ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会> 第1回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(2017年2月3日)




2017年2月3日 第1回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会

健康局結核感染症課

○日時

平成29年2月3日(金)14:00~16:00


○場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)


○議題

(1) 薬剤耐性(AMR)について
(2) 薬剤耐性ワンヘルス動向調査について
(3) その他

○議事

 


○結核感染症課課長補佐 それでは定刻となりましたので、ただいまより第1回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会を開催いたします。開会に当たりまして、福島局長より御挨拶申し上げます。

○健康局長 健康局長の福島でございます。一言御挨拶申し上げたいと思います。本日、先生方にはお忙しいところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃から薬剤耐性のみならず、感染症対策全般について、御指導を賜りまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。

 御承知のように、薬剤耐性問題、AMR問題とかが国際的な課題となっておりまして、昨年の国連総会、あるいはG7サミットでも、主要議題の1つとして取り上げられております。AMR問題については、ヒトの医療だけではなくて、農林水産あるいは食品安全に向けた、分野横断的な「ワンヘルス・アプローチ」、こういうものが重要になることは御承知のとおりであります。

 我が国においては数年前から、ヒトとの薬剤耐性の動向的調査のデータ、あと動物の薬剤耐性に関する動向的調査のデータ、これをつないで比較化をする取組、研究レベルで進めていただいていたわけです。

 昨年4月に、AMRに関するアクションプランを作ったわけですが、この中で、ワンヘルス・アプローチの理念に続いて、分野横断的な取組を進めていくということで、この薬剤耐性の動向調査ですが、ワンヘルス動向調査という形でこの体制を確立することになっております。

 このように、それぞれの分野で対策を立てていただいている、あるいはその効果はどうなっているのか、こういう状況の把握をするためには、モニタリング、動向調査がどうしても必要不可欠です。そういう面でこの検討の場が、非常に重要な役割を果たしていただけるものと考えております。

 なお、この会ですが、薬剤耐性ワンヘルス動向調査に関する技術的事項、これについて御検討いただくことを目的として設置しているわけです。薬剤耐性菌の発生状況、あるいは抗微生物薬の適正使用の進捗状況、それらを把握するための方法、あるいはシステムの構築、検討すべき範囲が非常に多岐にわたるわけですが、是非、先生方にはそれぞれのお立場から、これまでの御経験、知見を踏まえて、活発な御議論を頂きまして、より良い動向調査の在り方について御議論いただければと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○結核感染症課課長補佐 続いて、各構成員の御紹介をさせていただきます。資料2枚目に構成員名簿があります。50音順で御紹介させていただきます。浅井構成員については、本日は御欠席と伺っております。御出席の構成員は、遠藤構成員、釜萢構成員、黒田構成員、境構成員、佐藤構成員、四宮構成員、柴山構成員、田中構成員、田村構成員、早川構成員は、本日は御出席と伺っておりますが、到着が遅れております。また、藤本構成員、松井構成員、御手洗構成員、村木構成員、矢野構成員、渡邉構成員に御出席をいただいておりまして、本日は、現時点で17名中15名の方々に御出席いただいております。現時点で定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立いたしますことを御報告させていただきます。

 次に、事務局から資料等の確認をさせていただきます。議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料1から資料15、参考資料1を御用意しております。不足の資料がありましたら、事務局までお申し付けください。

 続いて、座長の選出に入ります。本検討会の座長については、「薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会開催要綱」に基づきまして互選となっております。どなたか御推薦の方はいらっしゃいますでしょうか。柴山構成員、お願いいたします。

○柴山構成員 これまでワンヘルスの知見で薬剤耐性の研究を非常に長きにわたって携わってこられた、渡邉治雄先生がよろしいかと存じます。

○結核感染症課課長補佐 渡邉治雄先生に御推薦がありましたけれども、そのほかに異論等はありますでしょうか。

                                   (異議なし)

○結核感染症課課長補佐 異議ないようですので、渡邉構成員に座長をお願いしたいと思います。では、渡邉構成員、座長席にお移りいただけますでしょうか。

 それでは、冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。

 以降の議事運営については、渡邉座長にお願いいたします。

○渡邉座長 渡邉です。よろしくお願いいたします。前に感染研にいたこともありまして、選出されたのだと思います。よろしくお願いいたします。

 先ほど、健康局長からもお話がありましたように、AMRの問題は、WHO等も「グローバル・アクション・プラン」を作り、日本の国も「ナショナル・アクション・プラン」を昨年作ったということで、これを本格的に、今、取り組まないといけない状況になっていると思います。WHOは今年までに、各国の「ナショナル・アクション・プラン」を提出するようにと言っておりまして、この5月の総会で、それが全部披露される予定だと思います。各2年にエバリュエーションというか、そういうものをやっていくということですので、我が国もそれなりのものを出していかないと、恐らく、世界から注目されている存在だと思いますので、皆さんの御協力のほど、よろしくお願いいたします。

 では、本日の議題ですが、皆さんのお手元にある議事次第で、(1)薬剤耐性(AMR)について、(2)薬剤耐性ワンヘルス動向調査について、(3)その他を予定しております。2時間かけて行うことになります。どうぞ円滑な議事進行に御協力のほど、よろしくお願いいたします。では、議題(1)、薬剤耐性(AMR)についてということで、事務局から資料の説明をお願いします。

○結核感染症課課長補佐 事務局より資料1から説明いたします。資料1を御用意ください。「薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会開催要綱」です。本検討会については、近年の薬剤対策を高める気運の高まりの中で、ワンヘルスとしての薬剤耐性に係る総合的な動向調査の重要性が指摘されておりまして、それを受けて開催しているというものです。この委員会についての庶務は、農水省と環境省の協力を得まして、厚生労働省健康局結核感染症課で処理をさせていただいております。

 資料2-1、「薬剤耐性(AMR)の現状と対応」についてです。次ページの薬剤耐性については、背景としては、先ほど渡邉座長からありましたように、薬剤耐性感染症は世界的に拡大しておりまして、国際的にも、国連でハイレベル会合が行われるなど、対策の必要性が議論されている状況です。日本においても、昨年4月に、アジア太平洋地域の保健大臣らを招いて、WHOと共催で、アジアAMR東京閣僚会議を開くなど、また、G7のサミットにおいても、AMRについての国際協力を推進していくことが議論されたという状況になっています。

3ページ目は、薬剤耐性の仕組みです。薬剤耐性については、自然耐性という形で、耐性遺伝子を菌がある一定の割合で持っているということがありますが、それを耐性遺伝子につきまして、感受性菌が譲り受けることで耐性化が付するということがあります。また、仮に、この耐性菌がヒトの中にいた場合に、そして、抗菌薬が投与された場合に耐性菌のみが残ってしまうということがあり、その耐性菌が次世代の段階では耐性菌だけで増えてしまうということで、耐性菌に関しての感染症が起こってしまうということが問題とされております。

4ページです。これもヒトだけの話ではないということで、ヒトのみならず、環境、食品、そして動物の間でもこの薬剤耐性菌、そしてその遺伝子というものが伝播されることが言われております。ヒトだけではない、正にAMSの対策が必要になってきているという状況になっています。

5ページ、ヒトにおける抗菌薬使用量の変化です。日本については、青字でなっているように、2.54程度下がってきているという状況ではありますが、特に途上国のほうでは、まだまだ増えてきているという状況もありますし、また、途上国のほうでは人口なども増え、更に医療体制の発達もしているという状況ですので、国際的にAMRの問題については、更に大きくなっていくという状況になっております。

6ページは、日本の医療分野における抗菌薬使用の問題点について示した資料です。上のほうのグラフについてはヨーロッパ諸国、一番下の棒グラフが日本の抗菌薬の使用量になっています。日本の抗菌薬の使用量については、ヨーロッパの各国の総量としては遜色ない値になっていますが、問題点としては、セファロスポリンなどの広い菌に効くような抗菌薬の使用の割合が多いということが問題になっています。

 このようなことから、これらの広い菌に効くような抗菌薬についての使用量及び使用割合を減らしていくことが重要ということで、これについては、AMRの小委員会の下に設けた作業部会のほうでも手引きなどの作成について、並行して進めさせていただいている状況になっております。

7ページ、このような抗菌薬の使用を踏まえて、各国の薬剤耐性菌の検出割合についても違いが出てきているだろうというグラフです。耐性菌の割合については、比較がなかなか難しいというもので、あるデータを集めてきたグラフですが、そのあるデータだけを見ているという状況です。国際比較としては、日本の中で、例えば、肺炎球菌ペニシリンの非感受性率などが多いというデータもありますので、このような対策についても必要になっているという状況です。

8ページ、環境に対する取組です。先ほども申したように、AMRに関しては、様々な分野で対策を行っていく必要がありまして、環境についても対策を行っていくということが、後ほど出てまいりますアクションプランにおいても書かれている状況です。環境における調査については、まだまだ進んでいないということですが、例えばイメージという形ではありますが、河川の水とか、汚泥などの調査なども今後行っていく必要があると考えております。

9ページ、なぜ、このようなAMRの対策を行っていかなければならないかというグラフになっています。現状、AMRに関しては、世界の中で70万人ぐらいが年間亡くなっていると言われております。ただし、これは現状の値でして、仮に、何も対策を取らないまま2050年になった場合には、AMR1,000万人の方が世界で亡くなってしまうという試算もされておりますので、すなわち、AMRに関しては、将来に向けて対策を行っていくということが求められている状況です。

10ページです。そのような状況も踏まえて、AMRに関しては、国際社会においても、様々な議論が行われている状況です。例えば、2015年には、WHOでグローバル・アクション・プランというものが採択されておりますし、また、G7でも幾つか議論が行われています。さらに、先ほども申しましたように、今年度に行われた伊勢志摩サミット、更に神戸の保健大臣会合でも議論が行われ、更に、その後の国連総会のハイレベル会合においても議論が行われたという状況になっております。

11ページ、グローバル・アクション・プランについては、5つの柱で対策を行っていくことが定められております。1つ目が、普及啓発・教育、2つ目は、動向調査・監視、3つ目、感染予防・管理、4つ目、抗微生物薬の適正使用、5つ目、研究開発ということで、項立てされております。国際的にこのような5つの柱に基づいて対策を行っていくということが求められている状況です。

 続いて、農林水産省から資料2-2について御説明していただきます。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課の関谷と申します。よろしくお願いいたします。資料2-2を御覧ください。薬剤耐性をめぐる情勢ですが、今、御説明がありましたので、重複するところですけれども、国際社会の動向の所に書いてありますが、農業分野においても、日本で昨年4月に新潟で農業大臣会合が開かれました。そのときも、主要な課題として取り上げて議論をしたという経緯もあります。

2ページ目を御覧ください。農林水産分野での対応ということで、2として、家畜への抗菌剤の使用と薬剤耐性菌ということで、畜産分野では、動物用医薬品あるいは飼料添加物として抗菌剤を使用しています。もちろん薬剤耐性菌の対策は家畜での抗菌剤の有効性の観点、また、畜産物等を介して人に伝播するという可能性が指摘されている中で、そういったことの懸念があるということから対策が求められているところです。我が国では、後ほど御説明があると思いますが、食品安全委員会が行う人の健康への影響に関する評価(リスク評価)を踏まえて、農林水産省が使用基準等のリスク管理措置を実施しているところです。

3ページ、特に畜産分野の動物用医薬品については、「慎重使用」というのを、これは英語で言うと、プルーデントユースということになりますが、これを徹底することを推進しております。慎重な使用という考え方というのは、もちろん法令で、例えば、獣医師の診察が義務付けられていると。要指示医薬品制度あるいは要診察医薬品制度といった法令で定められた規制を守るということは当然なのですが、更に注意深く抗菌剤を使うという考え方が慎重使用ということになります。

 農水省としては、慎重使用に関するガイドライン、ここに絵がありますが、これを通知して、普及啓発・指導を行っているところです。抗菌剤をどの対象動物に使えるか、使用量、使用する時期等について、基準を設けて、適正に使っていただくと。先ほどの食品安全委員会のリスク評価の結果、人の健康に影響を与えるようなものに関しては、規制を強化するといった対処をしております。

4ページ、この会議にも関係いたしますが、薬剤耐性菌の動物分野のモニタリング調査を、1999年から実施しております。動物医薬品検査所が実施しています。詳細は後ほど御説明があると思います。このデータを基に、これはリスク評価にも使いますし、農林水産省が行うリスク管理措置にも重要なデータとして使用することになります。

 先ほど御紹介がありましたが、人の分野と家畜の分野のモニタリング調査の連携が始められておりまして、我々のほうのJVARMというモニタリング調査と、人分野のJANISのデータの相互利用等を実施してきておりますし、更に強化していくという考えです。

5ページ、畜産分野における薬剤耐性の現状です。家畜では、テトラサイクリン系の使用量が多いという状況がありますが、これは、諸外国でも耐性率が高いという状況があります。それから、日本もその同様な状況ですけれども、人の医療で、極めて重要とされているような第3世代セファロスポリンあるいはフルオロキノロン、こういった抗菌剤に関しては、欧米諸国と同様に低く抑えられているといった状況で、耐性菌の状況は、欧米諸国と同様の状況ということが言えるかと思います。

6ページ、我が国の薬剤耐性対策アクションプランに基づいた畜産分野、農水省分野の取組です。下の所にありますけれども、今、御紹介したように薬剤耐性率は、国際的にも低い水準に保たれていると考えておりますが、先ほど御説明した抗菌剤の慎重使用を更に徹底、強化していく必要があると考えております。また、動向調査・監視、モニタリング調査ですが、人との、動物との連携、これを一層推進していく、あるいはこれまできちんとした組織的な調査が行われていない愛玩動物の調査にも取り組んでいこうと考えております。

 それから、養殖水産動物にも抗菌剤が使われますけれども、ここに獣医師等の専門家が関与する仕組みを導入していこうという取組を考えております。それから、アジア地域における国際協力にも取り組んでいくということがアクションプランで規定されております。

7ページ、こちらはアクションプランにおける動物分野の成果指標として、上半分の所ですが、大腸菌を指標として、テトラサイクリンの耐性率を下げていこうというようなこと。それと、第3世代セファロスポリン、フルオロキノロンといった人で重要な抗菌剤については、今、低く保たれていますが、更にG7各国が取組を強化する中で、日本としても、G7各国の数値と同水準に維持していこうという具体的な成果指標を設定しております。

 最後に8ページ、アクションプランを決定したところですけれども、さらに具体的な実行計画あるいは工程表を検討して、実効性のある取組・対策をしていきたいと。これは、やはり関係者の方々との意見交換を密にした上で取り組んでまいりたいと考えております。私からは、以上でございます。

○結核感染症課課長補佐 続いて、生活衛生・食品安全部より資料2-3について御説明いたします。

○生活衛生・食品安全部監視安全課課長補佐 生活衛生・食品安全部監視安全課の東良と申します。資料2-3に従って、食品分野の対策について御説明いたします。2ページからになります。この資料自体が全体像、現状と今後の課題も含めて説明しているものになります。食品分野でやっている対応としては、ここに書いてあるとおり、研究班での対応となっております。研究班は、渡邉座長の下で研究班を組んでおりまして、正にその内容、成果がこの資料で示しております。

 内容としては、成果にあるとおり、既存のヒトのJANISと、家畜のJVARMのデータの共有化、さらに食品、食肉を中心とした耐性菌の現状調査、サーベイランスですけれども、その食品のデータを先ほど説明した、JANISJVARMの集計プログラムに組み込んでいくという方向性で研究を行っていただいております。

 サーベイランスですが、研究を通じて食品が家畜からヒトへどのように伝播されて、どのような役割をしているのかということについての解明をしていくことを目標としております。また、今後の課題としているのは、この活動自体が研究班によるものでして、公的な、網羅的な体制が整っていないという現状があります。これを今後どのように組織的にやっていくのかということを検討していく必要があるかと考えております。これは、渡邉先生からの御提案でありますけれども、地方衛生研究所が候補となるのではないかという御提案も頂いております。

3ページ、ここで図に示しているのは、JANISサーバーと、JVARMの統合をイメージしたものです。今後、この中に食品のサーベイランスデータを取り込む方向で検討しております。4ページは、そのデータの共有化に従ってどのような示唆が得られているか、その一例です。セファロスポリン耐性率の推移を示したものです。2010年、2011年頃にブロイラーでセフチオフルの使用禁止がありまして、その影響によるものと考えられますけれども、ブロイラーの耐性率が大きく落ちた。しかしながらJANISのほうでは、耐性率は上がり続けているという状況が分かってきており、この乖離の原因は何であるのか。例えば、食鳥処理場での交差汚染等が考えられることがありますので、そういった乖離の部分について、今後、科学的な検討を進めていく必要があるかと考えております。

5ページは、市販鶏肉、国内産の鶏肉と海外から輸入されている鶏肉のESBL/AmpC産生株の分離頻度について比較したものとなります。市販鶏肉から国内、海外問わず、ESBL産生株、AmpC産生株が高い割合で分離されています。ESBL産生株は国内から、AmpC産生株については、海外産から高率に分離されたという傾向が確かめられております。いずれにしても、国内だけではなくて、輸入品についても耐性菌が高い割合で検出されていることがあります。サーベイランスを行うに当たっては、国内だけではなくて、海外、輸入品、輸入食品も視野に入れておく必要があろうかと思います。

 最後のスライドです。重ねての説明となりますが、家畜とヒトの医療現場の間の畜産食品の役割について、今後、更にサーベイランスとか、科学的な解明が必要となることを考えております。そのデータを国際機関へ提供、食品についても国際協調に従った対応を行っていくことを考えております。

 また、スライドにはありませんが、食品衛生、食品安全の対策として、畜産物、食肉等の衛生対策とか、例えば生食を禁止するといったような対応を通じて、その食品の微生物の汚染低減、汚染対策というものが、これは通常の対策として行っておりますので、この方面でもしっかりとした体制・対策を取って、間接的ではありますが、薬剤耐性菌の低減に向けた対応を、今後も行っていくことを考えております。以上です。

○結核感染症課課長補佐 最後に、資料2-4について、内閣府食品安全委員会事務局より御説明いたします。

○内閣府食品安全委員会評価第二課課長補佐 内閣府食品安全委員会事務局評価第二課の大倉と申します。私からは「薬剤耐性菌の食品健康影響評価について」ということで簡単に御紹介させていただきます。

2ページ目です。食品の安全を確保する仕組みとして、食品に関しては、リスク分析という考え方がコーデックス等で導入されておりますので、日本もこれに基づいた取組がされています。動物に使用する抗菌性物質に関しては、使用基準等を設定する農林水産省がリスク管理機関です。食品に関しては、今、厚生労働省から御説明がありましたが、リスク管理機関ということで、食品安全委員会は、これらのリスク管理機関から独立して、科学的な、中立公正な評価を行う機関として、内閣府に設置されている機関です。食品安全委員会は、農林水産省から評価要請を受けて食品健康影響評価をしています。

3ページ、先ほど、農水省の御説明にもありましたが、家畜に使用される抗菌性物質は2種類あります。動物用医薬品と飼料添加物です。それぞれについて農林水産省から、左側ですが、飼料添加物として使用されている抗菌性物質について、また、それと同系統の動物用医薬品についての薬剤耐性菌の評価を依頼された26成分です。それから、右側ですが動物用抗菌性物質製剤の承認又は再審査に際して、評価要請をされるものがあります。これらに関しては、フルオロキノロン系とか、セファロスポリン系のものをこれまで評価しております。家畜等にこれらの抗菌性物質を使用した場合に家畜において選択される薬剤耐性菌が、食品を介してヒトの健康に影響を与える可能性を食品安全委員会で評価しております。

4ページ、食品安全委員会の評価体制について記載しております。食品安全委員会では、平成16930日食品安全委員会決定「家畜等への抗菌性物質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響に関する評価指針」を策定しております。薬剤耐性菌に関する食品健康評価について、ここに記載しておりますが、薬剤耐性菌に関するワーキンググループを食品安全委員会に設置しておりまして、ここに記載している外部の専門委員の先生方に御審議いただいております。

5ページは、評価指針の考え方です。左側ですが、抗菌剤Aを家畜に投与すると、家畜の腸管内の感受性菌と耐性菌がいる中で抗菌剤が使用されますと、家畜の腸管内で耐性菌が選択される可能性がございます。これが畜産食品を汚染して、耐性菌をヒトが摂取した場合に、ヒトが感染症を起こす可能性がございます。そういったときに抗菌剤の効果が減衰、又は喪失して治療に影響する可能性。これが食品安全委員会で実施している食品健康影響評価の考え方です。

6ページ、具体的にどういった手順でやっているかということを御説明いたします。まず、最初にハザードの特定ということで、ヒトに対して危害因子となる薬剤耐性菌を特定します。その後、リスク評価というプロセスで「発生評価」「ばく露評価」「影響評価」の3つの項目について評価をしております。まず、発生評価に関しては、家畜において選択される薬剤耐性菌の出現の頻度、あとは、使用方法等を評価しております。

 暴露評価に関しては、抗菌性物質を投与された家畜が農場を出てから、ヒトの口に入るまでのプロセスの中で、特定されたハザードの生物学的特性や、食品における細菌の汚染状況等を評価しております。

 影響評価においては、こちらはヒトにおける抗菌性物質の重要性、どういった治療法に使用されるのかといったこと等を評価して、これを、最後、リスクの推定というところで総合的に評価しております。

7ページ、ヒトへの影響をどのように考えるかということですが、こちらは食品安全委員会で「食品を介してヒトの健康に影響を及ぼす細菌に対する抗菌性物質の重度のランク付け」として、ヒトの医療上重要な抗菌剤というものを、主に3種類に分類して、これを評価の中で組み込んで使用しております。極めて重要というのは、先ほど農水省からもありましたが、フルオロキノロン系や、セファロスポリン系、こちらはヒトの医療において、唯一の治療薬であるとか、代替薬はほとんどないもの、こういったものは、評価の中ではとても重要という評価をしております。

 反対に、一番下の重要というものですが、これは古いタイプのスルホンアミドとか、第一世代のセフェム系です。こういったものは代替薬は十分にあるということ、重要度は低いというように評価に利用しているものです。

8ページは、これまで食品安全委員会で評価を終了した事例を、簡単にまとめたものです。これまで食品安全委員会で、約20本超の評価をしております。ここに「中等度」「低度」「無視できる程度」とありますが、フルオロキノロン系とかセファロスポリン系といったものは、評価が高いといった評価結果です。その他、「無視できる程度」となっているのは、ポリエーテル系といった、いわゆる原虫薬、原虫に対して抗菌薬、抗菌活性があるものということで、こちらはヒトでは使用されていないということで、「無視できる程度」ということで答申をしております。

11ページ、最後のスライドです。これまでの評価を踏まえた課題等ということで、簡単に項目ごとに整理しております。ヒトと家畜の関連性の評価というところになると、薬剤耐性遺伝子のデータベースとか、ヒトと家畜のデータをつなぐといったところで、今以上のデータの充実等の必要があるとより精緻な評価ができるのではないかと考えております。この他、使用量の把握とか、これからワンヘルス・サーベイランスが進められていくということでデータが集まると、我々もより精緻な評価を進められるというところで、ワンヘルス動向調査を今後も期待しているところです。以上でございます。

○結核感染症課課長補佐 事務局からは以上になります。

○渡邉座長 厚労省と農水省と食品安全委員会から、現在行われている対策等に関しての御報告がありましたが、御質問等がありましたらお願いいたします。

○境構成員 日本獣医師会の境でございます。農林水産省のほうに御質問させていただきます。説明資料8ページの一番最後のところで、1年以内をめどに、実行計画と工程表を作成すると書いてありますが、これの進捗状況と、それから、国民へ、私どもへの普及ということがどういう計画になっているか、御教示いただきたいと思います。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 ありがとうございます。現在というか、昨年来ですが、関係の生産者の方々、あるいは獣医師の方々、業界の方々と意見交換を密に行っております。そういった中で、どこの部分に課題があるのかないのかというところを抽出して、それについて、実効性のある対策を取っていく必要があると考えております。年度内を目途に、具体的に畜種別、あるいは分野別といったところで、アクションプランよりも、より具体的な、これは、そこで課題が全て出て、対策が全て出るということではないのですが、より具体的な実行計画と工程表をお示しして、積極的に取り組んでいくということを考えております。そのような状況です。

○渡邉座長 ほかに御質問はありますでしょうか。現在は、薬剤耐性菌のことがメインだと思いますが、この間、WHOのほうのGLASS会議において、今後、真菌等に問題点もあるだろうという討議がされたという報告が出てきております。また、サイエンスに、特に真菌の耐性、アゾール系の耐性というものがやはり問題となってきて、真菌等と殺虫剤とのクロス耐性があるということで、問題視するような傾向にあると思います。日本は、今回のアクションプランの中では、「薬剤耐性菌」のほうがメインだと思いますが、恐らく世界の流れとしては、真菌とかそういうものについても、段々、関心が高くなっているのだと思います。1つは、そういう方向性についてどのように事務局として考えるかということ。

 食品安全委員会のほうに聞きたいのですが、そういうものに対しての評価、農薬系統が真菌等に耐性を及ぼすということに対しての評価を、今後、考えられているのかどうか、その辺、お伺いしたいと思います。

○結核感染症課課長補佐 まず、真菌への議論が行われるかどうかですが、これは正にアクションプランのところでは、抗菌薬なのは特に抗微生物薬、抗微生物剤という言葉が書き分けられて書かれていますので、そこは、もちろん真菌についても議論の範疇に入ってくるだろうと思っています。ただ一方で、日本の調査、そして研究の部分で言いますと、まだまだ進んでいないところもありますので、まず、どのようなところが研究ベースになってくるかが恐らく必要になってくるかについても審議をいただければと思っています。

○内閣府食品安全委員会評価第二課課長補佐 食品安全委員会です。真菌等についての評価ですが、薬剤耐性菌に関する食品健康影響評価指針を作ったときは家畜を主に、今おっしゃった細菌を対象としてスタートしたところです。当時も真菌の議論がなかったわけではありませんが、ただ、データがないということが一番のところで、食品安全委員会は、そのデータに基づき評価しているところですので、正に今回のワンヘルス・サーベイランスやアクションプランで、今後リスク管理機関や各所でサーベイランスが進められているところでありますので、我々も、そのデータを見ながら要請があれば評価するというところです。

○渡邉座長 ありがとうございます。ほかに、御意見ございますか。よろしいでしょうか。では、御意見がありましたらまた後ほど出していただければと思います。

 対策を進めていく上で、一番重要なのはやはりデータで、実際のデータとして今の真菌の問題も出ましたが、データがないという話になると、評価がなかなかできないことになりますので、そのような意味では第2番の議題の「薬剤耐性の動向調査」ということは非常に重要なポイントになると思います。で、これからの時間は現在日本で行われている動向調査に関係する先生方がこの場に来られていますので、その動向調査はどのようなものであり、現状は、どのようであるかを踏まえながら説明していただきたいと思います。

 まず、事務局から全体を話していただき、それから各委員に、お願いしたいと思います。資料が結構あり、全部で78題あり、時間の関係もありますので、各先生と各発生動向調査をしている先生方は5分ぐらいを目安に話していただければと思います。

 まず、事務局からお願いいたします。

○結核感染症課課長補佐 事務局から掻い摘んで資料37を説明いたします。

 資料3「薬剤耐性対策アクションプラン」、日本のアクションプランの概要ですが、こちらについては先ほどグローバル・アクション・プランを説明しましたが、そこに加えて6つ目の国際協力という、6つの柱で対策を行っていくことになっています。1つ目が「普及啓発・教育」です。これについては、国民への啓発とともに、専門職への啓発を行っていくことが書かれています。2つ目の「動向調査・監視」ですが、こちらについては医療・介護分野というもの、さらに医療機関、そして畜水産・獣医療における動向調査ということ。さらに、検査手法の標準化と検査機能の強化というもの。さらには、統合的なワンヘルス動向調査の実施がアクションプランに書かれています。

 続いて、3つ目の「感染予防・管理」です。こちらについては医療、介護における感染予防とともに、畜水産、獣医療、食品加工、流通過程における感染予防・管理。さらに、薬剤耐性感染症の集団発生への対応強化が書かれています。4つ目の「抗微生物薬の適正使用」です。こちらについては医療機関における抗微生物薬の適正使用とともに、畜水産、獣医療等における動物用抗菌性物質の慎重な使用の徹底が書かれています。

5つ目の「研究開発の創薬」は、1番目に、薬剤耐性の発生・伝播機序及び社会経済における影響を明らかにする研究。2番目に、普及啓発・教育、感染予防・管理、抗微生物薬の適正使用に関する研究を行っていくこと。さらに、感染症に対する既存の予防・診断・治療法の適正化に資する臨床研究の推進。そして、新たな予防・診断・治療法等の開発に資する研究並びに産学官連携の推進。最後に、感染症に対する既存の予防・診断・治療法の最適化に資する臨床研究の推進が書かれています。6つ目の「国際協力」は2つ書かれており、薬剤耐性に関する国際的な政策に係る日本の主導力の発揮、さらに、グローバル・アクション・プラン達成のための国際協力の展開が書かれています。

 これらのアクションプランに基づき、成果目標も書かれています。成果目標に関しては、人の抗微性物剤の使用量とともに、薬剤耐性率について医療分野と畜産分野の目標が、それぞれ掲げられている状況です。また、これらの目標については、それぞれ目標の根拠に基づき設定されており、例えば2020年の肺炎球菌のペニシリン耐性率を15%以下に低下させるという目標に関しては、これまで年率2%程度減少してきたものを、さらに抗微生物薬の適正使用の推進により、年率56%に加速させることで達成することが書かれています。

 続いて、資料4です。特にヒトの分野に関してはAMRの関係は、厚生労働省内で、3つの会議を開催しています。1つが今回開催している薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会で、こちらについては健康局長の検討会の形で開催しています。そのほかに、厚生科学審議会の下に薬剤耐性に関する小委員会を設置し、さらにその下に、抗微生物薬適正使用等に関する作業部会も設置し、特に作業部会では、ただいま抗微生物薬の適正使用に関する手引を議論いただいている状況になっています。

 続いて、資料5を御覧ください。今回特に、ワンヘルスの動向調査を検討していくということですので、国内で行われている主なサーベイランスの概要についてまとめています。詳細については、本委員会に参加している委員の先生方が行っているサーベイランスがありますので、後ほど御紹介いたします。

 続いて、資料6です。これまでAMRに関しては、先ほども申したように幾つかの審議会で議論いただいており、その中でもワンヘルスについてのサーベイランスに関して意見を頂いていますので、御紹介いたします。1つ目にワンヘルスについてです。サーベイランスは医療・介護・農林水産等の分野で連携を行うべきという意見、さらに、環境における薬剤耐性等についてのサーベイランスは、きちんとしたものがなく、そこの議論もしていただきたいという意見を頂いています。また、サーベイランスの対象となるデータ、評価方法については、抗菌薬の処方量・使用量、耐性菌の割合など、何をサーベイランスし、どう評価するかを議論するかが大切であるという意見、また、抗菌薬の使用量を評価することが大切という意見、さらに評価方法は、抗菌薬適正使用の手引きが出たあとで統一すべきという意見も頂いています。

 還元方法については、医療関係者が、自分の医療機関のデータと日本全体のデータを比較できるようになれば、AMRの現状は改善されていくという意見も頂いています。さらに、患者の健康について、抗菌薬の使用量を減らすことも大事だが、最終的に患者の健康につながることが大事という意見、抗菌薬の使用量を減らすことで有害事象が増える可能性がある、市中肺炎や髄膜炎の増減を見ていくことが重要だと思うという意見を頂いています。

 最後に資料7です。今回、薬剤耐性ワンヘルス動向調査を行っていくことに当たり、事務局でイメージの形で叩き台を示しています。この薬剤耐性ワンヘルス動向調査のイメージとしては、ヒト・動物・環境に関する各サーベイランスのデータに基づいた都道府県別の抗菌薬使用量や耐性率の公表や耐性菌の拡散の早期発見。さらに耐性遺伝子の水平伝播の存在の把握などを目的とし、統合的な分析、評価の実施を行っていくものと考えています。

 続きまして、資料8以降は委員の先生方から御紹介いただければと思います。資料8は、松井構成員からお願いします。事務局からは以上です。

○松井構成員 国立感染症研究所感染症疫学センターより、「感染症発生動向調査における薬剤耐性菌の取扱い」について説明いたします。2ページ目です。感染症発生動向調査と申しますのは、御承知のとおり、法に基づく調査として実施しています。19994月以降は「感染症法」に基づき、実施されています。3ページです。実施体制としては、報告元は医療機関、そこから保健所、都道府県、厚生労働省、国立感染症研究所と情報が上がっていき、また、還元情報が随時作成される形になっています。

4ページです。感染症法上の報告対象の薬剤耐性菌をスライドにまとめています。全数報告疾患は4疾患あります。そちらに示しているとおり、バンコマイシン耐性腸球菌感染症等4種類。開始時期は括弧内に示すとおりです。定点報告として、基幹定点医療機関、おおむね300床以上の病院が全国500か所ありますが、そちらから御報告を頂いているのが、こちらのスライドに示す3種類の感染症となっています。5ページは、届出基準を示しています。感染症法上は、基本的には無菌検体からの検出、若しくは感染症の起因菌である事例のみを報告いただくことになっています。保菌は報告対象ではありません。各届出疾患における届出の基準は、このスライドにまとめてあるとおりです。

 次のスライドには、結果の解析・還元について示しています。毎週IDWRを通じて週報の形で還元し、また基幹定点の疾患については月報の形で還元しています。またIASRにおいて、適宜まとめを作成し、還元している状況です。以上です。

○結核感染症課課長補佐 続きまして、資料9を柴山委員よりお願いします。

○柴山構成員 国立感染研細菌第二部の柴山です。私からは、「人における薬剤耐性サーベイランス」を御紹介します。私たちは、厚生労働省院内感染対策サーベイランスJANISを担当しています。このJANISは、厚労省の事業であり、私たち国立感染研が事務局としてデータの集計、解析、レポートの公開といった作業を担当しています。下にあるように、運営会議を設けており、各分野の先生方に入っていただき、専門的な助言をいただき、ここで運営方針が決定されることになります。

3ページ目を御覧ください。JANIS5部門あり、このうちの上段の検査部門が薬剤耐性に関するサーベイランスです。本日は、この上段の検査部門を説明し、ほかの部分については本日は省略いたします。4ページ目の参加医療機関の数は、トータルで現在1,800ぐらいの病院が参加いただいています。このうち、薬剤耐性のサーベイランスである検査部門には1,600ぐらいの病院が参加いただいている状況です。

5ページ目のデータ収集の方法です。参加いただいている病院のデータですが、参加いただいている病院の検査室からデータを送っていただいています。各病院には、病院の検査室の細菌検査を、写真にあるような、ほとんどの場合自動検査機器で検査をしていると思います。ここで自動検査機器ですので、例えば、この病院で、どのような菌種が検出され、あるいは薬剤感受性がどのようなパターンだったか、そのようなデータが全て電子データで入っているわけです。この電子データを我々に送っていただき、我々で集計することをしています。6ページ目の表は、1年にどれぐらいの数のデータが私たちに提出されているかを示したものです。これは2014年です。一番右下の数字を見ると、このようにトータルで400万近い数の菌株の数のデータが我々に集まってきます。これを私たちで集計し、解析しています。

7ページでは、どのようなレポートを作っているかを説明いたします。これは、大腸菌の例です。この表の左端に書いてある文字が薬剤の名前です。表の中の色分けしてある水色の所は、薬剤の感受性、感性(S)で、赤が耐性(R)、黄色い部分が中間(I)です。ですので、例えば下段のLVFXと書いてあるレボフロキサシンですと、日本のJANISに参加医療機関の中で分離される大腸菌の36.1%はレボフロキサシンに耐性ということを示しています。ただ、このデータはJANISに参加いただいている病院のデータであり、比較的JANISの参加医療機関は大規模200床以上の病院が多いです。また、このデータは入院患者さんだけのデータなので、そういった形のバイアスがあるので、これはいろいろな臨床の先生方からもよく批判を受けるところですが、この集計方法については今後、検討、改善していかなければいけない点だと考えています。

 次は8ページ目です。先ほどは大腸菌の例を示しましたが、ここに示したような臨床的に重要だと思われる、こういった菌種についても同じように薬剤感受性についての集計、耐性に関する集計を行い公開しています。9ページ目は、年次推移をまとめました。幾つかの菌種、特にアクションプランに目標値が書かれている菌種の薬剤耐性についてまとめました。例えば左上ですと、黄色ブドウ球菌、全ての黄色ブドウ球菌の中に占めるMRSAの割合ですと、大体5割~6割ぐらいと。最近若干減少傾向にあります。右下に目標値を書きましたが、これはアクションプランに記載されている目標値です。これを見ますと、更なる薬剤耐性を減らすための努力が必要であることが分かるかと思います。もう1つ、先ほど私が集計方法も申し上げたように、JANISは限られた病院の中の母集団での集計値ですので、この辺も本当に実態を日本ナショナルデータとして、どのような集計がいいかを議論しながら目標値に近づけていくことが大事だと思います。

 最後の10ページは、私たちは、このようなJANISの集計プログラムを持っていますので、アクションプランの最後に「国際協力」が掲げられています。その活動の一貫として、このプログラムを外国にも開放しようと。例えば、アジアの途上国の幾つかの病院から我々JANISにデータを送ってもらえれば、同じような形で集計をし、このようなレポートを作って薬剤耐性に関するナショナルデータを作る取組を現在進めています。今、幾つかの国と協議を進めている段階です。私からは以上です。

○結核感染症課課長補佐 続きまして、資料10について藤本委員よりお願いします。

○藤本構成員 東海大学の藤本です。現在開発中のRICSSについてお話しします。大変恐縮ですが、最後の3ページ目を御覧ください。このサーベイで集める情報について左側の絵に描いてある「感染対策の実施状況と、そのアウトカムに関する情報を集めると」とあります。今まであった2つのサーベイが、主に耐性菌の発生動向についての調査であるのに対し、これは感染対策の強化を支援するためのシステムです。しかし、ここで集めている情報は、感染対策の実施状況と、そのアウトカムの部分があります。ここには、耐性菌の分離状況や抗菌薬の使用状況、そういったものも含まれますので、全体のサーベイをまとめるような形でのシステムとして考えています。

2ページでは、右上に「RICSS開発の経緯」が書かれています。平成25年から、診療報酬加算に基づく地域連携をするときに必要なデータ収集、集計、還元の作業の負担を軽減するシステムの研究・開発で、RICSSの開発を行ってきました。最終的には診療報酬加算に基づく連携にとどまらず、全国レベルまで自由なグループを作り、そのグループでの感染対策の連携を支援するシステムとして考えています。

 このあと話があるJACSとも連携していきます。AMRアクションプランのプロジェクトの1つになっており、今年度、現在開発中です。そのスケジュールについては下にありますが、今年の331日までに、きちんとしたシステムとし、6番目として、来年度、JACS抗菌薬使用動向システムを包含し、事業化する予定です。

 非常に自由なグループ機能があります。左側の図は全国をまとめた1台のサーバーで処理することが左上に示しています。下の図には、1-2連携、加算に基づく連携にとどまらず、全国を股にかけ、例えば重身のグループとか、そのようなグループを作ることが可能で、この多彩なグループ機能を生かし、耐性菌の分離率、あるいは抗菌薬の使用率や感染対策がきちんとできているかの情報を分かりやすく返すAMR対策のデータベースのdashboardとして機能するように考えています。

1枚目に戻り、もう一度、全体の中での位置付けを申し上げます。左の、そもそもなぜ耐性菌時代なのかといった話は、皆さんよく御存じですのでよろしいと思いますが、こういった中で、我々は何をしていけばいいのか。高度先進医療をやめるわけにはいかないので、その中では菌の院内拡散の制御と、抗菌薬による選択圧の制御が必要になると。それぞれに対しては左のプレートですが、早期発見する、感染対策を徹底する、抗菌薬の適正使用を促すといった感染症診療の適正化も含めて行われています。

 これに対して、国としての国レベルのサーベイが幾つか行われており、サーベイランス動向調査としては、感染源、感染経路、感染症、抗菌薬の適正使用、感染症診療、感染対策実施状況の監視が必要です。これまで国レベルでの支援システムとしては、感染源、あるいは感染症、抗菌薬の適正使用についてはありましたが、感染経路、感染症診療、感染対策実施状況の監視といったものに対する国レベルでのサポートがなかった。そこに対してRICSSは、これをサポートするシステムとして開発しています。さらに、現存するJANISJACSのデータベースと連携することにより、効率よくAMR対策が進められるように考えています。

 最後のページでは、還元情報として、非常にグラフィカルなものをなるべく用意するように考えていますが、本年度は最初の年度ですので、ベーシックなものにし、これを事業化の中で、より発展していこうと考えています。

 それから耐性菌の分離率についてはJANISのデータが利用できるので問題ないのですが、抗菌薬の使用量については非常に集計が大変ですので、電子レセプト、DPCのデータファイルから、それぞれの施設で使用量を自動的に抜き出し、RICSSに流し込める仕組みをJACSの研究として進めていただいており、事業化ではこれを統合していくことを考えています。以上です。

○結核感染症課課長補佐 続きまして、資料11について村木委員より説明をお願いします。

○村木委員 三重大学の村木です。どうぞよろしくお願いします。JACS、日本の抗菌薬使用量をサーベイランスする取組をこれまで厚労科研の中で行ってまいりました。左上に書いてありますが、耐性菌問題の中で耐性菌の発生の分離頻度が増えないことを1つの成果ではアクションプランの中でも掲げられている感染対策や診療が抗菌薬の適正使用というのがうまく行われているものに成り立っているということで、実際に院内の、入院した特に重症の患者に使用するのが主に注射薬ですので、青枠の矢印の右側の青枠で囲った部分の上から説明します。

 まず、入院した感染症の患者に使用された抗菌薬を実際に使用されたレセ情報等を利用して、抗菌薬の使用状況を明らかにする取組を行ってまいりました。今現在、オンラインでの報告システムと報告するホームページが立ち上がっておりまして、参加登録施設はその施設の簡単な情報や抗菌薬の使用量を力価、グラムで成分ごとに入力していただく、若しくは投与された、使用された日数で入力していただく仕組みです。そうすると紫色の吹き出しで書いてあるWHOが提唱する使用量の力価を用いた抗菌薬の指標となるAUDという値、若しくはCDCが提唱する使われた日数を評価するDOTという値が入力したところから自動で計算されて、各登録施設がそれをダウンロードできる。またホームページ上ではグラフ等で確認でき、日頃の感染対策の資料等に利用していただく形で今現在運用されております。

 実際、AUDに関しては、使用量という概念があり、DOTは日数ですので、それらの比を求めることで1日当たりの使用量を評価すると。従来、我が国では添付文書上の記載等やPKPD、薬物動体や薬力学を意識した投与法がなされていなくて、1日の投与量が少ないといった状況でしたが、そういうのを経年的に把握する仕組みを作ることで、1日用量の適正化が進んでいるというような評価が行えるような環境になっております。

 先ほど藤本先生のお話にもありましたが、実際、これらのデータを、今、個別の施設では簡便に利用できる状況ですが、資料6の還元方法にもありましたが、各自施設の医療機関と他施設、日本全体のデータを比較できるような仕組みが必要ですので、RICSSと連携して感染対策の指標やグルーピングしたときの抗菌薬の使用状況の把握をできるような取組を進めております。

 また次の赤枠で示した耐性化が進まないという面では、日本全体の抗菌薬の選択圧がうまく制御されているという観点で、対象は入院や外来全てにおける抗菌薬を対象にすべきであろうということで、今現在は販売量を入手することで、今回EU諸国と比較の基となったデータやそのほか、この真ん中の図はほかの人や動物や飼料に使われた抗菌薬の付け合わせのデータですが、そうした様々なもののデータの作成を行ってまいりました。

 また一方、最近ナショナルデータベースのオープンデータも公表されるなど、そのナショナルデータベースの利用も現在進んでおりますので、資料7に都道府県別の抗菌薬使用量とありますが、ナショナルデータベースで出せるオープンデータでも抗菌薬に適した集計情報のフォーマットを検討し、それを自動で算出できるような仕組みを検討しております。また実際、NDBで集めた全体の使用状況だけでは個々の施設の使用状況も利用できないと、資料63の還元方法にもありますが、いけないというところで各医療機関のレセデータから自動で計算してRICSSに流すという方法論も現在検討中です。以上になります。

○結核感染症課課長補佐 続いて資料12については事務局より御説明いたします。JHAISについて、これは学会が行っているサーベイランスです。JHAISについては手術部位感染症及び中心ライン等の3種類の医療機具に関連した感染症の発生状況に関する情報を提供して、感染対策の推進を支援することを目的として行われているサーベイランスです。このサーベイランスでは、このような手術部位感染症の患者について、発生日、特定部位、そして培養検体の種類等について情報を集め、さらに発症患者数や延べ入院患者日数などについて収集をしております。この対象施設としては原則としては19床以下を除く医療機関の形で、現在の参加施設としては114と伺っております。資料12については以上です。

 続いて、資料13を遠藤構成員よりよろしくお願いいたします。

○遠藤構成員 それでは資料13です。私は農林水産省動物医薬品検査所の遠藤と申します。動物由来薬剤耐性菌モニタリングJVARMを行っております。1ページ、概要です。絵にあるようにJVARMというのは3つの調査から成っており、食用動物における抗菌剤販売量、それは絵にあるように動物用医薬品の製造販売業者からのデータに基づきます。そして指標菌、食品媒介性病原細菌、それから動物病原細菌の薬剤耐性調査を行っております。下の対象項目で御説明いたします。まず、健康家畜と病患畜由来の細菌の各種薬剤に対する耐性の程度と割合。それから動物用抗菌剤の使用量ということです。図に戻り抗菌剤の使用量の調査と野外流行株の薬剤耐性調査、これは病患畜です。健康家畜からは食品媒介性の病原菌と指標菌の薬剤耐性調査を行っております。

 対象施設は家畜農場ということで、健康家畜のサンプリングはと畜場と食鳥処理場で行っております。病患畜のサンプリングは農場ということで、都道府県の家畜保健衛生所で実施しております。参加施設ですが、都道府県の家畜保健衛生所・と畜場です。さらに下の*欄ですが、今後アクションプランに基づいて水産動物と伴侶動物の調査を追加の予定です。

 次のページ、これが健康家畜の薬剤耐性菌のモニタリングの体制です。平成28年度においては、と畜場におけるモニタリングです。下からいくと、と畜場と食鳥処理場でもって豚と鶏から採材して、それを受託検査機関において菌分離と同定、それから薬剤感受性試験を行います。試験方法は微量液体希釈法ですが、その菌株とデータを動物医薬品検査所に送り、そして動物医薬品検査所はこの方法に関する精度の管理を行っております。そして一番上、農林水産省消費・安全局は受託検査機関に対する事業の委託を行い、動物医薬品検査所は消費・安全局に報告をして、必要に応じて行政措置を行いますが、このデータは食品安全委員会に送られ、食品安全委員会におけるリスク評価のための基礎資料として提出しております。また評価を頂いた結果に基づいて、さらに行政措置が必要な場合は実施することになります。そして動物医薬品検査所においては、菌株の保存と分子疫学等の調査を行い、結果はホームページに毎年公表しております。

 次に3ページ、先ほどの健康家畜に対して、病患畜のモニタリングの体制です。これは平成28年度も従来どおり農場におけるモニタリングを実施しております。下から流れてきますが、農場で牛と豚と鶏から菌分離・同定して、これは都道府県の家畜保健衛生所が実施しています。その菌株とデータを動物医薬品検査所に送りますが、この精度管理については、動物医薬品検査所において、毎年、都道府県の方向けの研修会を行い、しっかりと同じ手法で精度よく、分離、同定、薬剤感受性試験ができるように研修会を実施しております。

 そして報告ですが、これも農林水産省の消費・安全局においてその時点で必要があれば、行政措置をするのですが、さらにリスク評価に基づくリスク管理をするために、食品安全委員会においてこのリスク評価を行っていただくための基礎資料として提出し、そのリスク評価を受けて、必要に応じて行政措置を行い、リスク管理を行うことになります。動物医薬品検査所においては、いろいろな調査を行い、その結果をこれもホームページにおいて公表しております。

 さらに次のページ、これはナショナル・アクション・プランにもありました指標となる我が国の家畜由来大腸菌の薬剤耐性率の推移です。これは2001年からのデータを示しており、このような推移が見られております。テトラサイクリンについては緩やかな減少傾向、そして第3世代セファロスポリンとフルオロキノロンについては余り上がっていない状況があります。

 次のページは販売量の調査で、動物に対して使用される動物用医薬品と飼料添加物の販売量です。これは純末換算になっており、これも2001年から2014年の推移では、総量が減っている傾向で、これも適正使用を推進しており、その結果として徐々に動物医薬品は減ってきております。また飼料添加物も先ほどの推移でも説明いたしましたように、食品安全委員会でも評価の中でありましたポリエーテル系という、余り人間に対する影響がないというような評価を得ているものが割合としては増えてきています。このような形で調査を行い、またそれに基づき適切にリスク管理をしていくという体制ができております。以上です。

○結核感染症課課長補佐 続いて、資料14について黒田委員からお願いします。

○黒田構成員 国立感染研究所の病原体ゲノム解析研究センターの黒田と申します。よろしくお願いいたします。資料14、我々ゲノムセンターではGenEpid-Jというデータベースを立ち上げて、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて、ゲノム情報とエピディミオロジー、疫学情報ですが、これをまとめた形のデータベースを3年間かけて構築しております。主に薬剤耐性菌、特にカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌を対象にしております。私はたまたま代表をしておりますが、メンバーは細菌第二部鈴木室長、農研機構動物衛生研究所の秋庭先生、そして動物医薬品検査所の川西先生とワンヘルスのチームで耐性菌のゲノム情報を解読する形式でデータベースに集約しております。このデータベースの特徴は、主にプラスミドを中心にして一つ一つ丁寧にデータベース化したということです。

 例えば資料2-1、薬剤耐性の仕組みでは、薬剤耐性遺伝子の獲得の主にカルバペネムに関してはプラスミドが伝達することが一番の問題として挙げられます。その伝達があるとき、大腸菌、クレブシエラ、緑膿菌、アシネトバクターへと多様な菌種へ伝達し、薬剤耐性因子の追跡が大変という事実がありました。それは2011年のある西日本の大きな病院において、100人以上のCPECREの感染症を経験した際に、プラスミド解析にて院内感染の実態を理解することができたという経験からです。

 その経験を基に3年間で、次のページですが、約2,000株、患者では1,467、家畜で357、環境で133とゲノム情報を解読し、現在は2,000を越えていまして、約7,000プラスミドのドラフト情報を個別に得ております。これは日本だけのデータとお考えください。世界と比較すると、世界は今9,000ぐらいですので、ほぼ同等近くまで配列情報として我々は取得することができています。配列情報を取得することによって、その患者から分離された株がある小さな地域で起こった散発的なものだったのか、輸入症例だったのか、広域に拡散しているものだったのかという判定がより正確にできると考えています。そういった目的で今このデータベースを構築中です。

AMED研究費にて構築したデータベースですから、現在、一部を情報公開しております。次のスライドで、関東近郊の都道府県だけ少し解読数を表示していますが、例えば東京では141株から301プラスミド、合計442の配列を取得しています。こういう形で3年間蓄積してきたということです。

 サルモネラも地方衛生研究所・動衛研の先生に御協力いただきまして、現在948のゲノム情報を取得しております。なぜサルモネラに着目したかと申しますと、次の最後のスライドです。米国FDAでは家畜及び食品から分離されるSalmonellaCampylobactorListeria、大腸菌といった株の情報をゲノムとしてアーカイブしている状況です。それがGenomeTrakrという名の下で、アメリカだけでなく、メキシコ、アルゼンチン等他国と共同研究をもって数万株を集めています。これら情報はいろいろな諸事情があり今直ぐ共有することは難しいですが、最終的には世界中でのサルモネラがどういう形でつながっていくのかを配列指紋として検討できるような基盤になればと今期待しております。以上になります。

○結核感染症課課長補佐 最後に資料15について事務局より御説明いたします。今回の検討会で1つ検討をお願いしたいことがございます。薬剤耐性についてのワンヘルス動向調査年次報告書の目次のイメージです。この動向調査に関しては、報告書を作っていただきたいと考えております。その目次のイメージになります。内容としては前文、要旨があります。さらに内容に入ると、サーベイランスの概要、日本におけるAMRの現状ということで、ヒト、畜水産、そして施策の現状というもの。さらに今後の課題です。これは各サーベイランスのlimitationなども含めていただき、記載をいただき、最後に引用文献を含めた内容にしていくというものをイメージとして考えております。この目次のイメージについてもいろいろと御意見を頂ければと考えております。事務局からは以上でございます。

○渡邉座長 非常に膨大な資料になるのではないかと思います。今いろいろな方々がいろいろな立場でサーベイランスを行ってきたわけです。今後、国としてそのサーベイランス動向調査の結果をどのように利用していくかが一番大きなポイントかと思います。利用するというのはそれが対策にどのように結び付くかになると思うのです。必ずしも総合的な対策にということで、今までサーベイランスを系統的に行ってきたわけではなくて、たまたまいろいろな人たちがプロポーズして、そして研究費を取って行ってきたということで今まで流れてきているところが大きいのではないかと思います。

 それをどのような形でまとめていくかはなかなか難しい問題をはらんでいるのだと思うのですが、今日はそこを議論していても時間が足りませんので、まずは現在こういう形で行われている動向調査を皆さんが全部理解したかどうかというと、私は全部理解していないところもあります。まずはその辺、分からない点を御質問いただいて、これはどういう点なのか、自分がやっていることは多分分かっていると思うのですが、初めて聞く方々も多分いると思うので、お互いのシステムの整理をしてみたいと思います。

 私から口火を切りますが、RICSS、これは実際に集めてくるデータは、ここに書いてあるのは感染防止対策加算ということなのですが、これは具体的にはどういうデータが集まってきて、それでどのようにこういうものを今構築しているのかをもう少し詳しく説明していただけますか。この中で聞いたことがある人は多分それほどいないのではないかと思うのです。

○藤本構成員 私の資料103ページ目です。実際に集めてくるデータは、もう一度繰り返しになり申し訳ないですが、感染対策の実施状況とそのアウトカムに関する情報ということで、例えばICT活動きちんと行っているか、手指衛生はきちんと行っていますよ、抗菌薬の適正使用に対する働きがけはどうされていますかというような、あるいは感染症診療が適正化されないと抗菌薬の使用も適正化されませんので、血液培養などの形で起因菌の同定はきちんと行っていますよねといったところを聞いてまいります。

○渡邉座長 ちょっとよろしいですか。誰がどのようにどこに聞くのか、もう少し具体的に教えていただけますか。イメージがなかなか分からないのです。

○藤本構成員 RICSSに、今は試行ですので、試行参加の機関(医療機関)ですが、RICSSに参加するといって手を挙げていただいた施設の方が答えます。どういう方が参加できるかというと、これはもともとが診療報酬加算に基づく連携をターゲットにしてまいりましたので、加算1、加算2の施設が基本グループとして参加を登録していただき、データの入力は具体的には右上の図にあるようなWEBページを使って入れることができます。ただし、耐性菌に対する情報、抗菌薬の使用状況に関する情報は非常に膨大ですので、これに関してはJANISにデータを登録されている所はJANISのデータが利用できる。それからJACSに登録されている所もそれができる。ただしJACSに登録されていない所も多いようですので、先ほど申したような電子レセプト、あるいはDPCデータの提出データ、これはどこの医療施設もほとんど持っておりますので、これからそれぞれの施設において、抗菌薬の使用状況に関する情報だけを自動的に抜き出して、そのままこのシステムに流し込める仕組みを用意いたします。この形で入力してまいります。JANISに入っていなくても入力も全部できますので、そこについてはどんな施設でも参加できます。ただし加算で実際に都道府県に届けていない所は、まず、参加は控えていただき、加算している所から手厚くということにしたいと思っています。

○渡邉座長 少し整理しますと、JANISの場合には電子カルテからデータを抜き取っているのですよね。これは自動的に抜き取っているのですか。その辺のJANISの仕組みとこちらの仕組みにどのような違いがあるのか、よく分からないところがあるので、整理したいと思います。

○柴山構成員 ではJANISのシステムからです。資料95ページです。JANISのデータの収集の方法は病院の検査室で全ての細菌検査、同定とそれから薬剤感受性試験を自動検査機器で行っていると思いますが、その電子データはそれぞれの病院のコンピューター上に入っていると思いますが、今のところは自動的ではなくて、1回コンピューターからUSBメモリーなどを使ってデータを抜き出してコピーしてもらって、それをまた別のインターネットにつながったパソコンに持ってきて、そこでJANISのホームページにログインして、データをアップロードする形で行っていただいています。手間としては多分5分か10分ぐらいだと思うのですが、自動的になってしまうと、例えば、いろいろなエラーが起こると必要のないデータが来てしまったりすることがありますので、そこは手作業をあえてお願いしています。

○渡邉座長 こちらのRICSSは、ある程度ここに書いてあるようなことを、自分で、手作業で打ち込むことになるのですか。

○藤本構成員 JANISにあるデータはそのまま利用できます。誤解があるといけないので少し追加しますが、(柴山構成員の話しの中で)自動でないのは送るところだけで、毎日検査をしていただくと、自動的にJANISに提出するデータが抽出される仕組みを全ての参加病院は持っております。ですから自動でできたものをセキュリティー上の問題でインターネットにつながっていないことが多いので、別のインターネットの所に持っていって出してもらいます。そしてJANISに入ったデータを我々は将来的には直接JANISのデータベースから取りたいと考えていますが、現在は研究開発の段階ですので、JANISからの還元情報として、全検査データをCSVの形で出す仕組みがJANISにあります。これを利用して、それをただ読み込ませる形で我々はJANISにあるものは入力する。そのほかの手指消毒薬の使用量などはまだ自動的に取る仕組みが今のところありませんので、これらについてはそれぞれの施設で、手で入力していただくことになります。

○渡邉座長 そうすると現在のところはこれに参加した病院では仕事量は結構かかるのですか。そうでもないのですか。

○藤本構成員 限られた情報だけで、非常に少ない項目ですので、それほどの力はかかりませんし、今実際に加算1の病院は2の病院の情報を含めて、全ての情報をきちんと集計して還元するというのがもともとの要件なのです。されているかどうかは別な問題ですが。ですからその手間を考えると非常に楽になるということです。

○渡邉座長 WHO GLASSで要望されているのは、感染症発生やその予後に耐性菌が関係しているかどうかが1つ重要な項目になっているのだと思いますが、この方式だった場合にはその分離菌、ここ3ページで耐性菌を検出するなどいろいろ書かれていますが、それは感染状態であったのか、保菌だったのかなど、そういう点についてはどのようになるのでしょうか。

○藤本構成員 基本的に耐性菌といってたくさん集めているものは、これは保菌状態を含めたものです。そのほかにHAIです。医療関連感染症についての情報は、現在CLABSIを集め始めていますが、これについては事業化のときにさらにきちんと集めていく形で、感染症についても一定の情報を集めていくものと考えております。

○渡邉座長 私だけ質問して申し訳ないですが、皆さんの頭の中に情報を共有していただく意味で、私が整理させていただきたくあえて質問します。WHOも含めて世界は、先ほど厚労省から説明がありました資料2-19ページ、つまり薬剤耐性に起因する死亡率の推定、これは結構インパクトがあり、つまりこれによると現在は70万人もが耐性菌による感染症で亡くなるとなっています。また将来2050年まで何もしなければ1,000万人が死ぬのだと推定されています。多分これはCDCのデータでしたか。

○結核感染症課課長補佐 引用したものは、UKの報告書から持ってきております。

○渡邉座長 つまりこういうものが出されると、結構インパクトがあった形で世の中に流れていくわけです。WHOSTAG会議でも議論になったので、こういう薬剤耐性菌による死亡者数というのは結構皆さん出そうとしているのです。でも実際に出している国はイギリスと米国とタイしかないのです。ほかの国が余り出ていない状況なのです。恐らく日本としても多分出したほうが皆さんに耐性菌というのはこんなものだと示すのには非常に有用なデータになるのかと思うのですが、そういう感染症のアウトプット、耐性菌によるアウトプットというのは、こういう先生方がやっていることからは何か引き出せる可能性はあるのでしょうか。

○藤本構成員 現状では感染対策をきちんとやったかどうかのアウトカムを集めている状態で、その先に実際に患者の予後がどうなったかについては、集めきれていないのです。日本には世界に誇るべき死亡統計がありますので、こういったところに組み込むか、それはもう法律が必要だから難しければ、適当なサンプリングをして、その死亡統計と併せて全体を推測することがよいのではないかと私は考えます。

○渡邉座長 分かりました。皆さんから御質問がありましたらどうぞ。

○御手洗構成員 結核研究所の御手洗です。薬剤耐性調査とか、あるいは検査のほうをやっておりますので、その観点からちょっと根本的な質問をさせていただきたいのですが、御説明いただいた資料、あるいはデータ等で、サーベイランスという形で説明されているのですが、本当にこれはサーベイランスなのでしょうか。これを厚生労働省、あるいは農林水産省にお伺いしたいと思っています。先ほど柴山先生が言われたように、例えばサンプリングが200床以上の病院であるとか、全体を本当に代表していると言えるのか。大体サーベイランスというのはそういう動態が反映されて、何らか変異が起こったということが検出できなければサーベイランスとしての意味はないはずであります。ですから、これは定点観測であるとか、サンプリングが適切に行われているのか、あるいは資料を見ますと募集という所があります。私もこれで苦労しておりますので分かりますが、参加してくる所は自信がある所なのです。自信がない所ほどデータのおかしさが現れてあったり、あるいは耐性が多かったりというようなことが起こるわけです。ですから、果たして、本当にこれはサーベイランスなのでしょうか。

○渡邉座長 根本的な問題が指摘されましたが、誰かコメントはありますか。柴山先生、どうですか。

○柴山構成員 JANISに関して言いますと、私もちょっと申し上げましたとおり、正に本当にこれは代表性があるデータ、どうしたら代表性があるデータが取れるものかというのを、いつも考えていることで、あるいはどういうデータが本当に国民あるいは医療従事者、先生たちが知りたいのか、どういうデータが役に立つのかということは、常々そういうことは考えているのですが、やはり現状ではJANISも非常にまだそういう意味では不完全なという、非常に御批判も多いところでありますので、これを機会に是非この辺の検討も進めていければと思っておりますが。

○御手洗構成員 例えば病床数が200とか300以上になると、最近はICT のチームは充実しておりますし、大学においては感染制御部等も整備されてきています。それに対して、ジェネラル・プラクティショナーのレベルで、果たしてどのように薬剤が使われているのかというのを、どうも実態を把握されているとは、私の知る限りでは余り思えないのですが、そこら辺は、医師会はどうお考えなのかも伺いたいです。

○渡邉座長 医師会がちょっと退席されたみたいですが、獣医師会の立場では何かありますか。

○境構成員 動物のほうは先ほど遠藤構成員から御説明があったように、畜産動物のほうではかなりの体制をとってサーベイランス、モニタリングと称しておりますがやっておられると思います。医療の世界の話が中心だったものですから、よく私も理解できないのですが、もう1つは愛玩動物のほうはこれからモニタリングに着手されるということですので、そういう医療側の対応なども参考にしながらやっていくことになるのかなと。愛玩動物のほうはむしろ産業動物とも違った対応になっていくのかなと思っています。答えになっていませんが、申し訳ありません。

○御手洗構成員 すみません、長々と申し訳ありませんが、もう1つ、検査について、これももともと一番基礎になるデータだと思います。耐性を検査するというのは決して簡単なことではありませんし、例えば先ほど柴山先生から自動機器でという御発言がありましたが、異なる自動機器で異なる結果が出るというのはよく知られている事実でありますし、MICをきちんと測っている自動機器というのは希で、ほとんどはブレイクポイント検査であります。データとしての信頼性そのものが、例えば先ほどどちらでしたか忘れましたが、トレーニングをきちんと毎年やって、データを出すようにと言われていましたが、トレーニングはクオリティアシュアランスの1ファクターでしかありません。クオリティアシュアランスがきちんとできてベースになる耐性のデータの信頼性があるということがあって、初めてサーベイランスは意味があるのです。ですからそこのところを押さえないと、データをいくら集めても概要に過ぎないということになるのではないかと危惧しています。

○渡邉座長 御手洗先生の言われることはそのとおりなのです。ただ、このJANISの経緯というのは、1999年に研究班でこれが始まったのです。そのときはどちらかというと、耐性菌を見ると。つまり耐性菌によって感染症を見るというのではなくて、耐性菌を見るということで、それで検査室から耐性菌の情報を集めるということで始まった経緯があるのです。ですので、耐性菌のサーベイランスという概念ではなくて、耐性菌がどんな耐性型があるのか、例えばESBLが多いのか少ないのか、カルバペネムが出たのか出ないか、そういう流れでずっときていたわけです。それがいつの間にかというと、これは院内対策に利用しようという動きになったわけです。

 もちろん病院でどういう耐性菌があるかということが分かれば院内感染にも使えるわけなので、それが政策、つまり院内感染対策の要件という形にシフトしてしまった経緯があって、これをやっている所には、保険点数が加算されるのでしたっけ、そういうちょっとサーベイランスと違う方向に流れて今にきていると思います。

 ですので、言い方は悪いですが、2,000相当の病院が入り込んでいて、その入り込んでいる病院は必ずしも外部精度管理がやられていない。だから、実際ラボデータだけがピックアップされて出てくるという状況になってしまっているのです。ですので、最初に私が言いましたように、サーベイランスと言われているデータが、いっぱいある。そこが、お互いに統制がとれていないということを私は言おうとして、皆さんにいろいろ質問していたのですが、本来だったら、もう一度、本当にサーベイランスとは一体どういうものであるべきかということを、もう1回振り返って、出すのも必要かと思うのです。

 ですので、そうすると、全てこんな1,000施設なんて必要なくて、ある限られた、大体統計学的には200300ぐらいの病院が参加すれば充分だと思うのです。日本の全部を代表するようなベッド数を選んで、そこがEQAをやったデータを提出するようにする。そのときに同時に患者の予後を含めた動態とか、感染症によってそれが実際に起こっているのか、そういうデータを調べれば役に立つデータになるのではないかと思います。タイがそれをやっているのです。そういうこれによる死亡率とか何かを出しているのです。

 ですので、先ほどワンヘルスうんぬんというときに、このサーベイランスを将来、厚労省としては対策に結び付けたものとして使いたいのかということを、聞いたのは、その辺に思いがあったのですが。そうすると、これは結構大変な作業になって、今までのどちらかというと、ガラガラポンとするまでもいかないにしても、それなりのところを集めた形の本当の意味のサーベイランスを作るのかどうか、その辺の議論にもいってしまうと思うのです。この委員会で議論していたら、時間がいくらあっても足りないので、そういう問題があるということを、多分御手洗先生は言おうとしたのだと思うので、そこを把握した上で、例えば別途もう1回それこそ本当に検討グループみたいなものを作って、そこで1日、2日かけてもいいし、じっくり検討してもらわないと、なかなか解決しないのではないかと思っているのですが、藤本先生いかがですかね。

○藤本構成員 そのとおりだと思います。JANISのデータというのは標準化されたデータで、標準的な方法で取り出せるデータで、これはものすごいビッグデータになり得るのです。もうなっているかもしれないのです。ということで、これはこれで、例えば私どもでやっているRICSSのようなシステムを走らせるためには、どうしても全国の病院が標準化したデータで比べなければいけませんから、これは重要であろうと考えています。ただし、確かに代表性という面では、大きな問題がありますが、先ほど渡邉先生が触れられましたように、診療報酬加算に関係して、要件の1つとして、JANISの検査部門のようなものに入るというのがありますために、先ほどの先生が御心配されたような非常な偏りというのはだいぶなくなってきて、いろいろな病院から情報が入るようになってきています。

 ですので、ここを上手に使って、更に問戸を広げてあげて、なおかつ代表性のあるような病院を選んでいく。そこに何らかの背景データを取ってきて、その部分とビッグデータとして、悪い言葉でいうと何とかも何とかというのがありますが、そういうものは入っているけれども、そこからノイズを取り除いて、全体のトレンドを見ていく。あるいはセンチネルとして使うというようなことが現在考えられる現実的な線ではないかと私は考えます。

○渡邉座長 ありがとうございます。ほかの先生、御意見がありましたら。

○柴山構成員 御手洗先生、あるいは渡邉先生のおっしゃったような問題は非常に私たちもずっと認識はしていて、例えばJANISなどを海外に紹介すると同じようなことをずっと言われ続けてきております。やはりここは例えば代表性をもたせるために、例えば病院をもっと絞って、しかもクオリティ・コントロールをしっかりやって、病院のデータを集計するのが相手に、多分、そういうことは、それは事実だと思うのです。具体的な手法をではどういうやり方でやったらいいのかというのは、これはなかなか例えば我々事務局だけでもこれは検討するのは非常に難しいですし、こういう検討会の中でもなかなかすぐに結論は出ないと思うのです。本当にそれをしっかりやろうと思うと、例えば研究班を立てたり、そういうところでやらないとちょっとこれは難しいかなと、現場の立場としてはそう感じております。

○渡邉座長 それに比べるとJVARMは結構精度管理できているのかなと思うのですが、いかがですか。やっている側としては。

○遠藤構成員 JVARMは先ほど資料を説明するときにも申し上げましたが、研修を都道府県の方に対して行っていて、また、もう1つの健康家畜のと畜場の試験についても精度管理を私たちが出向いて指導しています。精度管理は具体的にはCLSIの方法に準じて精度管理用の菌株のMIC値を測りまして、それが基準値以内に入っているかどうかの確認を行って、あとはその手法を説明して、そういう技術的なものも伝達しているということで、精度管理を行っているという、現状はそのような感じになっています。

○渡邉座長 田村先生、何かコメントはありますか。

○田村構成員 ちょっとJVARMは説明したとおりなのでそれでいいのですが、日本全体のそういう調査をするといったときに、耐性菌の調査と抗菌薬の使用量の調査というのはちょっと違うのではないかと思っていまして、耐性菌は調査というのは代表するような標本として病院の調査というのは非常に意味があるかなと思うのですが、使用量というと、ヒトのほうに病院からすると、非常に小さいクリニックと中堅の病院と大規模な病院と全く違うような使い方をしていると聞くのです。そういう意味でいくと、日本全体をまとめるような抗菌薬の使用量というのを出さないと、今求められているのは日本全体でどのぐらい使われていて、それは各国とどのレベルにあるかということの比較だと思うのです。だから、その辺の配慮が必要かなというのをちょっと聞いていて思いました。

○渡邉座長 抗菌薬の使用量に関してだと、村木先生の所がJACSですか、こういうシステムをと言っていると思うのですが、今のいろいろな御意見に関していかがでしょうか。

○村木構成員 はい、ありがとうございます。当初、この資料11のブルーの枠のラインで進めていたのですが、やはり先ほどからお話がありますように、サーベイランスというふうな日本全体ということを考えると、注射用薬だとか、そういうふうなものに限定していたら分からないなというところで、以前、ECDCのトップの方とお話させていただく機会がありまして、ヨーロッパではそういうのが卸の販売量を利用されているというような話をお聞きして、こっちの赤枠のラインでの調査方法というのも検討した背景があります。

 今、実際レセプト情報というのも集約されてNDBという形で国がデータとしては持っている状況が整いつつありますので、今後は各施設から調剤薬局から出している調剤レセ、病院から出している医科レセ、それぞれの施設に所属すえる人たちがそういったレセファイルから各施設の状況を自動で把握できるような仕組みと、集まった全体的なデータもそういった形で集計する仕組みというのを、今後検討していくというような形で行っています。

○田中構成員 環境の分野とそれはつながっていると思うのですが、どれぐらい医薬品を使っているかという情報は、実は排水系に集まっているのです。特にヒトについては。下水処理場の流入水の中に、どの程度の濃度有効菌剤が出てくるか。世界では結構調べられていて、ただ、必ずしも薬剤耐性の発生とピッタリと合っているものを、今のところは必ずしもやっているわけではないのですが、例えば先ほど出てきたレボフロキサシンとか、クライスマイシンとか、典型的なものは実は濃度がある程度分かっています。そういう情報と、先ほど言われたような医療系で使われている情報、これを1つ組み合わせていって、もし海外の情報と比較されるのであれば、海外でのそういう情報とを比べるというアイディアも、ちょっと違ったアプローチなのですが、あると思います。実際に我々の研究でちょっと対象は明らかに違うのですが、抗ウイルスなんかを調べると、やはり明確に量との関係が出てきたところがあって、そういうアプローチも1つ考えられるというのはいいのではないかと思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。人間が使うものが環境に流出しているので、その辺を見ることによって、実際の使用量と相関が出てくるというのも非常に重要なポイントだとは思います。ほかに何か御意見。

○黒田構成員 少しお伺いしたいことがありまして、資料39ページのアクションプランの成果目標で達成すべきこの5つのそれぞれ耐性菌の検出率を目標のパーセンテージなで減らすと。カルバペネム耐性、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌というのは、ヒトの臨床では0.4%以下出ているわけですが、農水関係で検出されているのかいないのかという、先生方の御意見を頂ければ。

○田村構成員 それは今まで動物には全く家畜にはカルバペネムは使わないということがありますので、対象薬には考えていなかったのです。ただ、今の医療の状況を考えて、ワンヘルスのこともありますので、やはり今後は入れていく必要がある。一方で伴侶動物では使われているのです。伴侶動物の使用量というのがこれはものすごい難しいのです。医療用の薬が流れているので、医療用の抗菌薬が伴侶動物にどの程度流れているかという情報というのが今のところ分からないので、今後、農水のほうで調べるということは聞いていますが、その辺が分かってきて、耐性菌の調査というのはこれからの段階ですがやっていったら分かるかなという状況です。

○黒田構成員 それに付随して、2番目のMRSAの耐性率ということなのですが、EU各国、特にイングランドですと、Livestock-associated MRSAといわれるものが非常に多くなっていると。この数年で、家畜関連のMRSAが医療のほうでも検出されているようです。遺伝型としてどちらが元凶なのかということを正確にタイピングしていなかったこともありまして、もしこの部分が非常にワンヘルスのアプローチとして重要なテーマなのではないかと考えているのですが、何か御意見、先生方からいただければと思います。

○渡邉座長 動薬検、田村先生でいいですか。

○田村構成員 それはですね、一番問題になっているのは豚なのですが、いわゆるヨーロッパのタイプの豚の日本での報告は、公になっているものはないです。私たちも北海道で相当調べたのですが取れないという状況なので、日本でも偏っているのではないかと思いました。ただ、全体像はまだ分からないというところです。

○渡邉座長 ありがとうございました。なかなかこれは全部カバーするというのは大変で、動薬検ではMRSA等も含めた形のサーベイランスでは検討しているのですか。それともまだ。

○遠藤構成員 はい、全体的な感じではやっていないのです。ただ、私たちも菌株を持っておりますので、解析はこれからしていきたいと思っていますが、まだちょっと始めているというわけではないです。

○渡邉座長 CREとかコリスチンとか、その辺はいかがですか。

○遠藤構成員 コリスチンとかについてもまだそこまで手が回っていない状況で、私たちとしても重要なものだと認識しておりますので、徐々にこれから皆様の御意見を伺いつつ、進めていきたいと思っております。

○渡邉座長 ほかに何か御意見はありますか。松井さんはサーベイランス全体に関して何か、感染研はサーベイランスの専門家ですから、何かありますか。

○松井構成員 はい、先ほど御手洗先生からサーベイランスとは何ぞやという御質問がございました。なかなか難しい問題提起だと考えております。感染症法上はいわゆる基幹定点というのは比較的ステーブルな状況で行われています。そういう意味でこれは継続性というものが、あるのだろうというふうに思います。

 あと、代表性をどのように考えるかと言いますと、例えば基幹定点は、そもそも「300床以上のサンプルになった病院における」というような注釈付きでの状況ですから、日本全国を代表しているというふうには思いません。ただし、このような定常的なサーベイランスを行っている中において、例えば減少傾向が観察されると、その傾向自体はそのサンプルにおいては正しい結果なのだろうというふうに思います。ですから、全てを包含することは難しいというところで、我々がどこに焦点を絞るべきかというふうなところも、併せて考えていくべきかと思います。

 あと、JANISについては私は全く門外漢ですが、やはり層別化解析というふうなものを、藤本先生が先ほど言及されておられましたが、そういうようなもので傾向の分析は恐らくできるのだろうと思います。ただし、これが真の値だというふうには思いません。

○渡邉座長 ありがとうございます。時間もそろそろ近付いておりますので、いろいろ問題点があることは確かなことで、いろいろ皆さんのほうから御意見を頂いたわけです。ただ、難しいのは日本政府としてアクションプランに何パーセントというのを掲げたデータがJANISのデータを使ってしまっているということで、それはそれでやらざるを得ないのかなと思うのです。ある意味の傾向を見る。今、お話がありましたが、そこに参加している病院での傾向を見ることによって、いろいろな対策をやった場合、それがどういうふうに変化しているかというのを見ていかざるをえないと思うのです。

 ただ、サーベイランスという言葉を使う以上、本当にそれでいいのかというのは、これは先ほどから皆さんから提起されているような問題点を含んでいることは確かでありますので、ここは別途、どこか研究班がいいのか、これのまたサブグループというと、何かまたサブサブになってしまいますが、どこかでサーベイランス専門の先生を入れ込んで、現状行っているこのいわゆるサーベイランスと言っているものが、本当の意味でのサーベイランスになるのかどうなのかを検討していただく必要があると思います。今後の日本のサーベイランスの、特に薬剤耐性のサーベイランスのあり方はどうあるべきなのかということを検討して、そちらのほうが創立するに従って、徐々にシフトしていかざるをえないと考えます。一度こういう形で表にもナショナル・アクション・プランをもう出してしまっている以上、そう対応せざるを得ないのかと私は思っているのですが、いかがですかね。厚労省としては。

○結核感染症課課長補佐 ありがとうございます。正に初めにワンヘルスの年次報告書のところにも説明をさせていただきましたが、今後の課題という項目を掲げさせていただいたその部分もありまして、やはり各サーベイランス、今まで、ものによっては長期間行ってきているものもありますが、一方で御手洗先生からもありましたが、様々なlimitation、限界もあるというところもあろうかと思います。そういう限界も含めてこの年次報告書で書いていただいて、さらにそこを、限界を踏まえて更に検討すべきものということで検討し、更に少なくともそのlimitationを踏まえて解釈についてはしていただくというところは重要かと思っております。

○渡邉座長 という方向で。

○御手洗構成員 それ自体は非常に結構なことだろうと思いますので、最後に1つだけ、しつこくて申し訳ないのですが、包括的な精度保証の検査のシステムをこのサーベイランスを実施するにあたっては、どうしても確立していただきたいなと思っているのです。そうでないと、大本のデータが信頼できないのでは、集めたデータに意味がないということになってしまいかねませんし、私などは結核のほうでサーベイランスはやったことはありません、サーベイしかやりませんが、サーベイをやっておりますと、それこそ精度保証を入れるだけで薬剤耐性は3分の2になってしまうというような薬剤もございます。ですから、包括的な精度保証、つまり、インターナル・クオリティ・コントロールだけではなくて、イクスターナル・クオリティ・アセスメント(External Quality Assessment)、それからあとはトレーニング、そういったものを包括的にきちんとまとめたクオリティ・アシュアランス・システムを是非構築していただきたいというふうに思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。結核などは限られたものなのでできるのだと思うのですが、ほかのものは、今は機械とかでやっているので、ここのメンバーだけではなくて、検査技師会、検査会社なりを巻き込んでやらないと、IQA,EQAとかに結び付けるのが難しいのだと思うのです。ですので、今、すぐにパッとというのはなかなか難しい。なぜ難しいかというと、今、感染研で地研との間でのEQAをやっているのだけれども、なかなか揃ってスタートできていないですよね。現実に私が所長のときから始めていたのだけれども、未だなかなかアプローチできていないのではと思います。四宮先生、その辺りはどうですか。今、地研のEQAの難しさというか、何か。

○四宮構成員 感染症法の改正に伴って、平成284月から法に基づく病原体検査が実施されることになり、食品検査や医薬品検査と同じように検査の信頼性確保(精度管理)が求められています。検査施設自体によるものだけでなく、国等が行う精度管理に関する調査を定期的に受けることとされています。これと関連して、今年度から、厚労省と感染研が協力して、地研等の公的な検査機関を対象に精度管理事業が始められています。今年はインフルエンザについて模擬検体を全ての参加地研に送って、その集計をした結果について、221日の第2回会議でその報告等について議論される予定です。もちろん事業を実施すること自体が、非常に大きな労力を伴うことですが、参加した地研は、それに参加することで検査に対するスキルアップというのはあると思います。外部精度管理をやることによって、そういう検査を行うそれぞれの地研の担当者が出す結果に対する責任とか、そういう意識改革も含めて、必要なことだと思います。それから全ての病原体にやらなくても、ある程度代表的なものについてやることで、基本的な手技や考え方というのはそこでリファインされると思います。

 耐性菌に関連したことでは、渡邉先生の班で、今年、18ヵ所の地方中央衛生研究所で、ヒト及び食品由来の薬剤耐性菌の全国規模の調査をしたのですが、それは全て同じプロトコルと同じ機材、同じ薬剤を用いて行ったので、精度管理というところまでは詰めていないですが、それぞれが別個にやるデータに比べると、相当共通したベースで行われた調査だと思っています。

○渡邉座長 ありがとうございます。WHOEQAをこの薬剤耐性も含めて、ほかの感染症の検査に対しても加盟国に要求をこれからしていくということです。特にIHRに基づいた検査というのは、その上でやっていかないと、信頼性が乏しいということで、進めようとしているところです。日本もやはりそういう意味では、先ほどから問題になっているように、それをしっかりやっていかなければならないような時期に来ているのだと思うのです。特に厚労省はこの5月にWPROIHRに関するJEEを受ける予定ですね。そこにはラボ機能の評価指標にはEQAが入っているのですね。それをやっていないと恐らく5段階評価の3位以下になるということになると思うので、1つの流れなので、その辺はちょっと考えていかなければいけないと思います。

 そういう問題点があるということで、今日はここで時間ですのでそろそろ閉めにしたいと思います。この会が2月、3月に決まっていると思いますので、皆さん考えてきていただいて、またディスカッションをしたいと思います。EQAに関係する方を入れ込んだようなものも、構築していかないといけないのか、事務局一緒に考えながら、進めたいと思います。時間をオーバーして申し訳ないのですが、4時までということで、予定のある先生もいらっしゃるのだと思いますので、この辺で今日は終わらせていただきたいと思います。

○結核感染症課課長補佐 すみません、一応議題3、その他がございましたが、それだけをよろしくお願いします。

○渡邉座長 その他で何かございますか。よろしいですか。特に、はい、ありがとうございます。では、本日の会議はこれで終了としたいと思います。あとは事務局のほうでよろしくお願いします。

○結核感染症課課長補佐 第2回の開催については38日を予定しています。事務局からは以上です。

○渡邉座長 ありがとうございました。時間をちょっとオーバーして申し訳ありません。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会> 第1回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(2017年2月3日)

ページの先頭へ戻る