとか承認可に向けてやれる目途が立っています。

 右側ですが、いわゆる臨床評価指標に用いた医療の質というところです。一番強調したいのは、日本小児総合医療施設協議会というのがあります。抗生物質の使い方というのは後でまた御説明いたしますが、いろいろこれをサーベイしております。手術部位の感染症発生率をなんとか抑えていきたいということがプロジェクトであって、なんとか手術部位の感染、術後の感染が1.1%になるまで減少させた。ただ、これはまだ自己満足なだけであって、世界的な小児病院では0.78%になっていますので、これはもう少し世界レベルにやっていかなくてはいけないと思っています。

22ページも同じように、患者参加型の医療の推進のところです。これはいろいろやっているのですが、昨年度から院長室にみんなが集まって、患者の声という投書を1週間に一遍見て、改善策を提示して、全部を外来の見やすい所に毎週1回全部貼り出すということをやり始めました。採血の待ち時間が長いということがありましたので、何とかこれを短縮できないかということです。昨年度はお金のことがあったものですから、今年度やっと具体化する手段を今講じた次第です。

○永井部会長

 先生、量が多いので手短にお願いできますか。

○国立成育医療研究センター病院長

 チーム医療の推進について、小児在宅の推進というのは、うちのベッドコントロールのために絶対に必要なので、これを何とか今推進するために、いろいろな職種のことの講習会を行っています。緩和ケアも始めました。

23ページは、心のケアということで、日本で初めてのディスレクシア外来、これは読み書き障害ですが、これを始めたのは大きなインパクトだと思います。これは日本の小児の2%に存在していると言われています。東京都教育委員会との共同でパイロットスタディを始めました。小児救急はもうやっていますので、これは特にやりません。

24ページは、特に医療の提供に関する事項で、右側の感染症対策だろうと思います。これは、やっとデータのトレンドを出すことができました。うちは抗菌薬管理スチュワードシッププログラムというのをやっています。いわゆる常駐の、抗生物質は全てICTが管理していますので、そこでやり始めたら耐性菌の発生率が減ったということです。一番下の2つは、これを他の小児病院にも応用していったら、耐性菌の率が減っていって、多剤の感受性率が上昇したというグラフです。

25ページは、職種間の負担の軽減のところです。これもはっきり言って目新しいことはありません。やるべきことをやっているだけの話です。

27ページは、人材の育成に関することです。これは特にベレックス的なことはやっていません。ただ、大変多くのお医者さん、レジデント、フェローを全国から受け入れた。研究所ともに、病院も外国からいろいろな方々に来ていただいて、見学とかディスカッションをしているということを示したものです。右側で、病院として昨年度は国際学会での発表は91回までやっていったということです。27ページの一番下にあるように、センター外の医療従事者を対象にした研修会を延べ137回開催し、延べ人数9,383人が受講していただいております。

28ページでは各種セミナー、研修の開催です。いろいろやっているということですが、特に強調したいのは、NeoSim-J(ネオシムジャパン)というのがあります。これは新生児の蘇生をシミュレーターを使ってやるということですが、これを積極的に始めました。今やっているのは、日本では私たちの所だけになります。

29ページは人材交流ですが、これはここに書いてあるとおりです。各診療科が、いろいろな施設からいろいろなお医者さんを受け入れて研修をやっています。これだけの数をやっているということになります。

30ページで、1-5に入ります。グランドデザインの提唱です。ここはお時間を頂ければと思います。グランドデザインの提唱のところには2つ大きなことを書きました。「もみじの家」の事業ということで、医療型短期滞在施設。あとはトランジション、いわゆる移行期外来について書かせていただきました。医学の発展というのは、日本人の平均寿命が伸びていて、認知症とか老人介後の問題が、日本の社会で今クローズアップされていますが、同じことが小児でも起こっているということです。いわゆる医療の発展の恩恵を当然子供でも受けていて、その結果が医療的ケア児の必要性。あとは移行期医療、成人期診療科への移行ということが大きな問題として起こっている、ということをきちんと提唱してきました。これがここ12年マスコミでも、社会でも取り上げられるようになって、その動きが始まったということを、やはりここでは強調しておきたいと思います。

 次はネットワークです。これは研究所長、臨床研究開発センター長からもありましたように、小児治験ネットワークです。これと日本小児総合医療施設協議会を基盤として、いろいろ能動的な動きを始めています。

31ページで情報の発信です。これは他の病院でもいろいろやっていますので、余り強調することはありません。ただ、報道・PRのところですが、そういうことを先ほどグランドデザインのところで申しましたように、いろいろなことをやってきたことが関係していると思います。昨年度はマスコミに露出する回数が366回、これは前年度、前々年度の3倍になっております。

32ページで、その他に顕著なのはプレコンセプションケアセンターを昨年度から立ち上げました。最初は余り人気がなかったのですが、うちのスタッフがテレビに出ることがあって、そこからは爆発的に予約患者数が増えました。妊娠において他人には言えない悩みを持った若い女性がたくさんいたということを実感した次第です。飛び飛びですが、以上で説明は終わります。

○永井部会長

 ありがとうございました。それでは御質問、御意見をお願いいたします。

○藤川委員

30ページでグランドデザインという話なのですけれども、自分の身の回りで考えても、子供を産む方がすごく減っていて、1人しかいないという方も多いです。それにも関わらず、子供が減っているのは障害をもっている親がすごく多いと実感しています。仕事にも支障があるというような方が非常に多いです。「もみじの家」を造られたというのは、確かに御両親にとっては良いことだと思います。理事長がおっしゃったような、啓発というところで、いかに健康な子供が多く生まれるかということがすごく大事だと思いました。成育センターは何を究極に目指すのかというところが、先端の医療をやればやるほど、私も見ていて悩ましいとまず思いました。

 ここ23年ぐらいで、非常に業績がいろいろな意味で良くなってきたと思います。確かにこらえていることも多くて、いろいろなセーブをしながらというところもあるかと思います。火が付いた理由というか、ものすごい業績が出てきたのは何が原因なのかというところを教えていただけますか。

○国立成育医療研究センター病院長

 それは、論文の数とか、そういうことですか。

○藤川委員

 全体に収支も非常に、セーブしている部分があるのは分かりますけれども、研究の収益も増えていると思います。余りにも今までがセーブしすぎていたから。

○国立成育医療研究センター理事長

 もともとポテンシャルはあったわけです。1つは広報部を作り、積極的に広報活動に努めています。もう1つ、この「もみじの家」というのも、日本は寄附活動が非常に乏しいと言われています。実際はこうやってリアルなものを曲がりなりにも造り、やせ我慢で今は赤字でやっているわけですが、実態のあるものを造ると、それに応えてくれる方が実はたくさんいたのです。その方たちが、結果的に掘り起こされる。かつ広報活動も相まって、そういうものが加わってきたのではないかと思うのです。

 日本は、欧米に比べると寄附の文化が非常に弱いと言われていますが、実は寄附したいと思っている方が潜在的にはたくさんいるのではないかと思うのです。そういう方たちに、アクセスしやすくなってきたというようなことも非常に大きなことではないかと思います。もともとポテンシャルがあって、私どもがこの45年頑張ったから、急に良くなったというのではなくて、基本的には皆さん一生懸命やっていて、職員が頑張っているというのが基本で、世の中がようやく皆さん小児医療や、小児医療の問題点についても御理解が深まってきたということが大きな成果につながってきているのではないかと考えております。

○藤川委員

 小児がんについて記載がありました。一緒に評価しているグループとして、がんセンターがあって、うまく効率的にというか情報交換とか、無駄はなくしてより一層高いところを目指すという工夫は何かあるのかを教えてください。

○国立成育医療研究センター病院長

 これは基本的にきちんと役割分担をしていると思います。いわゆる一般臨床は全て成育。ただ、新しい医薬の開発、治験は情報量も含めてそれはがんセンターだろうと思っております。全体の小児がんの疫学的な情報網は、がんセンターがきちんとやっておられて、全てシステムが整っておりますので、そこの軒下を借りるような形で小児がんのほうも、そこで情報をやってきました。ですから情報関連、疫学関連は全てがんセンターの先生方にお願いしています。ただ、臨床的な全てのところと、拠点病院の教育、多職種の教育、一般的な現場の力は成育でやっていこうという形になっています。

○国立成育医療研究センター理事長

 小児がん全体の生存率ですが、5年生存率が今は8割です。8割の方が5年以上生存できるようになってきました。当然大人になっていきますので、大人になっていった後のいわゆるトランジションに関しては、がんセンターと一緒にやっていく。受皿としてがんセンターにお願いできるのではないかと考えています。

○花井委員

19ページに遺伝子カウンセリングというのがあって、これは直接評価の質問と言っていいかどうか分からないのですが、ちょうど1年前の先月に、相模原で障害児が殺された事件がありました。私たちのような遺伝性疾患のコミュニティでは相当衝撃を受けました。周りでもご飯が食べられなくなったり、PTSDみたいになった人もいました。先月も1周年でその問題をいろいろ考える機会が多かったのです。

 血友病は、古くは優生学との関係で、いろいろ社会的な論争がありました。優生思想というのは極端な思想として排除されているように思われているものの、実際的には遺伝子カウンセリングの中にあると、消極的な意味では優生学に基づいた判断的なことが、ある種正当化されているという実態があります。そういうものは、ある種のダブルバインドというか、これは古くからの論争ではあるのですが、先の事件を踏まえて、こういうサイエンスをベースにした医療機関が、先ほどの「もみじの家」でもそうですけれども、一人一人が病気を持ちながら治ると、完全にキュアできればいいのだけれども、一定程度のハンディキャップを持ちながら一生長く暮らすときに、まだまだ日本の中では生きにくいという状況がかなりあります。

 それに対して遺伝子カウンセリングをしながら、「もみじの家」のようなものもやる中で、やはり成育としては政策的なものとして、施設内の職員の研修とか、そういうところでは倫理をどのように考えて、職員に徹底しているかを教えていただけますか。難しい話かもしれませんが、やはり遺伝疾患を持っているとすごく気になります。

○国立成育医療研究センター理事長

 人類がこうやって今生存しているのは、必ず変異というか、この長い期間の間に親と全く同じものではない、ちょっと違ったものができたという、それがあって生き長らえているのだと思うのです。環境の変化にもある程度対応できている。これは、やむを得ないことなのです。しかし、世の中が進んでくると、自分の子供は例えばダウン症の子供は産みたくないということでは、NIPTが今は行われています。こういうものに対して否定、あるいはやるなということまでは、倫理的な問題はその状況によって変わりますけれども、小児科医としてそれは否定できないと思います。

 しかし生まれてくる子供が、たまたま検査では分からなくて、ダウン症の子も生まれてくるわけです。そういう方たちに対して最後まで寄り添えるのはやはり小児科医です。私どもは、もちろんダウン症を否定はしません。ですからNIPTをやるなとはもちろん言わないわけですが、必ずそうやって生じてくる病気を持ったお子さんたちに、常に寄り添って、それと一緒に我々ができることを最大限やるというのが私たち小児科医の役割ではないかと考えています。倫理は全て時代によって変わりますので、一元的なことは言えないのですけれども、現時点ではそのようなスタンスで臨みたいと考えています。

○国立成育医療研究センター病院長

 倫理とはちょっと違うのですが、「もみじの家」はどのようにしたかというと、これは社会の中の1つだと。いわゆる病院ではない。こういう障害をもったお子さんたちが「もみじの家」に行くときには、近所の人にも普通の形で来ていただきたい。ボランティアが主体である。いわゆる一般の人によるケアを受けてもらいたい。だから、社会の一員として君たちはいるのだということを、何とか私たちはメッセージとして発したいというのが1つのコンセプトです。なるべく病院のスタッフは裏側に隠れて、今も少しずつボランティアの人が増えていますが、ボランティアの人たちが主体です。病院に関わっていないスタッフも、普通に遊びに来て、普通に食事をして、お茶を飲んで、帰れる所にそういう人たちがいるというものを作りたい。まだそこまでは行っていませんが、それが最初のコンセプトです。それが少し出来上がっている。社会の一員であるということを1つのメッセージとしてつなげることはやっているつもりです。

○福井委員

18ページで、海外からの患者受入数の増加という項目があります。特別に治療を受けに来るという患者さん以外で、日本に住んでいる外国籍の患者さん及び旅行中の外国籍の患者さんなどの受入れはどうなっていますか。

○国立成育医療研究センター病院長

 まずは日本在住の外国の方を、特に意識して受入れを促進しているということはありません。ただ、病棟に1人か2人は必ず今はいます。今は診療報酬上、あまりトラブってはいませんので、あまり大きな問題にはなっていないだろうと思います。外国からいらっしゃっている御家族で、観光中に病気になって来る人というのは年に結構います。昨年度は富山辺りに行っていて、喀血病の疑いになったということで、急にうちの病院に送られてきたのですが、違っていたということはあります。ここにも書きましたけれども、ベルギーの家族の赤ちゃんが、重症の肺炎になってしまって、気管内挿管をして、ICU1か月以上抜管できないと。これは、うちの搬送チームがJALの協力を得てベルギーまで運びました。やはり、旅行保険があったからそういうことができています。実際に少しずつそういう患者が増えています。ただ、一部は未払いで行く人が今後は増えてくるのではないかと思っていますが、まだ具体的な問題としてそこまでは行っていません。

○永井部会長

24ページに耐性菌対策のことが出ています。これはセンターないし中核病院での対応なのだと思います。今、地域で10歳以下の子供さんに相当第三世代の抗生剤が使われています。その辺の教育指導などには何か取り組んでいますか。

○国立成育医療研究センター病院長

 残念ながらまだそこまでは行っていません。ここに出しましたのは、小児病院全部をまずはやってみようということです。それは感染症の興味を持った医師を全部集めて、年に数回講習会をやって、それで同じプロトコールでやってみようということで始めて、やっと事実を示すことができたので、このデータをもって今後どうしていくかということの段階です。

○永井部会長

 私もある県のレセプトデータを調べたことがあるのですが、びっくりするような状態なのです。これは是非対応していただければと思います。他によろしいようでしたら、業務運営の効率化、財務内容の改善ということで、項目2-1から4-1について説明をお願いします。

○国立成育医療研究センター企画戦略局長

2-1以降は、企画戦略局長の瀧村が説明いたします。まず、33ページ(1)の「効率的な業務運営に関する事項」です。中長期計画の概要の下の部分ですが、入退院センターを設置し、各病棟の師長が行ってきた病床管理を一元的な病床管理に変更しました。加えて、DPCデータの制度管理等を実施することで、効率的な業務運営を図るべく体制を強化しました。また、これまでの説明の中にもありましたように、成人診療科医のトランジションという現状を踏まえ、年齢別診療科となっておりました「小児期診療科」「思春期診療科」を廃止し、「総合診療科」を新設しました。一番下の所ですが、施設内保育所の運営、病児・病後児保育の利用、育児短時間勤務時間等、仕事と育児の両立ができる環境の維持に努めております。

 右側の所ですが、まず紹介率と逆紹介率の向上です。紹介率につきましては、28年度実績は91%、逆紹介率は51.6%となっております。特に小児患者さんにつきましては、逆紹介をする上で困難な面もありますが、ワーキンググループを立ち上げ、各診療科への支援、指導の実施等のフローを作成し、紹介率、逆紹介率の向上を図っております。また一番下の部分ですが、地域医療支援病院の承認に向けて、センター内で準備を開始しております。

 次のページは、人員配置の部分です。特にウ)の看護師の部分で、新採用者に対して新たな研修を行い、職場への定着を図ったり、育休復帰者に対しての支援、看護キャリアパスの充実のために、研修の参加や習熟度をポイント制にして、正当な評価を実施することなどに取り組み、右側にある離職率になっている平成28年度実績は、12.4%でした。また専門・認定看護師数の平成28年実績は38名となっています。

 次の35ページの効率化による収支改善になります。収益については、経常収支率104.6%、経常収支差は11億円で、24億円の収支改善を果たしました。具体的に収益については、1日平均入院患者数7.8人の増、手術室の稼働率向上による増収を実施しました。費用については、医薬品、検査試薬の費用に関して、ほかのナショナルセンターや国立病院機構との共同購入の実施、消費払方式の導入による診療材料費の削減を実施しました。それから委託費に関しては、34業務委託のうち21業務委託の費用の削減などに取り組みました。右側の4番の一般管理費の削減ですが、平成28年度実績は16%削減となっています。

 次のページは、収入の確保です。36ページ右側です。医業未収金に対する対策です。医業未収金については、マニュアルに基づき、まず発生防止策としては、入院時における「身元引受書及び診療費等支払保証書」の提出、分娩患者における預り金の徴収等に取り組みました。また督促については、文書督促、弁護士名による文書督促に加え、裁判所に支払督促の申立てを実施しています。これにより、平成27年度は医業未収金比率0.046%であったのが、0.021%へ減少しています。

2点目の査定減対策ですが、新たに取り組んだのは、まず1つは高額レセプトを請求後に専門スタッフによる再点検を実施し、症状詳記の記載が不十分なものについては、一旦取り下げて精査をし、請求し直す取組を行いました。また査定率の高い診療科の医長を院内の診療報酬委員会に呼びまして、現状認識と対応策を共有しています。これらの対策の結果、入院の査定率は、対前年度費36%減、外来の査定率は49%減となっています。

 次のページは、電子化の推進等です。特に2番の情報セキュリティの向上に取り組んでいます。ほかの施設で情報セキュリティ関連の事故・事件が起った際には、随時注意喚起の案内や研修を行っています。また、厚生労働省による、当センター職員を対象とした模擬攻撃メールの防御訓練について、厚生労働省の担当部署と共同実施をし、職員の意識向上を図っています。

 続いて、評価項目3-1、財務内容の改善に関する事項です。(1)自己収入の増加に関する事項です。まず外部資金の獲得ですが、先ほど1-2でも説明がありましたように、受託研究・共同研究を推進するために、臨床研究相談窓口、小児治験ネットワーク等を利用して当センターの取組を紹介しました。また、新たに臨床研究支援に係る受託研究を受注するなどして、外部資金の更なる獲得に努めています。また、企業との共同研究に関しては、平成28年度に臨床研究相談窓口に寄せられた相談が121件で、そのうち共同研究に至ったものは12件と増加しています。同じページの右側ですが、小児治験ネットワークの拡大です。平成28年度において、小児治験ネットワークを介して実施した治験の収益は、約3,377万円となっています。前年度比112%増となっています。以上です。

 ○永井部会長

 ありがとうございます。それでは御質問、御意見をお願いいたします。

○医政局医療経営支援課課長

 引き続き、4-1までの説明をお願いしたいと思います。

○国立成育医療研究センター企画戦略局長

39ページの所、3-1の最後の所です。資産及び負債の管理に関する事項ですが、計画的な投資として、平成28年度においては長期借入れにより、空調設備整備工事を行いました。また固定負債については、約定どおり償還を行っています。

 それから次のページですが、評価項目4-1、内部統制の部分です。内部監査の実施ですが、平成28年度は、外部資金による研究費の経理に関する事項、契約に関する事項、財政融資資金本省資金融通先等実地監査結果のフォローアップに関する事項を重点として、内部監査計画を策定しています。それから会計監査人による外部監査については、財務諸表、決算報告書、事業報告書について、会計監査人の監査を受けています。

 右側ですが、契約業務の競争性等の確保です。契約業務については、原則として1件当たりの契約予定金額が100万円を超える案件については一般競争入札として、一定金額以上の契約については、「契約審査委員会」による審議を行っています。また、研究倫理の向上については、先ほど説明がありましたので省略いたします。

42ページのその他です。人事に関する方針ですが、研究所職員の定年の延長について、優秀な研究者を確保するために平成29年度より適用できるように、今年度については所要な規定の整備を行いました。また、クロスアポイントメント制度については、がんセンターと初めて2件実施しています。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。それでは、御質問お願いいたします。最初に私から。看護職員の離職率が、かなり高いですね。これは、いろいろな要因があるのでしょうが、お手元の机上配布資料、非公開資料の18ページを見ますと、成育のICUの看護体制が出ております。20床に対して、10人ずつ、準夜・深夜。配置数が64というと、これは4週に72時間の夜勤は守れないのではないかと思うのですが、夜勤専属の方がいるのですか。

○国立成育医療研究センター病院長

 こちらは、していません。

○永井部会長

 していないと、これは夜勤が過剰な状態になっているはずです。よく見ていないと現場で離職率が高くなる可能性があると思うのですが、そこは大丈夫ですか。

○国立成育医療研究センター病院長

ICUのナースは多分、今、夜勤の数が多いことは認識して、ほかの病棟でも残念ながら多いものですから、それを何とか減らす方向で。今年度の離職者は大分減ってきており、それで、このニーズはもっと実際に今年度は増えているはずです。

○永井部会長

 これは、夜勤の数の7倍以上が必要ですね。70数名必要になるはずです。そうしないと、4週で8回以内の夜勤に収まらない。しかし、70数名配置すると、日勤帯が多くなってしまい、そこを派遣なり応援でどうするかという話が出てくるのですね。

○国立成育医療研究センター病院長

 今、病棟間でナースを、そのときそのときの病棟間の多忙さを、暇なときとの差が出てきますが、それでやり繰りしてやるようにしています。今年度から開始しました。

○永井部会長

 夜勤数の計算の仕方があり、例えば日勤帯にも夜勤時間が入っていることはご存知でしょうか。

○国立成育医療研究センター病院長

 知らないです。

○永井部会長

 夜勤帯というのは夕方から翌日朝までの16時間勤務を言いますが、日勤帯は休み時間を入れると9時間になりますから、45分あるいは1時間、夜勤時間帯入っています。これを含めて4週に72時間以内にしなければいけないわけです。この体制ではだと全く守れません。そうすると、おそらく看護師さんの不満は多いのではないかと思えます。

○国立成育医療研究センター総務部長

 夜勤回数については、確かに多いのも認識はしており、看護部長から看護課題に対する対応方針を一般の看護職員含め看護師全員に示しました。

1つの対策としては、実は今、外来の非常勤化を目指しており、常勤の方を病棟に置き、夜勤回数を軽減することもやっています。ただ、根本的に足りないということは十分認識しています。

○永井部会長

 それともう1つ、今の机上配布の24ページの外来診療待ち時間、これは今回各センターを調査しましたが、成育の場合、1時間以上待ちが50%を超えています。これは、何か理由があるのですか。あるいは。

○国立成育医療研究センター病院長

 これは1つは、高い併診率というのがあります。1つは、ちょっと計算しましたが、約4割の患者さんが外来の併診をしています。

○永井部会長

 そうすると。

○国立成育医療研究センター病院長

 それが2つだけではなく、34つという併診。

○国立成育医療研究センター病院長

 ですので、これが、いわゆる予約時間から、それが12つ延びてしまうと、どうしても最後は延びてしまうことが1つ。

○永井部会長

 ですが、それならそれで何かやり方があると思いますが。

○国立成育医療研究センター病院長

 あとは当日の検査というのは、受付けをしてから当日検査をして、そこから診察が始まるのですが、どうしても、その検査の時間が掛かってしまう。それが7割。当日、全部結果を出してしまうことになっています。

○永井部会長

 先に診察をして、あとで検査の結果をお話するわけにはいかないのですか。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 それは一度考えたのですが、やはり医師の午前中、午後だけの外来とかがありますので、どうしても午前中で終わらせたいとなると、どうしても午後とかになってしまうと、血液検査とエコー、放射線検査。そのようなことを全部結果が出てからやることがあるものですから、ずっと行っていると。

○永井部会長

 いろいろ工夫していただければと思います。いかがでしょうか。

○内山部会長代理

 今の看護師さんの件に関連して、例えば成育医療研究センターだったら子供が診られるから、子供が好きだから入職したという看護師さんがいると思いますしかし、現場は、重症患者さんが多く、平均在日数が10日ちょっとと慌ただしいし、高度な手術があります。その中で、小児医療に携わる看護師をどのように教育・養成していくか、難しい課題だと思います。

 当然スペシャリストが必要ですし、この環境では、なかなかジェネラリストの、いわゆる小児医療の看護師は育成も難しいように思います。現場で、どのように工夫されているのですか。

○国立成育医療研究センター病院長

 これは、昨年度ぐらいに、やはり離職率が高いことが大変大きな問題として、院内で捉えました。やはり離職率が、せっかく教えて慣れたのに34年で辞める人が多いと、これは、もう戦力のダウンになってしまうので。

 あとは、実際に病棟間の看護師の数が少ない。これは残った人たちの負担が増えてしまう。ただ、どこに問題があるんだということを、まず看護部内で検討していただき、それで綿密に、いわゆる新しく入職した方々を定期的に、1つは、1人、11ぐらいで付けておいてフォローしていくこと。あとは師長が定期的にやっていき、そこら辺を全体と今度は部長がきちんと出ていってフォローしていくというところを取ったところ、詳しい内容は私は今ちょっと無理ですが、今年度は大分結構な、ほかの病院並になってきました。

 あとは先生がおっしゃったように、小児医療における看護師の育成ですが、これは、なかなか難しいと思っており、ただ私どもが目指すのは、小児医療の専門は専門ですが、小児医療の、逆に小児医療の心臓の専門や、小児の腎臓の専門とか、小児のアレルギーの専門を目指すために専門看護師、あとは認定看護師を、いわゆる、これはきちんと取っていく方向で、今、看護部長が各大学と連携し、どうしていくか。それでもって順番として決めていくことをしました。

 あと、もう1つ大きいのは、院内昇任を始めたことです。看護師長は、今までは一旦外の国立病院機構に出ないとなれないシステムでしたが、今年度から新しく成育で頑張ってきたナースを師長にするということをしました。ということで、やはり成育で頑張ってくれば師長になれることを示したことは、やはり小児で頑張ってきた人たちのモチベーションを上げているのではないかとは思っております。

○内山部会長代理

 ちなみに、看護師数は何人ですか。

○国立成育医療研究センター病院長

600人です。

○福井委員

 今の件ですが、勤続1年未満の離職率が、まだ15.7%ということですが、これは非常に高いですね。全国平均の1.5倍だと思いますが、これへの対応は、何か今考えられていますか。

○国立成育医療研究センター病院長

 それも、あの大変、もっと昨年度10。その前は、ちょっと178%あったと思います。ものすごく高い倍以上だということで。ですので今年度は、まず面接するときに、小児医療に夢を持たないようには。というか小児医療というのは、ぱっと見るときれい。いわゆる、かわいそうな子供を見るということですが、現状は若い女性が見たこともないような大変重症な先天性の症候群の方々もいます。で、ショックを受けることがあります。一番多いのは、心の病気で辞めていってしまうことが多いものですから、まずは覚悟して来てくれということをメッセージとして出しています。

 あとは、いわゆる風邪や感染症入院ではなくて、本当に重症な子供で亡くなっていく。亡くなっていく子供をどう、子供のケアとPTSDみたいになってしまって辞めていく子もいましたので、やはり親との確執もあります。そこら辺がなかなか難しいところでしたので、そこら辺はベテランナースがフォローしていくような形を取って、それは今年度は大分減っております。現実として感じております。

○内山部会長代理

 新卒の採用数は、どのぐらいですか。

○国立成育医療研究センター総務部長

 一点補足いたします。今まで私どもは、このような看護課題に対して事実を、ここの議論のような話を職員がどこまで知っているかというところは、実を言うと一番ポイントであり、今年の1月、看護部長から、看護課題に対する対応方針をペーパーに落として説明をしました。それについては、例えば新採用の離職防止対策、病休者に対する支援、看護技術者不足への支援、いわゆる働き続ける環境づくり、年給取得の日数、超勤の改善、夜勤回数の平準化、キャリアパス教育の支援、看護研究の推進。こういった受講に対して、病院としてどう考えますということを、まず具体的に対応方針を示すことと、あとは、いつまでにやるということのロードマップも示しました。

 実を言うと、それは実行しないと事実はこういったことを改善はできないと思っていますが、まず1つは病院の方針を示す。それを平の職員に、まず全部浸透させることは、一応、今年の1月に示しました。

○永井部会長

 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○福井委員

 一言よろしいでしょうか。24億円改善されたということですが、来年度から反動が起きないようにできればと思います。

○永井部会長

 黒字が出たときに、きれいに使うのも大事です。必ずどこかに無理が来ていますから、そこは、さっと現場に還元して意識を高めることを是非考えていただければと思います。

○国立成育医療研究センター総務部長

 正に、そのとおりでして、実を言うと、これはひずみが出ているのはよく分かっています。ただ、手持ちのお金がなかったということも、これは職員にも全部伝えています。一番大きいのは、医療機器を平成27年、28年、一切ほとんど購入していません。必要なものは当然修繕をしました。これについては昨年の11月から募集を掛けていまして、今お金をどう使うかという工夫でして、単年度で買うのではなく、例えばエコーだったら3年間の契約、ほかの機械は2年間の契約ということで、一応方針を対外的には長い方針を示しました。それで、多分現場のドクター等については、ある程度は還元ができていると思っています。ただ、実を言うと、ここまでは大変ですが、これ以上この先が、これをどう維持するかということが一番大変でして、ここが私どもの一番の課題ではないかと思います。

○永井部会長

 ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは続きまして、法人の監事さんから、業務の監査結果等の監査報告について御説明いただき、また改善方針等についてコメントをお願いいたします。

○国立成育医療研究センター監事(石原)

 監事の石原です。監査報告書はお手元に届けてあると思います。当センターの業務は、適正かつ効果的に運営されていることを、まず報告したいと思います。

 特に今年度は、先ほど来、委員からも評価いただいていますように、損益計算では4期ぶりに経常収支差が黒字になったということでして、これは理事長以下、役職員皆様の経営改善への真摯な取組を行われた結果だと思っております。重要なことは、今、委員も御指摘されたように、反動が出ないようにというお言葉もありましたが、我々監事としては、こうした努力がサステイナブルであるということを見届けたいと思っており、必要に応じて意見、具申をしていきたいと思っております。

○永井部会長

 ありがとうございました。続いて、五十嵐理事長からお願いいたします。

○国立成育医療研究センター理事長

 本日は評価委員の先生方から、非常に重要な御指摘をいただき、誠にありがとうございます。御指摘いただいた点を十分にかみ締め、これからのセンターの運用に役立てていきたいと思います。本当にありがとうございました。

 私どもセンターは、やはり大学病院とは違った、大学病院ではできないような、あるいは一般病院でももちろんですが、そのようなミッションがたくさんあると考えております。例えば、新生児マススクリーニングを日本でしているわけですが、その制度管理をしている。妊娠中のお母さんに対するいろいろな薬剤が投与されていて、特に最近は、向精神薬なんかが非常に多くなっているわけですが、その安全情報を伝える。あるいは小児用の薬剤を開発する。それから先ほども話した世界的にも、あるいは日本ではもちろんですが、生体肝移植を50人、70人やっている。その他、希少疾患の原因を解明して薬剤の開発につなげるなど、このようなことをしております。それから2年前の小児がんの拠点病院も受けましたし、来年からはアレルギー疾患対策基本法ができ、これの基幹病院、拠点病院にもなる予定になっており、いろいろなミッションが与えられております。大変有り難いと考えております。

 しかし、先ほどからお金の話が出ていましたが、このようなものをやるには、なかなか現在の診療報酬の下では、難しい面がたくさんあり、現在32億円の運営交付金を頂き、260億円の予算規模、つまり12%は国からの補助で行っているわけです。これは、この数年間に当たり、ずっと大学病院は2%の削減でしたが、ナショナルセンターは10%の削減が4年間続き、この2年間は皆さんのおかげで止まっている状態ですので、何とか生き長らえるわけです。先ほど総務部長が言いましたように、将来、経営状況については、この2年間何とか上向きになってきましたが、やはり、これからが正念場ですので、引き続き厚生労働省を初めとして、御支援をいただきたいと考えている次第です。本日は、どうもありがとうございました。

○永井部会長

 何かコメントはありますか。今、国立大学病院は2%の削減という話でしたが、実は収入の2%ずつ削減されたのです。実質的には毎年10%の削減でした。国立大学病院伝体で、580億円の補助金は10年で0になったのです。それは大変厳しかったのです。

 何か、よろしいでしょうか。それでは、これで終了いたします。どうもありがとうございました。

○医政局医療経営支援課課長補佐

 それでは改めまして、今後の流れについて御連絡申し上げます。本日まで議論いただきました平成28年度の業務実績評価につきましては、この後本部会における御意見や、法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果につきまして、各法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容につきましては、後日、委員の先生の皆様方にもお送りいたします。

 また委員の先生におかれましては、評定記入用紙の記入を終えている場合に関しましては、机上に置いたまま御退席いただければと思います。また、後日提出いただく場合は、明後日木曜日の午前中までに事務局宛てにメールで御送付いただきますようお願いいたします。

 繰り返しになりますが、本日配布しました資料の送付を御希望される場合は、机上の封筒に資料を入れ、そのまま机上に置いていただければ、こちらから所属にお送り差し上げます。

 最後になりますが、医療経営支援課長の佐藤から一言お礼の御挨拶をさせていただきます。

○医政局医療経営支援課課長

 御多忙の中、またお暑い中、3日間にわたり、誠にありがとうございました。当評価部会におきまして、御専門の立場から頂いた御意見、御助言につきましては、これを踏まえまして、厚生労働大臣の評価を検討させていただきたいと考えております。皆様には引き続き、当部会の御協力をお願いするとともに、今後ともナショナルセンターの6法人への御指導を賜われば幸いと考えております。本日は、どうもありがとうございました。

○永井部会長

 どうもありがとうございました。では、これで終了いたします。

 

 

 


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国立研究開発法人審議会(高度専門医療研究評価部会)> 第11回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会(2017年8月8日)

ページの先頭へ戻る