ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 雇用環境・均等局が実施する検討会等> 職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会> 第1回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録(2017年5月19日)




2017年5月19日 第1回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録

労働基準局勤労者生活課

○日時

平成29年5月19日


○場所

中央労働委員会講堂(労働委員会会館7階)


○議題

(1)職場のパワーハラスメントに係る現状等について
(2)意見交換

○議事

○勤労者生活課長補佐 
 定刻より少し早いですが、委員の皆様お集まりいただきましたので、ただいまより第1回職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本検討会の進行について、座長が選出されるまでの間、事務局にて議事進行を務めさせていただきます。まず、本検討会の開催に当たり、労働基準局長の山越から御挨拶を申し上げます。

○労働基準局長 
 労働基準局長の山越です。委員の皆様方には大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。この職場のパワーハラスメントについてですけれども、平成23年に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が開催されました。それ以降私どもといたしましても、企業向けのセミナーであるとか、マニュアルの作成など様々な対策に取り組んでまいりました。
 その一方でその現状を見ると、例えば都道府県労働局に寄せられる相談件数を見ても、いじめ・嫌がらせの件数は非常に増加しており、非常に大きな問題となっているところです。こうした中ですけれども、去る3月28日に、「働き方改革実現会議」で決定された、「働き方改革実行計画」の中においても、この職場のパワーハラスメント防止を強化するために、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行うこととされました。
 これを受けて今般、有識者と労使関係者からなるこの検討会を開催し、実効性のある職場のパワーハラスメント防止対策について検討を行うことといたしました。働く方の健康を保ち、そして意欲を持って働いていただくためには、労働時間管理であるとか、メンタルヘルス対策はもとより、職場のパワーハラスメント防止対策も非常に重要です。皆様方には、是非働く方々の視点、あるいは現場の視点などから、忌憚のない御議論を頂くようお願い申し上げまして、私からの挨拶とさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○勤労者生活課長補佐 
 続いて、本検討会の委員の皆様を御紹介いたします。お配りの名簿順に御紹介いたします。本日は御欠席の、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介様です。日本労働組合総連合会東京都連合会副事務局長の内村昌司様です。株式会社クオレ・シー・キューブ代表取締役会長の岡田康子様、なお岡田様は本日御欠席のため、同社執行役員の稲尾和泉様が代理出席しております。損害保険労働組合連合会事務局次長の小保方泰介様です。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野教授の川上憲人様です。株式会社イトーヨーカ堂人事室勤労厚生部勤労担当マネジャーの久保村俊哉様です。中央大学大学院戦略経営研究科教授の佐藤博樹様です。本日は御欠席の日本商工会議所産業政策第二部副部長の杉崎友則様です。本日は御欠席の慶應義塾大学法学部教授の内藤恵様です。全国中小企業団体中央会事務局長の中澤善美様です。一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部上席主幹の布山祐子様です。明治大学法科大学院専任教授の野川忍様です。UAゼンセン日本介護クラフトユニオン特任中央執行委員の浜田紀子様です。成蹊大学法学部教授の原昌登様です。日本労働組合総連合会総合労働局雇用対策局長の吉住正男様です。以上15名です。
 続いて事務局を紹介させていただきます。労働基準局長の山越です。大臣官房審議官の藤澤です。勤労者生活課課長の平嶋です。勤労者生活課専門官の高橋です。申し遅れましたが、私は勤労者生活課課長補佐の小林です。
 配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、開催要綱、委員名簿、資料1は、「働き方改革実行計画」等について、資料2は、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」について、資料3は、職場のパワーハラスメント防止に係る厚生労働省の取組について、資料4は、総合労働相談コーナーへの相談件数、資料5は、平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査主要点、参考資料は、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告、以上の10点です。
 このほかに、委員の皆様のお手元には啓発用のポスター、そしてパワーハラスメント対策導入マニュアル、職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書、同報告書の概要版の4点をお配りしております。不足などがありましたら、事務局までお申し出ください。
 開催要綱を御覧いただきながら、本検討会の座長についてお諮りいたします。まず、開催要綱の1は開催趣旨です。冒頭の局長の挨拶にもありましたが、近年職場のパワーハラスメントが大きな問題となっている中、「働き方改革実行計画」で、労使関係者を交えた場で対策の検討を行うとされたことから、本検討会を開催することといたしました。2は検討事項です。パワーハラスメントの実態や課題の把握、そしてその防止を強化するための方策を中心に考えております。運営は3のとおりですが、座長については(3)において、参集者の互選により選出するとしております。これに従い、座長の選出を行います。事前の調整の結果、佐藤委員にお願いしたいと考えますが、よろしいでしょうか。

                                   (異議なし)

○勤労者生活課長補佐 
 ありがとうございました。それでは、佐藤委員に座長をお願いいたします。座長に御就任いただきます佐藤委員より御挨拶を頂きます。

○佐藤座長 
 御指名ですので、進行係として務めさせていただければと思います。先ほど局長からもお話がありました円卓会議と、その下のワーキング・グループでパワーハラスメントの類型とか対策についての取りまとめに関わりましたので、多少役所の取組を知っているかなということでやらせていただければと思います。
 本日は第1回ということですので、今回の検討会立ち上げの背景、その検討会で何を最終的な出口として議論するのか、今回のテーマに関わる関係資料について説明をしていただいて、何を議論するかを共有できればと思います。最初に、資料の説明をお願いします。

○勤労者生活課長補佐 
 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。退室をお願いします。資料1は、「働き方改革実行計画」等についてです。先ほどの開催要綱の説明の中でも簡単に申し上げましたが、まずは本検討会が開催に至った経緯について御説明いたします。1ページは、「働き方改革実現会議」の概要についてです。昨年9月より一億総活躍社会をひらく最大のチャレンジである「働き方改革」について、総理を議長として関係大臣、有識者の方々に参加していただいて議論を行ってまいりました。
 その結果2ページにあるように、本年3月末には「働き方改革実行計画」が策定され、その項目の中に、左下の赤線部分ですが、パワーハラスメント対策、メンタルヘルス対策というものがあります。
 その具体的な内容については3ページです。労働者が健康に働くための職場環境の整備に必要なことは、労働時間管理の厳格化だけではない。上司や同僚との良好な人間関係づくりを併せて推進する。このため、職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行うと記載されております。
 5ページ、「働き方改革実行計画」に先立ってまとめられた、時間外労働の上限規制等に関する労使合意においても、6ページの赤線部分のとおり、職場のパワーハラスメント防止に向けて、労使関係者を交えた場で対策の検討を行うとされております。今般の検討会については、こうした「働き方改革実行計画」を踏まえて設置されたものです。まずは、この点を改めて御説明いたしました。
 資料2は、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議についてです。ここからは、パワーハラスメント防止に係る厚生労働省のこれまでの取組について御説明いたします。厚生労働省におけるパワーハラスメント防止に係る取組については、平成23年に開催した、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」がそのスタートです。
 1ページで、職場のいじめ・嫌がらせが増加傾向にある状況等を踏まえ、その取組の在り方を検討するため、平成23年7月に、労使、有識者、政府からなる円卓会議を立ち上げました。円卓会議に加え、具体的な論点について検討を行うワーキング・グループをその下に開催し、円卓会議には本検討会の委員でもある佐藤座長、岡田委員、ワーキング・グループにはお二人に加えて川上委員にもメンバーに入っていただきました。平成24年3月にはその成果として、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を取りまとめました。
 その具体的内容は2ページです。ワーキング・グループの報告書が上段にあります。ここでは、パワーハラスメントの概念として、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為と定義いたしました。その主な類型は下の表です。身体的な攻撃、精神的な攻撃等6つの類型をお示しいたしました。さらに、こうしたパワーハラスメントを予防・解決するための労使の取組としてその下にあります、予防するために、トップのメッセージを発する、ルールを決める等、解決するために、相談や解決の場を設置する、このようなことをお示しいたしました。
 このワーキング・グループの提言を踏まえ、資料の下段、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」では、組織のトップ、上司、そして職場の一人一人それぞれの立場からの行動を呼び掛けたところです。それ以降のページは本文ですので、説明は割愛させていただきます。
 資料3は、職場のパワーハラスメント防止に係る厚生労働省の取組についてです。今御説明いたしました円卓会議の提言を踏まえ、平成24年度より当省が実施してきたパワーハラスメント防止に係る具体的取組をまとめたものです。1ページは、主に実態把握、周知広報、そして労使の取組促進という区分で実施してきております。実態把握については、後ほど資料5で説明いたしますが、平成24年度と平成28年度の2回調査を実施しております。周知広報については、啓発用のポータルサイトを開設し、順次それを充実させるとともに、皆様のお手元にもお配りしておりますポスター、パンフレット、リーフレットを作成し、全国に配布するなどの取組を進めてまいりました。
 労使の取組促進については、企業の取組の好事例を収集した対策のハンドブックとか、お手元にお配りしたピンク色の冊子である導入のマニュアルを作成して、これを基に全国で企業向けのセミナーを開催するなどの取組を進めております。
 2ページは、平成29年度の具体的な取組です。今申し上げたポータルサイトの運営など、周知広報を引き続き進めるとともに、労使の取組促進については、これまでのマニュアルの配布、セミナーの実施に加えて、新たに企業に対してパワーハラスメント対策の取組を指導できる人材を養成する研修を実施することとしております。以上、資料2と資料3で説明いたしましたとおり、円卓会議をスタートに、当省ではパワーハラスメント防止対策を着実に実施してまいりました。
 その一方で、都道府県労働局において、職場におけるいじめ・嫌がらせの相談件数が増加してきております。それをお示ししたのが資料4です。総合労働相談コーナーへの相談件数です。都道府県労働局の総合労働相談コーナーにおける相談件数の、過去10年間の推移をお示ししております。職場のいじめ・嫌がらせに関する相談は、棒グラフの一番下の赤い所ですが、年々増加の一途を辿っております。平成24年度以降は、全ての相談の中でトップとなっております。この要因については、パワーハラスメントの認知度が上がってきた、すなわち円卓会議以来の取組によるアナウンス効果が出ているのではないかということが考えられます。いずれにしても職場におけるいじめ・嫌がらせの相談件数が年々増加しているということは、その対策の必要性が依然として高いということかと思われます。資料4の説明は以上です。

○勤労者生活課専門官
 引き続き資料5の平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査 主要点について御説明いたします。本実態調査については、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が公表されて4年余りが経過したことを踏まえ、この間におけるパワーハラスメントの発生状況や、企業の取組状況等を把握し、今後の施策に反映することを目的に実施したものです。
 調査結果については参考にお配りした分厚い冊子のとおりですが、資料5はその主要点として、1ページにある「パワーハラスメントの発生状況」と「パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組状況」、2ページで「パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組の主な効果」と、「パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組の主な課題」の4つに分けてまとめたものです。1ページと2ページに記載している内容については、3ページ以降でグラフ入りとしてまとめておりますので、3ページから御説明いたします。
 3ページは、パワーハラスメントの発生状況についてまとめたものです。図1は相談窓口で従業員から相談が多いテーマを表したものです。パワーハラスメントが32.4%と最も多くなっております。図2は過去3年間にパワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業を表したものですが、36.3%となっております。図3は、過去3年間にパワーハラスメントを受けたと回答した従業員を表したものですが、32.5%と前回の調査の25.3%から7.2%増えております。増えている理由としては、資料4の総合労働相談コーナーの相談件数のところで説明があったとおり、パワーハラスメントに対する理解が深まり、従来はパワーハラスメントにはならないと思われていた行為がパワーハラスメントになり得るということが広く認識されるようになったことによるものと考えております。
 4ページと5ページは、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組状況をまとめたものです。4ページの図4は、パワーハラスメント防止の取組状況を表したものです。取組を実施していると回答した企業は52.2%と半数を超えております。図5は、パワーハラスメント防止の取組状況について、従業員規模別に、前回の実態調査と比較したものです。99人以下の企業が18.2%から26.0%となるなど、全ての従業員規模で取組を実施していると回答した企業の比率が高くなっております。
 5ページの図6は、相談窓口の設置状況を表したものです。社内に設置、社外に設置、社内と社外の両方に設置を合わせると73.4%となり、約4分の3の企業が設置していることになります。
 図7は相談窓口の設置状況について、従業員規模別に、前回実態調査と比較したものです。99人以下の企業が37.1%から44.0%になるなど、全ての従業員規模で相談窓口を設置していると回答した企業の比率が高くなっております。
 6ページから9ページまでは、パワーハラスメント対策を実施する上での主な効果を取りまとめたものです。6ページの図8は、パワーハラスメントの相談件数の推移について、パワーハラスメント防止の取組の実施状況別に表したものです。パワーハラスメント防止の取組を実施している企業のほうが、取組を考えていない企業よりも相談が多い状況となっております。これは、取組を実施している企業の従業員のほうが、パワーハラスメントに対する理解がより深まり、相談するケースが多くなるものと思われるからです。
 図9は、パワーハラスメントを受けたと感じた従業員のその後の行動について、パワーハラスメント防止の取組の実施状況別に表したものです。勤めている会社が、パワーハラスメント対策に取り組んでいると認識している従業員は、取り組んでいないと認識している従業員よりも、会社に相談する比率が高くなっております。具体的には、「社内の相談窓口で相談した」については、取り組んでいると認識している従業員が8.6%に対して、取り組んでいないと認識している従業員は1.9%となっております。これらのことから、パワーハラスメント防止に向けた取組を積極的に実施すると、従業員にとっては相談がしやすくなるとともに、企業にとってもパワーハラスメントの実態が把握しやすくなるということが言えます。
 7ページの図10は、過去3年間にパワーハラスメントを受けたと感じた経験について、パワーハラスメント防止の取組の実施状況別に表したものです。勤めている会社が、パワーハラスメント対策に取り組んでいると認識している従業員は、取り組んでいないと認識している従業員よりも、パワーハラスメントを経験しなかったと回答した比率が高くなっております。具体的には、積極的に取り組んでいると認識している従業員が77.5%に対して、全く取り組んでいないと認識している従業員は70.5%となっております。
 図11は、パワーハラスメントを受けたと感じた場合の心身の影響について、パワーハラスメント防止の取組の実施状況別に表したものです。勤めている会社が、パワーハラスメント対策に取り組んでいると認識している従業員は、取り組んでいないと認識している従業員よりも、心身への影響の比率が低くなっております。具体的には「怒りや不満、不安などを感じた」については、取り組んでいると認識している従業員が71.8%に対して、取り組んでいないと認識している従業員は79.1%となっております。これらのことから、パワーハラスメント防止の取組を行っている企業で働く従業員は、パワーハラスメントを受けたと感じる比率や、心身への影響があったとする比率が相対的に低くなるということが言えます。
 8ページの図12は、パワーハラスメント防止の取組により、パワーハラスメントの予防・解決以外に得られた付随効果を表したものです。「職場環境が変わる」、「コミュニケーションが活性化する」という効果のほか、「休職者・離職者の減少」、「メンタルヘルス不調者の減少」という効果が見られます。
 9ページをご覧下さい。提言においてはトップのメッセージ、研修の実施、相談窓口の設置など、7つの取組の実施を求めており、図13は実施している取組内容と、効果が実際に実感できた取組内容をそれぞれ表したものです。左側のグラフは、実施している取組内容を表したものですが、多い順に、「相談窓口の設置」、「管理職向け研修の実施」、「就業規則の整備」となっております。右側のグラフについては、それぞれの取組内容について、効果が実感できたかどうかを表したものです。多い順に、「管理職向け研修の実施」、「一般社員向け研修の実施」、「相談窓口の設置」となっております。
 図14は、取組内容ごとに、従業員から見た「職場の生産性」に関する職場の変化を表したものです。1つの取組のみを実施するよりも、複数の取組を実施することで、改善されたと回答する比率が高くなっております。具体的にはトップの宣言のみ実施、各種研修のみを実施、周知活動のみを実施している場合は、改善されたと回答した従業員はそれぞれ8.2%、8.3%、8.2%に対し、3つの取組の全てを実施している場合は22.3%となっております。
 この「職場の生産性」のほかにも、「働きやすさ」、「業務の負荷」、「コミュニケーション」、「休む人の人数」などについても調査を実施していますが、同様の傾向を示しております。参考で配布しております実態調査の133ページ以降にその結果が記載されておりますので、参考にしていただければと思います。これらのことから、企業がパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組を複数実施することが、従業員にとって、職場環境の改善などの効果を感じやすくなるということが言えるところです。
 10ページから14ページについては、パワーハラスメント対策を実施する上での主な課題を取りまとめたものです。10ページの図7は、相談窓口の設置状況について、企業規模別で表したものです。企業規模が小さくなるにしたがい、相談窓口の設置比率が低くなり、1,000人以上が98.0%に対して99人以下は44.0%となっております。
 図15は、パワーハラスメントを受けたと感じた者のその後の行動について、企業規模別で表したものです。99人以下の会社では、会社関係に相談した従業員の比率は15.6%と最も低くなっており、逆に会社とは関係ない所に相談した比率は28.7%と最も高くなっております。このことから、パワーハラスメントの実態が相対的に把握されていないということが言えます。
 11ページの図16は、パワーハラスメントが職場や企業に与える影響について、パワーハラスメント防止の取組の実施状況別に表したものです。パワーハラスメント防止の取組を考えていない企業は、「職場の生産性が低下する」、「企業イメージが悪化する」、「訴訟などによる金銭的負担が生ずる」などの認識が、取り組んでいる企業に比べて特に低くなっております。具体的には、「職場の生産性が低下する」については、取り組んでいる企業が76.1%に対して、取組を考えていない企業は54.7%となっております。パワーハラスメント防止の取組を考えていない企業は、パワーハラスメントが企業にとって大きな損失をもたらすという認識が相対的に低いと言えます。
 12ページの図17は、パワーハラスメントを受けたと感じた場合の心身の影響について、パワーハラスメントを受けた頻度別に表したものです。パワーハラスメントを受けた経験が1度であっても、「怒りや不満、不安などを感じた」が68.5%、「仕事に対する意欲が減退した」が61.5%と、心身への影響が多く認められています。「眠れなくなった」、「休むことが増えた」、「通院したり服薬した」など、より深刻な心身への影響は、「眠れなくなった」が、1度だけの経験が18.6%に対して、何度も繰り返し経験したが36.1%と約2倍になるなど、パワーハラスメントを受けた頻度が高くなるほど比率が大きく高まっております。パワーハラスメントを発生させないことが何よりも重要なところですが、パワーハラスメントが発生してしまった場合には、早期の対応が必要です。
 13ページの図18は、パワーハラスメントを受けたと感じた者のその後の行動を表したものですが、「何もしなかった」が40.9%となっています。その理由としては図19のとおり、「何をしても解決にならないと思ったから」が68.5%、「職務上不利益が生ずる」と思ったからが24.9%となっています。企業がパワーハラスメント対策を行う上で、従業員がこのような意識を持たないような取組も必要です。
 14ページをご覧下さい。パワーハラスメント対策の取組内容について、図13は企業が実施していると回答した比率、図20は従業員が把握していると回答した比率を表したものです。従業員調査の回答者の勤務先と、企業調査の回答企業は必ずしも一致しないため、厳密には比較できませんが、企業が実施していると回答した比率よりも、従業員が把握していると回答した比率が相対的に低くなっています。具体的には「相談窓口の設置」については、企業の82.9%に対して、従業員は45.5%となっており、「就業規則の整備」については、企業の61.1%に対し、従業員は24.1%となっています。
 7ページで御説明いたしましたが、パワーハラスメント対策を行っている企業で働く従業員は、パワーハラスメントを受けたと感じる比率や、心身への影響があったとする比率が低くなる傾向が認められます。また、9ページで御説明しましたが、複数の取組を実施することで、職場環境が改善されたと回答する従業員の比率が高くなる傾向が認められることから、こうした観点からも企業は従業員に対して取組の周知を行うことが求められます。私からの説明は以上です。

○佐藤座長 
 円卓会議以降のパワーハラスメント対策として、1つは、厚労省としてのパワーハラスメントについての周知・啓発です。もう1つは、企業が具体的に取り組む上でのマニュアルの作成です。はじめの頃は企業はどういうふうに取り組んでいいか分からないということがありましたので、かなり丁寧な資料を作ってきたと思います。その結果、実態調査を見ると、企業規模別を見ても、各規模ごと、もちろん違いはありますが、企業の取組は進んできているのかなと思います。他方で、労働局への相談件数自体は増えているということですが、それは取り組んでいない企業で問題が起きると、社内に相談できないので労働局へ相談するというようなこともあると思いますし、パワーハラスメントの周知・啓発により、従業員に認知されているということだと思います。
 例えば、パワーハラスメント対策マニュアルを見ていただくと、1ページで具体的に企業がどういう取組をしたほうがいいかということが書かれており、ワーキング・グループの報告を踏まえ、トップメッセージのひな形や研修のテキスト、啓発のポスターなど、本当に具体的にどういうものをやったらいいかというものがのっています。ですから、そういう意味では、パワーハラスメント対策のやり方が分からないという企業でも、やる必要があると理解さえしていただければ、あるところまではやれるようなものとなっております。その結果、今回の調査でも、前回に比べれば、取り組んでいる企業が増えてきたということはあるのかなと思います。ただ、もちろんまだ課題もあるということだと思います。
 それでは、開催要綱にもありますように、この検討会では、「働き方改革実行計画」での議論を踏まえて、これまでのパワーハラスメントの取組、現状を踏まえて、パワーハラスメントの防止強化として、やるとすればどういう取組が必要なのか、そういうことを議論していただくということです。第1回目ですので、この後、今日御参加の方全員に2、3分、この検討事項についての御意見を伺いたいと思いますが、その前に、今の御説明資料について、何か確認や質問があれば、この数字はどう読むのかなどということがあればそれを先に、お願いします。

○中澤委員
 資料4の労働局の相談件数の件なのですが、平成27年度から、どんどん右肩上がりに増えているというような御説明があったのですが、これは先ほど御説明がありましたように、パワハラ自体の認識が高まったので増えてきたという要因と、もう1つは、パワハラ自体が増えているという2つのことの御説明があったような気がするのです。そういう理解をしてよろしいのかということですか。
 それから、相談コーナーの件数は、冒頭に御説明がありましたように、パワハラ自体の定義という問題とかいろいろなものと関連するわけですが、この相談件数は、例えば、認識として、いわゆるパワハラではないものなどといったものは外されている件数なのかどうか。その辺りが分かったら教えていただきたいのです。

○佐藤座長 
 では、この数字の読み方を含めて御説明いただけますか。

○勤労者生活課長
 この分厚い調査報告書がありますが、この50ページに図表37があります。これは、企業に対してパワハラに関する相談件数が増加した、あるいは、変わらない理由は何ですかと聞いているものです。上から見ていくと、「パワハラに対する関心が高まった」、これが一番多くなっています。それに続いて、「職務上のストレスが増加している」、それから、「パワハラについての相談がしやすくなった」、こういうところを挙げている企業が多くなっており、先ほど御説明していますが、パワハラに対する定義が定まったとか、いろいろな周知・啓発をしていることで関心が高まっているというのが、1つの大きな要因になっているのではないかと思っております。
 この件数の中には、パワハラになったものと、そうでなかったもの、とにかく相談があったもの全てが含まれております。

○佐藤座長 
 こちらは、企業に相談されたものですよね。

○勤労者生活課長
 はい。

○佐藤座長
 ですから、もちろんその人が同時に労働局にも相談に行っているかも分かりませんが、企業に相談して、かなりの部分は労働局には相談しない可能性があります。ですから、労働局に相談に行ったものと企業の中で相談したものが重なっているわけではないので、そういう意味では、そこは留意する必要があるだろうと思います。労働局への相談件数は、これは最終的にパワハラだというふうになったケースだけでなく、そういう相談のあったケースですよね。

○勤労者生活課長
 これは、パワハラに限らず、いじめ・嫌がらせ全体の数字で、相談件数全体です。

○佐藤座長
 相談の件数ですよね。結果的に、それがパワハラではなかったということもあるわけですよね。とにかく相談としてあったものの件数をすべて計上しているのですよね。

○勤労者生活課長
 はい。相談件数全体です。この辺りは、次回に少し詳しいものを御準備したいと思います。

○佐藤座長
 ほかに何か確認しておきたいことがあればお願いします。

○布山委員
 今の中澤委員の質問の関連ですが、どこかを見れば分かるのかもしれませんが、この実態調査のときに、パワーハラスメントというのがどういうものだということを説明した上で答えていただいているのでしょうか。

○佐藤座長
 企業調査は144ページです。一応、円卓会議での定義を踏まえて聞くようになっています。

○布山委員
 定義を書いて、それでお答えになっているということですか。

○佐藤座長
 厳密にそのとおりに読んで答えたかどうかはありますが、一応提示しております。

○布山委員
 少なくともパワーハラスメントというものを皆さん同じイメージで答えているということで大丈夫なのですね。

○佐藤座長
 そういうふうにはしています。

○布山委員
 分かりました。

○勤労者生活課長
 先ほどの分厚い資料の144ページの2の所に、この定義は書いておりまして、先ほどの円卓会議で取りまとめた内容を書いた上で質問しているということです。

○布山委員
 ありがとうございます。

○川上委員
 実態調査ではないのですが、資料3のほうで、平成29年度の今後の施策について御説明いただいたのですが、その2のほうに、労務管理やメンタルヘルス対策の専門家などを対象に人材養成をされるという1文があります。この労務管理やメンタルヘルス対策の専門家というのは具体的にはどんな方になるのか伺ってもいいでしょうか。

○勤労者生活課長
 具体的なイメージとしては、社労士の方や産業医の方など、普段、そこの事業所とお付き合いがある方が、日常的にやり取りをする中で、こういうパワハラについても企業の相談にのったり、アドバイスをしたりということで、現場レベルで自立的にパワハラ対策を実施していくような方向に行けばいいなということで新しく始めております。

○川上委員
 社労士と産業医を、一応、ターゲットにしていらっしゃるということですね。

○勤労者生活課長
 ターゲットの1つです。

○川上委員
 分かりました。

○佐藤座長
 円卓会議ワーキング・グループで出したときも、その当時も産業医との連携みたいな話は結構入れさせていただいたのです。ほかに何か、まずは資料についての御質問があればお願いします。よろしいですか。
 それでは、今日は第1回目ということですので、皆さんそれぞれの分野で、このテーマについても御見識があると思いますので、この検討会の開催要綱を踏まえて、検討事項が「その他」も含めて3つありますが、どういう範囲で議論をするのか、このテーマではこういうことが大事ではないかとか、あるいは、こういう資料を用意してくださいなどということがあるかと思いますので、まずは御意見をお願いします。余り広くなりすぎてもどうですが、第1回目ですので、今回のテーマに関わる範囲で、こういうことが検討するのに大事ではないかということを自由に伺えればと思います。今日は安藤委員、杉崎委員、内藤委員の3名が御欠席ですが、委員名簿の順でいきたいと思います。最初は内村委員からということで、お一方2、3分ずつ御意見を伺えればと思います。よろしくお願いします。

○内村委員
 連合東京で副事務局長をしております内村と申します。今の仕事の主な担当としては、連合にも労働相談の電話がたくさん掛かってくるのですが、その労働相談の担当をしています。私どもは労働組合ですので、労働相談があったときには、もう少し詳しく話を聞きたいという場合には、実際に相談者に来ていただいて、詳しく話を聞きます。労働組合としての解決方法としては、個人的に入れる労働組合、ユニオンがありますので、そこに入っていただいて、会社側に団体交渉の申入れをし、この方の件で、あるいは、パワハラを受けていると言っているけれどもどうなのでしょうかという、会社側との団体交渉の中で解決をしていくという方法しかない状況です。
 ただし、今まで私が経験してきている中では、いわゆるパワハラというのはやはり定義がなかなか難しい。文書で書いてあるだけだと、客観的、合理的な意味ではなかなか立証するのが難しいところもあるのです。その一方で、それが原因で、例えば雇止めや解雇といったことにもつながっていったりするケースがあり、雇止めなどから入っていって、併せてパワハラもありますねみたいなところに持っていくケースが、実際には解決方法としては多いです。
 この検討会の中では、基本的には防止をしていこうということが大きなテーマだと思いますが、たくさんの事例がやはりあります。先ほどから出ている中身にもありますが、最近では特に多くなってきているのは評価です。要するに、人事評価などできちんとした評価がされない、これもいわゆるパワハラではないかというようなことも含めてです。何かちょっとしたことがきっかけで、上司の考えていることと違うことを発言したことがきっかけで、いきなり対応が変わるというケースなど、いろいろなケースがありますので、その現場の声というか、働いている労働者の声を、労働者の代表として、これからこの検討会の中で発言をしていけたらいいなと思っております。
 そうは言っても、この問題はなかなか難しいということも認識しておりまして、労働相談に来た労働者が、余りにも一方的すぎるというケースも当然あります。これは会社も苦労しているだろうなというようなケースも当然あります。それと、メンタルになってから相談に来られた場合には、なかなか話の整理がつきにくいようなケースもあります。やはりメンタルをどう防止していくのかということも、このパワハラ対策の中では、メンタルになる前に、あるいは、今の職場でのストレスやメンタルが原因で、何が原因で休んでいるのか、そういったところも検証しながら改善に向けていくというようなことが必要だなと思っております。以上です。

○佐藤座長
 岡田委員の代理として、せっかく稲尾委員に来ていただいておりますし、コンサルをやられていることですのでお願いします。

○岡田委員代理(稲尾様)
 株式会社クオレ・シー・キューブの稲尾和泉と申します。今日は代表の岡田の代理として参りましたので、よろしくお願いいたします。今回のパワーハラスメントをテーマとした検討会ということで、このパワーハラスメントという言葉を作った張本人の会社としては、やはりこのテーマというのは責任を持ってきちんといろいろな方に御理解を頂かなければならない、そういう責務を私どもの会社は持っているという認識で今までもずっと活動しております。
 パワーハラスメントに限らず、今、法制化になったマタニティハラスメントや、育児関連でパタニティハラスメントと言われたり、ハラスメントというのはいろいろなところに展開しているのですが、やはりベースにはパワーバランスといいますか、パワーバランスがうまくいかないことで、職場がうまくいっていないということが原因なのだろうと思っています。私どもは、そこを共通でやはりテーマとして、コンサルティングをいつもやっているのです。
 その中でも、指導とパワハラというのは非常に線引きをするのが難しいというのは、これはもう現場で働いている方ももちろんそう思っていますし、私たちはそこをどういうふうに整理していっていいかということを具体的にいろいろ示唆させていただいています。本当に一人一人、マネージャーの方がそこに非常に悩んでいるというのを、日々強く感じているところです。
 それは企業側として、もちろんパワーハラスメントは良くないというのは、この調査結果を見ても、皆さん分かっているのだけれども、でもなぜ現場で起ってしまうのだろうという、このジレンマをずっと抱えていらっしゃると思うのです。そういうジレンマからできるだけ解放されて、しっかり指導を、みんなが成長できる指導をやっていくというところを前提に、私たちは、企業の方々を中心に、ずっと活動しています。
 先ほどからの御報告を見ていて、小規模の会社さんでなかなか対策が進まないということですが、実際にはその経営者の方がパワハラをしているというような相談があったりとか、そういうことも実際に聞いてはいるのですが、その方自身も非常に悩んでおられるのだろうとは思っています。ただ、そこを「駄目だ」「駄目だ」というふうに禁止令みたいなことばかりで押え付けていても、結局は労働者の方も苦しいままで終わってしまうので。そういう意味では小規模の会社、あるいは、大企業さんでも、事業所によって少し小さい規模の所があったり、支店があったりということで、パワーバランスが固まってしまうような所では、どうしてもパワハラが起きてしまうということもあって、そういう所のマネージャーこそ本当は助けを求めているのではないかと思っているのです。なので、そういうところにどういうふうにアプローチをすることで、職場全体が活気あふれて成長につながっていくのかということについての何か私どもの見地のようなものが、こちらの検討会で生かされるのかなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤座長
 それでは小保方委員、お願いします。

○小保方委員
 損保業界の産業別労働組合であります損害保険労働組合連合会で事務局次長をしております小保方と申します。よろしくお願いいたします。先ほどいろいろ御説明いただきましたが、パワハラ自体は資料にありましたとおり、労働者の生産性や意欲の低下を招くということだけではなくて、やはり最悪のケースにおいては人の命にも関わる問題に発展するという極めて重い問題だと思っておりますし、決して看過できないとは考えております。
 そういった意味では、先ほどもお話がありましたが、やはり一番重要なのは事前の予防策だと思っておりますし、また、仮に発生してしまったとしても、極力早期に対策を打つことが必要と考えております。現状を言えば、やはり対策が進んでいる企業とそうでない企業との二極化が進んでいるように思いますし、対策が取れている企業においても、パワハラがゼロになっているかというと、決してそんなことはないというのが現状だと思っています。
 これは1つ要望ということになります。今後の検討を具体的に進めていくに当たっては、諸外国において、これは法規制も含めてですが、具体的にどのような予防策であるとか、早期の対策が取られているのかといった観点、それも参考にしながら検討を深めていくことも必要ではないかと考えております。事務局におかれましては、是非、今後の検討会の中で、そういった観点も盛り込んでいただけると有り難いと思っております。これからよろしくお願いいたします。

○佐藤座長
 では、川上委員、お願いします。

○川上委員
 私は大学にいますが、嘱託で産業医もさせていただいていて、産業保健に特に関わることが多いです。最初のときの、いじめ・嫌がらせに関する円卓会議のワーキング・グループにも参加させていただいて、そのときも産業保健の立場から意見を申し上げておりましたが、当時は、産業保健とハラスメント対策というのは何か斜めの関係にあって、うまくつながっておりませんでした。あれから4年、5年たってみると、明らかに産業保健が1つ役割を担うべき領域になってきたという印象はすごくありますので、今回の検討会でもかなり産業保健の立場からきちんと関わらせていただければと思っております。
 先ほどの統計を見ますと、産業医等に相談する件数はそう多くはありませんが、一旦来ますと、結構難しいケースが来るというのが我々の実感としてはあります。特に重症なケースや、あるいは健康問題が非常に関係しているケース、特に先ほどメンタルヘルスの話もありましたが、そういう状態になってきて、そこから問題を解いていくのが非常に難しいケースが来ますので、産業医や産業保健師としてもなかなかスキルが必要な領域だなというのは、もう1つ大きな課題になっているところです。
 5年前に比べると、状況がすごく複雑になっていまして、メンタルヘルスなどで対応が難しい問題もあるのですが、それ以外に、ハラスメントの加害者と目される方に、ハラスメントをしているというふうに伝えた場合、その本人のメンタルヘルスはどうなのか、産業医は保障ができるのかというような相談があったり、あるいは、産業医や産業保健師のほうが相談に来ていた方から訴えられるようなケースなどがあったり、非常に状況は難しくなっております。産業保健を担当する者としても、もう少しスキルレベルの高い対応の方針やトレーニングというものは、今、必須だなと感じております。
 多少、気になっている課題として2点挙げるとすると、1つは産業保健とハラスメント対策との関係が、それほどまだきれいには整理されていませんので、そうしたものの整理がきちんとなされた上で、産業保健専門職の役割として落としていただけるというのは1つ大事なことかなと思います。
 もう1つは、先ほど産業医や社労士さんへの研修ということのお話もありましたが、やはり我々はかなり難しいケースを扱うことが多くありますので、何か杓子定規なものではなくて、もう少しケースに近い情報を入れていただくようなものができると嬉しいなと思っています。海外でも、労働安全衛生の法律の中にハラスメントに関する文言が入るようなケースもだんだん増えていると、ちょっと私も正確には調べていないのですが、聞いておりますので、そういうところも参考にしていただけると嬉しいなと思います。
 もちろん予防は非常に重要で、職場環境の改善や、職場のマネージャーの方の能力の向上や、企業としての風土作りみたいなことは非常に期待をするところですが、こういうところに産業保健専門職がどの程度関わっていくべきなのか、あるいは関わらなくても済むみたいな辺りは、御意見を聞きながら私自身も考えていきたいと思っているところです。よろしくお願いいたします。

○佐藤座長
 ありがとうございました。では、久保村委員、お願いします。

○久保村委員
 こんにちは。私はイトーヨーカ堂で労務を担当しております久保村と申します。このパワーハラスメントに関しては、ちょうど2、3年ぐらい前からこういった会議に参加させていただきまして、勉強をさせていただいております。
 弊社イトーヨーカ堂は、短時間労働者と言われているパートナー社員と呼んでいますが、そういった短時間労働者の方が約8割ぐらいを占めており、日々、パワーハラスメントに遭ったというような相談を実務で担当している窓口でやっております。近々でも、実はお恥ずかしい限り、労働局様のほうにお世話になる案件がありまして、東北のほうに、ちょうど紛争調整委員会ということであっせんを申し入れられた短時間労働者の方がいらっしゃいました。その方は女性の方で、上長が女性、そういった方からパワハラを受けた、嫌がらせを受けたというようなことで、来月の後半に伺わせていただいて、あっせんに参加させていただくというような生々しいところもやっております。
 一方で、こういったことをずっとやっておりますと、私自身も勉強しなければいけないなということがありまして、産業カウンセラーの資格を今年取りまして、一方で企業側、また、メンタルでやられた方、被害者の方の気持ちにも添っていきたいなという形で、今、勉強もしている最中です。
 弊社では、やはりメンタルヘルスに関しての研修も随時やっておりますが、今まで先生方がおっしゃったように、なかなか浸透できていないというのが実態です。これはいいだろうとか、この程度であれば許されるだろうというような、今までの社会通念上のものが、何か曲った形で受け入れられていくのかなと思っています。
 今回参加させていただいて勉強させていただく内容において、やはり現場での実態感、私は実務で数多くの事例を経験してきておりますので、それに照らし合わせながら、実態感に即した御意見を言わせていただきたいと思っております。納得感があるような方向性が出ればいいなと思っております。どうぞよろしくお願いします。

○佐藤座長
 では、中澤委員、お願いします。

○中澤委員
 全国中小企業団体中央会の中澤と申します。私どもの団体は、小規模の事業者が組織する経営者の集まりのような団体を束ねている団体です。必ずしも労働だけをやっているわけではありませんので、個々の細かいパワハラの関係を詳細に理解しているというふうにはなかなか言い切れない部分があります。ただ、小規模の事業者というのは、今、人手不足でして、ある意味こういったパワハラの問題を放置することが、結果としては企業としてのマイナスに働くものであるという理解は持っております。
 その中で、やはり先ほど厚労省さんの事務局の方からの御説明がありましたように、平成23年の円卓会議の中でパワハラの定義というものがなされております。読ませていただくと非常に苦労されて作られていると思っておりますが、その中でも書かれているように、組織文化というものが大前提にあると。それで、企業というのは、限られた経営資源で最大利潤を目指す組織で、それが目的でありますし、あるいは、営利企業でなくとも、それぞれの組織の目的に向かって進んでいくのが企業なわけであり、そこには、統制や命令というものは当然あるわけです。その中でどうやって、いわゆる組織側のほうにもメリットのあるパワハラ対策が取れるかというのが最大の目標ではないかと思っております。
 ただ、さはさりながら、組織文化というのは、多分、個々の企業でそれぞれ違ってきてくるわけだろうと思います。したがって、そこまで報告書には書いていなかったのですが、A企業におけるパワハラの定義と、B企業におけるパワハラの定義というのは、当然あってもいいのかなというような気がしております。その上で、いわゆる使用者側と労働者側のパワハラのミスマッチというか、考え方の違いなどをどんどん埋めていく必要があるのではないかと思っております。
 平成23年の円卓会議の報告書を見せていただいて1つだけ気になっているのは、同僚間のものも含むというような書きぶりがありまして、私個人の考え方ですが、あくまでもその企業の中での問題をパワハラと捉えるのであれば、あるいは組織の中での問題をパワハラと考えるのであれば、いわゆる権限なり権力なり命令なりというものの差がないところに対してパワハラという言葉を定義するのは、いかがなものかというふうなつもりで読んでおりました。その辺りも、多分、過去の御検討の中などのお話もお聞きできるのかと思いますので、その中で、またいろいろ勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○佐藤座長
 今、少し出ましたように、円卓会議での定義、類型、これをどうするかということも当然議論していく必要があると思います。今のことで、同僚間というのは、基本的に企業内のフォーマルな権力の分布はないにしても、同僚の間でキャリアが違うとか、年齢差がありますよね。ですから、別の形での資源配分、パワーの違いはあるわけです。同僚といっても何もかも同じではないので、そういう意味で同僚間というものも入っているというふうなことですので、御理解をいただければと思います。それはもちろん議論していきます。
 布山委員、お願いします。

○布山委員
 経団連労働法制本部の布山でございます。よろしくお願いいたします。私はセクシャルハラスメントや、いわゆるマタニティハラスメントなどの法的な部分について担当しておりますので、今回こちらの研究会にも参加させていただくことになりました。
 ハラスメントと言うと、してはいけないと言いつつも、個々人の思いや受け止め方でも随分違ってくるので、そういう意味では、定義付けをまたしっかりと考える上で、そこも加味してどのようにするかということが必要ではないかと思っています。その中で、いわゆるセクハラは性的言動という縛りがありますし、いわゆるマタニティハラスメントというのは妊娠、出産関連なのですが、このパワーハラスメントということに対すると、奥が深いだけでなく、かなり幅も広いので、これはどのように考えていくかというのが非常に必要ではないかと思っています。
 実際に実態調査を見ると、かなり各企業でも以前に比べれば取り組んでいらっしゃるのだと思います。これから取り組むところについても、先ほど厚労省からも御説明があったとおり、材料は厚労省のほうでもかなり用意をされていて、提示をされているのだと思うのです。ただ、これは私の感想ですが、今日お配りいただいているもの全て、実際にサイトに入っているのですが、サイトの中から見つけるのにすごく苦労しています。これは本当に中身の問題ではなく、サイトの所で中にバナーを付けても、多分、そこに行き着かないと取り出すことが難しいので、トップ画面にどのように出すかとか、まずはそこからやると。ここはすぐにできることではないかと思っています。仕事柄、厚労省のサイトを見ている人間でもなかなか見つけるのが大変ですので、いざ本当に何かないかなと探すときに、非常にそこが難しいのかなと思いました。せっかく良い材料があって、このマニュアルなども全文出てくるようになっているのに、そこがもったいないなと思いましたので、1回目のところは、そこをまず考えたらいかがでしょうという提案をさせていただきました。以上です。

○佐藤座長
 すぐやれることがあるのではないのという話ですね。はい。では続きまして浜田委員。

○浜田委員
 UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの浜田と申します。名前を見てお分かりのように、介護クラフトと言いまして、介護の現場の、ヘルパーさんであるとかケアマネさんの労働組合です。そこの役員も兼ねながら、UAゼンセンでも仕事をしております。UAゼンセンでは、中小企業であるとか流通、サービス、いろいろな業種の皆さんの相談を受けるようなことも機会としてはございます。
 本題になるのですが、今までこの資料で御説明いただきましたように、この間、厚生労働省からは様々な情報などが既に発出されておりまして、具体的な対策を促すための対応はなされてきたという印象を持っております。ただ、御説明があったように、実態調査の結果を見ると、パワハラ防止対策に取り組む、積極的に取り組んでいただけている、進んでいる企業がある一方、どうしても一定数の企業については取り組みがなされていないことは現実として否めないと思います。相談を受けたりであるとか、現場にいる実感として感じることは、何人かの先生方がおっしゃっており、数値としての結果も出ておりましたが、相対的に、中小企業、規模の小さい所になると、なかなか現実に対策が進まないということについては、どうしてもお互いの顔が分かるので、相談する側も、どうも言ったら悪いのではないかとか、相談したことで、その後どうなるかという怖さを持って、なかなか相談できないであるとか、外部に相談するという方が中小で働く方は多いのではないかと、そういう印象を持ちます。
 一方で、企業側も一生懸命やろうとはしているのですが、メンタルな部分の対応が入ってくると、相談を受ける専門家がなかなか育てられないという、現実的な費用の問題も含めて、悩みを持っているのだと思います。そういうところは、それが悪いスパイラルになってしまって、外部に情報が出せない、かといって相談者は育てられないというスパイラルになってしまうと、なかなか対策が進まないのかという印象があります。
 また、概念とか定義からすると少し外れてはしまうのですが、現場ではパワハラだろうがセクハラだろうが、嫌なこと、困ったことなどいろいろな相談がくるのですが、その中には実は、特に流通とか介護の現場では多いのですが、顧客であるとか、利用者家族からのハラスメントも実は無視できない状態です。例えば、しばらく前に有名になりました、土下座をさせられるであるとか、大声で長時間叱責されることもあったり、介護現場では、家族の方からの叱責があったりであるとか、いろいろな問題があるのです。実は、相談を受ける側としては、やはり労働者を守るという意味では無視できない実態が実はあるのだということです。この一定程度進まないという部分を、これまでの取組の延長線上で現状を変えられるかということを考えますと、一定程度存在するパワハラ防止対策が進まない企業を、もう少しこの検討会では、今後の法整備に向けた、これまでよりもステップアップした対応についての議論が必要ではないかと考えております。以上です。

○佐藤座長
 今の浜田委員が言われた訪問介護などで、現場で言うと、サービス提供される方からのハラスメントがあるというので、介護労働安定センターが調査したところ、結構の比率がありました。参考資料はワーキング・グループ報告ですが、4ページ目の注の8には、今、言ったようなことが書いてあります。ただ、類型の中には入れていないのです。ですから積み残しの課題ではあるのですが、これは結構難しいので。ただ実際現場ではあるというのはそうなのだろうと思います。

○野川委員
 明治のロースクールで労働法を担当している野川です。本検討会の中心的なミッションは、職場のパワーハラスメント防止を強化するための方策ということになります。私が考えるに、これは大変難しくて、差し当たり2つぐらいの方向が考えられるのではないかと考えております。
 セクシャルハラスメントと比較して検討すると一番分かりやすいと思います。セクハラの場合には、違法、あるいは不適切な行為か否かを検討する対象となる行為類型を比較的明確に設定しやすく、かつ、違法ないしは不適切であるかどうかの判断基準が相対的に明確に構成しやい上、それを暴行、強迫、あるいは傷害といったほかの違法類型と区別して、特に、セクシャルハラスメントという不適切ないしは違法である類型を設定することの意義も分かりやすい。しかし、パワハラはそうではないということです。
 セクハラの場合にはいろいろな定義がありますが、基本的には、意に反する性的働き掛けと考えることができます。これは、誰もがその具体的な類型の在り方を想定できるわけです。かつ、その違法性についても、職場のセクハラを頭に置きますと、業務との関連性が非常に薄いことは明らかですので、比較的、違法かどうか、不適切かどうかの判断がしやすい。つまり、業務上セクハラが必要な合理的理由があるということは、ほぼ考えられませんので、したがって、これは違法である、不適切であるという判断がしやすい。かつ、同じ性的な働き掛けでも、暴行や傷害ではない、プライバシーの侵害や、あるいは名誉毀損というにも少し足りない、しかし、セクハラという概念を作れば、それでもって不適切な行為の規制が考えられると、これは非常に言いやすいわけです。
 ところが、パワハラにつきましては、まず厚労省のリーフレットを御覧になると分かるように、行為類型をいかに定義しても分かりにくい、下の2つを御覧ください。「過大な要求」「過少な要求」、これはどのようにして一般的に類型化できるのでしょうか。会社にとっては余計なお世話だと言いたくなる向きもあるでしょう。過大か過少かといって、何で人様にそのようなことを言ってもらわなければいけないのだと。また、人によっても、こいつにはこれだけ要求しなければ無理だよという業務上の必要性はあり得ます。ということのように、まず、対象となる行為類型を確定することが極めて困難であるというのが1つ。
 それから、それが不適切ないし違法であるという判断をするための基準が難しい。参考資料のワーキング・グループ報告概要の真ん中にある定義の中のポイントとなるのは、「業務の適正な範囲を超えて」ということです。これがセクハラとの大きな違いです。つまり、業務上、合理的な必要性のあるセクシャルハラスメントはあり得ませんが、業務上、合理的な理由がある過大な要求、過少な要求は十分にあり得るのです。つまり、業務との関連性が非常に強い行為類型ですので、一体、不適切かどうか、違法であるかどうかを、「業務の適正な範囲を超えて」などという抽象的な概念で確定することには無理がある。かつ、例えば、パワハラと呼ばれるものの中には、ぶん殴る、あるいは明らかに名誉毀損をする、それからプライバシーを侵害するといったものが幾らでもあります。そういった、他の違法類型として処理ができるものを除いて、パワハラとして、特に固有の法的規制の対象を考える意義があるのかということも検討の必要があると思います。
 そうしますと、考えられるのは、1つは、パワハラという概念によって規制をすべきエリアを限定するという方向があります。この検討会が設けられる発端となった「働き方改革実行計画」の4番目の、長時間労働の是正というところで、パワハラ対策、メンタルへルス対策が出てきているわけです。したがいまして、長時間労働を是正するという観点から、いかにパワハラを規制すべきかということであれば、そういう背景に基づいた、あるいは必要性に基づいた概念や規制の方式を取ればいいので、これは比較的やりやすい。もう1つは、もっと完全に一般化して、初めから、パワハラの類型であるとか、あるいは違法性の判断基準であるとかを確定するのが無理であることを踏まえて、指導方針、ガイドラインといった形で、大まかに、弾力的な概念であるけれど、こういったことをすることをやめましょうというための様々な指針や通達等を出して、そうして指導していくことが考えられます。
 残念ながら今の段階では、セクハラの場合のように、一般的に行為類型を確定し、こうすれば違法ですということを示し、そしてそれに何らかのサンクションを想定することはなかなか難しいのではないかと思います。ただ、これからの検討で、それは、その間でどこに目標を定めるかは考えられることと思います。以上です。

○佐藤座長
 どうもありがとうございました。法規制を考えるときの課題として、野川委員に適切に整理していただいたのかと。現状は、一番最後に近い取組をやっているわけです。現状で言えば、ガイドラインとしていないですが、やはりこういうことをやったらいかがですかというふうにやっているということ。どうもありがとうございました。それでは原委員お願いします。

○原委員
 成蹊大学で労働法を担当しています原昌登と申します。どうぞよろしくお願いします。パワハラに関する判例を継続的に検討していますと、様々な事案を目にするのですが、比較的珍しい事案を先に御紹介します。客観的にパワハラと言える事案ではなかったにもかかわらず、パワハラがあったという申立てが会社側になされて、結局、そのパワハラの加害者とされた上司が会社を退職してしまった、その後、会社側に責任を追求したといった事案がありました。つまり、いわば冤罪のような事案です。こういったものも一部生じてきていることは、どこかに意識しておく必要があるかと思います。
 しかし、パワハラの判例の基本的な傾向は、今、申し上げたような珍しい事案も幾つか出てきてはおりますが、余り大きくは変わっていないという印象を持っています。つまり、パワハラという言葉がこれほど定着して、またパワハラはいけないのだということもある程度定着しているように思えるのですが、しかし実際には、相手の立場に対する想像力を欠いた暴言ですとかいじめですとか、そういった、いわゆる典型的なパワハラの事案が発生し、それが裁判になっているといったことは変わっていない、ということです。ですから、パワハラは許されないことなのだ、というメッセージを粘り強く労使双方に発信していくことは、こういった判例に照らしても重要性を失ってはいないと思われます。
 その際、法的な側面、問題として、特に企業に対して、賠償責任を負うことを防ぎましょう、つまり、マイナスをゼロに近づけましょうということももちろん重要なのですが、今回の平成28年度の調査にもありましたように、パワハラ対策をすることによって従業員の意欲とか力を引き出す、企業の利益というプラスを増やす面もあるのだということを、企業に強く発信していくことも重要かと考えております。以上です。

○佐藤座長
 どうもありがとうございました。最後になりますが、吉住委員お願いします。

○吉住委員
 労働組合連合の吉住です。平成28年度の実態調査のペーパーの中でも出てきます、4年前の調査と比較してということです。先ほどの御説明ですと、関心が高まったことによって数字が上がっている側面があるということではありますが、パワハラを受けたと感じている労働者が7.2%増えているということで言いますと、やはりパワハラは増えているのだということを認識しなければいけないと思いますし、ここは深刻に受け止めなければいけないと思います。その中でも特に深刻なケースがあります。調査を見たときに、一度だけではなくパワハラを何度も繰り返し受けているという、深刻なケースも答えられていますので、そういったケースを防ぐという意味で言いますと、余り限定的に何か範囲を決めることよりも、しっかりと予防をするところに力を入れる必要があるのかと思います。
 何人かの委員の方からも御指摘を頂いたようですが、それぞれこの間取組をされており、企業のほうでも取組が進んでいるということですが、気になるところは、企業の規模だけではないと思うのですが、企業間の差があるということです。そして、しっかりと対応されてきた企業については改善が進んでいるということがあります。パワハラ防止に向けた対応をきちんと、企業に進めてもらうことが必要だと思いますので、これは是非、法整備が必要だという認識でおります。この検討会では法整備を視野に入れた中の検討が必要だと考えております。
 働いていて体を悪くするであるとか、そのことによって働けなくなるということになりますと、それはもちろん個人にとっても大変なことですし、職場にとっても、企業にとっても大きな損失になります。そうした状況が今、いろいろな所で起こっているということですので、今回、この検討会は大変重要な意義があると思います。そういう立場で今後も発言していきたいと思います。よろしくお願いします。

○佐藤座長
 どうもありがとうございました。実は大事な課題なのですが、実際はなかなか難しい面もあるということだったかと思います。最後、少しだけ私も感想ということで。人事管理が専門なので、野川委員や稲尾委員が言われたように、例えば、指導とパワハラ、それが先ほどの過大な要求、過小な要求にも関わるのですが、多分、外から見て同じような課題を与えても、コミュニケーションが取られているか取らないかで違ってくると思います。過大な要求と本人が思う場合でも、「これはこれこれで今、チャンスだから、これをやっておくことは君の成長につながるよ」と説明して与えると、これはパワハラにならなかったりするわけです。多分、こういうところが非常に難しいのだと思うのです。外形的に過大な要求だと決まるわけではなくて、例えば上司と部下の円滑なコミュニケーションがあれば、外から見て、「あれ、大変なことをやらせているな」ということが、パワハラと受け止められる場合とそうではない場合がある。ですから、こういうところをどうしていくのかということで、多分、企業からすれば非常に難しいところかと思います。
 2つ目は、それにも関わるのですが、企業は、布山委員が言われたように、セクシャルハラスメントとかマタニティハラスメント、これは当然法律上の背景もありますので、きちんと教育をやっていくわけです。企業からすると、セクシャルハラスメント対策とそれぞれ別々にやるという話ではないので、例えば管理職の研修も、ハラスメントを予防するためにマネージャーとして、例えばどのようなことが大事かということはやります。ですから、極端な言い方をすると、それがきちんとやれていればパワーハラスメントというふうにやる研修は必要ない。ですから、現状のセクシャルハラスメントとかマタニティハラスメント、つまり職場でそういうハラスメントが起きないように今、やっているものがきちんとやれていると、パワーハラスメントとして何か特別にやることがあるのかどうかというのも、人事管理の立場からすると、少し感じていることです。
 3つ目は、中小企業なのですが、問題なのは、企業に取り組む必要があるとどう思ってもらうかです。多分いろいろな情報提供をしても、確かに、中小企業ですと社内に抱えるのは難しいです。ただそれが難しいとしても、企業として大事な取組だと思ってもらえると、役所もいろいろサービスを提供しますから、使おうという気になると思うのです。現状で難しいのは、必要ないと思っている人、企業があることです。ですから、事前の予防といったときに、特に企業規模だけではなく格差がありますので、取り組む必要がないとまだ思っている企業に、どう理解してもらうのかというのは結構大事かと思います。ツールはあるのだけれど、それを使う必要があると思ってもらっていない企業も結構あるかということを、皆さんから伺っています。
 4つ目は、先ほどクラフトユニオンの浜田委員から、今回のハラスメントの範囲をどうするかという御発言がありましたが、現場では、取引先とかお客様というのもあるので、こういうことも考える必要もあるかと思います。
 それでは一巡、皆さんから御意見を伺ったわけですが、ずっと聞いてみたら、もう少し言いたいということがあるのではないかと思いますので、あれば挙手でお願いします。言い残したことがあるとか、あるいは事務局に、今のお話からこういうことを少し調べてもらってもいいなとか、何でも結構ですので。

○中澤委員
 先ほど、野川先生が言われたことがとても気になっていたのです。開催要綱の中に、いわゆる、「働き方改革実行計画」というのを引いて書いておられます。それで、実行計画のほうでは、先ほど先生が言われたように、長時間労働の是正という中でこの問題の検討が指示されている状況なのです。そういう観点から見ると、どういう議論なのか分かりませんが、長時間労働の是正という観点での、いわゆるパワハラの対策、あるいは検討ということでも読めるような気がするのですが、その辺は、事務局としてはどのようにお考えでしょうか。

○勤労者生活課長
 この部分は、労働時間の上限をどうするかという議論がなされる中で、職場の環境を維持するためには、労働時間だけではなくて、パワーハラスメントの問題とかメンタルヘルスの問題に、総合的に取り組まなければいけないだろうという議論があって、こういう形でまとまっております。ですので、長時間労働の職場に限定してパワハラ対策という文脈で書かれているわけではなくて、それぞれしっかり取り組んでいく必要があるだろうと受け止めております。

○佐藤座長
 ここの書き方、実行計画のところで言うと、当然、労働時間のところをやっていくのだけれど、それを進めるためには、もう少し広くパワーハラスメント防止も必要だという書き方ということですね。

○勤労者生活課長
 はい。

○佐藤座長
 労働時間管理に関わる部分だけではなくて。

○勤労者生活課長
 職場の環境は、労働時間管理だけではなくて、メンタルヘルスの問題とかパワーハラスメントの問題もあるということです。

○佐藤座長
 ここは皆さんで議論をしていくことになっております。ほかには、もう少し伺いたいとか、あるいは御意見があれば、1回目ですので。今のように、他の委員の方について少し、確認とかあっても結構ですので。よろしいですか。無理に発言しろというのもあれですので。
 では、今日は1回目ということで、これまでの政府の取組と、その間、企業が自主的に、あるいは厚労省の広報なり情報提供を踏まえて取り組んできた企業も多いと思いますが、その企業の取組がどう進んできて、どの辺に課題があるのかというようなことを御説明いただいて、この検討会の課題の中でどのようなことが大事かと、皆さんに議論を伺ったということでよろしいですか。第1回目の会合としては、一応終わりということでもよろしいでしょうか。
 それでは、働き方改革ですから、効率よく会議運営できるというのはいいことだと思います。延びるよりかは短いのはいいことだと思いますので、それでは、本日の議論はここまでとさせていただければと思います。今日、出た御意見で、事務局で対応していただけるものは、次となるかどうか分かりませんが、用意していただくことにしたいと思います。では、これ以降の進め方について御説明いただければと思います。

○勤労者生活課長
 そうしましたら、次回は、6月下旬ぐらいを中心に日程調整させていただきまして、併せて次々回も7月下旬ぐらいを中心に日程調整をさせていただきたいと思います。その際に、今日、頂いた御意見を事務局で整理できるところは整理しまして、次回以降の御議論の材料にしていただければと思っております。

○佐藤座長
 それでは、夏前の6月、7月ぐらいに予定する会議の調整を早めに事務局でやっていただくということと、今日出た御意見を踏まえて、6月、7月、どういうテーマにするかも決めていただくことにしたいと思います。それでは、第1回職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会をここで終わらせていただければと思います。どうもありがとうございます。


(了)

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