ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安制度のあり方に関する全員協議会)> 第14回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録(2016年12月8日)




2016年12月8日 第14回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録

労働基準局

○日時

平成28年12月8日(木)
13:00~14:00


○場所

厚生労働省19階共用第9会議室


○出席者

【公益委員】

仁田会長、戎野委員、鹿住委員、中窪委員

【労働者委員】

木住野委員、須田委員、冨田委員、新沼委員、萩原委員、松井委員

【使用者委員】

小林委員、高橋委員、中西委員、横山委員、吉岡委員

【事務局】

藤澤大臣官房審議官、増田賃金課長、川田代主任中央賃金指導官
伊勢中央賃金指導官、由井賃金課長補佐、大野賃金課長補佐

○議題

目安制度の在り方について

○議事

○仁田会長
 定刻となりましたので、ただいまから、「第14回目安制度の在り方に関する全員協議会」を開催したいと思います。本日は年末の大変お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございます。本日は土田委員、武石委員、渡辺委員が御欠席です。
 本日は「目安制度の在り方について」の議論を深めてまいりたいと考えております。前回の目安全協におきまして、今後、「目安制度の在り方について」の議論を深めていく必要があるということから、労使各側での御準備をお願い申し上げたところです。また、今後取りまとめをしていくに当たり、各地方最低賃金審議会会長の御意見も伺っていただくように、事務局に御準備をお願いしたところです。
 それでは、労使におかれましては、地方最低賃金審議会における審議を含め、「目安制度の在り方について」、地方を含めた関係者の方々からの意見聴取などを進めていただいたと思いますので、その御報告をお願いしたいと思います。まず労働者側からお願いできますでしょうか。


○須田委員
 全国の地方最低賃金審議会の労働側委員、地方最低賃金審議会の本審委員と理解していただければいいかと思いますが、ヒアリングをいたしました。良い悪いと言うよりも中央最低賃金審議会への要請という形の意見が多いので、そのような言い方を許していただきたいと思います。最低賃金法第9条2項の3要素に関する解釈あるいは統一的な考え方、最近で言うと、生活保護との乖離解消、目安の金額だけではなくて法の解釈、運用ルールを含めて中央最低賃金審議会の指導性の発揮を今後とも望みたいというのが1点です。
 それから結果論ではありますが、生活保護との乖離解消を図ったがゆえにランク内での他県との格差、あるいはAランクとDランクとの格差、要するにA分のDという意味ですが、これが従来80数パーセントぐらいで、今は76%ぐらいまで低下と言うか、拡大してしまった。これが本当に地域の実情を表した結果なのかどうかということには疑問があります。逆に言うと、その解消に向けて目安を示すというようなことは考えられないのかという意見をいただいています。
 この2015年、2016年と示された目安の水準についての数字的な根拠が分かりづらくなっている。この辺りについて、特に今年は補足説明を付けていただいたことには感謝しつつも、分かりづらくなっているという意見をいただいております。
 昭和53年に1つのテーマだった隣県を意識し過ぎるがゆえに審議会の結審日が遅れる、もっと端的な言い方をすると、10月1日発効に間に合わないケースが多かったのが、目安が示されることで10月1日発効に向けた審議会日程をきちんと組めるようになった。これも引き続き残したいということです。
 それから社会情勢と言うか、経済情勢が変わってきている中で、自分のところの県で解消する事業運営もあれば、ブロック経済化しているような中で働いている場合もある。もっと言うと全国的にフランチャイズ的な形、あらゆる県で同じ事業が同じような仕事をやっているというときに、最低生活賃金という概念よりもワーク・ペイとして、一県の中で自立をした仕事をしていないところはどう考えたらいいのだろうという意見も聞きます。
 分かりやすいのは、スーパーマーケットみたいな所で働いている人は全国どこで働いても大体同じような、マニュアル化されたような仕事が多い。その仕事をどう評価するかという意味において、地域の実情というものをどう考えたらいいのだろうか。店で売っている物の値段は変わらないですよね。沖縄で売っている物、東京で売っている物、同じ値段だと。けれど、そこで生活している物価水準が違うので地域別最低賃金に差があるということなのでしょう。しかし、やっている仕事をどう評価するのかというワーク・ペイという観点で見たときにちょっと疑問がある、というような意見が出されております。
 あちこち飛んで申し訳ありません。地域別最低賃金を議論する時に目安以外に影響率や実際の募集時給、広く言うと、地域の事情と言うのでしょうか、それらを勘案して見ているのですが、結局目安±1、2円の幅の中でどうするのかという議論に終わってしまっている。本来の地域の自主性発揮を図るためにどうしたらいいのだろうという悩みがあって、解消策の1つでしかないとは思いますが、参考資料の棚卸しもやったほうがいいのではないでしょうかということです。
 また、2015年も全国平均で18円、率で言うと2%程度上げているにも関わらず、2016年の賃金改定状況調査結果第4表には上げ幅として出てこない。なぜそうなるのだろうかという率直な疑問がある。最低賃金近傍の人は2%ぐらい上がっているかもしれないけれども、アベレージになると薄まってしまっているのか、その辺りで何か工夫できないのか。そういうことも踏まえつつ、補足説明が最低賃金法第1条のことを引き合いに出して、その趣旨や目的と今働いている人たちが置かれている現状を鑑みた時に今年の目安はこうだと。単に引上げ率や引上げ額の世界から、最低賃金水準そのものに問題意識を持った補足説明だったという受け止めを地方の労側委員はしているということです。
 補足説明の最後に、地域別最低賃金の引上げによる影響を中央最低賃金審議会がフォローする、というような表現があるけれども、「影響」というのはいろいろな面の影響がある。多面的な検討とフォローをお願いしたいと、地方からは聞いておりますので一応報告いたします。


○仁田会長
 ありがとうございました。次に使用者側からの御報告をお願いしたいと思います。


○小林委員
 私から報告させていただきます。地方最低賃金審議会の使用者側委員に対して、今年度の地域別最低賃金の審議、それから目安制度の在り方について等、調査しましたので、その調査結果の概要を発表させていただきます。
 本年度の地域別最低賃金の地方最低賃金審議会での審議について申し上げます。多くの地方最低賃金審議会の使用者側委員からは、今年の中央最低賃金審議会から提示された目安額が非常に高額の提示であったことに対し戸惑いの意見が寄せられています。従来の審議では賃金改定状況調査結果第4表が重視されていたが、今年度は全く考慮されていない。非常に高額な目安額、また閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」「経済財政運営と改革の基本方針2016」及び「日本再興戦略2016」に配慮した3%ありきの議論に終始し、地方の自主性を発揮する余地など残っていない中での審議であったというような意見が多く寄せられています。
 また、政府主導とも言える中央最低賃金審議会が示した目安額が、地方の中小企業、小規模企業の経営実態を反映した目安額なのか疑問である、中小企業、小規模企業の経営実態が考慮されず、このまま高い水準の引上げが続けば倒産する企業が出てくるといったような懸念を示す意見も多くあります。総じて、今年の地域別最低賃金額改定の審議については、中央最低賃金審議会の目安額を重視した大幅な引上げ額となったこと、これも政府の意向が反映されたこと、目安額が最低ラインとして議論が終始したこと、地方最低賃金審議会が自主性を持った審議ができなかったということについて、多くの使用者側委員が不満を持っていることに尽きると思います。
 一方、少数意見ではありますが、賃金の底上げという観点と、人材確保や非正規従業員の処遇改善のためには引上げはやむを得ないというような意見もあったことは申し添えておきます。なお、目安に関する小委員会報告についての補足説明の受け止め方については、高額の目安の根拠を説明する資料となっておらず、審議において活用しなかったという意見が約半数を占めております。次に高額な目安を提示するに当たり、補足する必要があると考えた結果と受け止めたが、特に活用しなかったとの意見が見られております。また、中央最低賃金審議会で取りまとめに当たって苦労していることは理解できるという意見もある一方、言い訳にも思えたとか、苦し紛れの詭弁だといった厳しい意見もありました。これらは地方の意見です。 
 地方最低賃金審議会の使用者側委員からは、本年度の地賃審議で特に重要視している指標について問い合わせたところ、目安が絶対的な存在として認識されていたので、目安以外はほとんど重視していないとの回答が最も多くありました。その他の意見では賃金改定状況調査結果、隣県や同ランク県の審議状況、県の賃金実態調査、春闘の賃上げ状況、県内の賃金上昇率や未満率・影響率、経営者協会をはじめとする経済団体の各種実態調査などの指標を重視しているという声がありました。
 地方最低賃金審議会の使用者側委員から、目安の必要性についてどのように思っているか問い合わせたところ、「目安制度は必要」とする意見が概ね8割程度と多くなっております。その理由は審議の円滑化のためには目安が必要、目安がないと地方最低賃金審議会が混乱する、目安がないと労使の審議が長期化し、いつまでも意見がまとまらない、現行の目安制度は長い時間をかけてできあがったものでありこれを尊重したい、目安なしで各地域が独自に経済情勢などを分析して最低賃金額を決定できるか疑問である、他県とのバランスを考えると目安は必要といったような理由で、目安制度を維持すべきであるという意見が多くなっています。
 一方、数は少ないが、目安は不要とする意見もあり、その理由は現在のように根拠不明の目安なら不要、各地域が実態など踏まえて独自の審議を行うべき、2年から3年目安なしで審議を行ってみれば今後の審議の在り方について良い考え方が生まれてくるのではないか、自主性を発揮し公益委員が労使と意見調整し目安なしの審議を行うのが筋である、地方の実情を理解していない中央最低賃金審議会が決める目安は意味がなく廃止すべきというような意見もありました。
 地方最低賃金審議会の使用者側委員から、目安の括り方について、現行の4ランクを維持するという意見が約8割程度あります。その理由としては変更の必要性を感じない、4ランク区分は定着しておりバランスが取れている、ランク区分を増やせば格差が広がる、減らせば目安と地域経済実態等との乖離が大きくなると考えられるといった意見が出ております。
 一方、少数ではありますが、各地域の状況を綿密に類型化してランク数を増やすべきだという意見、都会、地方、その中間の3区分ぐらいが適当、ランクを設けると地域間格差が拡大するため全国一律の目安がよいという意見もございました。
 目安の示し方については、従来どおり時間額でのランクごとの引上げ金額という意見が多くなっています。またランク内の各地域の経済実態などを考慮して、○○円から○○円といった幅を持たせた目安を示し、各地方最低賃金審議会において最低賃金額を決定するに当たっては自主性を発揮できるようにしてほしいという意見もありました。
 地方最低賃金審議会の使用者側委員から、目安制度に関する要望・意見を伺ったところ、様々な要望・意見をいただいております。全てを紹介できないので幾つかお伝えしたいと思います。目安額の明確な根拠を示してほしい、時々の事情は否定するものではないが、どのような事情をどの程度考慮したのかを示してほしい、最低賃金法に定める3要素と時々の事情の相互的なバランスを取って目安を決めてほしい、近年の最低賃金は最低賃金法の枠組みを超えたところで決まっており、この状況が続くのであれば法改正が必要、政府の引上げ方針ありきならば目安どころか地方での審議も不要である、以上幾つかの要望・意見を発表しましたが、このほか様々な要望・意見を伺っております。
 地方最低賃金審議会の使用者側委員から、地方での審議に当たって中央最低賃金審議会から提示してほしい資料・データについて伺っております。現行のデータで十分、あるいは必要に応じて労働局や使用者団体で独自にデータを準備しているので特に提供してほしいデータはないという意見が最も多くなっております。現在の中央最低賃金審議会からの提供資料は多すぎるので、資料の棚卸しをして本当に必要な物を取捨選択すべきという意見もありました。ほしい資料・データを強いて挙げてもらうと、都道府県別の支払能力・付加価値額などを示す指標、都道府県別の中小企業・小規模企業の賃金の実態、これは労働局から9月ごろに資料が提示されるということで審議に間に合わない、前倒しをしてほしいという要望のようです。
 それから都道府県別の影響別・未満率、これは自県では出していただいているようなのですが、近県や他県の状況も把握したいというニーズから影響率・未満率を出してほしいというニーズが出ています。その他の意見としては中小企業の支援策の充実、最低賃金引上げの影響の検証が必要、それから特定最低賃金に対する意見などが寄せられております。
 中小企業支援策については、最低賃金引上げと中小企業の支援策を同じ土俵で考えるのではなく、まず先に企業の体力を回復させたのちに最低賃金引上げを考えるべきとの意見があります。いずれにしても支援策の充実強化、現行制度でよりシンプルで分かりやすい仕組みへの改善を望む意見が多く寄せられております。また価格転嫁など、企業間取引の適正化も重要であるとの意見が寄せられております。
 最低賃金引上げの影響の検証についてなのですが、中央最低賃金審議会の答申には毎年書いてありますが、「地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心を持って見守る」との記述があるものの、見守った結果どうだったのかという評価、総括が地方最低賃金審議会に一切伝わってきていない。このため、何らかの形で最低賃金の引上げが及ぼす影響等について検証を行い、中央における目安審議の参考とするとともに、その結果を地方最低賃金審議会に伝えるという仕組みを作ってもらいたい。当該年度の目安額を審議する前に過去の目安額の妥当性の検証が必要である。同時にこの検証結果を地方最低賃金審議会に伝達し、過去の賃上げ結果の調整機能を加味させるべきというような御意見もいただいております。特定最低賃金については、地域別最低賃金の急激な引上げによって役割・意義を失っている。もはや、廃止を目指すべきとの意見が寄せられております。以上が調査結果です。
 それから先月ですが、関東・甲信越で中央会の地方最低賃金審議会の委員の連絡会議がありました。その場で各地方最低賃金審議会の委員からいろいろな報告があったのですが、幾つか良い点や影響の調査の結果がありましたので、その辺りもお伝えしたいと思います。
 1つは地方最低賃金審議会の公労使委員による実地調査、企業視察を行ったらどうか、やってほしいというニーズがありました。中央最低賃金審議会でも今年、去年と地方調査を行っていますが、地方最低賃金審議会における地域版の提案です。長野県では地方最低賃金審議会での審議を行う前に地域の中小企業の実地調査を実施しているということでした。実地調査では訪問企業の経営者、労働者の方からヒアリングを行うほか、その企業の工場の視察等も行っているそうです。公・労・使の委員が最低賃金引上げに影響のある中小企業、小規模企業の現場を見るということは大変重要であり、生の声を聞くということが実態の把握にもつながると思います。そして共通の認識を持つためにも大変有効だと思っております。全ての地方最低賃金審議会で実地調査や企業視察を行うことが可能か、この辺りを事務局で是非とも御検討をお願いしたいと思います。
 大幅な最低賃金額の引上げが及ぼした影響ということで2つばかり事例が挙がっております。地方最低賃金審議会の委員から、今年の大幅な最低賃金引上げが及ぼした影響について、まず1つはスーパーでのパートタイム労働者から労働時間削減の要請が来ているという話です。最低賃金の時間額が上がったことによって、年間の所得の調整に移っている。扶養家族になっている方々が扶養控除の対象となる場合の所得制限や、「103万の壁」というものがありますが、11月以降、時間給が上がってしまったということで、そのためにパートタイム労働者から労働時間数を減らしてほしいという要求が出てきています。
 どういう影響があるかと言いますと、企業側にとって見ますと、パートの方々の労働時間が減ることによって、その分、誰か人を探してあてがわなければならないというようなことになってきます。年末に向けて代替要員の確保、人手不足の解消のため、企業側が非常に苦慮しているというような実態があるということです。もう1つはビルメンテナンス業界の話です。これもスーパーと同様、パートタイム労働者の方から、労働時間の削減の要請が来ているということです。
 その一方、企業側からパートタイム労働者に対して、労働時間の削減要求をしているというような実態もあるそうです。ビルメンテナンスというのは大体が年間契約で行われております。最低賃金は10月1日以降改定されていますけれども、年間契約の改定がなかなかできない、値上げ交渉がなかなかできない。金額ベースでは総額人件費にかかる経費は変わらないので、「働く時間を押さえてくれ」と労働者側に無理な要求をしているということもあるようです。とは言っても、仕事の内容は変わらないわけです。例えば、あまり良い企業ではないですが、朝3時間で働いていたところを2時間半にしてくれとか、2時間にしてくれというような形での削減要求をして、働く内容は全く同じ、過重労働になるというような状況がある。これは企業も悪いのですが、発注側の廉価契約の改定作業がなかなかうまくいかないというのが大きな影響だと思います。
 これは厚生労働省についても同じです。厚生労働省でいえば、出先機関である労働局、監督署、ハローワーク、厚生部門でもいろいろな出先機関があると思います。それぞれの職員の方々がお掃除されているわけではなく、大体がビルメンテナンスの清掃業者の方に発注しているわけです。これは4月の前に年間契約をしても、なかなか契約の改定がされないというのも実情にあるのではないかと思います。是非とも発注価格の見直しは本省も含め、地方支分部局に対して御指示をいただければというお願いです。概ね以上です。


○仁田会長
 ありがとうございました。それでは、引き続き事務局でおまとめいただいた各地方最低賃金審議会会長の御意見についての御報告をお願いいたします。


○大野賃金課長補佐
 それでは、事務局から御説明いたします。本日配布しております資料No.1に沿って御説明したいと思います。前回の目安全協における仁田会長からの御指示を踏まえ、事務局では各都道府県の地方最低賃金審議会会長に対してヒアリングを行っておりますので、その結果を御報告いたします。
 まず、1ページの1つ目の項目、「目安制度の在り方」について聴取した事項です。「目安制度の必要性」についてですが、ほとんどの地方最低賃金審議会から目安制度が必要であるとの回答がありました。次に「目安の提示方法」については、約3分の2の地方最低賃金審議会からランクごとに目安額を提示している現行どおりの方法を支持する回答がありました。それ以外の意見として、現行どおりの方法で目安額を提示するとしても、目安額は都道府県の最低賃金の格差に配慮すること、格差を縮小させることが必要、また地域の実情に応じた審議ができるように目安額に幅を持たせてはどうかといった意見や、引上げ率での提示が望ましい、ランクを大きな枠にする、といったものがありました。
 続いて、「その他の目安制度についての意見・要望」の主なものを紹介いたしますと、目安額の具体的根拠を示して欲しい、納得できるもの、理解が得られるものにして欲しいといった御意見、また、なかなか難しい面もあるかと思いますが、目安額については公益委員見解という形ではなく、労使一致でまとめてほしいといった御意見、それから今回の目安全協で御議論頂いておりますが、ランクの定期的な検証・見直しをしていただきたいという御意見、そのほか、中央から地方へのヒアリングの機会を持つことや最低賃金制度の抜本的改革も視野に入れてほしいといった御意見がありました。
 2つ目の項目は、「地方最低賃金審議会での審議に当たり必要な資料・データ」について、御意見を伺っております。ここで出た御意見は目安額の根拠となるデータや考え方、それから他県との比較という観点かと思いますが広域・同一経済圏の経済情勢のデータ、隣県・同一ランクの経済情勢のデータ、海外の最低賃金関係の資料、最低賃金引上げの影響を受ける企業や労働者の実態、最低賃金引上げの経済効果、総人件費への影響、所得・消費の指標、労働生産性等の意見がありました。
 続いて、3つ目の項目は「平成28年度の地域別最低賃金の審議に当たって」で、地方最低賃金審議会の御意見を頂いております。まず、目安額と「目安に関する小委員会委員長の補足説明」についてです。平成28年度の目安額については、「目安に関する小委員会委員長の補足説明」でも言及されておりますとおり、従来と比較して高い水準であり、政策的な意向が反映されたものと受け止めたとの回答が約半数と一番多く、次に妥当・やむを得ないといった御意見が多くありました。
 「目安に関する小委員会委員長の補足説明」については、本年度の目安に関する小委員会報告の公益見解を取りまとめた資料を御説明するため、本年初めて示されているものですが、これについては、約3分の2の地方最低賃金審議会で、今までなかったことである、目安額の考え方が打ち出され考え方が丁寧に示されているなど、補足説明を評価・理解する回答があり、また約4割の地方最低賃金審議会で、目安の考え方の理解や労使への説明・調整等に活用したとの回答がありました。一方、具体性に欠ける、分かりにくいなどの回答もありました。
 最後に、「目安額以外に重視した事項」について、一番多かった御意見は約3分の2の地方最低賃金審議会で、春闘・春季労使交渉の結果や、未満率・影響率など、地方の経済動向という御意見が挙げられました。それ以外は労使の主張、他県・隣県・同ランク県の最低賃金の水準等の状況、政府方針・政府の経済政策等、中小企業の経営実態・実情といった御意見がありました。事務局からの報告は以上です。


○仁田会長
 ありがとうございました。以上、労働者側、使用者側及び事務局からの御報告を頂きました。これらについて御質問・御意見等ありますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。


○小林委員
 事務局に、先ほど最後に聞いたことを2点ほど。地方最低賃金審議会での企業調査ができるような形になるかどうか。これは予算もかかることなので、すぐにとは言いませんが、幾つかの県では行っていると伺っております。長野と幾つか、他の県でも何か独自な調査をしているということなので、これを全国的に波及することができるかどうかが1つ。先ほど言っていた厚生労働省のビルメンテナンスの関係で言うと、発注価格の改定指示は出していると思うのですが、その辺の状況を分かる範囲内で教えていただければ有り難いです。


○増田賃金課長
 それでは、使用者側からの御報告にありました点について、事務局から回答させていただければと思います。中央最低賃金審議会でも実地の企業視察は、今年の6月も行いましたが、視察については最終的には各地方最低賃金審議会の御判断ですが、小林委員からお話がありましたとおり、予算等がどうなっているのかと、そういうこともあります。
 私どもとしては、必要な謝金等についてお支払いできるのではないかと思っておりますが、そちらは事務局で十分に確認したいと思っておりますし、地方最低賃金審議会が企業視察等の実地調査をどのように行っているかということも少し調査させていただき、皆様方から御異論がなければ、中央最低賃金審議会の事務局である私どもから地方最低賃金審議会の事務局に、全員協議会でこういう御意見があったということでお伝えしたいと思っております。その方向でよろしければ、そうさせていただきたいと思います。
 もう1つ、ビルメンテナンスの関係で御質問がありましたが、全体として政府の発注する業務については、本年度の目安の答申を頂いた中にもありましたが、「行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって、当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることのないよう、発注時における特段の配慮を要望する」ということで私ども承っております。これを踏まえ、毎年度、厚生労働省から各府省、省内はもちろんですが、都道府県知事等に対し、官公需法に基づく中小企業者に関する国等の契約の基本方針を踏まえ、発注時における法令遵守について特段の配慮をいただくよう依頼をしております。現在、この基本方針の中では、発注に当たり都道府県における最低賃金額の改定も反映した人件費等を踏まえた積算に基づき、予定価格を作成することとされておりますので、これをしっかり毎年度、配慮するという形で依頼しております。それに加え、ビルメンテナンス業務については、おっしゃるとおり人件費率が非常に高い業務ですが、こちらも昨年6月にビルメンテナンス管理の担当をしている健康局から各省庁・都道府県に対し、ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドラインを新たに制定し通知しております。その中では入札時に、先ほどの最低賃金額の改定等、最低賃金に係る制度について十分周知するということ、また最低賃金額の改定等を注視していただき、必要があると認める場合には代金の額の変更も検討するようにお願いもしているところです。
 さらに、今年9月に、今年度の最低賃金額改定を受け、平成28年度の改定額や過去どのように改定が行われてきたのか、そのような詳細な資料を併せて送付し、その趣旨が徹底されるようにお願いしております。また、特に今回御指摘のありました労働局等については、最低賃金に配慮した契約が行われますよう、改めて担当者にしっかりと伝えたいと考えております。以上です。


○小林委員
 ありがとうございます。調査の件は是非ともお願いしたいと思いますし、先ほど地方最低賃金審議会会長の御意見等でも調査、これは中央最低賃金審議会からの調査というのもあったようですし、地方最低賃金審議会としても例年やっている調査で、地方最低賃金審議会の公益委員、労働者代表委員と使用者代表委員の意見を聞くなど、それぞれの地域の企業の実態把握という意味で、企業調査等をするというのが大変意義が大きいと思います。来年も中央最低賃金審議会としても是非とも考えていただきたいと思います。
 それから先ほどのビルメンテナンスのお話ですが、指示は出していてもなかなか企業側から契約を改定するよう言いにくいという部分もあり、また、予算の制限があり、見直しというのはできないと思うのですが、ここにきて、最低賃金の額は本当に高額に上がっております。せめて来年度の契約については、しっかりそれぞれの労務費部分の要素も捉えていただいて、ビルメンテナンスの発注に当たっては、適正な価格での発注に努めていただきたいとのお願いです。よろしくお願いいたします。


○増田賃金課長
 来年度の契約についても、年度が明けますといろいろな手続が始まりますので、私どもも非常に問題意識を持っており、今、関係部局とも調整をしておりますので、おっしゃるとおりの形になるよう最大限の努力をしたいと思っております。


○仁田会長
 よろしいですか。労働者側、何かありますか。


○須田委員
 都道府県が発注をしている案件で、公契約条例を、ということで我々も動いておりますので、特にビルメンテナンスはいろいろな課題があると思いますので、地方でも御協力をよろしくお願いしたいと思っております。少し変な事業主さんがおられ、予算はきちんとありますが、ダンピングで入札してしまうと。結果、地場の産業に迷惑をかけているという企業もないわけではないので、その辺りを含めた公正競争というか、結果、労働者が泣かされているというケースもありますので、そこはタッグを組ませていただければ有り難いと思います。
 それから就業調整の話は我々も承知しておりますが、我々の認識は最低賃金の問題ではなく、税と社会保障の問題だと思っておりますので、ここで議論するのとは少し違うのかなと思っております。
 それから地方の公益側の先生も使用者側もランクの数について現状追認派が多かったという印象を受けているのですが、数というよりはランク案で今、発生している、敢えて格差と言いますが、数字の差については、問題意識としては地方最低賃金審議会会長の意見では文章として、「格差解消」のような活字がありますが、使用者側の意見では、問題意識を持っている人もいれば、そうでない人もいるように聞こえたのですが、現状の水準そのものを追認して今のランク区分でという受け止めをしてはいけないのですよね。そういうことではないという理解でいいのですよね。


○小林委員
 追認ではないですね。各地域の、おおむね言えば、まず第一に目安制度自体については、今日のお話を聞いていると、公益の会長や労使共々、「目安制度は維持しろ」というのが多数を占めていると認識しております。目安制度の中でランク付けですね。ランクについての考え方は、これは本当にいろいろな意見が出ていると思っております。ランクの中の自県の意識は強いと思います。例えばDランクの中の何県というのがあったとすれば、何県の方はそのランクが上にいくのは嫌だと。使用者側でいけば、上のランクになりたくないという意識と、ランクの中でもどこに位置するのかというのは非常に意識されて、なおかつ、隣県との状況がどうなのかという意識はあるのですが、ランク制度全体でどうだというのは、5年に1回の見直しの時に考える程度で、今回、意見が出てくるのも在り方自体について、現状追認という形の回答は多いです。敢えて大きく変えたくないという意識なのだと思います。そこまでしか私どもには分からないというぐらいです。


○仁田会長
 その辺りについては、この後に具体的にランクについての御議論を頂くことになると思いますので、せっかく、いろいろな御意見を労使双方あるいは公益の会長から頂いておりますので、必ずしもその中には収斂しない御意見もあると思いますが、やはり、貴重な御意見だと思いますので、それについて、しっかりと検討し、お答えできるものはお答えしていくように我々としては努める責任があるのではないかと感じておりますので、その中でしっかりと議論をさせていただければと思います。今の質疑についてはよろしいでしょうか。


(了承)


○仁田会長
 それでは、以上、労使・公益各側についての地方最低賃金審議会からの様々な意見表明・意見聴取をしていただきました。今後の進め方は、今回の御報告や御議論の中でも目安制度等に関し、実に様々な御意見が出されましたが、全体として、1つは目安制度は必要であろうと、大勢としてはそういうことかなと受け止めております。
 また、ランク制度についても、現状そのままでいいのかどうかという意見表明はされておりますが、何らかのランク区分に基づく制度が必要であるということについては、共通点があるのではないかと感じております。
 参考資料については検証の問題等を含め、目安全協あるいは目安に関する小委員会あるいは中央最低賃金審議会において、検討を深めていく必要があるという御意向が表明されたのではないかと思います。資料については、そういう御要望に直ちに答えられるような状況かどうかということは、利用可能な資料の精査等を踏まえ、今後、検討していく必要があると思います。そのような受け止めを踏まえ、引き続き目安全協の取りまとめに向けた検討を次回以降進めていきたいと考えております。
 次回から、昨年から議論を進めてきましたランク区分に係る資料を含めたランク区分の見直しの問題、それから参考資料についての諸議論を具体的に進めていきたいと考えておりますが、そういう扱いでよろしいでしょうか。


○須田委員
 進め方についてはそうだと思います。その上で、ここにあります第11回の時にどういう指標が今存在しているか、なくなっているかを含めて1回整理していただいてはいるのですが、新たに採用する数値、例えば都道府県別の産業の付加価値のような数字がどういう傾向で出てくるのか、正直言って分からないところがあり、多分、これは5年に1回の調査だと思うのですが、数値として一定の安定性を持っているものなのか、何かで暴れるのか、感覚が全然分からないのです。
 労働者側としては、世帯当たり消費指数ではなく、1人当たりにしようなどいろいろな意見は言いましたが、事務局で統計数値の見方というか、これは留意したほうがいいとか、経済産業省の資料を細かく見ればいいのですが、付加価値の中に減価償却費を入れてやっているものと入れていないものがあり、償却率そのものをどう見るかということよりも、製造業とサービス業でいくと、労働装備率の違いということなのだと思うのです。
 それが全国一緒の物差しでやるから、それぞれ付加価値を表しているのだと。1つの割り切りで見るのか、県によっての産業特性がある中で、どの付加価値をどう捉えるのが正しい地域の認識になるのかというのが少し分かりづらいところがあるので、その辺りも含めてこの新たな指標は理屈として捉え得る指標という意味では理解しますが、その指標が総合指数という形になったときに、どれだけ安定性という観点で耐えられるのかどうかピンときていないところがあり、その辺りも教えていただきたいです。
 それと、少し乱暴な言い方かもしれませんが、いろいろな要素があり、今の最低賃金が決まっているとしたとき、昭和53年の第1回の目安を作ったときに、その当時の地域別最低賃金を高い順に並べてランクを設定するというのが第1回の目安だったと思うのですが、例えば去年11月に整理した指標も参考にしつつ、現実の地域別最低賃金の並びがどうなっているのかというのも横睨みしながら、どこで区分を入れることに納得性があるのか、統計資料として何が理屈に合っているのか、両睨みで議論できるような資料を次回でいいので用意していただけると、検討するスピードが早まるかなという感じがしていますので、検討していただければ有り難いと思います。


○仁田会長
 使用者側いかがでしょうか。第11回の目安全協で提示していただいた案が現在、出発点ですが、更に具体的に御議論を進めていただいて、その後、資料面の検討をしていただいていることもありますので、その中で今、須田委員からお出しいただいた御意見も踏まえながら、統計資料の方針その他、我々が参考にすべき資料等について、やや幅広に提示を頂いてランク区分についての議論が集約していくように、次回に向けて御準備を頂くということではいかがでしょうか。
 そんなに時間的余裕がたくさんあるわけではないので、集約に向けて少し集中的に事務局にも皆様にも取り組んでいただく必要があるのではと考えております。次回は事務局から資料を用意していただいて提示をするというような段取りで進めていきますが、よろしいでしょうか。


(異議なし)


○仁田会長
 それでは、そのようにさせていただきたいと思いますので、事務局には大変お手数ではありますが、本日、種々お出しいただいた御意見も踏まえ、次回はランク区分について検討する上での資料の提示、それからランク区分についての具体的な、どういうことが有り得るのかということを含め、御意見を頂きたいと思いますので、御準備をお願いしたいと思います。


○増田賃金課長
 承知いたしました。


○仁田会長
 次回の開催日程については別途調整していただくということでよろしいですか。


○増田賃金課長
 はい、また別途、委員の皆様方と調整をさせていただきます。


○仁田会長
 年末で誠にお忙しいことと思いますが、取りまとめに向け議論を煮詰めていきたいと思いますので、御協力よろしくお願いいたします。
 特にないようでしたら、以上をもちまして本日の全員協議会を終了とさせていただきたいと思います。本日の議事録の署名ですが、萩原委員、高橋委員にお願いしたいと思います。それでは、本日はどうもお疲れさまでした。
 


(了)
<照会先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

代表: 03-5253-1111

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安制度のあり方に関する全員協議会)> 第14回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録(2016年12月8日)

ページの先頭へ戻る