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2017年5月30日 第135回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成29年5月30日(火)18:00~19:30


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

【公益代表委員】

荒木委員、安藤委員、川田委員、平野委員、水島委員、両角委員

【労働者代表委員】

神田委員、柴田委員、冨田委員、八野委員、福田委員、村上委員、世永委員

【使用者代表委員】

小林委員、齋藤委員、早乙女委員、佐藤委員、杉山委員、三輪委員、輪島委員

【事務局】

山越労働基準局長、土屋審議官、村山総務課長、藤枝労働条件政策課長、荒木監督課長、宮本計画課長

○議題

時間外労働の上限規制等について

○議事

○荒木会長 それでは、出席予定の委員は全員お揃いということですので、ただいまより第135回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。

 本日の委員の出席状況ですが、御欠席の連絡を受けている委員としましては、公益代表の黒田祥子委員、両角道代委員、労働者代表の川野英樹委員、使用者代表の秋田進委員です。

 また、使用者代表の秋田委員の代理としまして、日本通運株式会社総務・労働部専任部長の滝澤毅様に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議題に入る前に、まず定足数について事務局よりお願いします。

○中嶋調査官 定足数について御報告いたします。

 労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

○荒木会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。

 お手元の議事次第に沿って進めてまいります。

 本日の議題は、「時間外労働の上限規制等について」です。事務局より、資料の説明をお願いします。

○中嶋調査官 承知いたしました。委員の皆様のお手元には、本日の資料であります「時間外労働の上限規制等について(報告案)」と、それから御参考といたしまして本日開催をいたしました第104回労働政策審議会安全衛生分科会の資料について配付をさせていただいております。

 私からは、「時間外労働の上限規制等について(報告案)」を御説明申し上げます。

 こちらは本年4月7日以降、当分科会におきまして「働き方改革実行計画」や各論点についての事務局案を御説明し、これを踏まえて議論等をいただきましたものを分科会報告案として整理をしたものでございます。

 初めに、全体の構成をご覧いただきたいと存じます。

 まず、書き出しの前文のところで、検討の経緯、背景等を述べた上で、1ページの下の方に「記」とあるところからが各論点についての記載となります。

 ここからは前回、それから前々回と、論点ごとの議論をいただいた際の構成に従いまして、事務局案の記述や、いただきました議論等を踏まえて整理をしたものとなっております。したがいまして、構成といたしましては、1が「時間外労働の上限規制」について1ページの下から4ページまでとなり、続きまして5ページの2が「勤務間インターバル」、3が「長時間労働に対する健康確保措置」、そして4が「その他」という構成でございます。

 それでは、1ページにお戻りいただきまして、報告案の内容につきまして全体を読み上げる形で説明とさせていただきます。

 

時間外労働の上限規制等について(報告案)

 

 時間外労働の上限規制等については、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会において、同年4月7日以降●回にわたり検討を行い、精力的に議論を深めてきたところである。

 人口減少社会を迎えた我が国において、経済の再生、「成長と分配の好循環」を実現するためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と併せ、労働参加率の向上を図る必要があり、そのためには、誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる一億総活躍社会を実現することが必要である。

 ところが、我が国の労働時間の状況をみると、この20年間で、一般労働者の年間総実労働時間が2000時間を上回る水準で推移し、雇用者のうち週労働時間60時間以上の者の割合は低下傾向にあるものの7.7%と平成32年時点の政労使目標である5%を上回っており、特に30歳代男性では14.7%となっている。また、平成27年度の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は251件(うち死亡の決定件数は96件)、精神障害による労災支給決定件数は472件(うち未遂を含む自殺の決定件数は93件)となっている。

 長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっている。「過労死等ゼロ」を実現するとともに、マンアワー当たりの生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていくため、長時間労働の是正は喫緊の課題である。

 このような考え方に基づき、当分科会において検討を行った結果は、下記のとおりである。

 この報告を受けて、厚生労働省において、スピード感を持って、労働基準法等の改正をはじめ所要の措置を講ずることが適当である。

 なお、働き方改革の実現に向けては、改革の基本的な考え方と進め方を示し、そのモメンタムを絶やすことなく、長期的かつ継続的に取組を進めていくことが必要である。このため、「働き方改革実行計画」を踏まえ、改革全般にわたり、法制面も含め、その目的達成のための政策手段について、引き続き検討を行っていくことが求められる。

 

 

1 時間外労働の上限規制

 時間外労働の上限規制については、以下の法制度の整備を行うことが適当である。

(1)上限規制の基本的枠組み

 現行の時間外限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせるとともに、従来、上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定することが適当である。

・時間外労働の上限規制は、現行の時間外限度基準告示のとおり、労働基準法に規定する法定労働時間を超える時間に対して適用されるものとし、上限は原則として月45時間、かつ、年360時間とすることが適当である。かつ、この上限に対する違反には、以下の特例の場合を除いて罰則を課すことが適当である。また、一年単位の変形労働時間制(3か月を超える期間を対象期間として定める場合に限る。以下同じ。)にあっては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することにより、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度の趣旨に鑑み、上限は原則として月42時間、かつ、年320時間とすることが適当である。

・上記を原則としつつ、特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年720時間と規定することが適当である。

 かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として、

1 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で80時間以内

2 休日労働を含み、単月で100時間未満

3 原則である月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回まで

とすることが適当である。なお、原則である月45時間の上限には休日労働を含まないことから、1及び2については、特例を活用しない月においても適用されるものとすることが適当である。

・現行の36協定は、省令により「1日」及び「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的記載事項とされ、「1日を超える一定の期間」は時間外限度基準告示で「1日を超え3か月以内の期間及び1年間」としなければならないと定められている。今回、月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)かつ、年360時間(一年単位の変形労働時間制の場合は320時間)の原則的上限を法定する趣旨を踏まえ、「1日を超える一定の期間」は「1か月及び1年間」に限ることとし、その旨省令に規定することが適当である。併せて、省令で定める協定の様式において1年間の上限を適用する期間の起算点を明確化することが適当である。

 

(2)現行の適用除外等の取扱い

 現行の時間外限度基準告示では、1自動車の運転の業務、2工作物の建設等の事業、3新技術、新商品等の研究開発の業務、4季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するもの、が適用除外とされている。これらの事業・業務については、働く人の視点に立って働き方改革を進める方向性を共有した上で、実態を踏まえて、以下のとおりの取扱いとすることが適当である。

1 自動車の運転業務

・自動車の運転業務については、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当である。また、5年後の施行に向けて、荷主を含めた関係者で構成する協議会で労働時間の短縮策を検討するなど、長時間労働を是正するための環境整備を強力に推進することが適当である。

・この場合でも、時間外労働の上限は原則として月45時間、かつ、年360時間であることに鑑み、これに近づける努力が重要である。

2 建設事業

・建設事業については、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に、罰則付き上限規制の一般則を適用することが適当である。ただし、復旧・復興の場合については、単月で100時間未満、2か月ないし6か月の平均で80時間以内の条件は適用しないが、併せて、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当である。また、5年後の施行に向けて、発注者を含めた関係者で構成する協議会を設置するなど、必要な環境整備を進めるとともに、労働時間の段階的な短縮に向けた取組を強力に推進することが適当である。

・この場合でも、時間外労働の上限は原則として月45時間、かつ、年360時間であることに鑑み、これに近づける努力が重要である。

3新技術、新商品等の研究開発の業務

・新技術、新商品等の研究開発の業務については、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務の特殊性が存在する。このため、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とすることが適当である。

・その際、当該業務に従事する労働者の健康確保措置として、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり100時間を超えた者に対し、医師による面接指導の実施を労働安全衛生法上義務づけることが適当である。この面接指導の確実な履行を確保する観点から、上記の義務違反に対しては罰則を課すことが適当である。

 また、上記の面接指導の結果を踏まえた健康を保持するために必要な事後措置の実施を労働安全衛生法上義務づけるとともに、当該事後措置の内容に代替休暇の付与を位置づけることが適当である。

4 厚生労働省労働基準局長が指定する業務

・季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するものについては、原則として罰則付き上限規制の一般則を適用することが適当であるが、業務の特殊性から直ちに適用することが難しいものについては、その猶予について更に検討することが適当である。

5 医師

・医師については、時間外労働規制の対象とするが、医師法第 19 条第1項に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である。具体的には、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることが適当である。

 

(3)労働基準法に基づく新たな指針

・可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設け、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行えるようにすることが適当である。

・当該指針には、特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない旨を規定するとともに、併せて、休日労働も可能な限り抑制するよう努めなければならない旨を規定することが適当である。

・また、 36 協定の必要的記載事項として、原則の上限を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置を定めなければならないことを省令に位置づけたうえで、当該健康確保措置として望ましい内容を指針に規定することが適当である。その内容は、企画業務型裁量労働制対象者に講ずる健康確保措置として労働基準法第 38 条の4の規定に基づく指針に列挙された内容(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの相談窓口の設置、配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を基本として、長時間労働を行った場合の面接指導、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル等を追加することが適当である。

・さらに、現行の時間外限度基準告示には、1 限度時間を超える時間の労働に係る割増賃金率を定めるに当たっては、法定の割増率を超える率とするように努めなければならないこと、2 労働時間を延長する必要のある業務区分を細分化することが規定されており、これらは指針に改めて規定することが適当である。

 

2 勤務間インターバル

 勤務間インターバルについては、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にする制度であり、その普及促進を図る必要がある。

 このため、労働時間等設定改善法第2条(事業主等の責務)を改正し、事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当である。その上で、平成 272月 13 日の当分科会報告にあるように、同法に基づく指針に、労働者の健康確保の観点から、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」等を追加することが適当である。

 

3 長時間労働に対する健康確保措置

 過重な労働により脳・心臓疾患等の発症のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、労働者の健康管理を強化することが適当である。

(1)医師による面接指導

・このため、長時間労働に対する健康確保措置として、労働安全衛生法第 66 条の8の面接指導について、現行では、1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり 100 時間を超えた者から申出があった場合に義務となっているが、この時間数を定めている省令を改正し、1か月当たり 80 時間超とすることが適当である。

 

(2)労働時間の客観的な把握

・また、上記の面接指導(1(2)3の面接指導を含む。)の適切な実施を図るため、

平成 27 年2月 13 日の当分科会報告にあるように、管理監督者を含む、すべての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定することが適当である。その際、客観的な方法その他適切な方法の具体的内容については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を参考に、通達において明確化することが適当である。

 

4 その他

(1)法施行までの準備期間の確保

 中小企業を含め、急激な変化による弊害を避けるため、十分な法施行までの準備時間を確保することが必要である。その上で、施行期日については、事業運営や労務管理が年度単位で行われることが一般的であることを考慮し、年度の初日からとすることが適当であり、この点を踏まえ、具体的な期日を検討すべきである。

 

(2)上限規制の履行確保の徹底

 罰則付きの時間外労働の上限規制を導入するに当たっては、その実効性を一層確保する観点から、履行確保のための以下の事項についても、併せて措置することが適当である。

1 過半数代表者

・過半数代表者の選出をめぐる課題を踏まえ、平成 27 年2月 13 日の当分科会報告にあるように、「使用者の意向による選出」は手続違反に当たるなど通達の内容を労働基準法施行規則に規定することが適当である。また、監督指導等により通達の内容に沿った運用を徹底することが適当である。

・同分科会報告にあるように、使用者は、過半数代表者がその業務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならない旨を、規則に規定する方向で検討することが適当である。

・労働基準関係法令が十分周知されていないことに伴う法令違反が依然として多数みられることから、時間外・休日労働には 36 協定の締結及び届出が必要であることや、協定の締結当事者である過半数代表者は法令等に基づき適正に選出される必要があること等について、一層の周知徹底に取り組むことが適当である。また、使用者は、 36 協定等を労働者に周知させなければならないとしている法の規定を踏まえ対応するよう、徹底を図ることが適当である。

2 労働基準監督機関の体制整備

時間外労働の上限規制の導入の前提として、 36 協定の締結及び届出を行うことなく時間外・休日労働を行わせている使用者に対する監督指導の徹底が強く求められる。このため、企業単位での監督指導の強化、地方運輸機関等の関係機関との連携強化等を図りつつ、労働基準監督官の定員確保に努めることが適当である。

3 電子申請の促進

36 協定の届出をはじめとする行政手続の簡素化・効率化を進めるためにも、電子申請利用率を向上させる必要がある。このため、電子申請を行う場合にはすべからく事業主の電子署名を必要としている現行の取組のうち、社会保険労務士の電子署名による代理申請に際しては、事業主の電子署名については委任状の添付等により省略できることについて、省令の改正を行う方向で検討を継続することが適当である。

 

 以上でございます。

○荒木会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいま説明のありました資料について御意見、御質問等がありましたらお願いします。

○八野委員 まず、この報告案の前文に対して、意見を述べさせていただきたいと思います。

 さまざまな労働時間、労働をめぐる環境についてのデータや、またはこれからの方向性を少し御提示していただいているということでは評価するものの、前文に対して記載すべきこととして2点ほど意見を言わせていただきたいと思いますのと、また、記載以外でもう一つ意見を言わせていただきたいと思っております。

 まず、記載すべきこととして2点ということでございますが、1点目は、時間外労働の上限規制等に関する労使合意にも記載してありますように、労働基準法は、労働者が人たるに値する生活を営むうえでの最低基準を定めたものであり、労使はその向上を図るよう努めるべきという記載がございます。

 また、労働基準法に今回罰則付き時間外労働の上限規制が導入されるということで、長時間労働に依存した企業文化や職場風土の抜本的な見直しを図るためには非常に重要です。こうした点や、過労死等のゼロの実現などに向けて、不退転の決意で取り組むことの重要性を前文に記載する必要があるのではないかということがまず1点目です。

 2点目は、時間外労働の上限規制を実効あるものとするために、どのような労働時間法制のもとでも、職場の労使が不払い労働などをなくすべく、労働時間の適切な管理、把握をすることが必要不可欠であるというような内容も記載すべきではないかということでございます。これが、記載すべき事項としての2点目の要望です。

 さらに、意見としては、長時間労働というのは商慣習、または取引関係などの構造的な問題やパワーハラスメント等の課題、またはメンタルの課題など、さまざまな複合的な課題があり、それが絡み合っているということでございます。これらを一つ一つ丁寧に課題をひも解き、解決に向けた対策というものを確実にやっていく。そういうことが非常に重要であり、不断な努力が必要であると考えております。

 最後の意見のところは、この報告案の中に記載が入るべきものだとは思いますが、意見として言わせていただきたいと思います。以上です。

○荒木会長 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

○世永委員 2ページの「現行の適用除外等の取扱い」について発言させていただきます。

 自動車の運転業務につきましては御記載のとおり、実行計画に基づき、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当であると御提案をされています。

 この間、私から当分科会にて申し上げさせていただいたとおり、過労死等の現状を踏まえれば、自動車の運転業務の長時間労働の是正は喫緊の課題となっています。早期に一般則の適用がされるよう、法案要綱の見直し規定に自動車の運転業務についても記載をお願いしたいということであります。

 それから、長時間労働を是正するための環境整備を強力に推進することについて、トラック運転という立場からの実態を申し上げれば、業界の多くを占めている中小の事業者の中には、実は適正な時間管理をしていないという実態もあります。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の徹底について、健康確保措置の問題を含めて指導を強化されるよう要請したいと思います。以上です。

○荒木会長 ありがとうございました。神田委員。

○神田委員 同様に、「現行の適用除外等の取扱い」のうち、建設事業の関係について申し上げたいと思います。

 建設事業については、実行計画に基づきまして、罰則付きの時間外労働規則の適用除外とせず、法改正の一般則の施行期日の5年後に、罰則付き上限規制の一般則を適用することが適当であるとされております。こうした点について、これまでも発言しましたけれども、評価を持って受けとめるところでありますが、今ほど自動車の運転業務について言われたとおり、法案要綱の見直し規定に、建設業につきましても記載をお願いしたいと思います。以上です。

○荒木会長 ありがとうございました。柴田委員。

○柴田委員 柴田でございます。4ページの「労働基準法に基づく新たな指針」のところでございますが、2つ目の「・」に「特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない」ですとか、「休日労働も可能な限り抑制するよう努めなければならない」ということを規定することが適当としていただいております。

 今回、労使合意におきましても、特別条項を適用する場合に上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月45時間、年360時間の原則的上限に近づけることが重要と示されており、また、今回の報告案の前文の中でも、長時間労働の是正は喫緊の課題だと言及されておりますので、上限が設定されたからといいまして、そこまで働かせてもよいという誤解がないように、今回の法施行に向けて新たな指針の積極的な周知と徹底をぜひお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。以上です。

○荒木会長 ありがとうございました。小林委員。

○小林委員 今、周知というお話があったので、周知関係でもっと行政からも積極的に行ってほしいという意味合いも込めてお話ししたいと思います。

 最近、私ども会員の組合さんの総会等があっていろいろな業界の経営者の方にお会いしています。その中で、余りにも時間外労働の上限規制の問題について認知されていない部分はかなりあります。まだ法律が改正されていないからという部分はあるんですけれども、働き方改革という言葉で9つのテーマがございましたが、その中で大きな問題なのはこの上限規制の問題とか、同一労働同一賃金の問題だと思いますけれども、マスコミの報道は知っていても細かい内容については余りにも知らないという部分があります。ですから、その意味で言うと、今回のこの報告書でいけば労働基準法が改正された後に出る新たな指針の内容などももうちょっと徹底的に周知する必要があると思います。

 例えば、2行目の「当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し」の後に、その周知というような言葉も1つ入れていただきたい。周知した上で必要な助言・指導が行えるようなことが適当であるというようなことに直していただきたいと思います。

○荒木会長 何ページですか。

○小林委員 4ページの真ん中の(3)のところの2行目です。 行政官庁は」という主語がありますけれども、「行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、その周知並びに必要な助言・指導を行えるようにすることが適当である」というようなことも加えていただきたいですし、5ページの一番下の「その他」のところですけれども、特に中小企業は数が多いですから、中小企業に対しての準備期間だけじゃなくて、まず周知をした上で準備期間の確保というのもお願いしたい。

 それから6ページ、下のほうにある「2 労働基準監督機関の体制整備」です。前回も労働側の委員の方から、監督官の数を増やして欲しいというような意見がありました。それは、私も同感だと思います。過去も申し上げて、監督官の数は増えているんですけれども、一方、問題があるのはその反動で都道府県労働局の職員の数が減っているんです。

 ですから、先ほど申し上げたように指針の広報もしなければならないですし、法令の広報もしなければならない。特に監督行政庁としての厚生労働省の地方の都道府県労働局の職員についても数を増やすようなことをお願いできれば、監督官等と入れるのか、一番下のところに、労働基準監督官並びに労働局の職員の増員というような形で入れてほしいぐらいの気持ちがありますので、とにかく人数を増やしていただいていろいろな形の周知をしていただく。そして、その相談指導とか、そういう体制を整備していただきたいというのがお願いでございます。以上でございます。

○荒木会長 他にはいかがでしょうか。福田委員。

○福田委員 「勤務間インターバル」について意見を述べさせていただきます。

 今回、労使合意を踏まえ、労働時間等設定改善法第2条を改正して、事業者は前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務規定が新設されることになります。

 その定義ですけれども、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間」とありますが、労働者の健康確保を図る観点から、十分な睡眠時間と生活時間を考慮して原則24時間につき一定時間の休息であるべきと考えます。

 そして、一定時間の休息に関しましては、現場における業務形態や緊急時に求められる対応の内容等を踏まえた措置を、労使が具体的に検討することが重要と考えます。

 そのためにも、今回設置された勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会においては、労使で制度導入に向けた具体的な方策を検討する際の素材となるような、例えば海外の実態調査を始め、さまざまな事例の収集と好事例の発信をぜひお願いしたいと思います。以上です。

○冨田委員 先ほど小林委員から周知の必要性についての御示唆を幾つかいただいたと思いますが、私からも周知すべき点につきまして、1点要望を申し上げさせていただきたいと思います。

 具体的には、5ページ目の3の「長時間労働に対する健康確保措置」の中の「(2)労働時間の客観的な把握」の項についてでございます。こちらの2行目にも記載がありますとおり、当分科会の2015年の建議を踏まえまして、今回、「管理監督者を含む、すべての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定すること」ということが改めて記載されたわけでありますが、このことを担保するためには、先ほど八野委員からも前文について御意見申し上げ、また、自動車の運転業務のところでも申し上げましたが、今回の時間外労働の上限規制の実効性の担保のためには適正な時間管理がされること、このことが大変重要だと思っておりまして、今年の1月に改めて出されました労働時間の適正な把握のためのガイドラインについての周知が大事ではないかと思ってございます。

 それで、このガイドラインの中には、使用者には労働時間を適正に把握する責務や、具体的な労働時間の把握の方法について大変網羅的に書かれていますので、このことを使用者側だけが認知するのではなくて、労使双方が働くことのできる時間や、この点、使用者側からすれば働かせることの時間となりますが、そうしたものへの意識を十分に高めることが大変重要だと思っております。このガイドラインのより一層の周知にも力を入れていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○八野委員 6ページの「上限規制の履行確保の徹底」の1つ目の「・」の「過半数代表者」というところです。ここに関しては労働側から何度か意見を言わせていただき、今回、ここにも記載されているように、過半数代表者に関する検討が一歩前進したと評価しております。

 やはり、これまで何度も労働側から言っているように、罰則付き時間外労働規制の実効性の担保の観点からも、または小林委員から言われた周知の必要性という観点からも、36協定の適正化が非常に重要であると認識をしております。

 また、あえて重ねての意見となりますが、過半数代表者の選出手続の厳格化、適正化、それに加えて過半数代表者が意見集約を行う手段、制度に関する施策、または規制等も検討することが必要であると考えておりますので、意見として述べさせていただきたいと思います。以上です。

○荒木会長 他にはいかがでしょうか。輪島委員。

○輪島委員 今日提示をされました報告案の1ページから2ページのところですが、「上限規制の基本的枠組み」というところで、この原則、それから特例ということにつきましては、働き方改革実行計画並びに3月13日の労使合意に基づく内容ということで理解をしておりまして、使用者側としても責任を持って真摯に取り組んでまいりたいと思っているところであります。

 そこで、先ほど小林委員もおっしゃいましたけれども、いくつか御要望を申し上げておきたいと思います。

 1つ目は、従来から出ておりますけれども、法施行までの十分な準備期間ということ、それから特に企業に対する支援ということで中小企業に対する支援を特に厚くしていただきたいと思っております。

 それから、経済社会全体の環境整備ということでございます。商習慣とか、労働者の意識とか、いろいろなことが改善されないと、労働基準法だけを改正してもそれは達成できないのではないかと思っているところであります。

 実行計画が手元にありますが、実行計画の14ページに、取引条件改善など、業種ごとの取組の推進ということで、商習慣の見直しや取引条件の適正化を一層協力に推進するというふうな記述の中に自動車運送事業、そして建設業、IT産業のことについては例示として書かれておりますけれども、広くその他の業種業界に及ぶような見直し、それから社会的な風土の改善みたいなことのお取り組みをいただきたいと思っているところであります。

 もう一つのお願いは、監督署のところで小林委員がおっしゃいましたけれども、私どもでよく会員企業から話を聞くところによりますと、全国展開をしていると労働局ごとにさまざまな指導の濃淡があるというふうに聞きますので、新しい指針ができてこれから運用されるということでありますので、そういう意味では指導の基準みたいなものはなるべく統一をしていただくということでお願いをしておきたいと思っております。以上です。

○荒木会長 ありがとうございました。村上委員。

○村上委員 2点、申し上げます。

 1点は先ほど小林委員や輪島委員からご指摘もありましたけれども、今回の議論が行われていることや、その中身が十分に知られていないというところがあるかと思います。

 私も労使のセミナーなどにお伺いしたことがあるのですが、「とにかく早く決めて早く中身を知らせてほしい。そうすれば準備をするから」という意見が、労働時間の問題についてのセミナーでもありましたし、同一労働同一賃金の問題についてもございましたので、内容が決まってきたらある程度、早い時期にわかりやすく提示していくということもぜひお願いしたいと思っております。

 2点目は全体的な話なのですが、今回労使合意や働き方改革実行計画などを踏まえて時間外労働の上限規制をしていくということですが、「上限規制は何のために行うのか」ということは前文にも若干記載がありますが、その目的は、すべての労働者が長時間労働による健康障害なく、充実して働き続けることができる社会をつくっていこうということではないかと思っております。こうした認識を、ぜひもう少し書いていただけるとありがたいと思っております。その場合には前回も少し申し上げましたが、民間だけではなく公務も含めたものだと考えております。

 また、そのためには輪島委員も先ほどおっしゃいましたが、法律改正をするだけでは物事は変わっていきません。職場をどうやって変えていくのかということで言えば、国も地方公共団体ももちろんですが、消費者、使用者、労働組合等も含めて、すべての関係者がその目的に向かって努力していくことが必要だということがございます。こういったことも、分科会全体の共通認識となっているのであれば、ぜひ記載をいただけないかと思っております。以上です。

○藤枝労働条件政策課長 事務局から、何人かの委員から特に周知について御意見をいただきました。ごもっともで、重要な点だと思っております。

 まず、この働き方改革実行計画の内容、それから今後新たに策定することとなる指針の内容、または法制度、さまざまな省令、指針等をこれから定めていくことになりますけれども、できるだけわかりやすい形で、かつ中小企業の皆さんも含めて全ての企業、それから労使の現場で御理解いただけるように努めなければならないと思っておりますので、御指摘を踏まえてできることから対応したいと思っておりますし、また報告案の書きぶりにつきましては御意見を踏まえて調整させていただきたいと思っております。

 また、何点かお答えさせていただきますと、インターバルについて御指摘がございましたけれども、これは先ほどお話もしていただいたように、有識者の検討会を5月に立ち上げたところでございまして、このインターバルの検討会におきましては、まず国内で先進的に取り組んでいらっしゃる企業の事例を紹介いただいたり、あるいはどこまでできるかはありますけれども、委員が御指摘のような海外の事例とかも調査をした上で、前回もちょっと申し上げましたが、インターバルと言ってもまだこれから普及が始まる段階でございますのでいろいろなやり方がございますし、企業で導入されている例も必ずしも24時間以内でない場合もあれば、労働時間のインターバルの時間数もさまざまであったりしますが、そこは予断のない形でいろいろな事例を収集して、我が国で普及を図るための方策を御検討いただこうと思っております。

○村山総務課長 何点かお答えさせていただきます。

 まず、小林委員から御指摘のございました6ページの「労働基準監督機関の体制整備」の関係でございます。

 今回の本分科会の御議論のテーマが時間外労働の上限規制であるため、36協定の締結及び届出がしっかり履行されることが大切だという観点から、労働基準監督官の体制についての御指摘が労使双方からあったため、原案としては「労働基準監督官の定員確保に努めることが適当である」という締めにしております。小林委員から御指摘がありましたように、例えば平成28年度末の全国の労働基準監督部署の労働基準監督官の定員と、29年度末の定員を比べますと、国会等でもよくお答えしていますように、3,241人から3,291人と50人増えているわけですが、監督署全体の定員が平成28年度末と29年度末でどうなっているかと申しますと、署全体としては9人の増加ということになっている。

 すなわち、さまざまな業務の効率化を図っている中ではありますが、安全衛生でございますとか、労災補償ですとか、そうした他の部署の定員は41人減っている訳です。さらに、先ほど小林委員からありましたように、さらにその上部機関の都道府県労働局の定員は毎年に減っているということもございます。

 そうした中で、一方では行政の簡素効率化が求められる中ですが、業務にはしっかりと対応していく。定員を増やしている署の方面や監督課についても、報告書案に書いておりますように企業単位での監督指導の強化や、業所管省の出先機関との連携の強化をしっかり図りながら対応をしていくこととあわせて、安全衛生や労災補償を担う部門で国民の皆さん、労使の皆さんに対するサービスの低下がないよう、むしろ経済社会の変動に即してしっかりとした行政サービスが講じられるようにしていかなければなりません。そうした意味を込めまして、その章のタイトルとしては「労働基準監督機関の体制整備」としておりますが、本日の御指摘も踏まえてさらに文章の書きぶり等について考えてまいりたいと考えております。

 あわせて、最後に村上委員から、全ての労働者の方々にということで、公務労働者も含めて重要なメッセージをいただきました。前回の本分科会での御指摘の中でも、「分科会の守備範囲等ともかかわるところなので、なかなかどこまで書けるか、難しい部分はあろうが」とおっしゃっていただいた上で、今回、重ねていただいた大変重要な御指摘であると考えております。

 全ての労働者の方々の健康と生活の確保のために、報告書の取りまとめに公労使の委員の皆様に御努力いただいておりますので、そのことが伝わるような最終的な取りまとめとするために、どのようなことができるか、よく皆さんと御調整していきたいと考えているところでございます。

 私からは、以上です。

○荒木監督課長 監督課長でございます。先ほど輪島委員から御指摘がございましたけれども、監督業務に指導が濃淡があるという御指摘でございます。これは重要な課題だというふうに私ども認識しておりまして、監督業務は斉一的にやるということが喫緊の課題でございます。

 こういったことで従来は研修、あるいは中央、地方レベルの監察といったことをやってきておりますけれども、まだまだ先ほどのような御指摘があるということでございます。

 今回、新たに助言、指導のための指針をつくるということでございますので、その指針が固まる中におきましてきちんとした斉一的な対応ができるように対応してまいりたいと思っております。

○荒木会長 他にはいかがでしょうか。

 労働基準法の改正にかかわるものであり、罰則等の適用もあるということで、監督体制というのは非常に重要だと思いますので、その点はぜひ考慮いただければと考えております。他には特段、御指摘はよろしいでしょうか。

 それでは、報告書の内容については一通りの御議論をいただいたということかと思います。

 本日も、いろいろ貴重な御意見をいただきました。そこで、本日いただいた御意見を踏まえて、取りまとめに向けた調整、必要な修正等を行った上で、次回に再度事務局から報告案について提案をしていただきたいと考えております。

 それでは、若干早いですが、よろしければ本日の議論はこれまでとさせていただきたいと思います。

 次回の日程について事務局から説明をお願いします。

○調査官 次回の日程、場所につきましては調整の上、追ってお知らせをさせていただきます。

○荒木会長 それでは、これをもちまして第135回労働条件分科会は終了といたします。

 なお、議事録の署名につきましては、労働者代表は村上委員、使用者代表委員は三輪委員にお願いしたいと思います。

 本日は以上といたします。どうもありがとうございました。


(了)

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