ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(新型インフルエンザ対策に関する小委員会)> 第9回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録(2017年5月29日)




2017年5月29日 第9回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

○日時

平成29年5月29日(月)16:30~18:30


○場所

全国都市会館第2会議室(3階)
(東京都千代田区平河町2-4-2)


○議題

(1) 新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について
(2) 平成30年度におけるH5N1パンデミックワクチンの備蓄株の方針について
(3) その他

○議事

○山崎補佐 ただいまから、第9回新型インフルエンザ対策に関する小委員会を開催いたします。本日の出席状況は、委員11名中10名の出席です。押谷委員から欠席の御連絡を頂いております。また、宇田委員から御都合により1730分頃、釜萢委員から18時頃に退席のお申出がありました。定足数には達しておりますので、会議が成立しますことを御報告いたします。

 それでは、新委員を御紹介いたします。防衛医科大学校内科学講座2(感染症・呼吸器)教授、川名明彦様です。

 本日、参考人として5名の方をお招きしておりますので御紹介します。国立研究開発法人国立国際医療研究センター国際感染症対策室医長、加藤康幸様。東京都福祉保健局技監、笹井敬子様。成田赤十字病院感染症科部長、馳亮太様。地方独立行政法人りんくう医療総合センター総合内科・感染症内科部長兼感染症センター長、倭正也様。自治医科大学小児科学講師、田村大輔様。

 前回開催以降、事務局にも人事異動がありましたので御紹介します。結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長の海老名です。本日の会議、よろしくお願いいたします。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。ここからは岡部委員長に進行をお願いいたします。

○岡部委員長 お忙しいところ、お集まりいただいてありがとうございました。今日は第9回厚生科学審議会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する小委員会ですが、委員の先生のほかに本当に感染症の第一線でおられる先生、行政のほうで音頭を取らなくてはいけない方、インフルエンザのエキスパートという形で、参考人の先生方にも来ていただいております。新委員の川名先生は新しいかどうかはよく分からないのですけれども、この会では新人だそうですから、是非よろしくお願いいたします。今までもいろいろな方面で御意見を頂いていますので、この会でもどうぞよろしくお願いしたいと思います。参考人の先生方もディスカッションに参加して、自由に御意見をおっしゃって結構です。是非承りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、審議参加に関する遵守事項について、事務局から御報告をお願いします。

○山崎補佐 本日、御出席された委員の方々の過去3年度における関係企業からの寄附金・契約金などの受領状況について、申告をしていただきました。該当する製造販売業者や各委員からの申告については、机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。事務局で申告内容を確認しましたところ、谷口委員の申告において、武田薬品工業株式会社から50万円を超えて500万円以下の寄附金等の受領があったとの申出がありましたので、プレパンデミックワクチンに関する議決については、賛否を表明することはできません。また、川名委員の申告において、塩野義製薬株式会社から50万円を超えて500万円以下の寄附金及び講演料の受領があったとの申出がありましたので、抗インフルエンザ薬に関する議決について、賛否を表明することはできません。

 いずれも定足数に達しており、このほかに審議や議決に不参加となる基準もありませんでした。薬事承認等の申請資料等の制作の関与についても、該当はありませんでした。

○岡部委員長 川名委員と谷口委員は、議決のときには参加していただけないということになりますけれども、御意見は公平の立場から是非言っていただければと思います。それは委員のほうで御意見として承るようにしていきたいと思います。また、委員のほうもそういう点で御了承いただければと思います。よろしくお願いいたします。それでは配布資料の確認を、事務局からお願いいたします。

○山崎補佐 議事次第、委員名簿、座席図、事務局資料1から3のほか、事務局参考資料1から2、研究班資料、研究班参考資料、事務局参考資料3-1から3です。議事次第に書かれている配布資料の一覧と照らし、不足の資料等がありましたら事務局にお申し付けください。

○岡部委員長 議事次第に書いてありますように、今日は2つの議事とその他があります。「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について」が第1点、第2点は「平成30年度におけるH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄株の方針について」です。加えて「その他」ということになりますので、よろしくお願いいたします。それでは議題1の抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について、まず議論をしていきたいと思いますので、資料の説明その他について、山岸補佐からよろしくお願いいたします。

○山岸補佐 それでは資料1と、適宜資料2を使って説明いたしますが、基本的には資料1を使って説明させていただきます。事務局資料1「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について」と書いてある1枚紙を御覧ください。

 まず、この経緯についてです。資料21ページと2ページにも同じ内容が書いてありますので、適宜御参照ください。まず1ポツ目、新型インフルエンザ等対策政府行動計画という平成256月の閣議決定において、国と都道府県は、諸外国における備蓄状況や最新の医学的知見等を踏まえ、国民の45%に相当する量を目標として、抗インフルエンザウイルス薬を備蓄するとされております。この45%という考え方については、平成21年の健康局長通知に示されております。概要については以下のとおりです。資料2では2枚目のほうに書いてあります。

1つ目として、人口の25(行動計画の被害想定に基づく)が新型インフルエンザに罹患し、その全員が受診するというのが一番の基本です。そのほかに治療に当たる分として、全重症患者への倍量・倍期間投与を想定しております。さらに3番目として、濃厚接触者等への予防投与、4番目として季節性インフルエンザウイルスが同時流行し、仮に全患者に投与した場合が起きたとしても、備蓄で賄えるようにと考えられております。

 上記の考え方については、平成27年度に開催された新型インフルエンザ等対策有識者会議において、それぞれ技術的な調査研究を進め、今後、厚生科学審議会において審議を進めることとされました。また、検討結果を踏まえ、有識者会議の下に組織されている医療・公衆衛生に関する分科会において、備蓄方針の見直しを検討することとなっております。資料24ページなどには、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄に係る検討事項が案として示されており、様々な点について今後検討ないし調査を進めるようにと、先生方から御意見を伺っております。

 このうち全重症患者への倍量・倍期間投与に関しては、研究班、谷口先生がされている厚生労働科学研究のほうにお願いしていたのですけれども、この度、タミフル及びラピアクタにおける治療の有効性について、エビデンスの有無やエビデンスの種類、エビデンスの概要について論文等を精査した結果を御報告いただいております。後ほど研究班の谷口先生のほうから、また他の先生のほうからも、概要について御説明いただけると思います。事務局のほうでまとめた概要が資料の2番です。

 研究班では先生方に論文等を精査いただいて、以下のことが確認されております。まず1つ目のタミフルは、研究班では二重盲検ランダム化比較試験による高用量群、標準用量群での介入試験において、高用量の治療による有用性は確認できなかった。また、二重盲検ランダム化比較試験以外の研究においても、臨床的なアウトカムにおける有意差は確認できなかった。ラピアクタのほうは研究班で精査した結果、二重盲検ランダム化比較試験も含め、重症患者を対象とした高用量と標準用量の臨床的アウトカムを比較した研究は確認できなかったという結果が出ております。

 小委員会ではこの結果を踏まえ、まずは研究班による倍量・倍期間投与に関する論文等の精査の結果を妥当と受けとめてよいか、妥当と結論付けた場合に、新型インフルエンザ対策として全重症患者への倍量・倍期間投与を行うことを考慮した備蓄方針の見直し、基本的には備蓄量の算定に当該量を含めないといった考え方が必要か、ということを御審議いただきたいと考えております。

○岡部委員長 質疑応答は後にして、続いて研究班でまとめられた論文の精査についてです。確か田村先生も入っていたと思うのですが、谷口先生が研究班の代表者でまとめていただいているので、谷口委員からよろしくお願いします。

○谷口委員 このような機会を頂きましてありがとうございます。表記の厚労科研の中で、主に分担研究として田辺先生、西村先生、田村先生にやっていただいた研究の結果です。一応代表者として御説明申し上げ、先生方の御批判を仰ぎたいと考えております。また、詳細で私が詰まったときには、田村先生からお助けいただくことになっておりますので、よろしくお願いします。

 研究班資料を見ていただければと思います。背景については先ほど事務局から御説明いただきましたので割愛いたしますが、少なくとも新たなエビデンスをきちんと見ながら考え直していくということが、これまでにも行われておりますので、今回もその延長線上において文献検索、いわゆるシステマティック・リテラチャーレビューをさせていただきました。特に今回はペラミビル及びオセルタミビルについて、1ページに書いてあるようなキーワードを単独あるいはそれぞれ「and」で結んだものにおいて、和文及び英文におけるシステマティック・リテラチャーレビューを行いました。

 まず結果1の基本的なところからです。オセルタミビルは本来、倍量・倍期間投与について添付文書では記載されていません。つまり、そのことは考慮されていないということです。当然のことながら、血中濃度あるいはウイルスのIC50との関連なども全て添付文書において示されております。

 まず和文献です。レビューをした結果、ランダム化比較試験(Randomized-Control Trial、以下RCT)、あるいは二重盲検試験(Double-Blind、以下DB)といった介入研究はありませんでした。英語の文献においては以下のようなキーワードの掛け合わせにおいて、もちろん多くの文献が検索されたわけですけれども、このうち動物実験あるいは基礎研究を除いて5文献が残ってきました。ただ、このうちRCTあるいはDBで行われた介入研究は1件のみで、この後文献1で御説明申し上げます。それ以外はリテラチャーレビュー、レトロスペクティブコホート、プロスペクティブスタディーの5件でした。

 次のページは割と有名な論文なので、先生方も御存じだろうと思います。オセルタミビルの高用量と標準用量の国際共同研究です。成人は150mg、小児であればそれに該当する量ですが、この2群をランダムに割付けをして、その臨床的な効果を見るとともに、ウイルス学的な効果を見ております。発症後5日目のウイルスのRNA消失率は、高用量群と標準用量群で特に有意差はありません。臨床的な指標として致命率、酸素使用期間、集中治療期間、人工呼吸器の使用期間においても、2群間で有意差は認めませんでした。ゆえに、この論文では高用量の治療による有用性を見いだすことはできなかったという結論になっております。

 続いて文献2のリテラチャーレビューです。過去のいろいろな文献のレビューをして、19歳以上の成人感染者を研究対象とした文献を抽出し、同じようなリテラチャーレビューをされていますが、いずれも臨床的なアウトカムに違いを認めるような文献は認められていません。

 文献3はレトロスペクティブコホートです。これはICUに入室した、いわゆる重症例を対象としています。これをレトロスペクティブに統計処理をして、オセルタミビルの高用量と標準用量において比較しています。やはり臨床的なアウトカムに違いは認められておりません。

 文献4は、同様に高用量と標準用量の治療群のレトロスペクティブコホートです。これもICU非入院期間、臓器障害の評価、非人工呼吸器の期間、発症28日以内の死亡割合などを評価していますが、いずれも高用量群と標準用量群の間で差異は認められておりません。

 文献5は前向きの介入研究ですが、これにはランダム化されていない患者もいらっしゃいます。ただ、高用量群と標準用量群に分けて、結果的にはインフルエンザB型でウイルス消失時間が若干早いというデータが出ておりますが、A型では変わりがなく、臨床的なアウトカムにはABのいずれも有意な差は認められなかったと報告されています。

 続いて結果2のペラミビルの倍量・倍期間投与に関する文献です。ペラミビルがオセルタミビルと若干異なるところは、添付文書において連日の反復投与ができる、あるいは倍量投与ができるということが書いてあります。これが違いです。ただ、少なくとも和文献で関連単語において検討した結果、いわゆる二重盲検、ランダム化の比較試験における介入研究はありませんでした。実際に添付文書に書いてある連日投与との比較もありません。英語の文献においても同様に検索した結果、少なくとも介入研究というのは検出できませんでした。

 ただ、季節性インフルエンザにおいて、倍量・倍期間の有効性を評価した文献が2つ確認できております。これが文献6と文献7で、フェーズ3の治験データです。文献6は日本、韓国、台湾の多施設共同研究で、基本的にオセルタミビルに対する非劣性を検証することが目的の研究です。それぞれペラミビル300mg600mg、そしてオセルタミビルの標準用量との比較において、臨床的にアウトカムの違いは検出されていません。ただ、ペラミビルの600mgでも、重篤な有害事象の出現は確認されていません。これは基本的に重症患者に対する効果を見たものではありません。一般的な季節性インフルエンザです。

 文献7は、基礎疾患を有するハイリスク群を対象としたペラミビルの300mg治療群と600mg治療群です。投与回数は単回から5日間と、いろいろあります。インフルエンザの主要症状を見ますと、600mg治療群が有意に短かったというデータが出ています。また、連日投与した場合であっても、単回投与でペラミビルは3時間ぐらいで血中が消失しますが、蓄積傾向はなかったと報告されています。以上です。

○岡部委員長 田村参考人から、もし何か付け加えることがありましたらお願いいたします。

○田村参考人 特にありません。

○岡部委員長 結論と言いますか、集めた論文の中では倍量投与について両者に差がなかったということです。パンデミックの真っ最中にCDCWHOもそうだったと思うのですけれども、多分に緊急的な意味合いがあっての倍量投与、あるいは期間の長さということを表明したので、それが良い悪いの話ではなくて、今後私たちがもし遭遇したときに、こういうやり方が適当かどうか、平常時にこそやっておくべきことだと思うのです。それについて意見をまとめておきたいと思うのです。御質問、御意見がありましたらお願いいたします。

○坂元委員 教えていただきたいのですが、この主要症状というのは幾つぐらいの症状を見て、その症状間においては特に差がなかったという解釈でよろしいのでしょうか。

○田村参考人 インフルエンザの主要症状で、ほぼ多くの論文が引用しているのが、第1評価項目として、頭痛、寒気、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感、発熱、あとは上気道症状。インフルエンザで、よく治験でされるような一般的な主要評価項目をまず第1項目と考えており、副次的な第2評価項目として、例えば酸素使用期間であったり、ICUへの入院であったり、PICUの入院であったり、あとは死亡率、肺炎の合併という形で評価はされていました。論文によって、その評価項目をどのぐらい絞るかというところにもよるのですけれども、多くの論文がそういう形で評価をされていました。

○岡部委員長 他にはいかがでしょうか。

○宇田委員 参考までに聞かせていただきたいのですけれども、Nが小さいのでそんなにないのかもしれませんが、今お話のありました死亡者数には大きな違いはなかったということでよろしいのですか。

○田村参考人 死亡者数についても評価項目の中に入っています。確かに先生がおっしゃるように、Nが少ないので01か、若しくは2という形で、それぞれの群において有意差が出るかどうかの微妙なレベルですけれども、死亡者についても有意差はなかったという報告でした。

○岡部委員長 他にはいかがですか。

○小田切委員 2つ教えてください。これは倍量やると血中濃度もそれに比例して上がってくるものなのでしょうか。

○田村参考人 事務局に添付していただいたタミフルの添付資料、ラピアクタの添付資料で、分かりやすいのがタミフルの添付資料の3ページの右側に「薬物動態」とあります。1.に血中濃度があります。この中で、投与量を37.5mg75mg150mg300mgと、4つの群に振り分けたAUCCmaxTmaxT1/2ということで、それぞれ血漿中の濃度という形で、横軸が時間、縦軸が血中濃度でグラフ化されております。このグラフを見ると、用量が多くなってくると血中濃度が増えてくるということがお分かりになると思います。

 研究班としても、血中濃度と、ウイルスの効果を述べている著者がいるのかどうかというところで確認をしたところ、東南アジアの研究者のグループが考察で述べています。South East Asia Infectious Disease Clinical Research Networkの論文、この論文自体はRCTDBを行った唯一の論文ですが、そこで、ラピアクタとタミフルを加えたときに、著者の述べているところでは、血中濃度で大体20倍ぐらいの差が出てくる。つまり、ラピアクタを使ったほうが、タミフルよりはもちろん血中濃度が高くなる。それであっても、上気道からのバイラルクリアランスはほぼ同等であると。つまりラピアクタであっても、バイラルクリアランスはタミフルとほぼ同等であるということから、この著者は血中濃度が高いということと、有効性があるのかということに対してはどうなのだろうという形での意見を、結論に述べられていました。参考までに述べさせていただきました。

○小田切委員 我々感染研は、いわゆるin vitroで、耐性変異を獲得したウイルスがH5とか季節性も含めてですけれども、どれぐらい薬剤に対する感受性が下がるかを実験的に評価しています。そうすると、H5N1の場合は、オセルタミビル、ぺラミビルに対する感受性は1,000倍から2,500倍ぐらい感受性が下がります。これが、結構いろいろな研究所で見付かっている耐性ウイルスに対しての感受性の評価なのです。そうすると、1,000倍とか2,000倍ぐらい感受性が下がるような状況に対して、2倍の薬剤濃度にするとか2倍の投与期間にするとか、そんな程度の変更では恐らくin vitroの数値から見ると全く意味がないのではないと推測されます。これがin vitroサイドから見た場合のコメントです。

○谷口委員 幾つかの論文でもそういうことが記載されています。例えば、オセルタミビルを標準用量で一回飲むと、最高血中濃度が1,200nmol/Lぐらいになり、トラフで500nmol/Lぐらいになります。通常の季節性インフルエンザのIC500.1とか0.幾つnmol/Lです。標準容量にて、通常のウイルスのIC505,000倍ぐらいのトラフレベルがあるわけです。ただ耐性遺伝子を持っているものは、これの100倍ぐらいから1,000倍ぐらいになりますので、IC50で考えると、かなり厳しいところにもちろんなってまいります。だから、これを倍にしても、これまでのデータでは全て用量に比例して血中濃度が上がっていますので、先生がおっしゃるように、倍にしたところで、それができるかというのは非常に疑問だろうと思います。

○大石委員 確認なのですけれども、これまで我々は呼吸器感染症に対して、抗菌薬を投与する場合に、血中と気道分泌液中の抗菌薬の濃度というのは定量してきました。抗ウイルス薬については気道レベルの分泌液の濃度というのは、そこまで評価したものはまずないという理解でよろしいのでしょうか。

○田村参考人 先生がおっしゃるとおりです。確かに血漿中の濃度については、こういう添付文書であるのですけれども、組織から取ってきた組織中の濃度というのは、実際にはありませんでした。

○大石委員 動物実験レベル、マウスレベルでは、結構ハイドースで耐性ウイルスに対しても、ドースレスポンスで効果が違うみたいなデータが出てきています。ヒトでは、本日お示しのデータも含め、明確な差が、投与量による効果の差はないだろうということでよろしいでしょうか。

○田村参考人 はい、おっしゃるとおりです。

○岡部委員長 川名先生も臨床の立場からいかがですか。

○川名委員 私も論文を確認させていただきました。特に、最初の論文に代表されるような臨床的なスタディでは、発症から投与までの時間がちょっと長いかなという印象を受けました。もしかすると発症直後から投与すると、若干の有意差が出る可能性もあるのかという印象は受けました。ただ、発症してからすぐの段階では、重症なのかそうでないのかという判断ができないというジレンマがあります。そういう意味から言うと、基本的な使い方としては標準量でということで、倍量・倍期間投与を最初から推奨していくというのはエビデンスがないという印象を受けました。

○岡部委員長 私も伺いたいのですけれども、倍量あるいは長期間投与した場合に、一部ペラミビルのときに少し有害事象が増えているけれども、すぐに消えたと書いてあります。タミフルも含めて、有害事象の割合は多くなる。つまり使ってしまうと悪いほうが前面に出てくるのだというようなことはなかったのですか。

○田村参考人 有害事象についての報告は、標準用量群と高用量群での有意な違いは確かなかったと記憶しています。採血とか、レントゲン写真とか、もちろん臨床症状としての所見自体は、インフルエンザに起因するもので、恐らくタミフルの高用量ではないだろうという結論付けだったと記憶しています。

○丸井委員 余り内容的なところではないのですが2つあります。1つは文献2というのは、リタラチャーレビューで引いた文献なのですけれども、もともとの論文というのが引っかかってこないというのは、何か特に理由があったのでしょうか。

 もう1つは別の話です。今回の話は倍量・倍期間なのですけれども、期間の話は出てこないのです。この後の議論で倍量については差がない、期間についてもあまりありそうには思いませんが、これについても、特に根拠はないけれども、倍量・倍期間という2つをセットで議論することになるのか。この2つを聞かせてください。

○岡部委員長 谷口委員からお願いします。

○谷口委員 このリタラチャーレビューで取り扱った文献の中に、この中の文献1も入る。つまり、数が限られているものですから、恐らくいろいろなことをやっても、これ以上は出てこない。この中から、結局文献レビューをやっているという形になります。

 倍期間は、同様に検索していますが出てこないのです。そういうトライアル、あるいはスタディについては、これまでにはないということしか申し上げられません。

○丸井委員 それは分かりました。ないという状況で倍量・倍期間というのをセットで議論するのか、分けるのか。その辺りのところを、特に臨床の先生方の御意見がこの後必要だと私は感じていました。

○岡部委員長 最後のところで一緒にいくか、別々に考えるのかは議論が必要だと思います。でも、それも含めて御意見を臨床の先生方からも頂いていきたいと思います。感染症学会は、確か重症な場合にはそのような方法もあるのだということをホームページに掲載していたと思います。加藤参考人、あるいは他の先生方から御意見がありましたら是非お願いします。加藤先生、口火を切ってください。

○加藤参考人 私も研究班の結果を聞いて、倍量というものを推奨する根拠は乏しいと理解しています。諸外国においても、例えば英国でも政府のガイドラインが出ていたかと思いますが、倍量・倍期間は推奨しておりません。倍量について積極的に進めるということには、現時点のエビデンスではつながらないのかと考えています。

○岡部委員長 馳参考人はいかがでしょうか。

○馳参考人 私も、これらのエビデンスを聞いて、倍量・倍期間投与というのは積極的に推奨することではないと考えています。臨床の現場で、倍量投与を実際に検討したことはあります。例えば腸管がむくんでいて薬剤が確実に吸収されるか分からないような重症患者で、倍量投与をやったらどうかということが、議論になったことがありました。ただし、全ての患者に適用することではないですし、リソースが限られた場面や、備蓄を前提とした話合いの中では、倍量・倍期間投与をサポートするデータが乏しいことを重視する必要があると考えています。

○岡部委員長 倭参考人はいかがでしょうか。

○倭参考人 まずタミフルについては、もちろん我々季節性インフルエンザしか治療をしたことはないのですけれども、実際臨床の場面では倍量・倍期間投与というのは全くいたしません。それから、重症患者に対していかにするかということがここでの議論かと思います。百歩譲って、もしそういう場合があったとしても、タミフルではまず内服ということはなくて、重症患者さんの場合はペラミビルを考慮して、それをどうするかということについては、実際の場面でも、我々季節性インフルエンザでも倍量・倍期間投与した経験は後ほどお話させていただくかも分かりません。タミフルに関しては、そういうことは要らないのではないかと考えております。

○岡部委員長 釜萢委員は、第一線で重症というのは、御自分でというか、一般医医家のところでは御覧にならないとは思うのですけれども、考え方としてはいかがでしょうか。

○釜萢委員 今、皆様からお話がありましたが、倍期間というのは、静脈に与えた場合に、もともとあの薬の投与量は11回投与で終わりなのです。それを重症というか、非常に症状の改善が悪い場合に、連日投与になる可能性はあるだろう。実際にその話は聞いたことも私はあります。必ずしも連日投与したから効果があったわけではなかったということで、倍期間という話は出てきました。内服薬を倍飲ませたというのは余りないのだろうと思っております。

 意見を申し述べるとすれば、これまでの文献検索、それからいろいろ実際の臨床の経験を踏まえて、備蓄量を重症だから倍量・倍期間の備蓄をするという必要はないだろうと判断しております。

○岡部委員長 臨床の場で本当に患者さんを目の前にして、他に打つ手がないというようなときには、もしかすると量を増やせばとか、期間を増やせばという判断はなきにしもあらずだとは思います。そういうものをやってはいけないとか、禁忌であるということはないと思うのですけれども、今回のこの委員会では、備蓄をするときに、この倍量を考えておいて備蓄量の算定をするのかというところが、この委員会に課せられた課題ではないかと思うのです。

 本日の今まで委員の方々、それから参考人の方々の御意見をまとめるならば、通常考えられる範囲で、重症例について、これが効果があったというのは文献的には見られない。数が少ないのは、多分そういうデザインの治験も少ないだろうというようなことがある。はっきり見られていない以上、どっちだか分からないというのではなくて、少なくとも出ている、レビューされている論文その他では、倍量に関する明らかな効果はない。しかし、使ったらすごく悪いということはなかったわけです。そうであるならば、少なくとも倍量を考慮しながら、備蓄も考えなくてはいけないという形にはならないのではないか。そのようにこの場はまとめられると思うのですけれども、いかがでしょうか。

 先ほど丸井先生がおっしゃった、期間を延ばすという点は、むしろそういうデザインもないし、知見もないしということであれば、わざわざ推奨するわけにもいかないとは思うのです。臨床の場での判断はあり得るかもしれないけれども、これを考慮して、何らかのリコメンデーションをこの審議会のほうから出していく必要もないように思うのですが、その点で何か御意見はありますか。まとめ方に異論がありましたら、どうぞ遠慮なくおっしゃってください。

○川名委員 現場の医師が医師の裁量の範囲内で、例えば倍量使うとか、あるいは投与期間が延長せざるを得ないというようなことは当然あるだろうと思うのです。しかし、今のこれまでの知見を総合すると、厚生労働省が、あるいは内閣府が抗インフルエンザウイルス薬を備蓄するための根拠として、倍量投与とか、倍期間投与にも配慮すべきであるというようなエビデンスはないということでよろしいのではないかと思います。

○丸井委員 私も川名先生、あるいは岡部先生のまとめに賛成です。備蓄としてそれを考える必要はないので、それは現場を制約するものでは全くないということで説明できると思います。

○岡部委員長 ただ、臨床の場でも強くリコメンデーションするものではないので、通常の考え方としては、標準的な投与量で判断をしていく。ただ、緊急性その他のときには、むしろ私はこのペラミビルのときにも話をしたと思うのですけれども、やはりそういうもののデータの蓄積も大切なので、もしもそのような状況に応じてやらざるを得ないときには、やはりきちんとしたデータを取っていただいて、臨床の側のほうでまとめていただければと思います。そんな形でまとめておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。つまり、備蓄としての抗インフルエンザウイルス薬、ここの場合は2種類になります。かなり演繹されるような形になるとは思いますけれども、高用量に関して、あるいは倍量投与も含めて、備蓄のことに関してはこれを求める必要はない。ただし、臨床の場で医師が本当に必要であると判断をして、あるいは患者さんの条件によっては、おっしゃるように吸収が悪いとかいうようなこともあるでしょうから、そこを決して妨げるものではないというようなところで、議題1のほうの結論にしておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、議題2に移ります。議題2は既に小委員会で議論をされていると思います。平成30年度におけるH5N1プレパワクチンの備蓄株の方針についてです。本日議題になっているのは、平成30年度にはプレパンデミックワクチンを備蓄するという基本方針があります。でも、従来はこれについて、本当に備蓄が必要かどうか、あるいは今までのような1,000万人分を確保するというようなやり方で、順次そのときの状況に応じて株を選定していくほうがいいかどうか、これはまた別の所で議論はしています。本日の会議は、あくまで平成30年度におけるH5N1プレパワクチンの備蓄株の方針についてということにとどめたいと思います。これは、議論をここでやらないということではないので、もちろん意見は頂いていいと思うのです。それはそれで今まで議論する場がなかったのですけれども、これについても、この委員会をベースにした形で議論をするという方針になっていて、既にスタートしていますので、是非そのところもよろしくお願いいたします。事務局から、資料2を中心に説明をお願いします。

○山岸補佐 事務局資料3を御覧ください。1枚紙のA4の縦紙です。事務局資料3、「平成30年度に備蓄するH5N1プレパンデミックワクチン株の種類について()」とタイトルがある紙です。こちらでH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄の経緯、それから昨年度に御審議いただいた平成28年度以降の備蓄株選定における方針、最後に平成30年度に備蓄を優先する株について、この順番で説明させていただきます。はじめに、H5N1プレパンデミックワクチンの備蓄の経緯、今までのワクチンの備蓄の経緯について御説明申し上げます。

 平成9年に香港で初めて鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスに感染確定者が報告されております。病原性の高いH5N1ウイルス由来の新型インフルエンザが発生した場合、その病原性の高さから、大きな健康被害が引き起こされると想定されたことから、我が国では平成18年度からH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄を行うこととなっております。

 この四角枠の説明ですが、平成18年度から平成26年度にかけて、複数のワクチン株について、それぞれ約1,000万人分の原液を備蓄し、それぞれそのうち54万人分を製剤化、バイアルに詰めて、すぐ使えるようにしていたということになっております。有効期限が切れるタイミングで同じワクチン株を追加備蓄しております。

 平成27年度には備蓄対象に、今まで備蓄していた鶏卵培養によるH5N1ワクチンを加えて、細胞培養法によるH5N1ワクチンのほうを追加しております。ほかのクレードに対する交差免疫性を重視して、この年はインドネシア株を備蓄するという方針で備蓄しております。平成28年度に国立感染症研究所のほうからデータを提出していただきました。その際に、インドネシア株が確かに平成27年度に示されたデータでは交差免疫性はあったのですが、近年分離されたH5N1の野性株については、十分ではないという可能性が示唆されたということで、危機管理上の重要性からチンハイ株、クレード2.2というものを備蓄しております。

 このような経緯がありまして、平成28年度10月に感染症部会のほうで、今後どのような備蓄株を選定していく方針を定めるかということで御審議いただきました。その際、定められた方針が以下に書かれております。

 今後の備蓄方針についてです。近年のH5N1鳥インフルエンザ発生の疫学的状況、パンデミック発生の危険性、パンデミックが発生した際の社会への影響、発生しているウイルスとワクチン株の抗原性等を踏まえ、検討時点で危機管理上の重要性が高いワクチン株の備蓄を優先すると定めております。その際の議論で、平成29年度に優先すべき株として、クレード2.2のチンハイ株を考えております。

 今後の製剤化方針としては、マル1に書かれていますが、製剤化の対象となる備蓄株として、上述の今後の備蓄方針と同様に、検討時点で危機管理上重要性の高いワクチン株の製剤化を優先する。マル2として、製剤化を行う量は10万人分を基本とする。ただし生産可能な最小製剤化量が10万人を超える場合は、当該最小製剤化量を基本とする。

 裏のページ、今後の臨床研究の方針です。今般、新たに導入された細胞培養法ワクチンについても、製剤化したワクチンの一部を使って臨床研究などを行い、有効性・安全性等について確認を行うということになっております。今日御審議いただきたいのは、平成30年度に備蓄を優先すべき株というところです。近年のH5N1の鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染は世界的に減っております。このうちクレード2.2系統の鳥インフルエンザのヒトへの感染確定症例数については、平成27年に急激な増加は確認されましたが、現在はエジプトで平成28年に10症例、平成29年に3症例が確認されております。

 一方、過去にベトナム、インドネシアや中国での流行が懸念されたクレード1.1、クレード2.1、クレード2.3系統におけるヒト感染症例数は報告されておりません。よって現在もクレード2.2系統が危機管理上の重要性が最も高いということから、平成30年度の備蓄株についても、昨年10月の第20回感染症部会で承認された方針(クレード2.2のチンハイ株を1,000万人分確保)を継続してよいかといったところです。よろしくお願いいたします。

○岡部委員長 今、事務局から御説明いただいているのですが、これは小田切委員、信澤委員から是非、コメントを頂ければと思います。

○小田切委員 今、事務局のほうで説明があったように、危機管理上の重要性の高いものを優先的に選んでいくということなのですけれども、最近のH5N1のヒト感染事例は非常におとなしくて、例数が2例とかそのぐらいしかなくて、いずれもそういう意味では危機管理上重要性は低いという状況なのです。強いて言えば、その中ではチンハイで代表されるクレード2.2が、やはり依然として2例か3例エジプトで感染事例がありますので、これが、それに相当するだろうと思います。

○岡部委員長 信澤委員、何かコメントがありましたら。

○信澤委員 以前からも検討するべき事項かとは思ったのですが、危機管理上の重要性をどのように考えるかということは、常に念頭に置く必要があると思います。現時点でエジプトでヒトが結構感染しているので、ワクチン株を作成しましょうと言って、実際に使えるようになるのは半年以上先のことですので、それを備蓄しておいたときに、翌年同じような流行が起きるかも分からない。もしパンデミックが起きるとしたら、やはりパンデミックを起こしたウイルスでワクチンを作ることになると思いますので、備蓄ワクチン株で対応するのか、抗インフルエンザ薬で対応するのかというのは以前から話に出ていたと思いますが、その点も今後、どういう株を備蓄するかを検討していくことは必要だと思います。

 細胞培養ワクチンに切り替わって、ここにも書かれていますが、その有効性に関しては鶏卵の場合もそうですけれども、アジュバントがあるなしで、かなり変わってきますので、その点をどのように使い分けていくのかということも、今後、議論する必要があると思います。

○岡部委員長 ありがとうございました。今の点、信澤委員がおっしゃったようなところが、大きな課題となっているわけですが、これについてはきちんとした場で議論をやっていくと、今まで曖昧と言うとちょっと語弊がありますが、議論する場と時間が十分に期間として取れなかったということがあります。これは一大方針になるだろうと思うのですが、このプレパンワクチンの考え方、これは今の意見も含めてきちんと議論して結論を出していきたいと思います。そのことも加えて、何か御意見がありましたらどうぞお願いいたします。

○坂元委員 事務局のもう1つの参考資料を見せていただくと、今、チンハイ株、900万人分が保管されていて、そうすると100万人分を追加するというこの図と、平成31年の途中からは、この900万人分が失効してしまうので、それはそのときにまた、その流行状況を見て判断するという解釈でよろしいでしょうか。

○山岸補佐 基本的にそのとおりの御理解で結構です。ただ岡部先生から最初にコメントを頂きましたが、プレパンデミックワクチンの全体像について、様々な観点からもう一度考えていく時期だということは、有識者会議のほうでも御意見頂いておりますので、そういったところについてはまた、御検討の場ということは考えていく必要があると思っております。

○岡部委員長 そうするとストックを持って自治体はどうするのかみたいなこともありますので、笹井参考人、このような備蓄、それから株のほうは、今、小田切先生から説明いただいたような形になると思うのですが、備蓄のことも含めて何か御意見ありましたらお願いします。

○笹井参考人 私のほうからは特にありません。

○岡部委員長 あるいは宇田先生、保健所というような立場も相当、実際には第一線で問題も多々あると思うのですが、いかがですか。

○宇田委員 先ほどちょっと意見がありましたように、予防接種が本当に必要であれば、やはり自治体としては準備をしてやらなければいけないということですが、先ほど資料を見ても、例えばH5N1、最近発生の件数がかなり少なくなっている中で、マスとしてどういう準備をしていけばいいのかというのは、地方の行政機関としてなかなか判断する根拠がないので、国のこういう委員会とか部会の考え方を参考にして、あるいは国の御指導に従ってということになると思います。

 危機というか、マスの発生をどのぐらい現実性があるものとして判断して準備するのかということに関しては、場合によっては少し以前と違って状況が変わってきていることを踏まえて、必要に応じて御検討いただけると、ほかに自治体として準備することが場合によってはあるかもしれないので、これは国としてこういう有識者の委員会等で御議論いただければ、地方としては大変有り難いと思います。

○岡部委員長 ありがとうございました。坂元委員も地方の立場からお願いします。

○坂元委員 先日、内閣府と共同で、新型インフルエンザの住民予防接種のシミュレーションというものをやらせていただいたのですが、やはりまともにやると相当時間が掛かるということでした。

1,000万人用意して、果たして全員にワクチンが打てるかどうかという、時間的な制約も結構出てきてしまうのではないかと思います。1,000万人用意しても、実際の流行株の新しいワクチンの製造が間に合ってしまうのではないかということで、1,000万人がどうこうということではないのですが、実際の接種のシミュレーションも計算に入れて、やはり接種可能な備蓄量もある程度、今後考えていったほうがいいのかなという感じです。

○岡部委員長 H5N1が非常に少なくなってきているのは、ちょっとほっとするようなことなのですが、やはり12年の単位で大丈夫だなと言い切ってしまうのも、なかなか言えないのが難しいところです。H7N9も減った減ったと思っていたら、また急に増えてきたといったような現象もあるので、そこは疫学的な状況を見ていかなくてはいけないと思います。

 今、幾つかの御意見を頂いたように、備蓄、それからどのような状況でどのぐらいということは、きちんと議論すると。これは内閣官房の有識者会議のほうで出てきた話だと思うのですが、なかなかそれを言う場がなかったので、しょうがないというわけではないのですけれども、やはりこの委員会が専門家もおられて、臨床の現場の先生もおられるし、備蓄に関わる先生方も、実際の現場での対応ということもあるので、ここで議論しましょうということになっています。これは今年度のこの委員会の課題になると、このように思います。

 繰り返しになってしまいますが、一応、感染症部会ではこのH5N1の備蓄については、平成30年度に関しては危機管理の点から、先ほど御説明いただいたように、クレード2.2のチンハイ株の1,000万人分確保というような基本方針が出ています。これについて、もし何か御意見がありましたら、参考人の先生も含めておっしゃってください。

 もし特に御議論がなければ、平成30年度の方針としては、この委員会としても承認しておきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、その他のほうは何かありますでしょうか。事務局のほうからお願いします。

○山岸補佐 特にありません。

○岡部委員長 先生方のほうからは、その他というかざっくばらんに何かありませんか。会議の進行は割に順調にいっているのですが、準備が非常に良かったのではないかと思います。前半の倍量投与については、もしかするとWHOにも伝えておく必要があるだろうと思いますし、CDCにも何らかの形で連絡をしなくてはいけないぐらい、日本のほうでトップを切ってのことだと思います。あるいは、この委員会では決めても、やはり日本国内の学会でも、その辺のハーモナイゼーションはやっておいていただいたほうがいいかと思います。しかし、話としてはスムーズに、割に順調に終わりに近づいているので、もしその他のことで何かあればお願いします。

○釜萢委員 先ほどのプレパンデミックワクチンをどうするかという話で、今回の決定については全く異論はないのですが、内閣府の会にも出させていただいていて、やはり細かい議論は専門家の方のお集まりいただくこの会が、とてもふさわしいのだなと改めて感じたものですから、発言させていただきました。

 やはり細胞培養のワクチンの生産の様子というのも、それこそどんどん進歩するので、その辺のところで、もしパンデミックの株が決まって、ワクチンを製造した場合に、現時点でどのぐらいの期間があれば、必要量を確保できるのかというようなところは、常に新しい情報を皆さんにお示しいただいておく必要があるだろうと感じます。

 それから、その場合それが出るまでの間に、プレパンデミックワクチンを行うという方針できたわけですけれども、特別措置法に基づいて粛々と対応するというのはそのとおりでよろしいのですが、実際にワクチンの接種を担当する私どもの立場としては、実際どのぐらいの期間で接種ができるのかなというところをよく考えておかないと、これはとても現実とそぐわないようなプランを立ててもいけないなと思うので、その辺の細かいシミュレーションを、この際しっかり科学的見地に立ってやっておくことが、今、非常に大事なのではないかなと思います。

 有識者あるいは内閣府の会議もとても大事ですが、いろいろな方が来られるので、余り科学的な議論というよりは、もうちょっと幅広い議論になって散漫になりかねないところがあるので、科学的な議論はこちらでしっかりやっておく必要があるかなと感じて発言をさせていただきました。

○岡部委員長 ありがとうございました。それから、参考人の先生方、何かありませんか。

○大石委員 時間があるということなので、ちょっと発言させていただきます。新型インフルエンザ対策の抗インフルエンザ薬の備蓄、そしてH5N1のプレパンの備蓄、こういったことで順に進んでいっているのは分かるのですが、先ほど委員長のほうから話がありましたが、昨今のH7N9の患者数の増加とか、そういったこともあるので、H7N9に対するワクチンをどうするべきなのかとか、少しシフトしていく必要があるのではないかと思っているところです。

 過去に厚生労働省のほうで、H7N9のワクチンのトライアルが実施されているということがあったと思うのですが、その後まだ情報を聞いていないので、その辺のフォローアップも必要ですし、免疫性がちょっと弱いということはかなり言われているので、一体どういう方針でいくのか、ワクチンを余り考えないのか、ワクチンはやはり必要なのか、その辺をしっかり、こういうサイエンティックな場で議論していく必要があるのではないかと思っています。以上です。

○岡部委員長 ありがとうございました。参考人の先生方も、この委員会に何か課題か注文かありましたら、どうぞおっしゃってください。田村先生、何かありませんか。田村先生は前からやっていらしたから、プラスアルファかもしれません。どうぞ。

○田村参考人 特にありません。

○岡部委員長 加藤参考人。

○加藤参考人 この委員会は備蓄関係に限らないという理解でよろしいでしょうか。

○岡部委員長 備蓄に限らずタミフルもそうですけれども、基本方針は内閣官房の委員会や有識者会議などでやるのですが、テクニカルなことに関して、実際にどうするかというのは、こちらの委員会のほうの役割という使い分けになっております。

○加藤参考人 私も作業班で、抗ウイルス薬の備蓄の議論に関わってきたのですが、やはり抗ウイルス薬というものは、非常に有効な治療の手段だとは思います。ただ、ウイルス感染症ではそれ以外のベスト・サポーティブ・ケアというか、支持療法で、特に呼吸器感染症ですから、人工呼吸をどうするかとか、やはりインフルエンザ薬だけでは医療というものは完結しないと思うのです。

 私自身もその答えを持っているわけではないのですが、多分日本の財政にも限りがありますので、インフルエンザ薬、ワクチン、その他の医療分野にどのように限られた資源を割り振っていくべきなのかということも、非常に重要なところではないかと思っております。

○岡部委員長 ありがとうございました。笹井参考人も、もし何かありましたらお願いします。

○笹井参考人 自治体の立場としては、やはりワクチンに関しては、どのように実際に接種できるのかということが大変大きな問題で、患者さんが発生した際の訓練などは、十分に指定医療機関を中心にやっておりますけれども、ワクチン接種に関しては、まだまだ現実的な対応ができていないのが実態です。その辺りを今後、自治体としては検討していかないといけないかなとは思っているところです。

○岡部委員長 ありがとうございました。馳先生いかがでしょうか。

○馳参考人 特にありません。

○岡部委員長 倭先生、いかがですか。

○倭参考人 私も加藤先生、馳先生、ここにいらっしゃる先生方と同じく作業班で、特に重症患者への対応、ラピアクタであるとか、あるいはファビピラビルのほうの議論に参加させていただきましてありがとうございます。ふだん、重症あるいは抗インフルエンザからの集中治療の患者さんを扱っている立場から、作業班、あるいはこういった会に参考人として呼んでいただいて臨床の声を聞いていただけることは非常に有り難いと思いますので、今後ともそういう形で発言させていただく機会を頂きましたら、大変幸いです。どうもありがとうございます。

○岡部委員長 ありがとうございました。どうぞ、坂元委員。

○坂元委員 厚労省の方にお教えいただきたいのですが、現在、新型インフルエンザの登録医療機関は、どれぐらいの数があるのでしょうか。

○山崎補佐 先行的にデータを頂いたのが平成26年なのですが、それで6万件を頂いております。現在、新規での登録がそれプラスなのですが、まだ全体的な集計までは至っておりませんので、それ以上の件数ということになります。

○岡部委員長 日医からも通知か何かが発せられていると思うのですけれども。

○釜萢委員 私どもの認識としては、そういう緊急事態においては、全ての医療資源をそれに振り向けるぐらいのつもりでないと、接種はできないだろうと思って覚悟をして、それに合わせなければいけないと思っております。ただ、実際まだシミュレーションができるほどのデータがないという中で、一部不安を感じているところです。

○岡部委員長 ありがとうございました。いわゆる被害想定に関しても見直しをやっているので、かなり根本的な議論にも入っていくと思うのです。とにかく10年近くたちましたから、いろいろ見直していかなくてはいけないところもあると思います。変化もあるので、今日の議題1のように科学的な知見が出てくれば、それを取り入れるというようなことをやっていきたいと思います。

 先ほど、委員あるいは参考人の先生方からおっしゃっていただいたことは、やはりこの委員会で議論すべきことも多々ありますので、事務局のほうはそこをちゃんとノートを取っておいていただいて、次にやるべきこととして伝えておいていただければと思います。我々も記憶に残しておかなくてはいけないと思うので、よろしくお願いいたします。

 それでは、早めではありますが、十分な議論であったのではないかと思います。浅沼課長、何か最後にありますか。

○浅沼課長 特にありません。

○岡部委員長 それでは終了にしたいと思います。次回のことなど事務的なアナウンスがありましたら、どうぞ。

○山崎補佐 特にありません。

○岡部委員長 それでは、今日は平和裡に終了ということで、ありがとうございました。


(了)

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