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2017年8月3日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第20回)議事録

○日時

平成29年8月3日(木)9:55~11:59


○場所

中央労働委員会労働委員会会館講堂(7階)


○出席者

今村主査、志藤構成員、関口構成員、戸田構成員、中村構成員、松浦構成員、三宅構成員、宮崎構成員

○議事

 

○今村主査

 おはようございます。定刻より少し前ですが、皆さんがお揃いになりましたので始めさせていただいてよろしいでしょうか。それでは、只今から「第20回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、またお暑い中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は、高田構成員、松尾構成員が御欠席です。はじめに、本多総合政策・政策評価審議官から御挨拶を頂きます。よろしくお願いします。

 

○総合政策・政策評価審議官

 「第20回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」の開会に当りまして、一言御挨拶申し上げます。構成員の皆様には、当省所管の独立行政法人評価に有益な御意見を賜り、ありがとうございます。独立行政法人の評価の方法につきましては、平成27年度に変更され、評価指針に基づき主務大臣が評価を行うこととなりました。初年度の平成26年度評価の結果について、総務省から厚生労働省他幾つかの省庁について「A」評定以上の割合が高いとの指摘を受けたところです。詳細については参考資料5を御参照ください。これを踏まえまして、昨年度の平成27年度評価では、有識者会議の御議論を踏まえ、評価指針に則した厳格な評価を行いました。この平成27年度評価については参考資料6のとおり個別省庁に対する指摘はなく、全体的な指摘として、1の最後のパラグラフですが、「評定を付すに至った判断の根拠、理由等が合理的かつ明確に(分かりやすく)説明され、主務大臣において、年度評価等の結果によって判明した独立行政法人の業務運営上の課題や法人を取り巻く社会経済情勢の変化等を踏まえた業務及び組織の見直し等の対応が行われることが重要である」とされているところです。引き続き、根拠を明確にした評価を行い、それが業務の改善等につながることが必要であると考えております。

 具体的には、参考資料2にありますように、「B」評定を標準として、定量的指標において目標値の100%以上120%未満の場合には「B」評定とします。目標値の120%以上の場合に「A」評定となり、それに加えて質的に顕著な成果があった場合に初めて「S」評定ということになります。これを踏まえまして、独立行政法人評価は、目標の達成率を基準とする絶対評価を基本に行うとともに、目標設定が適切かどうか(例えば過去の実績から見て安易に達成可能な目標となっていないか)、また、数値目標以外の質的な面で考慮すべき事項があるか等に留意することが必要であると考えております。

 構成員の皆様には、これらを踏まえて、独立行政法人の厳正な評価と業務の改善に向け、それぞれ御専門の見地から御知見を賜りたいと存じます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 

○今村主査

ありがとうございました。それでは、本日の議事について、事務局から御説明をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 それでは、本日の議事について御説明いたします。本日の議事は、議事次第のとおり、労働者健康安全機構の平成28年度業務実績評価に係る意見聴取です。評価項目ごとに、法人側から業務実績及び自己評価について御説明いただき、有識者の皆様から御意見、御質問を賜りたいと思います。評価のルールですが、先ほどの審議官挨拶にもありましたとおり、参考資料3の総務大臣が定める「独立行政法人の評価に関する指針」がルールとなります。「B」評定が標準であること、「A」評定以上を付すには定量的指標において120%以上の達成度が求められていることなどに御留意いただきますようお願いいたします。

 なお、独立行政法人の評価スケジュール全体につきましては、参考資料1の別添6(10ページ)の図で示していますが、本日の意見聴取等を踏まえて、主務大臣、厚生労働大臣による評価を決定することとなります。事務局からは以上です。

 

○今村主査

 それでは、労働者健康安全機構の平成28年度業務実績評価について議論していきたいと思います。はじめに、国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項のうち、1-1-1「統合による効果を最大限に発揮するための研究の推進」について、労働者健康安全機構からポイントを絞って、ごく簡潔な御説明をお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

はい、当機構は、平成28年度に労働安全衛生総合研究所と、労働者健康福祉機構が統合しまして、新たに「独立行政法人労働者健康安全機構」となり、初めての業務実績の報告となります。説明にあたっては、資料番号1-1の「平成28年度業務実績説明資料」のポンチ絵を中心に御説明いたします。なお、統合した関係で、ポンチ絵及び資料1-2の「業務実績評価書()」、いわゆる評価シートの資料の構成につきましては、年度計画、昨年度のポンチ絵とは順番が異なっており、一定の事業等のまとまりに沿って並び替えた構成となっておりますので、あらかじめ御承知おきくださるようお願いいたします。それでは、業務実績の御説明に入らせていただきます。 

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 それでは、私の方から資料1-1-1「統合による相乗効果を最大限に発揮するための研究の推進」について御説明させていただきます。資料1-12ページを御覧ください。中期目標において、安衛研が持つ労働災害防止に係る基礎・応用研究機能と労災病院が持つ臨床研究機能との一体化による相乗効果を最大限に発揮できる研究に取り組むこととされており、3ページにあるとおり重点研究5分野として、過労死等関連疾患、石綿関連疾患、精神障害、せき損等、産業中毒等が示めされているところです。

 平成28年度は、これらの5分野全てにおいて研究を開始し、各分野において、いつまでにどのような成果を得るかについて具体的な工程表を重点研究の協議会で検討した上で作成し、この工程表に従って研究を進めているところです。各分野の研究の概要を3ページと4ページに記載しています。例えば、過労死等関連疾患分野ですが、脳・心血管病の早期発見のための新たな指針の確立を目指して、平成28年度には過労死事案とサバイバーとを比較検証する観点で、労働者の属性把握、労働時間算定調査手法等を精査して、アンケートを作成しました。また、労災病院グループのネットワークを生かして、複数の労災病院で症例収集を開始したところです。さらに、Lox-Indexという新たな酸化ストレスマーカーの関連などを検討しているところです。

 次に、4ページになりますが、石綿関連疾患分野、精神障害分野、せき損等分野についても記載のとおり研究を進めているところです。産業中毒等分野につきましては、もう少し詳しく御説明申し上げたいと思います。

5ページを御覧ください。ここに公表しております工程表の一部と、平成28年度の実績を記載しているところです。上段が工程表になりますが、産業中毒等分野では、この工程表の一番右の四角の中にありますようにベリリウム感作を早期判別するための健康管理手法を開発すること、健康管理に必要な改良リンパ球幼若化試験の完成を目的にして、平成28年度ではベリリウムに対する感作を確実に診断できる改良した検査手法を、実血液サンプルを用いて検討しているところです。

 また、ばく露状況に係るアンケート調査や、胸部CT検査等による肺病変の確認を行っているところです。

具体的には、下段の実績のところにありますように、4月に研究計画を策定し、5月の班会議を経まして、内部評価、外部評価を受けています。

 その後、研究の場を提供いただいた企業と、研究対象となる労働者の範囲、あるいは労働者に対する説明会の持ち方等を調整し、11月には研究協力協定書を結んだところです。この研究では、個人情報を取り扱うことになりますので、それぞれの研究機関で倫理審査を受けた後に、12月から研究対象労働者への説明会の開催、研究への同意が取れた労働者へのCT検査や、ばく露歴等に係るアンケート調査等を行ったところです。

2ページに戻りまして、本項目の自己評定です。赤字で記載しておりますが、異なる目的・体制で研究を実施している両組織が、労働災害防止、職業性疾病の早期発見治療、職場復帰支援等に資する研究を一体となって実施する体制の構築という、国内では初めての取組に尽力した結果、研究計画立案等に必要な準備期間が短いなど、スケジュールが非常に厳しい中、全ての分野において工程表を作成し、研究を開始することができました。

 特に産業中毒分野で行っているベリリウムに関する研究では、従来、病院に訪れる患者のみを対象とした労災病院が、現に作業現場でばく露作業を行っている労働者を対象に胸部CT検査等を実施し、その結果を安衛研が調査した過去と現在の作業内容と紐付けをして分析を行っているところであり、安衛研と労災病院の両機関の相乗効果が発揮できていると考えているところです。まだ、研究の途中ではありますが、今回の研究の対象としております慢性ベリリウム症については、蓄積ばく露量、いわゆる慢性有機溶剤中毒だとそうなるのですが、それよりも感作が非常にかぎであり、短かい期間・微量のばく露でも発症すること、改良リンパ球幼若化試験は、予防だけでなく、診断においても活用できる可能性があること、愛知県では原因が不明の肺の病気が、他の都道府県より多いという特徴があるのですが、その一部はこのベリリウムが関係している可能性があることが考えられ、アウトカムも期待できるところです。本項目につきましては、難易度が「高」でもありますので、1段階上げた評価として、自己評定としては「A」とさせていただきました。以上です。

 

○今村主査

 只今御説明のあった事項について御意見、御質問等がありましたら、どうぞお願いいたします。

 

○三宅構成員

 私は労働安全衛生という観点から拝見させていただき、今の御説明も伺って、機構の改革により相乗効果というか、シナジーが表れているということが、少なくともまだオンゴーイングのものもあるわけですが、効果が表れつつあるという印象を持っています。その中で、厚生労働省所管の法人ですので、当然、行政からの要請に伴ってしなければならない研究というものと、研究機関ということであれば、研究者個人の独創的な発想により研究者自身のレベルを上げていくための基盤研究、それから全体で取り組むべきプロジェクト研究と、幾つかの課題に分かれて実施しているということで、これも非常にいい取組になっているのではないかと評価しています。

 その中で1つ懸念があるのは、他の省庁で所管されている旧国立研究機関に比べて、比較的予算としては恵まれている状況にあるのかなという印象を受けています。他の研究機関は非常に外部資金を積極的に取りに行って、汲々でやっている研究機関も少なくないということから、研究の予算としては比較的恵まれているので、更に今後じっくりと腰を据えて取り組むべき課題、短期的に成果を出さなければいけない課題と明確に分かれてやっているという形なので妥当で、順調に推移しているのではないかと私は評価しておりますので、概ね評価も妥当であると考えています。

 

○戸田構成員

1点だけ確認です。この項目は、難易度「高」、重要度「高」と付けていますが、重要度が高いというのは、機構が平成28年の4月に健康福祉機構と安衛研が統合されて、その中でも重要な研究を推進しているという観点から、重要度について高いとみなすのは理解できるのですが、難易度を高くしている理由について、確認のために改めて御説明いただければと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 基本的には、こういった有識者会議等の議論の中で付けていただいたものと考えているのですが、臨床研究を行っている者と、基礎研究をやっている者が一体となってやるというのが初めての取組ということで、そういう意味では手探りというところもあって始めているということですので、将来にわたって難易度「高」かどうかは分かりませんが、初年度となるこの中期計画においては非常に困難なものであると考えているところです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 追加させていただきます。大学の医学部ですと、医学研究は臨床研究部門講座と、横にある基礎研究、公衆衛生や生化学、基礎化学などがすぐに一体化できます。ただ、今回の合併においては、臨床部門、大学医学部でいうと病院が1か所ではなくて、全国34か所に散らばって臨床研究をしていた。そして、バイオ、安衛研は関東3か所に広く、秦野、登戸、清瀬で、ここは医学部の衛生学教室、生化学教室、動物実験教室もあり、かつ工学部の工学的・土木的災害の研究、化学爆発の研究など、医学部だけでなく総合大学でいう全学部の基礎研究に匹敵する研究を行う3つに散らばった基礎研究所がありました。これら全部をまとめて、医学だけでなく、医用工学、化学、土木を一体とした労災疾病の研究を、全国に散らばる多くの施設を統合して、基礎研究と臨床研究を一体化させて行うということは大きな社会実験であって、1つの総合大学にて統合した研究を行うよりも、非常に難しい作業を行わなければ、この研究は促進できませんし、この研究の多様性が発揮できないと考えております。ですので、難易度としては「高」ということも考えられるのではないかと思っております。

 

○労働基準局安全衛生部計画課長

 目標を設定している行政側としても補足させていただきます。先ほど機構から説明があったように、難易度が高いことを我々としても認めざるを得ないと考えたわけです。安衛研の持つ労働災害防止に係る基礎応用研究機能と、労災病院が持つ臨床研究機能とを一体化するというのは、国内でも初めてのチャレンジということですので、難易度「高」というのが妥当ではないかという考えで目標設定を行ったものです。

 

○今村主査

 ちなみに、例えば5ページのベリリウムに関する所で、これは政独委のフォーマットに対する若干のコメントです。アウトプットとアウトカムはいつも一緒になっていて、最終的にアウトカムは何なのかというのをきちんと捉えようとしない評価手法というのはまだ問題があると思うのですが、具体的にこれで改良型BeLPTですか、ベリリウムというのはどのぐらいのアウトカムがあるのでしょうか。具体的に患者などに、どのぐらいのアウトカムがあると考えられますか。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 先ほど申し上げましたように、慢性ベリリウム症はずっと累積して、ばく露したというよりも、感作があるかないかが非常に大きいというのが分かってきており、その中において幼若化試験というのは血液から感作が分かる検査です。そうすると、感作している人は、本当にばく露は止めないと危ないということがありますし、また実際に原因がよく分からない肺の病気の方の血液の検査をすると、もしかしたらベリリウムの感作をしていて、それが原因かというのも、いわゆる診断の方にも使えるという意味では、患者に対しての大きなアウトカムもあると思いますし、疾病予防という意味では、将来は特殊検診の項目などにも使われる可能性があるということでは大きなアウトカムが期待できるのではないかと思っています。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 今、委員長がおっしゃっているのは、改良型で何の効果があるのだということも含まれているかと思いますので、その点のお話をさせていただきます。これまでは、トリチウムという放射性物質を使って患者のリンパ球がベリリウムに感作しているかどうかを調べていました。しかし、放射性物質を使ったリンパ球の感作測定の値はぶれが大きいのです。同じ検体を3回測定しても、桁単位でぶれることも多いので、それを平均して感作しているかどうかという閾値を設定しますと、偽陰性や偽陽性が多くなることも考えられます。

 このトリチウムを使う方法では、このような測定値のぶれが多いので、ほかの測定法に改良することで、ぶれを少なくすれば偽陰性や偽陽性が少なくなる結果、確実な感作診断ができるようになり、本来はみつからなかったベリリウム感作症例を早い段階でみつけて患者さんのベリリウム症の発症を防げるのではないかという具体的な医学的なアウトカムを期待して行っています。

 

○今村主査

 ありがとうございました。大変よく分かりました。ほかには何かありますか。よろしいですか。では、次に1-1-2をお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

1-1-2の「労働者の健康・安全に係る重点的な研究の実施」です。6ページからです。本項目は、労働安全衛生総合研究所が実施するものとして定められている労働者の健康安全に係る重点的な研究です。7ページにありますように、統合する前と同様に、安衛研では安全衛生技術講演会を実施することや、延べ216名の研究員が自ら労働現場を訪問することにより、労働現場のニーズを把握しているところです。また、平成26年度に安衛研に設置された過労死等調査研究センターにおいては、過労死等事案の解析、職域コホート調査などの疫学研究、長時間労働と循環器負担のメカニズム解明などの実験研究を平成28年度も引き続き実施したところです。このほか、プロジェクト研究、基盤的研究、行政要請研究については、独法安衛研のときと比較して後退することがないように、確実に実施しているところです。8ページに目標に対する結果を載せています。それぞれの実績については目標値を上回っており、いずれも目標達成しています。

 6ページにお戻りください。本項目の自己評定ですが、年度計画に定められた事項、基準制改定への貢献や論文発表数、研究員の派遣・受入人数等、全て達成していることから、自己評定は「B」といたしました。以上です。

 

○今村主査

 御意見、御質問をお願いいたします。

 

○三宅構成員

 先ほどの私の発言で、一部1-1-2に関わることを先走って話をしてしまったようなのですが、このいろいろな取組の中で、研究として幾つかのフェーズに分けて短期的に成果を出すべきものと、長期的に基盤的に進めるものというように、幾つかのやり方で進めているということで、私は非常にいい取組になっていると思います。

 ただ1つ、その中で、例えば数値目標等で出てくる論文の数とか、研究成果のアウトプットというところで、数だけではなくて、例えばその論文の学術的成果などの質については、どういうアウトプットになっているのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 質の確保は私どもも課題と考えて、研究所でもその認識でおります。こういう目標が設定されている中で、最近は査読付き論文の数などが下がりつつあるので、そこはもう一度、研究所の中できちんと目標を定めまして、査読付き論文の数も増やしていこうという取組は現在行っているところです。

 

○今村主査

 以前、インパクトファクターなどを指標にして安衛研でもやっていらっしゃいましたが、それは今はもう。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 インパクトファクターは、『Industrial Health』という学術誌を発行しておりまして、それについて目標値を定めていたものです。

 

○今井主査

 発表の方ではないですね。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 はい。

 

○今村主査

 分かりました。よろしいですか。それでは、1-1-3をお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ここからは労災疾病等に係る研究開発の推進について御報告いたします。資料の9ページの1-1-3「労災疾病等に係る研究開発の推進」を御覧ください。この項目においては、主な中期目標として、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組むために、変更前の独立行政法人「労働者健康福祉機構」の第3期中期目標において取り上げた3領域については、重点研究の5分野と連携を図りつつ研究を行うことのほか、御覧のような目標などが定められております。その下にあるアウトプット指標の設定根拠は御覧のとおりで、全ての指標について目標を達成しているところです。

 ポンチ絵の内容について御説明いたします。10ページを御覧ください。現在、当機構において実施している労災疾病等に係る研究が、10ページの上に示している3領域9テーマです。本日は時間の関係もあり、赤字となっている「生活習慣病」及び「アスベスト」の2テーマに絞って説明させていただきます。

 まず生活習慣病です。これは労災病院群の強みであるそのスケールメリットを生かし、29の労災病院でこの症例収集の研究を進めました。現在注目されている過労死に至る主な疾患は心筋梗塞、脳卒中などがあります。これらの疾患は、月曜日の午前に高い確率で発症するという事実は各種研究で知られていますが原因は不明です。そこで、今回心臓疾患のリスクであるダブル・プロダクト、つまり血圧と脈拍数を掛けたものをダブル・プロダクトとしてそれに焦点を当て、その週間又は日内のリズムを検討した結果、右上にあるグラフのとおり、月曜日の午前に勤労者はダブル・プロダクトが上昇することが明らかになりました。この結果から、月曜日のダブル・プロダクトの上昇が月曜午前に高い確率で発症する心筋梗塞や脳卒中の原因であると推察されました。よって、月曜日の仕事量の抑制が勤労者の心疾患事故などの予防をする上で重要と示唆するものでしたので、「日本高血圧学会」の英文誌『Hypertention Research』に掲載され、かつ報道機関に発表したところ、日経、産経新聞など各誌で多く取り上げられ、マスコミにも注目いただいているところです。

 続いて、アスベストについてです。アスベストについては、以前より当機構が研究、相談、健診、診断など、積極的に取り組んできました。その研究成果を踏まえて、今般「アスベスト関連疾患日常診療ガイド」に最新の知見を取り入れて改訂しました。本ガイドはアスベスト関連疾患の診療を行う労災指定医療機関等の日本中の先生や産業医の皆様に有用な書籍であると考えています。

 続いて、このような研究成果の普及ですが、当機構のホームページの中に「労災疾病等医学研究普及サイト」という専門ページを作成しております。この普及サイトを数多く御覧いただくため、赤で囲っている普及サイトのバナー広告を厚生労働省や日本産業衛生学会、中央労働災害防止協会のホームページのトップページに掲載していただいています。また、右に示すように、普及サイト独自のリーフレットを作成し、労災病院、産業保健総合支援センターなど機構内の施設、さらに日本医師会、都道府県医師会、都道府県労働局に配布し、普及サイトを広報しています。このような積極的普及の結果、ホームページアクセス数は、機構全体として当初計画の225万回を上回る237万回のアクセス回数となりました。

 次に、過労死等の予防法、指導法の調査研究の推進についてです。過労死等については重点研究と連携しつつ、前年度から継続している24件の調査研究に加え平成28年度は18件を開始し、現在42件の調査研究を開始しています。予防法、指導法の開発については、平成28年度の計画値である5件について開発を行い、達成度は100%です。

11ページは行政機関への貢献です。当機構は以前より厚労省の委託事業を受託し石綿確定診断委員会を開催しています。この委員会は全国の労働基準監督署に労災請求された事案で石綿による疾患であるか否かを医学的に判断できない事案について、毎月専門家にお集まりいただいて診断を行っています。そして、アスベスト関連疾患の診断に係る日本で唯一の委員会です。近年その依頼件数は増加傾向にありますが、平成28年度については前年度に対して34.4%上回る172件の確定診断を行い、早期労災認定に貢献いたしました。また、右上に記載している医学的知見の提供ですが、環境省からの委託事業において、アスベスト関連疾患の1つである「びまん性胸膜肥厚症例」に係る新しい認定基準となり得る知見を環境省に提言いたしました。この認定基準が認められましたら、石綿健康被害救済法の認定基準の変更に大きく寄与することになると考えています。

 そのほか、国が設置する委員会等への参画については、54の審議会、委員会及び検討会に参画しているほか、厚労省の要請に応じ、労災診療費、レセプト審査事務の質の確保・向上を図ることを目的とした労働局のレセプト審査担当職員に対する研修へ、労災病院から医師6名を講師として派遣しました。また、労災認定の意見書作成ですが、その返書管理の徹底を行った結果、処理日数17.5日となり、基準年となる平成16年と比較して3.2日の短縮を達成しています。

 次にアスベスト関連疾患に関しては先ほどお話しましたように、これまで当機構の研究成果を生かし、全国25か所のアスベスト疾患センターを設置、運営し、国からの委託事業の受託など、行政に貢献してきました。

 最後にデータベースの構築です。当機構では、昭和59年より病職歴データとして、労災病院に入院した15歳以上の患者を対象として、サマリー(病歴)の作成と同時に、入院時に患者から聴き取った職業歴を本部サーバーに登録し、ビッグデータとして有しています。平成28年度からは、調査同意の方法の見直しを行い、平成28年度の調査率は前年の64.9%から83.5%と、18.6%大きく上昇しました。このビッグデータを活用して研究を行っており、平成28年度は5件の新たな学会論文発表を行いその内容を専用ホームページに掲載しています。以上が労災疾病等に係る研究開発の推進についての説明となります。

 全般的な評価としては、数値目標は達成していること、それぞれの計画及び重要度を示しているアスベスト関連疾患への対応も着実に行ったことから、自己評定を「B」としています。以上です。

 

○今村主査

 只今の御発言に対して、御意見や御質問がありましたらお願いいたします。順調に達成しているという感じですね。よろしいですか。次に、1-1-4をお願いします。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

1-1-4の「化学物質等の有害性調査の実施」についてです。説明資料の12ページです。本項目は労働者健康安全機構にとって新しい事業です。従来、国がバイオアッセイ研究センターに委託して実施していた化学物質の有害性調査が、平成28年度から機構の業務の1つになったところです。中期目標としては、国が指定する発がん性等の有害性が疑われる化学物質について、安衛法第58条に規定する化学物質の有害性の調査を計画的に実施すること等とされているところです。

13ページをご覧ください。平成28年度は、表にある6物質について、長期吸入試験を行ったところです。結果は、厚生労働省を通じてIARC(国際がん研究機関)に情報提供しており、平成28年度はアクロレインについて、発がん性があるということで報告しています。これ以外に、2物質について中期発がん性試験を、8物質について形質転換試験を行っているところです。また、試験の迅速化、効率化を図るための試験方法の検討ということで、発がん性の詳細調査が必要となる化学物質を絞り込むためのスクリーニング試験として、「遺伝子改変動物を用いた発がん性試験」を国の行政検討会において提案し、平成29年度以降に実施する試験として採用されたところです。本項目の評価は12ページに戻り、年度計画に定められた事項を全て達成していますので、自己評定は「B」としております。以上です。

 

○今村主査

 御意見、御質問をお願いいたします。

 

○三宅構成員

 化学物質については化学物質管理促進法の中で、他の省庁と連携していろいろと政策を進めていくことと理解しているのですが、その観点から研究という面において、他の省庁の所管する研究機関あるいは外部機関との連携で、こういった取組を進めるというのは何かあるのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 化学物質の有害性というのは、各省庁の目的に従って各省庁で行われているのですが、データについては一元化しようということで、製品評価技術基盤機構という経産省の関係する法人に全て情報を提供して、一覧表にしています。これは何年度に厚生労働省が調査を行った、何年度に環境省が調査を行ったという形で、一元的にまとめて見られるようになっています。そういうことで連携が進んでいると理解しています。

 

○今村主査

13ページに「アクロレインの長期吸入試験」と書いてあるのですが、下の6つの物質の中にはアクロレインは該当しないのでしょうか。その辺が分からないのですが。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 実際の試験というのは、ラット、マウスに吸入させた後に標本作成して最終的には報告書を取りまとめます。アクロレインについての取りまとめは平成27年度に終わって、報告したということです。

 

○今村主査

 分かりました。了解しました。よろしいでしょうか。次に、1-2にいきます。よろしくお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

1-2の「労働災害調査事業」について御説明いたします。説明資料の14ページからです。本項目は、安衛研が従来から実施してきた災害調査事業についてです。中期目標では、安衛法第96条の2に基づく災害調査等の実施について、緊急時も含めた連絡体制の整備、高度な専門的知見を有する研究員の現地派遣などにより、迅速かつ適切に労働災害の原因調査等を行うこととされているところです。

15ページを御覧ください。災害調査の流れは資料にあるとおりですが、重大な労働災害が発生した場合には、国からの要請を受け、安衛研の研究員を災害現場に派遣し、災害発生原因を科学的に分析し、特定した上で、国に報告することとなっています。災害調査の結果によっては、法改正等の再発防止対策などに反映されるということです。平成28年度においては、静岡県の事業場で発生した膀胱がん事案に関する災害調査の結果、MOCA(3,3ジクロロ-4,4ジアミノジフェニルメタン)という規制物質に係る特殊健康診断の項目に膀胱がん等の尿路系腫瘍を予防・早期発見するための項目を追加するという法令の一部改正に反映されたところです。これは、従来は消化器系等に影響があるということで、そこの特殊健康診断はやることになっていたのですが、それに尿路系も追加されたということです。また、福井県の事業場で発生した膀胱がん事案に関する災害調査が、オルト-トルイジンという規制物質への追加、経皮吸収対策の強化という法令改正に反映されたところです。

 災害調査の実績ですが、資料の写真にあるように、兵庫県で発生した橋梁建設工事における橋桁落下災害など、新規に14件の災害に対応したところです。また災害調査結果については、11件を新たに安衛研のホームページで公表したところです。このほか、労働基準監督署や警察署などからの依頼に基づく鑑定などが16件、石綿繊維測定など、労災保険給付に係る鑑別・鑑定等について12件対応しているところです。

 災害調査の報告書については、同種災害の再発防止や刑事事件の捜査・公判の資料として活用されているところです。この報告書は災害調査等の依頼があった全労働局・監督署に送付する際にはアンケート用紙を同封し、報告書の活用度を把握しているところです。平成28年度は、「報告書を災害の再発防止の指導や送検・公判維持のための資料として活用した」という割合は100%となっているところです。

14ページにお戻りください。本項目の自己評定です。年度計画に定められた事項を全て達成していること、加えて災害調査の結果により法令改正が行われており、これは当該事業場における再発防止のみならず他の事業場にも義務付けられるということですので、我が国の将来的な職業性疾病の発生防止に貢献しているということで、自己評定としては「A」とさせていただきました。以上です。

 

○今村主査

 只今の御説明に関して、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。

 

○中村構成員

 この分野はかねてより、非常によくやられている分野として評価しているところですが、今回の自己評定の「A」の根拠になっている、災害調査結果を法令改正に反映したということですが、御説明の中にあった膀胱がん等の尿路系腫瘍を予防・早期発見する云々の関係と、労働災害との関係を御説明していただけますか。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 これは、もともとオルト-トルイジンの方が先で、これは40人ぐらいの事業場で5人ぐらいに膀胱がんが発生しているということで、その原因の究明を行いました。

 その後、厚生労働省で、過去にオルト-トルイジンを取り扱った事業場で膀胱がんが発生しているのかどうかの調査を実施したところ、オルト-トルイジンは取り扱っていたのですが、必ずしもオルト-トルイジンを使っていた人ではなくても膀胱がんを発生している事業場があり、それも複数の膀胱がんが発生している。したがって、今度は労働者に対して、過去にどのような作業工程にいたのかとか、どういう物質をどう取り扱っていたのか、その事業場の過去の作業環境はどうだったのかを調査しました。MOCAというのは、許容濃度が過去に低く下げられた経緯があり、昔に使っていたときには許容濃度を守っていたのですが、現在の許容濃度では駄目だというようなところで、膀胱がんが、この物質で出ているということが分かったということです。従来はこの物質からは消化器系のがんということで特殊健康診断項目が決まっていたのですが、実際に膀胱がんが出ているということで、現在はそれに追加されて、いわゆる膀胱がんを予防するための検診項目が追加されたという経緯です。

 

○中村構成員

 質問の趣旨は、これ自体は非常にいいことだと思うのですが、ほかのところに入る余地はなかったのでしょうか。いわゆる労働災害というものなのか、職場の環境状態の範疇なのか。労働災害といったときの災害と位置付けるのか、それとも作業場の衛生法上の環境の問題からきたものなのか、そこの辺りの分け方について見解をお伺いしたかったのです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 追加いたします。15ページに書いておりますが、オルト-トルイジンに関して今おっしゃることが的確なところです。職場の環境というと、空気中に何か有害物質が飛散していないか、それが呼吸をしたときに体に入って、がんが出ないかという事象は、普通に今まで考えられてきたことです。しかし、ここに書いているように、オルト-トルイジンに係る規制の追加は、つまり経皮吸収なのです。今までの常識としては、物質を気道吸入したら、がん発症のリスクが高まるだろうということで、世界中有害物質の気道吸入を防ぐ対策を行ってきたのですが、この物質に関しては皮膚から吸収されて膀胱がんになるという、非常に医学的にも稀なもので、今までの労働環境だけを整えるだけではうまくいかないということを、新たな医学的知見を示したということで、素晴らしい成果と考えられることを加味して「A」としております。

 

○戸田構成員

 昨年も安衛研の説明の中で、労働災害の評価はさせていただいたと記憶しているのですが、その中で、報告書の活用については数値目標が平成27年度は設定されていたと思うのですが、今年度は設定されていないという理解でよろしいでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 従来の数値目標は、活用されたかされないかというアンケートです。これは100%で当然だという話であったのだと理解しています。

 

○労働基準局安全衛生部計画課長

 目標を設定した立場から評価に関する有識者会議の中でここの項目については、災害調査報告書については従来からニーズに対してしっかりしたレベルの高い成果を常に提供してきたということで、単純に数値目標で80%として、それが100%だったから125%の達成率で、「A」という評価になるわけですが、そういう目標の設定の仕方はおかしいのではないかという議論があったという経緯がありました。

 そういうことで、今回はその部分の80%という定量的な目標については、法人の中期目標においては設定を行わないこととしました。

 

○松浦構成員

1点確認させていただきます。災害調査の結果が法令改正に反映され、職業性疾病発生の防止に貢献したというお話で非常に大きな貢献だと思うのですが、オルト-トルイジンが有害であるという調査結果が出た時期と、それが省令や政令に反映された時期がいつであったかということを教えていただけますか。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 オルト-トルイジンについて調査を開始したのは、平成2712月からです。その後、継続的に調査を行っています。法令改正が行われたのは、平成28年度の秋ぐらいだったように記憶しています。

MOCAについては、その後に膀胱がんの調査結果が集まってきてからですから、5月、6月ぐらいにいろいろと事案があるということで調査を開始して、この政令改正は平成29年の2月ぐらいだったように記憶しています。

 

○松浦構成員

 なぜこのようなことをお伺いしたかというと、調査結果として明らかにされたことにと、結果としてそれが省令や政令に反映されたことについて、評価すべきは調査結果を公表されたことで、そういうことを明らかにされたタイミングで御貢献を評価すべきなのだろうと思うのですが、一方で法律の改正に結び付いたような重要な案件であるということが分かったのが、例えば平成28年の秋、若しくは平成29年の2月だったということでしたので、そのことを加味した評価をどのタイミングですべきなのか、悩ましいと思ったものですから、以上のような確認をさせていただきました。ありがとうございました。

 

○今村主査

 今の御質問は抜粋の3番の中の災害の防止対策の普及等に努めること等という、この防止対策として貢献されていると思うのですが、機構としては法令改正にどのぐらいコミットされたのかということだけ教えていただけますか。データの提供とか、いろいろな法令の根拠として。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 法令改正というのは根拠がしっかりしていないと労使の方々の納得がいかないということだと思うのですが、それにしっかりと説明できる中身の報告書を取りまとめたということだと思います。具体的な作業は行政の方で最終的には行いますので、その行政が説明されるのに足りる報告書の内容であったということと理解しています。

 

○志藤構成員

 非常に実も蓋もないことを申し上げるようで心苦しいのですが、そもそも、こちらの団体自体がそういうことに寄与するために設立されている団体ではないかと理解していまして、行政が何か法律を作るときに、その裏付けになる調査研究をきちんとやってくれるためという位置付けが大きな存在の理由かと思っていますので、それを成し遂げたということは、言ってみれば期待されている役割をきちんと果たしたということの理解となると思います。失礼な言い方かもしれませんが、私はそのように受け止めてお話を伺っておりました。

 

○今村主査

 「A」にするか「B」にするかというところで、20%増しがどのぐらいかということで、正に構成員がおっしゃったように、目標としては明らかには設定されていないけれども、結果としてこういう大きな法令改正に貢献したところがプラスアルファだという機構の御主張だということはよく分かりました。次に1-3にいきたいと思います。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

 次は、1-3の「労災病院事業」です。16ページです。主要な中期目標については、蓄積された医学的知見を基に最新の研究成果を踏まえて、高度・専門的な医療を提供するとともに、その質の向上を図るということ。また、大規模労働災害をはじめとした災害や公衆衛生上、重大な危害が発生した場合に、緊急な対応を速やかに行えるようにすること。また、地域医療への貢献につきましては、病床機能区分の変更ができない地域の連携を行うこととされております。主要なアウトプットの目標につきましては、8点あります。設定の根拠は水色で囲ったところです。全て達成しているという状況ですので、自己評定を「B」としております。17ページ以降で、その詳細を説明させていただきます。

17ページ、「高度・専門的な医療の提供」です。1点目、地域医療の中核的役割の推進として、県が指定する地域医療支援病院、国が指定する地域がん診療連携拠点病院の施設を維持し、がん拠点病院につきましては、新たに施設の指定を受けることができました。急性期医療の対応としましては、救急医療に係る診療報酬の施設基準として、救命救急入院料、ICUの施設管理料等々、施設基準の維持を引き続き行っております。また、高度医療機器の整備につきましては、自己資金によって計画的に整備を行っておりますが、内視鏡手術支援ロボット、いわゆるダヴィンチと言われるものですが、1施設新設をしているように、計画的に整備を続けております。社会復帰の促進の観点では、患者及び家族が抱える問題の解決に向けて支援を行うため、社会復帰を促進するために、MSWが様々な相談に対応し、相談件数については目標を達成しております。

 続きまして、18ページでは、特に大規模労働災害等への対応ということで、昨年4月に発生しました熊本地震への対応状況について説明させていただきます。図の左側ですが、発災後、直ちに機構本部では災害対策本部を立ち上げて、全国の労災病院からは被災地へDMATのチーム、医療救護班、JMAT、災害支援ナース等を派遣し、現地の災害支援を行っております。右側の図ですが、被災地の熊本県には、八代市に熊本労災病院があります。この病院では、発災直後からトリアージスペースを設置し、救急患者を受け入れております。また、倒壊の恐れがある近隣の病院から入院患者を受け入れる、あるいは近隣住民の避難所を一時的に作り、最大で505人を受け入れております。左側の図の真ん中辺りに、私どもの総合せき損センターという施設があります。福岡県にありますが、この施設では被災地から頚髄損傷患者の受入れをヘリ搬送で行っています。また、全国にあります産業保健総合支援センターでは、電話の相談による心のケアということで、心の相談ダイヤル・健康相談ダイヤルを設置し、相談を受けております。一番下ですが、これらの災害対策が落ち着いたところで、振り返りとしまして、昨年9月には機構本部に災害支援、救急を担当する医師等を集めて大規模災害の対応に係るディスカッションを行い、今年の1月には、その議論を踏まえて労災病院グループの組織的な支援体制の強化を図るために、従前からある労災病院の「災害対策要領」を改正いたしました。

 続きまして、19ページです。地域医療への貢献として、地域の医療需要、近隣病院の診療機能等を考慮した上で、最適な病床機能区分を検討し、平成28年度は、地域包括ケア病棟を6施設に導入しております。また、地域の地域医療を支援するという観点で、指標が5点ほどありますが、紹介率・逆紹介率につきましては左下の図にありますとおり、年々右肩上がりに率がアップしております。また、地域連携パス、地域医療機関の医師に対しての症例検討会、あるいは高度医療機器を用いた受託検査件数につきましても、全て目標を達成しているという状況です。加えて、救急搬送患者数につきましても右下の図にありますように年々右肩上がりに上がっており、それを受け入れているといった状況です。

 続きまして、20ページは、医療情報のICT化です。平成28年度は、2病院が電子カルテシステムを更新し、現在、電子カルテシステムは27施設に入っております。「日本再興戦略」改訂2015で掲げられましたように、2020年度までに400床以上の一般病院で電子カルテの普及率を90%にする目標についても既に平成26年度に達成しているという状況です。また労災レセプト電算処理システムも、1病院が新たに導入しました。次に、患者の意向の尊重と医療安全の充実という観点ですが、日本医療機能評価機構の病院機能評価の更新時期を迎えた5施設において再受審・更新を実施し、現在の認定施設は28施設となっております。また、医療安全の取組に関しまして、医療安全チェックシートを用いて全ての労災病院においてチェックを行っておりますし、近隣の病院で病院間相互に赴きまして、お互いにチェックをするといったことにも取り組んでおります。これらの取組により、患者満足度につきましては、右側に赤で囲っておりますが、入院と外来を合わせて83.3%ということで目標を達成しております。また、新薬の開発促進に資するためということで、治験推進を行っておりまして、広報活動に努めた結果、目標を大きく上回る症例数を達成しているという状況です。また、病院ごとに目標管理も行っており、目標値を設定してPDCAサイクルを取り入れて、それぞれの病院の実績の評価、検証も行っております。16ページに戻りまして、以上をもちまして、全ての年度の目標を達成しているということで、自己評定は「B」とさせていただいております。以上でございます。

 

○今村主査

 大変詳細な説明をありがとうございました。何か御意見はありますでしょうか。御意見はよろしいですか。では、次は1-4にいきたいと思います。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

1-421ページです。こちらは「産業保健総合支援センター事業」ということで、難易度「高」、重要度「高」となっております。主要な中期目標は、労働災害防止対策やメンタルヘルス対策など、国の施設として求められている産保活動について機能を充実・強化し、必要な支援を着実に提供することになっております。目標につきましては、9項目を設定しておりますが、8項目を達成しているということで自己評定は「B」としております。具体的には、次の22ページで説明をさせていただきます。

22ページの上の段です。産業保健活動の促進、産業保健関係者育成のための専門的研修という観点では、その実施に当たっては、アンケート調査等から研修テーマや内容に関する評価を行い、地域のニーズを的確に反映しながら進めております。参加型の研修、実践的研修も行いながら、研修を夜間・土日にも開催するなど、同受講者の利便性に配慮した結果、達成度119.5%ということで目標を達成しております。また、自主的産業保健活動促進のための事業主セミナーについても、目標を大きく上回って達成しているという状況です。次に、小規模事業場等における産業保健活動への支援の充実ですが、医師等による訪問指導、あるいはメンタルヘルス対策の個別訪問指導につきましても目標を達成しております。産保センターにおける専門的相談につきましては、目標をやや下回っておりますが、年々目標に向けて取り組んでおり、現在も取組を進めているところです。また、地域窓口における専門的相談につきましては、目標を大きく上回って達成しているという状況です。

 次に、23ページです。産保に係る情報の提供その他支援ということで、ホームページのアクセス件数は目標を達成しているという状況で、そこに書かれた動画、あるいは右側に書かれている周知活動のポスター等、いろいろとPRをしながら進めているということです。結果としまして、23ページの下ですけれども、研修内容・方法や相談対応の評価と産保活動への効果の把握の観点では、研修受講者から、あるいは相談利用者からの評価としては目標を達成しておりますし、利用者に対するアウトカム調査では、具体的に改善事項が見られた割合としては達成度120%ということで、目標を超えて達成しているという状況です。21ページに戻り、これらの目標達成といったところを踏まえて、自己評定を「B」とさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。これについて何か御意見、御質問をお願いします。よろしいですか。それでは、1-5に行きます。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

1-524ページです。「治療就労両立支援モデル事業」です。この項目では、主な中期目標としては、仕事を有する患者に対して、治療の過程、退院時に至るまで、就労継続や職場への復帰を念頭に置き、医療ソーシャルワーカー等を活用し、患者への支援を行うこと。また、仕事と治療の両立支援に係る正しい知識・理解の普及を適切にする等の目標が定められております。

 この項目では、一番下にありますとおり、アウトプット指標の数値目標を120%超えで達成しているということと、これまでの当機構が行ってきた労災疾病医学研究で得られた先駆的な知見なしでは成し得ない高度な専門性を必要とする取組によって、目標策定時に想定した以上に、政策実現に大きく寄与したということで、自己評定を「S」としております。具体的には、25ページ以降で取組の内容について説明をさせていただきます。

25ページ、左側の大きな図を御覧ください。「トライアングル型のサポート体制」として、上にある患者さんを中心に、医療機関と企業との橋渡し役のコーディネーターという存在を書いております。こうした支援スタイルを構築したのは当機構であり、当機構のオリジナルといったモデルです。

 私どもでは、従前から勤労者医療の観点で各種研究を進めておりますが、治療と仕事の両立という観点で疾病分野ごとに研究を行っております。こうした研究の中で、患者さん自身が複雑な医療状況を的確に職場に伝えることは非常に困難ということと、主治医・看護師・MSWのような知識を持ったコーディネーターの存在とその育成が医療側には必要という知見が得られております。これを受け、コーディネーターを中心とした支援を平成2610月からモデル事業として始めたものでして、ほかの医療機関にはない独創的な取組と言えると思います。

 右側の上、復職コーディネーターの養成についてです。平成27年度からコーディネーターの体系的なカリキュラムを作り養成を開始しております。労災病院のMSW、看護師などの基礎研修については、47名の受講者を得ております。また、基礎研修を終わって実務を経験した人たちを対象にして、ケーススタディー形式によるグループワーク等、応用研修ということで開催し、36名の受講者を得ているところです。研修受講者からは、有用度97.6%の高い評価を得ております。

 右下の支援事例の収集です。研修を修了したコーディネーターを中心に、各地の労災病院において、支援チームが職場復帰や両立支援を実践し、がん、糖尿病、脳卒中、メンタルヘルスの4分野で症例の収集を行っております。四半期ごとに好事例等を収集するなど、施設間で情報を共有し、フィードバックをしております。

26ページです。(3)ですが、「医療機関向けマニュアル」ということで、今申し上げました集積された両立支援のノウハウを、ほかの医療機関でも活用できるようにしたということで、今年3月に、疾病4分野別に、作成・発刊しております。医療従事者向けですが、企業の労務管理者・担当者・産業保健スタッフ等が基本的な取組について理解できるように構成されております。さらには、来年度から導入される医学部教育のコアカリキュラムでも両立支援は盛り込まれており、全国医学部長会議などを経由し、医学部教育の中での教科書として、このマニュアルも活用いただくよう発信をしております。プレス発表も行い、周知、メールでも取り上げられております。現在、このマニュアルはコーディネーター研修に一部使っており、広く普及を図る予定です。

 (4)支援罹患者に対するアンケート実施です。実施の支援が、就労者患者に対するアンケートを実施した結果、97.8%、達成度120%を超える有用度となっております。さらに、ページ下にありますとおり、昨年度から労災病院に相談窓口を開設し、労災病院の患者さん以外にも地域の事業者等の相談を受けるために体制の構築を始めました。

 右側上の写真を御覧ください。治療と仕事をいかに両立させていくかということが、我が国の今後の社会的課題となる中、本年2月には、働き方改革実現会議の民間委員である、自らもがんサバイバーである女優の生稲晃子さん、更には3月、働き方改革担当大臣の加藤勝信氏に、東京労災病院を御視察いただく機会を得ました。当機構が他機関に先駆けて実施してきた両立支援モデル事業の特色のある取組を御確認いただいております。その結果、今年328日に政府が決定しました「働き方改革実行計画」に、主治医、会社・産業医、両立支援コーディネーターの三者によるトライアングル型のサポーター体制の構築、そして、このコーディネーターの養成という当機構が実施してきた取組内容が、国の目指す施策として明記されたところです。

24ページに戻ります。以上のとおり、この項目では設定した数値目標を120%超えで達成したことに加え、今後、社会へ普及を図るためにツールとなるマニュアルを他機関に先駆けて作りました。また、これはコーディネーターを中心に支援を進めるという当機構の独自のスタイルが「働き方改革実行計画」に明記されるということもあり、目標策定時に想定した以上の政策実現に大きく寄与したものと考え、自己評定を「S」としております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。只今の報告に対して、御意見・御質問をお願いします。

 

○戸田構成員

 御説明ありがとうございました。「S」という評価を付けられているということですので、見方としては、定量的な数値では120%を超えていることと、それに加えて定性的にも質的な顕著な成果が見られるところが評価基準になるかと思うのです。今回、恐らく機構としては、そういう「働き方改革実行計画」の中で、機構が以前から取り組んでいらっしゃる治療と就労の両立支援モデルを活用されているというところで、私自身の個人的な見解として、これは「A」とするのであれば、先ほどの項目1-2との関連でも、質的にも成果を挙げているところは評価できると思うのですが、「S」とするには、もう一段、説明が必要なのではないかと。恐らく働き方改革の政府の取組自体が、かなりスピーディーに進んできていることもありますので、その中で機構としても柔軟に対応されているということは評価できることだと思うものの、これまで治療と就労の両立支援モデルは、昨年度もいろいろと御説明いただいたとおり進めてきていらっしゃるところではありますので、「S」にするには、もう少し説明をしていただく必要があるのではないかと思います。以上です。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。補足説明をさせていただきます。これまで病院においては、病気になった患者さんへの相談支援はどの病院でも行っておりました。例えば、一番有名なのが、がんに罹られると、その病院にはがん相談支援室というのがあって、「がんになりました。このがんに対してはどういう治療があるのでしょうか、私は抗がん剤で髪の毛が抜けてしまいどうしたら良いでしょうか」などの相談に応じる相談支援室等、いわゆる患者さんへの支援はありました。これは日本社会で定着しております。

 ただ、今回の我々の両立支援は、医療関係、病院においての患者様の具合、つまり病状などの相談及び支援プラス、その方の職場、事業場に対してもコミットメントをする。患者情報、つまりはその患者様がその職場で就労するにはいかなる配慮を職場でしていただければよいかを、医療者側から事業場へ伝えて、その患者様の職場の就労の環境を整えていただくことまでも関与して、治療と就労を続けていただくのが方針です。

 政府の働き方改革の中にこれを取り入れられたのは、何が大きいかと言いますと、今までの医療支援はあくまで医療者側でした。しかし、今後は、医療者側が事業者側にそのことを伝えて、事業所側への環境調整もお願いするということで、日本の医療の在り方の社会と事業所との関連性という新しい文化、日本の医療・治療の文化を大きく変革したと考えています。治療と就労の両立支援は今後の少子・高齢化、特に高齢化社会において高齢者の方々に働いていただくにおいての日本の社会文化を大きく変える取組として発展していると考えていますので、「S」とさせていただきました。それも加味していただければと思っています。

 

○松浦構成員

 御説明いただきまして、ありがとうございます。2点教えていただきたいと思います。1点目は、両立支援コーディネーターについて先行的に実施されてきたということですが、25ページのスライドの治療就労両立支援のモデル事業がどういう位置付けのものなのかが、1点目の質問です。要は、委託事業なのかどうかということです。

 もう1つは、有用度が97.8%ということで、達成度122.3%というお話だったと思うのですが、これは具体的なアンケートの調査項目として、どのような設問をされて、どういった回答が97.8%なのかについて、補足的に教えていただきたいと思います。以上です。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。平成26年度から行っています両立支援というモデル事業は、あくまで労災病院群、34病院群が取り組んできたオリジナルのもので、労災病院のドクターたちが発想した支援の方策です、別にどこから委託されたわけでもなくて。労災病院自体がこのオリジナルのアイディアで行っています。

 それ以前、つまり、モデル事業で実際に患者様に応用する前には、平成21年からだったと思うのですが、労災病院の研究として、どういうことをすれば、就労が治療と両立できるかを検討する研究を行いました。そこで初めてコーディネーターという存在がいて、医療者側と事業所側をとりもつことができたらいいねという研究成果の下に、平成27年からコーディネーターを養成して、労災病院でオリジナルで、この事業を行ってきたわけです。

 あと、今のアンケートについてですが、部長、お願いします。

 

○労働者健康安全機構医療企画部長

 支援患者の有用度ということでよろしいでしょうか。実際に、なかなか支援の介入は、全ての患者様がこの支援を受けることはない中ですが、この支援を継続していく中で、復帰された方に、実際、我々の支援介入について、どのような形でということで、それぞれ。

 

○労働者健康安全機構理事(前田)

 研修のアンケートの有用度の話ではないのですか。

 

○労働者健康安全機構医療企画部長

 研修ではなくて、患者様の満足度のアンケートだと思います。26ページの97.8%のほうでよろしいのですよね。

 

○松浦構成員

97.8%のほうです。

 

○労働者健康安全機構医療企画部長

 そのほうでよろしいのですよね。

 

○松浦構成員

 はい。

 

○労働者健康安全機構医療企画部長

 それで今、お答えしているのです。実際にどのようなことがよかったかと、幾つかの項目を挙げて、あとは自由記載ということで書いていただいた、それが26ページに書いているところです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 委員の御質問は内容ですよね。つまり、どういうアンケートで有用度を決めているかということですね。

 

○松浦構成員

 そうです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 「非常に満足している」「満足している」「どちらかと言えば満足」「余り満足していない」「満足していない」という5つの項目で評価しております。そして、「非常に満足している」「満足している」がこれを85.7%です。「どちらかと言えば満足」というのが12.1%ですので、その3つを足して97.8%とさせていただいているところです。よろしいでしょうか。

 

○松浦構成員

 できれば、その内訳を。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 「非常に満足している」(28.6)、「満足している」(57.1)、「どちらかと言えば満足」(12.1)、「余り満足していない」(1.1)、「満足していない」(1.1)です。

 

○松浦構成員

 ありがとうございます。

 

○中村構成員

 いろいろ御説明ありがとうございます。この件ですが、非常に独創的であって、かつ先進的な取組だろうと、私は評価しているのです。しかも、ここはやっただけではなくて、事例を収集して、それをフィードバックしているということで、この事業そのものがうまく展開しているということで、医療行政あるいは医療の在り方にも影響を与えるような先進的な取組ではないかと思っているのですが、実際にコーディネーターなる資格を持っていると言いますか、資格かどうか分かりませんが、どのぐらいのコーディネーターがこの中で活躍されているのかを教えていただければと思うのです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 先ほども申し上げましたように、今まではコーディネーターは我々の機構の中で育っていました。機構で約100人弱が働いています。ただ、政府の働き方が2,000人養成ということですので、これは今年度の話ではありませんが、我々のコーディネーター養成研修においては、今年度だけで既に500名の申込みがありました。更なる受講応募希望もありますが、今年度は応募を締め切りましたためお断りしている状況です。つまり、「もっとコーディネーター養成研修を行って下さい」というご要望が多いのです。今年度は、労災病院ではなくて、日本全国の病院や各両立支援関係者にコーディネーター養成研修を行い500名を養成しますので、今後、コーディネーターは爆発的に増えていくとは思っています。

 

○中村構成員

 「S」というのは非常に重いのですが、非常に値する取組かと私は思っております。

 

○戸田構成員

 ありがとうございます。先ほどの質問から、また追加の質問で恐縮ですが、先ほど「S」とする根拠の御説明として、コーディネーターが企業に情報を提供することが重要なポイントだということをおっしゃっていただいたかと思うのですが、これ自体は、結構、平成28年度から始めたという理解なのか。私自身は以前からも御説明を伺っていると、そういうことはずっとやっていらっしゃっていて、平成28年度以前からもやっていらっしゃっていて、それがうまく機能しているという理解でいたのですが、この点は「S」と付けさせていただくためには、平成28年度の中で、取りたてて質の高い顕著な成果があったことを説明しないと、なかなか厳しいところですので、この点を確認させていただければと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 モデル事業は平成26年度から実施しております。これまでの機構の中の取組だけで考えますと、労災病院の患者様で支援をした方が、ちなみに平成27年度は403人、本年度が532人と、労災病院群34病院の中でもこれだけの支援数が増えてきております、ということが1つ。

 そして、今回は、先ほども紹介しましたが、平成28年度は労災病院の患者だけではなくて、外の、つまり他の病院に掛かられている方も、両立支援について相談したいという方に対しましては、当機構の産業保健総合支援センターに窓口を作り、外の患者様にも向けて、平成28年度からは両立支援の相談を開始しております。それらが認められて、今度はこの方策が政府の方針となったということで、平成28年度に大きく、ホップ・ステップ・ジャンプしたと考えております。

 

○労働者健康安全機構理事長

 少し追加させていただきます。「S」の「S」たる所以についての御意見が恐らく出るだろうと十分予想していて、現にそのとおりなのですが、今言われたように、機構としてやるべきことを今まで粛々とやってきたと。その延長だったら「B」でいいではないかという意見もあるわけですよね。実は勤労者の一人一人の人生を豊かなものにしていこうとか、地域で展開できる労働力をそれなりの方策で維持していこうとかというふうな非常に大きな意味からしますと、今言ったような粛々としてやってきた労災病院、並びにこの機構の歴史的な仕事ぶりは、一定の評価があっていいのですが、実は平成28年度から労災病院のない地域においても、同じように労働者がそれなりの恩恵に浴する必要があるだろうとか、国民全体がこのような新しい方法論に従って良い人生を送ってもらうことができるのではないかと新機軸を出してみた。したがって、ほかの病院でも、また、ほかの地域においても、これができるようにしていきたいという基本的な、そういう意味での戦略を平成28年度はきちっとまとめた。そのような意味において、本件は私たちの機構に、潜在的には多分予定されていたのかもしれませんが、もともと目標設定時に想定されて粛々としてやってきた仕事の延長線上にあると言うよりは、理念上の違う次元へ向かって出発しているということになります。その意味において、この機構の社会的な意味は、私から言わせると、「スーパーS」ではないかと思うぐらいに、大変な飛躍をしようとしているという形での理解です。

 

○今村主査

 理事長自らの御説明をありがとうございました。時間も限られていますので、手短にお願いします。

 

○志藤構成員

 今、理事長のお話を伺って、それはそれで私の中でストンと落ちることではあるのですが、先ほど申し上げたこととベースは一緒ですが、意気込みや文化を変えるという、私たちが今、この世の中でやらなくてはいけないことは、多分そういうことだと思いますので、その意気に関しては、私も自分の仕事などに全く同じようなことを思っておりますので、そのこと自体は大変本当に大事なことだと思っております。

 ただ、仕組み作りは、あくまで仕組み作りであり、その仕組みが、どううまく機能して、これから本当に世の中が変わっていくのかというところが、兆しとして見えてこない段階では、いい仕組みを作ったから、それが多くの方に評価されたし、政策にも非常に取り上げられたからといって、「S」を付けていいものかどうかは、私は少し判断をしかねているところがあります。

 

○今村主査

 ありがとうございます。実は一昨日、シリコンバレーでベンチャー支援をしている日本人の方とお話をして、シリコンバレーと日本で何が違うかというと、日本にはエコシステムがないと。つまり、いろいろなものを連携して活性するという仕組みができていないと。そういう意味で、正に、この試みはエコシステムをきちっと作っていこうという画期的な試みだというのは十分理解できると思います。

 ただ、今、最後におっしゃったように、仕組みを作ることと、アウトカム、ここはアウトカムの評価ですから、アウトカムがどのぐらい達成されたかを基に評価することになりますので、あくまでも今の時点では「S」とするだけのアウトカムはまだ十分ではないかもしれないという印象を受けたところです。もちろん、これは画期的な試みで、将来、「スーパーS」になる可能性はあると思います。ということで、現状はアウトカムが十分出揃っていないという御意見が多かったということになるかと思います。ただ、委員の中で全て共感するのは、非常に期待できることは十分あると感じていることです。よろしいですか。

 次に、1-6に行きます。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

27ページ、1-6、「専門センター事業」です。主な中期目標ですが、岡山県にあります「医療リハビリテーションセンター」、福岡県にあります「総合せき損センター」において、職場・自宅復帰可能である退院患者の割合を80%以上確保することとなっております。目標をそれぞれに達成しておりますので、自己評定を「B」としておりますが、詳しくは28ページで説明させていただきます。

 上段は医療リハビリテーションセンターです。四肢・脊椎障害者、中枢神経麻痺患者等の全身管理等、診療、リハ及び退院後のケアまでを一貫して実施をしております。平成28年度の実績としては、社会復帰率は実績89.3%という目標を達成しております。また、隣接する職業リハセンターとの連携強化も図っております。医用工学研究の取組も行っており、住宅改造計画に3DCGを用いたり、在宅就労支援としてあご操作マウスを開発する等の取組を行っております。

 下段は総合せき損センターです。せき髄損傷者の全身管理が必要な患者に特化して、受傷直後からリハに至るまで一貫して実施をしております。社会復帰率は実績80.9%の達成をしております。また、医師あるいは看護師を対象としたセミナーを毎年開催し、せき損医療の知見の発信をしております。こちらでも医用工学研究の取組を行っており、スイッチスマホコールについては、平成28年度に製品評価を終了して、今、市販化という道を歩んでおります。等々の工学研究を行っております。

 右側の図ですが、医用工学研究成果について、毎年行われる国際福祉機器展で広報活動を行っており、介護用機器や福祉機器の普及、商品化に努めております。

27ページですが、それを踏まえて自己評定として、「B」とさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 只今の御説明について、御意見・御質問がありましたら、どうぞお願いします。よろしいですか。では、1-7に行きます。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

29ページ、1-7、「未払賃金立替払事業」です。重要度は「高」です。

 主な中期目標としては、審査を適正に行うとともに、効率化を図ることにより、不備事案を除き、受付日から支払日までの期間について、平均で25日以内を維持することとなっております。実績として、16.6日ということで目標を達成しておりますので、「B」としておりますが、次のページで説明させていただきます。

30ページです。上半分が、立替払の迅速化ですが、この制度は、企業倒産に伴い賃金が未払いのまま退職した労働者とその家族の生活安定を図るセーフティネットとして重要な役割を有しておりますので、迅速な支払に努力をしているところです。

 請求の受付から支払日までの期間は16.6日ということで、そこに書かれているような取組を行いながら達成をしております。立替払の求償という観点では、債権の保全管理や最大限確実な回収を図るため、事業主等に対する立替払金を求償しております。情報開示について、立替払額や回収金額については、当機構及び厚労省のホームページにおいて情報公開を実施しております。

29ページに戻りますが、これは目標を達成しているということで、自己評定は「B」とさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。只今の御説明に対して、御意見や御質問等はありますか。よろしいですか。1-8に行きます。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

31ページ、1-8、「納骨堂運営事業」で、重要度「高」です。

 主な中期目標として、産業災害殉職者の慰霊の場にふさわしい環境整備を行い、来堂者、遺族等から、慰霊の場としてふさわしいとの評価を毎年90%以上得ること等となっております。目標を達成しておりますので、「B」としておりますが、32ページで御説明させていただきます。

 労働災害による殉職者の御霊を合祀するため、東京都八王子市高尾に「高尾みころも霊堂」を設置・運営しております。毎年秋には、遺族及び関係団体代表者等をお招きし、「産業殉職者合祀慰霊式」を開催しております。

 四半期ごとに参拝者からのアンケート結果について検討会を開きながら、慰霊環境の改善に向けた取組を行っております。左真ん中辺りに水色でくくっておりますが、これまでいろいろなことを改善して取り組んできましたが、これに加えて平成28年度は、遺族休憩所前に食事場所を設置する等の取組を新たに行っております。

 これらの結果、「非常に満足」「満足」については95.5%を達成し、達成率は106%、「非常に満足」については、再掲ですが55.7%ということで、これも目標を達成しております。

 事業周知についても鋭意に取組を進めているところでして、31ページに戻りますが、これを踏まえて自己評定を「B」とさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 御意見、御質問等はありますか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、次の事項に移ります。続いて、業務運営の効率化に関する事項、財務内容の改善に関する事項、及びその他業務運営に関する重要事項に係る項目別評定について議論いたします。先ほどと同様の流れで、法人からポイントを絞って、ごく簡潔な御説明を頂き、そのあと質疑応答をお願いいたします。それでは、2-1からお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

33ページ、2-1、「業務運営の効率化に関する事項」です。主な中期目標は、統合効果を発揮していく中で、中期目標期間中に管理部門で1割程度の人員を削減する等、運営体制の合理化を行うこと。運営費交付金を充当して行う事業については、中期目標期間の最終年度において、平成26年度予算に比して、一般管理費については12%程度の額、事業費については4%程度の額をそれぞれ削減すること等となっております。それぞれ3つの指標について目標を達成しておりますので、自己評定は「B」としておりますが、詳しくは34ページで説明いたします。

 青色で括った所が一般管理費、緑で括った所が事業費です。一般管理費については、人件費の抑制、管理部門の削減ということで実績2名、また「調達等合理化計画」及び「省エネ・省資源の推進」ということで真ん中に棒グラフがありますが、目標値が6%のところ、6.2%の削減となっております。事業費についても、同様に「調達等合理計画」「省エネの推進」ということで、目標値が2%のところ、4.1%の削減を達成しております。下の方に、専門の医療センター事業の運営と書いてありますが、評価指標ではありませんが、交付金率は平成20年度の割合を超えないものとするとされておりますので、平成28年度は交付金率が5.4%となっております。この要因については、医療リハビリテーションセンターにおいて、医師未充足等により収入が減っているといった影響によるものです。課題は医師確保ということですので、引き続き大学医局等へ積極的に働き掛け、医師の確保に努め、医療水準の向上・維持を図っているところです。これらを踏まえ、自己評定を「B」とさせていただいたものです。以上です。

 

○今村主査

 只今の御説明に対して、御意見、御質問はありますか。よろしいですか。では、次に3-1をお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

35ページ、「財務内容の改善に関する事項」です。主な中期目標については、高額医療機器等の共同購入等、国病機構等の公的医療機関との連携、医師が不足する病院の医師確保等を行い、労災病院の経営改善を図ること。また、繰越欠損金については、その解消を図るために必要な機構全体の取組を行うこととなっております。目標を達成しておりますので、自己評定を「B」としておりますが、次の36ページで説明いたします。

 経営改善に向けた取組として、機構本部のガバナンスの充実・強化を図りながら進めております。本部において、経営改善推進会議を定期的に月2回開催し、リアルタイムで各施設の業務運営の効率化を推進しております。また、この会議には外部有識者として、経団連から招聘しております。左上の本部における取組事項ですが、経営状況が特に悪化傾向にある病院に対する個別指導支援として、病院長等へのヒアリング、あるいは出張しての指導等を行っております。また、共同購入・共同入札として、医薬品については国病機構・国立高度専門医療センターとの共同入札を実施、あるいは、高額医療機器については、国病機構及びJCHOとの共同入札を実施し、削減効果は4億円強の効果が出ております。リース調達物件については、労災病院グループの中で共同入札を行っております。医師確保対策として、労災病院間の医師派遣等の医師確保支援制度を作っており、これを活用しております。また、期末勤勉手当については、国は4.30月ですが、抑制をして支給月数を4.14月としております。

 本部と病院の共同取組の事例としては、医療材料についてベンチマークシステム、あるいは後発医薬品についても採用拡大を年々図っております。また、本部と個々の病院が協議をすることを通じて、より効率的な医療を提供しております。これらの取組とともに、損益改善に向けて大きな課題であった厚生年金基金の新制度への移行については、この1年間手続を着実に進め、この4月に厚生年金基金に代わる新制度の設立の承認を受けております。これらの取組により、平成28年度の当期損益は、プラス1,115億円となり、繰越欠損金マイナス579億円を解消し、利益剰余金536億円を出しております。繰越欠損金は、平成28年度において解消しました。35ページに戻りますが、これらを踏まえ、自己評定を「B」とさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 この項目は、前年度は「C」評価だったのですが、今年度は繰越欠損金を解消したということで、「B」評価という提案です。よろしいでしょうか。

 

○宮崎構成員

 御説明ありがとうございます。2点ほど教えていただきたいのですが、36ページの損益が改善した要因のところに、本部の取組事例などが記載されているのですが、決算財務諸表等を見ますと、要するに労災病院事業の損益が経常損益段階で前年度マイナス70億円ほどが本年度はプラス70億円ほどに改善していまして、大体140億円ぐらい改善していると見られたのですが、ここに記載していただいているものの数字だけを見ると、数字としては共同購入などだけでは、そこまでの効果はないのかなと思っています。1点目の質問としては、書いていただいている項目の中で、特にどこが一番効果が大きかったのかということを教えていただきたいです。

 もう一点は、累積の損失が解消した一番大きい要因が厚生年金基金の代行返上で、将来分支給義務の免除、将来分返上認可と。これで1,000億円ぐらい改善しているのですが、要因として、新制度への移行ということで、確定給付と確定拠出の併用型と書いてあるのですが、要するに、確定拠出年金への移行割合がかなり大きかったのかなと理解したところなのですが、おおむねどれぐらいの割合が確定拠出に移行したのかを教えていただければと思います。

 

○労働者健康安全機構経理部長

1点目の関係でお答えいたします。委員御指摘のように、平成27年度は経常損益で約73億円の損失を計上しました。それが、今年度では経常損益として74億円ほどのプラスになっております。その数字については、資料1-4のセグメント情報の左から3つ目に労災病院事業とあります。そこのところで、経常利益が74億円ほどになっております。その要因としては、経常費用が大幅に減少したということです。経常費用の中には、やはり代行返上の影響等があり、将来分については大幅な退職給付費用の減少要因だったものですから、これに伴い経常費用が大幅に減となり、その結果、経常損益も74億円ほどのプラスに転じたということです。

 

○労働者健康安全機構理事(前田)

 厚生年金基金の関係ですが、基本的には代行返上で1,000億円ぐらいの利益になったということですが、それを確定給付と確定拠出の新制度に移行したということです。ただ、ウエイトとしては確定給付の方が多くて、確定拠出については、個人で掛金を選択するような形になっているとともに加入自体が任意です。過去の厚生年金基金との給付水準と合わせようと思うと、確定拠出を毎月3,000円ぐらいの掛金となりますので、確定給付の方がウエイトは高いのですが、いずれにしても代行返上したことによって退職給付債務が大幅に減ったということが、累積欠損金の解消にとっては一番大きく影響しているということです。

 

○今村主査

 よろしいですか。

 

○宮崎構成員

 分かりました。ありがとうございます。

 

○今村主査

 では、次に4-1に移ります。説明をお願いします。

 

○労働者健康安全機構経営企画室長

37ページです。4-1、「その他業務運営に関する重要事項」です。主な中期目標については、機構の業務運営に見合った人材の採用に努めること、適切な能力開発を実施し、業績評価を反映する取組を実施し、職員の意欲の向上を図ること。労災病院においては、医師等の確保、定着について強化を図るとともに、OJTにより、その専門性を高める。労災看護専門学校においては、勤労者医療の推進に必要な専門的な看護師を養成し、看護師国家試験合格率を全国平均以上とすること等の中期目標になっております。アウトプット指標については3点ありますが、それぞれ達成していますので、自己評定は「B」としておりますが、38ページ以降で詳細は説明いたします。

 まず、人事に関する事項ですが、優秀な研究員の確保・育成ということで、産業安全と労働衛生の研究を担う資質の高い研究員の採用活動を進めております。研究員は、原則、3年間の任期付け研究員として採用し、3年後、それまでの研究成果等を評価した上で、任期を付さない研究職員として採用をしております。次に、医療従事者の確保ですが、優秀な医師の育成等、そして臨床研修医及び専攻医の確保ということで、臨床研修指導医講習会、あるいは初期臨床研修医に対する集合研修、また病院見学・病院実習を積極的に受け入れるとともに、全国で開催される「レジナビ」等に参加してPRを行っております。これらの取組の結果、右の方に赤く括ってありますが、労災病院全体で初期臨床研修医117名を採用しております。また、医師等の働きやすい環境の整備ということで、院内保育体制を充実し、医師短時間勤務制度の活用も推進しております。人材交流については、労災病院間で管理職以外のスタッフを中心に人事異動も実施しております。研修については、国病機構と相互に乗り入れて研修を行っております。専門看護師、認定看護師等も、グラフにありますように年々右肩上がりに増えているところです。

 次に39ページです。各職種の研修プログラムについては、研修後のアンケート等に基づいて毎年プログラムを見直しております。有益度調査においては、実績88.8%と目標を達成しているところです。また、専門性を有する看護師の養成ということで、看護師の国家試験合格率については、実績98%ということで達成をしています。労災病院間における医師の派遣については、医師確保支援制度に基づき、特に都市部から地方への医師の派遣ということで、7(45名の医師)を派遣しております。

 次に、産業医等の育成支援体制については、当機構と産業医科大学の連携を図るということで、意見交換会等を実施して連携を深めております。

また、障害者雇用の着実な実施については、本部に理事長直轄の障害者雇用専門職と専門員を配置し、毎月理事会でその情報を共有することとしています。法定雇用率(2.3)を上回って、3月現在の障害者雇用率は2.89%を維持している状況です。

 次に40ページです。労働安全衛生融資の資金の貸付については、平成13年度をもちまして新規の貸付を中止しております。現在は、その債権の管理・回収業務をやっておりますが、目標を大幅に達成した回収を行っているところです。

次に、内部統制の充実・強化では、内部統制の仕組みが有効に機能しているかどうかという点検・検証のために、内部統制委員会を開催し、発生したリスクへの対応等を検討し、業務に内在するリスクの洗い出し等、その取組について検討を行っております。また、外部の専門家を交えて、コンプライアンス推進委員会を開催し、リスクの発現状況についても審議をしております。内部監査室による監査も、昨年は本部と33施設の内部監査を実施しております。

 次に、業績評価の実施です。当機構では、バランス・スコアカードを用いて、内部業績評価を実施しております。図にあるようなPDCAサイクルを用いて行っているところです。また、内部業績の評価の委員会についても、年2回開催し、委員会による業績評価の結果、及び指摘事項の改善策をホームページで公表しております。

41ページです。公正で適切な業務運営に向けた取組として、情報公開については、独法通則法に基づく公表資料のみならず、調達関係の情報、特許情報等をホームページ上で積極的に公開をしております。また、研究員の研究倫理の遵守等にも取り組んでいるところです。

 最後に情報セキュリティーですが、個人情報保護の重要性の周知徹底ということで、毎年行われております各種会議、あるいは管理職を対象とした研修会を通じて、留意すべき事項等について周知徹底を図っております。また情報セキュリティ対策の推進としては、全施設に対して情報セキュリティに係る注意喚起文を発出するということで、継続的に周知徹底を実施しております。昨年12月には、標的型メール攻撃に係る訓練を全施設で行い、対応能力の強化にも努めております。また、情報セキュリティの指導及び対策の改善策として各施設に赴き、対策、監査、指導等を行っております。これらの取組により、平成28年度は情報セキュリティのインシデントは未発生でした。

37ページに戻りますが、これら目標をそれぞれ達成していることを踏まえ、自己評定を「B」とさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 それでは、御意見、御質問をお願いいたします。

 

○三宅構成員

 特に人事に関することなのですが、優秀な研究員、あるいは医療従事者の確保は喫緊の課題ですし、これはどこの組織でもそうだと思うのです。特に、優秀な人材を確保して、きちんと育成していくための仕組み、そのための仕掛けがどのように行われているのかということです。例えば、ここに書いてありますように、業績評価にも反映するという形で、人事や給与に反映すると書いてあるのですが、この具体的なところを教えていただければというのが1つです。

 それから、例えば採用や雇用に関して、連携というのはいろいろと出てきているのですが、フレキシブルな対応をするものとして、クロスアポイントメントのような形で、他の機関と協力関係を結んで、より活性化するような仕組みは、何か取組があるのかどうかを教えてください。

 

○労働者健康安全機構理事(前田)

 研究員については、研究成果について業績評価をした上で、それを給与に反映するという形でやっているところです。

 

○三宅構成員

 雇用の形態として、例えばクロスアポイントメント制度のようなものを取り入れて、他の機関と、より具体的な。

 

○労働者健康安全機構理事(前田)

 クロスアポイントメントというのは、評価みたいな話ですか。

 

○三宅構成員

 いや、評価ではなくて、例えば1人の研究員に対して複数の研究機関で働けるようにするというような意味合いです。ですから、その日数に応じて、それぞれの組織から給与も支払われることになると。

 

○労働者健康安全機構理事(森戸)

 そういう仕組みは持っていませんが、評価においては、もちろん研究論文の評価もあるのですが、それ以外に対外貢献ということで、例えばJIS等の策定に参画する、あるいはいろいろな大学での客員教授であるといったものを点数化して、研究員を評価しているような形でやっております。

 

○三宅構成員

 分かりました。なかなかどこでも優修な人材の確保は難しくなっているので、教育でもあり、研究でもあり、それからいろいろな面で、本人のスキルアップやレベルアップも含めて、より流動的な体制が取れればいいなと感じた次第です。

 

○関口構成員

3839ページで確認をさせていただきたいのですが、医療従事者の確保のところで、(5)と(7)の分け方が、私としては違和感があるのですが、あえてこういう分け方をされているのは何か意図があるのでしょうか。例えば、看護師の国家試験合格率の確保のところは、これはこれでいいと思うのです。その上で、専門看護師や認定看護師等の専門性を有する、更にその専門性を有する看護師ということで、別立てで表示していただくのであれば分かるのですが、(5)と(7)でこういう分け方をしているのは、どういう意味合があるのかが1点目です。

 それから、専門看護師、認定看護師というのは、そういう意味では資格を取ることをかなり看護師会でも推奨されている部分だとは思うのですが、全体的に見てどのぐらいの割合いなのかが、これは現在総数でしか表示されていないので、何パーセントぐらいが専門看護師で、何パーセントぐらいが認定看護師なのかということが、もし数字としてお分かりでしたら、お知らせいただければと思います。以上2点です。

 

○労働者健康安全機構理事(高)

 最初に御指摘の(5)と(7)ですが、(5)は既に採用した看護師の育成の観点です。(7)は、労災看護専門学校がありますが、そこの取組ということで分けてあります。看護師確保の観点からいえば、並べて書いてもいいのかなとは思いますが、これまではそういう形で分けています。

 労災病院の看護師が、全体の数としては約9,800人です。そのうちの専門看護師が16人、認定看護師が311人となっています。

 

○今村主査

 よろしいですか。それでは、以上で4-1は終わりました。次は、法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針についてコメントをお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構監事(黒須)

 労働者健康安全機構の常勤監事をしております黒須です。藤川監事とともに、本機構を監査させていただいております。資料1-5、監査報告を御覧ください。この監査報告については、627日付けで理事長に提出しております。簡単に説明いたします。1は、監査の具体的な方法及びその内容について記載しております。既に御承知のとおり、当機構には労災病院や産業保健総合支援センター、更には統合しました安衛研や日本バイオアッセイ研究センターといった全国に多数の施設がありますので、それらについての往査にも監事としては多くの時間を取っている状況です。2は、監査の結果です。法人の業務遂行の適法性、有効性、効率性をはじめ、15まで個別に意見を述べさせていただいておりますが、いずれも監査報告において指摘すべき事項は見受けられないと結論いたしました。次のページの3では、閣議決定において監事の監査が必要とされている事項に係る意見を記載しておりますが、これについても特段の問題はなかったと評価をしております。以上が監査報告です。

 座長からも今お話がありましたように、監事として若干のコメントをさせていただきます。まずは、評価したいと考える事項についてです。1点目は、本日の振り返りの中でもその評価については御議論がありましたが、治療と就労の両立支援を機構の本質的な使命の1つとして明確にして、組織を上げて取り組む方針を掲げたこと、あるいは仕組みを立ち上げたこと、更には具体的に開始をしたことです。社会的にも注目を浴びている課題ですので、是非今後PDCAを着実に実施し、目標達成に向けて、あるいはアウトカムの獲得に向けて効果的に取組が進展されることを大いに期待しているところです。

2点目は、財務内容の改善に関する事項でいろいろと御意見を頂いたところかと思いますが、懸案であった繰越欠損金が解消できた点です。厚生年金基金の代行分返上と新制度導入が主たる要素ではありますが、それらについて特に労組と平成27年度からの2年越しの交渉を経て合意に至たり、結果、諸手続を進められることができた点は、機構側からの報告では謙虚でありましたが、監事としては大いに成果であったと考えております。

 一方、課題についてもコメントさせていただきます。今ほど述べさせていただいたとおり、厚生年金制度の見直しにより、財務諸表上では繰越欠損金を一気に解消し、500億円を超える利益剰余金を経常することとなりました。しかしながら、これも御意見がありましたが、個々の労災病院の収支は大変厳しく、経営改革にはこれまで以上の意識を持って取り組む必要があると評価しております。本部と各施設が更に連携をして、経営改革に取り組まれることを期待しています。

また、平成26年度に明らかとなりました障害者雇用状況の虚偽報告問題から2年が経過いたしました。独立行政法人としての社会的立場を踏まえれば、法令遵守ばかりでなく、高い倫理感や社会規範に基づいた組織風土といったものを構築していくことは普遍的な課題でもあります。それらへの取組は、業務方法書に規定されている内部統制システムの整備、運用に相通じるものとも考えております。業務運営全般において、組織としてのガバナンスが機能し、健全な経営と社会的存在価値が一層高まる独立行政法人となるよう、引き続き努められることを期待しているところです。以上です。

 

○今村主査

 それでは、続いて法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントを頂ければと思います。

 

○労働者健康安全機構理事長

 私たち労働者健康安全機構は、全国にあります労災病院群、労働安全衛生総合研究所、日本バイオアッセイ研究センター、それから都道府県にあります産業保健総合支援センターなどが一気に平成28年度から合同して仕事にあたることとなり、私たちの国の産業経済の礎を維持、発展させる。それから、先ほど少し触れましたが、勤労者一人一人の人生を支えるという大きな役割を担っております。具体的には勤労者医療の充実、それから勤労者の安全の向上、産業保健の強化が具体的な3つの柱です。本日、報告させていただいた取組の中でも、治療と就労の両立支援については、政府が推進するところの一億総活躍社会の実現に向けて努力しているところですが、その働き方改革において重要な位置付けとなっていることは、先ほどからの議論の中にあるとおりです。

 病にあっても働き続けることができることを支援することは、私たち機構の課題であることは間違いありませんが、先程来お話しているように、これは他の労災病院ではない病院にもいずれ課せられる国民的な大事なテーマだという認識です。したがって、働く人々の職業生活を医療の側から支えるという理念そのものは、そのような観点からすると私たちの機構は正にフロントランナーであるという自負を持って、事に当たろうとしているところです。

主治医と患者さんの働く会社、それから産業医などと両立支援のコーディネーターがトライアングル型のサポート体制でやっておりますが、これに資するところの両立支援のコーディネーターの養成や、両立支援のマニュアルの普及などの取組についても今後とも進めていく必要があります。ですから、労災病院、治療就労両立支援センター、産業保健総合支援センターなどが、より一層緊密に連携しながら、課題の解決に取り組んでいきたいと考えております。

 先ほどアウトカムの話が出ましたが、このアウトカムがいずれ、真のアウトカムとして展開することができるようになれば、私たちの考えとしては、この国の繁栄に十二分に資するだろうという意気込みをもって働いている次第です。強いて言いますと、自己評定と第三者的な評定とは独立事象であると考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 労働者健康福祉機構と、労働安全衛生総合研究所との統合がありましたが、労働安全衛生総合研究所の労働災害の防止に関わる基礎的、ないし応用的な研究機能と、労災病院が持っている臨床的な研究機能との一体化による重点機能、重点研究として、5分野の話が先程来ありました。それに取り組みながら、重点研究協議会を開催しながら、工程表にあるように、それらに従って十二分に着実に研究を進めているところです。今後は、相互理解をますます深める。やはり文化の違いは否めませんでしたので、そのような観点から研究専らの方たちと、臨床専らの方たちとの相互理解を深めることが非常に重要ですので、私たち研究者が一堂に会して研究内容の発表を行うなど、いわゆる統合による相乗効果を最大限に発揮できるように頑張りたいと思います。研究そのものは、労働災害の防止、減少、社会復帰の促進にいずれも結び付けることができることを信じていますので、今後とも有効な措置を引き続き講じていきたいと思っております。

 両立支援を含む勤労者医療の実践のためには、労災病院において一定レベルの医療が提供可能であることがその前提となります。そのためには、先ほど監事も言及されましたが、労災病院の安定的な運営と経営基盤の確立が非常に重要です。労災病院が、安定的かつ継続的に医療を提供するためには、今日の医療を取り巻く諸環境、社会状況の変化を踏まえて、それぞれの労災病院がその地域において果たすべき役割について検討していく必要があます。現在、労災病院各々の中・長期計画、戦略的な機能の強化について議論を進めているところです。当機構においては、独立行政法人として、また病院事業を行っている観点から、高いレベルの社会的な要請にしっかりと応えていく必要があることは言うまでもありません。ですので、個人情報の管理、ハラスメントの防止といったコンプライアンスの重要性も踏まえながら、内部統制の取組に十分強く、その役割を果たしていきたいと思っております。

 本日は、有識者の皆々様から大変貴重な御意見を賜りました。心より御礼申し上げます。どうもありがとうございます。働く人たちの健康を守り続けるということについての思いを、更に強くしているところです。本日頂きました皆々様の貴重な御意見を、十二分に参考にさせていただきながら、今後の運営に真摯に取り組んでいきたいと思っております。本日は、誠にありがとうございました。

 

○今村主査

 どうもありがとうございました。御意見、御質問等はありますか。それでは、労働者健康安全機構の平成28年度業務実績評価に係る今後の取扱いについて、事務局から説明をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 本日、法人から説明のありました業務実績、及び自己評価に対して、構成員の皆様から寄せられました御意見、それから法人の監事及び理事長のコメントなども踏まえまして、厚生労働大臣による評価を決定いたします。その評価結果については、法人に通知するとともに、公表いたします。決定した内容については、構成員の皆様にお送りいたします。

 本ワーキングの次回の開催ですが、連日の開催で恐縮ですが、明日84()13時からを予定しております。場所は、本日と同様に、中央労働委員会の7階講堂です。明日の対象となる法人は、高齢・障害・求職者雇用支援機構です。この法人は、本年度が中期目標期間の最終年度に該当しますので、議題としては中期目標期間見込み評価と、見込み評価の結果を踏まえて作成する業務、組織全般の見直し内容について御意見を賜ることとしております。

 最後に事務的なお知らせです。本日配布した資料の送付を御希望される場合は、事務局より送付いたしますので、机上にそのままにして御退席いただきますようよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○今村主査

 それでは、本日は以上といたします。長時間にわたり、熱心な御議論を本当にありがとうございました。どうもお疲れ様でした。

 


(了)

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