ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第22回)議事録(2017年8月9日)




2017年8月9日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第22回)議事録

○日時

平成29年8月9日(水)14:00~16:20


○場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)


○出席者

今村主査、志藤構成員、関口構成員、戸田構成員、中村構成員、宮崎構成員

○議事

○今村主査

 定刻になりましたので、第22回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WGを開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、また今日は暑さのピークということですが、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は高田構成員、松浦構成員、松尾構成員、三宅構成員が御欠席です。それでは、本日の議事について事務局から説明をお願いします。

 

○政策評価官室長補佐

 本日の議事について御説明します。議題は勤労者退職金共済機構についてです。議事は、(1)(2)のとおり2つあります。1つ目が、中期目標期間見込評価に係る意見についてです。2つ目が、業務及び組織の全般にわたる検討の結果並びに講ずる措置の内容に係る意見についてです。各項目について、若干御説明します。

 参考資料11ページを御覧ください。まず、中期目標期間見込評価ですが、真ん中辺りに説明があります。中期目標期間の最終年度に実施される期間終了時に見込まれる業務の実績評価です。年度の評価と同様に行うこととしておりまして、本日の対象となる勤労者退職金共済機構は、5年間にわたる中期目標期間が平成29年度で最終年度に該当しますので対象となっております。

 もう1つの議事が、いわゆる業務・組織全般の見直しについてです。それについては、同じ資料の後半下辺りに書いております。業務・組織の全般の見直し、中期目標期間終了時までに法人の業務及び組織の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき業務の廃止、若しくは移管又は組織の廃止、その他の所要用の措置を講ずるものです。これについても平成29年度が中期目標期間の最終年度に該当する法人が対象となっております。いずれについても、来年度からの中期目標の内容に反映することを目的として実施しておりますので、御検討のほどをどうぞよろしくお願いします。事務局からは以上です。

 

○今村主査

 それでは勤労者退職金共済機構の中期目標期間見込評価について議論をしていきます。初めに国民に対して提供するサービス、その他の業務の質の向上に関する事項に係る項目別評価のうち、1-1、退職金共済事業、一般の中小企業退職金共済事業について、勤労者退職金共済機構からポイントを絞って、ごく簡潔な御説明をお願いいたします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

 勤労者退職金共済機構の総務部長をしております鈴木と申します。よろしくお願いいたします。資料1-15ページ、確実な退職金支給のための取組ということで、一般の中小企業退職金共済事業における退職金未請求者に対する取組ということです。数値目標としては、請求権が発生した年度における退職者数に対する当該年度から2年経過後の未請求者数の比率を、中期目標期間の最終年度(平成29年度)までに1%程度としているかであり、退職金未請求率の関係の数値目標が設定されております。

7ページ、これに関しては緑の箱の所ですが、様々な新たな未請求退職金の発生を防止するための取組を講じています。下の緑の箱になります。未請求率の縮減は3年連続で、取組開始の平成19年度前のおおむね半分以下の水準、1.4%台に抑制することができております。8ページの図表などを用いて7月に御説明しましたが、現在の未請求率の水準を低下させることについては、手続を拒否している方を説得したり、プライバシーに踏み込む必要などがあり、また、退職金の原資の使い方の観点からも様々問題があることを御議論いただいたところです。

 そういった御議論を頂いて、いずれにしても、現在でき得る限りの施策を講じたということで、5ページ、法人の自己評価はBとしております。法人からの説明は以上です。

 

○今村主査

 ただいまの説明に対して御意見、あるいは御質問がありましたらお願いします。これは底をついているというか、8ページの右下にあるように、金額が非常に少額であるということと、8割以上が請求権を認識しても請求しないという、この状況が全てを語っている気がします。目標には達していないが、順調に推移しているということでB評価ということです。ありがとうございます。次に1-2をお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

9ページ、評価項目No.1-2です。同じく、確実な退職金支給のための取組で、今度は特定業種退職金共済事業における長期未更新者への取組です。数値目標については、共済証紙の販売額の累計と貼付確認額の累計額の差額を、前中期目標期間の終了時から100億円程度減少しているか、あわせて、共済証紙の貼付状況等に関して把握し、取組の充実を図っているかということです。

12ページ、これに関しては様々な取組を行っております。長期未更新者調査ということで、過去3年間手帳更新のない等の要件に該当する被共済者の住所を調査・把握し、手帳更新、退職金請求等の手続を取るよう要請した。その他、加入通知書の発行、被共済者の住所のデータベース化、長期未更新者調査のフォローアップ調査の実施、住基ネットを活用した住所の特定等、様々な取組を行ってきたところです。

13ページ、この結果、上の青の箱の所です。共済証紙の販売額の累計と貼付確認額の累計の差額ですが、右の図になります。平成28年度末において、平成24年度末と比較して32億円増加しております。これについては、証紙販売額が近年上昇する局面に変わったということで、これが主な要因ではないかと、前回の会議でも御説明しております。この数値目標については、証紙貼付方式を前提として設定していることも申し上げております。また、労働者の退職金の充実を図る上では、こういった方式を見直し、抜本的な改善策を図ることが必要であることをお話申し上げたところです。

14ページ、下のオレンジの箱になります。次期中期計画期間の取組ということで、過去3年間以上手帳更新がない被共済者で納付月数24月以上の者を減少させるための数値目標を設定することに変えるなど、要望していきたいと前回も申し上げております。

15ページ、先ほどの証紙貼付方式については、次期中期計画で電子申請方式の導入を検討するということで、当面、平成301月から6月まで、実証実験を予定しております。

 戻って9ページ、この数値目標については32億円増加しておりますが、この理由については、証紙販売額が増加傾向にあるということで、様々な取組を講じているところ、法人の自己評価としてはBとさせていただければと思います。法人からの説明は以上です。よろしくお願いします。

 

○今村主査

 御意見、御質問等ありましたらお願いします。よろしいですか。現状の制度に問題がある、なおかつ景気の変動等影響を受けているということで、次期に向けて方式を検討して実証実験もやるということです。了解しました。次に1-3をお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

17ページのNo.1-3、サービスの向上ということで、業務処理の簡素化・迅速化ということです。数値目標としては、中退共事業においては受付から25日以内。建退共事業、清退共事業及び林退共事業においては受付から30日以内ということが数値目標として設定されております。

19ページ、これらの目標については上のピンクの所です。中退共事業については受付から支払いまで25日以内の退職金支給を行っております。建退共事業、清退共事業、林退共事業におきましても受付から支払いまで30日以内に退職金支給を行っております。また、様々な事務処理改善の取組を行ってきたところです。以上の取組によりまして、数値目標を達成しておりますので、自己評価はBとさせていただければと思います。以上です。

 

○今村主査

 御意見、御質問等いかがですか。これは量的な目標として日数を決めておりますが、これ以外に19ページにありますが、その他改善実績と。数値に見えないいろいろな努力をされているわけで、それと併せても目標達成以上ということです。よろしいですか。次に1-4をお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

20ページのNo.1-4、サービスの向上の2つ目の目標として、情報提供の充実、加入者の照会・要望等への適切な対応等についてです。評価の視点が3つ書かれております。ホームページの活用による情報提供の充実に向けた取組が実施されているか。コールセンターの充実等、サービスの向上のための取組が実施されているか。相談業務における質の向上に向けた取組が実施されているかです。

23ページ、これらについても、例えば、ホームページの活用による情報提供の充実については、地震等の災害発生時に、災害による被災者に対する罹災見舞いメッセージとともに、事業本部ごとに災害救助法適用地域の最新リストと、同地域に適用される特例措置の説明を遅滞なく提供しております。その他、サービスの向上のための取組、相談業務の充実を行ってきております。なお、前回のこの会議におきまして、右の下の青い所で、「ホームページからのアンケートフォームを基に相談業務の満足度を集計」とありますが、これについて時系列のデータはないのかという御質問を頂いております。時系列のデータを記載しております。いずれの年度においても「参考となった」という回答が8割以上となっております。以上、おおむね計画に沿った取組を行っておりまして、自己評価はBとしております。以上です。

 

○今村主査

 御意見、御質問はいかがですか。せっかく時系列でお取りいただいているのですが、例えば、ホームページの閲覧件数達成と書いてありますが、これはモバイルとPCサイトでどのくらい推移しているか分かりますか。当然、モバイルがずっと増えて、それに対応しておられると思いますが。特に建退共の場合、PCよりはモバイルという感じはあるかと思いますが、分からなければ結構です。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 今は残念ながらモバイルではなく、基本的にPCベースでの閲覧という格好になっております。モバイル対応等も今後考えていきたいとは思っております。

 

○今村主査

21ページにいろいろ、中退共モバイルサイトはリニューアルするなどと書いてありますが、努力はされているのかというふうに。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 モバイル用サイトも一応、構築はしているのですが、閲覧者数については、現状、PC用サイトと一緒に計算しておりますので、別々にお示しすることはできない状態になっております。またPDCAを回すために、そういった数字についても検討していきたいと思います。

 

○今村主査

 情報伝達を考えると、多分モバイルからアクセスする人のほうが圧倒的に多いかと思うのです。大学でもほとんどモバイルで、あんな小さな字でよく読めるなという感じでやっています。次期目標に入れるかどうかはまだ分かりませんが、加入者への情報に合わせるという意味でも重要な措置かと思いますので、是非、御検討いただければと思います。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 はい。

 

○今村主査

 よろしいですか。次に1-5をお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

 次に1-5、資料の24ページです。サービスの向上で、積極的な情報の収集及び活用ということです。評価の視点としては、関係団体の有識者から機構の業務運営に対する意見、要望等聴取し、ニーズに則した業務運営を行っているか等です。

26ページ、様々な情報を収集し反映等しておりますが、前回の有識者会議におきまして、退職金制度の実態調査の関係のところで、御質問を頂いております。この調査については、既加入企業などに対して、中退共制度のメリット・デメリット等を調査しております。その特徴的なところが御議論になったかと思います。少し分析をしたので御紹介します。

27ページ、中退共制度の導入理由を時系列的に追っております。導入理由の多いものは、退職金が確実に支払われる、国の制度で安心である、掛金が全額非課税、国からの掛金助成がある等々で、これらは安全確実性と、国の支援制度利用の主な動機になっています。いわゆる制度の在り方としては、国による制度であることが重要であることを示唆していると考えられます。一方、下の平成28年度に小さい丸が付いておりますが、予定運用利回りが良いのが割合的には低くなっております。運用ツールとしての役割については、さほど期待していないという感じのことがうかがえます。

28ページ、これは中退共制度への主な要望の推移を示しております。多いものとしては、色で示しておりますが、掛金増減額の柔軟性、掛捨・掛損の取扱い変更、懲戒解雇時の取扱い変更というものが多くなっており、こういうものが基本的に多いということです。前回の会議でも御議論があったかと思いますが、必ずしも契約者と被共済契約者との利害が一致するものではない項目が多くなっております。

 平成28年度の調査で2位になっている「PR活動の強化」がかなり出ております。これについては、やはり従来型の周知活動には限界があるのではないかということを示唆しておりまして、次期中期計画における課題として、機構の対応として、新技術の活用、財形制度との連携強化、機構全体の知名度向上への取組などをやっていく必要があるとともに、更に厚労省からの政策的な支援が有力な支援材料になるのではないかと考えております。いずれにしても、24ページ、評価の視点を踏まえながら取組をやってきたということで、法人の評価としてはBとしております。以上です。

 

○今村主査

 それでは御意見、御質問等ありましたらお願いします。

 

○宮崎構成員

 御説明ありがとうございます。資料1-128ページですが、これはアンケート結果として、事業主さんから多い要望は2年連続して、懲戒解雇時の不支給が出ているようですが、私が知る限り、地方公共団体などがやっている退職金共済制度では、懲戒解雇の場合には満額支給はなかなか難しいですから、7割とか8割減額して支給している共済もどうもあるようです。この不支給に関しては、現状、法令上、ないしは規約上どういった課題があって、この辺の対応が難しいのか、現状だけ少し教えていただければと思います。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 現状でも、全く減額がないということではなく、大きく3段階の減額が設定されております。懲戒解雇の理由によって3割減、5割減、8割減という格好になっております。ここに出ている懲戒解雇時の取扱い変更については、支給額をゼロにする扱いを加えてほしいという要望です。例えば社内の退職金規程では、懲戒解雇の場合は全く支払わないという規程になっているので、制度上の整合性を保つため、全く支給しないという取扱いを可能にしてほしいという要望が多いということです。

 

○宮崎構成員

 よく分かりました。

 

○戸田構成員

 御説明ありがとうございます。7月のこの会議の場からいろいろと資料を御準備いただき、本当に分かりやすく、大変参考になります。今の御質問と関連するのですが、28ページの調査結果を拝見しますと、平成28年度で要望として任意にPR活動の強化が出てくる背景としては、やはり、社労士の方に聞いているから、余り社労士の方が御存じないので、出てくる可能性が高いのではないかと思います。懲戒解雇の話もそうですし、私個人的には、民間企業が懲戒解雇時に退職金を不支給にするのは当たり前の話ですが、やはり国の制度としてやっているものですから、そういうバランスを取ることは重要であると考えます。資源の限りもありますので、全ての声には十分に応えられないという中では、そういった声を聞きながら、機構として改善すべき点を考えていくところがあるのではないかと思います。それに関連して質問ですが、平成28年度の実態調査の中で、社労士の方にアンケートを取った背景で、なぜ社労士の方にお伺いしているのか教えていただければと思います。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 社労士の方については、加入者に中退共制度を勧めてくれる非常に有力な窓口の1つです。一方、社労士の方々自身が運営する事業所自体が、中退共の加入対象でもあるわけです。そういう意味で、中退共制度を顧客の立場と紹介者の立場と両面から見ていただいているということで御意見を伺ったということです。

 

○今村主査

1つだけ気になるというか、27ページの右下の「予定運用利回りが良い」「運用環境が的確に認識されている」。これは利回りが良いということでよろしいのですか。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 回答の内容としては、「どういう理由で中退共に入ることを決断しましたか」という質問で、その中から選んでもらうときに、現在の1%というのは、何と比べるかにもよるのですが、現状安全な運用方法ということで、例えば郵便貯金と比べると非常に利回りが良いわけですが、そういったことを理由に加入している共済契約者はほとんどいないということだと理解しております。

 

○今村主査

 そうですね。良いということが低いということで、諦めに似た気持ちで認識されているという解釈ですか。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 というか、かつての4%、5%のときであれば1%では低いということだと思いますが、現状であれば1%はむしろ高い利回りであると思われます。しかし、利回りが高いから入っているという回答ではないと。余り利回りに重きが置かれているのではない、ということかと思っております。

 

○今村主査

 分かりました。的確に認識されているというのは、みんな加入者が資本市場のことをよく理解して認識しているかと受け止められかねないので少し気になっただけです。ありがとうございます。よろしいですか。次に1-6をお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

29ページ、加入促進対策の効果的実施ということです。数値目標については、新たに加入する被共済者目標数の平成29年度までの合計が記載されております。年度ごとに数値を設定しております。数値目標としては、このような形で設定されております。この数値目標に対して、31ページ、上の箱の所です。それを年度ごとに割り振った加入目標数と実績は、年度ごと達成している状況です。これについては、様々な加入促進対策を実施しております。

 加えて32ページ以降で、次期の中期計画の目標設定における環境について、見ていきたいと思います。まず絵を見ていただきたいと思います。中小企業数は青の線ですが、これは随分下がってきている。それと同じようなペースで、中小企業と同様に中退共の赤の線ですが、在籍の事業数も減少の傾向をたどっております。しかしながら、例外的に違う部分があります。例えば、対象中小企業の定義が拡大している時期。それから、適年からこちらに移行している期間がありますが、ここはやや緩やかになっているということで、何らかの制度変更が実施されているときには、私どもの中退共の共済事業数の推移も変わってきているということが見て取れるかと思います。

33ページ、中小企業の経営者ですが、下のグラフ2つを見てもお分かりかと思います。高齢化が進んでおりまして、団塊の世代の経営者が引退時期を迎えるということで、事業継承の問題から脱退数もかなり増加してくる可能性が懸念されるところです。

 もう少し分析的になりますが、34ページ、先ほどの適年からの移行で緩やかになったと申し上げましたが、新規加入事業所数の推移は、青の所が適年からの影響です。適年からこちらに移行したわけです。年度によって変わりますが、3割ぐらいまでに達している時期もあるということで、かなり下支えをしてきたのではないかということは見て取れるかと思います。

35ページ、中退共制度の新規加入事業数の業種別の構成比の推移を見ております。一番上のサービス業の割合が近年増加しております。一方で、商業が減少しております。製造業については、適年の移行期間中、顕著な増加が見られております。また、昨今の景気要因と思われますが、建設業がこの期間、増加していることは見て取れるかと思います。

 先ほどの適年の関係の分析になりますが、36ページ、今度は加入者数ベースで見たものです。紫の所が新規の合計プラス追加の合計です。オレンジの線が新規、適年の分を除いたものと追加で、この差が適年の新規分の影響ということで、加入者数においてもかなり影響が大きかったのかと思います。追加の分は分けることができないのですが、追加の分についてもかなり影響があったのではないかということで、制度的な影響は非常に大きかったことが伺えるのかと思います。

37ページ、景気動向はよく御存じかとは思いますが、労働需給の関係、雇用判断DIなどにおいても人手不足ということです。ですから、次期の中期に当たっては制度的な影響、景気要因、それらを勘案しながら合理的な目標設定が必要ではないかと考えており、また効果的な加入促進対策も必要ではないかと考えております。いずれにしても、29ページ、数値目標は達成しておりますので、計画どおりということで自己評価はBとさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。それでは御意見、御質問をお願いします。いかがでしょうか。

 

○戸田構成員

 詳細な説明、ありがとうございました。なかなか目標設定の数字の根拠というのは、よくある考え方としては過去を踏襲するということで、それはそれで良いかと思います。このように分析的に今後の退職、例えば中小企業の経営者が事業継承せずに廃業するですとか、そういう影響ですとか、逆に景気要因によって加入者がどれくらい増えているのかというところを分析されているので、今後の見通しみたいなものも立てられるのかなということを、お話を伺っていて考えました。正に民間企業で予測するような形をやっていらっしゃっていて、このように考えていらっしゃるのは非常にいいことだなと、お話を伺っていて思いました。

1点、質問というか見解をお伺いしたいのですが、加入者が新規に加入する、若しくは脱退するという、こういった動きを見ながら、今後、どこまで予測ができそうかと。例えば次期の中期計画を立てる際に、そういったことも踏まえながら見ていくということが、もしできれば、それは素晴らしいことだと思うのですが、どの辺まで予測できそうかと考えていらっしゃるか、という点について教えていただければと思います。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 お答えします。正に今、御指摘いただいたように、今回これを出させていただいたのは、目標が達成できたときに、よかったよかったというのではなくて、何でできたのかなという、成功の要因というのをちゃんと分析しないと、次に活きないと。かつ、今回、この中期計画の評価の目的として、1番が評価だと、2番が次の中期計画に活かすのだということで、是非ここを見ていただきたかった。

 今の御質問について言えば、このまま行くと相当マイナストレンドであります。37ページの景気動向によって、当たり前なのですが、中小企業の経営者から見れば、景気が良くなって人手が不足になりますよと。そうすると、こういう従業員に対する福祉の対策を大きく訴求して人を取っていきますと。まあ、そうなのですが、民間であればそれで終わりなのですが、やはり行政ですから、これは私の権限を越えますが、景気が悪いときほどセーフティネットとして、こういうものがインセンティブとして働く施策がないかなと思っています。これは厚生労働省さんと、これから相当お話をしていくことになると思いますが、それがないと次回の中期計画は、かなり厳しい数字になると。

 一方、民間であれば、そうは言ってもある程度の数値、アスピレーション目標を掲げてやっていくわけですが、非現実的な目標を掲げると、それが退職金の給付の資金繰りにヒットしてきますので、それもなかなか難しいだろうなということで、次回の中期計画について言えば、ここの目標をどう設定するか。それはこのままで行けばマイナスですと。それに対して、どういう施策でもって打ち返していくかと。その施策をやるためには、どういう資源が必要かと。人・物・金をどのように入れてくるのだと、こういうことになってくるのではないかと思います。

 

○戸田構成員

 ありがとうございます。正に理事長の明解なお答えを頂いて、特に何もコメントすることはないのですが、あえて付け加えさせていただくと、退職金をどう捉えるかというところは、やはり重要なポイントだと思っています。先ほど理事長がおっしゃったように、人手不足の中で中小企業が福利厚生を充実させるために、中退共に加入されるという話もあるかと思います。そもそも退職金を考える上では、ある程度勤続されている方が離職しないですとか、そういう離職防止効果というところは、1つの大きな効果だと思いますので、何かそういうところを踏まえて、是非魅力をアピールしていただければなと思います。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 ついでに、せっかくの機会ですから、これも私の権限を越えますが、要は法律で縛るのはなかなか難しいと思うのです。退職金制度自体が任意ですから。最近、金融庁が出しているコードというのが、法律ではなくてプリンシパルコードというのが、1つの解決策ではないかなと思っていまして、それを今後議論していくということだと思います。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。今の話にも関連するのですが、やはり退職金というものが、何となく永年勤続したときの退職金みたいなイメージがあるとしたら、恐らく意識を少し変えなければいけないのかなと。やはり、これから正社員と非正規の中間ぐらいのところの、非常に流動的な労働者が、IoTAIなど、いろいろな産業構造の変化もあって変わっていくと思うのです。お伺いしたいのは、戦略的に今まで力を入れてこなかったけれど、もう少し力を入れて加入を促進したいというところがあるのかどうか。具体的には、例えばこれは産業別、大分類でやっていらっしゃいますが、もう少し中分類で見ると、例えばサービスの中でも「その他サービス」というのは、意外とIoTとかAIBtoBのサービスなどがいっぱい入っています。そういう意味では女性が活躍している所とも言えるのですが、いわゆる労働集約的なところでは、なかなか女性が活躍できない所が多いのです。逆にBtoBやコンサルみたいな所では女性が活躍しているとか、そういった産業構造、それから就業構造などの将来を見越して、そこにうまくフォローアップしていくような、そういう機動的、柔軟な経営戦略もあってもいいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 確かに産業構造がどんどん変わっていく中で、新しい産業の就労実態にどう合わせていけるかというのは、非常に悩ましいところだと思っています。先ほど、過去において中小企業の定義の変更があったと申し上げましたが、具体的には、主なところはインフレ率を勘案した資本金の水準の変更だったのですが、1つだけ人数の変更があったのです。それはサービス業でして、上限を50人から100人に引き上げております。これは、サービス業における雇用者数というのが、だんだん人数が多い産業が増えてきたということで、実態を勘案して変更したということです。こういったような変更が行われると、私ども、非常に取り込みやすくなるなというのはあるかと思います。

 一方で、どうしても今、今村先生がおっしゃったように、退職金というのは永年勤続表彰的なというか、ある意味、勤続年数が長いほど報われるという側面があります。私どもの支給方式自体がそうなっているわけなのですが、そういった中で非常に回転率の早い、新しい産業というのを、どこまで取り込んでいけるかが、今後の私どもの課題の一つかなと思っています。

 ただ、その中で1つ言えるのは、ほかの民間がやっているような退職金制度ですと、掛損でなくなるまでに20年掛かるわけなのです。私どもは2年間ぐらいで元が取れますので、そういう意味では比較していただければ、比較的回転率の早い産業でも退職金制度として利用していただけるのではないかなと思います。余り比較広告みたいなことをやってはいけないのでしょうけれど、そんなところをアピールしながら加入促進をやっていきたいかなと思っています。

 

○今村主査

 是非、露骨な比較広告にならないように、だけどメリットがありますので、そういうことで御努力いただければと思います。よろしくお願いします。次に1-7をお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

38ページを御覧ください。財産形成促進事業の関係でして、数値目標を7つほど設定させていただいています。財形取扱店において借入申込書を受理した日から16日以内に融資の貸付決定を行ったかなど、7つの数値目標が設定されています。

41ページの一番左端ですが、貸付決定に当たって、16日以内に貸付決定をしています。それから、ほかの数値目標として、その下の黄色の所ですが、アンケート調査の満足度、毎年80%を超えています。数値目標の関係でいきますと43ページですが、ホームページのアクセス件数が20万件以上となっています。44ページにも数値目標が書いてありますが、これらの数値目標等も達成しています。下のほうにありますが、財形システムの再構築等もしています。

おおむね数値目標を全て達成していますので、38ページの自己評価をBとさせていただいています。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。御意見、御質問をよろしくお願いします。

 

○戸田構成員

 細かいことかもしれませんが、43ページのホームページのアクセス件数の資料を拝見しますと、ホームページのアクセス件数が平成28年では約55万件と、ほかの年度と比べてかなり上昇しているように見えるのですが、何かこの背景みたいなものを、お分かりの範囲で結構ですので、教えていただければと思います。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 それにつきましては、正にそのページの下に薄いピンクの枠ですが、平成28年度に周知・広報キャンペーンというのを実施しています。これは新しい試みでして、広告代理店に依頼しまして、集中的に、12月から1月にかけて、様々なメディアを使って広報戦略を展開しました。その結果として、ホームページへのアクセスが増えました。ある意味、うまくいったという感じですので、これに味を占めて、また今年度についても検討したいと思っているところです。

 

○戸田構成員

 すみません。7月の会議のときにお伺いしたようなことで、大変失礼しました。とんちんかんな質問で失礼しました。

 

○今村主査

 これも、既に何回も申し上げているのですが、リーフレットを置くだけで情報提供という判断はどうかなと思うのですが、目標設定としてアウトカムがどのぐらいあるのかというので、例えばよく民間の企業だと、何を見てこちらに申し込まれましたかみたいな、そういうメディアをチェックしてやるという形式、それはやっていらっしゃらないのですか。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 それはアンケート調査の中で、どんなものを見てというのをやっていますが、合わせまして、御指摘いただいております中退共とのコラボということの中で、中退共が毎年実施しております、実態に関する調査がありますが、そこに間借りをさせていただいて、財形に関する認知度とか、そういったものを調べているところです。そういったところでのアンケートの結果なども含めて、また周知・広報を変えていきたいと思っています。

 

○今村主査

 是非、うまい具合に活用していただければと思います。ほかにはいかがでしょうか。ありがとうございます。それでは、次の事項に移りたいと思います。次は業務運営の効率化に関する事項、財務内容の改善に関する事項について議論したいと思います。先ほどと同様の流れで、法人からポイントを絞って、ごく簡潔に御説明いただき、その後、質疑応答ということでお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

No.2-1の関係ですが、理事の西川から御説明させていただきます。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 それでは、御説明させていただきます。まず48ページですが、こちらの資料については710日の本会議で既に御説明をいたしましたので、御説明は省かせていただきます。前回は主に情報セキュリティ対策について詳しく説明しましたので、本日はガバナンス強化施策のもう1つの柱である資産運用関係について、ポイントを御説明したいと思います。

 ただ、その前に1つだけ、情報セキュリティ関係で追加で御説明したいのですが、56ページに飛んでください。ほかの項目に入ってしまうのですが。前回の本席上で理事長が若干言及しましたが、本邦金融機関のシステム関連経費については、大体資金量の0.2%程度に収斂するという調査結果があります。このことは、金融業を営む場合には、その程度の資金をシステムにつぎ込まないと、安定的な業務運営に支障が出るということかと思います。

 資金の0.2%といいますと、資金量5兆円の当機構であれば、年間100億円になるということですが、当機構は支店網があるわけでもありませんし、決済サービスをやっているわけでもありませんので、そこまで必要と申し上げるつもりはないのですが、それにしても現状、こちらに書いてありますとおり、法改正の対応等で膨らみました2015年、2016年辺りで1213億円。2017年は業務系システムと情報系システムの物理的分離等をやりましたが、それでも18億円。通常ですと6億円程度ということですので、一桁違うような数字になっているということです。

 もちろん、やるべきことをやって安く上がるのであればいいのですが、実態としては課題が後に積み残されています。その典型的なのが中退共システムの再構築でして、次期の中計では、これが私どもの事業の1つの大きな目玉になると思っていますが、既に現在、この中退共システムのプログラミング言語がCOBOLということで、相当待ったなしの状態に追い込まれているということです。本来であれば、もっと前に余裕を持って、再構築をしているべきであったと思うのですが、そんなところが、やはりシステム化投資の不足、遅れということを如実に現しているかなと考えています。今後、どのくらいコストが掛かるかということは、なかなか予想が難しいのですが、いずれにしても今後、サイバーテロの脅威がどんどん高まっているということを考えると、一定程度の増額は必要になるのかなと考えているところです。

 それでは、今度は資産運用に戻らせていただいて、51ページにお戻りください。昨年度の資産運用委員会におきまして、主に中退共の基本ポートフォリオ見直しの過程で取り上げられた論点について、御紹介をさせていただいたのが51ページです。機構の本質ですとか、責務や立ち位置、それらを踏まえた基本方針といったものをよくカバーしているので、御紹介する次第です。

 この資産運用委員会において、まず初めにかなりの時間を割いて御議論いただいたのが、上のオレンジ色の四角ですが、当機構の特性についてです。従来、重要方針の決定であっても、他の類似組織の例に倣うという方法ですとか、あるいは現状を是認して、環境変化分の微調整を行うといったやり方がよく取られてきたわけです。しかし、本来、基本方針というものは、各組織の特性に根ざしたものであるべきだろうという考えから、今回の基本ポートフォリオの見直しについては、まず当機構の特性についての認識を、委員の方々に共有していただくことから開始しました。その上で特性を踏まえて、あるべき姿をゼロから構築するという手順を採用したわけです。かなりの時間と手間を要する方式ですが、そのために資産運用委員の方々には、年間9回、延べ20時間以上の審議というハードスケジュールを容認していただいた次第です。

 当機構の特性については、第1GPIFが賦課方式で集められた資金を運用原資としているのに対して、私どもは積立方式の資金を原資としているところが大きな特徴です。そのほかにも資産運用以外の収益源がないということ。それから、政府による損失補填もないということ。更には中小企業従業員の退職金原資ということですので、毀損することが許されない資金であるということが、私どもの大きな特徴であるということについて、認識を共有していただいた次第です。その共通認識を踏まえて、運用上の基本原則にある、安全かつ効率というのを解釈しますと、必要な収益を最低限のリスクで確保するということではないか、ということになったわけです。これが下の緑の枠の中の(1)に書いてあることです。

 では、必要な収益とは何かということですが、これは現在の私どもの累積剰余金の水準、あるいは市場環境の変化等を踏まえると、リスクを極力抑制した予定運用利回りプラス業務経費率に相当する水準が、私どもにとっての必要な収益だろうという認識を共有させていただいたということです。

 また、金融業を行う独立行政法人として、すなわちお預かりした資金を毀損することが許されない機関として、金融業務の大原則である、リスクテイクは累積剰余金の範囲内に留めるべき、という認識も共有していただきました。一見、当たり前のように思われるかもしれませんが、従来、必ずしもそうではなかったというのをお示ししたのが、次の52ページのグラフです。これは予定運用利回りと国際金利の推移、更に累積余剰ないし欠損金の推移と、基本ポートフォリオという概念が導入された2000年以降、それぞれの時点での基本ポートフォリオが抱えていたリスクの大きさを比較したものです。これは黄土色といいますか、オレンジ色の棒グラフがリスクの大きさです。

 平成12年度以降、一貫して累損、緑の線の棒グラフを抱えながら、リーマンショック発生時には3,000億円程度の損失が発生するリスクを抱えた基本ポートフォリオで運用を行っていたということが、御覧いただけるかと思います。ちなみに、先ほどからリスクと申し上げているのは、それぞれの時点での基本ポートフォリオの内容の下で、もしサブプライムショック、リーマンショックと同じような相場変動が起こったと仮定した場合に算出される想定損失額というのが、ここで言っているリスクの大きさということです。

 そのリスクが具現化したのが、正に2007年、2008年のサブプライム、リーマンショックのときではないかと思っておりまして、2002年の予定運用利回り引下げもあって、ほとんど解消しかけていた累損が、一気に3,500億円まで拡大したというのが、御覧いただけるかと思います。その後も累損の早期解消を目指すという名目で、累損を抱えながらリスクを取り続けていたということが御覧いただけます。その後、アベノミクス等もあって、現在、累積剰余金の状態にはなっているのですが、これは結果オーライの世界でして、普通であれば累損を抱えた状態でのリスクテイクというのは、考えられないことだと思っています。

 そうした状況に終止符が打たれたのが昨年度でして、何度も申し上げますが、201710月に設置された資産運用委員会では、リスクテイクは累積剰余金の範囲内という基本原則が確認されまして、基本ポートフォリオについてはその結果として、リスクを抑制するような格好で見直されたということです。さらに、資産運用委員会の中では、中期的な財務の健全性を脅かす存在として、付加退職金制度の問題点も指摘されたところです。従来、こうした制度案件は労政審によって審議・決定されるものであって、私どもとしては所与のものとしてきたわけですが、今回は既存の制度を所与として執行に専心するという従来の枠組みを越えて一歩踏み込んだ形です。そうしたことが可能になったのは、労政審との間に、両方に出席されている勤生課長をブリッジ役として、情報提供ルートが確立されたことからです。制度運営上、また、機構のガバナンス上も、これは画期的な出来事だと考えているところです。

 それ以外の画期的なこととして追加しますと、金利シナリオの選択があります。従来は政府系機関として、内閣府の提示するシナリオを採用していましたが、近年、見通しが継続的に上振れていることや、私どもで必要利回りをぎりぎりの期待収益率を設定することにしてしまったということも踏まえ、金利の上振れリスクと下振れリスクの影響を比較衡量して、金利横ばいリスクを採用したところです。

 今後の課題としては、資産運用業界のキーワードとなりつつありますフィデューシャリデューティというものがあります。これは専ら受益者の利益を勘案するという考え方を踏まえた、運用姿勢や運用体制の在り方について、あるいはスチュワードシップコードですとか、ESG投資の在り方等も絡めて、議論を深めていきたいと考えているところです。中小企業の従業員である被共済者の利害と公的機関としての使命を、いかに一致させるかといった点がポイントになろうかと考えているところです。また、超低金利の継続など、難しい投資環境が続く中で、情報セキュリティ対応等でコストがかさむ中、必要な収益水準が上昇することも予想されるため、リスクをできるだけ抑制するための体制整備といったものも急がれると考えているところです。最後に、本項目に関する中計期間中の暫定評価については、前回会議での議論も踏まえて、法人の自己評価をAとさせていただいた次第です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。かなり詳細にわたって、機構の御努力を説明していただきましたが、御意見、御質問等がありましたらよろしくお願いします。前回、情報セキュリティに関する議論を随分させていただきました。十分承知しておりますが、それ以外にも御意見、御質問等がありましたらどうぞ。

 

○戸田構成員

 この点は本当に理事長の強いリーダーシップの下、非常に機構としては努力されているということを感じておりまして、その意味では高く評価できるところだと思います。前回の7月の議論で、いろいろとこちらからも申し上げて恐縮なのですが、こちらからの意見も踏まえていただいて、評価していただいているということは、本当に有り難く思っています。

1点確認といいますか、もし御存じでしたら教えていただきたいのですが、52ページの累積剰余金のグラフの推移で、このオレンジのグラフがリーマンショック時を想定したときの損失ということです。過去、平成12年から見てみると、大きくオレンジの幅自体が多少変動しているとは思うのですが、年によってそれほど差はないのかなと。そうすると、もちろんその当時のポートフォリオをどう組むかというところもあると思うのですが、余り平成12年から、それほど大きくはポートフォリオを変えていないという理解でよろしいでしょうか。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 先ほども少し申し上げましたが、大体は基本ポートフォリオの見直しといっても、その見直しまでの期間に発生した分散ですとか、期待収益率の変化を踏まえて、比率の微調整程度をやっておりましたので、基本ポートフォリオの内容自体がドラスティックに変わっているわけではありません。したがって、想定損失の額もそんなに大きくは変わらないという、そんな格好になっているのだと思っています。

 

○戸田構成員

 そうしますと、例えば直近では、専門家の方を委員会という形で導入されているかと思うのですが、そこでも微調整に留めているという、そういう理解でよろしいでしょうか。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 今回の基本ポートフォリオの見直しでは、そこを大きく変えておりまして、ちなみにですが、もし今回の新しい基本ポートフォリオで、リーマンショック時のリスクの大きさを測ると2,000億円程度になります。したがって、半分近くまで減らすような基本ポートフォリオの組み方になっているということです。

 ただ、それでは非常にリスクが小さくなったので余裕が出来たのかというと、そもそもリスクの計り方が違うのではないかとの考え方もあります。即ち、リーマンショックという、最近あった一番大きなイベントではなくて、もっと統計的にしっかりした計算をすべきではないかということで、この赤い縦線の四角が出ていますが、これはモンテカルロシミュレーションの結果として、100年に1度起こり得るような事態の場合に、どのくらいの損失が出るかと。それくらいのことを想定した上で、累積剰余金を積み上げていかないと、安心とは言えないのではないかという、そういう議論をしているところです。

 ちなみに、この幅は大体4,300億円くらいになりますので、私どもは今、この程度の累積剰余金が必要と考えております。

 

○戸田構成員

 ありがとうございます。

 

○宮崎構成員

51ページの運用上の留意点の(3)です。「付加退職金制度の問題点(非対称性)」と記載しておられて、これは私もずっと課題なのかと思うところなのですが、予定運用利回りを上回った場合は超過付加退職金になって、下回った場合には制度上特段措置がないということで、これはちょっと長期的な運用を考えていくと何かしら制度的な対応が今後必要なのではないかと思うところなのですが、法改正とか何かしら今後に向けて検討されている内容とかがもしありましたら教えていただければと思うのです。どのような状況でしょうか。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 勤労者生活課長の平嶋です。この付加退職金制度というのはこの制度ができた当初からあったものではなくて、以前、国債運用利回りを予定運用利回りが大きく上回って財政赤字が拡大していくような局面の中で、予定運用利回りを下げたときに、労政審の議論の中で、予定運用利回りを下げることは了承するのだけれど、それを上回った収益が得られた場合には、適時に貴共済制度に還元できるようにこの制度を設けるべきだという意見がありまして創ったものです。そういった経緯を踏まえてずっと存続している制度です。付加退職金が予定運用利回りを上回る収益が出たときに、すぐ払うことは今はしておりません。付加退職金の支給ルールを労政審で決めて、ここまではバッファーとして取っておきましょうというのを作って、それを更に超えた場合に支給しています。

 

○宮崎構成員

 そのまま丸々払うわけではないことは理解しました。やはり、実際どうなるかと先々を予測していく中で、先ほどのシミュレーションではないですが、実際どの辺が安全なのかというところを今後、審議会等でよく検討を頂いた上で、必要があればより安全な形に見直しをお願いしたいということです。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 今年はちょうど中退の財政検証の年に当たっておりまして、付加退職金のことについても議題の大きな柱になると思っております。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 今、宮崎構成員から正にお話があったとおり、従来は労政審で検討してくれているのですが、実際のリスクのベースは、実はこちらに数字がかなりあります。もちろん厚労省にももっとたくさんあるのですが、我々のところで、今の状況だとこういうリスクがありますよというのを一応お示しして、それでもリスクを取ったほうがいいのではないかと言われれば従わなければならないし、それほどリスクがあるとは知らなかった、それはやめようよというのならやめてくださいと、こういうことを平嶋課長にブリッジ役としてお願いをしたということで、労政審からも結構評価はされております。

 それから、今日あえてここを説明させていただいたのは、前回、情報セキュリティについては皆さん本当にリスクの所在を分かっていただいたのだと思うのですが、情報セキュリティはあくまでも必要条件です。資産運用は、この資産運用から出てくる利益は退職金の原資に大半なりますが、我々の事業を行っていく上での経費もこれで賄っておりまして、ここを失敗すると大変なことになるということです。実は、独立行政法人全部一律のパターンで中期計画をこういう表でやらざるを得ないのですが、やはりうちの機構の最大の経営問題は何かと言ったら、情報セキュリティと資産運用なのです。さらに、それができた上で加入促進があり未請求があるということで、今まで余りこの辺については御説明ができていなかったので御説明をさせていただいたということです。この2つとも非常に日進月歩の終わりのない戦いですから、今回できたからこれで終わりというわけではなくて、これからもずっと息長くやっていかなければいけないということもありまして、今回お時間を頂戴して御説明をさせていただいたということです。以上です。

 

○今村主査

 いかがですか、よろしいですか。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 あともう1つすみません。先ほど理事長のリーダーシップと言っていただきましたが、私は人望だと思っているのです。

 

○今村主査

 前回は情報セキュリティ、今回は資産運用と。例えば情報セキュリティの情報漏えいとか、リーマンショッククラスの事件だと両方とも予測できない、なおかつ起きたら大変なことになるという点では全く共通でありますが、逆に、組織の目標としては設定しにくいという面があるわけで、それをどうやって備えていくかということを機構の運営の目標としてどう設定していくかというのは大きな課題だと思うのです。その中で、例えば51ページ、前からお伺いしているように、リスクテイク体制としてリスクが増大するのはやむを得ないだろうと。それに対して人材でどう対応するかというときに、理事長は人望だと、人望で対応するとおっしゃっていましたが、それを支える人材が機構の中にも必要かと思います。先ほど来聞いていると、これは評価の仕組みに応えるためにやむを得ないところもあるのですが、第三者委員会とか外部の専門家とかとおっしゃって、いかにもしっかりとした知見を得てやっていると見えるのですが、逆に心配なのは、機構の中にそれだけの人材があるのかどうかということです。したがって、制度、人材、設備の強化が必要と書いてあるのですが、では機構の中にどれほどインテリジェンスとかエキスパタイズが蓄積されていくのかという人材計画とか、それから今後のことで言えば、グローバルにどういうリスクを見通すのかというような人材とか、それは第三者だけで、外部に全て依存していいのかということになります。最終的には、理事長が非常に御見識をお持ちですので全て的確に判断をしてくれると現状では期待できるかもしれませんが、持続可能性を考えると、そういう人材を育てていかなければいけないと思うのです。その辺はいかがでしょうか、機構としてどうお考えになっているか。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 お答えします。正におっしゃるとおりなのですが、ここで気を付けなければいけないのは、よく勘違いされるのですが、中退共はリスクを取っていないと思われるのですが、十分取っているわけです。それは、現代ポートフォリオ理論に基づいて取っていると。ですから取っているのです。したがって、それを取るに当たり、ふさわしい人材養成は必要だし、設備も必要だし体制も必要だと。ただ、例えば今回、基本ポートフォリオをシミュレーションするに当たって、これはコンサルタントを使っているわけです。なぜコンサルタントを使っているかというと、人材もそうなのですがデータベースがないからなのです。

 

○今村主査

 なるほど。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 それは外注せざるを得ない。それから、インハウスで投資することは考えられませんから、我々の場合やはり委託運用でやっていくのが前提です。そうすると、どれぐらいの規模が正しいかというのはなかなか難しいものがありまして、それから、どのくらいのレベルの人、突出して高いレベルの人を持って来た場合にどういう問題があるかとか、その辺のシミュレーションは相当していかなくてはいけなくて、今のままでいいとは思っていませんが、ここのところは相当慎重に考えないといけないかなと。

 ちなみに、私も銀行におりましたし、西川も日本銀行にいましたが、我々2人とも資産運用については全くアマチュアです。システムについてもアマチュア。もちろん、この機構に来てから相当勉強はしましたが。ですから、マネージメントと執行の所は多少違うのだと思うのです。そこを埋める質をどうやるかというのは、取り方も含めてこれから非常に大きな経営問題にはなっていくかと。当然のことながら相当お金もかかると。ただ、闇雲にお金をかけたからうまくいくという話でもないということで、それはもう少しお時間を頂きたいと思うのです。問題意識は十分分かっていて、一番下のそこに書いてあるということです。

 

○今村主査

 なるほど、分かりました。ゴールドマンサックスぐらいの規模になれば全てを賄うことは、内製化できるのでしょうけれど、機構の規模でどこをどのように特化してやっていくかという戦略を是非御検討いただいて、よろしくお願いします。いかがでしょうか。よろしいですか。では次、No.2-2にいきたいと思います。よろしくお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

 資料53ページをお開きください。数値目標については、新規業務追加分を除いて一般管理費については、平成24年度予算額に比べて15%以上、それから業務経費については、平成24年度予算額に比べて5%以上の削減が行われているかという数値目標が設定されております。55ページの棒グラフを御覧ください。平成28年度決算において、一般管理費ですが、目標15%以上に対して20.5%、それから業務経費については、目標が5%以上というところですが、平成28年度決算額として14.4%減ということになっております。様々な努力をしてそのような結果となっているところです。戻って53ページです。こういった数値目標を達成しているということで、自己評価はBとさせていただいているところです。

 

○今村主査

 御意見、御質問等ありましたらお願いします。よろしいですか。では次、No.2-3に行きたいと思います。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

 次、No.2-357ページをお開けください。契約の適正化の推進というところです。数値目標はありませんが、評価の視点として、ここにあります調達等の合理化計画に基づく取組を着実に実施しているか等々です。59ページです。上の緑の箱に書いてありますが、調達等合理化計画に基づく取組として、調達等合理化計画は契約監視委員会による点検を受けた後に決定しています。その合理化計画を推進するため合理化検討チームを機構内に組織し、決済の回付前に役員及びチームに事前説明をする場を設けチェックを受ける体制を確保するなど、様々な取組をしております。その下の随意契約以外の契約を含めた競争性・透明性の確保、それから監査の実施については、監事による業務監査や会計監査人による監査も受けております。以上、57ページです。おおむね計画どおり実施しているということで、法人の自己評価についてはBとさせていただいているところです。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。御意見、御質問等ありましたらお願いします。59ページの随意契約のところは、今期はこれで順調に推移ということなのですが、当然、システム更新で、以前からこの機構で議論になっていますが、レガシーシステムを受注できる業者は限られているので随契にしているという御説明が従来からあったように記憶しております。COBOLが分かる企業はそれほどいないということで、安易に随意契約でやるということではなくて、やはりその辺の透明性をきちんと確保していただければ、時期に関することかと思いますが、よろしくお願いします。よろしいでしょうか。それではNo.3-1に行ってよろしいでしょうか。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

 それではNo.3-1については、理事の三富から少しお時間を頂いて丁寧に御説明をしたいと思います。よろしくお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構理事(三富)

 それでは60ページ、累積欠損金が生じております林退共事業については、累積欠損金解消計画に基づいて年度ごとに9,200万円解消することとされております。この問題については、累積欠損金が発生した平成8年当時まで遡って御説明したいと思いますので、64ページをお開きください。これは、累積欠損金の推移を新規10年国債金利と予定運用利回りの変遷との関係においてお示ししたものです。グラフの左側、累損が発生した平成8年度以降、国債利回りの低下といった市場の動向に即応できずに予定運用利回りの引下げが遅行し高止まりする中で、平成15年度に予定運用利回りが2.1から0.7に引き下げられるまで累損が拡大した状況が御覧いただけると思います。そうした中で、平成17年度に策定された累積欠損金解消計画においては、平成16年度末の累損16.5億円を年間9,200万円ずつ削減し、第4期中期計画終了時、平成34年度末までの18年間で解消することとされております。

63ページの表はちょっと見にくいので大きなA3版で卓上に御用意していますので、その表を御覧ください。一番上の表が運用実績、そして2番目の表が新規10年国債の利回りと予定運用利回りの推移、そして3番目右側の小さい表が平成26年の財政検証等を踏まえて策定された将来計画、下から2番目の表が累積欠損金解消計画の内容、そして一番下の表が運営費交付金、国庫補助金の推移等をお示ししたものです。この計画が策定された平成17年当時の運用環境は、上から2番目の細長い表にありますように、新規10年ものの国債の利回りが1.77%、予定運用利回りが0.7%でしたので、全ての資産をリスクフリーの10年もの国債で運用した場合でも年1.4億円程度の剰余金が見込まれ、また一番下の表にありますように、当時運営費交付金も約1.5億円ほど頂いております中で、年間9,200万円の累損削減の可能という見通しを立てたわけです。しかしその後、国債金利の一層の低下と事業仕分けによる運営費交付金が平成21年度で廃止されたという想定外の環境変化が発生したために、当初目標としたペースでの累損削減が困難となり、今後の市場環境によっては制度の安定的な運営にも支障が出ることが懸念される状況となりました。平成17年度以降の約10年間における10年ものの国債利回りの低下幅が1%以上になりましたので、この金利低下、それから運営費交付金の減額ということで、毎年の累損削減目標額を上回るマイナスのインパクトを生じていたことになります。

 こうした状況を踏まえて、平成26年度に中程の表のように財政検証が行われ、同年12月に労政審の中退部会の取りまとめにおいて、制度の安定的運営のための一連の改善策がパッケージとして示されました。62ページにこれらの改善策の内容をまとめておりますので御覧ください。

1、予定運用利回りの引下げと掛金日額の引上げ、これはそこにありますように実に12年ぶりの実施です。2、業務費用の削減については、機構事業本部のみならず各都道府県支部においても委託費の節約等を受容していただきました。3、資産運用方法の見直しについては、中退共との合同運用を開始しました。この合同運用はよりリスクの高い運用をすることになりますので、先ほど西川理事より説明のあった金融業の原則に外れることになるわけですが、運用手数料の削減効果や運用効率改善効果なども勘案しまして、機構、業界、関係省庁の関係者がそろって実施する4つの施策パッケージの1つとして資産運用委員会にもお諮りした上で実施を決断したものです。4、加入促進対策の強化についてです。これは「緑の雇用」事業をはじめとして、林野庁の各種施策とリンケージした加入促進策を措置していただきました。こうした4つの施策のパッケージが、それぞれ一定の成果を上げたとの評価が可能であると考えております。

63ページの大きな表にお戻りください。実際の累損金の水準を累損解消計画に照らしてみますと、平成28年度末の累積欠損金額は一番上の表のブルーの欄にあります。平成28年度は77,600万円で、当初の解消計画での達成目標、これは下から2番目の表のブルーの部分になりますが、54,500万円には達しておりませんが、毎年度の累損解消状況、これは一番上の表のピンクの欄になりますが、平成27年度以外、毎年度の目標である9,200万円を上回るペースで累損を解消しております。この結果、平成28年度末の水準は解消計画策定以降最低水準となりまして、平成26年度の財政検証時に行った将来推計における目標値、平成29年度の達成目標をクリアしております。

 こうした中で、今期中期計画期間の暫定評価については、当初の累損解消計画の水準は達成できませんでしたが、大きなマイナスの環境変化を踏まえて、関係機関等と連携し、追加的施策を実施し、一定の成果を上げたことを定性的成果として評価し、法人としては自己評価をBとさせていただきました。この表の右上を御覧ください。平成27年度に返還削減目標を達成できなかった背景について吹き出し部分に書いてあります。この責任準備金という将来の退職金の支払いに備えて積み立てるべき責任準備金の単価が予定利回りや予定脱退率を基に算定されておりますが、平成26年の財政検証の後、脱退率についても見直しがなされて、平成27年度末にこの責任準備金の単価が引き上げられました。このように責任準備金の単価が見直しされたことの影響は甚大でありまして、この吹き出しにお示ししたように、平成27年度決算はプラス36,800万円のところ、財政検証時の推計はマイナス1500万円ということを推計しておりましたので、トータル47,000万円にも及ぶものとなっております。これがなければ目標を大幅に上回る削減を達成し得たことが御覧いただけると思います。

 さて、先ほど御説明しましたとおり、平成28年度末の累損水準は財政検証時の計画を上回るペースで削減を達成したわけですが、先行きについては全く楽観できないと考えております。まず、平成28年度の運用実績の好調さは内外株価の上昇に依存したものです。62ページにお戻りください。この4つの施策の枠の右下、欄外にお示ししておりますように、平成26年度の財政検証時の金利見通しと、その下に実績をお示ししておりますが、この見通しを大きく下回る状況が続いております。すなわち、見通しでは平成26年度以降1.0%、1.5%、1.9%、2.1%と上昇が見込まれておりましたが、実際の金利は、その下にあるように、平成26年度から0.4、マイナス0.050.065と大きく下振れて乖離幅が拡大しているところです。こうした金利情勢、それから株式市場における先行き不透明感の強さを勘案しますと、この累損解消計画をめぐる情勢は決して楽観できるものではないと考えております。退職金原資という運用資金の性格上、投資対象の大層はリスクのない国債を中心に運用していかざるを得ない中で、運用環境はむしろ厳しいと言わざるを得ないと考えております。

 こうした状況下で着実に累損を減じていかなければならないわけです。通常の金融機関であればリスクを取ることが許されない累損を抱えた状態にあるということですが、既に金銭信託部門については中退共と合同運用を開始することによりまして、従前よりもリスクを高く取っております。こうした中で、これ以上リスクを伴う資産サイドでの対応を行うには限界があり、負債サイドでの施策を視野に置いて対応する必要があると考えております。また、こうした厳しい状況については、林退共の運営委員会等においても御説明し、関係省庁及び業界の委員の方々とも共有をしております。委員の方々からは、平成28年度決算においては一定の成果が見られたことを評価すべきであり、また平成27年度に引き下げた予定運用利回りを今回また引き下げることに対しては様々な影響があり慎重に対応すべきということなどから、しばらくは加入促進を中心とした取組を進めつつ、それ以外の具体的施策については次回、財政検証の結果を踏まえて検討することが望ましいという強い意向が示されたところです。当機構としては、引き続き基本方針にのっとった資産運用と効率的な業務運営に努めつつ、環境変化やリスクの状況などの判断材料を適時適切に御提供し、累損の削減解消に貢献してまいる所存ですが、本事業の特性に鑑みて、累損解消の取組成果については長い目で見ていただければ有り難いと考えております。私からの説明は以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。それでは、御意見、御質問等、かなり詳細な説明でしたが、ありましたらよろしくお願いします。最後のほうでちょっと簡単に説明されましたが、資産サイドで既に大きくリスクを取っているから今後は負債サイドでというのは、これは掛金とかそちらのほうの、ちょっと金融機関の財務諸表は左右が逆なので分かりにくいのですが、そちらのほうをとりわけ努めるということで解釈してよろしいのですか。

 

○勤労者退職金共済機構理事(三富)

 はい、予定運用利回りの見直しなども今後検討する必要があるかと考えております。

 

○今村主査

 分かりました。いかがでしょうか。大変丁寧な御説明ありがとうございました。長い目で見るようにということで委員も了解してくださったと思うのです。よろしくお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

1つだけ、先ほどからお話ししているこの退職金事業は、要するに利鞘がないと何もできないということです。

 

○今村主査

 そうですね。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 通常はあるのですよね、素直に考えると。今は明らかにマイナス金利で厳しいと、こういうときは、やはりじっと耐えなければいけないというのが一般的ではありますよね。したがって、あとは長い目で見てくださいというのは、繰欠を10年かけて半分にしたと。通常考えればあと10年かかるのだけれど、要するにそのくらいのことでやってほしいと。最後にもう1つ言うと、林業の従事者はずっと減っていたのです。ところが、最近下げ止まってきて、今後どうなるか分からないところもありますが、この林退共の期末在籍者数も、一番下の表の下から4行目を見ていただくと分かるのですが、平成27年度に39,576人と下げ止まった、これで一番大きいのは、1,800人の目標を掲げていた緑の雇用が効いてきたということなのです。ただ、本業がこれでどんどんじり貧だとますます厳しいのですが、一応下げ止まりもあると。ですから、今は非常に判断としては難しいのだけれども、ここが正に政府機関で、要するに、非正規労働者に対するセーフティネットであれば是非そういう目で見ていただきたいということです。

 

○今村主査

 経営判断の材料になるかどうか分かりませんが、私も広く中山間地域の林業振興で見に行っているのです。随分自治体が努力をして、林業の振興ということです。例えば、閑散期に鰻の養殖をしてみたりとか、それは林業には関わりのないことですが、定住促進という意味では効果があるとか、その辺も、細かな動きも注目していただいて是非進めていただければと思います。

 

○宮崎構成員

 御説明ありがとうございました。いろいろやはり退職金の原資ですので、そのリスクを取った運用というのは現実には難しくて、残り平成34年までの間で累損を解消できるかというのはなかなか厳しい面もあるのはよく分かっています。かといって、それほどリスクを取るわけにもいかないものですから、それはそれでやむを得ないのかなと思っているのです。1点、加入者の動向と年間の支払う退職金の水準などと、先行き、先ほどのシミュレーションなどもよく見ていただいて、要するに、必ず全額積み立てる基金を支払うわけではないでしょうから、底溜りになっている部分で、もう少し10年ものではなくて、20年ものとか15年ものとか30年ものとかで安定的に国債で金利利回りを取れる部分も恐らくあると思います。そこの中で、毎年少しずつ長期の国債をより買っていけば、安定的に毎年満期がくるわけですから、一定の部分は流動性も取れるという中で、その辺も当然検討されているのだと思うのですが、よく将来のシミュレーションをしながら工夫の余地があれば是非検討していただきたいということです。

 

○勤労者退職金共済機構理事(西川)

 確かに利回りを稼ごうとすると、長期にいくのか、あるいは信用リスクを取るために地方債にいくのか、あるいは為替リスクを取って海外にいくのか、そういうような選択肢があるわけなのです。長期に行った場合には、金利のリスクを取りに行くような格好になりますので、もし私どもが10年ではなくて例えば20年とかという超長期の国債でより高い利回りを取りにいくことが正当化されるとすれば、それは債務構造に合ったものとして取りに行く場合であると思っております。因みに昨年度中退共では、今まで10年と考えていた債務構造について、実は20年ぐらい大丈夫なのではないかという分析ができましたので、それまで10年の国債でラダーを組んでいたものを20年に延ばすということをやっておりますが、そういった分析が出てくれば、超長期国債で利回りを引き上げることもできるかなと思います。ただ、やはり何と言っても今、累損を抱えている中で流動性にはそれほど余裕がありません。長くすればするほど、どうしても毎年の償還金額が減ってしまって流動性リスクを抱える格好になります。合同運用のところについては、基本的に正に長い目で見て、損失が出ても動かさないということを前提にしておりますので、どうしても今、自家運用のところは堅実に毎年ある程度のキャッシュフローを確保しなければいけないという状況ですので、運用の足を伸ばしていくことは苦しい状況にあります。正にカードの大富豪ゲームではありませんが、手元不如意の状態だとなかなか運用のバリエーションが立てづらいというのが実情です。ただ御指摘のとおり、債務構造なども見ながらまた可能性は考えていきたいと思っております。

 

○今村主査

 よろしいですか。では特になければ、次にいきます。次は、3-2をお願いいたします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

No.3-265ページをお開きください。健全な資産運用等です。数値目標としては、各事業本部の委託運用について概ねベンチマークと同等以上のパフォーマンスが達成されたかということです。6768ページで、平成27年度までは、運用実績に対して資産評価委員会での評価結果、平成28年度については先ほどからお話に出ていますように、資産運用委員会の評価結果で、おおむねベンチマークと同等以上のパフォーマンスが達成されたなどの評価を頂いております。具体的なデータについては、7184ページまでに全部載せております。また6970ページは、資産運用の基本方針の遵守状況についても、先ほどの委員会等で基本方針の運用に努めているかということで、基本方針に沿った運用に努めていると評価できるなどの評価を頂いているところです。65ページに戻ります。こうしたことから、法人の自己評価はBとさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 非常に詳細な表が出ておりますが、おおむねベンチマーク以上の運用という数値目標は達成していることは間違いないようです。せっかくいろいろとデータが出ておりますので、何か御意見、御質問等がありましたらお願いします。

 

○戸田構成員

 データがたくさんあって、ザッと眺めている感じですと、超過収益率のグラフが77ページからあります。機構はかなり真剣に取り組んでいらっしゃいますのでコメントすることはないのですが、感想を申し上げます。なかなか超過収益率は、ベンチマークと収益率がぴったりしていて、それだけ着実に堅実に運用されているのだなということは、このグラフを見てもよく分かるなと思いました。資産運用ももちろん重要なところはありますが、やはり先ほどの項目の3-1もそうですが、資産運用だけでも不十分なところはありますので、加入促進と同時にいろいろと取り組んでいただくということが、林退共の累積欠損金を解消するというのも悩ましい問題ということは承知しておりますので、引き続き取り組んでいただければと思います。感想めいたことで恐縮ですが、以上です。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。今までほとんど出てこなかったのですが、清退共について機構はどうお考えになっているかをお伺いしたいのですが。例えば76ページの図を見ますと、予定運用利回りよりも運用利回りが下回っていて、林退共に比べるとかなり対照的なのです。清退共こそ正に従業員の数が余り見込めない中で、一部の日本酒は海外でかなり売れているようですが、そういう中でどのようにお考えになっているのでしょうか。76ページの運用利回りに関して、御説明を頂ければと思うのですが。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 理事が変わったばかりなので、私から説明いたします。全くおっしゃるとおりで、清退共について言えば、非常にロットが小さくなってきています。ただ、一方でものすごく利益剰余金もあります。実は、去年から実態調査を始めたのです。今いる人数が、本当にどれだけの人が働いているのかどうかという実態調査をした上で、今年の12月ぐらいを目処に運営委員の方ともう一回相談しようかと思っています。今後の中計のところで、清退共自体をどうしていこうかということは、1つ議論にもなるのだとは思うのです。ただ、林退共と圧倒的に違うのは、かなり利益剰余金が厚いところです。

 

○今村主査

 分かりました。ありがとうございます。

 

○戸田構成員

 それに関連してですが、76ページの清酒製造業の退職金共済の所の利益剰余金を見ると、平成22年度以来横ばいであるというのは、やはり加入も少ないけれども退職も少ないので支払いがないので、そのまま一定という理解でよろしいですか。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 多分、余り動いていないということだと思います。

 

○今村主査

 よろしいでしょうか。では、次は3-3について、お願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

3-385ページをお開きください。財務内容の改善に関する事項ということで、財産形成促進事業、雇用促進融資事業についてです。評価の視点としては、財形融資については、安定的かつ効率的な財政運営を実施したか。雇用促進融資については、リスク管理債権の回収処理に努め、財政投融資への着実な償却を行ったかということで、87ページをお開きください。財産形成促進事業は、効率的な財政運営ということで、(1)平成25年度から28年度までの当期純利益合計は約100億円を確保し、利益剰余金は114億円に増加しております。(2)債権管理は、平成25年度から28年度は、リスク管理債権から9,900万円回収することができ、この間償却額としては1,700万円となっているところです。

88ページにあります雇用促進融資事業ですが、(1)債権管理は平成25年度から28年度については、リスク管理債権から10400万円回収しており、この間償却額については46,900万円となっております。おおむね計画どおり進めているのではないかということで、自己評価はBとさせていただいているところです。

 

○今村主査

 この件はいかがでしょうか。御質問、御意見はありますか。特になければ、最後に4-1をお願いします。

 

○勤労者退職金共済機構総務部長

 最後にNo.4-192ページです。数値目標については、中退共事業の既加入事業主のうち一定規模以上の事業主に対して財産形成促進事業の資料を毎年度3,000件以上送付しているか、2つ目の目標として、中小企業事業主に対して中退共事業と財産形成促進事業の資料を毎年度1,000件以上送付しているかなどとなっております。95ページです。上の青の箱で、先ほどの数値目標ですが、事業主への各年度の3,000件以上の資料の送付を行っており、もう1つの目標の中退共事業と財産形成促進事業の資料を毎年度1,000件以上送付しているかは、目標どおりやっております。

 それから、災害時における事業継続性(BCP)の強化を行っております。96ページは、予算、収支計画及び資金計画の関係です。平成25年度から28年度までの決算において、全て予算の範囲内で執行しているところです。短期借入金の限度額についても、借入限度額内での借入れ等となっております。

97ページは、職員の人事に関する計画です。超過勤務時間の縮減、それから次世代法に基づく一般事業主行動計画に基づき、「こども職場参観日」と「仕事と育児の両立支援講座」などを実施しております。研修についても、各職務に応じた研修などを実施しているところです。以上、おおむね全体的には計画どおり取り組んだということで、自己評価としてはBとさせていただいているところです。以上です。

 

○今村主査

 よろしいでしょうか。シナジーについては繰り返しませんが、94ページの下にもありますが、ローテーションをうまくやりながら情報共有ということは、組織にとってすごく重要です。それによって、是非シナジーを発揮させていただくように期待しております。では、以上で4-1は終了です。続いて、法人の監事及び理事長から、中期目標期間における中期目標の達成状況等を踏まえ、今後の法人の業務運営等についてコメントを頂ければと存じます。まず最初に法人の監事から、続いて法人の理事長よりお願いいたします。

 

○勤労者退職金共済機構監事(稲見)

 監事の稲見です。隣におります東監事とともに、監査業務を行っております。当機構の第3期中期目標期間における中期目標の達成状況を踏まえ、機構の業務運営について、所見を申し上げます。監事監査の目的であります業務の適正かつ健全な運営を確保するとともに、財務会計の適正性及び信頼性を期するために、第三者の自立的立場において監査を実施しております。当機構の第3期中期目標期間であります平成25年度から平成28年度までの業務実績については、ただいま説明がありましたとおり、前任の監事からも意見の聴取、あるいは関係書類の閲覧、役員及び職員へのヒアリング等を通じて、監事として判断した結果、成果の質の向上に努めつつ、毎年度とも中期目標策定当初に掲げた目標をおおむね達成されており、高く評価できるものと考えております。また、第3期中期目標期間内に発生いたしました大きな環境変化、これらを踏まえ、ガバナンスの強化として、先ほど来説明がありました情報セキュリティ対策の強化、あるいは資産運用委員会での議論を踏まえた資産運用体制の整備・強化を目指したことも高く評価できるものと考えます。

 今後の事業運営に関しては、日本が今後迎えます高齢者社会が進む中、退職後の生活設計の基礎・基盤となり得る退職金をお預かりする機構といたしまして、安全かつ安心できる事業運営を心掛けるとともに、制度の目的であります中小企業で働く方々の福祉の増進と雇用の安定に寄与することを期待しております。引き続き、機構としては法令を遵守し、効率的・効果的に業務運営に努めていただきたいと思います。私からは以上です。

 

○今村主査

 では、次に法人理事長からお願いいたします。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 当機構は、金融業務を行う中期目標管理法人として位置付けられておりますので、大きく2本の柱を立てて業務運営に努めております。1本目は、機構経営の根幹を揺るがしかねないリスク管理に関わる分野、テールリスクという言葉で言えると思いますが、金融業務の土台に当たります。被共済者の2つの貴重な財産である退職金と個人情報を、被共済者のためにしっかりお守りするということを経営の座標軸として定め、全役職員に徹底していくということです。いずれも、言うが易く行うが難しい分野ですが、昨年以来、役職員の皆さんには常在戦場の気持ちで取り組んでほしいと、繰り返し繰り返しお願いをして、いろいろな議論はありましたが、システムの物理的分離、中退共の基本ポートフォリオの見直しを断行したのも、その一環です。日進月歩の分野ですので、これで一段落ということはなく、引き続き理事長が長期ビジョンをもって陣頭指揮で取り組んでまいりたいと考えております。陣頭指揮を取るに当たっては、役職員の役割分担を定め、責任の所在を都度確認していくことが、マネジメントの要諦であると考えております。

2本目は、執行に関わる分野です。確実な退職金の支払い及び財形の融資業務など、日々の業務を着実に実行し、かつ業務の効果的・効率的な運営に当たっては、常に努力を続けるということです。何度も申し上げておりますが、お陰様でこの分野はPDCAがしっかり回っておりますので、新規施策もその体制に乗せれば、ボトムアップで推進できると思っております。次期中期計画期間中に、経営が主体的に取り組まなければならない新規の施策は、大きく3つあると考えております。1つ目は、建退共の電子申請方式の導入の検討。2つ目は、中退共システムの再構築。3つ目は、中小企業数の減少トレンドに拍車をかける事業承継の壁の到来に対し、いかに大きな施策で打ち返せるかの3点です。引き続き、厚労省の御理解、御指導をへて、適切な業務運営に万全を期してまいりたいと思っております。以上です。

 

○今村主査

 では、ただいまの御発言内容について、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。よろしいですか。当機構は、次期目標設定を目前に控えています。続いて、勤労者退職金共済機構の業務・組織全般の見直しについて議論をいたします。初めに、見直し内容について、法人所管課からポイントを絞って簡潔に御説明いただき、その後に質疑応答という流れで進めていきます。よろしくお願いいたします。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 資料1-3を御覧ください。本退職金制度については、まだ大企業と中小企業で導入に関して大きな格差があると思っています。それから、近年、多くの企業で人材不足が深刻化しており、労働力の確保が中小企業の経営にとって大きな課題になっていると思っております。こうした中で、中小企業退職金共済制度の普及を図っていくことは、引き続き重要であると思っております。

 それから、財形持家融資制度については、勤労者世帯の持家率が依然自営業主の持家率と比べて低い状態が続いており、この融資制度の積極的な普及に取り組む必要があると考えております。以上のようなことをはじめとして、独法の役割である政策目標をしっかり達成するという観点から、見直しを行いたいと思っております。

 第1の1「中退共制度」の1の「積立金の管理・運用」です。資産運用については、安全かつ効率的な運用の中で、これまでどおり必要な利回りを確保する。加えて、社会的に優良な企業に優先的な投資を行うということで、労働環境の改善等につなげていく、ESG投資と言われたりしますが、そういった投資を通じたホワイト企業を増やしていくことについて検討をお願いしたいと思っております。それから、累積欠損金の処理については、先ほど詳しい説明がありましたが、中退のほうは無事解消でき、林退が残っています。林退が残っている理由も、運用に失敗したからということではなくて、運用はしっかりやっていただいたわけですが、運営費交付金がなくなったりという中で、まだ資産に対して5%ぐらいの欠損金が残っているということです。今の計画のお尻をそのままにして取り返しに行くのは、ちょっと現実的ではありませんので、この計画を見直して着実な解消を図っていってほしいと思っております。この中では、我々としても予定運用利回りについて検討しなければいけないと思っております。

 それから、退職金の支給に向けた取組ということで、未請求対策は以前と比べると半分程度まで減ってきています。この未請求対策を進める費用は他の加入者のお金から出ているということを踏まえますと、費用対効果に十分に留意した上で、現在のレベルを下回ることは避けたいと思いますが、そういった費用対効果の観点を留意した中で推進していってほしいと思っております。

 それから、特定業種退職金制度における長期未更新者対策については、被共済者の属性分析ができるツールなども開発されましたので、そういったものも踏まえながら検討していってほしいと思っております。加入促進対策についても、加入・未加入の理由、業種の分布。まだこの退職金制度を知らないという人も結構いますので、知った上で入らないという判断はもちろんあるわけですが、知らなくて入れないという会社が少しでも減っていくようにやっていってほしいと思っております。

 業務の電子化については、先ほど来説明があるように、システムの再構築は必須の課題だと思っております。それから、建設業の電子申請方式については、その可否について、今年の末から実験を始めることにしておりますので、よく中身を精査して可否を検討してほしいと思っております。

 財形については、累積剰余金がありますが、今はその使途がよく定まっていないということですので、これから次期中期計画期間に向けて、剰余金の使途を定めて、それに基づいて適切に使用していただきたいと思っております。転貸融資する場合の資金調達方法について、10数年来見直されていない状況です。今は、その検証をやってもらっているところですが、その検証結果を踏まえて見直しが必要となれば見直しをしていくことが必要だと思っております。

 利用促進対策については、持家融資の利用促進対策、それから財形制度全体の利用促進対策にも取り組んでほしいと思っております。この退職金共済制度に入ってもらっている企業は大体10%ぐらいですが、非常に従業員のことをよく考えている、いい企業が多いという認識です。そういう企業ですので、財形制度についても考慮いただくように連携を取っていければと思っております。内部統制については、特退の各事業部には運営委員会がありますし、資産運用委員会もあります。PDCAサイクルをしっかり回していってほしいと思っております。

 情報セキュリティについては、サイバーセキュリティ基本法に定められておりますが、各種規定の整備・研修・教育、それからインシデント発生時のマニュアル等を整備しつつ、各職員に浸透させていってほしいと考えております。厚労省からは以上です。

 

○今村主査

 それでは、ただいまの御説明について、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。

 

○宮崎構成員

 御説明ありがとうございます。質問というか1つの意見なのですが、中小企業においての雇用環境も大分変わってきていて、いわゆる昔ながらの終身雇用という形から、多様な働き方になってきています。私が思うに、退職金の積立てというのは、長期運用で安定的に長い期間を掛けていくことによって、正に書いていただいている第1の目標にあるように、被共済者の便益というものが実現するものだと思っているところです。そうしますと、現状の仕組みも正直、いまいち理解が十分でないところもあるのかもしれませんが、中退共においても1つの中小企業で積み立てたものが、現実的にすぐ実行可能かは分かりませんが、例えば他の中退共が加入している会社に転職したりした場合に引き継げるですとか、いちいち退職金として清算せずに建退共のように承継して、もっと長い期間で運用できるとか。果たして会社を辞める度に退職金をまた清算していくことが本当に便益なのかというのがあって、現状、他の制度との比較による相対的な魅力度の構造という論点も恐らくあります。iDeCoや積立型NISAなどの個人型にシフトしていく中で、会社単位での管理が実際本人を主体にしたようなものに制度上は将来的に検討できないのかというところも、長期的な観点からは是非検討いただいきたいと思います。繰り返しますが、建退共のように個人のものが、また会社が変わっても、働き方も変わってきますから、同じような中退共に加入している会社に移行する場合には、本人が希望すれば承継できるといったことも検討の余地はあるのではないかと思いますので、御検討いただければと思います。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 今の話はポータビリティの話だと思いますが、中退制度に加入している企業から他の企業に移って、そこが中退共制度に入っていれば引き継ぐことはできるようになっております。ただ、これが全体の14%ぐらいのものですから、入っていない所に移動した場合には、そこで一旦清算ということになってしまいます。他の制度とのポータビリティについては、この間DC法の改正の中で、合併等をした場合にはDCと中退でやり取りできるようになるということで、来年の5月の施行を目指して政令、省令の改正に取り組んでいるところです。

 

○今村主査

 御遠慮なく意見をお願いします。

 

○関口構成員

 今、構成員のほうからもありましたように、ポータビリティというのは今後考えていかなければいけないのかなと思っております。もう1つ、やはり財形のことにもかなり触れられているかと思うのですが、財形の仕組み自体がやはり現状あってないのではないかというのが今日、御報告をお伺いしながら思いました。持家率の問題もですが、これは例えば首都圏であるとか近畿圏、そういうような都市圏と地方でも持家率をどう捉えるかというところも違いますし、そういったところを一律に一般的な平均値で見ていて、まだ低いのでそこに注力しなければいけないというようなことで本当にいいのかなというところが感想程度ですが、ちょっと違和感を感じます。

 私自身も若いときには、会社のほうで財形もやっておりましたので、それに対する安心感みたいなものがあるのですが、やはり転退職を繰り返しますと、なかなかそこがつながってこないという中で、何となく違和感を持ってきています。こういう事業自体は非常に意味があるものだとは思うのですが、最近の働き方を考えた場合に、少し基本方針をもう一度現状に合わせて見直していただくということも重要なのかなと思っております。感想です。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 ありがとうございます。財形制度は利子非課税が大きな魅力ですけれども、長期にわたるほとんどゼロ金利の中で非常に今、逆風が吹いているかなと思っております。また、その働き方も傾向的には長期勤続から転職が増えるほうにきていると思いますので、そういった御意見も踏まえながら今後よりよい制度にしていきたいと思っております。

 

○今村主査

 全体をざっと見て拾ってみると、ちょっと気が付くことがあるのですが、そもそも最初の問題意識としては、独力で退職金制度を設けることができない、大企業と中小企業で退職金制度に差があると。労働市場の問題等があって、そういう中小企業の労働者を守るという発想で作られているのですが、加入促進対策の議論や積立金管理運用を見ていくと、重要なキーワードで、1ページ目の真ん中よりちょっと上、「第1」と書いた上の3行目ですが、「民間では必ずしも実施されない公共上の見地から必要な事務事業」と。これは手足を縛るように思われます。

 ちょっとお伺いしたいのは、実際この分野のシェアは14%と先ほどおっしゃったのですが、この分野で民間の企業は、どういう商品をどう進出していくかというマーケットの状況ですよね。つまり、民間の金融機関に魅力的なマーケットなのかとか、正にそういう商品に欠けるものを機構として提供できるとしたら何があるのか。

 もう1つは、先ほど理事長が、機構にとっては負債ですけれども、資産を預ってそれを運用してお返しするというのが第一の目的だとおっしゃるのですが、それプラス何かインテリジェンスというか、コンサルというか、つまり簡単に言うと、自らポートフォリオ、日本人の悪いところで、私も中小企業の退職金で調査に行ったときに、退職金の運用をするのは経営者の責任だろうというようなことをいまだに言う従業員もいるみたいなのですが、そういう意識を変えていくというような、つまり自らポートフォリオを組むんだと。そうすると、自らポートフォリオを組むという意識が中小企業の従業員にも目覚めてくれば、逆にそれがこの機構の商品のメリットをアピールするということにもなるのかなと思います。

 そういう意味での、預ったお金のコストの中で、ほかの方々のコストの中でやるというコストベネフィットもあるのです。そういうちょっとしたイノベーション的な発想といいますか、発想を変えてアプローチするという、すぐはできないかもしれませんけれども、そういうアプローチというのは可能なのでしょうか。それをお考えになっているかどうかといいますか、機構の目標として、むしろほかの民間にはない隙間だから機構が独自にできるところはないのかなと。ちょっと漠然とした質問なのです。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 ありがとうございます。こうした中小企業の退職金を集めて一括で管理するというのが一番根本的な、機構でなければならない業務だと思っております。比較的大きな資産をこういうESG投資に回していったりですとか、財形のところで言いますと、子育ての世代に特例で金利引下げをやって、子育て世代の労働を促進したりですとか、政策的な課題を幾つかお願いしています。そういうところを着実にやっていってほしいという思いを込めて冒頭のところは書いています。

 

○今村主査

 お伺いした中で1つは、私は東洋大学以外にも某有名大学で教えているのですけれども、余り名前を言うと差し障りがあるのですが、社会的企業や自らリスクを取る起業家になれと言うと、一部の学生は、先生の努力は無駄ですと言うのですね。こういうブランド大学に入るというのは、あくまでもブランドをいかして超優良企業に入るのが我々の目標ですと、はっきり言う学生もいます。ということは逆に、大企業のほうがリスクテイキングに対して、要するに腰が引け気味だと。中小企業というのはもともと不安定だから、リスクを取ることに対して意外とすんなり受け取れるではないかなという気持ちがあって、それで自らポートフォリオを組むという発想をしたのです。中小企業の従業員に対して、逆手に取って入り込んでいくというな発想があってもいいのではないかなと思って質問したのです。これは、厚労省の政策の問題でもあります。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 おっしゃるとおり、企業をベースにして働く人の生活を支えていくというのは、割と昭和的な考え方であるとは思っております。いろいろな形がありますので、退職金だけがベストな方法だと私は思っておりません。よく外資であるように、月間・年間たくさんの給料を与えたり、国際機関でも退職金制度ありませんし、個人ベースでハイリスク、ハイリターンを取るのか、ローリスクでいくのか、選択しながらやるような形も今出てきておりますので、いろいろな形があっていいと思っております。その中で、こういうやり方でやりたいという企業のニーズにしっかり応えていくということだろうと思っております。

 

○今村主査

GCEの問題がありますから、リスクは個人が取るという方向に移っていくかと思いますので、可能なものは御利用になって機構の持続可能性を高めていただければと思います。よろしくお願いいたします。ほかにはいかがでしょうか。

 

○志藤構成員

 とても細かなことで申し訳ないのですが、私が意味が取れなかった文章が1つありまして、裏返したほうの2枚目です。業務の電子化に関する取組で「言語を刷新し」というのは、何を意味するのでしょうか。もしかしたら皆様にとっては周知のことなのかしれませんけれども、教えていただければと思いました。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 言葉足らずですみません。先ほどからちょっと出ていますけれども、COBOLという言語を使っていまして、プログラムの言語なのです。それがだんだん使われなくなってきているので、何かあったときに、いろいろな改修をしたりという応急的な対応も難しくなってきているということで、これを今使われている共通言語といいますか、そういうものに変えていくということを書きたかったところです。これはちょっと工夫します。

 

○志藤構成員

 コンピュータのシステムの問題ということですね。多分そうお書きいただいたほうが分かるかもしれません。理解ができてなくて失礼しました。

 

○今村主査

 さっきの質問にも関連するのですが、ここで思い切ってAIを導入するとか。何か言語どころかもうちょっとシステムを根本的に変えるとかいう発想があっても。コストの問題もありますけれども、是非。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 是非御検討ください。

 

○戸田構成員

 ありがとうございます。今日の会議では、かなり機構からもいろいろと丁寧に説明していただいてよく理解しておりました。この文章に関しても基本的には異存はなく、機構としてもかなりエビデンスをきちんと把握されていて、その事業を運営されている点とPDCAサイクルという言葉が出ておりますけれども、しっかり回されているというのは従来通り説明を受けて、よく理解できていると思います。1点、この文章を加筆しろという要望ではなくて、御検討いただければという範囲でコメントさせていただきます。

 先ほど理事長からのコメントで、中小企業でも事業継承での問題・課題が出てきて、経営者が高齢化していて廃業するのではないかみたいな話がありました。最近の議論としては、もちろん既存の加入している企業の中では、そうした中小企業は多いのかもしれませんが、やはり先ほどからAIとか出ているように、新しい技術が出てきていて、それに伴っていわゆるベンチャー企業といいますか、スタートアップ企業といいますか、そうした新しい企業も出ております。退職金というこの日本独特なといいますか、ユニークな制度というものが適用できるかというのは、ちょっとよく分からないとは思うものの、やはりそういうところも視野に入れて加入促進ですとか、機構がこれまで取り組まれている素晴らしい制度というものを認知させていくということは、重要なのではないかと。恐らくそういうところも今後、政府の対策としてもやはり重要なところになってくると思います。第四次産業革命と言われているように、重要な施策の一環ですので、やはりその中で新しい中小企業といいますか、そういった対象も見据えて加入促進というのも、どこまで現実的かどうか分かりませんが、御検討いただければと思います。

 

○今村主査

 はい、よろしいですか。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 加入促進のターゲットについては、いろいろなデータを分析しながら絞っていって、そこに効果的にアプローチしていくということが重要だと思っております。

 

○今村主査

 はい、ありがとうございます。最後に大まかなコメントなのですが、中期目標・中期計画というとボトムアップ、現状から先を見通してここに到達しよう、やれやれ大変だなという発想なのですが、『THE WORLD WE MADE』という本がありまして、非常に面白い本です。2050年に生きている人が我々の地球がどうなったかということを、過去を振り返って書くという本なのですね。THE WORLD WE MADEですから。そういった面白い本なのですね。楽観的に書いているのですが、戦争のこととか、そういうことは一切書かないで、例えばコスタリカの例を取ると、森林が2010年を境にして元に戻って復活してきたとか、2038年には世界中の食料生産のうち40%が都市近郊で生産されるとか、我々の発想では考えにくいのですが、もしかしたらそういうこともあるかなと。

 何が言いたいかというと、現状から先を見通して大変な目標だなと思うのではなくて、当面5年後に勤労者の方々がどういう生活をしていったらいいのかなという発想から、こういうことが実現してたらいいねとやっていくのも1つの発想かと思います。これを必ずということではないのですけれども、少し発想の視点を変えてやると、また面白い計画も出てくるかと思いますので、今後の計画設定の中でそういう発想も取り入れていただければと。あくまでも大ざっぱな非常に勝手なコメントでありますけれども、ちょっと発想を転換して是非お願いしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。

 

○関口構成員

 先ほど御指摘があったのですけれども、中小企業の事業承継の部分で、例えば省庁はまたぐことになりますけれども、機構様はスタートアップをすごく支援されていると。私どもの大学でも機構の方に15回ゲスト講師でお見えいただいて、学生に対してどうビジネスをプラニングするかというのを2年程度やっていただいたりとか、志はあるけれどもどうやったらいいか分からないという人たちが、学生だけではなくて若手の20代、30代の人たちがかなり出てきているのだなというところが体感として持っています。

 例えば、こういうような事業があって、一緒にコラボして将来的にきちっと立ち上がったところでは、ここに入るとメリットがあるよとか、今までコラボレーションをしていらっしゃったのかもしれないのですが、そういったところはどうなのかなというのを、先ほどのコメントをお伺いしていて、ちょっと思ったものですから、お伺いできればと思います。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 どんどん中小企業が入れ替わっていく中で新しいニーズをどう捉えていくかというのは非常に重要だと思っております。別の省庁のプログラム等をうまく、林業の世界では農水省とタイアップしている部分もありますが、コラボ可能な部分がありましたら、積極的にやっていきたいと思っております。

 

○今村主査

 はい、よろしくお願いします。よろしいですか。それでは、以上で勤労者退職金共済機構の業務・組織全般の見直しについて議論を終了いたします。法人所管課におかれましては、構成員の皆様から本日頂きました御意見等を踏まえ、見直し内容の修正等について御検討いただきまして、内容の最終的な確定をよろしくお願いいたします。それでは、最後になりますが、法人及び法人所管課より一言頂ければと思います。まず法人理事長、続いて法人所管課でお願いいたします。

 

○勤労者退職金共済機構理事長

 この前も申し上げましたが、この会は非常に楽しみというか有り難いと思っていまして、今回もかなり有効に活用させていただきました。やはり評価があって、目標がある。先ほど今村先生がおっしゃったように、実は大きな目標を掲げてというのは民間の世界では当たり前で、マッキンゼーがアスピレーションという到達目標の概念を入れてから、そこから逆算するというのは当然なわけで、例えば加入促進についてもこれだけ増やしたらどうなるのと。私は実は常に、シェアというものを考えています。家電の普及率10%といったら、家電が10%超えると爆発的に普及すると。この勤労者退職金共済機構はシェアが何%になったらどうなるのかと。それは平均値で見ているのではなくて、地域ごとに恐らく10%を超えた所が伸びているのではないかと。やらなければいけないことはいっぱいあるわけでして、今日もお話を聞いていてもう一回頭がまとまりましたので、また勉強し直して胸を張ってお話ができるように頑張りたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

 

○今村主査

 どうもありがとうございました。それでは所管課からお願いいたします。

 

○雇用環境・均等局勤労者生活課長

 本日は、委員の皆様から貴重な御意見ありがとうございました。これから5年間の目標を作って計画を立てていくわけですけれども、厚労省でも「働き方の未来2035」というのを作りましたが、今村座長からお話ありましたように、先を見据えて、先から逆算してどうあるべきかということをしっかり考えていきたい、いいものを作っていきたいと思っております。また引き続き御指導よろしくお願いします。

 

○今村主査

 ありがとうございました。それでは、事務局から今後の流れについて連絡をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 今後の流れについて御連絡いたします。本日、議題としましては、中期目標期間見込評価と業務・組織の見直しの2点の議題がありました。それぞれにつきまして、本ワーキングにおける御意見、法人の監事、理事長のコメントを踏まえて厚生労働大臣より評価及び見直しを決定しまして、法人それから、これは中期目標期間見込評価、目標につながりますので、総務省の独立行政法人評価制度委員会にも通知するとともに、公表させていただきます。決定したそれぞれの内容につきましては、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。それから、本日の議論を踏まえて決定した見込評価、業務・組織見直しが今後、中期目標にどのようにつながっていくかという点について若干だけ御連絡させていただきます。

 参考資料1-11ページを御覧いただけますでしょうか。本日の有識者会議以降見込評価、それから業務・組織の見直しについて決定いたしまして、総務省に通知した後、総務省独立行政法人評価制度委員会のほうで見込評価・見直し内容について点検が行われます。総務省の動きとしましては、見込評価・見直し内容について点検の後、再度、中期目標案を厚生労働省で作りますが、次期中期目標案についても来年の1月以降に独立行政法人評価制度委員会の審議に付されることになっております。ですので、厚生労働省としましても、本ワーキングで次期中期目標案についてまた御議論、御意見を頂くことを予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 この夏に行われます評価、単年度の業務実績評価、それから中期目標期間にわたる見込評価に関する会議につきましては、7月の上旬からこのワーキングでは7回ありましたが、本日が最終回となります。暑い最中に非常に専門・多岐にわたった御議論について常に集中した御議論を頂きまして本当にどうもありがとうございました。

最後に、事務的なお知らせだけなのですが、本日配布いたしました資料の送付、郵送を御希望される場合は、前回までと同様に机上にそのままにして御退席いただきますよう、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○今村主査

 はい、ありがとうございます。本日は以上です。長かったワーキンググループの夏場所もこれで終わりですね。長時間にわたりまして、皆様の熱心な御議論、本当にありがとうございます。お疲れさまでした。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第22回)議事録(2017年8月9日)

ページの先頭へ戻る