ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(指定薬物部会)> 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録(2017年2月23日)




2017年2月23日 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録

○日時

平成29年2月23日(木)16:00~


○場所

厚生労働省共用第6会議室


○出席者

出席委員(9名)五十音順

青 山 久 美、 池 田 和 隆、○石郷岡   純、 遠 藤 容 子、
桐 井 義 則、◎鈴 木   勉、  成 瀬 暢 也、 花 尻 瑠 理、
宮 田 直 樹
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(1名)

松 本 俊 彦
他参考人1名

行政機関出席者

武 田 俊 彦 (医薬・生活衛生局長)
森   和 彦 (大臣官房審議官)
伊 澤 知 法 (監視指導・麻薬対策課長)

○議事

○監視指導・麻薬対策課長 ただいまから、「薬事・食品衛生審議会指定薬物部会」を開催させていただきます。本日は大変お忙しい中、委員の先生方には御出席いただき誠にありがとうございます。はじめに1点御報告いたします。先般の薬事・食品衛生審議会委員の改選に伴い、本年1月27日に薬事・食品衛生審議会総会が開催されました。本部会に関しては妹尾委員、曽良委員、和田委員が御退任となり、新たに青山委員、池田委員、松本委員をお迎えしていることを御報告いたします。それでは青山久美委員、池田和隆委員の順に一言、御挨拶を賜れたらと思います。

○青山委員 横浜市立大学附属病院で児童精神科をやっております青山と申します。せりがや病院、現在の神奈川県立精神医療センターに4年前まで勤務をしておりましたので、その関係で今回、こういった声をかけていただきました。よろしくお願いいたします。

○池田委員 東京都医学研の池田でございます。私は、依存性薬物プロジェクトというプロジェクトのリーダーを務めております。また、日本アルコール・アディクション医学会の理事、日本神経精神薬理学会の理事長なども務めております。どうぞよろしくお願いいたします。

○監視指導・麻薬対策課長 なお、松本俊彦委員におかれましては本日は御欠席のため、次回の部会において御紹介させていただければと思っております。また、□□□□委員におかれましては所属組織の変更が行われており、現在、再任手続中ということで、本日の委員名簿には名前が掲げられておりません。

 それでは改選後、最初の指定薬物部会ですので、特に御留意いただきたい事項などについて、事務局から御説明させていただきます。

○事務局 それでは本部会への御参加に当たって、改めて留意事項を3点ほど御説明いたします。第1に、守秘義務の関係です。国家公務員法第100条において「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と規定されております。委員、臨時委員、専門委員は非常勤の国家公務員であり、この規定の適用を受けますので、職務上知り得た秘密について漏らすことのないようお願いいたします。

 第2に、薬事に関する企業等との関係です。お手元に当日配布資料1「薬事分科会規程」と当日配布資料2「薬事分科会における確認事項」をお配りしております。当日配布資料1の「薬事分科会規程」の6ページを御覧ください。第11条において「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と定められております。審議の中立性・公平性を確保する観点から定められておりますので、これらに該当する場合又は任期中に該当することとなる場合には、速やかに事務局まで御連絡いただけますようお願いいたします。

 第3に、薬事分科会の審議事項です。当日配布資料1の4ページを御覧ください。第3条第14項に指定薬物部会の所掌について「指定薬物部会は、法第2条第15項の規定による指定薬物の指定に関する事項を調査審議する」と規定されております。続いて5ページを御覧ください。第7条の部会の議決についてです。「部会における決定事項のうち、比較的容易なものとして分科会があらかじめ定める事項に該当するものについては、分科会長の同意を得て、当該部会の議決をもって分科会の議決とする。ただし、当該部会において、特に慎重な審議を必要とする事項であるとの決定がなされた場合にはこの限りではない」と規定されております。この但し書にありますように、「部会において特に慎重な審議を必要とする事項である」と決定された場合には、分科会において御審議をお願いすることとなります。委員の皆様におかれましてはこのような規定を御承知の上、御審議を頂きますようお願い申し上げます。

○監視指導・麻薬対策課長 続いて本部会の部会長ですが、1月27日に開催された薬事分科会において選出が行われております。この指定薬物部会については、鈴木勉委員が部会長に選出されておりますので御報告申し上げます。最初に鈴木部会長から、一言御挨拶をお願いできればと思います。

○鈴木部会長 1月27日の薬事分科会で部会長に選出されました。引き続き部会長を務めさせていただきます。先生方の御協力でスムーズに会を進めていきたいと思いますので、御協力よろしくお願いいたします。

○監視指導・麻薬対策課長 続いて、薬事・食品衛生審議会令第7条第5項の規定に基づき、「部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」とされております。部会長代理については、部会長から御指名を頂くことになっております。

○鈴木部会長 精神医学について御専門にしておられる石郷岡委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 ありがとうございます。それでは石郷岡委員にお願いしたいと思います。どうぞ、こちらの席に御移動をお願いいたします。

○監視指導・麻薬対策課長 石郷岡委員、どうぞよろしくお願いいたします。さて、本日は松本俊彦委員から欠席の御連絡を頂戴しており、現在のところ、当部会の委員数10名のうち、9名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。また、本日御審議いただく物質について、実際に試験を実施していただいた先生を参考人としてお呼びしております。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□先生です。□□先生、どうぞよろしくお願いします。

 続いて、本部会の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。部会における議論の結果、会議を公開することにより委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、非公開としております。また、会議の議事録の公開については発言者の氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶ恐れが生じることから、発言者の氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。それでは、以後の議事進行は鈴木部会長にお願いいたします。

○鈴木部会長 それでは最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○事務局 本日は資料が1~3、参考文献が1~24、参考資料が1~3となっております。

○鈴木部会長 資料がお手元にない場合にはお知らせ願います。本日の議題は、指定薬物の指定についてです。審議物質について、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 今回、御審議いただく6物質については、国内外で流通実態が認められた物質です。資料1は各物質の名称、通称名、構造式を1~6までそれぞれ記載しております。これらの物質について指定薬物として指定し、規制対象とする必要があるか否か、御審議いただきたいと思っております。資料2は御審議いただく物質のほか、構造が類似する指定薬物や麻薬等を一覧表にまとめたものです。資料3は、国内外の基礎研究や動物実験の結果等について、中枢神経系への影響を中心に取りまとめたものとなっております。

 まず物質1から3について、資料2、資料3を使って御説明したいと思います。詳細は後ほど資料3を用いて御説明いたしますが、資料2には審議物質及び構造が類似する物質、作用が類似する物質について、文献資料や過去の指定薬物部会の資料から確認できたデータを取りまとめております。

 まず、資料2-1です。こちらには審議物質1のアダマンチル-スピナカと、審議物質2のアダマンチル-スピナカ 2-アダマンチル アイソマーに構造が類似する指定薬物や麻薬について、自発運動量への影響、カンナビノイド受容体に対するデータをまとめております。この両物質ともに自発運動を抑制し、カンナビノイド受容体への活性を有しており、過去に指定した指定物質や麻薬と同種の作用を有することを確認しております。

 続いて資料2-2です。こちらは審議物質3の2-FPMに構造が類似する指定薬物や向精神薬について、症状観察、自発運動量への影響、モノアミントランスポーター阻害やマイクロダイアリシスの試験データをまとめております。物質3については、症状観察において立ち上がり動作の抑制とか瞳孔の散瞳、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、過去に指定した指定物質と同種の作用を有することを確認しております。

 資料2-3については、本日の審議物質4にあるブチリルフェンタニルに構造が類似する指定薬物や麻薬について、症状観察、自発運動への影響、オピオイド受容体に対する親和性のデータなどをまとめております。審議物質4については、過去に指定した指定薬物や麻薬と同種の作用を有することを確認しております。

 資料2-4は、審議物質6のチレタミンの構造に類似する指定薬物や麻薬について、NMDA受容体におけるPCP結合部位に対する親和性をまとめております。審議物質は、過去に指定した麻薬と同種の作用を有することを確認しております。

 なお、審議物質5のRTI-111については、構造類似物質としたコカインに関するデータが資料3にありますから、資料2では作成しておりませんので御了承いただければと思います。

 では、詳細について資料3で御説明いたします。アダマンチル-スピナカについて、資料3-1の1ページを御覧ください。通称アダマンチル-スピナカは、指定薬物であるFUB-APINACA、APINACA N-(-chloropentyl)と構造が類似するような化合物です。まず()の行動・中枢神経症状の観察として、マウスにアダマンチル-スピナカ15mgを添加したマーシュマローリーフをタバコ両切りさや紙に充填したものを燃焼させ、マウスを薬物にばく露させ、燃焼終了後15分、30分、60分後の行動及び中枢・自律神経症状の観察を行いました。

 2ページを御覧ください。アダマンチル-スピナカをばく露したマウスは、陰性対照であるマーシュマローリーフをばく露したマウスと比較して、攻撃性、痛反応、筋緊張度の亢進が生じております。挙尾反応、耳介反射、角膜反射、払いのけ動作のやや亢進、外界反応、立ち上がり動作、自発運動、異常行動、異常姿勢、洗顔運動、懸垂力の抑制も生じております。また、呼吸数、心拍数、体温の低下が確認されたという報告を受けております。表1については、それらの評価値の抜粋という形で載せております。

 3ページの()に、カタレプシー試験の実施結果を記載しております。アダマンチル-スピナカばく露後15分で、5匹中1匹が陽性となり、30分、1時間後については、全て陰性であったとの報告を受けております。

()に、ヒトカンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性EC 50 を測定した結果を載せております。アダマンチル-スピナカのCB受容体に対するアゴニスト活性EC 50 の値は3.30×10- (mol/L)、CB受容体は1×10- (mol/)を上回る値となっております。

 参考として、他の文献ですが、麻薬であるJWH-018の受容体親和性に関する報告値も載せております。アダマンチル-スピナカについては、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有していると考えております。以上から、アダマンチル-スピナカは中枢神経に作用する物質と考えております。

 最後に3ページの下段の()海外での流通状況ですが2015年にスロベニアにおいて流通が確認されております。

 続いて資料3-2の4ページを御覧下さい。アダマンチル-スピナカ 2-アダマンチル アイソマーを説明させていただきます。類似物質については、アダマンチル-スピナカと同じものを記載しております。まず()の行動・中枢神経症状の観察としては、マウスにアダマンチル-スピナカ 2-アダマンチル アイソマー15mgを添加したマーシュマローリーフをタバコ両切りさや紙に充填したものを燃焼させ、先ほどと同じ実験をして観察を行っております。5ページを御覧ください。アダマンチル-スピナカ 2-アダマンチル アイソマーをばく露したマウスは、陰性対照であるマーシュマローリーフをばく露したマウスと比較して、攻撃性、反射動作の亢進が見られます。ほかに外界反応、立ち上がり動作、自発運動、異常歩行、異常姿勢、懸垂力、洗顔運動、消極性の抑制が、また呼吸数、体温の低下が確認されたとの報告を受けております。表2については、これらの症状観察時の評価値の抜粋を載せております。

 6ページに()として、カタレプシー試験の実施結果を記載しております。当該物質ばく露後15分で5匹中3匹が陽性となり、30分、1時間後については全て陰性であったとの報告を受けております。

()にヒトカンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性EC 50 を測定した結果を載せております。こちらについてはCB受容体に対するアゴニスト活性のEC 50 の値が1.52×10- (mol/)、CB受容体が1×10- (mol/)を上回るという結果となっております。

 参考ですが、先程と同じようにJWH-018のデータを併せて載せております。こちらの物質も過去に指定した指定物質と同等の作用を有していることから、当該物質についても中枢神経に作用する物質と考えております。

 最後に、6ページ下段の()海外流通状況ですが、2015年にスロベニアにおいて流通が確認されております。

 続いて資料3-3、7ページを御覧下さい。2-FPMについて御説明いたします。通称2-FPMは指定薬物である3-FPM、4-FPM、向精神薬であるフェンメトラジンと構造が類似する化合物です。まずは()の行動・中枢神経症状の観察として、マウスに2-FPM(mg/kg20mg/kg100mg/kg)を経口投与し、投与後30分、60分、120分の神経症状を観察したところ、2mg/kg投与群では、対照群と比較して、攻撃性、痛反応のやや亢進、立ち上がり動作のやや抑制が確認されたとの報告を受けております。20mg/kg投与群では、洗顔運動の抑制、攻撃性のやや亢進、立ち上がり動作のやや抑制が確認されたとの報告を受けております。100mg/kg投与群では、攻撃性の亢進、洗顔運動、立ち上がり動作、自発運動の抑制、また外界反応、痛反応のやや亢進、異常姿勢、懸垂力のやや抑制が確認され、更に瞳孔の散瞳、立毛も確認されたとの報告を受けております。

 8ページの上段の表3に、2-FPMに関する症状観察における評価値の抜粋を載せております。同ページの下段からは、自発運動に対する影響に関して載せております。マウスに2-FPM(20mg/kg)を経口投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定した結果を示しております。9ページのFig.1と併せて御覧いただければと思います。2-FPM投与群と蒸留水の対照群、各群マウス4匹を使用して、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について、Wilcoxon TESTを用いて有意差検定を行ったところ、いずれも投与から投与後3時間まで、対照群と比べて有意な差は示されなかったとの報告を受けております。

 9ページの中段の()に、マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時的変化についての報告を記載しております。2-FPM投与群と水によるコントロール群、各群マウス6匹を使用し、モノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、10ページのFig.2のとおり、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、いずれも有意に増加するということが確認されております。

11ページの()に、2-FPMのセロトニン受容体に対するアゴニスト活性EC 50 を測定した結果を載せております。5-HT2AのEC 50 の値が1×10- (mol/)を上回るとの報告がされております。また、5-HT2Cの値については、試験結果により算出できなかったため、N.C(ノーカウント)という形にさせていただいております。

()では、2-FPMのモノアミントランスポーターに対する機能影響評価についての報告を記載しております。ドパミントランスポーターとセロトニントランスポーターに対するIC 50 を算出したところ、ドパミントランスポーターについては1.3×10- (mol/)、セロトニントランスポーターについては1×10- (mol/)を上回るような結果より、作用は弱いのですが、モノアミントランスポーター阻害作用があることが報告されております。

11ページの下段には、構造が類似する3-FPMのモノアミントランスポーター阻害作用に関する文献がございましたので、参考としてお示ししております。

12ページには、構造類似物質で向精神薬であるフェンメトラジンと、その立体異性体のモノアミントランスポーターに対する作用の知見がありましたので、参考として示しております。ドパミンやノルアドレナリンのリアップテイク阻害に加え、リリースの作用も併せて有することが報告されております。自発運動量について有意差が認められなかったことや、セロトニン受容体に対するアゴニスト活性が弱かったものの、類似構造物質で指定薬物に指定されている4-FPMの症状観察においても見られた攻撃性の亢進、洗顔運動の抑制、立ち上がり動作の抑制、自発運動の抑制、瞳孔の散瞳、腹ばい姿勢などが、2-FPMにおいても確認されたこと。また、マイクロダイアリシス試験において、モノアミンを有意に増加させているということより、過去に指定した指定薬物と同種の作用を有すると考えております。以上から、2-FPMは中枢神経に作用する物質と考えております。

 最後に流通状況です。海外での流通は確認できておりませんが、2016年に東京都による試買品において検出が確認されております。

 以上、3物質について指定薬物として差し支えないと考えますが、御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 事務局より説明のありました3物質について、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。最初に□□委員から、流通実態についてお願いいたします。

□□委員 □□□□で行っている分析調査の結果ですが、今回示された3化合物については、今のところまだ検出しておりません。

○鈴木部会長 それでは、委員の先生方より御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

□□委員 物質3は結構弱いので、このデータだけを見ると悩ましいのです。過去にこれより作用が弱くても、指定されたものはあったのでしょうか。

○事務局 過去に指定したもので作用が弱いものとしては、□□□□□があります。□□□□□についても中枢神経に与える影響があるということで認めていただいたものです。今回の2-FPMもほぼ同等ということで考えているところです。この類似物質以外に、この作用レベルのものはありません。

○事務局 少し補足させていただきます。危険ドラッグに使われるような物質であるという特徴もありますし、通常の医薬品のように用法・用量が決まっているわけではなく、乱用者が乱用する蓋然性を考えると、薬理作用が足りなければ又は、弱ければどんどん使用していくというところもあります。そういった意味では、過去から幅広めに取ってきたというところはあります。

○鈴木部会長 ほかにいかがでしょうか。前半の2つはカンナビノイド系になりますし、3番目の物質については、マイクロダイアリシスの結果がかなり明確に出ておりますので、中枢作用の明らかな証拠になるかと思います。いかがでしょうか。

 それでは、御発言が出尽くしたと思いますので、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、引き続き事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 審議物質の4番から6番までの3物質を説明させていただきます。資料3-4、13ページを御覧ください。通称、ブチリルフェンタニルですが、麻薬であるフェンタニル、指定薬物であるオクフェンタニルやカルフェンタニルと構造が類似する化合物です。事前に皆様に配布させていただいた資料で、文献番号が入れ違っておりました。文献については不足しているわけではございませんが、12番、11番が入れ替わっておりましたのでお詫び申し上げます。

 では、()オピオイド受容体に関する報告についてですが、生理食塩液下でラット脳膜を用いまして、トリチウムラベルされたエトルフィンとブチリルフェンタニルを競合結合させて、プロビット法を用いてEC 50 を算出したところ、5.87×10- (mol/)、同様に、モルヒネは2.36×10- (mol/)の結果が得られております。

 オピオイド作用を確認するため、マウス輸精管にδ受容体拮抗薬、μの受容体拮抗薬及びオピオイド受容体の競合拮抗薬をそれぞれ前処理した後に、ブチリルフェンタニルを投与したところ、δ受容体拮抗薬前処置群では、ブチリルフェンタニルによる単独投与と比較して変化はなく、μ受容体拮抗薬前処置群では、ブチリルフェンタニルの単独投与と比較して減少ということが確認されました。さらに、オピオイド受容体の競合拮抗薬前処理群においては可逆的に反応したことから、ブチリルフェンタニルにはμ受容体に作用して、麻薬であるモルヒネに似たような作用を有するということが確認されております。

 続いて、14ページから、文献11について、本日、参考人として来ていただきました□□先生に実際に試験を行っていただいておりますので、説明をしていただきます。よろしくお願いいたします。

□□参考人 よろしくお願いいたします。ブチリルフェンタニルについて、まず、オピオイド受容体に対する活性、いわゆるオピオイド受容体作用についての確認を行いました。CHOという細胞に、薬物のターゲットになりますμ受容体を発現させた細胞を構築して、その細胞に薬物を添加して出てくる蛍光を指標にして活性度合というものを測定しました。

()、一番右のカラム群ですが、ブチリルフェンタニル(BF)となっています。濃度依存的に蛍光活性が上がるということで、μ受容体に対する刺激作用、作用薬としての特性があるということを確認しました。

()ですが、今度は、その作用が確かにμ受容体を介したものであるのか、これを確認する目的で、μ受容体の拮抗薬になるβ-FNAという薬物を前処置し、その効果について評価しました。その結果、蛍光の強度は完全にブロックされるということで、ブチリルフェンタニルは確かにμ受容体を活性化する作用があるということを確認しました。

 そこで次に()です。運動活性への影響ということで、今度は動物に実際にブチリルフェンタニルを投与し誘発される運動量の増加について検討しました。マウスにオピオイド系の薬物を投与すると、著しい運動量の増加というものが認められます。その行動変化を指標に薬理学的な特性というものをin vivo、動物のレベルで確認した訳です。

15ページの上Fig.5は、運動活性に対するオピオイド受容体拮抗薬の影響ということで、オピオイド受容体をブロックするナロキソンという薬物を前処置し、ブチリルフェンタニル投与の影響を検討しています。

()が投与後の運動量の変化、タイムコースになります。投与直後から●で示している所ですが、非常に強い運動活性が認められました。その効果はナロキソンを前処置しておくと、完全にブロックされました。

()120分間の総運動量になります。BF(ブチリルフェンタニル)では、2,000カウント近くの運動活性が認められ、その効果はナロキソンでブロックされました。これらの結果から、BFの作用はオピオイド受容体を介した反応であるということが分かりました。

 さらに、その下のFig.6ですが、こういった、いわゆる中枢刺激効果においては、脳内のドパミン神経系の関与というものが示唆されております。そこで、ドパミンの受容体をブロックする拮抗薬を前処置し、BFの運動量増加に対する影響についても検討しています。

 その結果、()がタイムコース、()がトータルになっております。総運動量の方で御説明しますと、BF()によって誘発される2,000近くのカウントですが、これが、SCH(ドパミンのD1受容体のブロッカー)、それから、RAC(ラクロプライド、D2のブロッカー)、それぞれのブロッカーの前処置で有意に抑制されるということが判明しました。すなわち、運動量の増加にドパミン神経系の関与というものが示唆されたということです。以上の結果から、ブチリルフェンタニルは、脳内の機能を調整することによって、中枢作用が発現するということを確認しました。

○事務局 ありがとうございます。続けて事務局から説明させていただきます。15ページの()依存性に関する評価について、1.の交差依存性試験ですが、モルヒネ3mg/kgを反復投与しまして、訓練したアカゲザルに対して、15時間モルヒネを休薬した後、モルヒネの代わりにブチリルフェンタニルを0.1mg/kg0.5mg/kgを単回投与しました。まず、0.1mg/kg投与では、60分間は完全にモルヒネ退薬症候は発現しませんでした。0.5mg/kgの投与では、150分間完全にモルヒネ退薬症候が発現しないという結果が出ています。ただ、激しい体のたるみ、顎のたるみ、運動失調、引っかき行動が確認されています。以上より、ブチリルフェンタニルについては、モルヒネと交差依存性があることが確認されています。

16ページについては、□□先生にお願いいたします。

□□参考人 16ページの2.、一番上のデータは、条件付け場所嗜好性試験の結果を示しています。すなわち、薬物の精神依存性を評価したということになります。マウスを用いて6日間の条件付けを行い、7日目に試験を行っております。CPP法による解析の結果、プラスの値を示すということで報酬効果の確認、すなわち依存性が疑われるというデータになっています。BFの1mg、2mgの用量において、用量依存的にCPPのスコアが増加しております。したがって、報酬効果、依存性が疑われるというデータが得られています。

()細胞毒性の評価です。細胞毒性は、先の受容体の機能を評価したCHOという細胞にターゲットになるμのオピオイド受容体を強制的に発現させた細胞を利用して評価をしています。図を見てください。コントロール、これは薬物を処置しない群ということで、生きている細胞を100%とし、パーセント変換でデータを見ております。その結果、一番右のカラムになりますが、ブチリルフェンタニルの処置により、これは4時間後のデータになりますが、細胞数が有意に減少するということが分かりました。すなわち、4時間で毒性が出てくるのではないかということが確認されました。また、この条件下では、医薬品のモルヒネにおいては、有意な細胞数の低下ということは確認されていないということで、ブチリルフェンタニルは非常に強い毒性を示す危険性があるのではないかということが、この評価から確認されました。以上です。

○事務局 ありがとうございます。引き続き事務局から説明させていただきます。17ページの()海外の流通状況についてです。2014年にスウェーデン、2015年にアメリカ、カナダにおいて流通が確認されています。

()の死亡事例ですが、海外で幾つか報告があります。こちらについては、アメリカで合わせて43例の死亡事例が、スウェーデンにおいても4例の死亡事例の報告がありました。以上から、ブチリルフェンタニルについても、中枢神経に作用する物質と考えております。

 資料3-5、18ページを御覧ください。通称、RTI-111です。麻薬であるコカインに構造が類似する化合物です。まず、()にモノアミン再取込み阻害作用に関する報告がありましたので載せています。IC 50 値ですが、ドパミンが7.9×10-10(mol/)、ノルアドレナリンが1.80×10- (mol/)、セロトニンが3.13×10- (mol/)と、麻薬であるコカインよりもモノアミン再取込み阻害作用を有している結果が確認されております。

18ページ下段から19ページにかけまして、()に弁別試験による依存性の検討に関する報告がありましたので載せています。ラットにRTI-111及びコカインを腹腔内投与し弁別試験を実施したところ、コカインより少ない投与量でコカインのレバーを押す割合の増加が確認されています。また、コカインより少ない投与量で、1秒間当たりのコカインのレバーを押す回数が低下するという結果が確認されています。このことから、コカインよりも強い行動抑制作用を有していると考えております。

 以上から、RTI-111も中枢神経系への作用を有する物質であると考えております。

 最後、流通状況です。こちらについては、海外での流通は確認できておりませんが、税関による水際対策において確認がされております。

 資料3-6、20ページです。通称、チレタミンですが、指定薬物であるMMXEや麻薬であるケタミンなどに構造が類似する化合物です。まず()にNMDA受容体におけるPCP結合部位との親和性に関する報告を載せています。チレタミンのIC 50 値が、7.9×10- (mol/)、PCPの値が4.4×10- (mol/)()-MK-8013.7×10- (mol/)と、麻薬や陽性対照物質と同程度の親和性を有しているとの結果が確認されております。

20ページの下段から22ページにかけて、()にマウスにチレタミン、ケタミンなどを注射して、報酬効果及び強化効果に関する比較試験の結果を載せています。ラットにチレタミン、ケタミンを注射し、場所-嗜好性、自己投与性を誘導するか、また、薬物の前ばく露の有無も併せて比較試験を行ったところ、チレタミンについては、事前のばく露の有無に関係なくケタミンに匹敵するような強い場所-嗜好性を誘導することが確認されています。また、前ばく露を行った場合、ケタミンに匹敵するような自己投与性がチレタミンでも誘導されることが確認されています。

 以上から、チレタミンについても、中枢神経系への作用を有する物質と考えております。

22ページの中段の()です。海外での流通状況について、チレタミン単体では流通情報は確認できませんでしたが、海外、主に欧米ですが、チレタミンとゾラゼパムを組み合わせたものが動物用医薬品として流通していることが確認されています。

()の死亡例ですが、2000年に韓国において、チレタミンの使用による死亡例が確認されており、血液、脾臓等からチレタミン以外にゾラゼパムも検出されています。また、1999年~2013年までに世界で7例の死亡例が確認されており、いずれにおいてもチレタミンとゾラゼパムを組み合わせた動物用麻酔薬の使用が確認されています。

 以上の3物質について、指定薬物として差し支えないと考えますが、御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 事務局から説明がありました3物質について、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。まず最初に、□□委員から流通実態についてお願いいたします。

□□委員 □□□□での分析調査を報告いたします。ブチリルフェンタニルについては、□□□□では検出されておりません。しかし、RTI-111に関しては、国内流通製品2検体から粉末の形で検出しています。また、チレタミンに関しては、同じく、国内流通製品の1検体から粉末の形で検出しています。以上です。

○鈴木部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

□□委員 14ページの下から2行目の所に、フェンテドロンという言葉がありますが、これはブチリルフェンタニルのことなのでしょうか。

○事務局 事務局です。こちらについては誤植です。ブチリルフェンタニルということで見ていただければと思います。申し訳ございません。

□□委員 分かりました。ありがとうございます。もう一点は、私はこういった指定薬物のことは詳しくありませんけれども、18ページにあるコカインの類似物質、RTI-111に関してですが、これはコカインよりも作用が強いようですけれども、コカインは麻薬に指定されていますが、麻薬に指定せずに指定薬物ということで、その次のものもPCPと類似ということで、PCPは麻薬ですけれども、指定薬物ということで今回はよろしいということなのでしょうか。

○鈴木部会長 では、事務局からお願いします。

○事務局 この指定薬物の制度ですけれども、危険ドラッグ対策のコアの部分として機能しており、危険ドラッグとして、国内流通で確認されたものについては指定薬物という形でまず規制を行います。指定薬物で規制しますと、スピード感を持って、省令ですぐ規制がかかるという仕掛けになっています。まず指定薬物としての規制で押さえ、麻薬相当であるというデータがそろったところで、麻薬に指定していくといった仕掛けになっています。

○鈴木部会長 ほかにいかがでしょうか。それでは、発言が出尽くしたようなので、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは引き続き、事務局から説明をお願いします。

○事務局 今後のスケジュールについて御説明させていただきます。本件の結果については、次回開催の薬事分科会で報告させていただく予定です。

 本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、いわゆる正規用途について、審議物質6番のチレタミンについては、試験研究の用途で必要な物質であるとの情報を確認しております。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障を来さぬように対応する所存です。以上でございます。

○鈴木部会長 本日の議題は、以上です。それでは、事務局からその他の連絡事項があればお願いします。

○事務局 次回の部会日程については、正式に決まり次第、御連絡をさせていただきたいと思います。また、本部会の資料は回収させていただきますので、机上に置いたままでお願いいたします。

○鈴木部会長 それでは、平成28年度第6回指定薬物部会を閉会いたします。委員の先生方、本日は御審議いただきまして、ありがとうございました。

 

 

 


(了)

備  考
 本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された

連絡先:医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐 佐々木(2779)

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