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2017年3月8日 第2回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会

健康局結核感染症課

○日時

平成29年3月8日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○議題

(1) 各調査の概要について
(2) その他

○議事

○高倉結核感染症課長補佐 ただいまより第2回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会を開催いたします。本日は17名中16名の方々に御出席いただいております。また、本日は田村構成員より御欠席の連絡を頂いております。現時点で定足数以上の構成員に御出席いただいておりますので、会議が成立しておりますことを御報告いたします。

 資料等の確認をいたします。議事次第、配布資料一覧、構成員名簿、座席図のほか、資料、参考資料、以上と別に席上資料として、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の冊子を御用意しております。不足の資料がありましたら、事務局にお申し付けください。冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。

 まず、本日の議題を確認します。議題1「各調査の概要について」、議題2「その他」です。以上の議事運営については、渡邉座長にお願いいたします。

○渡邉座長 おはようございます。今日は第2回目ということで、第1回目のときには、日本で行われている各サーベイランスの紹介と、それについてのいろいろな討議が行われたわけですが、今日はそれについて、もう少し文書で起こしたものが皆さんのお手元にあると思いますので、その文書の内容に沿って御議論いただきたいと思います。まず、議題1について、事務局から説明をお願いいたします。

○野田結核感染症課長補佐 「各調査の概要」という資料を基に、御説明いたします。この資料については、前回各サーベイランスに参加されている先生方から御説明いただいた内容を、6名の先生から文書として起こしていただき、提出いただいたものです。具体的には、NESIDJANISRICSSJACSJVARMGenEpid-Jの概要についてお示ししています。

 まず1つ目の感染症発生動向調査、NESIDです。NESIDについては、医師・獣医師の届出に基づいて行うというもので、19997月に施行された感染症法に基づいて実施されているものです。現在、報告対象となっている薬剤耐性菌感染症は7疾患となっています。届出基準は、報告対象疾患を診断した医師が保健所に届出を行うというもので、いわゆる保菌者等は届出対象となっていないものです。

 体制としては、医師から届出があったら保健所が届出の内容を確認の上、NESIDに入力登録し、そのデータに基づいて国立感染症研究所、感染症疫学センター等で情報の確認や収集、分析、解析等が行われていきます。その結果を国民に還元しているというものです。この結果については、34ページに過去のデータについてもお示ししています。

2つ目のサーベイランスは5ページ、院内感染対策サーベイランス、JANISです。これについては、国内の医療機関における院内感染の発生状況、薬剤耐性菌の分離状況等に関して調査を行っているものです。参加医療機関ごとにデータも解析し、個別に報告書などをお返ししているもので、現在1,800の医療機関が参加している状況です。このデータ解析などの実務に関しては、国立感染症研究所細菌第二部が事務局として担当しているものです。JANISに関しては検査部門サーベイランス、全入院患者部門サーベイランス、手術部位感染部門サーベイランス、集中治療室部門サーベイランス、新生児集中治療室部門サーベイランスの5部門から構成されております。なお、医療機関の感染症対策の推進に寄与するため、2013年度の診療報酬の改定により感染防止対策加算1を取得するためには、JANISの検査部門への参加が必須となっているということで、2013年度からの参加機関が急増している状況です。

JANISの検査部門に関しては公表情報があり、そのところで、この文書上では黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、肺炎球菌の薬剤耐性の状況についてお示ししているものです。結果については資料の6ページに図がありますが、例えばMRSAに関しては、近年僅かに減少しているという状況で、大腸菌はレボフロキサシンの耐性が顕著に増加しているということなどが示されている状況です。JANISに関しては前回もいろいろと御意見がございましたが、200床以上の比較的大規模の病院が多いこと、更に外来検体は含まれていないことがあり、そのようなバイアスについては今後解消する手段を考えていく必要があるという状況です。また、さらにこのJANISに関しては国際展開も進めているという状況で、このJANISで開発した開発プログラムについては海外の保健省とも協議を行い、そのプログラムを提供することを検討している状況です。

 続いて7ページの感染対策地域連携支援システム(RICSS)です。このRICSSに関しては、地域連携のためのデータ収集、集計、還元作業を支援する全国システムとして、研究開発が行われているものです。全国の医療機関で行われている感染対策の実施状況と、そのアウトカムの動向を得るサーベイランスシステムとして機能することが想定されています。さらに、各地域で類似するような病院機能など、医療機関が自発的に任意グループを作成することにより、その任意グループ内での連携を促進することも、このシステムで考えられているというものです。このRICSSに関しては、平成29年度にAMEDの単年度プロジェクトとして開発されてきたということがあります。

 内容としては、ICTミーティングなどのICT活動の状況、抗菌薬適正使用に対する取組の状況、さらに抗菌薬の検出状況、血液培養の実施状況と汚染検体の発生状況、手指衛生の監視及び実施状況、院内感染症の発生状況、抗菌薬使用状況などについての情報を収集するという仕組みになっています。RICSSの還元データに関しては、参加されている自施設データ、任意グループの中の平均データ、さらに全国の平均データが還元されていくというものです。RICSSの将来は、これまでの状況としては、全国レベルのデータを経時的に収集していくということ、さらに自発的な任意グループ内でのデータの比較を可能にすること、リアルタイムでデータを選択して表示できるようなシステムを持つということでされてきていますが、さらに今後AMR対策データ還元ダッシュボードのようなものも将来的には考えているということです。

 続いて、抗菌薬使用動向調査システム(JACS)です。こちらに関しては、これまで日本では抗菌薬使用量の大規模なサーベイランスの仕組みはなかったので、抗菌薬使用状況を把握する仕組みとして構築されたものです。具体的には、感染対策に関わっている薬剤師によるオンラインデータの収集、卸業者からの販売データ等に基づいたデータ収集を行っていくことで、AUDDOTなどの自動計算を行い、そのデータをお示ししていくというものです。

AMRに関しては、WEBシステムを構築し、20154月から公開されているということで、2017年度からは集計結果をフィードバックすることも予定されています。さらに、販売データについても、抗菌薬使用量のデータを入手し、その算出を行っています。各機関の参加としては、2014年は221施設の結果が出ており、その結果についても公表されています。また、分析の結果としては、販売データの分析が行われており、抗菌薬の使用の90%以上が内服薬であったことも示されています。

 続いて、12ページの動物由来薬剤耐性菌モニタリング(JVARM)です。JVARMに関しては、1999年より農林水産省が行っている動物分野での全国的なモニタリングです。このJVARMでは、抗菌剤販売量、健康家畜における指標菌と食品媒介性病原細菌の薬剤耐性調査及び病畜における動物病原細菌の薬剤耐性調査の3つの調査を行っているものです。

 抗菌剤販売量の調査においては、動物用医薬品製造販売業者から提出される動物種ごとの各抗菌剤の販売高を年度ごとに集計し、公表されているというものです。

 また、健康家畜における指標菌等の調査に関しては、屠畜場と処理場において採取されたサンプルから菌を分離・同定し、薬剤感受性試験等を行っているものです。さらに病畜における調査に関しては、農場の病畜から収集されたサンプルから菌等を分離・同定し、その分析を行っているというものです。このような結果を踏まえて、例えば我が国の家畜由来の大腸菌の薬剤耐性菌の推移としては、図4のような状況になっているということです。

 続いて、16ページの薬剤耐性ゲノムデータベースです。こちらは厚生労働省、農林水産省等の関係の研究者が集まりましてAMEDの研究班で行われているというもので、薬剤耐性菌ゲノム情報の収集と統合ゲノムデータベースの構築が行われているというものです。今後、このようなゲノムデータベースを用い、具体的な伝播の過程が見えてくることが期待されています。簡単ではありますが、資料について事務局からは以上です。

○渡邉座長 事務局から概略が説明されましたが、各サーベイランスの担当者から追加事項等がありましたらと思いますが、NESIDはいかがでしょうか。JANISはいかがですか。

○柴山構成員 追加ですが、現在WHOで薬剤耐性に関するグローバルサーベイランスというのが実施されており、日本も参加しています。これはJANISからデータを提出することになっているのですが、WHOが求めているデータというのは、JANISが通常集計しているデータと若干異なる部分がありますので、そういったところもWHOの集計に合わせた形でデータを抽出、解析して、そういうプログラムを作り、今後WHOにデータを提出することを進めているところです。

○渡邉座長 RICSSはいかがですか。

○藤本構成員 概要については特別に付け加えることはございませんが、私が記し間違えた所があります。7ページの中段の「RICSSの開発経緯」の最初の所に、「RICSSは平成29年度」とありますが、これは平成28年度の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。

○渡邉座長 JACSはいかがですか。

○村木構成員 追加すべき事項としては、今後の予定です。先ほどのRICSSとの連携を予定していまして、実際に抗菌薬の使用状況の調査というのは、今後はRICSSの中に入って、お互いに感染対策の状況と抗菌薬使用状況が各グループ化された施設間での比較に利用できる体制を考えております。

 また、実際に抗菌薬使用量を算出するために、いささか今まで手作業でやっていた部分を自動化するプログラムを現在補正予算を頂きまして、今年度中に開発が完了する予定で進んでおります。

○渡邉座長 続いて、JVARMはいかがでしょうか。

○遠藤構成員 JVARMですが、表現が言い過ぎかなと思ったところがあり、修正させていただきます。14ページの最初のパラグラフで、「(1)(3)の調査結果は」とありまして、最後に「ヒトと動物の薬剤耐性菌の動向を比較することが可能となっている」と書きましたが、実際は「ヒトと動物の大腸菌の薬剤耐性率の推移を比較することが可能となっている」というのが事実ですので、そのように若干修正をお願いいたします。

 あと、同じ14ページですが、(4)1段目のパラグラフの2行目ですが、「家畜に多く使用されているテトラサイクリンの薬剤耐性率は緩やかに減少」と書いてありますが、ここは「大腸菌を指標として見た場合、緩やかに減少」という表現で、若干データに基づいた形の修正を加えさせていただきたいと思います。

 それと表記なのですが、13ページの(3)の所の4行目の所だけ「ですます」になっていますので、「行っている」と修正をお願いいたします。原稿が不十分で申し訳ありませんでした。以上の訂正をお願いいたします。

○渡邉座長 続いて、GenEpid-Jはいかがですか。

○黒田構成員 このGenEpid-Jでは、臨床と家畜食品等の薬剤耐性菌のゲノム情報を収集しておりますが、環境という部分ではまだ手薄な部分がありまして、デンマークの大学の先生がWHOのサポートを受けて、グローバル・スウェイジ・プラント・モニタリングというプロジェクトで、今は70か国以上で下水処理水を収集してモニタリングするというのが始まっていることを伺いまして、我々もこの枠組みの中で参加させてもらおうかと計画しているところです。

 現状の収集されているヒトはいいのですが、家畜のほうはまだウシ、トリ、ブタ等の偏りがありますので、ワンヘルスという観点から、関係各位にたくさん集めていただいて、お願いしているところです。

○渡邉座長 今のデンマークの話は、この間私の所に、日本も入らないかというものが来ていて、私の研究班の先生方に回したのですが、先生にもそれを回しますので、もし世界的な動向を、デンマークはWHOのサポートでやりたいということなので、日本も入っていたほうがいいのだと思うので、後で回します。

 各サーベイランスの担当者の方々から、概略を説明していただきましたが、各々についての委員からの質問を受けたいと思います。まず、全体としていかがでしょうか。前回にいろいろな議論があって、その中の一番大きな議論は、標準化がされた方法でやっているのかというところでした。その辺については、各サーベイランスの担当者はどのように考えているかを一言ずつ言っていただければと思うのですが、NESIDはいかがですか。

○松井構成員 病院レベルまで下りていったときにどうかということについて、私は答える情報を持っておりません。

○渡邉座長 JANISはいかがですか。

○柴山構成員 精度管理あるいは標準化に関しては、非常に私たちも大事な問題だと捉えておりまして、今年度は臨床微生物学会と協力して、薬剤感受性試験に限ってですが、精度管理のプログラムを作る試行を今年度行い、今年度の結果を基に、来年度以降もどのようにやっていくかを検討している段階です。

○渡邉座長 RICSSはいかがですか。

○藤本構成員 私どもの所は、感染対策の状況に関する調査については、基本的に地域連携を支援するという立場ですので、実際に診療報酬加算を受けている施設ということで、これが全体を反映しているかどうかというのは別な問題だと思います。ただし、そこに今後ほかの施設をだんだん加えていくような形で、全体を代表するような形にしていく。それから後は、耐性菌のことについてはJANISから情報を得ていますので、JANIS側の情報をだんだん標準化してもらうということもありますが、もう一方でJANISのデータを適当な形で標準に近い形に修正したようなものを還元できる方法も、今後は考えていきたいと考えております。

○渡邉座長 JACSはいかがですか。

○村木構成員 JACSですが、使用量を示す指標というのは、WHOが推奨するAUDという方法とCDCが提唱しているDOTという方法がありますので、ガイドライン等でもその両者を取ることと勧められておりますので、そういった形で収集しております。

 一方、販売量に関しては、DIDという値なのですが、こちらもEU諸国で年報で出されている指標に合わせた形で出そうということで進めています。

 一方、抽出方法なのですが、各医療施設から登録、報告される方法というのは、今のところは手作業となっていますので、こちらもレセプトのEFファイルなどから自動的に、人の手を介さずに算出して送るという形で、できるだけ標準化を行い、省力化という形で収集できる体制を構築中です。

○渡邉座長 JVARMはいかがですか。

○遠藤構成員 JVARMですが、前回も御説明いたしましたが、私たちでは資料の1314ページを見ていただきますと分かりますが、動物医薬品検査所で精度管理を行っており、実際にCLSIの方法に準じて精度管理用菌株のMIC値が基準値内に入っているかを確認しています。そして、都道府県の職員に対しても研修会を実施しておりますので、そのような形で精度管理を行っておりますし、また値が少し不確かなところについては、株も保有していますので、それをリテストに掛けることもできます。

○渡邉座長 GenEpid-Jはいかがですか。

○黒田構成員 基本的に正しい分離株で正しいゲノム配列、塩基配列というのを排出して、手に入れることができれば、NCBIEBIDDBJといった、世界各国の配列登録データベースに入れるという、もちろん論文化するという形で、パブリックなオープンソースとして公開、情報共有できるという立場になると思います。精度管理ということでは、それぞれの研究者の技量が若干出てくるところがあります。

○渡邉座長 というところで、皆さんから御質問等がありましたら、お伺いいたします。全体でも個々でも結構ですので、いかがでしょうか。

 座長からですが、NESIDは定点当たりの耐性菌による感染症というところですよね。JANISはどちらかというと、その菌全体における耐性率というところだと思うのです。WHOが求めているのは、耐性菌による感染症の動向がいろいろなinterventionによってどのように変化しているのかということを求めようとしているのだと思うのです。対策と実際の現場におけるデータとの相関を見ていて、対策が適切に行えるのかどうかということを今後見ていこうとしているのだと思うのですが、日本の場合はその対策と、耐性菌による感染症の情報というのは、どこで把握していけばよろしいのでしょうか。

NESIDは全ての耐性菌のものが入っているわけではなくて、主立った、そのときのトピックス的なものが入れられてきたという経緯があるわけで、JANISはどちらかというと、感染に限らず、菌が分離された場合にその分離された菌の耐性率というところで、必ずしも感染によってというところが抜けていると思うのです。そこはどこかでコーディネート又は調整していかないとWHOが求める、世界が求めているところに合っていかないのかなと思うのですが、その辺は今後どうすればよろしいですか。

○柴山構成員 今、渡邉先生が御指摘の点というのは、これまでも厚労省ともお話をさせていただいたり、あるいは学会等の先生方ともよく議論になって、これはこれまでの経緯から、JANISJANISで立ち上がってきて、NESIDNESIDで立ち上がってきたという経緯で、別々にやってきたという経緯があり、うまく連携がいっていないところがあると思います。こういったところは、今後解決していかなければいけない課題だということで、ちょうど議論をさせていただいているところで、結局私たちはサーベイランスの最終ゴールというのは感染対策にそれを生かしていただいて、耐性菌が減るとか感染率が減るといったところに持っていくということだと思いますので、いかにそれをうまく回すか、我々もサーベイランスのデータを臨床に還元し、あるいは還元するためにはどういうデータを出していったらいいのかということも、これは自分たちの分野だけではなくて、臨床分野あるいはほかの分野とも連携しながら全体で考えていかなければいけないと思っています。

○渡邉座長 この件に関してほかにはいかがでしょうか。

○藤本構成員 WHOを含めて各国との比較という意味で、比較できるようなデータを出していくということは1つ重要だと思います。

 もう一方で、この耐性菌対策の目標は、院内における耐性菌を持っている患者の数を減らして、耐性菌による院内感染症のリスクを下げること、それから、それによって本当にどのぐらい感染症が出ているのかを把握していくことだと思いますので、JANISは基本的に患者の数で物を数えていますので、リスクを見ていくのはJANISで見て、そういうものが増えたときには実際に耐性菌による感染症が増えているのかどうなのかということを動向調査で見ていくという形で、国内的には動向をきちんと把握することは可能であると考えています。

○渡邉座長 現在ここに出されているデータでは比較はできないと思うのですが、例えばVREに関してNESIDで出ているのは、絶対数ですね。そうすると、母数がはっきりしないから比較が難しいと思うのですが、例えばMRSAの場合なら、定点当たりの数ということで、同じような概念でJANISMRSAの頻度を出した場合には、これはJANISのほうでは出せませんか。

○柴山構成員 MRSAは定点の患者の報告数ということと、JANISのほうは検査部門ではなくて、全入院患者部門というところで、実際にMRSAの感染症を起こした患者についての情報の集計はしております。ただ、JANISのほうもpopulation basedにはなっておりませんで、比較は難しいと思います。

○渡邉座長 私が心配しているのは、後でお願いすることになると思うのですが、まとめを英文で出していただくことになりますが、よく外国に行ったときに「日本のサーベイランスはあるのか」と聞かれるので、あることはあるのだということは言っているわけですが、そうすると「そのデータを実際に見せてくれ」という話なのです。

 例えばJANISのホームページを見てくださいということを言っているのですが、JANISも少し英文で出ているようになったので見ることはできるようになったのですが、NESIDは英文では出ていませんよね。

 報告書という形で、今後厚労省が考えているのは、それをまとめて出すということになると、これが今年か来年かに英文で出るとなると、これを世界の人たちが見たときに、日本は確かにいろいろやっているが、どのデータを見ればいいのかということで、逆に混乱を招くのではないかと思うわけです。JANISがあり、NESIDがあり、いろいろやっているのは分かるけれども、どれが本当のデータなのかという話になってしまうことで、より混乱を招くことを危惧しているので、しつこいようですが、世界水準に基づいたデータを出していかないと、報告書を出したときに逆に日本はそういうことを考えないでやっているのかという、汚名というか、そちらを言われてしまうと元も子もなくなってしまうので、その辺はなるべく早く調整をして、そちらに向かった形での修正をしていかないと、せっかくいろいろとやって、皆さんで力を尽くしてやっているのに無になるとは言わないまでも、混乱を招くことになるとマイナスになるというところを心配して、いろいろと皆さんに質問をしているところです。

JACSの場合は抗菌薬使用量で、これは実際に販売量などは分かるわけですが、実際に患者がそれを服用しているかとか、実際に使用されている量というのは、どのように把握することになるのでしょうか。

○村木構成員 10ページの2行目に書いてある「先の我々の研究」で、こちらは2010年の15.5という値なのですが、こちらの値に関しては、実際に病院で注射用抗菌薬として使われたものに従って算出した値になります。

 こういうアプローチというのも、現在続けてはいるのですが、実際に内服経口薬などは、実際の処方量になって、患者が飲んだ量を徴収するのは非常に難しいので、それでも把握することが必要だというところで、2の販売量に基づくデータという所で、EU諸国がそういうアプローチをしていましたので、そういう形で調査した結果というのが、下のほうの3番目のJGARでまとめた報告になります。

 今後は調剤レセプトと医科レセプトの情報から、実際に処方された量であったり、実際に使用された量をベースに、使った量で検討していきたいと考えています。

○渡邉座長 各部門に対して私からいろいろ質問を先にさせていただいてよろしいですか。もう1つだけ、JVARMのほうは体系的にいろいろやられているということで素晴らしいと思いますが、15ページの図5で、動物用医薬品が300トン近く減っているというのは、これは見た目では非常に効果的なデータかと思いますが、これはどういうことをやられた結果、こういうふうに量が減っているのですか。

○遠藤構成員 この調査自体は販売量の調査ということで、農林水産省は適正な使用をしてほしいとか、そういう適正使用と農場での衛生管理をきちんとしなさいという指導をしておりまして、それが効果を発していると思います。また二次選択薬のような重要な薬についてはきちんと診断をして、感受性を確認してから使用しなさいという指導もしておりますので、こういうようなデータになっていると思いますが。

○渡邉座長 言い方が悪いかもしれませんが、昔は余りそういうことをやらないでやっていて、それをちゃんとやりなさいという、ある意味正常な形にする形によって減ってきたと考えていいのですか。それとも、それ以上に減らす努力を何かされているのですか。

○遠藤構成員 少し難しい御質問かと思いますが、動物の飼育も設備等整備されてきましたし、飼育している方々の意識も上がってきているということで、動物飼育方法についての改善もされていて、また、抗菌剤で耐性菌が生じるという知識も徐々に普及しているということからだと思います。

○渡邉座長 これを見ると素晴らしい結果で、多分、これは人にも応用ができてうまくいくと、世界に類を見ない形での良い事例になるのではないかと思います。皆さんのほうはいろいろ考えられたかと思うので、御質問等がありましたら伺いたいと思います。

○藤本構成員 テクニカルなことですが、patient daysについてはRICSSが集めていますので、RICSSの参加施設の代表性という問題はありますが、patient daysの付いている耐性菌のデータはそこから取ることが一応できるように今持っていっております。

 レセ電からのデータの情報というのは、JACSからRICSSのほうに、そこの部分については統合して、これもpatient-daysが入ってくる形で情報をもらって入れてくるようにします。

 海外の方が、どこを見たらいいのかというのは大きな問題だと思います。ワンワールド(ワンヘルス;発言者挿入)のサーベイをきちんとやろうということですので、どこか適当なホームページに動物であろうが、人であろうが、そういったものをずらっと耐性菌について、外国の方にも分かるようなアイコンを並べて、そこを見ると、取りあえず情報がそろっているものはグラフも出るかもしれませんが、そうでないものは、今はこんなことが分かっている、あるいは一般市民の方に愛玩動物はこういうことが分かっていないですが、こういうことは大事なのですよということを分からせるような、どこか1か所お店へ行ったら、何とかショッピングというような形でできるのを作ってあげることが重要ではないか。そこに情報を集約していくということで、渡邉先生が心配されていたことの、少なくとも海外の方がどこを見たらいいか分からない。もっと言うと、国民の方もどこを見たらいいか分からない。小学生が学校の宿題で最初に見ても分かるようなユビキタスなホームページを作っていくことがいいのではないかと考えております。

○渡邉座長 そのアウトプットということと、それこそナショナル・アクションプランでも第1番目で、国民も含めた皆さんに理解していただくというところで、情報をちゃんと提供するということが挙げられておりますので、それは非常に重要なことだと思います。その辺は厚労省だけではなく、多分、ほかの省庁も関係すると思いますがどういうふうにお考えですか。

○野田結核感染症課長補佐 正にデータについては1か所に集めて、そこをまずワンヘルス的に分析を行い、なおかつ、それを公表していくことは大変重要なことと考えております。そういうこともありまして、まだ国会で予算が通っていない状況ですが、平成29年度予算で国立国際医療研究センターにAMRの臨床情報センターを立ち上げます。その中で情報の分析と公表などを行っていくことを考えております。

 また、正に検討会で作っていく報告書の中でも、比較をしたり、分析を行って報告していただくことは重要だと考えております。

○渡邉座長 その担当の早川先生がいらしているので、その辺で何かありましたら付け加えていただけますか。

○早川構成員 今の時点では特にないのですが、ただ、諸外国のページを見て、そんなにどの国も分かりやすいものが前面にバンバン出てくるかというと、今は別にそういう状況ではないです。例えば、UKにはフィンガーティップという素晴らしい高度な技術を駆使したシステムがあって地域ごととか、グループごとの耐性菌の割合なり、感染症の割合なり、抗生剤の処方量等が見られるようになっていますが、分かりやすいかというと、ハンドリングもかなり大変です。ですから、日本で分かりやすいものをまずは作って、必要な所にWebサイトからリンクして飛べるようなものとか、そういったシステムを作っていくことはもちろん必要なことだと思います。世界基準で今そういうものがあって、各国がそれにならって、フロントページみたいなものを出しているかというと、他もまだそういう状況ではないところはあるかと思います。

○渡邉座長 確かに一般の人も分かるというのはなかなか出ていない。専門家向けのものはダンマップとか、EUなどで出ていると思いますが、むしろ、日本がリーダーシップをとってやっていける余地は残っていると考えたほうがいいかなと思いますので、その辺はよろしくお願いします。ほかに何か御質問等ありましたらお願いします。

○浅井構成員 動物のほうの抗菌剤の使用量について、公表されているものは販売量が出ているかと思いますが、先ほどの村木先生のお話でも、実際の使用量について議論が深まっていますし、デンマークなどでは処方ベースでの量を把握するような仕組みを作っていますが、日本はどのように対応しようとしているのかについて説明を頂きたいと思います。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 今、浅井先生から御指摘を頂いた使用量に関する動物薬の把握という点では、委託事業等も活用しながら、海外の情報を集めた上で整理をしているところです。人と違って動物については、家畜の大きさや、使用頭数の割合とも各国様々違っておりまして、データを15ページの下に図5で出しておりますが、純末量だけを単純に比較するのはなかなか難しい状況です。そこはEUも含めて各国どのようにやっていったらいいのか、今検討をそれぞれの地域でやっているところです。我々もそういった情報を収集した上で、我が国の使用量を適切に表現と言いますか、使えている現状を把握するという点で、どういった換算の仕方が適当なのかということの検討を進めているところで、具体的にいつその辺が公表という形でできるかというのはなかなか難しいですが検討はしているところです。各国、統一的なものが出ていないというところも換算の仕方というか、比較が難しいという現状を反映しているのかということも思っております。

○渡邉座長 ほかに御質問はありますか。

○松井構成員 動物と人と行ったり来たり、まさしくワンヘルスと思っておりますが、JANISについて、前回、御手洗構成員から報告施設数が急増していることに関する言及があったかと存じます。その点に関して、急増したことによるデータへの影響を今検討中であるという形で、制約として入れていただくのがいいかと思ったのが1点です。

 もう1点は、National dataと強調されているところはどういう意図でお書きになったのか。別にNESIDがあるからということで言っているわけではなく、この強調の意味を教えていただければと思います。

○柴山構成員 医療機関がだんだん増えている点については、要するに分母がどんどん変わっていってしまうということで、例えば、アクションプランの成果目標の薬剤耐性の率を何パーセントに減らすという数値目標が掲げられておりますが、これを今年度と最終年度と比較するに当たって、分母が変わってしまうのでよくないのではないかということもありますので、その辺は分母を調整するとか、前回、対象とした病院だけにするとか、そういった調整を検討したいと考えております。

2点目の御質問のNational dataのところで。

○渡邉座長 5行目です。

○柴山構成員 各菌種でそれぞれの薬剤に対して、どれぐらいの薬剤耐性率があるかということについては、NESIDのほうでもなかなかこういったデータはないと思います。こういったデータというのはJANISが国内の調査では一番大きな調査かと思いますので、そういった意味ではNational dataと書かせていただきましたが、ただ御指摘のように、JANISも代表性がどうなのかと言いますと、入院患者、検体だけしか入っていないとか、あるいは比較的大きな病院だけしか入っていないとか、あるいは日本もいろいろな病院があります。大きな大学病院から通常の市中病院についても全部一緒に集計していますので、そういったものについてもそれでいいのかという議論もあります。一応、ここにNational dataと書きましたが、本当はどういうデータがNational dataなのかということは、今後、引き続き検討していきたいと考えております。

○松井構成員 その点に関して、先ほどの医療機関が増えたことにより性質が変わっていることによるデータへの影響という点は御検討いただけるということでしたが、それをきちんと調整すれば、恐らく傾向は読めるのであろうと思います。ですから、例えば40%がどうかということではなく、傾向の変化というところを少し前に出していただけると、読んだほうがもう少し胸に落ちるのかなと思います。

○柴山構成員 おっしゃる御指摘のとおりだと思います。そういったことも含めて、現在検討しているところです。

○渡邉座長 ほかに御指摘はありますか。JANISは十何年の歴史があるわけで、その間にいろいろな事情によって、今のような形になってきているのだと思います。数が増えればいいというものでは確かにないので、前にも議論がありましたように、それが必ずしもちゃんと精度管理されたデータでないと信頼性が乏しいのではないかという御意見もあります。今のように、分母がどんどん変わっていくと、今、大きな病院から小さな病院が入ってきている段階だと思います。そうすると、その小さな病院がどういう形でデータを出しているのかというのは、自分の病院のデータではなく、どこかに外注しているものが入ってきているのだと思います。その辺でやり方とか、いろいろなクオリティーが違ってきている可能性があるのかと思います。例えばNESIDにあるように、届出基準に基づいてデータが出てきていれば、まだいいかと思いますが、JANISの場合は一応基準はあるのですよね。

○柴山構成員 JANISのほうは、検査部門から提出していただいているデータはMICのデータを頂いておりまして、こちらのほうでSIRを判定しております。判定はこちらのほうでやることになっております。

○渡邉座長 そのMICのデータはCLSIなどに基づいてやりなさいとか、EUCASTとか、何かあるのですか。

○柴山構成員 それは各医療機関で、実際恐らく、CLSI2012でやっている所が多いかと思いますが、各医療機関でやっていただいているデータを頂いております。ですから、こちらのほうでもう一回CLSI2012、あるいは2007で判定をし直しているのですが、それにどうしても判定できないデータというのはありますので、どうしてもそういう病院のデータはありますので、そういうものは除外して集計をしております。

○藤本構成員 前回のこの会で御手洗先生から既に御指摘があった点ですが、精度管理については、機種間差のことを御手洗先生がおっしゃっておりましたがこれは歴然としてどうもあるようです。実際にRICSSが行っている地域連携でも、その地域間で同じ検査機器を、施設ごとによって使っているわけではありませんので、違った機器を使っておりますので、そこで比較が難しいような例もあったという報告が既に上がっております。

 これはサーベイが特に扱う問題というよりは、これは医療のために行われている検査ですので、こういうものについて機種間差を含めた精度管理が必要になってくる。その一部は柴山先生がおっしゃったように、臨床微生物学会などでされているようですが、実際に会社にどういうふうに働きかけていくかということについても、ここの主な議題ではないですが、やはり考えていく必要があるだろうと考えます。

○渡邉座長 この辺のデータ集めは非常に難しいのですが、データの信頼性にとって必要とする分母をまず決めて、それを日本を代表すると思われるような病院で、ベッド数が幾つぐらいの所はどのぐらいという割合を決めて、日本全体でデータを集めていくということにすれば、多分、1,800の病院は要らなくて、200300ぐらいの病院でデータを集めたほうが、今のような分母がどんどん増えて何だか分からなくなっていくというクレームはなくなるのではないでしょうか今、進めているJANISの中のものをうまく使うようにしてやり方を少し変えていったほうがより効果的なデータが得られるのではないかと思いますが、いかがですか。

○柴山構成員 正に御指摘のとおりであって、JANISも診療報酬加算ということがあるので、非常に参加医療機関数が増えてしまっているのです。サーベイランスという点ではもっと医療機関数をある程度絞って、しかもポピュレーションベースドになるように、うまくちゃんといろいろな規模の病院を地域地域で選んで、しかも精度管理をしてやっていくことが理想だと思いますので、JANISも今後こういった方向で是非検討していきたいと考えております。

○渡邉座長 各病院にインセンティブを与えて、ちゃんと院内感染対策をやりなさいということの意義としては、JANISは結構それなりの貢献をここ10年でしてきたと思います。

 それと対外的に比較可能なデータを集めるというのは、今度は逆に科学的な問題なので分けて考えたほうがよろしいかとは思っているわけです。その辺は今検討していただいているということですので、今後、その方向性をこの会で示していただければと思います。ほかに御質問等はありますか。御手洗先生、何か前回のことについていかがですか。

○御手洗構成員 クオリティーの話ばかりで申し訳ないのですが、NESID、あるいはJANISもそうですが、各病院や検査センターから出てきたデータの信頼性そのものも1つは問題ですが、入力されたデータの信頼性は確保されているのか。そこのところを1つ伺いたいと考えます。

 我々が今実施しているサーベイで、病院から集めたデータと、NESIDから抽出したデータをマッチングさせようとしてもマッチングしないということが起こるのです。つまり、実際に入力したデータは、例えばダブルでチェックしているとか、入力自体の精度管理そのものがなされているのかどうかです。つまり、出てきたものは、集められたことは集められたのですが、正確に入力されていなかったり、いろいろなことがもしや起こっているのではないかという危惧を持っております。

○渡邉座長 これはヒューマンエラーということですか。これはなかなか難しいことですね。

○御手洗構成員 そうです。

○渡邉座長 柴山先生、何かありますか。

○柴山構成員 まず、JANISのほうですが、JANISの検査部門は各病院にある自動検査機器の電子データをそのままコピーして、JANISフォーマットに変換し、その電子データのまま送っていただいているという状況です。ですから、人為的に何か書き間違いとか、そういったことはないと思います。ただ、途中で変換のエラーとか、そういったテクニカルなエラーというのはあると思います。

 例えば私どもで見ているのは、VRSAが入力されているとか、そういったものについては何かエラーがあるのではないかということで問い合わせをしております。そういうVRSAのほか、幾つか、基本的にめったに出ないような耐性菌が報告されているといった場合には、入力ミス、あるいは変換ミスが何かあるのではないですかということで、そういう形で精度管理をしております。重複については、JANISのほうはプログラムを作っておりまして、患者さんのIDで短い期間に同じ患者さんから出てきたデータというのは、自動的に重複を排除するようにはしております。

○渡邉座長 1つのやり方としては、本当にヒューマンエラーがあるのかどうかというのは、ある一定期間出てきたデータと実際の現場でのデータの照合をちゃんとして、それを年に1回かやることによって、どのぐらいヒューマンエラーがあるのかどうかというのを一度出しておけば、それで大体傾向が分かるのだと思います。やはり、何かそういうデータがないと本当にどのぐらいあるのか分からないと考えます。

○松井構成員 感染症発生動向調査については、御手洗構成員も御存じのとおり、保健所のほうで入力がなされています。オリジナルの調査票は保健所にしかありませんので、例えば感染研でクオリティーチェックをしようとすると限界があるのは事実です。ただし、明らかに入力ミスであると思われるものについてはチェックをすることができます。

○藤本構成員 JANISのデータについては、基本的に検査機器、あるいはデータ管理装置のベンダーさんが変換のプログラムを作っておりますので、あるベンダーさんのものが全部転ぶということはあるかもしれませんが、そういう意味では個別に作っているものではないのでエラーが起きにくいということがあります。

JANISに一度取り込まれたデータを、CSVファイルで分かりやすい形で返す仕組みがJANISにはありますので、多くの施設がそれを院内感染の参考に使っておりますので、そこで見ることができます。さらに院内で出ているデータを二次元のグラフィカルなデータとして変換して見せる仕組みも用意していますので、これを見ることによって、こんな所にはいないはずだとか、そういうことで間違いに気付かれた例もありますので、そういったこと。さらにRICSSで例えばMRSAの新規患者が何人出ているとか、そういったものをJANISのデータを取り込んで見ていくことで、また誤りがあれば気付くということで、だんだん仕組みが連携していくことによって、誤りはどんどん減る方向に今あると思います。

○渡邉座長 いろいろな現代の技術を使って、人間のエラー等もチェックできるようになってくるだろうということで、非常に良いことだと思います。ほかに何か御質問はありますか。

○四宮構成員 NESIDについての補足ですが、平成284月から感染症法が一部改正されまして、NESIDの入力も機能改善されました。従来より、患者発生については保健所が入力して、病原体検出に関しては地方衛生研究所が入力しておりますが、従来は、入力すると、それがすぐ登録され、中央に送られていました。昨年の4月からは入力した後に、一時保留し、プリントアウトして、責任者がそれを確認できるというワンステップ入れています。つまり、登録前に責任者の決裁を取って、それから登録するという2段階になっております。ヒューマンエラーという点では、非常に減少しているのではないかと思います。

○渡邉座長 皆さん、それぞれいろいろ取組を行っているということですね。ほかに何か御質問、御提案はありますか。前回と今回と2回に分けてサーベイランスの仕組みについていろいろ御議論を頂いたわけですが、大体、皆さんから御意見が出て、あと問題はどういう形で今後修正なり、改善をしていくかというところかと思います。その辺も今各担当者からいろいろ話が出ましたので、それは随時、研究班なり、またはいろいろな会議を通して行っていくということだと思いますので、その改定の方向性が出ましたら、また報告していただくということで、サーベイランスの仕組みもそうですし、それを情報発信するということに関しても、世界の中でちゃんとやられている国というのは非常に少ないのです。

 今までの流れからEUがよくやってきているという流れです。アメリカもやっていることはやっていますが、アクティブサーベイランスが多分メインになっているのです。あとはカナダ、アジアではタイがよくやられつつあるということが傾向としてあると思いますが、ほかの国はようやく始めてみようかなというところです。今、イギリスがウェルカム・トラストと、イギリス政府がお金を出してフレミング基金を作って、それが日本円で300400億円とかなりのお金を費やして、アジアとアフリカ、いわゆるロウ・インカム・カントリー、またミドル・インカム・カントリーを中心にサーベイランス体制の構築をサポートしようとしています。アジアはベトナムが第一候補になって、去年辺りからそれが始まっているということです。アフリカも幾つかの国を候補にするという形になっているらしいので、そういう所がだんだん取り組み始めると、アジア、アフリカ等のデータが出てくるかと思いますが、まずはキャパシティビルディングをちゃんとしていくというのが現在の段階だと思います。

 そういう意味では、こういう会議を日本で作って、今まで個々でやられたサーベイランスを統合とまでは行かなくても、皆さんが協調関係を持ちながら良いものを作っていこうというのは、世界の中でもそんなに類はない方向性だと思います。一気に最終的なものができるというのはなかなか難しいかと思いますが、徐々に良いものを作り上げていくという点に関して、ワンヘルス動向調査委員会の大きい役割があるのではないかと思います。

 いろいろ皆さんからの御意見が出てきたところで、それを今後ブラッシュアップしていくという段階かと思います。よろしいですか。大体意見が出尽くしたと考えていいですか。

○浅井構成員 前回、人と家畜に対するサーベイランスとかモニタリングはよく分かったのですが、まず、アクションプランの中で、欠落している部分としては食品の話です。これについては渡邉先生の研究班で、四宮先生が取り組まれているのは存じ上げておりますが、あと愛玩動物の話とか、環境で特に野生動物というか、水系にいる魚類とか、そういう話というものが、どのような状況かと、この調査の会議でどのような方向でやられるおつもりなのか説明を頂けますか。

○渡邉座長 これは食品は食品保健のほうから、環境は環境省のほうからお願いします。

○生活衛生・食品安全部監視安全課課長補佐 前回の会議で報告させていただいたとおり、食品に関しては網羅的な公的なサーベイランスがない状況ですので、今、渡邉先生を代表とする研究班で限られた検査をやっているという状況です。今後の体制については、この検討会で方向性について決めていただくことになるかと考えております。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 農林水産省からペット、愛玩動物の現状についてお伝えいたします。愛玩動物に関しては、世界的に見てもほかの家畜や人と同じように、体系的に実施している国というのは非常に限られております。ただ、全く実施されていないわけではなく、我々の国がアクションプランにも書いてあるとおり、愛玩動物についても実施、検討することを明記しております。現在は海外の事例の調査をしているところで、そういったものを参考にしながら愛玩動物についても我が国でどういった形で実施、どういった菌を対象に、どういった薬剤を対象にやったらいいのか、どのぐらいのサンプリングをしたらいいのかということも含めて、現在は専門家の方に御議論を頂いているところで、何らかの形でこちらにも御報告することになるかと思います。

○野田結核感染症課長補佐 環境中の薬剤耐性の関係については、少し黒田先生からも冒頭にありましたが、少なくとも日本の中では全然行われていないという面もありますし、どういう形で調査を行っていくのかというところも詰めていかなければならない、まだ研究段階の部分も多いということで、まずは研究というところで行っていくことが必要だと考えております。いずれにしても、環境省とも協力して、まず研究という形でどういう調査を行っていくことがよいのかというところを詰めていく過程でデータを出していきたいと考えております。

○浅井構成員 このアクションプランは、2020年までということで、一応期限は切られているのですが、今、食品、ペット、環境について2020年のどれぐらいのところまでを目標に考えておられるのかお願いします。

○野田結核感染症課長補佐 アクションプランの関係を言いますと、2020年までとなっております。一方で、数値目標はないというところがありますが、ただ、記載としてこういうことをやっていくということはアクションプラン上書かれておりますので、少なくともアクションプランに書かれている、こういうことをやっていきますよというところについては、各省でやっていくことだと考えております。

○渡邉座長 よろしいですか。積極的にやっていくということだと思います。ほかに御質問はありますか。

○釜萢構成員 人と動物、あるいは食品、環境を含めて、全体的にこの問題を捉えないと、人のことだけを見ていても駄目だということがワンヘルスの大きな柱です。その点については、皆様の合意が得られているところですが、このように一つ一ついろいろな作業を積み重ねながら、データの横の連携とか、全体としては国がどういう方向にあるのかということが示されていくことになると思いますので、大変意義深いと思って参加をしております。以上です。

○境構成員 先ほど抗菌剤の使用量が減ったという話がありましたが、抗菌剤が一番多く使用されているのが養豚現場です。農水省からも慎重使用のガイドラインが示されておりますし、やはり、養豚の関係獣医師が耐性菌についての関心が非常に高まっているということです。

 もう1つは、養豚経営者が非常に少なくなってきておりまして、もう数千しかないわけで、規模を拡大しておりますから、抗菌剤を使用するような事態になると、大きな経済的な損失になるということで、やはり、予防衛生というところに力点を置いているということで、衛生的な管理やワクチンプログラムで疾病を未然に防ぐことが徹底されている結果だと思っております。

 愛玩動物については、農水省から回答がありましたように、愛玩動物の現場では、人用医薬品が大半使われているということで、モニタリングの仕方とか、その結果としてのリスク管理をどうやっていくか、そこのところが非常に悩ましく関心を持っております。

○渡邉座長 動物衛生研究所の佐藤先生、お願いします。

○佐藤構成員 私もOIEの会議に出させていただいていて、世界の情勢なども聞かせていただいております。先ほど人と動物の一本化というお話もありましたが、先生方がおっしゃるように、アメリカの NARMSNational Antimicrobial Resistance Monitoring System)とか、あの辺の所はタイアップしておりますが、日本のように別々のシステムでサーベイランスを行っているけれども一本化しているという世界の現状ではないかと思います。

 あとは先生がおっしゃったように、なかなか海外に見えない。例えばJVARMはものすごく素晴らしいデータを持っているわけで、これが日本語であるがためになかなか見えないところがありまして、折に触れて、私から動薬検(動物医薬品検査所)、農水省のほうに、ホームページの分かる所にそういうデータを出してくださいという話はしているところです。ですから、是非、こういった会議でデータを統合していく。違うシステムでも良いので、国内、あるいは国外に分かるような形のホームページのようなものを日本語と英文で立ち上げるのは、こういった会での大きな成果になるのではないかと個人的に考えております。

○遠藤構成員 今の佐藤先生の御意見について、JVARMのほうでは動物医薬品検査所のホームページに英語の報告を出しております。抗菌剤使用量についても、野外流行株の薬剤耐性調査についても、食品媒介性の病原細菌の調査についても出しております。うちのホームページは知名度が低いかもしれませんが、御覧いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○渡邉座長 この間私も見せていただいたのですが、ちゃんと英文の報告書がでています。ただ、なかなか確かに探りにくいですね。そういう意味では、先ほどどこかまとめてということで、そこをクリックするとみんなが見えるというのは今後是非やっていただければと思います。環境関係で田中先生からお願いします。

○田中構成員 まず、人の関係と、それから畜産関係のいろいろな今の情報、我々は余り知らなかったので、非常に勉強になりました。それで、まず、環境、水については耐性の問題以前の問題として、今、細菌レベルでどういう汚染になっているかというのが、実は環境省として、これまで使っていた大腸菌群ではなくて、大腸菌に変えるところで、やっと環境基準はそこのレベルに今なろうとするところなのです。それに合わせて、恐らく排水の管理の中の病原微生物管理の問題がかなり真剣に議論される可能性があります。これまでのところ、大腸菌群については測られてきたのですが、土壌由来であるということを主な理由として、環境基準の達成性とか、その問題点とかを避けてきました。だから、これは初めてそこのものが少し進んでくるので、そのベースのラインのところがちょっと議論が絡み合う所があると思います。

 それから抗生物質のインパクト、水に対するインパクトについては、ヒト健康からはほとんど今は議論は全くされていません。野生生物、特に水生生物については環境省の中の水環境課の中で、若干水生生物を守るために、これから化学物質の中で何を対象にするかの中で、若干議論がされている程度です。むしろ、環境安全課という、人と環境とをつなぐ所ですね。ここで化学物質管理の視点から、幾つかの抗生物質の生物影響についての基本的検討が今、進められているような感じです。

 あと、環境の問題を考えるときに、今日のお話にもあったように、人排泄物由来が最終的にはここ40年、50年の間に変わってきているのです。人し尿は50年前は、我々がまだ学生の初めぐらいのころ、これまでは水洗化はほとんど行われていなくて、50年間近くの間に、水洗化率が今90%ぐらいまでに上がりました。それによって下水道と浄化槽にし尿が今入ってきている。そこを介して環境に出ていきます。これは途上国などとは大分違うところです。ただ、先進国のレベルで特に処理系の処理レベルがどうかということが課題になってくると思うのですが、処理についての研究なり調査というのは、特に下水道については国土交通省の管理です。そことのある意味では、情報交換というのが必要になる可能性が今後あるのではないかと思います。海外では、多分その話がかなり進んでいるのではないかと思います。

 下水道なり浄化槽なりでの処理というのは、まず抗生物質についてはある程度取れているものもあるのですが、水の中に、当然薄い濃度ですが残っている。その取れているものがどうなっているかというと、生分解しているものもあるのですが、最終的には例えば先ほど話が出ていたレボフロキサシンのようなものは、主に汚泥のほうに移っていて、汚泥の処理がどういうふうにされるかで最終的な環境に戻るレベルが決まると思います。

 日本の場合には下水汚泥についていうと、80%は焼却しているので、それは問題が基本的にはありません。20%程度がコンポストを介して、農地に一部返っている所はあります。これがどういう形になっているかということだろうかと思います。

 同じような問題は農林水産省で先ほどお話いただいた家畜の排泄物と排水の問題です。家畜については恐らく水質汚濁防止法の特定施設になっている所は水処理はある程度されていますが、個別の小規模な所は、そういった法の規制がないので指導程度ぐらいになっていて、水環境の中にどういうように戻ってきているか、この辺が多様なことになっているのではないかと思います。同時に水処理なり排泄物の処理を最終的にまた肥料に戻すとかということになると、土壌環境の問題に、またそれも関係してくるのではないかと思います。

 逆に、また更に研究レベルでは結構、今され始めていると思うのですが、今日は余り話が出てこなかった水産での使用状況、これは恐らく最終的に水産物のほうへの蓄積の問題とかもあると思うのですが、同時にそこでの提出側、特に養殖場での提出側の問題というは、国内でも若干研究が一部されている所もありますが、海外ではやはり問題と言われている所があるので、そういうマクロな話を、全体を多分、2020年までに簡単にやるのは大変だと思うので、まず、先ほどから話が出ている水環境での実態を見ながら、そこに関係してくる、今、言ったような流れのどこが関係してきているのか、恐らく使用量とダイレクトに見ようと思っても、エリアエリアで違うのですが、どういう経路でどこ由来のものの流れが多いのかによって結論が変わると思いますから、あるモデルを考えた場合に、もともと発生している影響部分のことを一緒に考えていただけるとありがたいかなと思います。

○渡邉座長 なかなか水の分野も複雑で、我々が飲む上水は処理がいろいろされているわけで、その処理というのは、抗菌薬を不活化するのに十分な処理過程になっているのでしょうか。

○田中構成員 まず、浄水はこれは厚生労働省の世界なのですが、こちらは、環境工学として水道工学なども我々は少しやっているところもあるので話をすると、そこでは、まず通常は凝集して沈殿させて、それから砂ろ過をして、塩素を加えます。砂ろ過までは粒子に由来しているものはある程度落ちますが、溶解しているものについては凝集剤で若干落ちるものもあるのですが、大体素通りします。砂ろ過でも多分通ります。塩素では残留塩素で0.1 mg/L、日本では給水栓ではそれぐらい残るように加えていますので、一部変化するものもあります。通常の処理では落ち方は余り大きくないのではないかと思いますが、特に大都市では、水の味を良くするということが主な目的できているのですが、高度浄水システムを入れている。これはオゾン、生物活性炭ですが、これを中心にやっています。オゾンについて言うと、これは我々も大分研究しているのですが、排水系を中心にやっているのですが、極めてよく落ちます、分解できます。ただし、全ての浄水場でそういうことをやっているわけではないので、若干残っているものがあるかもしれませんが、水の中に残っているレベルというのは非常に薄いですから、pptからppbまでいかないレベルですので、余り大きな問題はないのではないかと思っています。

 ただし、排水系について言うと、これも抗生物質によって除去率が大幅に違うのですが、活性汚泥、微生物、処理生物側のほうに吸着しやすいものは比較的よく取れます。余り汚泥側にうつらないもので、生分解が余り高くないということもあるのですが、割と素通りに近い、それでも2030%ぐらい落ちると思います。下水道でも水を再利用するようなケースだと、先ほど言ったようなオゾンを掛けるのですが、多くはオゾンを掛けない。塩素だけでやっています。しかも、水道に比べて添加量が極めて低いです。したがって、塩素による除去率は余り期待できない。したがって、下水道はもともとそういうまだ規制されていないものについての対応をする設計になっていないので、今後の進み方による対応のオプションというのはあり得るかもしれない。

○渡邉座長 我々の腸管の中のいろいろな菌が耐性遺伝子を持ってしまっているというのが、いろいろなゲノム解析、マイクロビオームのゲノム解析から今、分かってきているところで、恐らくそういうものというのは、食品等を介して、耐性遺伝子もまたそういう遺伝子を持つ菌が我々の体内に入って、その遺伝子が腸内にいる常在細菌の中に入り込んでしまっているというふうに言われているわけで、その遺伝子が維持されるためには、多分何らかの抗菌薬が選択圧になっているのかなと思っているのですが、今の水の中に含まれている微量な抗菌薬がそういう菌の維持に、腸内細菌叢の遺伝子の維持に働いているほどの濃度ではないと考えてよろしいのでしょうか。難しいでしょうか。

○田中構成員 この辺はまだはっきりは分かりませんが、恐らくセレクションがかかるレベルに比べて、はるかに低いですので、ダイレクトに水そのものが作用するというのは少ないかもしれない。ただし、その水の中に含まれている遺伝情報が何らかの形で取り入れられた場合には、それは問題が起こるかもしれない。そうすると、例えばそれは食品と一緒に、どういう水を使った食品、生で食べたケースですよね、あるいは水産物の中でそういう情報を持っているもの、あるいは先ほど少し言いかかりましたが、今、水の再生水を農業利用したいというのが世界的にも広がってきているのですが、そのときにそういう情報について大丈夫かというようなことが少し課題になるかもしれません。

 下水道サイドは主に、やはりそういう耐性遺伝子系のものの多くは、多くの研究者の今、心配しているのは、やはり直接ヒトの使われた体から出てきているのです。したがって、下水道などでいうと、病院排水の問題、下水道サイドの受け入れる段階で、病院との連携をしている所が極めて限られているので、水の問題でまず起こってくるとしたら、そことの連携の問題も当然エンド・オブ・パイプの所ではなくて、排水を受け入れる所で連携をする必要も出てくるかもしれません。

○渡邉座長 普段、余り聞き慣れない、情報が得られないような分野のいろいろな情報をありがとうございます。続いて発言いただいていない矢野先生は保健所と現場から何か御意見はありますか。

○矢野構成員 家畜保健衛生所の矢野です。普段は畜産農家に接する仕事をしております。わりと一般の方々の中には家畜にかなりの薬をめったやたらに与えている印象を持っていらっしゃる方もあるのですが、実は結構畜産農家はしっかりと薬の管理はしております。農水省の指導もありますように、薬剤は必要な分だけやるということで、飼養衛生管理基準ということが最近はかなり厳しく言われておりますので、病気の予防ということで、ワクチンによる病気の制御ということを中心にやっております。そういう面ではJVARMの調査で薬剤耐性率について伸びない、大きくなっていないということが反映されているかと思っています。

○渡邉座長 大体皆さんから発言いただいたわけですが、ほかに付け加えた発言等がありましたら、どうぞ。

○遠藤構成員 先ほど環境のお話が出ましたが、動物薬のほうでもかなり昔、何年か覚えていないのですが、前に新動物用医薬品について環境影響評価をするというガイドラインを出しておりまして、これはちょっと事情によりまして農水省ではなくて業界のほうからの自主ガイドラインなのですが、その中で環境生物に対する影響の評価と、環境導入経路・環境中の動態に関するものを比較しまして評価をするというようなガイドラインができております。これにしたがって、新薬については新薬を申請する製薬会社の方が、環境の生物に対する影響ですが、それについて問題がないという成績を出してきており、そのガイドラインというのは世界的に共通なハーモナイズされたVICHという国際協力活動で作成したガイドラインなので、全世界的に、EUと日本と米国で共通なガイドラインということで評価をしています。また、畜産の排泄物については堆肥化処理の過程で、かなり高温になるということもあり、ものによっては違うかもしれませんが、熱に弱いような化合物であれば、堆肥化処理でかなりなくなっていくのかなということもあります。

 また、魚については、先ほどのガイドラインは水産薬の評価にも使っていますので、どのくらいの範囲で薬剤が広がっていくかという計算方法についても農水省で出していますので、それを紹介させていただきたいと思います。

○渡邉座長 ほかに御意見はありますか。

○黒田構成員 環境という側面について、健常者のほうのキャリアについて、何らこの中ではまだ1回も議論がなかったと思うのですが、先日の名古屋大の川村先生、荒川先生らの報告によると、2,500人ちょっとの検便で5%近い方からESBL陽性分離菌が出ていると。患者さんではないサンプルが下水道に流れ、また我々に戻ってくるかもしれないという循還があるわけです。そうするとキャリアが今後はどんどん増えていっている。日本はまだ低いレベルだと思いますが、東南アジア等、アジア各国での抗菌薬使用で、特にインドとか、5割、6割ぐらいが耐性菌キャリアであると。そういった中で日本は非常にきれいな国であるがゆえに、大丈夫だと思うのですが、海外からの流入ということもちょっと考えた観点で、健常者も含めたサーベイランスの実施をお願いしたいと思います。

○渡邉座長 健常者の問題は我々の研究班でも同じようなデータ、ESBLは大体平均5%です。今、お話があったアジアで、AMEDSATREPSという事業で、ベトナムでの耐性を見ているのですが、健常者のやはり5060%が大腸菌でESBLを持っているということで、多分、アジアは全体的にそんな感じになっているわけです。

 先ほどの下水とかいろいろな形で環境が多分汚染されているのだと思うのです。それが農業等に使われた場合には、農業の産物にも影響を及ぼす。それがまた逆に人にも来るという循環が行われるだろうというのは当然予想されるわけですが、そういう意味では外国から輸入される食品等に関しての耐性の問題というのも、我々の口に入るので重要かなと思うのですが、それも我々の研究班で調べた結果は、日本と外国からくる食品での耐性率に余り差がないのです。日本も結構外国と同じぐらいに高いということです。

 それが先ほどと矛盾するのは、動物から出されるESBLも含めたそういう耐性率というのはだんだん確かに減っているのです。減っているのですが、それは抗菌薬を多分ニワトリ等に使わないようにという指導が功を奏して、今は全体の大腸菌の中のESBLを含めた耐性率は3%から5%に減少している。だけど食品を見ると耐性率は50%、60%で、その間の矛盾点がどこにあるのかということがあります。1つは食鳥処理場とか小売店における交差汚染の問題が日本ではあるのではないかと考えられます。外国で高いのはどこが原因かというのはよく分からないところがあるのですが、恐らくそういう同じようなことがあるのだろうと思います。

 その辺の対策も、進めていかないといけないわけです。我々健康人に菌、または遺伝子が入っているわけで、先ほどの健常人の中の耐性菌の問題を反映しているのだと思うので、全体をやはり考えていかなければいけないというのは確かなことだと思います。

 健常人の問題をどうするかというのは非常に難しいので、健常人にそれこそ除菌するようなことは難しいことだし、ベトナム等で行われた調査では、健常人の耐性菌を減らすために何をやればいいかということを調査した場合に、手洗いとか、いわゆる公衆衛生的な介入、ちゃんと食べ物をよく煮て食べましょうとか、熱をかけましょうとか、手洗いをして口に入れないようにしましょうとか、それが結構効果があるというデータも出ているわけです。そういう意味ではNAP1番目の目標の国民を含めて全ての人に情報を正確に伝えて、3番でしたか、衛生管理をきちんと行うこと、全部を網羅的にやらないと、今の問題はコントロールできないのではないかと思います。

 その辺はワンヘルスの問題というよりは、これはAMRの小委員会のほうの問題になるのかなと思うのですが、皆さんの啓発を高めて、全体的な形で進めていくということが、今の問題の対策に通じる点なのかなと私自身は思っているのです。先生が言われるように、本当に健康人の腸内は耐性菌でいっぱいだというような状況があるわけで、先ほど水の問題で質問したのは、そういうものの維持に水とかそういうものも関係しているのかというのが興味があったので質問させていただいたのですが、なかなか根が深いというところで、その辺を皆さんが理解した上でどうするかということが進めていくポイントになるかなと思います。

 ほかに何かありますか。もしないようでしたら、今日話し合われましたサーベイランスの観点から、いろいろ問題があるということが浮かび上がってきました。JANISNESIDRICSSJACSJVARMGenEpid-Jとか、いろいろサーベイランスが進んでいるわけですが、それらが一元的に情報を発信できるようにするというのが重要なポイントであると思います。これは厚労省の先ほどの話ですと、国立国際医療センターのAMR情報センターのほうで一括して情報を出していくということになりますね。そこは日本語と英語も含めた形で出して、日本ではこういうことをやっているのだということを示していくというのが1つの流れであるということです。

 あと各サーベイランスで問題点が幾つか出されました。一番大きいのは精度管理、または標準化されたデータが出されていくことがやはり重要であるということです。今までの経緯はあるにしても、そこを踏まえて正確な情報を諸外国に出していかなければいけない。その辺は今後、各サーベイランス担当者を含めた、厚労省はもちろん、各担当の省庁も含めて検討していただいて、その成果をまたこの委員会等で発表していただければと思います。

 ちょっと時間は早いのですが、もし皆さんのほうから御意見がないようでしたら、ここで閉めさせていただきたいと思います。事務局のほうお願いいたします。

○高倉結核感染症課長補佐 第3回の開催については現在のところは未定です。4月以降、各構成員の御予定を確認させていただき、調整を行って、決定し次第、御連絡させていただきます。事務局からは以上です。

○渡邉座長 これで今日の会議は終了させていただきます。ありがとうございました。


(了)

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